説明

交信処理装置および交信処理装置における距離計測方法

【課題】RFIDタグまでの距離を計測する方法として、実際の交信処理の設定に対応可能な計測を実現する。
【解決手段】交信処理装置1に、高周波信号発振器11Bと中間周波発振器11Aとを組み込み、これらの発振器11A,11Bを用いて中間周波信号が重畳された搬送波を生成し、アンテナ10から送出する。またミキサ16i,16qにより、アンテナ10が受信した信号中の中間周波信号からI信号のQ信号とを分離して抽出する。位相差検出部112は、タグ2からの反射波の受信が開始された後のI信号およびQ信号を用いて、搬送波中の中間周波信号に対する反射波中の中間周波信号の位相差を検出する。距離算出部113は、位相差と中間周波信号の波長とを用いてアンテナ10からタグ2までの距離を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続搬送波を用いてRFIDタグとの交信を行う交信処理装置に関するもので、特に、交信処理装置からのコマンドに応答したRFIDタグ(以下、単に「タグ」という場合もある。)と交信処理装置との間の距離を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID方式の交信処理装置では、交信処理装置において、一定の周波数による搬送波を連続的に送出しながらこの搬送波を変調することによりタグへのコマンドを送信する処理と、無変調の搬送波(Continuous Wave;略してCWと呼ばれる。)を送出してタグからの応答を受け付ける処理とを交互に実施する。コマンドを受信したタグでは自回路のインピーダンスを変化させることによりコマンドに応答する。このタグの応答動作により、無変調搬送波にコマンドへの応答信号が重畳された信号(反射波)が交信処理装置に返送され、応答信号が復号される。
【0003】
生産現場や物流現場などでのRFIDシステムでは、あらかじめ定めた交信距離の範囲でタグとの交信を行う必要があるが、使用される電波の波長によっては、必要とする距離を上回る場所にまで電波が届くことがある。また現場の床や壁などに電波が反射して遠くのタグにまで導かれることもある。この結果、交信の必要がない場所に存在するタグがコマンドに応答して、情報処理に問題が生じるおそれがある。その具体例を図4に示す。
【0004】
図4の例は、並列する経路B1,B2の横手に、それぞれ交信処理装置のアンテナA1,A2を配置して、これらのアンテナA1,A2により経路B1,B2を走行する車両Cに取り付けられたタグTから情報を読み取るものである。図示例の場合には、車両Cが位置する経路B1に対応するアンテナA1のみがタグTと交信できるようにする必要があるが、隣の経路B2のアンテナA2からの電波もタグTに届いて、アンテナA2からのコマンドにタグTが応答し、誤った情報の読み書きが実施されるおそれがある。
【0005】
上記の問題点を解決するための方法として、アンテナからタグまでの距離を計測し、計測された距離が交信距離の範囲に含まれるか否かを判別する方法がある。またアンテナからタグまでの距離を計測する方法として、アンテナから送出される搬送波に対するタグからの反射波の位相のずれを利用した計測方法が提案されている。
【0006】
たとえば、特許文献1には、周波数が異なる2通りの搬送波を順に送出して、周波数毎にタグからの反射波の位相の変化量を検出し、各変化量の差を利用した演算によりタグとの距離を算出することが記載されている。
【0007】
また特許文献2には、定められた経路(線路)を通過する移動体(列車)に取り付けられたタグに対して2つのアンテナを用いた交信を行い、各アンテナがタグから受信した応答信号間の位相差を求め、この位相差と応答信号の波長とを用いて距離ΔLを求めることが記載されている。また、特許文献2には、この距離ΔLが一方のアンテナからタグまでの距離L1と他方のアンテナからタグまでの距離L2との差に相当することを利用して、各アンテナからの距離の差がΔLになる点が構成する双曲線を設定して、この双曲線とタグリーダからタグの移動経路までの距離とを用いて、タグの位置を特定することが記載されている(特許文献1の段落0057〜0061、図4を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4265686号公報
【特許文献2】特開2011−37371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1,2に記載された発明より簡単な方法として、アンテナから送信される搬送波に対するタグからの反射波の位相のずれ量を検出し、検出されたずれ量と搬送波の波長とを用いてタグまでの距離を計測する方法が考えられる。しかし、この方法では、アンテナから送出された電波が往復で一周期以内の長さとなる経路を経てアンテナに戻ることが前提となる。すなわちこの方法により計測できる距離は搬送波の半周期分の長さまでとなる。
