説明

交通情報推定装置、交通情報推定のためのコンピュータプログラム、及び交通情報推定方法

【課題】交通情報を適切に推定するため、リンク旅行速度を速度情報に変換する。
【解決手段】他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する交通情報推定装置であり、前記他の道路リンクにおける車両の速度を示すリンク旅行速度を、当該リンク旅行速度の大小に応じた値をとる速度情報に変換する変換部17b,18bを備えている。前記変換部17b,18bは、リンク旅行速度を前記速度情報に変換するための変換情報19を用いて、前記変換を行う。前記変換情報19は、車両が自由走行状態となり得る自由走行速度の速度領域においては、当該自由走行速度領域よりも低速の速度領域に比べて、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報を推定するための交通情報推定装置、交通情報推定のためのコンピュータプログラム、及び交通情報推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の交通情報をドライバーに提供する技術として、財団法人道路交通情報通信システムセンターによるVICS(Vehicle Information and Communication System:なお、「VICS」は上記財団法人の登録商標)が広く知られている。
このVICSは、各種の路側センサ(車両感知器やループコイル等)から収集した車両台数や車両速度等よりなる定点観測情報に基づいて、各路線での渋滞やリンク旅行時間を含む交通情報を集計し、その交通情報を、ビーコンによる狭域通信やFM放送等の広域通信によってドライバーに提供するものである。
【0003】
また、道路の交通情報をドライバーに提供する他の技術として、プローブカーを利用した交通情報推定システム(以下、プローブシステムという。)も知られている。
このプローブシステムは、例えば特許文献1および2に示すように、実際に道路を走行する車両(プローブ車両)を移動体センサとして利用するもので、現時点の車両位置や時刻などのプローブ情報を無線通信によって各プローブ車両から収集し、道路の交通情報を生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−151496号公報
【特許文献2】特開2005−4467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、VICS及びプローブシステムを利用したとしても、VICS及びプローブシステムのいずれからもデータが得られていない道路リンクについては、交通情報を得ることができない。
【0006】
そこで、VICS及びプローブシステムのいずれからもデータが得られていない道路リンク(推定対象道路リンク)については、他の道路リンクの交通情報に基づいて、交通情報を推定することが考えられる。例えば、推定対象道路リンクに接続している道路リンク又はその他関連のある道路リンクにおける交通情報は、推定対象道路リンクの交通情報との相関が認められる。このような相関関係を利用すれば、他の道路リンクの交通情報を用いて、推定対象道路リンクの交通情報を補完することができる。
その結果、VICS及びプローブシステムのいずれからもデータが得られていない道路リンクについて、交通情報が補完され、交通情報を提供できる道路リンクのエリアカバー率を高めることができる。
【0007】
ところが、交通情報として、道路リンクにおける車両の速度を扱う場合、速度[km/h]のままで交通情報の推定を行うと、次のような問題が生じる。
【0008】
すなわち、例えば、図30に示すように道路リンクが構成されており、リンクA,Bが制限速度100km/hの高速道路であり、リンクCが制限速度60km/hの一般道路であるとする。また、リンクA,B,Cのいずれにおいても道路は空いており、車両は自由走行状態であるものとする。
そして、リンクA,Bについては、速度(リンク旅行速度)が100km/hであることが検出され、リンクCについては、速度(リンク旅行速度)が60km/hであることが検出されたとする。この場合、リンクA,BとリンクCとの間には、速度に差が存在するが、これは、道路の制限速度の違いによるものにすぎず、道路の混雑度(交通量)としては、リンクA,B,Cのいずれにおいてもほぼ同様と考えられる。
【0009】
しかし、リンクA,B,Cの各速度そのものに基づいて、リンクA,B,Cに関連する道路リンク(推定対象道路リンク)の速度を推定しようとすると、リンクA,BとリンクCとで速度が異なるため、適切な推定値を得るのが困難となったり、適切な推定値を得るための処理時間が長くなったりするという問題が生じることを、本発明者は発見した。
【0010】
そこで、本発明は、道路リンクの速度(リンク旅行速度)そのものを用いる場合の上記問題を低減するための手段を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定するための新たな技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する交通情報推定装置であって、前記他の道路リンクにおける車両の速度を示すリンク旅行速度を、当該リンク旅行速度の大小に応じた値をとる速度情報に変換する変換部と、前記変換部によって変換された速度情報を前記他の道路リンクの交通情報として用いて、前記推定対象道路リンクの交通情報を推定する推定部と、を備え、前記変換部は、リンク旅行速度を前記速度情報に変換するための変換情報を用いて、前記変換を行うものであり、前記変換情報は、車両が自由走行状態となり得る自由走行速度の速度領域においては、当該自由走行速度領域よりも低速の速度領域に比べて、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されていることを特徴とする交通情報推定装置である。
【0012】
上記本発明によれば、変換情報は、車両が自由走行状態となり得る自由走行速度の速度領域においては、当該自由走行速度領域よりも低速の速度領域に比べて、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されているため、速度情報によって道路状況をより適切に表現できる。
【0013】
(2)前記変換情報は、車両が自由走行状態となり得る自由走行速度の速度領域及びリンク旅行速度がゼロ近傍であるゼロ近傍速度領域においては、両領域の間の速度領域に比べて、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されているのが好ましい。この場合、道路状況をさらに適切に表現できる。
【0014】
(3)他の観点からみた本発明は、他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する交通情報推定装置であって、前記他の道路リンクにおける車両の速度を示すリンク旅行速度を、当該リンク旅行速度の大小に応じた値をとる速度情報に変換する変換部と、前記変換部によって変換された速度情報を前記他の道路リンクの交通情報として用いて、前記推定対象道路リンクの交通情報を推定する推定部と、を備え、前記変換部は、リンク旅行速度を前記速度情報に変換するための変換情報を用いて、前記変換を行うものであり、前記変換情報は、リンク旅行速度が大きくなるほど、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されていることを特徴とする交通情報推定装置である。
上記本発明によれば、変換情報は、リンク旅行速度が大きくなるほど、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されているため、速度情報によって道路状況をより適切に表現できる。
【0015】
(4)前記変換情報は、リンク旅行速度が大きくなるほど、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が単調的に小さくなる関数として設定されているのが好ましい。
【0016】
(5)リンク旅行速度をx、速度情報をyとすると、前記変換情報は、下記の関数として設定されているのが好ましい。
y=exp(−(x/a)) (ただし、aは任意の正数)
【0017】
(6)前記推定部は、一又は複数の前記他の道路リンクの交通情報が得られると、交通情報が得られなかった残りの一又は複数の道路リンクを推定対象道路リンクとして、各推定対象道路リンクの交通情報を、推定順序に従って、推定するものであり、さらに前記推定部は、交通情報が得られた前記他の道路リンクに直接接続されている推定対象道路リンクを最優先し、交通情報が得られた前記他の道路リンクとの間に介在している道路リンクの数が多い推定対象道路リンクほど順序が後になるように、前記推定順序を決定するのが好ましい。
この場合、交通情報が得られた道路リンクに近い道路リンクから順に交通情報が推定される。
【0018】
(7)前記推定部は、複数の道路リンクそれぞれについて、各道路リンクのリンク端が接続されたノード示す情報を記憶したリンク−ノード接続テーブルと、複数のノードそれぞれについて、各ノードに接続された道路リンクを示す情報を記憶したノード−リンク接続テーブルと、を有し、前記リンク−ノード接続テーブル及び前記ノード−リンク接続テーブルを用いて、前記推定順序を決定するのが好ましい。リンク−ノード接続テーブル及び前記ノード−リンク接続テーブルによって、道路リンクの接続関係が明確になるため、推定順序を容易に決定することができる。
【0019】
(8)本発明の交通情報推定装置では、他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する推定部は、他の道路リンクの交通情報から、推定対象道路リンクの交通情報を推定する演算を、推定用パラメータを用いて行うよう構成され、推定対象道路リンクになり得る道路リンクの交通情報の実測値が得られた場合に当該実測値と前記他のリンクの交通情報とを学習用データとして記憶しておき、記憶された学習用データを用いて前記推定用パラメータを最適化する学習部を備えている。
【0020】
この場合、学習部によって推定用パラメータが最適化され、交通情報の推定をより適切に行えるようになる。
【0021】
(9)前記実測値は、プローブ車両から送信されたプローブ情報から得たものであるのが好ましい。
【0022】
