説明

交通信号制御分析装置

【課題】 交通信号制御が交通状況に応じて適切に行われているか否かを分析する交通信号制御分析装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 待ち行列長取得手段211は、感知器情報に基づいて交差点に接続される道路上における待ち行列長を取得する。現示別待ち行列長取得手段221は、各信号現示に対応する道路上における待ち行列長の最大値を現示別待ち行列長として取得する。そして、偏渋滞判定手段231は、前記取得した現示別待ち行列長のうち、少なくとも1つの現示別待ち行列長が第一の閾値以上であって、かつ他の少なくとも1つの現示別待ち行列長が前記第一の閾値以下である第二の閾値以下となる場合に、偏渋滞有りと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点における交通信号制御が適切に行われているか否かを分析する交通信号制御分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交通信号制御方法として、予め用意しておいた制御パタンを時間帯や日種に応じて切り替える定時制御方式や、交差点の上流に設置された幾つかの車両感知器からの感知器情報等(車両の有無、交通量、占有時間、渋滞長等)に基づいて制御する方式等が開示されている(非特許文献1)。
【0003】
前記各種制御方法には、当該制御を実現するために必要な信号制御パラメータが用意されており、交通管理者は制御の対象とする地点や地域の事情に応じて前記信号制御パラメータを設定する。
【0004】
従来、交差点における交通信号制御が適切であるか否かを分析する装置は存在せず、信号制御装置等の既存のセンター装置が収集した車両感知器の情報等を用いて制御効果を評価するに過ぎなかった。
【0005】
前記評価に際して用いる指標としては、ある地点から別の地点に至るまでの平均走行所要時間である旅行時間や、交差点に接続する道路における信号待ち車両の待ち行列長の合計値等があった。そして、従来は、前記信号制御パラメータの設定値を変更する前と変更した後において、前記旅行時間や待ち行列長がどの程度変化したかを比較することで、前記信号制御パラメータによる交通信号制御が適切であるか否かを評価していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】片倉 正彦ら、「交通信号の手引き」、社団法人交通工学研究会、平成6年7月、p.4−60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のような旅行時間を指標として用いた制御効果の評価では、通常、旅行時間を測定する区間内には複数の交差点が存在しているため、個々の交差点における交通信号制御が適切であるかどうかを分析することはできなかった。
【0008】
また、交差点に接続する道路における信号待ち車両の待ち行列長の合計値等の指標を用いた制御効果の評価では、交差点に接続するおおよそ全ての道路における渋滞の総量を問題とするのみで、交差する複数の道路における渋滞のバランスや交通状況への対応性の良し悪し等については一切考慮されていなかった。
【0009】
そのため、信号制御パラメータを他の値として設定すれば、交通状況に応じて適切に交通信号制御を実施しうる場合であっても、前記旅行時間等の指標が改善されているために、交通信号制御が適切であると誤認することが多いという問題点があった。前記のような誤認が発生するのは、交通信号制御を分析する装置が存在しないことが主な原因であった。
【0010】
そこで、本発明は、交通信号制御が交通状況に応じて適切に行われているか否かを分析する交通信号制御分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の交通信号制御分析装置は、少なくとも1つの信号現示について、前記スプリットの変動の大きさを示すスプリット変動情報を取得するスプリット変動取得手段と、前記信号現示に対応する道路上を交差点方向に進行する車両の待ち行列長を取得する現示別待ち行列長取得手段と、前記取得した現示別待ち行列長に基づいて、交通状況の変動の大きさを示す交通状況変動情報を取得する交通状況変動取得手段を有することを特徴とする(請求項1)。
【0012】
この場合、前記スプリット変動情報は、前記スプリットの最大値と最小値の差、前記スプリットの標準偏差、前記スプリットが前記最大値と等しい割合、及び前記スプリットが前記最小値と等しい割合のうちの少なくとも1つとすることが望ましい(請求項2)。
【0013】
これらの発明によれば、スプリットの変動の大きさと交通状況の変動の大きさ対比して分析できるため、交通状況の変動に応じてスプリットが適切に割り当てられているか否かを判断することができる。
【0014】
また、本発明の交通信号制御分析装置に、前記取得したスプリット変動情報及び前記取得した交通状況変動情報に基づいて、前記交差点における交通信号制御が適切であるか否かを判断する第三信号制御判定手段持たせても良い(請求項3)。
【0015】
この発明によれば、スプリット変動情報及び交通状況変動情報の双方に基づいて、自動的に当該交差点における交通信号制御が交通状況に応じて適切に行われたか否かを判断することができる。
これにより、例えば、多数の交差点における交通信号制御が適切であったか否かを迅速に判断することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明にかかる交通信号制御分析装置によれば、交通信号制御が適切に行われているか否かを分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】交通管制システムの構成の一例を示す概略図である。
【図2】道路上における機器配置の一例を示す概略図である。
