説明

人体検知センサ構造

【目的】受動型赤外線人体検知センサや該受動型赤外線人体検知センサと他のセンサとの組み合わせにおいて、その検知方向や検知距離の制御につき、精度の確実性を大幅に向上させたセンサを提供すると共に、このような人体検知センサを大幅に低廉化して提供することを目的とする。
【構成】各々のセンサの検知方向を角度違いにして実装し、所望する検知方向でかつ所望する検知スポットでの検知を可能とする複数個のセンサ部を備えた、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、至近距離に近づいた人体(特に手のひらなどを)を確実に検知するセンサに係り、特に人体を検知する人体検知センサ構造に関するものである。
また、いわゆる小型の電池を電源に用いた場合を考慮し、待機消費電流が非常に少ないセンサ構造の創案をも目指したものである。

【背景技術】
【0002】
いわゆる人体を検知するセンサは各種開発され、近年では市場に数多く出回っており我々の生活に密着して使用されているのが実情である。
例えば、男子小用トイレなどの正面には人体を検知する受動型赤外線人体検知センサが設置されており、男子小用トイレの正面から人体を検知し、一定時間経過後に人体検知がなされなくなったとき、すなわち男子小用トイレの正面から人体が離れたときに、男子小用トイレ内に水を流す操作が行われるなどの構造に使用されているが如きである。
【0003】
ここで、通常、受動型赤外線人体検知センサとは、人間または動物の動きを検知するセンサとして使用される。
人間または動物の体からは赤外線が放出されている。前記受動型赤外線人体検知センサはこの人間または動物の体から放出される赤外線の変化を検出し、例えばリレーを動作させる回路などとして使用されるものである。
しかしながらこの受動型赤外線人体検知センサは、その検知方向や検知距離の制御については精度の確実性がないとの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−221455
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かくして、本発明は前記従来の課題を解消すべく創案されたものであって、受動型赤外線人体検知センサや該受動型赤外線人体検知センサと他のセンサとの組み合わせにおいて、その検知方向や検知距離の制御につき、精度の確実性を大幅に向上させたセンサを提供すると共に、このような人体検知センサを大幅に低廉化して提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、各々のセンサの検知方向を角度違いにして実装し、要求される検知方向及び要求される検知箇所での検知を可能とする複数個のセンサを備え、少なくとも1つのセンサは受動型赤外線人体検知センサで構成された、
ことを特徴とし、
または、
至近距離でのみの人体検知が行えるセンサであり、各々のセンサの検知方向を角度違いにして実装し、所定検知方向及び所定検知箇所での検知を可能とする複数個のセンサを備え、少なくとも1つのセンサは受動型赤外線人体検知センサで構成された、
ことを特徴とし、
または、
前記角度違いに実装された各センサの検知方向は、調整可能に構成されてなる、
ことを特徴とし、
または、
少なくとも1つのセンサは受動型赤外線人体検知センサで構成され、
他のセンサは、光電管式センサで構成された、
ことを特徴とし、
または、
センサ作動電源として電池使用のとき、前記受動型赤外線人体検知センサのみを起動して待機させ、他のセンサは前記受動型赤外線人体検知センサが被検知物を検知したときに、起動する構成とした、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、受動型赤外線人体検知センサや該受動型赤外線人体検知センサと他のセンサとの組み合わせにおいて、その検知方向や検知距離の制御につき、精度の確実性を大幅に向上させたセンサを提供できると共に、かつコストを大幅に低廉化できるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例の構成を説明する構成説明図(1)である。
【図2】本発明の実施例の構成を説明する構成説明図(2)である。
【図3】本発明の実施例の使用状態を説明する使用状態説明図である。
【図4】信号透過制御部の制御状態を簡単に説明する説明図である。
【図5】信号透過制御部の制御状態を説明する説明図である。
【図6】人体検知センサ装置の概略構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を好適な実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0010】
