説明

交通状況の予測演算装置、予測演算プログラム及び予測演算方法

【課題】交通状況の予測精度を高めることができる。
【解決手段】交通状況予測演算装置は、観測された交通量情報に基づいて、入口ごとに入口から流入する車両の台数を流入車両台数として算定する入口交通量予測部と、車両の移動に支障となりうる事象を示す支障情報に基づいて車両が選択しうる出口を推定し、入口から出口までの標準的な移動状態を示す標準起終点情報に、推定された出口に基づいて生成された転換率を乗じて補正された起終点情報を生成する突発事象対応部と、補正された起終点情報に基づいて、前記リンクごとに車両の移動状況を算定するベースシミュレーション部と、算定された流入車両台数と移動状況とに基づいて、車両が予め定められる所定の時間までに移動する移動先までの交通状況を算定する予測シミュレーション部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の通行状況に係る情報から、道路の交通状況の予測を行う予測演算装置、予測演算プログラム及び予測演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交通状況の予測演算装置は、車両の通行状況に係る道路情報データを収集して、その道路情報データに基づいて発生する渋滞状況などを予測し、予測した渋滞情報などを提供する。実際に収集される道路情報データは、交通情報システムで定期的に収集され、収集された情報が基本データとなる。このように定期的に収集される道路情報データに基づいて、刻々と状況が変化する渋滞情報などの交通状況を予測するシステムが知られている(例えば、非特許文献1から3参照)。
予測された交通情報は、路側に設けられた道路情報表示板や、車載のカーナビゲーション装置などを受信機とするVICS(Vehicle Information and Communication System)や、放送メディアなどを介して提供される情報となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】白石、桑原、堀口、「リアルタイム予測交通流シミュレーションの開発」、第30回土木計画学研究発表会、2004年11月21〜23日。
【非特許文献2】白石、堀口、「リアルタイムシミュレーションを用いた交通流予測システムの開発」、第54回理論応用力学講演会(NCTAM2005)日本学術会議、2005年1月27日。
【非特許文献3】Shiraishi, Kuwahara, Horiguchi,「A Development of Traffic Prediction System Based on Real-time Simulation」、第12回ITS世界会議サンフランシスコ2005、2005年11月6〜10日。
【非特許文献4】稲冨貴久、割田博、桑原雅夫、佐藤光、岡田知朗、「首都高速道路における事故処理時間予測に関する一考察」、土木計画学研究・講演集、Vol.36、2007年11月。
【非特許文献5】田村勇二、割田博、桑原雅夫、佐藤光、岡田知朗、「首都高速道路における流入制御時の入口転換行動分析」、土木計画学研究・講演集、Vol.37、2008年6月。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、交通状況の予測演算装置が予測対象とする路線は、新規路線の開通などに伴って、道路利用者が運転する車両が移動する移動経路を選択できる自由度が高まり、道路利用者の利便性が向上してきた。その反面、交通状況の予測演算装置が道路の渋滞予測を行う場合には、その移動経路を選択する自由度が向上したことにより、正確に予測することが困難な状況が生じている。
これまでの交通情報データは、その対象路線に沿って固定的に配置されるトラフィックカウンターなどによって検出されたデータであり、トラフィックカウンターが配置された地点の車両の通行量と速度に基づいている。
このような交通情報データに基づいて、検出された時刻における状況を算定していることから、その時刻における状況をとらえることができる。そのため、例えば事故などの事象の発生に伴って渋滞が発生し、その影響範囲が徐々に拡大する場合の状況も検出できる。
しかしながら、そのような道路状況の変化に応じて、道路利用者が当初予定した経路以外の経路を選択できるようになったことから、その選択結果によって発生しうる渋滞などを精度よく予測することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、交通状況の予測精度を高めることができる交通状況の予測演算装置、予測演算プログラム及び予測演算方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明は、複数の入口と複数の出口を有する道路を所定の長さを有する複数のリンクから形成されるものと定義して、前記入口から前記出口までそれぞれ移動する複数の車両の移動状況を前記リンクごとにそれぞれ予測する予測演算装置であって、前記道路において観測された前記車両の交通量を示す交通量情報に基づいて、前記入口ごとに前記入口から流入する前記車両の台数を流入車両台数として算定する入口交通量予測部と、前記車両の移動に支障となりうる事象を示す支障情報に基づいて前記車両が選択しうる出口を推定し、前記入口から前記出口までの標準的な移動状態における前記交通量を示す標準起終点情報に、前記推定された出口に基づいて生成された転換率を乗じて補正された起終点情報を生成する突発事象対応部と、前記補正された起終点情報に基づいて、前記リンクごとに前記車両の移動速度を算定する基準状況算定部と、前記算定された流入車両台数と前記算定された移動速度とに基づいて、前記車両が予め定められる所定の時間までに移動する移動先までの区間旅行時間を算定して、交通状況を予測する予測演算部と、を備えることを特徴とする予測演算装置である。
【0007】
また、本発明は、上記発明において、前記突発事象対応部は、前記車両の移動に支障となりうる事象が生じていない場合に選択される出口に代えて、前記車両の移動に支障となりうる事象が生じていると、前記支障情報に基づいて判定される場合に、他の出口を選択する出口転換を行うように、前記支障情報と、時間帯ごとに予め定められた転換パターンとに基づいて前記転換率を推定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記突発事象対応部は、前記支障情報に基づいて、前記リンクに対応する所定の区間に通行止めが発生している状態、又は、前記所定の区間に事故が生じている状態と判定される場合は、前記車両が行う出口転換の影響を低減するように補正する前記転換率を推定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記突発事象対応部は、前記支障情報に基づいて、前記支障となりうる事象が生じている前記リンクに対応して前記支障の影響を受ける出口を転換元出口、前記転換元出口から出口転換される出口を転換対象出口として、前記転換対象出口に係る前記起終点情報に基づいて前記車両が行う出口転換の影響を低減するように補正する前記転換率を推定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記突発事象対応部は、前記転換先出口ごとに前記転換元出口に係る前記起終点情報に基づいて、前記車両が行う出口転換の影響を低減するように補正する前記転換率を推定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記基準状況算定部は、前記補正された起終点情報に基づいて、前記リンクごとに前記車両の移動速度を示す第1リンク速度を設定し、前記道路の経路に基づいて定められる経路情報に基づいて、前記経路の分岐点の平常時の利用状況に応じて定められる係数に基づいて補正した第1補正経路情報を算出し、前記算定された第1補正経路情報に基づいて、前記道路における前記車両の移動状況を算定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