【図3】交通信号制御分析装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【図4】交通信号制御分析装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【図5】交通信号制御分析装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【図6】交通信号制御分析装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【図7】交通信号制御分析装置の表示手段における表示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る交通信号制御分析装置を含む交通管制システムの構成の一例を示す概略図である。
【0019】
図1において、1は信号制御装置であり、中央ルータ3、通信回線A又はB、及び端末ルータ4A又は4Bを介して、交通信号制御機5A及び5Bに対してサイクルやオフセットといった交通信号制御に関する信号制御指令を送信すると共に、交通信号制御機5A及び5Bの動作履歴である信号制御実行情報や車両感知器6Aa〜6Ad及び6Ba〜6Bdによって計測される感知器情報を受信する機能を有する。
【0020】
この場合、交通信号制御機5A及び5Bは、信号制御装置1の指令に従って動作しない場合があっても良く、例えば、他の交通信号制御機(図示せず)と協調して動作しても良いし、交通信号制御機5A又は5Bの有する定数等に基づいて動作しても良い。
【0021】
また、車両感知器6Aa〜6Ad及び6Ba〜6Bdは、所定の周期毎に計測対象エリアに車両が存在するか否かを検知し、当該車両存在検知結果をそれぞれ交通信号制御機5A又は5Bに対して送信する。
【0022】
そして、前記車両存在検知結果を受信した交通信号制御機5A又は5Bは、当該車両存在検知結果に基づいて、前記各車両感知器の設置された地点における交通量や占有時間等を算出し、前記交通量や占有時間等を含む感知器情報を、端末ルータ4A又は4B、通信回線A又はB、及び中央ルータ3を介して信号制御装置1に送信する。
【0023】
また、車両感知器6Aa〜6Ad及び6Ba〜6Bdは、それぞれ、端末ルータ4A又は4Bに直接接続されていても良く、その場合、交通信号制御機を介さずに、信号制御装置1宛に車両感知信号を送信しても良い。また、この場合、前記端末ルータ4A又は4Bに直接接続された車両感知器が信号制御装置1に対して送信する情報は、交通量や占有時間を含む感知器情報であっても良い。
【0024】
また、車両感知器6Aa〜6Ad及び6Ba〜6Bdに、例えば画像式車両感知器のように車両の待ち行列長を計測する機能が備わっている場合には、当該車両の待ち行列長を送信しても良い。
【0025】
交通信号制御分析装置2は、前記信号制御実行情報や前記感知器情報を、信号制御装置1を経由して受信する機能を有する。なお、交通信号制御分析装置2は、前記信号制御実行情報や感知器情報を、信号制御装置1を経由せずに、交通信号制御機5A及び5B並びに車両感知器6Aa〜6Ad及び6Ba〜6Bdから受信しても良い。
【0026】
また、交通信号制御分析装置2は、前記信号制御実行情報の代わりに、信号制御装置1が交通信号制御機5A及び5Bに対して送信した信号制御指令情報を受信することによって、交通信号制御機5A及び5Bの信号制御動作履歴を取得しても良い。
【0027】
なお、本実施形態では、2台の交通信号制御機を含むシステム構成を例示したが、交通信号制御機は1台のみであっても3台以上であっても良い。また、車両感知器の接続される台数も何台であっても良い。
【0028】
図2は、交差点における機器設置の一例を示す図である。
【0029】
交差点Aには、道路a〜dの4つの道路が接続している。
ここで、道路a及びbを主道路、道路c及びdを従道路とする。
【0030】
信号灯器7Aa〜7Adは、道路a〜d上を前記交差点に向かって進行する車両に対して通行権を表示するために設置されており、信号灯器7Aa〜7Adにおける各信号灯色は交通信号制御機5Aによって点灯、消灯、及び点滅される。
【0031】
通常、主道路に対して通行権を表示する信号灯器7Aa及び7Abは、同一のタイミングで同一の信号灯色を点灯及び消灯する。同様に、従道路に対して通行権を表示する信号灯器7Ac及び7Adは、同時に同一の信号灯色を点灯及び消灯する。この場合において、主道路に対して通行権を与える信号現示を第一信号現示、従道路に対して通行権を与える信号現示を第二信号現示とする。
【0032】
車両感知器6Aa〜6Adはそれぞれ道路a〜d上に設置され、それぞれの設置地点において交差点Aに向かって進行する車両を検知する。そして、前記検知した車両存在検知結果を、所定の周期で交通信号制御機5Aに送信する。
【0033】
次に、交通信号制御分析装置2において、交差点Aにおける交通信号制御が適切であるか否かを判断する処理の手順を、図3に従って説明する。図3は、本発明に係る交通信号制御分析装置2の機能ブロック構成図の一例である。
【0034】
受信手段201は、車両感知器6Aa〜6Adで計測される感知器情報を、信号制御装置1から受信する。そして、前記受信した感知器情報はメモリ等の記憶手段(図示せず)に記憶される。
【0035】
待ち行列長取得手段211は、前記メモリ等に記憶した感知器情報に基づいて道路a〜dのそれぞれにおける待ち行列長を取得する。待ち行列長は、前記感知器情報に含まれる交通量と占有時間の比に実効車長(感知領域長+平均車長)を乗算して算出される平均速度から得られる渋滞波及度を基に推定値として算出することができる。なお、車両感知器6Aa〜6Adに待ち行列長を計測する機能が備わっている場合には、前記計測された待ち行列長を取得する方法でも良い。また、信号制御装置1が同様の方法で待ち行列長を算出し、前記算出された待ち行列長を信号制御装置1から通信によって取得する方法でも良い。そして、前記取得された道路a〜dにおける待ち行列長a〜dの値はメモリ等の記憶手段(図示せず)に記憶される。
【0036】
そして、現示別待ち行列長取得手段221は、前記待ち行列長a〜dのうち、第一信号現示に対応する待ち行列長a及びbのうち最大値を第一信号現示における現示別待ち行列長として取得する。同様に、現示別待ち行列長取得手段221は、第二信号現示に対応する待ち行列長c及びdのうち最大値を第二信号現示における現示別待ち行列長として取得する。
【0037】
