説明

交番電磁界における溶接により得られるプラスチック複合成形体

本発明は、溶接接合が、凝集した一次粒子からなるナノスケールの磁性酸化物粒子を含有するプラスチック材料を用いて行われ、その際、一次粒子は、非磁性金属酸化物マトリックスまたはメタロイド酸化物マトリックス中の2〜100nmの直径を有する磁性金属酸化物ドメインから構成されている、交番電磁界における溶接により得られるプラスチック複合成形体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交番電磁界における溶接により得られ、溶接接合が、ナノスケールの磁性酸化物粒子を含有するプラスチック材料により行われている、プラスチック複合成形体に関する。
【0002】
プラスチック成形部材は、種々のプラスチック溶接法により結合することができる。慣用の方法は、加熱素子による溶接、加熱コイルによる溶接、超音波溶接、振動溶接、レーザービーム溶接、回転の摩擦による溶接及び高周波溶接である。
【0003】
交番電磁界またはマイクロ波を使用した接合法が使用されることはまれであり、依然として特殊な方法とみなされている。
【0004】
レーザー光線溶接の場合、少なくとも放射線源の方に向いた成形部材は、レーザー光線に対して透過性でなくてはならず、このことによって問題となるプラスチック材料の着色および色の調整に関する選択は限定さている。
【0005】
これに対して交番電磁界における溶接の場合、着色剤に関する制限は生じない。
【0006】
電磁線を用いた溶接(誘導溶接)のために、通常はそのままで、または相応する含有物質に基づいて磁気により活性化可能な溶接助剤が必要である。交番電磁界におけるヒステリシス損失および/または乱流損失により、溶接助剤は加熱され、その際、誘導加熱におけるエネルギー入力は、熱伝導の場合よりも約1500倍高い。誘導溶接は、溶融、融接および硬化の段階を経るが、その際、溶接法は連続的に、または不連続的に実施することができる。
【0007】
溶接助剤は、接合すべき成形部材の接合面の間で、たとえば半製品またはシートの形で存在していてもよい。磁気による活性化可能性は、しばしば金属製の挿入物によりもたらされるが、しかしこれは接合すべきプラスチック部材の製造法を複雑化し、場合によりその後に得られる製品中で望ましくない。粒子状の強磁性充填剤を含有する溶接助剤は比較的高価であり、かつ作用の度合いは劣るので、確立された接合法に対する方法はこれまで実施することはできなかった。
【0008】
従って本発明は、交番電磁界で溶接可能にするために、相応する添加剤により磁気的に活性化することができるプラスチック成形材料を開発するという課題に基づいている。これらの材料は、接合すべきプラスチック部材の一体化された構成部材として、または付加的な溶接助剤として使用可能であるべきである。
【0009】
DE−A−19924138には、特に超常磁性を有するナノスケールの粒子を含有する接着剤組成物が請求されている。
【0010】
DE−A−10163399には、コヒーレントな相と、該相中に分散している、超常磁性のナノスケール粒子の少なくとも1の粒子状の相とを有するナノ粒子状の調製物が記載されている。この場合、接着剤組成物の形の調製物が有利である。
【0011】
DE−A−19924138およびDE−A−10163399の組成物は、交番電磁界で加熱可能である。
【0012】
DE−A−19924138に関しても、DE−A−10163399に関しても、使用される粒子は、ナノスケールの粒子の凝集または成長を防止するために、および/またはコヒーレントな相中の粒子状の相の良好な分散性を保証するために、有利に表面変性されているか、もしくは表面被覆されていることが該当する。この場合の欠点は、表面被覆もしくは表面変性のために使用される物質が、特に高温および/または機械的な影響のもとで溶解しうることである。この結果、ナノスケールの粒子は凝集するか、または成長する可能性があり、このことによって超常磁性が失われる。
【0013】