記予測された交通状況を補正して、前記車両の予測速度を生成する補正処理部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記補正処理部は、予め定められた区間に分割された前記道路の所定の区間における前記車両が移動する区間速度と、前記区間の予測区間速度とが一致するように該区間の区間速度を調整する調整量に基づいて、前記区間を移動する際に必要とされる区間旅行時間を算定し、前記予測旅行時間に加えて補正することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、複数の入口と複数の出口を有する道路を所定の長さを有する複数のリンクから形成されるものと定義して、前記入口から前記出口までそれぞれ移動する複数の車両の移動状況を前記リンクごとにそれぞれ予測する予測演算装置のコンピュータによって実行される予測演算処理プログラムであって、入口交通量予測部が、前記道路において観測された前記車両の交通量を示す交通量情報に基づいて、前記入口ごとに前記入口から流入する前記車両の台数を流入車両台数として算定するステップと、突発事象対応部が、前記車両の移動に支障となりうる事象を示す支障情報に基づいて前記車両が選択しうる出口を推定し、前記入口から前記出口までの標準的な移動状態における前記交通量を示す標準起終点情報に、前記推定された出口に基づいて生成された転換率を乗じて補正された起終点情報を生成するステップと、基準状況算定部が、前記補正された起終点情報に基づいて、前記リンクごとに前記車両の移動速度を算定するステップと、予測演算部が、前記算定された流入車両台数と前記算定された移動速度とに基づいて、前記車両が予め定められる所定の時間までに移動する移動先までの区間旅行時間を算定して、交通状況を予測するステップと、を含むことを特徴とする予測演算プログラムである。
【0015】
また、本発明は、複数の入口と複数の出口を有する道路を所定の長さを有する複数のリンクから形成されるものと定義して、前記入口から前記出口までそれぞれ移動する複数の車両の移動状況を前記リンクごとにそれぞれ予測する予測演算方法であって、前記道路において観測された前記車両の交通量を示す交通量情報に基づいて、前記入口ごとに前記入口から流入する前記車両の台数を流入車両台数として算定するステップと、前記車両の移動に支障となりうる事象を示す支障情報に基づいて前記車両が選択しうる出口を推定し、前記入口から前記出口までの標準的な移動状態における前記交通量を示す標準起終点情報に、前記推定された出口に基づいて生成された転換率を乗じて補正された起終点情報を生成するステップと、前記補正された起終点情報に基づいて、前記リンクごとに前記車両の移動速度を算定するステップと、前記算定された流入車両台数と前記算定された移動速度とに基づいて、前記車両が予め定められる所定の時間までに移動する移動先までの区間旅行時間を算定して、交通状況を予測するステップと、を含むことを特徴とする予測演算方法である。
【発明の効果】
【0016】
この本発明によれば、予測演算装置では、複数の入口と複数の出口を有する道路を所定の長さを有する複数のリンクから形成されるものと定義して、入口から出口までそれぞれ移動する複数の車両の移動状況をリンクごとにそれぞれ予測する。そして、入口交通量予測部は、道路において観測された車両の交通量を示す交通量情報に基づいて、その入口ごとに入口から流入する車両の台数を流入車両台数として算定する。突発事象対応部は、車両の移動に支障となりうる事象を示す支障情報に基づいて、その車両が選択しうる出口を推定し、入口から出口までの標準的な移動状態における交通量を示す標準起終点情報に、推定された出口に基づいて生成された転換率を乗じて補正された起終点情報を生成する。基準状況算定部は、補正された起終点情報に基づいて、リンクごとに車両の移動速度を算定する。予測演算部は、算定された流入車両台数と算定された移動速度とに基づいて、車両が予め定められる所定の時間までに移動する移動先までの区間旅行時間を算定して、交通状況を予測する。
これにより、予測演算装置は、交通状況の予測の精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による本実施形態による交通状況予測演算装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態における交通状況予測演算装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態における突発事象処理について示す。
【図4】本実施形態における出口交通量変動処理のフローチャートである。
【図5】本実施形態における現在状況再現処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態におけるスキャン処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態における将来状況予測演算処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態における予測結果補正処理について示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について図を参照し説明する。
図1は、本実施形態における交通状況予測演算装置の概略構成図である。
この図に示される交通状況予測演算装置1は、交通情報システム2(「TTIS」という。)から提供される交通状況データを定期的に取得して、その時々の交通状況を予測し、予測した結果をTTISに出力する。
TTISは、提供する交通状況データの収集を定められた周期で定期的に行う。TTISが提供する交通状況データは、解析対象範囲に含まれる道路の交通状況を示す情報であり、例えば、路側などに配置されるトラフィックカウンターで収集された「車両感知器情報」や、道路管理者の職員などによって登録される「イベント情報」、道路管理者の管制員によって登録される「管制情報」を含む情報である。
【0019】
「車両感知器情報」は、路側などに配置されるトラフィックカウンターが取付けられている“地点”、又は、その幾つかの地点を纏めた“区間”を集計単位とする観測された情報である。「車両感知器情報」には、その路線を移動する車両の交通量、速度、密度、オキュパンシを1分間又は5分間の間隔で集計した結果が含まれる。「イベント情報」は、事故、故障車、工事などの情報である。「管制情報」は、出入口閉鎖、車線閉塞、通行止などの情報である。TTISは、「車両感知器情報」、「イベント情報」、及び「管制情報」を含む情報を定期的にオンラインデータ記憶部21に保存する。また、TTISは、交通状況予測演算装置1が出力する交通状況の予測結果を、予測結果記憶部27を参照して取得して、情報提供を行う他のシステムに配信する。
【0020】
交通状況予測演算装置1は、最新情報更新部11、突発事象対応部12、入口交通量予測部13、ベースシミュレーション部14、予測シミュレーション部15、予測結果補正部16、入出力部17および制御部18を備える。
また、交通状況予測演算装置1は、上記の構成が行う処理に必要とされ、動的に変化する情報を記憶するオンラインデータ記憶部21、最新オンラインデータ記憶部22、イベント記憶部23、予測入口交通量記憶部24、ネットワーク上車両の目的地情報記憶部25、予測結果記憶部26及び予測結果記憶部27を備える。
また、交通状況予測演算装置1は、図示されない記憶領域に予め記録される情報として入口転換パタン31、出口転換パタン32、平均交通量パタン33、道路ネットワークデータ34及び標準OD表35を備える。
以下、交通状況予測演算装置1の各構成について順に説明する。
【0021】
最初に、各種処理を行う機能部の構成について示す。
最新情報更新部11は、TTISから提供された情報、すなわち、TTISによってオンラインデータ記憶部21に定期的に記録された情報を参照して取得し、取得した情報を最新オンラインデータ記憶部22に記録する。
