説明

交通信号制御機

【課題】動作中のセキュリティを向上させることができる交通信号制御機を提供する。
【解決手段】扉開閉検知部は、小扉及び内扉53を開扉するための操作を検知するセンサを備え、小扉及び内扉53を開扉するための操作を検知した場合、検知信号を扉開閉判定部へ出力する。扉開閉判定部は、扉開閉検知部から検知信号を取得した場合、小扉及び内扉53の開扉の可否を判定する。この場合、扉開閉判定部は、判定情報を要求すべく判定情報要求を制御部へ出力する。制御部は、扉開閉判定部からの要求に応じて、判定情報を扉開閉判定部へ出力する。扉開閉判定部は、開扉可と判定した場合には、解除許可信号を錠部12へ出力し、開扉不可と判定した場合には、解除不許可信号を錠部12へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号制御機に関し、特に、動作中のセキュリティを向上させることができる交通信号制御機に関する。
【背景技術】
【0002】
交通信号制御機は、信号灯器の点灯及び消灯の制御を行う。車両の運転者は、信号灯器の灯色の点灯状態を視認して、車両を減速させて停止し、あるいは速度を維持して走行する等の判断を行う。このため、交通信号制御機を正常に動作させることは、車両の安全な通行にとって重要かつ密接に関係する事項である。
【0003】
交通信号制御機には、保守要員による保守又は点検時に内部にアクセスするための扉が設けられている。そして、保守要員以外の第三者が不正に内部にアクセスすることができないように、扉には専用の錠が設けられ、保守要員等の予め許可された人しか扉を開けることができないようにして交通信号制御機の動作中のセキュリティが確保されている。
【0004】
一方、信号灯器の点灯タイミング等の交通信号情報を交通信号制御機から取得して無線で車両へ送信し、車両の運転者は、受信した交通信号情報に基づいて事前に車両の速度を調整することができるシステムが開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−24992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、交差点上流側の光ビーコン等で交通信号情報を受信した車両は、その時点で信号の変化する時点(例えばあと10秒で信号が青色から黄色に変わるなど)を把握するが、光ビーコン等との通信領域を通過した後で信号機の表示時間が変更された場合(保守員が手動操作によって10秒以内に信号機を黄色に変化させた場合等)、当該車両に提供した情報は結果的に正確性に欠ける情報となってしまう可能性がある。
【0006】
上記のようなケースを排除し、提供する交通信号情報の正確性をより一層高めることができるようにすることが望ましい。また、保守員による保守点検作業をさせることがセキュリティ等の観点から適切と考えられる場合とそうでない場合とがあるので、現状のように鍵を持っている保守員が必ず扉を開けることができるようになっていることはあまり望ましくない。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、動作中のセキュリティを向上させることができる交通信号制御機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る交通信号制御機は、錠が設けられた扉を備えた箱体状の交通信号制御機において、前記扉の開扉のための操作を検知する検知手段と、該検知手段で前記操作を検知した場合、前記扉の開扉の可否を判定する判定手段とを備え、該判定手段の判定結果に応じて、前記扉を解錠するように構成してあることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る交通信号制御機は、第1発明において、信号灯器の表示に関する信号情報を車両へ提供する提供手段を備え、前記判定手段は、前記提供手段による信号情報の提供を行わない場合、開扉可と判定するように構成してあることを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る交通信号制御機は、第1発明又は第2発明において、前記判定手段は、交通量の多少、時間帯又は他の交通信号制御機との連携動作の有無の少なくとも1つに基づいて、開扉の可否を判定するように構成してあることを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る交通信号制御機は、第1発明乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記検知手段で開扉のための操作を検知した場合、解錠要求を外部へ出力する出力手段を備え、前記判定手段は、外部からの解錠許可を受け付けた場合、開扉可と判定するように構成してあることを特徴とする。
【0012】
