説明

人工皮革及びその製造方法

本発明は、極細繊維で構成された不織布に高分子弾性体が含浸されてなり、前記高分子弾性体が20〜30重量%で含まれ、前記不織布の密度が0.160〜0.250g/cmの範囲であることを特徴とする、人工皮革及びその製造方法に関するものであって、本発明による人工皮革は、高分子弾性体の含量及び不織布の密度を最適化することにより、最適化された伸度特性を具備した人工皮革を得ることができて、自動車ヘッドライナーなどの屈曲が多い製品に容易に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工皮革に係り、より具体的には、最適の伸度特性を具備した人工皮革に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工皮革は、極細繊維が3次元に交絡して形成された不織布に、高分子弾性体が含浸されてなるものであって、天然皮革と同様に柔らかい質感及び独特の外観を有しており、履き物、衣類、手袋、雑貨、家具、及び自動車内装材などの様々な分野に広く利用されている。
【0003】
このような人工皮革は、使用される用途によって、柔軟性、表面の品位特性、耐摩耗性、耐光性、または伸度特性などにおいて、より向上した高機能性が要求されている。人工皮革に要求される高機能性のうち、伸度特性は、屈曲がある製品において特に要求される。これは、屈曲のある製品に伸度特性が劣る人工皮革を適用する場合、成形工程時に人工皮革にシワが多く発生するからである。
【0004】
例えば、自動車内装材のうち、自動車の天井に付着されるヘッドライナーの場合、車体の形態によって屈曲が多く存在し、該自動車ヘッドライナーに伸度特性が劣る人工皮革を使用すると、成形時に人工皮革に発生するシワによって、製品の品位が低下されるという問題が発生する。したがって、自動車ヘッドライナーのように屈曲部位が多く存在する製品に使用するための人工皮革は、基本的に、優れた伸度特性を有さなければならない。ただし、人工皮革の伸度が大きすぎると成形時に人工皮革が過度に伸び、それによってシワが生じるという同様の問題が発生する。したがって、基本的に、優れた伸度特性を有する上、成形に最適化された伸度特性を有する、人工皮革が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、屈曲部位が多く存在する製品に容易に適用可能な、最適化された伸度特性を具備した、人工皮革及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、成形に最適化された伸度特性を具備した人工皮革を得るための多数の繰り返し試験を通じて、最適の伸度特性の範囲を確認したし、そのような人工皮革の伸度特性は、不織布に含浸される高分子弾性体の含量によって大きく影響を受けることが分かった。
【0007】
すなわち、高分子弾性体として利用されるポリウレタンは、伸びやすく且つ回復力に優れた特性を有するので、ポリウレタンの含量を増加させる場合、人工皮革の伸度を向上させることができる。しかし、ポリウレタンの含量が大きくなりすぎる場合、成形時にシワが発生することがあり、それに加えて、人工皮革の触感が低下され、光に長時間露出される場合、色相が変色されるなどの副作用が発生することを確認した。したがって、最適化された伸度特性を有する人工皮革を得るためには、高分子弾性体の含量を最適化する必要があり、そこで、多数の実験を通じて、最適の高分子弾性体の含量範囲を設定することになった。
【0008】
また、人工皮革を構成する不織布の密度が、人工皮革の伸度特性に影響を与えることが分かった。すなわち、不織布の密度が大きくなりすぎると伸長しにくいので、不織布の密度を減らすことが好ましいが、不織布の密度が小さくなりすぎると伸長時に繊維組織が破壊されて、伸長後に回復されないという問題点が発生する。それに加えて、不織布に含浸される高分子弾性体が、その機能を発揮するためにも、不織布の密度が非常に重要であることが分かった。すなわち、不織布は、その内部に含浸される高分子弾性体の支持体の役割を果たす。不織布の密度が小さいと、高分子弾性体が不均一に分布し、その内部に穴が多く存在することになって、伸長時に不均一な部分に力が集中されて破断しやすくなる。したがって、最適化された伸度特性を有する人工皮革を得るためには、不織布の密度を最適化する必要があり、特に、高分子弾性体の含量の範囲を考慮して、不織布の密度を最適化することが好ましい。そこで、多数の実験を通じて、最適の不織布の密度範囲を設定することになった。