例えば、TTISは、正時を基準に5分間隔(5の倍数の分の時)に、TTISから提供された情報をオンラインデータ記憶部21に記録する場合を示す。TTISが記録した後、最新情報更新部11は、交通状況予測演算装置1が使用するデータを最新オンラインデータ記憶部22に記録することにより、動的に変化する情報を定期的に取得する。最新情報更新部11は、TTISによるオンラインデータ記憶部21への記録に同期して動作し、定期的に行われる処理のそれぞれを単位処理として計数する。
また、最新情報更新部11は、この時、同時にTTISから提供された情報にエラーが生じていないかデータエラーチェックを行う。例えば、TTISからの情報は、データヘッダ部とデータ部とを含む構造を備えたファイルによって通知される場合を想定する。そのデータエラーチェックでは、データヘッダ部に含まれる時刻情報とファイル名称に含まれる日時情報との比較を行い、同じ時間帯の情報であるか、TTISから送信されたオンラインデータに、システムに必要なデータが全て含まれているかなどの判定を行う。
【0022】
突発事象対応部12は、最新情報更新部11による1回の単位処理が完了した後に動作し、最新オンラインデータ記憶部22に記憶される最新感知器データ(地点・5分)とオフラインで作成された入口転換パタン31、出口転換パタン32、標準OD表35を取得し、対象路線(ネットワーク)上で発生する事故、工事、交通規制に伴う車線閉塞の継続時間、容量低下、入口・出口を転換する転換行動による影響を算出し、算出された結果をイベント記憶部23に記録する。
入口・出口を転換する転換行動による影響は、各入口・出口が影響を受ける突発事象の際に、どの入口・出口に交通量を割振るかを示した入口転換パタン31、出口転換パタン32に基づいて算出される。
【0023】
入口交通量予測部13は、最新情報更新部11の1回の単位処理が完了した後に動作し、最新オンラインデータ記憶部22に記憶される最新感知器データ(地点・5分)とオフラインで作成された平均交通量パタン33を取得し、各入口、本線上の流入断面から流入する交通量(入路交通量)を予測する。最新オンラインデータ記憶部22に記憶される最新感知器データ(地点・5分)は、入口交通量予測部13の処理中に過去数時間分を図示されない記憶領域に保持し、その過去数時間分の入路交通量と入路交通量の標準パタンの差分をとり、この差分を移動平均自己回帰(ARMA)モデルにより2時間5分先までの入路予測を行い、予測された結果を予測入口交通量記憶部24に記録する。例えば、入口交通量予測部13によって行われる流入交通量の予測処理は、非特許文献1に示される自己回帰(AR)モデルによる処理を移動平均自己回帰(ARMA)モデルとすることにより実現できる。自己回帰(AR)モデルによる処理から、移動平均自己回帰(ARMA)モデルによる処理に変更する事により、検出値に含まれる変動に影響されることなく予測処理が行える。
【0024】
ベースシミュレーション部14は、最新情報更新部11と突発事象対応部12の1回の処理が共に完了した後に動作し、オフラインで作成された道路ネットワークデータ34と標準OD表35を起動時の初期化処理において取得する。ベースシミュレーション部14は、シミュレーション実行中には、最新オンラインデータ記憶部22に記憶される最新感知器データ(区間・5分)とイベント記憶部23とを取得して、現在の状況を再現する1回分の演算処理を行う。この演算処理によるシミュレーションの基準時刻を5分進め、その後、算出された結果をネットワーク上車両の目的地情報記憶部25に記録する。ベースシミュレーション部14は、繰り返して処理を行うことにより現在の状況をシミュレーションごとに再現し、特に停止指示がなければ、繰り返して行われる処理を継続する。
ベースシミュレーション部14におけるシミュレーション上の車両は、最新オンラインデータ記憶部22に記憶される最新感知器データ(区間・5分)の区間速度でベルトコンベア式に対象路線をモデル化したネットワーク上を移動する。
【0025】
予測シミュレーション部15は、最新情報更新部11と突発事象対応部12とベースシミュレーション部14の1回の処理が全て完了した後に動作し、オフラインで作成された道路ネットワークデータ34と標準OD表35を起動時時の初期化処理において取得し、同時にネットワーク上車両の目的地情報記憶部25に記憶されるネットワーク上の車両の目的地情報と、最新オンラインデータ記憶部22に記憶される最新感知器データ(区間・5分)の区間密度を取得する。予測シミュレーション部15は、最新オンラインデータ記憶部22に記憶される最新感知器データ(区間・5分)の区間密度から求めた現在の存在台数に拡大した台数を、初期状態としてネットワーク上に配置し、2時間5分先までのシミュレーションを行って、2時間5分先までの5分毎の予測区間速度を算定する。予測シミュレーション部15は、算定された2時間5分先までの5分毎の予測区間速度を予測結果記憶部26に記録する。予測シミュレーション部15は、2時間5分先までの予測区間速度を予測結果記憶部26に記録した後に、内部に保持した情報を初期化して、次の動作開始まで待機する。
【0026】
予測結果補正部16は、最新情報更新部11の1回の処理が完了した後に動作し、最新オンラインデータ記憶部22に記憶される最新感知器データ(区間・5分)の実測の区間速度と、5分前の最新オンラインデータ記憶部22に記憶される最新感知器データ(区間・5分)に基づいて予測シミュレーション部15が出力した予測結果記憶部26に記憶される5分後予測速度との乖離を0にするように2時間先までの予測速度を一律に増減して、予測結果記憶部27に補正された結果を出力する。
【0027】
入出力部17は、各種処理に必要とされる情報を得て、図示されない記憶領域に予め記憶される情報の記録、更新を行う。また、その記録、更新の処理に係る操作画面の生成と出力を行う。
制御部18は、内部に図示されない計時機能を備え、交通状況予測演算装置1における各処理の順序制御を行う。
【0028】
次に、動的に変化する情報を記憶する各記憶部について示す。
オンラインデータ記憶部21は、予測対象範囲に関係する道路の交通状況を示す情報を記録する。その交通状況を示す情報には、路側などに配置されるトラフィックカウンターで収集された「車両感知器情報」や、道路管理者の職員などによって登録される「イベント情報」、道路管理者の管制員によって登録される「管制情報」などが含まれる。
「車両感知器情報」には、路側などに配置されるトラフィックカウンターが取付けられている“地点”、又は、その幾つかの地点を纏めた“区間”を集計単位とする観測された情報が含まれる。「車両感知器情報」は、路線の基点を基準とした距離(KP(キロポスト)値)をキーとして、その路線を移動する車両の交通量、速度、密度、オキュパンシを1分間又は5分間の間隔で集計した結果が記録される。
「イベント情報」には、事故、故障車、工事などの情報が含まれる。「イベント情報」は、発生するイベントの地点(又は範囲)を示すKP値をキーとして、発生するイベントの種類、継続時間、影響範囲などの情報を項目として含んだ情報が記録される。
「管制情報」には、出入口閉鎖、車線閉塞、通行止などの情報が含まれる。「管制情報」は、対象とされる地点(又は範囲)を示すKP値をキーとして、発生する管制項目の種類、継続時間、影響範囲などの情報を項目として含んだ情報が記録される。
【0029】
オンラインデータ記憶部21は、TTISからオンラインで決められた周期で、上記の最新情報(「オンラインデータ」という。)が記録され更新される。オンラインデータ記憶部21は、データヘッダ部とデータ部とを含む構造を備えたファイル構造として、そのファイルのデータヘッダ部には、時刻情報及びエラーチェックのための情報が含まれる。
最新オンラインデータ記憶部22は、定期的にオンラインデータ記憶部21に記録される情報をデータエラーチェック処理をして記録するバッファであり、記録される情報は、オンラインデータ記憶部21に準じる。
イベント記憶部23は、対象路線(ネットワーク)上で発生する事故、工事、交通規制などの情報に基づいて導かれた車線閉塞の継続時間、低下した交通量の容量、及び、入口・出口を転換する転換行動による影響度を示す転換率を記録する。
