交通情報処理装置、車両検知装置、交通情報システム及び交通情報処理方法
【課題】逆走車両を検出可能な交通情報処理装置、車両検知装置、交通情報システム及び交通情報処理方法において逆走車両の誤検出を低減すること。
【解決手段】車両の走行方向が予め定められた道路に設置された車両検知センサ11から出力される車両検知信号に基づいて、車両検知センサ11を通過する車両の通過状況を示す走行パラメータを算出し、車両検知信号に基づいて車両の走行方向とは逆向きに走行する逆走車両を検出する逆走車両検出処理を行うが、逆走車両検出処理を行う前に、走行パラメータの値に基づいて交通渋滞が生じているか否かを判定し、交通渋滞が生じていないと判定した場合に逆走車両検出処理を行う。
【解決手段】車両の走行方向が予め定められた道路に設置された車両検知センサ11から出力される車両検知信号に基づいて、車両検知センサ11を通過する車両の通過状況を示す走行パラメータを算出し、車両検知信号に基づいて車両の走行方向とは逆向きに走行する逆走車両を検出する逆走車両検出処理を行うが、逆走車両検出処理を行う前に、走行パラメータの値に基づいて交通渋滞が生じているか否かを判定し、交通渋滞が生じていないと判定した場合に逆走車両検出処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報処理装置、車両検知装置、交通情報システム及び交通情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び2には、車両の走行方向が予め定められた一方通行道路を、この走行方向とは逆向きに走行する逆走車両を検出可能な逆走車両検出装置(車両監視装置及び逆走車両停止装置)が開示されている。この逆走車両検出装置により得られた逆走車両の検出結果は、道路を管轄する各種機関や、交通情報をドライバに提供する機関等に通報され、安全な道路交通の実現・維持に利用される。
【0003】
そして、特許文献1及び特許文献2には、何れも、車両を検知する車両検知器(車両感知器及びセンサ)が一方通行道路に設けられている。この車両検知器は、走行方向に向かって配置された二つのループコイルを有している。これら二つのループコイルを車両が通過すると、各ループコイルにはインダクタンス変化に起因するパルスが生じる。この逆走車両検出装置では、二つのパルスの発生タイミングに基づいて一方通行道路を逆走する逆走車両が検出される。
【特許文献1】特開平10−269492号公報
【特許文献2】特開2004−178055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、二つのループコイルを、一台の逆走車両が通過するのと同じタイミングで複数台の車両が通過する場合がある。例えば、二つのループコイルのうち走行方向の下流側に配置されたループコイルのみを一台の車両が車線変更して通過した後に、後続の別の車両がもう一方のループコイル(走行方向の上流側に配置されたループコイル)を通過する場合等が考えられる。このような場合、逆走車両が誤検出されるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、逆走車両を検出可能な交通情報処理装置、車両検知装置、交通情報システム及び交通情報処理方法において逆走車両の誤検出を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の交通情報処理装置は、1)車両の走行方向が予め定められた道路に設置された車両検知センサから出力される車両検知信号に基づいて、車両の走行状態を示す一又は複数の走行パラメータの値を算出する算出手段と、2)上記走行パラメータの値に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する判定手段と、3)上記判定手段によって交通渋滞が生じていないと判定された場合に、上記車両検知信号に基づいて、上記走行方向とは逆向きに走行する逆走車両の検出を行う検出手段とを備える。
【0007】
また、本発明の車両検知装置は、1)車両の走行方向が予め定められた道路に設置されており、この設置箇所を車両が通過した際に車両検知信号を出力する車両検知センサと、2)上記車両検知信号に基づいて、車両の走行状態を示す一又は複数の走行パラメータの値を算出する算出手段と、3)上記走行パラメータの値に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する判定手段と、4)上記判定手段によって交通渋滞が生じていないと判定された場合に、上記車両検知信号に基づいて、上記走行方向とは逆向きに走行する逆走車両の検出を行う検出手段とを備える。
【0008】
また、本発明の交通情報処理方法は、1)車両の走行方向が予め定められた道路に設置された車両検知センサから出力される車両検知信号に基づいて、車両の走行状態を示す一又は複数の走行パラメータの値を算出する算出ステップと、2)上記走行パラメータの値に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する判定ステップと、3)上記判定ステップにおいて交通渋滞が生じていないと判定された場合に、上記車両検知信号に基づいて、上記走行方向とは逆向きに走行する逆走車両の検出を行う検出ステップとを含む。
【0009】
交通渋滞(以下、単に渋滞という場合がある)が生じている際には、逆走車両が走行する可能性は物理的に極めて低く、しかも、車両が低速で走行するため、車間距離が非常に短い状況において車線変更を行うこと等によって車両の対応付けが困難となり、逆走車両を誤検出する可能性が高くなる。しかし、本発明の交通情報処理装置、車両検知装置及び交通情報処理方法によれば、逆走車両を検出する前に、交通渋滞が生じているか否かを判定し、交通渋滞が生じていない場合に逆走車両の検出を行う。このため、逆走車両の検出効率を低下させることなく誤検出が抑制可能となる。
【0010】
更に、本発明の交通情報処理装置では、1)上記車両検知センサは、上記走行方向に向かって上記道路に順次配置された第1及び第2の検知部を有し、2)上記第1及び第2の検知部の各々は、車両が通過すると、この車両の通過時間に対応するパルス長のパルスを含む上記車両検知信号を出力し、3)上記検出手段は、上記第2の検知部に第1のパルスが生じた後に上記第1の検知部に第2のパルスが生じた場合に、この第1及び第2のパルスの検出によって一台分の逆走車両を特定する。本発明に係る第1及び第2の検知部は、例えば、ループコイルを用いたものや、超音波、光或いは温度等を用いて車両を感知して感知信号を出力可能なものを含む。
【0011】
更に、本発明の交通情報処理装置では、上記検出手段は、上記第1の検知部において上記第2のパルスの始端から予め設定された時間内に他のパルスが生じた場合には、上記第1のパルス及び上記第2のパルスを上記逆走車両に特定しないのが好ましい。仮に、第1及び第2のパルスを逆走車両に特定しても、第2のパルスの始端から予め設定された時間内(例えば比較的短い時間内)に他のパルスが第1の検知部に生じる、という可能性は低い。しかし、交通渋滞が生じているか否かが判定手段により判定される場合には、前処理として走行パラメータが算出手段により算出されるため、交通渋滞が実際に生じてから、交通渋滞が生じていると判定されるまでに時間がかかる場合がある。この場合、交通渋滞が実際に生じているにもかかわらず、検出手段による逆走車両の検出処理(交通渋滞が生じていないと判定された場合に行われる処理)が行われてしまう。このような状況においては、第2のパルスの始端から比較的短い時間内に他のパルスが第1の検出部に生じる場合もあり得る。そこで、検出手段が本発明に係る処理を行うことにより、前記第1の検知部において前記第2のパルスの始端から予め設定された時間内に他のパルスが生じた場合には、第1のパルス及び前記第2のパルスを前記逆走車両に特定しない。これにより、逆走車両の誤検出が更に低減できる。
【0012】
また、本発明の交通情報システムは、1)車両の走行方向が予め定められた道路に設置されており、この設置箇所を車両が通過すると車両検知信号を出力する車両検知センサを有する検知装置と、2)上記検知装置からの上記車両検知信号に基づいて逆走車両の検出を行う上記の何れかの交通情報処理装置とを備える。本発明の交通情報システムによれば、上記交通情報処理装置を用いて逆走車両の検出を行うため、逆走車両の検出機能を低下させることなく誤検出の抑制が可能な交通情報システムが実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、逆走車両を検出可能な交通情報処理装置、車両検知装置、交通情報システム及び交通情報処理方法において逆走車両の誤検出を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0015】
(第1の実施形態)
図1を参照して実施形態に係る交通情報システム100の構成を説明する。交通情報システム100は、車両検知装置10(検知装置)、交通情報処理装置20及び情報処理装置30を備える。車両検知装置10は、車両の走行方向(以下、車両走行方向という)が予め定められた道路(以下、一方通行道路という)に設置されており、この設置箇所(詳細には車両検知装置10が有する図2の車両検知センサ11の設置箇所)を車両が通過すると、車両検知信号を交通情報処理装置20に送信する。車両検知信号は、車両検知装置10を車両が通過する通過時間に応じたパルス長のパルス信号を含む。
【0016】
ここで、図2を参照して車両検知装置10の構成を説明する。車両検知装置10は、車両検知センサ11及び信号処理部13を有する。車両検知センサ11は、第1ループコイル11a(第1の検知部)及び第2ループコイル11b(第2の検知部)を含む。信号処理部13は、検知部15及び伝送ユニット17を含む。検知部15は、検知ユニット15a及び検知ユニット15bを含む。第1ループコイル11aは検知ユニット15aに接続されており、第2ループコイル11bは検知ユニット15bに接続されている。検知ユニット15a及び検知ユニット15bは伝送ユニット17に接続されている。
【0017】
第1ループコイル11a及び第2ループコイル11bは一方通行道路の路面に埋設されており、車両走行方向に向かって第1ループコイル11a、第2ループコイル11bの順に所定の設置間隔L(例えば略7m間隔)だけ離隔して設けられている。第1ループコイル11a及び第2ループコイル11bの幅(車両走行方向の長さ)は、例えば1.5m程度である。第1ループコイル11a及び第2ループコイル11bは、車両が通過するとインダクタンス変化が生じる。このインダクタンス変化が車両検知信号として検知ユニット15a及び検知ユニット15bに出力される。第1ループコイル11aは車両検知信号Aを出力し、第2ループコイル11bは車両検知信号Bを出力する。なお、車両検知センサ11では、第1ループコイル11a及び第2ループコイル11bに替えて、他のセンサを用いてもよい。他のセンサとしては、例えば、超音波、光或いは温度等を用いることによって車両を感知し、この感知に応じて感知信号を出力可能なものが利用できる。
【0018】
検知ユニット15a及び検知ユニット15bは、第1ループコイル11a及び第2ループコイル11bからそれぞれ出力された車両検知信号A及び車両検知信号Bを増幅する。検知ユニット15a及び検知ユニット15bは、この増幅後の信号を伝送ユニット17に出力する。伝送ユニット17は、検知ユニット15a及び検知ユニット15bから出力された車両検知信号A及び車両検知信号Bに対し、交通情報処理装置20に送信するために必要な信号変換処理、例えば、変調処理等を行う。伝送ユニット17は、この信号変換処理後の車両検知信号A及び車両検知信号Bを交通情報処理装置20に送信する。
【0019】