【0009】
以上説明した本発明による具体的な課題解決手段は、下記の通りである。
【0010】
本発明は、極細繊維で構成された不織布に高分子弾性体が含浸されてなり、前記高分子弾性体が20〜30重量%で含まれ、前記不織布の密度が0.160〜0.250g/cmの範囲であることを特徴とする、人工皮革を提供する。
【0011】
好ましくは、前記不織布の密度は、0.180〜0.230g/cmの範囲である。
【0012】
前記人工皮革は、5kg定荷重伸度が、長さ方向は20〜40%であり、幅方向は40〜80%の範囲である。
【0013】
前記極細繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、またはポリブチレンテレフタレートからなり、前記高分子弾性体は、ポリウレタンからなることができる。
【0014】
前記極細繊維は、0.3デニール以下の繊度範囲を有することができる。
【0015】
本発明はまた、溶剤に溶解される特性が互いに異なる、海成分の第1ポリマー及び島成分の第2ポリマーからなる海島型繊維を製造する工程と、前記海島型繊維を用いて不織布を製造する工程と、前記不織布を高分子弾性体溶液に浸漬して、前記不織布に高分子弾性体を含浸する工程と、前記不織布において海成分である第1ポリマーを溶解させて除去する工程と、を含んでなり、前記高分子弾性体が20〜30重量%で含まれることを特徴とする、人工皮革の製造方法を提供する。
【0016】
好ましくは、前記高分子弾性体溶液は5〜20重量%の濃度範囲であり、このとき、前記高分子弾性体溶液の温度を10〜30℃の範囲に維持した状態で、0.5〜15分間、前記不織布を浸漬することができる。
【0017】
前記不織布を製造する工程は、250〜400g/mの範囲の単位重量、及び1.5〜2.5mmの範囲の厚さを有するように不織布を製造する工程からなることができ、このとき、前記製造された人工皮革において、前記不織布の密度は0.180〜0.230g/cmの範囲になることができる。
【0018】
前記不織布において海成分である第1ポリマーを溶解させて除去する工程は、前記不織布に高分子弾性体を含浸する工程の以前、又は以後に行うことができる。
【0019】
前記海島型繊維を製造する工程は、前記第1ポリマーは10〜60重量%で含まれ、前記第2ポリマーは40〜90重量%で含まれるようにし、第1ポリマーには共重合ポリエステルを利用し、前記第2ポリマーにはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートを利用することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のような本発明によると、次のような効果がある。
【0021】
本発明は、高分子弾性体の含量を最適化することにより、具体的には、人工皮革において高分子弾性体の含量を20〜30重量%で調節することにより、最適化された伸度特性、具体的には、5kg定荷重伸度が、長さ方向は20〜40%であり、幅方向は40〜80%の範囲である人工皮革を得ることができる。また、本発明は、不織布の密度を最適化することにより、好ましくは、前記高分子弾性体の含量を考慮して、不織布の密度を0.180〜0.230g/cmの範囲で調節することにより、最適化された伸度特性を具備した人工皮革を得ることができる。
【0022】
したがって、本発明による人工皮革は、自動車ヘッドライナーなどの屈曲が多い製品に容易に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施例について詳細に説明する。
【0024】
1.人工皮革
本発明による人工皮革は、極細繊維で構成された不織布に高分子弾性体が含浸されてなる。
【0025】
前記高分子弾性体には、ポリウレタンを利用することができ、具体的には、ポリカーボネートジオール系、ポリエステルジオール系、ポリエーテルジオール系単独で、又は、これらを組み合わせて利用することができる。前記高分子弾性体にはポリシロキサンを利用することもできる。ただし、前記高分子弾性体がポリウレタンまたはポリシロキサンに限定されるものではない。
【0026】
前記高分子弾性体は人工皮革において20〜30重量%で含まれる。前記高分子弾性体が20重量%未満で含まれる場合、所望の伸度を得ることができず、前記高分子弾性体が30重量%を超過して含まれる場合、人工皮革の触感が低下され、色相が変色される危険があり、伸度も低下されるからである。
