説明

亜鉛フレークの製造装置

本発明は、球状の亜鉛粉末混合原料を供給するための貯留槽、ボールミルを流入ライン及び流出ラインに接続して貯留槽に流入する混合原料を循環させつつ球状の亜鉛粉末をフレーク化することを特徴とする亜鉛フレークの製造装置に関するものであり、特に、円形ディスクが多重に積み重ねられた形状の内槽を有する複合ボールミルを採用して、亜鉛フレークの扁平度が良好であり、空隙率を最小化させ、腐食因子の遮断効果の増大及び比表面積の増加による防食性能の拡大を両立させる結果、防食顔料の高性能化が図れると共に、連続式製造工程によって製造時間を短縮させることにより、生産量及び歩留まりが高まる結果、商用化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は亜鉛フレークの製造装置に係り、さらに詳しくは、フレーク専用複合ボールミルを用いて球状の亜鉛粉末をフレーク化することにより、亜鉛フレークの扁平度が良好であり、空隙率を最小化させ、腐食因子の遮断効果の増大及び比表面積の増加による防食性能の拡大を両立させる結果、防食顔料の高性能化が図れると共に、歩留まりが高くて商用化が図れる亜鉛フレークの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、亜鉛粉末は、塗料中に含有されて鉄よりも先に腐食する犠牲正極として働いて、保護の対象となる物体の腐食を防止する役割を果たす。既存の防食顔料としての亜鉛粉末は、1〜10μmの粒度分布を有する無光沢の球状の灰色粉末であり、かような従来の球状の亜鉛粉末は、防食顔料として採用したとき、大きく形成される空隙率に起因して防食性能が低下するといった不都合があった。
【0003】
一方、金属フレークは、球状の金属粒子を薄型化・扁平化したものであり、このような構造により高光沢の視覚的効果及び比表面積の増大効果が得られることから、球状の顔料粒子をミル法によってフレーク化する方法が様々に試みられている。
【0004】
このため、亜鉛粉末の上述した問題点を解消するために、ミル法を用いて球状の亜鉛粉末をフレーク化する様々な方法が試みられており、図1に示すように、ジルコニア、アルミナなどのように耐摩耗性に優れたボール3を内部に所定量充填した円筒状容器1の構造を有するボールミルの内部に球状の亜鉛粉末を入れて矢印の方向に回転させてフレーク化する場合には、工程制御は容易であるとはいえ、亜鉛の特性、すなわち、脆性及び延性を併せ持つ特徴によって作業時間が延び、実際の生産品のうち商業的に利用可能な亜鉛フレークの歩留まりが極めて低いという不都合があった。
【0005】
さらに、図2に示すように、ジルコニア、アルミナなどのように耐摩耗性に優れたボール3を内部に所定量充填した円筒状容器1の構造を有するアトリションミルの内部に球状の亜鉛粉末を入れて攪拌羽根を回転させてボールを容器内において円周方向に動かして原料粉末に大きな衝撃を与えてフレーク化する場合には、製造時間が短縮されると共に、ボールミルよりもエネルギーは大きいものの、望ましくないことに製品の再現性に問題を引き起こし、原料粒子がミル中に凝集する現象が発生してロスが発生する結果、生産コストが嵩むなどの問題点があった。
【0006】
すなわち、上述した方法は、球状の亜鉛粉末にボールを回転体容器内において円周方向に動かして原料粉末に大きな衝撃を与えて粉砕効率を高めるための方法であり、上述した既存の工法を用いて亜鉛をフレーク化するには多くの問題点を抱えていた。
【0007】
さらに、PCT特許公開公報WO2004/026508号には、乾式ミルによって亜鉛フレークを製造する方法が開示されているが、同方法の場合には、ミル中の熱発生が多大であるために原料の消耗量が高く、粉塵の発生可能性が高くて実際には適用し難いという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】PCT特許公開公報WO2004/026508号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述した不都合を解消するためになされたものであり、その目的は、亜鉛フレークの生産歩留まり及び生産量を向上させ得る新規なタイプの亜鉛フレーク製造用複合ボールミルを用いて球状の亜鉛粉末、溶剤及び潤滑剤の混合原料を高速にて攪拌させて亜鉛フレークを製造することにより、製造時間の短縮及び生産歩留まりの向上が図れる亜鉛フレークの製造装置を提供するところにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、球状の亜鉛粉末粒子を用いて亜鉛フレークを製造することにより、亜鉛フレークの比表面積が増大されて球状の亜鉛粉末の場合に発生される大きな空隙率を最小化させ、腐食因子の遮断効果の増大及び比表面積の増加による防食性能の拡大を両立させる結果、防食顔料の高性能化が図れる亜鉛フレークの製造装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明は、亜鉛フレークを製造するための亜鉛フレークの製造装置において、前記亜鉛フレークの製造装置10は、貯留槽12、循環ポンプ14及び複合ボールミル20を備え、前記複合ボールミル20は、貯留槽12と、流入ライン13及び流出ライン15に接続されて、貯留槽12に流入する混合原料を循環させつつ球状の亜鉛粉末をフレーク化する工程を行うが、前記複合ボールミル20は、貯留槽12から供給される混合原料を収容する内部空間31が形成される外槽30と、前記外槽30の内部空間31内に配設されて外部モーターによって駆動されるローター50と、を有し、前記内部空間31内には、球状の亜鉛粉末をフレーク化するために耐摩耗性に優れたボールが充填されることを特徴とする亜鉛フレークの製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る亜鉛フレークの製造装置によれば、フレーク専用複合ボールミルを用いて球状の亜鉛粉末をフレーク化することにより、亜鉛フレークの扁平度が良好であり、空隙率を最小化させ、腐食因子の遮断効果の増大及び比表面積の増加による防食性能の拡大を両立させる結果、防食顔料の高性能化が図れると共に、連続式製造工程によって製造時間を短縮させることにより、生産量及び歩留まりが高まる結果、商用化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)及び(b)は、従来のボールミルの模式図である。
【図2】従来のアトリションミルの模式図である。
【図3】本発明の好適な実施形態による亜鉛フレークの製造装置の模式図である。
【図4】図3における複合ボールミルを詳細に説明するための概略断面図である。
【図5】図4における内槽を詳細に説明するための斜視図である。
【図6】本発明に係る実施例1及び実施例2の方法に従い製造された亜鉛フレークの歩留まりの経時変化を示すグラフである。
【図7】実施例1及び実施例2との比較のために、比較例1〜比較例3の方法に従い製造された亜鉛フレークの歩留まりの経時変化を示すグラフである。
【図8】本発明に係る実施例1の方法に従い製造された亜鉛フレークを走査電子顕微鏡(SEM)により撮影し、2,000倍に拡大して示す写真である。
【図9】本発明に係る実施例2の方法に従い製造された亜鉛フレークを走査電子顕微鏡(SEM)により撮影し、2,000倍に拡大して示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面に基づき、本発明による粉末製造装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。後述する説明においては、本発明の製造方法を理解する上で必要となる部分だけが説明され、それ以外の部分の説明は本発明の要旨を曖昧にしないために省略されることに留意されたい。
【0015】
まず、添付の図3に基づき、本発明に係る亜鉛フレークの製造装置について詳細に説明する。
【0016】
図3は、本発明の好適な実施形態による亜鉛フレークの製造装置の模式図であり、図4は、図3における複合ボールミルを詳細に説明するための概略断面図であり、そして図5は、図4における内槽を詳細に説明するための斜視図である。
【0017】
図3及び図4を参照すると、本発明の好適な実施形態による亜鉛フレークの製造装置10は、貯留槽12(holding tank)と、循環ポンプ14及び複合ボールミル20を備え、且つ、前記複合ボールミル20は、貯留槽12と、流入ライン13及び流出ライン15に接続されて貯留槽12に流入する混合原料を循環させつつ球状の亜鉛粉末をフレーク化する工程を行うことを特徴とする。
【0018】
このとき、貯留槽12は、亜鉛フレークを製造するために、外部から球状の亜鉛粉末、溶剤及び潤滑剤の原料を供給されて、これらの原料を攪拌器を用いて攪拌して混合原料を製造し、この異種混合物を循環ポンプ14によって流入ライン13を介して貯留槽12に供給する。この貯留槽12の周りには冷却ジャケット(図示せず)及び攪拌装置を取り付けて攪拌及び温度維持を行う。
【0019】
