説明

人工肘関節

【課題】 肘関節の置換術中であっても関節部分の組立てが容易で、手術の安全性向上及び手術時間の短縮に有効なコンストレイン型の人工肘関節を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の人工肘関節は、上腕骨ステムとシャフト部とアンテリアフランジとを含む上腕骨コンポーネントと、尺骨ステムとスリーブ部と、を含む尺骨コンポーネントと、から成り、上腕骨コンポーネントのシャフト部と尺骨コンポーネントのスリーブ部とを回動可能に嵌合させてなる人工肘関節である。スリーブ部が、シャフト部の外径よりも狭幅のスリット状のスリーブ開口部と、シャフト部と接触するスリーブ部の内面に可撓性のスリーブインサートと、を備えて、シャフトにスリーブ開口部からスリーブ部をスナップイン嵌合可能となすとともに、スリーブ開口部の開口中心線が、尺骨ステムの主軸の下方向から肘部内方向に向かって45°〜90°の範囲にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肘関節の置換術に用いられる人工肘関節に関し、特にセミ−コンストレイン型の人工肘関節に関する。
【背景技術】
【0002】
リウマチ、変形性関節症、及び外傷等によって肘関節が損傷すると、肘関節の機能が失われると共に、激しい痛みを感じる。このような場合には、肘関節機能の復活のために、人工肘関節置換術が行われている。
人工肘関節は、上腕骨遠位部に固定する上腕骨コンポーネントと、尺骨近位部に固定する尺骨コンポーネントとを備えていて、それらの端部が協働して、関節部分を構成する。関節部分の形態によって、大きく2つのタイプがある。一方は、セミ−コンストレイン型と呼ばれており、上腕骨コンポーネントと尺骨コンポーネントとが蝶つがい機構などにより機械的に接続されている人工肘関節である。他方は、ノン−コンストレイン型と呼ばれており、使用時に、上腕骨コンポーネントと尺骨コンポーネントとが、接触している又は離脱可能に嵌め合わされている人工肘関節である。ノン−コンストレイン型のものは、2つのコンポーネントを、肘関節の靱帯によって支持するしくみになっている。そのため、加齢等により肘関節の靱帯が弱くなっている患者にノン−コンストレイン型の人工肘関節を使用すると、肘関節脱臼が起こりやすいという問題があり、そのような患者には、セミ−コンストレイン型の人工肘関節が適していると考えられている。
【0003】
従来のコンストレイン型の人工肘関節には、例えば、文献1に開示された人工肘が知られている。この人工肘関節は、ロッド11と第1の関節面S1を備えた上腕骨側部材10と、ロッド21と第2の関節面S2を備えた尺骨側部材20と、尺骨側部材20にネジ止めされており第3の関節面S3を備えたロック部材30と、を含んでいる。第2の関節面と第3の関節面は、連続した関節面を形成して、第1の関節面の周り180°以上の範囲に広がっていて、セミ−コンストレイン型の肘関節として機能する。
【特許文献1】特開2000−342610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の人工肘関節は、実際に人工肘関節の置換術の手順は記載されていないが、その形態から見て、以下のような手術の手順が推測される。まず、上腕骨側部材10と尺骨側部材20とを組み立てる前の状態で準備し、それぞれのロッド11及びロッド21を、上腕骨の遠位部及び尺骨の近位部にそれぞれ挿入する。次いで、第2の関節面S2と第1の関節面S1を位置合わせし、最後に、ロック部材30の第3の関節面S3が第1の関節面S1を覆うように、ロック部材30を尺骨側部材20にネジ止めして、肘関節を形成する。
【0005】
一般的な人工肘関節の置換術では、ロッド11、21が挿入される髄腔に骨セメントを注入してから、それぞれの骨に挿入し、骨セメントが完全に固化することにより、人工肘関節と骨との固定力を得ている。そのため、人工肘関節の各部材の位置決めと、上記の肘関節の形成を、骨セメントの固化前に完了しなくてはならない。しかし、上腕骨側部材10と尺骨側部材20は、ロッド11、21を骨に挿入して自由度の低い状態で、ロック部材30を所定位置に配置してねじ止めすることは、困難を伴う作業であり、骨セメントの固化前という制限された時間内に、関節部の組立て作業を完了し、肘部の良好な位置に配置するには熟練した技術を必要とする。
【0006】