図1に戻って交通情報システム100の構成の説明を続ける。交通情報処理装置20は、情報処理部21(算出手段、判定手段及び検出手段を含む)を有しており、交通情報処理装置20は、複数の車両検知装置10と通信可能に接続されている。情報処理部21は、CPU、ROM及びRAM(何れも図示略)を含む。このCPUはROM(或いはRAM)内に格納されている各種プログラムを実行する。情報処理部21は、車両検知装置10から送信される車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて後述する図3及び図4の各フローチャートに示す処理(逆走車両の検出処理)をCPUに実行させる。情報処理部21(算出手段)は、車両検知装置10から送信される車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて、車両検知センサ11を通過する単位時間当たりの車両台数、平均速度及び時間占有率等を算出し(図3に示すステップS1〜S7の処理)、車両台数、平均速度及び時間占有率を含む情報(以下、走行パラメータ情報という)を情報処理装置30や他の外部装置に送信する。情報処理部21(判定手段)は、走行パラメータ情報に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する(図3に示すステップS8)。また、情報処理部21(検出手段)は、交通渋滞が生じていない場合には、車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて、走行方向とは逆向きに走行する逆走車両の検出を行い、この検出結果を情報処理装置30や他の外部装置に送信する(図3に示すステップS9〜S12)。ここで、時間占有率は、所定時間内(例えば1分又は5分)において第1ループコイル11a(又は第2ループコイル11b)を通過する一又は複数台の車両が第1ループコイル11a(又は第2ループコイル11b)上を占めている時間の単位時間に対する割合である。なお、上記の外部装置としては、例えば、道路に設けられた電子掲示板等に対し、ドライバに通知すべき各種の交通情報を供給する装置等である(以下同様)。
【0020】
情報処理装置30は、複数の交通情報処理装置20と通信可能に接続されており、交通情報処理装置20から送信される走行パラメータ情報や逆走車両の検出結果等に基づいて路線に沿った渋滞判定や旅行時間等を含む交通情報を算出する。情報処理装置30は、渋滞判定の判定結果や算出した旅行時間等を含む交通情報を他の外部装置に送信(或いは変調後に送信)する。
【0021】
次に、図3及び図4を参照して動作を説明する。図3及び図4のフローチャートに示す処理は情報処理部21により実行される。まず、車両検知装置10から車両検知信号A及び車両検知信号Bを受信すると(ステップS1)、この車両検知信号A及び車両検知信号Bに対する補正処理を行う(ステップS2)。
【0022】
この補正処理の内容を図5を参照して具体的に説明する。図5に示す車両検知信号は、車両検知信号A又はBの何れかである。図5に示す補正処理は、1)図5(a)に示すように、所定基準値(例えば、100ms程度)に満たないパルス長T1のパルスP1が車両検知信号に含まれている場合には、図5(b)に示すように、このパルスP1を車両検知信号から除去する波形整形処理を含み、更に、2)図5(c)に示すように、所定基準値(例えば、220ms程度)に満たないパルス間隔T2が車両検知信号に含まれている場合には、図5(d)に示すように、パルス間隔T2を構成するパルスP2及びパルスP3を単一のパルスP4にする波形整形処理を含む。
【0023】
図3に戻って説明する。ステップS2の後、車両検知信号A及び車両検知信号Bに含まれているパルスのうち、車両走行方向に走行している車両一台分に対応する一組のパルスを特定(以下、ペアリングという)する(ステップS3)。この一組のパルスとは、車両検知信号Aに含まれるパルスと車両検知信号Bに含まれるパルスとによって成るパルスのペア(以下、パルスペアという)である。
【0024】
ここで、ステップS3の処理内容を、図6及び図7を参照して具体的に説明する。図6に示すように、車両検知信号AにパルスP5が生じ、次いで、車両検知信号BにパルスP6が生じた場合、パルスP5及びパルスP6は、車両走行方向に走行している車両一台分に対応しているパルスペアに特定される。また、図7に、車両検知信号Aに含まれるパルスと車両検知信号Bに含まれるパルスとをペアリングする場合(図7(a))とペアリングしない場合(図7(b)及び図7(c))とが例示されている。図7と、この図7に係る下記記載とは、車両走行方向に走行する車両一台分に対応するパルスペアを特定する場合についての例示であり、逆走車両一台分に対応するパルスペアを特定する場合については、図7と、この図7に係る下記記載に対し、車両検知信号Aと車両検知信号Bとを入れ替えて同様の説明を行うことにより可能である。また、情報処理部21は、車両検知信号Aと車両検知信号Bのパルスの立ち上がりと立ち下がりの時刻等を内蔵メモリに常に記憶する。
【0025】
まず、図7(a)を参照して、車両検知信号Aに含まれるパルスと車両検知信号Bに含まれるパルスとをペアリングする場合について説明する。情報処理部21は、車両検知信号Bに含まれるパルスP10の立ち下りK2を検出すると、既にメモリに記憶された時間間隔K1内における車両検知信号Aの中から、立ち下がりK2のタイミング以前に生じたパルスP9が存在する場合には、このパルスP9をパルスP10とペアリングする。
【0026】
次に、図7(b)及び図7(c)を参照して、車両検知信号Aに含まれるパルスと車両検知信号Bに含まれるパルスとをペアリングしない場合について説明する。図7(b)に示すように、車両検知信号Aに含まれるパルスP11のパルス長K3に比較して、このパルスP11の立ち上がりK4のタイミング以降に生じたパルスP12の立ち上がりK5のタイミングと、立ち上がりK4のタイミングとの間隔K6がパルスP11のパルス長K3に対して短い場合(例えば、1/3程度以下)には、情報処理部21は、パルスP11とパルスP12とは別の車両により生じたパルスである(少なくとも、同一車両により生じたパルスではない)と判定し、パルスP11とパルスP12とのペアリングを行わない。ここで、ペアリングを行わない理由について説明する。間隔K6が短いほど、第1ループコイル11aと第2ループコイル11bとの間を走行する時の車両速度は大きい。このため、パルスP11のパルス長K3も短くなる。しかし、間隔K6がパルス長K3に対して、例えば1/3程度以下だと、パルス長K3は間隔K6に比べて長いといえる。このような場合には、パルスP11とパルスP12とは別の車両により生じたパルスである(少なくとも、同一車両により生じたパルスではない)と判定し、パルスP11とパルスP12とのペアリングを行わない。
【0027】
この判定基準は、次のような認識、つまり、パルスP11とパルスP12とが同一の車両により生じたパルスであれば、間隔K6がパルス長K3に対して、例えば1/3程度以下になることはほとんどない、との認識に基づいている。例えば、車両速度80km/hで走行する車長13mの大型車両の場合には、以下の計算に示すように、間隔K6がパルス長K3に対し1/3より小さくなることはない。すなわち、パルス長K3=(13m(車長)+1.5m(ループコイル幅))÷22.22m/sec(80km/hをm/secに換算した値)=0.65secであり、間隔K6=7m(ループコイル設置間隔)÷22.22m/sec(80km/hをm/secに換算した値)=0.315secである。この計算結果より、0.315sec(間隔K6)÷0.65sec(パルス長K3)=0.458が得られる。この値(パルス長K3に対する間隔K6の割合)は、1/3より大きい。なお、同一速度においては車長が短い車両ほどパルス長K3もより短くなる。このため、パルス長K3に対する間隔K6の割合は、上記の計算結果(0.458)よりも大きい、すなわち、1/3よりも大きい。
【0028】
また、図7(c)に示すように、車両検知信号Aに含まれるパルスP13の立ち上がりK7のタイミングと、この立ち上がりK7以降に生じた車両検知信号Bに含まれるパルスP14の立ち上がりK8のタイミングとの間隔K9がパルスP13のパルス長K10に対して長い場合(例えば、3倍程度以上)にも、情報処理部21は、パルスP13とパルスP14とは別の車両により生じたパルスである(少なくとも、同一車両により生じたパルスではない)と判定し、パルスP13とパルスP14とのペアリングを行わない。ここで、ペアリングを行わない理由について説明する。間隔K9が長いほど、第1ループコイル11aと第2ループコイル11bとの間を走行する時の車両速度は小さい。このため、パルスP13のパルス長K10も長くなる。しかし、間隔K9がパルス長K10に対して、例えば3倍程度以上だと、パルス長K10は間隔K9に比べて短いといえる。このような場合には、パルスP13とパルスP14とは別の車両により生じたパルスである(少なくとも、同一車両により生じたパルスではない)と判定し、パルスP13とパルスP14とのペアリングを行わない。この判定基準は、次のような認識、つまり、パルスP13とパルスP14とが同一の車両により生じたパルスであれば、間隔K9がパルス長K10に対し、例えば3倍程度以上になる場合はほとんどない、との認識に基づくものである。
【0029】
図3に戻って説明する。ステップS3において特定された車両走行方向に走行する車両一台分に対応しているパルスペアに基づいて、車両速度を算出し(ステップS4)、更に、パルス長を計測する(ステップS5)。車両速度とは、例えば、第1ループコイル11a又は第2ループコイル11bを車両が通過する際の速度である。ここで、車両速度は、車両検知信号A及び車両検知信号Bのパルスの立ち上がり時間差(例えば、図6に示すパルスP5とパルスP6の立ち上がり時間差T3)と、第1ループコイル11aと第2ループコイル11bとの設置間隔L(7m)とに基づき、次に示す計算式:車両速度km/h=7m(設置間隔L)÷T3sec(立ち上がり時間差)×(3600sec÷1000m)に従って算出される。また、パルス長とは、例えば、パルスペアを構成する二つのパルスのうち、車両検知信号Aに含まれるパルスのパルス長、或いは、車両検知信号Bに含まれるパルスのパルス長のうち何れか一方である。
【0030】
ステップS5の後、所定の第1の計測時間(例えば1分間)が経過したか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6において、第1の計測時間が経過した場合には(ステップS6;Yes)、ステップS7に移行し、第1の計測時間が経過していない場合には(ステップS6;No)、ステップS8に移行する。
【0031】
ステップS6(Yes)の後、ステップS7に移行して、第1の計測時間内にステップS3〜ステップS5で処理されたデータに基づいて第1の走行パラメータ情報(車両台数Q1、平均速度Vavg1及び時間占有率Occ1)を算出する。そしてステップS7の後、ステップS8に移行する。ステップS7は、ステップS7a、ステップS7b及びステップS7cを含む。ステップS7aでは、第1の計測時間内にステップS3で特定したパルスペアに対応する車両の合計台数(車両台数Q1)を算出する。ステップS7bでは、第1の計測時間内にステップS4で算出された車両速度の平均速度Vavg1を算出する。ステップS7cでは、第1の計測時間内にステップS5で計測されたパルス長の合計を算出し、第1の計測時間に対するこの合計パルス長の割合(時間占有率Occ1)を算出する。
【0032】