第5発明に係る交通信号制御機は、第1発明乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記判定手段で開扉不可と判定した場合、その旨を音声で出力する音声出力手段を備えることを特徴とする。
【0013】
第6発明に係る交通信号制御機は、第1発明乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記判定手段で開扉不可と判定した場合、その旨を表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【0014】
第1発明にあっては、交通信号制御機は、扉の開扉のための操作を検知した場合、開扉の可否を判定する。開扉のための操作は、扉が解錠される前の操作であり、例えば、扉に設けられた錠の鍵穴に鍵を挿入する操作、鍵を回そうとする操作、鍵を回した操作などである。交通信号制御機は、開扉の可否の判定結果に応じて、例えば、開扉可の場合には、扉を解錠する。これにより、予め定められた条件を満たす場合のみ扉を開けることができるので、人が交通信号制御機の内部にアクセスして誤操作又は故意に不正な操作を行うことを未然に防止することができ、動作中のセキュリティを従来よりも向上させることができる。
【0015】
第2発明にあっては、交通信号制御機は、信号灯器の表示に関する信号情報の車両への提供を行わない(例えば、制限動作状態)場合、開扉可と判定する。制限動作状態は、人による交通信号制御機の内部の操作が行われた場合でも、交通安全に対する影響が少ない動作に制限された動作状態であり、例えば、信号灯器の表示に関する信号情報の車両への提供をしていない状態である。これにより、交通信号制御機は、すでに交通安全に対して影響の少ない動作状態に切り替わっていることを条件として、開扉可と判定するので、人の誤操作による影響を最小限にしてフェールセーフ性を増大させることができる。また、人の誤操作により実際の信号灯器の点灯状態と車両へ提供する信号情報とが不一致になるような事態が生じるような場合でも、未然に誤った信号情報が車両へ提供されることを防止することができる。
【0016】
第3発明にあっては、交通信号制御機は、交通量の多少、時間帯又は他の交通信号制御機との連携動作の有無の少なくとも1つに基づいて、開扉の可否を判定する。例えば、交通量の多い場合(過飽和、近飽和など)には、開扉不可と判定し、交通量が少ない場合(例えば、閑散など)には、開扉可と判定する。また、昼間には開扉不可と判定し、夜間には開扉可と判定する。また、他の交通信号制御機との連携動作を行う場合(例えば、交通管制センター等により複数の交通信号制御機が遠隔制御される場合)には、開扉不可と判定し、他の交通信号制御機との連携動作を行なわない場合(例えば、1つの交通信号制御機が単独動作を行なう場合)には、開扉可と判定する。これにより、交通安全に対して影響の少ない条件を満たす場合のみ扉を開けることができるので、人が交通信号制御機の内部にアクセスして誤操作又は故意に不正な操作が行われることを未然に防止することができ、動作中のセキュリティを従来よりも向上させることができる。
【0017】
第4発明にあっては、交通信号制御機は、開扉のための操作を検知した場合、解錠要求を外部(例えば、交通管制センターなど)へ出力し、外部からの解錠許可を受け付けた場合、開扉可と判定する。これにより、交通管制センターにて解錠の許可を行うことができ、交通信号制御機の解錠及び施錠状態を集中管理することができる。また、交通管制センターにいる管理者により許可を与えることで交通信号制御機の動作中のセキュリティがさらに向上する。
【0018】
第5発明にあっては、交通信号制御機は、開扉不可と判定した場合、その旨を音声で出力する。これにより、解錠できないことを周知徹底することができ、無用な開扉操作を防止することができる。
【0019】
第6発明にあっては、交通信号制御機は、開扉不可と判定した場合、その旨を表示する。これにより、解錠できないことを周知徹底することができ、無用な開扉操作を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、人が交通信号制御機の内部にアクセスして誤操作又は故意に不正な操作を行うことを未然に防止することができ、動作中のセキュリティを従来よりも向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る交通信号制御機100を備えた交通信号システムの概要の一例を示す模式図である。交通信号システムは、交通信号制御機100、交通管制センター200、信号灯器300、路側機400、車両感知器500、車両に搭載した車載機600などを備えている。
【0022】
