説明

人体接近検出システム及び警護システム

【課題】導電体への人体の接近を、当該導電体と人体との容量結合を利用して検出する人体検出システムのキャリブレーションを容易化する。
【解決手段】制御部37は、スイッチ34をオンに設定し、監視装置3と導電性1パネルを接続して、VCO33に生成させるキャリア信号の周波数Ftxを掃引して、信号レベル検出部323で検出される受信信号レベルがピークとなるャリア信号の周波数fcを算定し、算定した周波数fcを、VCO33の生成するキャリア信号の周波数Ftxをfcに設定し、監視装置3の監視動作を開始する。監視動作において、信号レベル検出部323は導電性パネル1の電動変位を表す受信信号の周波数Ftx成分のレベルを検出し、当該レベルの低下より制御部37は人体の導電性1パネルへの接近を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の接近を検出する人体検出システムのキャリブレーションの技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体の接近を検出する人体検出システムとしては、監視カメラで撮影した画像を画像処理して、侵入者の有無を検出する技術(たとえば、特許文献1)や、赤外線センサや超音波センサを用いて、侵入者の有無を検出する技術(たとえば、特許文献2)が知られている。
【0003】
なお、本発明において行う信号検出に関する技術としては、本出願人が本願に先行する出願において開示した、コイルとコイルに軸方向に近接して配置した電極より構成されるコイルセンサを用いて交流信号を検出する交流信号検出装置が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-294974号公報
【特許文献2】特開2010-026917号公報
【特許文献3】特開2009-212675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記監視カメラや赤外線センサを侵入者の検知に用いた場合、霧や雨天時に検出感度が低下することが否めない。また、超音波センサを侵入者の検知に用いる技術によれば、風による枯れ葉の動きなどによって、侵入者の誤検出が生じやすい。
また、いずれの技術も、施設の塀の全周に渡って侵入者を検出するような用途に用いる場合に、真に塀に接近した侵入者のみを弁別して検知するように、侵入者を検出するエリアを狭域化することが困難である。
そこで、これらの課題解決のために、本出願人は、導電体への人体の接近を、当該導電体と人体との容量結合を利用して検出する人体検出システムを、本願に先行する出願(特願2011-23795、特願2011-136116)において開示した。
ここで、この人体検出システムは、インダクタを介して、当該インダクタのインダクタンスと導電体と大地間の容量に応じて定まる共振周波数の信号を導電体に印加し、導電体と人体との容量結合によって生じる当該信号の共振周波数成分のレベル変化に応じて人体の接近を検出するものであるために、導電体と大地間の容量に応じてキャリブレーションすることが必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、導電体への人体の接近を、当該導電体と人体との容量結合を利用して検出する人体検出システムのキャリブレーションを容易に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、人体の接近を検出する人体接近検出システムを、導電体と、監視装置とを含めて構成し、前記監視装置に、所定周波数の監視信号を出力する監視信号生成手段と、前記監視信号生成手段の出力と前記導電体との間に直列に介挿されたインダクタと、前記導電体に接続した入力を有し、当該導電体の電位変動を表す検出信号を出力する信号センサと、前記信号センサが出力する検出信号中に表れる前記監視信号のレベルを監視し、当該監視信号のレベルを検出する信号レベル検出手段と、前記信号検出部が検出した前記監視信号レベルの変化に基づいて、前記導電体への前記人体の接近を検出する接近検出手段と、前記監視信号生成手段が出力する監視信号の前記所定周波数の調整を行う周波数調整手段とを設けたものである。ただし、前記周波数調整手段は、前記監視信号生成手段が生成する前記監視信号の周波数を変化させながら、前記信号レベル検出手段が検出した前記監視信号のレベルを取得することにより、当該監視信号のレベルがピークとなる前記監視信号の周波数を現用周波数として算定し、前記監視信号生成手段が出力する監視信号の前記所定周波数を算定した前記現用周波数に調整するものである。
【0008】
