説明

交流結合用コンデンサ及び交流結合用コンデンサの製造方法

【課題】高速伝送に良好に用いることができる交流結合用コンデンサを提供することである。
【解決手段】本発明の交流結合用コンデンサ1は、高速伝送に用いる交流結合用コンデンサである。同一配線層7内に、信号成分に含まれる第1直流電圧が供給される第1配線4と、信号成分に含まれる第2直流電圧が供給される第2配線5とを、近接して配置しており、第1配線4と第2配線5との間の基板6を誘電体とする。特に、本発明の交流結合用コンデンサ1は、10Gbps以上の高速伝送に用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は交流結合用コンデンサ及び交流結合用コンデンサの製造方法に関し、特に高速伝送に用いる交流結合用コンデンサ及び交流結合用コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータやその周辺装置の性能向上に伴い、装置内部の信号伝送の周波数は年々上昇している。例えば、10Gbpsから数10Gbpsクラスの伝送速度が要求されるアプリケーションも出てきている。
【0003】
そのような高速伝送では直流成分をカットし、信号成分の高周波信号のみを通過させる交流結合(AC結合)が一般的に行われている。
交流結合には、配線上に直列にコンデンサを挿入することで実現する。しかし、一般的なセラミックコンデンサ等はコンデンサ自身が持つリード線や電極パタンによるインダクタ成分により所望の特性が得られなくなっている。
【0004】
具体的にいうと、コンデンサの周波数特性は理想的には、図6に示すように周波数が上昇するほどインピーダンスが小さくなる。しかし、実際にはコンデンサのインダクタ成分により、ある周波数以上になると図7に示すようにインピーダンスが増加していく。この周波数は、一般的なコンデンサでは数100MHzから数GHz程度である。このようなコンデンサを数10Gbpsクラスの高速伝送の交流結合用として、配線上に直列に挿入すると、信号成分が減衰し、信号伝送が困難となる課題があった。また、周波数特性の優れた特殊なコンデンサは数100円と高価である。さらに、コンデンサを基板表面上に実装するためには、配線を表面層に出す必要があり、ビアホールやスルーホールのインピーダンスミスマッチにより信号伝送へ影響を受ける。
【0005】
セラミックコンデンサ等を用いることなく、コンデンサを形成する技術としては、以下の関連技術がある。
特許文献1の関連技術は、上下に隣接する信号層(配線層)間の配線に設けられたパッドと、当該パット間の強誘電体層とでコンデンサを形成している。
特許文献2の関連技術は、同一配線層内に、信号成分に含まれる第1直流電圧が供給される第1配線と、信号成分に含まれる第2直流電圧が供給される第2配線とを、近接して配置し、第1配線と第2配線との間の基板を誘電体としてコンデンサを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−323801号公報
【特許文献2】特開2002−100732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の関連技術は、上下に隣接する配線層を用いてコンデンサを形成している。すなわち、コンデンサを形成するために、複数の配線層を必要とする。また、特許文献1の関連技術は、高速伝送に用いる交流結合用コンデンサではない。つまり、特許文献1の関連技術は、セラミックコンデンサ等を高速伝送に用いる交流結合用コンデンサとした際に、上述したように高周波領域において当該コンデンサが機能しなくなる課題に注目していない。
【0008】
特許文献2の関連技術も、高速伝送に用いる交流結合用コンデンサではない。つまり、特許文献2の関連技術も、セラミックコンデンサ等を高速伝送に用いる交流結合用コンデンサとした際に、上述したように高周波領域において当該コンデンサが機能しなくなる課題に注目していない。
【0009】
本発明の目的は、上述した課題を解決する交流結合用コンデンサ及び交流結合用コンデンサの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の交流結合用コンデンサは、高速伝送に用いる交流結合用コンデンサであって、同一配線層内に、信号成分に含まれる第1直流電圧が供給される第1配線と、信号成分に含まれる第2直流電圧が供給される第2配線とを、近接して配置しており、前記第1配線と前記第2配線との間の基板を誘電体とする。
【0011】
本発明の交流結合用コンデンサの製造方法は、高速伝送に用いる交流結合用コンデンサの製造方法であって、同一配線層内に、信号成分に含まれる第1直流電圧が供給される第1配線と、信号成分に含まれる第2直流電圧が供給される第2配線とを、近接して配置し、前記第1配線と前記第2配線との間の基板を誘電体とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高速伝送に良好に用いることができる交流結合用コンデンサ及び交流結合用コンデンサの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1の交流結合用コンデンサの使用形態を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1の交流結合用コンデンサを概略的に示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1の交流結合用コンデンサを拡大して示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1の交流結合用コンデンサにおいて、コンデンサとして機能する部分を概略的に示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態2の交流結合用コンデンサを概略的に示す平面図である。
