説明

人体構造内を進行する医療用具

【課題】人体構造内を進行する医療用具を提供する。
【解決手段】基端部及び先端部を有する長尺状コア部材と、前記先端部の上に配置される管状部材とを備える医療用具。管状部材には、複数のスロットが形成される。管状部材は、長手軸を有し、超弾性材料で形成される。前記複数のスロットは、管状部材の長手軸に沿った同じ位置に配置される複数のグループをなすように配置され、該複数のグループの各々は3つ以上のスロットを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体構造内を進行する医療用具に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
脈管内で使用される用具等の医療用具は、様々な医療処置を行う等の目的で長年にわたり使用されてきた。脈管内で使用される用具等の医療用具は、比較的挿入しやすい部位から患者の人体構造、すなわち脈管系内に挿入され、患者の人体構造内を所望の位置まで案内されることができる。医療用具の先端を観察するためには、X線透視法が用いられており、医療用具は、所望の目的位置へ医療用具を案内するべくさらに押圧される前に、人体構造、すなわち脈管系における分岐部において回動させられる。このタイプの医療用具は、中実体(例えばガイドワイヤ)であってもよく、また、中空状の管(例えばカテーテル)であってもよい。ガイドワイヤは、管状をなす1個以上の脈管内用具を特定の部位に案内するために用いることができる。また、カテーテルは、例えば、流体を供給・抽出したり、様々な物体・薬剤・用具を特定部位まで搬送するために用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多くの用途においては、医療用具、すなわち脈管内用具は、人体構造、すなわち脈管系内を進行するために必要となる様々な曲がりが可能となるように、また、場合によっては人体構造、すなわち脈管系の損傷が最小限となるように、容易に屈曲できることが望ましい。しかしながら、多くの用途においては、例えば比較的太い脈管内を進行するときに、医療用具が進路から逸脱しないだけの剛性を有することも望ましいとされる。また、このような医療用具は、脈管系における分岐部や障害物の周囲において前記医療用具を案内するために、正確に回動を制御できるように、比較的ねじり剛性が高いことが望ましい場合もある。多くの実施例においては、医療用具の挿入もしくは抜去、またはその双方を容易にするために、人体構造に対する摩擦が最小限であることも望ましい特徴である。これらの医療用具においては、進行させるときにX線透視下で医療用具を観察できるように、(特に先端部において)放射線不透過性を適切に有していることが望ましい場合もある。
【0004】
また、ガイドワイヤ等の医療用具は、確実に患者から完全に抜去できるだけの強度および耐久性を有していることが望ましい。したがって、このような医療用具は使用時において、適切な引張強さおよび疲労耐性を有することが望ましい。さらには、ニチロール等の高価な材料が使用される場合や製造技術が費用のかかるものである場合(多数のスロットを形成する場合等)には、これらの材料あるいは技術を用いるのは、可能な限り製造コストを低く抑えるために、実際に必要とされる位置のみに限定されることが望ましい。他の特徴及び利点も望ましいとされるが、少なくともこれらのうちいくつかについては、本願に記載されるか、あるいは本明細書から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要約)
本発明は、ガイドワイヤ等の脈管内用具を含む、医療用具を提供するものである。本発明の様々な実施例の特徴は、医療用具が、所望の曲げ弾性を有すること、ねじり時に優れた剛性を示すこと、人体構造との摩擦を低減すること、(特に先端において)従来技術よりも高い放射線不透過性を有すること、疲労耐性を有すること、患者の人体構造の損傷を最小限にすること、蛇行する脈管系内を進行できること、医療用具を完全に抜去することが確実となるように必要な引張強さを有すること、および製造が低コストであることを含むものである。他の特徴および利点(本発明の特定の実施例における特徴および利点を含む)については、本願に記載されるか、本明細書から明らかである。
【0006】
したがって、本発明は、基端および先端と、少なくともこれらの間を延びる長手軸とを有する長尺状本体を備えた、人体構造内を進行する医療用具を提供するものである。このような医療用具は、ほぼ非円形の断面を有するワイヤで形成される螺旋状コイルを備えていてもよく、同断面は、軸方向における寸法よりも、径方向における寸法の方が大きくてもよい。前記本体は、複数のスロットを有する管状部材を備えていてもよい。スロットは、本体または管状部材がより高い曲げ弾性を有するように構成することができる。前記コイルは、管状部材の先端またはその近傍に配置することができ、実質的に放射線不透過性を有する材料で形成されていてもよい。前記本体は、さらにコアワイヤを有していてもよく、コアワイヤの少なくとも一部は、管状部材内部もしくはコイル内部に、またはその両方を満たすように配置することができる。このような医療用具は、例えばガイドワイヤであってもよい。
【0007】
本発明はまた、管状部材と、同管状部材から基端側に延びてそこで連結部により連結されるコアワイヤとを有する、人体構造の目的位置まで案内されるように構成される医療用具を提供するものである。前記連結部は、コアワイヤを包囲するとともに管状部材の内側に少なくとも一部が配置されるコイルを有していてもよい。また、同連結部は、ハンダもしくは接着剤、またはその双方を利用していてもよい。例えば、コアワイヤおよびコイルが金属で形成され、連結部は、コイルをコアワイヤに対して連結するハンダと、コイル、ハンダ、もしくはコアワイヤ、またはこれらの組み合わせを管状部材に対して連結する接着剤とを有していてもよい。巻回部間においてハンダもしくは接着剤、またはその両方を配置可能な空間を設けるために、コイルの少なくとも一部は、コイルワイヤの径の少なくとも1.5倍のピッチを有することができる。
【0008】
実施例によっては、コアワイヤがテーパ部を有し、連結部が同テーパ部の少なくとも一部に配置されていてもよい。実施例によっては、コアワイヤは、ハンダまたは接着剤による機械的な連結を容易にするように構成された特徴部を有していてもよく、連結部を同特徴部に配置してもよい。このような特徴部には、例えば段差もしくは隆起部、またはその両方を含む。したがって、本発明のいくつかの実施例においては、コアワイヤは、断面の大きさが急激に変化する部分を、例えばその基端部および先端部の間において、少なくとも一箇所有していてもよい。コアワイヤは、管状部材の基端が断面の大きさが急激に変わる部分に接するように、またはコアワイヤに対して連結された基端側コイルに接するように、管状部材に対して連結することができる。コアワイヤの少なくとも一部を包囲する、より小径の近心コイルが設けられていてもよい。同近心コイルは、コアワイヤに対してハンダ付けされていてもよい。さらに、管状部材は、例えば接着剤を用いて、近心コイルに対して連結されていてもよい。様々な実施例において、コアワイヤはさらに、管状部材の先端において、もしくは基端および先端の間の一箇所以上の中間の位置において、またはその両方を満たす位置において、管状部材に対して連結されていてもよい。
【0009】
本発明のいくつかの実施例においては、コアワイヤは概して、ほぼ円形の断面を有することができるが、管状部材内部に位置するコアワイヤの先端部は、その全長の少なくとも一部において、平板状の断面形状を有していてもよい。このような実施例では、先端または端部において、管状部材の内部に位置する、実質的に放射線不透過性を有する材料を備えることができる。前記実質的に放射線不透過性を有する材料は、その断面形状がほぼ半円形をなしていてもよく、かつ、コアワイヤの断面形状における平板状部分に対向する側に位置していてもよい。
【0010】
本発明のいくつかの実施例においては、管状部材の先端から先端側へ延びるコイルを備えていてもよい。このようなコイルは、実質的に放射線不透過性を有する材料で形成することができ、この放射線不透過コイルの基端側において別の材料からなる近心コイルが設けられていてもよい。コアワイヤは、コイル内部において管状部材の先端側へ延び、コイルの先端もしくはコアワイヤの先端において、またはこれら両方を満たす位置において連結されていてもよい。このような実施例においては、コアワイヤは、コアワイヤの先端チップにおいて、コイルに対して軸方向においては拘束されているが、ねじり方向においては拘束されていない構成であってもよい。
【0011】
本発明の別の実施例においては、管状部材がコアワイヤの先端チップの先端側へ延びていてもよく、医療用具は、管状部材内部であって、かつ管状部材の先端部もしくはその近傍であって、かつコアワイヤの先端チップの先端側となる位置において、放射線不透過材料からなる少なくとも一つの部分を有していてもよい。このような実施例においては、コアワイヤは、コアワイヤの先端チップにおいて、管状部材に対して連結されていてもよい。放射線不透過材料は、例えば螺旋状コイルの形状をとることができる。実施例によっては、管状部材は超弾性特性を有していてもよく、先端の少なくとも一部に熱処理を施して、例えば使用者により成形可能となるように、その部分における超弾性特性が低められていてもよい。また、実施例によっては、管状部材はその基端部において面取りされた部分を備えていてもよい。
【0012】
本発明は、全長の少なくとも一部にわたって少なくとも外径が小さくなる本体を有する実施例も提供するものである。この外径が小さくなる部分は、先端方向に向かって外径が小さくなるように形成することができる。なお、外径は、連続的に小さくなっていてもよく、段階的に小さくなっていてもよい。いくつかの実施例においては、コアワイヤは、管状部材の外径よりも、コアワイヤの基端部の少なくとも大部分に沿った外径が大きくてもよい。しかし、実施例によっては、テーパ部は管状部材を備えていてもよい。段階的に外径が小さくなる管状部材の実施例においては、管状部材は基端および先端の間において、少なくとも1個の段差によりその外径が変化していてもよい。このような実施例のいくつかにおいては、管状部材が異なる外径を有する複数の部分を有し、これらの部分が互いに連結されて管状部材を形成していてもよい。
【0013】
管状部材の様々な実施例では、軸線に対してほぼ直交する方向に延びる、管状部材に形成されたスロットからなる複数のグループを備えていてもよい。これらのグループは、軸線にそってほぼ同じ位置に複数のスロットを備えていてもよい。長手方向において近接する、スロットのグループの少なくとも二つ以上は、軸線の周囲において、その前のグループから周方向に一定角度ずらした位置に配置されていてもよい。なお、この角度は180°±(40°以下)をグループあたりのスロットの数で割った数値とすることができる。実施例によっては、グループのうち少なくとも二つ以上が、少なくとも3個のスロットを有するか、あるいは正確に3個のスロットで構成されていてもよい。このような実施例においては、周方向にずらす角度は、(180°をグループあたりのスロットの数で割った数値)±(10°以下)とすることができる。
【0014】
いくつかの実施例においては、少なくとも二つ以上のグループの各スロットは、サイズがほぼ等しく、軸線の周囲において等しく離間するように配置されていてもよい。しかしながら、いくつかの実施例においては、少なくとも二つ以上のグループにおいて、少なくとも1個のスロットが、少なくとも1個の別のスロットよりもかなり長くなっていてもよい。このような実施例においては、コアワイヤに張力を付与することにより、管状部材の先端の形状が、屈曲する、屈曲の角度を変える等の変化を起こすように、医療用具が構成されていてもよい。加えて、いくつかの実施例においては、スロットからなる近接するグループ間の間隔は、管状部材の少なくとも一部に沿って徐々に、または段階的に変化していてもよい。これにより、その間隔に沿って曲げ剛性が変化することになる。また、これらのグループは、先端において間隔がより狭くなっていてもよい。
【0015】
さらには、本発明のいくつかの実施例では別の管状部材を有していてもよい。このため、本発明のいくつかの実施例においては、共通の長手軸を共有し、かつ、互いに対して、もしくはコアワイヤに対して、またはその双方に対して連結される、2個の管状部材を有していてもよい。管状部材の一方または両方が、コアワイヤの少なくとも一部を包囲していてもよい。さらに、2個の管状部材は、互いに対して、同心状に配置されるか、一列に並んで配置されていてもよい。管状部材の一方または両方は、より高い曲げ弾性を有するべく複数のスロットを有することができるが、スロットが設けられた部分の基端側において、スロットが設けられていない部分をさらに有していてもよい。実施例によっては、一方の管状部材が全体にわたってスロットを備えておらず、かつ、ポリマー材料で形成されていてもよい。実施例によっては、一方の管状部材は、実質的に放射線不透過性を有する材料で形成されていてもよい。管状部材もしくはコアワイヤ、またはその組み合わせのうち、少なくとも一つに対して同心状に配置される少なくとも1個のコイルがさらに設けられていてもよい。1個のコイルを少なくとも一つの管状部材の内部に配置することができ、実施例によっては、コアワイヤを包囲する少なくとも1個のコイルを有していてもよい。少なくとも1個の管状部材は、少なくともその一部がコイル内部に配置されていてもよい。このようなコイルは、連結部において使用することができ、例えば曲げ剛性を高めたり、外径がより大きくなるように、または外径がより平滑となるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】人体構造の脈管系内に挿入された状態にある、本発明の医療用具の一実施例を示す部分縦断面図。
【図1A】図1に示された実施例の一部を示す詳細な縦断面図。
【図2】本発明の実施例における、スロットが設けられた管状部材の内部にコイルを有する医療用具の中間部および先端を示した部分縦断面図。
【図3】本発明の実施例における、拡張コイルチップを有する医療用具の中間部および先端を示した部分縦断面図。
【図4】断面形状が非円形のワイヤから形成された、巻回されたコイルの一部を示す側面図。
【図5】本発明の実施例における、拡張コイルチップと、医療用具のチップ内において自由に回動できるように構成されたコアワイヤとを有する医療用具の先端を示す縦断面図。
【図6】本発明の実施例における、拡張コイルチップと内部コイルとを有する医療用具の先端を示す縦断面図。
【図7】本発明の実施例における、一列に並んで配置される2個の管状部材を有する医療用具の先端を示す縦断面図。
【図8】本発明の実施例における、医療用具の先端の基端側において終端するコアワイヤと、管状部材の先端の内側に配置される放射線不透過材料とを有する医療用具の先端を示す縦断面図。
【図9】本発明の実施例における、ねじって一体化された複数のストランドからなる先端部を備えたコアワイヤを有する医療用具の先端を示す縦断面図。