交通信号制御機100は、交差点の所定地点に設置された信号灯器300の点灯、消灯又は点滅を制御する。交通信号制御機100は、1台で1又は複数の交差点に設置された信号灯器300を制御することができる。また、複数の交通信号制御機100が、交通管制センター200との間で所定の情報の送受信を行うことができる。
【0023】
車両感知器500は、道路の所要の地点に設置され、道路を走行する車両を感知し、感知した結果得られた車両感知情報を交通信号制御機100へ出力する。
【0024】
交通信号制御機100は、取得した車両感知情報を交通管制センター200へ送信する。交通管制センター200は、複数の交通信号制御機100から車両感知情報を収集し、収集した車両感知情報に基づいて、道路上の交通が円滑に流れるための各信号灯器300の点灯又は消灯などの動作タイミングを算出し、算出した動作タイミングを動作指令情報として各交通信号制御機100へ送信する。
【0025】
交通信号制御機100は、受信した動作指令情報に基づいて信号情報を生成し、生成した信号情報を用いて信号灯器300の制御を行う。また、交通信号制御機100は、生成した信号情報を路側機400へ出力する。
【0026】
図2は信号情報の一例を示す説明図である。図2(a)は信号情報の基本構造の一例であり、ヘッダ部、データ部、及びフッタ部によって構成されることを示す。また、図2(b)は情報の詳細を示す一例である。
【0027】
ヘッダ部には、信号情報のデータサイズや、交通信号制御機100が車両に対して情報提供する対象となる灯色数(08)が格納されており、後続の領域に各表示灯色の表示予定秒数が、前記灯色数分格納されている。そして、フッタ部にはCRCやSUM値等が格納される。
【0028】
また、データ部には、ヘッダ部に格納された前記灯色数分の灯色の表示予定秒数が格納される。この例では、現在表示している信号灯色は青信号(コード「01」)で、その表示予定秒数は22秒(16進数で「16」)であり、青信号の次に表示するのは黄信号(コード「02」)で、その表示予定秒数は8秒(16進数で「08」)であり、黄信号の次に表示するのは右折矢(コード「13」)で、その表示予定秒数は10秒(16進数で「0A」)であり、右折矢の次に表示するのは赤信号(コード「03」)で、その表示予定秒数は64秒(16進数で「40」)であることを示している。なお、表示予定秒数は、100msや10ms単位で表現してもよい。また、表示予定秒数が不明の場合には、秒数のところに秒数が不明であることを示す「FF」などを格納すればよい。
【0029】
なお、交通信号制御では、交通量の少ない夜中の時点などにおいて、閃光表示(主道路側に黄点滅信号、従道路側に赤点滅信号を表示)を行うことがあるため、上記の灯色数がどの時間帯においても常に同じ数とは限らない。また、信号情報には2サイクル分の情報やそれ以上の情報を格納してもよいし、ちょうど1サイクル分の情報としていてもよい。また、信号情報のうちその一部の内容が未確定とされている場合があってもよい。
【0030】
路側機400は、車両に搭載した車載機600との間で無線通信機能を備え、交通信号制御機100から取得した信号情報を車載機600へ送信する。なお、交通信号制御機100が、直接車載機600へ信号情報を送信してもよい。また、路側機400は、交通信号制御機100と別個の装置でもよく、あるいは交通信号制御機100に内蔵する構成でもよい。
【0031】
車載機600は、受信した信号情報に基づいて、交差点で安全に停止するための車両の減速タイミング、あるいは交差点を安全に通過するための加速タイミング等の運転支援情報を運転者に提供する。また、車載機600が減速制御又は加速制御などを自動で行うこともできる。
【0032】
図3は本発明に係る交通信号制御機100の外観斜視図である。交通信号制御機100は、箱体状をなし、一面に開口部を有する本体50、本体50の開口部を開閉するための外扉51などを備えている。外扉51には、所要の寸法の独立した空間部を設けるとともに、その空間部を開閉するための小扉40を設けてある。外扉51には、鍵の挿入口を有する錠部52を設けてあり、錠部52により外扉51を解錠又は施錠することができる。また、小扉40には、鍵の挿入口を有する錠部41を設けてあり、錠部41を解錠することにより小扉40を開くことができ、錠部41を施錠することで小扉40を確実に閉めることができ第三者が不正に開扉することを防止できる。小扉40は、専用の鍵のみでは開けることができず、後述する扉開閉判定部14での判定結果に応じて解錠することができる。
【0033】
外扉51は、主に保守要員が交通信号制御機100の点検や保守を行う際に開閉する扉であり、小扉40は、主に警察官が信号灯器の点灯状態を手動で切り替える際に開閉する扉である。なお、外扉51は、専用の鍵を使用すればいつでも開けることができる。また、交通信号制御機100の形状は一例であって、図3の例に限定されるものではない。また、交通信号制御機100が箱体状であるということは、交通信号制御機100が箱体状である構成、及び箱体状の筐体に交通信号制御機100が収容されている構成も含む。