【0030】
予測入口交通量記憶部24は、各入口と本線上の流入断面とから流入する交通量(入路交通量)を記憶する。記憶される入路交通量は、最新感知器データ(地点・5分)に基づいた交通量である。なお、予測入口交通量記憶部24は、過去数時間分の入路交通量を合わせて記録してもよい。記録された過去数時間分の入路交通量は、入口交通量予測部13によって参照され移動平均自己回帰(ARMA)モデルのデータとすることができる。
ネットワーク上車両の目的地情報記憶部25は、ネットワーク上の車両の目的地情報を記録する。
予測結果記憶部26は、予測シミュレーション部15によって算定された2時間5分先までの5分毎の予測区間速度を記録する。
予測結果記憶部27は、交通状況予測演算装置1から出力される交通状況の予測結果として、各リンクごとの予測区間速度を記録する。
【0031】
次に、入出力部17を介して取り込まれ、図示されない記憶領域に予め記憶される情報について示す。
入口転換パタン31は、発生する事象に応じて道路利用者が通常利用する予定の入口から、他の入口に変更する入口転換の形態をモデル化した情報を記憶する。この情報は、これから利用する予定の道路利用者が、事前にネットワーク上の事象を知ることにより他の入口を選択する場合の影響を補正する係数として用いられる。この係数を用いることにより、入口から流入する車両台数の変化を、平常状態に対して補正することができる。例えば、入口転換パタン31は、各入口ごとに定められ、時間帯と、事象の種類、継続時間に応じて定められる、各標準OD情報を補正する係数としてもよい。
【0032】
出口転換パタン32は、発生する事象に応じて道路利用者が通常利用する予定の出口から、他の出口に変更する出口転換の形態をモデル化した情報を記憶する。この情報は、すでに経路上にいる道路利用者が、経路(ネットワーク)上に発生した事象を知ることにより他の出口を選択する場合の影響を補正する係数として用いられる。この係数を用いることにより、出口から流出する車両台数の変化を、平常状態に対して補正することができる。例えば、出口転換パタン32は、各出口ごとに定められ、時間帯と、事象の種類、継続時間に応じて定められる、各標準OD情報を補正する係数としてもよい。
【0033】
平均交通量パタン33は、交通量を時間帯ごとに変化する関数としてモデル化し、平常時の交通量に基づいてリンクごとに数値化した情報を示す。
道路ネットワークデータ34は、対象路線のトポロジーを、ネットワークとしてモデル化して、出入口及び分岐点(ジャンクション)をノード、ノード間を接続する複数のリンクとして定義した接続関係を示す情報を示す。
標準OD表35による標準OD情報は、入口を起点、出口を終点とした場合に、入口から出口までのそれぞれの組合せによって示される経路を示す起終点経路情報を示す。標準OD情報は、平常時の入口から流入する車両の目的地比率(利用率)に応じて重み付けられた重み係数が、それぞれの起終点経路情報として設定される。
【0034】
続いて、図2を参照し、本実施形態における交通状況予測演算装置の処理について示す。
図2は、本実施形態における交通状況予測演算装置の処理手順を示すフローチャートである。
最初に、最新情報更新部11は、データ所得処理を行う。このデータ取得処理では、TTISによってオンラインデータ記憶部21に定期的に記録された情報を参照して取得し、取得した情報のデータエラーチェックを行い、その取得した情報を最新オンラインデータ記憶部22に記録する(ステップS10)。
ステップ10のデータ所得処理が完了すると、入口交通量予測部13は、入口交通量予測処理を行う(ステップS20)。
【0035】
また、ステップ10のデータ所得処理が完了すると、突発事象対応部12は、突発事象処理を行う(ステップS30)。
ステップ30の突発事象処理が完了すると、ベースシミュレーション部14は、現在状況再現処理を行う(ステップS40)。
ステップ20の入口交通量予測処理及びステップ40の現在状況再現処理が完了すると、予測シミュレーション部15は、将来状況予測演算処理を行う(ステップ50)。
ステップ50の将来状況予測演算処理が完了すると、予測結果補正部16は、予測結果補正処理を行う(ステップ70)。
以下、図2に示した処理について具体的に示す。
【0036】
図3を参照し、本実施形態における突発事象処理について示す。
図3は、本実施形態における突発事象処理の処理手順を示すフローチャートである。
突発事象対応部12は、最新情報更新部11による1回の単位処理が完了した後に、突発事象処理を行う。
最初に、突発事象対応部12は、オフラインデータを取得する。そのオフラインデータは、どの入口・出口に交通量が割振られるかを示した入口転換パタン31と出口転換パタン32である(ステップS31)。
次に、突発事象対応部12は、最新オンラインデータ記憶部22に記憶される最新感知器データ(地点・5分)が最新の情報に更新されているか否かを判定する。その判定は、最新オンラインデータ記憶部22に記憶される最新感知器データ(地点・5分)に付与された時間情報が、制御部18において計時されている時間情報と比較して判定する。その判定の結果、最新の情報に更新されるまで、この判定処理を繰り返して待機する(ステップS32)。
【0037】
ステップS32の判定の結果、最新の情報の更新されていると判定された場合には、突発事象対応部12は、最新オンラインデータ記憶部22に記憶される最新感知器データ(地点・5分)を取得する(ステップS33)。
突発事象対応部12は、取得した最新感知器データ(地点・5分)に含まれるイベント情報に基づいて、イベントの登録を行う。イベントを登録する処理では、イベントの種類に応じて定められる優先度にしたがって、図示されない記憶領域に順に記憶される(ステップS34)
【0038】
突発事象対応部12は、車線閉塞時間予測処理を行う。この車線閉塞時間予測処理は、事故情報などの登録されたイベントのイベント情報に基づいて、統計的手法を用いて車線閉塞時間を分類し、その結果に基づいて車線閉塞時間を予測する。このイベントに係る情報のうち、予測に用いる登録情報は、「消防・救急の出動有無」、「事故台数」、「作業車両の出動有無」の3つの登録情報である。その詳細な処理については、例えば、非特許文献4(稲富らの報告)を参照する(ステップS35)。
【0039】
突発事象対応部12は、登録されたイベント情報に基づいてリンク交通容量値を予測する交通量予測処理を行う。この交通量予測処理では、事故登録区間より、進行方向に対して手前側になる上流地点に対して渋滞判定を行い、事故渋滞が発生している場合は、捌け交通量をリンク交通容量値とし、渋滞が発生していない場合は、閉塞車線数に応じたリンク交通容量値を設定する(ステップS36)。
【0040】
突発事象対応部12は、登録されたイベント情報に基づいて入口交通量変動処理を行う。この入口交通量変動処理では、各入口が影響を受ける突発事象の場合に、どの入口に交通量を割振るかを示した入口転換パタン31に基づいて、入口を転換する転換行動による影響が算出される。
より具体的に示すと、突発事象対応部12は、事故発生箇所と入口交通量変動の関係をパタン化した入口交通量変動パタンテーブルを作成する。入口交通量変動パタンテーブルにおいて、事故の影響を受けると特定された入口の交通量が、通常時とは異なる観測値となった場合に、入口交通量基本パタンを予測車線閉塞時間長だけ減少・増加方向に変換して書き換える。その詳細処理については、例えば、非特許文献5(田村らの報告)を参照する(ステップS37)。
【0041】
突発事象対応部12は、登録されたイベント情報に基づいて出口交通量変動処理を行う。この出口交通量変動処理では、各出口が影響を受ける突発事象の場合に、どの出口に交通量を割振るかを示した出口転換パタン32に基づいて出口を転換する転換行動による影響が算出される。
突発事象対応部12は、以上の処理によってそれぞれ算出された結果をイベント記憶部23に記録する(ステップS38)。そして、ステップS32からの処理を繰り返す。
【0042】
