説明

二重撚糸装置

【課題】 液体を含浸させてある素糸でも、能率良く、しかも、略均一に撚りを掛けることができるようにする。
【解決手段】 給糸チーズAを同芯状に収容自在なチーズポット9と、給糸チーズから上向きに繰り出した素糸aを下向きに挿通してチーズポットの外側に導出可能な素糸挿通路14とを同芯状に設け、チーズポットの外側に導出した素糸をそのチーズポットの外周側を旋回させながら巻き取って、素糸に撚りを掛けるように構成してある二重撚糸装置であって、チーズポットの上部開口20を開閉自在な蓋体22で、素糸の給糸チーズから素糸挿通路への送り込み空間23を囲繞してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給糸チーズを同芯状に収容自在なチーズポットと、前記給糸チーズから上向きに繰り出した素糸を下向きに挿通して前記チーズポットの外側に導出可能な素糸挿通路とを同芯状に設け、前記チーズポットの外側に導出した素糸をそのチーズポットの外周側を旋回させながら巻き取って、前記素糸に撚りを掛けるように構成してある二重撚糸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記二重撚糸装置は、チーズポットと同芯状に設けてある素糸挿通路を下向きに通過してそのチーズポットの外側に導出した素糸を、チーズポットの外周側を旋回させて、バルーンを形成しながらチーズポットの上方に導いて巻き取るので、素糸をチーズポット周りで一回旋回させる毎に二回の撚りを掛けて、能率良く撚糸できる利点があるが、稼働中の二重撚糸装置においては、チーズポットの外周側に形成されるバルーンにより、風が発生している。
従来の二重撚糸装置では、給糸チーズの素糸を、チーズポットの上部開口を通して、風の発生しているチーズポットの上部に繰り出した後、素糸挿通路に下向きに挿通して、チーズポットの外側に導出するように構成してある(例えば、特許文献1参照)。
また、上記二重撚糸装置に関する技術ではないが、繊維を紙状に加工してテープ状にカットしてある素糸に撚りを掛けるにあたって、撚りを均一に掛け易くなるように、そのテープ状の素糸に水などの液体を含浸させて撚りを掛ける技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】実開昭51−72531号公報
【特許文献2】特開平10−121339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、液体を含浸させた素糸を能率良く撚糸するために、二重撚糸装置を使用することが考えられるが、従来の二重撚糸装置は、給糸チーズそのものが、チーズポットの上方空間に対して露出状態で収容されるために、給糸チーズ上の素糸が、給糸に伴って経時的に乾燥し易く、その上、素糸が、チーズポットの上部開口を通して、チーズポット上部の風の発生している空間に繰り出されるので、素糸挿通路に入り込むまでの間に素糸が乾燥され易く、その結果、素糸に含浸している液体が蒸発して、素糸の液体含浸状態にむらが生じ易く、均一に撚りを掛けにくい欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、液体を含浸させてある素糸でも、能率良く、しかも、略均一に撚りを掛けることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、給糸チーズを同芯状に収容自在なチーズポットと、前記給糸チーズから上向きに繰り出した素糸を下向きに挿通して前記チーズポットの外側に導出可能な素糸挿通路とを同芯状に設け、前記チーズポットの外側に導出した素糸をそのチーズポットの外周側を旋回させながら巻き取って、前記素糸に撚りを掛けるように構成してある二重撚糸装置であって、前記チーズポットの上部開口を開閉自在な蓋体で、前記素糸の前記給糸チーズから前記素糸挿通路への送り込み空間を囲繞してある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
チーズポットの上部開口を開閉自在な蓋体で、素糸の給糸チーズから素糸挿通路への送り込み空間を囲繞してあるので、チーズポットの上部開口を通して、給糸チーズ自体や、繰り出された素糸が、チーズポットの外周側を旋回する素糸によって発生する風に接触するおそれが少ない。