また、人工肘関節の置換手術にかかる時間が長引くほど、患者にかかる負担が増大することから、手術時間を短縮することが望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、術中における関節部分の組立てが容易で、手術の安全性の向上及び手術時間の短縮に有効なセミ−コンストレイン型の人工肘関節を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の人工肘関節は、上腕骨に挿入する上腕骨ステムと、該上腕骨ステムの遠位部に両端部を固定されたシャフト部と、上腕骨の皮質骨を挟むためのアンテリアフランジと、を含む上腕骨コンポーネントと、尺骨に挿入する尺骨ステムと、該尺骨ステムの近位部に形成されて上記シャフトを受容するためのスリーブ部と、を含む尺骨コンポーネントと、から成り、上記上腕骨コンポーネントのシャフト部と上記尺骨コンポーネントのスリーブ部とを回動可能に嵌合させてなる人工肘関節であって、上記スリーブ部が、上記シャフト部の外径よりも狭幅のスリット状のスリーブ開口部と、シャフト部と接触するスリーブ部の内面に可撓性のスリーブインサートと、を備えて、上記シャフトに上記スリーブ開口部からスリーブ部をスナップイン嵌合可能となすとともに、上記スリーブ開口部の開口中心線が、尺骨ステムの主軸の下方向から肘部内方向に向かって45°〜90°の範囲にあることを特徴とする。
【0009】
本発明の人工肘関節は、上記シャフト部の外径と、上記スリーブ部の内径とが、それらの軸方向の中央部分に向かってそれぞれ縮径されているのが好ましい。
【0010】
また、本発明の人工肘関節は、上記上腕骨コンポーネントのアンテリアフランジが、フランジ部と、上記上腕骨ステムの外形状に対応したフランジ開口部と、を備えた別体のモジュラーフランジ部材から成るのが好ましい。モジュラーフランジ部材は、上記フランジ開口部に上腕骨ステムを挿通することにより上腕部ステムに固定できるようにされている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の人工肘関節は、関節部分を構成する上腕骨コンポーネントのシャフト部と、尺骨コンポーネントのスリーブ部とを、スナップインにより嵌め合わせることができるので、術中での肘関節の組立てが極めて容易で、従来の人工肘関節の組立てにかかっていた時間を短縮することができる。これにより、個々のコンポーネントを至適位置にセメント固定し、その後に人工肘関節の組立て及び位置決めを完了することが可能であり、手術がより容易かつ安全になる。
【0012】
この肘関節は、関節部に荷重が掛かったときにスリーブ開口部からシャフトが抜け落ちる(いわゆる脱臼)が起きないように、スリーブ開口部の形成位置を規定している。本発明の人口肘関節は、スリーブ開口部が、開口尺骨ステムの主軸の下方向から肘部内方向に向かって45°〜90°の範囲に形成されており、肘関節の屈曲角度0°(伸展状態)〜90°の範囲では、スリーブ開口部が垂直上方から外れた方向に位置するようになっている。日常生活において、人は、屈曲角度0°〜90°の範囲で荷物を持つことが多いが、本発明の肘関節は、その屈曲角度の範囲内では、シャフトがスリーブ開口部の方向に応力を受けず、日常生活において肘関節の脱臼が起こりにくくなっている。
【0013】
本発明の肘関節のシャフト部の外径とスリーブ部の内径とを、中心部分で縮径すれば、シャフト部とスリーブ部との嵌合に、関節横方向のずれを自己矯正するセルフセンタリング機能を与えることができる。これにより、腕部に応力が加わって、上腕骨コンポーネントと尺骨コンポーネントの肘関節部が多少横ずれしても、応力が外されると、それらのコンポーネントの嵌合位置は、自然に最適状態にもどることができる。よって、横ずれしたまま肘関節を屈曲することにより生じる悪影響、例えば、関節部の違和感や、人工肘関節の構成部材の異常摩耗を回避することができる。
【0014】
また、本発明の人工肘関節のアンテリアフランジを、上腕骨コンポーネントと別体にすれば、サイズの異なる複数のアンテリアフランジを準備して、患者の上腕骨の寸法形状に合わせて最適なアンテリアフランジを提供することができる。従来は、アンテリアフランジのサイズが一種類であり且つ誰にでも使用できるように、大きい寸法に形成されていたため、アンテリアフランジと上腕骨との間に必ず隙間があき、その隙間を埋めるために人工関節設置の際、セメント固化時間内に骨移植を行っていた。しかし、本発明のようにアンテリアフランジを別体にすることにより、患者ごとの上腕骨に合ったアンテリアフランジを選択することができ、骨移植をする必要をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の人工肘関節は、図1に示すように、関節部11で、上腕骨コンポーネント2と尺骨コンポーネント3とが連結されている。
