説明

亜臨界水処理装置

【課題】 固体粒子、粘着物質を含む亜臨界水処理液を連続的に導出できる亜臨界処理装置を提供する。
【解決手段】 本発明の亜臨界水処理装置は、被処理物を、亜臨界水を用いて処理する縦型反応容器と、前記被処理物を反応容器に導入するための導入路と、前記縦型反応容器の側壁に設けられ、下方に傾斜した導出路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜臨界水処理装置に関し、さらに詳しくは固体粒子、粘着物質などを含む亜臨界水処理液を連続的に導出できる亜臨界水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス、プラスチックなどの有機物を、亜臨界水または超臨界水を用いて分解処理することが行われている。これらの処理を連続的に行うための連続処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の装置では、処理後の反応処理物を、縦型反応容器の上部または側壁に設けられた導出路から導出する。側壁に設けられた導出路は、側壁に垂直な方向に設けられている。
【0004】
分解処理終了後の反応処理物中にも、固形物が含まれている場合がある。特に、高温・高圧の処理容器中から排出された処理液では、温度の低下に伴い、固形物が析出する、または粘度が増加する場合がある。これらの固体粒子、粘着物質などが導出路の詰まりの原因となり、連続処理を妨げるという問題がある。
【特許文献1】国際公開第2005/077515号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、固体粒子、粘着物質を含む亜臨界水処理液を連続的に導出できる亜臨界処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、反応処理物が導出路内を滑送することができるように、導出路を傾斜配置することで、固体粒子、粘着物質を含む亜臨界水処理液を連続的に導出できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0007】
本発明の亜臨界水処理装置は、被処理物を、亜臨界水を用いて処理する縦型反応容器と、前記被処理物を反応容器に導入するための導入路と、前記縦型反応容器の側壁に設けられ、下方に傾斜した導出路と、を備える。
【0008】
本発明の亜臨界水処理装置は、被処理物を、亜臨界水を用いて処理する縦型反応容器と、前記被処理物を反応容器に導入するための導入路と、前記縦型反応容器の側壁の上下方向に設けられ、下方に傾斜した、2個以上の導出路と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の亜臨界水処理装置では、導出路内を反応処理物が滑送することができる。この結果、反応処理物の温度・圧力が導出路内で低下し、固形物の析出や粘度の増加があっても、導出路が目詰まりを起こさないので、固体粒子、粘着物質を含む亜臨界水処理液を連続的に導出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の亜臨界水処理装置を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の亜臨界水処理装置に用いる反応容器を模式的に表した図である。図2は、本発明の亜臨界水処理装置の機器構成を説明するための処理システムブロック図である。
【0011】
図2に示すように、本発明の亜臨界水処理装置は、被処理物タンク2、供給ポンプ3、加熱手段4、加圧手段5、反応容器1、導入路6、導出路7、排出口8などの、連続処理を行う一連の機器から構成される。
【0012】
本発明で処理することのできる被処理物は、特に制限はなく、例えば、畜産物、農産物、木材・植物などの天然有機物やこれらの廃棄物、食品や食品廃棄物、プラスチックや有機塩素系化合物を含む合成有機物、ゴム、繊維及びこれらの廃棄物、並びに活性汚泥や余剰汚泥を含む下水処理廃棄物、廃水処理廃棄物などである。また、被処理物には、亜臨界処理では分解できない無機質を含んでいてもよい。これらの被処理物は、通常粉砕または破砕して、水と混合し、被処理物タンク2にスラリー状態で貯蔵される。
【0013】
スラリー状態の被処理物は、被処理物タンク2から供給ポンプ3を経て加熱手段4に供給される。反応容器1における反応温度は、加熱手段4により調整される。スラリー状態の被処理物は、加熱手段4に送られて加熱され、亜臨界状態になる。加熱手段4としては、特に制限はなく、例えば、電気ヒータ、誘導加熱装置、熱媒油・水蒸気による加熱などが挙げられる。
【0014】
加熱手段4から送り出されたスラリー状態の被処理物は、加圧手段5により加圧され、導入路を経て、反応容器1に送られる。加圧手段5としては、例えば、加圧ポンプなどを用いることができる。
【0015】