【0034】
図4は小扉40を開扉した状態の交通信号制御機100の外観斜視図であり、図5は外扉51を開扉した状態の交通信号制御機100の外観斜視図である。図4に示すように、空間部44には手動操作用押ボタンスイッチ45及び自動/手動切替スイッチ46を収容してあり、小扉40を開けることにより、手動操作用押ボタンスイッチ45及び自動/手動切替スイッチ46にアクセスすることができる。そして、自動/手動切替スイッチ46を操作して手動動作状態に切り替えた後、手動操作用押ボタンスイッチ45を押す都度、信号灯器の表示を次の表示へと切り替えることができる。また、施錠又は解錠に応じて小扉40に取り付けられた錠部41の係止部材が外扉51側に取り付けられた錠受け部材43に係止し、あるいは錠受け部材43から離脱することで小扉40を開閉することができる。
【0035】
また、図5に示すように、外扉51の裏面には、手動操作用押ボタンスイッチ45及び自動/手動切替スイッチ46を収容する空間部44を設けるための筐体54を固定してある。これにより、主扉51を開けた状態でも、空間部44に収容された手動操作用押ボタンスイッチ45及び自動/手動切替スイッチ46にアクセスすることができないように構成している。
【0036】
外扉51を開けた状態では、本体50に収容され、開閉することが可能な内扉53にアクセスすることができる。内扉53には、鍵の挿入口を有する錠部12を設けてあり、錠部12により内扉53を解錠又は施錠することができる。内扉53は、専用の鍵のみでは開けることができず、後述する扉開閉判定部14での判定結果に応じて解錠することができる。
【0037】
これにより、予め定められた条件を満たす場合のみ小扉40及び内扉53を開けることができるので、人が交通信号制御機100の内部にアクセスして誤操作又は故意に不正な操作を行うことを未然に防止することができ、動作中のセキュリティを従来よりも向上させることができる。
【0038】
内扉53には、交通安全上影響を与えることのない操作のみを受け付ける操作パネル55、交通信号制御機100の動作状況を監視することができる表示灯56などを配置してある。操作パネル55は、LED表示器及び操作スイッチ等を備え、各種設定操作や動作状況を監視することができる。また、表示灯56は、動作モード(通常動作モード、操作可能動作モードなど)が何であるかを示すとともに、異常発生を知らせる異常灯として機能する。
【0039】
図6は内扉53を開扉した状態の交通信号制御機100の外観斜視図である。内扉53を開けた状態では、本体50内に電源のオン/オフ及び各種設定のための操作スイッチ62を取り付けた制御機器60、61を収容している。制御機器60、61は、交通信号制御機100の信号制御機能を実現する各種機能部を備えている。制御機器60、61、操作スイッチ62などは、交通安全上影響を与える可能性が高いものであり、人の誤操作又は不正な操作を防止するため、内扉53により制御機器60、61、操作スイッチ62へのアクセスを制限している。
【0040】
図7は本発明に係る交通信号制御機100の構成の一例を示すブロック図である。交通信号制御機100は、交通信号制御機100全体を制御する制御部10、所定の操作を受け付ける操作部11、内扉53の解錠又は施錠を行う錠部12、小扉40の解錠又は施錠を行う錠部41、小扉40及び内扉53の開閉操作を検知する扉開閉検知部13、小扉40及び内扉53の開扉の可否を判定する扉開閉判定部14、路側機400又は車載機600との間及び交通管制センター200との間で所定の情報の送受信を行う通信部15、所定の情報を記憶するための記憶部16、信号灯器300の各灯色を点灯又は消灯すべく信号灯器300を駆動する灯器駆動部17、他の交通信号制御機、超音波感知器、光感知器若しくは画像感知器等の車両感知器又は情報板等の外部機器との間の通信機能を有するインタフェース部18、スピーカ、ブザー、LED又は液晶ディスプレイ等を具備した案内部19などを備えている。
【0041】
制御部10は、通信部15を介して交通管制センター200から動作指令情報を取得し、取得した動作指令情報に基づいて信号切替時間(信号灯器300の動作タイミング)を算出し、信号灯器300の切替タイミング信号を灯器駆動部17へ出力する。また、制御部10は、実際に行った信号制御の実行情報を記憶部16に記憶して収集し、通信部15を介して収集した実行情報を交通管制センター200へ送信する。
【0042】
灯器駆動部17は、各信号灯器300に対応したSSU(ソリッド・ステート・リレー・ユニット、SSRユニット)を備え、制御部10が出力した信号灯器300の切替タイミング信号によりSSUに印加される電圧(例えば、AC100V)を入り切りする。これにより、灯器駆動部17は、信号灯器300の各灯色を切替タイミングに応じて点灯、消灯又は点滅する。