この図は、肘関節を約90°に屈曲した状態を図示しており、上腕骨コンポーネント2のステム21が垂直方向に延びているのに対して、尺骨コンポーネント3のステム31が、水平方向に延びている。アンテリアフランジ4は、肘関節の可動域の内方に位置するように、上腕骨ステム21に取り付けられている。
【0016】
図2に示すように、尺骨コンポーネント3は、尺骨近位部の骨髄に挿入するための尺骨ステム31と、ステム31の近位側38に形成されたスリーブ部32とから構成されている。
スリーブ部32は、硬質材料から成るスリーブ外殻部32’と、可撓性部材から成るスリーブインサート33から構成されている。
【0017】
スリーブ外殻部32’は、主に、スリーブ部32の強度を保持する機能を有しており、特に、可撓性材料からなるスリーブインサート33が、必要以上に変形しないように維持する機能が重要である。
スリーブ外殻部32’は開口部を有しており、その開口幅は、上腕骨コンポーネント2のシャフト部23が通過できるように、シャフト部の直径より大きく形成されている。しかしながら、あまり大きい開口幅にすると、スリーブインサート33を支持することができなくなる。スリーブ外殻部32’の開口部の幅及び形状は、スリーブインサート33が適度に撓むことのできるように、またスリーブインサート33が抜け落ちないように、設計される。
【0018】
スリーブインサート33は、上腕骨コンポーネント2のシャフト部22を回動可能に受容する部分であり、上腕骨コンポーネント2のシャフト部22を受容するための断面円形の貫通孔39と、シャフト部22を押し込むためのスリット状のスリーブ開口部34が形成されている。
【0019】
スリーブインサート33のスリーブ開口部34は、尺骨ステム31の主軸36の下方向Iから肘部内方向に角度θ=45°〜90°の範囲に形成される。腕を伸ばしたとき、尺骨コンポーネント3は、方向Iがほぼ鉛直下向きになる。通常、手に重い荷物を持つ場合、腕を伸ばした状態になり、スリーブインサート33の貫通孔39には、ほぼ鉛直上向きに応力Fがかかる。スリーブ開口部34をθ=45°〜90°に形成すると、応力Fがかかった場合であっても、スリーブインサート33内に装入されたシャフト部22が、スリーブ開口部34から抜ける心配がない。
【0020】
また、腕を90°に曲げたとき、方向Iが水平方向に向く。この状態でも、比較的軽い荷物を持つことがある。スリーブインサート33の貫通孔39には、応力Fに対して垂直方向の応力F’がかかる。スリーブ開口部34の形成角度がθ=90°に近いと、シャフト部22がスリーブ開口部34から脱落する方向に応力F’がかかる。しかしながら、この状態で持つ荷物は、それほど重くないことが多いので、脱臼の可能性は低いと考えられる。
屈曲状態での脱臼の予防の観点から、θ=45〜80°であるのが、より好ましい。
【0021】
スリーブ開口部34の幅は、シャフト部22の装入容易性と脱落防止性の矛盾する要求を満たすように工夫されている。ここで、スリーブ開口部34の幅とは、スリーブインサート33の開口幅を指している。スリーブ開口部34の幅は、内方に向かって狭くすることができる。言い換えると、スリーブ開口部34の内方の幅t1と外方の幅t2とは、t1≦t2にすることができ、特に、t1<t2であるのが好ましい。これにより、上腕骨コンポーネント2のシャフト部22は、スリーブ部32に装入しやすく、スリーブ部31から脱落しにくくすることができる。
【0022】
スリーブ開口部34は、少なくとも内方の幅t1が、シャフト部22の直径よりも狭幅にされていれば、スリーブ部32内にシャフト部22を保持することができる。
スリーブ開口部34の外方の幅t2は、シャフト部22の脱落しにくさの点からすれば、シャフト部22の直径以下にされているのが好ましいが、シャフト部22の装入しやすさの点からすれば、シャフト部22の直径以上にされているのが好ましい。
【0023】