このような人体検出システムによれば、前記周波数調整手段において前記導電体に人体が接近していない状態において前記調整のための動作を行うようにすることにより、インダクタを介して、当該インダクタのインダクタンスと導電体と大地間の容量に応じて定まる共振周波数の信号を導電体に印加し、導電体と人体との容量結合によって生じる当該信号の共振周波数成分のレベル変化に応じて人体の接近を検出する人体検出システムにおいて、インダクタのインダクタンスと導電体と大地間の容量に応じて定まる共振周波数を自動的に設定することができるようになる。
【0009】
また、前記課題達成のために、本発明は、人体の接近を検出する人体接近検出システムを、導電体と、監視装置とを含めて構成し、前記監視装置に、第1端子と第2端子との間の接続をオン/オフする、前記導電体に第2端子が接続したスイッチと、所定周波数の監視信号を出力する監視信号生成手段と、前記監視信号生成手段の出力と前記スイッチの第1端子との間に直列に介挿されたインダクタと、前記スイッチの第1端子に接続した入力を有し、前記スイッチの第1端子の電位変動を表す検出信号を出力する信号センサと、前記信号センサが出力する検出信号中に表れる前記監視信号のレベルを監視し、当該監視信号のレベルを検出する信号レベル検出手段と、前記信号検出部が検出した前記監視信号レベルの変化に基づいて、前記導電体への前記人体の接近を検出する接近検出手段と、前記導電体と大地との間のキャパシタンスを算出する容量検出手段とを設けたものである。ただし、前記容量検出手段は、前記スイッチの第1端子と第2端子との間の接続をオフに設定した状態で、前記周波数調整手段は、前記監視信号生成手段が生成する前記監視信号の周波数を変化させながら、前記信号レベル検出手段が検出した前記監視信号のレベルを取得することにより、当該監視信号のレベルがピークとなる前記監視信号の周波数を参照周波数として検出し、前記スイッチの第1端子と第2端子との間の接続をオンに設定した状態で、前記周波数調整手段は、前記監視信号生成手段が生成する前記監視信号の周波数を変化させながら、前記信号レベル検出手段が検出した前記監視信号のレベルを取得することにより、当該監視信号のレベルがピークとなる前記監視信号の周波数を現用周波数として検出し、前記参照周波数より求まる前記スイッチの第1端子と大地との間のキャパシタンスを、前記現用周波数より求まる前記スイッチの第1端子と大地との間のキャパシタンスより減じて、前記導電体と大地との間のキャパシタンスを算出するものである。
【0010】
このような人体検出システムによれば、前記容量検出手段において、前記導電体に人体が接近していない状態において前記導電体と大地との間のキャパシタンスを算出するための動作を行うようにすることにより、インダクタを介して、当該インダクタのインダクタンスと導電体と大地間の容量に応じて定まる共振周波数の信号を導電体に印加し、導電体と人体との容量結合によって生じる当該信号の共振周波数成分のレベル変化に応じて人体の接近を検出する人体検出システムにおいて、導電体と大地間の容量を算定することができるので、当該算定結果をキャリブレーションに用いることにより、導電体と大地間の容量に応じたキャリブレーションが容易化されることとなる。
【0011】
ここで、このような人体検出システムには、前記容量検出手段が検出した前記現用周波数に、前記監視信号生成手段が出力する監視信号の前記所定周波数を調整する周波数調整手段を設けるようにしてもよい。
ここで、以上のような人体接近検出システムにおいて、より具体的には、前記接近検出手段は、前記監視信号のレベルが所定の値よりも小さくなったときに、前記導電体への前記人体の接近を検出するように構成してもよい。
ところで、以上のような人体接近検出システムは、前記監視信号生成手段において、前記所定周波数の信号を、所定のデータ信号で変調して前記監視信号として生成し、前記信号レベル検出手段において、前記信号センサが出力する検出信号中に表れる前記監視信号から前記データ信号を復調し、復調したデータ信号のレベルを前記監視信号のレベルを表すものとして検出するように構成してもよい。
【0012】
また、以上のような人体接近検出システムにおいて、前記信号センサは、コイルと、当該信号センサの入力に接続され、かつ、前記コイルの中央穴に近接させて配置された電極と、
前記コイルの出力に基づいて、前記検出信号を出力する検出信号出力手段とより構成してもよい。
【0013】
また、以上の人体接近検出システムは、保安区域内部を外部より遮断する構造物への人体の接近を検出する警護システムを構成するために用いることができる。すなわち、この場合には、前記導電性導電体を、前記構造物に組み込むようにすれば、当該構造物への人体の接近を検出することができる。なお、当該構造物は、柵、フェンス、建造物の壁、建造物の窓、または、扉であってよい。
【0014】