(10)前記推定用パラメータには、他の道路リンクの交通情報に乗じられる重みが含まれているのが好ましい。
【0023】
(11)また、本発明は、プローブ車両の位置と時刻とを含むプローブ情報から、道路リンクについてのリンク旅行速度を算出するリンク旅行速度算出部を備え、前記リンク旅行速度算出部は、プローブ車両が第1の位置に存在するときに送信された第1プローブ情報と、当該プローブ車両が前記第1の位置から移動して第2の位置に存在するときに送信された第2プローブ情報と、に基づいて、前記第1の位置及び前記第2の位置の間に存在する道路リンクについてのリンク旅行速度を算出するよう構成され、更に、前記リンク旅行速度算出部は、前記第1の位置及び前記第2の位置の間の距離が、設定された最小距離以下の場合には、前記第1の位置よりも手前の位置に存在するときに送信されたプローブ情報及び/又は前記第2の位置よりも先の位置に存在するときに送信されたプローブ情報を用いて、道路リンクのリンク旅行速度を算出するよう構成されている装置である。
【0024】
上記本発明によれば、第1位置と第2位置との間の距離が短い場合であっても、その距離を長くして、より正確なリンク旅行速度を算出することができる。なお、この技術は、リンク旅行時間の算出に用いることもできる。
【0025】
(12)本発明は、コンピュータを、上記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の装置として機能させるためのコンピュータプログラムである。
【0026】
(13)本発明は、他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する交通情報推定方法であって、前記他の道路リンクにおける車両の速度を示すリンク旅行速度を、当該リンク旅行速度の大小に応じた値をとる速度情報に変換するステップと、変換された速度情報を前記他の道路リンクの交通情報として用いて、推定対象道路リンクの交通情報を推定するステップと、を含み、リンク旅行速度から速度情報への変換は、リンク旅行速度を速度情報に変換するための変換情報を用いて行われ、前記変換情報は、車両が自由走行状態となり得る自由走行速度の速度領域においては、当該自由走行速度領域よりも低速の速度領域に比べて、速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されていることを特徴とする交通情報推定方法である。
【0027】
(14)他の観点からみた本発明は、他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する交通情報推定方法であって、前記他の道路リンクにおける車両の速度を示すリンク旅行速度を、当該リンク旅行速度の大小に応じた値をとる速度情報に変換するステップと、変換された速度情報を前記他の道路リンクの交通情報として用いて、推定対象道路リンクの交通情報を推定するステップと、を含み、リンク旅行速度から速度情報への変換は、リンク旅行速度を速度情報に変換するための変換情報を用いて行われ、前記変換情報は、リンク旅行速度が大きくなるほど、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されていることを特徴とする交通情報推定方法である。
【発明の効果】
【0028】
変換情報を、車両が自由走行状態となり得る自由走行速度の速度領域においては、当該自由走行速度領域よりも低速の速度領域に比べて、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定したり、あるいは、リンク旅行速度が大きくなるほど、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定したりすることで、速度情報によって道路状況をより適切に表現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】交通情報システムの全体構成図である。
【図2】交通情報推定装置の構成図である。
【図3】入力情報処理部の構成図である。
【図4】変換情報を示す図である。
【図5】プローブ情報から、リンク旅行速度を求めるための説明図である。
【図6】交通情報推定処理手順を示すフローチャートである。
【図7】ニューラルネットワークの構成図である。
【図8】道路リンクの例を示す図である。
【図9】推定データベースの初期状態を示す図である。
【図10】重みデータベースの初期状態を示す図である。
【図11】入力情報として取得したVICS情報及びプローブ情報を示す図である。
【図12】1回目の更新後の推定データベースを示す図である。
【図13】2回目の更新後の推定データベースを示す図である。
【図14】3回目の更新後の推定データベースを示す図である。
【図15】スナップショットして抽出される部分を示す図である。
【図16】学習用データベースを示す図である。
【図17】学習処理を示すフローチャートである。
【図18】変換情報の他の例を示す図である。
【図19】変換情報の他の例を示す図である。
【図20】変換情報の他の例を示す図である。
【図21】変換情報の他の例を示す図である。
【図22】道路リンク構造の他の例を示す図である。
【図23】推定順序決定処理を示す図である。
【図24】推定データベース構造の他の例を示す図である。
【図25】リンク端単位の関連道路リンクを示すテーブルである。
【図26】リンク−ノード接続テーブル及びノード−リンク接続テーブルの構造図である。
【図27】リンク−ノード接続テーブル及びノード−リンク接続テーブルの構造図である。
【図28】リンク−ノード接続テーブル及びノード−リンク接続テーブルの構造図である。
【図29】リンク−ノード接続テーブル及びノード−リンク接続テーブルの構造図である。
【図30】速度のままで推定する場合の問題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[1.全体構成]
図1は、本発明の実施形態における交通情報推定装置(中央装置)1を含む交通情報システムを示している。この交通情報システムは、交通情報推定装置1のほか、車載装置2を搭載したプローブ車両3、車載装置2と無線通信する路側通信機4、及び路側センサ5などを含む。
【0031】
前記交通情報推定装置1は、例えば中央装置における様々な機能のうちの一機能を指しており、中央装置1は、VICS情報及びプローブ情報などの交通情報(観測情報)を取得し、車両に提供するための提供用の交通情報を生成する機能を有している。なお、中央装置1は、交通情報に基づいて、信号機制御や交通管制などの各種の交通用処理を行ってもよい。
【0032】
この交通情報推定装置(中央装置)1は、処理装置及び記憶装置を有するコンピュータによって構成されており、記憶装置には、コンピュータを、交通情報推定装置(中央装置)として機能させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。このコンピュータプログラムは、前記処理装置によって実行され、前記処理装置が前記記憶装置等に対し入出力を行うことで、交通情報推定装置(中央装置)1としての機能を実現する。なお、以下に説明する交通情報推定装置(中央装置)1の機能は、特に断らない限り、前記コンピュータプログラムによって実現されるものである。
【0033】
前記車載装置2は、プローブ車両3の観測情報としてプローブ情報を生成し、路側通信機4に無線送信する。プローブ情報は、プローブ車両の位置、当該位置の通過速度及びプローブ車両の車両IDなどを含む交通情報である。また、プローブ情報には、プローブ車両の速度などその他の情報を含めても良い。なお、プローブ車両の位置は、車載装置2が有するGPS受信機によって受信したGPS信号に基づいて算出される。
【0034】
前記路側通信機4は、車載装置2との間で無線通信によって情報の送受信を行うものである。具体的には、路側通信機4は、車載装置2が送信した観測情報としてのプローブ情報を受信し、交通情報推定装置(中央装置)1に転送する。また、路側通信機4は、交通情報推定装置(中央装置)1から、車両への提供用の交通情報を取得し、その交通情報を、車載装置2に送信することができる。なお、路側通信機4と交通情報推定装置1との間は、通信回線によって接続されている。
【0035】
前記路側センサ5は、観測情報としての交通情報を検出するためのものであり、例えば、直下を通行する車両を超音波感知する車両感知器や、インダクタンス変化で車両を感知するループコイル、或いは、カメラの映像を画像処理して交通量や車両速度する計測する画像感知器よりなり、交差点に流入する車両台数や車両速度を計測する目的で、高速道路や主要な幹線道路などに設置されている。
【0036】
路側センサ5は、検出した観測情報は、通信回線を介して、VICSセンタサーバに6送信され、このVICSセンタサーバ6では、路側センサ5の観測情報に基づいて、VICS情報を生成する。このVICS情報は、通信回線を介して、交通情報推定装置1に送信される。
【0037】
前記VICS情報は、各道路リンクでの渋滞やリンク旅行時間を含む交通情報である。VICS情報は、路側センサ5から5分ごとに観測情報を取得して、情報更新されるため、時間的に高密度な情報が得られる。しかし、路側センサ5はすべての道路に設置されているわけではなく(主要道路でも20%以下)、エリアカバー率が低い。
一方、前記プローブ情報は、道路を走行するプローブ車両3から取得するため、エリアカバー率を高くすることが可能である。ただし、プローブ車両3となるための車載装置2の普及率がまだ低いため、時間的に低密度のデータしか得られない。
【0038】
つまり、所定エリア内の道路に、道路リンクを設定した場合、VICS情報が得られる道路リンクについては、VICS情報の更新単位時間ごとに常に交通情報(VICS情報)が得られる。一方、VICS情報が得られない道路リンクについては、VICS情報の更新単位時間ごとにみると、プローブ情報が交通情報として得られる道路リンクがある一方、プローブ情報も得られない道路リンクが混在することになる。
【0039】
[2.交通情報推定装置の詳細]
[2.1 推定装置の全体構成]
本実施形態に係る交通情報推定装置1は、VICS情報もプローブ情報も得られない道路リンクの交通情報を推定して、当該道路リンクの交通情報を補完することで、所定エリア内の全道路リンクの交通情報を生成する。このように、VICS情報もプローブ情報も得られない道路リンクの交通情報を補完することで、より精度が高い交通情報を車両(ナビゲーションシステム)に提供したり、精度良く交通管制を行ったりすることが可能となる。
