人工膝患者に深膝屈曲能力を提供するシステム及び方法
人工膝患者のために深い膝屈曲能力、高い生理的負荷支持能力、向上した膝蓋骨追跡能力をもたらすシステム及び方法。かかるシステム及び方法は、(i)大腿骨コンポーネントの前‐近位後顆への関節面の追加(その結果を達成する方法を含む)、(ii)植え込み法による大腿骨コンポーネント及び関連の大腿骨切断部の内部幾何学的形状の修正、(iii)先に得られていた膝屈曲よりも深い膝屈曲を可能にする特徴的な関節面を有する非対称脛骨コンポーネント、(iv)結果として膝関節の高い生理的負荷支持能力及び向上した膝蓋骨追跡能力をもたらす非対称大腿顆及び(v)関節運動特徴部を有するよう脛骨コンポーネントの関節運動面を改変することを含み、大腿骨コンポーネントの関節運動経路は、関節運動特徴部によって方向づけられ又は案内される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工膝(場合によっては、膝義足と称される)に関する。特に、本発明は、人工膝患者のためにより深い膝屈曲(以下、増深膝屈曲と称する場合がある)能力、完全機能的屈曲能力、高い生理的負荷支持能力、向上した膝蓋骨追跡能力をもたらすシステム及び方法に関する。具体的に言えば、かかる改良技術は、(i)大腿骨コンポーネントの前‐近位後顆への関節面の追加(その結果を達成する方法を含む)、(ii)植え込み法による大腿骨コンポーネント及び関連の大腿骨切断部の内部幾何学的形状の修正、(iii)先に得られていた膝屈曲よりも深い膝屈曲を可能にする特徴的な関節面を有する非対称脛骨コンポーネント、(iv)結果として膝関節の高い生理的負荷支持能力及び向上した膝蓋骨追跡能力をもたらす非対称大腿顆を含む。
【背景技術】
【0002】
整形外科医は、膝交換術の増加を経験している。この需要は、関節交換術と同じほど高いクオリティーオブライフ(QOL)を生じるような手技がほとんど無いことにより高まっているように思われる。
【0003】
さらに、膝交換の要望が増大しているということは、機能的屈曲をもたらすと共に完全機能的屈曲を可能にする耐久性があり且つ長持ちする人工膝器械又は膝義足の要望があるということを意味している。すなわち、人工膝の全体的機能及び性能に関する新たな医学的進歩を提供し、かかる器械に関連した対応の外科材料及び技術を向上させる研究に関する多大な要望が存在する。
【0004】
これに対応して、人工膝の改良技術は、要求につれて増大している。かくして、現在入手できる人工膝は、従来用いられた人工膝よりも通常の膝の特徴を模倣している。残念ながら、今日の人工膝には、依然として多くの欠点がある。
【0005】
欠点の中の1つは、人工膝患者が完全機能屈曲(full function flexion )とも呼ばれている深膝屈曲(deep function flexion )を達成することができないということにある。現在入手できる人工膝の中には、完全肢伸展(ゼロ度は、患者の膝が完全に伸展されて真っ直ぐである場合である)から130°を超える膝屈曲(即ち、曲げ)を可能にするものがあるが、かかる人工膝及び結果は、希である。完全機能又は深膝屈曲は、肢がその最大度まで曲げられた場合であり、これは、大腿骨と脛骨が互いに140°以上の角度をなしている場合であり、ただし、実際の角度は、人によって異なると共に体型によっても異なる。完全伸展は、脚/肢が真っ直ぐであり、人が立位にある場合である。
【0006】
標準の人工膝を付けている患者によって達成される度で表される平均範囲を説明するため、以下の説明が提供される。患者の膝又は肢が完全に伸展されると、大腿骨と脛骨は、同一平面内においてゼロ度をなし又は人によっては最高5〜10度の過伸展にある。しかしながら、膝がいったん曲がり、遠位脛骨が臀部に向かって動くと、この角度は、椅子に座っている人についてゼロから90°に増大する。さらに、脛骨が大腿骨の最も近くに位置し、踵が接触しないまでもほぼ臀部のところに位置すると、この角度は、約160°以上である。大抵の人工膝患者は、後者の位置又は膝関節を130°を超える角度に配置する位置を達成することができない。
【0007】
多くの人々の場合、かかる肢及び体の位置は、多くの場合達成されず又は普段所望されていない。しかしながら、ほぼ全ての人は、或る時点において、人が子供と遊ぶために跳んだり着地したりしているときに起こるにせよそうでないにせよ、又は活動的なライフスタイルを過ごしている人に単に偶発的に起こりがちである場合、130°を超える膝の屈曲を必要とする姿勢にあることがわかる。残念ながら、現在入手できる人工膝を装着した人は、大きな膝屈曲を必要とする活動には参加することができず、かくして、傍で見るだけになる。
【0008】
多くの年齢層及び文化では、かかる肢/膝及び体の姿勢が大抵のときに望ましく且つ必要である。例えば、アジアの文化又はインドの文化では、完全機能的屈曲及びしゃがみ込み姿勢は、よく見受けられ、比較的長い時間にわたって行われる。
【0009】
したがって、上述の患者及び特に相当なしゃがみ込み、膝を完全に曲げた状態での座位及び/又は祈祷又は食事の際の跪きがよく見受けられる文化圏の患者のため、現在入手できる人工膝を付けた人の間で現在可能であるレベルよりも高い膝屈曲を達成する人工膝に対する要望が存在する。
【0010】
かくして、人工膝に関する技術が現在存在するが、依然として課題が存在する。したがって、現行の技術を向上させ又はこれに代えて他の技術を用いることが当該技術分野における技術改良となる。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、人工膝に関する。特に、本発明は、人工膝患者に増深膝屈曲能力を提供するシステム及び方法に関し、特に、(i)患者の大腿骨及び適当な脛骨コンポーネントに一体化されたときに、結果的に完全機能的屈曲が得られるようにする人工膝の大腿骨コンポーネントの改造又はこれへの取り付けが行われた状態で広い関節面領域を人工膝の大腿骨コンポーネントに提供すること、(ii)植え込み法により大腿骨コンポーネント及び対向した大腿骨の内部幾何学的形状の改変を行うこと、(iii)人工膝の脛骨コンポーネントに非対称下面を提供すると共に一義的に位置決めされる関節面を提供して完全機能的屈曲を容易にすること及び(iv)膝の生理的負荷支持能力を厳密に再現すると共に膝蓋骨の良好な追跡能力を提供するために偏在化膝蓋骨(滑車)溝を備えた非対称大腿顆表面に関する。
【0012】
通常の膝では、第1に、ひかがみ筋がこれらの機械的利点を失う理由で、第2に、内側大腿顆が後方に転動し、それにより最大120°までの屈曲が生じないという理由で、約120°での実際の屈曲の中断が生じる。120°の屈曲により、内側大腿顆は、脛骨の内側半月の後角に対して後方に転動し始める。140°の屈曲では、大腿骨は、内側半月の後角上に載り上げる。したがって、屈曲の抵抗は、この時点及びこれを過ぎて感じられる。完全屈曲により、内側大腿顆は、120°のその位置から、後方脛骨皮質から10mmの位置のところまで約8mm戻る。大腿骨は、過屈曲の際、更に5mm側方に戻り、その結果、120°〜160°の脛骨大腿骨回転がほとんどなく又は全くないようになる。したがって、120°〜160°の過屈曲は、0°〜120°の屈曲の運動学とは異なる弧であり、160°では、外側半月の後角は、大腿顆の遠位側の脛骨の後面上に位置するようになる。したがって、後角は、圧縮されず、2つの骨は、互いに直接的な接触関係をなす。
【0013】
内側半月の後角は、140°で屈曲を妨害し、160°ではこれを完全に制限するため、過屈曲に対する最終的な限度が生じる。後角は又、内側大腿顆が後方脛骨皮質から10mmの箇所を越えて戻るのを阻止する。かくして、内側半月の後角は、深屈曲を達成する上で重要な構造体である。
【0014】
本発明の具体化は、人工膝患者が現在設計の人工膝を用いて従来達成できる度合いよりも深い膝屈曲を達成することができるようにする改良型人工膝と関連して行われる。本発明の少なくとも幾つかの具体化例では、内側半月の後角のための追加の隙間の実現を可能にするために大腿骨の幾つかの部分を切除することにより人工膝に増深膝屈曲が提供される。本発明の少なくとも幾つかの具体化例は、更に、大腿骨の切除部分内に関節面を位置決めすると共に/或いは設置して内側半月の後角と大腿骨の切除面との間にインターフェイスを提供する。
【0015】
本発明の少なくとも幾つかの具体化例では、関節面を大腿骨の後顆の近位前面(又は部分)に設けることにより人工膝に増深膝屈曲が提供される。本発明の少なくとも幾つかの具体化例は、人工膝の大腿骨コンポーネントの内側又は外側後顆のうちのいずれか一方又はこれら両方の近位前部分に設けられた追加の又は広い関節面を含む。大腿骨コンポーネントの実施形態は、増大した関節面領域を、患者が深膝屈曲中、自分の膝を曲げたとき、大腿骨コンポーネントと脛骨コンポーネントとの接触が維持され、増深膝屈曲を達成することができるよう前方方向において大腿骨コンポーネントの後顆の近位端部に追加する。
【0016】
本発明の少なくとも幾つかの具体化例では、脛骨関節運動を改変することにより増深膝屈曲を提供することができ又は向上させることができ、この場合、人工膝の脛骨コンポーネントの同形内側脛骨関節面の中心は、現在利用可能な中心に対して後方に動かされる。加うるに、かかる幾つかの実施形態では、外側脛骨関節面の全体的形状が変更される。
【0017】
本発明の少なくとも幾つかの具体化例では、人工膝の非対称大腿骨コンポーネントを提供することにより増深膝屈曲を達成することができる。非対称大腿骨コンポーネントにより、通常の膝で生じているように関節前後で伝えられる力の1/2以上の伝達を内側サイドに対して行うことができる。幾つかの具体化例では、人工膝の脛骨コンポーネント及び大腿骨コンポーネントの他の改造が行われる場合があり、かかる改造としては、非対称大腿顆を設けること、大腿骨コンポーネントに閉鎖丸みを設けること及び脛骨コンポーネント及び大腿骨コンポーネントの或る特定の領域を除去することが挙げられ、上述の全ての結果として、人工膝患者にとって、現在達成できる膝屈曲能力よりも深い膝屈曲能力が得られる。
【0018】
本発明の方法、改造及びコンポーネントは、人工膝の分野において特に有用であることが判明したが、当業者であれば理解されるように、かかる方法、改造及びコンポーネントは、多種多様な整形外科用途及び医療用途に利用できる。
【0019】
本発明の上記特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲に記載され又はこれらにおいて十分に明らかになろう。これら特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘された機器及び組み合わせによって実現されると共に得られる。さらに、本発明の特徴及び利点は、本発明の実施により学習でき又は以下に記載する説明から明白であろう。
【0020】
本発明の上述の特徴及び利点並びに他の特徴及び利点を得るようにするため、本発明の具体的な説明がその特定の実施形態を参照して行われ、これら実施形態は、添付の図面に記載されている。図面が本発明の代表的な実施形態だけを記載していて、従って、本発明の範囲を限定するものと見なされないことを理解して、本発明を添付の図面の使用により追加の特定事項及び細部をもって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】膝関節の屈曲範囲を示す図である。
【図1B】膝関節の屈曲範囲を示す図である。
【図2A】一般的な種々の人工膝の1つを示す図である。
【図2B】一般的な種々の人工膝の1つを示す図である。
【図2C】一般的な種々の人工膝の1つを示す図である。
【図3A】一般的な種々の人工膝の1つを示す図である。
【図3B】一般的な種々の人工膝の1つを示す図である。
【図3C】一般的な種々の人工膝の1つを示す図である。
【図4A】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図4B】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図4C】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図4D】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図5A】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図5B】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図5C】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図5D】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図6A】人工膝の代表的な先行技術の脛骨コンポーネントの側面図である。
【図6B】人工膝の代表的な先行技術の脛骨コンポーネントの側面図である。
【図6C】本発明の実施形態としての脛骨コンポーネントの代表的な実施形態の側面図である。
【図6D】本発明の実施形態としての脛骨コンポーネントの代表的な実施形態の側面図である。
【図6E】隆起部関節運動特徴部を有するよう改造された代表的な脛骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図6F】隆起部関節運動特徴部を有するよう改造された代表的な脛骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図6G】球形関節運動特徴部を有するよう改造された代表的な脛骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図6H】球形関節運動特徴部を有するよう改造された代表的な脛骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図7A】本発明の実施形態としての大腿骨コンポーネント及び脛骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図7B】本発明の実施形態としての大腿骨コンポーネント及び脛骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図8A】従来の大腿骨コンポーネントを示す図である。
【図8B】本発明の大腿骨コンポーネントの実施形態を示す図である。
【図9】本発明の実施形態としての大腿骨コンポーネントの実施形態に用いられるモジュラーアタッチメントを示す図である。
【図10A】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図10B】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図10C】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図10D】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図10E】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図10F】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図10G】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図10H】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図11A】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11B】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11C】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11D】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11E】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11F】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11G】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11H】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11I】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11J】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11K】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図12A】従来型大腿骨コンポーネントと本発明の実施形態としての大腿骨コンポーネントの比較図である。