また、複合ボールミル20は、図4に示すように、通常のボールミルと同様に、貯留槽12から供給される混合原料を収納する内部空間31が形成される外槽30と、この外槽30の内部空間31内に配設されて外部のモーターによって駆動されるローター50と、を有する。なお、この複合ボールミル20内には、球状の亜鉛粉末をフレーク化するために耐摩耗性に優れたボールが充填される。
【0020】
この種の本発明に係る亜鉛フレークの製造装置10の流出ライン15には、複合ボールミル20から貯留槽12に循環される混合原料の昇温を防止するコンデンサー16が設けられる。
【0021】
さらに、複合ボールミル20に充填されるボールは耐摩耗性に優れたジルコニア材質、アルミナ材質のものであり、その形状は球状又は棒状を呈し、ボールの大きさは0.1〜5.0mmであり、ボールの充填率は充填される内部空間(内槽の内径により形成される内部空間、図4参照)の体積に対して20〜80体積%であることが好ましい。
【0022】
上記のボールの充填率が20体積%未満であれば、ボールの充填量が少なくてもフレーク化が進まなくなるおそれがあり、80体積%を超えると、目詰まりによって運転が止まるおそれがある。
【0023】
かような本発明に係る亜鉛フレークの製造装置10は、特殊に設計された複合ボールミル20を用いて球状の亜鉛粉末のフレーク化工程を行うことにより、通常のボールミルのように亜鉛のフレーク化のためのボールを採用することができ、アトリションミルのように回転速度を高めることにより、亜鉛フレークの扁平度が良好であり、空隙率を最小化させ、腐食因子の遮断効果の増大及び比表面積の増加による防食性能の拡大を両立させる結果、防食顔料の高性能化が図れると共に、歩留まりが高くて商用化が図れることを特徴とする。
【0024】
図4及び図5を参照すると、本発明の好適な実施形態による亜鉛フレークの製造装置10における複合ボールミル20は、流入ライン13(図3参照)と接続される入口32と、排出ライン15(図3参照)と接続される出口34と、を有する外槽30内においてローター50の周りに周設されて外槽30の内部空間31内に配設され、充填されたボールが内部に収納される内槽40を有することを特徴とする。このとき、内槽40は、外槽30の内径よりも小さな外径を有し、内部空間31内に配設されるローター50の外径よりも大きな内径を有する多数の円形ディスク41からなる。また、円形ディスク41は、流入ライン13と平行に所定の間隔をあけて配設されて外槽30に取設される支持杆60によって支持されることにより、多重に積み重ねられた多層構造を有し、円形ディスク41の間には周方向にスペーサー62が介装されて、内槽40内に流入してフレーク化工程が行われる混合原料を流出ライン15に排出する。
【0025】
本発明において、前記円形ディスク41は、10〜100枚の円形ディスクが多重に積み重ねられた多層構造を有し、前記円形ディスクの枚数は上記の枚数に限定されるものではなく、内槽40の大きさに応じてその枚数が適切に調整可能である。
【0026】
このような多層構造の円形ディスク41からなる内槽40は、混合原料、ボール(図示せず)及びローター50間の摩擦力を高めると共に、亜鉛が外槽30の内壁に凝結によりくっつくことがなく、亜鉛を外部に円滑に循環させることができる。すなわち、ローター50の回転によって混合原料とボールとの間の摩擦が起こる結果、フレーク化が行われ、このとき、摩擦熱の発生及び粒子同士の凝集が起こる前に内槽40の隙間(円形ディスク41の間に挟まれるスペーサー62同士の隙間)を介してフレーク化中の素材は抜け出る。この過程が数回繰り返し行われてフレーク化が進み、粒度分布を測定して目的の粒度に達したときに工程を止めてフレーク化済みの亜鉛を回収することとなる。
【0027】
このとき、外槽30は、ローター50の回転軸に対して水平をなして、回転軸と連結されたローター50の回転により発生する振動を極力抑え、外槽30の内圧と混合原料が流入する入口32の外圧を一定に維持することにより、外槽30及び回転軸の破損を防止するようになっている。このような外槽30の内部空間31には上述した如き内槽40が設けられて、亜鉛フレークを出口34に排出する。また、内槽40を介して出口34に流出する混合原料(亜鉛のフレーク化工程が進んでいる混合原料)は、流出ライン15を介して貯留槽12に搬送されるとき、流出ライン15の上に取り付けられるコンデンサー16により冷却される。このような循環過程は、混合原料の粒度分布が10〜50μmの範囲内に納められたときに止まる。完全扁平化までの時間は、原料量及び回転速度などによる。
【0028】
以下、本発明に係る亜鉛フレークの製造装置であるフレーク専用複合ボールミルを用いて球状の亜鉛粉末をフレーク化する方法を説明する。
【0029】
