説明

亜鉛メッキした金属面に対して硫黄ベースの腐食防止剤を使用する方法

亜鉛メッキした面の白錆の形成を抑制するための構成物及び方法。この構成物は、チオール、ポリマージチオカルバマート、及びキサントゲン酸塩を有している。この構成物は、現状のプログラムとの統合又は新たなプログラムの開発を有する様々な異なる方法又はプログラムを使用して、特に工業用水システムの亜鉛メッキした面に導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、亜鉛メッキした金属面の腐食の抑制に関する。特に、本発明は、亜鉛メッキした面の白錆腐食を抑制するための方法に関する。本発明は、工業用水システムの亜鉛メッキした金属面に硫黄ベースの化合物を使用することによって、白錆腐食を抑制するための特別な関連性を有している。
【背景技術】
【0002】
亜鉛メッキは、金属(通常は鉄又は鋼)の表面に化学的に結合した亜鉛の保護コーティングである。亜鉛コーティングは、様々な適用例で使用され、腐食に対する電気化学的な抵抗とともに、部材及び環境に機械的なバリアを提供することによって、下側の金属に対してある程度の腐食の保護を与える。いくつかの亜鉛メッキ法は、電気メッキ、連続亜鉛メッキ、溶融メッキといったものである。冷却水循環システム(本書では場合によっては「クーリングタワー」と称する)といった、多くの工業用水システムはこのような亜鉛メッキした面を有している。
【0003】
あらゆる種類の亜鉛メッキしたコーティングに関する一般的な問題は、面が多湿及び/又は湿潤状態に曝されたときに亜鉛メッキした面に急速に形成する、白くてろう状のフワフワした又は粉末状の保護しない多孔質の堆積物として生じる「白錆」である。白錆は、亜鉛コーティングに大きな被害をもたらす可能性があり、コーティングの外観にとって有害となる。検査しないままにしておくと、白錆は冒された亜鉛メッキした面を持続的に腐食し、結果的にコーティングの早期の不具合をもたらす。亜鉛メッキした面のこのような保護しない多孔質の堆積物により、このような面は今後の白錆に対して「不動態」ではなくなり、急速に腐食し続ける可能性がある。
【0004】
高アルカリ度の評判の上昇により、pH調整していない水処理プログラムが、特にクーリングタワーの適用で、より頻繁且つ深刻な白錆の発生をもたらしている。白錆は、一般に、新たなクーリングタワーが、8.0よりも大きいpHの水で「塩基性炭酸亜鉛」の保護バリアが形成する前に長期間作動する場合に形成する。長い耐用年数を保証するために、クーリングタワーの亜鉛メッキした面は、一般に、初期の稼働又は始動に先だって、「不動態化」し得る又は保護バリアを形成し得ることを要する。また、適切な水処理及び始動処置が必須である。面を不動態化する1つの方法は、クーリングタワーの始動の際に亜鉛コーティングが塩基性炭酸亜鉛の自然な非多孔質な面を発達し得ることである。このような自然な化学的バリアが、通常のクーリングタワーの作動とともに環境によるさらなる急速な亜鉛コーティングの腐食を防止しこれが遅くなるのを助ける。
【0005】
炭酸亜鉛/水酸化亜鉛化合物と考えられているこのような塩基性炭酸亜鉛のバリアは、(Cooling Tower Instituteによって1994年6月に発行された「Guidelines for Treatment of Galvanized Cooling Towers to Prevent White Rust」に記載されているように)、一般に、中性pH(すなわち、pH6.5乃至8.0)の水及び適度に硬水の環境でクーリングタワーの作動の開始から8週間以内に形成する。典型的な溶質の含有範囲は、重炭酸塩アルカリとしての100ppm乃至300ppmのカルシウム(CaCO)含有量及び約100ppmCaCO硬度である。保護する炭酸亜鉛バリアの形成は、クーリングタワーがさらなる腐食に抗するのに重要である。バリアが欠乏すると、深刻な白錆の形成をもたらす可能性があり、クーリングタワーの寿命に重大な悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
また、白錆は、上記の保護する炭酸亜鉛バリアとは異なる多孔質の構造、形成率、及び密度を有する炭酸亜鉛の形成である。CaCO硬度によって測定される水の硬度が50ppmを下回るレベルに達する(すなわち軟水)と、一般に亜鉛の腐食が促進されることになる。また、約250ppmを上回るレベルの硫酸塩、塩化物、及び硝酸塩といった水中の特定のイオンの含有量が、亜鉛の腐食の促進に寄与する可能性がある。このため、水質管理とともにクーリングタワーの定期検査が白錆の形成の防止に役立つ。