【図12B】従来型大腿骨コンポーネントと本発明の実施形態としての大腿骨コンポーネントの比較図である。
【図13】従来型大腿骨コンポーネントと本発明の実施形態としての大腿骨コンポーネントの比較図である。
【図14】本発明の実施形態としての大腿骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図15A】大腿骨コンポーネントの実施形態相互間の比較図である。
【図15B】大腿骨コンポーネントの実施形態相互間の比較図である。
【図15C】大腿骨コンポーネントの実施形態相互間の比較図である。
【図15D】大腿骨コンポーネントの実施形態相互間の比較図である。
【図16A】図15A〜図15Dに示されている大腿骨コンポーネントの関節運動面を伸展させることができる仕方を示す図である。
【図16B】図15A〜図15Dに示されている大腿骨コンポーネントの関節運動面を伸展させることができる仕方を示す図である。
【図16C】図15A〜図15Dに示されている大腿骨コンポーネントの関節運動面を伸展させることができる仕方を示す図である。
【図16D】図15A〜図15Dに示されている大腿骨コンポーネントの関節運動面を伸展させることができる仕方を示す図である。
【図16E】大腿骨コンポーネントの関節運動面を伸展させることができる短くされた実施形態を示す図である。
【図16F】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16G】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16H】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16I】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16J】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16K】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16L】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16M】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16N】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16O】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16P】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16Q】本発明の代表的な実施形態としての伸展状態の関節運動面を含む膝単顆大腿骨コンポーネントを示す図である。
【図16R】本発明の代表的な実施形態に従って漸減半径及び凹みを有する膝単顆大腿骨コンポーネントを示す図である。
【図16S】本発明の代表的な実施形態に従って凹みを有する切頭大腿骨コンポーネントを示す図である。
【図17】約160°に屈曲された通常の膝のX線像を示す図であり、膝蓋骨の位置を更に示す図である。
【図18A】本発明の代表的な実施形態としての大腿骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図18B】本発明の代表的な実施形態としての大腿骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図18C】本発明の代表的な実施形態としての大腿骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図19A】主関節面に対して後に位置する関節面を備えていない脛骨コンポーネントを示す図である。
【図19B】主重量支持関節運動特徴部の後方に位置する脛骨完全屈曲関節運動を示す図である。
【図20A】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20B】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20C】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20D】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20E】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20F】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20G】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20H】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20I】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図21】膝の深屈曲中における脛骨の内側プラトーの後方関節面と膝窩面との代表的な相互作用を示す図である。
【図22】膝窩面の切除に続く切除ブロック及び大腿骨の代表的な具体化例を示す図である。
【図22A】膝窩面の切除前における切除ブロック及び大腿骨の代表的な具体化例を示す図である。
【図23】深屈曲中における脛骨の内側プラトーの後方関節面と人工膝の大腿骨コンポーネントの伸展部分の代表的な相互作用を示す図である。
【図23A】深屈曲中における脛骨コンポーネントの内側脛骨プラトーの後方完全屈曲関節面と人工膝の大腿骨コンポーネントの伸展部分の代表的な相互作用を示す図である。
【図24】本発明の代表的な実施形態に従って脛骨コンポーネント及び脛骨内に挿入されたステムの断面図である。
【図25】本発明の代表的な実施形態としてのステムの一実施形態を示す図である。
【図26】本発明の代表的な実施形態としてのステムの別の実施形態を示す図である。
【図27】本発明の代表的な実施形態としてのステムの別の実施形態を示す図である。
【図28】本発明の代表的な実施形態としての調節可能なステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は人工膝に関する。特に、本発明は、人工膝患者のために増深膝屈曲能力を提供するシステム及び方法に関し、特に、(i)大腿骨の後顆の近位前方面(又は部分)に伸展状態の関節面を提供すること、(ii)植え込み方法による大腿骨コンポーネント及び関連の大腿骨切開部の内部幾何学的形状に対して改造を行うこと、(iii)非対称脛骨関節面を設けること及び脛骨コンポーネント及び大腿骨コンポーネントの或る特定の領域を除去することを含む人工膝の脛骨及び大腿骨コンポーネントに対する改造を行うこと、(iv)閉鎖丸みを大腿骨コンポーネントに設けることを含む非対称大腿顆を設けること、に関し、上述の全ての結果として、人工膝患者にとって、従来達成可能な膝屈曲能力よりも高い又は深い膝屈曲能力が得られる。
【0023】
図示すると共に本明細書において説明する本発明は、他の形態で具体化できることが強調される。かくして、図面も本発明のシステム及び方法の種々の実施形態に関する以下の詳細な説明も本発明の範囲を限定するものではない。図面及び詳細な説明は、本発明の実施形態の実施例の単なる例示であり、本発明の実質的な範囲は、多くの実施形態を記載するよう作られた添付の特許請求の範囲の記載にのみ基づいて定められる。本発明の種々の実施形態は、図面を参照すると最も良く理解され、図中、同一の要素は、同一の英数字で示されている。
【0024】
今、図面を参照すると、図1〜図3は、本発明の実施形態の特徴を理解するのを助けるための全体的参照のために提供されている。図1A及び図1Bは、自分の膝を伸展させたり屈曲させたり(曲げたり)している人の脛骨と大腿骨との間で可能な角度範囲を示している。具体的に説明すると、図1Aは、人が自分の膝を伸展させたり曲げたりしている間に可能な角度範囲を示しており、膝の中には、160°、165°以上まで屈曲できるものがあることがわかる。図1Bは、別の位置でのこれらの種々の角度を示している。これらの図は、本発明の実施形態に関して一般に現在入手できる人工膝では可能ではない人工膝患者について135°を超える膝の屈曲がどのようにして可能であるかを示す説明の間、念頭に置かれるべきである。
【0025】
図2A〜図2Cは、人工膝10の全体の種々の斜視図である。具体的に説明すると、図2Aは、人工膝関節10を備えた左側膝関節の矢状図であり、通常の膝の脛骨及び大腿骨は、透けた状態にある。図2Bは、人工膝10の大腿骨コンポーネント12の拡大図であり、図2Cは、人工膝の脛骨コンポーネント14の上側斜視図である。図2Bは、大腿骨コンポーネント12の或る特定のコンポーネント、例えば、アタッチメント(図示されていないが、以下において説明する)に一体的に結合するよう本発明の実施形態において改造可能な内側受け入れ領域16並びに外側受け入れ領域18を示している。大腿骨コンポーネント12の内部幾何学的形状は、一体形大腿骨コンポーネント12を図4Dに示されているように切除大腿骨32上の定位置に巻くことができるよう設けられている。かくして、大腿骨コンポーネント12の内部幾何学的形状は、膝蓋骨の関節運動及び後顆の近位部分の前方伸展を許容する種々の表面(領域16,18を含む)を含む。後顆の切除部分は、全膝屈曲の際に圧縮荷重を受ける平坦な表面を提供する。加うるに、切除表面は、大腿骨コンポーネントの関節面が本質的に、切除される表面と同一の位置にあるよう提供される。したがって、大腿骨と脛骨との通常の関係は、全屈曲を備えた状態で保たれる。加うるに、膝を完全に屈曲させると、大腿骨コンポーネントと下に位置する大腿骨との間のインターフェイスは、主として、剪断力ではなく圧縮荷重を受ける。圧縮力は、大腿骨コンポーネントと大腿骨との間により安定したインターフェイスを提供し、それにより、弛みの恐れを減少させる。したがって、幾つかの実施形態では、大腿骨コンポーネントと脛骨コンポーネントとの間のインターフェイスは、膝関節の全屈曲の際、大腿骨コンポーネントと下に位置する大腿骨との間に働く圧縮力を高めるよう構成されている。
【0026】
また、図2Bには、内側大腿顆表面20及び外側大腿顆表面22が見える。図2Cは、脛骨コンポーネント14及びその要素、即ち、外側脛骨顆表面24、内側脛骨顆表面26及び顆間表面28を示している。人工膝10が機能しているとき、大腿骨コンポーネント12の内側大腿顆表面20と脛骨コンポーネント14の内側脛骨顆表面26との間及び大腿骨コンポーネント12の外側大腿顆表面22と脛骨コンポーネント14の外側脛骨顆表面24との間にインターフェイスが存在する。
【0027】
図3A〜図3Cは、種々のコンポーネントを備えた人工膝10全体の追加の斜視図である。具体的に説明すると、図3Aは、大腿骨コンポーネント12が上述したように脛骨コンポーネント14に対して関節運動する状態の人工膝10の正面図である。図3Bは、大腿骨コンポーネント12の側面図、図3Cは、特に脛骨コンポーネントの内側サイドの脛骨コンポーネント14の側面図であり、内側脛骨顆表面26を示している。内側大腿顆表面20は、内側脛骨顆表面26と滑動可能にインターフェイスし、その結果、人が自分の膝を屈曲させ又は伸展させているときに、内側大腿顆表面20の弧が内側脛骨顆表面26に沿って動くようになっている。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態では、関節面を大腿骨の後顆の近位前方表面(又は部分)に設けることにより増深膝屈曲が人工膝10に与えられる。本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、大腿骨コンポーネント12の内側又は外側後顆のうちのいずれか一方又は両方の近位前方部分に設けられる追加の又は拡大された関節面を含む。大腿骨コンポーネント12の実施形態は、拡大された関節表面領域を前方方向において大腿骨コンポーネント12の後顆の近位端部に追加し、患者が深膝屈曲の際に自分の膝を曲げたとき、大腿骨コンポーネント12と脛骨コンポーネント14の接触が維持され、増深膝屈曲を達成することができるようになっている。
【0029】
これをどのようにして達成できるかということについての4つの互いに異なる実施例について図を参照して説明する。関節表面領域を大腿骨コンポーネント12の後顆の近位端部に前方方向において追加増大させる方法が本発明の実施形態によって提供される。
【0030】
図8A及び図8Bは、大腿骨コンポーネント12及び大腿骨コンポーネント12の後顆の近位端部に関節表面領域を追加増大させる方法を示している。図8Aは、従来型大腿骨コンポーネント12の側面図である。本発明の人工膝の第1の実施形態では、図8Aの大腿骨コンポーネント12の陰影を施した領域、即ち、後顆が、骨に対向した結果として得られる表面が遠位大腿骨のシャフトの後面と同一の平面に近づくまで前方方向に厚くされている。この厚肉化は、図8Bを参照すると理解できる。この結果、大腿骨コンポーネント12の後顆の広い関節表面領域が得られる。これには、より多くの骨を切除することが必要であるが、これは、その他の点においては、現行の人工膝に対する容易な改造であり、現行の外科技術の改変をほとんど必要とせず又は全く必要としない。
【0031】
関節表面領域を広げる第2の形式の実施形態が図4A〜図5Cに示されている。この種の実施形態を利用する方法が図9〜図10Hに示されている。この種の実施形態は、人工膝10の実施形態の大腿骨コンポーネント12への伸展アタッチメントを利用し、この伸展アタッチメントは、大腿骨コンポーネント12と患者の大腿骨の両方に一体化されると、結果的に、大腿骨コンポーネント12の広い表面領域が得られる。
【0032】
図4A〜図5Dに示されているように、この種の実施形態は、後顆の近位部分の前方部分の関節表面領域を広げるようモジュラー屈曲取り付け面を提供するモジュラーアタッチメント30を有する。モジュラーアタッチメント30は、比較的従来の全膝大腿骨コンポーネント12の内側又は非関節面に取り付け可能である。モジュラーアタッチメント30は、一実施形態では、大腿骨コンポーネント12の後顆のうちの一方又は両方の平坦な前面の凹み受け入れ領域内に部分的に受け入れ可能であり、かくして、内側後顆、外側後顆又はこれら両方に使用可能な一部分を有する。変形例として、モジュラーアタッチメントは、大腿骨それ自体の切除後顆のうちのいずれか一方又は両方に設けられた溝内に植え込まれても良い。
【0033】
モジュラーアタッチメント30は、大腿骨コンポーネント12の内側大腿顆表面20及び/又は外側大腿顆表面22の前方連続部として拡大された関節接触面を提供する。幾つかの実施形態では、モジュラーアタッチメント30は、当初、大腿骨コンポーネント12上に配置され、次に、患者の大腿骨の遠位端部に取り付け可能である。他の実施形態では、モジュラーアタッチメント30は、まず最初に、大腿骨の遠位端部の後顆に連結され、次に、大腿骨コンポーネント12に一体的に連結されるのが良い。モジュラーアタッチメント30は、内側サイド、外側サイド又はこれら両方のサイドに使用可能である。
【0034】
図4A〜図4Dは、大腿骨コンポーネント12及びモジュラーアタッチメント30の実施形態の斜視図である。上述したように、モジュラーアタッチメント30は、大腿骨コンポーネント12に取り付けられると共に患者の大腿骨に取り付けられて大腿骨コンポーネント12の表面領域を拡大し、最終的に、人工膝患者において140°を超える深膝屈曲を可能にしている。図4Aは、大腿骨コンポーネントの後顆に取り付けられたモジュラーアタッチメント30を有する大腿骨コンポーネント12の実施形態の単純化された側面図である。図4Dは、患者の大腿骨及び人工膝の大腿骨コンポーネントに一体的に取り付けられたアタッチメントの側面図である。モジュラーアタッチメント30は、図4B〜図4Dに示されているようにモジュラー(モジュール式)であるのが良く、内側受け入れ領域16と外側受け入れ領域18のいずれか一方又は両方(即ち、図2Bに示されているように、大腿骨コンポーネント12の後顆の前方内面)及び/又は大腿骨又は大腿骨コンポーネント12と大腿骨の両方の内側後顆及び外側後顆のうちのいずれか一方又は両方に設けられた凹部内に嵌まり込むことができる。別の実施形態では、モジュラーアタッチメント30は、以下に説明するように、大腿骨コンポーネントの永続部分であるのが良い。