なお、以下では、VICS情報もプローブ情報も得られず交通情報を推定して補完する必要がある道路リンクを、「推定対象道路リンク」という。
【0040】
図2に示すように、交通情報推定装置1は、推定対象道路リンクの交通情報を推定するための推定エンジン(推定部)11と、推定に用いられるパラメータ(推定用パラメータ)を学習するための学習エンジン12と、を備えている。
【0041】
また、交通情報推定装置1は、推定エンジン11によって推定した交通情報等を蓄積するための推定データベース(交通情報データベース)13、推定データベース13におけるデータのうち、学習エンジン12における学習に用いるデータを蓄積する学習用データベース14、推定パラメータ(本実施形態では、「重み」)を蓄積するための重みデータベース(推定パラメータデータベース)15と、を備えている。
【0042】
[2.2 入力情報処理部]
さらに、本実施形態に係る交通情報推定装置1は、当該交通情報推定装置1が取得したVICS情報及びプローブ情報(以下、両情報を総称する場合、「入力情報」という)に対する処理を行う入力情報処理部16を備えている。
【0043】
前記入力情報処理部16は、入力情報から、各リンクの「速度情報」を生成する処理を行うものであり、生成した「速度情報」は、推定データベース13に与えられ、推定データベース13の更新に用いられる。
【0044】
入力情報処理部16は、取得したVICS情報から「速度情報」を生成するVICS情報処理部17と、取得したプローブ情報から、「速度情報」を生成するプローブ情報処理部18と、を備えている。
VICS情報処理部17は、VICS情報に含まれるリンク旅行時間から、当該道路リンクのリンク旅行速度を算出するリンク旅行速度算出部17aと、リンク旅行速度を当該リンクの「速度情報」に変換する速度情報変換部17bとを備えている。
【0045】
VICS情報処理部17のリンク旅行速度算出部17aは、リンク旅行速度を算出しようとする道路リンクのリンク長を、当該道路リンクのリンク旅行時間で除することで、リンク旅行速度[km/h]を算出する。なお、対象エリア内の全道路リンクのリンク長は、予め、装置1に設定されている。
【0046】
VICS情報処理部17の速度情報変換部17bは、リンク旅行速度算出部17aで求めたリンク旅行速度を、「速度情報」という指標値(速度指標情報)に変換する。この変換は、速度情報変換部17bが、装置1に予め設定された「速度−速度情報」変換情報19を参照することで行われる。「速度−速度情報」変換情報19は、図4に示すように設定されたものであるが、詳細については後述する。
【0047】
プローブ情報処理部18のリンク旅行速度算出部18bは、プローブ情報に含まれる位置及び時刻に基づいて、リンク旅行速度を算出しようとする道路リンクのリンク旅行速度を算出する。なお、プローブ情報からリンク旅行速度[km/h]を算出する方法については後述する。
【0048】
プローブ情報処理部18の速度情報変換部18bは、VICS情報処理部17の速度情報変換部17bと同様に、リンク旅行速度を「速度情報」に変換する。その処理内容は、速度情報変換部17bと同様である。
【0049】
[2.3 速度情報について]
「速度情報」は、リンク旅行速度の大小に応じた値をとる指標値であり、本実施形態では、0から1までの値をとり、「速度情報」=0はリンク旅行速度=100[km/h]及びそれ以上の速度に対応し、「速度情報」=1はリンク旅行速度=0[km/h]に対応する。
【0050】
ただし、本実施形態の「速度情報」は、リンク旅行速度に単純に反比例するものではない。つまり、図4に示すように、リンク旅行速度−速度情報の関係式は、リンク旅行速度の複数の速度領域によって異なるものが用いられている。
前記複数の速度領域とは、具体的には、リンク旅行速度が0[km/h]〜約10(より厳密には10.53)[km/h]の第1速度領域(ゼロ近傍速度領域)、リンク旅行速度が約10(より厳密には10.5)[km/h]〜約60(より厳密には57.9)[km/h]の第2速度領域、リンク旅行速度が約60(より厳密には57.9)[km/h]超の第3速度領域(自由走行速度領域)の3つの速度領域である。
【0051】
第1速度領域は、車両の速度が、0又はそれに近い値を示すゼロ近傍速度領域として設定されたものであり、道路が混雑しているときにこのような速度領域の値が検出される。第3速度領域は、一般道路の制限速度(60km/h)以上の速度領域として設定されたものであり、道路が比較的すいており、車両が自由走行状態となり得るときにこのような速度領域の値が検出される。なお、第2速度領域は、第1及び第3速度領域の中間領域として設定されたものである。
【0052】
図4の横軸(リンク旅行速度)の値をx、縦軸(速度情報)の値をyとすると、第1速度領域におけるリンク旅行速度−速度情報の関係式は、y=1−(x/1000)に設定され、第2速度領域におけるリンク旅行速度−速度情報の関係式は、y=1.2−(x/50)に設定され、第3速度領域におけるリンク旅行速度−速度情報の関係式は、y=0.1−(x/1000)に設定されている。
【0053】
このように、リンク旅行速度−速度情報の関係直線は、第3速度領域及び第2速度領域に着目すると、第3速度領域(傾き=1/1000)では、第2速度領域(傾き=1/50)よりも、負の傾きが小さくなっている。
つまり、車両が自由走行状態となり得る自由速度領域である第3領域においては、より低速の第2速度領域に比べて、リンク旅行速度(x)の変化に対する速度情報(y)の変化の割合(負の傾き)が小さくなっている。
【0054】
また、リンク旅行速度−速度情報の関係直線は、第1速度領域及び第2速度領域に着目すると、第1速度領域(傾き=1/1000)では、第2速度領域(傾き=1/50)よりも、傾きが小さくなっている。
つまり、車両の速度がゼロ近傍である第1領域においては、より高速の第2速度領域に比べて、リンク旅行速度(x)の変化に対する速度情報(y)の変化の割合(負の傾き)が小さくなっている。
【0055】
以上のように設定された変換情報19によれば、速度情報という指標に、単なる「速度」という要素以外に、道路が混雑していて渋滞気味であるか、それとも道路が空いており車両が順調に流れているのかという渋滞度(交通流の度合)の要素も、持たせることができる。
【0056】
例えば、制限速度が100km/の道路リンクにおいてはリンク旅行速度が100km/であり、制限速度の60km/の道路リンクにおいてはリンク旅行速度が60km/hである場合、速度差は、40km/hであるが、いずれの道路リンクも車両が順調に流れており、いずれも自由走行状態であると考えられる。
一方、2つの道路リンクにおいて、一方の道路リンクのリンク旅行速度が60km/hであり、他方の道路リンクのリンク旅行速度が20km/hである場合、速度差は、上記と同様に40km/hであるが、前者の道路リンクは車両が順調に流れているが、後者の道路リンクは混雑していると考えられる。
【0057】
このように、リンク旅行速度が自由走行速度領域に達すると、道路における車両の多さ(渋滞度)とリンク旅行速度の関連性が相対的に低くなり、道路の制限速度などの別の要因によってリンク速度が変化しやすくなる。
このため、例えば、関連する他の道路リンクの交通情報(リンク旅行速度)から、推定対象道路リンクの交通情報(リンク旅行速度)を推定しようとした場合を想定すると、他の道路リンクの第3速度領域(自由走行速度領域)におけるリンク旅行速度の違いが推定対象道路リンクのリンク旅行速度の推定値に与える影響は、より低速の第2速度領域におけるリンク流行速度の違いよりも、小さくなる。
【0058】
また、第1速度領域についても、第3速度領域と同様に、速度が0〜10[km/h]であるときには、いずれの速度においても道路はかなり混雑していると考えられ、第1速度領域におけるリンク旅行速度の違いは、高速の第2速度領域におけるリンク流行速度の違いよりも、意味が少ないものとなる。
本実施形態の速度情報は、上記を考慮したものであり、第1及び第3速度領域の傾きを小さくすることで、推定対象道路リンクの交通情報を精度良く推定することができる。
【0059】
また、第1及び第3速度領域の傾きを小さくした結果、第2速度領域の傾きが大きくなり、第2速度領域におけるリンク旅行速度の違いを、速度情報という指標においてはより強調することができる。
例えば、0〜100km/hの範囲のリンク旅行速度(x)に対し、y=1−(x/100)という1つの関係式で速度情報を対応付けた場合、10〜60km/hの範囲においても、当然に、傾きは(1/100)であるが、図4の場合、傾きは(1/50)である。したがって、図4によって求まる速度情報においては、10〜60km/hにおけるリンク旅行速度をより緻密に指標化できる。この結果、推定対象道路リンクの交通情報の推定精度を向上させることができる。
【0060】
[2.4 プローブ情報からのリンク旅行時間の算出]
図5は、リンク旅行速度算出部18aにおいて、プローブ情報からリンク旅行速度[km/h]を算出する方法を示している。
図5に示すように、L1〜L6までの6個の道路リンクが存在する場合において、道路リンクL4の図右方(矢印A方向)へのリンク旅行速度を算出するには、プローブ車両3が、進行方向一つ手前の道路リンクL3(第1位置)に位置している間に送信した第1プローブ情報pr1と、当該プローブ車両3が移動して進行方向一つ先の道路リンクL5(第2位置)に位置している間に送信した第2プローブ情報pr2とを用いる。
【0061】
第1プローブ情報pr1が示す位置及び第2プローブ情報pr2が示す位置によって、第1プローブ情報pr1を発信した第1位置と第2プローブ情報pr2を発信した第2位置との間の距離Dが求まる。また、第1プローブ情報pr1が示す時刻及び第2プローブ情報pr2が示す時刻によって、第1位置から第2位置まで移動するのに要した時間Tが求まる。前記距離Dを前記時間Tで除することにより、第1位置から第2位置までの間の区間(通常の速度算出区間)の旅行速度が求まる。通常は、この旅行速度を、第1位置と第2位置との間にある道路リンクL4におけるリンク旅行速度とみなす。
【0062】
ただし、第1位置と第2位置との間の距離(通常の速度算出区間の距離)が設定された最小距離(例えば、1km)以下である場合には、速度算出区間が長くなるように、道路リンクL4のリンク旅行速度の算出に用いるプローブ情報として別のものを選択する。