【0007】
現状の白錆腐食防止プログラムは、不動態化前のクーリングタワーと継続する水質管理とを組み合わせて、不動態化層の存在能力をサポートすることを有している。上記のような基本的な炭酸亜鉛の保護層に加えて、白錆防止手段が、無機リン酸塩及びクロム酸塩の不動態化による前処理を有している。このような無機溶液は、限られた効果を有しており、環境への懸念によりしっかりと連邦及び地方の規制の対象になっている。
【0008】
白錆防止に関する他の溶液は、チオカーバメート、有機リン化合物、及びタンニンを選択的に使用して表面を不動態化することを有している。例えば、米国特許第5,407,597号は、有機リン化合物、チオカーバメート化合物、及び水溶性金属塩化合物の混合物を含む調合物を提供している。このような調合物の成分が組み合わせて使用され、試験される含有物単独では一般に白錆形成を制御しない。米国特許第6,468,470B1号の調合物は、多成分系の有機リン化合物、タンニン化合物、及び水溶性金属塩を有している。
【0009】
さらに、通常の作動条件下では、クーリングタワーは大量の蒸発水の損失を有している。結果として、一般に、カルシウム、マグネシウム、硫酸塩、及び塩化物といったイオン種を含んでいる大量の「作り上げた」水がシステムの中に導入される。また、アルカリ度の増加(例えば、炭酸塩、重炭酸塩、及び水酸化物イオン)により白錆腐食の原因となる。特に、付随するpHの増加を具えた炭酸塩のアルカリ度の蓄積により、理想的な白錆形成環境が発生する。このような蓄積は白錆の主要な原因の1つである。過剰な陰イオン及び/又は軟水の存在が、例えば亜鉛コーティングと反応して水酸化亜鉛を生成することによって、白錆形成の度合いを悪化させる可能性がある。
【0010】
冷却水循環システムの不可欠な構成要素として、殺生物剤がシステムの藻類、細菌、及び真菌汚染を防止するために必須である。これらの殺生物剤のうちいくつかは、それらが特定の白錆抑制剤及び/又は亜鉛コーティングと化学的に反応するため、副作用として白錆の形成を場合によっては促進する。例えば、次亜塩素酸ナトリウム(すなわち、漂白剤)が一般的な殺生物剤であり、極めて反応性に富んでいる。
【0011】
また、高いpHレベルが白錆形成の要因であるため、冷却水に十分な量の遊離酸、一般に硫酸を付加することにより、白錆の形成を妨げるよう補助する。このような遊離酸の付加により、遊離酸の取り扱いへの懸念が生じ、又、供給過多又は漏出によって酸自身による金属腐食の可能性が生じる。上記のようなこれらの不動態化又はメンテナンス処置は、白錆問題に対する完全な解決法を提供しない。このため、十分且つ改善された構成物及び白錆腐食を抑制する方法を提供する必要性を有している。
【発明の開示】
【0012】
従って、本発明は、亜鉛メッキした金属面の腐食を防止する方法を提供する。本方法は、亜鉛メッキした金属面に、硫黄ベースの好適には硫化物ベースの白錆腐食抑制化合物を有する有効量の腐食抑制構成物を導入して、当該面にバリアを形成するステップを有している。一実施例では、さらに、本方法が、1又はそれ以上の時間間隔の後に、亜鉛メッキした金属面に有効量の構成物を再導入することによって、バリアを重ねるステップを有している。
【0013】
一実施例では、本発明は、少なくとも部分的に水を満たし1又はそれ以上の亜鉛メッキした金属面を有する工業用水システムにおいて腐食を抑制する方法を提供する。本方法は、工業用水システムの水を約6.5乃至約8.2のpHを有するよう調整するステップと、工業用水システムの水の中に、1又はそれ以上の硫黄ベース又は硫化物ベースの白錆腐食抑制化合物を有する有効量の腐食抑制構成物を導入するステップと、を有している。
【0014】
本方法の実施は、システムに負荷が掛かっていてもいなくても実行される。腐食抑制構成物を導入するときにシステムに負荷が掛かっていない場合には、このような導入の後に、ある時間間隔の間、工業用水システムの水を循環させて、硫黄ベースの白錆腐食抑制化合物をシステムの亜鉛メッキした金属面に接触させ、これらの面にバリアを形成する。十分な間隔の後に、適切な時間に除荷システムを切るか又は除荷する。腐食抑制構成物を導入するときにシステムに負荷が掛かっている場合には、このような導入の後に、ある時間間隔の間、システムを負荷が掛かった状態で作動させて、白錆腐食抑制化合物をシステムの亜鉛メッキした金属面に接触させ、これらの面にバリアを形成する。