【0035】
図4Bは、モジュラーアタッチメント30の一実施形態の側面図であり、図4Cは、モジュラーアタッチメント30の図示の実施形態の上面図である。モジュラーアタッチメント30の図示の実施形態の特定の寸法は、与えられておらず、当業者であれば、かかる寸法は、患者によって変更可能であることが認識され、更に、モジュラーアタッチメント30の種々の部分は全て、大腿骨コンポーネント12の顆とほぼ同じ幅であるよう幾つかの実施形態において形成可能であることが認識されよう。
【0036】
幾つかの実施形態では、モジュラーアタッチメント30は、第2の部分にほぼ垂直な第1の部分を有する。モジュラーアタッチメント30の第1の部分は、モジュラーアタッチメント30の一端部のところにフランジ付き関節領域36(「フランジ付き領域36」)を必要とすると共にこれから延びる細長いステム38を必要とし、この細長いステムは、フランジ付き領域36から遠位側にフランジ付き領域にほぼ垂直に延びている。したがって、細長いステム38は、フランジ付き領域36の非関節側に取り付けられている。細長いステムがフランジ付き領域36の内側‐外側幅よりも実質的に短い内側‐外側幅を有するものとして図4Cに示されているが、他の実施形態の細長いステム38は、大腿骨コンポーネント12それ自体の後顆の内側‐外側幅までの任意の内側‐外側幅のものであって良い。
【0037】
細長いステム38は、上側サイド40及び下側サイド42を有している。上側サイド40上の大腿骨32及び下側サイド42上の大腿骨コンポーネント12との一体連結を可能にするようこぶ状突起44が上側サイド40及び下側サイド42のいずれか一方又は両方に設けられるのが良い。或る形式のこぶ状突起受け入れ溝又は凹部(図示せず)がこれらこぶ状突起44を受け入れて大腿骨32、アタッチメント30及び大腿骨コンポーネント12との一体連結を確実にするよう大腿骨32及び/又は大腿骨コンポーネント12に設けられるのが良く、モジュラーアタッチメント30は、大腿骨32と大腿骨コンポーネント12との間に配置される。
【0038】
細長いステム38にこぶ状突起44が設けられていない実施形態では、アタッチメント30は、大腿骨コンポーネント12の内側受け入れ領域16及び外側受け入れ領域18のうちのいずれか一方又は両方に設けられた凹部内に嵌まり込むのが良い。モジュラーアタッチメント30の細長いステム38は、かかる凹部内に嵌まり込んでこれと一体に連結される。モジュラーアタッチメント30は、それと同時に、細長いステム38の上側サイド40(全体として)上の大腿骨に結合可能である。細長いステムにこぶ状突起が設けられていない実施形態では、モジュラー部分のステムは、大腿骨の切除後顆に設けられた溝内に更に嵌まり込むことができる。
【0039】
モジュラーアタッチメント30は、大腿骨コンポーネント12の全体的表面領域を拡大すると共に大腿骨コンポーネント12と脛骨コンポーネント14との間に存在するインターフェイス及び接触部を長くする。これにより、人工膝患者における大きな膝屈曲が可能になる。これは、大腿骨コンポーネント12は、全屈曲範囲にわたり脛骨コンポーネント14とインターフェイスされた状態のままであり、その結果、痛みのない膝屈曲が得られるからである。
【0040】
この拡大した表面領域がなければ、人工膝の大腿後顆の内側及び外側近位縁部は、脛骨コンポーネント14の近位表面中に押し入る場合があり、それにより脛骨コンポーネント14の摩耗が生じる場合がある。加うるに、脛骨コンポーネント14は、人工膝の後顆の近位縁部の前方及び/又は近位側に位置した遠位大腿骨32の骨に接触する場合があり、それにより、痛みが生じると共に人工膝患者の屈曲が制限され、脛骨コンポーネントの摩耗が生じる場合がある。さらに、この追加された表面領域がなければ、屈曲が140°を超える場合、脛骨コンポーネント14は、遠位側の方向で大腿骨コンポーネント12に力を及ぼす場合があり、その結果、大腿骨コンポーネント12が弛む場合がある。したがって、モジュラーアタッチメント30は、人工膝の寿命を延ばし、患者の痛みを和らげ、最終的には、人工膝患者が深膝屈曲又は全機能的屈曲を達成することができるようにする。
【0041】
図5A〜図5Dは、モジュラーアタッチメント30が大腿骨コンポーネント12及び大腿骨32に取り付けられているときのモジュラーアタッチメント30の種々の斜視図である。図5Aは、モジュラーアタッチメント30が大腿骨コンポーネント12の取り付けに先立って大腿骨32に取り付けられているときのモジュラーアタッチメント30の図である。図5B〜図5Dは、モジュラーアタッチメント30が大腿骨32への取り付けに先立って大腿骨コンポーネント12内に引っ込められており、具体的に言えば、モジュラーアタッチメント30が内側大腿受け入れ領域16及び外側大腿受け入れ領域18のうちのいずれか一方又は両方に一体連結されているときのモジュラーアタッチメント30の図である。
【0042】
図9及び図10A〜図10Hは、モジュラーアタッチメント30を大腿骨32に取り付け、次に、大腿骨コンポーネント12を大腿骨32及びモジュラーアタッチメント30に取り付ける方法を示している。図9は、モジュラーアタッチメント30の取り付けを可能にするよう大腿骨に凹部を形成する前に、大腿骨32に必要な切除の仕方を示している。図9及び図10A〜図10Hは、モジュラーアタッチメント30に必要な特定の切除法を示していないが、必要な切除法は、当業者であれば理解されよう。切除を図10Aに示されているように完了した後、モジュラーアタッチメント30を図10Bに示されているように大腿骨に取り付けるのが良い。次に、大腿骨コンポーネント12を図10C〜図10Hに示されているように位置決めすると共に動かすことにより大腿骨コンポーネント12を大腿骨32(及び所望ならばモジュラーアタッチメント30)に取り付けるのが良い。図10C〜図10Hに示された手順から理解できるように、大腿骨コンポーネント12を定位置に回転させ又は転動させる必要があり、最初の接触は、図10Eに示されているように後方領域で始まり、図10Gに示された完全着座位置に進む。これは、現行の技術と比較して幾分かの追加のやり方及び訓練を必要とする新たな植え込み技術である。
【0043】
図4Aを参照して上述したように、延長された関節面を備える第3の形式の実施形態は、モジュラーではなく別個のモジュラーアタッチメント30を利用していない。かかる実施形態では、モジュラーアタッチメント30のフランジ付き領域36に相当する延長された関節面は、大腿骨コンポーネント12の一方又は両方の顆の一部として一体に形成されるのが良い。かかる1つの実施形態をどのように配置するかは、図11A〜図11Kに示されている。これらの図を参照して理解できるように、かかる実施形態の配置は又、図10C〜図10Hに示されている技術と同様な回転配置技術を利用する。図10H及び図11Kを参照すると理解できるように、モジュラー又は非モジュラー実施形態のうちの任意のものは、オプションとして、大腿骨コンポーネント12の前フランジに配置された1本又は2本以上のねじによって更に固定されるのが良い。
【0044】
図11A〜図11Kに示された実施形態の一利点は、植え込みを行っている外科医が遠位且つ前方斜め切断部を作った後に、図示の実施形態を利用すべきか伝統的な大腿骨コンポーネント12を利用すべきかを決定できるということにある。これは、図12A及び図12Bに示されている。図12Aは、伝統的な大腿骨コンポーネント12を示している。図12Bは、図11A〜図11Kに示された大腿骨コンポーネント12の実施形態を示している。図を参照して理解できるように、遠位切れ目62及び前方斜め切断部64は、本質的に互いに同一である。これは、図13を参照すると更に理解でき、図13は、図12A及び図12Bを互いに重ね合わせた図であり、遠位大腿切断部62と前方斜め切断部64が互いに同一であることを示しているだけでなく、図示の実施形態のために切除された骨の全量が現在の技術及び大腿骨コンポーネント12を用いて切除された量とほぼ同じであり又はこれよりも少ないことを示している。
【0045】
図11A〜図11Kに示されている大腿骨コンポーネント12の非モジュラー実施形態及び図4A〜図5Dに示されている大腿骨コンポーネントのモジュラー実施形態では、人工膝の内側平坦面(植え込まれると、骨と接触関係をなす)が互いに出会う接合部がある。これら平坦面は、互いに鋭角をなして近づくのではなく、2つの平坦面を結ぶ丸みを有しても良く又は有さなくても良い。平坦面の接合部の全てが丸みを必要としているわけではなく、幾つかの実施形態では、平坦面の接合部がいずれも丸みを有していない。平坦面は、正確に従来型膝上と同一の平面内に位置しても良く、又は位置しなくても良く、かかる平坦面は、非モジュラー表面の配置を可能にし、かかる非モジュラー表面は、遠位大腿シャフトの後皮質の連続部である平面まで又はほぼこれまで延びる大腿後顆の近位前方部分に関節運動を提供する。1つ又は2つ以上の丸みが大腿骨コンポーネント12の内側平坦面の接合部に提供される実施形態では、対応の丸み31又は湾曲が図5Aに示されているように大腿骨の切除骨面に提供されるのが良い。当業者であれば理解できるように、対応の丸み31の存在は、図10A〜図10H及び図11A〜図11Kに示されているように大腿骨コンポーネント12の回転配置を助けることができる。
【0046】
この内部構成により、大腿骨コンポーネント12を当初、屈曲位置で大腿骨に取り付けることができ、次に、図10A〜図10H及び図11A〜図11Kに示されていると共にこれらを参照して説明するように大腿骨コンポーネント12を完全に植え込んでいるときに大腿骨コンポーネント12を回転させて完全伸展位置にするのが良い。コンポーネントをしっかりと安定化させるためにねじをオプションとして大腿骨コンポーネント12の前フランジに配置するのが良い。これにより、モジュラーアタッチメント30が既に大腿骨32の後顆に植え込まれた状態で、非モジュラー大腿骨コンポーネント12又はモジュラー大腿骨コンポーネント12を植え込むのが容易になる。
【0047】
大腿骨コンポーネント12の第4の形式の実施形態が図14に示されている。この種の実施形態は、大腿骨の遠位側の1/4〜1/3の後方皮質の連続部と同一平面内に位置した領域まで近位側且つ前方に延びる後顆の関節面のうちの何割か又は全てに加えて、体重支持遠位大腿顆に取って代わった大腿骨コンポーネント12を有する。かかる実施形態は、別々の内側及び外側コンポーネントを有するのが良く又は内側及び外側顆に取って代わる又は再表面仕上げする1つのコンポーネントを形成するよう互いに取り付けられるのが良い。
【0048】
歴史的に、多くの初期の全膝大腿骨コンポーネント12は、膝蓋大腿関節に関するものではなかった。患者のうちの或る特定の割合は、前方膝疼痛を有しているので、前方フランジが滑車(膝蓋骨溝)を再表面仕上げするために大腿骨コンポーネント12に追加されていた。これにより、膝蓋骨が弱体化し、その結果、患者の中には骨折を起こした者もいた。近年、コンポーネントの植え込みを必要としない膝蓋骨疼痛を最小限に抑えるための技術が開発された。図14に示された実施形態は、人工膝の顆部分の一体部分である前方フランジを備えていない。予想されることとして、かかる器械12は、単独で、何割かの患者に関しては、大腿顆に取って代わるのに適している場合があり、それにより、外科医は、適応であれば膝蓋大腿関節を治療することができる。変形例として1つ又は別々の膝蓋大腿骨関節面を植え込んでも良い。膝蓋大腿インプラントは、完全に別個であっても良く、或るいは、モジュラーであって図4に示された器具に取り付けられても良い。図14に示されている実施形態は、モジュラー前方フランジ(滑車溝)を図示の器械に取り付ける能力を備えている。
【0049】
本発明の具体化例は、大腿骨コンポーネント12、脛骨コンポーネント14及び/又はモジュラーアタッチメント30を含み、これらは各々、金属、金属合金、セラミック、炭素繊維、ガラス、ポリマー(骨セメントを含む)、有機材料、取り出した人又は動物の組織及び別個に又は上述の材料の2つ又は2つ以上の任意の組み合わせで用いられる天然に産出する又は合成材料から成る。
【0050】
上述の説明及び対応の図を参照すると理解できるように、現在存在する大腿骨コンポーネント12は、後顆の近位前方方向に短い距離延びるに過ぎない関節面を提供する。例えば、図2A及び図8Aを参照すると理解できるように、後顆の前方端部のところの関節面は、代表的には、患者の元の後顆の最も後方の部分(又は大腿骨コンポーネント12の最も後方の部分)から大腿シャフトの後方皮質の遠位側の1/4〜1/3の連続部である平面まで測定して、後顆のせいぜい前方側の1/3まで延びてこれに取って代わる。
【0051】
これとは対照的に、図示すると共に上述した大腿骨コンポーネント12の種々の実施形態は、内側顆及び後顆の最も後方の部分と大腿シャフトの後顆の遠位側の1/4〜1/3の連続部である平面との間の前後距離の半分以上にわたって延びるよう近位前方方向に延びる外側顆のうちのいずれか一方又は両方のための延長された関節面を提供する。幾つかの実施形態では、延長された関節面は、後顆の最も後方の部分と大腿シャフトの後方皮質の遠位側の1/4〜1/3の連続部である平面との間の前後距離の少なくとも2/3にわたって延びる。他の実施形態では、延長された関節面は、後顆の最も後方の部分と大腿シャフトの後方皮質の遠位側の1/4〜1/3の連続部である平面との間の前後距離のほぼ全体にわたって延びる。さらに別の実施形態では、延長された関節面は、図16A〜図16Dに示されているように、大腿シャフトの後顆の遠位側部分を含むよう更に延びるのが良い。
【0052】
骨に接触する場合があり又は接触しない場合があり、大腿骨関節面の連続部である延長部の表面を全屈曲関節部という場合がある。脛骨が全伸展状態にあるときに脛骨の関節面の一部をなしていない内側及び/又は外側の後方縁部に対応の表面が設けられるのが良い。例えば、本発明の幾つかの具体化例では、内側脛骨運動部の後方縁部には対応の表面が設けられ、内側関節面の中心は、コンポーネントの後縁から前縁までの距離の20%を越えたところに位置する。
【0053】
図19Aに示された実施形態は、主関節面43に対して後方に位置する非関節面41を示している。図19Bは、全屈曲関節面45及び関節面47を示している。図19Bの脛骨完全屈曲関節部は、主体重支持関節部の後方に位置し、大腿骨コンポーネントの特定の関節領域、即ち、図16A〜図16Qに示されると共に図16Eの僅かに短くされた実施形態で示されている大腿完全屈曲関節部(近位側延長部50)と共に関節運動する。
【0054】
引き続き図16Eを参照すると、本発明の幾つかの実施形態では、大腿骨コンポーネント53の完全屈曲関節面402は、種々の関節丸み404,406,408の区分を有する。各区分は、膝に関する屈曲範囲全体を通じて大腿骨コンポーネント53と脛骨コンポーネント(図示せず)との関係を制御する手段として提供される。
【0055】
丸み404は、凹み410が関節面402上に形成されるよう漸減半径を有するものとして特徴付けられる。幾つかの実施形態では、凹み410は、膝関節が図16Fに示されているように約−10°まで過剰に伸展された場合に脛骨コンポーネント14の前隆起部420を受け入れるよう構成されている。さらに過剰伸展時、図16Gに示されているように、凹み410は、前隆起部420に当たり、その結果、凹み410と前隆起部420との間のインターフェイスは、大腿骨コンポーネント53と脛骨コンポーネント14との間の支点として働くようになる。したがって、膝関節を約−10°を越えて過伸展させると、関節面402の丸み404は、図示のように脛骨コンポーネント14から伸延される。この伸延量が増大すると、膝関節の密な結合組織は、応力を受け、それにより膝関節のそれ以上の過伸展が制限される。
【0056】
次に図16Hを参照すると、膝関節が約0°屈曲において中立の伸展位置で示されている。約0°の屈曲時、丸み404,406は、脛骨関節面403に部分的に接触するが、膝関節は、完全に拘束されることはない。したがって、大腿骨コンポーネント53は、脛骨コンポーネント14に対して前後に動くことができるようになる。幾つかの実施形態では、約0°の屈曲と20°の屈曲との間で膝関節内に弛緩をもたらす。他の実施形態では、丸み404,406は、約0°の屈曲と40°の屈曲との間で膝関節内に弛緩をもたらす。
【0057】
次に図16Iを参照すると、膝関節が約10°の屈曲状態で示されており、大腿骨コンポーネント53は、脛骨コンポーネント14に対して前方にずらされている。図16Jは、膝関節を約10°の屈曲で示しており、大腿骨コンポーネント53は、脛骨コンポーネント14に対して後方にずらされている。丸み404,406によって提供される膝関節内の前後の弛緩は、膝関節の高密度結合組織内の張力と対向した大腿及び脛骨関節面402,403の湾曲の両方によって制限される。約0°と約20°との間の弛緩をもたらすことにより、ユーザにより見知され又は経験されるように、膝屈曲の生まれつきの機序が保たれる。幾つかの実施形態では、弛緩は、約0°と約20°との間ではなくなり、それにより、膝屈曲の生まれつきの機序が所望通りに改変される。