または、以上の人体接近検出システムを用いて、保安区域内部を外部より遮断するフェンス塀への人体の接近を検出する警護システムを構成することもできる。すなわち、この場合には、たとえば、前記フェンス塀を、前記各検出装置の導電体を連設して形成するようにすれば、フェンス塀への人体の接近を検出することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、導電体への人体の接近を、当該導電体と人体との容量結合を利用して検出する人体検出システムのキャリブレーションを容易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る警護システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る監視装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るキャリブレーション処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る監視信号出力装置のアンプ出力から接近検出装置までの間の等価回路を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る接近検出の原理を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る信号センサの構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る交流センサの構成例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る監視装置の他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る警護システムの実施形態について説明する。
本実施形態に係る警護システムは、たとえば、図1aに示すように、工場、研究施設、発電所、軍事施設等である保安区域100を内部に囲む保安塀10への、人体の接近を検出するものである。
ここで、保安塀は、図1bに示すように、導電性パネル1を複数枚、地面に固定した支柱2を用いて固定することにより、保安区域100を内部に囲むように並べることにより形成されている。
また、導電性パネル1は、金属製等の導電性を有しており、図1cに示すように、導電性パネル1と支柱2、及び、導電性パネル1同士が相互に絶縁されるように、絶縁性の連結部材21を介して支柱2に固定されている。
ここで、導電性パネル1としては、図1b、cに示したような、金網やネットフェンスなどの格子を有するパネルの他、図1d1に示すような導電性の平板状のパネルや、図1d2に示すような導電性の平板状のパネルに多数の孔を設けたものなども用いることができる。また、図1fのf1に外観をf2、f3にf1のA-A線による断面を示すように、非導電性の板状の構造材11の内部または外面上に設けた導電性のパネルやネットやシートやフィルムの層として導電性パネル1を構成するようにしてもよい。なお、図1fの場合は、構造材11を支柱2に固定することとなる。
【0018】
さて、図1bに示すように、本警護システムは、導電性毎に設けた監視装置3と、各監視装置3に接続した警報装置4とを含んで構成される。
図2に、監視装置3の構成を示す。
図示するように、監視装置3は、監視信号出力部31、監視信号検出部32、VCO33(電圧制御発振器33)、スイッチ34と、キャパシタンスCrのリファレンスキャパシタ35と、通信インタフェース36、CPU等により構成される制御部37より構成される。
ここで、VCO33は、制御部37の電圧制御に従って定まる周波数Ftxのキャリア信号を生成する。
また、スイッチ34は、制御部37によりオン/オフが制御されるものであり、出力側端が導電性パネル1に接続されており、入力側端は監視信号出力部31と監視信号検出部32とリファレンスキャパシタ35に接続されている。
そして、リファレンスキャパシタ35は、スイッチ34の入力側端と監視装置3のグランドとの間に接続されている。
また、監視信号検出部32は、VCO33が生成したキャリア信号を、制御部37が出力する所定周波数(たとえば、10Hz)の矩形波であるデータ信号でASK変調する変調器311、インダクタンスLのコイル等のインダクタ313、変調器311が変調した変調信号を増幅し、監視信号としてインダクタ313を介して、スイッチ34の入力側端に出力するアンプ312とを有している。
【0019】
一方、接近検出部は、スイッチ34の入力側端の電位変動を検出し検出信号として出力する信号センサ321、信号センサ321が出力する検出信号を上述したキャリア信号の周波数FtxでASK復調し復調した信号を受信信号として出力する復調器322、復調器322が出力した受信信号のレベルを検出する信号レベル検出部323を備えている。
【0020】
以下、このような監視装置3の動作について説明する。