また、ステップS6では、第1の計測時間が経過した際に、第2の計測時間(例えば5分間)が経過したか否かについても更に判定する。そして、第2の計測時間が経過した場合には、ステップS7では、第2の計測時間内に、ステップS2〜ステップS5で処理されたデータに基づいて第2の走行パラメータ情報(車両台数Q2、平均速度Vavg2及び時間占有率Occ2)を算出する。第2の走行パラメータ情報が新たに算出されると、RAM等の内蔵メモリに既に格納されている第2の交通バラメータ情報が、この新たに算出された第2の走行パラメータ情報に更新される。ステップS7aでは、第2の計測時間内にステップS3で特定したパルスペアに対応する車両の合計台数(車両台数Q2)を算出する。ステップS7bでは、第2の計測時間内にステップS4で算出された車両速度の平均速度Vavg2を算出する。ステップS7cでは、第2の計測時間内にステップS5で計測されたパルス長の合計を算出し、第1の計測時間に対するこの合計パルス長の割合(時間占有率Occ2)を算出する。なお、ステップS7では、第2の計測時間内にステップS7a〜ステップS7cで第1の計測時間ごとに算出された第1の走行パラメータ情報に基づいて第2の走行パラメータ情報を算出してもよい。
【0033】
次に、ステップS8以降の処理内容について説明する。ステップS8では、第2の走行パラメータ情報に基づいて、後段の逆走車両検出処理(ステップS10で行う処理であり、以下同様)を行うか否かの判定処理を行う。ステップS8では、第2の走行パラメータ情報に基づいて、交通渋滞の有無を判定する処理であり、交通渋滞が生じていないと判定した場合に逆走車両検出処理が行われる。すなわち、ステップS8の処理は、実施形態における交通渋滞の判定基準を表している。以下、実施形態における交通渋滞とは、第2の走行パラメータがステップS8に係る判定基準を満たした場合を意味する。この判定基準とは、後述するように、第2の走行パラメータのうち、時間占有率Occ2が所定基準値r以上であるか、又は、車両台数Q2が所定基準値q以上であり且つ平均速度Vavg2が所定基準値v以下であるか、である。なお、ステップS8以降の各処理が行われている間であってもステップS1〜ステップS7の各処理が並行して行われる。
【0034】
まず、ステップS8の判定処理を、図4を参照して説明する。第2の走行パラメータ情報のうち、時間占有率Occ2が所定基準値r(例えば、50%〜80%の範囲内の値)以上であるか否かを判定する(ステップS8a)。ステップS8aにおいて、時間占有率Occ2が所定基準値r以上の場合には(ステップS8a;Yes)、交通渋滞が生じていると判定し、逆走車両検出処理を行わない旨の判定をする(ステップS8b)。ステップS8aにおいて、時間占有率Occ2が所定基準値rに満たない場合には(ステップS8a;No)、ステップS8cに移行する。ステップS8cでは、第2の走行パラメータ情報のうち、車両台数Q2が所定基準値q(例えば、5台)以上であるか否かを判定する。ステップS8cにおいて、車両台数Q2が所定基準値q以上の場合には(ステップS8c;Yes)、ステップS8dに移行し、車両台数Q2が所定基準値qに満たない場合には(ステップS8c;No)、ステップS8eに移行する。ステップS8dでは、第2の走行パラメータ情報のうち、平均速度Vavg2が所定基準値v(例えば、20km/h〜40km/hの範囲内の値)以下であるか否かを判定する。ステップS8dにおいて、平均速度Vavg2が所定基準値v以下の場合には(ステップS8d;Yes)、交通渋滞が生じていると判定し、ステップS8bに移行して逆走車両検出処理を行わない旨の判定をする。ステップS8dにおいて、平均速度Vavg2が所定基準値vに満たない場合には(ステップS8d;No)、交通渋滞は生じていないと判定し、逆走車両検出処理を行う旨の判定をする(ステップS8e)。
【0035】
すなわち、ステップS8では、時間占有率Occ2が所定基準値r以上の場合であるか、又は、車両台数Q2が所定基準値q以上であり且つ平均速度Vavg2が所定基準値v以下である場合に交通渋滞が生じていると判定し、逆走車両検出処理を行わない旨の判定をする。時間占有率Occ2が所定基準r以上の場合には、車両は第1ループコイル11a又は第2ループコイル11b上に比較的長い時間止まっていることを示している。このような場合には交通渋滞が生じていると判定する。また、車両台数Q2が所定基準値q以上であり且つ平均速度Vavg2が所定基準値v以下である場合には、第2の計測時間内に比較的多くの車両が比較的低速で走行していることを示している。このような場合にも交通渋滞が生じていると判定する。
【0036】
図3に戻ってステップS9以降の処理について説明する。ステップS8の後、このステップS8の判定結果に基づいて、逆走車両検出処理を行うか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9において、逆走車両検出処理を行うと判定した場合には(ステップS9;Yes)、ステップS10に移行し、そして、第2の計測時間内にステップS2で補正処理された車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて逆走車両検出処理を行う。ステップS10は、ステップS10a、ステップS10b及びステップS10cを含む。ステップS10aでは、車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて逆走車両に対応するパルスペア(逆走車両候補)を特定する。ここで、ステップS10aの処理内容を、図6を参照して具体的に説明する。図6に示すように、車両検知信号BにパルスP7が生じ、次いで、車両検知信号AにパルスP8が生じた場合、パルスP7及びパルスP8は、逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定される。
【0037】
図3に戻って説明する。ステップS10aの後、ステップS10aで特定したパルスペアに対して連続進入判定処理を行う(ステップS10b)。ここで図6を参照して連続進入判定処理について説明する。連続進入判定処理では、車両検知信号B(第2ループコイル11b)にパルスP7が生じた後に、車両検知信号A(第1ループコイル11a)にパルスP8が生じた場合に、更に、車両検知信号AにおいてパルスP8の始端(立ち上がり)から予め設定された時間間隔T4内(例えば、1秒程度)に車両検知信号BにパルスP7aが生じたか否かを判定する。この判定の結果、パルスP8に続いてパルスP7aが生じた場合には、パルスP7及びパルスP8を逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定しない。
【0038】
仮に、パルスP7及びパルスP8を逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定しても、パルスP8の立ち上がりから1秒程度の短い時間間隔T4内にパルスP7aが車両検知信号Bに生じる、という可能性は低い。しかし、前述のステップS8の処理(交通渋滞が生じているか否かの判定処理)では、前処理としてステップS7の処理(交通パラメータの集計)が行われていることから、交通渋滞が実際に生じてから、ステップS8において交通渋滞が生じていると判定されるまでに時間がかかる場合がある。この場合、交通渋滞が実際に生じているにもかかわらず、ステップS10以降の処理(交通渋滞が生じていないと判定された場合に行われる処理)が行われてしまう。このような状況においては、パルスP8の立ち上がりから1秒程度の短い時間間隔T4内にパルスP7aが車両検知信号Bに生じる場合もあり得る。そこで、ステップS10bにおいて連続進入判定処理を行うことにより、パルスP7、パルスP8及びパルスP7aのような連続パルスが生じている場合を擬似的に交通渋滞が生じている場合として、パルスP7及びパルスP8を逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定しないこととしている。また仮に、交通渋滞が生じていない場合に逆走車両が二台続けて走行すると、パルスP7、パルスP8、パルスP7a及びパルスP7bが連続して生じることとなる。このような場合、連続進入判定処理によって、パルスP7及びパルスP8は逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定されないが、パルスP7a及びパルスP7bは逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定できる。以上のように、連続進入判定処理では、ステップS8における交通渋滞の判定が、実際の交通渋滞の発生に遅れて行われるような場合であっても、逆走車両の誤検出が低減できる。
【0039】
図3に戻って説明する。ステップS10bの後、ステップS10bの連続進入判定結果に応じて逆走車両一台分に対応するパルスペアが特定されたか否か(逆走車両が検出されたか否か)の判定処理を行う(ステップS10c)。そして、ステップS10cにおける判定処理結果(逆走車両の検出結果)に基づいて、逆走車両の有無を最終的に判定する(ステップS11)。ステップS11において、逆走車両が有ると判定した場合(ステップS11;Yes)、この旨を外部装置(又は情報処理装置30)に通知する(ステップS12)。
【0040】
以上説明したように、交通情報処理装置20は情報処理部21を有しており、情報処理部21は、交通渋滞が生じていない場合に逆走車両検出処理を行い、交通渋滞が生じている場合には逆走車両検出処理を行わない、という機能を有する。この機能は、本発明者らによって得られた下記知見に基づいている。すなわち、この知見とは、交通渋滞が生じている場合には、逆走車両を誤検出する可能性は高く、逆走車両が存在する可能性は物理的に極めて低い、という認識である。このため、逆走車両の検出効率を低下させることなく誤検出の抑制が可能となる。
【0041】
ここで、交通渋滞の際に生じ得る逆走車両の誤検出の態様を、図8(a)及び図8(b)を参照して説明する。図8(a)には、同一の車両走行方向Dが定められた車線E1及び車線E2に、車両C1及び車両C2を含む複数の車両が交通渋滞に巻き込まれている様子が示されている。車線E1には、第1ループコイル11a及び第2ループコイル11bが路面に設けられている。そして、図8(a)には、まず、車線E2の車両C1が、車線E1に車線変更している様子が示されている。この際、車両C1は、第1ループコイル11aを通過せずに第2ループコイル11bのみを通過している。このため、車両検知信号BにはパルスP15が生じている。更に、図8(a)には、車両C1の車線変更の後に、車線E1の車両C2が、車線E2に車線変更している様子が示されている。この際、車両C2は、第1ループコイル11aを通過した後に第2ループコイル11bを通過することなく車線E2に車線変更している。このため、車両検知信号AにはパルスP16が生じている。すなわち、まず、車両検知信号BにパルスP15が生じ、その後、比較的短い時間が経過した後に車両検知信号AにパルスP16が生じている。このため、逆走車両が無いにもかからわず、パルスP15及びパルスP16が逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定される(逆走車両が誤検出される)可能性がある。
【0042】