本発明は、亜鉛の製造装置であるフレーク専用複合ボールミルを用いて、溶剤30〜90重量%と、球状の亜鉛粉末10〜70重量%及び前記球状の亜鉛粉末100重量部に対して潤滑剤0.01〜10.0重量部を貯留槽12内において混合させて得られた混合原料を流入ライン13を介して複合ボールミル20容器内に流入させた後、ローター50を100〜8,000rpmの速度で10〜360分間回転させて10〜50μmの粒度分布を有する亜鉛フレークを製造することを特徴とする亜鉛フレークの製造方法を提供する。
【0030】
また、前記混合原料は、フレーク化の作業性を高めるために、複合ボールミル20内に流入した後、混合原料の循環率が5〜30体積%になるように流出ライン15を介して貯留槽12に循環されつつフレーク化工程が行われることを特徴とする。前記混合原料の循環率が前記循環率の範囲から外れる場合にはフレーク化作業性の低下するおそれがある。
【0031】
本発明において、前記混合原料は、溶剤30〜90重量%と、球状の亜鉛粉末10〜70重量%と、前記球状の亜鉛粉末100重量部に対して潤滑剤0.01〜10.0重量部と、を含むことが好ましい。
【0032】
本発明において、溶剤は、フレーク化作業に際して、球状の亜鉛粉末に流動性を与えて流入ラインから複合ボールミルの内部に混合原料を円滑に供給し、複合ボールミルの内部において球状の亜鉛粉末のフレーク化作業を行うときに流動性及び溶剤の易揮発性を図るためのものであり、溶剤の混合量が30重量%未満であれば、溶剤の混合量に比べて相対的に球状の亜鉛粉末の混合量が増大することにより、球状の亜鉛粉末の流動性が低下する結果、フレーク化作業性が低下するおそれがあり、溶剤の混合量が90重量%を超えると、溶剤が過剰に混合されることにより過量の溶剤を揮発するための作業時間が延びてしまう結果、フレーク化作業性が低下するおそれがある。
【0033】
本発明において、溶剤は、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、キシレン、ベンゼン、トルエン、ココゾル等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類よりなる群から1種又はそれ以上を選択して混合して使用することが好ましい。
【0034】
また、本発明において、球状の亜鉛粉末としては、粒度範囲が1〜50μm、さらに好ましくは、1〜10μmのものを使用することが好ましい。球状の亜鉛粉末の粒度範囲が上述した範囲から外れる場合には球状の亜鉛粉末の粒度が小さすぎたり大きすぎたりしてフレーク化作業性が低下するおそれがある。
【0035】
さらに、本発明において、潤滑剤は、ミル作業時に亜鉛粉末の凝集を防止するためのものであり、球状の亜鉛粉末100重量部に対して潤滑剤の混合量が0.01重量部未満であれば、潤滑剤の不足により粉末が凝集するおそれがあり、潤滑剤の混合量が10.0重量部を超えると、最終品の純度が低下して作業時間が延びるおそれがある。
【0036】
本発明において、潤滑剤は、ステアリン酸塩類又は揮発油系(ホワイトスピリット、石油スピリット等)、ポリエチレン系ワックス類(PCE(ペルクロロエチレン))、フッ素系ワックス類(PTFE(ポリテトラフルオロエチレン))、シリコン系ワックス類から1種又はそれ以上を選択して使用することが好ましい。
【0037】
さらに、前記混合原料は、複合ボールミルの内槽40の内径により形成される内部空間(内槽の内径により形成される内部空間、図4参照)の体積に対して10〜60体積%を投入することが好ましい。混合物の投入量が10体積%未満であれば、ミル面積の縮小によりフレーク化作業性が低下するおそれがあり、60体積%を超えると、摩擦熱の発生により亜鉛粉末が凝集するおそれがある。
【0038】
さらに、上述したように、前記複合ボールミルは、大きさ0.1〜5.0mmのジルコニウム又はアルミナ材質のセラミックボールを複合ボールミルの内槽40の内径により形成される内部空間の体積に対して20〜80体積%充填することが好ましい。
【0039】
本発明に係る方法に従い製造された亜鉛フレークは、商業的に利用可能な10〜50μmの直径及び0.1〜2μmの厚さを有し、粒子の直径及び厚さの割合が10:1〜100:1、より好ましくは、15:1〜30:1を有する亜鉛フレークであり、60〜95%まで歩留まりを高めることができるという特徴がある。
【0040】
以下のより詳細に説明された実施例及び比較例によって、本発明のよりよい理解が得られるが、本発明の範疇はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