【0058】
約20°への膝関節のそれ以上の屈曲時、丸み406は、主として、図16Kに示されているように脛骨関節面403に接触する。しかしながら、幾つかの実施形態では、膝関節内の弛緩は、約20°の屈曲時に維持され、従って、大腿骨コンポーネント53は、脛骨コンポーネント14に対して前(図16K)後(図16L)にずれることができるようになる。膝関節をそれ以上屈曲させると、丸み406は、開口した脛骨関節面403と完全接触関係をなし、それにより、図16Mに示されているように膝関節内の前後の運動が完全に拘束される。その後、膝関節内における完全接触及び拘束は、図16N及び図16Oに示されているように膝関節の残りの中間屈曲運動全体を通じて維持される。約110°の屈曲を超えると、丸み408は、脛骨関節面403との接触を再開し始め、それにより、図16Pに示されているように大腿骨コンポーネント53及び脛骨コンポーネント14が伸延される。膝関節をそれ以上伸延させると、近位延長部50は、脛骨コンポーネント14の後関節特徴部412との接触状態を維持する。
【0059】
図16Qを参照すると、膝単顆大腿骨コンポーネント120の代表的な実施形態が示されている。本発明の種々のコンポーネントに代えて、以下に説明するように膝単顆コンポーネントを用いることができる。幾つかの実施形態では、膝単顆大腿骨コンポーネント120は、図16Rに示されているように凹み410を提供する漸減丸み404を更に有する。他の実施形態では、膝単顆大腿骨コンポーネント120は、切頭され、それにより図16Sに示されているように、コンポーネント120と大腿骨120の非切除前顆面との間の交差部とのところに凹み410が得られる。
【0060】
膝単顆コンポーネントは、一般に、膝関節の体重支持部分に内側に又は外側に取って代わるよう植え込まれる。膝単顆コンポーネントは、膝関節のちょうど体重支持部分に設けられる2つの別々の大腿骨コンポーネント及び2つの別々の脛骨コンポーネントとして内側且つ/或いは外側に使用可能である。幾つかの実施形態では、膝単顆コンポーネントは、2つの大腿又は2つの脛骨コンポーネントが互いに接合された状態で用いられるが、膝蓋大腿関節は無視される。他の実施形態では、膝単顆コンポーネントは、遠位大腿骨の内側及び外側体重支持部分に取って代わった1つの大腿骨コンポーネントとして用いられ、更に一体形脛骨コンポーネント又は別々の内側及び外側脛骨コンポーネントと共に膝蓋大腿関節の一部分又は全てとして用いられる。そして、幾つかの実施形態では、膝単顆コンポーネントは、膝蓋大腿関節及び大腿骨の内側又は外側体重支持部分に取って代わった一体形大腿骨コンポーネントである。
【0061】
幾つかの実施形態では、膝単顆コンポーネント120は、全屈曲大腿骨関節面50を有する。上述したように、関節運動面又は延長部50は、膝の深屈曲の際、膝単顆大腿骨コンポーネント120と脛骨コンポーネントの前屈曲脛骨関節運動面55との接触を延長させるよう構成されている。幾つかの実施形態では、大腿骨の膝窩面202の一部分は、関節運動面50の配置を可能にするよう除去される。他の実施形態では、膝単顆コンポーネント(図示せず)は、モジュラー全屈曲大腿関節運動面(図示せず)と関連して用いられるよう提供される。かくして、幾つかの実施形態では、大腿骨の第1の部分は、膝単顆コンポーネント120を受け入れるよう前処置され、大腿骨の第2の部分は、モジュラー全屈曲大腿関節運動面(図示せず)を受け入れるよう前処置される。したがって、膝単顆コンポーネントとモジュラー全屈曲大腿関節運動面の組み合わせは、機能上、膝単顆大腿骨コンポーネント120に等しい膝単顆大腿骨コンポーネントを提供する。
【0062】
幾つかの実施形態では、膝単顆大腿骨コンポーネント120は、膝単顆脛骨コンポーネントと関連して用いられる。他の実施形態では、膝単顆大腿骨コンポーネント120は、全脛骨コンポーネントと関連して用いられる。最終的に、幾つかの実施形態では、膝単顆大腿骨コンポーネント120は、対向した脛骨の生まれつき備わった表面と直接関連して用いられる。
【0063】
許容される場合には、膝単顆大腿骨コンポーネント120の具体化により、全膝置換術と比較して幾つかの利点が提供される。例えば、8インチ(20.32cm)切開創が代表的には、全膝置換術に必要とされるが、膝単顆大腿骨コンポーネント120を利用する部分膝交換術で必要とされる切開創は、約3インチ(7.62cm)である。かくして、膝単顆大腿骨コンポーネント120の一利点は、部分膝交換術後に、瘢痕化が減少することである。
【0064】
部分膝交換術の他の利点としては、回復時間が短くなること、運動範囲が広がること及び膝の全体的損傷が減少することが挙げられる。全膝置換術では、患者が、最大4日間の入院が必要な場合がある。また、術後回復期間が、3か月以上になる場合がある。しかしながら、部分膝置換術では、患者は、代表的には、必要な入院は2日以下であり、続く回復期間は1か月である。加うるに、患者は、代表的には、部分膝置換術後、1週間又は2週間で補助なしに歩くことができる。
【0065】
幾つかの全膝置換術とは異なり、膝単顆大腿骨コンポーネント120の挿入では、一般に、多くの靱帯が保存され、それにより十分な運動範囲が得られる。例えば、部分膝置換術の中には、前及び/又は後十字靱帯が所望通りに保存される。また、一般に、部分膝置換術の結果として、膝の損傷が少ない。これは、手術が最小限の侵襲にとどまり、それにより膝に関する組織、筋肉及び腱の損傷が最小限に抑えられるためである。
【0066】
幾つかの部分膝置換術に関し、膝蓋大腿関節炎に生じる疼痛及び不快感に取り組むための種々の方法を実施できる。例えば、部分膝置換術の中には、膝蓋骨の神経切除が行われるものがある。部分膝交換術の中には、対向した大腿溝の神経切除が行われるものがある。本発明の幾つかの実施形態では、膝単顆大腿骨コンポーネント120は、運動範囲全体を通じて生まれつき備わった膝蓋大腿関節を再建し、大腿溝内における膝蓋骨の追跡を容易にするよう設計されている。他の実施形態では、神経切除と膝単顆大腿骨コンポーネント120の自然なデザインの組み合わせが膝蓋大腿関節炎に適切に取り組むために実行される。
【0067】
大腿全屈曲関節部50と脛骨全屈曲関節部55の相互作用が図20A〜図20Iに示されており、図20A〜図20Eは0°の状態であり、図20Fは90°の状態であり、図20Gは、130°の状態であり、図20Hは、150°の状態であり、図20Iは、160°を超えた状態である。図20Bは、非切除脛骨プラトー51の代表的な位置を示している。図20Cは、大腿骨コンポーネント53の後方部分に設けられた代表的な閉鎖丸みを示している。図20Dは、代表的な全屈曲大腿関節部50を示している。図20Eは、代表的な全屈曲脛骨関節部55を示している。図20Hは、屈曲の際、全屈曲脛骨関節部55への全屈曲大腿関節部50の代表的な接近の仕方を示している。図20Iは、深屈曲の際における全屈曲大腿関節部50と全屈曲脛骨関節部55の代表的な接触の仕方を示している。
【0068】
図15A〜図15Dは、大腿骨コンポーネント12の4つの上述の実施形態が延長された関節面48を提供する種々の仕方を示している。関節面を大腿骨コンポーネントの後顆の近位部分に追加するという技術的思想は、一般に、遠位大腿骨のシャフトの後面の平面が遠位側に延長されるべき場合、関節面が遠位大腿骨のシャフトの後面の平面に近づき又はこれを越えて延びるまで近位部分を前方に延長させることにより達成できる。例えば、図15A〜図15Dで理解できるように、各実施形態の延長された関節面48は、内側後顆又は外側後顆のうちの一方又は両方の前方端部のところでの関節面の延長部をなす。図16A〜図16Dに示されているように、関節面を延長された関節面48の端部から近位側の方向に更に延長させることができる。この一段の延長は、近位延長部50によって提供できる。近位延長部50は、大腿骨コンポーネント12の一体部分であっても良く、モジュラーアタッチメント30の一部であっても良く、或いは、別個の追加のコンポーネントとして提供されても良い。近位延長部50が提供される一実施形態では、近位延長部50は、深膝屈曲を向上させるよう全機能的屈曲の際に大腿骨32と脛骨との間の離隔距離を増大させるよう脛骨又は脛骨コンポーネント14と相互作用する支点として働く。別の実施形態では、近位延長部50により、全機能的屈曲の際の脛骨と大腿骨との間の通常の関係が2つの表面相互間の接触を維持しながら存在することができる。
【0069】
かくして、本発明の幾つかの実施形態では、大腿骨の後顆の近位前方表面(又は部分)に関節面を提供することにより増深膝屈曲が容易になる。少なくとも幾つかのかかる実施形態は、大腿骨コンポーネント12の内側又は外側後顆のうちのいずれか一方又は両方の近位前方部分に設けられた追加の又は拡大した関節面を含む。大腿骨コンポーネント12の実施形態は、増大した関節面領域を、患者が深膝屈曲中、自分の膝を曲げたとき、大腿骨コンポーネント12と脛骨コンポーネント14との接触が維持され、増深膝屈曲を達成することができるよう前方方向において大腿骨コンポーネントの後顆の近位端部に追加する。
【0070】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態では、脛骨関節運動を改変することにより増深膝屈曲を提供することができ又は向上させることができ、この場合、人工膝の脛骨コンポーネント14の同形内側脛骨関節面の中心は、現在利用可能な中心に対して後方に動かされる。加うるに、かかる幾つかの実施形態では、外側脛骨関節面の全体的形状を変更することができる。これは、図6A〜図6Dに示されている。
【0071】
脛骨コンポーネント14のかかる実施形態では、顆又は関節プラトー表面は、非対称であるのが良い。すなわち、脛骨コンポーネント14の外側下面サイドは、前後寸法が内側サイドよりも小さく、脛骨コンポーネント14の頂部も又、非対称であるのが良い。
【0072】
解剖学的に、脛骨プラトーは、これが外側に有する前後寸法よりも内側に大きな前後寸法を有する。切断された近位脛骨のできるだけ大部分を覆うと共に外側プラトーの前方又は後方張出しを回避するためには、外側の前後寸法よりも内側の前後寸法が大きいコンポーネントを提供することが必要である。一実施形態では、これは、内側関節面の中心を後方に動かして寸法差を補償することによって達成される。全屈曲を達成するためには、脛骨上の内側回転中心(球の凹状セグメントである)を他の設計で現在利用できる後方よりも一層後方に位置させることが重要である。これにより、膝を約120〜130°を越えて屈曲させたときに近位脛骨を内側脛骨関節面の後方縁部又は部分が大腿骨の内側後顆の近位部分に衝突することがないよう十分前方に位置決めすることができる。脛骨が屈曲の際に前方に動くことができるようにする脛骨コンポーネント14の現在の設計例は、非球形内側脛骨関節面を有し、或いは、球形関節面の回転中心が以下に説明する実施形態により提供されるほど後方ではないかのいずれかである。しかしながら、本発明の実施形態は、120°以上の膝屈曲を可能にする任意の膝置換設計例と組み合わせて利用できる。
【0073】
内側に固定された回転中心を有する現在入手可能な全膝脛骨コンポーネント14は、脛骨コンポーネント14の後面から前後寸法全体の約35〜45%のところの位置に配置された回転中心を有する。脛骨コンポーネント14の幾つかの実施形態では、回転中心は、これが脛骨コンポーネント14の後壁から前後寸法の18〜30%のところに位置するよう後方に動かされている。
【0074】
通常の膝では、膝の内側サイドは、任意の屈曲度に関し、脛骨関節面に対する内側大腿顆の位置がほぼ固定されていて、約20〜140°の屈曲範囲において相当な量前方又は後方には動かないという点で拘束されている。これとは対照的に、外側サイドでは、全伸展及び場合によっては全屈曲を除き、約20〜40°の屈曲後、外側大腿顆は、外側脛骨プラトー上で前後に動くことができる。160°を超える全機能的屈曲の際、外側大腿顆は、対向した脛骨プラトーの最も外方の部分にのみ当たっているように見える場合があり、或いは、プラトーに外側と脛骨プラトーの平べったくされた部分上で明らかに前方に接触する場合がある。
【0075】
したがって、脛骨コンポーネント14の実施形態では、外側脛骨関節面は、脛骨コンポーネントがあまりにも外側に回転するのを阻止すると共に外側大腿顆が脛骨コンポーネントの前方縁部から滑り落ちることができるようにするのを阻止する前方リップが存在する前方を除き、前後方向に基本的に平べったい。幾つかの実施形態では、外側脛骨関節面の基本的に平らな部分は、脛骨コンポーネント14の全前後寸法の2/3〜7/8から成る場合がある。幾つかの実施形態では、僅かなリップが外側サイド上に後方に存在する場合があるが、固定回転中心が上述したように位置決めされている限り、外側サイド上の後方にはリップが不用である。外側脛骨関節面は、前頭面で見て、平らであるか凹状であるかのいずれかであり、もし凹状であれば、対向した大腿顆と同一の曲率半径である場合があり又はそうでない場合があり、或いは、前頭面で見てより大きな半径を有する場合がある。この平らな又は凹状の溝は、上述した前方端部及び後方端部を除き、矢状面で見て底部が平らであり、内側顆の回転中心に相当する箇所周りに生じる。幾つかの実施形態では、後方外側脛骨関節部は、内側後方全屈曲関節について説明したのと同じであるのが良い。他の実施形態では、内側脛骨関節面は、外側脛骨プラトーについて説明した平らな関節面と同じであり又はこれに類似しているのが良い。しかしながら、内側関節接触位置は、主として、必須であり、他方、外側関節接触位置は、必須ではない。かくして、外側関節接触位置は、行われる仕事、快適さ又は文化によって決定されるであろう。
【0076】
当業者であれば理解されるように、膝は、外側枢軸及び内側枢軸のうちの少なくとも一方を有する場合がある。したがって、本発明の実施形態は、外側及び内側膝枢軸形態のうちのいずれか一方又は両方と適合性があることが理解されよう。
【0077】
図6A〜図6Dは、先行技術の脛骨コンポーネント14の内側脛骨顆表面26及び外側脛骨顆表面24と上述した脛骨コンポーネント14の実施形態との比較図である。具体的に説明すると、図6A及び図6Bは、それぞれ、現在入手できる或る脛骨コンポーネント14の内側及び外側サイドの側面図、図6C及び図6Dは、上述した脛骨コンポーネント14の実施形態の内側サイド及び外側サイドの側面図である。理解されるように、内側と外側の両方においてほぼ平らな状態から図6A及び図6Bに示すようにより同形までの内側及び外側関節面に関する多種多様な形態が従来用いられていたが、後方に変移した内側関節面及び比較的平坦な外側関節面の組み合わせか内側大腿全屈曲脛骨関節部かのいずれかを有するものは存在しない。これら形態により、外側大腿顆は、膝が屈曲したり伸展したりすると、前後に動くことができる。外側脛骨関節面がこの前後運動を可能にする限り、外側脛骨形態が特に図6Dに示されているようなものである必要はないような他の形態を提供することができる。
【0078】
外側脛骨関節部は、幾つかの実施形態では、後リップを備えていない場合があり、他の実施形態では、後面は、135°を超える屈曲を可能にする内側脛骨関節部が設けられると、下方に傾斜することができる。
【0079】
先行技術の脛骨コンポーネント14では、顆面は、曲率中心が固定点52上に位置した湾曲を有する。固定点52から(又は、曲率中心が固定点52上に位置した湾曲の低点から)脛骨コンポーネントの後縁54までの距離は、脛骨コンポーネント14の前後寸法の約35〜45%である。これら測定値は、脛骨コンポーネント14の内側(図6A)サイド及び外側(図6B)サイドに関してほぼ同じである。現在入手できる脛骨コンポーネント14は、リップ56を有している。
【0080】
図6C及び図6Dに示されている脛骨コンポーネント14の実施形態では、脛骨コンポーネントリップ56は、設けられていない。これとは異なり、内側脛骨顆表面26は、滑らかな弧に沿って延びている。弧が作られているとき、下側リップが幾つかの実施形態では存在する場合があり、大腿全屈曲後関節部まで延びてこれを有するのが良い。リップの量は、回転中心と脛骨コンポーネント14の後縁54との関係によって定まるであろう。図6A及び図6Cの固定点52から関節面までの半径が同一であるが、図6Cで理解できるように、固定点52から(又は、中心が固定点52上に位置した曲率の低点から)脛骨コンポーネント56の後縁54までの距離はより短くなり、脛骨コンポーネント14の後端からの前後寸法の約18〜30%である。脛骨コンポーネント14の外側サイドに関し、図6Dに示されている実施形態では、前リップ58と小さな後リップ60の両方が設けられている。変形実施形態では、上述したように後リップ60を省くことができる。