【0027】
前記不織布は、ナイロンまたはポリエステル極細繊維からなることができ、前記ポリエステル極細繊維の具体的な例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられる。
【0028】
前記不織布は、0.160〜0.250g/cmの範囲の密度を有することが好ましい。不織布の密度が0.160g/cm未満の場合には、不織布が高分子弾性体の支持体としての役割を十分に果たすことができず、高分子弾性体が、不織布内において穴が多く存在し且つ不均一に分布されて、伸長時に破断しやすくなり、また、不織布の密度が0.250g/cmを超過する場合には、不織布の密度が大きすぎて、伸度が低下されることがある。ただし、前記高分子弾性体が、人工皮革において20〜30重量%で含まれる場合、最適の不織布の密度範囲は0.180〜0.230g/cmが好ましい。
【0029】
高分子弾性体が20〜30重量%で含まれ、不織布の密度が0.160〜0.250g/cmの範囲である場合の人工皮革は、5kg定荷重伸度が、長さ方向は20〜40%であり、幅方向は40〜80%の範囲であって最適の伸度特性を有することができる。特に、人工皮革を構成する不織布の密度が0.180〜0.230g/cmの範囲である場合、伸度特性がさらに最適化され得る。
【0030】
前記不織布を構成する極細繊維は、人工皮革の触感向上のために、0.3デニール以下の繊度範囲を有することが好ましい。
【0031】
本発明による人工皮革は、複合紡糸工程を通じて海島型繊維を製造し、該海島型繊維を用いて不織布を製造し、不織布に高分子弾性体を含浸させた後、海成分を除去して繊維を極細化する工程を通じて得ることができる。ここで、前記不織布に高分子弾性体を含浸させる前に、前記不織布において海成分を除去して極細化した後、極細化された不織布に高分子弾性体を含浸する工程を通じて人工皮革を得ることもできる。ただし、必ずしもこれに限定されるものではなく、紡糸工程を通じて直接に極細繊維を製造し、該極細繊維を用いて不織布を製造した後、不織布に高分子弾性体を含浸して人工皮革を得ることもできる。
【0032】
前記不織布は、ステープル繊維などの短繊維を、カーディング(carding)工程及びクロスラッピング(cross lapping)工程を通じてウェブ(Web)を形成した後、ニードルパンチまたはウォータージェットパンチなどを用いて製造することができる。ただし、必ずしもこれに限定されるものではなく、フィラメントなどの長繊維を、スパンボンディング(span bonding)工程を通じてウェブ(Web)を形成した後、ニードルパンチまたはウォータージェットパンチなどを用いて製造することもできる。
【0033】
前記海島型繊維を用いて人工皮革を製造する方法において、前記海島型繊維は、溶剤に溶解される特性が互いに異なる、第1ポリマー及び第2ポリマーからなる。
【0034】
前記第1ポリマーは、溶剤に溶解されて溶出される海成分であって、共重合ポリエステル、ポリスチレンまたはポリエチレンなどからなることができ、好ましくは、アルカリ溶剤に対する溶解性に優れた共重合ポリエステルからなる。前記共重合ポリエステルは、主成分であるポリエチレンテレフタレートに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1−4−シクロヘキサンジカルボン酸、1−4−シクロヘキサンジメタノール、1−4−シクロヘキサンジカルボキシレート、2−2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−2−ジメチル−1,4−ブタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−プロパンジオール、アジピン酸、金属スルホネート含有エステル単位、又は、これらの混合物が共重合されたものを用いることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0035】
前記第2ポリマーは、溶剤に溶解されずに残存する島成分であって、アルカリ溶剤に溶解されないナイロンまたはポリエステルなどからなることができ、前記ポリエステルの例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリトリメチレンテレフタレート(PTT)などが挙げられる。特に、前記ポリトリメチレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの中間程度の炭素数を有し、ポリアミドと略同様の弾性回復率を有し且つ耐アルカリ性に非常に優れるので、島成分として好ましい。