DE−A−10163399に記載のナノ粒子状の調製物またはDE−A−19924138に記載の接着剤組成物のレオロジー特性は、分散剤の種類および量により広い範囲で調整することができる。しかし、調製物のレオロジーを、ナノスケールの超常磁性粒子自体によって調整することは不可能であるか、または限定的に可能であるにすぎない。というのも、超常磁性は特定の粒径と結びついているからである。粒子は調製物中でほぼ一次粒子として存在しており、これによりレオロジーの調整、たとえば増粘は、超常磁性粒子の含有率を同時に変更することによって可能であるにすぎない。
【0014】
2004年12月1日付けの、公開されていない先のドイツ特許出願DE102004057830には、重合可能なモノマーおよび/またはポリマー、およびこれらの中に分散している、凝集した一次粒子からなる超常磁性酸化物粒子を含有し、その際、該一次粒子が、非磁性金属酸化物マトリックスもしくはメタロイドマトリックス中で2〜100nmの直径を有する磁性金属酸化物ドメインから構成されている接着剤組成物が記載されており、その内容全てをここで引用する。
【0015】
意外なことに、ナノスケールの磁性酸化物粒子が、プラスチック材料を交番電磁界中で溶接可能にするために、プラスチック材料用の添加剤として適切であることが判明した。
【0016】
従って本発明の対象は特に、プラスチック材料を交番電磁界で溶接可能にするための、プラスチック材料中での添加剤としてのナノスケールの磁性酸化物粒子の使用である。
【0017】
本発明の対象はさらに、交番電磁界で溶接することによりプラスチック複合成形体を製造するための方法であり、この場合、溶接接合は、ナノスケールの磁性酸化物粒子を含有するプラスチック材料を用いて行われる。
【0018】
本発明の対象は、交番電磁界における溶接により得られ、溶接接合が、ナノスケールの磁性酸化物粒子を含有するプラスチック材料により行われている、プラスチック複合成形体である。
【0019】
本発明によるプラスチック材料中で、ナノスケールの磁性酸化物粒子は、ほぼ均一に分散しており、かつ特に凝集化していない形で存在している。特にこれらの粒子は、プラスチック材料中で温度安定性であり、かつ高温でも凝集を示さない。さらに、組成物のレオロジーを、前記粒子の含有率とはほぼ無関係に制御することが可能である。
【0020】
本発明の意味で凝集とは、成長した一次粒子の三次元構造であると理解すべきである。複数のアグリゲートは結合してアグロメレートになることができる。これらのアグロメレートは、たとえば機械的な作用、例えば押出工程により、容易に再分離することができる。これに対して、一次粒子へのアグリゲートの分解は通常、不可能である。
【0021】
ナノスケールの磁性酸化物粒子のアグリゲート直径は、有利には100nmを超え、かつ1μm未満であってよい。
【0022】
有利には、ナノスケールの磁性酸化物粒子のアグリゲートは、空間方向で250nm未満の直径を有していてよい。この実情は図1に記載されており、ここでは1のアグリゲートの2本の側方アーム状物が、80nmおよび135nmの直径を有している。
【0023】
ドメインとは、マトリックス中で空間的に相互に分離された領域であると理解すべきである。ナノスケールの磁性粒子のドメインは、2〜100nmの直径を有している。
【0024】
ナノスケールの磁性酸化物粒子とは、特に超常磁性粒子であると理解すべきである。
【0025】
ドメインは、非磁性領域を有していてもよいが、しかし該領域は粒子の磁性特性に貢献しない。
【0026】
さらにその大きさに基づいて、超常磁性を示し、かつ残留磁気を誘導する磁性ドメインが存在していてもよい。このことは、体積特有の飽和磁化の向上につながる。本発明によれば、超常磁性粒子が、本発明によるプラスチック材料を交番電界、交番磁界または交番電磁界により融点に加熱することができるような数の超常磁性ドメインを含んでいることが該当する。
【0027】
超常磁性粒子のドメインは、周囲のマトリックスから完全に、または部分的にのみ包囲されていてもよい。部分的に包囲されているとは、個々のドメインが、アグリゲートの表面から突出していてもよいことを意味している。
【0028】
いずれの場合でも、粒子の超常磁性ドメインは、凝集していない。
【0029】
ドメインは、1もしくは複数の金属酸化物を有していてもよい。
【0030】
