人工椎体
人工椎体は、上部分および下部分を含んでおり、これらの部分は、確動係合可能である。上部分および下部分の相対位置は、矢状面について可変である。人工椎体は、脊椎中で椎体の置換を確立するために隣接する脊椎構造に係合するための1つまたは複数の手段も含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、様々な種類の脊椎病変を治療するための装置および外科的方法に関する。より詳細には、本発明は、椎体の置換およびそうした置換を行うための手順に関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎は、4つの自然な弯曲を有し、すなわち2つは前弯(lordotic)であり、2つは後弯(kyphotic)である。頸部および腰部の弯曲は前弯であり、一方、胸部および仙骨の弯曲は後弯である。脊椎のこれらの弯曲は、身体が動く際に機械的応力を分散するのに役立つが、極度の弯曲が存在する疾患が発現する可能性がある。例えば、脊椎の上部または胸部領域は、正常には前方へ弯曲しているが、弯曲が50°を超える場合には、それは異常または「後弯症(kyphotic)」とみなされる。前弯症(Lordosis)は、腰部脊椎の正常な前弯した弯曲の異常増大であり、すなわち過度の前弯症は、腰背部で極度の内側への弯曲を引き起こす可能性がある。
【0003】
脊椎の疾患または異常を治療するための技術、器具類およびインプラントは、外傷、病気または先天的な影響により発生する可能性のある多様な形の脊椎の損傷および変形に対処するようになされてきた。脊椎の変形の一種、後弯症には、椎体自体の破壊によってしばしば引き起こされる身体の正面に向かう脊柱の脱出が含まれる。
【0004】
いくつかの事象は、脊椎を歪める可能性があり、それにより深刻化した後弯症または過前弯症(hyper−lordosis)のような疾患がもたらされる。脊椎の自然な傾向は弯曲することなので、脊椎の任意の構成要素または支持構造の中の弱さにより、そうした疾患につながる可能性がある。例えば、病気にかかった胸椎は、通常まず胸椎の前縁が砕かれ、それにより後弯した弯曲の増大をもたらすことになる。これをもたらし得る疾患には、癌、結核、ショイエルマン病(Scheuermann’s disease)およびある種の関節炎が含まれる。健康な椎骨は、自動車事故中など、急激な減速による損傷によって前方へ骨折する可能性がある。骨粗鬆症も、そうした疾患に寄与する可能性がある。あらゆるこれらの疾患およびそれらの根底にある病因の結果として、椎体の置換を考慮することが必要になる可能性がある。
【0005】
上記の理由により少なくとも椎体の一部分を置換することが必要な場合には、先の技術は、重合性ペースト(polymerizable paste)または移植骨片を用いて椎体のその部分の再生を必要としてきたものであり、この移植骨片はしばしば、損なわれていない椎体の形状を移植骨片に与えるように形作られる。しばしば、腸骨から摘出される骨などの自家骨(autologous bone)が、空間を埋めるために使用される。重合性ペーストは、PMMA骨セメント(PMMA bone cement)を含むことができる。脊柱の様々な部分の構造上の欠陥に対処するための様々な人工器具も、開発されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
様々な脊椎の病気を引き起こす、または様々な脊椎の病気の結果である損傷した椎体および/または病気にかかった椎体は、置換することが必要であるが、しかし、先の器具および技術には、いくつかの欠点がある。先の器具および技術は、病気にかかった体節の間に融合(fusion)を引き起こすことにより隣接する椎体の間で支持を行うように形成されてしまうものであり、それにより脊柱中の動きが排除される。脊椎の動く範囲を減少させることに加えて、これは、融合部位の上下の脊椎の関節の早過ぎる劣化を引き起こす可能性もある。また、先の器具および技術は、それらを定位置に固定するために脊椎の正面または背面で追加の器具類を必要とする。
【0007】
一態様では、本発明によれば、先の器具および技術の欠陥のうち少なくともいくつかの欠陥を取り除きまたは軽減する人工椎体が提供される。
【0008】
一態様では、本発明によれば、脊椎中で自然に発生している椎体を置換する椎体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、一態様では、本発明によれば、
上部分および下部分を備え、この上部分および下部分それぞれが上面、下面および外側部を有し、
この下部分の上面が、この上部分の下面に接触および確動係合(positive engagement)し、
この上部分の上面およびこの下部分の下面が、隣接する脊椎構造に係合するための1つまたは複数の係合手段を有する人工椎体が提供される。
【0010】
本発明の様々な目的、特徴および付随する利点は、添付図面と併せて考察されるとより十分に認識され、より良く理解されよう。図面中、同じ参照符号は、数枚の図を通して同一または類似の部分を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明をより十分に理解可能にするために、次に添付図面を参照して例をあげて説明することにする。ここで図1〜図9は、本発明のある実施形態を例示する。
【0012】
本明細書中の説明および図では、特に断りの無い限り、図面の解剖図を論じる際には、「正面(front)」および「背面(back)」なる用語は、冠状面または前頭面において正面および背面を示すために使用されるものとすることが理解されよう。「左(left)」および「右(right)」なる用語は、矢状面または外側面において左および右を示すために使用されるものとする。「上(up)」および「下(down)」なる用語は、体軸横断面において上および下を示すために使用されるものとする。「内側(medial)」とは、身体の正中線に向かう方を示すものとすることが理解されよう。「外側、外(lateral)」とは、身体の正中線から離れる方を示すものとすることが理解されよう。「下(inferior)」とは、下部、下方または下を示すものとし、「上(superior)」とは、上部、上方または上を示すものとすることが理解されよう。「前(anterior)」とは、正面を示すものとし、「後、後方(posterior)」とは、後部または背面を示すものとすることがさらに理解されよう。
【0013】
本発明によれば、脊柱の様々な領域中の椎体のうち少なくとも一部の椎体を置換するために使用できる人工椎体が提供され、または代替として、椎体(vertebral body or corpus)全体(例えば椎骨(vertebrae)の前端にあるドラム形構造)が置換可能である人工椎体が提供される。具体的には、本発明による椎体の様々な実施形態が、腰部、胸部および頸部の脊椎領域の中で使用できる。
【0014】