【図10】本発明の実施例における、平板状の先端を備えたコアワイヤを有する医療用具の先端を示す縦断面図。
【図11】本発明の実施例における、コアワイヤの周囲であって、かつ管状部材の内部においてコイルを有する近心連結部を示す縦断面図。
【図12】本発明の実施例における、コアワイヤの周囲に配置される少なくとも2個のコイルを有し、コイルのうち少なくとも一つの少なくとも一部が管状部材の内部に配置される近心連結部を示す縦断面図。
【図13】本発明の実施例における、2個のコイルと、径が急激に変化する隆起部を備えたコアワイヤとを有する近心連結部を示す縦断面図。
【図14】本発明の実施例において、コイルの一部が管状部材の螺旋状切り込み内に配置される近心連結部を示す側面図。
【図15】本発明の実施例における、2個のコイルを有し、その一方が管状部材内部に配置され、他方が管状部材に接合する近心連結部を示す縦断面図。
【図16】本発明の実施例における、3個のスロットからなるグループを有する管状部材の一部を示した斜視図。スロットは、その大きさが等しく、管状部材の軸線の周囲において等しく離間して配置されている。
【図16A】図16に示される管状部材の実施例における、スロットとスロット間の部分との断面を示した端面図。
【図16B】図16に示される管状部材の実施例における、スロットとスロット間の部分との断面を示した端面図。
【図16C】図16に示される管状部材の実施例における、スロットとスロット間の部分との断面を示した端面図。
【図16D】図16に示される管状部材の実施例における、スロットとスロット間の部分との断面を示した端面図。
【図17】本発明の実施例において、2個の等しい大きさのスロットからなるグループを有し、近接するグループ同士が管状部材の軸線の周囲において周方向に85°ずらした位置に配置される管状部材の一部を示した斜視図。
【図17A】図17に示される管状部材の実施例における、スロットとスロット間の部分との断面を示した端面図であって、スロットからなる近接するグループとスロット間の部分との周方向にずらした角度を示す。
【図17B】図17に示される管状部材の実施例における、スロットとスロット間の部分との断面を示した端面図であって、スロットからなる近接するグループとスロット間の部分との周方向にずらした角度を示す。
【図17C】図17に示される管状部材の実施例における、スロットとスロット間の部分との断面を示した端面図であって、スロットからなる近接するグループとスロット間の部分との周方向にずらした角度を示す。
【図17D】図17に示される管状部材の実施例における、スロットとスロット間の部分との断面を示した端面図であって、スロットからなる近接するグループとスロット間の部分との周方向にずらした角度を示す。
【図18】本発明の実施例において、2個のスロットからなるグループを有し、スロットからなるグループのいくつかの長さが異なる管状部材の一部を示す斜視図。
【図18A】図18に示される管状部材の実施例における、スロットおよびスロット間の部分の断面を示した端面図。
【図18B】図18に示される管状部材の実施例における、スロットおよびスロット間の部分の断面を示した端面図。
【図18C】図18に示される管状部材の実施例における、スロットおよびスロット間の部分の断面を示した端面図。
【図18D】図18に示される管状部材の実施例における、スロットおよびスロット間の部分の断面を示した端面図。
【図19】本発明の実施例において、2個のスロットからなるグループを有し、同グループのすべてが長さの異なるスロットを有する管状部材の一部を示す斜視図。
【図19A】図19に示される管状部材の実施例における、スロットおよびスロット間の部分の断面図を示した端面図。
【図19B】図19に示される管状部材の実施例における、スロットおよびスロット間の部分の断面図を示した端面図。
【図19C】図19に示される管状部材の実施例における、スロットおよびスロット間の部分の断面図を示した端面図。
【図19D】図19に示される管状部材の実施例における、スロットおよびスロット間の部分の断面図を示した端面図。
【図20】図18の実施例と同様に形成・配置されたスロットを備えた管状部材を有する、操作可能な本発明の医療用具を示す部分縦断面図。
【図20A】屈曲部の形状に調整された、図20に示される操作可能な医療用具のチップを示す部分縦断面図。
【図21】本発明の実施例における、同軸上に配置される3個の管状部材を有する医療用具の先端を示す縦断面図。
【図22】本発明の実施例における、外側に2個の管状部材およびコイルを有する医療用具の先端を示す縦断面図。
【図23】本発明の実施例における、一列に並んで配置される2個の管状部材を有する医療用具の先端を示す縦断面図。
【図24】本発明の実施例における、管状部材のテーパ部が管状部材のスロットが設けられた部分と一列に並んで配置される医療用具の先端を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施例の詳細な説明)
本発明は、医療用具ならびにガイドワイヤおよびカテーテル等の脈管内用具と、これらの改良と、これらの製造方法とを提供するものである。本発明には、X線透視を容易にするために、エッジ巻きコイル等の実質的に放射線不透過性を有する材料を先端または先端近傍に設けた実施例や、実質的に放射線不透過性を有する材料を管状部材(曲げ弾性を高めるためにスロットが形成されていてもよい)の内部に設けた実施例等、様々な実施例が含まれる。本発明は、拡張コイルチップを備えた可撓性を有する先端チップや、平板状コアワイヤを備えたチップの様々な実施例も含むものである。本発明はさらに、コアワイヤと管状部材との間に設けられた近心連結部の様々な実施例をも含む。このような実施例の多くは、コアワイヤと管状部材の基端との間に設けられたコイルと、ハンダもしくは接着剤またはその双方とを用いるものである。本発明はさらに、第1管状部材と共通の長手軸を共有するコイルまたは第2管状部材を備えた医療用具の様々な実施例を含む。この構成により、第1管状部材に必要とされる長さを短くすることができる、もしくは放射線不透過性を付与することができる、もしくは摩擦を低減することができる、もしくはスロットを密封することができる、もしくはより曲げ弾性を高めることができるといった効果や、またはこれらを組み合わせた効果を奏することができる。本発明は、管状部材に形成されたスロットの様々な形状の実施例も含む。これらの実施例には、2個、3個またはそれ以上のスロットからなるグループにおけるスロットの配置や、少なくとも二つ以上のグループにおいて長さが非均一である複数のスロットの形状が含まれる。これらの後半に記載された実施例は、操作可能な用具を提供する。本発明は、テーパ状本体を有する実施例も提供する。同実施例では、テーパ状管状部材を備えていてもよい。
【0018】
図1は、本発明の実施例におけるガイドワイヤ100を示す。ガイドワイヤとしての使用は、本発明の医療用具の使用または機能の一例である。本発明の様々な要素は、様々な医療用途を含む他の目的に使用することができる。ガイドワイヤ100は、管状部材130およびコアワイヤ150を備えることができ、管状部材130およびコアワイヤ150は、例えば連結部140において、互いに対して連結されていてもよい。管状部材130もしくはコアワイヤ150、またはその両方は、ガイドワイヤ100の長尺状本体を形成していてもよい。ガイドワイヤ100の長尺状本体は、少なくとも基端から先端にかけた長さにわたって、共通の軸を有していてもよい。すなわち、管状部材130およびコアワイヤ150は、共通の長手軸を共有することができる。本願においては、複数の部品が同軸上に、または一列に並んで配置されることを、長手軸を共有すると記載する。ガイドワイヤ100の本体は、基端154と、先端138またはチップ137とを備えることができる。同本体は、連結部140の基端側においては長尺部159を、連結部140の先端側には長尺部をそれぞれ備えていてもよい。先端側の長尺部は、例えば、管状部材130もしくはコアワイヤ150の先端部158を、またはその双方を備えることができる。管状部材130は、先端138および基端139を備えていてもよい。先端138は、ガイドワイヤ100の先端チップ137を備えることができ、同先端チップ137は図示されるように丸みを帯びていてもよい。図示される実施例においては、連結部140は、管状部材130の基端139に配置されている。
【0019】
コアワイヤ150は、管状部材130から(例えば基端139から、または図示されるように連結部140から)基端側に延びていてもよい。コアワイヤ150は、図示されるように、管状部材130の内部において、連結部140から先端側にも延びていてもよい。コアワイヤ150は、断面形状が円形をなしていてもよい。また、コアワイヤ150は、基端部159および先端部158を有することができる。基端部159は、その全長にわたって、またはその一部にわたって、一定の外径を有していてもよい。また、先端部158は、基端部159より小径とすることができる。実施例によっては、基端部159は、その全長の大部分にわたって、ほぼ一定の径を有することができる。また、実施例によっては、基端部159もしくは先端部158、またはこれらの一部、またはこれらの組み合わせは、先端チップ137に向かって径が小さくなるようにテーパ状をなしていてもよい。コアワイヤ150の先端部158は、図示されるように、少なくともその一部が管状部材130の内部に配置されていてもよい。様々な実施例において、管状部材130の外径は、コアワイヤ150の基端部159の外径と比較して、小径であってもよく、大径であってもよく、同一径であってもよい。管状部材130の外径は、その全長にわたって、またはその大部分にわたって、ほぼ一定の径を有していてもよく、以下に説明する実施例のように、テーパ状をなしていてもよい。同様に、管状部材130の内径及び壁厚は、管状部材130の全長にわたってほぼ一定であってもよく、小さくまたは薄くなっていてもよい。
【0020】
ガイドワイヤ100は、特に先端138近傍において、曲げ弾性を有するように構成することができる。ガイドワイヤ100の曲げ剛性は、ガイドワイヤ100に沿って、先端チップ137に向かい徐々に、または段階的に低くなっていてもよい。例えば、曲げ剛性は、コアワイヤ150の基端部159に沿った部分では一定であるが、先端部158または管状部材130に沿った部分(例えば基端139から先端138まで)では徐々に低くなっていてもよい。この可撓性を得るためには(少なくともこの可撓性の一部を得るためには)、図1を含む複数の図面に示されているように、管状部材130の少なくとも一部に複数のスロット135を形成すればよい。スロット135は、管状部材130に対してマイクロマシン加工を施すことにより形成され、管状部材130がより高い曲げ弾性を有するように構成されていてもよい。管状部材130の長さに沿って曲げ剛性を変化させるために、スロット135は、先端138近傍においては、基端139と比較してより密集し、またはより長く、またはより幅が広くなっていてもよい。図1に示されるように、実施例によっては、管状部材130の基端139はスロット135を備えていなくてもよい。別の実施例においては、例えば、基端139はスロット135を備えるが、スロット135が基端138のスロットよりも離間するように設けられていてもよい。スロット同士の間隔は、管状部材130に沿って徐々に変化していてもよく、段階的に変化していてもよい。多くの実施例においては、スロット135は、図1に示されているよりも実際にはさらに密集するように設けられていてもよい。
【0021】
実施例によっては、コアワイヤ150の寸法または径を縮小することにより、コアワイヤ150の全体または一部(例えば先端部158)における剛性を、コアワイヤ150の長さに沿って変化させてもよい。また、実施例によっては、異なる特性を有する材料を異なる部位に使用することにより、ガイドワイヤ100に沿って可撓性を変化させたり、可撓性の変化を補助したりすることができる。いくつかの実施例においては、より可撓性に優れた材料を先端に用い、より剛性の高い材料を基端に用いてもよい。また、実施例によっては、より可撓性に優れた材料を長手軸から離れた外面に用い、中心部分または長手軸に近い部分に剛性の高い材料を用いてもよい。二つ以上の異なる材料で形成された、異なる弾性を有する複数の部品は、連結部を用いて連結することができる。例えば、管状部材130は、屈曲が可能であるが、降伏や疲労がより起きにくいように、ニチノール等の超弾性材料で形成することができる。これに対し、コアワイヤ150は、より弾性係数の高い、剛性が高い材料、例えばステンレス鋼で形成することができる。本願では、2%以上のひずみから回復可能な材料を超弾性材料とし、超弾性特性を有しているものとする。ニチノールは、例えば、化学反応や熱処理等によっては、10%までのひずみから回復可能である。少なくとも2%のひずみから回復可能なニチノールは、本願においては、超弾性であると判断される。
【0022】
管状部材130が超弾性材料で形成され、コアワイヤ150がより剛性の高い、またはより一般的な材料(例えばステンレス鋼)で形成された実施例においては、一つの要素を他の要素よりも多く使用することにより、すなわち、曲げ剛性等の様々な特性を付与するために他の要素よりも一つの要素に依存することにより、様々な利点を得ることができる。例えば、ステンレス鋼製のコアワイヤ150は、超弾性のニチノール製管状部材130よりも材料コストを低く抑えることができる。また、管状部材130に複数のスロット135を形成するには費用がかかることがある。したがって、管状部材130の長さを最小限にすれば、費用便益を得られる。さらに、スロット135により、管状部材130の引張強さがかなり小さくなる場合がある。したがって、コアワイヤ150は、医療用具が抜去されるときに適切な引張強さを得られるだけの大きさを有している方が好都合な場合がある。一方、超弾性特性を有するため、管状部材130は、屈曲可能あるいはねじれ可能であり、破壊または塑性変形がより起こりにくい。また、その形状または断面形状によって、スロットが設けられた管状部材130は、曲げ剛性と比較して、コアワイヤ150よりもねじり剛性が高くなる場合があり、この場合には、チャック152から先端チップ137の回動制御をより行いやすくなる。したがって、比較的長い管状部材130を有することが、あるいは管状部材130を用いてコアワイヤ150の先端部158よりも高い曲げ剛性を得ることが、好都合な場合もある。
【0023】
例えば、本発明のいくつかの実施例においては、(図1、図20、図24に示されるように)管状部材130の基端139はスロット135を有していなくてもよい。別の実施例においては、(図3に示されるように)スロット135が設けられていない基端139をなくし、より短い管状部材130を有する。これにより、コアワイヤ150の径がより大きくなっているこの領域において、所望の曲げ剛性が得られる。最初のタイプの実施例では、(管状部材130がより長いことが推測されるため)製造コストがよりかかることになるが、塑性変形や疲労を起こすことなく、管状部材130のスロットが設けられていない基端139においてより鋭く屈曲することができる。最初のタイプの実施例では、その位置におけるねじり剛性もより高くなる。例えば、最初のタイプの実施例では、基端139の引張強さを低くするスロットが設けられていないため、スロットが設けられていない基端139において適切な引張強さを得ることができる。さらには、スロットが設けられていない部分の先端において、管状部材130をコアワイヤ150に対して連結することが有益な場合がある。このような両方のタイプの実施例について、以下、より詳細に説明する。
