説明

人工毛髪用繊維、及び、その製造方法

【課題】光沢の特性がよく、しかも溶融紡糸時に糸切れの少ない人工毛髪用繊維を提供する。
【解決手段】架橋アクリル粒子を含有した塩化ビニル系組成物からなり、以下の(1)と(2)を具備する人工毛髪用繊維。(1)塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、架橋アクリル粒子0.5〜5質量部を含有する。(2)架橋アクリル粒子の平均粒子径が、1〜10μmである。さらに、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、ハイドロタルサイト系熱安定剤、Ca−Zn系熱安定剤、エポキシ系熱安定剤、有機ホスファイト系熱安定剤、β―ジケトン系熱安定剤から選ばれる1種又は2種以上の熱安定剤成分を合計で0.1〜10質量部含有してなる塩化ビニル系組成物からなる人工毛髪用繊維である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィッグ、ヘアピース、ブレード、エクステンションヘアー等の頭髪装飾用の塩化ビニル系人工毛髪用繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から頭髪用の人工毛髪用繊維として使用される合成繊維には、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、塩化ビニル系繊維等の合成繊維があったが、特に塩化ビニル系繊維は、強度、伸度、透明性及びカール保持性等が優れているので、頭髪用の人工毛髪用繊維として多く使用されている。人工毛髪用繊維としては、易セット性、セット保持性、櫛通り性、光による退色が少ないなどの特性のほか、特に人毛に近い適度な艶消し性と色が必要とされる。溶融紡糸法で得られる塩化ビニル系繊維は繊維表面が平滑で光沢があるため、人工毛髪用繊維として使用する場合、プラスチック感が強く感じられ好まれない場合があった。
【0003】
艶(光沢)を調整する方法として、繊維表面を強塩基などでエッジングする方法(特許文献1を参照。)、及び、無機系粒子を添加する方法(特許文献2を参照。)が提案されている。艶消し効果は発現するが、長時間にわたる安定的な紡糸性に問題がある場合があった。
【特許文献1】特開昭63−127166号公報
【特許文献2】特開2004−244770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、艶(光沢)がコントロールされた塩化ビニル系人工毛髪用繊維を提供すると共に、該繊維を製造する際の糸切れに伴うトラブルを防止し、安定的に生産可能な人工毛髪用繊維、及び、製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、架橋アクリル粒子を含有した塩化ビニル系組成物からなり、以下の(1)と(2)を具備する人工毛髪用繊維である。
(1)塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、架橋アクリル粒子0.5〜5質量部を含有する。
(2)架橋アクリル粒子の平均粒子径が、1〜10μmである。
【0006】
さらに、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、ハイドロタルサイト系熱安定剤、Ca−Zn系熱安定剤、エポキシ系熱安定剤、有機ホスファイト系熱安定剤、β―ジケトン系熱安定剤から選ばれる1種又は2種以上の熱安定剤成分を合計で0.1〜10質量部含有してなる塩化ビニル系組成物からなる人工毛髪用繊維である。又、塩化ビニル系組成物を溶融紡糸するに際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のマルチタイプのノズル孔から溶融、流出せしめる人工毛髪用繊維の製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に使用される塩化ビニル系樹脂は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等によって得られたものであるが、繊維の初期着色性等を勘案して、懸濁重合によって製造したものを使用するのが好ましい。塩化ビニル系樹脂とは、従来公知の塩化ビニルの単独重合物であるホモポリマー樹脂、または従来公知の各種のコポリマー樹脂であり、特に限定されるものではない。該コポリマー樹脂としては、従来公知のコポリマー樹脂を使用でき、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとビニルエステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸ブチルコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸2エチルヘキシルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとアクリル酸エステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−エチレンコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピレンコポリマー樹脂などの塩化ビニルとオレフィン類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー樹脂などが代表的に例示される。特に好ましくは、塩化ビニルの単独重合物であるホモポリマー樹脂、塩化ビニル−エチレンコポリマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー樹脂などを使用するのが良い。該コポリマー樹脂において、コモノマーの含有量は特に限定されず、成型加工性、糸特性などの要求品質に応じて決めることができる。