【0036】
このような海島型繊維は、以後の工程で、海成分である第1ポリマーを溶剤に溶解して溶出させることによって、島成分である第2ポリマーのみが残存して極細繊維を形成することになる。したがって、所望の極細繊維を得るためには、海成分である第1ポリマー及び島成分である第2ポリマーの含量などを適切に調節する必要がある。
【0037】
具体的には、海島型繊維内において、前記海成分である第1ポリマーは10〜60重量%で含まれ、前記島成分である第2ポリマーは40〜90重量%で含まれることが好ましい。前記海成分である第1ポリマーが10重量%未満で含まれる場合、島成分である第2ポリマーの含量が増加されて極細繊維の形成が不可能になることがあり、海成分である第1ポリマーが60重量%を超過して含まれる場合は、溶出して除去される第1ポリマーの量が増加されて製造単価が増加される。また、海島型繊維の断面において、前記島成分である第2ポリマーは10個以上が互いに分離されながら配列され、海成分である第1ポリマーが溶出された以後に、島成分である第2ポリマーの繊度は、0.3デニール以下の範囲であることが極細繊維の触感向上のために好ましい。
【0038】
以上のような本発明による人工皮革の一実施例による製造方法を説明すると、下記の通りである。
【0039】
まず、海島型繊維を製造する。
【0040】
前記海島型繊維はステープル状で製造することができ、具体的には、前述した海成分である第1ポリマー及び島成分である第2ポリマーのそれぞれの溶融液を準備した後、所定の紡糸口金を通じてそれぞれの溶融液を通過させる複合紡糸によってフィラメントを得て、該フィラメントを延伸し、クリンプ(crimp)を形成し、熱固定(heat set)した後、切断する工程を通じて製造することができる。
【0041】
この時、前記複合紡糸によって得たフィラメントの単糸繊度は、10デニール以下にすることが好ましい。これは、フィラメントの単糸繊度が10デニールを超過すると、人工皮革の製造のために海島型繊維で不織布を製造するとき、カーディング工程がしにくくなるからである。フィラメントの単糸繊度は、2〜5デニールの範囲にすることが、より好ましい。また、フィラメントの断面において、前記島成分である第2ポリマーは10個以上が互いに分離されながら配列され、前記島成分である第2ポリマーの繊度は0.3デニール以下の範囲にすることが、以後に、海成分を溶出した後、所望の極細繊維を得ることができるので、好ましい。
【0042】
ステープル状の海島型繊維の長さは、20mm以上であることが好ましい。これは、20mm未満の場合、人工皮革の製造のために不織布を製造するとき、カーディング工程がしにくくなるからである。
【0043】
一方、人工皮革を製造するに当たって、フィラメントなどの長繊維を利用する場合には、前記熱固定したフィラメントを切断する工程を行わない。
【0044】
次に、前記海島型繊維を用いて不織布を製造する。
【0045】
前記不織布は、ステープル状の海島型繊維を,カーディング(carding)工程及びクロスラッピング(cross lapping)工程を通じてウェブ(Web)を形成した後、ニードルパンチを用いて製造する。前記クロスラッピング工程は、略20〜40枚で積層してウェブを形成する。
【0046】
この時、前記クロスラッピング工程及びニードルパンチ工程を調節して、単位重量が250〜400g/mの範囲であり、厚さが1.5〜2.5mmの範囲である不織布を製造することが好ましい。これは、該単位重量及び厚さの範囲で不織布を製造する場合、最終的に得られる人工皮革における不織布の密度を、好ましい範囲である0.180〜0.230g/cmの範囲内に容易に調節することができるからである。すなわち、最終的に製造された人工皮革における不織布の密度を0.180〜0.230g/cmの範囲内に調節するためには、前記不織布が、以後の各工程を行いながら熱変形などを経て体積の変化を生じる点を考慮しなければならず、このような点を考慮するとき、前記カーディング工程、クロスラッピング工程、及びニードルパンチ工程を通じて製造する不織布の単位重量及び厚さを、前記の範囲で設定することが好ましい。
【0047】
次に、前記不織布に高分子弾性体を含浸する。