具体的には、通常の速度算出区間の距離が最小距離以下である場合、リンク旅行速度算出部18aは、車両が、車両進行方向にみて一つ手前の道路リンクL2(手前位置)に位置するときに送信されたプローブ情報pr0と、道路リンクLL5に位置するときに送信されたプローブ情報pr2とを用いる。これにより、手前位置から第2位置までの間の拡張された速度算出区間についての旅行速度が求まり、この旅行速度を、手前位置から第2位置までの間にある道路リンクL4のリンク旅行速度とみなす。
【0063】
通常の速度算出区間の距離が短い場合に、拡張された速度算出区間を用いる理由は次の通りである。すなわち、速度算出区間が短いと、速度算出区間を移動するのに要する時間は、交通信号による停止時間による影響を大きく受ける。つまり、速度算出区間を通過するのに要する時間が、例えば、2分であるとしても、車両が実際に走行していた時間は、1分で残りの1分は信号による待ち時間ということが生じ得る。一方、同じ速度算出区間を通過する別の車両は、信号による停止がなく、速度算出区間を通過するのに要する時間が1分ということがありえる。このように、速度算出区間が短いと、信号待ちの影響による誤差が大きくなり、正確な速度算出が困難となる。
【0064】
逆に、十分に距離が長く、多くの交通信号(交差点)を通過する必要があるような速度算出区間である場合には、確率上、いずれかの交通信号による待ち時間が、ほぼ全ての車両に均等に生じるため。信号待ちの影響による誤差は小さい。
【0065】
そこで、本実施形態のように、通常の速度算出区間の距離が短い場合には、拡張された速度算出区間で速度を算出することで、速度をより精度良く算出することができる。
なお、通常の速度算出区間の距離が短い場合であっても、車両台数が多い(例えば、10台以上)の場合には、速度算出区間を通過するのに要する時間を複数の車両からのプローブ情報で平均化することにより、誤差を小さくできる。したがって、通常の速度算出区間が、設定された最小距離以下であり、かつ、単位時間あたりのプローブ車両の数(プローブ情報の数)が設定された最小数以下である場合に限って、拡張された速度算出区間での速度算出をおこなってもよい。
【0066】
なお、上記の例では、拡張された速度区間として、手前位置(道路リンクL2)から第2位置(道路リンクL5)までとしたが、この第2位置に代えて、第2位置よりも進行方向にみて先の位置(道路リンクL6)としてもよい。また、拡張された速度区間として、第1位置(道路リンクL3)と先の位置(道路リンクL6)との間としてもよい。
【0067】
[2.5 交通情報推定装置1による処理内容]
[2.5.1 推定処理の概要]
図6は、交通情報推定装置1による交通情報推定方法を示している。まず、推定データベース(交通情報データベース)13及び重みデータベース15に初期値を設定しておく(ステップS1)。
【0068】
そして、交通情報推定装置1が、VICS情報やプローブ情報を取得すると、入力情報処理部16がVICS情報やプローブ情報から各道路リンクの速度情報を生成する(ステップS2)。ただし、ステップS2において速度情報が取得できる道路リンクは、対象エリア内の全道路リンクのうちの一部であり、ステップS2では速度情報が得られない道路リンクがある。
【0069】
続いて、ステップS2で得られた速度情報を、推定データベース13にセットし、推定データベースDB4を更新する(ステップS3)。そして、推定エンジン11は、ステップS3で更新された推定データベース13の内容に基づいて、速度情報が得られていない道路リンクについての速度情報を推定し、推定した速度情報を、推定データベース13にセットし、推定データベース13を更新する(ステップS4)。このステップS4により、対象エリア内の全道路リンクについての速度情報(実測値と推測値とが混在したもの)が得られる。
【0070】
ステップS4にて得られた全道路リンクについての速度情報は、装置外部に出力される(ステップS5)。具体的には、装置1のディスプレイに表示されるか、車載装置2への提供情報として出力される。
また、ステップS4で更新された推定データベース13の内容の一部は、学習用データベース14にスナップショットとして蓄積され、学習エンジン12による学習用データとして用いられる(ステップS6)。
【0071】
以上のステップS2〜ステップS6の処理は、速度情報が生成される度に繰り返し実行される。入力情報処理部16は、VICS情報の更新周期(例えば5分)に合わせて、VICS情報及びプローブ情報を取得して、速度情報を生成するため、ステップS2〜ステップS6の処理は、VICS情報の更新周期(例えば5分)に合わせて繰り返し実行されることになる。
【0072】
[2.5.2 速度情報推定のためのモデル]
図7は、推定エンジン11が、推定対象道路リンクの速度情報を推定するためのニューラルネットワークを示している。図示のニューラルネットワークは、0〜1の値をとるN個の入力信号xi(i:1〜N)それぞれに、重みwiを(wi:0〜1)乗じて、出力値yを生成する単純パーセプトロンとして構成されている。
ここで、入力信号xiは、推定対象道路リンク以外の他の道路リンク(推定対象道路リンクに接続された道路リンク)の速度情報であり、出力値yは推定対象道路リンクの速度情報である。
【0073】
また、重みwiは、推定対象道路リンク以外の複数の道路リンクそれぞれの速度情報を、どの程度の割合で反映させるかという値であり、推定対象道路リンクとの相関の高い道路リンク(例えば、推定対象道路リンクと同じ道路を構成し、推定対象道路リンクに隣接する道路リンク)ほど大きな値に設定されるべきであり、相関が低い道路リンクほど小さな値に設定されるべきものである。
【0074】
ただし、図7のものでは、一般的な単純パーセプトロンとは異なり、入力信号xiに乗じられることなくノードに加算される独立パラメータw0が設けられている。この独立パラメータw0は、推定対象道路リンク以外の道路リンクにおける速度情報以外の要因が、推定対象道路リンクの速度情報に与える要因(例えば、道路リンク間での制限速度の差)を表現することができ、速度情報を精度良く推定することができる。また、推定用パラメータ(重み)の学習の際に、推定用パラメータを最適値に収束させやすくなって、学習処理を容易又は高速に行える。
【0075】
以上のように、推定エンジン11が、ある推定対象道路リンクの速度情報を求めるには、当該推定対象道路リンクとの相関が多少なりとも認められる他の道路リンクの速度情報と、当該他の道路リンクの速度情報をどの程度ほど推定対象道路リンクの速度情報に反映させるかを示す重みと、が得られればよい。そのような他の道路リンクの速度情報は、推定データベース(交通情報データベース)13に蓄積され、重みは重みデータベース15に蓄積されており、推定エンジン11は、両データベース13,15から必要な情報を取得する。
【0076】
なお、速度情報を推定するためのニューラルネットワークとしては、図8のような単層のパーセプトロンに限られるものではなく、入力層、中間層、出力層を有する多層パーセプトロンであってもよい。多層パーセプトロンとして構成すると、推定対象道路リンクと他の道路との間で、速度情報が非線形関係を持つ場合であっても、推定対象道路リンクの速度情報を適切に求めることができる。
【0077】
[2.5.3 推定処理の詳細]
ここでは、図8のように接続された道路リンクを想定する。図8において、Vxは、道路リンクの速度情報(0〜1の値)を示している。また、Vxにおける添え字xは、道路リンクのリンク番号を示しており、1〜24の値をとる。つまり、図8では、リンク番号1〜24までの24個の道路リンクが存在する。また、各リンクの矢印方向は、車両の進行方向を示す。
【0078】
図8において、実線の矢印で示す道路リンク(リンク番号x=1〜10)は、VICS情報が取得可能なリンクであり、例えば、高速道路や主要幹線道路に対応する道路リンクである。また、点線の矢印で示す道路リンク(リンク番号x=11〜24)は、VICS情報が取得できないリンクであり、例えば、高速道路や主要幹線道路以外の一般道路である。点線の矢印で示す道路リンクは、速度情報の推定対象道路リンクとなる可能性がある。つまり、点線の矢印で示す道路リンクについては、プローブ情報が得られた場合には、推定対象道路リンクとはならず、プローブ情報が得られなかった場合には、推定対象道路リンクとなる。
なお、VICS情報が取得可能な道路リンクであっても、何らかの事情でVICS情報が取得できない場合には、推定対象道路リンクとして扱われる。
【0079】
以下、図8の道路リンクを前提とし、図6も再度参照しつつ、速度情報の推定手順について詳細に説明する。
まず、推定データベース(交通情報データベース)13及び重みデータベース15には、装置管理者によって、初期値が入力される(ステップS1)。
【0080】
図9に示すように、推定データベース13は、「チェック」31、「速度情報」32、「関連道路リンク情報」33、「リンク長」34、「学習?」のデータ項目を有しており、各道路リンク(リンク番号)についてそれぞれのデータ項目の値を保存可能なものである。
【0081】
前記データ項目のうち、「チェック」31は、各道路リンクの速度情報の更新の有無及び更新された順番を示す項目である。「速度情報」32は、各道路リンクの速度情報がセットされる項目である。
「関連道路リンク情報」33は、各道路リンクに相関のある道路リンク(関連道路リンク)を示しており、ここでは、それぞれの道路リンクに接続されている道路リンク(リンク番号)を示している。
【0082】
「関連道路リンク情報」33は、「逆」、「A順」、「A逆」、「B順」、「B逆」の5種類に分けられている。
「逆」は、任意の道路リンクと逆方向の道路リンクのリンク番号を示し、例えばリンク番号1の道路リンクについては、リンク番号8の道路リンクが「逆」の道路リンクとなる。
「A順」は、ある道路リンクの後方で順方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号12,7,15の道路リンクが「A順」の道路リンクとなる。
「A逆」は、ある道路リンクの後方で逆方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号11,15,13の道路リンクが「A逆」の道路リンクとなる。
【0083】