本実施例にかかる人体検知センサ装置1は、図1あるいは図2に示すように、複数個の人体検知センサ、例えばここでは少なくとも2つの人体検知センサ2,3を有して構成されており、そして、この人体検知センサ2、3は、センス部4と該センス部4からの信号を制御する信号透過制御5及び電源部6とを有して構成されている(図6参照)。
ここで、人体検知センサ2及び人体検知センサ3のうち、少なくともいずれか一方は受動型赤外線人体検知センサで構成するのが好ましい。
【0011】
また、いずれか他方の人体検知センサ2あるいは3については、同様に受動型赤外線人体検知センサでも構わないし、光電管式センサで構成しても構わない。あるいは双方のセンサを光電管式センサで構成することも考えられる。
ここで、受動型赤外線センサの長所について説明すると、受動型赤外線センサは、人体を確実に検知でき、また待機消費電流が少ないとの長所を有する。
【0012】
これに対し、短所としては、人体の検知のみならず動物も検知してしまうこと、また検知距離の範囲調整制御の精度性に欠けることとの点が挙げられる。
【0013】
次に、光電管式センサは、検知距離調整制御が比較的確実であるとの長所があり、逆に短所としては、人体以外にも光を反射するものを容易に検知してしまうこと、カバー部材の透過素材が曇るなどすると検知能力が極端に低下すること、また待機消費電流が大きいことなど上げられる。
【0014】
ここで2つの人体検知センサ2,3の組み合わせとしては、2つとも受動型赤外線人体検知センサで構成する場合、1つを受動型赤外線人体検知センサで構成し、他方を光電管式センサで構成する場合、2つの人体検知センサ2,3とも光電管式センサで構成する場合が考えられる。
【0015】
2つの人体検知センサ2,3ともに受動型赤外線人体検知センサで構成した場合、あるいは2つの人体検知センサ2,3ともに光電管式センサで構成する場合は、その長所は倍加されるが、短所も倍加することになる。
また、1つを受動型赤外線人体検知センサで構成し、他方を光電管式センサで構成する場合は、それぞれの長所が得られるが、それぞれの短所も有することになる。
【0016】
しかして、本件発明は、いかなる組み合わせにしようとも、その長所をさらに伸ばし、かつ短所を消滅させるものとする。
ここで、受動型赤外線人体検知センサの概略につき説明すると、 人間または動物の体は赤外線を放出している。よって、受動型赤外線人体検知センサは、この人体が放出している赤外線の変化を検知し、例えばリレーを動作させるなどの動作を行うセンサである。そして、受動型赤外線人体検知センサは、一般的に、いわゆるフレネルレンズなるレンズを装着しているのが一般的で、もって、非常に狭い範囲での人の動きをも検知出来るようになっている。
【0017】
このように、受動型赤外線人体検知センサは、自ら赤外線ビームを発射しない。前記のように、人体から常に微弱な赤外線が放出されており、その赤外線を受信して、人体を検知する。よって、このタイプのセンサは、自分自身で赤外線を発射しないため、「パッシブ(受動)」センサと称呼される。また、受動型赤外線人体検知センサは、人体の体温(表面の温度)に反応するように作られており、よって、小動物、落ち葉、自動車などにはあまり反応しないのである。
【0018】
さらに、受動型赤外線人体検知センサは、通常室内に設置されることが多い。なぜなら、受動型赤外線人体検知センサは、人体から放出される微量の赤外線を感知して、人が監視領域内にいるかどうか判断するのを得意としているからである。従って、従来では、室内のライトを点灯させたり室内の侵入を知らせるアラーム音を発生させたりするのに使用されていた。
【0019】
次に、光電管式センサとは、拡散反射形センサとも称され、検知方式投受光器一体形で、通常受光部に投光した光は戻らない構成となっている。そして、投光部から出た光が検知物体にあたると、検知物体から反射した光が受光部に入り、受光量が増加する。その増加分をとらえ検知を行うものである。光電管式センサの特長として、検知距離は数cm〜数m、また取りつけ調整が容易、検知物体の表面状態(色、凹凸)で光の反射光量が変わり、検知安定性が変わるなどが挙げられる。
【0020】
図1、図2から理解されるように、本実施例による人体検知センサ装置1は、人体検知センサ2,3のセンス部4,4を内装すべく、その外側周囲にカバー部材7が配置され、前記人体検知センサ2,3のセンス部4,4はこのカバー部材7により所定の間隔を設けて覆われる構成となっている。
【0021】
ここで、カバー部材7は、人体検知センサ2,3の信号が透過しない部材,例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル (Acrylonitrile)、ブタジエン