スリーブ開口部34の幅がt1<t2の場合には、スリーブ開口部34の内壁面34aは、スリーブ部の内方に向かって開口部34の幅が狭くなるように傾斜する。この内壁面34aは、図2に示すような側面図では直線上に表示されるように一定の傾斜度で傾斜しているが、これに限らず、傾斜を変化させることができる。例えば、内壁面34の傾斜を変化させて、内壁面34aが開口部34の空間に向かって突出するように(すなわち、外に向かって広くなるラッパ状の開口部34)開口部34を成形すると、t1が比較的狭い場合でもシャフト部22が装入しやすくなるので、好ましい。また、このラッパ状の開口部34は、t2を広くした場合でも、貫通孔39方向に向かうにつれて、開口部34の幅が急に狭くなるので、シャフト部22が脱落しにくくなる効果も期待できる。
【0024】
ステム31及びスリーブ外殻部32’は、チタン合金又はコバルトクロム合金等の生体安全性の高い金属から成形され、スリーブインサート33は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)から成形されている。スリーブインサート33の貫通孔39の内面は、尺骨関節面37であり、非常になめらかな表面に加工されている。
【0025】
図3に示すように、上腕骨コンポーネント2は、上腕骨遠位部の骨髄に挿入するための上腕骨ステム21と、ステム21の先端に形成された二股の上腕骨遠位端部28と、遠位端部28の二股の間に固定されたシャフト部22とから構成される。シャフト部22は、中心が細くなった鼓型になっており、シャフト部22の外周面は滑らかな曲面であり、上腕骨関節面27を構成している。
上腕骨コンポーネント2は、上腕部ステム21、上腕骨遠位端部28、及びシャフト部22が、チタン合金又はコバルトクロム合金等の生体安全性の高い金属から成形されている。
【0026】
図4に示すアンテリアフランジは、上腕骨コンポーネント2とは別体のモジュラータイプであり、本明細書では、モジュラーフランジ4と称する。
モジュラーフランジ4は、上腕骨の皮質骨を挟み込むためのフランジ部41と、フランジ部41を上腕骨コンポーネント2に接続するために、フランジ部42に対してほぼ垂直に形成されたフランジ接続部43と、フランジ接続部43に形成されていて、シャフト部21を挿通するためのフランジ開口部42と、から構成されている。
【0027】
モジュラーフランジ4は、全ての部分の寸法形状を変更したものを揃えることができる。特に、フランジ接続部43の寸法を変えたモジュラーフランジを準備することは、患者の皮質骨の厚さに合わせることができる点で有利である。従来の人工肘関節は、上腕骨ステムとフランジとの隙間が皮質骨を挟むには広すぎるので、隙間を埋めるために、骨移植していた。これに対して、本発明のモジュラーフランジ4を用いれば、上腕骨ステム21とフランジと4の隙間の調節が可能になり、骨移植の量を減らす又は骨移植不要な人工肘関節を得ることができる。
【0028】
図5は、上腕骨コンポーネント2の遠位部端28に固定されたシャフト22が、尺骨コンポーネント3のスリーブインサート34に形成された貫通孔39に装入されて、人工肘関節1の関節部11を構成している様子を示している。
【0029】
上腕骨コンポーネント2の遠位端部28は、二股に分岐しており、一方の遠位端部28aには、シャフト部22の端部を嵌め込むための凹部が、他方の遠位端部28bには、シャフト部22を挿入するための開口部が形成されている。シャフト部22は、ピン91及びストッパー92により、遠位端部28に固定されている。
この実施形態の人工肘関節では、シャフト部22は、端部の直径d2に比べて中心部の直径d1の小さい鼓状に成形されている。シャフト部22の外表面は、上腕骨関節面27であり、非常になめらかな表面に加工されている。
【0030】
図5から分かるように、尺骨コンポーネント3のスリーブ部は、スリーブ外殻部32と、その内側に固定されたスリーブインサート34が、嵌め合わされて構成されている。この例では、スリーブインサート34の肉厚は、中心部分の厚さ(h1)が最も厚く、両端に向かって薄くなり、両端の厚さ(h2)が最も薄くなっている。このように肉厚を変更すると、スリーブインサート33の貫通孔39の内面形状が、中心のくびれた鼓状になり、シャフト部22の外面形状と一致する。スリーブインサート33の貫通孔39の内表面は、尺骨関節面37であり、非常になめらかな表面に加工されている。
【0031】