【0015】
一態様では、本発明は、硫化物ベースの白錆腐食抑制化合物によって形成されたバリアを重ねるための方法を提供する。本態様は、システムに負荷が掛かっていても又は負荷が掛かっていなくてもバリアを重ねることを有している。システムに負荷が掛かっているときにバリアを重ねる場合には、本方法は、約6.5乃至約8.2にシステムのpHを再調整し、システムの水の中に有効量の腐食抑制構成物を再導入する。そして、1又はそれ以上の付加的な時間間隔の間、負荷の下でシステムを作動させて、1又はそれ以上の付加的な時間間隔の後にバリアを任意に再び重ねる。
【0016】
システムに負荷が掛かっていないときにバリアを重ねる場合には、本方法は、約6.5乃至約8.2にシステムの水のpHを再調整し、システムの水の中に有効量の腐食抑制構成物を再導入し、十分な間隔の間、システムの水を再循環させ、面に硫化物ベースの化合物を接触させる。十分な間隔の後に、適切な時間に除荷したシステムを稼働させ又はこれに負荷を掛ける。
【0017】
本発明は、特にクーリングタワーのボウル及び伝熱コイルの適用に関するが、本方法の実施はこのようなクーリングタワーへの適用に限定されないことに留意されたい。意図される適用例は、亜鉛メッキした金属面を有するシステムを含んでいる。また、本発明を、1又はそれ以上の蛍光トレーサー化合物の有る無しに拘わらず、ケイ酸塩、ホウ酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、クロム酸塩、亜鉛塩、オルトリン酸塩、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩/ホスフィン酸塩、これらの組み合わせ、又は他の適切な腐食又はスケール(水垢)抑制化合物又は構成物、といった1又はそれ以上の他の腐食又はスケール抑制構成物と組み合わせてもよい。このような組み合わせは、以下に詳細に説明するように、包括的な腐食及びスケール抑制プログラムを形成するであろう。
【0018】
本発明の利点は、亜鉛メッキした金属面の腐食、特に白錆を抑制する方法を提供することである。
【0019】
本発明の別の利点は、工業用水システムを含む様々な適用例で亜鉛メッキした金属面の寿命を延ばすための方法を提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の利点は、工業用水システムの亜鉛メッキした面の白錆腐食を抑制するための一段階の不動態化方法を提供することである。
【0021】
本発明のさらなる利点は、初めに硫黄ベースの白錆抑制構成物で不動態化し、亜鉛メッキした面に当該硫黄ベースの白錆抑制構成物を重ねることによって後処理するための方法を提供することである。
【0022】
本発明の別の利点は、様々なpH状態下で使われている工業用水システムの亜鉛メッキした面の白錆腐食を抑制するための方法を提供することである。
【0023】
本発明のさらなる利点は、軟水といった低イオン含有量を有する水を具えて使われている工業用水システムの亜鉛メッキした面の白錆腐食を抑制するための方法を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の利点は、上昇した炭酸塩アルカリ性下で使われている工業用水システムの亜鉛メッキした面の白錆腐食を抑制するための方法を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の利点は、工業用水システムの亜鉛メッキした面の白錆腐食を抑制するための構成物及び方法を提供することであり、面を吸着又はこれに結合する1又はそれ以上の硫黄ベースの又は硫化物ベースの化合物を有しており、様々なpH状態下、様々なアルカリ度のレベル、及び様々な水の硬度レベルで使用される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、亜鉛メッキした金属面の腐食を抑制する方法を提供する。本方法は、亜鉛メッキした金属面に有効量の腐食抑制構成物を導入して、この面にバリアを形成する。ここで使用する「バリア」という用語は、亜鉛メッキした面の表面改質、亜鉛メッキした面の形態変化、白錆腐食抑制化合物のいずれかと亜鉛メッキした面との化学的相互作用、又は他の同様な表面改質又は面との相互作用を含んでいる。一実施例では、有効量の腐食抑制構成物が、約0.001重量パーセント乃至約100重量パーセントの白錆腐食抑制化合物を有している。好適な実施例では、有効量の当該構成物が、約0.001重量パーセント乃至約50重量パーセントの当該化合物を含んでいる。より好適な実施例では、構成物の約0.1重量パーセントから約30重量パーセントの化合物を、亜鉛メッキした面に導入する。