磁性ドメインは有利には、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、ユーロピウム、イットリウム、サマリウムまたはガドリニウムの酸化物を含有していてよい。これらのドメインには、金属酸化物が、均一な変態として、または異なった変態として存在していてよい。
【0031】
特に有利な磁性ドメインは、γ−Fe23、Fe34の形の酸化鉄、γ−Fe23および/またはFe34の混合物である。
【0032】
磁性ドメインはさらに、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、亜鉛、カドミウム、マグネシウム、マンガン、銅、バリウム、マグネシウム、リチウムまたはイットリウムの金属成分を含有する少なくとも2種類の金属の混合酸化物として存在していてもよい。
【0033】
磁性ドメインはさらに、一般式MIIFe24を有する物質であってもよく、前記式中でMIIは、相互に異なった少なくとも2の二価の金属を含む。有利には、二価の金属の1つは、マンガン、亜鉛、マグネシウム、コバルト、銅、カドミウムまたはニッケルであってよい。
【0034】
さらに、磁性ドメインは、一般式(Ma1-x-ybxFeyIIFe2III4の三成分系から構成されていてもよく、前記式中、Ma、もしくはMbは、金属のマンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、銅、マグネシウム、バリウム、イットリウム、スズ、リチウム、カドミウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、クロム、バナジウム、ニオブ、モリブデンであってよく、その際x=0.05〜0.95であり、y=0〜0.95であり、かつx+y≦1である。
【0035】
特に、ZnFe24、MnFe24、Mn0.6Fe0.4Fe24、Mn0.5Zn0.5Fe24、Zn0.1Fe1.94、Zn0.2Fe1.84、Zn0.3Fe1.74、Zn0.4Fe1.64またはMn0.39Zn0.27Fe2.344、MgFe23、Mg1.2Mn0.2Fe1.64、Mg1.4Mn0.4Fe1.24、Mg1.6Mn0.6Fe0.84、Mg1.8Mn0.8Fe0.44が有利でありうる。
【0036】
非磁性マトリックスの金属酸化物の選択は、それ以上限定されない。チタン、ジルコニウム、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、セリウムまたはスズの酸化物が有利でありうる。
【0037】
本発明の意味で、メタロイド酸化物、例えば二酸化ケイ素も金属酸化物に属する。
【0038】
さらに、マトリックスおよび/またはドメインが、非晶質および/または結晶質で存在していてもよい。
【0039】
粒子中の磁性ドメインの割合は、マトリックスとドメインとが空間的に分離されているかぎり、限定されていない。有利には超常磁性粒子中の磁性ドメインの割合は、10〜90質量%であってよい。
【0040】
本発明によるプラスチック材料は、有利には0.1〜40質量%の範囲の超常磁性粒子の割合を有していてよい。
【0041】
適切な超常磁性粒子は例えばEP−A−1284485ならびにDE10317067に記載されており、これらを全ての範囲で引用する。従って超常磁性酸化物粒子は、以下の工程を有する方法により得られる:
非磁性マトリックスの金属成分またはメタロイド成分を含有する化合物、および超常磁性ドメインの金属成分を含有する化合物を一緒に、または別々に蒸発させる工程、その際、少なくとも1の化合物は塩素を含有し、かつその際、蒸気の組成は、後に所望される超常磁性ドメインと非磁性マトリックスの比率に相応する、
前記混合物を、空気および/または酸素および燃焼ガスと混合される混合帯域へ供給し、かつ混合物を公知の構造の燃焼装置に供給し、かつ該混合物を燃焼室内の火炎中で燃焼させる工程、
高温ガスおよび固体生成物を冷却し、該ガスを固体生成物から分離し、かつ場合により固体生成物を、水蒸気により湿ったガスを用いた熱処理により精製する工程。
【0042】
さらに、粒子は、以下の工程を有する方法により得られる:
超常磁性ドメインの金属成分を含有し、かつ塩の溶液または分散液の形で存在する前駆体を噴霧することによりエーロゾルを製造する工程、
前記エーロゾルを、混合帯域中で、非磁性マトリックスの前駆体を含有する火炎加水分解または火炎酸化の気体混合物と混合する工程、その際、蒸気の組成は、後に所望される超常磁性ドメインおよび非磁性マトリックスの比率に相応する、
エーロゾルと気体との混合物を、公知の構造の燃焼装置に供給し、かつ該混合物を燃焼室内の火炎中で燃焼させる工程、
高温ガスおよび固体生成物を冷却し、該ガスを固体生成物から分離し、かつ場合により固体生成物を、水蒸気により湿ったガスを用いた熱処理により精製する工程、
その際、超常磁性ドメインの前駆体および/または非磁性マトリックスの前駆体は、塩素を含有する化合物である。
【0043】
さらに、粒子は、以下の工程を有する方法により得られる:
超常磁性ドメインの前駆体および非磁性マトリックスの前駆体を噴霧することによりエーロゾルを一緒に、または別々に製造する工程、その際、これらの前駆体は、塩の溶液または分散液の形で存在しており、その際、エーロゾルの組成は、後に所望される超常磁性ドメインおよび非磁性マトリックスの比率に相応する、
前駆体のエーロゾルを一緒に、または別々に、空気および/または酸素および燃焼ガスと混合される混合帯域中に供給する工程、および
エーロゾルと気体との混合物を、公知の構造の燃焼装置に供給し、かつ該混合物を燃焼室内の火炎中で燃焼させる工程、
高温ガスおよび固体生成物を冷却し、該ガスを固体生成物から分離し、かつ場合により固体生成物を、水蒸気により湿ったガスを用いた熱処理により精製する工程、
その際、超常磁性ドメインの前駆体および/または非磁性マトリックスの前駆体は、塩素を含有する化合物である。
【0044】
燃焼ガスとして有利には水素またはメタンを使用することができる。
【0045】
溶接性を鑑みると、本発明によるプラスチック材料のベースとなっているポリマー材料は、該プラスチック材料が熱可塑性に軟化可能であるように選択される。溶接接合をもたらすプラスチック材料は、有利には1成分もしくは2成分のポリウレタン、1成分もしくは2成分のポリエポキシド、1成分もしくは2成分のシリコーンポリマー、シラン変性ポリマー、ポリアミド、(メタ)アクリレート官能性ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、シクロオレフィンコポリマー、ポリシロキサン、ポリ(エーテル)スルホン、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ペルフルオロエチレンプロピレンコポリマー、ペルフルオロアルコキシコポリマー、メタクリレート/ブタジエン/スチレンコポリマーおよび/または液晶コポリエステルをベースとしていてよい。
【0046】
ナノスケールの磁性酸化物粒子を含有するプラスチック材料は、有利には、ベースとなっているポリマー材料を粉末または顆粒の形でナノスケールの、磁性酸化物粒子と、粉末の形で混合し、押出成形、ストランドプレス成形および引き続き造粒する方法で製造される。これらの形状は特にポリアミドポリマーにとって有利でありうる。
【0047】
この場合、プラスチック材料は顆粒の形で存在しており、該顆粒はふたたび押出成形により成形体、半製品、板、シートなどへとさらに加工することができる。
【0048】
ポリマー以外に、プラスチック材料は場合によりさらに重合可能なモノマー、水または有機分散剤を含有していてよい。適切な有機分散剤は例えば、油、脂肪、ワックス、C6〜C30−モノカルボン酸と1価、2価もしくは3価のアルコールとのエステル、飽和の非環式および環式炭化水素、脂肪酸、低分子アルコール、脂肪アルコールおよびこれらの混合物から選択されていてよい。これには例えばパラフィンおよびパラフィン油、鉱油、通常8個より多くの炭素原子を有する線状の飽和炭化水素、例えばテトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなど、環式炭化水素、例えばシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタリン、ワックス、脂肪酸のエステル、シリコーン油などが挙げられる。有利であるのは例えば線状および環式の炭化水素およびアルコールである。