【0048】
この工程は、高分子弾性体溶液を製造した後、製造した高分子弾性体溶液に前記不織布を浸漬させる工程からなる。前記高分子弾性体溶液は、所定の溶媒にポリウレタンを溶解させたり、分散させたりして製造することができ、例として、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒にポリウレタンを溶解させたり、水溶媒にポリウレタンを分散させたりして製造することができる。ただし、高分子弾性体を溶媒に溶解または分散させずに、シリコン高分子弾性体を直接利用することもできる。
【0049】
また、前記高分子弾性体溶液には、用途によって、顔料、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、柔軟剤、着色剤などが、さらに含まれることができる。
【0050】
前記不織布を前記高分子弾性体溶液に浸漬させる前に、前記不織布をポリビニルアルコール水溶液でパディング処理して形態を安定化させることができる。
【0051】
ここで、前記高分子弾性体溶液の濃度などを調節することにより、前記不織布に含浸される高分子弾性体の含浸量を調節することができ、最終の人工皮革に含まれる高分子弾性体の含量が20〜30%であるのを考慮するとき、前記高分子弾性体溶液の濃度は5〜20重量%の範囲で調節することが好ましい。また、前記5〜20重量%の濃度範囲を有する高分子弾性体溶液の温度を10〜30℃の範囲に維持した状態で、0.5〜15分間、前記不織布を浸漬することが好ましい。
【0052】
前記高分子弾性体溶液に不織布を浸漬させた後には、凝固槽で不織布に含浸された高分子弾性体を凝固し、その後に水洗槽で水洗する工程を行う。このとき、前記高分子弾性体溶液を、ジメチルホルムアミド溶媒にポリウレタンを溶解させて得た場合には、前記凝固槽を水と少量のジメチルホルムアミドとの混合物で構成して、前記凝固槽で高分子弾性体を凝固させながら、不織布に含まれたジメチルホルムアミドが前記凝固槽に抜け出るようにすることができ、前記水洗槽では、不織布にパディング処理したポリビニルアルコール、及び残留可能なジメチルホルムアミドを不織布から除去することになる。
【0053】
次に、高分子弾性体が含浸された不織布において海成分を除去して繊維を極細化する。
【0054】
この工程は、苛性ソーダ水溶液などのアルカリ溶剤を用いて海成分である第1ポリマーを溶出させることにより、島成分である第2ポリマーのみが残存して不織布を構成する、繊維を極細化させる工程である。
【0055】
次に、前記極細繊維からなり、高分子弾性体が含浸されている不織布に、起毛処理をした後、染色し、後処理をして、本発明による人工皮革の製造を完成する。
【実施例】
【0056】
2.実施例及び比較例
【0057】
実施例1
主成分であるポリエチレンテレフタレートに金属スルホネート含有ポリエステル単位が5モル%共重合された共重合ポリエステルを溶融して、海成分の溶融液を準備し、ポリエチレンテレフタレート(PET)を溶融して、島成分の溶融液を準備した後、前記海成分の溶融液50重量%及び前記島成分の溶融液50重量%を用いて複合紡糸して、単糸繊度が3デニールであり、断面において前記島成分が16個で構成されたフィラメントを得た。また、前記フィラメントを延伸倍率3.5として延伸した後、クリンプ数が15個/インチとなるようにクリンプ工程を行い、130℃で熱固定した後、51mmで切断してステープル状の海島型繊維を製造した。
【0058】
その後、前記海島型繊維をカーディング及びクロスラッピング工程を通じてウェブを形成した後、ニードルパンチを用いて単位重量350g/m、及び厚さ2.0mmの不織布を製造した。
【0059】
その後、前記不織布を、5重量%濃度のポリビニルアルコール水溶液でパディングした後、乾燥し、該乾燥した不織布を、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒にポリウレタンを溶解させて得た10重量%濃度、及び25℃のポリウレタン溶液に、3分間浸漬させた後、15重量%濃度のジメチルホルムアミド水溶液でポリウレタンを凝固させて、水で水洗して、前記不織布にポリウレタンを含浸させた。
【0060】
その後、前記ポリウレタンが含浸された不織布を、5重量%濃度の苛性ソーダ水溶液で処理して、前記不織布において海成分である共重合ポリエステルを溶出させて、島成分であるポリエチレンテレフタレート(PET)のみで繊維を極細化した。