【0027】
本書に記載の白錆腐食抑制化合物を、それぞれ別々に、同時に、様々な化合物を繰り返して、又は適切な順番又は方法で実施することによって、順次に用いてよいことに留意されたい。代表的な硫黄ベースの白錆腐食抑制化合物が、チオール、ビスムチオール、二量体化ビスムチオール、ポリマージチオカルバミン酸塩、キサントゲン酸塩、及びこれらの組み合わせを有している。
【0028】
一態様では、亜鉛メッキした面に腐食抑制構成物を導入するステップが、溶融製造プロセスに本方法を組み込むことを有している。例えば、金属が亜鉛コーティングで保護される場合、まず金属を450℃(鉄/鋼及び亜鉛が大きな親和力を共有する温度)で溶融亜鉛に浸漬する。製造プロセスの次のステップは、亜鉛コーティングした金属を、硫黄ベース又は硫化物ベースの白錆腐食抑制化合物を含む腐食抑制構成物に浸漬するステップである。
【0029】
別の態様では、このような導入が、腐食抑制構成物の溶液を、工業用水システムの面を含む面に直接噴霧することを有している。一実施例では、構成物に発泡剤を混合して混合物を形成し、その次にこの混合物を、適切な噴霧装置を用いて亜鉛メッキした金属面に噴霧する。発泡剤は、アルコキシル化アルコール、ポリエチレングリコール、又は他の適切な界面活性剤といった界面活性剤を有している。代替的な実施例では、塗装用のローラ等を用いたローリングによって、又は塗装用のはけ等を用いたブラッシングによって、モップ等を用いたスワブによって、又は他の適切な方法又は技術を用いることによって、構成物を面に物理的に適用してもよい。
【0030】
別の態様では、腐食抑制構成物を、1又はそれ以上の時間間隔の後に1又はそれ以上の回数だけ面に再導入して、バリアを「重ね」又は面を「再不動態化」する。また、腐食抑制バリアを新しくするための及び/又は亜鉛メッキした面を再不動態化するための重ね合わせるステップが考えられる。上述したようにケースバイケースで、本方法は、複数の異なる腐食抑制構成物を有しており、バリアを重ねるステップが、亜鉛メッキした金属面に異なる1又はそれ以上の腐食抑制構成物を導入することを有している。
【0031】
一実施例では、有効量の腐食抑制構成物が、冷却水循環システム(本書では場合によっては「クーリングタワー」と称する)の水の中に導入され、システムの亜鉛メッキした金属面にバリア(又は不動態化した面)を形成する。このような導入は、システムの初期動作に先立って新たな未使用のシステムの中への導入、又は稼働中の運用システムの中への導入でよいことに留意されたい。本発明に係る腐食抑制構成物を、本書で詳細を説明するようなスケール(水垢)及び/又は腐食抑制プログラムといった他の構成物又はプログラムと組み合わせた補助的処置として、又は独立した処置プログラムとして、工業用水システムの中に導入してもよい。
【0032】
工業用水システムは、少なくとも部分的に水が満たされており、1又はそれ以上の亜鉛メッキした金属面を有している。本方法は、約6.5から約8.2のpHを有するようシステムの水を調整するステップを有している。好適な実施例では、システムの水のpHが、約6.8から約7.8に調整される。さらに、本方法は、1又はそれ以上の白錆腐食抑制化合物を有する有効量の腐食抑制構成物を工業用水システムの水の中に導入するステップを有している。
【0033】
腐食抑制構成物は、一般に、約1ppmから約10,000ppmの白錆腐食抑制化合物を有している。好適な実施例では、当該構成物が、約1ppmから約1000ppmの化合物を有している。より好適な実施例では、当該構成物が、約1ppmから約100ppmの化合物を有している。
【0034】