図1(a)は、本発明の実施形態による人工椎体10を例示する。椎体10は、上部分12および下部分12’を有する。図1(e)に示すように、部分12および12’は、前弯の脊椎中の正常な椎体の構成に似せた概して楔形、台形の形状を有する。図1(a)に示すように、上要素12は、上部面または上面16、下部下面21、前面20および後面18それぞれ、ならびに左外側面19および右外側面17それぞれを含む。同様の面が部分12’上に設けられており、ただし、図1および図3に示すように16’、17’、18’、19’、20’および21’として示されている。部分12の前面20は、部分12’の前面20’を越えた向こうに延在してよく、その機能を以下に説明することにする。
【0015】
部分12および12’は、少なくとも1つの締結具によって共に固着されている。図1(b)および図1(e)に示すように、ねじ22、24および26の形態で3つの締結具がある。
【0016】
前面20は概して凸状であり、一方、下面21は概して凹形である。後面18も凹形である。前面または前側部20は、脊柱の中に挿入された後は、概して前に向いており、すなわち身体の正面の方へ向いており、一方、後側部18は、脊柱内に含まれる脊髄の方に向けて(身体の背面の方に向けて)配置される。椎体の上面16は、下面21より小さな寸法であってよい。同様に、上面16’は、下面21’より小さな寸法であってよく、それにより上部面と下部面の間で非対称を引き起こし、頸部脊椎中の正常な解剖学的関係に一層忠実に似せる。本発明が胸部または腰部の脊椎領域で用いられる場合には、この非対称は、あまり強調されなくてもよく、または逆にしたものでよい。
【0017】
部分12には、椎体の側面に対して凸状面20の張り出し部分28が設けられる。椎体の前(または正面)の弯曲した面の側面にある張り出し部分は、椎体の本来の外側壁に対する約90度の縁部を形成する。部分12’も同様に形成される。張り出し部分28は、外科的な椎体切除の欠損(surgical vertebrectomy defect)の中に部分12の挿入があると、脊髄の中への部分12の後方移動を妨げる。滑らかな前面は、インプラントと後咽頭壁(posterior pharyngeal wall)の間の付着を低減させることにより、手術後の嚥下障害を低減させることもできる。
【0018】
部分12および12’は、歯付きまたは凹凸状の弯曲した係止機構によって接合される。そうした機構は、部分12の下面と部分12’の上面とが相補的な歯付き表面を有する状態で設けられる。このようにして、部分12および12’が一体に配置されると、歯付き表面は、そうした表面の間のさらなる移動を妨げるように係合する。この係止機構は、部分12および12’を共に固着している締結具のうちの少なくとも1つの締結具によってしっかり締められる。本発明の一実施形態では、図1(b)および図1(e)に示すように、部分12の上面の正中線に埋め込まれるねじ22、24および26が設けられる。係止機構を緩めることにより椎体10の上部分12と椎体10の下部分12’の角度関係を調整することができる。そのようにして、椎体10の上部面16は、下部面21’と平行になされることができ、または2つの面は、互いに対して角度付けまたはオフセットできる。図1(f)は、ある面がどのようにオフセットできるのかを示す。さらに、図7〜図9は、それらの部分がどのようにオフセットできるのかを示す。これにより、脊椎の様々な区域間で前弯および後弯の角度変動を受け入れると共に、様々な人々の脊椎の変動を受け入れる。
【0019】
一実施形態では、係止機構は、概して部分12の正中線に設けられると共に部分12の上面16の中に埋め込まれる調節用締結具22、24および26からなる。図1(e)に示すように、ロッキングプレート25は、部分12と12’の間で設けられると共に、椎体の下部分12’の凸状の弯曲に隣接して位置付けられる。ねじ22、24および26の端部は、ロッキングプレート25に係合する。ロッキングプレート25は、ねじ22、24および26を受け、ナットが回転することなくしっかり後で締められるねじを受ける「袋ナット」のように働く。ねじ22、24および/または26をロッキングプレート25の中にしっかり締めることにより、それは12’の内部に対して堅く締められ、次いでこれにより、部分12の歯付きまたは凹凸状の弯曲した面21の歯27に対して係合する。歯27は、図4(a)中にさらに詳細に示される。部分12に対するねじ頭22、24および25の間の押圧と、部分12’に対するロッキングプレートからの押圧とにより、12と12’の間で歯の係合を維持し、椎体が変形することを防ぐ。ロッキングプレート25は、部分12’内で適合するように十分に幅広くまたは同程度に十分に長いものとしてよい。ロッキングプレート25は、傾斜した後の位置と傾斜した前の位置の間で部分12の角運動を可能にするように歯付きまたは凹凸状の弯曲した面21に対して設けられており、それにより椎体10の上部分12と下部分12’の角度関係の調節が可能になる。当然のことながら、そうした調節は、ねじ22、24および26を緩め、部分12および12’の歯付き表面を係合解除し、そうした部分を互いに対して移動させて所望の配置を得ることによってなされる。
【0020】
図1(e)に示すように、下部分12’の上面16’は、上部分12の弯曲した下面21に噛み合うようになされている。面16と面21の噛み合わせは、椎体10の上部分12を下部分12’から分離する境界面として与えられる。角度の変化は、人工椎体の下半分に対して上半分のある程度の並進を伴う。
【0021】
本発明の別の実施形態では、図1(f)に示すように、本発明の人工椎体が、椎体10’の部分12の純粋な並進調節をもたらすために、部分12と12’の間で設けられる第3の部分30を含んでよい。図1(f)に示すように、第3の部分30は、部分12と12’の間で追加の境界面を与える。図1(f)および図7に示すように、部分30を追加すると、「2個の構成部品」型で必要とされる大きなオフセットなしに脊椎インプラント(vertebral implant)でより後弯した角度を生成できることが理解されよう。図1(f)に示すように、弯曲の半径は、本実施形態が3つの部分12、12’および30を含み、2個の部品の設計でのものよりも弯曲を急にさせているので、より小さくなっている。しかし、この半径は、適用形態に応じて変更可能であることが理解されよう。同様に、10’(図1(f))の中に示される3つの構成部品、すなわち部分12、12’および30の寸法も、長さ、幅および高さについて変更できる。
【0022】