また、図8(b)には、車両検知信号AにパルスP17、パルスP18及びパルスP21が順次生じており、車両検知信号BにパルスP19、パルスP20及びパルスP22が順次生じている様子が示されている。パルスP17とパルスP19とは、第1番目の車両が車両検知センサ11を通過したことにより生じたパルスペアであり、パルスP18とパルスP20とは、第1番目の車両に続く第2番目の車両が車両検知センサ11を通過したことにより生じたパルスペアである。そして、パルスP21とパルスP22とは、第2番目の車両に続く第3番目の車両が車両検知センサ11を通過したことにより生じたパルスペアである。しかし、交通渋滞のため、第1番目の車両と第2番目の車両との車間距離はほとんど無く、このため、パルスP17とパルスP18との間のパルス間隔Fは、非常に短くなっている(例えば220ms未満)。このため、パルス間隔Fは、ステップS2の補正処理によって除去される。すなわち、パルスP17及びパルスP18は単一のパルスP23に波形整形される。よって、この補正処理によりパルスP20とパルスペアを組むべきパルスP18は存在しなくなる。この結果、車両の実際の走行状況に対応したパルスペアの特定が不可能となる。これに対し、車両の実際の走行状態に対応していないパルスペア(パルスP20とパルスP21とによるパルスペア)が逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定される(逆走車両が誤検出される)可能性がある。
【0043】
ここで、交通渋滞が生じている場合には、図8(b)に示すような220msに満たない比較的短いパルス間隔Fが生じ易い。図9を参照して、220msのパルス間隔Fがどのような状況で生じ得るかを説明する。図9には、同一速度で続けて走行する二台の車両の走行速度Vel(km/h)と、各走行速度Velの際にこの二台の車両の各々によって生じるパルス同士のパルス間隔Fが220msとなる車間距離Int(m)とを示す。更に、図9には、走行速度Velに応じて定められた一般道路及び高速道路における安全車間距離(m)も示されている。図9に示す安全車間距離は、一般道路の場合には、走行速度Vel(30km〜60km)の値から「15」を差し引いた値にメートル(m)の単位を付した量であり、高速道路の場合には、走行速度Velの値にメートル(m)の単位を付した量である。図9に示す数値は、二台の車両(車長4m)が連続して走行している場合の試算結果である。例えば、二台の車両の走行速度Velが10km/hの場合の車間距離Intは2.1mとなる。この車間距離Intの値「2.1」は、高速道路における安全車間距離(=10m)と乖離する。しかし、交通渋滞が生じている際には、車間距離Intが安全車間距離を下回る場合が十分生じ得る。このような場合には、補正対象となる220msに満たないパルス間隔Fが生じる。
【0044】
上記したように、交通渋滞の際に生じ得る逆走車両の誤検出の態様を、図8(a)及び図8(b)を参照して説明したが、実施形態に係る交通情報処理装置20は、交通渋滞が生じているか否かを適切に判定可能であり、交通渋滞が生じていると判定した場合には逆走車両の検出を行わない。このため、図8(a)及び図8(b)に示すような場合、すなわち、交通渋滞の際に逆走車両が誤検出され得る場合であっても、逆走車両が誤検出される可能性は低くなる。
【0045】
(第2の実施形態)
なお、本発明は、実施形態に係る交通情報システム100に限らない。例えば、図10に示す交通情報システム101に対しても適用される。図10に示す交通情報システム101は、IP(Internet Protocol)通信型車両検出装置40、集約処理装置50及び情報処理装置60を備える。この交通情報システム101は、LAN(Local Area Network)を介したデータの送受信が可能なシステムである。すなわち、IP通信型車両検出装置40、集約処理装置50及び情報処理装置60の各々はLANに接続されており、LANを介したデータの送受信が行える。そして、上述した第1の実施形態に係る交通情報システム100のうち交通情報処理装置20が行う機能、すなわち、図3及び図4のフローチャートに示す処理を実行する機能を、第2の実施形態に係る交通情報システム101では、一方通行道路に設置されたIP型車両検出装置40が実行する。
【0046】
ここで、図11を参照してIP通信型車両検出装置40の構成を説明する。IP通信型車両検出装置40は、車両検知センサ11及び信号処理部41を有する。信号処理部41は、検知部15、集約処理ユニット43(算出手段、判定手段及び検出手段を含む)及びIP伝送ユニット45を含む。検知ユニット15a及び検知ユニット15bは集約処理ユニット43に接続されている。IP伝送ユニット45は、集約処理ユニット43に接続されている。検知ユニット15a及び検知ユニット15bは、第1ループコイル11a及び第2ループコイル11bの各々から出力される車両検知信号A及び車両検知信号Bを増幅する。検知ユニット15a及び検知ユニット15bは、この増幅後の車両検知信号A及び車両検知信号Bを集約処理ユニット43に出力する。集約処理ユニット43は、CPU、ROM及びRAM(何れも図示略)を備え、このCPUはROM(或いはRAM)内に格納されている各種プログラムを実行する。集約処理ユニット43は、検知ユニット15a及び検知ユニット15bの各々から出力された車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて、図3及び図4の各フローチャートに示す処理をCPUに実行させる。集約処理ユニット43(算出手段)は、車両検知装置10から送信される車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて、車両検知センサ11を通過する単位時間当たりの車両台数、平均速度及び時間占有率を算出し(図3に示すステップS1〜S7の処理)、車両台数、平均速度及び時間占有率等を含む走行パラメータ情報(第1及び/又は第2の走行パラメータ情報であり、以下同様)をIP伝送ユニット45に出力する。集約処理ユニット43(判定手段)は、走行パラメータ情報に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する(図3に示すステップS8)。また、集約処理ユニット43(検出手段)は、交通渋滞が生じていない場合には、車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて逆走車両の検出を行い、この検出結果をIP伝送ユニット45に出力する(図3に示すステップS9〜S12)。IP伝送ユニット45は、LANを介してデータを送受信するためのインターフェースを有する。IP伝送ユニット45は、集約処理ユニット43から出力された走行パラメータ情報と逆走車両の検出結果とを、LANを介して集約処理装置50に送信する。
【0047】
図10に戻って交通情報システム101の構成の説明を続ける。集約処理装置50は、複数のIP通信型車両検出装置40との間でLANを介したデータの送受信を行う。集約処理装置50は、特に、IP通信型車両検出装置40(集約処理ユニット43)から送信された走行パラメータ情報と逆走車両の検出結果とを集約する。集約処理装置50は、この集約した走行パラメータ情報と逆走車両の検出結果とをLANを介して情報処理装置60や他の外部機器等に送信する。情報処理装置60は、集約処理装置50から送信された集約された走行パラメータ情報や逆走車両の検出結果等に基づいて路線に沿った渋滞判定や旅行時間を算出する。情報処理装置30は、渋滞判定の判定結果や算出した旅行時間等を含む情報を他の外部装置に送信する。
【0048】
以上説明した交通情報システム101によれば、道路に設置されたIP通信型車両検出装置40のうち、信号処理部41によって走行パラメータ情報が算出される。そして、この算出された走行パラメータ情報が、LANを介して外部機器や集約処理装置50及び情報処理装置60に送信される。このようにLANを介して走行パラメータ情報の送受信が行われるため、走行パラメータ情報の送受信がインターネット等を介して広範囲に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施形態に係る交通情報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る車両検知装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る逆走車両の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】第1の実施形態に係る逆走車両の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】第1の実施形態に係る補正処理を説明するための図である。
【図6】第1の実施形態に係るパルスペアの特定方法を説明するための図である。
【図7】第1の実施形態に係るパルスペアの特定方法を説明するための図である。
【図8】逆走車両の誤検出が生じる可能性のある状況を説明するための図である。
【図9】走行速度と車間距離との対応を示す図である。
【図10】第2の実施形態に係る交通情報システムの構成を示すブロック図である。
【図11】第2の実施形態に係る車両検知装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
10…車両検知装置、100,101…交通情報システム、11…車両検知センサ、11a…第1ループコイル、11b…第2ループコイル、13,41…信号処理部、15…検知部、15a…検知ユニット、15b…検知ユニット、17…伝送ユニット、20…交通情報処理装置、21…情報処理部、30,60…情報処理装置、50…集約処理装置、40…IP通信型車両検出装置、43…集約処理ユニット、45…IP伝送ユニット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報処理装置、車両検知装置、交通情報システム及び交通情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び2には、車両の走行方向が予め定められた一方通行道路を、この走行方向とは逆向きに走行する逆走車両を検出可能な逆走車両検出装置(車両監視装置及び逆走車両停止装置)が開示されている。この逆走車両検出装置により得られた逆走車両の検出結果は、道路を管轄する各種機関や、交通情報をドライバに提供する機関等に通報され、安全な道路交通の実現・維持に利用される。
【0003】
そして、特許文献1及び特許文献2には、何れも、車両を検知する車両検知器(車両感知器及びセンサ)が一方通行道路に設けられている。この車両検知器は、走行方向に向かって配置された二つのループコイルを有している。これら二つのループコイルを車両が通過すると、各ループコイルにはインダクタンス変化に起因するパルスが生じる。この逆走車両検出装置では、二つのパルスの発生タイミングに基づいて一方通行道路を逆走する逆走車両が検出される。
【特許文献1】特開平10−269492号公報
【特許文献2】特開2004−178055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、二つのループコイルを、一台の逆走車両が通過するのと同じタイミングで複数台の車両が通過する場合がある。例えば、二つのループコイルのうち走行方向の下流側に配置されたループコイルのみを一台の車両が車線変更して通過した後に、後続の別の車両がもう一方のループコイル(走行方向の上流側に配置されたループコイル)を通過する場合等が考えられる。このような場合、逆走車両が誤検出されるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、逆走車両を検出可能な交通情報処理装置、車両検知装置、交通情報システム及び交通情報処理方法において逆走車両の誤検出を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の交通情報処理装置は、1)車両の走行方向が予め定められた道路に設置された車両検知センサから出力される車両検知信号に基づいて、車両の走行状態を示す一又は複数の走行パラメータの値を算出する算出手段と、2)上記走行パラメータの値に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する判定手段と、3)上記判定手段によって交通渋滞が生じていないと判定された場合に、上記車両検知信号に基づいて、上記走行方向とは逆向きに走行する逆走車両の検出を行う検出手段とを備える。