なお、現示別待ち行列長として、前記最大値ではなく平均値を取得しても良いし、特定の道路の待ち行列長を代表値として取得する方法でも良い。また、信号制御装置1が同様の方法で現示別待ち行列長を算出し、前記算出された現示別待ち行列長を信号制御装置1から通信によって取得する方法でも良い。そして、前記取得された第一信号現示及び第二信号現示における現示別待ち行列長はそれぞれメモリ等の記憶手段(図示せず)に記憶される。
【0038】
そして、偏渋滞判定手段231は、前記第一信号現示及び第二信号現示における現示別待ち行列長が、予めメモリ等の記憶手段(図示せず)に記憶された第一の閾値と、前記第一の閾値以下である第二の閾値のそれぞれと比較して、これらとの大小関係を判断する。
【0039】
例えば、前記第一信号現示における現示別待ち行列長が第一の閾値以上であれば、第一信号現示に対応する道路では渋滞が発生していると判断し、一方、前記第二信号現示における現示別待ち行列長が第二の閾値以下であれば、第二信号現示に対応する道路では渋滞が発生していないと判断する。
【0040】
偏渋滞判定手段231は、前記第一信号現示又は第二信号現示に対応する道路のうち、一方において渋滞が発生しているが、他方においては渋滞が発生していないと判断される場合には偏渋滞有りと判定する。逆に、偏渋滞判定手段231は、前記第一信号現示又は第二信号現示に対応する道路の双方ともに渋滞が発生している、あるいは双方ともに渋滞が発生していないと判断される場合には偏渋滞無しと判定する。
【0041】
なお、前記判定によって偏渋滞有りと判定した場合には、例えば、その時点で地図を搭載した表示画面(図示せず)上の該当する交差点に、特定の図柄等を重畳して表示する方法や音声等によって交通管理者に通知することができる。また、例えば、偏渋滞有りと判定された旨とその時刻を対応付けた情報を他のデータベース装置(図示せず)等に蓄積しておき、交通管理者が閲覧可能な状態とすることもできる。
【0042】
以上のように、例えばサイクル長に相当する時間等の周期毎に、偏渋滞判定手段231が前記偏渋滞の有無を判定することで、特定の時間帯において偏渋滞が発生しやすい、といった交差点Aにおける交通信号制御の傾向を分析することが可能となる。
【0043】
前記偏渋滞は、交通状況に応じて各信号現示に適切な青時間を配分していないことを直接的に示す新たな指標であるから、交通管理者は、前記偏渋滞の有無に基づいて交通信号制御の適切さを明確に判断することができる。
【0044】
例えば、特定の時間帯において、第一信号現示に対応する道路では渋滞が起きているが、第二信号現示における道路では渋滞が発生していないという傾向がある場合には、前記時間帯において、第一信号現示に割り当てる青時間が不足しているということを明確かつ直接的に知ることができる。
このような場合には、前記時間帯において、第一信号現示に割り当てる青時間が大きくなるように、信号制御パラメータの設定を変更すべきである、という改善方針を明確にすることができ、大変有用である。
【0045】
さらに、このような場合には、第二信号現示に割り当てる青時間が長すぎるために、第二信号現示における道路では、交差点に向けて進行する車両が存在しないにもかかわらず青信号を表示する、いわゆる無駄青が発生している可能性が高いということを明確かつ直接的に知ることができる。従って、前記時間帯においては、第二信号現示に割り当てる青時間が小さくなるように、信号制御パラメータの設定を変更すべきである、という改善方針を明確にすることができ、大変有用である。
【0046】
さらに、第一信号制御判定手段241は、例えばサイクル長時間等の所定の周期毎に偏渋滞判定手段231が偏渋滞有りと判定したか否かを監視し、例えば1週間といった所定期間内において、偏渋滞有りと判定された割合を取得する。そして、前記取得された偏渋滞有りと判定された割合が、予め設定された所定の閾値を上回った場合には、交差点Aにおける交通信号制御が適切ではないと判断する。
【0047】
そして、例えば、地図を搭載した表示画面(図示せず)上の該当する交差点Aに、特定の図柄等を重畳して表示する方法等によって、交通管理者に交差点Aの交通信号制御が適切でないことを通知できる。また、例えば、交差点Aの交通信号制御が適切でないと判断されたことを他のデータベース装置(図示せず)等に蓄積しておき、交通管理者が閲覧可能な状態とすることもできる。
【0048】
偏渋滞が頻繁に発生する交差点における交通信号制御は適切ではないと考えられるから、当該交差点における信号制御パラメータは改善すべきである、ということが明らかとなり大変有効である。
【0049】
このように、第一信号制御判定手段241を有することによって、特定の交差点における交通信号制御が適切か否かを自動的に判断することができるようになる。
【0050】
例えば、信号制御装置1の制御対象とする交差点が多数である場合には、前記偏渋滞有りと判定された割合の大きい順番で交差点の一覧表を作成することによって、信号制御パラメータを改善すべき交差点の優先順位を自動的に決定することができるようになり、さらに有用である。
また、ある交差点の数ヶ月〜数年に渡る前記偏渋滞有りと判定された割合を時系列的に整理したデータを自動的に作成することができるため、例えば、ある時期までは適切に交通信号制御を実施できていたが、それ以降は改善すべき状況に陥った、といった事情を迅速に分析することもできる。
その場合、前記ある時期が、付近にできた大型ショッピングセンターや高速道路等が建設された時期と符合するのであれば、前記大型ショッピングセンター等の建設による交通状況の変化が要因である、といった原因を直接的に突き止めることも可能となる。
【0051】
前記偏渋滞は、別の観点によれば、道路を利用する者に対して公平に交通権を与えているか否かを直接的に示す新たな指標である。
【0052】
交差点に向かって進行する車両のうち、特定の方向から流入する車両にのみ長時間の信号待ちを強いることは、道路利用者に不公平感を抱かせることになり、望ましくない。前記観点からも、偏渋滞は交通管理者による交通信号制御の適切さを明確に示す指標であり、偏渋滞を必要限度とするような交通信号制御を行うことが重要である。
【0053】
以上のように、本発明にかかる交通信号制御分析装置を導入することによって、交差点において偏渋滞が発生しているか否かを正確に把握できるため、交通信号制御を改善すべきか否かを的確に判断することができるようになり、大変有用である。
