説明

人工毛髪用繊維

【課題】
天然毛髪の触感に近似する触感を有し、カールセットに要する時間を短くすることができ、更に難燃性能が十分に優れた人工毛髪を提供する。
【解決手段】
本発明は、ポリアミドと有機架橋粒子を含有する樹脂組成物を繊維化した人工毛髪用繊維である。樹脂組成物の素材は、ポリアミド100質量部と、有機架橋粒子0.2〜5質量部を含有する。有機架橋粒子は、架橋ポリアミド粒子、架橋ポリエステル粒子、及び架橋アクリル粒子からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であるのが好ましい。ポリアミドは、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6、ナイロン12、ナイロン6,10、及びナイロン6,12からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であるのが好ましい。樹脂組成物は、有機架橋粒子0.2〜5質量部と、リン含有難燃剤又は臭素含有難燃剤3〜30質量部を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装脱着可能なかつら、ヘアウィッグ、つけ毛等の人工毛髪に用いられる繊維(以下、単に「人工毛髪用繊維」という。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、人工毛髪用繊維を構成する素材として、塩化ビニルがある。これは、人工毛髪用繊維における塩化ビニルの加工性、低コスト性等が優れているためである。
【0003】
塩化ビニルを素材とする人工毛髪用繊維に対してカールセットなどの加熱を伴う操作を行うと、塩化ビニル樹脂の耐熱温度が60〜80℃であるので、繊維の大きな収縮が発生し、その結果、繊維のいたみ、切れが発生する場合があった。
【0004】
特許文献2には、人工毛髪用繊維の構成素材としてポリエチレンテレフタレートを主体としたポリエステルが使用され、そのポリエステルに難燃性能を持たせる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−156149号公報
【特許文献2】特開2006−70405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリエステルを素材とする人工毛髪用繊維は、耐熱性能の面では、上記塩化ビニルの使用に比して幾らか改善されるものの、触感が滑らかで人の毛髪と大きく異なるとともに、カールセットに要する時間が長いという問題があり、更に、難燃性能が不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリアミドと有機架橋粒子を含有する樹脂組成物を繊維化した人工毛髪用繊維であって、上記樹脂組成物が、ポリアミド100質量部と、有機架橋粒子0.2〜5質量部を含有する人工毛髪用繊維である。
【0008】
上記架橋粒子は、架橋ポリアミド粒子、架橋ポリエステル粒子、及び架橋アクリル粒子からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であるものが好ましい。
【0009】
上記ポリアミドは、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6、ナイロン12、ナイロン6,10、及びナイロン6,12からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であるのが好ましい。
【0010】
上記樹脂組成物は、ポリアミド100質量部と、有機架橋粒子0.2〜5質量部と、リン含有難燃剤又は臭素含有難燃剤3〜30質量部を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、人の毛髪の触感に近い触感を有し、カールセットに要する時間を短くし、更に難燃性能に優れた人工毛髪用繊維である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の人工毛髪用繊維の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態にかかる人工毛髪用繊維は、ポリアミドと有機架橋粒子を含有する樹脂組成物を繊維化した人工毛髪用繊維であって、上記樹脂組成物が、ポリアミド100質量部と、有機架橋粒子0.2〜5質量部を含有する人工毛髪用繊維である。
【0013】
本実施形態で用いられる樹脂組成物は、ポリアミド100質量部と、有機架橋粒子0.2〜5質量部を含有するものである。この樹脂組成物は、ポリアミドと有機架橋粒子のみを含有するものであってもよく、例えば、別の種類の樹脂や難燃剤とった他の素材を本発明の効果を阻害しない範囲で含有してもよい。
【0014】
上記ポリアミドは、例えばナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6、ナイロン12、ナイロン6,10、及びナイロン6,12からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であるのが好ましく、特に好ましくはナイロン6,6である。ナイロン6,6を用いた場合、触感が特に良好になる。ポリアミドの重量平均分子量(Mw)は、例えば1万〜20万の範囲内のいずれかの値である。