第3の部分30は、上部面すなわち上面30’と下部面すなわち下面30’’とを有し、それらはそれぞれ面21および面16’に係合する。上部面30’は略平坦であるが、下部面30’’は部分12’の上面16’と噛み合うように全体的に弯曲されている。そうした実施形態では、部分12の下面21は、面30’と噛み合うように構成されることが必要とされることになると理解されよう。これにより人工椎体が、より重いアライメント異常(malalignment)の疾患を治療するために一層斜めに向けられると共に後弯した形状を呈することが可能になる。本実施形態では、椎体10’は、3つの要素すなわち部分12、12’および30からなる。これらの要素は、歯付きまたは凹凸状の面を通る上述したものに類似する2組の係止機構によって固着され、それにより接触し合って2つの接触面を形成する。椎体10のある部分は、中間部分に接して後方または前方に並進する。図1(e)に示すように、部分12は、矢印Aによって示されるように前または後に移動できる。椎体10の別の部分も、中間部分に接して後方および前方に傾斜する。図1(e)に示すように、部分30は、矢印Bによって示されるように移動できる。調節ねじは、露出した椎体の上部面および下部面から埋め込まれて、部品をそれらの所望の構成で共に係止する。
【0023】
図1(e)および図2に示すように、本発明の人工椎体は、出願人の同時係属中の出願番号60/594,732(その内容全体は、参照として本明細書に組み込まれる)に記載されている椎間板などの人工椎間板と一体化または協働することができる。そうした出願に記載されているように、人工椎間板には、人工椎間板の外表面上のうちの少なくとも一方の外表面上に1つまたは複数の「安定化キール(stabilising keel)」が設けられる。図1(a)、図1(b)および図1(d)に示すように、面16上に開口35および36が設けられ、さらに下部面16’上に開口35’および36’が設けられる。開口25、36ならびに35’および36’は、締結具の開口を含み、その中を貫通して人工椎間板の終板から延在するねじなどが固定可能であり、椎間板の終板を椎体にしっかり締める。人工椎間板の終板のキールは、ねじ管を整合するように開口に嵌入する。
【0024】
図1(c)および図1(d)は、隣接または一体化している椎間板の終板の面(図1(c)参照)と人工椎体(図1(d)参照)とを例示する。人工椎間板の終板上に設けられるキール70は、椎体のスロット35および36(または35’および36’)の中に挿入される。ねじ穴には、ねじが挿入可能であり、多層の椎間板および椎体の再生の際に終板22aおよび22bを人工椎体に取り付ける。ねじ受け口23は、人工椎体の図の中および人工椎間板のキール70上に示される。図1(c)は、人工椎間板の終板の面の図であり、この人工椎間板の終板は、図1(d)に示される椎体を覆うように「カチッ」と入り、図1(d)に示される椎体と一体化する。椎間板の終板のキール70は、人工椎体の窪み35、35’、36および36’に嵌入する。一実施形態では、ねじは、上終板22bを椎体の下面16’に固定し、椎間板の下終板22aを椎体の上面16に固定する。ねじは、椎間板の終板の面の内部から挿入され、すなわち、椎間板は、終板を人工椎体に取り付けるために分解されなければならない。
【0025】
図1(a)および図1(d)ならびに図3に示すように、椎体の部分12および14のそれぞれの外側面上に設置されるフィン群からなる2組の安定化フィン40および40’が設けられる。フィン40および40’は、図1(g)に示すように、フィン設定ねじ(fin set screw)41などのフィン設定ねじの手段によって埋め込まれた位置から突き出した位置まで動く。外科的な椎体切除の欠損の中への椎体10の挿入は、フィン40および40’が埋め込まれた位置にある状態で行われる。椎体10が、適正な位置に一旦挿入されると、フィン設定ねじ41などのフィン設定ねじを締付けて、それによりフィンの組40および40’の個々のフィンが人工椎体10中のフィンの埋め込まれた位置から押し出して、周囲の骨と係合し、患者内部で残存している生まれながらの骨に対して定位置に椎骨10を固定することができる。
【0026】
フィンの組40および40’の個々のフィンは、椎体の押し出しに対して作用するように設計されている。個々のフィンは、個々のフィンの後方および人工椎体の後方に向かって先細りしているが、個々のフィンの前面に沿って椎体と垂直に角度付けられている。個々のフィンは、後方移動を妨げる人工椎体の弯曲した正面の張り出し部分とは逆に作用する。
【0027】
図3に示すように、部分12’の多孔性リザーバ(porous reservoir)45’および46’ならびに部分12の45および46(図示せず)は、部分12および12’それぞれの外側面19および21ならびに19’および21’に沿って弯曲した面20または20’の背後に設置される。リザーバ45、46、45’および46’は、中空のケージとして働き、ケージの外壁中に小さな穿孔がある。ケージは、骨の成長を促進するための物質の挿入を可能にするために、ケージの上部端および下部端で開いている。多孔性リザーバは、この骨成長物質(bone growth substance)を含み、制御された方式の中でこの骨成長物質を局所的に放出することを助け、骨が穿孔の中に能動的に成長するように促し、移植を受ける患者の脊椎の内部の正常な骨に対して人工椎体を安定化する。多孔性リザーバは、人工椎間板の終板に設置される同様のリザーバに隣接して据えることができる。人工椎体10または10’の外面は、人工装具を脊椎中の定位置に固定するように骨の内部成長を促進する多孔性またはピットのある面、複数のピン、リブ等などの様々な物理的特徴を含むことができると理解されよう。他の様々なそうした定着手段が当業者に知られているであろう。
【0028】
別の実施形態では、図4、図5および図6に示すように、椎体10の一部分中のフィン群からなる数組の安定化フィン40および40’ならびに/またはリザーバ45、46、45’および46’は、陥凹または凹みと部分的にまたは完全に代替されてもよい。これらの陥凹は、この陥凹内で受けられるようになされている人工根(artificial pedicle)のための挿入箇所として働く。根は、ある椎骨の神経弓の両側部分である。根は、椎弓板と椎体を接続する。本発明の一実施形態では、人工根は、この人工根の内部にドリルが配置され、このドリルを使用して陥凹を通って人工椎骨の椎体の中に穴を開けることができるように中空であってよい。次いでねじが、根を貫通して挿入され、人工椎体の中にしっかり締まり、人工椎体に対して人工根を固定することができる。図6(a)に示すように、人工根61の中には根締結具(pedicle fastener)60が設けられ、これは椎体70の陥凹または穴65に据えられる(図6(b)および図6(c)を再び参照)。図6(a)中でやはり見られ得るように、ドリルビット(drill bit)61は、椎体70の外側面に進行する。
【0029】
他の実施形態では、穴または陥凹は、図5に示すように椎体の一部の中にさらに延在してよく、図6に示されたように穴開けされることを必要としない根締結具用の受け口またはスリーブを形成する。図5(a)、(b)および(c)に示すように、受け口80は、一外側面から人工椎体の前面に向けてまたは人工椎体の正面の正中線に向けて概して横切るように椎体85の側部の接線方向に傾斜される。受け口80は、受け口80の壁の中に適切な寸法のねじ切りされた締結具を受けるためのねじ山を有してよい。受け口または根ねじ用スリーブ(pedicle screw sleeve)は、図5に示すように、椎体の刳り貫いた部分によって具体化でき、または分離式構成部品として形成して人工椎体の中に組み立てできる。