本発明に係る亜鉛フレークの製造装置であるフレーク専用複合ボールミルを用いて、複合ボールミル容器内に、エチルアルコール60重量%と、粒度範囲が4〜6μmである球状の亜鉛粉末40重量%と、球状の亜鉛粉末100重量部に対して添加剤であるステアリン酸潤滑剤2重量部を添加し且つ混合して得られた混合原料を、その充填率が複合ボールミルの内部空間(本発明の好適な実施例においては、内槽の内径により形成される内部空間、図4参照)の20体積%になるように投入した。このとき、サイズが0.5〜0.8mmのジルコニウム製のボールを、その充填率が容器の内部空間(本発明の好適な実施例においては、内槽40(図4参照)の内径により形成される内部空間)の70体積%になるように充填した条件で回転速度1300rpmにて運転した結果、10〜50μmの直径及び0.1〜2μmの厚さを有する亜鉛フレークが30分以内に60%以上の歩留まりで得られることが確認できた(図6のC−1参照)。
【実施例2】
【0042】
本発明に係る亜鉛フレークの製造装置であるフレーク専用複合ボールミルを用いて、複合ボールミル容器内に、エチルアルコール70重量%と、粒度範囲が4〜6μmである球状の亜鉛粉末30重量%、及び球状の亜鉛粉末100重量部に対して添加剤であるステアリン酸潤滑剤2重量部を添加し且つ混合して得られた混合原料を、その充填率が複合ボールミルの内部空間(本発明の好適な実施例においては、内槽の内径により形成される内部空間、図4参照)の25体積%になるように投入した。このとき、サイズが0.8〜1.0mmのジルコニウム製のボールを、その充填率が容器の内部空間(本発明の好適な実施例においては、内槽40(図4参照)の内径により形成される内部空間)の70体積%になるように充填した条件で回転速度1500rpmにて運転した結果、10〜50μmの直径及び0.1〜2μmの厚さを有する亜鉛フレークが30分以内に70%以上の歩留まりで得られることが確認できた(図6のC−7参照)。
【0043】
(比較例1)
アトリションミルを用いて、複合ボールミル容器の内部空間に、粒度範囲が4〜6μmの球状の亜鉛粉末をその充填率が30体積%になるように投入した後、サイズが1.0〜1.5mmのジルコニウム製のボールを、容器の内部空間にその充填率が50体積%になるように充填した乾式工程条件で回転速度2000rpmにて運転した結果、10〜50μmの直径及び0.1〜2μmの厚さを有し、粒子の直径及び厚さの割合が10:1〜50:1である亜鉛フレークが、30分経過後に21%、60分経過後に22%、120分経過後に33%の歩留まりで得られることが確認できた。ところが、120分経過後に粒子の凝集が発生して粒度が大幅に増加してそれ以上の歩留まりの向上は見られなかった(図7のA−1参照)。
【0044】
(比較例2)
アトリションミルを用いて、複合ボールミル容器の内部空間に、エチルアルコール60重量%、粒度範囲が4〜6μmの球状の亜鉛粉末40重量%をその充填率が30体積%になるように投入した後、サイズが1.0〜1.5mmのジルコニウム製のボールを、容器の内部空間にその充填率が50体積%になるように充填した湿式工程条件で回転速度2000rpmにて運転した結果、10〜50μmの直径及び0.1〜2μmの厚さを有し、粒子の直径及び厚さの割合が10:1〜50:1である亜鉛フレークが、30分経過後に18%、60分経過後に21%、120分経過後に20%の歩留まりで得られることが確認できた。ところが、48時間経過後にはそれ以上の歩留まりの向上は見られなかった(図7のA−2参照)。
【0045】
(比較例3)
前記比較例2と同様の条件下で添加剤としてのステアリン酸潤滑剤を亜鉛粉末100重量部に対して2重量部を添加して亜鉛フレークを製造した結果、10〜50μmの直径及び0.1〜2μmの厚さを有し、粒子の直径及び厚さの割合が10:1〜50:1である亜鉛フレークが、30分経過後に26%、60分経過後に30%、120分経過後に27%の歩留まりで得られることが確認できた。ところが、48時間経過後には歩留まりが25%以下に低下した(図7のA−3参照)。
【0046】
前記実施例1及び実施例2及び比較例1〜3に従い製造された亜鉛フレークの歩留まりを比較してみると、本発明に係る亜鉛フレークの製造装置であるフレーク専用複合ボールミルを用いて亜鉛フレークを製造した実施例1及び実施例2の場合には、1300〜1500rpmにて運転する場合に30分以内に70%以上の歩留まりを示すことが分かった。これに対し、アトリションミルを用いて亜鉛フレークを製造した比較例1(乾式工程)、比較例2(湿式工程)、比較例3(湿式工程+添加剤2%)の場合、いずれも30分、60分及び120分の経過後にも歩留まりが30%を超えないことが分かった。