監視装置3の動作には、VCO33が生成するキャリア信号の周波数Ftxの設定を調整するキャリブレーション動作と、キャリブレーション処理で設定された周波数Ftxのキャリア信号を用いて、導電パネルへの人体の接近を監視する監視動作とがある。
まず、キャリブレーション動作について説明する。ここで、監視装置3のキャリブレーション動作は、制御部37が行うキャリブレーション処理によって制御される。なお、このキャリブレーション処理は、監視装置3の電源が投入されたときや、監視装置3に設けたキャリブレーション実行ボタンが操作されたときや、通信インタフェース36を介して警報装置4からキャリブレーション実行が指示されたときに開始するように構成してもよい。ただし、このキャリブレーション処理は、監視装置3の設置時やメンテナンス時などに、導電性パネル1に人体が接近していない状態で行う。
【0021】
図3に、この制御部37が行うキャリブレーション処理の手順を示す。
図示するように、この処理では、まず、監視装置3の監視動作を停止しスイッチ34をオフに設定する(ステップ3002)。
そして、データ信号を変調器311に出力すると共に、VCO33に生成させるキャリア信号の周波数Ftxを所定範囲内で掃引、すなわち、変化させながら、信号レベル検出部323で検出された受信信号レベルがピークとなったときに、VCO33が生成していたキャリア信号の周波数frを算定する(ステップ3004)。
【0022】
そして、算定した周波数frより、寄生容量Cpを算出する(ステップ3006)。
ここで、スイッチ34がオフに設定されているときには、図2の、監視信号出力部31のアンプ312の出力RefTから、監視信号検出部32の入力RefRまでの間(図2、200で示した部分)の回路構成は、図4a1に示すようになり、インダクタ313の出力と大地との間にリファレンスキャパシタ35のキャパシタンスCrと寄生容量Cpとの和(Cr+Cp)が存在している状態となる。
【0023】
したがって、出力RefTから入力RefRまでの間の伝達関数は、図4a2で示す等価回路で示すことができ、この場合、出力RefTから入力RefRまでの間の周波数領域の伝達特性(周波数応答特性)は、インダクタ313のインダクタンスLとキャパシタンス(Cr+Cp)によるLCフィルタの周波数応答特性と同等となる。
【0024】
よって、受信信号レベルがピークとなるときのキャリア信号の周波数frは、図4a2で示すLCフィルタの共振周波数であり、
fr=1/[2π{L×(Cr+Cp)}1/2]
にピークを持つものとなる。
【0025】
よって、リファレンスキャパシタ35のキャパシタンスCrは既知であるので、図3のステップ3006では、この周波数frより、寄生容量Cpを算出することができる。
ただし、
fr =1/{2π(L×Cr)}1/2を予め計算して求めておき、f0とfrとを用いて、
Cp={(f0/ fr)2−1}Crとして、寄生容量Cpを算出するようにしてもよい。
さて、このようにして寄生容量Cpを算出したならば(ステップ3006)、次に、スイッチ34をオンに設定し(ステップ3008)、データ信号を変調器311に出力すると共に、VCO33に生成させるキャリア信号の周波数Ftx所定範囲内で掃引、すなわち、変化させながら、信号レベル検出部323で検出された受信信号レベルがピークとなったときに、VCO33が生成していたキャリア信号の周波数fcを算定する(ステップ3010)。
【0026】
そして、算定した周波数fcより、インダクタ313の出力と大地との間の導電性パネル1を介したキャパシタンスCfを算出する(ステップ3012)。
ここで、スイッチ34がオンに設定されているときには、図2の、監視信号出力部31のアンプ312の出力RefTから、監視信号検出部32の入力RefRまでの間(図2、200で示した部分)の回路構成は、図4b1に示すようになり、インダクタ313の出力と大地との間にリファレンスキャパシタ35のキャパシタンスCrと寄生容量Cpとインダクタ313の出力と大地との間の導電性パネル1を介したキャパシタンスCfの和(Cr+Cp+Cf)が存在している状態となる。
【0027】
したがって、出力RefTから入力RefRまでの間の伝達関数は、図4b2で示す等価回路で示すことができ、この場合、出力RefTから入力RefRまでの間の周波数領域の伝達特性(周波数応答特性)は、インダクタ313のインダクタンスLとキャパシタンス(Cr+Cp+Cf)によるLCフィルタの周波数応答特性と同等となる。
【0028】
よって、受信信号レベルがピークとなるときのキャリア信号の周波数fcは、図4b2で示すLCフィルタの共振周波数であり、
fc=1/[2π{L×(Cr+Cp+Cf)}1/2]
にピークを持つものとなる。
【0029】