「B順」は、ある道路リンクの前方で順方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号4,9の道路リンクが「B順」の道路リンクとなる。
「B逆」は、ある道路リンクの前方で逆方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号3,6の道路リンクが「B逆」の道路リンクとなる。
【0084】
また、前記データ項目のうち「リンク長」34は、各道路リンクのリンク長を示すものである。「学習?」35は、各道路リンクの速度情報等が学習部20(学習エンジン12)による学習のためのデータ(学習データ)となるものであるか否かを示しており、ここでは0又は1の値をとる。「0」はその道路リンクの速度情報等が学習データとはならないことを示しており、「1」はその道路リンクの速度情報等が学習データとなることを示している。
【0085】
ステップS1の初期値入力は、装置1の運用開始時やリセット時に行われ、推定データベース11については、上記データ項目のうち、「速度情報」32、「関連道路リンク情報」33、「リンク長」34について初期値が設定される。「速度情報」32の初期値としては、例えば、全道路リンクについて0を設定すればよい。「関連道路リンク情報」33及び「リンク長」34の初期値については、対象エリアの道路構成に従って設定される。「関連道路リンク情報」33及び「リンク長」34の初期値は、VICS情報及びプローブ情報からなる交通情報(速度情報)を取得しても更新されることはない。
【0086】
一方、「速度情報」34の値は、VICS情報及びプローブ情報からなる交通情報(速度情報)を取得する度に、全道路リンクについて更新される(ステップS3,S4)。
また、「チェック」31については、交通情報(速度情報)を取得する度に(ステップS2)、0に初期化される。「学習?」35についても、交通情報(速度情報)を取得する度に(ステップS2)度に、各道路リンクの速度情報等を学習データとすべきか否かに応じて0又は1に設定される。
【0087】
図10に示すように、重みデータベース15には、各道路リンクにおける速度情報の推定値を他の道路リンクの速度情報から求める際に用いる重みwiが、初期値として設定される。重みwiは、各道路リンクについて、「関連道路リンクの数+1」ほど設定される。図10において、w0は独立パラメータであり、w1以降は関連道路リンクの速度情報それぞれに乗じられる重みである。
【0088】
推定用パラメータである重みwiは、学習エンジン12による学習によって、より適切な値へと自動的に更新されるため、初期値としては、適当な値を設定してもよい。したがって、初期設定が容易である。
【0089】
さて、上記の初期化を行ったのち、図8に示す道路リンクに関し、ある時点において、図11のようなVICS情報及びプローブ情報(交通情報)が得られたものとする。図11では、リンク番号1〜10の道路リンクについてのVICS情報(リンク旅行時間)が得られ、リンク番号20の道路リンクについてのプローブ情報が得られている。他の道路リンクについてはVICS情報もプローブ情報も得られていない。なお、図11では、表記の容易化のため、リンク番号20の道路リンクについてのプローブ情報を、VICS情報と同様に「リンク旅行時間」で示した。
【0090】
また、図11の情報では、プローブ情報が存在する道路リンク(リンク番号20)については、学習対象となることを示す値「1」が設定されており、VICS情報が存在する道路リンク(リンク番号1〜10)については、学習対象ではないことを示す値「0」が設定されている。
【0091】
図11のような入力情報が取得された場合、この情報における「旅行時間」は、入力情報処理部16によって「速度情報」に変換され(ステップS2)、その速度情報によって、推定データベース13の対応する道路リンクの「速度情報」32が更新される(第1回目の更新;ステップS3)。更新された道路リンクについては、「チェック」31に、第1回目の更新で速度情報が更新されたことを示す「1」が設定される。また、図11の入力情報の「学習対象」が「1」である道路リンク(ここでは、リンク番号20の道路リンク)については、「学習?」35が「1」に設定される。
【0092】
以上のようにして第1回目の更新(入力情報のセット)が行われた後の推定データベース13の内容を、図12に示す。
【0093】
続いて、速度情報が未更新の道路リンク(リンク番号11〜19,21〜24)についての速度情報の推定を行って、当該推定値により推定データベース13の更新を行う(ステップS4)。
具体的には、まず、「チェック」31項目に、前回の更新を示す「1」が設定されている道路リンク(リンク番号1〜10,20)の関連道路リンク(隣接道路リンク)のうち、今回の入力情報(図11)に基づく速度情報の更新が未だなされていない道路リンク(チェック=0)を抽出する。ここでは、リンク番号12,15,11,13,19,18,17,21,24,14,16の11個の道路リンクが抽出される(図13参照)。これら11個の道路リンクが、ここでの推定対象道路リンクとなる。
【0094】
そして、推定エンジン11は、11個の推定対象道路リンクそれぞれについての関連道路リンクを、推定データベース13から読み出すとともに、11個の推定対象道路リンクそれぞれについて設定された重み(推定用パラメータ)を、重みデータベース15から読み出し、これらを用いて、各推定対象道路リンクの速度情報の推定値を算出する。算出された、速度情報の推定値は、推定データベース13の「速度情報」にセットされ、速度情報についての第2回目の更新が行われる。なお、更新された道路リンクについては、「チェック」31に、第2回目の更新で速度情報が更新されたことを示す「2」が設定される。
【0095】
上記推定対象道路リンクのうち、例えば、リンク番号12,15,11,13の道路リンクの速度情報の推定値(V12,V15,V11,V13)を求めるための演算式は、下記のとおりである。
12=w0+w111+w21+w35+w413+w58+w67+w715
15=w0+w113+w220+w316+w417+w514+w61+w711
+w85+w98+w1012+w115
11=w0+w112+w28+w315+w47+w51+w611+w75
13=w0+w115+w28+w312+w47+w51+w611+w75
+w814+w917+w1016+w1120
【0096】
そして、「チェック」31項目に、前回の更新を示す「2」が設定されている道路リンク(リンク番号11〜19,21,24)の関連道路リンク(隣接道路リンク)のうち、今回の入力情報(図11)に基づく速度情報の更新が未だなされていない道路リンク(チェック=0)を抽出する。ここでは、リンク番号22,23の2個の道路リンクが抽出される(図14参照)。これら2個の道路リンクが、次の推定対象道路リンクとなる。
【0097】
そして、推定エンジン11は、2個の推定対象道路リンクそれぞれについての関連道路リンクを、推定データベース13から読み出すとともに、2個の推定対象道路リンクそれぞれについて設定された重み(推定用パラメータ)を、重みデータベース15から読み出し、これらを用いて、各推定対象道路リンクの速度情報の推定値を算出する。算出された、速度情報の推定値は、推定データベース13の「速度情報」にセットされ、速度情報についての第3回目の更新が行われる。なお、更新された道路リンクについては、「チェック」31に、第3回目の更新で速度情報が更新されたことを示す「3」が設定される。
【0098】
上記のような処理は、全ての道路リンクについての速度情報が推定されるまで繰り返される(ステップS4)。ここでは、3回の更新により全ての速度情報が補完されたため、推定処理を終了する。
【0099】
すると、推定データベースの内容の出力が行われる(ステップS5)。
さらに、今回の入力情報(図11)に基づく、推定処理が終了した推定データベース13の各道路リンクのデータのうち、「学習?」35に「1」が設定されたリンク番号20の道路リンクのスナップショット(図15参照)を、学習用データベース14に追加する。ここで、スナップショットとは、「学習?」35に「1」が設定されたリンク番号の道路リンクの「速度情報」と、当該道路リンクの関連道路リンクの「速度情報」とを記憶したものである。ここで、「学習?」35に「1」が設定されたリンク番号の道路リンクの速度情報は、プローブ情報から得られた値であるから実測値である。また、当該道路リンクの関連道路リンクの「速度情報」には、VICS情報から得た実測値と推測値とが混在している。
【0100】
スナップショットは、入力情報が取得されて、推定データベースの全道路リンクの更新(ステップS3,S4)が行われる度に発生する。このスナップショットは、プローブ情報を取得できた道路リンクについて発生する。
したがって、上記の例では、リンク番号20の道路リンクのみスナップショットが発生したが、推定データベースの全道路リンクの更新(ステップS3,S4)が何度も行われると、他の道路リンクについてもスナップショットが蓄積される。また、入力情報が区営返し発生するほどの十分な時間が経過すると、一つの道路リンクについて複数のスナップショットが蓄積される。
【0101】
図16は、複数の道路リンクについて、それぞれ複数のスナップショットが蓄積された学習用データベース14の内容を示している。
このようにして多数のスナップショットが蓄積された学習用データベース14に基づいて、学習エンジン12が、重みデータベース15に記憶されている重み(推定用パラメータ)の学習(最適化)を行って、重みデータベース15の内容を更新する。
【0102】
図17は、学習エンジン12による学習処理の手順を示している。まず、学習エンジン12は、誤差判定のための許容誤差、ニューラルネットワーク(図7)を構成する中間層の数、学習計数などの学習用のパラメータ設定を行う(ステップS11)。
学習エンジン12は、図7に示すようなニューラルネットワークを最適化(学習)するニューロエンジンとして構成されている。つまり、学習エンジン12は、学習用データベース14に蓄積されているスナップショットのうち、実測値である速度情報を教師信号とし、教師信号となる速度情報を持つ道路リンクの関連道路リンクについての速度情報から、この教師信号を出力するための適切なニューラルネットワークを再構築する。すなわち、学習エンジン12は、実測値である速度情報と、当該速度情報を持つ道路リンクの関連道路リンクについての速度情報とからなる学習データから、重みの最適値を算出する。重みの最適値の算出は、例えば、最小自乗法などによって行える。