一実施例では、有効量の腐食抑制構成物が、システムが作動して負荷がかかっている際に工業用水システムの水の中に導入される。本実施例では、本システムの中に構成物を導入する際又はその後に、ある時間間隔の間、負荷の下でシステムが作動して(すなわち、オンになって)、白錆腐食抑制化合物をシステムの亜鉛メッキした面に接触させて、この面にバリアを形成する。
【0035】
あるケースでは、バリアを重ねることを要する。このような重ね合わせを、工業用水システムが作動して負荷が掛かっているときに、又はシステムを止めることで負荷が掛かっていないときに実施してもよい。一実施例では、バリアを重ねることが、システムを除荷し(すなわち、止め)、システムのpHを再調整し、システムの水の中に有効量の腐食抑制構成物を再導入し、システムの水を循環させることを有している。別の実施例では、バリアを重ねることが、負荷が掛かった状態にシステムを保持し、(上記のように)システムのpHを再調整し、システムの水の中に有効量の腐食抑制構成物を再導入することを有している。
【0036】
一実施例では、本方法が、複数の異なる腐食抑制構成物を有しており、バリアを重ねることが、工業用水システムの中に異なる1又はそれ以上の腐食抑制構成物を導入することを有している。
【0037】
本発明に係る腐食抑制構成物を、好適には、工業用水システムの稼働開始に先立って不動態化処理の前に導入することに留意されたい。このような適用例は、一般に、システムの亜鉛メッキした面に対する最高度の不動態化及び保護を提供するため、本方法は好適である。代替的に、腐食抑制構成物を現在作動又は動作しているシステムに導入してもよい。上記のように、不動態化処理の際にシステムに負荷を掛けたままにすることによってシステムを切らずに、又はシステムを切って除荷することによって、このような適用例を実施してよい。
【0038】
本発明を実施するのに要しないが、腐食抑制構成物を、1又はそれ以上の他の腐食抑制剤、1又はそれ以上のスケール抑制剤、1又はそれ以上の蛍光トレーサー、1又はそれ以上の水処理ポリマー、1又はそれ以上のポリアルコキシ化合物、又は他の適切な添加又は付加成分と組み合わせてもよいと考えられる。このような添加剤は、本発明が付加的な成分又はプログラムとなる既存の腐食抑制プログラムの部分である。添加剤は、腐食抑制構成物又は別の構成物又は構成物である。代替的な実施例では、このような添加剤を同時に又は連続的に本発明の腐食抑制構成物に加える。
【0039】
典型的な他の腐食及びスケール抑制剤は、タングステン酸塩;モリブデン酸塩;バナジウム酸塩;リン酸塩;ホスホン酸塩;ホスフィン酸塩;ケイ酸塩;ホウ酸塩;亜鉛及びその塩;ポリカルボン酸塩;安息香酸等;及びこれらの組み合わせ;又は適切な腐食又はスケール抑制剤を有している。典型的な水処理ポリマーは、ポリアクリル酸;ポリマレイン酸;アクリル酸、マレイン酸、アクリルアミド、及びアクリルアミドプロピルスルホン酸塩の共重合体及び三元重合体;プリズムポリマー;スルホン酸塩基のポリマー;及びアクリル酸、アクリルアミド、スルホメチル化アクリルアミドの三元重合体又は共重合体等、及びそれらを組み合わせたものを有している。
【0040】
具体例を意図しており本発明の範囲を限定することを意図していない以下の実施例を参照することによって、上記が良く理解されよう。
【実施例1】
【0041】
亜鉛メッキした軟鋼の試験片を、「スタンダード13」によって調整された水(Ca:440ppm(CaCO);Mg:220ppm(CaCO);M−アルカリ度:340ppm;Cl:312ppm(CaCO);(SO2−:211ppm(CaCO);NaHCO/NaCO緩衝液を用いてpH8.9にpHを制御)への暴露後の重量に基づいて試験した。対照及び試料は、ホスホン酸塩基のスケール抑制プログラムを含んでいた。対照は、さらなる腐食抑制剤を有しなかった。試料1及び2の双方は、約10ppmのビスムチオールを含んでいた。腐食率は、暴露の7日後の試験片の重量に基づいて、表1に示すように1年当たりのミル(「mpy」)で測定された。
【表1】

【実施例2】
【0042】