【0030】
図4(a)〜図4(d)に示すように、受け口または根ねじ用スリーブ100は、分離式構成部品として形成され、人工椎体の中に組み立て可能である。スリーブの上部面および下部面から起立している柱102および104は、(図1(d)に示すように)人工椎体の内部に埋め込まれるヒンジとして働くことができ、その結果、根用スリーブ100は柱の周りに回転できる。これにより根ねじ用スリーブ100は、(図1(d)に示すように)様々な角度から根ねじを受け入れることが可能になる。根ねじ用受け口の外端は広げられおり、それにより人工根は、根ねじ用受け口の中に挿入され、この受け口および人工椎体に対して人工根を定位置に係止することができる。
【0031】
根ねじ用受け口の上部面および下部面から起立している柱は、人工椎体中で正面から背面の方へ延びている埋め込まれた溝の中に埋設できる。この溝は軌道を与え、この軌道に沿って根用スリーブは、柱の周りの角運動を維持しながら人工椎体に対して前方または後方に動くことができる。
【0032】
溝は、人工根が人工椎体に一旦固定されたらその人工根が前方または後方に動くことを妨げるように、(正面から背面の方へ)内側または外側に傾斜されてよい。人工根は、それらの人工椎体への接続に加えて、後から直接的または間接的に互いに接続されることになると理解されよう。この追加の接続により、椎体の両側にある反対に向いている溝の内部でそれらの柱に沿って人工根が滑動することを防ぐ。
【0033】
さらに、人工椎体の壁の中に組み込まれる分離式矩形区画が、根ねじ用スリーブを含んでいる溝を収容してよい。この矩形ハウジングは、端部それぞれでその中に突出している2つのサイドレールによって人工椎体に接続可能である。このサイドレール(溝の中のトング)は、ハウジングが人工椎体の外部または内部へ突出することを防ぐが、ハウジングが人工椎体の壁の内側で上方または下方に移動することは許容する。これは、図4bおよび図4dに例示されている。
【0034】
サイドレールは、人工根が人工椎体に一旦固定されたら矩形区画が動くことを妨げるように、(上部から下方へ)人工椎体の中央の方向に入るように、または側部の方へ出るように傾斜されてよい。人工根は、それらの人工椎体への接続に加えて、後から直接的または間接的に互いに接続されることになると理解されよう。この追加の接続により、人工根およびそれらのそれぞれの矩形のハウジングが、人工椎体の両側にある反対に向いているレールに接して上下に滑動することを防ぐ。
【0035】
人工椎体を人工椎間板と共に使用して脊柱中の多層を再生することができる。人工椎体は、様々な幅、高さおよび深さで製作可能である。
【0036】
本発明をある具体的な実施形態を参照して説明してきたが、本明細書で概説された本発明の目的および範囲から逸脱することなしに本発明の様々な修正形態が当業者には明らかであろう。上述した参照全ての全開示は、参照として本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)〜(g)は、本発明の実施形態の図である。
【図2】本発明の実施形態の側面図である。
【図3】本発明の実施形態の斜視図である。
【図4】図4(a)〜(d)は、本発明の実施形態の図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、本発明の実施形態の図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、本発明の実施形態の図である。
【図7】本発明の実施形態の側面図である。
【図7a】本発明の実施形態の側面図である。
【図7b】本発明の実施形態の側面図である。
【図8】本発明の実施形態の側面図である。
【図8a】本発明の実施形態の側面図である。
【図9】本発明の実施形態の側面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、様々な種類の脊椎病変を治療するための装置および外科的方法に関する。より詳細には、本発明は、椎体の置換およびそうした置換を行うための手順に関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎は、4つの自然な弯曲を有し、すなわち2つは前弯(lordotic)であり、2つは後弯(kyphotic)である。頸部および腰部の弯曲は前弯であり、一方、胸部および仙骨の弯曲は後弯である。脊椎のこれらの弯曲は、身体が動く際に機械的応力を分散するのに役立つが、極度の弯曲が存在する疾患が発現する可能性がある。例えば、脊椎の上部または胸部領域は、正常には前方へ弯曲しているが、弯曲が50°を超える場合には、それは異常または「後弯症(kyphotic)」とみなされる。前弯症(Lordosis)は、腰部脊椎の正常な前弯した弯曲の異常増大であり、すなわち過度の前弯症は、腰背部で極度の内側への弯曲を引き起こす可能性がある。
【0003】
脊椎の疾患または異常を治療するための技術、器具類およびインプラントは、外傷、病気または先天的な影響により発生する可能性のある多様な形の脊椎の損傷および変形に対処するようになされてきた。脊椎の変形の一種、後弯症には、椎体自体の破壊によってしばしば引き起こされる身体の正面に向かう脊柱の脱出が含まれる。
【0004】
いくつかの事象は、脊椎を歪める可能性があり、それにより深刻化した後弯症または過前弯症(hyper−lordosis)のような疾患がもたらされる。脊椎の自然な傾向は弯曲することなので、脊椎の任意の構成要素または支持構造の中の弱さにより、そうした疾患につながる可能性がある。例えば、病気にかかった胸椎は、通常まず胸椎の前縁が砕かれ、それにより後弯した弯曲の増大をもたらすことになる。これをもたらし得る疾患には、癌、結核、ショイエルマン病(Scheuermann’s disease)およびある種の関節炎が含まれる。健康な椎骨は、自動車事故中など、急激な減速による損傷によって前方へ骨折する可能性がある。骨粗鬆症も、そうした疾患に寄与する可能性がある。あらゆるこれらの疾患およびそれらの根底にある病因の結果として、椎体の置換を考慮することが必要になる可能性がある。
【0005】
上記の理由により少なくとも椎体の一部分を置換することが必要な場合には、先の技術は、重合性ペースト(polymerizable paste)または移植骨片を用いて椎体のその部分の再生を必要としてきたものであり、この移植骨片はしばしば、損なわれていない椎体の形状を移植骨片に与えるように形作られる。しばしば、腸骨から摘出される骨などの自家骨(autologous bone)が、空間を埋めるために使用される。重合性ペーストは、PMMA骨セメント(PMMA bone cement)を含むことができる。脊柱の様々な部分の構造上の欠陥に対処するための様々な人工器具も、開発されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