シャフト部22の外寸法と、スリーブインサート34の貫通孔39の内寸法とでは、わずかに貫通孔39の内寸法のほうが大きくされている。このように寸法を設定すると、上腕骨関節面27と尺骨関節面37との間に僅かに隙間が形成されて、シャフト部22の回動運動がなめらかになる。よって、人工肘関節の置換術を行った後の肘関節の伸展及び屈曲運度を、なめらかに行うことができる。
【0032】
しかしながら、2つの関節面27、37の間の隙間のために、スリーブインサート34とシャフト部22とが横方向にずれることが可能になる。しかしながら、この実施形態の人工肘関節は、鼓状の形状を有することにより、元の位置関係に戻ろうとするセルフセンタリングの機能が発揮されるので、肘関節の屈折を数回行っているうちに、横ずれを解消することができる。
【0033】
このセルフセンタリング機能は、人工肘関節の使用感に影響を与えるのみでなく、人工肘関節の寿命を伸ばす効果も期待できる。関節部分が横ずれした状態で関節の伸展屈曲運動を繰り返すと、例えば、スリーブ部32が上腕部の遠位端部28に接触したり、スリーブインサート34の中心部のみ又は両端部のみが局部的に摩耗する等の設計外の当接や摩耗が生じる恐れがある。そのような設計外の当接や摩耗は、予想外の肘関節の脱臼などを引き起こす可能性があり、人工肘関節の寿命を縮める結果になるだろう。
【0034】
シャフト部22を鼓型にした場合、スリーブインサート33のスリーブ開口部34の正面から見た形状も、鼓型に合わせて中央の狭い型にするのが、シャフト部22の脱落抑制の観点から好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態にかかる人工肘関節の側面図である。
【図2】本実施形態にかかる尺骨コンポーネントの側面図である。
【図3】本実施形態にかかる上腕骨コンポーネントの斜視図である。
【図4】本実施形態にかかるアンテリアフランジの斜視図である。
【図5】本実施形態にかかる人工肘関節の関節部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 人工肘関節
11 関節部
2 上腕骨コンポーネント
21 上腕骨ステム
22 シャフト部
3 尺骨コンポーネント
31 尺骨ステム
32 スリーブ部
33 スリーブインサート
34 スリーブ開口部
35 スリーブ開口部の開口中心線
36 尺骨ステムの主軸
39 貫通孔
4 アンテリアフランジ
41 フランジ部
42 開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上腕骨に挿入する上腕骨ステムと、該上腕骨ステムの遠位部に両端部を固定されたシャフト部と、上腕骨の皮質骨を挟むためのアンテリアフランジと、を含む上腕骨コンポーネントと、
尺骨に挿入する尺骨ステムと、該尺骨ステムの近位部に形成されて上記シャフトを受容するためのスリーブ部と、を含む尺骨コンポーネントと、から成り、
上記上腕骨コンポーネントのシャフト部と上記尺骨コンポーネントのスリーブ部とを回動可能に嵌合させてなる人工肘関節であって、
上記スリーブ部が、上記シャフト部の外径よりも狭幅のスリット状のスリーブ開口部と、シャフト部と接触するスリーブ部の内面に可撓性のスリーブインサートと、を備えて、
上記シャフトに上記スリーブ開口部からスリーブ部をスナップイン嵌合可能となすとともに、
上記スリーブ開口部の開口中心線が、尺骨ステムの主軸の下方向から肘部内方向に向かって45°〜90°の範囲にあることを特徴とする人工肘関節。
【請求項2】
上記シャフト部の外径と、上記スリーブ部の内径とが、それらの軸方向の中央部分に向かってそれぞれ縮径されて、
これにより、シャフト部とスリーブ部との嵌合が、関節横方向のずれを自己矯正するセルフセンタリング機能を有することを特徴とする請求項1に記載の人工肘関節。
【請求項3】
上記上腕骨コンポーネントのアンテリアフランジが、フランジ部と、上記上腕骨ステムの外形状に対応したフランジ開口部と、を備えた別体のモジュラーフランジ部材から成り、
上記フランジ開口部に上腕骨ステムを挿通することにより、モジュラーフランジ部材が上腕部ステムに固定される請求項1に記載の人工肘関節。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−75129(P2007−75129A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262636(P2005−262636)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】