【0049】
ナノスケールの磁性酸化物粒子を含有するプラスチック材料は、本発明によれば溶接接合をもたらす手段として、交番電磁界で溶接することによりプラスチック複合成形体を製造する際に使用される。
【0050】
接合すべきプラスチック成形部材は、完全に、もしくは部分的にナノスケールの磁性酸化物粒子を含有する粒子を含有するプラスチック材料からなっていてよい。
【0051】
その際、接合すべき成形部材の少なくとも1つは、少なくとも接合面の領域において、前記プラスチック材料からなる。
【0052】
プラスチック成形体の製造は、自体公知の方法で、および任意の形状で行うことができる。
【0053】
部分的に、例えば接合面の領域にのみナノスケールの磁性酸化物粒子を備えた成形体は、例えば同時押出または連続的な同時押出、多層押出、多成分射出成形により、または被覆により得ることができる。
【0054】
接合すべきプレフォームは、例えば中空成形体の部材であってよい。この場合、これらは一体化された中空成形体、例えば容器、管、または導管へと加工することができ、これらは直接、または結合部材、例えばスリーブ、取付部品またはフランジを介して溶接されている。
【0055】
溶接接合をもたらすプラスチック材料は、別々に、例えば平面状のプラスチック部材の間に導入され、かつ該部材を溶接剤として接合される板またはシートの形で存在していてもよい。
【0056】
次いで、こうして得られたプラスチック複合成形体は平面状に溶接された部材、例えば板および/またはシートからなる多層複合材の形で存在していてよい。
【0057】
相応する方法で、接合すべきプラスチック成形体は少なくとも接合面の範囲で、交番電界、交番磁界または交番電磁界に供され、その際、溶接接合をもたらすプラスチック材料は、溶融温度に加熱される。
【0058】
有利には加熱のために、30Hz〜100MHzの範囲の周波数を有する交番電磁界を適用する。慣用の誘導装置の周波数、例えば100Hz〜100kHzの範囲の中程度の周波数、または10kHz〜60MHz、特に50kHz〜3MHzの範囲の高周波が適切である。
【0059】
超常磁性粒子の磁性ドメインおよび特にナノ粒子状のドメインにより、エネルギー入力を使用可能にする電磁線の利用が特に効果的に可能となる。
【0060】
同様に、交番電磁界による加熱のために、マイクロ波照射が該当する。その際、有利には0.3〜300GHzの範囲の周波数を有するマイクロ波照射が使用される。共振周波数を調整するために有利にはマイクロ波照射に加えて、約0.001〜10テスラの範囲の電界強度を有する直流電界を使用する。有利には電界強度は0.015〜0.045テスラおよび特に0.02〜0.06テスラの範囲である。
【0061】
例1
超常磁性粒子の製造
粒子P−1:
SiCl4 0.57kg/hを、約200℃で気化し、かつ4.1Nm3/hの水素ならびに11Nm3/hの空気と共に混合帯域に供給する。さらに25質量%の塩化鉄(III)水溶液(1.27kg/h)から得られるエーロゾルを、キャリアガス(3Nm3/h窒素)により、燃焼装置内の混合帯域に導入する。均質に混合されたガスとエーロゾルとの混合物はここで約1200℃の断熱燃焼温度および約50ミリ秒の滞留時間で燃焼する。反応後に、公知の方法で、反応ガスおよび生じた粒子粉末を冷却し、かつフィルターを用いて排ガス流から分離する。別の工程で、水蒸気を含有する窒素を用いた処理により、なお付着している塩酸残留物を粉末から除去する。
【0062】
粒子P−2:
SiCl4 0.17kg/hを、約200℃で気化し、かつ4.8Nm3/hの水素ならびに12.5Nm3/hの空気と共に混合帯域に供給する。さらに25質量%の塩化鉄(III)水溶液(2.16kg/h)から得られるエーロゾルを、キャリアガス(3Nm3/h窒素)により、燃焼装置内の混合帯域に導入する。均質に混合されたガスとエーロゾルとの混合物はここで約1200℃の断熱燃焼温度および約50ミリ秒の滞留時間で燃焼する。反応後に、公知の方法で、反応ガスおよび生じた粒子粉末を冷却し、かつフィルターを用いて排ガス流から分離する。別の工程で、水蒸気を含有する窒素を用いた処理により、なお付着している塩酸残留物を粉末から除去する。