【図6】セラミックコンデンサ等の理想的な周波数特性を示す図である。
【図7】セラミックコンデンサ等の現実的な周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る交流結合用コンデンサ及び交流結合用コンデンサの製造方法の実施の形態について説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0015】
<実施の形態1>
本発明の実施の形態1を説明する。
本実施の形態の交流結合用コンデンサ1は、図1に示すように、例えば、送信回路2と受信回路3との間に、第1配線4と第2配線5とを介して直列に挿入される。この交流結合用コンデンサ1は、高速伝送に用いる交流結合用コンデンサであり、直流信号をカットし交流信号を通過するために用いられる。
【0016】
交流結合用コンデンサ1及び交流結合用コンデンサ1の製造方法は、図2及び3に示すように、プリント配線基板6上の同一配線層7内に、第1配線4と、第2配線5とを所定の長さ近接して配置した。第1配線4には、送信回路2から出力される第1直流電圧と第1交流電圧とが供給される。第2配線5には、受信回路3から入力端子に設定された第2直流電圧と、交流結合用コンデンサ1を介して送信回路2から与えられる第2交流電圧と、が供給される。
【0017】
第1配線4と第2配線5とが近接する間の部分におけるプリント配線基板6を誘電体とした。その結果、図4に示すように、第1配線4と第2配線5とを近接して配置した部分は、交流結合用コンデンサとして機能させることができる。すなわち、高速伝送に用いる交流結合用コンデンサとして、セラミックコンデンサ等を用いないので、高周波領域においても良好にコンデンサとして機能させることができる。特に、当該交流結合用コンデンサ1を、10Gbps以上の高速伝送が要求されるアプリケーションに用いても良好にコンデンサとして機能させることができる。一方、交流結合用コンデンサ1は、低周波領域においてはイコライズ効果を発揮する。
【0018】
しかも、交流結合用コンデンサ1は、セラミックコンデンサ等を基板表面上に実装する必要がないため、セラミックコンデンサ等と配線層とを接続するビヤホールやスルーホールを省略することができる。そのため、ビヤホールやスルーホールのインピーダンスミスマッチによる信号伝送への影響を軽減することができる。
【0019】
しかも、第1配線4と第2配線5とを同一配線層内に配置したので、交流結合用コンデンサを最小限の基板層数で実現することができる。さらに交流結合用コンデンサを小さなスペースで、少ない部品点数で実現することができる。そのため、交流結合用コンデンサを小型化することができる。
【0020】
ここで、交流結合用コンデンサ1のコンデンサ容量(C)は、以下の式の通り、プリント配線基板6の比誘電率(E)、対向面積(S=L×t)、第1配線4と第2配線5との間隔(d)によって決まる。
C=E×E×(S/d)
但し、E:真空の誘電率(8.85E−12F/m)、L:第1配線4と第2配線5とが相互に隣接する長さ、t:第1配線4及び第2配線5の膜厚
【0021】
そこで、交流結合用コンデンサ1のコンデンサ容量Cを大きくするために、第1配線4と第2配線5とが相互に隣接する長さLを長くすることが好ましい。しかし、第1配線4と第2配線5とを単に並列に配置しただけでは、交流結合用コンデンサ1を形成するために、広いスペースを必要とする。
【0022】
そのため、本実施の形態では、第1配線4の端部を平面視略L字形状としている。つまり、第1配線4における第2配線5の端部と近接させる部分4aの中心線T1は、当該近接させる部分4aの直前部分4bの中心線T2に対して略平行で、且つ重ならないように、図2の紙面上では上方にずれて配置している。第1配線4における第2配線5の端部と近接させる部分4aは、少なくても長さLを有する。
【0023】
また、第2配線5の端部も平面視略L字形状としている。つまり、第2配線5における第1配線4の端部と近接させる部分5aの中心線T3は、当該近接させる部分5aの直前部分5bの中心線T4に対して略平行で、且つ重ならないように、図2の紙面上では下方にずれて配置している。第2配線5における第1配線4の端部と近接させる部分5aは、少なくとも長さLを有する。
【0024】
第1配線4の端部と第2配線5の端部とは、相互を噛み合わせるように配置して所定の長さ近接させている。つまり、第1配線4の端部を略L字形状とすることによって形成された空隙部分4cに、第2配線5における第1配線4と近接させる部分5aが配置されている。このとき、第2配線5における第1配線4と近接させる部分5aは、第1配線4における第2配線5と近接させる部分4aと所定の間隔dを開けて平行で、且つ長さL近接している。
【0025】