【0043】
インタフェース部18は、制御部10からの指令を超音波感知器、光感知器若しくは画像感知器などの車両感知器、情報板又は他の交通信号制御機等の外部機器へ出力する。また、インタフェース部18は、外部機器からの情報(例えば、車両感知情報など)を取得して制御部10へ出力する。
【0044】
錠部12は、内扉53に取り付けてあり、鍵を挿入する挿入口、鍵の回転により回転するシリンダー回転子、シリンダー回転子の回転を固定又は開放する電磁ロック機構、各部を収容するシリンダー本体などを備えている。錠部12は、扉開閉判定部14からの出力に応じて、電磁ロック機構を作動させて、内扉53の解錠及び施錠を行う。なお、錠部12の構成は、上述の例に限定されるものではなく、解錠及び施錠を鍵のみならず、扉開閉判定部14からの出力により行うことができるものであれば、どのような構造のものであってもよい。なお、錠部41も錠部12と同様の構成を有する。
【0045】
扉開閉検知部13は、小扉40及び内扉53を開扉するための操作を検知するセンサを備え、小扉40及び内扉53を開扉するための操作を検知した場合、検知信号を扉開閉判定部14へ出力する。小扉40及び内扉53を開扉するための操作は、小扉40及び内扉53が解錠される前の操作であり、例えば、小扉40及び内扉53に設けられた錠部41、12の鍵穴に鍵を挿入する操作、鍵を回そうとする操作、鍵を回した操作などである。
【0046】
扉開閉判定部14は、扉開閉検知部13から検知信号を取得した場合、小扉40及び内扉53の開扉の可否を判定する。具体的には、扉開閉判定部14は、判定情報を要求すべく判定情報要求を制御部10へ出力する。制御部10は、扉開閉判定部14からの要求に応じて、判定情報を扉開閉判定部14へ出力する。判定情報は、交通量の多少、時間帯又は他の交通信号制御機との連携動作の有無などの情報の少なくとも1つである。扉開閉判定部14は、開扉可と判定した場合には、解除許可信号を錠部12、41へ出力し、開扉不可と判定した場合には、解除不許可信号を錠部12、41へ出力する。なお、開扉可否の判定方法の詳細は後述する。
【0047】
案内部19は、扉開閉判定部14で小扉40及び内扉53の開扉不可と判定した場合、解錠できないことをスピーカ又はブザーにより音声で通知する。また、案内部19は、解錠できないことをLED又は液晶ディスプレイに表示する。これにより、解錠できないことを周知徹底することができ、無用な開扉操作を防止することができる。なお、解錠する場合に、案内部19でその旨を通知することもできる。
【0048】
制御部10は、扉開閉判定部14から判定情報要求を取得した場合、以下のようにして判定情報を取得し、取得した判定情報を扉開閉判定部14へ出力する。すなわち、制御部10は、判定情報要求を取得した場合、通信部15を介して小扉40及び内扉53の解錠要求を交通管制センター200へ送信し、交通管制センター200から解錠許可を受信した場合、受信した解錠許可信号を扉開閉判定部14へ通知する。
【0049】
これにより、交通管制センター200にて解錠の許可を行うことができ、交通信号制御機100の解錠及び施錠状態を集中管理することができる。また、交通管制センター200にいる管理者により許可を与えることで交通信号制御機100の動作中のセキュリティがさらに向上する。
【0050】
また、制御部10は、交通管制センター200から解錠許可の代わりに判定情報を受信した場合、受信した判定情報を扉開閉判定部14へ通知する。
【0051】
次に、扉開閉判定部14での開扉の可否判定方法について説明する。図8は開扉の可否判定の一例を示す説明図である。図8に示すように、判定項目には、例えば、交通流、時間帯、他の交通信号制御機との連携動作などがある。また、判定情報である判定条件としては、交通流については、交通流の多少、すなわち、交通流が多い場合としての過飽和又は近飽和、交通流が少ない場合としての閑散がある。また、時間帯については、昼間及び夜間がある。また、連携動作については、連携動作の有無がある。
【0052】
動作モードは、通常の動作状態である通常動作モード及び通常の動作の一部を制限した制限動作状態としての人による操作が可能な操作可能動作モードがある。操作可能動作モードは、例えば、人による交通信号制御機100の内部の操作が行われた場合でも、交通安全に対する影響が少ない動作に制限された動作状態である。
【0053】