しかしながら、波長の短い搬送波が使用されるケースでこのような条件が満たされるとは考えにくく、実用化は困難である。
【0010】
たとえば、UHF帯域にある1GHzの電波を利用する場合には、搬送波の波長は約30cm程度となるが、この種の電波はアンテナから10メートル程度離れた場所に到達しても、タグを反応させることができる強度を有する。またこの特性を生かして、一般に、数メートル単位の交信距離が設定される。このような仕様に対しては、30cm程度の波長の信号の位相差を用いた距離計測は全く用をなさない。
【0011】
本発明は、上記の問題に着目し、タグからの反射波を受け付ける期間中に中間周波数が重畳された搬送波を送出し、この中間周波数の位相のずれを利用した距離計測を行うことによって、実際の交信処理の設定に対応可能な計測を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による交信処理装置は、アンテナから送出される搬送波を変調することによってRFIDタグに対するコマンドを送信するコマンド送信処理と、コマンドの送信に応じてアンテナから無変調の搬送波(CW)を送出しながらこの無変調搬送波に対するRFIDタグからの反射波を受信する受信処理と、受信した反射波からRFIDタグからの応答信号を復号する復号処理とを実行するものである。この交信処理装置は、アンテナから送出される搬送波に中間周波信号を重畳させる搬送波処理手段と、受信処理において反射波の受信が開始されたことに応じて当該反射波から中間周波信号を抽出すると共に、この抽出に対応するタイミングで送出される搬送波中の中間周波信号に対する前記抽出された中間周波信号の位相差を検出する位相差検出手段と、位相差検出手段により検出された位相差と中間周波信号の波長とを用いて反射波を返したRFIDタグまでの距離を測定する距離測定手段とを具備する。
【0013】
上記の構成によれば、コマンドに対するタグからの応答を受け付けるための無変調搬送波に中間周波信号を重畳し、この中間周波信号に生じる位相差を利用してタグまでの距離を計測するので、RFIDを利用する一般的なアプリケーションに対応可能な距離を計測することが可能になる。たとえば、中間周波信号として15MHzの周波数の信号を使用すると、その波長は約20mとなるので、その半分の10mまでの距離を計測することができる。
【0014】
上記交信処理装置における一実施形態では、位相差検出手段は、復号処理により応答情報中のプリアンブルが検出されたことに応じて中間周波信号の抽出および位相差の検出を実行する。応答信号中のプリアンブルは、「1」および「0」のビット信号が一定のパターンで配列された構成を有するから、このパターンを検出することによって反射波の受信が開始されたことを容易に判別して、中間周波信号の抽出や位相差の検出を行うことができる。また床や壁などで反射して交信処理装置に戻ったノイズ反射波がタグからの反射波として誤認識されるのを防ぐことができる。
【0015】
他の実施形態による交信処理装置は、距離計測手段により計測された距離に基づき反射波を返したRFIDタグが交信対象として適切であるか否かを判別する判別手段を、さらに具備する。このようにすれば、定められた距離の範囲内にあるタグからの応答信号のみを採用することが容易になり、誤った情報処理が実施されるのを防ぐことができる。
【0016】
本発明の交信処理装置の好ましい形態は、RFIDタグに対する情報の読み出しおよび書き込みを行うRFIDリーダライタであるが、これに限らず、情報の読み出しのみを行うRFIDリーダとして構成してもよい。
【0017】
本発明による距離計測方法は、アンテナから送出される搬送波を変調することによってRFIDタグに対するコマンドを送信するコマンド送信処理と、コマンドの送信に応じてアンテナから無変調の搬送波を送出しながらこの無変調搬送波に対するRFIDタグからの反射波を受信する受信処理と、受信した反射波に含まれるRFIDタグからの応答信号を復号する復号処理とを実行する交信処理装置において実施される。この方法では、アンテナから送出される搬送波に中間周波信号を重畳し、受信処理において反射波の受信が開始されたことに応じて当該反射波から中間周波信号を抽出すると共に、この抽出に対応するタイミングで送出される搬送波中の中間周波信号に対する前記抽出された中間周波信号の位相差を検出する。そして検出された位相差と中間周波数の波長とを用いて反射波を返したRFIDタグまでの距離を計測する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コマンドに対するRFIDタグからの応答を受け付けるためにアンテナから送出する無変調搬送波に中間周波信号を重畳し、RFIDタグからの反射波に含まれる中間周波信号と送信中の搬送波に含まれる中間周波信号との位相差とを用いてタグまでの距離を計測するので、設定され得る交信距離に対応する長さの距離を計測することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明が適用されるリーダライタの構成を示すブロック図である。