第2配線5の端部を略L字形状とすることによって形成された空隙部分5cに、第1配線4における第2配線5と近接させる部分4aが配置されている。このとき、第1配線4における第2配線5と近接させる部分4aは、第2配線5における第1配線4と近接させる部分5aと所定の間隔dを開けて平行で、且つ長さL近接している。
【0026】
そのため、第1配線4における第2配線5と近接させる部分の直前部分4bと、第2配線5における第1配線4と近接させる部分の直前部分5bとを、当該間隔d分ずらせて配置する必要がない。よって、少ないスペースで交流結合用コンデンサ1を形成することができる。
【0027】
ちなみに、各種パラメータE、d、L、tは、コンデンサ容量Cやプリント配線基板の設計条件などによって、適宜変更させる。例えば、微細配線が可能なビルドアップ基板(比誘電率:Er=3.5)を想定した場合、第1配線4と第2配線5とが相互に隣接する長さLを30mm、第1配線4及び第2配線5の膜厚tを20μm、第1配線4と第2配線5との間隔dを10μmとした場合のコンデンサ容量は、1.9pF程度となる。この場合、信号伝送が40Gbpsでは、インピーダンスが4Ω程度となる。低い周波数成分はインピーダンスが高くなるが、これはイコライズの効果を発揮する。
【0028】
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2を説明する。
本実施の形態2の交流結合用コンデンサ100は、上記実施の形態1の交流結合用コンデンサ1と略同様の構成とされているが、第1配線4及び第2配線5の端部の形状のみが異なる。そのため、重複する説明は省略する。
【0029】
すなわち、交流結合用コンデンサ100は、図5に示すように、第1配線4の端部に矩形状の凹み部4dを形成している。当該凹み部4dは、第1配線4と第2配線5とを近接させる長さLよりも若干深い。第2配線5の端部は、第1配線4の凹み部4d内に嵌め込まれている部分の幅寸法が縮小されており、当該凹み部4dより小さな矩形状の凸部5dとされている。第2配線5の凸部5dが第1配線4の凹み部4d内に嵌め込んだ配置とすることで、第2配線5の凸部5dと第1配線4の凹み部4dとの間に所定の間隔dが形成され、且つ第1配線4と第2配線5とが所定の長さL近接する。このような形態とすることで、より小さなスペースで交流結合用コンデンサを形成することができる。
【0030】
本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、図2において第1配線4を上側に、第2配線5を下側に配置しているが、逆の配置でも同様に実施できる。また、上記実施の形態では、第1配線4の端部に凹み部4dを形成し、当該凹み部4dに第2配線5の端部を嵌め込んだ配置としているが、逆の配置でも良い。また、当該嵌合形状は一つに限らず、複数個あっても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 交流結合用コンデンサ
2 送信回路
3 受信回路
4 第1配線
4a 第2配線と近接する部分
4b 第2配線と近接する部分の直前部分
4c 略L字形状とすることによって形成された空隙部分
4d 凹み部
5 第2配線
5a 第1配線と近接する部分
5b 第1配線と近接する部分の直前部分
5c 略L字形状とすることによって形成された空隙部分
5d 凸部
6 プリント配線基板
7 同一配線層
100 交流結合用コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速伝送に用いる交流結合用コンデンサであって、
同一配線層内に、信号成分に含まれる第1直流電圧が供給される第1配線と、信号成分に含まれる第2直流電圧が供給される第2配線とを、近接して配置しており、前記第1配線と前記第2配線との間の基板を誘電体とする交流結合用コンデンサ。
【請求項2】
10Gbps以上の高速伝送に用いることを特徴とする請求項1に記載の交流結合用コンデンサ。
【請求項3】
前記第1配線の端部と前記第2配線の端部とを所定の長さ近接させることを特徴とする請求項1に記載の交流結合用コンデンサ。
【請求項4】
前記第1配線の端部は略L字形状とし、前記第2配線の端部は略L字形状とし、
前記第1配線の端部と、前記第2配線の端部とは、相互を噛み合わせるように配置して所定の長さ近接させることを特徴とする請求項1又は3に記載の交流結合用コンデンサ。
【請求項5】
前記第1配線又は前記第2配線の一方の端部に凹み部を形成し、前記凹み部に他方の端部を嵌め込むように配置して相互を所定の長さ近接させることを特徴とする請求項1又は3に記載の交流結合用コンデンサ。
【請求項6】
高速伝送に用いる交流結合用コンデンサの製造方法であって、
同一配線層内に、信号成分に含まれる第1直流電圧が供給される第1配線と、信号成分に含まれる第2直流電圧が供給される第2配線とを、近接して配置し、前記第1配線と前記第2配線との間の基板を誘電体とする交流結合用コンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−182856(P2010−182856A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24689(P2009−24689)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】