【0007】
また、本発明の車両検知装置は、1)車両の走行方向が予め定められた道路に設置されており、この設置箇所を車両が通過した際に車両検知信号を出力する車両検知センサと、2)上記車両検知信号に基づいて、車両の走行状態を示す一又は複数の走行パラメータの値を算出する算出手段と、3)上記走行パラメータの値に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する判定手段と、4)上記判定手段によって交通渋滞が生じていないと判定された場合に、上記車両検知信号に基づいて、上記走行方向とは逆向きに走行する逆走車両の検出を行う検出手段とを備える。
【0008】
また、本発明の交通情報処理方法は、1)車両の走行方向が予め定められた道路に設置された車両検知センサから出力される車両検知信号に基づいて、車両の走行状態を示す一又は複数の走行パラメータの値を算出する算出ステップと、2)上記走行パラメータの値に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する判定ステップと、3)上記判定ステップにおいて交通渋滞が生じていないと判定された場合に、上記車両検知信号に基づいて、上記走行方向とは逆向きに走行する逆走車両の検出を行う検出ステップとを含む。
【0009】
交通渋滞(以下、単に渋滞という場合がある)が生じている際には、逆走車両が走行する可能性は物理的に極めて低く、しかも、車両が低速で走行するため、車間距離が非常に短い状況において車線変更を行うこと等によって車両の対応付けが困難となり、逆走車両を誤検出する可能性が高くなる。しかし、本発明の交通情報処理装置、車両検知装置及び交通情報処理方法によれば、逆走車両を検出する前に、交通渋滞が生じているか否かを判定し、交通渋滞が生じていない場合に逆走車両の検出を行う。このため、逆走車両の検出効率を低下させることなく誤検出が抑制可能となる。
【0010】
更に、本発明の交通情報処理装置では、1)上記車両検知センサは、上記走行方向に向かって上記道路に順次配置された第1及び第2の検知部を有し、2)上記第1及び第2の検知部の各々は、車両が通過すると、この車両の通過時間に対応するパルス長のパルスを含む上記車両検知信号を出力し、3)上記検出手段は、上記第2の検知部に第1のパルスが生じた後に上記第1の検知部に第2のパルスが生じた場合に、この第1及び第2のパルスの検出によって一台分の逆走車両を特定する。本発明に係る第1及び第2の検知部は、例えば、ループコイルを用いたものや、超音波、光或いは温度等を用いて車両を感知して感知信号を出力可能なものを含む。
【0011】
更に、本発明の交通情報処理装置では、上記検出手段は、上記第1の検知部において上記第2のパルスの始端から予め設定された時間内に他のパルスが生じた場合には、上記第1のパルス及び上記第2のパルスを上記逆走車両に特定しないのが好ましい。仮に、第1及び第2のパルスを逆走車両に特定しても、第2のパルスの始端から予め設定された時間内(例えば比較的短い時間内)に他のパルスが第1の検知部に生じる、という可能性は低い。しかし、交通渋滞が生じているか否かが判定手段により判定される場合には、前処理として走行パラメータが算出手段により算出されるため、交通渋滞が実際に生じてから、交通渋滞が生じていると判定されるまでに時間がかかる場合がある。この場合、交通渋滞が実際に生じているにもかかわらず、検出手段による逆走車両の検出処理(交通渋滞が生じていないと判定された場合に行われる処理)が行われてしまう。このような状況においては、第2のパルスの始端から比較的短い時間内に他のパルスが第1の検出部に生じる場合もあり得る。そこで、検出手段が本発明に係る処理を行うことにより、前記第1の検知部において前記第2のパルスの始端から予め設定された時間内に他のパルスが生じた場合には、第1のパルス及び前記第2のパルスを前記逆走車両に特定しない。これにより、逆走車両の誤検出が更に低減できる。
【0012】
また、本発明の交通情報システムは、1)車両の走行方向が予め定められた道路に設置されており、この設置箇所を車両が通過すると車両検知信号を出力する車両検知センサを有する検知装置と、2)上記検知装置からの上記車両検知信号に基づいて逆走車両の検出を行う上記の何れかの交通情報処理装置とを備える。本発明の交通情報システムによれば、上記交通情報処理装置を用いて逆走車両の検出を行うため、逆走車両の検出機能を低下させることなく誤検出の抑制が可能な交通情報システムが実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、逆走車両を検出可能な交通情報処理装置、車両検知装置、交通情報システム及び交通情報処理方法において逆走車両の誤検出を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0015】
(第1の実施形態)
図1を参照して実施形態に係る交通情報システム100の構成を説明する。交通情報システム100は、車両検知装置10(検知装置)、交通情報処理装置20及び情報処理装置30を備える。車両検知装置10は、車両の走行方向(以下、車両走行方向という)が予め定められた道路(以下、一方通行道路という)に設置されており、この設置箇所(詳細には車両検知装置10が有する図2の車両検知センサ11の設置箇所)を車両が通過すると、車両検知信号を交通情報処理装置20に送信する。車両検知信号は、車両検知装置10を車両が通過する通過時間に応じたパルス長のパルス信号を含む。
【0016】
ここで、図2を参照して車両検知装置10の構成を説明する。車両検知装置10は、車両検知センサ11及び信号処理部13を有する。車両検知センサ11は、第1ループコイル11a(第1の検知部)及び第2ループコイル11b(第2の検知部)を含む。信号処理部13は、検知部15及び伝送ユニット17を含む。検知部15は、検知ユニット15a及び検知ユニット15bを含む。第1ループコイル11aは検知ユニット15aに接続されており、第2ループコイル11bは検知ユニット15bに接続されている。検知ユニット15a及び検知ユニット15bは伝送ユニット17に接続されている。
【0017】
第1ループコイル11a及び第2ループコイル11bは一方通行道路の路面に埋設されており、車両走行方向に向かって第1ループコイル11a、第2ループコイル11bの順に所定の設置間隔L(例えば略7m間隔)だけ離隔して設けられている。第1ループコイル11a及び第2ループコイル11bの幅(車両走行方向の長さ)は、例えば1.5m程度である。第1ループコイル11a及び第2ループコイル11bは、車両が通過するとインダクタンス変化が生じる。このインダクタンス変化が車両検知信号として検知ユニット15a及び検知ユニット15bに出力される。第1ループコイル11aは車両検知信号Aを出力し、第2ループコイル11bは車両検知信号Bを出力する。なお、車両検知センサ11では、第1ループコイル11a及び第2ループコイル11bに替えて、他のセンサを用いてもよい。他のセンサとしては、例えば、超音波、光或いは温度等を用いることによって車両を感知し、この感知に応じて感知信号を出力可能なものが利用できる。
【0018】
検知ユニット15a及び検知ユニット15bは、第1ループコイル11a及び第2ループコイル11bからそれぞれ出力された車両検知信号A及び車両検知信号Bを増幅する。検知ユニット15a及び検知ユニット15bは、この増幅後の信号を伝送ユニット17に出力する。伝送ユニット17は、検知ユニット15a及び検知ユニット15bから出力された車両検知信号A及び車両検知信号Bに対し、交通情報処理装置20に送信するために必要な信号変換処理、例えば、変調処理等を行う。伝送ユニット17は、この信号変換処理後の車両検知信号A及び車両検知信号Bを交通情報処理装置20に送信する。
【0019】
図1に戻って交通情報システム100の構成の説明を続ける。交通情報処理装置20は、情報処理部21(算出手段、判定手段及び検出手段を含む)を有しており、交通情報処理装置20は、複数の車両検知装置10と通信可能に接続されている。情報処理部21は、CPU、ROM及びRAM(何れも図示略)を含む。このCPUはROM(或いはRAM)内に格納されている各種プログラムを実行する。情報処理部21は、車両検知装置10から送信される車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて後述する図3及び図4の各フローチャートに示す処理(逆走車両の検出処理)をCPUに実行させる。情報処理部21(算出手段)は、車両検知装置10から送信される車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて、車両検知センサ11を通過する単位時間当たりの車両台数、平均速度及び時間占有率等を算出し(図3に示すステップS1〜S7の処理)、車両台数、平均速度及び時間占有率を含む情報(以下、走行パラメータ情報という)を情報処理装置30や他の外部装置に送信する。情報処理部21(判定手段)は、走行パラメータ情報に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する(図3に示すステップS8)。また、情報処理部21(検出手段)は、交通渋滞が生じていない場合には、車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて、走行方向とは逆向きに走行する逆走車両の検出を行い、この検出結果を情報処理装置30や他の外部装置に送信する(図3に示すステップS9〜S12)。ここで、時間占有率は、所定時間内(例えば1分又は5分)において第1ループコイル11a(又は第2ループコイル11b)を通過する一又は複数台の車両が第1ループコイル11a(又は第2ループコイル11b)上を占めている時間の単位時間に対する割合である。なお、上記の外部装置としては、例えば、道路に設けられた電子掲示板等に対し、ドライバに通知すべき各種の交通情報を供給する装置等である(以下同様)。
【0020】
情報処理装置30は、複数の交通情報処理装置20と通信可能に接続されており、交通情報処理装置20から送信される走行パラメータ情報や逆走車両の検出結果等に基づいて路線に沿った渋滞判定や旅行時間等を含む交通情報を算出する。情報処理装置30は、渋滞判定の判定結果や算出した旅行時間等を含む交通情報を他の外部装置に送信(或いは変調後に送信)する。
【0021】
次に、図3及び図4を参照して動作を説明する。図3及び図4のフローチャートに示す処理は情報処理部21により実行される。まず、車両検知装置10から車両検知信号A及び車両検知信号Bを受信すると(ステップS1)、この車両検知信号A及び車両検知信号Bに対する補正処理を行う(ステップS2)。
【0022】
この補正処理の内容を図5を参照して具体的に説明する。図5に示す車両検知信号は、車両検知信号A又はBの何れかである。図5に示す補正処理は、1)図5(a)に示すように、所定基準値(例えば、100ms程度)に満たないパルス長T1のパルスP1が車両検知信号に含まれている場合には、図5(b)に示すように、このパルスP1を車両検知信号から除去する波形整形処理を含み、更に、2)図5(c)に示すように、所定基準値(例えば、220ms程度)に満たないパルス間隔T2が車両検知信号に含まれている場合には、図5(d)に示すように、パルス間隔T2を構成するパルスP2及びパルスP3を単一のパルスP4にする波形整形処理を含む。
【0023】
図3に戻って説明する。ステップS2の後、車両検知信号A及び車両検知信号Bに含まれているパルスのうち、車両走行方向に走行している車両一台分に対応する一組のパルスを特定(以下、ペアリングという)する(ステップS3)。この一組のパルスとは、車両検知信号Aに含まれるパルスと車両検知信号Bに含まれるパルスとによって成るパルスのペア(以下、パルスペアという)である。
