説明

人体検知装置

【課題】前方の第1のエリアの感度を大きく低下させることなく、第1のエリアに加え、第1のエリアとは別の第2のエリアにも検知エリアを設定する。
【解決手段】人体検知装置2は、ミリ波を放射するとともに人体や床や壁で反射された電波を受信し放射した電波の周波数と受信した電波の周波数との差から人の存否を判断するセンサ本体20と、センサ本体20から放射された電波の一部を反射する反射体30とを備える。センサ本体20は、前方の第1のエリアD1に向けて電波を放射し、反射体30は、第1のエリアとは別の第2のエリアD2に向けて電波を反射し、第1のエリアD1および第2のエリアD2を検知エリアに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を放射するとともに電波を受信し放射した電波と受信した電波との関係から人の存否を判断する電波式の人体検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、設定した検知エリア内の人を感知する人体検知装置が提供されている。この種の人体検知装置は、例えば、照明装置の点灯状態の制御に用いられる。照明装置の点灯、消灯が自動で行われることにより、照明装置の利便性が向上するとともに、人の安全を確保でき、また、照明装置の消し忘れを防止して省エネルギ化を図ることができる。建物の通路や階段など普段の利用頻度少ない場所に設置される照明装置においては、人体検知装置による省エネルギ化が一般的になりつつある。
【0003】
ところで、照明装置の制御に用いられる人体検知装置には、設定した検知エリアから入射する赤外線により検知エリアの温度の時間変化を検出して人の感知を行うPIRセンサ(Passive Infrared Radiation)が主に使用される。PIRセンサは、検知エリアの温度の時間変化により人を感知するから、温度変化が激しい場所では誤検知することがある。また、人体検知装置から人までの検知距離が長くなると人から入射する赤外線の強度が弱くなって人を感知できなくなることがあるから、検知距離が長くなる場所での使用には問題がある。
【0004】
そこで、温度変化が激しい場所や、検知距離が長くなる場所では、自ら信号を送信するとともに送信した信号を受信して人の感知を行うアクティブ型の人体検知装置が用いられる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された人体検知装置は、信号として電波を放射するアンテナと、信号としての電波を受信する受信装置とを備え、受信した電波の振幅の変化により人の存否を判断している。自ら電波を放射するから、検知距離が長くなる場所でも使用でき、また、周囲温度によらず人を感知できるから、温度変化が激しい場所でも使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−285624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電波によって人の感知を行う電波式の人体検知装置では、通常、電波を放射するアンテナに指向性を持たせ、前方に向けて電波を放射し、前方の空間を検知エリアに設定しているから、側方の感度は前方の感度より弱くなる。
【0007】
したがって、通路や階段の突き当たりの壁に設置された照明装置に人体検知装置を取り付けて使用する場合、照明装置が設置された壁際では人を感知できないことがある。
【0008】
当該壁際にも検知エリアを設定するために、電波を放射するアンテナの指向性を弱くしたり無指向性にしたりして、照明装置の下方の感度を上げることが考えられる。しかしながら、指向性を弱くしたり無指向性にしたりすると、照明装置の下方の感度とともに、照明装置の上方など人を感知する必要のない方向の感度も大きくなり、照明装置の前方の感度が大きく低下してしまう。
【0009】
上述のように、電波式の人体検知装置では、前方の空間に加え、下方の空間など前方の空間以外の空間も検知エリアにするために電波を放射するアンテナの指向性を弱くすると、前方の感度が大きく低下するという問題があった。
【0010】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、前方の感度を大きく低下させることなく、前方の空間と、前方の空間以外の空間とを検知エリアに設定できる人体検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、前方の第1のエリアに向けて電波を放射するとともに電波を受信し放射した電波と受信した電波との関係から人の存否を判断するセンサ本体と、センサ本体が放射した電波の一部を反射する反射体とを備え、反射体は、前方の第1のエリアとは別の第2のエリアに向けて電波を反射することを特徴とする。