【0015】
上記有機架橋粒子は、有機化合物で、架橋構造を有する粒子である。この有機架橋粒子は、人工毛髪用繊維の表面への凹凸形成や、繊維表面の光沢や艶の調節のために採用するのが好ましく、さらに、有機架橋粒子によって繊維表面の表面積を増大させて繊維の吸湿性を向上させるために採用したものである。有機架橋粒子は、あまりに少ないとこれら効果が発揮されず、あまりに多いとこれら効果の調整が困難になるため、1〜5質量部が好ましく、1〜3質量部がさらに好ましい。粒子径は、例えば、レーザー散乱式粒度分布装置を用いて測定することができる。
【0016】
上記有機架橋粒子の平均粒子径は、0.1〜15μmが好ましく、0.2〜10μmがより好ましく、0.5〜8μmがさらに好ましい。この範囲であれば、光沢や艶の調節効果が十分に大きく、かつ、有機架橋粒子添加による繊維強度の低下が生じ難いからである。本明細書において、「平均粒子径」は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0017】
上記有機架橋粒子は、耐熱性、ポリアミド中での分散性の点から、架橋ポリアミド粒子、架橋ポリエステル粒子、及び架橋アクリル粒子からなる群から選ばれた少なくとも1種の粒子が好ましい。
【0018】
架橋ポリエステル粒子としては、不飽和ポリエステルとビニル単量体を水分散させ、架橋させたものがある。不飽和ポリエステルとしては、α,β−不飽和酸、α,β−不飽和酸と飽和酸との混合物、α,β−不飽和酸と二価アルコールとの重合物、α,β−不飽和酸と三価アルコールとの重合物がある。
不飽和酸としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸がある。
飽和酸としては、フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、グルタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、又はセバチン酸がある。
二価アルコール及び三価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンがある。
ビニル単量体としては、スチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、アクリル酸、メチルアクリレート、アクリロニトリル、エチルアクリレート、ジアリルフタレートの単種又は複数種がある。
【0019】
架橋アクリル樹脂粒子は、アクリル単量体と架橋剤を水分散させ、架橋させたものがあり、この架橋の際には重合開始剤を配合させるのが好ましい。
【0020】
アクリルの単量体としては、アクリル酸、アクリル酸の誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸の誘導体の単種又は複数種がある。アクリル酸の誘導体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドがある。メタクリル酸の誘導体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸N−ビニル−2−ピロリドン、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルがある。
【0021】
架橋アクリル樹脂粒子に用いられる架橋剤としては、1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体であり、好ましくは1分子中に2個のビニル基を有するものである。架橋剤としては、具体的には、ジビニルベンゼン、グリコールとメタクリル酸あるいはアクリル酸との反応生成物(例えばエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート)がある。架橋剤の配合比は、アクリル単量体100質量部に対して0.02〜5質量部が好ましい。
【0022】
重合開始剤としては、過酸化物ラジカル重合開始剤が好ましく、具体的には、過酸化ベンゾイル、過安息香酸2−エチルヘキシル、過酸化ジtert−ブチル、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシドがある。重合開始剤は、アクリル単量体100質量部に対して0.05〜10質量部配合するのが好ましい。
【0023】
本実施形態で用いられる樹脂組成物は、リン含有難燃剤又は臭素含有難燃剤をさらに含有することが好ましい。ポリアミド100質量部に対するリン含有難燃剤の配合比は、あまりに少ないと難燃効果が発揮されず、あまりに多いと繊維化した際の触感の低下の原因になるため、3〜30質量部であり、特に好ましくは10〜20質量部である。
【0024】
リン含有難燃剤は、リンを含む難燃剤であり、例えば、ホスフェート系化合物、ホスホネート系化合物、ホスフィネート系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、ホスホナイト系化合物、ホスフィナイト系化合物、ホスフィン系化合物、ホスフィン酸塩などが挙げられる。このホスフィン酸塩が耐熱性に優れているため好ましい。