【0081】
かくして、図6A〜図6Dを参照して説明したように、本発明の少なくとも幾つかの実施形態では、増深膝屈曲が脛骨関節部を改造することにより提供され又は向上し、この場合、脛骨コンポーネント14の同形内側脛骨関節面の中心は、現在入手できるものよりも後方に動かされる。幾つかの現在入手できる大腿骨コンポーネントでは、この変化だけで、標準型脛骨コンポーネントと比較して達成できる屈曲量が増大する。加うるに、幾つかのかかる実施形態では、外側脛骨関節面の全体的形状を変えるのが良い。これにより、近位脛骨は、膝を約120〜130°超えて屈曲させると、十分前方に位置決めすることができ、その結果、内側脛骨関節面の後縁又は部分が大腿骨の内側顆の近位部分に当たることがないようになる。したがって、増深膝屈曲を達成することができる。かくして、理解されるように、上述の脛骨コンポーネントの実施形態を従来型大腿骨コンポーネントと共に用いることにより、従来型脛骨コンポーネントを使用する場合よりも多大な屈曲が容易になる。同様に、上述の大腿骨コンポーネントの実施形態のうちのどれかを従来型脛骨コンポーネントと共に用いることにより、従来型脛骨コンポーネントを標準型大腿骨コンポーネントと共に使用する場合よりも多大な屈曲が容易になる。
【0082】
本発明の幾つかの実施形態では、脛骨関節部を改造することにより増深膝屈曲が提供され、又は改善されることができ、この場合、脛骨コンポーネントの関節面は、脛骨コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの関節運動を促進し又は制限するよう変えられる。かかる変更の例が図6E〜図6Hに示されている。
【0083】
次に図6E及び図6Fを参照すると、脛骨コンポーネント14が本発明の代表的な実施形態に従って示されている。幾つかの実施形態では、脛骨コンポーネント14の内側脛骨顆表面26は、関節運動特徴部を有するよう改造されている。関節運動特徴部は、一般に、大腿骨コンポーネントの対向した関節運動面と適合可能に相互作用するよう設けられている。膝の屈曲中、大腿骨コンポーネントの関節運動面は、内側脛骨顆表面の関節運動特徴部と相互作用して脛骨コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの関節運動を案内し又は方向付ける。かくして、幾つかの実施形態では、関節運動特徴部は、深膝屈曲中、膝の関節運動を制御するために設けられる。
【0084】
種々の形式の関節運動特徴部を本発明の教示に従って用いることができる。例えば、幾つかの実施形態では、関節運動特徴部は、斜めの関節隆起部400を有する。関節隆起部400は、大腿骨コンポーネントの対向した関節面と適合可能に相互作用するよう設けられている。関節隆起部400と大腿骨コンポーネントの関節面との間の相互作用は、膝の深屈曲中、大腿骨コンポーネントの関節運動の変化を生じさせる。例えば、幾つかの実施形態では、大腿骨コンポーネントと関節隆起部400の相互作用により、大腿骨コンポーネントの後関節運動部が深屈曲の達成時にずれる。
【0085】
関節隆起部400は、一般に、全体として内側‐外側方向450において脛骨コンポーネント14の後面に設けられている。幾つかの実施形態では、関節隆起部400は、顆間表面28の前後方向460に対して鋭角である角度θをなして後面上に設けられ又は位置決めされている。一般に、関節隆起部400の角度θは、深屈曲中、大腿骨コンポーネントの所望の関節ずれを達成するよう選択される。幾つかの実施形態では、約0°〜約90°の角度θが選択される。他の実施形態では、約10°〜約45°の角度θが選択される。最後に、幾つかの実施形態では、約20°〜約35°の角度θが好ましい。
【0086】
関節隆起部400は、膝の深屈曲中、大腿骨コンポーネントの所望の関節ずれを達成するよう脛骨コンポーネントの関節面上のどこかに位置決めされるのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、外側脛骨顆表面24は、関節隆起部(図示せず)を有するよう改造される。他の実施形態では、内側脛骨顆表面26と外側脛骨顆表面24の両方は、斜めの関節隆起部400を有する。幾つかの実施形態では、関節運動特徴部は、ポリエチレン被膜又は層を有する。他の実施形態では、ポリエチレン被膜は、関節隆起部400にしっかりと被着され、かかるポリエチレン被膜は、関節隆起部400を越えて延びないようにされ、屈曲の際に大腿骨に衝突しないようになっている。
【0087】
次に図6G及び図6Hを参照すると、脛骨コンポーネント14は、本発明の代表的な実施形態に従って示されている。幾つかの実施形態では、脛骨コンポーネント14の内側脛骨顆表面26は、球形関節面420を備えた関節運動特徴部を有するよう更に改造されている。球形関節面420は、大腿骨コンポーネントの対向した関節面と適合可能に相互作用するよう設けられている。球形関節面420と大腿骨コンポーネントの関節面との相互作用により、膝の深屈曲中、大腿骨コンポーネントの制限されない自然な関節運動が可能になる。例えば、幾つかの実施形態では、大腿骨コンポーネントと球形関節面420との相互作用により、深屈曲が達成されるときに、大腿骨コンポーネントの自然な後方関節運動が可能である。当業者であれば理解されるように、脛骨コンポーネント14は又、脛骨コンポーネントの外側脛骨顆表面上における大腿関節運動を可能にするよう改造可能である。更に、当業者であれば理解されるように、脛骨コンポーネント14は、所望の用途に関し、脛骨コンポーネントの内側脛骨顆表面と外側脛骨顆表面の両方上における付随する大腿関節運動を可能にするよう改造されるのが良い。
【0088】
球形関節面420は、真の球形から成っていても良く又は放物線形状から成っていても良い。当業者であれば理解されるように、関節面420の表面構造の変化が特定の用途又は使用に最適に構成される関節面を提供するために必要な場合がある。
【0089】
球形関節面420は、膝の深屈曲中、大腿骨コンポーネントの所望の自然な運動を可能にするよう脛骨コンポーネントの関節面上のどこかに位置決めされるのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、外側脛骨顆表面24は、球形関節面(図示せず)を有するよう改造される。他の実施形態では、内側脛骨顆表面26と外側脛骨顆表面24の両方は、球形関節面420を有する。幾つかの実施形態では、関節運動特徴部は、ポリエチレン被膜又は層を有する。他の実施形態では、ポリエチレン被膜は、球形関節面420にしっかりと被着され、かかるポリエチレン被膜は、球形関節面420を越えて延びないようにされ、屈曲の際に大腿骨に衝突しないようになっている。
【0090】
幾つかの実施形態では、大腿骨及び/又は大腿骨コンポーネントの対向した表面は、脛骨コンポーネントの凸状球形関節面420と適合可能にインターフェイスするよう構成された凹面(図示せず)を有するよう改造される。他の実施形態では、大腿骨及び/又は大腿骨コンポーネントの対向面は、脛骨コンポーネントの凸状関節隆起部400と適合可能にインターフェイスするよう構成された凹状溝(図示せず)を有するよう改造される。さらに、幾つかの実施形態では、脛骨コンポーネントは、凹面(図示せず)を有し、大腿骨コンポーネントは、脛骨凹面と適合可能に相互作用する凸面(図示せず)を有する。さらに、幾つかの実施形態では、脛骨コンポーネントのポリエチレン被膜(図示せず)又は関節面は、対向した大腿面の所望の構造、形状又は特徴部と適合可能にインターフェイスするよう構成され、それにより、膝の運動範囲全体にわたって通常の膝機能及び運動が達成される。例えば、幾つかの実施形態では、脛骨コンポーネントは、隆起した後部分又は関節運動特徴部を備えないで提供される。これとは異なり、外科医は、通常の膝機能を達成するよう大腿骨コンポーネントと同様にインターフェイスする患者の脛骨の後部分を残すよう選択することができる。かくして、幾つかの実施形態では、膝単顆脛骨コンポーネントが設けられる。
【0091】
図7A及び図7Bは、より深い膝屈曲を可能にするための大腿骨コンポーネント12及び脛骨コンポーネント14の改造を示している。具体的に言えば、図7Aは、改造された大腿骨コンポーネント12及び脛骨コンポーネント14を備えた人工膝10の矢状断面図である。図7Aでは、大腿骨コンポーネント12の領域102が破線で示されているように除去されている。この領域102は、後方末端部104上に位置すると共にこの後方末端部104と後方末端部104の前方サイド106との間に位置している。領域102を除去することにより、人工膝患者の深い屈曲が部分的に達成可能である。
【0092】
同様に、図7Bの脛骨コンポーネント14では、内側サイド25は、関節面24を後方に動かし、それにより脛骨コンポーネントの多くを後方にずらされた内側関節部の前方に設けることにより前後寸法が前方に比較的長くされているように見える。これは、脛骨コンポーネント14の後方部分を除去し、これを前方に動かした外観を与える場合がある。脛骨コンポーネントの外側サイド27は、内側サイド25(即ち、領域100)に対して前後寸法が短くされるのが良い。図7Bは、上述のことを平面図で示している。換言すると、脛骨コンポーネント14の外側サイド27を後方に短くする(即ち、領域100を除去する)と共に内側関節面24をより後方にずらすことによって、深い膝屈曲が可能である。さらに、これら改造により、人工膝患者が現在入手できる人工膝で可能な膝屈曲よりも深い膝屈曲を達成することができる機会が得られる。
【0093】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態では、非対称大腿骨コンポーネント12を提供することにより増深膝屈曲を達成することができる。非対称大腿骨コンポーネント12は、通常の膝で生じているように関節前後で伝えられる力の1/2以上の伝達を内側サイドに対して行うことができる。幾つかのかかる実施形態は、図17及び図18Aに示されている。図17は、160°屈曲の際の膝のX線像を示している。このX線像では、大腿骨32は、前後方向に見え、大腿骨32の内側顆66、大腿骨32の外側顆68及び膝蓋骨70が見える。図を参照して理解できるように、内側顆66の関節運動部分の内側‐外側幅は、外側顆68の内側‐外側幅よりも大きい。具体的に言えば、図中、内側顆66の関節部分の内側‐外側幅は、Xで示されている。図で理解できるように、外側顆68の内側‐外側幅は、内側顆66の内側外側幅Xの約75%以下である。
【0094】
また、図17を参照して正しく理解できるように、膝蓋骨70の中心は、膝の中心線の横に位置している。具体的には、その図において、大腿骨32の遠位端の最内側部と、膝蓋骨70の中心との間の内側‐外側距離は、Yで示されている。図を見て分かるように、大腿骨32の遠位端の最内側部と、膝蓋骨70の中心との間の対応する内側‐外側距離は、Yの約75%以下(図中では73%)である。本発明の幾つかの実施形態において、大腿骨コンポーネント12は、図17に図示されている膝の実際の物理的構造を模倣することができる。
【0095】
図18Aに示すような大腿骨コンポーネントの実施形態において、その外側顆の関節部は、その内側‐外側幅において、内側顆の幅の75%以下である。これにより、その関節全域に伝わる力の半分以上を、内側に伝えることが可能となり、これは正常な膝で生じることである。また、滑車溝は、その内側顆と外側顆との間の位置によって遠心側に画成されるため、その膝蓋骨又は滑車溝を偏在化することが可能になる。正常な膝では、膝蓋骨は大腿骨上でわずかに偏在化する傾向があり、この横方向の溝の位置ずれは、従来の多くの全膝置換が、その全膝置換における大腿骨コンポーネント12を外部から回転することによって実現することを可能にする。一実施形態において、その前頭面における顆は、一定の半径を有する円形に見える。その内側顆及び外側顆は、同じ半径である必要はないが、その前頭面で見た場合に、両方共、円形であるのがよい。矢状面で見た場合には、それらの顆は、後方及び前方に閉鎖丸みを有しているように見え、前フランジを用いた実施形態においては、その前フランジに一体化することができる。
【0096】
図18Aは、前記実施形態による大腿骨コンポーネント12の一実施形態の前面図を示す。その図において、例示的測定値は、前記実施形態の特徴を示すように図示されており、前記実施形態の特徴を限定するものではない。図18Aに示すように、大腿骨コンポーネント12全体の内側‐外側幅は、約72ミリメートル(mm)になる。この実施形態において、内側後方顆の後方部における内側大腿骨顆面20の内側‐外側幅は、約32mmであり、外側大腿骨顆面22の内側‐外側幅は、約22mmである。従って、図示されている実施形態においては、外側大腿骨顆面22の内側‐外側幅は、内側大腿骨顆面20の内側‐外側幅の約69%である。
【0097】
図示されている実施形態において、膝蓋骨溝72は、内側大腿骨顆面20と、外側大腿骨顆面22との間の空間によって画成されている。内側大腿骨顆面20の内側‐外側幅は、外側大腿骨顆面22の内側‐外側幅よりも大きいため、膝蓋骨溝72は、外側にずれており、これは正常な膝で生じることである。図18A〜図18Cを参照して正しく理解できるように、膝蓋骨溝72は、最近位前方部から遠位前方部、遠位後方部及び近位後方部へ移動する場合に、傾斜して設けることができる。例えば、図18における膝蓋骨溝72の角度は、矢状面から測定した場合、約86度である。
【0098】
従って、図示されている実施形態は、非対称大腿骨コンポーネント12を設けることにより、本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント12が、どのようにして深膝屈曲の実現及び幾つかの実施形態においては全機能屈曲の実現を補助できるかを示している。非対称大腿骨コンポーネント12は、生理学的負荷及び膝蓋骨トラッキングを良好にシミュレーションすることにより、深膝屈曲の実現を補助することができる。非対称大腿骨コンポーネント12は、内側サイドに、外側サイドよりも大きな負荷がかかる状態で、その関節のより正常な負荷を可能にする。また、非対称大腿骨コンポーネント12は、膝蓋骨の痛み、亜脱臼及び脱臼という問題を減らせる、膝蓋骨のより解剖学的に正しい外側トラッキングを可能にする。当業者であれば、幾つかの実施形態においては、脛骨コンポーネント14を、非対称大腿骨コンポーネント12を収容するように変更できることを容易に認識するであろう。
【0099】
本願明細書において議論したように、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、内側大腿骨サイドが相対的に固定されたままであり、外側サイドが前後に滑動するという深膝屈曲能力を備えることを含む。さらに幾つかの実施形態では、その大腿骨コンポーネントをその内側サイドに相対的に固定された状態に保持し、かつその外側サイドで滑動することができる脛骨コンポーネントを有する膝を包含し、一方、他の実施形態では、その外側サイドで相対的に固定され、かつその内側サイドで滑動することができる膝を包含する。このことは、例えば、脛骨コンポーネントに適用できるであろう。
【0100】
また、その大腿骨コンポーネントの追加的な関節面は、内側、外側又は両方とすることができるが、本発明の少なくとも幾つかの実施形態では、脛骨及び大腿骨全屈曲関節部を内側、外側又は両方に用いて適用することを包含する。
【0101】
次に、図18B及び図18Cを参照すると、幾つかの実施形態で、滑車面又は溝72に取って代わるように、短縮前フランジ610が設けられている。幾つかの実施形態において、前フランジ610は、個々の患者の解剖学的構造を補正するように設けられ、この場合、人工器官の前方顆の外側部は、膝200の骨顆よりも盛り上がって延びるか又は位置している。それらの解剖学的構造の場合、その人工器官の盛り上がった位置は、外側の柔らかい組織を栓で広げ、又は別の方法で分離し、このことは、屈曲の減少及び不快感又は痛みをもたらす可能性がある。幾つかの実施形態において、前フランジ610は、図12A、図12B、図14及び図16Q〜図16Sに示す人工器官を用いても適切に処置されないであろう重度の膝蓋大腿骨関節炎の患者に対して使用する場合に、大腿遠位210の前方顆20及び22に取って代わることなく設けられている。前フランジ610のみを設けることにより、コスト削減及び/又は少ない回避性で寛解をもたらすことも可能である。他の実施形態においては、前フランジ610は、前方顆20,22に取って代わって設けられる。
【0102】
幾つかの実施形態において、短縮前フランジ610の長さは、単に滑車面72の一部に取って代わるように非常に短くなっている。他の実施形態においては、前フランジ610の長さは、滑車面72全体に取って代わるように延びている。さらに、幾つかの実施形態においては、前フランジ610は、現在入手可能な非簡易人工器官のフランジにほぼ等しい長さまで、遠位顆20,22間の遠位側に延長されている。