【0008】
塩化ビニル系樹脂の粘度平均重合度は、600〜2500であることが好ましい。塩化ビニル系樹脂の粘度平均重合度が600未満であると、溶融粘度が低下するので、得られた塩化ビニル系繊維は熱収縮しやすくなる恐れが有る。一方、塩化ビニル系樹脂の粘度平均重合度が2500を超えると、塩化ビニル系樹脂の溶融粘度が高くなるので、ノズル圧力が高くなり、そのために、安定して人工毛髪用繊維を製造することができなくなる恐れが有る。粘度平均重合度は、樹脂200mgをニトロベンゼン50mlに溶解させ、このポリマー溶液を30℃恒温槽中、ウベローデ型粘度計を用いて比粘度を測定し、JIS−K6720‐2により算出したものである。
【0009】
本発明に使用される架橋アクリル粒子は、有機化合物で、架橋構造を有し、過熱されても粒子形状を維持できるものである。架橋アクリル粒子の平均粒子径は1〜10μmである、好ましくは、1〜5μmである。架橋アクリル粒子の平均粒子径が1μm未満であると、得られた繊維は艶消し状態にならない場合がある。一方、架橋アクリル粒子の平均粒子径が10μmを超えると、得られた繊維が紡糸工程で糸切れが生じやすくなる恐れがある。架橋アクリル粒子が前記範囲内の粒子径であると、塩化ビニル系樹脂で凝集することなく、良好に分散され、得られた繊維の艶調整の効果が高くなる。平均粒子径は、レーザ回析法による粒子分布測定に基づく値である。粒子分布測定機としては、例えば、ベックマンコールター社製商品名「モデルLS―230」がある。
【0010】
架橋アクリル粒子は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し0.5〜5質量部を含有する。好ましくは、1〜3質量部である。この範囲で、架橋アクリル粒子を含有することで、発色性の低下を招くことなく、繊維の艶を調整することができる。架橋アクリル粒子が0.5質量部未満では、十分な艶消し効果が得られない場合がある。一方、架橋アクリル粒子が5質量部を超えると、紡糸性が悪くなる合がある。
【0011】
架橋アクリル粒子は、アクリル系単量体と架橋剤を水分散させ、架橋硬化させることで得られる。ここで使用されるアクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸やアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸プロポキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸メトキシジエチレングリコール、アクリル酸フエノキシエチル、アクリル酸フエノキシジエチレングリコール、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フエニルオキシプロピル、アクリロニトリル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等アクリル酸の誘導体、メタクリル酸やメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸プロポキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸フエノキシエチル、メタクリル酸フエノキシジエチレングリコール、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸N−ビニル−2−ピロリドン、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシ−3−フエニルオキシプロピル等のメタクリ中に2個のビニル基を有するものが好ましい。その好ましい単量体としては、ル酸の誘導体、ビニルピリジン等の1分子中に1個のビニル基を有するビニル系単量体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0012】
また、架橋剤としては1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体であればいずれでもよいが、1分子例えば、ジビニルベンゼン、グリコールとメタクリル酸あるいはアクリル酸との反応生成物、例えばエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,5−ペンタンジオールメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート等があるが、これらに限定されるものではない。その添加量は、ビニル基を1個有する単量体100質量部に対して0.02質量部以上5質量部以下が好ましい。重合開始剤としては、過酸化物系ラジカル重合開始剤が好ましく、例えば、過酸化ベンゾイル、過安息香酸2−エチルヘキシル、過酸化アセチル、過酸化イソブチリル、過酸化オクタノイル、過酸化ラウロイル、過酸化ジtert−ブチル、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、4,4,6−トリメチルシクロヘキサノンジtert−ブチルペルオキシケタール、シクロヘキサノンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、シクロヘキサノンジ−tert−ブチルペルオキシケタール、アセトンジ−tert−ブチルペルオキシケタール、ジイソプロピルヒドロペルオキシド等が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、ビニル基を1個有する単量体100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下使用されるのが好ましい。