反応容器1では、被処理物の分解が行われる。分解条件は、水の亜臨界条件であっても、超臨界条件であってもよいが、好ましくは水の亜臨界条件である。水の亜臨界条件とは、例えば、温度134〜374℃で圧力0.3〜100MPaであり、好ましくは、温度150〜350℃で圧力0.5〜100MPaであり、より好ましくは、温度170〜300℃で圧力0.8〜100MPaである。
【0016】
反応容器1には、保温等を目的として、反応容器の外周に加熱保温装置を設けてもよい。さらに、リリーフ弁などの安全手段を設けてもよい。
【0017】
反応容器1内で処理された反応処理物は、導出路7を介して導出される。導出された反応処理物は、冷却管により冷却され、(1)分離装置を用いて、分離回収処理を行う、あるいは(2)次の処理を行う、などの処理が行われる。導出路7は、縦型反応容器1の側壁に設ける。導出路7の数は、1個以上であればよい。導出路7には、背圧弁、個液分離装置などが設けられている。複数の導出路7を設ける場合には、縦型反応容器1の側壁の上下方向に設ける。具体的には、図2に示すように、反応容器1の側壁の上下方向に沿って、適宜間隔をとって、複数個の導出路7を設ける。複数個の導出路のうちいずれかの導出路を適宜選択して導出を行う。この結果、反応の進行段階に応じて所望の反応処理物を得ることができる。導出路の選択は、例えば導出路に設けた背圧弁の開閉操作により行う。
【0018】
また、反応容器1の塔頂部にも、導出路を設けてもよい(図示せず)。塔頂部に設ける導出路からは、通常、アルコール、有機酸、脱塩油、可溶無機塩、炭化物などの液状の反応処理物の導出に用いる。塔頂部に設ける導出路においても、下方に傾斜することとしてもよい。
【0019】
反応容器1の底部に排出口9を設けてもよい。被処理物中に含まれる亜臨界水に溶解しない無機物や炭化物等の密度は、有機性固形分の密度より大きい。反応容器3の底部に排出口9を設ければ、底部に沈降する無機物や炭化物等を排出口9から容易に排出することができる。排出口9には、背圧弁、個液分離装置などが設けられていてもよい。
【0020】
本発明の特徴は、図1に示すように、上記導出路7を、処理物を滑送させるように、下方に傾斜させたことにある。このように、導出路7を、傾斜させることで、固体粒子、粘着物質などが含まれる反応処理物を導出しても、反応処理物が導出路7内を滑送する。この結果、導出路7が詰まらないので、連続処理が円滑に行われる。
【0021】
導出路7は、一端が縦型反応容器1の側壁に固定され、他端が反応容器の下方外向きになるように設置されている。本明細書中で、外向きとは、反応容器外表面から離れていく方向をいう。導出路7の傾斜方向は、縦型反応容器1の上下方向に垂直な方向から下側に傾斜していればよい。例えば、縦型反応容器1の上下方向に垂直な方向から下側に30°〜60°の角度であると好ましい。傾斜角度が30°未満であると、処理物の滑送が十分に行えない。一方、傾斜角度が60°を超えると、反応処理物を導出路から排出しにくくなる。
【0022】
導出路を傾斜配置するとともに、導出速度を、固体粒子、粘着物質などの沈降速度より大きくすると、さらに導出路の詰まりを抑制できる。導出速度は、導出路の内径、導出路に背圧弁を設けて、制御することができる。
【0023】
本発明の反応容器は、例えば通常の耐圧容器で使用されている軟鋼(炭素鋼)などを用いて製作することができる。

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明に用いる反応容器の実施形態を示す要部断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態を説明するための亜臨界水処理装置の機器構成を説明するための処理システムブロック図である。
【符号の説明】
【0025】
1 反応容器
2 被処理物タンク
3 供給ポンプ
4 加熱手段
5 加圧手段
6 導入路
7 導出路
8 排出口





【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を、亜臨界水を用いて処理する縦型反応容器と、
前記被処理物を反応容器に導入するための導入路と、
前記縦型反応容器の側壁に設けられ、下方に傾斜した導出路と、
を備える亜臨界水処理装置。
【請求項2】
被処理物を、亜臨界水を用いて処理する縦型反応容器と、
前記被処理物を反応容器に導入するための導入路と、
前記縦型反応容器の側壁の上下方向に設けられ、下方に傾斜した、2個以上の導出路と、
を備える亜臨界水処理装置。






【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−253880(P2008−253880A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95843(P2007−95843)
【出願日】平成19年3月31日(2007.3.31)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【出願人】(591037373)三菱長崎機工株式会社 (12)
【Fターム(参考)】