【0061】
その後、粗度#300番のサンドペーパーを用いて、最終厚さが0.6mmとなるように起毛処理し、酸性染料を用いて高圧ラピッド染色機にて染色した後、固着、洗浄及び乾燥した後、柔軟剤及び帯電防止剤処理を行い、人工皮革を得た。
【0062】
実施例2
前述した実施例1において、単位重量350g/m、及び厚さ2.5mmの不織布を製造した点を除外し、前述した実施例1と同様の方法で人工皮革を得た。
【0063】
実施例3
前述した実施例1において、単位重量350g/m、及び厚さ1.5mmの不織布を製造した点を除外し、前述した実施例1と同様の方法で人工皮革を得た。
【0064】
実施例4
前述した実施例1において、13重量%濃度、及び25℃のポリウレタン溶液に5分間不織布を浸漬した点を除外し、前述した実施例1と同様の方法で人工皮革を得た。
【0065】
実施例5
前述した実施例1において、16重量%濃度、及び25℃のポリウレタン溶液に5分間不織布を浸漬した点を除外し、前述した実施例1と同様の方法で人工皮革を得た。
【0066】
比較例1
前述した実施例1において、4重量%濃度、及び25℃のポリウレタン溶液に3分間不織布を浸漬した点を除外し、前述した実施例1と同様の方法で人工皮革を得た。
【0067】
比較例2
前述した実施例1において、単位重量200g/m及び厚さ1.5mmの不織布を製造した点、及び、8重量%濃度及び25℃のポリウレタン溶液に3分間不織布を浸漬した点を除外し、前述した実施例1と同様の方法で人工皮革を得た。
【0068】
比較例3
前述した実施例1において、単位重量350g/m及び厚さ1.2mmの不織布を製造した点、及び、10重量%濃度及び25℃のポリウレタン溶液に3分間不織布を浸漬した点を除外し、前述した実施例1と同様の方法で人工皮革を得た。
【0069】
比較例4
前述した実施例1において、21重量%濃度、及び35℃のポリウレタン溶液に10分間不織布を浸漬した点を除外し、前述した実施例1と同様の方法で人工皮革を得た。
【0070】
以上のような、各実施例及び比較例の主要工程条件を要約すると、下記の表1のようである。
【0071】
【表1】

【0072】
3.実験例
高分子弾性体の含量測定、及び不織布の密度測定
【0073】
まず、10cm×10cmの大きさで人工皮革サンプルを準備した後、人工皮革サンプルの重量及び密度を測定する。
【0074】
前記人工皮革サンプルの密度(g/cm)は、ピーコック(Peacock)厚度計を用いて、サンプルの5支点の厚さを測定して平均を求め、前記測定した重量及び面積から、まず単位重量を求め、その単位重量値を前記厚さ平均値で割って求める。
【0075】
次に、100%濃度のジメチルホルムアミド(DMF)溶液1000mlが入っているビーカーにサンプルを浸漬し、70℃で2時間加熱した後、マングルロールを用いてスクイージングして高分子弾性体を人工皮革サンプルから十分に除去する。この工程を3回繰り返して、人工皮革サンプルから高分子弾性体を完全に除去する。
【0076】
次に、複数回、人工皮革サンプルを流れる水に水洗し、マングルロールによってスクイージングして不織布シートのみを抽出した後、乾燥して、該抽出した不織布シートの重量を測定する。
【0077】
1)高分子弾性体の含量測定
下記式1の方法によって高分子弾性体の含量を計算する。
【0078】
【数1】

【0079】
2)不織布の密度測定
下記式2の方法によって不織布の密度を計算する。
【0080】
【数2】

【0081】
このような方法によって、実施例及び比較例による人工皮革において高分子弾性体の含量及び不織布の密度を測定した。その結果は、下記の表2のようである。
【0082】
【表2】

【0083】
5kg定荷重伸度の測定
前述した実施例及び比較例による人工皮革サンプルのそれぞれに対して、5kg定荷重伸度を測定し、人工皮革の伸度は、下記の方法によって測定した。その結果は、下記の表3のようである。
【0084】
測定方法は、次の通りである。
幅50mm、長さ250mmの試験片を縦及び横方向からそれぞれ3枚ずつ取って、その中央部に距離100mmの標線を引く。これを、クランプ間隔150mmとして、マルテンス疲労試験機に装着し、ゆっくり49N(5kgf)の荷重(下部クランプの荷重を含む)をかける。荷重をかけた状態で10分間放置して標線間距離を求める。定荷重伸度は、次の式によって算出する。
【0085】
定荷重伸度(%)=L−100