【0013】
本発明に於いては、熱安定剤を塩化ビニル系組成物に対して、0.1〜10質量部含むことが好ましい。より好ましくは3〜8質量部である。熱安定剤が0.1質量部未満では、得られた繊維の溶融紡糸時の熱分解防止効果が少なくなる場合がある。一方、熱安定剤が10質量部を超えると、得られた繊維の紡糸時のメヤニ発生が多くなり安定紡糸ができなくなる場合がある。
【0014】
熱安定剤としては、例えば、ハイドロタルサイト系熱安定剤、Ca−Zn系熱安定剤、エポキシ系熱安定剤、有機ホスファイト系熱安定剤、β−ジケトン系熱安定剤、ゼオライト系熱安定剤などの熱安定剤から1種又は2種以上を選択して、使用することができる。好ましくは、ハイドロタルサイト系熱安定剤、Ca−Zn系熱安定剤、エポキシ系熱安定剤、有機ホスファイト系熱安定剤、β−ジケトン系熱安定剤を1種以上用いることが、紡糸時のノズル周囲に発生するメヤニが少ない。より好ましくは、ハイドロタルサイト系熱安定剤とCa−Zn系熱安定剤がよい。さらには、ハイドロタルサイト系熱安定剤とCa−Zn系熱安定剤の併用が好ましい。
【0015】
前記塩化ビニル系組成物にあっては、本発明の効果を維持させる範囲で、目的に応じて塩化ビニル樹脂組成物に使用可能な従来公知の添加剤を配合できる。これらの添加剤は、例えば、滑剤、加工助剤、強化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、充填剤、難燃剤、顔料、初期着色改善剤、導電性付与剤、表面処理剤、光安定剤、及び、香料である。
【0016】
本発明の人工毛髪用繊維の製造方法について述べる。原料組成物である塩化ビニル系組成物は、従来公知の混合機、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等を使用して混合してなるパウダーコンパウンド、又は、これを溶融混合してなるペレットコンパウンドとして使用することができる。パウダーコンパウンドの製造は、従来公知の通常の条件で製造でき、ホットブレンドでもコールドブレンドでも良いが、特に好ましくは、樹脂組成物中の揮発分を減少する為に、ブレンド時のカット温度を105〜155℃迄上げてなるホットブレンドを使用するのが好ましい。ペレットコンパウンドは、通常の塩化ビニル系ペレットコンパウンドの製造と同様にして製造できる。例えば、単軸押出機、異方向2軸押出機、コニカル2軸押出機、同方向2軸押出機、コニーダー、プラネタリーギアー押出機、ロール混練り機等の混練り機を使用して、ペレットコンパウンドとすることができる。ペレットコンパウンドを製造する際の条件は、特に限定はされないが、樹脂温度を185℃以下になる様に設定することが望ましい。
【0017】
本発明においては、従来公知のノズルを用いて溶融紡糸することが可能であるが、例えば、人工毛髪用としてのカール特性などの品質面を勘案すれば、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のノズルから溶融・流出せしめることが好ましい。1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2を越えると、細繊度の未延伸糸、又は延熱糸とする為に、過大な張力をかける必要があり、残留歪みが増加し、カール保持性などの品質が低下してくる。従って、特に好ましくは、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のマルチタイプのノズルの複数のノズル孔からストランドを溶融・流出せしめて、300デシテックス以下の未延伸糸を製造する。
【0018】
溶融紡糸する際の温度条件は、樹脂組成物のペレットコンパウンド等を、例えば、単軸押出機を使用して160〜190℃の温度で溶融紡糸することにより未延伸糸が得られる。延伸処理条件としては、未延伸糸を90〜120℃の温度に保持した空気雰囲気下で2〜4倍まで延伸した後、この延伸した繊維を110〜140℃の温度に保持した空気雰囲気下でアニール処理前の60〜100%の長さになるまで熱弛緩されることが好ましい。
【0019】
このように熱弛緩された繊維は、その一本の単繊度が、好ましくは、30〜100デシテックスである。単繊度が、30デシテックスより小さいと、曲げ剛性が小さくなるので繊維のコシがなくなり、そのために、柔らかい触感となる場合がある。一方、単繊度が、100デシテックスより大きいと、曲げ剛性が大きくなるので、繊維のコシが強くなり、そのために、ゴワゴワした触感となる恐れがある。
【0020】
本発明の塩化ビニル系人工毛髪用繊維は、美容熱器具(ヘアーアイロン)を用いたカールセット性に優れ、カールの保持性にも優れる。又、繊維表面の凹凸により、適度に艶消されており、人工毛髪として使用することができる。さらに、繊維表面処理剤、柔軟剤などの油剤を使用し、触感、風合を付与して、より人毛に近づけることができる。
【0021】
また、本発明の塩化ビニル系人工毛髪用繊維は、モダアクリル繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維など、他の人工毛髪用素材と併用してもよいし、人毛と併用してもよい。
【実施例】
【0022】
以下に、表1を参照しつつ、実施例、比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。これらは、いずれも例示的なものであって、本発明の内容を限定するこのではない。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