【図2】交信処理の流れを示すタイムチャートである。
【図3】交信処理装置の制御部における処理手順を示すフローチャートである。
【図4】誤った交信処理の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明が適用された交信処理装置の一例であるリーダライタの構成を示す。
この実施例のリーダライタ1は、UHF帯域の電波を用いてパッシブタイプまたはセミパッシブタイプのRFIDタグ2と交信をして、このタグ2から情報を読み出したり、タグ2に情報を書き込む処理を実施するもので、アンテナ10を含む送受信回路100と、この送受信回路の動作を制御する制御部110とを具備する。なお、使用する電波はUHF帯域に限らず、他の帯域の電波を使用してもよい。
【0021】
送受信回路100には、アンテナ10のほか、サーキュレータ101、90度位相器102、2種類の発振器11A,11B、送信処理用のミキサ12A,12B、受信処理用のミキサ13A,13B,16i,16q、分配器14,15、アンプ18、A/D変換器17i,17q,19などが含まれる。制御部110の実体はプログラムロジック回路(FPGA)であって、送信制御部111、位相差検出部112、距離算出部113、復号処理部114、出力処理部115の各機能が設けられる。
【0022】
また図1には示していないが、このリーダライタ1には、図示しない上位機器に対するインタフェース回路が設けられる。制御部110は、上位機器から送信される指示に基づいてタグ2との交信処理を実施し、その処理結果を上位機器に送信する。
【0023】
第1の発振器11Aからは、約15MHzの中間周波信号(以下「IF信号」という。)が出力される。第2の発振器11Bからは、約1GHzの高周波信号(以下「RF信号」という。)が出力される。IF信号は送信側のミキサ12Aに供給されるほか、分配器14を介して受信側のミキサ13Aおよび90度位相器102に供給される。RF信号は送信側のミキサ12Bと受信側のミキサ13Bとに供給される。
【0024】
ミキサ12Aは、送信制御部111から出力されるデータ信号と上記のIF信号とを入力して両信号を混合し、ミキサ12Bは、ミキサ13Aからの混合信号とRF信号とを入力して両信号を混合する。この2段階の混合処理により、RF信号による搬送波信号にIF信号が重畳され、データ信号による変調が生じた搬送波信号が生成される。生成された信号は、ミキサ12Bからサーキュレータ101を介してアンテナ10に導かれ、電磁波として送出される。
【0025】
送信制御部111は、コマンドを構成するデータ信号を出力した後は、連続波を送信する。搬送波に実質的な変調が生じるのはコマンドが送信される期間である。データ信号が連続波になると、RF信号にIF信号が重畳された信号が無変調搬送波CW(以下「無変調波」という。)として送出される。この無変調波が送出される期間にタグ2がコマンドに対する応答動作を行うと、その動作による反射波がアンテナ10に到着する。
【0026】
アンテナ10がタグ2から受信した反射波は、サーキュレータ101を介してミキサ13Bへと導かれる。ミキサ13Bでは、RF信号との混合処理により受信信号からRF成分を取り除き、タグ2からの応答信号が重畳されたIF信号を出力する。この応答信号を含むIF信号(以下「受信IF信号」という。)は、分配器15によりミキサ13A,16i,16qに分配される。
【0027】
ミキサ13Aでは、受信IF信号を発振器11AからのIF信号(以下「基準IF信号」という。)と混合することによって、応答信号を復調する。復調された応答信号はアンプ18で増幅された後にA/D変換器19によりディジタル変換される。ディジタル変換後の応答信号は制御部110の復号処理部114に入力され、応答内容を示す情報(応答情報)が復号される。
【0028】
ミキサ16iは、発振器12Aからの基準IF信号と受信IF信号とを混合することにより、受信IF信号に含まれるI信号を抽出する。ミキサ16qは、90度位相変換器102により位相が90度ずらされた基準IF信号と受信IF信号とを混合することにより、受信IF信号に含まれるQ信号を抽出する。I信号およびQ信号は、それぞれA/D変換回路17i,17qによりディジタル変換された後に、位相差検出部112に入力される。