【0047】
特に、比較例1の場合には、初期副産物の量が高く、120分以上ミルを行う場合に原料の凝集が起きてしまい、亜鉛フレークの生産性の側面からは望ましくないことに問題点を引き起こすことが分かった。
【0048】
したがって、本発明に係る実施例1及び実施例2は、これらの方法に従い製造された亜鉛フレークの扁平度が良好であり、しかも、歩留まりが高いことから、商業的に競争力のある量産工程であることを確認することができた。
【0049】
本発明において、図6は、本発明に係る実施例1及び実施例2の方法に従い製造された亜鉛フレークの歩留まりの経時変化を示すグラフであり、図7は、実施例1及び実施例2との比較のために、比較例1〜比較例3の方法に従い製造された亜鉛フレークの歩留まりの経時変化を示すグラフである。
【0050】
さらに、図8は、本発明に係る実施例1の方法に従い製造された亜鉛フレークを走査電子顕微鏡(SEM)により撮影し、2,000倍に拡大して示す写真であり、図9は、本発明に係る実施例2の方法に従い製造された亜鉛フレークを走査電子顕微鏡(SEM)により撮影し、2,000倍に拡大して示す写真である。
【0051】
以上で、本発明が、具体的な構成要素などの特定の事項と限定された実施の形態および図面によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解への一助となるために提供されたものに過ぎず、本発明がこれらの実施の形態に限定されることはなく、本発明が属する技術分野において通常の知識を持つ者であれば、このような記載から様々な修正および変形を図ることができる。
【図1(a)】

【図1(b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛フレークの製造装置において、
前記亜鉛フレークの製造装置(10)は、貯留槽(12)、循環ポンプ(14)及び複合ボールミル(20)を備え、
前記複合ボールミル(20)は、貯留槽(12)と、流入ライン(13)及び流出ライン(15)に接続されて、貯留槽(12)に流入する混合原料を循環させつつ球状の亜鉛粉末をフレーク化する工程を行うが、
前記複合ボールミル(20)は、
貯留槽(12)から供給される混合原料を収容する内部空間(31)が形成される外槽(30)と、
前記外槽(30)の内部空間(31)内に配設されて外部モーターによって駆動されるローター(50)と、
を有し、
前記内部空間(31)内には、球状の亜鉛粉末をフレーク化するために耐摩耗性に優れたボールが充填されることを特徴とする亜鉛フレークの製造装置。
【請求項2】
前記複合ボールミル(20)は、充填されたボールが内部に収納される内槽(40)をさらに備えるが、
前記内槽(40)は、前記外槽(30)の内径よりも小さな外径を有し、前記内部空間(31)内に配設される前記ローター(50)の外径よりも大きな内径を有するように形成される多数の円形ディスク(41)からなるが、前記円形ディスク(41)は、前記流入ライン(13)と平行に所定の間隔をあけて配置されて前記外槽(30)に取設される支持杆(60)によって支持されることにより、多重に積み重ねられた多層構造を有し、前記円形ディスク(41)の間には周方向にスペーサー(62)が介装されて、前記内槽(40)内に流入してフレーク化工程が行われる混合原料が前記流出ライン(15)に排出されることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛フレークの製造装置。
【請求項3】
前記流出ライン(15)は、前記複合ボールミル(20)から前記貯留槽(12)に循環する混合原料の昇温を防止するコンデンサー(16)をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の亜鉛フレークの製造装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−509395(P2012−509395A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536236(P2011−536236)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006349
【国際公開番号】WO2010/058914
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(511115974)テウォン ノンフェラス カンパニー,リミテッド (1)
【Fターム(参考)】