表1、2において「光沢」とは、繊維24000本を束ねて、直射日光の当たる室内と蛍光灯下における目視判定することにより評価した。評価基準は
優良:人毛に近いレベルのもの
良 :適度に光沢が調整されているもの
不良:光沢が有りすぎる、又はなさ過ぎるもの
で評価した。
【0026】
表1、2において「紡糸性」とは、塩化ビニル系組成物を溶融紡糸する際の成形性を表したものである。紡糸性の試験にあっては、紡糸ノズルから同時に120本の繊維を押出成形した際の、(溶融押出中に、数本の繊維状体が途切れる現象:測定時間は30分間、測定回数は3回)を測定したものである。評価基準は
優良:糸切れ発生回数が0回のもの
良 :糸切れ発生回数が1,2回
不良:糸切れ発生回数が3回以上のもの
で評価した。
【0027】
(実施例1)
(a)塩化ビニル系樹脂(大洋塩ビ株式会社製 TH−1000)100質量部と、複合熱安定剤・滑剤(日産化学工業株式会社製 CP−231LG:ハイドロタルサイト系熱安定剤とCa−Zn系金属石鹸熱安定剤に、ポリエチレンワックスと特殊脂肪酸エステルの滑剤をパック化したもの)8質量部(熱安定剤成分は4質量部)と、亜リン酸エステル系安定剤(旭電化工業株式会社製 アデカスタブ1500)1質量部と,架橋アクリル粒子(綜研化学株式会社製 MR-7G:平均粒子径 5μm)3質量部を配合した塩化ビニル系組成物をリボンブレンダーで混合して、混合した塩化ビニル系組成物を、メガネ型ノズル形状を有する、ノズル断面積0.06mm、孔数120のマルチタイプの紡糸ノズル、金型温度180℃から押出量10Kg/時間で溶融紡糸し150デシテックスの繊維とする工程、
(b)前記溶融紡糸した繊維を100℃の空気雰囲気下で300%に延伸する工程、並びに、(c)前記延伸した繊維に120℃の空気雰囲気下で繊維全長が処理前の75%の長さに収縮するまで熱弛緩処理する工程、
を順次経て、60デシテックスの人工毛髪用繊維を得た。
【0028】
(実施例2)
平均粒子径1μm(綜研化学株式会社製 MR-2G)を1質量部とした以外は、実施例1と同様にして人工毛髪用繊維を得た。
【0029】
(実施例3)
実施例1の(a)工程における架橋アクリル粒子の平均粒子径10μm(綜研化学株式会社製 MR-10G)を3質量部とした以外は、実施例1と同様にして人工毛髪用繊維を得た。
【0030】
(実施例4)
実施例1の(a)工程における架橋アクリル粒子を5質量部、複合熱安定剤・滑剤20質量部(熱安定剤成分は10質量部)とした以外は、実施例1と同様にして人工毛髪用繊維を得た。
【0031】
(実施例5)
実施例1の(a)工程における複合熱安定剤・滑剤30質量部(熱安定剤成分は15質量部)とした以外は、実施例1と同様にして人工毛髪用繊維を得た。
【0032】
(比較例1)
実施例1の(a)工程における架橋アクリル粒子を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして人工毛髪用繊維を得た。
【0033】
(比較例2)
実施例1の(a)工程における架橋アクリル粒子を、架橋型でないアクリル粒子(綜研化学株式会社製 MP-1451:平均粒子径0.15μm)を1質量部とした以外は、実施例1と同様にして人工毛髪用繊維を得た。
【0034】
(比較例3)
実施例1の(a)工程における架橋アクリル粒子を10質量部とした以外は、実施例1と同様にして人工毛髪用繊維を得た。
【0035】
(比較例4)
実施例1の(a)工程における架橋アクリル粒子を、綜研化学株式会社製 MR-20G(平均粒子径20μm)15質量部とした以外は、実施例1と同様にして人工毛髪用繊維を得た。
【0036】
(比較例5)
実施例1の(a)工程における架橋アクリル粒子を、綜研化学株式会社製 MR-20G(平均粒子径20μm)3質量部とした以外は、実施例1と同様にして人工毛髪用繊維を得た。
【0037】
表1、2から明らかなように、本発明によれば、光沢の特性がよく、しかも溶融紡糸時に糸切れの少ない人工毛髪用繊維が容易に得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の人工毛髪用繊維は、例えば、ウィッグ、ヘアーピース、ブレード、ドールヘアー、エクステンションヘアーなどの頭髪装飾用に好適に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋アクリル粒子を含有した塩化ビニル系組成物からなり、以下の(1)と(2)を具備する人工毛髪用繊維。
(1)塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、架橋アクリル粒子0.5〜5質量部を含有する。
(2)架橋アクリル粒子の平均粒子径が、1〜10μmである。
【請求項2】
塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、ハイドロタルサイト系熱安定剤、Ca−Zn系熱安定剤、エポキシ系熱安定剤、有機ホスファイト系熱安定剤、β―ジケトン系熱安定剤から選ばれる1種又は2種以上の熱安定剤成分を合計で0.1〜10質量部含有してなる塩化ビニル系組成物からなる請求項1記載の人工毛髪用繊維。
【請求項3】
請求項1又は2記載の塩化ビニル系組成物を溶融紡糸するに際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のマルチタイプのノズル孔から溶融、流出せしめる人工毛髪用繊維の製造方法。

【公開番号】特開2007−284810(P2007−284810A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111625(P2006−111625)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】