様々な脊椎の病気を引き起こす、または様々な脊椎の病気の結果である損傷した椎体および/または病気にかかった椎体は、置換することが必要であるが、しかし、先の器具および技術には、いくつかの欠点がある。先の器具および技術は、病気にかかった体節の間に融合(fusion)を引き起こすことにより隣接する椎体の間で支持を行うように形成されてしまうものであり、それにより脊柱中の動きが排除される。脊椎の動く範囲を減少させることに加えて、これは、融合部位の上下の脊椎の関節の早過ぎる劣化を引き起こす可能性もある。また、先の器具および技術は、それらを定位置に固定するために脊椎の正面または背面で追加の器具類を必要とする。
【0007】
一態様では、本発明によれば、先の器具および技術の欠陥のうち少なくともいくつかの欠陥を取り除きまたは軽減する人工椎体が提供される。
【0008】
一態様では、本発明によれば、脊椎中で自然に発生している椎体を置換する椎体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、一態様では、本発明によれば、
上部分および下部分を備え、この上部分および下部分それぞれが上面、下面および外側部を有し、
この下部分の上面が、この上部分の下面に接触および確動係合(positive engagement)し、
この上部分の上面およびこの下部分の下面が、隣接する脊椎構造に係合するための1つまたは複数の係合手段を有する人工椎体が提供される。
【0010】
本発明の様々な目的、特徴および付随する利点は、添付図面と併せて考察されるとより十分に認識され、より良く理解されよう。図面中、同じ参照符号は、数枚の図を通して同一または類似の部分を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明をより十分に理解可能にするために、次に添付図面を参照して例をあげて説明することにする。ここで図1〜図9は、本発明のある実施形態を例示する。
【0012】
本明細書中の説明および図では、特に断りの無い限り、図面の解剖図を論じる際には、「正面(front)」および「背面(back)」なる用語は、冠状面または前頭面において正面および背面を示すために使用されるものとすることが理解されよう。「左(left)」および「右(right)」なる用語は、矢状面または外側面において左および右を示すために使用されるものとする。「上(up)」および「下(down)」なる用語は、体軸横断面において上および下を示すために使用されるものとする。「内側(medial)」とは、身体の正中線に向かう方を示すものとすることが理解されよう。「外側、外(lateral)」とは、身体の正中線から離れる方を示すものとすることが理解されよう。「下(inferior)」とは、下部、下方または下を示すものとし、「上(superior)」とは、上部、上方または上を示すものとすることが理解されよう。「前(anterior)」とは、正面を示すものとし、「後、後方(posterior)」とは、後部または背面を示すものとすることがさらに理解されよう。
【0013】
本発明によれば、脊柱の様々な領域中の椎体のうち少なくとも一部の椎体を置換するために使用できる人工椎体が提供され、または代替として、椎体(vertebral body or corpus)全体(例えば椎骨(vertebrae)の前端にあるドラム形構造)が置換可能である人工椎体が提供される。具体的には、本発明による椎体の様々な実施形態が、腰部、胸部および頸部の脊椎領域の中で使用できる。
【0014】
図1(a)は、本発明の実施形態による人工椎体10を例示する。椎体10は、上部分12および下部分12’を有する。図1(e)に示すように、部分12および12’は、前弯の脊椎中の正常な椎体の構成に似せた概して楔形、台形の形状を有する。図1(a)に示すように、上要素12は、上部面または上面16、下部下面21、前面20および後面18それぞれ、ならびに左外側面19および右外側面17それぞれを含む。同様の面が部分12’上に設けられており、ただし、図1および図3に示すように16’、17’、18’、19’、20’および21’として示されている。部分12の前面20は、部分12’の前面20’を越えた向こうに延在してよく、その機能を以下に説明することにする。
【0015】
部分12および12’は、少なくとも1つの締結具によって共に固着されている。図1(b)および図1(e)に示すように、ねじ22、24および26の形態で3つの締結具がある。
【0016】
前面20は概して凸状であり、一方、下面21は概して凹形である。後面18も凹形である。前面または前側部20は、脊柱の中に挿入された後は、概して前に向いており、すなわち身体の正面の方へ向いており、一方、後側部18は、脊柱内に含まれる脊髄の方に向けて(身体の背面の方に向けて)配置される。椎体の上面16は、下面21より小さな寸法であってよい。同様に、上面16’は、下面21’より小さな寸法であってよく、それにより上部面と下部面の間で非対称を引き起こし、頸部脊椎中の正常な解剖学的関係に一層忠実に似せる。本発明が胸部または腰部の脊椎領域で用いられる場合には、この非対称は、あまり強調されなくてもよく、または逆にしたものでよい。
【0017】
部分12には、椎体の側面に対して凸状面20の張り出し部分28が設けられる。椎体の前(または正面)の弯曲した面の側面にある張り出し部分は、椎体の本来の外側壁に対する約90度の縁部を形成する。部分12’も同様に形成される。張り出し部分28は、外科的な椎体切除の欠損(surgical vertebrectomy defect)の中に部分12の挿入があると、脊髄の中への部分12の後方移動を妨げる。滑らかな前面は、インプラントと後咽頭壁(posterior pharyngeal wall)の間の付着を低減させることにより、手術後の嚥下障害を低減させることもできる。
【0018】
部分12および12’は、歯付きまたは凹凸状の弯曲した係止機構によって接合される。そうした機構は、部分12の下面と部分12’の上面とが相補的な歯付き表面を有する状態で設けられる。このようにして、部分12および12’が一体に配置されると、歯付き表面は、そうした表面の間のさらなる移動を妨げるように係合する。この係止機構は、部分12および12’を共に固着している締結具のうちの少なくとも1つの締結具によってしっかり締められる。本発明の一実施形態では、図1(b)および図1(e)に示すように、部分12の上面の正中線に埋め込まれるねじ22、24および26が設けられる。係止機構を緩めることにより椎体10の上部分12と椎体10の下部分12’の角度関係を調整することができる。そのようにして、椎体10の上部面16は、下部面21’と平行になされることができ、または2つの面は、互いに対して角度付けまたはオフセットできる。図1(f)は、ある面がどのようにオフセットできるのかを示す。さらに、図7〜図9は、それらの部分がどのようにオフセットできるのかを示す。これにより、脊椎の様々な区域間で前弯および後弯の角度変動を受け入れると共に、様々な人々の脊椎の変動を受け入れる。