【0054】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
システムの構成、及び機器設置は第1の実施形態と同一である。
【0055】
交通信号制御分析装置2において、交差点Aにおける交通信号制御が適切であるか否かを判断する処理を、機能ブロック構成の一例である図4に従って説明する。
【0056】
受信手段201は、車両感知器6Aa〜6Adで計測される感知器情報を、信号制御装置1から受信する。そして、前記受信した感知器情報はメモリ等の記憶手段(図示せず)に記憶される。
【0057】
待ち行列長取得手段211は、第1の実施形態と同様に前記メモリ等に記憶した感知器情報に基づいて道路a〜dのそれぞれにおける待ち行列長を取得する。そして、前記取得された道路a〜dにおける待ち行列長a〜dの値はメモリ等の記憶手段(図示せず)に記憶される。
【0058】
また、第1の実施形態と同様に、現示別待ち行列長取得手段221は、第一信号現示に対応する現示別待ち行列長、及び第二信号現示に対応する現示別待ち行列長を取得する。そして、サイクル長に相当する時間等の周期毎に、前記第一信号現示及び第二信号現示における現示別待ち行列長を取得し、それぞれメモリ等の記憶手段(図示せず)に記憶する。
【0059】
渋滞判定手段251は、前記メモリ等に記憶した第一信号現示に対応する現示別待ち行列長と予め前記メモリ等に記憶した第三の閾値とを比較し、前記第一信号現示に対応する現示別待ち行列長が前記第三の閾値を超える場合、渋滞判定手段251は第一信号現示において渋滞有りと判定する。渋滞判定手段251は、前記方法で、例えばサイクル長に相当する時間等の周期毎に、渋滞の有無を判定する。
【0060】
そして、渋滞振動判定手段252は、渋滞判定手段251の判定結果を監視し、前回の判定結果と今回の判定結果の異同に基づいて渋滞振動の有無を判定する。
【0061】
例えば、第一信号現示における前回の判定結果が渋滞有りで今回の判定結果が渋滞無しの場合、双方の判定結果が異なっているため、渋滞振動有りと判定する。逆に、前回も今回も渋滞有り、もしくは渋滞無しであれば、渋滞振動無しと判定する。
【0062】
また、渋滞判定手段251及び渋滞振動判定手段252は、第一信号現示と同様の方法で、第二信号現示についても渋滞振動の有無を判定することができる。このようにして、本発明にかかる交通信号制御分析装置は、待ち行列長を取得しうる1又は複数の信号現示について、渋滞振動の有無を判定することができる。
【0063】
そして、前記判定によって渋滞振動有りと判定した場合には、例えば、その時点で地図を搭載した表示画面(図示せず)上の該当する交差点に、特定の図柄等を重畳して表示する方法等によって交通管理者に通知することができる。また、例えば、渋滞振動有りと判定された旨とその時刻を対応付けた情報を他のデータベース装置(図示せず)等に蓄積しておき、交通管理者が閲覧可能な状態とすることもできる。
【0064】
渋滞の振動は、前記振動の発生している信号現示に対して割り当てる青時間が適切ではない場合に発生する。
【0065】
例えば、ある時間において、第一信号現示に対応する道路a及びb上で渋滞が発生していないと判断すると、次のサイクルにおいて当該第一信号現示に対して割り当てる青時間を小さくする場合があるが、当該青時間を小さくし過ぎると、次のサイクルで当該第一信号現示において交差点Aを通過しようとする車両が全て通過し終える前に青信号を打ち切ってしまい、道路aやb上において多数の車両が捌け残りの状態となることがある。
【0066】
前記のように捌け残り台数が多い場合、次のサイクルにおいて当該第一信号現示に対応する道路a又はbで渋滞が発生することになる。そして、前記のように第一信号現示に対応する道路で渋滞が発生したと判断すると、さらに次のサイクルにおいては、当該第一信号現示に対して割り当てる青時間を大きくして、前記渋滞を解消する。
【0067】
上記のように、交通状況に対応して青時間を小さくし過ぎることによって、交差点に接続する道路上で渋滞振動が発生するから、渋滞振動の有無は、当該交差点における交通信号制御と密接不可分の関係に立つ。
【0068】
また、前記割り当てる青時間を大きくした場合について、当該青時間が大き過ぎる場合には、道路a及びb上の車両が全て交差点Aを通過し終えた後にも青信号を表示し続ける、いわゆる無駄青が発生し、第二信号現示に対応する交差側道路c又はdにおいて渋滞が発生しやすくなる。すなわち、一方の信号現示に割り当てる青時間を大きくし過ぎることが、他方の信号現示に対応する交差側道路c又はdにおける渋滞の振動を引き起こす要因になる。
【0069】
上記のように、交通状況に対応して青時間を大きくし過ぎる、もしくは小さくし過ぎることによって、交差点に接続する道路上で渋滞振動が発生するから、渋滞振動の有無は、当該交差点における交通信号制御と密接不可分の関係に立つ。また、渋滞振動発生時には前記無駄青も発生しやすいため、渋滞振動が発生する交差点では交通信号制御を改善する必要性が高い。
【0070】
このように、渋滞振動は、交通状況に応じて各信号現示に適切な青時間が割り当てられていないことを直接的に示す新たな指標であるから、交通管理者は、前記渋滞振動の有無に基づいて交通信号制御の適切さを明確に判断することができる。
【0071】
例えば、特定の時間帯において、第一信号現示に対応する道路で渋滞振動が発生している場合には、前記時間帯において、各信号現示に割り当てる青時間が交通状況の変化に過剰反応しているということを明確かつ直接的に知ることができる。このような場合には、前記時間帯において、前記各信号現示に割り当てる青時間が交通状況の変化に緩やかに追従するように、信号制御パラメータの設定を変更すべきである、という改善方針を明確にすることができ、大変有用である。
【0072】
さらに、第二信号制御判定手段242は、例えばサイクル長時間等の所定の周期毎に渋滞振動判定手段252が渋滞振動有りと判定したか否かを監視し、例えば1週間といった所定期間内において、渋滞振動有りと判定された割合を取得する。そして、前記取得された渋滞振動有りと判定された割合が、予め設定された所定の閾値を上回った場合には、交差点Aにおける交通信号制御が適切ではないと判断する。