溶融メッキをした(「HDG」)回転電極(pH7.5にpHを制御)の亜鉛メッキした金属面を用いて10リットルのセルで直線分極電気化学実験を行った。対照及び試料は、100ppmのホスホン酸塩、リン酸塩、及びポリマーベースの多機能性の水処理プログラムを備えた不動態化段階を含んでいた。塩化カルシウム二水和物、硫酸マグネシウム・7水和物、(計算値に基づく)重炭酸ナトリウムを含む以下の合成水化学を使用した:すなわち、Ca2+:150乃至170ppm(as CaCO);Mg2+:75乃至85ppm(as CaCO);M−アルカリ度:85乃至105ppm(as CaCO);Cl:105乃至120ppm(as Cl);及び(SO2−:72乃至82ppm(as (SO2−)。また、対照及び試料は、上記の実施例1のように、不動態化した電極がより過度の腐食環境に曝されている第2の段階を含んでいた。初期の腐食率(0乃至24時間)に続いて、長時間の腐食率(24乃至72時間)をmpyで測定した。表2が初期及び長時間の腐食率を示している。
【表2】

【0043】
本書に記載の現在のところ好適な実施例に対する様々な変更及び改良が当業者に明らかであることに留意されたい。本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、及び所望の利点を弱めずに、このような変更及び改良を行うことができる。このため、このような変更及び改良は添付の特許請求の範囲によってカバーされていることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛メッキした金属面の腐食を抑制する方法であって、当該方法が:
(a)前記亜鉛メッキした金属面に有効量の腐食抑制構成物を導入して前記面にバリアを形成するステップであって、前記構成物が硫化物ベースの白錆腐食抑制化合物を有するステップと;
(b)1又はそれ以上の時間間隔の後に、前記亜鉛メッキした金属面上に有効量の前記構成物を再導入することによって、任意に前記バリアを重ねるステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記硫化物ベースの白錆腐食抑制化合物が:チオール;ビスムチオール;二量体化ビスムチオール;ポリマージチオカルバミン酸塩;キサントゲン酸塩;及びこれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記亜鉛メッキした金属面が、工業用水システムの部分であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
約0.001重量パーセント乃至約100重量パーセントの硫化物ベースの前記白錆腐食抑制化合物を有する前記腐食抑制構成物の溶液を調整するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
有効量の前記構成物を前記亜鉛メッキした金属面に直接的に噴霧又は物理的に塗布するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記腐食抑制構成物を含む溶液の中に前記亜鉛メッキした金属面を浸すステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
発泡剤を前記腐食抑制構成物に混ぜて混合物を形成するステップと、
前記亜鉛メッキした金属面に有効量の前記混合物を噴霧して前記バリアを形成するステップと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
複数の異なる構成物を有しており、
前記1又はそれ以上の時間間隔の後に、前記亜鉛メッキした金属面上に前記異なる構成物のうちの1を導入することによって、ステップ(b)を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも部分的に水を満たし1又はそれ以上の亜鉛メッキした金属面を有する工業用水システムにおいて腐食を抑制する方法であって、当該方法が:
(a)前記工業用水システムの水を約6.5乃至約8.2のpHを有するよう調整するステップと;
(b)前記システムに負荷(load)が掛かっているか又は負荷が掛かっていないときに、前記工業用水システムの水の中に、1又はそれ以上の硫化物ベースの白錆腐食抑制化合物を有する有効量の腐食抑制構成物を導入するステップと;
(c)前記システムに負荷が掛かっていないときに、ある時間間隔の間、前記工業用水システムの水を循環させて、前記硫化物ベースの白錆腐食抑制化合物を前記亜鉛メッキした金属面に接触させ、前記亜鉛メッキした金属面にバリアを形成するステップと;