【0012】
前記反射体は、金属材料から成ることが望ましい。
【0013】
さらに、前記反射体はメッシュであることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成によれば、反射体により、第2のエリアに電波を照射するから、第1および第2のエリア外の感度を上げることなく第2のエリアの感度を上げることができ、その結果、前方の第1のエリアの感度を大きく低下させることなく、第1のエリアとは別のエリアである第2のエリアを検知エリアにすることができるという利点がある。
【0015】
また、反射体を金属材料で形成した構成では、高い反射率で電波を反射することができるという利点がある。
【0016】
さらに、反射体がメッシュである構成では、センサ本体が放射した電波のみが反射体で反射されるという利点がある。例えば、照明装置に取り付けて使用する場合において、反射体に光源からの光が入射しても光は反射体を透過するから、反射体によって光が遮られることがないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の平面図である。
【図2】同上が取り付けられた照明装置の設置場所の斜視図である。
【図3】同上のセンサ本体のブロック図である。
【図4】同上の反射体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図5】同上の反射体で電波が反射される状態を説明する説明図である。
【図6】同上の別形態を示す反射体の図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図7】同上のさらに別形態を示す垂直断面図である。
【図8】実施形態2を示す図で、(a)は垂直断面図で、(b)は、水平断面図である。
【図9】同上の反射体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図10】同上の反射体で電波が反射される状態を説明する説明図である。
【図11】実施形態3の反射体を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
本実施形態では、電波を用いて人の感知を行う電波式の人体検知装置2(図1参照)を説明する。人体検知装置2は、図2に示す照明装置1に取り付けられ、後述するように、人の存否に応じて照明装置1の点灯状態を制御する。
【0019】
照明装置1は、前方に開放する箱状に形成され光源(図示せず)および人体検知装置2を収容する器具本体11を備える。器具本体11の前面には、透光性(例えば、透明)の合成樹脂材料で板状に形成された照明カバー12が、厚み方向を前後方向として取着される。
【0020】
人体検知装置2は、図1に示すように、電波を放射するセンサ本体20と、センサ本体20の正面に配置されセンサ本体20が放射した電波の一部を反射する反射体30とを備える。反射体30については後述する。
【0021】
本実施形態では、ドップラ効果を利用して人の感知を行うドップラ型のセンサを、センサ本体20の一例として説明する。つまり、センサ本体20は、移動する物体で反射された電波の周波数が反射の前後で変化することを利用して、放射した電波の周波数と受信した電波の周波数との差から人の存否を判断する。
【0022】
センサ本体20は、図3に示すように、電波の放射と電波の受信とを行うとともに放射した電波の周波数と受信した電波の周波数との差分の周波数(いわゆる、ドップラ周波数)のIF信号を出力するミリ波センサ21と、IF信号の増幅を行うアンプ回路22と、IF信号から人の存否を判断して照明装置1の点灯状態を制御する制御回路23とを備える。
【0023】
ミリ波センサ21の構成は、詳説しないが、例えば、発振回路と、発振回路の出力側に接続された送信用のアンテナと、人体などで反射された電波を受信する受信用のアンテナと、発振回路の出力と受信用のアンテナの出力とが入力されるミキサ回路とで構成される。
【0024】
発振回路は、送信用のアンテナからミリ波が放射されるように出力周波数が設定される。また、送信用のアンテナは、前方に向けて電波を放射するように指向性が設定される。指向性の強さは、設計により決める。例えば、前後方向に沿いセンサ本体20を通る直線を含む断面において当該直線に対して±30の開き角度の範囲内に設計により決めた強度の電波が放射されるように指向性の強さを決める。
【0025】
送信用のアンテナには、例えば、ホーンアンテナを用いる。一方、受信用のアンテナには、例えば、プリント配線基板の導体パターンを用いて形成されるパターンアンテナを用いる。
【0026】