【0073】
そして、例えば、地図を搭載した表示画面(図示せず)上の該当する交差点Aに、特定の図柄等を重畳して表示する方法等によって、交通管理者に交差点Aの交通信号制御が適切でないことを通知できる。また、例えば、交差点Aの交通信号制御が適切でないと判断されたことを他のデータベース装置(図示せず)等に蓄積しておき、交通管理者が閲覧可能な状態とすることもできる。
【0074】
渋滞振動が頻繁に発生する交差点における交通信号制御は適切ではないと考えられるから、当該交差点における信号制御パラメータは改善すべきである、ということが明らかとなり大変有効である。
【0075】
また、第二信号制御判定手段242を有することによって、特定の交差点における交通信号制御が適切か否かを自動的に判断することができるようになる。
【0076】
例えば、信号制御装置1の制御対象とする交差点が多数である場合には、前記渋滞振動有りと判定された割合の大きい順番で交差点の一覧表を作成することによって、信号制御パラメータを改善すべき交差点の優先順位を自動的に決定することができるようになり、さらに有用である。
【0077】
また、第1の実施形態において取得した偏渋滞の有無と、第2の実施形態において取得した渋滞振動の有無との双方に基づいて交通信号制御が適切であるか否かを判断することもできる。
【0078】
偏渋滞が発生している時間帯において、渋滞の振動が発生している場合には、例えば、ある時間において、主道路における渋滞を解消するために第一信号現示の青時間を長くし過ぎたことによって、主道路の渋滞は解消したが従道路で渋滞が発生し、今度は、従道路における渋滞を解消するために第二信号現示の青時間を長くし過ぎたことによって、従道路の渋滞は解消したが主道路で渋滞が発生し、これらを繰り返すという現象が起きていると即座に判断することが可能となる。
【0079】
通常、交通信号制御が適切で無い場合、主道路と従道路が渋滞と非渋滞を交互に繰り返す現象は、通常30分〜1時間程度の周期で発生する。そのため、主道路と従道路の渋滞の状況が入れ替わる周期を監視し、当該周期に着目して交通信号制御が適切か否かを分析することも可能である。
すなわち、渋滞の振動が起きた周期や、偏渋滞において主道路と従道路の渋滞状況が交代した周期を監視する計時手段(図示せず)を別途設けて、当該周期が所定の範囲(例えば、1時間以内)となるか否かを判定することによっても、交通信号制御が適切か否かを判断することができる。
【0080】
以上のように、第1の実施形態において取得した偏渋滞の有無と、第2の実施形態において取得した渋滞振動の有無の双方の指標を用いることによっても、交通信号制御が適切であるか否かを判断することができ、大変有用である。
【0081】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
システムの構成、及び機器設置は第1の実施形態と同一である。
【0082】
交通信号制御分析装置2において、交差点Aにおける交通信号制御が適切であるか否かを判断する処理を、機能ブロック構成の一例である図5に従って説明する。
【0083】
受信手段201は、交通信号制御機5Aの信号制御実行情報を、信号制御装置1から受信する。同様に、受信手段201は、車両感知器6Aa〜6Adで計測される感知器情報を、信号制御装置1から受信する。そして、前記受信した信号制御実行情報及び感知器情報はメモリ等の記憶手段(図示せず)に記憶される。
【0084】
待ち行列長取得手段211は、第1の実施形態と同様に前記メモリ等に記憶した感知器情報に基づいて道路a〜dのそれぞれにおける待ち行列長を取得する。そして、前記取得された道路a〜dにおける待ち行列長a〜dの値はメモリ等の記憶手段(図示せず)に記憶される。
【0085】
また、第1の実施形態と同様に、現示別待ち行列長取得手段221は、第一信号現示に対応する現示別待ち行列長、及び第二信号現示に対応する現示別待ち行列長を取得する。そして、サイクル長に相当する時間等の周期毎に、前記第一信号現示及び第二信号現示における現示別待ち行列長を取得し、それぞれメモリ等の記憶手段(図示せず)に記憶する。
【0086】
交通状況変動取得手段261は、所定期間内において、前記メモリ等に記憶した第一信号現示に対応する現示別待ち行列長の最大値と最小値を求め、これらの差を第一交通状況変動値として算出する。なお、前記第一交通状況変動値は、例えば第一信号現示に対応する現示別待ち行列長の標準偏差であっても良い。また、前記第一交通状況変動値は、例えば第一信号現示に対応する現示別待ち行列長が前記最大値と等しい値となっている割合、あるいは最小値と等しい値となっている割合であっても良い。
【0087】
また、交通状況変動取得手段261は、第一信号現示と同様の方法の手順で、第二信号現示に対応する第二交通状況変動値を算出する。
【0088】
スプリット変動取得手段271は、前記メモリ等に記憶した信号制御実行情報に格納される交通信号制御機5Aの動作履歴から、第一信号現示として道路a及びbに対して通行権を与えた時間を、第一スプリットとして取得する。なお、前記第一スプリットは、例えば交差点において信号灯色表示が一巡するサイクル長時間に対して、前記通行権を与えた時間が占める割合であっても良い。そして、サイクル長に相当する時間等の周期毎に、前記第一スプリットを算出してメモリ等の記憶手段(図示せず)に記憶する。
【0089】
そして、所定期間内において、サイクル毎の第一スプリットの最大値と最小値を求め、これらの差(以下、スプリット変動幅という。)を第一スプリット変動値として算出する。なお、前記第一スプリット変動値は、例えば第一スプリットの標準偏差(以下、スプリット標準偏差という。)であっても良い。
【0090】
また、前記第一スプリット変動値は、例えば第一スプリットが前記最大値と等しい値となっている割合(以下、スプリット上限値張付率という。)、あるいは最小値と等しい値となっている割合(以下、スプリット下限値張付率という。)であっても良い。なお、前記スプリット上限値張付率やスプリット下限値張付率が大きい場合には、スプリットの変動は小さく、逆に前記スプリット上限値張付率やスプリット下限値張付率が小さい場合には、スプリットの変動は大きいと判断できる。