【0024】
図1には、人体構造101内を進行するガイドワイヤ100が示されている。具体的には、ガイドワイヤ100は、皮膚103の表面を切開して形成された開口102を貫通して脈管系105に挿入されている。ガイドワイヤ100は、2箇所の分岐部107,108を備えた脈管系105内を一定距離進んだ状態で図示されている。先端138は、屈曲部133を備えていてもよい。屈曲部133により、ガイドワイヤ100が(例えば分岐部107,108における所望の枝管内を)進行することが容易になる。コアワイヤ150は、ハンドル、すなわちチャック152を備えることができる。チャック152は、基端154に対して、またはコアワイヤ150の基端部159に対して連結されるか、挟持されていてもよい。また、コアワイヤ150は、ガイドワイヤ100をその軸の周囲において回動させるように操作されてもよい。例えば、ガイドワイヤ100は、脈管系105内を進行するときに、例えば分岐部107,108において、所望の管路を選択できるように、手動により回動可能であってもよい。
【0025】
したがって、本発明の実施例の用具は、人体構造101内で容易に移動できることが概して望ましい。例えばガイドワイヤ100と人体構造101との間の摩擦を減少させることにより、このような移動を容易にすることのできる、様々な特徴及び部品について、本願では説明している。例えば、ガイドワイヤ100を含む本発明の様々な実施例のすべてまたは一部においては、用具の外面は、潤滑コーティングまたは潤滑剤でコーティングが施されていてもよい。例として、ガイドワイヤ100は、PTFE、パリレン、親水性コーティング、または疎水性コーティングでコーティングすることができる。
【0026】
本発明のいくつかの実施例においては、チップまたは先端138は、予め特定の形状をなすように形成された屈曲部133を備えるように構成される。超弾性材料で形成された先端138を有する実施例においては、使用者が屈曲部133に変化を加えることは困難であるか、または不可能である。この理由の一つは、管状部材130、コアワイヤ150、またはその双方の超弾性材料は、永久変形を起こすほど十分に鋭く屈曲することができないからである。したがって、本発明の実施例は、医療用具またはガイドワイヤ100のチップまたは先端138における超弾性特性を局所的に十分に低下させ、チップまたは先端138が小さな半径で屈曲するように形成された医療用具またはガイドワイヤ100の製造方法を含む。
【0027】
このようにするためには、例えば、少なくとも一部がニチノール等の超弾性材料からなる医療用具を形成した後に、成形したいチップまたは先端138に対して熱処理または焼きなましを行う。例えば、このような工程は、チップまたは先端138を約600℃までの温度で10秒間熱する工程からなる。これにより、熱処理が施された領域における超弾性効果を低下させることができ、鋭く屈曲させられたときに先端138の材料における永久変形、すなわち屈曲部133を形成することができる。
【0028】
成形可能なチップを備えたこのような医療用具またはガイドワイヤ100の使用者、例えば医師や外科医は、行う処置のタイプや患者の人体構造(例:分岐部107,108の形状)、またはこれら両方等に応じて、屈曲部133の最適な角度および位置を決定することができる。使用者は、その後、チップ133を屈曲させ、ガイドワイヤ100を人体構造101の開口102から脈管系105へ挿入し、例えばガイドワイヤ100が脈管系105内を進行する際に、ガイドワイヤ100の先端138をX線透視を用いて観察することができる。実施例によっては、X線透視の代わりに、あるいはX線透視とともに、磁気共鳴映像法(MRI)を用いてもよい。分岐部107,108において、使用者はチャック152を回動させて先端チップ137が所望の方向を向くように屈曲部133を回動させ、ガイドワイヤ100を目的部位まで進行させることができる。使用者は、目的部位に到達させた後、医療処置を行うか、あるいは処置を行う部位までカテーテルにガイドワイヤ100上を進行させることができる。処置が完了したら、あるいはカテーテルが挿入されたら、使用者はガイドワイヤ100を開口102から抜去することができる。
【0029】
本発明は、小径のガイドワイヤ100の製造技術及び実施例を含む。本発明の様々な実施例は、例えば小径の医療用具(例:外径(OD)が0.014インチ(約0.3556mm)よりも小さいガイドワイヤ)において好都合な場合もある。このような実施例においては、管状部材130の基端側に位置するコアワイヤ150の基端部159の外径は、管状部材130の外径よりも大きくてもよい。これにより、コアワイヤ150の基端部159に、より高いねじり剛性を付与することができるが、より高い曲げ剛性を犠牲にしなければならない場合もある。多くの用途においては、コアワイヤ150の基端部159が横切らなければならない人体構造(例えば脈管系105)の曲がり具合が、より高い曲げ剛性を許容することができるような小さな曲がりであるため、曲げ剛性が高いことで小径のガイドワイヤ100に問題を生じさせない。
【0030】
小径のガイドワイヤ100を含む本発明のいくつかの実施例においては、先端138の基端側に位置するガイドワイヤ100の部分の(屈曲時の)剛性を比較的高くすることが有益な場合がある。この領域の剛性が比較的高いことで、ガイドワイヤ100が比較的大きな血管105内を進行したときに進路から逸脱してしまうことを防ぐことができ、また、枝管が比較的大きな血管105に対して鋭い角度をなして分岐している場合に、カテーテルが同枝管に対して追従することが容易となる。この比較的剛性が高い部分は、例えば、この部分におけるスロット135の間隔をより大きくすることにより得られる。例えば、ガイドワイヤ100は、曲げ剛性が、先端チップ137から0.5cmまでの部分においては約0.00005lb・in(約0.1465gcm)、これに続く先端チップ137から1cmまでの部分では約0.0002lb・in(約0.586gcm)まで徐々に剛性が高くなるように構成されていてもよい。さらに、これに続く先端チップ137から約4cmの地点までの部分の剛性を一定とし、これに続く先端チップ137から5cmの地点までの部分では、約0.0001lb・in(約0.293gcm)まで徐々に剛性を低くしてもよい。そして、これに続く先端チップ137から約8cmの地点までの部分の剛性を一定とし、これに続く先端チップ137から約20cmの地点までの部分は、約0.0004lb・in(約1.172gcm)まで徐々に剛性を高めてもよい。これに続く部分の曲げ剛性は、(例えばガイドワイヤ100の基端部159に沿って)ほぼ一定とすることができる。
【0031】
様々な実施例において、ガイドワイヤ100を含む本発明の医療用具は、例えばX線透視下で先端またはチップがより容易に観察できるように、先端138またはチップ137に高密度の材料を使用することができる。実質的に放射線不透過性を有するコイル200を備えたガイドワイヤ100の実施例を図2に示す。本実施例のガイドワイヤ100は、マイクロマシン加工された、あるいはスロットが設けられたニチノール製トルク管、すなわち管状部材130を用いている。なお、同管状部材130は、コアワイヤ150の部分158を包囲している。マーカーコイル200は、先端138において、またはその近傍において、管状部材130の内部に配置することができる。また、マーカーコイル200は、コアワイヤ150の先端257を包囲していてもよい。コイル200の螺旋コイル形状により、管状部材130がガイドワイヤ100のチップ137に対する相対的なねじり剛性を維持することができる一方で、先端138も曲げ弾性を維持することができる。例えばプラチナ−タングステン合金やプラチナ−イリジウム合金等の高密度の材料でコイル200を形成し、先端138が適切な放射線不透過性を有するようにしてもよい。このような金属は、本願においては、「実質的に放射線不透過性を有する」と記載される。概して、実質的にステンレス鋼やニチノールよりも高い放射線不透過性を有する材料は、本願においては、実質的に放射線不透過性を有すると判断される。本発明のいくつかの実施例においては、実質的に放射線不透過性を有する材料で形成されていないコイル200が設けられていてもよい。このような螺旋状コイル200は、例えば、医療用具の曲げ剛性に寄与したり、コアワイヤ150を中央へ寄せたり、もしくは他の要素間の連結を容易にしたりすることができ、またはこれらの組み合わせを可能にすることができる。
【0032】
小径のガイドワイヤにおいて解決すべき問題の一つに、適切な放射線不透過性を付与しなければならないことが挙げられる。コイル200の放射線不透過性を、必要とされるレベルまたは所望のレベルまで高めるために、プラチナワイヤまたはタングステンワイヤの径を大きくすることができる。しかしながら、コアワイヤ150とマイクロマシン加工された管状部材130の内径との間の環状空間が小さい場合には、コアワイヤ150と管状部材130との間に適切な放射線不透過性を有するコイル200を設ける十分な空間がない場合もある。また、マーカーコイル200を形成するために巻回されるワイヤの径を増加させることで、マーカーコイル200の曲げ剛性を高めてしまうという不都合な効果を生じてしまう場合もある。本発明による複数の手段を、この問題を解決するために用いることができる。
【0033】
図3に示される実施例においては、螺旋状コイル200は、図2に示されるコイル200よりも径が大きく、管状部材130内部に位置するのではなく、管状部材130の先端138の先に延びている。つまり、図3は、拡張コイルチップ300を有する本発明の実施例を示す。コアワイヤ150の部分158は、屈曲時及びねじり時に所望の剛性を有することができ、また、引張強さを有することができる。コイル200は、特に屈曲時において、拡張コイルチップ300の剛性に寄与する。いくつかの実施例においては、コイル200により、拡張コイルチップ300の曲げ剛性が付与される。このような実施例のいくつかにおいては、少なくともコイルチップ300の全体内または一部内に、コアワイヤ150を設けなくてもよい。
【0034】
螺旋状コイル200は、管状部材130の先端138に対して連結されていてもよく、かつ、そこから先端側へ(例えば先端チップ137まで)延びていてもよい。拡張コイルチップ300は、放射線不透過性を付与することができ、もしくはコアワイヤ150よりもかなり径が大きい人体構造に接触するが組織を傷つけないような径を有することができ、またはこの双方を満たすことができる。図3に示される螺旋状マーカーコイル200を有する拡張コイルチップ300は、例えば、外径が0.014インチ(約0.3556mm)の冠状動脈用ガイドワイヤで用いることができる。拡張コイルチップ300またはコイル200の長さは、例えば、0.5〜5cmの範囲とすることができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施例においては、コイル200は、断面形状が円形をなすワイヤを巻回して形成してもよい。しかしながら、他の実施例においては、断面形状が非円形またはほぼ非円形をなすワイヤを用いることができる。実施例によっては、このような非円形断面形状を有するワイヤは、少なくとも1個の平面(例えば、1個の平面、2個の平面、3個の平面または4個の平面)を有していてもよい。図2〜図5に示されるように、コイル200は、エッジ巻きされた長尺片で形成されていてもよい。この長尺片により、コイル200に対し、高い曲げ弾性もしくは高い放射線不透過性、またはその双方を付与することができる。したがって、コイル200を形成するワイヤの断面は、径方向における寸法が、軸方向における寸法よりも(すなわち長手軸に対して)大きくすることができる。エッジ巻きコイル200は、他の実施例と比較したときに、ねじり剛性もしくは強度、またはその双方を高めることもできる。
【0036】
図示されるエッジ巻きされた、断面形状が平面状、台形状、または矩形のコイル200は、断面形状が円形のワイヤを巻回して形成したコイル200と比較すると、より高い放射線不透過性(より高い密集度)、もしくはより低い曲げ剛性、またはその双方を備えるようにコイル200を構成することができる。これは、長尺片をエッジ巻きしてコイル200が形成された(すなわち、軸方向における寸法よりも径方向における寸法の方がより大きい)ときには、断面形状が円形ワイヤから形成された内径(ID)及び外径(OD)が同じコイルと比較すると、より低い剛性、またはより高い密集度(したがってより高い放射線不透過性)を得ることができる。具体的には、断面形状が矩形の長尺片からなるコイル200は、例えば、断面形状が円形のワイヤからなるコイル200と比較すると、横方向における剛性を約1/7に、密度を1/3増とすることができる。高い密集度は通常、空間をよりうまく利用することにより得られるものである。所定の長さを有する断面形状が矩形のワイヤからなるコイル200は、同一の長さを有する断面形状が円形のワイヤからなるコイル200よりも、より剛性が低い巻回部が多いため、剛性を低下させることができる。例えば、コイル200は、内径0.003インチ(約0.0762mm)、外径0.009インチ(約0.2286mm)とすることができる。断面形状が円形のワイヤで径が0.003インチ(約0.0762mm)のコイル200が形成されている場合には、コイル200は、ピッチが0.005インチ(約0.127mm)、横方向における剛性が20μlb・in(約0.0586g・cm)、密度が9g/in(約3.543g/cm)とすることができる。比較すると、断面形状が矩形のコイル200は、(軸方向における)厚さが0.0016インチ(約0.0406mm)、(径方向における)幅が0.003インチ(約0.0762mm)、ピッチが0.0027インチ(約0.0686mm)、横方向における剛性が3μlb・in(約0.0088gcm)、密度が12g/in(約4.724g/cm)とすることができる。本実施例のコイルは、例えば冠状動脈用ガイドワイヤや神経用ガイドワイヤで使用することができる。
【0037】