【0019】
一実施形態では、係止機構は、概して部分12の正中線に設けられると共に部分12の上面16の中に埋め込まれる調節用締結具22、24および26からなる。図1(e)に示すように、ロッキングプレート25は、部分12と12’の間で設けられると共に、椎体の下部分12’の凸状の弯曲に隣接して位置付けられる。ねじ22、24および26の端部は、ロッキングプレート25に係合する。ロッキングプレート25は、ねじ22、24および26を受け、ナットが回転することなくしっかり後で締められるねじを受ける「袋ナット」のように働く。ねじ22、24および/または26をロッキングプレート25の中にしっかり締めることにより、それは12’の内部に対して堅く締められ、次いでこれにより、部分12の歯付きまたは凹凸状の弯曲した面21の歯27に対して係合する。歯27は、図4(a)中にさらに詳細に示される。部分12に対するねじ頭22、24および25の間の押圧と、部分12’に対するロッキングプレートからの押圧とにより、12と12’の間で歯の係合を維持し、椎体が変形することを防ぐ。ロッキングプレート25は、部分12’内で適合するように十分に幅広くまたは同程度に十分に長いものとしてよい。ロッキングプレート25は、傾斜した後の位置と傾斜した前の位置の間で部分12の角運動を可能にするように歯付きまたは凹凸状の弯曲した面21に対して設けられており、それにより椎体10の上部分12と下部分12’の角度関係の調節が可能になる。当然のことながら、そうした調節は、ねじ22、24および26を緩め、部分12および12’の歯付き表面を係合解除し、そうした部分を互いに対して移動させて所望の配置を得ることによってなされる。
【0020】
図1(e)に示すように、下部分12’の上面16’は、上部分12の弯曲した下面21に噛み合うようになされている。面16と面21の噛み合わせは、椎体10の上部分12を下部分12’から分離する境界面として与えられる。角度の変化は、人工椎体の下半分に対して上半分のある程度の並進を伴う。
【0021】
本発明の別の実施形態では、図1(f)に示すように、本発明の人工椎体が、椎体10’の部分12の純粋な並進調節をもたらすために、部分12と12’の間で設けられる第3の部分30を含んでよい。図1(f)に示すように、第3の部分30は、部分12と12’の間で追加の境界面を与える。図1(f)および図7に示すように、部分30を追加すると、「2個の構成部品」型で必要とされる大きなオフセットなしに脊椎インプラント(vertebral implant)でより後弯した角度を生成できることが理解されよう。図1(f)に示すように、弯曲の半径は、本実施形態が3つの部分12、12’および30を含み、2個の部品の設計でのものよりも弯曲を急にさせているので、より小さくなっている。しかし、この半径は、適用形態に応じて変更可能であることが理解されよう。同様に、10’(図1(f))の中に示される3つの構成部品、すなわち部分12、12’および30の寸法も、長さ、幅および高さについて変更できる。
【0022】
第3の部分30は、上部面すなわち上面30’と下部面すなわち下面30’’とを有し、それらはそれぞれ面21および面16’に係合する。上部面30’は略平坦であるが、下部面30’’は部分12’の上面16’と噛み合うように全体的に弯曲されている。そうした実施形態では、部分12の下面21は、面30’と噛み合うように構成されることが必要とされることになると理解されよう。これにより人工椎体が、より重いアライメント異常(malalignment)の疾患を治療するために一層斜めに向けられると共に後弯した形状を呈することが可能になる。本実施形態では、椎体10’は、3つの要素すなわち部分12、12’および30からなる。これらの要素は、歯付きまたは凹凸状の面を通る上述したものに類似する2組の係止機構によって固着され、それにより接触し合って2つの接触面を形成する。椎体10のある部分は、中間部分に接して後方または前方に並進する。図1(e)に示すように、部分12は、矢印Aによって示されるように前または後に移動できる。椎体10の別の部分も、中間部分に接して後方および前方に傾斜する。図1(e)に示すように、部分30は、矢印Bによって示されるように移動できる。調節ねじは、露出した椎体の上部面および下部面から埋め込まれて、部品をそれらの所望の構成で共に係止する。
【0023】
図1(e)および図2に示すように、本発明の人工椎体は、出願人の同時係属中の出願番号60/594,732(その内容全体は、参照として本明細書に組み込まれる)に記載されている椎間板などの人工椎間板と一体化または協働することができる。そうした出願に記載されているように、人工椎間板には、人工椎間板の外表面上のうちの少なくとも一方の外表面上に1つまたは複数の「安定化キール(stabilising keel)」が設けられる。図1(a)、図1(b)および図1(d)に示すように、面16上に開口35および36が設けられ、さらに下部面16’上に開口35’および36’が設けられる。開口25、36ならびに35’および36’は、締結具の開口を含み、その中を貫通して人工椎間板の終板から延在するねじなどが固定可能であり、椎間板の終板を椎体にしっかり締める。人工椎間板の終板のキールは、ねじ管を整合するように開口に嵌入する。
【0024】
図1(c)および図1(d)は、隣接または一体化している椎間板の終板の面(図1(c)参照)と人工椎体(図1(d)参照)とを例示する。人工椎間板の終板上に設けられるキール70は、椎体のスロット35および36(または35’および36’)の中に挿入される。ねじ穴には、ねじが挿入可能であり、多層の椎間板および椎体の再生の際に終板22aおよび22bを人工椎体に取り付ける。ねじ受け口23は、人工椎体の図の中および人工椎間板のキール70上に示される。図1(c)は、人工椎間板の終板の面の図であり、この人工椎間板の終板は、図1(d)に示される椎体を覆うように「カチッ」と入り、図1(d)に示される椎体と一体化する。椎間板の終板のキール70は、人工椎体の窪み35、35’、36および36’に嵌入する。一実施形態では、ねじは、上終板22bを椎体の下面16’に固定し、椎間板の下終板22aを椎体の上面16に固定する。ねじは、椎間板の終板の面の内部から挿入され、すなわち、椎間板は、終板を人工椎体に取り付けるために分解されなければならない。
【0025】