【0091】
また、スプリット変動取得手段271は、第一信号現示と同様の方法の手順で、第二信号現示に対応する第二スプリット変動値を算出する。
【0092】
このようにして、本発明にかかる交通信号制御分析装置は、待ち行列長を取得しうる1又は複数の信号現示について、当該信号現示に対応する交通状況変動値及びスプリット変動値を算出することができる。
【0093】
そして、前記算出された交通状況変動値及びスプリット変動値を、例えば、算出時点で、地図を搭載した表示画面(図示せず)の該当する交差点上に重畳して表示する方法等によって交通管理者に通知することができる。また、例えば、前記交通状況変動値及びスプリット変動値とその算出時刻を対応付けた情報を他のデータベース装置(図示せず)等に蓄積しておき、交通管理者が閲覧可能な状態とすることもできる。
【0094】
このようにして、前記算出した交通状況変動値及びスプリット変動値を閲覧することで、交通管理者は交通信号制御が適切か否かを判断することが可能となる。
【0095】
例えば、所定の期間において、第一交通状況変動値が所定の第三の閾値を超える程度に大きく、かつ第一信号現示のスプリット変動幅もしくはスプリット標準偏差が所定の第四の閾値を下回る程度に小さい場合、交通状況の変動が大きいにも関わらずスプリットはほとんど変動していないということになり、交通状況の変動に応じて適切に青時間を割り当てることができていないと判断できる。
【0096】
また、例えば、所定の期間において、第一交通状況変動値が所定の第三の閾値を超える程度に大きく、かつ第一信号現示のスプリット上限張付率及び下限張り付率が所定の第四の閾値を上回る程度に大きい場合にも、交通状況の変動が大きいにも関わらず、スプリットが上限もしくは下限に張り付いたままであまり変動していないということになり、交通状況の変動に応じて適切に青時間を割り当てていないと判断できる。また、逆に、交通状況の変動が小さいにも関わらずスプリットの変動が大きい場合にも、交通状況の変動に応じて適切に青時間を割り当てていないと判断できる。
【0097】
このように、交通状況変動値及びスプリット変動値を比較して分析することで、一方の変動が大きいのに対して他方の変動が小さい状態であるか否か、すなわち変動の不整合が起きているか否かを判断することができる。
【0098】
なお、前記判定によって不整合発生と判定した場合には、例えば、その時点で地図を搭載した表示画面(図示せず)上の該当する交差点に、特定の図柄等を重畳して表示する方法等によって交通管理者に通知することができる。また、例えば、不整合発生と判定された旨とその時刻を対応付けた情報を他のデータベース装置(図示せず)等に蓄積しておき、交通管理者が閲覧可能な状態とすることもできる。
【0099】
前記交通状況変動値及びスプリット変動値の組合せは、交通状況に応じて各信号現示に適切な青時間が割り当てられているか否かを直接的に判断するための新たな組合せ指標であるから、交通管理者は、前記交通状況変動値及びスプリット変動値に基づいて交通信号制御の適切さを明確に判断することができる。
【0100】
例えば、特定の時間帯において、第一信号現示に対応する第一交通状況変動値の変動が大きいのに対して、第一スプリットのスプリット上限張付率が大きい場合には、前記時間帯において、第一信号現示に割り当てる青時間が交通状況の変化に応じて適切に割り当てられていないということを明確かつ直接的に知ることができる。
【0101】
また、例えば、特定の時間帯において、第一信号現示に対応する第一交通状況変動値の変動が大きいのに対して、第一スプリットのスプリット変動幅が小さい場合には、前記時間帯において、第一信号現示に割り当てる青時間が交通状況の変化に応じて適切に割り当てられていないということを明確かつ直接的に知ることができる。
【0102】
このような場合には、前記時間帯において、前記第一信号現示に割り当てる青時間が交通状況の変化に追従するように、信号制御パラメータの設定を変更すべきである、という改善方針を明確にすることができ、大変有用である。
【0103】
例えば、上記において、スプリットのとりうる値の範囲を予め制限するパラメータが存在する場合には、前記とり得る値の範囲が従前よりも大きくなるように前記制限を緩和することで、交通信号制御を適切なものとすることができると考えられる。
【0104】
さらに、第三信号制御判定手段243は、例えば数時間程度の周期毎に交通状況変動取得手段261及びスプリット変動取得手段271が算出する交通状況変動値及びスプリット変動値を監視し、例えば1週間といった所定期間内において、前記変動の不整合が発生した割合を取得する。
【0105】
そして、前記取得された不整合の割合が、予め設定された所定の閾値を上回った場合には、交差点Aにおける交通信号制御が適切ではないと判断する。
【0106】
この場合、例えば、地図を搭載した表示画面(図示せず)上の該当する交差点Aに、特定の図柄等を重畳して表示する方法等によって、交通管理者に交差点Aの交通信号制御が適切でないことを通知できる。また、例えば、交差点Aの交通信号制御が適切でないと判断されたことを他のデータベース装置(図示せず)等に蓄積しておき、交通管理者が閲覧可能な状態とすることもできる。
【0107】
変動の不整合が頻繁に発生する交差点における交通信号制御は適切ではないと考えられるから、当該交差点における信号制御パラメータは改善すべきである、ということが明らかとなり大変有効である。
【0108】
このように、第三信号制御判定手段243を有することによって、特定の交差点における交通信号制御が適切か否かを自動的に判断することができるようになる。
【0109】
また、例えば、信号制御装置1の制御対象とする交差点が多数である場合には、前記不整合と判定された割合の大きい順番で交差点の一覧表を作成することによって、信号制御パラメータを改善すべき交差点の優先順位を自動的に決定することができるようになり、さらに有用である。
【0110】
また、第2の実施形態において取得した渋滞振動の有無、及び第3の実施形態において取得したスプリット変動値に基づいて交通信号制御が適切であるか否かを判断することもできる。