【0103】
重みの最適値の算出は、関連道路リンクについての速度情報から算出される速度情報が、教師信号に近づいて、教師信号との誤差が、設定された許容誤差未満になるまで行われる(ステップS13)。
【0104】
重みが収束して学習処理が終了すると、得られた重みは、重みデータベース15に反映され、重みデータベース15が更新される。
【0105】
重みデータベース15が更新された後に、VICS情報及びプローブ情報からなる入力情報が発生すると、推定エンジン11による速度情報の推定は、新たな重みを用いて、より精度良く行われる。このように、本実施形態の交通情報推定装置1では、運用を続けることで、交通情報(速度情報)の推定精度が自然に向上する。
【0106】
[3.速度情報についての他の例]
図18は、先に図4にて説明した「速度−速度情報」変換情報についての他の例を示している。
図18の変換情報は、自然対数を利用しており、具体的には、リンク旅行速度(図18の横軸)をxとし、速度情報(図18の縦軸)をyとすると、y=exp(−(x/20))の関数となっている。図18の速度情報yも0〜1の値をとる。なお、この式中の「20」という値は、好ましい例であり、「20」に限定されるものではなく、任意の正数aを採用することができる。
【0107】
このy=exp(−(x/20))の関数において、xからみた傾きは、この式をxで微分したものとなり、下記の通りである。
【数1】

【0108】
このように、図18の変換情報は、リンク旅行速度xが大きくなるほど、リンク旅行速度xの変化に対する速度情報(規格化速度)yの変化の割合(xからみた傾き)が小さくなるように設定されている。
つまり、図18の変換情報においても、図4の変換情報と同様に、車両が自由走行状態となり得る60km/h以上の速度領域においては、それよりも低速の速度領域に比べて、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されている
【0109】
また、換言すると、図18の変換情報は、速度情報が大きくなるほど、速度情報(規格化速度)yの変化に対するリンク旅行速度xの変化の割合(yからみた傾き)が大きくなるように設定されている。
【0110】
ここで、図18の関数を、yについての関数として表すと、x=−20×ln(y)となり、この場合、yからみた傾きは、この式をyで微分したものとなり、下記の通りである。
【数2】

この場合、yからみた傾きは、yの逆数に比例することになる。
【0111】
図18のように、変換情報を設定することで、速度情報(規格化速度)が同じ値ほど変化しても、実際のリンク旅行速度への影響は、速度情報(規格化速度)の大小によって異なる。
例えば、速度情報が、0.1の場合と、0.5の場合を考える。この場合、yからみた傾きは、yの逆数に比例するため、dx/dy=−20/0.1=−200、ならびに、dx/dy=−20/0.5=−40となる。
【0112】
したがって、速度情報が0.01ほど変化した場合、より高速である速度情報=0.1の場合には、リンク旅行速度の変化は、−0.01(dx/dy)=2[km/h]となって比較的大きく、比較的低速である速度情報=0.5である場合には、リンク旅行速度の変化は、−0.01(dx/dy)=0.4[km/h]となって比較的小さくなる。
【0113】
つまり、速度情報(規格化速度)が同じ値変化しても、実際のリンク旅行速度への影響は、速度情報(規格化速度)の逆数によって決まる。傾きである速度情報の逆数は、単位距離(例えば、1km)を移動するリンク旅行時間に比例するので、旅行時間を評価する際には、図18のような変換情報を用いると有効である。
【0114】
また、図18の変換情報においては、xからみた傾きは、xの増加とともに単調的に減少する。換言すると、yからみた傾きは、yの増加とともに単調的に増大する。このように、変換情報として傾きが単調的に変化する関数を採用することで、任意の2点において傾きを比較した場合に、「速度情報(規格化速度)が同じ値ほど変化しても、実際のリンク旅行速度への影響は、速度情報(規格化速度)の大小によって異なる」という関係が常に成立し好ましい。
【0115】
図19は、変換情報の更に他の例を示している。図19の変換情報は、y=(1/x)の関数として設定されており、図18の変換情報と同様に、xからみた傾きは、xの増加とともに単調的に減少する関数である。図19の変換情報の場合、リンク旅行速度xが比較的低速な領域で速度情報が大きく変化しすぎるため、この点を回避しようとすれば、図18の変換情報のように自然対数を利用した関数が好ましい。
【0116】
図20は、変換情報の更に他の例を示している。図20の変換情報は、リンク旅行速度xが0〜60[km/h]の領域と、60〜100[km/h]の領域それぞれにおいて、リンク旅行速度−速度情報の関係が直線的であり、傾きの変化は単調的ではないが、全体的には、傾きがリンク旅行速度に応じて変化しており、具体的には、60〜100[km/h]の領域では、0〜60[km/h]の領域に比べて、リンク旅行速度xの変化に対する速度情報yの変化の割合が小さくなっている。
このように、図20の変換情報も、リンク旅行速度xが大きくなるほど、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されており、しかも、図4の変換情報と同様に、車両が自由走行状態となり得る60km/h以上の速度領域においては、それよりも低速の速度領域に比べて、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されている。
【0117】
図21は、変換情報の更に他の例を示している。図21の変換情報では、リンク旅行速度が0〜10[km/h]の領域、10〜60[km/h]の領域、60〜100[km/h]の領域で、それぞれ異なる傾きを有しており、リンク旅行速度xが大きくなるほど、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されており、しかも、図4の変換情報と同様に、車両が自由走行状態となり得る60km/h以上の速度領域においては、それよりも低速の速度領域に比べて、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されている。
【0118】
[4.速度情報(交通情報)の推定順序の決定]
以下では、先に説明した交通情報推定装置1において、道路リンクの速度情報を推定する際に、速度情報を推定する道路リンクの順序(推定順序)を決める方法について説明する。
【0119】
ここでは、図22に示すように接続された道路リンクを想定する。図22に示す道路リンク構造では、図8に示す道路リンク構造においては道路リンクV22の逆方向の道路リンクとして設定されていた道路リンクV23が省略され、代わりに、道路リンクV23は、道路リンクV14に対して順方向かつ並行するものとして設定されている。
また、図22の道路リンク構造では、道路リンクのリンク端が接続されるノード(図22において丸印)それぞれに、1〜7のノード番号が付されている。これらのノードは、例えば交差点などのように、道路リンクが示す道路同士の接続点を示している。
【0120】
図23は、交通情報推定装置1がVICS情報及び存在する場合にはプローブ情報を取得した場合に、その推定エンジン11が、VICS情報もプローブ情報も得られない道路リンク(推定対象道路リンク)の交通情報(速度情報)を推定する際に、交通情報を推定する道路リンクの順序(推定順序;推定データベースにおける速度情報の更新順序)を決定する手順を示している。
より具体的には、図23は、既述の図6のステップS3において、速度情報が得られていない道路リンクについて速度情報を推定する際に、速度情報を推定する道路リンクの順序を決定する手段を示している。
【0121】
推定順序を決定する際には、推定エンジン11は、まず、図22に示すような道路リンク構造に対応したリンク−ノード接続テーブルT1を参照して、速度情報が得られた道路リンクが接続されているノードを抽出する(ステップS21)。リンク−ノード接続テーブルT1は、各道路リンクが接続されているノードを示すテーブルであり、具体的な説明は後述する。なお、ステップS21では、ステップS23による繰り返しにおいて、先行するステップS21において既に抽出されたノードを除いて抽出される。
【0122】
ここでは、リンク番号1〜10の道路リンクについてVICS情報が取得でき、リンク番号20の道路リンクについてプローブ情報が取得できたものとする。この場合、これらの道路リンク1〜10及び20に接続されているノードは、図22より明らかなように、ノード番号1〜4及び6のノードであるため、ステップS21では、ノード番号1〜4及び6のノードが抽出される。
【0123】
続いて、推定エンジン11は、図22に示すような道路リンク構造に対応したノード−リンク接続テーブルT2を参照して、抽出されたノードに接続されているとともに、推定データベースにおける速度情報が未更新である道路リンクを抽出する(ステップS22)。ノード−リンク接続テーブルT2は、各ノードに接続されている道路リンクを示すテーブルであり、具体的な説明は後述する。
【0124】
上記のように抽出ノードがノード番号1〜4及び6のノードである場合、ステップS22では、リンク番号11〜19,21,23,及び24の道路リンクが抽出される。これらのリンク番号11〜19,21,23,及び24の道路リンクが最初に推定される道路リンク群である。
【0125】
上述のように抽出された道路リンク群が、速度情報が得られていない道路リンクの全てであれば、推定順序の決定処理は終了するが、全てでない場合にはステップS21及びステップS22を繰り返す。上記の例では、全てではない(リンク番号22の道路リンクが残っている)ため、再びステップS21及びステップS22が実行される。
【0126】
二度目のステップS21では、先のステップS22において抽出された道路リンク(リンク番号11〜19,21,23,及び24)が接続されているノードのうち、先のステップS21において未抽出のノードを抽出する。ここでは、ノード番号5及び7のノードが抽出される。
【0127】
さらに二度目のステップS22が行われ、抽出されたノード番号5及び7に接続された道路リンクであって、速度情報が取得ないし推定されておらず推定データベースにおける速度情報が未更新の道路リンクとして、リンク番号22の道路リンクが抽出される。このリンク番号22の道路リンクが2番目に推定される道路リンクとなる。