図1(a)および図1(d)ならびに図3に示すように、椎体の部分12および14のそれぞれの外側面上に設置されるフィン群からなる2組の安定化フィン40および40’が設けられる。フィン40および40’は、図1(g)に示すように、フィン設定ねじ(fin set screw)41などのフィン設定ねじの手段によって埋め込まれた位置から突き出した位置まで動く。外科的な椎体切除の欠損の中への椎体10の挿入は、フィン40および40’が埋め込まれた位置にある状態で行われる。椎体10が、適正な位置に一旦挿入されると、フィン設定ねじ41などのフィン設定ねじを締付けて、それによりフィンの組40および40’の個々のフィンが人工椎体10中のフィンの埋め込まれた位置から押し出して、周囲の骨と係合し、患者内部で残存している生まれながらの骨に対して定位置に椎骨10を固定することができる。
【0026】
フィンの組40および40’の個々のフィンは、椎体の押し出しに対して作用するように設計されている。個々のフィンは、個々のフィンの後方および人工椎体の後方に向かって先細りしているが、個々のフィンの前面に沿って椎体と垂直に角度付けられている。個々のフィンは、後方移動を妨げる人工椎体の弯曲した正面の張り出し部分とは逆に作用する。
【0027】
図3に示すように、部分12’の多孔性リザーバ(porous reservoir)45’および46’ならびに部分12の45および46(図示せず)は、部分12および12’それぞれの外側面19および21ならびに19’および21’に沿って弯曲した面20または20’の背後に設置される。リザーバ45、46、45’および46’は、中空のケージとして働き、ケージの外壁中に小さな穿孔がある。ケージは、骨の成長を促進するための物質の挿入を可能にするために、ケージの上部端および下部端で開いている。多孔性リザーバは、この骨成長物質(bone growth substance)を含み、制御された方式の中でこの骨成長物質を局所的に放出することを助け、骨が穿孔の中に能動的に成長するように促し、移植を受ける患者の脊椎の内部の正常な骨に対して人工椎体を安定化する。多孔性リザーバは、人工椎間板の終板に設置される同様のリザーバに隣接して据えることができる。人工椎体10または10’の外面は、人工装具を脊椎中の定位置に固定するように骨の内部成長を促進する多孔性またはピットのある面、複数のピン、リブ等などの様々な物理的特徴を含むことができると理解されよう。他の様々なそうした定着手段が当業者に知られているであろう。
【0028】
別の実施形態では、図4、図5および図6に示すように、椎体10の一部分中のフィン群からなる数組の安定化フィン40および40’ならびに/またはリザーバ45、46、45’および46’は、陥凹または凹みと部分的にまたは完全に代替されてもよい。これらの陥凹は、この陥凹内で受けられるようになされている人工根(artificial pedicle)のための挿入箇所として働く。根は、ある椎骨の神経弓の両側部分である。根は、椎弓板と椎体を接続する。本発明の一実施形態では、人工根は、この人工根の内部にドリルが配置され、このドリルを使用して陥凹を通って人工椎骨の椎体の中に穴を開けることができるように中空であってよい。次いでねじが、根を貫通して挿入され、人工椎体の中にしっかり締まり、人工椎体に対して人工根を固定することができる。図6(a)に示すように、人工根61の中には根締結具(pedicle fastener)60が設けられ、これは椎体70の陥凹または穴65に据えられる(図6(b)および図6(c)を再び参照)。図6(a)中でやはり見られ得るように、ドリルビット(drill bit)61は、椎体70の外側面に進行する。
【0029】
他の実施形態では、穴または陥凹は、図5に示すように椎体の一部の中にさらに延在してよく、図6に示されたように穴開けされることを必要としない根締結具用の受け口またはスリーブを形成する。図5(a)、(b)および(c)に示すように、受け口80は、一外側面から人工椎体の前面に向けてまたは人工椎体の正面の正中線に向けて概して横切るように椎体85の側部の接線方向に傾斜される。受け口80は、受け口80の壁の中に適切な寸法のねじ切りされた締結具を受けるためのねじ山を有してよい。受け口または根ねじ用スリーブ(pedicle screw sleeve)は、図5に示すように、椎体の刳り貫いた部分によって具体化でき、または分離式構成部品として形成して人工椎体の中に組み立てできる。
【0030】
図4(a)〜図4(d)に示すように、受け口または根ねじ用スリーブ100は、分離式構成部品として形成され、人工椎体の中に組み立て可能である。スリーブの上部面および下部面から起立している柱102および104は、(図1(d)に示すように)人工椎体の内部に埋め込まれるヒンジとして働くことができ、その結果、根用スリーブ100は柱の周りに回転できる。これにより根ねじ用スリーブ100は、(図1(d)に示すように)様々な角度から根ねじを受け入れることが可能になる。根ねじ用受け口の外端は広げられおり、それにより人工根は、根ねじ用受け口の中に挿入され、この受け口および人工椎体に対して人工根を定位置に係止することができる。
【0031】
根ねじ用受け口の上部面および下部面から起立している柱は、人工椎体中で正面から背面の方へ延びている埋め込まれた溝の中に埋設できる。この溝は軌道を与え、この軌道に沿って根用スリーブは、柱の周りの角運動を維持しながら人工椎体に対して前方または後方に動くことができる。
【0032】
溝は、人工根が人工椎体に一旦固定されたらその人工根が前方または後方に動くことを妨げるように、(正面から背面の方へ)内側または外側に傾斜されてよい。人工根は、それらの人工椎体への接続に加えて、後から直接的または間接的に互いに接続されることになると理解されよう。この追加の接続により、椎体の両側にある反対に向いている溝の内部でそれらの柱に沿って人工根が滑動することを防ぐ。
【0033】
さらに、人工椎体の壁の中に組み込まれる分離式矩形区画が、根ねじ用スリーブを含んでいる溝を収容してよい。この矩形ハウジングは、端部それぞれでその中に突出している2つのサイドレールによって人工椎体に接続可能である。このサイドレール(溝の中のトング)は、ハウジングが人工椎体の外部または内部へ突出することを防ぐが、ハウジングが人工椎体の壁の内側で上方または下方に移動することは許容する。これは、図4bおよび図4dに例示されている。
【0034】
サイドレールは、人工根が人工椎体に一旦固定されたら矩形区画が動くことを妨げるように、(上部から下方へ)人工椎体の中央の方向に入るように、または側部の方へ出るように傾斜されてよい。人工根は、それらの人工椎体への接続に加えて、後から直接的または間接的に互いに接続されることになると理解されよう。この追加の接続により、人工根およびそれらのそれぞれの矩形のハウジングが、人工椎体の両側にある反対に向いているレールに接して上下に滑動することを防ぐ。
【0035】
人工椎体を人工椎間板と共に使用して脊柱中の多層を再生することができる。人工椎体は、様々な幅、高さおよび深さで製作可能である。
【0036】
本発明をある具体的な実施形態を参照して説明してきたが、本明細書で概説された本発明の目的および範囲から逸脱することなしに本発明の様々な修正形態が当業者には明らかであろう。上述した参照全ての全開示は、参照として本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)〜(g)は、本発明の実施形態の図である。