【0063】
粒子P−3:
マトリックス前駆体であるSiCl4 0.57kg/hを、約200℃で気化し、かつ4Nm3/hの水素ならびに11Nm3/hの空気および1Nm3/hの窒素と共に反応器中へ供給する。
【0064】
さらに、塩化鉄(II)水溶液、塩化マグネシウム(II)水溶液、塩化マンガン水溶液から2流体ノズルにより得られる、ドメイン前駆体からなるエーロゾルを、キャリアガス(3Nm3/h窒素)により反応器に導入する。該水溶液は、MnCl2 1.8質量%、MgCl2 8.2質量%およびFeCl2 14.6質量%を含有している。
【0065】
均質に混合されたガスとエーロゾルとの混合物は反応器へと流入し、かつここで約1350℃の断熱燃焼温度および約70ミリ秒の滞留時間で燃焼する。
【0066】
滞留時間は貫流される装置体積とプロセスガスの運転体積流との商から断熱燃焼温度で算出される。
【0067】
火炎加水分解の後、公知の方法で反応ガス、および生じた、亜鉛−マグネシウム−フェライトによりドープされた二酸化ケイ素粉末を冷却し、かつフィルターを用いて固体を排ガス流から分離する。
【0068】
別の工程で、水蒸気を含有する窒素を用いた処理により、なお付着している塩酸残留物を粉末から除去する。
【0069】
例2
超常磁性粒子を含有するプラスチック材料の製造
例2.1
例1からの粒子P−1 2kgを、ポリアミド顆粒(Vestamid(登録商標)L1901、ISO 1874−1による名称:PA12、XN、18−010、Degussa AG)8kgと共に、Berstorff社の二軸スクリュー押出機ZE25−33D中、250℃および10kg/hの処理量で溶融混合し、ストランドプレス成形し、かつ造粒する。
【0070】
例2.2
例1からの粒子P−1 2kgを、ポリブチレンテレフタレート顆粒であるVestodur(登録商標)X9407(Degussa AG)8kgと共に、Berstorff社の二軸スクリュー押出機ZE25−33D中、250℃および10kg/hの処理量で溶融混合し、ストランドプレス成形し、かつ造粒する。
【0071】
例2.3
例1からの粒子P−1 2kgを、ポリプロピレンコポリマーの顆粒(Admer(登録商標)GF551A;Mitsui Deutschland GmbH)8kgと共に、Berstorff社の二軸スクリュー押出機ZE25−33D中、200℃および10kg/hの処理量で溶融混合し、ストランドプレス成形し、かつ造粒する。
【0072】
例2.4
例1からの粒子P−1 2kgを、ポリプアミド6の顆粒(Ultramid(登録商標)B4;BASF AG)8kgと共に、Berstorff社の二軸スクリュー押出機ZE25−33D中、250℃および10kg/hの処理量で溶融混合し、ストランドプレス成形し、かつ造粒する。
【0073】
例2.5
例1からの粒子P−1 2kgを、ポリフッ化ビニリデン(DYFLOR(登録商標)X7394(Degussa AG))8kgと共に、Berstorff社の二軸スクリュー押出機ZE25−33D中、250℃および10kg/hの処理量で溶融混合し、ストランドプレス成形し、かつ造粒する。
【0074】
例2.6
例1からの粒子P−1 2kgを、ポリアミド顆粒(Vestamid(登録商標)D18、Degussa AG)8kgと共に、Berstorff社の二軸スクリュー押出機ZE25−33D中、200℃および10kg/hの処理量で溶融混合し、ストランドプレス成形し、かつ造粒する。
【0075】
例2.7
例1からの粒子P−2 2kgを、ポリアミド顆粒(Vestamid(登録商標)D18、Degussa AG)8kgと共に、Berstorff社の二軸スクリュー押出機ZE25−33D中、200℃および10kg/hの処理量で溶融混合し、ストランドプレス成形し、かつ造粒する。
【0076】
例3 交番電磁界におけるプラスチック成形体の溶接
一般的な実施:
例2.1〜2.7に記載の超常磁性粒子を含有するプラスチック材料を、厚さ1mmの板へと押出成形した。
【0077】