よって、リファレンスキャパシタ35のキャパシタンスCr、寄生容量Cpは既知であるので、図3のステップ3012では、この周波数fcより、(Cr+Cp+Cf)を求め、これよりCr+Cpを減じれば、インダクタ313の出力と大地との間の導電性パネル1を介したキャパシタンスCfを算出することができる。
ただし、上述したf0とfcとを用いて、
Cf={(f0/ fc)2−1}Cr-Cpとして、キャパシタンスCfを算出するようにしてもよい。
このようにして、インダクタ313の出力と大地との間の導電性パネル1を介したキャパシタンスCfを算出したならば、(ステップ3012)、VCO33の生成するキャリア信号の周波数Ftxをfcに設定し、監視装置3の監視動作を開始し(ステップ3014)、算出したキャパシタンスCfを、通信インタフェース36を介して警報装置4に通知し(ステップ3016)、キャリブレーション処理を終了する。
【0030】
以上、制御部37が行うキャリブレーション処理について説明した。
さて、以上のようなキャリブレーション処理によって監視装置3から、キャパシタンスCfを通知された警報装置4は、キャパシタンスCfの異常を、キャパシタンスCfの値の所定の正常範囲範囲からの逸脱や、前回キャパシタンスCfを通知されたときからのキャパシタンスCfの値の所定レベル以上の変化に基づいて検出し、検出した異常をオペレータに通知する処理などを行う。なお、キャパシタンスCfの異常は、導電性パネル1の損壊や、導電性パネル1と大地との導通発生などによって生じ得る。
【0031】
次に、監視装置3の監視動作について説明する。
ここで、監視装置3の監視動作は、上述したキャリブレーション処理において監視動作が停止されている期間を除いた期間中実行される。
また、監視動作は、上述した監視装置3のスイッチ34がオン、VCO33の生成するキャリア信号の周波数が、上述したキャリブレーション処理によって、インダクタ313の出力と大地との間のキャパシタンスが(Cr+Cp+Cf)である状態における共振周波数fcに設定された状態で行われる。
いま、導電性パネル1に人体200が接近した場合、導電性パネル1と人体が容量結合し、図2の、監視信号出力部31のアンプ312の出力RefTから、監視信号検出部32の入力RefRまでの間(図2、200で示した部分)の回路構成は、図4c1に示すようになり、インダクタ313の出力側(接近検出装置側)端に、(Cr+Cp+Cf)に加え、インダクタ313の出力と大地との間の人体を介したキャパシタンスChが存在している状態となる。したがって、出力RefTから入力RefRまでの間の伝達関数は、図4c2で示す等価回路で示すことができ、この場合、出力RefTから入力RefRまでの間の周波数領域の伝達特性(周波数応答特性)は、インダクタ313のインダクタンスLとキャパシタンス(Cr+Cp+Cf+Ch)によるLCフィルタの周波数応答特性と同等となる。
【0032】
よって、導電性パネル1に人体が接近している場合の、出力RefTから入力RefRまでの間の周波数領域の伝達特性(周波数応答特性)は、LCフィルタの共振周波数
fh=1/[2π{L×(Cr+Cp+Cf+Ch)}1/2]
にピークを持つものとなる。
【0033】
ここで、図5に、導電性パネル1に人体が接近しておらず上述のように出力RefTから入力RefRまでの間の共振周波数がfcである場合の周波数応答特性401と、導電性パネル1に人体が接近しており出力RefTから入力RefRまでの間の共振周波数がfhである場合の周波数応答特性402を示す。
【0034】
図示するように、人体が導電性パネル1に接近していないときの周波数応答特性401におけるピークの周波数fc近傍におけるゲインは、人体が導電性パネル1に接近しているときの周波数応答特性402におけるゲイン412の方が、人体が導電性パネル1に接近していないときの周波数応答特性401におけるゲイン411よりも小さくなる。よって、キャリア信号の周波数Ftxが周波数fcに一致、または、ほぼ一致する場合、監視信号のゲインも人体が導電性パネル1に接近しているときの方が、人体が導電性パネル1に接近していないときよりも小さくなる。
【0035】
したがって、キャリア信号の周波数Ftxがfcに設定されている監視動作中には、侵入者の導電性パネル1への接近に伴い、導電性パネル1と侵入者の身体の容量結合が強まり、周波数応答特性が図5の401から402のように変化して監視信号のゲインが徐々に低下し、これにより、信号センサ321の出力する検出信号中の監視信号の振幅レベルは徐々に低下し、監視信号を復調した受信信号のレベルも徐々に低下することとなる。
【0036】
そこで、監視装置3の制御部37は、監視動作中、信号レベル検出部323において検出される受信信号のレベルが、適当なしきい値レベルよりも小さくなったことを検出することにより、導電性パネル1への侵入者の接近を検出し、侵入者の接近を検出したならば、その旨を通信インタフェース36を介して警報装置4に通知する。