図8の例に示すように、扉開閉判定部14は、交通量の多い場合(過飽和、近飽和など)には、開扉不可と判定し、交通量が少ない場合(例えば、閑散など)には、開扉可と判定する。また、昼間には開扉不可と判定し、夜間には開扉可と判定する。また、他の交通信号制御機との連携動作を行う場合(例えば、交通管制センター200等により複数の交通信号制御機100が遠隔制御される場合)には、開扉不可と判定し、他の交通信号制御機との連携動作を行なわない場合(例えば、1つの交通信号制御機100が単独動作を行なう場合)には、開扉可と判定する。さらに、通常動作モードの場合には、開扉不可と判定し、操作可能動作モードの場合には、開扉可と判定する。
【0054】
これにより、交通安全に対して影響の少ない条件を満たす場合のみ扉を開けることができるので、人が交通信号制御機の内部にアクセスして誤操作又は故意に不正な操作が行われることを未然に防止することができ、動作中のセキュリティを従来よりも向上させることができる。
【0055】
また、制御部10は、扉開閉判定部14から判定情報要求を取得した場合、動作状態が操作可能動作モードでない場合、動作状態を通常動作モードから操作可能動作モードに切り替える。操作可能動作モードに切り替えることにより、人による交通信号制御機100の内部の操作が行われた場合でも、交通安全に対する影響が少ない動作に制限された動作状態にすることができる。これにより、内扉53を開けて内部の操作が行われた場合でも、交通信号制御機100は、すでに交通安全に対して影響の少ない動作状態に切り替わっているので、人の誤操作による影響を最小限にしてフェールセーフ性を増大させることができる。
【0056】
また、制御部10は、操作可能動作モード(制限動作状態)では、信号灯器300に関する信号情報の車両への提供を中止する。保守要員等が内部で操作することで、誤って信号灯器の点灯タイミングが変更されてしまった場合に、車両へ提供した点灯タイミングと実際の信号灯器300の点灯タイミングとが不一致となり、車両が赤信号の交差点にそのまま進入するおそれ、停止中の車両に追突するおそれがある。信号情報の車両への提供を中止することにより、人の誤操作により実際の信号灯器300の点灯状態と車両へ提供する信号情報とが不一致になるような事態が生じるような場合でも、未然に誤った信号情報が車両へ提供されることを防止することができる。
【0057】
次に、本発明に係る交通信号制御機100の動作について説明する。図9は交通信号制御機100の解錠処理の手順を示すフローチャートである。制御部10は、小扉40及び内扉53の開扉のための操作の有無を判定し(S11)、操作がない場合(S11でNO)、ステップS11の処理を続け、操作があった場合(S11でYES)、交通管制センター200へ解錠要求を送信する(S12)。
【0058】
制御部10は、交通管制センター200から解錠許可を受信したか否かを判定し(S13)、解錠許可を受信していない場合(S13でNO)、交通管制センター200から判定情報を受信したか否かを判定する(S14)。
【0059】
判定情報を受信した場合(S14でYES)、制御部10は、判定情報を用いて小扉40及び内扉53の開扉の可否を判定し(S15)、開扉不可の場合(S15でNO)、解錠禁止の旨を通知し(S16)、処理を終了する。開扉可の場合(S15でYES)、制御部10は、動作モードを通常動作モードから操作可能動作モードへ切替え(S17)、切替完了か否かを判定し(S18)、切替完了でない場合(S18でNO)、ステップS18の処理を行う。この場合、制御部10は、例えば、「モード切替中です。お待ちください。」などの表示を行う。切替完了の場合(S18でYES)、制御部10は、小扉40及び内扉53を解錠し(S19)、処理を終了する。
【0060】
交通管制センター200から解錠許可を受信した場合(S13でYES)、制御部10は、ステップS17の処理を行う。
【0061】
交通管制センター200から判定情報を受信しなかった場合(S14でNO)、制御部10は、動作モードを判定し(S20)、通常動作モードである場合(S20で通常)、操作可能動作モードへ切替え(S21)、切替完了か否かを判定する(S22)。
【0062】
切替完了でない場合(S22でNO)、制御部10は、ステップS16の処理を行う。切替完了の場合(S22でYES)、あるいは動作モードが操作可能動作モードである場合(S20で操作可能)、制御部10は、小扉40及び内扉53を解錠し(S23)、処理を終了する。
【0063】
以上説明したように、本発明によれば、予め定められた条件を満たす場合のみ小扉40及び内扉53を開けることができるので、人が交通信号制御機100の内部にアクセスして誤操作又は故意に不正な操作を行うことを未然に防止することができ、動作中のセキュリティを従来よりも向上させることができる。
【0064】
上述の実施の形態では、交通信号制御機100は、交通管制センター200との通信機能を備える集中制御形式であったが、これに限定されるものではなく、交通管制センター200との間で通信を行わない地点制御形式であってもよい。この場合には、交通信号制御機100で予め判定情報を記憶しておくようにすればよい。