【0103】
次に、図21を参照すると、膝200の斜視側面図が示されている。本発明の少なくとも幾つかの実施形態においては、増深膝屈曲は、大腿骨210の膝窩面202の一部を除去することによって、さらに実現、改善又は強化することができる。膝窩面202は、その内側顆、外側顆、又は内側顆及び外側顆の両方の後方関節面の近位に骨を含んでもよい。膝窩面202の切除は、公知の適切な方法によって実施することができる。例えば、一実施形態において、まず脛骨の一部が切除され、それにより、膝窩面の必要な部分230を切除するための十分な隙間が形成される。
【0104】
その脛骨、大腿骨又は両方から切除される骨の量は、脛骨及び大腿骨の具体的な解剖学的構造により、個人差があるだろう。切除された膝窩面230は、脛骨220及び大腿骨210の対向面の間に追加的な隙間を形成する。具体的には、切除された膝窩面230は、膝200の深屈曲中に、脛骨220の内側顆240の後方関節面250が大腿骨210にぶつかることを防ぐ。従って、膝200は、脛骨220が大腿骨210のいずれかの部位に不適切な状態で固着又は接触することなく、自由に屈曲することができる。また、切除された膝窩面230は、140°を超える屈曲を実現できる。一実施形態において、切除された膝窩面230は、160°を超える屈曲をもたらす。
【0105】
次に、図22を参照すると、切除面230を形成するための膝窩面202の切除後の膝200の斜視側面図が示されている。前述したように、膝窩面230の切除は、公知の何らかの適切な方法によって実施することができる。しかし、一実施形態においては、切除部230を形成する際に、切断装置310をガイドするために、切除ブロック300が用いられる。切除ブロック300は、前述した金属材料と同様の金属材料で構成されており、及び外面312、内面314及びスロット316を含む。外面312は、大腿骨210の外側顆及び内側顆に合うように形成されており、かつそれらの顆を実質的に覆うようになっている。内面314は、大腿骨210の外側顆及び内側顆の切除面及び成形面に合う複数の角度の付いた面を含む。その結果、切除ブロック300の内面314は、大腿骨210の切除面62、64及び366に係合するようになっている。係合した切除ブロック300と大腿骨210は、ねじ等の複数の締結具320を介してさらに固着される。このことは、全ての場合に必要なわけではない。締結具320は、そのガイドを大腿骨に確実に取付けることのみ要求される。幾つかの実施形態において、そのガイドと大腿骨の相互作用は、そのガイドが、締結具なしで適切な位置に確実に保持されるようになっている。別の実施形態においては、そのガイドは、大腿骨の前記領域の正確な切除を容易にする何らかの手段によって適切な位置に保持される。
【0106】
切除ブロック300、内面314、大腿骨210の切除面62,64及び366間の相互作用は、スロット316を、大腿骨210の膝窩面202に正確に位置合わせする。スロット316は一般に、外側開口部330及び内側開口部332を有する。外側開口部330は、切断装置310の幅338よりもわずかに広い第1の幅を有する。従って、外側開口部330は、切断装置310を適合可能に受け入れられるようになっている。内側開口部332は、膝窩面202に正確に隣接して配置されており、第1の幅よりも広く、かつ膝窩切除部230の所望の幅とほぼ等しい第2の幅を有する。その結果、そのスロットの壁334は、第2の開口部から第1の開口部に向かって内側に先細りになっており、それによって、くさび状のスロット316を形成している。
【0107】
切断装置310は、スロット316に適合する何らかの装置を含むことができる。一実施形態においては、振動ブレード340が設けられている。振動ブレード340は、シャンク342、切削ヘッド344及び停止部346を含む。シャンク342は一般に、切除ブロック300及び大腿骨210に対してブレード340を移動させることが可能なツール(図示せず)に適合して、かつ確実に係合するようになっている面を有する。切削ヘッド344は一般に、膝窩面202の所望の部位を除去して切除部230を形成するのに適した複数の歯を有する。停止部346は一般に、フェルール、クリンプ、あるいは、スロット316の第1の開口部330よりも幅広の、ブレード340上の箇所を形成する、他の何らかの形状構成を有する。従って、停止部346は、スロット316に入ることができず、それにより、ブレード340がスロット316に入れるようになっている深さを制限している。この結果、停止部346は、膝窩切除部230の最終的な深さを制御又は制限するための深さゲージとして機能する。一実施形態において、停止部346は、止めねじをさらに有し、それにより、停止部346は、ブレード340がスロット316に入れるようになっている深さを変更するために緩められて、ブレード340上に再配置される。別の実施形態においては、切断装置310は、バーの切削深さを制限するための停止部346を有するバービットである。
【0108】
次に、図22Aを参照すると、大腿骨210及び切除ブロック300の裏面の斜視図が示されている。一実施形態において、切除ブロック300は、切除ブロック300の接続部326によって分離されている第1のスロット316及び第2のスロット318を含む。第1のスロット316は、大腿骨210の内側顆66に隣接して配置されており、第2のスロット318は、外側顆68に隣接して配置されている。各スロットは、内側顆66及び外側顆68の非対称な、自然な位置に対して異なる高さで配置される。従って、切除ブロック300の第1のスロット316及び第2のスロット318は、顆66,68の非対称な位置に対して、大腿骨210の膝窩面202を最適に切除するようになっている。別の実施形態においては、第1のスロット316及び第2のスロット318は、非対称の顆66,68を考慮せずに、対称的な切除膝窩面230を形成するように、同じ高さに配置される。また別の実施形態においては、第1のスロット316の内側開口部332に対する外側開口部330の位置決めは、第2のスロット318の内側開口部332に対する外側開口部330の位置決めとは異なっている。従って、各くさび状の開口部316,318の半径は異なっており、第1のスロット316及び第2のスロット318の場合の切除膝窩面230の結果として生じる輪郭又は形状は、非対称になるであろう。別の実施形態において、接続部326は省かれており、それによって、単一のガイドスロットを設けている。この実施形態において、そのガイドの上方及び下方の部分は、外側及び内側ブリッジを介して互いに適切な位置に保持されている。その外側及び内側ブリッジは、そのガイドの上方及び下方の部分の位置を維持し、及びそのスロットの外縁部を画成する。別の実施形態において、外側及び内側ブリッジは、そのガイド内に複数のスロットを設けるのに用いられる。
【0109】
次に、図22及び図22Aを参照すると、膝窩切除部230は、切断装置310をスロット316に挿入し、停止部機能346及びくさび状スロット316の半径方向の制限によって制限される所望の深さまで膝窩面202を取り除くことによって形成されている。スロット316のくさび状の形状は、切断装置310がそのくさびの半径方向に沿って枢動できるようにし、この場合、停止部346と外側開口部330の接触部は、そのくさびの半径方向に対する支点として作用する。そのため、結果として生じる切除部230は、人工膝の大腿骨コンポーネント12を収容するように構成及び成形される半径面を有する。膝窩切除部230の形成後、ねじ320、又は他の安定化方法、及び切除ブロック300が大腿骨210から取除かれる。
【0110】
次に、図23を参照すると、膝窩面230の切除後の膝200の側断面図が示されている。人工膝の大腿骨コンポーネント12は、膝窩面202の切除部230に対応するように変更することができる。例えば、一実施形態において、その人工膝の大腿骨コンポーネント12の部位212は延長されて、膝窩面202の切除部230内に位置するように形成されている。従って、脛骨220の内側顆240の後方関節面250は、適合してかつ滑らかに、延長された部位212と相互作用し、それによって、膝200がさらに深い屈曲を行えるようになっている。さらに、後方関節面250と、延長された部位212との相互作用は、深い屈曲中に、後方関節面250が、その大腿骨コンポーネントの終端面214に固着すること、及び大腿骨コンポーネント12を前方方向300にずらすことを防ぐ。本発明の幾つかの実施形態において、延長された部位212は、球面内側サイドを有する脛骨インプラントと共に用いられる。別の実施形態においては、延長された部位212は、120°以上の膝屈曲を可能にする何らかの膝関節置換術と共に用いられる。例えば、一実施形態において、人工膝システムの大腿骨コンポーネントは、その人工膝システムの脛骨コンポーネントに適合する延長部位212を設けるために、そのコンポーネントの後方に金属片を含むように変更されている。
【0111】
延長部位212を含む本発明の幾つかの実施形態において、大腿骨コンポーネント12は、図15B及び図16Bに示すように、内部フランジ、又は、膝蓋骨‐大腿骨関節のための何らかの対策を含んでいない。従って、コンポーネント12が、従来の人工器官に対して後方に回転された後に埋め込まれることを除いて、前フランジがないことは、コンポーネント12が従来と同様な方法で、その大腿骨に影響を及ぼすことを可能にする。また、大腿骨コンポーネント12は、独立した膝蓋骨‐大腿骨関節インプラントなしで用いることができる。幾つかの実施形態において、コンポーネント12は、その膝蓋骨の大腿骨関節を設けるために顆インプラントに取付けられたモジュラーフランジと共に用いられる。別の実施形態においては、大腿骨コンポーネント12は、独立した連結されていない膝蓋骨‐大腿骨インプラントと共に用いられる。そして、別の実施形態においては、埋め込み式コンポーネントを有していない膝蓋骨のために、独立した大腿骨フランジが用いられる。
【0112】
次に、図23Aを参照すると、膝窩面230の切除後の膝200の側断面図が示されており、この場合、大腿骨コンポーネント12は、脛骨コンポーネント14と共に用いられている。本発明の幾つかの実施形態において、前記大腿骨コンポーネント12は、脛骨全屈曲関節部を有していない従来の脛骨コンポーネント14と共に用いられる。例えば、一実施形態において、前記大腿骨コンポーネント12は、その内側脛骨関節の中心が後方にずれている脛骨コンポーネント14と共に用いられる。別の実施形態においては、大腿骨コンポーネント12は、現在、入手可能なデザインに対応する位置に、その内側脛骨関節の中心を有する脛骨コンポーネント14と共に用いられる。切除された膝窩面230を塞ぐこと、又はその面を覆うことに加えて、延長部位212は、全屈曲中に脛骨及び大腿骨の位置を変更するための追加的な形状構成を含んでもよい。
【0113】
例えば、一実施形態において、延長部位212は、膝が全屈曲の状態で、脛骨を大腿骨に対して回転させるように変更される。別の実施形態においては、延長部位212は、膝が全屈曲の状態で、大腿骨に対する脛骨の回転を防ぐように変更される。さらに別の実施形態においては、延長部位212は、その上方又は最近位部に球面を含むように変更される。従って、この球面は、その脛骨を、全屈曲の状態で大腿骨に対して回転させることを可能にする。本発明の幾つかの実施形態においては、大腿全屈曲関節部内に対応する凹面を有する球面関節を有することが望ましい。このような凹面は、内側‐外側安定性を呈し、大腿骨コンポーネントと脛骨コンポーネントとの間に面接触をもたらし、及び人工器官のポリエチレン磨耗を減少させるであろう。再び図23を参照して、本発明の幾つかの実施形態において、大腿骨コンポーネント12は、延長部位212と関節を成すように、患者自身の脛骨プラトーの切除されていない後方部位と共に用いられる。
【0114】
次に、図24〜図28を参照すると、脛骨コンポーネント14の幾つかの実施形態はさらに、一般に脛骨コンポーネント14の前方下面に取り付けられたステム500を含むように変更されている。図24に示すように、ステム500の前方配置は、膝関節の屈曲中に後脛骨に加わる圧縮荷重を補正及び減少させるように計算されている。圧縮荷重が後脛骨に加わると、ステム500は前脛骨皮質518の内面520とのインターフェイスを形成し、それにより、脛骨220に対する脛骨コンポーネント14の回転、沈下及び/又は沈降のうちの少なくとも1つを防ぐ。従って、ステム500の形状、サイズ、角度及び配置は、ステム500と内面520との間に所望のインターフェイス接触面を実現するように選択される。
【0115】
幾つかの実施形態において、ステム500は、図24及び図25に示すように、内面520の輪郭に厳密に近似するように湾曲している。他の実施形態においては、ステム500は、図26に示すように、そのステム表面の部位が、内面520の様々な部位又は領域に接触するように先細りになっている。さらに、他の実施形態においては、ステム500は、ステム500の先端部530が内面520に接触するように延長されている。ステム500は、圧縮荷重がかかっているときのステム500の安定性を増すためのテーパ付きベース540をさらに含んでもよい。そして、幾つかの実施形態において、ステム500は、図28に示すように、調節可能なリンク機構550を有し、それにより、ステム500の角度は、患者の個々の解剖学的構造に対応するように調節される。幾つかの実施形態において、ステム500は調節可能な先端部560をさらに含み、それにより、ステム500の長さは、患者の個々の解剖学的構造に対応するように調節される。例えば、幾つかの実施形態において、先端部560は一組のねじ山580を介してシャフト570に調節可能に結合されている。他の実施形態においては、先端部560は、シャフト570に滑動可能に結合されており、この場合、シャフト570に対する先端部560の位置は、止めねじ、機械的インピンジメント又は接着剤(図示せず)を介して維持される。従って、ステム500は一般に、患者のニーズに対応するために必要などのような形状、長さ又は角度も有することが可能である。
【0116】
かくして、本明細書において説明したように、本発明の実施形態は、人工膝を含む。特に、本発明の実施形態は、人工膝患者に増深膝屈曲能力を提供するシステム及び方法に関し、特に、(i)人工膝の大腿骨コンポーネントに屈曲アタッチメントを提供し又は大腿骨コンポーネントの延長部を提供し、その結果として、大腿骨コンポーネントと患者の大腿骨の両方と一体化されたとき、大腿骨コンポーネントの広い関節面領域が得られるようにすること、(ii)植え込み法より大腿骨コンポーネント及び関連の大腿骨切断部の内部幾何学的形状に修正をほどこすこと、(iii)人工膝の脛骨コンポーネントに非対称顆面又は関節面を提供すること、(iv)人工膝の脛骨コンポーネント及び大腿骨コンポーネントに改造を施すこと(脛骨コンポーネント及び大腿骨コンポーネントの或る特定の領域の除去を含む)、(v)非対称大腿顆を設けること(大腿骨コンポーネントに閉鎖丸みを設けることを含む)、(vi)大腿骨及び/又は脛骨全屈曲関節運動を提供することに関し、上述の全ての結果として、人工膝患者にとって、従来達成できた膝屈曲能力よりも深い膝屈曲能力が得られる。
【0117】
本発明は、その精神又は本質的な特徴から逸脱しないで他の特定の形態で具体化できる。例えば、当業者であれば理解されるように、本発明の方法及びシステムを膝単顆膝形成術及び人工器具又は装具に使用できるよう改造可能である。かくして、上述の実施形態は、全ての点で例示であり、本発明を限定するものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、上述の説明ではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。特許請求の範囲の記載の文言及び均等範囲に含まれる全ての変更は、本発明の範囲に含まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工膝(場合によっては、膝義足と称される)に関する。特に、本発明は、人工膝患者のためにより深い膝屈曲(以下、増深膝屈曲と称する場合がある)能力、完全機能的屈曲能力、高い生理的負荷支持能力、向上した膝蓋骨追跡能力をもたらすシステム及び方法に関する。具体的に言えば、かかる改良技術は、(i)大腿骨コンポーネントの前‐近位後顆への関節面の追加(その結果を達成する方法を含む)、(ii)植え込み法による大腿骨コンポーネント及び関連の大腿骨切断部の内部幾何学的形状の修正、(iii)先に得られていた膝屈曲よりも深い膝屈曲を可能にする特徴的な関節面を有する非対称脛骨コンポーネント、(iv)結果として膝関節の高い生理的負荷支持能力及び向上した膝蓋骨追跡能力をもたらす非対称大腿顆を含む。