【0037】
ここで、侵入者と導電性パネル1との距離が大きくなるにつれて、導電性パネル1と侵入者の身体との容量結合の大きさは急速に弱まり、周波数応答特性は図5の人体が導電性パネル1に接近していないときの周波数応答特性401に復帰するので、このような構成によれば、保安壁に真に接近した侵入者のみを、精度よく検出することができることになる。
【0038】
さて、図1に戻り、警報装置4は、監視装置3の信号異常検出部から接近検出信号を受信したならば、接近検出信号を出力した監視装置3に対応する保安塀10の位置を識別可能な形態で、所定の警報出力を行う。
さて、次に、監視装置3の接近検出装置の信号センサ321としては、たとえば、上述した特許文献3で示した交流信号検出装置を用いることができる。
図6に、特許文献3で示した交流信号検出装置を用いた場合の、信号センサ321の構成を示す。
図6に示すように、信号センサ321は、コイル511と、コイル511に近接させて配置した第1電極512と、コイル511に近接させて配置した第2電極513とより構成される交流センサ510を備えている。ここで、第1電極512と第2電極513は、コイル511の軸方向について相互に反対側に、間にコイル511を挟み込むように配置されている。そして、第1電極512の入力INに、導電性パネル1が接続され、導電性パネル1の電圧が印加される。
【0039】
また、信号センサ321は、FET521と抵抗522と抵抗523と周波数特性調整用のコンデンサ524とより構成される反転増幅回路520を備え、コイル511の一端がFET521のゲートに接続され、コイル511の他端が接地されている。そして、FET521は、ゲート電圧であるコイル511の誘起電圧に応じてFET521のソース-ドレイン電流の大きさを変化させ、抵抗522、抵抗523は、FET521のソース-ドレイン電流の大きさを、大小が反転(位相反転)した電圧に変換し、反転増幅回路520の出力とする。そして、コンデンサ531で反転増幅回路520の出力の交流成分が抽出され、信号センサ321から復調器322への出力OUTとなる。
【0040】
また、この反転増幅回路520の出力電圧は、抵抗541、低キャパシタンスのコンデンサ542を介して、第2電極513に印可される。
また、この他、信号センサ321は、コイル511の共振周波数を設定するためのコンデンサ551や、不要周波数成分を減衰するためのコイル552なども備えている。
このような信号センサ321の構成によれば、接近検出装置の入力RefRから第1電極512に導電性パネル1の電圧が印加されると、当該電圧の変動であるところの交流信号によって第1電極512から発生する、コイル511の軸方向にコイル511を貫く磁束に変化が発生する。
【0041】
一方で、コイル511を貫く磁束に変化が生じると、コイル511の誘起電圧による交流信号が反転増幅回路520に入力され、入力された交流信号は反転増幅回路520で反転増幅された上で抵抗541、コンデンサ542を介して第2電極513に帰還される。
そして、当該第2電極513に帰還された交流信号によって第2電極513から発生するコイル511の軸方向にコイル511を貫く磁束の変化も発生する。
そして、コイル511を貫く磁束の変化は、第1電極512から発生する磁束の磁束変化と第2電極513から発生する磁束の磁束変化によってもたらさせることになる。そこで、抵抗541の抵抗値やコンデンサ542の容量は、第2電極513に帰還する交流信号の位相が、コイル511に生じる誘起電圧が最大となる位相となるように設定する。
【0042】
ただし、第2電極513、抵抗541、コンデンサ542は、これを設けないようにしてもよい。
さて、ここで、このような信号センサ321の全体は、プリント基板を用いて実現したり、集積回路として実現することができる。
また、信号センサ321の交流センサ510は、図7aに示すように、フェライト製のコアを有するコイル511と、コアの上面に固定した銅性の第1電極512と、コアの下面に固定した銅性の第2電極513と、第1電極512や第2電極513を封止する周囲空間よりも透磁率の大きな封止体401とより構成することができる。なお、封止体401としては、磁性粉末を混合したエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0043】
また、このような交流センサ510は、プリント基板や半導体基板の導体パターンとして形成することもできる。
すなわち、プリント基板の導体パターンとして、信号センサ321を形成する場合には、たとえば、次のように交流センサ510を形成する。
すなわち、図7b1に示すようなプリント基板600の層構造を、図7b2に示すようにプリント基板600を板状またはフィルム状の基材601の上に、第1パターン層602、第1絶縁層603、第2パターン層604、第1絶縁層605、第3パターン層606を当該順序で積層したものとする。