図4に基づき説明する。コイル200は、ワイヤ420を巻回して形成することができる。ワイヤ420の断面440は、ワイヤ420を巻回してコイル200を形成するときに、断面405となるように変形させることができる。コイル200を形成するワイヤの断面405を得るためには、ワイヤ420の断面440を選択する際に、この変形の影響を考慮に入れなければならない。本発明の一実施例においては、ワイヤ420は、巻回される前は円形断面を有し、巻回された後には、円形がわずかに変形した断面形状を有する。本願においては、円形からわずかに変形した断面形状のことを、ほぼ円形をなす形状であると判断する。しかしながら、別の実施例においては、コイル200は、巻回されたときに、ほぼ非円形の断面405を有するように形成されていてもよい。この断面405は、ほぼ平坦な面、例えば面406を少なくとも一つ有する。実施例によっては、断面405は、ほぼ平坦な別の面407をさらに有していてもよい。面407は、面406にほぼ平行とすることができる。また、実施例によっては、断面405は、ほぼ平坦な面408,409をさらに備えていてもよい。面408,409は、互いに平行であってもよく、面406,407より長さの短いものであってもよい。いくつかの実施例では、ほぼ平坦な面406,407,408,409を組み合わせることができる。断面405は、その形状がほぼ平行四辺形または台形をなしていてもよい。図示された実施例においては、断面405は、ほぼ矩形をなしている。面406,407が面408,409よりも比較的広いコイル200(エッジ巻きされたコイルまたは軸方向における寸法よりも径方向における寸法が大きいコイル)を有する実施例においては、断面440から断面405への変形は最も大きくなるが、コイル200の可撓性も最も高くなる。径方向における長さに対するコイル200の可撓性は、[ (外径402)/(内径401) ]/2により求めることができる。
【0038】
コイル200は、ほぼ非円形の断面440を有するワイヤ420を巻回して形成することができる。断面440は、二つのほぼ平坦な、互いに対向する非平行の面446,447を有していてもよい。実施例によっては、面446,447をほぼ平行とし、巻回してコイル200を形成したときには面406,407は平行ではなく、面408が面409よりも長くなるようにしてもよい。また、このような実施例のいくつかにおいては、断面440は矩形であり、断面405は台形となるようにしてもよい。別の実施例においては、面446,447は互いに対して角度444をなし、非平行であってもよい。断面440は、ほぼ平坦な面448,449をも有していてもよい。面448,449は、面446,447よりも長さが短くてもよい。また、断面440は、台形であってもよく、さらには二等辺四辺形であってもよい。二等辺四辺形の断面440を有する場合には、面446,447は長さが等しく、面448,449は互いに対して平行である。いくつかの実施例においては、面448もしくは面449、またはその両方が湾曲していてもよく、凸状をなしていてもよい。同様に、いくつかの実施例においては、面408もしくは面409、またはその両方が湾曲していてもよく、凸状をなしていてもよい。実施例によっては、この湾曲の効果が小さくなる場合もある。しかしながら、コイル200が医療用具の外面を形成する実施例(例:図3及び図5に示される実施例)のいくつかにおいては、面409の凸状をなす湾曲形状、すなわち丸みを帯びた、または角を面取りした形状は、例えば、特に拡張先端チップ300が人体構造101の湾曲形状部の周囲で屈曲させられる位置において、医療用具の人体構造101に対する潤滑性を高めることができる。
【0039】
実施例によっては、角度444及びコイル200の半径(内径401の半分、外径402の半分、または401及び402の間の公称直径の半分)は、ワイヤ420を巻回してコイル200を形成したときに面446,447がほぼ平行となり、かつ面446,447がそれぞれ面406,407の形状をなすように選択することができる。したがって、必要とされる、あるいは望ましいとされるキーストーン形状をなす量、すなわち角度444は、巻回されるコイル200の径(例えば内径401または外径402)により決定することができる。コイル200の直径が小さくなるほど、キーストーン形状、すなわち角度444は、ワイヤ420がコイル200となるように屈曲させられたときのワイヤ420の変形を相殺するために、大きくしなければならない場合がある。断面405(例:面408または409の長さ)の(軸方向における)厚みといった、他の変更も角度444に対して影響を及ぼす。断面440の形状は、計算により、もしくは実験データに基づき、またはその両方を用いて、望ましい断面405を得られるように決定することができる。断面440は、例えば、絞り加工、圧延加工、研削加工、もしくは機械加工、またはこれらの組み合わせにより形成することができる。ワイヤが断面440を有するように形成された後に、ワイヤを巻回して、断面405を有するコイル200を形成することができる。本発明の様々な実施例において、コイル200は、ガイドワイヤ100等の医療用具上に巻回されていてもよく、また、別工程において医療用具に取り付けられてもよい。
【0040】
図2も、管状部材130の基端139において基端側の面取りされた部分231を有する本発明の実施例を示す。基端側の面取りされた部分231は、平坦状(例:円錐断面)であってもよく、曲線状(例:丸みを帯びた角部)であってもよい。基端側の面取りされた部分231は、例えば、コアワイヤ150が連結部140において徐々に外径が小さくなる実施例や、コアワイヤ150の基端部159の外径が、管状部材130の基端139の外径よりも小さい実施例において、好都合な場合がある。例えば、面取りされた部分231により、コアワイヤ150の基端部159から管状部材130の基端139への径の大きさの移行がスムーズになる。これにより、ガイドワイヤ100の抜去を容易にすることができ、もしくは抜去時における人体構造の損傷を低減することができ、あるいはこれら双方を達成することができる。基端側の面取りされた部分231は、曲げ剛性における変化をより漸次的なものにしやすくすることができ、もしくは応力の集中を低減することができ、もしくは連結を行うための表面積をより広くすることができ、あるいはこれら利点の組み合わせを達成することもできる。基端側の面取りされた部分231は、例えば、神経用ガイドワイヤで用いることができる。
【0041】
図2は、コアワイヤ150の先端部158の少なくとも一部と管状部材130と間に比較的軟質の材料261を有する本発明の実施例も示している。これに加え、あるいはこれに代えて、材料261は、スロット135の少なくとも2個以上を充填していてもよく、あるいはそれらを部分的に充填していてもよい。材料261は例えば、ウレタン、エポキシ、接着剤、もしくはポリマーからなる。材料261は、ガイドワイヤ100の剛性を高めることができる。したがって、所望の曲げ剛性を得るためには、スロット135をより多く設けることが必要とされる場合がある。スロット135の数が多くなるほど、スロット135あたりの屈曲の角度が小さくなるため、管状部材130の疲労寿命がより長くなる場合がある。コアワイヤ150の先端部158の径を大きくすることによってではなく、材料261で剛性を高めることにより、例えば特に蛇行する脈管系105内において、所定の曲げ半径となったときのコアワイヤ150の部分158における塑性変形もしくは疲労を回避することを補助することができる。また、材料261がスロット135の少なくとも2個以上を充填する実施例においては、材料261によって、外径がより一定となり、ガイドワイヤ100の少なくともその部分と人体構造101との間の摩擦を低減する。
【0042】
図2および図3では、コアワイヤ150のその部分158が、連結部140から管状部材130の先端138における先端チップ257まで、または先端チップ137まで先端側へ延びている。コアワイヤ150の部分158の先端チップ257は、管状部材130に対して連結されていてもよい。いくつかの実施例においては、この連結は、管状部材130の先端138およびコアワイヤ150の先端チップ257の両方を先端チップ137に対して連結することにより行われてもよい。コアワイヤ150が管状部材130に対して(例えばハンダまたは接着剤を用いて)直接に連結されている場合、または、例えばコアワイヤ150がコイル(例えば符号1141または200にて示される)、ブッシング(例えば符号757にて示される)、もしくはチップ137に対して(例えばハンダまたは接着剤347を用いて)連結されており、かつ、管状部材130もこのコイル、ブッシング、もしくはチップ130に対して、医療用具の長手軸に沿ってほぼ同じ位置において(例えばハンダまたは接着剤347を用いて)連結されている場合には、本願では、コアワイヤ150が管状部材130に連結されていると記載する。
【0043】
拡張コイルチップ300を有する実施例においては、コイル200の先端およびコアワイヤ150の先端チップ257は、互いに対して直接に連結されていてもよく、チップ137を介して互いに対して連結されていてもよい。図3には、実施例の一例が示されている。実施例によっては、管状部材130の先端138は、例えばコイル、ハンダ、もしくは接着剤、またはこの組み合わせを用いて、コアワイヤ150に対して連結されていてもよい。図6には、コアワイヤ150が管状部材130の先端138に対して(コイル200やハンダもしくは接着剤337を介して)連結されている実施例が示されている。図示されている実施例においては、コアワイヤ150の先端チップ257は、先端チップ137および拡張コイルチップ300の先端に対しても連結されている。しかしながら、拡張コイルチップ300は、ねじり剛性が極度に高くなくてもよい。したがって、例えばチップ137が管状部材130に対して回動され、コアワイヤ150の先端部158が管状部材130の先端138および先端チップ137において完全に連結されている場合、降伏応力、すなわちねじりを加えたときに回復可能な応力を超えると、コアワイヤ150の部分158が損傷する場合がある。
【0044】
この潜在的な問題を解決するにあたり、いくつかの実施例においては、管状部材130の先端138、コイル200、またはチップ137に対するコアワイヤ150の連結は、拡張コイルチップ300の内部に位置するコアワイヤ150に過度のトルクが加わらないように、保護されるように構成してもよい。例えば、いくつかの実施例においては、コアワイヤ150は、その位置において管状部材130の先端138またはコイル200に対して連結されなくてもよい。このような実施例の一例が図3に示されている。ブッシング338を管状部材130の先端138において用いることにより、コアワイヤ150の部分158が、管状部材130の先端138を拡張コイルチップ300のコイル200に対して連結するために使用される接着剤またはハンダ347から隔離されていてもよい。ブッシング338により、連結部における曲げ強度、引張強さ、もしくはねじれ強度、またはこれらの組み合わせが高くなるようにしてもよく、ガイドワイヤ150が中央に寄せられるようにしてもよい。ブッシング338は、例えば管またはコイルの一部であってもよい。
【0045】
図5に示される別の実施例においては、コアワイヤ150の先端チップ257は、拡張コイルチップ300の先端チップ137において、軸方向においては拘束されるが、ねじり方向においては拘束されない状態にあってもよい。図示された実施例においては、ブッシング538は、拡張コイルチップ300の先端またはガイドワイヤ100の先端チップ137に対して連結されている。先端部158はブッシング538を貫通し、その先端チップ257はブッシング557に対して連結されている。ブッシング538,557は、例えば管またはコイルの一部であってもよい。したがって、コアワイヤ150の先端チップ257は、拡張コイルチップ300内において自由に回動することができるが、コアワイヤ150の先端部158に張力が付与されると、ブッシング557がブッシング538に押し付けられることになり、コアワイヤ150の部分158が先端チップ137を引っ張ることができる。
【0046】
図6は、拡張コイルチップ300を有する本発明の別の実施例を示す。この実施例では、コイル600は、断面形状がほぼ円形となっている。コイル600は、実質的に放射線不透過性を有する材料で形成することができる。図示されるように、このような実施例においてはコイル200も備えることができる。コイル200は、エッジ巻きされたコイルであってもよく、また、図示されるように断面形状がほぼ矩形であってもよい。本実施例のコイル200は、実質的に放射線不透過性を有する材料で形成することができ、かつ、コイル600の放射線不透過性を高めることができる。コイル200は、管状部材130、コイル600、コアワイヤ150、またはこれら要素の組み合わせの間の連結にも寄与することができる。ハンダまたは接着剤347は、管状部材130、コイル200、コイル600、もしくはコアワイヤ150、またはこれらの組み合わせの連結に用いることができる。例えば、図示される実施例においては、ハンダまたは接着剤347は、コイル200の両端に配置されている。ハンダまたは接着剤347は、先端チップ137、先端138、もしくは先端チップ257において、コイル600、先端137、コアワイヤ150、もしくはコイル200、またはこれら要素の組み合わせの連結にも使用することができる。別の実施例においては、第2管状部材(スロットが設けられているもの、あるいはスロットが設けられていないもの)を、コイル200もしくはコイル600、またはその双方の代わりに使用してもよい。
【0047】
図7には、適切な放射線不透過性を付与された本発明の別の実施例が示される。この実施例では、実質的に放射線不透過性を有する材料からなる第2管状部材730を備えている。実質的に放射線不透過性を有する材料は、プラチナ/タングステン、プラチナ/イリジウム、プラチナ/イリジウム/ロジウム等といった、優れたバネ特性を有するものであってもよい。管状部材730は、同管状部材730がより高い曲げ弾性を有するように構成された複数のスロット735を有していてもよい。例えば、スロット735は、本願に記載される管状部材130のスロット135の実施例と同様のものであってもよい。管状部材730は、コアワイヤ150の先端部158に配置されていてもよく、また、先端チップ257までもしくはその近傍まで延びていてもよい。本実施例では、拡張コイルチップ300に比べて、チップ137へのトルク伝達性を向上させることができる。また、図2に示される実施例のような他の実施例と比較して、より高い放射線不透過性を付与することもできる。実施例によっては、コイル200は、剛性もしくは放射線不透過性、またはその双方をさらに高める管状部材730の内部に配置されてもよい。
【0048】
管状部材730の長さは、例えば、0.5〜5cmの範囲とすることができる。様々な実施例において、放射線不透過性を有する管状部材730の壁厚は、管状部材130の壁厚とほぼ同一としてもよく、管状部材130の壁厚と異なっていてもよい。コイルもしくはブッシング738,757、またはその両方を、連結部におけるコアワイヤ150を中央へ寄せたり、もしくは連結を容易にしたり、またはその双方を達成するために、管状部材730の両端部において用いてもよい。ハンダまたは接着剤347は、管状部材130の先端138もしくはコアワイヤ150、またはその双方を管状部材730に対して連結するために用いられてもよい。ハンダまたは接着剤347は、実施例によっては、ガイドワイヤ100の先端チップ137もしくはコアワイヤ150の先端チップ257、またはその双方に対して管状部材730を連結するために用いられてもよい。
【0049】