続いて、図4を参照し、本実施形態における出口交通量変動処理について示す。
図4は、本実施形態における出口交通量変動処理のフローチャートである。
突発事象対応部12は、出口交通量変動処理に必要な情報を所得する。出口交通量変動処理で必要とされる情報は、各出口の交通量が影響を受ける突発事象が発生した場合に、どの出口に交通量を割振るかを示した出口転換パタン32と、ステップS34(図3)においてイベント記憶部23に登録されたイベント情報を含んだ情報である(ステップSa1)。
【0043】
突発事象対応部12は、登録された全てのイベント情報に基づいて、ステップSa2からステップSa15までの間の処理において、全てのイベント情報を対象とする条件に基づいてそれぞれの処理を繰り返し行う(ステップSa2)。
登録されたイベント情報を順に参照し、そのイベント情報によって示されるイベントが「異常事態イベント」であるか否かをイベント情報の種類情報に基づいて判定する(ステップSa3)。
ステップSa3における判定の結果、「異常事態イベント」である(Yes)と判定された場合には、ステップSa4の処理に進む。ステップSa3における判定の結果、「異常事態イベント」でない(No)と判定された場合には、次のイベント情報がなくなり全てのイベントに対する処理が完了するまで、イベント情報を判定する処理(ステップSa3)が繰り返えされる。イベント情報がなくなり全てのイベントに対する処理が完了した場合、ステップSa16の処理に進む(ステップSa15)。
【0044】
また、突発事象対応部12は、そのイベント情報が、「通行止」又は「事故」の情報のいずれかであるか否かを判定する(ステップSa4)。
ステップSa4における判定の結果、「通行止」又は「事故」の情報のいずれでもないと判定された場合には、そのイベント情報に係る処理を終えて、次のイベント情報を判定する処理(ステップSa2)に進む。ステップSa4における判定の結果、「通行止」又は「事故」の情報のいずれかであると判定された場合には、そのイベント情報を保持した状態で、ステップSa5の処理に進む。
【0045】
突発事象対応部12は、そのイベント情報に基づいて、そのイベント情報によって示される開始日時から終了日時までに適用される時間帯(イベントの継続時間帯)の処理を繰り返す。なお、ステップSa5からステップSa14までの間の処理は、そのイベント情報によって示されるイベントの継続時間帯に基づいて行われ、その範囲に含まれる時間帯を対象とする条件に基づいて処理が繰り返えされる(ステップSa5)。
【0046】
突発事象対応部12は、イベントの継続時間帯における出口転換パタン32を参照して、そのイベント発生区間に対応する影響出口とその影響率(転換率)を取得する(ステップSa6)。
【0047】
突発事象対応部12は、イベント発生区間に対応して影響が生じる出口について順に処理を繰り返す。なお、ステップSa7からステップSa13までの間の処理は、そのイベント情報によって示されるイベントの発生区間に対応する影響出口(ステップSa6参照)に基づいて行われ、その影響が生じる出口の全てを対象とする条件に基づいて処理が繰り返えされる(ステップSa7)
突発事象対応部12は、転換元出口に対応する全ての起終点情報(OD情報)を出口関連ODテーブルより取得する。取得した起終点情報を「転換対象OD」という(ステップSa8)。なお、出口関連ODテーブルは、標準OD表35に含まれ、出口をキーとして参照される情報である。
【0048】
突発事象対応部12は、転換対象ODについて順に処理を繰り返す。なお、ステップSa9からステップSa12までの間の処理は、その転換対象ODに基づいて行われ、その転換対象ODの全てを対象とする条件に基づいて処理が繰り返えされる(ステップSa9)
【0049】
突発事象対応部12は、転換対象ODの転換率が負の値であるか否かを判定する。転換率は、正の場合が、出口転換によって交通量が増加することを示し、負の場合が、出口転換によって交通量が減少することを示し、「0」の場合は増減が無く影響が生じないことを示すように定義されている。すなわち、転換対象ODの転換率が負の値である場合は、その出口が転換元出口であったと判定することができる(ステップSa10)。
ステップSa10における判定の結果、転換対象ODの転換率が負の値である場合(Yes)には、突発事象対応部12は、ステップSa11の処理を行う。
【0050】
突発事象対応部12は、転換先出口に対応する全てのODを出口関連ODテーブルより取得して、転換先出口ごとの転換対象時間区分において、転換先に対する転換率を図示されない記憶領域に記録する(ステップSa11)。
ステップSa10における判定の結果、転換対象ODの転換率が負の値でない場合(No)には、突発事象対応部12は、ステップSa11の処理を行こなわずに、その転換対象ODの処理を終え、次の転換対象ODの処理を行う(ステップSa12)
【0051】
なお、ステップSa13とステップSa14は、それぞれステップSa9とステップSa7を起点とする繰り返し処理の範囲の終点を示す。
ステップSa5、ステップSa7とステップSa9を起点とするそれぞれの繰り返し処理が終了すると、ステップSa2を起点とする繰り返し処理の範囲の終点を示すステップSa15に進み、次の異常事態イベントの処理に進む。
【0052】
また、全てのイベント情報に対して判定する処理が完了すると、突発事象対応部12は、図示されない記憶領域に記憶された転換率をキーにして、転換率が記憶された転換対象ODについて順に処理を繰り返す。なお、ステップSa16からステップSa18までの間の処理は、その転換率が記憶された転換対象ODに基づいて行われ、その全ての転換率が記憶された転換対象ODを対象とする条件に基づいて処理が繰り返えされる(ステップSa16)。
突発事象対応部12は、記憶された転換率に従って、交通量の転換処理を行う。その交通量の転換処理は、記憶された転換率によって転換対象ODに対応する交通量を転換する(ステップSa17)。
ステップSa16からの繰り返し処理により、記録された全ての転換率についてのステップSa17の処理を終えると、突発事象対応部12は、ステップSa16からの繰り返し処理を終了する(ステップSa18)。
【0053】
突発事象対応部12は、転換された交通量に基づいて、更新されたODを生成し、イベント記憶部23に記録する(ステップSa19)。
【0054】
続いて、図5を参照し、本実施形態における現在状況再現処理(ベースシュミレーション処理)について示す。
図5は、本実施形態における現在状況再現処理の手順を示すフローチャートである。
最初に、ベースシミュレーション部14は、現在状況再現処理の初期化処理を行う(ステップS41)。
ベースシミュレーション部14は、初期化処理が終わるとプレ・ランニング処理を行う。プレ・ランニング処理は、予め定められた所定の時間だけ過去にさかのぼり、そのさかのぼって定められた時刻を起点として、現在時刻までのシミュレーションを行う処理である。この処理により、現在時刻における状態を示す値を、過去に検出された情報に基づいて最適化することができる。ベースシミュレーション部14は、このプレ・ランニング処理によって生成された状態値を図示されない記憶領域に記録する(ステップS42)。
【0055】
ベースシミュレーション部14は、他の処理所プ協に応じて、参照する情報を同期させるための同期処理を行う。この同期処理では、繰り返し行われる最新データ更新処理と突発事象処理の終了を待つ待ち状態にあり、割込み処理などによって更新されるセマフォの更新を検出することにより、その待ち状態が解除され次の処理に進む(ステップS43)。
【0056】
ベースシミュレーション部14は、5分ごとに行われるセマフォの更新を検出すると、スキャン処理を行う。このスキャン処理は、設定された各種情報に基づいて5分間の交通量がシミュレーションにより算定される。このシミュレーションにより算定される情報は、リンク上に存在する車両の情報であり、その車両の車種、経路選択タイプ、及びOD情報を含んだ情報である(ステップS44)。
【0057】