【0029】
位相差検出部112では、復号処理部114が応答情報の復号を開始したか否かをチェックし、復号が開始された後の任意のタイミングでのI信号I(t)およびQ信号Q(t)を用いて以下の<式1>の演算を実施することにより、基準IF信号に対する受信IF信号の位相差を示す角度φを算出する。距離算出部113は、位相差検出部112が求めた位相差φとIF信号の周波数λとを用いて<式2>の演算を実施することにより、アンテナ10からタグ2までの距離Rを算出する。
【0030】
<式1> φ=tan−1(Q(t)/I(t))
<式2> R=(φ/2π)*λ/2
【0031】
出力処理部115は、距離算出部113により算出された距離Rをあらかじめ上位機器から送信された基準の距離と比較し、基準の距離以内の距離が算出されたタグからの応答信号を上位機器に送信する。距離算出部113により算出された距離が基準の距離を上回った場合には、復号処理部114は、交信中のタグは交信対象として適切ではないと判別して、復号処理を中止する。
【0032】
以下、アンテナ10からタグ2までの距離を計測する方法を中心に、リーダライタ1において実施される交信処理を詳細に説明する。
【0033】
まず図2は、上記のリーダライタ1とタグ2との間で実施される交信処理の流れを、時間軸に沿って示したものである。この実施例では、EPCglobal C1 Gen2仕様に基づき、リーダライタ1において、コマンドが重畳された搬送波を送出する期間と無変調波(CW)を送出しながらタグ2からの応答を受け付ける期間とを交互に実施する。タグ2までの距離を計測するための処理も無変調波の送出期間中に実施される。
【0034】
図2を参照して、交信処理の具体的な流れを説明する。まずリーダライタ1は、交信可能な範囲に含まれる全てのタグ2を対象に、検出用のコマンド(クエリーコマンド)を送信する(図2の(a))。このコマンドを受信したタグ2では乱数を生成し、この乱数をリーダライタ1に送信する(図2の(b))。乱数を受信したリーダライタ1は、その受信数により交信可能なタグの数を認識し、以下、受信した乱数により交信相手を特定して情報の読み出しを求めるコマンド(Ackコマンド)を送信する処理と、当該コマンドに対するタグからの応答信号を受け付ける処理とを、タグ毎に順に実行する(図2の(c)(d))。
【0035】
さらに上記のAckコマンドに対する応答信号の受信が開始されると、上述したIF信号の位相差を検出する処理および距離Rの計測処理が実施される(図2の(e))。なお、応答信号の受信が開始されたことは、復号処理部114により応答信号の先頭のプリアンブルが検出されたことによって判別することができる。
【0036】
図3は、図2に示した処理を実現するためにリーダライタ1の制御部110において実施される一連の処理の流れを示す。
まずステップS1では、クエリーコマンドの送信およびタグ2からの応答を受信して復号する処理を実施して、交信が可能なタグ2を検出する。
【0037】
この後は、検出されたタグ2毎にステップS2以下の処理を実行する。
まず、ステップS2ではAckコマンドを送信し、つぎのステップS3ではIF信号が重畳された無変調波の送信および復号処理を開始する。この後は、復号処理において応答信号のプリアンブルの復号が開始されるまで待機する(ステップS4)。
【0038】
プリアンブルの復号が開始されると(ステップS4が「YES」)、プリアンブルが続く間に入力されるI信号およびQ信号を用いて、基準IF信号に対する受信IF信号の位相差φを検出する(ステップS5)。さらに検出された位相差φおよびIF信号の周波数λを用いてアンテナ10からタグ2までの距離Rを算出する(ステップS6)。
【0039】
つぎに算出された距離Rを基準の距離R0と比較する。R≦R0であれば(ステップS7が「YES」)、引き続き復号処理を続けて全ての応答信号を復号する(ステップS8)。さらに、復号された応答信号を距離Rと共に上位機器に送信する(ステップS9)。一方、R>R0となった場合(ステップS8が「NO」)には、ステップS10に進み、復号処理を中止する。
【0040】
以下、同様の処理を実施することにより、距離Rが基準の距離R0以内となったタグからの応答信号のみが復号され、距離Rと共に上位機器に送信される。全てのタグに対する処理が終了したことをもってステップS11が「YES」となると、処理を終了する。
【0041】
上記のリーダライタ1で使用されるIF信号の周波数(15MHz)によれば、その波長は約20mとなるから、アンテナ10から10m以内の距離にあるタグ2に対する距離計測を行うことが可能になる。よって、タグを反応させることができる強度の電波が届く最大の距離が約10mになると想定される場合には、その条件に対応する範囲の距離を計測することが可能になる。