それぞれのこのような板を、同一の、または異なったプラスチックベース材料(超常磁性粒子不含)の板1枚毎の間に設置し、かつ該多層構造体を巻いて接着テープで固定する。引き続き該多層構造体を、100%の電力供給で規定の時間、交番電磁界に供した。
【0078】
その際、インダクターコイルは以下のデータを有していた:
寸法:200×45×40mm3(L×B×H)
材料:角柱形銅管10×6×1mm
導管断面積28mm2
コイル供給長さ:120mm
コイル巻数:3
コイル巻長さ(有効):35mm
コイル直径(内径):20mm〜40mm
コイル内表面積:720mm2
誘導率(100kHz):約270nH
作業周波数:323kHz
使用される高周波半導体発生装置は、以下のデータを有している:
製造業者:STS−Systemtechnik Skorna GmbH
型式名:STS M260S型
クランプ出力:6kW
誘導領域:250〜1200nH
作業周波数:150〜400kHz(使用される誘導コイルにより323kHz)。
【0079】
試験体を交番電磁界から除去した後、付着強度を以下の評点に従って評価した:
0 付着なし
1 わずかな付着
2 若干の付着、分離のための労力はわずかである
3 良好な付着、分離のためには大きな労力と、場合により工具を使用する
4 分離不可能な付着、分離は凝集破壊によるのみ
【0080】
実施例:
【表1−1】

【0081】
【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交番電磁界における溶接により得られるプラスチック複合成形体において、溶接接合が、ナノスケールの磁性酸化物粒子を含有するプラスチック材料により行われることを特徴とする、交番電磁界における溶接により得られるプラスチック複合成形体。
【請求項2】
溶接接合が、凝集した一次粒子からなるナノスケールの磁性酸化物粒子を含有するプラスチック材料を用いて行われ、その際、該一次粒子は、非磁性金属酸化物マトリックスまたはメタロイド酸化物マトリックス中の2〜100nmの直径を有する磁性金属酸化物ドメインから構成されていることを特徴とする、請求項1記載のプラスチック複合成形体。
【請求項3】
溶接接合をもたらすプラスチック材料が、ナノスケールの磁性酸化物粒子を含有することを特徴とする、請求項1または2記載のプラスチック複合成形体。
【請求項4】
溶接接合をもたらすプラスチック材料が、凝集した一次粒子からなるナノスケールの磁性酸化物粒子を含有しており、その際、該磁性酸化物粒子のアグリゲートの大きさは、100nmを上回り、かつ1μm未満であることを特徴とする、請求項3記載のプラスチック複合成形体。
【請求項5】
磁性酸化物粒子の磁性ドメインが、酸化鉄粒子を含有していることを特徴とする、請求項1から4 3までのいずれか1項記載のプラスチック複合成形体。
【請求項6】
ナノスケールの磁性酸化物粒子が、凝集していない超常磁性ドメインを有していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のプラスチック複合成形体。
【請求項7】
超常磁性酸化物粒子の磁性ドメインが、フェライトを含有していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のプラスチック複合成形体。
【請求項8】
超常磁性酸化物粒子の磁性ドメインが、一般式(Ma1-x-ybxFeyIIFe2III4の三成分系から構成されており、前記式中で、MaもしくはMbは、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、銅、マグネシウム、バリウム、イットリウム、スズ、リチウム、カドミウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、クロム、バナジウム、ニオブまたはモリブデンであり、かつxは、0.05〜0.95であり、yは、0〜0.95であり、かつx+yは1以下であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のプラスチック複合成形体。
【請求項9】