(Butadiene)、スチレン (Styrene)共重合合成樹脂)などで前記人体検知センサ2,3を覆うように構成されている。
そして、この信号を透過しない部材によってカバー部材7の殆どが構成されているが、前記人体検知センサ2,3のセンス部4,4と対向するカバー部材7の部位には、逆に前記信号を透過する部材、例えばポリエチレン樹脂などで小窓状に形成された信号透過部8,8が前記人体検知センサ2,3のセンス部4,4に対向して2箇所に設けられている。
【0022】
なお、この信号透過部8,8の形成については、信号が透過しない部材で構成されたカバー部材7を切り欠き、この切り欠き部によって信号が透過する様にしても構わない。
さらに、前記2箇所の信号透過部8,8の外側には信号透過方向を制御する信号透過制御部9,9が形成されている。
【0023】
当該信号透過制御部9は、図1に示すように、例えば略半球状のドーム型に形成され、あるいは図2に示されるように、高さの低い略円筒状に形成され、その材質の殆どが、信号が透過しない部材、すなわち例えば前記したABS樹脂(アクリロニトリル (Acrylonitrile)、ブタジエン (Butadiene)、スチレン (Styrene)共重合合成樹脂)などで前記信号透過部8の全体を覆うように構成され、さらに上方中央位置には、上方真ん中の中央位置より若干左右にずらした位置に小窓状に形成され、信号が透過する様構成された信号透過窓10が形成されている。
【0024】
ここで、該信号透過窓10は、やはり前記したように、信号を透過する部材、例えばポリエチレン樹脂などで小窓状に形成したものである。
なお、当該信号透過窓10の形成においても、信号透過制御9の上面部の一部を小窓状に切り欠いて形成しても構わないものである。
【0025】
しかして、当該略半球状のドーム型をなすもの、あるいは略円筒状をなす信号透過制御部9は、例えば、下部に設けられたリング状レール11が断面凹状をなすリング状軌道12上に遊嵌状態で外れないよう嵌め込まれて設置されており、もって、略半球状のドーム型をなす信号透過制御部9は、エンドレス状態でリング状に回動するよう構成されている。
【0026】
これにより、図1あるいは図2から理解されるように、2箇所の信号透過制御部9,9を各々回動して、信号透過窓10,10の設置位置を変えることにより、各々のセンス部4,4への信号透過方向を微妙に変化させることが出来、ひいては検知対象物までの検知距離や検知方向などを自在に変化させることが出来るように構成してあるのである。
【0027】
次に、本実施例による人体検知センサ装置1の使用状態につき説明する。
図1、図2に示すように、2つの人体検知センサ2,3のセンス部4,4からは、所定の角度に開いた2つの信号透過方向が示されている。そして、符号H1で示される箇所は、2つの信号透過方向が人体における手のひら13の長さ程度に開いていることが理解できる。また符号H2で示された箇所では、さらにそれより広く開いていることが理解できる。
【0028】
ここで、本実施例の人体検知センサ装置1は、2つの人体検知センサ2,3が同時に人体からの信号(例えば赤外線)を検知しなければ、本装置により信号を検知したことにならないよう構成されている。
よって、符号H2の箇所で、たとえ一方側の人体検知センサ2あるいは3が人体検知したとしても、他方の人体検知センサ2あるいは3が人体検知しなければ、総体的に信号検知しない構成となっているのである。
【0029】
しかしながら、符号H1の箇所では、人体検知センサ装置1の近傍位置でもあり、2つの人体検知センサ2,3への信号透過角度はあまり拡開されていない。前記のように、人体における手のひら13の長さ程度に開いているにすぎない。
従って、このH1の箇所に手のひら13をかざせば、確実に双方の人体検知センサ2,3が人体検知するものとなり、人体検知センサ装置1が信号を検知動作するものとなる。
【0030】
なお、本実施例では2つの人体検知センサ2,3を使用した実施例を示したが、人体検知センサを3つあるいは4つにして構成しても構わない。人体検知センサの数が多ければ、より、確実な人体検知距離の制御、人体検知方向の制御がおこなえると考えられるからである。
【0031】
このように、本実施例で企図する人体検知センサ装置1は、特に人体検知センサ装置1の近傍位置での人体検知のみが確実におこなえることにある。
すなわち換言すれば、通常、人体検知センサは比較的価格が安価ではあるが、人体か否か不明確な場合にも検知動作してしまう誤動作、あるいは検知してはいけない、または検知する必要のない比較的離れた距離にある人体まで検知してしまうなどの誤動作を確実に制御し、特に近傍位置で手のひら13などをかざした場合にのみ人体検知するセンサ装置の提供を企図したものである。