その結果、液体を含浸させてある素糸を撚糸する場合でも、その素糸が素糸挿通路に入り込むまでの間には乾燥されにくくなって、素糸が含浸している液体の蒸発を抑制できるので、素糸の液体含浸状態にむらが生じにくくなり、従って、液体を含浸させてある素糸でも、能率良く、しかも、略均一に撚りを掛けることができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記蓋体に、前記送り込み空間の内外を連通可能な貫通孔を形成してある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
チーズポットの外周側を旋回中の素糸が切れたような場合は、切れた素糸の端部がチーズポットの外側を旋回することにより生じる遠心力で、給糸チーズの素糸がバルーンを形成することなく素糸挿通路を通してチーズポットの外側に繰り出されることがある。
このような場合に、素糸の給糸チーズから素糸挿通路への送り込み空間を蓋体で囲繞してあると、その素糸の給糸チーズからの繰り出しを蓋体の外側から阻止できないが、送り込み空間の内外を連通可能な貫通孔を蓋体に形成してあるので、このような場合でも、蓋体の貫通孔を通して送り込み空間に挿入した、例えば棒状の操作具で、給糸チーズからの素糸の繰り出しを阻止して、素糸のチーズポット外側への素糸挿通路を通した繰り出しを停止させることができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記チーズポットの外周側における前記素糸の旋回空間を囲繞するカバーを設けてある点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
チーズポットの外周側における素糸の旋回空間を囲繞するカバーを設けてあるので、チーズポットの外周側をバルーン状に旋回する素糸によって発生する風が外方へ逃げにくく、そのために乾燥しにくい。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記チーズポットの内底部に、前記給糸チーズをその内周側と外周側とを全周に亘って囲む状態で受け止め可能な受け皿を設けてある点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
チーズポットの内底部に、給糸チーズをその内周側と外周側とを全周に亘って囲む状態で受け止め可能な受け皿を設けてあるので、液体を含浸させてある素糸を撚糸する場合に、給糸チーズの素糸から液体が滲み出ても、装置の作動に悪影響を及ぼさないように、その滲み出た液体を受け皿で受け止めることができるとともに、給糸チーズを受け止めている受け皿に含浸用の液体を溜めておいて、素糸の乾燥を防止することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明による二重撚糸装置を示し、1はスピンドルで、図外の駆動装置のベルト2を巻き掛けるベルト巻き掛け部を備えたワープ3と、ボルスター4に形成した縦孔に対して回転自在に挿嵌可能なインサート5aを備えたブレード5、並びに、ディスク6とディスクホルダー7とを一体化して構成してある。
【0014】
8は給糸装置部で、給糸チーズAを同芯状に収容自在なチーズポット9を備えたハウジング10と、給糸チーズAから繰り出された素糸aをカプセル11のテンサートップガイド12に案内するフライヤー13とを設け、給糸チーズAから上向きに繰り出した素糸aを、フライヤー13を経由して、下向きに挿通してチーズポット9の外側に導出可能な素糸挿通路14を、チーズポット9と同芯状にカプセル11の内部に設けて、案内ピン19の外周面に沿わせてチーズポット9の外側に導出した素糸aを、そのチーズポット9の外周側とその外周側を囲んでいる筒状カバー15との間の旋回空間16を旋回させながら、スネールワイヤ18のリング部18aを通過した後の素糸aを巻き取って、素糸aに撚りを掛けるように構成してある。
【0015】
前記チーズポット9は、外周筒部9aと環状の底板部9bとを一体に備えていて、その上部に環状の上部開口20を形成してあり、その内底部に、給糸チーズAをその内周側と外周側とを全周に亘って囲む状態で受け止め可能な受け皿21を挿脱自在に設けてある。
【0016】
そして、チーズポット9の上部開口20を開閉自在な樹脂製の透明蓋体22を着脱自在に設けて、その蓋体22で素糸aの給糸チーズAから素糸挿通路14への送り込み空間23を囲繞するとともに、その蓋体22に、送り込み空間23の内外を連通可能な貫通孔24を形成してある。
【0017】
前記蓋体22は、チーズポット9と同芯状で、上端側ほど小径の略円錐台形状に形成してあり、その下端部を、環状のゴムパッキン25を挟んで、チーズポット9の上縁に嵌合して送り込み空間23を囲繞し、その上端側の略扁平な蓋体部分26の、チーズポット9の軸芯、つまり、スピンドル軸芯Xから偏芯した位置に貫通孔24を形成して、その貫通孔24から送り込み空間23に挿入した棒状操作具でフライヤー13の旋回を停止させることができるようにしてある。