図8には、適切な放射線不透過性を付与することのできる本発明の別の実施例が示されている。この実施例においては、コアワイヤ150は、マイクロマシン加工された管状部材130の先端138の基端側または先端チップ137の基端側に位置する先端チップ257において終端する。したがって、コアワイヤ150の先端チップ257の先端側における管状部材130の管腔径のすべて、またはその大部分が、放射線不透過材料で充填されていてもよい。この実質的に放射線不透過性を有する材料は、例えば、ディスク801、球体、コイル802、またはマイクロマシン加工された、もしくはスロットが設けられたワイヤの形態をとることができる。コアワイヤ150の先端チップ257は、例えばコイル、ブッシング738、ハンダ、もしくは接着剤、またはこれらの組み合わせを用いて、管状部材130に対して連結されてもよい。
【0050】
本発明の様々な実施例には、ガイドワイヤ100等の、比較的高い可撓性を有する、もしくは比較的高い引張強さを有する、またはその双方を備えたチップまたは先端138を有する医療用具と、これら医療用具の製造方法とを含む。詳細には、本発明の多くの実施例においては、例えばガイドワイヤ100のチップまたは先端138は、例えば人体構造101または脈管系105に穿孔や解離を生じさせないように、剛性が低いことが望ましい。これは、コアワイヤ150の先端部158を研削して小径となるようにするか、あるいは先端において平坦状またはリボン状となるようにワイヤを形成することにより、達成することができる。ガイドワイヤ100においては、管状部材130が、少なくとも連結部140の先端側の部分において、(例えばガイドワイヤ100の抜去中に)ねじり負荷を受けることができ、コアワイヤ150の部分158がその部分における張力負荷のみを受ければよいように構成してもよい。管状部材130のトルクを受ける能力を最大とすることができるため、(コアワイヤ150の部分158ではなく)管状部材130が、連結部140の先端側の部分において、所望される曲げ剛性のほとんどを付与可能であることが望ましい場合もある。
【0051】
したがって、図9においては、コアワイヤ150の部分158を用いることにより、ガイドワイヤ100の引張強さが最大となり、曲げ剛性が最小となるため、好都合な場合がある。これは、コアワイヤ150の部分158を、より小径の複数のワイヤ958で形成することにより達成することができる。ワイヤ958は、かなり大径のワイヤと同等の引張強さを有するように、編成してまたはねじって一体化されていてもよい。別の実施例においては、ストランドまたはワイヤ958は互いに平行となるように設けられてもよい。さらに別の実施例では、引張強さは高いが剛性は低い、ポリエチレン(例:アライド・シグナル社(ALLIED SIGNAL) 製のスペクトラファイバー(SPECTRA fiber) )、ポリプロピレン等のポリマーフィラメントを、ガイドワイヤ150の部分158に用いてもよい。実施例によっては、ポリマー製コアワイヤは、例えば曲げ弾性をより高めるために縒られていてもよく、またねじられたり、編まれたり、平行となるように配置されたりしてもよい。
【0052】
コアワイヤ150の部分158が複数の金属ストランド958(例えば編成されたまたはねじられたステンレス鋼ケーブルまたはワイヤロープ)を有する本発明の実施例においては、図9に示されるように、先端部158は、コアワイヤ150の基端部159に対してハンダまたは接着剤347により連結される。先端部158は、先端チップ137に対しても、例えばハンダまたは接着剤347により連結されていてもよい。様々な実施例において、先端部137は、先端部158の先端チップ257を包囲する球状または半球状のハンダまたは接着剤347で形成されていてもよい。部分158が一本以上のポリマーフィラメントを備える本発明の実施例でも、ハンダではなく、エポキシ等の接着剤を使用するという点を除き、同様の構成となっている。コアワイヤ150の部分158および部分159間の連結は、品質を保証するために、引張強さについての試験がなされていてもよい。
【0053】
図10は、チップの曲げ弾性が屈曲の一方向においてのみ比較的高い、本発明の別の実施例を示す。この実施例では、先端部158の先端チップ257において、平板状コアワイヤ150を有する。詳細には、コアワイヤ150の先端257を平板状とすることにより、より可撓性に優れた先端チップ1057を得ることができる。これは、拡張コイル先端チップ300(例:図3のコイル200)の有無にかかわらず行うことができる。本願においては、チップまたは断面の一方の寸法(軸線に垂直な方向における寸法)が、他方の寸法(軸線および前記一方の寸法の双方に対して垂直な方向における)の少なくとも二倍以上となる場合に、チップまたは断面は平板状であるものと判断する。平板状のチップ1057の例としては、1cmの長さを有し、径が0.002インチ(約0.0508mm)の円形コアワイヤが0.001インチ(約0.0254mm)×0.003インチ(約0.0762mm)となるように平板化されたものがある。様々な実施例において、平板状部分の長さは、例えば0.5〜5cmの範囲とすることができる。いくつかの実施例においては、先端部158の先端チップ257以外の部分が平板状をなしていてもよい。例えばほぼ円形の断面を有するコアワイヤ150の一部を平板状とすることにより、一平面における可撓性がより高くなり、これに垂直な平面においては可撓性が低くなるようにすることができる。なお、両平面は、ガイドワイヤ100の軸線を通るものとする。先端チップ1057は、例えば圧延や鍛造を用いて平板状とすることができる。
【0054】
平板状の先端チップ1057を有する実施例においては、実質的に放射線不透過性を有する材料1001からなる部分を1個以上、管状部材130の内部、例えば先端138に配置することができる。材料1001は、1個以上のほぼ半円の断面形状を有する部分や、またはスロットが設けられたディスク状の部分の形態をとってもよく、あるいは、コイルまたは内径部分にノッチが形成されたコイルの形態をとってもよい。材料1001は、先端部158またはコアワイヤ150の先端チップ257のほぼ平坦な断面に対向する側に設けられていてもよい。
【0055】
本発明は、連結部140を有する複数の実施例における医療用具も含む。これには、例えば、管状部材130およびコアワイヤ150を有するガイドワイヤ100等の医療用具が含まれる。連結部140の様々な実施例は、例えば図11〜図15に示される。本発明は、本願に記載されるこれらの医療用具の製造方法も含む。マイクロマシン加工された管または管状部材130とコアワイヤ150とを有するガイドワイヤ100の様々な実施例においては、マイクロマシン加工された管または管状部材130とコアワイヤ150との間の基端側の連結部140の構成は、ガイドワイヤ100の性能に影響を及ぼす要因となる。図1について説明すると、様々な実施例において、連結部140により、コアワイヤ150の基端部159から管状部材130の基端139へトルクを伝達することができる。多くの実施例においては、ガイドワイヤ100の曲げ剛性や特性に悪影響を与えないように、連結部140が十分に短く、もしくは十分に可撓性を有しており、またはその双方を備えていることが望ましい。本発明の一実施例においては、連結部140は、使用時において同時または別々に加わるねじり、引っ張り、屈曲に対して、十分な強度および耐性を有することができる。
【0056】
図11〜図15について説明する。様々な実施例と同様に、連結部140には、コイルまたはコイルの一部1141を用いることができる。コイルまたはコイルの一部1141は、コアワイヤ150を包囲しており、少なくとも一部が管状部材130の内部に配置されて、コアワイヤ150と管状部材130との間の連結部140を強化する。部分またはコイル1141は、図示されるように、少なくとも一部が管状部材130の基端139の内部に位置していてもよく、例えばコイルピッチがコイル1141を形成するワイヤの直径の1.5〜5倍となるように伸張されていてもよい。コイル1141は、コアワイヤ150および管状部材130に対して、ハンダ1147もしくは接着剤1148、またはその双方を用いて連結されていてもよい。実施例によっては、コイル1141は、ハンダ1147を用いてコアワイヤ150に対して連結され、接着剤1148を用いて管状部材130に対して連結されていてもよい。このような連結部140は、接着剤1148のみを使用した場合に比べ、強度に優れ得る。この理由は、接着剤1148が、コイル1141の内部およびその周囲へ、実施例によっては管状部材130の開口またはスロット135へそれぞれ流れ込むことができるため、接着剤1148のコアワイヤ150もしくは管状部材130、またはその双方に対する微細な接着が全くなくなってしまった場合であっても強度を有し得る機械的に連結された構造を形成することができるからである。コイル1141は、金属、例えばステンレス鋼、実施例によってはプラチナまたはタングステン等の実質的に放射線不透過性を有する材料で形成することができる。
【0057】
本発明の様々な実施例では、コアワイヤ150と管状部材130との間に1個以上の中間連結部を有していてもよい。このような実施例においては、管状部材130は、コアワイヤ150またはコイル(コイル1141と同様のコイルであってもよい)に対して、(例えば接着剤1148を用いて)直接に連結されていてもよい。このような連結は、例えば、管状部材130の基端139と先端138の間の少なくとも1箇所に設けることができる。これらの連結により、二つの構造部材(管状部材130およびコアワイヤ150)間において、ねじり方向の力もしくは軸方向へ向かう力、またはその双方を伝達することができる。この実施例は、例えば、神経用ガイドワイヤで用いることができる。
【0058】
図12に示され、符号1240にて示される本発明の実施例においては、連結部140は、少なくともその一部がコアワイヤ150のテーパ部1253に配置されるように構成されていてもよい。近心コイル1243もしくは基端側コイル345、またはその両方は、例えば図示される箇所において、コアワイヤ150に対してハンダ付けされていてもよい。別の実施例においては、コイル1141は、近心コイル1243の一部(ただしピッチは異なっていてもよい)であってもよく、あるいは別のコイルであってもよい。近心コイル1243は、図3に示されるコイル200のようなマーカーコイルであってもよい。実施例によっては、マーカーコイル(例:符号200)が終端し、別の材料からなる別のコイル(例:近心コイル1141または1243)が始端するように構成することが、有益な場合もある。例としては、ある材料が別の材料よりも安いが、コイルの一部に使用するのに好適な場合がある。例えば、プラチナ製マーカーコイル200を終端させ、これにステンレス鋼製コイル1141が続くようにしてもよい。材料コストの低減に加えて、あるいはこれに代えて、別の材料を使用することにより、ガイドワイヤ100等の医療用具の圧縮強さまたは剛性を高めることができる。このような実施例は、例えば、冠状動脈用ワイヤにおいて用いることができる。
【0059】
径がよりスムーズに移行するように、特にマイクロマシン加工された比較的短い管状部材130を有するガイドワイヤ100の実施例においては、基端側コイル345を用いてもよい。基端側コイル345は、例えば図3および図12〜図15に示されている。基端側コイル345は、コイル外径が、コアワイヤ150の基端部159の外径もしくはスロットが設けられた管状部材130の外径、またはその両方とほぼ同一の大きさを有していてもよい。基端側コイル345は、例えば、ステンレス鋼や他の金属で形成されていてもよい。様々な実施例において、基端側コイル345の長さは、1〜30cmの範囲とすることができる。基端側コイル345の基端部における終端は、例えば、基端側コイル345の内径がコアワイヤ150の外径と一致する場所に位置していてもよい。本実施例は、例えば冠状動脈用ワイヤで用いることができる。
【0060】
ハンダ1147および接着剤1148を有する実施例においては、離間された、または伸張されたコイル1141(または近心コイル1243の部分1141)におけるハンダ1147の量は、コイル1141がコアワイヤ150に対してハンダ付けされている一方で、コイル1141のループ間の空間が完全に充填されないように調整されていてもよい。その後、管状部材130を、コイル1141もしくは近心コイル1243、またはその双方の上を摺動させ、基端側コイル345に対して接合させることができる。この後、接着剤1148をコアワイヤと管の間の図示される空間に流し込み、コアワイヤ130をその基端部139においてコイル1141およびコアワイヤ150に対して連結することができる。接着剤1148は、コイル1141に対して、もしくはスロット135内において、またはその双方において、機械的な連結を形成してもよい。
【0061】
図13は、連結部140の別の実施例を示す。連結部1340は、コアワイヤ150の特徴部上、すなわち断面の寸法または径が急激に変化する部分(例えばコアワイヤ150の隆起部1351)上に位置するように構成されていてもよい。隆起部1351は、基端部159と先端部158との間に配置することができる。隆起または隆起部1351は、例えば連結部140に用いられる、ハンダまたは接着剤347による機械的な連結を容易にするように構成される、コアワイヤ150の特徴部分であってもよい。このような特徴の他のものとして、断面の寸法または径が急激に変化する部分は、段差、他の形状の隆起(例:軸方向における長さがより短いもの)、溝、スロット、もしくは断面形状の変化(例:丸みを帯びた多角形)、またはこれら特徴の組み合わせを含むことができる。
【0062】
隆起部1351は、例えば、コアワイヤ150の残りの部分を研削することにより、あるいはコイルまたはスリーブをコアワイヤ150上に取り付けることにより、形成することができる。コイルまたはスリーブの取り付けは、所定の位置においてハンダ付け、溶着、接着、焼嵌め、鋳造、または捲縮を用いて行うことができる。コイル1141(近心コイル1143の一部であってもよい)は、図示されるように隆起部1351の先端側に隣接するコアワイヤ150に対してハンダ付けされていてもよい。また、近心コイル1143の離間したコイル部1141におけるハンダ1147の量は、コイル1141がワイヤに対してハンダ付けされるように(実施例によってはさらにハンダ1147がコイル1141のループ間の空間を充填しないように)調整されていてもよい。実施例によっては、基端側コイル345は、コアワイヤ150の基端部159もしくは隆起部1351、またはこれら両方に対してハンダ付けされていてもよい。この後、管状部材130を、例えば基端139が基端側コイル345と接合する箇所において、コアワイヤ150上方に設けることができる。図示される位置において、接着剤1148を管状部材130とコアワイヤ150との間の空間に流し込むことができる。
【0063】