【図2】本発明の実施形態の側面図である。
【図3】本発明の実施形態の斜視図である。
【図4】図4(a)〜(d)は、本発明の実施形態の図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、本発明の実施形態の図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、本発明の実施形態の図である。
【図7】本発明の実施形態の側面図である。
【図7a】本発明の実施形態の側面図である。
【図7b】本発明の実施形態の側面図である。
【図8】本発明の実施形態の側面図である。
【図8a】本発明の実施形態の側面図である。
【図9】本発明の実施形態の側面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部分および下部分を備え、前記上部分および前記下部分それぞれが上面、下面および外側部を有し、
前記下部分の前記上面が、前記上部分の前記下面に接触および確動係合し、
前記上部分の前記上面および前記下部分の前記下面が、隣接する脊椎構造に係合するための1つまたは複数の係合手段を有する、
人工椎体。
【請求項2】
前記確動係合が、1つまたは複数の係合手段によって形成される、請求項1に記載の椎体。
【請求項3】
前記係合手段が、協働した歯付き表面を有している前記下部分の前記上面および前記上部分の前記下面を備える、請求項2に記載の椎体。
【請求項4】
前記係合手段が、複数の前記部分の一方から複数の前記部分の他方まで延在している1つまたは複数のねじをさらに備える、請求項3に記載の椎体。
【請求項5】
矢状面についての前記上部分および前記下部分の相対位置が、前記係合手段を解除および再係合することによって変更可能である、請求項4に記載の椎体。
【請求項6】
前記椎体の前面が冠状面について凸状に弯曲している、請求項5に記載の椎体。
【請求項7】
前記椎体の後面が略平坦である、請求項6に記載の椎体。
【請求項8】
前記上部分の前記上面または前記下部分の前記下面のうち少なくとも1つの面が、隣接する人工面に係合するための手段を含む、請求項7に記載の椎体。
【請求項9】
前記椎体が、隣接する骨構造に係合するための外側に突き出すフィンを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の椎体。
【請求項10】
前記フィンが、突き出し自在である、請求項9に記載の椎体。
【請求項11】
前記椎体が、前記フィンを突き出すための1つまたは複数の調節ねじを含む、請求項10に記載の椎体。
【請求項12】
前記フィンが、前記椎体の外側部上に設けられる、請求項11に記載の椎体。
【請求項13】
前記椎体の1つまたは複数の外面が、1つまたは複数の物理的および/または化学的な骨成長促進因子を含む、請求項12に記載の椎体。
【請求項14】
前記1つまたは複数の外面が、1つまたは複数の骨成長促進化合物を保持または放出するためのリザーバを含む、請求項13に記載の椎体。
【請求項1】
上部分および下部分を備え、前記上部分および前記下部分それぞれが上面、下面および外側部を有し、
前記下部分の前記上面が、前記上部分の前記下面に接触および確動係合し、
前記上部分の前記上面および前記下部分の前記下面が、隣接する脊椎構造に係合するための1つまたは複数の係合手段を有する、
人工椎体。
【請求項2】
前記確動係合が、1つまたは複数の係合手段によって形成される、請求項1に記載の椎体。
【請求項3】
前記係合手段が、協働した歯付き表面を有している前記下部分の前記上面および前記上部分の前記下面を備える、請求項2に記載の椎体。
【請求項4】
前記係合手段が、複数の前記部分の一方から複数の前記部分の他方まで延在している1つまたは複数のねじをさらに備える、請求項3に記載の椎体。
【請求項5】
矢状面についての前記上部分および前記下部分の相対位置が、前記係合手段を解除および再係合することによって変更可能である、請求項4に記載の椎体。
【請求項6】
前記椎体の前面が冠状面について凸状に弯曲している、請求項5に記載の椎体。
【請求項7】
前記椎体の後面が略平坦である、請求項6に記載の椎体。
【請求項8】
前記上部分の前記上面または前記下部分の前記下面のうち少なくとも1つの面が、隣接する人工面に係合するための手段を含む、請求項7に記載の椎体。
【請求項9】
前記椎体が、隣接する骨構造に係合するための外側に突き出すフィンを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の椎体。
【請求項10】
前記フィンが、突き出し自在である、請求項9に記載の椎体。
【請求項11】
前記椎体が、前記フィンを突き出すための1つまたは複数の調節ねじを含む、請求項10に記載の椎体。
【請求項12】
前記フィンが、前記椎体の外側部上に設けられる、請求項11に記載の椎体。
【請求項13】
前記椎体の1つまたは複数の外面が、1つまたは複数の物理的および/または化学的な骨成長促進因子を含む、請求項12に記載の椎体。
【請求項14】
前記1つまたは複数の外面が、1つまたは複数の骨成長促進化合物を保持または放出するためのリザーバを含む、請求項13に記載の椎体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図8a】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図8a】
【図9】
【公表番号】特表2008−539828(P2008−539828A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509276(P2008−509276)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【国際出願番号】PCT/CA2006/000675
【国際公開番号】WO2006/116850
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(507359937)キネティック スパイン テクノロジーズ インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【国際出願番号】PCT/CA2006/000675
【国際公開番号】WO2006/116850
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(507359937)キネティック スパイン テクノロジーズ インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】
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