【0111】
例えば、渋滞の振動が発生している時間帯において、スプリット変動幅が大きい場合には、渋滞の発生に応じて割り当てた青時間、すなわちスプリットを必要以上に大きく変動させたために、結果的に渋滞の振動が発生した、と即座に判断することが可能となる。
【0112】
このような場合には、例えば、スプリットのとりうる値の範囲を予め制限するパラメータが存在する場合には、前記とり得る値の範囲が従前よりも小さくなるように前記制限を強化することで、渋滞振動を抑止し、交通信号制御を適切なものとすることができると考えられる。
【0113】
以上のように、第2の実施形態において取得した渋滞振動の有無と第3の実施形態において取得したスプリット変動値の双方を用いることによっても、交通信号制御が適切であるか否かを判断することができ、大変有用である。
【0114】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
システムの構成、及び機器設置は第1の実施形態と同一である。
【0115】
図6は、本発明に係る交通信号制御分析装置2の機能ブロック構成図の一例である。
【0116】
受信手段201は、交通信号制御機5Aの信号制御実行情報を、信号制御装置1から受信する。同様に、受信手段201は、車両感知器6Aa〜6Adで計測される感知器情報を、信号制御装置1から受信する。
【0117】
待ち行列長取得手段211は、前記メモリ等に記憶した感知器情報に基づいて道路a〜dのそれぞれにおける待ち行列長を取得する。
【0118】
そして、現示別待ち行列長取得手段221は、前記待ち行列長a〜dのうち、第一信号現示に対応する待ち行列長a及びbのうち最大値を第一信号現示における現示別待ち行列長として取得する。同様に、現示別待ち行列長取得手段221は、第二信号現示に対応する待ち行列長c及びdのうち最大値を第二信号現示における現示別待ち行列長として取得する。
【0119】
そして、偏渋滞判定手段231は、第1の実施形態と同様にして偏渋滞の有無を判定する。さらに、第一信号制御判定手段241は、第1の実施形態と同様にして、所定期間内において偏渋滞判定手段231によって偏渋滞有りと判定された割合を取得する。
【0120】
渋滞判定手段251は、第2の実施形態と同様にして、第一信号現示に対応する道路、及び第二信号現示に対応する道路のそれぞれにおける渋滞の有無を判定する。そして、渋滞振動判定手段252は、第2の実施形態と同様にして、第一信号現示に対応する道路、及び第二信号現示に対応する道路のそれぞれにおける渋滞振動の有無を判定する。
【0121】
さらに、第二信号制御判定手段242は、第2の実施形態と同様にして、所定期間内において、渋滞振動判定手段252が渋滞振動有りと判定した割合を取得する。
【0122】
交通状況変動取得手段261は、第3の実施形態と同様にして、第一信号現示及び第二信号現示に対応する交通状況変動値をそれぞれ算出する。スプリット変動取得手段271は、第3の実施形態と同様にして、第一信号現示及び第二信号現示に対応するスプリット変動幅、スプリットの標準偏差、スプリット上限値張付率、及びスプリット下限値張付率をそれぞれ算出する。
【0123】
さらに、第三信号制御判定手段243は、第3の実施形態と同様にして、所定期間内において、交通状況変動値及びスプリット変動値の、変動の不整合が発生した割合を取得する。
【0124】
スプリットデータ列取得手段282は、受信手段201が受信した前記信号制御実行情報から、交通信号制御機5Aのサイクル毎の第一信号現示、及び第二信号現示におけるスプリットをそれぞれ取得し、これらを時系列に並べたスプリットデータ列を作成する。なお、スプリットデータ列取得手段282は、信号制御装置1等の他の装置が同様の手順で作成したスプリットデータ列を、通信によって取得しても良い。
【0125】
また、現示別待ち行列長データ列取得手段283は、サイクル毎に現示別待ち行列長取得手段221が取得した第一信号現示、及び第二信号現示における現示別待ち行列長をそれぞれ取得し、これらを時系列に並べた現示別待ち行列長データ列を作成する。なお、現示別待ち行列長データ列取得手段283は、信号制御装置1等の他の装置が同様の手順で作成した現示別待ち行列長データ列を、通信によって取得しても良い。
【0126】
そして、このようにして得られた偏渋滞有無を判定結果や、現示別待ち行列長データ列等はメモリ等の記憶部(図示せず)に記憶される。
【0127】
表示手段281は、前記作成したスプリットデータ列及び現示別待ち行列長データ列を、前記記憶部(図示せず)から読み出して同一の画面上に折れ線グラフ形式もしくは棒線グラフ形式で表示する。この場合、表示手段281は、表示期間入力手段284に入力された表示期間の表示始期及び表示終期によって指定される期間のデータを表示する。
【0128】
図7は、表示手段281によって表示される表示画面図の一例である。
【0129】
時間軸801上に表示される時刻等に応じて、前記作成した第一信号現示のスプリットデータ列を折れ線グラフ821として画面上段に表示する。また、時間軸801上に表示される時刻等に応じて、前記作成した第一信号現示の現示別待ち行列長データ列を棒線グラフ811として、同様に画面上段に表示する。
【0130】
また、第一信号現示と同様に、時間軸801上に表示される時刻等に応じて、前記作成した第二信号現示のスプリットデータ列折れ線グラフ822、及び現示別待ち行列長データ列棒線グラフ812を、画面下段に表示する。
【0131】
このように、交通状況の変動状況を知るための現示別待ち行列長データ列と交通信号制御の履歴を知るためのスプリットデータ列を、時間に対応付けて比較して閲覧できるようにすることで、交通状況の変動に応じて適切な交通信号制御を行ったか否かを視覚的に判断することが可能となり、大変有用である。
【0132】
また、一方を折れ線グラフで表示し、他方を棒線グラフで表示することで、これらを重畳して表示することが可能となるため、前記グラフの閲覧者は、一見して、交通状況及びスプリットの変動状況を比較して把握できるようになり、大変有用である。
【0133】