【0128】
ここでは、ステップS21及びステップS22の2回の繰り返しによって、図22におけるすべての道路リンクの推定順序が決定されるため、二度目のステップS23において、推定順序決定処理は終了させられる。
【0129】
上記のように、推定順序を決定することで、速度情報が得られた道路リンク(リンク番号1〜10,20)に直接接続されている道路リンクを最優先し、速度情報が得られた道路リンクとの間に介在している道路リンクの数が多い道路リンクほど順序が後になるように、推定順序が決定され、速度情報が得られた道路リンクに近い道路リンクから遠い道路リンクへ順に推定が波及する。
【0130】
[5.接続テーブルT1,T2の生成]
図24は、図9に示す推定データベース13の構造の変形例を示している。以下では、図24に示す推定データベース構造が与えられた場合に、リンク−ノード接続テーブルT1及びノード−リンク接続テーブルT2を生成する手法について説明する。
【0131】
まず、図24の推定データベース13は、「推定順序」31、「規格化速度」(速度情報)32、「リンク長(km)」34、「道路種別」36、「学習?」35、「関連道路リンク情報」33のデータ項目を有しており、各道路リンク(リンク番号)についてそれぞれのデータ項目の値を保存可能なものである。
【0132】
なお、図24において、図9におけるデータ項目と同じ名称の項目は、同じ役割を持つ。また、図24における「推定順序」31は、図9における「チェック」31の項目に対応する。さらに、図24における「道路種別」36は、高速道路、一般道路などの道路種別を示している。
【0133】
図24の「関連道路リンク情報」33は、図9のものとほぼ同様であるが、図9のように「逆」、「A順」、「A逆」、「B順」、「B逆」の5種類ではなく、これらに「順」を加えた6種類となっている。「順」とは、ある道路リンクと順方向で並行する道路リンク(道路リンク後端及び前端が共通する道路リンク)を示し、例えば、リンク番号14の道路リンクについては、リンク番号23の道路リンクが「順」の道路リンクとなる。
また、図24の「関連道路リンク情報」33では、「順」「A順」、「B順」、「A逆」、「逆」、「B逆」それぞれに属する道路リンクの個数が記録される。
【0134】
さて、図24に示す推定データベース構造から、接続テーブルT1,T2を生成するには、まず、図24に示すような道路リンク単位の推定データベースの「関連道路リンク情報」33から、図25に示すような道路リンク端単位の「関連道路リンク情報」を生成する。
【0135】
ここで、各道路リンクには、道路リンク端として後端(A端)と前端(B端)とがあり、後端(A端)に接続する道路リンクとしては、自リンク、「順」、「逆」、「A順」、「A逆」があり、前端(B端)に接続する道路リンクとしては、自リンク、「順」、「逆」、「B順」、「B逆」がある。例えば、リンク番号「1」の道路リンクであれば、後端(A端)に接続する道路リンク(自リンクを含む)としては、リンク番号1,8,12,7,15,11,5,13の道路リンクがあり、前端(B端)に接続する道路リンク(自リンクを含む)としては、リンク番号1,8,4,9,3,6の道路リンクがある。
【0136】
このようにして、図24の道路リンク単位の「関連道路リンク情報」33から、各道路リンクの後端(A端)及び前端(B端)それぞれに接続する道路リンクを抽出し、図25に示す生成する。
また、図25では、道路リンク端に対応するノードのノード番号(「Node番号」)も記録可能である。
【0137】
さらに、図25に示す道路リンク端単位の「関連道路リンク情報」それぞれを、リンク番号でソートする。図25における「ソート後の関連道路リンク」の項目は、各道路リンク端についてソートした結果を示している。
これらのソート結果のうち、ソート結果が同一のものには、図25に示すように、同一の「Node番号」が記録される。
【0138】
図25に示す「リンク番号」と「Node番号」とから、図26(a)に示すリンク−ノード接続テーブルT1が生成される。図26は、各道路リンクについて、リンクの後端又は前端が接続されるノードのノード番号を示している。なお、図26(a)では、後端が接続されるノードのノード番号を括弧付き数字で示しているように、リンク−ノード接続テーブルT1では、接続されるリンクの後端及び前端の区別が付くように、ノード番号が記録される。
【0139】
また、図26(a)は、図25に示す「Node番号」と「ソート後の関連道路リンク」から生成されたノード−リンク接続テーブルT2を示している。このテーブルT2は、図25に示す「Node番号」及び「ソート後の関連道路リンク」において、「Node番号」ないし「ソート後の関連道路リンク」が重複するものを削除し、各ノードに接続された道路リンクを示したものである。なお、図26(b)では、後端が接続される道路リンクのリンク番号を括弧付き数字で示しているように、ノード−リンク接続テーブルT2では、接続されるリンクの後端及び前端の区別が付くように、リンク番号が記録される。
【0140】
さらに、両接続テーブルT1,T2は、それぞれ、「推定順序」(更新順序)の項目を有する。この「推定順序」項目は、次のように利用される。
【0141】
まず、図22に示す道路リンクに関し、ある時点において、図24に示すようにVICS情報及びプローブ情報が得られたものとする。図24では、リンク番号1〜10の道路リンクについてのVICS情報が得られ、リンク番号20の道路リンクについてのブローブ情報が得られ、それらから算出された速度情報が、推定データベース13の「規格化速度」(速度情報)の項目にセットされている。他の道路リンクについては、VICS情報もプローブ情報も得られていない。
【0142】
また、VICS情報又はプローブ情報が得られた道路リンクについては、推定データベース13の「推定順序」(更新順序)31の項目に、推定(更新)を示す順序として「1」がセットされる。
【0143】
さらに、図26(a)に示すように、VICS情報又はプローブ情報が得られた道路リンクについては、リンク−ノード接続テーブルT1の「推定順序」(更新順序)の項目にも「1」がセットされ、速度情報が、「規格化速度」(速度情報)の項目にセットされる。なお、「推定順序」の初期値は、データベース13及び各テーブルT1,T2において「0」である。
【0144】
上記の状態で、図23のステップS21のリンク−ノード接続テーブルT1の参照が行われると、図27(a)に示すように、VICS情報又はプローブ情報が得られた道路リンク(リンク番号1〜10及び20)が接続されているノードのノード番号が抽出される。リンク番号1〜10及び20の道路リンクが接続されているノードとしては、ノード番号1,2,3,4,6のノードが抽出される。なお、抽出されるノード番号としては、ノード−リンク接続テーブルT2において、「推定順序」が「0」となっているものに限られるが、図26に示すようにこの時点では、テーブルT2の「推定順序」は全て「0」であるため、テーブルT1において、VICS情報又はプローブ情報が得られた道路リンクが接続されているノード全てのノード番号が抽出される。
【0145】
抽出されたノード番号1,2,3,4,6のノードについては、図27(b)に示すように、ノード−リンク接続テーブルT2の「推定順序」項目において、「1」がセットされる。
【0146】
続いて、図23のステップS22のノード−リンク接続テーブルT2の参照が行われると、図27(b)に示すように、ノード番号1,2,3,4,6のノードに接続された道路リンクであって、リンク−ノード接続テーブルT1において「推定順序」が「0」となっている道路リンク(「規格化速度」が未更新の道路リンク)が抽出される。ここでは、リンク番号11〜19,21,23,24の道路リンクが抽出される。
【0147】
抽出されたリンク番号11〜19,21,23,24の道路リンクについては、図28(a)に示すように、リンク−ノード接続テーブルT1の「推定順序」項目において、「2」がセットされる。
【0148】
2回目のステップS21のリンク−ノード接続テーブルT1の参照においては、当該テーブルT1の「推定順序」項目に「2」がセットされた道路リンク(リンク番号11〜19,21,23,24の道路リンク)について、当該リンクに接続されたノードであって、ノード−リンク接続テーブルT2において「推定順序」が「0」のままのものを抽出する。ここでは、ノード番号5,7のノードが抽出される。そして、ノード番号5,7のノードについては、ノード−リンク接続テーブルT2の「推定順序」が「2」にセットされる(図28(b)参照)。
【0149】
2回目のステップS22のノード−リンク接続テーブルT2の参照においては、図28(b)に示すように、当該テーブルT2の「推定順序」項目に「2」がセットされたノード(ノード番号5,7)について、ノードに接続された道路リンクであって、リンク−ノード接続テーブルT1において「推定順序」が「0」のままのものを抽出する。ここでは、リンク番号22の道路リンクが抽出される。道路リンク22については、リンク−ノード接続テーブルT1の「推定順序」が「3」にセットされる(図29(a)参照)。
【0150】
図29(a)に示すように、全ての道路リンクの「推定順序」に初期値である「0」以外の値がセットされ、全ての道路リンクの推定順序(更新順序)がテーブルT1の「推定順序」に示すように決定されたことになる。したがって、推定順序決定処理が終了し(図23のステップS23)、決定された推定順序で、速度情報(規格化速度)の推定を行う。
【0151】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0152】
例えば、推定対象道路リンクの速度情報を推定するために用いられる他の道路リンク(関連道路リンク)は、推定対象道路リンクに接続されているものに限らず、推定対象道路リンクとは離れているが、速度情報の時間的変化の仕方が似ている道路リンク(例えば、推定対象道路リンクと並行する道路リンク)であってもよい。
【0153】
また、時刻の要素を速度情報の推定に反映させたい場合には、時間的に特徴的な変化をする道路リンク(例えば、朝だけ混雑する道路リンク、夜だけ混在する道路リンクなど)を他の道路リンク(関連道路リンク)に含めることもできる。この場合、時間的に特徴的な変化をする道路リンクの速度情報は、全ての推定対象道路リンクに共通して用いられる。
【0154】