【0042】
また、このリーダライタ1では、タグ2からの応答信号を復号する処理を行いながら距離Rを計測するので、通常の交信処理のサイクルの中で距離の計測を完了すると共に、タグ2の情報を取得することができる。したがって、移動するタグ2との交信においても支障が生じるおそれがない。また、距離Rが基準の距離R0を上回るタグ2に対しては応答信号の復号を中止するので、効率良く処理を進めることができ、上位機器に不要な情報が送信されるのを防ぐことができる。また、復号された応答信号と共に距離Rの算出結果を上位機器に送信するので、上位機器では、タグ2の情報を識別すると共にこのタグ2とアンテナ10との距離を認識することが可能になる。
【0043】
ただし、タグ2からの応答信号をリーダライタ1で選別することは必須ではない。すなわち距離Rの値に関わらず、交信対象の全てのタグ2からの応答信号を復号し、各応答信号を距離Rと共に上位機器に送信してもよい。または、距離Rと基準の距離R0との比較処理までを実施し、各タグからの応答信号に距離の比較結果を示すデータを紐付けたものを上位機器に送信してもよい。このようにすれば、上位機器において応答信号を容易に選別することができる。
【0044】
タグ2に情報の書き込みを行う場合にも、タグ2からの情報の読み取りが終了してから書き込みコマンドを送信するので、交信対象を特定した最初のコマンドに対するタグ2からの応答を受信したときに、基準の距離R0を上回る場所にあると判別したタグ2に対する処理を中止すれば、当該タグ2に誤った情報が書き込まれるのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 交信処理装置(リーダライタ)
2 RFIDタグ
11A,11B 発振器
12A,12B,13A,13B ミキサ
16 加算器
100 送受信回路
110 制御部
112 位相差検出部
113 距離算出部
114 復号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナから送出される搬送波を変調することによってRFIDタグに対するコマンドを送信するコマンド送信処理と、前記コマンドの送信に応じてアンテナから無変調の搬送波を送出しながらこの無変調搬送波に対するRFIDタグからの反射波を受信する受信処理と、受信した反射波からRFIDタグからの応答信号を復号する復号処理とを実行する装置であって、
前記アンテナから送出される搬送波に中間周波信号を重畳させる搬送波処理手段と、
前記受信処理において反射波の受信が開始されたことに応じて当該反射波から中間周波信号を抽出すると共に、この抽出に対応するタイミングで送出される搬送波中の中間周波信号に対する前記抽出された中間周波信号の位相差を検出する位相差検出手段と、
位相差検出手段により検出された位相差と前記中間周波信号の波長とを用いて前記反射波を返したRFIDタグまでの距離を計測する距離計測手段とを具備する、交信処理装置。
【請求項2】
前記位相差検出手段は、前記復号処理により応答信号中のプリアンブルが検出されたことに応じて中間周波信号の抽出および位相差の検出を実行する請求項1に記載された交信処理装置。
【請求項3】
前記距離計測手段により計測された距離に基づき前記反射波を返したRFIDタグが交信対象として適切であるか否かを判別する判別手段を、さらに具備する請求項1に記載された交信処理装置。
【請求項4】
アンテナから送出される搬送波を変調することによってRFIDタグに対するコマンドを送信するコマンド送信処理と、前記コマンドの送信に応じて前記アンテナから無変調の搬送波を送出しながらこの無変調搬送波に対するRFIDタグからの反射波を受信する受信処理と、受信した反射波に含まれるRFIDタグからの応答信号を復号する復号処理とを実行する交信処理装置において実施される方法であって、
前記アンテナから送出される搬送波に中間周波信号を重畳し、前記受信処理において反射波の受信が開始されたことに応じて当該反射波から中間周波信号を抽出すると共に、この抽出に対応するタイミングで送出される搬送波中の中間周波信号に対する前記抽出された中間周波信号の位相差を検出し、検出された位相差と前記中間周波数の波長とを用いて前記反射波を返したRFIDタグまでの距離を計測する、
ことを特徴とする交信処理装置における距離計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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