図11に示される連結部140の実施例は、特定の特徴、すなわち断面の寸法または径における急激な変化(例えば段差、隆起部、コアワイヤ150の研削された部分における棚状部)を必要としない、という点において好都合な場合がある。しかしながら、この実施例は、管状部材130の基端139またはその基端側の地点において、アセンブルされたガイドワイヤ100の曲げ剛性が、近接する部分に比べて低くなるという問題が生じる場合がある。用途によっては、このことが、使用時における連結部140の疲労および破壊の原因となる場合がある。図13に示される連結部1340は、コアワイヤ150の隆起部1351における管状部材130の基端139において、長さの短い、特別に剛性が高い部分を有していてもよい。しかしながら、符号1340にて示されるこの実施例は、繰り返し曲げ応力が発生した場合により丈夫な連結部140を得ることができる。実施例によっては、隆起部1351もしくは他の要素の径、またはその両方の径は、連結部140の領域において、比較的連続的に変化する曲げ剛性を得られるように選択されてもよい。
【0064】
図14は、図11と同様ではあるが、コアワイヤ150のテーパ部上に配置された連結部140の別の実施例(符号1440)を示す。近心コイル1143および基端側コイル345は、図11および図14で図示される場所において、例えば接着剤1148もしくはハンダ1147、またはその両方を用いて、コアワイヤ150に対して連結することができる。ハンダ1147および接着剤1148の両方を用いる実施例については、近心コイル1143の離間したコイル部1141におけるハンダ1147の量は、ハンダ1147がコイル1141のループ間の空間を充填しないように調節されていてもよい。符号1440で示される実施例においては、基端側コイル345は、長さの短い、離間した部分1442を先端に備えていてもよい。基端側コイル345の先端は、これに対応する形状を有する管状部材130の螺旋状切り欠きに螺入される。ハンダ1147または接着剤1148は、図示される位置において、管状部材130とコアワイヤ150との間の空間に流し込むことができる。したがって、連結部140の符号1440で示される実施例は、基端側コイル345を管状部材130に対して連結し、これにより、別の実施例よりもより強固な連結を形成することができる。
【0065】
図15は、符号1540にて示される本発明の連結部140の別の実施例を示す。連結部1540は、コアワイヤ150の径における段差1551等のように、断面の大きさが急激に変化する箇所に位置するように構成することができる。段差1551は、例えば連結部140に用いられる、ハンダまたは接着剤347の機械的な連結を容易にするように構成された、コアワイヤ150の特徴部であってもよい。様々な実施例において、段差1551は、図示されるように比較的急角度でテーパ状をなしていてもよく、あるいは径における四角い段差(すなわち、コアワイヤ150の軸線に対して垂直な表面を有する段差)を有していてもよい。丸みを帯びた内側の角部(例えば図13の隆起部1351について示されるもの)により、応力集中を低減することができる。コイル1141または近心コイル1143の部分1141は、図示されるように段差1551において、または段差1551の先端側に隣接する部分において、コアワイヤ150に対して連結されていてもよい。別の実施例においては、ハンダ1147もしくは接着剤1148、またはその両方が、コイルまたは部分1141をコアワイヤ150に対して連結するために用いられていてもよい。実施例によっては、基端側コイル345の端部は、図示されるように段差1551の基端側に連結されていてもよい。その後、管状部材130を、基端側コイル345と接合する箇所において、コアワイヤ150に取り付けてもよい。図示される位置において、ハンダ1147または接着剤1148を、管状部材130とコアワイヤ150との間の空間に流し込んでもよい。符号1540にて示される連結部140の実施例は、管状部材130の基端139において潜在的に脆弱な部分を減らすことができる、またはなくすことができるという点において、符号1340にて示される連結部140の実施例と類似していてもよい。符号1540にて示される実施例は、段差1551を設けるため、隆起部1351を設けた場合に比べて製造コストが低くなるが、符号1540にて示される実施例のいくつかでは、符号1351にて示されるいくつかの実施例(例えば管状部材130とコアワイヤ150との間において、管状部材130の最も基端側の部分に径方向に延びる間隙を有する実施例)ほど丈夫ではない。
【0066】
段差1551を有する連結部140は、例えば、長さが短い管状部材130を有するガイドワイヤ(例:5cmの管状部材130を有する冠状動脈用ワイヤ)において有用である。このような実施例においては、コアワイヤ150は、管状部材130の内径よりもかなり小さい。コアワイヤ150の段差1551により、管状部材130の基端139において、連結部140が屈曲時に十分な強度を有することができる。コアワイヤ150の段差1551は、例えばコアワイヤ150の所定の場所が研削されたものであってもよく、あるいは、先端側の管が、コアワイヤ150の基端部159上にスライド移動された後に、別作業として例えばコアワイヤ150に対してハンダ付けまたは接着されていてもよい。
【0067】
本発明は、より高い曲げ弾性を持たせる特徴(例えばスロット135)の配置および構成の様々な実施例も含む。図1について説明したように、管状部材130は、より高い曲げ弾性を有するべく、管状部材130に形成された、または管状部材130に切り込みを入れた複数のスロット135を備えていてもよい。図2について説明する。スロット135は、軸方向の棒状体、すなわちリング234を連結する部分236を残して管状部材130に形成されていてもよい。図16〜図19には、スロット135、リング234、部分236の様々な構成および配置を示した、管状部材130の様々な実施例が示されている。詳細には、スロット135は、2個、3個、あるいはそれ以上のスロット135からなるグループを構成してもよい。スロット135は、管状部材130の軸線に沿ってほぼ同じ位置に設けられていてもよく、同軸線に対してほぼ直交する方向に延びていてもよい。図2には、各々2個のスロット135からなるグループ235を有する実施例が示されており、図16には、各々3個のスロット135からなるグループ1635を有する実施例が示されている。リング234は、スロット135の近接する任意の二つのグループ(例えば符号235または符号1635)間に形成されており、近接するリング234同士は、グループ235のスロット135の数と等しい数の部分236により連結されている。2個のスロット135のグループ235を用いる場合には、管状部材130の屈曲は、部分236もしくはリング234、またはその両方の変形によるものであってもよい。3個以上のスロットからなるグループ235を用いる場合には、管状部材130の屈曲は、リング234の変形に、より依存することになる。したがって、グループ235に3個あるいはそれ以上のスロット135をそれぞれ有する実施例においては、部分236における疲労がより起こりにくい。
【0068】
スロット135の近接するグループ同士235または1635は、図3および図16に示されるように、管状部材130の軸線の周囲において、互いに対して周方向に一定角度ずらして(すなわち近接するグループまたはその前のグループ235または1635から一定角度ずらして)配置することができる。例えば、2個のスロット135からなる近接するグループ235同士は、周方向に約90°ずらして配置され、3個のスロットからなる近接するグループ1635同士は、周方向に約60°ずらして配置されてもよい。したがって、部分236は、近接するスロット135の中間点と軸方向においてほぼ一列に並ぶように配置されていてもよい。概して、このずらす角度は、約180°をグループ(例:グループ235または1635)あたりのスロット135の数で割った数値とすることができる。
【0069】
実施例によっては、上述した角度よりも、ずらす角度を僅かに増減させてもよい。したがって、部分236を、近接するグループのスロット135の中間点と一列に並ぶ位置から僅かにずらして配置することができる。このため、スロット236は、管状部材130に沿って螺旋状のパターンを形成することができる。この僅かなずれは、例えば、各々2個のスロット135からなるグループ235については1〜20°、3個以上のスロット135からなるグループについては同じ角度かそれ以下とすることができる。概して、ずらす角度は、180°±(40°以下)をグループ(例えばグループ235または1635)あたりのスロット135の数で割った数値とすることができる。すなわち、ずらす角度は、140〜220°の角度をグループ(例えばグループ235または1635)あたりのスロット135の数で割った数値とすることができる。別の実施例においては、ずらす角度は180°±1〜25°をグループ(例えばグループ235または1635)あたりのスロット135の数で割った数値とすることができる。さらに別の実施例においては、ずらす角度は、180°±(5°以下)をグループ(グループ235または1635)あたりのスロット135の数で割った数値とすることができる。さらに別の実施例においては、ずらす角度は、(180°をグループあたりのスロットの数で割った数値)±(10°以下)(すなわち±1〜10°)とすることができる。
【0070】
図17においては、各々2個のスロット135からなるグループ235が、近接するグループ235から周方向に約85°ずらして配置されている。したがって、セクションBのグループ235は、セクションAのグループ235から周方向に約85°ずらして配置されており、セクションCのグループ235は、セクションBのグループ235から周方向に約85°ずらして配置されている。また、セクションDのグループ235は、セクションCのグループ235から周方向に約85°ずらして配置されている。このため、本実施例においては、部分236が管状部材30に沿って螺旋状のパターンを形成する。スロット135は、例えば半導体用のダイシングブレードを用いて、切込み、研削により形成することができる。例えば、グループ235の各スロット135は、管状部材130を回転させて順々に切り込んで形成することができる。この後に、管状部材130が軸方向に移動させられ、所望の量だけ回転され、スロット135の軸方向において近接するグループ235が形成されてもよい。図17に示される実施例においては、この所望の回転量は85°となっている。95°回転させても同様の結果が得られるが、この場合には、螺旋状パターンが反対方向に形成される点が異なっている。
【0071】
本発明のいくつかの実施例においては、本願に記載される一つ以上の構成および配置によるスロット135を管状部材(例えば管状部材130)ではなく、中実部材またはワイヤに形成することが好都合な場合がある。例えば、各々2個のスロット135からなるグループ235は、中実体の円形シリンダまたはワイヤ(例えばニチノールやステンレス鋼から形成されたもの)に形成することができる。実施例によっては、異なる材料を連結してもよい。例えば、基端部にはステンレス鋼を用い、先端部にはニチノールを用い、基端部および先端部の双方または先端部のみにスロットが設けられるようにしてもよい。テーパ形状または径の変化により、先端における曲げ剛性をより低くしやすくなる場合もある。例えば、スロットが設けられた管状部材130と比較すると、スロットが設けられた中実部材はその中心部によって、より高い引張強さを有することができる。
【0072】
一例として、スロット135は、本願に記載または図示される実施例のコアワイヤ150の基端部159または先端部158の一部またはその全体にわたって形成することができる。一実施例においては、このようなスロットが設けられたワイヤは、コイル(例えば放射線不透過性を有する外側コイル200)、管状部材(例えば管状部材130)、もしくはコーティング、またはこれらの組み合わせを有するガイドワイヤを形成してもよい。実施例によっては、ワイヤは、例えば放射線不透過性を有する高分子化合物に封入されていてもよい。また実施例によっては、スロットが設けられた管状部材130の内部、もしくは放射線不透過性を有する、スロットが設けられた管状部材730(図7に示される)の内部、またはその両方を満たすように、スロットが設けられたワイヤが配置されていてもよい。別の実施例においては、このようなスロットが設けられた中実部材またはワイヤは、実質的に放射線不透過性を有する材料で形成することができ、例えば図8に示されるディスク801やコイル802の代わりに、マーカーとして用いることができる。
【0073】
いくつかの実施例においては、例えば図2、図3、図16に示されるように、スロット135は、軸線の周囲においてほぼ等しく離間するように配置されてもよい。このような実施例においては、グループ235の各スロット135は、ほぼ同一のサイズ(例えば幅および長さ)とすることができる。しかしながら、実施例によっては、スロット135は、軸線の周囲において非均一に離間するように配置されていてもよく、または非均一のサイズを有していてもよく、あるいはその双方を満たしていてもよい。例えば、図18Aに示されるように、スロット1835aがスロット1835bに比べてかなり長くなるようにし、部分1836が管状部材130の中心からずれて配置されるようにしてもよい。図18に示される実施例においては、各その他の(各第2の)グループ236は、異なるサイズのスロット135を有している。図19に示される実施例においては、図示される各グループ235は、異なるサイズのスロット135を有している。さらには、図18に示される実施例においては、非均一の長さを有するスロット1835aおよび1835bのグループはすべて、部分1836が管状部材130の軸線に対してほぼ同一方向にずれるように形成されていてもよい。一方、図19の実施例においては、非均一の長さを有するスロット1835aおよび1835bは、部分1836が管状部材130の軸線に対して異なる方向にずれるように形成されていてもよい。いくつかの実施例においては、例えば、軸線の周囲において等しく異なる方向に離間される、より長いスロット1835aが同じ数だけ設けられていてもよい。このような実施例は、基本的に、軸線の周囲における曲げ特性が等しい。本発明のいくつかの実施例においては、スロット1836bを設けないことにより、グループ235あたりに1個のスロット1835aを設けるようにしてもよい。
【0074】