アンプ回路22は、オペアンプを用いた増幅器を備え、IF信号を増幅する。IF信号の周波数成分以外の成分を除去するノイズフィルタを備えたフィルタ付増幅回路をアンプ回路22に用いる。または、IF信号の周波数成分のみを増幅するように増幅器を構成する。
【0027】
制御回路23は、増幅したIF信号を検出信号として、検出信号と所定のしきい値とを比較し、検出信号がしきい値より小さと判定結果を「0」とし、当該信号がしきい値以上であると判定結果を「1」とする。
【0028】
制御回路23は、判定結果が「1」であり、且つ、光源が点灯していないときは、点灯信号を、光源を点灯させる点灯装置を有する器具本体部13に入力して光源(図示せず)を点灯させる。ここに、判定回路23には計時機能が設けられ、点灯信号を出力すると計時を開始する。制御回路23は、計時した時間が所定の点灯保持時間に達すると、消灯信号を器具本体部13に入力して光源を消灯させる。所定の点灯保持時間は、例えば、予め設定される。
【0029】
判定結果が「1」であり、且つ、光源が点灯しているときは、制御回路23は、計時した時間をリセットしてゼロに戻し、再び計時を行う。つまり、人体検知装置2は、人を感知している間は光源を点灯させ、人を感知しなくなってから所定の時間(点灯保持時間)が経過すると光源を消灯させる。制御回路23は、判定結果が「0」であるときは、信号を出力しない。
【0030】
次に、センサ本体20の正面に配置された反射体30について説明する。反射体30は、金属材料から成り、図4に示すように、高さが底面の対角線の長さの半分である正四角錐を、中心軸と底面(正方形)の対角線とを含む平面で分割してできる三角錐と略同一形状に形成される。つまり、反射体30は、底面と側面の一つとが斜辺同士が互いに直交する直角二等辺三角形であり、残りの2つの側面30a、30bが互いに直交する同形状の正三角形であるような左右対称な三角錐状に形成される。
【0031】
反射体30は、図1に示すように、センサ本体20の正面に、底面を照明カバー12の後面に当接させて照明カバー12に取り付けられ、センサ本体20が放射した電波の一部を側面30a、30bでそれぞれ反射する。
【0032】
したがって、照明装置1の前方の空間である第1のエリアD1と、反射体30で反射された電波が照射される空間である第2のエリアD2とを検知エリアに設定することができる。また、反射体30により反射した電波で第2のエリアD2を検知エリアに設定するから、指向性を弱めることにより第2のエリアD2を検知エリアに設定する構成に比べ、前方の感度の低下を抑えることができる。
【0033】
本実施形態の人体検知装置2を取り付けた照明装置1を、図2に示す折り返し階段Aに設定した場合を一例として、人体検知装置2による人の感知について説明する。折り返し階段Aは、踊り場Bと、踊り場Bから上に上る階段C1と、踊り場Bから下に下る階段C2と、階段C1、C2が正面にある壁Wとを備えている。照明装置1は、照明装置1の前方に階段C1、C2が位置するように、壁Wに(例えば、踊り場Bの床から2mの位置)設置される。つまり、人体検知装置1が検知エリアに設定した第1のエリアD1に階段C1,C2、および、踊り場Bにおける照明装置1が設置された壁際を除く踊り場Bが含まれる。
【0034】
反射体30は、反射した電波が当該壁際に照射されるように、電波を反射する側面30a,30bの向きが設定される。つまり、当該壁際は、図2では図示を省略した図1の第2のエリアD2に含まる。
【0035】
したがって、階段C1,C2および踊り場B(前記壁際を含む)に検知エリアが設定され、階段C1,C2および踊り場B(前記壁際を含む)にいる人を感知することができる。
【0036】
ところで、反射体30の前方には、反射体30の端で回折した電波が照射されるが、反射体30の近傍に感度の低いエリアEが生じる。本実施形態では、反射体30をセンサ本体20の正面に配置するとともに、反射体30の大きさを送信用のアンテナにおける電波を放射するアンテナ面の大きさと同程度、または、アンテナ面の大きさよりも小さく設定して、センサ本体20と反射体30との間の距離を小さく設定しても(例えば、10cm)、エリアEの前後方向の長さが大きくなり過ぎないようにしている。
【0037】
上述では、反射体30を三角錐状に形成した構成を説明したが、反射体30の形状は三角錐状に限るものではなく、当該三角錐の底面が開放された形状や、図6に示すように、円錐を、中心軸を含む平面で分割してできる形状に反射体30を形成することもできる。反射体30を、中心軸を含む平面で円錐を分割してできる形状に形成した場合、送信用のアンテナが放射した電波は、反射体30の曲面30cで反射される。
【0038】