ベースシミュレーション部14は、スキャン処理によって算定された結果が示すリンク上に存在する車両の情報を、シミュレーションによって予測された結果をファイルにして出力し、ネットワーク上車両の目的地情報記憶部25に記録する。そのファイルには、リンク上に存在する車両の車種、経路選択タイプ、及びOD情報が含まれる(ステップS45)。
【0058】
ベースシミュレーション部14は、入手力部17によって検出された、処理の終了を示す「終了キー」の操作状態の情報に基づいて、終了のキー操作があったか否かを検出する(ステップS46)。
ステップS46における判定により、ベースシミュレーション部14は、終了のキー操作が無いと判定した場合には、ステップS43からの処理に進み、終了のキー操作を検出したと判定した場合には、ベースシミュレーション処理を終了する。
【0059】
ここで、図6を参照し、ステップS44(図5)として示したスキャン処理の詳細について示す。
図6は、本実施形態におけるスキャン処理の処理手順を示すフローチャートである。
最初にベースシミュレーション部14は、リンク速度設定処理を行う。このリンク速度設定処理では、最新オンラインデータ記憶部22に記憶された最新の感知器データ(最新感知器データ)に基づいて検出された速度情報に合わせてリンク速度を設定する。
ベースシミュレーション部14は、終了時刻に達したか否かの判定を行う。終了時刻に達したか否かの判定は、制御部18において管理される計時情報に基づいて、処理の終了時刻が管理される。ベースシミュレーション部14は、制御部18からの情報に基づいて、終了時刻に達していると判定した場合(Yes)には、スキャン処理を終了させ、終了時刻にまだ達していないと判定された場合(No)には、ステップSb3の処理に進む。
このスキャン処理では、対象とされる範囲のデータを更新する。
【0060】
ベースシミュレーション部14は、ロジット感度の一般化費用(リンクコスト)の算出処理を行う。ロジット感度の一般化費用の算出処理は、経路固定層と経路選択層との一般化費用(リンク費用)の2つの式に基づいて導かれる。
【0061】
経路固定層における一般化費用の算定式を、式(1)として示す。
経路選択層における一般化費用の算定式を、式(2)として示す。
【0062】
【数1】

【0063】
式(2)中に示した、ジャンクション(JCT)係数(JCTCoef)は、経路の分岐による影響を補正する係数である。経路の分岐点において、分岐比率が1:1に分かれると限定することができず、またその比率も変動する。そこで、そのような分岐比率の変動をモデル化したJCT係数を定義して、そのJCT係数を用いることにより経路の分岐による変動(影響)を補正する。
式(1)と式(2)を用いて導かれるロジット感度の一般化費用は、ベースシミュレーション部14によって、図示されない記憶領域にリンクごとに記録される(ステップSb3)。
ベースシミュレーション部14は、導かれたロジット感度の一般化費用に基づいて、経路選択処理を行う(ステップSb4)。
ベースシミュレーション部14は、スキャン処理を行う(ステップSb5)。
【0064】
続いて、図7を参照し、本実施形態における将来状況予測演算処理について示す。
図7は、本実施形態における将来状況予測演算処理の手順を示すフローチャートである。
最初に、予測シミュレーション部15は、将来状況予測演算処理の初期化処理を行う(ステップS51)。
予測シミュレーション部15は、他の処理と参照する情報を同期させるための同期処理を行う。この同期処理では、繰り返し行われる最新データ更新処理と入口交通量変動処理と現在状況再現処理の終了を待つ待機状態にあり、割込み処理などによって更新されるセマフォの更新を検出することにより、その待機状態が解除され次の処理に進む(ステップS52)。
【0065】
予測シミュレーション部15は、5分ごとに行われるセマフォの更新を検出すると、シミュレーション時刻設定処理を行う。このシミュレーション時刻設定処理では、最新感知器データに対応する時刻情報に基づいて、予測シミュレーションの開始時刻が設定され、記憶領域に保持される(ステップS53)。
予測シミュレーション部15は、交通量予測データ取得処理を行う。
この交通量予測データ取得処理は、予測入口交通量記憶部24に記憶されている各入口部でのシミュレーションの対象期間の予測入口交通量を読込んで、各入口部から流入する車両台数をシミュレーションの車両発生スケジュールとして設定する処理である。例えば、交通量予測データ取得処理におけるシミュレーションの繰返し周期を最新感知器データの更新周期と同じ5分に、シミュレーションの対象期間を2時間5分先までとする。これにより、各入口部から流入する車両台数を2時間5分先まで5分毎に予測された情報を取得する(ステップS54)。
【0066】
予測シミュレーション部15は、ホットスタート処理を行う。
このホットスタート処理は、ネットワーク上車両の目的地情報記憶部25に記憶されているネットワーク上車両の目的地情報と、最新オンラインデータ記憶部22に記憶されている最新感知器データとに基づいて、シミュレーションのネットワーク上に車両を配置する処理である。
【0067】
ホットスタート処理において、予測シミュレーション部15は、ネットワーク上車両の目的地情報記憶部25から得たネットワーク上車両の目的地情報に基づいて、同じ目的地(出口)を示す車両の台数と台数比率を、各リンクごとに算出する。予測シミュレーション部15は、最新オンラインデータ記憶部22から得た最新感知器データに基づいて各リンクに存在する実際の車両台数を算出する。予測シミュレーション部15は、目的地情報に基づいて算出された同じ目的地(出口)を示す車両の台数を、各リンクに存在する実際の車両台数に併せるように補正する。この補正は、当該リンクの台数を対象に補正するほかに、当該リンクの台数と当該リンクに隣接するリンクの台数による加重平均に基づいて補正してもよい。予測シミュレーション部15は、補正されたリンクの台数に、算出された同じ目的地(出口)を示す車両の台数比率を乗じて、同じ目的地(出口)を有する車両台数を各リンクごとに割り振り、シミュレーションのネットワーク上に配置する(ステップS55)。
【0068】
予測シミュレーション部15は、イベント記憶部23に記憶される突発事象対応処理(図3)の結果を参照して各種イベント情報を取得する。
突発事象対応処理の結果として予測シミュレーション部15が取得する情報には、車線閉塞情報、出口転換情報、入口転換情報が含まれる(ステップS56)。
【0069】
予測シミュレーション部15は、予め定められた所定の時間(例えば2時間)までの予想処理を行えたか否かの判定を行う(ステップS57)。ステップS57における判定の結果、予め定められた所定の時間までの予想処理が行えたと判定した場合には、ステップS60の処理に進む。
【0070】
予め定められた所定の時間までの予想処理が行えていないと判定した場合には、予測シミュレーション部15は、次の更新周期(例えば5分)の入口予測交通量を設定する処理を行う。設定された次の更新周期の入口予測交通量に基づいて、リンク上に存在する車両の情報をファイルとして出力し予測結果記憶部26にする。そのファイルには、リンク上に存在する車両の車種、経路選択タイプ、及びOD情報が含まれる(ステップS58)。
【0071】
予測シミュレーション部15は、スキャン処理を行う。このスキャン処理では、設定された各種情報に基づいて5分間の交通量がシミュレーションにより算定される。このシミュレーションにより算定される情報は、より具体的には、リンク上に存在する車両の情報であり、その車両の車種、経路選択タイプ、及びOD情報を含んだ情報である。また、このスキャン処理の詳細は、図6に示したベースシミュレーション処理におけるスキャン処理と同様な処理手順とすることができ、「ベースシミュレーション部14」を「予測シミュレーション部15」と読み替える(ステップS59)。予測シミュレーション部15は、ステップS59の処理が終了すると、ステップS57の処理から繰り返す。
【0072】
予測シミュレーション部15は、スキャン処理によって算定されたリンク上に存在する車両の情報をファイルとして出力し予測結果記憶部26に記録する(ステップS60)。