【0044】
そして、図7b3に示すように、第1パターン層602に設けた導電体パターンにより第2電極513を形成し、第2パターン層604に設けた渦巻き形状を有する導電体パターンによってコイル511を形成し、第3パターン層606に設けた導電体パターンにより第1電極512を形成する。
【0045】
ここで、第1電極512、第2電極513の導電体パターンは、図7b4にプリント基盤を鉛直方向から見た配置を示すように、コイル511のパターンを覆うように形成する。
なお、交流センサ510において、第1電極512、第2電極513の導電体パターンは、必ずしも、コイル511のパターンの全てを覆うように形成しなくてもよく、コイル511のパターンの一部のみを覆うように形成してもよいし、コイル511のパターンの中央部分を除く部分を覆うように形成してもよい。
【0046】
なお、図7bには、プリント基板を用いて交流センサ510を形成する場合について説明したが、交流センサ510は、半導体基板上にも、同様に形成することができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
ところで、以上の実施形態では、キャリア信号をデータ信号で変調した信号を監視信号として監視信号出力部31から導電性パネル1に出力し、監視信号検出部32において、検出信号を復調した受信信号のレベルを検出したが、これは、図8に示すように、監視装置3から変調器311や復調器322を省略し、監視信号出力部31からVCO33が生成したキャリア信号をそのまま監視信号として導電性パネル1に出力し、監視信号検出部32において、信号レベル検出部323において直接監視信号のレベルを検出するようにしてもよい。このようにしても、制御部37において、キャリブレーション動作におけるインダクタ313の出力と大地との間の導電性パネル1を介したキャパシタンスCfの算定およびVCO33が生成するキャリア信号の周波数Ftxの周波数fcの設定や、監視動作における信号レベル検出部323で検出したレベルの変化からの人体の接近の検出を行うことができる。
【0047】
また、以上の実施形態は、制御部37が、以上のキャリブレーション処理において、算出したキャパシタンスCfに基づいて、監視動作において導電性パネル1への侵入者の接近の検出に用いる、しきい値レベルを適当に調整するなどの、検出特性の調整を適宜行うようにしてもよい。
【0048】
また、以上の実施形態では、塀に接近する侵入者を検知する場合について示したが、本実施形態は、柵、フェンス、建造物の壁、建造物の窓、扉などの、保安区域を外部に対して遮断する任意の構造物への侵入者を検知する場合について同様に適用することができる。また、この場合には、これら構造物を構成する部材に、図1fに示したように導電性パネル1を組み込んだり、導電性パネル1自体を当該構造物として用いるようにしてもよい。なお、窓に適用する場合には、たとえば、窓ガラスを形成する透明板の内部に、金属細線の網等の導電性の層を導電性パネル1として設け、窓の透明性が損なわれないようにする。
また、以上の実施形態は、導電性パネル1に代えて棒状、柱状などの任意形状の導電体を用いるようにしてもよい。
また、本実施形態に係る人体接近検出の構成は、警護システム以外にも、人体の接近を検出する任意のシステムにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…導電性パネル、2…支柱、3…監視装置、4…警報装置、10…保安塀、21…連結部材、31…監視信号出力部、32…監視信号検出部、33…VCO、34…スイッチ、35…リファレンスキャパシタ、36…通信インタフェース、37…制御部、311…変調器、312…アンプ、313…インダクタ、321…信号センサ、322…復調器、323…信号レベル検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の接近を検出する人体接近検出システムであって、
導電体と、監視装置とを有し、
前記監視装置は、
所定周波数の監視信号を出力する監視信号生成手段と、
前記監視信号生成手段の出力と前記導電体との間に直列に介挿されたインダクタと、
前記導電体に接続した入力を有し、当該導電体の電位変動を表す検出信号を出力する信号センサと、
前記信号センサが出力する検出信号中に表れる前記監視信号のレベルを監視し、当該監視信号のレベルを検出する信号レベル検出手段と、
前記信号検出部が検出した前記監視信号レベルの変化に基づいて、前記導電体への前記人体の接近を検出する接近検出手段と、
前記監視信号生成手段が出力する監視信号の前記所定周波数の調整を行う周波数調整手段とを有し、