【0024】
ここで、ステップS3の処理内容を、図6及び図7を参照して具体的に説明する。図6に示すように、車両検知信号AにパルスP5が生じ、次いで、車両検知信号BにパルスP6が生じた場合、パルスP5及びパルスP6は、車両走行方向に走行している車両一台分に対応しているパルスペアに特定される。また、図7に、車両検知信号Aに含まれるパルスと車両検知信号Bに含まれるパルスとをペアリングする場合(図7(a))とペアリングしない場合(図7(b)及び図7(c))とが例示されている。図7と、この図7に係る下記記載とは、車両走行方向に走行する車両一台分に対応するパルスペアを特定する場合についての例示であり、逆走車両一台分に対応するパルスペアを特定する場合については、図7と、この図7に係る下記記載に対し、車両検知信号Aと車両検知信号Bとを入れ替えて同様の説明を行うことにより可能である。また、情報処理部21は、車両検知信号Aと車両検知信号Bのパルスの立ち上がりと立ち下がりの時刻等を内蔵メモリに常に記憶する。
【0025】
まず、図7(a)を参照して、車両検知信号Aに含まれるパルスと車両検知信号Bに含まれるパルスとをペアリングする場合について説明する。情報処理部21は、車両検知信号Bに含まれるパルスP10の立ち下りK2を検出すると、既にメモリに記憶された時間間隔K1内における車両検知信号Aの中から、立ち下がりK2のタイミング以前に生じたパルスP9が存在する場合には、このパルスP9をパルスP10とペアリングする。
【0026】
次に、図7(b)及び図7(c)を参照して、車両検知信号Aに含まれるパルスと車両検知信号Bに含まれるパルスとをペアリングしない場合について説明する。図7(b)に示すように、車両検知信号Aに含まれるパルスP11のパルス長K3に比較して、このパルスP11の立ち上がりK4のタイミング以降に生じたパルスP12の立ち上がりK5のタイミングと、立ち上がりK4のタイミングとの間隔K6がパルスP11のパルス長K3に対して短い場合(例えば、1/3程度以下)には、情報処理部21は、パルスP11とパルスP12とは別の車両により生じたパルスである(少なくとも、同一車両により生じたパルスではない)と判定し、パルスP11とパルスP12とのペアリングを行わない。ここで、ペアリングを行わない理由について説明する。間隔K6が短いほど、第1ループコイル11aと第2ループコイル11bとの間を走行する時の車両速度は大きい。このため、パルスP11のパルス長K3も短くなる。しかし、間隔K6がパルス長K3に対して、例えば1/3程度以下だと、パルス長K3は間隔K6に比べて長いといえる。このような場合には、パルスP11とパルスP12とは別の車両により生じたパルスである(少なくとも、同一車両により生じたパルスではない)と判定し、パルスP11とパルスP12とのペアリングを行わない。
【0027】
この判定基準は、次のような認識、つまり、パルスP11とパルスP12とが同一の車両により生じたパルスであれば、間隔K6がパルス長K3に対して、例えば1/3程度以下になることはほとんどない、との認識に基づいている。例えば、車両速度80km/hで走行する車長13mの大型車両の場合には、以下の計算に示すように、間隔K6がパルス長K3に対し1/3より小さくなることはない。すなわち、パルス長K3=(13m(車長)+1.5m(ループコイル幅))÷22.22m/sec(80km/hをm/secに換算した値)=0.65secであり、間隔K6=7m(ループコイル設置間隔)÷22.22m/sec(80km/hをm/secに換算した値)=0.315secである。この計算結果より、0.315sec(間隔K6)÷0.65sec(パルス長K3)=0.458が得られる。この値(パルス長K3に対する間隔K6の割合)は、1/3より大きい。なお、同一速度においては車長が短い車両ほどパルス長K3もより短くなる。このため、パルス長K3に対する間隔K6の割合は、上記の計算結果(0.458)よりも大きい、すなわち、1/3よりも大きい。
【0028】
また、図7(c)に示すように、車両検知信号Aに含まれるパルスP13の立ち上がりK7のタイミングと、この立ち上がりK7以降に生じた車両検知信号Bに含まれるパルスP14の立ち上がりK8のタイミングとの間隔K9がパルスP13のパルス長K10に対して長い場合(例えば、3倍程度以上)にも、情報処理部21は、パルスP13とパルスP14とは別の車両により生じたパルスである(少なくとも、同一車両により生じたパルスではない)と判定し、パルスP13とパルスP14とのペアリングを行わない。ここで、ペアリングを行わない理由について説明する。間隔K9が長いほど、第1ループコイル11aと第2ループコイル11bとの間を走行する時の車両速度は小さい。このため、パルスP13のパルス長K10も長くなる。しかし、間隔K9がパルス長K10に対して、例えば3倍程度以上だと、パルス長K10は間隔K9に比べて短いといえる。このような場合には、パルスP13とパルスP14とは別の車両により生じたパルスである(少なくとも、同一車両により生じたパルスではない)と判定し、パルスP13とパルスP14とのペアリングを行わない。この判定基準は、次のような認識、つまり、パルスP13とパルスP14とが同一の車両により生じたパルスであれば、間隔K9がパルス長K10に対し、例えば3倍程度以上になる場合はほとんどない、との認識に基づくものである。
【0029】
図3に戻って説明する。ステップS3において特定された車両走行方向に走行する車両一台分に対応しているパルスペアに基づいて、車両速度を算出し(ステップS4)、更に、パルス長を計測する(ステップS5)。車両速度とは、例えば、第1ループコイル11a又は第2ループコイル11bを車両が通過する際の速度である。ここで、車両速度は、車両検知信号A及び車両検知信号Bのパルスの立ち上がり時間差(例えば、図6に示すパルスP5とパルスP6の立ち上がり時間差T3)と、第1ループコイル11aと第2ループコイル11bとの設置間隔L(7m)とに基づき、次に示す計算式:車両速度km/h=7m(設置間隔L)÷T3sec(立ち上がり時間差)×(3600sec÷1000m)に従って算出される。また、パルス長とは、例えば、パルスペアを構成する二つのパルスのうち、車両検知信号Aに含まれるパルスのパルス長、或いは、車両検知信号Bに含まれるパルスのパルス長のうち何れか一方である。
【0030】
ステップS5の後、所定の第1の計測時間(例えば1分間)が経過したか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6において、第1の計測時間が経過した場合には(ステップS6;Yes)、ステップS7に移行し、第1の計測時間が経過していない場合には(ステップS6;No)、ステップS8に移行する。
【0031】
ステップS6(Yes)の後、ステップS7に移行して、第1の計測時間内にステップS3〜ステップS5で処理されたデータに基づいて第1の走行パラメータ情報(車両台数Q1、平均速度Vavg1及び時間占有率Occ1)を算出する。そしてステップS7の後、ステップS8に移行する。ステップS7は、ステップS7a、ステップS7b及びステップS7cを含む。ステップS7aでは、第1の計測時間内にステップS3で特定したパルスペアに対応する車両の合計台数(車両台数Q1)を算出する。ステップS7bでは、第1の計測時間内にステップS4で算出された車両速度の平均速度Vavg1を算出する。ステップS7cでは、第1の計測時間内にステップS5で計測されたパルス長の合計を算出し、第1の計測時間に対するこの合計パルス長の割合(時間占有率Occ1)を算出する。
【0032】
また、ステップS6では、第1の計測時間が経過した際に、第2の計測時間(例えば5分間)が経過したか否かについても更に判定する。そして、第2の計測時間が経過した場合には、ステップS7では、第2の計測時間内に、ステップS2〜ステップS5で処理されたデータに基づいて第2の走行パラメータ情報(車両台数Q2、平均速度Vavg2及び時間占有率Occ2)を算出する。第2の走行パラメータ情報が新たに算出されると、RAM等の内蔵メモリに既に格納されている第2の交通バラメータ情報が、この新たに算出された第2の走行パラメータ情報に更新される。ステップS7aでは、第2の計測時間内にステップS3で特定したパルスペアに対応する車両の合計台数(車両台数Q2)を算出する。ステップS7bでは、第2の計測時間内にステップS4で算出された車両速度の平均速度Vavg2を算出する。ステップS7cでは、第2の計測時間内にステップS5で計測されたパルス長の合計を算出し、第1の計測時間に対するこの合計パルス長の割合(時間占有率Occ2)を算出する。なお、ステップS7では、第2の計測時間内にステップS7a〜ステップS7cで第1の計測時間ごとに算出された第1の走行パラメータ情報に基づいて第2の走行パラメータ情報を算出してもよい。
【0033】
次に、ステップS8以降の処理内容について説明する。ステップS8では、第2の走行パラメータ情報に基づいて、後段の逆走車両検出処理(ステップS10で行う処理であり、以下同様)を行うか否かの判定処理を行う。ステップS8では、第2の走行パラメータ情報に基づいて、交通渋滞の有無を判定する処理であり、交通渋滞が生じていないと判定した場合に逆走車両検出処理が行われる。すなわち、ステップS8の処理は、実施形態における交通渋滞の判定基準を表している。以下、実施形態における交通渋滞とは、第2の走行パラメータがステップS8に係る判定基準を満たした場合を意味する。この判定基準とは、後述するように、第2の走行パラメータのうち、時間占有率Occ2が所定基準値r以上であるか、又は、車両台数Q2が所定基準値q以上であり且つ平均速度Vavg2が所定基準値v以下であるか、である。なお、ステップS8以降の各処理が行われている間であってもステップS1〜ステップS7の各処理が並行して行われる。
【0034】
まず、ステップS8の判定処理を、図4を参照して説明する。第2の走行パラメータ情報のうち、時間占有率Occ2が所定基準値r(例えば、50%〜80%の範囲内の値)以上であるか否かを判定する(ステップS8a)。ステップS8aにおいて、時間占有率Occ2が所定基準値r以上の場合には(ステップS8a;Yes)、交通渋滞が生じていると判定し、逆走車両検出処理を行わない旨の判定をする(ステップS8b)。ステップS8aにおいて、時間占有率Occ2が所定基準値rに満たない場合には(ステップS8a;No)、ステップS8cに移行する。ステップS8cでは、第2の走行パラメータ情報のうち、車両台数Q2が所定基準値q(例えば、5台)以上であるか否かを判定する。ステップS8cにおいて、車両台数Q2が所定基準値q以上の場合には(ステップS8c;Yes)、ステップS8dに移行し、車両台数Q2が所定基準値qに満たない場合には(ステップS8c;No)、ステップS8eに移行する。ステップS8dでは、第2の走行パラメータ情報のうち、平均速度Vavg2が所定基準値v(例えば、20km/h〜40km/hの範囲内の値)以下であるか否かを判定する。ステップS8dにおいて、平均速度Vavg2が所定基準値v以下の場合には(ステップS8d;Yes)、交通渋滞が生じていると判定し、ステップS8bに移行して逆走車両検出処理を行わない旨の判定をする。ステップS8dにおいて、平均速度Vavg2が所定基準値vに満たない場合には(ステップS8d;No)、交通渋滞は生じていないと判定し、逆走車両検出処理を行う旨の判定をする(ステップS8e)。
【0035】