さらに、本実施形態では、推定対象道路リンクの速度情報を推定するために用いられる他の道路リンクの速度情報として、時間的に同一の時間帯にある速度情報だけを用いたが、異なる時間帯の速度情報を用いても良い。例えば、推定対象道路リンクから遠く離れた道路リンクの場合、その道路リンクにおける交通状況が、推定対象道路リンクに反映されまでには時間遅れがある。そこで、遠く離れた道路リンクの場合、例えば、1時間前の速度情報を推定に用いることで、より適切な推定が行える。
【0155】
さらにまた、本実施形態の交通情報推定装置1の推定エンジン11が推定の対象とする交通情報は、速度情報に限らず、これに加えて/代えて、渋滞情報など他の交通情報とすることもできる。この場合、渋滞度は、上記速度情報の1を混雑、0を順調の2値に割り当てることで算出できる。また、渋滞度を推定対象の交通情報として扱う場合、ニューラルネットワークでは、2値のいずれかを決定するための閾値も推定用パラメータとして必要となる。この場合、閾値も学習部による学習対象となる。
【0156】
さらにまた、本実施形態では、速度情報の推定の際に、速度情報を推定する道路リンクの順序(推定順序)の決定処理を行ったが、このような推定順序に従って、推定を行う必要はなく、任意の順序で何回か推定を行うことによって、時間はかかるが、推定順序に従って推定した場合と同様の効果を得る事が出来る。
【0157】
さらにまた、本実施形態の交通情報装置1において、複数の道路リンクに対して共通の変換情報を用いてもよいし、道路リンクの属性によって異なる変換情報を用いるようにしてもよい。道路リンクの属性は、例えば高速道路/一般道といった道路種別、道路の制限速度、平均走行速度、速度のばらつき、道路幅などである。さらに、同一の道路リンクに対して時間によって異なる変換情報を用いるようにしてもよい。
【0158】
さらに、本明細書には、複数の発明が開示されており、それら各発明は、特許請求の範囲の記載方法に拘泥されず、各発明の技術的意義に従って、最も広義に解釈されるべきものである。
【符号の説明】
【0159】
1:交通情報推定装置,2:車載装置,3:プローブ車両,4:路側通信機,5:路側センサ,6:VICSセンタコンピュータ,11:推定エンジン(推定部),12:学習エンジン,13:推定データベース,14:学習用データベース,15:重みデータベース,16:入力情報処理部,17:VICS情報処理部,17a:リンク旅行速度算出部,17b:速度情報変換部,18:プローブ情報処理部,18a:リンク旅行速度算出部,18b:速度情報変換部,19:変換情報,20:学習部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する交通情報推定装置であって、
前記他の道路リンクにおける車両の速度を示すリンク旅行速度を、当該リンク旅行速度の大小に応じた値をとる速度情報に変換する変換部と、
前記変換部によって変換された速度情報を前記他の道路リンクの交通情報として用いて、前記推定対象道路リンクの交通情報を推定する推定部と、
を備え、
前記変換部は、リンク旅行速度を前記速度情報に変換するための変換情報を用いて、前記変換を行うものであり、
前記変換情報は、車両が自由走行状態となり得る自由走行速度の速度領域においては、当該自由走行速度領域よりも低速の速度領域に比べて、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されていることを特徴とする交通情報推定装置。
【請求項2】
前記変換情報は、車両が自由走行状態となり得る自由走行速度の速度領域及びリンク旅行速度がゼロ近傍であるゼロ近傍速度領域においては、両領域の間の速度領域に比べて、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されている請求項1記載の交通情報推定装置。
【請求項3】
他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する交通情報推定装置であって、
前記他の道路リンクにおける車両の速度を示すリンク旅行速度を、当該リンク旅行速度の大小に応じた値をとる速度情報に変換する変換部と、
前記変換部によって変換された速度情報を前記他の道路リンクの交通情報として用いて、前記推定対象道路リンクの交通情報を推定する推定部と、
を備え、
前記変換部は、リンク旅行速度を前記速度情報に変換するための変換情報を用いて、前記変換を行うものであり、
前記変換情報は、リンク旅行速度が大きくなるほど、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されていることを特徴とする交通情報推定装置。
【請求項4】
前記変換情報は、リンク旅行速度が大きくなるほど、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が単調的に小さくなる関数として設定されていることを特徴とする請求項3記載の交通情報推定装置。
【請求項5】
リンク旅行速度をx、速度情報をyとすると、
前記変換情報は、下記の関数として設定されていることを特徴とする請求項3又は4記載の交通情報推定装置。
y=exp(−(x/a)) (ただし、aは任意の正数)
【請求項6】
前記推定部は、一又は複数の前記他の道路リンクの交通情報が得られると、交通情報が得られなかった残りの一又は複数の道路リンクを推定対象道路リンクとして、各推定対象道路リンクの交通情報を、推定順序に従って、推定するものであり、
さらに前記推定部は、交通情報が得られた前記他の道路リンクに直接接続されている推定対象道路リンクを最優先し、交通情報が得られた前記他の道路リンクとの間に介在している道路リンクの数が多い推定対象道路リンクほど順序が後になるように、前記推定順序を決定する請求項1〜5のいずれか1項に記載の交通情報推定装置。
【請求項7】
前記推定部は、
複数の道路リンクそれぞれについて、各道路リンクのリンク端が接続されたノード示す情報を記憶したリンク−ノード接続テーブルと、
複数のノードそれぞれについて、各ノードに接続された道路リンクを示す情報を記憶したノード−リンク接続テーブルと、を有し、
前記リンク−ノード接続テーブル及び前記ノード−リンク接続テーブルを用いて、前記推定順序を決定する請求項6記載の交通情報推定装置。
【請求項8】
前記推定部は、他の道路リンクの交通情報から、推定対象道路リンクの交通情報を推定する演算を、推定用パラメータを用いて行うよう構成され、
推定対象道路リンクになり得る道路リンクの交通情報の実測値が得られた場合に当該実測値と前記他のリンクの交通情報とを学習用データとして記憶しておき、記憶された学習用データを用いて前記推定用パラメータを最適化する学習部を備えている
請求項1〜7のいずれか1項に記載の交通情報推定装置。
【請求項9】
前記実測値は、プローブ車両から送信されたプローブ情報から得たものである請求項8記載の交通情報推定装置。
【請求項10】
前記推定用パラメータには、他の道路リンクの交通情報に乗じられる重みが含まれている請求項8又は9記載の交通情報推定装置。
【請求項11】
プローブ車両の位置と時刻とを含むプローブ情報から、道路リンクについてのリンク旅行速度を算出するリンク旅行速度算出部を備え、
前記リンク旅行速度算出部は、プローブ車両が第1の位置に存在するときに送信された第1プローブ情報と、当該プローブ車両が前記第1の位置から移動して第2の位置に存在するときに送信された第2プローブ情報と、に基づいて、前記第1の位置及び前記第2の位置の間に存在する道路リンクについてのリンク旅行速度を算出するよう構成され、
更に、前記リンク旅行速度算出部は、前記第1の位置及び前記第2の位置の間の距離が、設定された最小距離以下の場合には、前記第1の位置よりも手前の位置に存在するときに送信されたプローブ情報及び/又は前記第2の位置よりも先の位置に存在するときに送信されたプローブ情報を用いて、道路リンクのリンク旅行速度を算出するよう構成されている請求項1〜10のいずれか1項に記載の交通情報推定装置。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1〜11のいずれか1項に記載の交通情報推定装置として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項13】
他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する交通情報推定方法であって、
前記他の道路リンクにおける車両の速度を示すリンク旅行速度を、当該リンク旅行速度の大小に応じた値をとる速度情報に変換するステップと、
変換された速度情報を前記他の道路リンクの交通情報として用いて、推定対象道路リンクの交通情報を推定するステップと、を含み、
リンク旅行速度から速度情報への変換は、リンク旅行速度を速度情報に変換するための変換情報を用いて行われ、
前記変換情報は、車両が自由走行状態となり得る自由走行速度の速度領域においては、当該自由走行速度領域よりも低速の速度領域に比べて、速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されていることを特徴とする交通情報推定方法。
【請求項14】
他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する交通情報推定方法であって、
前記他の道路リンクにおける車両の速度を示すリンク旅行速度を、当該リンク旅行速度の大小に応じた値をとる速度情報に変換するステップと、
変換された速度情報を前記他の道路リンクの交通情報として用いて、推定対象道路リンクの交通情報を推定するステップと、を含み、
リンク旅行速度から速度情報への変換は、リンク旅行速度を速度情報に変換するための変換情報を用いて行われ、
前記変換情報は、リンク旅行速度が大きくなるほど、リンク旅行速度の変化に対する速度情報の変化の割合が小さくなるように設定されていることを特徴とする交通情報推定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate


【公開番号】特開2010−287206(P2010−287206A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256025(P2009−256025)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】