(d)前記システムに負荷が掛かっているときに、前記時間間隔の間、前記システムを作動させて、前記硫化物ベースの白錆腐食抑制化合物を前記亜鉛メッキした金属面に接触させ、前記亜鉛メッキした金属面に前記バリアを形成するステップと;
(e)
i)前記システムを除荷し、約6.5乃至約8.2に前記システムの水のpHを再調整し、前記システムの水の中に有効量の前記腐食抑制構成物を再導入し、前記システムの水を再循環させることによって、又は
ii)前記システムに掛かる負荷を保持し、約6.5乃至約8.2に前記システムの水のpHを再調整し、前記システムの水の中に有効量の前記腐食抑制構成物を再導入することによって、
任意に前記バリアを重ねるステップと;
(f)1又はそれ以上の追加の時間間隔の間、前記工業用水システムを作動させて、前記1又はそれ以上の追加の時間間隔の後にステップ(e)を任意に繰り返すステップと;
を具えていることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記工業用水システムが、冷却水循環システムを有していることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記工業用水システムの水のpHを約6.8乃至約7.8となるよう調整するステップを有していることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記腐食抑制構成物が、1又はそれ以上のポリアルコキシ化合物を有していることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記工業用水システムの水に、1又はそれ以上のポリアルコキシ化合物を含む別の構成物を前記腐食抑制構成物と同時に又は連続的に加えるステップを有していることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記腐食抑制構成物が、約1ppm乃至約10,000ppmの前記硫化物ベースの白錆腐食抑制化合物を有していることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記腐食抑制構成物が:他の腐食抑制剤、スケール(水垢)抑制剤、蛍光トレーサー、及び水処理ポリマーから成る群から選択される1又はそれ以上の化合物を有していることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項16】
1又はそれ以上の蛍光トレーサー化合物の有無に拘わらず1又はそれ以上の腐食又はスケール抑制化合物を有する1又はそれ以上の他の腐食又はスケール抑制構成物を、前記腐食抑制構成物と同時に又は連続的に加えるステップを有することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記腐食抑制構成物が:リン酸塩;ホスホン酸塩;ホスフィン酸塩;ケイ酸塩;モリブデン酸塩;タングステン酸塩;ホウ酸塩;亜鉛及びその塩;バナジウム酸塩;クロム酸塩;ポリカルボン酸塩;及びこれらの組み合わせから成る群から選択される1又はそれ以上の他の腐食抑制剤を有していることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項18】
1又はそれ以上の水処理ポリマーを前記腐食抑制構成物と同時に又は連続的に加えるステップを有しており、
前記ポリマーが:ポリアクリル酸;ポリマレイン酸;アクリル酸、マレイン酸、アクリルアミド、及びアクリルアミドプロピルスルホン酸塩の共重合体及び三元重合体;プリズムポリマー;スルホン酸塩基のポリマー;及びアクリル酸、アクリルアミド、及びスルホメチル化アクリルアミドの三元重合体又は共重合体から成る群から選択されることをことを特徴とする請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2010−513724(P2010−513724A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543098(P2009−543098)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/087531
【国際公開番号】WO2008/079734
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】