【0025】
ホスフィン酸塩は、例えば、以下の式(I)や式(II)の単体又は複合体がある。
【化1】

【0026】
式(I)及び式(II)において、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ直鎖状又は分岐状のC〜C−アルキル基、アリール基又はフェニル基を示す。Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C10−アルキレン基、C〜C10−アリーレン基、C〜C10−アルキルアリーレン基、又はC〜C10−アリールアルキレン基を示す。Mは、カルシウム原子、マグネシウム原子、アルミニウム原子又は亜鉛原子を示す。mは2又は3であり、nは1又は3であり、xは1又は2である。
【0027】
ホスフィン酸塩のさらなる具体例には、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル-n-プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛があり、好ましくはジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛であり、さらに好ましくはジエチルホスフィン酸アルミニウムである。
【0028】
臭素含有難燃剤は、臭素を含む難燃剤であり、例えば、臭素化ポリスチレン、臭素含有リン酸エステル、臭素化ポリベンジルアクリレート、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールA誘導体、臭素含有トリアジン化合物臭素含有イソシアヌル酸化合物があり、より好ましくは、臭素化ポリスチレンである。
【0029】
臭素化ポリスチレンは、ポリスチレンのベンゼン環に水素と替わって結合する臭素数が1〜5個であるものである。ポリ臭素化スチレンは、具体的には、一臭素化スチレン、二臭素化スチレン、三臭素化スチレン、四臭化スチレン及び五臭化スチレンのうちの単体又は複数種の重合体がある。
【0030】
臭素含有リン酸エステルとしては、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ 無水フタル酸、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートがある。
【0031】
テトラブロモビスフェノールA誘導体としては、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(ヒドロキシエチルエーテル)がある。臭素含有トリアジン化合物としては、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジンがあり、臭素含有イソシアヌル酸化合物としては、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートがある。
【0032】
本実施形態の人工毛髪用繊維は、無機微粒子をさらに含むものであってもよい。この無機微粒子としては、繊維の透明性、発色性への影響から、ポリアミド及びリン含有難燃剤の屈折率に近い屈折率を有するものが好ましく、例えば、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、タルク、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、マイカがある。
【0033】
本実施形態の人工毛髪用繊維の繊度は、10〜100dtexが好ましく、好ましくは30〜80dtexであり、より好ましくは35〜75dtexである。
【0034】
本実施形態の人工毛髪用繊維の製造方法としては、例えば、ポリアミドと、有機架橋粒子と、必要に応じてリン含有難燃剤又は臭素含有難燃剤をドライブレンドした後、混練機を用いて溶融混練し、溶融混練によって得られた混練物を溶融紡糸法によって溶融紡糸する方法がある。
【実施例】
【0035】
次に、本発明による人工毛髪用繊維の実施例を比較例と対比しつつ表を用いて、詳細に説明する。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1の人工毛髪用繊維は、ポリアミドとしてのナイロン6(宇部興産株式会社製、1030B)100質量部、有機架橋粒子としての架橋ポリアミド粒子(住友電工ファインポリマー株式会社製、テラリンクN66N02A)2質量部の組成物を、単繊維度が50dtexの人工毛髪用繊維にしたものである。
【0038】
実施例・比較例の人工毛髪用繊維の製造方法について説明する。
ポリアミド、ポリエステル、有機架橋粒子、リン含有難燃剤、及び臭素含有難燃剤を個々に水分量1500ppm以下となるように乾燥させ、乾燥した素材を表1に示す配合比で混合した。混合された混合物を280℃の温度にて溶融混練してからペレット状に成型した。溶融混練及びペレット成型は、二軸押出機を用いた。
【0039】
ペレットを、再度、水分量が1500ppm以下となるように乾燥した後、溶融紡糸機にて未延伸の糸状に成形し、未延伸の糸を4倍に延伸させて単繊維度50dtex人の工毛髪用繊維を製造した。