【0032】
さらに説明すれば、それぞれの人体検知センサ2,3の前面において、前記信号透過制御部5を制御することによって、透過する信号の広がる面積とその位置(センサから見た角度)を制御でき、これにより検知する幅と指向角度が3次元的に大きく違えるようにしたのである。
【0033】
このことによって、至近距離では両方の人体検知センサ2,3が検知するが、仮に本来ではあり得ない強い赤外線などを放出する物体が、至近距離ではない遠い位置にあったとしても、その遠い位置にある物体は、その遠い位置で、前記両方の人体検知センサ2,3間を到底カバーできる様な大きさではない。すなわち、物理的にその物体が一体型としてはその遠い位置では存在し難いものなので、それによる誤検知を避けられることとなるのである。
【0034】
具体例を上げて説明すると、手をかざすことで電源をONにしたい洗面台の電源スイッチなどにこのセンサの仕組みを用いると、センサ部に至近距離で手をかざした時は確実にスイッチがONとなるが、遠い位置で強い赤外線を放出している人が動いて1個のセンサの指向範囲に入ったとしても2個の両方の人体検知センサ2,3が同時に検知することはないのである。
よって、洗面台の電源スイッチの誤作動をなくすことにより、かなりの無駄な消費電力を削減することが出来る。
【0035】
次に、本実施例の人体検知センサ装置1は、電源部6にいわゆる電池を使用した場合の工夫がなされている。
すなわち、この人体検知センサ装置1は、複数個の人体検知センサ、本実施例では2個の人体検知センサ2,3を用いており、この場合複数個の人体検知センサのすべてを電源待機状態にしておくと、待機消費電流が非常に大きくなり、すぐに電池が消耗してしまい、現実的な製品とはならなくなってしまう。
【0036】
そこで、待機消費電流が少ない受動型赤外線人体検知センサ1個のみを待機状態としておき、その受動型赤外線人体検知センサが検知したときに、他方の人体検知センサ、例えば光電管式人体検知センサなどへ電源を供給することで待機時の省エネが実現できるものとなる。
【符号の説明】
【0037】
1 人体検知センサ装置
2 人体検知センサ
3 人体検知センサ
4 センス部
5 信号制御部
6 電源部
7 カバー部材
8 信号透過部
9 信号透過制御部
10 信号透過窓
11 リング状レール
12 リング状軌道
13 手のひら

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々のセンサの検知方向を角度違いにして実装し、所望する検知方向でかつ所望する検知スポットでの検知を可能とする複数個のセンサ部を備えた、
ことを特徴とするセンサ。
【請求項2】
各々のセンサの検知方向を角度違いにして実装し、所望する検知方向でかつ所望する検知スポットでの検知を可能とする複数個のセンサ部を備え、少なくとも1つのセンサは受動型赤外線人体検知センサで構成された、
ことを特徴とするセンサ。
【請求項3】
至近距離の検知スポットのみの人体検知が行えるセンサであり、各々のセンサの検知方向を角度違いにして実装し、所望する検知方向でかつ所望する検知スポットでの検知を可能とする複数個のセンサ部を備え、少なくとも1つのセンサは受動型赤外線人体検知センサで構成された、
ことを特徴とするセンサ。
【請求項4】
前記角度違いに実装された各センサの検知方向及び前記検知方向での検知スポットは、調整可能に構成されてなる、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のセンサ。
【請求項5】
少なくとも1つのセンサは受動型赤外線人体検知センサで構成され、
他のセンサは、光電管式センサで構成された、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載のセンサ。
【請求項6】
センサ作動電源として電池使用のとき、前記受動型赤外線人体検知センサのみを起動して待機させ、他のセンサは前記受動型赤外線人体検知センサが被検知物を検知したときに、起動する構成とした、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5記載のセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−256073(P2010−256073A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103989(P2009−103989)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(308022520)有限会社ビーム産業 (4)
【Fターム(参考)】