【背景技術】
【0002】
整形外科医は、膝交換術の増加を経験している。この需要は、関節交換術と同じほど高いクオリティーオブライフ(QOL)を生じるような手技がほとんど無いことにより高まっているように思われる。
【0003】
さらに、膝交換の要望が増大しているということは、機能的屈曲をもたらすと共に完全機能的屈曲を可能にする耐久性があり且つ長持ちする人工膝器械又は膝義足の要望があるということを意味している。すなわち、人工膝の全体的機能及び性能に関する新たな医学的進歩を提供し、かかる器械に関連した対応の外科材料及び技術を向上させる研究に関する多大な要望が存在する。
【0004】
これに対応して、人工膝の改良技術は、要求につれて増大している。かくして、現在入手できる人工膝は、従来用いられた人工膝よりも通常の膝の特徴を模倣している。残念ながら、今日の人工膝には、依然として多くの欠点がある。
【0005】
欠点の中の1つは、人工膝患者が完全機能屈曲(full function flexion )とも呼ばれている深膝屈曲(deep function flexion )を達成することができないということにある。現在入手できる人工膝の中には、完全肢伸展(ゼロ度は、患者の膝が完全に伸展されて真っ直ぐである場合である)から130°を超える膝屈曲(即ち、曲げ)を可能にするものがあるが、かかる人工膝及び結果は、希である。完全機能又は深膝屈曲は、肢がその最大度まで曲げられた場合であり、これは、大腿骨と脛骨が互いに140°以上の角度をなしている場合であり、ただし、実際の角度は、人によって異なると共に体型によっても異なる。完全伸展は、脚/肢が真っ直ぐであり、人が立位にある場合である。
【0006】
標準の人工膝を付けている患者によって達成される度で表される平均範囲を説明するため、以下の説明が提供される。患者の膝又は肢が完全に伸展されると、大腿骨と脛骨は、同一平面内においてゼロ度をなし又は人によっては最高5〜10度の過伸展にある。しかしながら、膝がいったん曲がり、遠位脛骨が臀部に向かって動くと、この角度は、椅子に座っている人についてゼロから90°に増大する。さらに、脛骨が大腿骨の最も近くに位置し、踵が接触しないまでもほぼ臀部のところに位置すると、この角度は、約160°以上である。大抵の人工膝患者は、後者の位置又は膝関節を130°を超える角度に配置する位置を達成することができない。
【0007】
多くの人々の場合、かかる肢及び体の位置は、多くの場合達成されず又は普段所望されていない。しかしながら、ほぼ全ての人は、或る時点において、人が子供と遊ぶために跳んだり着地したりしているときに起こるにせよそうでないにせよ、又は活動的なライフスタイルを過ごしている人に単に偶発的に起こりがちである場合、130°を超える膝の屈曲を必要とする姿勢にあることがわかる。残念ながら、現在入手できる人工膝を装着した人は、大きな膝屈曲を必要とする活動には参加することができず、かくして、傍で見るだけになる。
【0008】
多くの年齢層及び文化では、かかる肢/膝及び体の姿勢が大抵のときに望ましく且つ必要である。例えば、アジアの文化又はインドの文化では、完全機能的屈曲及びしゃがみ込み姿勢は、よく見受けられ、比較的長い時間にわたって行われる。
【0009】
したがって、上述の患者及び特に相当なしゃがみ込み、膝を完全に曲げた状態での座位及び/又は祈祷又は食事の際の跪きがよく見受けられる文化圏の患者のため、現在入手できる人工膝を付けた人の間で現在可能であるレベルよりも高い膝屈曲を達成する人工膝に対する要望が存在する。
【0010】
かくして、人工膝に関する技術が現在存在するが、依然として課題が存在する。したがって、現行の技術を向上させ又はこれに代えて他の技術を用いることが当該技術分野における技術改良となる。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、人工膝に関する。特に、本発明は、人工膝患者に増深膝屈曲能力を提供するシステム及び方法に関し、特に、(i)患者の大腿骨及び適当な脛骨コンポーネントに一体化されたときに、結果的に完全機能的屈曲が得られるようにする人工膝の大腿骨コンポーネントの改造又はこれへの取り付けが行われた状態で広い関節面領域を人工膝の大腿骨コンポーネントに提供すること、(ii)植え込み法により大腿骨コンポーネント及び対向した大腿骨の内部幾何学的形状の改変を行うこと、(iii)人工膝の脛骨コンポーネントに非対称下面を提供すると共に一義的に位置決めされる関節面を提供して完全機能的屈曲を容易にすること及び(iv)膝の生理的負荷支持能力を厳密に再現すると共に膝蓋骨の良好な追跡能力を提供するために偏在化膝蓋骨(滑車)溝を備えた非対称大腿顆表面に関する。
【0012】
通常の膝では、第1に、ひかがみ筋がこれらの機械的利点を失う理由で、第2に、内側大腿顆が後方に転動し、それにより最大120°までの屈曲が生じないという理由で、約120°での実際の屈曲の中断が生じる。120°の屈曲により、内側大腿顆は、脛骨の内側半月の後角に対して後方に転動し始める。140°の屈曲では、大腿骨は、内側半月の後角上に載り上げる。したがって、屈曲の抵抗は、この時点及びこれを過ぎて感じられる。完全屈曲により、内側大腿顆は、120°のその位置から、後方脛骨皮質から10mmの位置のところまで約8mm戻る。大腿骨は、過屈曲の際、更に5mm側方に戻り、その結果、120°〜160°の脛骨大腿骨回転がほとんどなく又は全くないようになる。したがって、120°〜160°の過屈曲は、0°〜120°の屈曲の運動学とは異なる弧であり、160°では、外側半月の後角は、大腿顆の遠位側の脛骨の後面上に位置するようになる。したがって、後角は、圧縮されず、2つの骨は、互いに直接的な接触関係をなす。
【0013】
内側半月の後角は、140°で屈曲を妨害し、160°ではこれを完全に制限するため、過屈曲に対する最終的な限度が生じる。後角は又、内側大腿顆が後方脛骨皮質から10mmの箇所を越えて戻るのを阻止する。かくして、内側半月の後角は、深屈曲を達成する上で重要な構造体である。
【0014】
本発明の具体化は、人工膝患者が現在設計の人工膝を用いて従来達成できる度合いよりも深い膝屈曲を達成することができるようにする改良型人工膝と関連して行われる。本発明の少なくとも幾つかの具体化例では、内側半月の後角のための追加の隙間の実現を可能にするために大腿骨の幾つかの部分を切除することにより人工膝に増深膝屈曲が提供される。本発明の少なくとも幾つかの具体化例は、更に、大腿骨の切除部分内に関節面を位置決めすると共に/或いは設置して内側半月の後角と大腿骨の切除面との間にインターフェイスを提供する。
【0015】
本発明の少なくとも幾つかの具体化例では、関節面を大腿骨の後顆の近位前面(又は部分)に設けることにより人工膝に増深膝屈曲が提供される。本発明の少なくとも幾つかの具体化例は、人工膝の大腿骨コンポーネントの内側又は外側後顆のうちのいずれか一方又はこれら両方の近位前部分に設けられた追加の又は広い関節面を含む。大腿骨コンポーネントの実施形態は、増大した関節面領域を、患者が深膝屈曲中、自分の膝を曲げたとき、大腿骨コンポーネントと脛骨コンポーネントとの接触が維持され、増深膝屈曲を達成することができるよう前方方向において大腿骨コンポーネントの後顆の近位端部に追加する。
【0016】
本発明の少なくとも幾つかの具体化例では、脛骨関節運動を改変することにより増深膝屈曲を提供することができ又は向上させることができ、この場合、人工膝の脛骨コンポーネントの同形内側脛骨関節面の中心は、現在利用可能な中心に対して後方に動かされる。加うるに、かかる幾つかの実施形態では、外側脛骨関節面の全体的形状が変更される。
【0017】
本発明の少なくとも幾つかの具体化例では、人工膝の非対称大腿骨コンポーネントを提供することにより増深膝屈曲を達成することができる。非対称大腿骨コンポーネントにより、通常の膝で生じているように関節前後で伝えられる力の1/2以上の伝達を内側サイドに対して行うことができる。幾つかの具体化例では、人工膝の脛骨コンポーネント及び大腿骨コンポーネントの他の改造が行われる場合があり、かかる改造としては、非対称大腿顆を設けること、大腿骨コンポーネントに閉鎖丸みを設けること及び脛骨コンポーネント及び大腿骨コンポーネントの或る特定の領域を除去することが挙げられ、上述の全ての結果として、人工膝患者にとって、現在達成できる膝屈曲能力よりも深い膝屈曲能力が得られる。
【0018】
本発明の方法、改造及びコンポーネントは、人工膝の分野において特に有用であることが判明したが、当業者であれば理解されるように、かかる方法、改造及びコンポーネントは、多種多様な整形外科用途及び医療用途に利用できる。
【0019】
本発明の上記特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲に記載され又はこれらにおいて十分に明らかになろう。これら特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘された機器及び組み合わせによって実現されると共に得られる。さらに、本発明の特徴及び利点は、本発明の実施により学習でき又は以下に記載する説明から明白であろう。
【0020】
本発明の上述の特徴及び利点並びに他の特徴及び利点を得るようにするため、本発明の具体的な説明がその特定の実施形態を参照して行われ、これら実施形態は、添付の図面に記載されている。図面が本発明の代表的な実施形態だけを記載していて、従って、本発明の範囲を限定するものと見なされないことを理解して、本発明を添付の図面の使用により追加の特定事項及び細部をもって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】膝関節の屈曲範囲を示す図である。
【図1B】膝関節の屈曲範囲を示す図である。
【図2A】一般的な種々の人工膝の1つを示す図である。
【図2B】一般的な種々の人工膝の1つを示す図である。
【図2C】一般的な種々の人工膝の1つを示す図である。
【図3A】一般的な種々の人工膝の1つを示す図である。
【図3B】一般的な種々の人工膝の1つを示す図である。
【図3C】一般的な種々の人工膝の1つを示す図である。
【図4A】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図4B】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図4C】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図4D】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図5A】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図5B】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図5C】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図5D】本発明の実施形態としての人工膝の大腿骨コンポーネントの実施形態の概略斜視図である。
【図6A】人工膝の代表的な先行技術の脛骨コンポーネントの側面図である。
【図6B】人工膝の代表的な先行技術の脛骨コンポーネントの側面図である。
【図6C】本発明の実施形態としての脛骨コンポーネントの代表的な実施形態の側面図である。
【図6D】本発明の実施形態としての脛骨コンポーネントの代表的な実施形態の側面図である。
【図6E】隆起部関節運動特徴部を有するよう改造された代表的な脛骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図6F】隆起部関節運動特徴部を有するよう改造された代表的な脛骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図6G】球形関節運動特徴部を有するよう改造された代表的な脛骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図6H】球形関節運動特徴部を有するよう改造された代表的な脛骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図7A】本発明の実施形態としての大腿骨コンポーネント及び脛骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図7B】本発明の実施形態としての大腿骨コンポーネント及び脛骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図8A】従来の大腿骨コンポーネントを示す図である。
【図8B】本発明の大腿骨コンポーネントの実施形態を示す図である。
【図9】本発明の実施形態としての大腿骨コンポーネントの実施形態に用いられるモジュラーアタッチメントを示す図である。
【図10A】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図10B】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図10C】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図10D】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図10E】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図10F】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図10G】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図10H】大腿骨コンポーネントの実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図であり、大腿骨の切除部分が想像線で示されている図である。
【図11A】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11B】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11C】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11D】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11E】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11F】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11G】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11H】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11I】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11J】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図11K】大腿骨コンポーネントの変形実施形態を大腿骨に取り付ける代表的なステップを示す図である。
【図12A】従来型大腿骨コンポーネントと本発明の実施形態としての大腿骨コンポーネントの比較図である。
【図12B】従来型大腿骨コンポーネントと本発明の実施形態としての大腿骨コンポーネントの比較図である。
【図13】従来型大腿骨コンポーネントと本発明の実施形態としての大腿骨コンポーネントの比較図である。
【図14】本発明の実施形態としての大腿骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図15A】大腿骨コンポーネントの実施形態相互間の比較図である。
【図15B】大腿骨コンポーネントの実施形態相互間の比較図である。
【図15C】大腿骨コンポーネントの実施形態相互間の比較図である。
【図15D】大腿骨コンポーネントの実施形態相互間の比較図である。
【図16A】図15A〜図15Dに示されている大腿骨コンポーネントの関節運動面を伸展させることができる仕方を示す図である。
【図16B】図15A〜図15Dに示されている大腿骨コンポーネントの関節運動面を伸展させることができる仕方を示す図である。
【図16C】図15A〜図15Dに示されている大腿骨コンポーネントの関節運動面を伸展させることができる仕方を示す図である。
【図16D】図15A〜図15Dに示されている大腿骨コンポーネントの関節運動面を伸展させることができる仕方を示す図である。