図20は、図18に示される構成による非均一のサイズを有するスロット1835aおよび1835bを有する管状部材130を備えた本発明の実施例を示す。別の実施例においては、図19に示されるようなスロット135を有していてもよく、さらに別の実施例においては、軸線の周囲において非均一に離間して配置される同一サイズのスロット135を有していてもよい。操作可能な医療用具2000は、管状部材130と、コアワイヤ150と、制御ノブ2052と、チップ137とを備えていてもよい。管状部材130およびコアワイヤ150は、制御ノブ2052から先端チップ137まで同軸上に延びていてもよい。本実施例においては、管状部材130は、連結部140等の1個以上の連結部により連結される、2個またはそれ以上の管または管状部材で構成されていてもよく、あるいは、少なくとも先端138にスロットが設けられている1個の管で構成されていてもよい。例えば、実施例は、図7に示されるのと同様に変更(2個の管状部材130および730が一列に並んで配置されるように)したり、図21に示されるのと同様に変更(2個の管状部材130および2130が同軸上に配置されるように)したり、図22に示されるのと同様に変更(2個の管状部材が部分的に同軸上に配置されるように)したり、図24に示されるのと同様に変更(2個の管状部材130および2439が一列に並ぶように配置されるか、同一の管状部材の一部を構成するようにしたり)することができる。コアワイヤ150は、例えば、ステンレス鋼もしくはニチノール、またはその組み合わせで形成されていてもよく、1本または複数本のストランドを有していてもよい。
【0075】
医療用具2000においては、例えば制御ノブ2052を用いてコアワイヤ150に対して張力を付与することにより、屈曲部133の形状、量、角度を制御して医療用具2000を操作可能にしてもよい。例えば、制御ノブ2052を管状部材130に対して引っ張るまたは回転させる(ねじる)ことにより、屈曲部133の角度を大きくすることができ、これにより、非均一のサイズを有する、またはずらして配置されるスロット1835aおよび1835bにおける屈曲が引き起こされる。非均一のサイズを有するスロット1835aおよびスロット1835bは、管状部材130の一部、例えば屈曲部133が所望される場所に沿って配置することができる。この位置は、例えば先端138、またはその近傍とすることができる。一実施例においては、医療用具2000はガイドワイヤであり、制御ノブ2052は、医療用具2000上をカテーテルが案内されることができるように、取り外し可能となっている。別の実施例においては、管状部材130はカテーテルとして機能させてもよい。この場合、必ずしも別のガイドワイヤを用いなくてもよい。
【0076】
さらに、本発明の様々な実施例においては、例えば脈管系105の解離を回避するために、軸線に沿った圧縮剛性、軸方向における強度、または医療用具もしくは管状部材130の少なくとも一部の剛性を低くすることが好都合な場合がある。図18に示される実施例においては、管状部材130にかかる圧縮負荷により、管状部材130がスロット1835aの方向へ屈曲しやすくなる場合がある。一方、図19に示される実施例においては、管状部材130にかかる圧縮負荷により、管状部材130が螺旋形状をなしたり、人体構造101により決定される方向に屈曲したり、軸線に沿った長さが単に短くなったりすることがある。
【0077】
本発明の実施例は、ガイドワイヤ100等の医療用具に所望のねじり剛性および曲げ剛性を付与する様々な特徴をも含むものである。図20にも、本発明の多くの実施例における特徴、すなわち基端側ハイポチューブまたはスリーブ2062が示されている。スリーブ2062は、所定の位置において焼き嵌めされていてもよく、管状部材130(または、例えば図1に示される実施例においてはコアワイヤ150の基端部159)に対して、例えば接着剤を用いて、スリーブ2062の少なくとも両端において連結されていてもよい。スリーブ2062は、第2管状部材であってもよく、ねじり、曲げ、もしくは引っ張り、またはこれらの組み合わせが加わったときに、(例えば管状部材130に対して)連結される部分の剛性、強度、またはその双方を高めることができる。実施例によっては、スリーブ2062は、連結される相手方の材料よりも剛性が高い材料で形成されていてもよい。例えば、図20に示される実施例では、管状部材130をニチノールで形成し、スリーブ2062をステンレス鋼で形成してもよい。このような実施例においては、スリーブ2062は、医療用具または管状部材130の基端部のみを被覆していてもよい。実施例によっては、スリーブ2062は、曲げ剛性を低くするために、または曲げ剛性を調整するために、少なくとも部分的にスロットが設けられていてもよく、あるいはその外径が小さくなるように変化していてもよい。例えば、スリーブ2062は、管状部材130と同様に、スリーブ2062の全長にわたって、またはその先端部において、スロットが設けられていてもよい。実施例によっては、制御ノブ2052(またはチャック152)は、基端側スリーブ2062に対して連結または挟持されていてもよい。カテーテル等のいくつかの実施例においては、スリーブ2062は、ポリマー材料によりほぼ構成されていてもよく、スロット135を密封していてもよい。
【0078】
図21には、管状部材2130を有する本発明の別の実施例が示されている。管状部材2130は、管状部材130と共通の軸線を共有していてもよい。管状部材2130は、図示されるように、管状部材130と同心状に配置することができる。管状部材2130は管状部材130の内側に配置されていてもよい。また、管状部材2130は、より高い曲げ弾性を有するべく複数のスロット2135を有していてもよい。管状部材2130は、管状部材130と同様にスロットが設けられていてもよく、スロット2135はスロット135と同様の配置もしくは構成、またはその両方を備えていてもよい。管状部材2130は、連結部140において、またはその近傍においては基端2139を、図示されるように管状部材130の先端138の基端側においては先端2138をそれぞれ有する。コイル200等の実質的に放射線不透過性を有するマーカーは、先端2138に、または管状部材2130の先端側に配置することができる。管状部材2130は、本願に記載される管状部材130を形成する材料で形成することができ、基端2139もしくは先端2138、またはその両方において、コイルワイヤ150もしくは管状部材130、またはその両方に対して、例えばハンダまたは接着剤347を用いて連結することができる。
【0079】
図21についてさらに説明する。本発明のいくつかの実施例は、管状部材130、管状部材2130、またはその両方の全部または一部に、スロット135または2135を設けない構成であってもよい。例えば、一方の管状部材(130または2130)がスロット(135または2135)を有するのに対し、他方の管状部材(130または2130)には、その全長にわたってスロット(135または2135)を設けないようにしてもよい。このような実施例のいくつかにおいては、管状部材130、管状部材2130、またはその両方の全部または一部が、例えば一端部または両端部における剛性の変化をスムーズなものとするために、一端部または両端部においてスロット135または2135を備えていてもよい。実施例によっては、スロット135または2135が設けられていない管状部材130の一部、管状部材2130の一部、またはその両方が、(例えば研削により)テーパ状をなすように形成されることにより、このような位置における曲げ剛性を低くする、または調整するようにしてもよい。
【0080】
図示されるように、2個の管状部材(例えば符号130および2130)を有する本発明のいくつかの実施例においては、コアワイヤ150の断面の大きさまたは径における急激な変化が起こる部分(例えば段差2151もしくは2152、またはその両方)を1個以上有していてもよい。前記急激な変化が起こる部分は、管状部材の基端に設けることができる。例えば、管状部材2130は、段差2151に接合していてもよく、段差2152に接合していてもよい。段差2151および2152は、コアワイヤ150の軸線に沿って、図示されているよりも離れた位置に配置されていてもよい。別の実施例においては、連結部140においてコアワイヤ150の径が徐々に小さくなっていてもよく、あるいは別の図面に図示されるようなコイルを備えていてもよく、あるいは基端139および2139の基端側におけるコアワイヤ150の部分159を設けなくてもよい。2個の管状部材を有する実施例のいくつかは、既に述べた拡張コイルチップ300とともに用いられてもよい。
【0081】
図21に示される同心状に配置される管状部材130および2130を有する本発明の実施例では、他の実施例(例えば、設けられるスロット135の数が少ない、またはより厚い壁厚を有する1個の管状部材130を有する実施例)と比較して、耐キンク性に優れ、疲労寿命をより長くすることができる。管状部材130および2130は、別々にスロットが設けられてもよく、(例えば同心状に配置される場合には)同時にスロットが設けられてもよい。実施例においては、管状部材130を外径0.0135インチ(約0.3429mm)、内径0.0096インチ(約0.2438mm)とし、管状部材2130を外径0.0095インチ(約0.2413mm)、内径0.006インチ(約0.1524mm)とすることができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施例においては、ガイドワイヤ100等の医療用具の外径の全部または一部が、先端チップ137においてより小さい外径を有するように、徐々に、または段階的に(例えば段差により)径が小さくなることが望ましい。このテーパ形状により、先端方向における曲げ剛性を容易に低くすることができる。さらには、例えば医療用具が徐々に細くなる脈管系105内を進行し、先端138が進行する空間がより小さくなっていく場合には、先端がより小さい外径を有することが望ましい。図1について説明したように、管状部材130は、コアワイヤ150の基端部159の少なくとも一部よりも小さい外径を有していてもよい。例えば、いくつかの実施例においては、基端154から連結部140まで、コアワイヤ150が徐々に、または段階的に径が小さくなっていてもよく、また、連結部140における外径よりも、基端154における外径の方が大きくてもよい。別の実施例においては、コアワイヤ150の基端部159は、管状部材130の外径よりも大きい、ほぼ一定の外径を有していてもよい。
【0083】
これに代えて、あるいはこれに加えて、管状部材130の外径が先端方向へ向かって小さくなっていてもよい。この外径が小さくなる変化は、例えば、徐々に変化する連続的な変化であってもよく、段階的な変化であってもよい。管状部材130の内径(ID)も、先端方向に向かって小さくなっていてもよく、あるいは一定であってもよい。したがって、管状部材130の壁厚も、管状部材130に沿って先端方向へ向かって徐々に、または段階的に薄くなっていてもよく、実施例によっては、ほぼ一定の壁厚であってもよい。
【0084】
管状部材130は、例えばその外面に機械加工または研削加工を施すことにより、テーパ状をなすようにすることができる。別の実施例においては、管状部材130の異なる外径を有する複数の部分を連結して一体化し、例えば1個以上の段差またはテーパ部によって段階的に径が小さくなる管状部材130を形成してもよい。外径が異なる複数の部分は、接合して連結されるか、例えば一定の長さにわたって同心状に重なり合うようにされ、例えば接着剤もしくはハンダによる連結や溶着を用いて連結されていてもよい。管状部材130の外径が段階的に小さくなるこのような実施例においては、段差または外径が変化する部分は、機械加工または研削加工により形成されてもよく、これにより、管状部材130の全長(すなわち連続的に外径の大きさが小さくなる部分)にわたって、またはほぼ一定の径を有する部分(すなわち段階的に外径の大きさが小さくなる部分)間において、面取りされた部分または徐々に外径の大きさが小さくなるテーパ部が形成されるようにしてもよい。このような面取りされた部分または径が徐々に小さくなるテーパ部は、摩擦を小さくし、人体構造101内における医療用具の進行を容易にすることができる。面取りしたり、テーパ状にしたりしてこれらの径の変化を得ることにより、剛性の変化をより緩やかにすること、もしくは応力集中を減らすこと、またはその両方を達成することもできる。
【0085】
図22に最もよく示される実施例においては、同心状に配置されるより小径の管状部材2130の先端2138は、より大径の管状部材130の先端138のほぼ先端方向へ延びていてもよい。先端チップ137は、管状部材2130の先端2138の外径とほぼ同じサイズ(例えば直径)とすることができ、同先端2138に対して、もしくはコアワイヤ150の先端部158に対して、またはその両方に対して連結することができる。いくつかの実施例においては、管状部材2130の基端2139は、図21に示される場所に位置していてもよい。別の実施例においては、管状部材2130の基端2139は、図22に示されるように、管状部材130の先端138の基端側に隣接して設けられていてもよい。例えば、管状部材2130の基端2139を、管状部材130の先端138の基端側において十分に離れるように配置し、管状部材2130の基端2139と管状部材130の先端138とを十分に連結できるだけの空間ができるようにしてもよい。このような連結部には、例えばハンダまたは接着剤347を用いることができる。実施例によっては、ブッシングまたはコイル2238を、管状部材130の間、管状部材2130の間、もしくはその双方を満たすように、または1個の管状部材もしくは両管状部材(例:130および2130)とコアワイヤ150の先端部158との間に配置することができる。この位置において、例えばハンダまたは接着剤347(あるいはこれらの組み合わせ)でブッシングまたはコイル2238を包囲することにより、管状部材130、管状部材2130、またはその両方が、コアワイヤ150の先端部158に対して連結されていてもよい。
【0086】
図21には、本発明の多くの実施例における特徴、すなわちスリーブ2162が示されている。スリーブ2162は、図20に示され、上述されたスリーブ2062と同様の構成とすることができる。スリーブ2162は、ポリマー等の可撓性を有する材料でほぼ構成することができ、かつ、管状部材130のスロット135のいくつかまたはすべてを被覆していてもよい。スリーブ2162は、コアワイヤ150の基端部159の全部または一部を被覆していてもよく、被覆していなくてもよい。さらには、管状部材2130が管状部材130の先端138の先端側に延びている実施例においては、スリーブ2162は、管状部材130の先端138の先端側に延びていてもよい。したがって、スリーブ2162は、管状部材2130の少なくとも一部と管状部材2130に設けられたスロット2135とを被覆していてもよい。このような実施例のいくつかにおいては、スリーブ2162は、テーパ状をなすように、または管状部材130の先端138の先端側へ向かって外径がより小さくなるように形成されていてもよい。
【0087】
スリーブ2162は、管状部材130の上方、管状部材2130の上方、もしくはコアワイヤ150の基端部159の上方、またはこれらを組み合わせた位置において、焼嵌めされていてもよく、あるいは他の要素上に遊嵌(例えば隙間を有する嵌合)されていてもよく、あるいは、例えば接着剤を用いて接着されていてもよい。スリーブ2162は、例えばその両端において接着されていてもよい。いくつかの実施例においては、スリーブ2162は、中間の位置においても1箇所以上接着されていてもよい。スリーブ2162は、スロット135を被覆してスロット135および人体構造101間の摩擦を防止することにより、管状部材130の潤滑性を高めることができる。スリーブ2162は、例えばカテーテル等の医療用具の使用を容易にするために、スロット135を密封していてもよい。さらには、スリーブ2162は、医療用具の剛性や強度を高めたり、医療用具の外径を増加させたり、またはこれらの効果を組み合わせて達成するようにしてもよい。剛性を高めたり、外径を増加させることのできる他の変更と比べると、スリーブ2162は、塑性変形を起こすことなく、最大曲げ半径が小さくなることを回避することができ、もしくは所定の曲げ半径での疲労寿命が短くなるのを回避することができ、またはその双方を達成することができる。