ここで、L:荷重をかけてから10分後の標線間距離
【0086】
【表3】

【0087】
本発明の技術思想または範囲から逸脱せずに本発明において様々な改変および変更を行うことができるということは当業者には明らかであろう。従って、本発明の改変物および変更物が添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入る限りは、本発明はそれらの改変物および変更物に及ぶことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極細繊維で構成された不織布に高分子弾性体が含浸されてなり、前記高分子弾性体が20〜30重量%で含まれ、前記不織布の密度が0.160〜0.250g/cmの範囲であることを特徴とする、人工皮革。
【請求項2】
前記不織布の密度は、0.180〜0.230g/cmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項3】
前記人工皮革は、5kg定荷重伸度が、長さ方向は20〜40%であり、幅方向は40〜80%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項4】
前記極細繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、またはポリブチレンテレフタレートからなり、前記高分子弾性体は、ポリウレタンまたはポリシロキサンからなることを特徴とする、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項5】
前記極細繊維は、0.3デニール以下の繊度範囲を有することを特徴とする、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項6】
溶剤に溶解される特性が互いに異なる、海成分の第1ポリマー及び島成分の第2ポリマーからなる海島型繊維を製造する工程と、
前記海島型繊維を用いて不織布を製造する工程と、
前記不織布を高分子弾性体溶液に浸漬して、前記不織布に高分子弾性体を含浸する工程と、
前記不織布において海成分である第1ポリマーを溶解させて除去する工程と、を含んでなり、前記高分子弾性体が20〜30重量%で含まれることを特徴とする、人工皮革の製造方法。
【請求項7】
前記高分子弾性体溶液は、5〜20重量%の濃度範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の人工皮革の製造方法。
【請求項8】
前記不織布を高分子弾性体溶液に浸漬する工程は、前記高分子弾性体溶液の温度を10〜30℃の範囲に維持した状態で、0.5〜15分間、前記不織布を浸漬する工程からなることを特徴とする、請求項7に記載の人工皮革の製造方法。
【請求項9】
前記不織布を製造する工程は、250〜400g/mの範囲の単位重量、及び1.5〜2.5mmの範囲の厚さを有するように不織布を製造する工程からなることを特徴とする、請求項6に記載の人工皮革の製造方法。
【請求項10】
前記製造された人工皮革において、前記不織布の密度は、0.180〜0.230g/cmの範囲であることを特徴とする、請求項9に記載の人工皮革の製造方法。
【請求項11】
前記不織布において海成分である第1ポリマーを溶解させて除去する工程は、前記不織布に高分子弾性体を含浸する工程の以前、又は以後に行うことを特徴とする、請求項6に記載の人工皮革の製造方法。
【請求項12】
前記海島型繊維を製造する工程は、前記第1ポリマーは10〜60重量%で含まれ、前記第2ポリマーは40〜90重量%で含まれるようにし、第1ポリマーには共重合ポリエステルを利用し、前記第2ポリマーにはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、又はポリブチレンテレフタレートを利用することを特徴とする、請求項6に記載の人工皮革の製造方法。


【公表番号】特表2012−515849(P2012−515849A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543444(P2011−543444)
【出願日】平成21年12月31日(2009.12.31)
【国際出願番号】PCT/KR2009/008014
【国際公開番号】WO2010/077111
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】