ナノスケールの磁性酸化物粒子中の磁性ドメインの割合が、10〜90質量%であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のプラスチック複合成形体。
【請求項10】
溶接接合をもたらすプラスチック材料中のナノスケールの磁性酸化物粒子の割合が、0.1〜40質量%であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のプラスチック複合成形体。
【請求項11】
溶接接合をもたらすプラスチック材料が、熱可塑性に軟化可能であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のプラスチック複合成形体。
【請求項12】
溶接接合をもたらすプラスチック材料が、1成分もしくは2成分のポリウレタン、1成分もしくは2成分のポリエポキシド、1成分もしくは2成分のシリコーンポリマー、シラン変性ポリマー、ポリアミド、(メタ)アクリレート官能性ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、シクロオレフィンコポリマー、ポリシロキサン、ポリ(エーテル)スルホン、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ペルフルオロエチレンプロピレンコポリマー、ペルフルオロアルコキシコポリマー、メタクリレート/ブタジエン/スチレンコポリマーおよび/または液晶コポリエステルをベースとしていることを特徴とする、請求項11記載のプラスチック複合成形体。
【請求項13】
直接に、または結合部材、たとえばスリーブ、取付部品またはフランジを介して溶接されている、一体化された中空成形体、たとえば容器、管または導管の形の請求項1から12までのいずれか1項記載のプラスチック複合成形体。
【請求項14】
平面状に溶接された部材、たとえば板および/またはシートからなる多層複合材の形の請求項1から13までのいずれか1項記載のプラスチック複合成形体。
【請求項15】
交番電磁界における溶接によりプラスチック複合成形体を製造する方法において、溶接接合が、凝集した一次粒子からなるナノスケールの磁性酸化物粒子を含有するプラスチック材料を用いて行われ、その際、該一次粒子は、非磁性金属酸化物マトリックスまたはメタロイド酸化物マトリックス中の2〜100nmの直径を有する磁性金属酸化物ドメインから構成されていることを特徴とする、交番電磁界における溶接によりプラスチック複合成形体を製造する方法。
【請求項16】
接合すべき成形部材の少なくとも1つが、少なくとも接合面の範囲で、凝集した一次粒子からなるナノスケールの磁性酸化物粒子を含有するプラスチック材料からなり、その際、該一次粒子は、非磁性金属酸化物マトリックスまたはメタロイド酸化物マトリックス中の2〜100nmの直径を有する磁性金属酸化物ドメインから構成されていることを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
接合すべきプラスチック成形体を、少なくとも接合面の範囲で、交番電界、交番磁界または交番電磁界に供し、その際、溶接接合をもたらすプラスチック材料を、溶融温度に加熱することを特徴とする、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
プラスチック材料を交番電磁界において溶接可能にするためのプラスチック材料中の添加剤としての、一次粒子が非磁性金属酸化物マトリックスまたはメタロイド酸化物マトリックス中の2〜100nmの直径を有する磁性金属酸化物ドメインからなる凝集した一次粒子からなるナノスケールの磁性酸化物粒子の使用。

【公表番号】特表2009−511300(P2009−511300A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534961(P2008−534961)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066405
【国際公開番号】WO2007/042368
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】