【0088】
図21に示される本発明の別の実施例においては、管状部材2130はポリマー管とすることができる。ポリマー製管状部材2130は、スロット2135を必ずしも設けなくてもよいが、最大弾性曲げ半径を小さくしたり、所定の曲げ半径における医療用具の疲労寿命を短くしたりすることなく、剛性を高めることができる。スロット2135が設けられていない管状部材2130は、例えばコアワイヤ150やコアワイヤ150の基端部159が設けられていない実施例において、カテーテル等の医療用具の使用を容易にすることができる。コアワイヤ150の先端部158を少なくとも有している実施例においては、管状部材2130は、管状部材130とコアワイヤ150の先端部158との間のスペーサーとして機能させてもよく、さらに、コアワイヤ150の部分158を管状部材130内の比較的中心に位置するように保持してもよい。管状部材2130は、管状部材130とコアワイヤ150との間の接触を防止し、摩擦や磨耗を減らすことができる。ポリマー製管状部材2130は、コアワイヤ150の先端部158に焼嵌めされていてもよく、(例えば隙間を有する嵌合で)遊嵌されていてもよい。
【0089】
図23には、ガイドワイヤ100の別例とすることができる、第2管状部材を有する本発明の別の実施例が示されている。この実施例においては、第2管状部材2330は、管状部材130と一列に並ぶように配置されていてもよく、また、図示されるように、管状部材130の基端側に配置されていてもよい。コアワイヤ150は、管状部材2330および管状部材130の少なくとも一部の内部を延びていてもよく、図示されるように、さらに管状部材2330の基端側へ延びていてもよい。コアワイヤ150は、基端部159および先端部158の間に中間部2356を有し、管状部材2330が中間部2356に配置されていてもよい。コアワイヤ150の部分2356における直径は、コアワイヤ150の部分159における直径より小さくてもよく、もしくはコアワイヤ150の部分158における直径よりも大きくてもよく、またはその両方を満たしていてもよい。コアワイヤ150は、図示されるように、基端部159と中間部2356との間において、断面の大きさまたは直径(OD)が急激に変化していてもよく、あるいは、その位置において徐々に径が小さくなっていてもよい。同様に、コアワイヤ150は、図示されるように、中間部2356と先端部158との間において、断面の大きさまたは直径(OD)が急激に変化していてもよく、あるいは、その位置において徐々に径が小さくなっていてもよい。コアワイヤ150は、ねじりや曲げを加えたときに適切な強度および剛性を有するように、中間部2356において十分な大きさの直径を備えることができる。
【0090】
図示されるように、このようなガイドワイヤ100は、先端チップ137において、またはその近傍において、実質的に放射線不透過性を有するマーカー(例えばコイル200)を有していてもよい。管状部材2330は、ポリマーであってもよく、あるいはコアワイヤ150の部分2356上に焼嵌めされていてもよく、あるいは接着剤で連結されていてもよい。管状部材2330は、その端部において、もしくは中間部においても、または管状部材2330の少なくとも一部もしくは全長に沿って、連結されていてもよい。ポリマー製管状部材2330や超弾性材料ではない材料で形成された管状部材2330を用いることにより、管状部材130に必要な長さを短くすることができ、これにより、ガイドワイヤ100のコストを低くすることができる。管状部材2330は、(例えば表面にスロットが設けられた管状部材130と比較して)表面がより潤滑性を帯びるようにすることもできる。これにより、長手軸に沿ったその位置において、ガイドワイヤ100および人体構造101間の摩擦を小さくすることができる。さらには、管状部材2330は、コアワイヤ150の部分2356だけが設けられている場合に比べて、より径が大きく、剛性が高い部分を形成することになる。これにより、人体構造105が解離を起こす可能性を低くすることができ、屈曲能力または疲労耐性を低めることなく、ガイドワイヤ100のその位置における剛性を高めることができる。
【0091】
別の実施例においては、管状部材2330はスロットが設けられ、超弾性金属で形成されていてもよい。実施例によっては、管状部材130は、実質的に放射線不透過性を有する材料で形成されていてもよい。管状部材2330が金属で形成されている実施例においては、管状部材2330は、例えばハンダまたは接着剤337を用いて、他の金属要素に対して連結することができる。
【0092】
図24には、管状部材130の基端部、または管状部材130に対して連結可能な第2管状部材を有する、本発明の別の実施例が示されている。管状部材130の基端部または第2管状部材2439は、スロット135を設けなくてもよいが、図示されるように先端方向において少なくともその外径が小さくなるように構成してもよい。これにより、その全長の少なくとも一部に沿って、曲げ剛性が変化することになる。したがって、管状部材130の基端部または第2管状部材2439の壁厚は、基端部または第2管状部材2439の少なくとも一部にわたって、先端方向に向かってより薄くなるようにしてもよい。管状部材130の基端部または第2管状部材2439がテーパ状をなしていることにより、スロット135を有する部分の基端における剛性の大幅な変化を最小限とすること、または回避することができる。これにより、その位置において、または最も基端側に位置するスロット135において、疲労を低減することができる。
【0093】
管状部材130の先端部または第2管状部材2439が、管状部材130とは別体に形成されている実施例においては、図示されるように、第2管状部材2439と管状部材130との間に連結部2440を設けることができる。ブッシングまたはコイル2441はその一部が、第2管状部材2439の内部および管状部材130の内部に配置され、各管状部材(すなわち符号2439および130)に対して、ハンダまたは接着剤347を用いて連結されていてもよい。コアワイヤ150を有する実施例においては、ブッシングまたはコイル2441は、コアワイヤ150を中心に寄せるスペーサーとして機能していてもよく、かつ、コアワイヤ150に対して、例えばハンダまたは接着剤347を用いて連結されていてもよい。連結部2440の別の実施例においては、第2管状部材2439は、管状部材130に対して溶着されていてもよい。
【0094】
管状部材130の先端部または第2管状部材2439は、テーパ状をなしていない(例えば一定の外径を有する)部分をその基端において有していてもよい。様々な実施例において、面取りされた部分231は、部分、すなわち部材2439の一端部または両端部に設けることができる。管状部材130の先端部または第2管状部材2439が管状部材130の一部である実施例においては、アセンブリ(すなわち管状部材130)は、ニチノール等の超弾性材料で形成することができる。別の管状部材2439を備える実施例においては、管状部材130もしくは管状部材2439、またはその両方を、ニチノール等の超弾性材料で形成することができる。あるいは、管状部材2439は、例えばポリマーやステンレス鋼で形成することができる。実施例によっては、管状部材130は、実質的に放射線不透過性を有する材料で形成されていてもよい。
【0095】
図22も、本発明の様々な実施例における別の特徴、すなわちコイル2266を示している。コイル2266は、管状部材130もしくは(図示されるように)管状部材2130、またはその両方と共通の軸線を共有するように構成されていてもよい。さらには、コイル2266は、管状部材130もしくは(図示されるように)管状部材2130、またはその両方の外側に同心状に配置されていてもよい。コイル2266は、図示されるように、管状部材130から先端側へ延びていてもよい。これにより、コイル2266は、第2管状部材2130を有する拡張コイルチップ300を形成することができる。コイル2266は、図示されるように断面形状がほぼ円形のワイヤを巻回して形成されていてもよく、上述され、別の図面に図示されるように、エッジ巻きされたコイル200により形成されていてもよい。コイル2266上には、潤滑コーティング2269が塗布されていてもよく、同潤滑コーティング2269はコイル2266の巻回部間の空間のすべてまたは一部を埋めていてもよい。これは、例えば図12〜図15に示されるコイル345に対して行ってもよい。
【0096】
コイル2266または345の丸みを帯びた段差は、例えば管状部材2130または130のスロットが設けられた外面よりも、表面の摩擦を小さくすることができる。また、コイル2266の巻回部間に配置されたコーティング2269により、最外面の潤滑コーティング2269が磨耗してしまった場合であっても、潤滑性を帯びることになる。(図3に示される)拡張コイルチップ300を有する本発明の実施例において、コイル200上に、コイル2266もしくは潤滑コーティング2269、またはその両方を有するように構成してもよい。コイル2266は、コイル200がその外径部分において鋭い角を有した断面形状を有しているような実施例において、潤滑性を付与するために特に有用である。コイル2266は、実質的に放射線不透過性を有する材料を含むことができる。あるいは、放射線不透過材料は、例えば管状部材2130の内部に図示されるマーカーコイル200のように、コイル2266の内部に配置されていてもよい。
【0097】
上述した実施例は、本発明を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、数々の変更例および代替の構成を考案することができるであろう。本願の請求項は、これらの変更例および構成を含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部及び先端部を有する長尺状コア部材と、
前記先端部の上に配置される管状部材であって、複数のスロットが形成され、長手軸を有する管状部材と、
前記管状部材は超弾性材料で形成されることと、
前記複数のスロットは、前記管状部材の長手軸に沿った同じ位置に配置される複数のグループをなすように配置されることと、
前記複数のグループの各々は3つ以上のスロットを備えることと
を含む医療用具。
【請求項2】
前記複数のグループは、スロットからなる第1のグループと、前記スロットからなる第1のグループに近接するスロットからなる第2のグループとを含み、前記スロットからなる第1のグループは、前記スロットからなる第2のグループに対して周方向において角度をなすように配置される、請求項1に記載の医療用具。
【請求項3】
前記周方向の角度は、約180°をグループあたりのスロットの数で割った数値である、請求項2に記載の医療用具。
【請求項4】
前記周方向の角度は、(180°±約40°)をグループあたりのスロットの数で割った数値である、請求項2に記載の医療用具。
【請求項5】
前記グループのうち少なくとも1つのグループにおける各スロットは、前記管状部材の長手軸の周りにおいてほぼ等しく離間される、請求項1に記載の医療用具。
【請求項6】
前記グループのうち少なくとも1つのグループにおける少なくともいくつかのスロットは、均一のサイズを有する、請求項1に記載の医療用具。
【請求項7】
前記グループのうち少なくとも1つのグループにおける全てのスロットが、均一のサイズを有する、請求項6に記載の医療用具。
【請求項8】
前記グループのうち少なくとも1つのグループにおける少なくともいくつかのスロットは、非均一のサイズを有する、請求項1に記載の医療用具。
【請求項9】
前記グループのうち少なくとも1つのグループにおける少なくともいくつかのスロットは、前記管状部材の長手軸の周りにおいて非均一に離間される、請求項1に記載の医療用具。
【請求項10】
前記管状部材は管中心を有し、前記管状部材は、グループの各スロット間に配置される複数の棒状体を備え、該棒状体の少なくともいくつかが、前記管中心からずれて配置される、請求項9に記載の医療用具。
【請求項11】
すべてのグループの全ての棒状体が、前記管中心から、前記管状部材の長手軸に対してほぼ同じ方向にずらして配置される、請求項10に記載の医療用具。
【請求項12】
第1のグループのスロット間の棒状体の第1の組が、前記管中心から第1の方向にずれて配置され、第2のグループのスロット間の棒状体の第2の組が、前記管中心から第1の方向とは異なる第2の方向にずれて配置される、請求項10に記載の医療用具。
【請求項13】
基端部及び先端部を有する長尺状コア部材と、
前記先端部に近接して配置される管状部材であって、複数のスロットが形成され、長手軸を有する管状部材と、
前記スロットは、複数のグループを形成するように配置されることと、
前記グループのそれぞれは、前記管状部材の長手軸に沿って同じ位置に配置されるスロットを備えることと、
前記複数のグループは、第1のグループと、第1のグループに近接する第2のグループとを含むことと、
前記第1のグループは、同一サイズの2つのスロットを有することと、
前記第2のグループは、サイズの異なる2つのスロットを有することと
を含む医療用具。
【請求項14】
前記第1のグループもしくは前記第2のグループ、又はその両方は、3つのスロットを備える、請求項13に記載の医療用具。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図17】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図18】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図19】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図20】
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【図20A】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−29736(P2010−29736A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263047(P2009−263047)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【分割の表示】特願2004−524300(P2004−524300)の分割
【原出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】