また、反射体30を、図7に示すように、照明カバー12に埋め込む形で照明カバー12に取り付けることもできる。例えば、反射体30が嵌め込まれる嵌合凹所を照明カバー12に設ける。
【0039】
(実施形態2)
実施形態1では、反射体30をセンサ本体20の正面に配置した構成を説明したが、本実施形態では、図8に示すように、反射体30をセンサ本体20の正面以外に配置する構成を説明する。
【0040】
本実施形態では、反射体30は、図9に示すように底面と側面の一つが直交する三角錐状に形成され、図8に示すように、底面が照明カバー12に当接するように、センサ本体20の正面以外の位置に配置される。
【0041】
反射体30は、上下方向と前後方向とに直交する方向から人体検知装置2を見た場合(図8(a)参照)における、前後方向に沿いセンサ本体20を通る直線とセンサ本体20と反射体30とを結ぶ直線とがなす角度θ1と、人体検知装置2を上方から見た場合(図8(b)参照)における、前後方向に沿いセンサ本体20を通る直線とセンサ本体20と反射体30とを結ぶ直線とがなす角度θ2とにより、位置が規定される。
【0042】
角度θ1,θ2は、人を感知する必要のない空間に向かって放射される電波を反射体30が反射するように設定される。
【0043】
例えば、実施形態1で説明したように照明装置1が折り返し階段Aに設置される場合は、角度θ1,θ2は、踊り場Bから下に下る階段C2の上方に向かって放射された電波を反射体30が反射するように設定される。具体的には、図10に示すように、センサ本体20から見て右上に反射体30が配置される。
【0044】
本実施形態では、反射体30の側面30a、30bの向きは、反射体30が配置される位置に合わせて、側面30a、30bで反射された電波が第2のエリアD2に照射されるように設定され、反射体30は非対称に形成されている。
【0045】
本実施形態では、人の感知を行う必要のない空間に照射される電波を利用して第2のエリアD2を検知エリアに設定できるから、放射した電波を効率よく利用できる。
【0046】
その他の構成は、実施形態1の構成と同様である。
【0047】
(実施形態3)
実施形態1では、三角錐状に形成した反射体30で電波を反射する構成を説明したが、本実施形態では、図11に示すように、メッシュである反射体30で電波を反射する構成を説明する。
【0048】
反射体30は、正方形状の目を有する金網を用いて、外形が反射体30の外形と同形状の三角錐状に形成される。金網の目の一辺の長さLは、センサ本体20が放射する電波の半波長である6.2mmより小さく(例えば、5mm)設定する。つまり、反射体30は、送信用のアンテナが放射した電波の透過を阻止する電磁シールド機能を有する。反射体30への透過が阻止された電波は、反射体30の側面30a、30bで向きを変え、第2のエリアD2に照射される。
【0049】
反射体30をメッシュとしたことにより、光源(図示せず)からの光は反射体30を透過することができ、実施形態1、2に比べ、光源からの光により照明カバー12に生じる反射体30の影を低減することができる。
【0050】
上述では、金網を用いて反射体30を形成したが、パンチングアウトにより多数の孔が貫設された金属板を用いて反射体30を形成することもできる。
【0051】
本実施形態では、反射体30をセンサ本体20の正面に配置する構成を説明したが、反射体30は、実施形態2と同様に、センサ本体20の正面から外れた位置に配置することもできる。
【0052】
その他の構成は、実施形態1の構成と同様である。
【符号の説明】
【0053】
2 人体検知装置
20 センサ本体
30、31 反射体
32 反射体(メッシュ)
D1 第1のエリア
D2 第2のエリア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方の第1のエリアに向けて電波を放射するとともに電波を受信し放射した電波と受信した電波との関係から人の存否を判断するセンサ本体と、センサ本体が放射した電波の一部を反射する反射体とを備え、反射体は、前方の第1のエリアとは別の第2のエリアに向けて電波を反射することを特徴とする人体検知装置。
【請求項2】
前記反射体は、金属材料から成ることを特徴とする請求項1に記載の人体検知装置。
【請求項3】
前記反射体はメッシュであることを特徴とする請求項2に記載の人体検知装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−27651(P2011−27651A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175900(P2009−175900)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】