【0018】
上記二重撚糸装置を使用して、繊維を紙状に加工してテープ状にカットしてある素糸aに撚りを掛ける方法を説明する。
【0019】
テープ状の素糸aを巻き取ってある給糸チーズAを水槽に漬けて素糸aに水を含浸させておき、したたり落ちない程度の水を素糸aに含浸させてある給糸チーズAをチーズポット9に収容した給糸装置部8をスピンドル1に挿嵌して、ハウジング10に設けてあるマグネット27の磁力でディスク6に装着するとともに、ハウジング10に設けてあるマグネット27と、ディスク6の外周側に間隔を隔てて固定してあるマグネット28との磁気吸引力で、給糸装置部8を吸引静止させる。
【0020】
そして、給糸チーズAから上向きに繰り出した素糸aを、フライヤー13を経由して、テンサートップガイド12とカプセル11の内部の素糸挿通路14に下向きに挿通し、更に、ブレード5に形成してある孔とスピンドルガイド1aを介して、チーズポット9の外側、つまり、ディスクホルダー7の外側方に導出した素糸aをスネールワイヤ18のリング部18aに案内し、この状態でスピンドル1を1回転させることにより、素糸aを押さえているカプセル11を支点として、スピンドル糸道の曲がり部とディスクホルダー7との間での1回と、更に、ディスクホルダー7とスネールワイヤ18との間での1回との合計2回の撚りを同時に行う。
【0021】
〔第2実施形態〕
図2は本発明による二重撚糸装置を示し、チーズポット9の外周側における素糸aの旋回空間16、つまり、バルーン形成空間を、素糸取り出し口17を除いて囲繞する透明カバー15を設けてある。
【0022】
前記透明カバー15は、スピンドル軸芯Xを通る面で左右に分割されていて、チーズポット9の外周部と下部の旋回空間16を囲繞する有底筒状の下部カバー部分15aと、下部カバー部分15aに対してスピンドル軸芯X方向で着脱自在に連結され、かつ、チーズポット9上部の旋回空間16を囲繞して、スネールワイヤーと同等機能の素糸取り出し口17を備えた上部カバー部分15bとから構成してあり、上部カバー部分15bの下部カバー部分15aに対する着脱で給糸チーズAを容易に交換することができるように構成してある。
【0023】
また、素糸取り出し口17は、カバー内側の素糸aを外部に導出できる程度の直径で、スピンドル軸芯Xと同芯状に上部カバー部分15bに形成してあり、マグネット28は、カバー15の外周側に間隔を隔てて固定してある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0024】
〔その他の実施形態〕
本発明による二重撚糸装置は、油性液体を含浸させてある素糸に撚りを掛けるために使用するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の二重撚糸装置を示す縦断面図
【図2】第2実施形態を示す縦断面図
【符号の説明】
【0026】
9 チーズポット
14 素糸挿通路
15 カバー
16 旋回空間
20 上部開口
21 受け皿
22 蓋体
23 送り込み空間
24 貫通孔
A 給糸チーズ
a 素糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸チーズを同芯状に収容自在なチーズポットと、前記給糸チーズから上向きに繰り出した素糸を下向きに挿通して前記チーズポットの外側に導出可能な素糸挿通路とを同芯状に設け、
前記チーズポットの外側に導出した素糸をそのチーズポットの外周側を旋回させながら巻き取って、前記素糸に撚りを掛けるように構成してある二重撚糸装置であって、
前記チーズポットの上部開口を開閉自在な蓋体で、前記素糸の前記給糸チーズから前記素糸挿通路への送り込み空間を囲繞してある二重撚糸装置。
【請求項2】
前記蓋体に、前記送り込み空間の内外を連通可能な貫通孔を形成してある請求項1記載の二重撚糸装置。
【請求項3】
前記チーズポットの外周側における前記素糸の旋回空間を囲繞するカバーを設けてある請求項1又は2記載の二重撚糸装置。
【請求項4】
前記チーズポットの内底部に、前記給糸チーズをその内周側と外周側とを全周に亘って囲む状態で受け止め可能な受け皿を設けてある請求項1〜3のいずれか1項記載の二重撚糸装置。

【図1】
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【図2】
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