そして、現示別待ち行列長データ列を棒線グラフ811及び現示別待ち行列長データ列棒線グラフ812の間の位置に、渋滞判定手段251によって判定された渋滞の有無に関する情報を、渋滞判定領域831に表示する。渋滞判定領域831では、渋滞の発生した道路に対応する信号現示の側に太い横線を表示させることで、どの信号現示において渋滞が発生したのかを知ることができる。
【0134】
渋滞判定領域831に、渋滞の発生した道路に対応する信号現示の側に太い横線を表示させることで、一方の信号現示においてのみ渋滞が発生している時間では偏渋滞が発生していることを一見して知ることができる。
【0135】
前記渋滞判定領域831には、偏渋滞判定手段231が判定した偏渋滞の有無に関する情報を表示しても良いし、渋滞振動判定手段252が判定した渋滞振動の有無に関する情報を表示しても良い。また、これらの情報を必要に応じて同時に表示できるようにしても良いし、切替を指示する表示切替手段(図示せず)を別途設けて、当該切替手段の指示に従って切り替えて表示しても良い。
【0136】
表示始期領域841及び表示終期領域842には、前記折れ線グラフ821等を表示させる期間を入力することができる。本発明にかかる交通信号制御分析装置の表示画面を操作するオペレータは、コンピュータのマウスやキーボードといったヒューマンインタフェースを介して前記表示させる期間を入力する。
【0137】
表示期間を入力することにより、例えば、早朝や夕方の交通需要がピークとなる時間帯のように、交通信号制御が適切か否かを判断することが特に必要となる時間帯のデータのみを選択して表示させることが可能となり、大変有用である。
【0138】
例えば、前記時間帯のデータをプリンタ等の印刷装置によって紙に複写し、当該複写紙をコピーして配布することができるようになり、複数の交通管理者が交通信号制御の適切さについて議論する場合等に大変有用である。また、特定の時間帯を指定して紙に複写できるようにすることで、前記複写紙面上のポイント部分に注釈を加えることもできるようになる。
【0139】
例えば、前記グラフを日々の交通情報や交通信号制御状況を報告する日報等の書類に掲載し、渋滞が長時間解消しなかった原因や交通信号制御の改善ポイントを同時に記載しておくことで、前記書類がより一層有用で付加価値の高いものとなる。そのことで、例えば、前記書類を閲覧した交通行政担当者が、交通信号制御の高度化の重要性を的確に把握することができるようになり、大変有用である。
【0140】
以上のように、これらの発明によって、交通信号制御が適切か否かを、交通状況を的確に示す指標を用いて分析する交通信号制御分析装置を提供することができるため、交通信号制御が適切でない交差点を発見し、迅速に改善することが可能となる。
特に、交通需要の大きな都心部の交差点における交通信号制御の適否は、物流の効率に多大な影響を及ぼすものであるから、その社会的影響は大きく、これを的確に分析する装置は極めて有用である。
【0141】
なお、本発明にかかる交通信号制御分析装置は、1台のコンピュータによって実現されていても良いし、複数のコンピュータによって実現されていても良い。
複数のコンピュータによって実現されている場合には、必要に応じて、当該複数のコンピュータ間でデータを送受信すれば良い。
【0142】
なお、本発明は、実施形態に示した発明に限定して解釈されるものではなく、他の実施形態であっても良い。
【符号の説明】
【0143】
1 信号制御装置
2 交通信号制御分析装置
3 中央ルータ
4A、4B 端末ルータ
5A、5B 交通信号制御機
6Aa〜6Ad、6Ba〜6Bd 車両感知器
7Aa〜7Ad 信号灯器
201 受信手段
211 待ち行列長取得手段
221 現示別待ち行列長取得手段
231 偏渋滞判定手段
241 第一信号制御判定手段
242 第二信号制御判定手段
243 第三信号制御判定手段
251 渋滞判定手段
252 渋滞振動判定手段
261 交通状況変動取得手段
271 スプリット変動取得手段
281 表示手段
282 スプリットデータ列取得手段
283 現示別待ち行列長データ列取得手段
284 表示期間入力手段
801 時間軸
811 第一信号現示の現示別待ち行列長データ列の棒グラフ
812 第二信号現示の現示別待ち行列長データ列の棒グラフ
821 第一信号現示のスプリットデータ列の折れ線グラフ
822 第二信号現示のスプリットデータ列の折れ線グラフ
831 渋滞判定領域
841 表示始期領域
842 表示終期領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの信号現示について、前記スプリットの変動の大きさを示すスプリット変動情報を取得するスプリット変動取得手段と、
前記信号現示に対応する道路上を交差点方向に進行する車両の待ち行列長を取得する現示別待ち行列長取得手段と、
前記取得した現示別待ち行列長に基づいて、交通状況の変動の大きさを示す交通状況変動情報を取得する交通状況変動取得手段を有すること、
を特徴とする交通信号制御分析装置。
【請求項2】
前記スプリット変動情報は、
前記スプリットの最大値と最小値の差、前記スプリットの標準偏差、前記スプリットが前記最大値と等しい割合、及び前記スプリットが前記最小値と等しい割合のうちの少なくとも1つであること、
を特徴とする請求項1に記載の交通信号制御分析装置。
【請求項3】
前記取得したスプリット変動情報及び前記取得した交通状況変動情報に基づいて、前記交差点における交通信号制御が適切であるか否かを判断する第三信号制御判定手段をさらに有すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の交通信号制御分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−27075(P2010−27075A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251629(P2009−251629)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【分割の表示】特願2006−289655(P2006−289655)の分割
【原出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】