すなわち、ステップS8では、時間占有率Occ2が所定基準値r以上の場合であるか、又は、車両台数Q2が所定基準値q以上であり且つ平均速度Vavg2が所定基準値v以下である場合に交通渋滞が生じていると判定し、逆走車両検出処理を行わない旨の判定をする。時間占有率Occ2が所定基準r以上の場合には、車両は第1ループコイル11a又は第2ループコイル11b上に比較的長い時間止まっていることを示している。このような場合には交通渋滞が生じていると判定する。また、車両台数Q2が所定基準値q以上であり且つ平均速度Vavg2が所定基準値v以下である場合には、第2の計測時間内に比較的多くの車両が比較的低速で走行していることを示している。このような場合にも交通渋滞が生じていると判定する。
【0036】
図3に戻ってステップS9以降の処理について説明する。ステップS8の後、このステップS8の判定結果に基づいて、逆走車両検出処理を行うか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9において、逆走車両検出処理を行うと判定した場合には(ステップS9;Yes)、ステップS10に移行し、そして、第2の計測時間内にステップS2で補正処理された車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて逆走車両検出処理を行う。ステップS10は、ステップS10a、ステップS10b及びステップS10cを含む。ステップS10aでは、車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて逆走車両に対応するパルスペア(逆走車両候補)を特定する。ここで、ステップS10aの処理内容を、図6を参照して具体的に説明する。図6に示すように、車両検知信号BにパルスP7が生じ、次いで、車両検知信号AにパルスP8が生じた場合、パルスP7及びパルスP8は、逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定される。
【0037】
図3に戻って説明する。ステップS10aの後、ステップS10aで特定したパルスペアに対して連続進入判定処理を行う(ステップS10b)。ここで図6を参照して連続進入判定処理について説明する。連続進入判定処理では、車両検知信号B(第2ループコイル11b)にパルスP7が生じた後に、車両検知信号A(第1ループコイル11a)にパルスP8が生じた場合に、更に、車両検知信号AにおいてパルスP8の始端(立ち上がり)から予め設定された時間間隔T4内(例えば、1秒程度)に車両検知信号BにパルスP7aが生じたか否かを判定する。この判定の結果、パルスP8に続いてパルスP7aが生じた場合には、パルスP7及びパルスP8を逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定しない。
【0038】
仮に、パルスP7及びパルスP8を逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定しても、パルスP8の立ち上がりから1秒程度の短い時間間隔T4内にパルスP7aが車両検知信号Bに生じる、という可能性は低い。しかし、前述のステップS8の処理(交通渋滞が生じているか否かの判定処理)では、前処理としてステップS7の処理(交通パラメータの集計)が行われていることから、交通渋滞が実際に生じてから、ステップS8において交通渋滞が生じていると判定されるまでに時間がかかる場合がある。この場合、交通渋滞が実際に生じているにもかかわらず、ステップS10以降の処理(交通渋滞が生じていないと判定された場合に行われる処理)が行われてしまう。このような状況においては、パルスP8の立ち上がりから1秒程度の短い時間間隔T4内にパルスP7aが車両検知信号Bに生じる場合もあり得る。そこで、ステップS10bにおいて連続進入判定処理を行うことにより、パルスP7、パルスP8及びパルスP7aのような連続パルスが生じている場合を擬似的に交通渋滞が生じている場合として、パルスP7及びパルスP8を逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定しないこととしている。また仮に、交通渋滞が生じていない場合に逆走車両が二台続けて走行すると、パルスP7、パルスP8、パルスP7a及びパルスP7bが連続して生じることとなる。このような場合、連続進入判定処理によって、パルスP7及びパルスP8は逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定されないが、パルスP7a及びパルスP7bは逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定できる。以上のように、連続進入判定処理では、ステップS8における交通渋滞の判定が、実際の交通渋滞の発生に遅れて行われるような場合であっても、逆走車両の誤検出が低減できる。
【0039】
図3に戻って説明する。ステップS10bの後、ステップS10bの連続進入判定結果に応じて逆走車両一台分に対応するパルスペアが特定されたか否か(逆走車両が検出されたか否か)の判定処理を行う(ステップS10c)。そして、ステップS10cにおける判定処理結果(逆走車両の検出結果)に基づいて、逆走車両の有無を最終的に判定する(ステップS11)。ステップS11において、逆走車両が有ると判定した場合(ステップS11;Yes)、この旨を外部装置(又は情報処理装置30)に通知する(ステップS12)。
【0040】
以上説明したように、交通情報処理装置20は情報処理部21を有しており、情報処理部21は、交通渋滞が生じていない場合に逆走車両検出処理を行い、交通渋滞が生じている場合には逆走車両検出処理を行わない、という機能を有する。この機能は、本発明者らによって得られた下記知見に基づいている。すなわち、この知見とは、交通渋滞が生じている場合には、逆走車両を誤検出する可能性は高く、逆走車両が存在する可能性は物理的に極めて低い、という認識である。このため、逆走車両の検出効率を低下させることなく誤検出の抑制が可能となる。
【0041】
ここで、交通渋滞の際に生じ得る逆走車両の誤検出の態様を、図8(a)及び図8(b)を参照して説明する。図8(a)には、同一の車両走行方向Dが定められた車線E1及び車線E2に、車両C1及び車両C2を含む複数の車両が交通渋滞に巻き込まれている様子が示されている。車線E1には、第1ループコイル11a及び第2ループコイル11bが路面に設けられている。そして、図8(a)には、まず、車線E2の車両C1が、車線E1に車線変更している様子が示されている。この際、車両C1は、第1ループコイル11aを通過せずに第2ループコイル11bのみを通過している。このため、車両検知信号BにはパルスP15が生じている。更に、図8(a)には、車両C1の車線変更の後に、車線E1の車両C2が、車線E2に車線変更している様子が示されている。この際、車両C2は、第1ループコイル11aを通過した後に第2ループコイル11bを通過することなく車線E2に車線変更している。このため、車両検知信号AにはパルスP16が生じている。すなわち、まず、車両検知信号BにパルスP15が生じ、その後、比較的短い時間が経過した後に車両検知信号AにパルスP16が生じている。このため、逆走車両が無いにもかからわず、パルスP15及びパルスP16が逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定される(逆走車両が誤検出される)可能性がある。
【0042】
また、図8(b)には、車両検知信号AにパルスP17、パルスP18及びパルスP21が順次生じており、車両検知信号BにパルスP19、パルスP20及びパルスP22が順次生じている様子が示されている。パルスP17とパルスP19とは、第1番目の車両が車両検知センサ11を通過したことにより生じたパルスペアであり、パルスP18とパルスP20とは、第1番目の車両に続く第2番目の車両が車両検知センサ11を通過したことにより生じたパルスペアである。そして、パルスP21とパルスP22とは、第2番目の車両に続く第3番目の車両が車両検知センサ11を通過したことにより生じたパルスペアである。しかし、交通渋滞のため、第1番目の車両と第2番目の車両との車間距離はほとんど無く、このため、パルスP17とパルスP18との間のパルス間隔Fは、非常に短くなっている(例えば220ms未満)。このため、パルス間隔Fは、ステップS2の補正処理によって除去される。すなわち、パルスP17及びパルスP18は単一のパルスP23に波形整形される。よって、この補正処理によりパルスP20とパルスペアを組むべきパルスP18は存在しなくなる。この結果、車両の実際の走行状況に対応したパルスペアの特定が不可能となる。これに対し、車両の実際の走行状態に対応していないパルスペア(パルスP20とパルスP21とによるパルスペア)が逆走車両一台分に対応するパルスペアに特定される(逆走車両が誤検出される)可能性がある。
【0043】
ここで、交通渋滞が生じている場合には、図8(b)に示すような220msに満たない比較的短いパルス間隔Fが生じ易い。図9を参照して、220msのパルス間隔Fがどのような状況で生じ得るかを説明する。図9には、同一速度で続けて走行する二台の車両の走行速度Vel(km/h)と、各走行速度Velの際にこの二台の車両の各々によって生じるパルス同士のパルス間隔Fが220msとなる車間距離Int(m)とを示す。更に、図9には、走行速度Velに応じて定められた一般道路及び高速道路における安全車間距離(m)も示されている。図9に示す安全車間距離は、一般道路の場合には、走行速度Vel(30km〜60km)の値から「15」を差し引いた値にメートル(m)の単位を付した量であり、高速道路の場合には、走行速度Velの値にメートル(m)の単位を付した量である。図9に示す数値は、二台の車両(車長4m)が連続して走行している場合の試算結果である。例えば、二台の車両の走行速度Velが10km/hの場合の車間距離Intは2.1mとなる。この車間距離Intの値「2.1」は、高速道路における安全車間距離(=10m)と乖離する。しかし、交通渋滞が生じている際には、車間距離Intが安全車間距離を下回る場合が十分生じ得る。このような場合には、補正対象となる220msに満たないパルス間隔Fが生じる。
【0044】
上記したように、交通渋滞の際に生じ得る逆走車両の誤検出の態様を、図8(a)及び図8(b)を参照して説明したが、実施形態に係る交通情報処理装置20は、交通渋滞が生じているか否かを適切に判定可能であり、交通渋滞が生じていると判定した場合には逆走車両の検出を行わない。このため、図8(a)及び図8(b)に示すような場合、すなわち、交通渋滞の際に逆走車両が誤検出され得る場合であっても、逆走車両が誤検出される可能性は低くなる。
【0045】
(第2の実施形態)
なお、本発明は、実施形態に係る交通情報システム100に限らない。例えば、図10に示す交通情報システム101に対しても適用される。図10に示す交通情報システム101は、IP(Internet Protocol)通信型車両検出装置40、集約処理装置50及び情報処理装置60を備える。この交通情報システム101は、LAN(Local Area Network)を介したデータの送受信が可能なシステムである。すなわち、IP通信型車両検出装置40、集約処理装置50及び情報処理装置60の各々はLANに接続されており、LANを介したデータの送受信が行える。そして、上述した第1の実施形態に係る交通情報システム100のうち交通情報処理装置20が行う機能、すなわち、図3及び図4のフローチャートに示す処理を実行する機能を、第2の実施形態に係る交通情報システム101では、一方通行道路に設置されたIP型車両検出装置40が実行する。
【0046】