【0040】
表1の評価について説明する。
【0041】
<触感>
触感は、実施例・比較例の人工毛髪用繊維を長さ200mm、重量1.0gに束ね、人工毛髪用繊維処理技術者(実務経験5年以上)10人の手触りによる判定で、次の評価基準で評価した。
優:技術者10人全員が、触感が良いと評価したもの
良:技術者の8人又は9人が、触感が良いと評価したもの
不可:技術者の7人以下が、触感が良いと評価したもの
【0042】
<難燃性能>
難燃性は、実施例・比較例の人工毛髪用繊維を長さ20cm、総重量1.0グラムに調整して繊維束を形成し、この繊維束の一端を固定して垂直に垂らし、下端に高さ30mmの炎を3秒間接触させ、繊維束から炎を外した時からの延焼時間で評価した。延焼時間は、測定試料3個の平均値である。
優:延焼時間が0秒
良:延焼時間が3秒未満
可:延焼時間が3秒以上10秒未満
不可: 延焼時間が10秒以上
【0043】
<カールセット性>
カールセット性は、実施例・比較例の人工毛髪用繊維を長さ50cm、総重量2.0グラムに調整して繊維束を形成し、この繊維束に180℃の鉄製の焼き鏝(鏝の直径1.4cm)に巻いてカールをかけた後、焼き鏝から離して、一方端を固定して吊り下げた時にカールがあるか否かで確認した。カールがなされた状態の定義として、吊り下げた際の人工毛髪用繊維の基端と先端の間隔が、カール前の全長50cmの0.85倍未満(42.5cm未満)になった場合とした。評価前の試料は、評価のばらつきを無くすために、温度23℃、湿度50%で24時間保管した試料を採用した。評価にあっては、焼き鏝での加熱時間を数種類設け、次の基準で判断した。
優:焼き鏝での加熱時間が5秒未満でカールセットされた
良:焼き鏝での加熱時間が5秒以上10秒未満でカールセットされた
不可:焼き鏝での加熱時間が10秒以上でカールセットされた
【0044】
<吸湿性>
吸湿性は、試験片を105℃の乾燥機に2時間入れた後、湿度0%のデシケー夕ーに移し、試験片の重量を測定し、平衡になった重量を絶乾重量(W)とした。次に、試験片を温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室に入れて、試験片の重量を測定し、平衡になった重量を湿度50%での重量(W1)とした。この絶乾重量及び湿度60%での重量から吸湿率を、下式(III)で求め、吸湿率の値によって優、良、不可の判断をした。
吸湿率=((Wl−W)/W)×100 (III)
優:1.0%以上
良:0.1%以上1.0%未満
不可:0.1%未満
【0045】
表1にある他の素材は、以下のものを採用した。
ナイロン6,6:東レ株式会社製、CM3001‐N
架橋ポリエステル粒子:住友電工ファインポリマー製、テラリンクBTN02AG30
架橋アクリル粒子:平均粒子径1.8μm、綜研化学株式会社製
リン含有難燃剤:大八化学工業株式会社製、PX−200
臭素含有難燃剤:アルベマール日本株式会社製、HP−3010
ポリエステル:三菱化学株式会社製、BK‐2180
【0046】
表1に示したように、実施例1〜実施例6の人工毛髪用繊維は、ポリアミドと、有機架橋粒子との混合割合が適切に調整されることで、比較例に対して触感、難燃性、カールセット性及び吸湿性が優れていた。特に、実施例5及び実施例6の人工毛髪用繊維は、他の実施例に比して難燃性が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明にかかる人工毛髪用繊維は、頭部に装脱着可能なかつら、ヘアウィッグ、つけ毛等の人工毛髪に用いられる繊維である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドと有機架橋粒子を含有する樹脂組成物を繊維化した人工毛髪用繊維であって、
前記樹脂組成物が、ポリアミド100質量部と、有機架橋粒子0.2〜5質量部を含有する人工毛髪用繊維。
【請求項2】
前記架橋粒子が、架橋ポリアミド粒子、架橋ポリエステル粒子、及び架橋アクリル粒子からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項3】
前記ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6、ナイロン12、ナイロン6,10、及びナイロン6,12からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である、請求項1又は2記載の人工毛髪用繊維。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、ポリアミド100質量部と、有機架橋粒子0.2〜5質量部と、リン含有難燃剤又は臭素含有難燃剤3〜30質量部を含有する請求項1乃至3いずれかに記載の人工毛髪用繊維。

【公開番号】特開2011−246845(P2011−246845A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121206(P2010−121206)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】