【0073】
予測シミュレーション部15は、入手力部17によって検出された、処理の終了を示す「終了キー」の操作状態の情報に基づいて、終了のキー操作があったか否かを検出する(ステップS61)。
ステップS61における判定により、予測シミュレーション部15は、終了のキー操作があったと判定した場合には、予測シミュレーション処理を終了する。
【0074】
予測シミュレーション部15は、終了のキー操作が無かったと判定した場合には、ステップS62からの処理に進み、次の予測シミュレーション処理を行うための、シミュレーション再構成処理を行う。このシミュレーション再構成処理は、次の処理を行うための準備を行う(ステップS62)。このシミュレーション再構成処理を終えると、ステップS52からの処理を繰り返す。
【0075】
続いて、図8を参照し、本実施形態における予測結果補正処理について示す。
図8は、本実施形態における予測結果補正処理の手順を示すフローチャートである。
最初に、予測結果補正部16は、予測結果補正処理の初期化処理を行う(ステップS71)。
予測結果補正部16は、他の処理と参照する情報を同期させるための同期処理を行う。この同期処理では、繰り返し行われる最新データ更新処理の終了を待つ待ち状態にあり、割込み処理などによって更新されるセマフォの更新を検出することにより、その待ち状態が解除され次の処理に進む(ステップS72)。
【0076】
予測結果補正部16は、5分ごとに行われるセマフォの更新を検出すると、ファイル読込処理を行う。このファイル読込処理では、最新オンラインデータ記憶部22から最新の区間5分データと区間イベントNo対応データ、及び予測結果記憶部26から区間渋滞状況データを読み込む(ステップS73)。
【0077】
予測結果補正部16は、直前時間帯の予測結果を読み込んでいるか否かの判定を行う(ステップS74)。ステップS74における判定により、直前時間帯の予測結果を読み込んでいると判定した場合には、ステップS77の処理に進む。
【0078】
ステップS74における判定により、直前時間帯の予測結果を読み込んでいないと判定した場合には、予測結果補正部16は、最新の区間速度と当該時刻の予測区間速度が合致するように調整するための調整量を算出する。
例えば、前回行われた将来状況予測演算処理において対象箇所と判定されなかった箇所は、直前の処理では予測処理を行っていない。新たに対象箇所が発生した場合に、実施に観測された区間速度と予測区間速度とが乖離している場合がある。予測結果補正部16は、この乖離を低減するように予測区間速度を、実際に観測された区間速度に合致するように調整するための調整量を算出する(ステップS75)。
【0079】
予測結果補正部16は、算出された区間速度の調整量を区間旅行時間に換算し、その換算された区間旅行時間を各時間帯の予測旅行時間に加算することにより、実際の旅行時間と予測旅行時間の乖離を調整する。(ステップS76)。
予測結果補正部16は、ステップS76までの処理により調整され、補正された予測旅行時間を含んだ情報をファイルにして出力し、予測結果記憶部27に記録する。出力される予測旅行時間の情報は、リンク上の車両情報(車種、経路選択タイプ、OD)に関連付けられたファイルとして出力し、予測結果記憶部27に記録する(ステップS77)。この予測結果補正処理を終えると、ステップS72からの処理を繰り返す。
【0080】
なお、本発明は、上記の実施形態に示した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で変更することができる。例えば、繰り返し行われる各処理の周期を5分とし、各シミュレーションにおける継続時間を2時間としたが、一実施態様を示したものであり任意の時間とすることができる。
【0081】
なお、本実施系形態に示す交通状況予測演算装置1では、複数の入口と複数の出口を有する道路を所定の長さを有する複数のリンクから形成されるものと定義して、前記入口から前記出口までそれぞれ移動する複数の車両の移動状況を前記リンクごとにそれぞれ予測する。(1)そして、入口交通量予測部13は、道路において観測された車両の交通量を示す交通量情報に基づいて、その入口ごとに入口から流入する車両の台数を流入車両台数として算定する。突発事象対応部12は、車両の移動に支障となりうる事象を示す支障情報(イベント情報、管制情報)に基づいて、その車両が選択しうる出口を推定し、入口から出口までの標準的な移動状態における交通量を示す標準起終点情報(標準OD情報)に、推定された出口に基づいて生成された転換率を乗じて補正された起終点情報を生成する。ベースシミュレーション部14は、補正された起終点情報に基づいて、リンクごとに車両の移動速度を算定する。予測演算部は、算定された流入車両台数と算定された移動速度とに基づいて、車両が予め定められる所定の時間までに移動する移動先までの区間旅行時間を算定して、交通状況を予測する。
【0082】
(2)また、上記の交通状況予測演算装置1では、突発事象対応部12は、車両の移動に支障となりうる事象が生じていない場合に選択される出口に代えて、車両の移動に支障となりうる事象が生じていると、支障情報に基づいて判定される場合に、他の出口を選択する出口転換を行うように、支障情報と、時間帯ごとに予め定められた転換パターンとに基づいて転換率を推定する。
【0083】
(3)また、上記の交通状況予測演算装置1では、突発事象対応部12は、支障情報に基づいて、リンクに対応する所定の区間に通行止めが発生している状態、又は、所定の区間に事故が生じている状態と判定される場合は、車両が行う出口転換の影響を低減するように補正する前記転換率を推定する。
【0084】
(4)また、上記の交通状況予測演算装置1では、突発事象対応部12は、支障情報に基づいて、支障となりうる事象が生じているリンクに対応して支障の影響を受ける出口を転換元出口、転換元出口から出口転換される出口を転換対象出口として、転換対象出口に係る起終点情報に基づいて車両が行う出口転換の影響を低減するように補正する転換率を推定する。
【0085】
(5)また、上記の交通状況予測演算装置1では、突発事象対応部12は、転換先出口ごとに転換元出口に係る起終点情報に基づいて、車両が行う出口転換の影響を低減するように補正する転換率を推定する。
(6)また、上記の交通状況予測演算装置1では、基準状況算定部13は、補正された起終点情報に基づいて、リンクごとに車両の移動速度を示すリンク速度を設定し、道路の経路に基づいて定められる経路情報に基づいて、前記経路の分岐点の平常時の利用状況に応じて定められる係数(JCT係数)に基づいて補正した第1補正経路情報を算出し、
前記算定された第1補正経路情報に基づいて、前記道路における前記車両の移動状況を算定する。
【0086】
(7)また、上記の交通状況予測演算装置1では、予測結果補正部16は、予測された交通状況を補正して、車両の予測速度を生成する。
(8)また、上記の交通状況予測演算装置1では、補正処理部は、予め定められた区間に分割された前記道路の所定の区間における前記車両が移動する区間速度と、前記区間の予測区間速度とが一致するように該区間の区間速度を調整する調整量に基づいて、前記区間を移動する際に必要とされる区間旅行時間を算定し、前記予測旅行時間に加えて補正する。
本実施形態に示す交通状況予測演算装置1では、上記の構成とすることにより、交通状況の予測の精度を高めることが可能となる。
【0087】
なお、上述の交通状況予測演算装置1は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した交通状況の予測を行う処理手順は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【符号の説明】
【0088】
1 交通状況予測演算装置
11 最新情報更新部、12 突発事象対応部、13 入口交通量予測部、
14 ベースシミュレーション部、15 予測シミュレーション部、
16 予測結果補正部、17 入出力部、18 制御部18、