ここで、図11を参照してIP通信型車両検出装置40の構成を説明する。IP通信型車両検出装置40は、車両検知センサ11及び信号処理部41を有する。信号処理部41は、検知部15、集約処理ユニット43(算出手段、判定手段及び検出手段を含む)及びIP伝送ユニット45を含む。検知ユニット15a及び検知ユニット15bは集約処理ユニット43に接続されている。IP伝送ユニット45は、集約処理ユニット43に接続されている。検知ユニット15a及び検知ユニット15bは、第1ループコイル11a及び第2ループコイル11bの各々から出力される車両検知信号A及び車両検知信号Bを増幅する。検知ユニット15a及び検知ユニット15bは、この増幅後の車両検知信号A及び車両検知信号Bを集約処理ユニット43に出力する。集約処理ユニット43は、CPU、ROM及びRAM(何れも図示略)を備え、このCPUはROM(或いはRAM)内に格納されている各種プログラムを実行する。集約処理ユニット43は、検知ユニット15a及び検知ユニット15bの各々から出力された車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて、図3及び図4の各フローチャートに示す処理をCPUに実行させる。集約処理ユニット43(算出手段)は、車両検知装置10から送信される車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて、車両検知センサ11を通過する単位時間当たりの車両台数、平均速度及び時間占有率を算出し(図3に示すステップS1〜S7の処理)、車両台数、平均速度及び時間占有率等を含む走行パラメータ情報(第1及び/又は第2の走行パラメータ情報であり、以下同様)をIP伝送ユニット45に出力する。集約処理ユニット43(判定手段)は、走行パラメータ情報に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する(図3に示すステップS8)。また、集約処理ユニット43(検出手段)は、交通渋滞が生じていない場合には、車両検知信号A及び車両検知信号Bに基づいて逆走車両の検出を行い、この検出結果をIP伝送ユニット45に出力する(図3に示すステップS9〜S12)。IP伝送ユニット45は、LANを介してデータを送受信するためのインターフェースを有する。IP伝送ユニット45は、集約処理ユニット43から出力された走行パラメータ情報と逆走車両の検出結果とを、LANを介して集約処理装置50に送信する。
【0047】
図10に戻って交通情報システム101の構成の説明を続ける。集約処理装置50は、複数のIP通信型車両検出装置40との間でLANを介したデータの送受信を行う。集約処理装置50は、特に、IP通信型車両検出装置40(集約処理ユニット43)から送信された走行パラメータ情報と逆走車両の検出結果とを集約する。集約処理装置50は、この集約した走行パラメータ情報と逆走車両の検出結果とをLANを介して情報処理装置60や他の外部機器等に送信する。情報処理装置60は、集約処理装置50から送信された集約された走行パラメータ情報や逆走車両の検出結果等に基づいて路線に沿った渋滞判定や旅行時間を算出する。情報処理装置30は、渋滞判定の判定結果や算出した旅行時間等を含む情報を他の外部装置に送信する。
【0048】
以上説明した交通情報システム101によれば、道路に設置されたIP通信型車両検出装置40のうち、信号処理部41によって走行パラメータ情報が算出される。そして、この算出された走行パラメータ情報が、LANを介して外部機器や集約処理装置50及び情報処理装置60に送信される。このようにLANを介して走行パラメータ情報の送受信が行われるため、走行パラメータ情報の送受信がインターネット等を介して広範囲に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施形態に係る交通情報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る車両検知装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る逆走車両の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】第1の実施形態に係る逆走車両の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】第1の実施形態に係る補正処理を説明するための図である。
【図6】第1の実施形態に係るパルスペアの特定方法を説明するための図である。
【図7】第1の実施形態に係るパルスペアの特定方法を説明するための図である。
【図8】逆走車両の誤検出が生じる可能性のある状況を説明するための図である。
【図9】走行速度と車間距離との対応を示す図である。
【図10】第2の実施形態に係る交通情報システムの構成を示すブロック図である。
【図11】第2の実施形態に係る車両検知装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
10…車両検知装置、100,101…交通情報システム、11…車両検知センサ、11a…第1ループコイル、11b…第2ループコイル、13,41…信号処理部、15…検知部、15a…検知ユニット、15b…検知ユニット、17…伝送ユニット、20…交通情報処理装置、21…情報処理部、30,60…情報処理装置、50…集約処理装置、40…IP通信型車両検出装置、43…集約処理ユニット、45…IP伝送ユニット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行方向が予め定められた道路に設置された車両検知センサから出力される車両検知信号に基づいて、車両の走行状態を示す一又は複数の走行パラメータの値を算出する算出手段と、
前記走行パラメータの値に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって交通渋滞が生じていないと判定された場合に、前記車両検知信号に基づいて、前記走行方向とは逆向きに走行する逆走車両の検出を行う検出手段と
を備える交通情報処理装置。
【請求項2】
前記車両検知センサは、前記走行方向に向かって前記道路に順次配置された第1及び第2の検知部を有し、
前記第1及び第2の検知部の各々は、車両が通過すると、この車両の通過時間に対応するパルス長のパルスを含む前記車両検知信号を出力し、
前記検出手段は、前記第2の検知部に第1のパルスが生じた後に前記第1の検知部に第2のパルスが生じた場合に、該第1及び第2のパルスの検出によって一台分の逆走車両を特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の交通情報処理装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記第1の検知部において前記第2のパルスの始端から予め設定された時間内に他のパルスが生じた場合には、前記第1のパルス及び前記第2のパルスを前記逆走車両に特定しない、ことを特徴とする請求項2に記載の交通情報処理装置。
【請求項4】
車両の走行方向が予め定められた道路に設置されており、この設置箇所を車両が通過した際に車両検知信号を出力する車両検知センサと、
前記車両検知信号に基づいて、車両の走行状態を示す一又は複数の走行パラメータの値を算出する算出手段と、
前記走行パラメータの値に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって交通渋滞が生じていないと判定された場合に、前記車両検知信号に基づいて、前記走行方向とは逆向きに走行する逆走車両の検出を行う検出手段と
を備える車両検知装置。
【請求項5】
車両の走行方向が予め定められた道路に設置されており、この設置箇所を車両が通過すると車両検知信号を出力する車両検知センサを有する検知装置と、
前記検知装置からの前記車両検知信号に基づいて逆走車両の検出を行う請求項1〜3のうち何れか一項に記載の交通情報処理装置と
を備えた交通情報システム。
【請求項6】
車両の走行方向が予め定められた道路に設置された車両検知センサから出力される車両検知信号に基づいて、車両の走行状態を示す一又は複数の走行パラメータの値を算出する算出ステップと、
前記走行パラメータの値に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて交通渋滞が生じていないと判定された場合に、前記車両検知信号に基づいて、前記走行方向とは逆向きに走行する逆走車両の検出を行う検出ステップと
を含む交通情報処理方法。
【請求項1】
車両の走行方向が予め定められた道路に設置された車両検知センサから出力される車両検知信号に基づいて、車両の走行状態を示す一又は複数の走行パラメータの値を算出する算出手段と、
前記走行パラメータの値に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって交通渋滞が生じていないと判定された場合に、前記車両検知信号に基づいて、前記走行方向とは逆向きに走行する逆走車両の検出を行う検出手段と
を備える交通情報処理装置。
【請求項2】
前記車両検知センサは、前記走行方向に向かって前記道路に順次配置された第1及び第2の検知部を有し、
前記第1及び第2の検知部の各々は、車両が通過すると、この車両の通過時間に対応するパルス長のパルスを含む前記車両検知信号を出力し、
前記検出手段は、前記第2の検知部に第1のパルスが生じた後に前記第1の検知部に第2のパルスが生じた場合に、該第1及び第2のパルスの検出によって一台分の逆走車両を特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の交通情報処理装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記第1の検知部において前記第2のパルスの始端から予め設定された時間内に他のパルスが生じた場合には、前記第1のパルス及び前記第2のパルスを前記逆走車両に特定しない、ことを特徴とする請求項2に記載の交通情報処理装置。
【請求項4】
車両の走行方向が予め定められた道路に設置されており、この設置箇所を車両が通過した際に車両検知信号を出力する車両検知センサと、
前記車両検知信号に基づいて、車両の走行状態を示す一又は複数の走行パラメータの値を算出する算出手段と、
前記走行パラメータの値に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって交通渋滞が生じていないと判定された場合に、前記車両検知信号に基づいて、前記走行方向とは逆向きに走行する逆走車両の検出を行う検出手段と
を備える車両検知装置。
【請求項5】
車両の走行方向が予め定められた道路に設置されており、この設置箇所を車両が通過すると車両検知信号を出力する車両検知センサを有する検知装置と、
前記検知装置からの前記車両検知信号に基づいて逆走車両の検出を行う請求項1〜3のうち何れか一項に記載の交通情報処理装置と
を備えた交通情報システム。
【請求項6】
車両の走行方向が予め定められた道路に設置された車両検知センサから出力される車両検知信号に基づいて、車両の走行状態を示す一又は複数の走行パラメータの値を算出する算出ステップと、
前記走行パラメータの値に基づいて、交通渋滞が生じているか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて交通渋滞が生じていないと判定された場合に、前記車両検知信号に基づいて、前記走行方向とは逆向きに走行する逆走車両の検出を行う検出ステップと
を含む交通情報処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−72796(P2007−72796A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259562(P2005−259562)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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