前記周波数調整手段は、前記監視信号生成手段が生成する前記監視信号の周波数を変化させながら、前記信号レベル検出手段が検出した前記監視信号のレベルを取得することにより、当該監視信号のレベルがピークとなる前記監視信号の周波数を現用周波数として算定し、前記監視信号生成手段が出力する監視信号の前記所定周波数を、算定した前記現用周波数に調整することを特徴とする人体接近検出システム。
【請求項2】
人体の接近を検出する人体接近検出システムであって、
導電体と、監視装置とを有し、
前記監視装置は、
第1端子と第2端子との間の接続をオン/オフする、前記導電体に第2端子が接続したスイッチと、
所定周波数の監視信号を出力する監視信号生成手段と、
前記監視信号生成手段の出力と前記スイッチの第1端子との間に直列に介挿されたインダクタと、
前記スイッチの第1端子に接続した入力を有し、前記スイッチの第1端子の電位変動を表す検出信号を出力する信号センサと、
前記信号センサが出力する検出信号中に表れる前記監視信号のレベルを監視し、当該監視信号のレベルを検出する信号レベル検出手段と、
前記信号検出部が検出した前記監視信号レベルの変化に基づいて、前記導電体への前記人体の接近を検出する接近検出手段と、
前記導電体と大地との間のキャパシタンスを算出する容量検出手段とを有し、
前記容量検出手段は、
前記スイッチの第1端子と第2端子との間の接続をオフに設定した状態で、前記周波数調整手段は、前記監視信号生成手段が生成する前記監視信号の周波数を変化させながら、前記信号レベル検出手段が検出した前記監視信号のレベルを取得することにより、当該監視信号のレベルがピークとなる前記監視信号の周波数を参照周波数として検出し、
前記スイッチの第1端子と第2端子との間の接続をオンに設定した状態で、前記周波数調整手段は、前記監視信号生成手段が生成する前記監視信号の周波数を変化させながら、前記信号レベル検出手段が検出した前記監視信号のレベルを取得することにより、当該監視信号のレベルがピークとなる前記監視信号の周波数を現用周波数として検出し、
前記参照周波数より求まる前記スイッチの第1端子と大地との間のキャパシタンスを、前記現用周波数より求まる前記スイッチの第1端子と大地との間のキャパシタンスより減じて、前記導電体と大地との間のキャパシタンスを算出することを特徴とする人体接近検出システム。
【請求項3】
請求項2記載の人体検出システムであって、
前記容量検出手段が検出した前記現用周波数に、前記監視信号生成手段が出力する監視信号の前記所定周波数を調整する周波数調整手段を有することを特徴とする人体接近検出システム。
【請求項4】
請求項1または3記載の人体接近検出システムであって、
前記接近検出手段は、前記監視信号のレベルが所定の値よりも小さくなったときに、前記導電体への前記人体の接近を検出することを特徴とする人体接近検出システム。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の人体接近検出システムであって、
前記監視信号生成手段は、前記所定周波数の信号を、所定のデータ信号で変調して前記監視信号として生成し、
前記信号レベル検出手段は、前記信号センサが出力する検出信号中に表れる前記監視信号から前記データ信号を復調し、復調したデータ信号のレベルを前記監視信号のレベルを表すものとして検出することを特徴とする人体接近検出システム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の人体接近検出システムであって、
前記信号センサは、
コイルと、
当該信号センサの入力に接続され、かつ、前記コイルの中央穴に近接させて配置された電極と、
前記コイルの出力に基づいて、前記検出信号を出力する検出信号出力手段とを有することを特徴とする人体接近検出システム。
【請求項7】
保安区域内部を外部より遮断する構造物への人体の接近を検出する警護システムであって、
請求項1、2、3、4、5または6記載の人体接近検出システムを備え、
前記導電体は、前記構造物に組み込まれていることを特徴とする警護システム。
【請求項8】
保安区域内部を外部より遮断するフェンス塀への人体の接近を検出する警護システムであって、
請求項1、2、3、4、5、または6記載の人体接近検出システムを複数備え、
前記フェンス塀は、前記各人体接近検出システムの前記導電体を連設して形成されていることを特徴とする警護システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−104766(P2013−104766A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248347(P2011−248347)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(504256774)株式会社カイザーテクノロジー (17)
【Fターム(参考)】