21 オンラインデータ記憶部、22 最新オンラインデータ記憶部22、
23 イベント記憶部、24 予測入口交通量記憶部、
25 ネットワーク上車両の目的地情報記憶部、26 予測結果記憶部、
27 予測結果記憶部、31 入口転換パタン、32 出口転換パタン、
33 平均交通量パタン、34 道路ネットワークデータ、35 標準OD表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入口と複数の出口を有する道路を所定の長さを有する複数のリンクから形成されるものと定義して、前記入口から前記出口までそれぞれ移動する複数の車両の移動状況を前記リンクごとにそれぞれ予測する予測演算装置であって、
前記道路において観測された前記車両の交通量を示す交通量情報に基づいて、前記入口ごとに前記入口から流入する前記車両の台数を流入車両台数として算定する入口交通量予測部と、
前記車両の移動に支障となりうる事象を示す支障情報に基づいて前記車両が選択しうる出口を推定し、前記入口から前記出口までの標準的な移動状態における前記交通量を示す標準起終点情報に、前記推定された出口に基づいて生成された転換率を乗じて補正された起終点情報を生成する突発事象対応部と、
前記補正された起終点情報に基づいて、前記リンクごとに前記車両の移動速度を算定する基準状況算定部と、
前記算定された流入車両台数と前記算定された移動速度とに基づいて、前記車両が予め定められる所定の時間までに移動する移動先までの区間旅行時間を算定して、交通状況を予測する予測演算部と、
を備えることを特徴とする予測演算装置。
【請求項2】
前記突発事象対応部は、
前記車両の移動に支障となりうる事象が生じていない場合に選択される出口に代えて、前記車両の移動に支障となりうる事象が生じていると、前記支障情報に基づいて判定される場合に、他の出口を選択する出口転換を行うように、前記支障情報と、時間帯ごとに予め定められた転換パターンとに基づいて前記転換率を推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の予測演算装置。
【請求項3】
前記突発事象対応部は、
前記支障情報に基づいて、前記リンクに対応する所定の区間に通行止めが発生している状態、又は、前記所定の区間に事故が生じている状態と判定される場合は、前記車両が行う出口転換の影響を低減するように補正する前記転換率を推定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の予測演算装置。
【請求項4】
前記突発事象対応部は、
前記支障情報に基づいて、前記支障となりうる事象が生じている前記リンクに対応して前記支障の影響を受ける出口を転換元出口、前記転換元出口から出口転換される出口を転換対象出口として、前記転換対象出口に係る前記起終点情報に基づいて前記車両が行う出口転換の影響を低減するように補正する前記転換率を推定する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の予測演算装置。
【請求項5】
前記突発事象対応部は、
前記転換先出口ごとに前記転換元出口に係る前記起終点情報に基づいて、前記車両が行う出口転換の影響を低減するように補正する前記転換率を推定する
ことを特徴とする請求項4に記載の予測演算装置。
【請求項6】
前記基準状況算定部は、
前記補正された起終点情報に基づいて、前記リンクごとに前記車両の移動速度を示す第1リンク速度を設定し、
前記道路の経路に基づいて定められる経路情報に基づいて、前記経路の分岐点の平常時の利用状況に応じて定められる係数に基づいて補正した第1補正経路情報を算出し、
前記算定された第1補正経路情報に基づいて、前記道路における前記車両の移動状況を算定する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の予測演算装置。
【請求項7】
前記予測された交通状況を補正して、前記車両の予測速度を生成する補正処理部と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の予測演算装置。
【請求項8】
前記補正処理部は、
予め定められた区間に分割された前記道路の所定の区間における前記車両が移動する区間速度と、前記区間の予測区間速度とが一致するように該区間の区間速度を調整する調整量に基づいて、前記区間を移動する際に必要とされる区間旅行時間を算定し、前記予測旅行時間に加えて補正する
ことを特徴とする請求項7に記載の予測演算装置。
【請求項9】
複数の入口と複数の出口を有する道路を所定の長さを有する複数のリンクから形成されるものと定義して、前記入口から前記出口までそれぞれ移動する複数の車両の移動状況を前記リンクごとにそれぞれ予測する予測演算装置のコンピュータによって実行される予測演算処理プログラムであって、
入口交通量予測部が、前記道路において観測された前記車両の交通量を示す交通量情報に基づいて、前記入口ごとに前記入口から流入する前記車両の台数を流入車両台数として算定するステップと、
突発事象対応部が、前記車両の移動に支障となりうる事象を示す支障情報に基づいて前記車両が選択しうる出口を推定し、前記入口から前記出口までの標準的な移動状態における前記交通量を示す標準起終点情報に、前記推定された出口に基づいて生成された転換率を乗じて補正された起終点情報を生成するステップと、
基準状況算定部が、前記補正された起終点情報に基づいて、前記リンクごとに前記車両の移動速度を算定するステップと、
予測演算部が、前記算定された流入車両台数と前記算定された移動速度とに基づいて、前記車両が予め定められる所定の時間までに移動する移動先までの区間旅行時間を算定して、交通状況を予測するステップと、
を含むことを特徴とする予測演算プログラム。
【請求項10】
複数の入口と複数の出口を有する道路を所定の長さを有する複数のリンクから形成されるものと定義して、前記入口から前記出口までそれぞれ移動する複数の車両の移動状況を前記リンクごとにそれぞれ予測する予測演算方法であって、
前記道路において観測された前記車両の交通量を示す交通量情報に基づいて、前記入口ごとに前記入口から流入する前記車両の台数を流入車両台数として算定するステップと、
前記車両の移動に支障となりうる事象を示す支障情報に基づいて前記車両が選択しうる出口を推定し、前記入口から前記出口までの標準的な移動状態における前記交通量を示す標準起終点情報に、前記推定された出口に基づいて生成された転換率を乗じて補正された起終点情報を生成するステップと、
前記補正された起終点情報に基づいて、前記リンクごとに前記車両の移動速度を算定するステップと、
前記算定された流入車両台数と前記算定された移動速度とに基づいて、前記車両が予め定められる所定の時間までに移動する移動先までの区間旅行時間を算定して、交通状況を予測するステップと、
を含むことを特徴とする予測演算方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−198132(P2011−198132A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65118(P2010−65118)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人交通工学研究会、「第29回 交通工学研究発表会 論文集」(CD−ROM)、2009年10月1日発行、(2009年11月5日発表) 〔刊行物等〕 ITS World Congress、「16▲th▼ ITS World Congress Stockholm,2009 Proceedings」(CD−ROM)、平成21年9月21日発行
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(505389695)首都高速道路株式会社 (47)
【出願人】(592090555)パシフィックコンサルタンツ株式会社 (30)
【出願人】(501303840)株式会社アイ・トランスポート・ラボ (11)
【Fターム(参考)】