【0065】
上述の実施の形態において、交通管制センター200から解錠許可や判定情報を受信しない場合、過去に受信した判定情報や、予め交通信号制御機100に設定又は記憶されている判定情報を用いて、解錠判定を行うこともできる。
【0066】
上述の実施の形態では、交通信号制御機100に小扉40及び内扉53を設け、専用の鍵だけでなく、予め定められた条件を満たす場合のみ小扉40及び内扉53を開けることができる構成としたが、このような構成は、交通信号制御機100だけでなく、情報を制御する制御装置などにも適用することができる。
【0067】
また、上述の実施の形態では、小扉40及び内扉53に扉の開閉の判定処理を行う機構を設ける構成であったが、これに限定されるものではなく、小扉40及び外扉51に扉の開閉の判定処理を行う機構を設けることもできる。例えば、上述の操作パネル55に交通安全に影響を与える操作を行う機能がある場合には、外扉51を専用の鍵のみでは開けることができない構成とするとともに、扉開閉判定部14での判定結果に応じて解錠する構成とすることができる。また、外扉と内扉との二重扉で構成する代わりに1つの扉だけで構成することもできる。
【0068】
以上に開示された実施の形態及び実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態及び実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての修正や変形を含むものと意図される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る交通信号制御機を備えた交通信号システムの概要の一例を示す模式図である。
【図2】信号情報の一例を示す説明図である。
【図3】本発明に係る交通信号制御機の外観斜視図である。
【図4】小扉を開扉した状態の交通信号制御機の外観斜視図である。
【図5】外扉を開扉した状態の交通信号制御機の外観斜視図である。
【図6】内扉を開扉した状態の交通信号制御機の外観斜視図である。
【図7】本発明に係る交通信号制御機の構成の一例を示すブロック図である。
【図8】開扉の可否判定の一例を示す説明図である。
【図9】交通信号制御機の解錠処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
10 制御部
11 操作部
12、41 錠部
13 扉開閉検知部
14 扉開閉判定部
15 通信部
16 記憶部
17 灯器駆動部
18 インタフェース部
19 案内部
40 小扉
50 本体
51 外扉
53 内扉
200 交通管制センター
300 信号灯器
400 路側機
500 車両感知器
600 車載機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠が設けられた扉を備えた箱体状の交通信号制御機において、
前記扉の開扉のための操作を検知する検知手段と、
該検知手段で前記操作を検知した場合、前記扉の開扉の可否を判定する判定手段と
を備え、
該判定手段の判定結果に応じて、前記扉を解錠するように構成してあることを特徴とする交通信号制御機。
【請求項2】
信号灯器の表示に関する信号情報を車両へ提供する提供手段を備え、
前記判定手段は、
前記提供手段による信号情報の提供を行わない場合、開扉可と判定するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の交通信号制御機。
【請求項3】
前記判定手段は、
交通量の多少、時間帯又は他の交通信号制御機との連携動作の有無の少なくとも1つに基づいて、開扉の可否を判定するように構成してあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の交通信号制御機。
【請求項4】
前記検知手段で開扉のための操作を検知した場合、解錠要求を外部へ出力する出力手段を備え、
前記判定手段は、
外部からの解錠許可を受け付けた場合、開扉可と判定するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の交通信号制御機。
【請求項5】
前記判定手段で開扉不可と判定した場合、その旨を音声で出力する音声出力手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の交通信号制御機。
【請求項6】
前記判定手段で開扉不可と判定した場合、その旨を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の交通信号制御機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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