【図16E】大腿骨コンポーネントの関節運動面を伸展させることができる短くされた実施形態を示す図である。
【図16F】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16G】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16H】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16I】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16J】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16K】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16L】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16M】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16N】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16O】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16P】漸減半径を有する大腿骨コンポーネントの非限定的な実施形態の屈曲の状態を示す図であり、漸減半径が本発明の代表的な実施形態に従って屈曲範囲の一部分にわたって弛緩をもたらしている状態を示す図である。
【図16Q】本発明の代表的な実施形態としての伸展状態の関節運動面を含む膝単顆大腿骨コンポーネントを示す図である。
【図16R】本発明の代表的な実施形態に従って漸減半径及び凹みを有する膝単顆大腿骨コンポーネントを示す図である。
【図16S】本発明の代表的な実施形態に従って凹みを有する切頭大腿骨コンポーネントを示す図である。
【図17】約160°に屈曲された通常の膝のX線像を示す図であり、膝蓋骨の位置を更に示す図である。
【図18A】本発明の代表的な実施形態としての大腿骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図18B】本発明の代表的な実施形態としての大腿骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図18C】本発明の代表的な実施形態としての大腿骨コンポーネントの変形実施形態を示す図である。
【図19A】主関節面に対して後に位置する関節面を備えていない脛骨コンポーネントを示す図である。
【図19B】主重量支持関節運動特徴部の後方に位置する脛骨完全屈曲関節運動を示す図である。
【図20A】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20B】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20C】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20D】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20E】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20F】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20G】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20H】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図20I】大腿完全屈曲関節運動及び脛骨完全屈曲関節運動の代表的な相互作用を示す図である。
【図21】膝の深屈曲中における脛骨の内側プラトーの後方関節面と膝窩面との代表的な相互作用を示す図である。
【図22】膝窩面の切除に続く切除ブロック及び大腿骨の代表的な具体化例を示す図である。
【図22A】膝窩面の切除前における切除ブロック及び大腿骨の代表的な具体化例を示す図である。
【図23】深屈曲中における脛骨の内側プラトーの後方関節面と人工膝の大腿骨コンポーネントの伸展部分の代表的な相互作用を示す図である。
【図23A】深屈曲中における脛骨コンポーネントの内側脛骨プラトーの後方完全屈曲関節面と人工膝の大腿骨コンポーネントの伸展部分の代表的な相互作用を示す図である。
【図24】本発明の代表的な実施形態に従って脛骨コンポーネント及び脛骨内に挿入されたステムの断面図である。
【図25】本発明の代表的な実施形態としてのステムの一実施形態を示す図である。
【図26】本発明の代表的な実施形態としてのステムの別の実施形態を示す図である。
【図27】本発明の代表的な実施形態としてのステムの別の実施形態を示す図である。
【図28】本発明の代表的な実施形態としての調節可能なステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は人工膝に関する。特に、本発明は、人工膝患者のために増深膝屈曲能力を提供するシステム及び方法に関し、特に、(i)大腿骨の後顆の近位前方面(又は部分)に伸展状態の関節面を提供すること、(ii)植え込み方法による大腿骨コンポーネント及び関連の大腿骨切開部の内部幾何学的形状に対して改造を行うこと、(iii)非対称脛骨関節面を設けること及び脛骨コンポーネント及び大腿骨コンポーネントの或る特定の領域を除去することを含む人工膝の脛骨及び大腿骨コンポーネントに対する改造を行うこと、(iv)閉鎖丸みを大腿骨コンポーネントに設けることを含む非対称大腿顆を設けること、に関し、上述の全ての結果として、人工膝患者にとって、従来達成可能な膝屈曲能力よりも高い又は深い膝屈曲能力が得られる。
【0023】
図示すると共に本明細書において説明する本発明は、他の形態で具体化できることが強調される。かくして、図面も本発明のシステム及び方法の種々の実施形態に関する以下の詳細な説明も本発明の範囲を限定するものではない。図面及び詳細な説明は、本発明の実施形態の実施例の単なる例示であり、本発明の実質的な範囲は、多くの実施形態を記載するよう作られた添付の特許請求の範囲の記載にのみ基づいて定められる。本発明の種々の実施形態は、図面を参照すると最も良く理解され、図中、同一の要素は、同一の英数字で示されている。
【0024】
今、図面を参照すると、図1〜図3は、本発明の実施形態の特徴を理解するのを助けるための全体的参照のために提供されている。図1A及び図1Bは、自分の膝を伸展させたり屈曲させたり(曲げたり)している人の脛骨と大腿骨との間で可能な角度範囲を示している。具体的に説明すると、図1Aは、人が自分の膝を伸展させたり曲げたりしている間に可能な角度範囲を示しており、膝の中には、160°、165°以上まで屈曲できるものがあることがわかる。図1Bは、別の位置でのこれらの種々の角度を示している。これらの図は、本発明の実施形態に関して一般に現在入手できる人工膝では可能ではない人工膝患者について135°を超える膝の屈曲がどのようにして可能であるかを示す説明の間、念頭に置かれるべきである。
【0025】
図2A〜図2Cは、人工膝10の全体の種々の斜視図である。具体的に説明すると、図2Aは、人工膝関節10を備えた左側膝関節の矢状図であり、通常の膝の脛骨及び大腿骨は、透けた状態にある。図2Bは、人工膝10の大腿骨コンポーネント12の拡大図であり、図2Cは、人工膝の脛骨コンポーネント14の上側斜視図である。図2Bは、大腿骨コンポーネント12の或る特定のコンポーネント、例えば、アタッチメント(図示されていないが、以下において説明する)に一体的に結合するよう本発明の実施形態において改造可能な内側受け入れ領域16並びに外側受け入れ領域18を示している。大腿骨コンポーネント12の内部幾何学的形状は、一体形大腿骨コンポーネント12を図4Dに示されているように切除大腿骨32上の定位置に巻くことができるよう設けられている。かくして、大腿骨コンポーネント12の内部幾何学的形状は、膝蓋骨の関節運動及び後顆の近位部分の前方伸展を許容する種々の表面(領域16,18を含む)を含む。後顆の切除部分は、全膝屈曲の際に圧縮荷重を受ける平坦な表面を提供する。加うるに、切除表面は、大腿骨コンポーネントの関節面が本質的に、切除される表面と同一の位置にあるよう提供される。したがって、大腿骨と脛骨との通常の関係は、全屈曲を備えた状態で保たれる。加うるに、膝を完全に屈曲させると、大腿骨コンポーネントと下に位置する大腿骨との間のインターフェイスは、主として、剪断力ではなく圧縮荷重を受ける。圧縮力は、大腿骨コンポーネントと大腿骨との間により安定したインターフェイスを提供し、それにより、弛みの恐れを減少させる。したがって、幾つかの実施形態では、大腿骨コンポーネントと脛骨コンポーネントとの間のインターフェイスは、膝関節の全屈曲の際、大腿骨コンポーネントと下に位置する大腿骨との間に働く圧縮力を高めるよう構成されている。
【0026】
また、図2Bには、内側大腿顆表面20及び外側大腿顆表面22が見える。図2Cは、脛骨コンポーネント14及びその要素、即ち、外側脛骨顆表面24、内側脛骨顆表面26及び顆間表面28を示している。人工膝10が機能しているとき、大腿骨コンポーネント12の内側大腿顆表面20と脛骨コンポーネント14の内側脛骨顆表面26との間及び大腿骨コンポーネント12の外側大腿顆表面22と脛骨コンポーネント14の外側脛骨顆表面24との間にインターフェイスが存在する。
【0027】
図3A〜図3Cは、種々のコンポーネントを備えた人工膝10全体の追加の斜視図である。具体的に説明すると、図3Aは、大腿骨コンポーネント12が上述したように脛骨コンポーネント14に対して関節運動する状態の人工膝10の正面図である。図3Bは、大腿骨コンポーネント12の側面図、図3Cは、特に脛骨コンポーネントの内側サイドの脛骨コンポーネント14の側面図であり、内側脛骨顆表面26を示している。内側大腿顆表面20は、内側脛骨顆表面26と滑動可能にインターフェイスし、その結果、人が自分の膝を屈曲させ又は伸展させているときに、内側大腿顆表面20の弧が内側脛骨顆表面26に沿って動くようになっている。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態では、関節面を大腿骨の後顆の近位前方表面(又は部分)に設けることにより増深膝屈曲が人工膝10に与えられる。本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、大腿骨コンポーネント12の内側又は外側後顆のうちのいずれか一方又は両方の近位前方部分に設けられる追加の又は拡大された関節面を含む。大腿骨コンポーネント12の実施形態は、拡大された関節表面領域を前方方向において大腿骨コンポーネント12の後顆の近位端部に追加し、患者が深膝屈曲の際に自分の膝を曲げたとき、大腿骨コンポーネント12と脛骨コンポーネント14の接触が維持され、増深膝屈曲を達成することができるようになっている。
【0029】
これをどのようにして達成できるかということについての4つの互いに異なる実施例について図を参照して説明する。関節表面領域を大腿骨コンポーネント12の後顆の近位端部に前方方向において追加増大させる方法が本発明の実施形態によって提供される。
【0030】
図8A及び図8Bは、大腿骨コンポーネント12及び大腿骨コンポーネント12の後顆の近位端部に関節表面領域を追加増大させる方法を示している。図8Aは、従来型大腿骨コンポーネント12の側面図である。本発明の人工膝の第1の実施形態では、図8Aの大腿骨コンポーネント12の陰影を施した領域、即ち、後顆が、骨に対向した結果として得られる表面が遠位大腿骨のシャフトの後面と同一の平面に近づくまで前方方向に厚くされている。この厚肉化は、図8Bを参照すると理解できる。この結果、大腿骨コンポーネント12の後顆の広い関節表面領域が得られる。これには、より多くの骨を切除することが必要であるが、これは、その他の点においては、現行の人工膝に対する容易な改造であり、現行の外科技術の改変をほとんど必要とせず又は全く必要としない。
【0031】
関節表面領域を広げる第2の形式の実施形態が図4A〜図5Cに示されている。この種の実施形態を利用する方法が図9〜図10Hに示されている。この種の実施形態は、人工膝10の実施形態の大腿骨コンポーネント12への伸展アタッチメントを利用し、この伸展アタッチメントは、大腿骨コンポーネント12と患者の大腿骨の両方に一体化されると、結果的に、大腿骨コンポーネント12の広い表面領域が得られる。
【0032】
図4A〜図5Dに示されているように、この種の実施形態は、後顆の近位部分の前方部分の関節表面領域を広げるようモジュラー屈曲取り付け面を提供するモジュラーアタッチメント30を有する。モジュラーアタッチメント30は、比較的従来の全膝大腿骨コンポーネント12の内側又は非関節面に取り付け可能である。モジュラーアタッチメント30は、一実施形態では、大腿骨コンポーネント12の後顆のうちの一方又は両方の平坦な前面の凹み受け入れ領域内に部分的に受け入れ可能であり、かくして、内側後顆、外側後顆又はこれら両方に使用可能な一部分を有する。変形例として、モジュラーアタッチメントは、大腿骨それ自体の切除後顆のうちのいずれか一方又は両方に設けられた溝内に植え込まれても良い。
【0033】
モジュラーアタッチメント30は、大腿骨コンポーネント12の内側大腿顆表面20及び/又は外側大腿顆表面22の前方連続部として拡大された関節接触面を提供する。幾つかの実施形態では、モジュラーアタッチメント30は、当初、大腿骨コンポーネント12上に配置され、次に、患者の大腿骨の遠位端部に取り付け可能である。他の実施形態では、モジュラーアタッチメント30は、まず最初に、大腿骨の遠位端部の後顆に連結され、次に、大腿骨コンポーネント12に一体的に連結されるのが良い。モジュラーアタッチメント30は、内側サイド、外側サイド又はこれら両方のサイドに使用可能である。
【0034】
図4A〜図4Dは、大腿骨コンポーネント12及びモジュラーアタッチメント30の実施形態の斜視図である。上述したように、モジュラーアタッチメント30は、大腿骨コンポーネント12に取り付けられると共に患者の大腿骨に取り付けられて大腿骨コンポーネント12の表面領域を拡大し、最終的に、人工膝患者において140°を超える深膝屈曲を可能にしている。図4Aは、大腿骨コンポーネントの後顆に取り付けられたモジュラーアタッチメント30を有する大腿骨コンポーネント12の実施形態の単純化された側面図である。図4Dは、患者の大腿骨及び人工膝の大腿骨コンポーネントに一体的に取り付けられたアタッチメントの側面図である。モジュラーアタッチメント30は、図4B〜図4Dに示されているようにモジュラー(モジュール式)であるのが良く、内側受け入れ領域16と外側受け入れ領域18のいずれか一方又は両方(即ち、図2Bに示されているように、大腿骨コンポーネント12の後顆の前方内面)及び/又は大腿骨又は大腿骨コンポーネント12と大腿骨の両方の内側後顆及び外側後顆のうちのいずれか一方又は両方に設けられた凹部内に嵌まり込むことができる。別の実施形態では、モジュラーアタッチメント30は、以下に説明するように、大腿骨コンポーネントの永続部分であるのが良い。
【0035】
図4Bは、モジュラーアタッチメント30の一実施形態の側面図であり、図4Cは、モジュラーアタッチメント30の図示の実施形態の上面図である。モジュラーアタッチメント30の図示の実施形態の特定の寸法は、与えられておらず、当業者であれば、かかる寸法は、患者によって変更可能であることが認識され、更に、モジュラーアタッチメント30の種々の部分は全て、大腿骨コンポーネント12の顆とほぼ同じ幅であるよう幾つかの実施形態において形成可能であることが認識されよう。
【0036】
幾つかの実施形態では、モジュラーアタッチメント30は、第2の部分にほぼ垂直な第1の部分を有する。モジュラーアタッチメント30の第1の部分は、モジュラーアタッチメント30の一端部のところにフランジ付き関節領域36(「フランジ付き領域36」)を必要とすると共にこれから延びる細長いステム38を必要とし、この細長いステムは、フランジ付き領域36から遠位側にフランジ付き領域にほぼ垂直に延びている。したがって、細長いステム38は、フランジ付き領域36の非関節側に取り付けられている。細長いステムがフランジ付き領域36の内側‐外側幅よりも実質的に短い内側‐外側幅を有するものとして図4Cに示されているが、他の実施形態の細長いステム38は、大腿骨コンポーネント12それ自体の後顆の内側‐外側幅までの任意の内側‐外側幅のものであって良い。
【0037】
細長いステム38は、上側サイド40及び下側サイド42を有している。上側サイド40上の大腿骨32及び下側サイド42上の大腿骨コンポーネント12との一体連結を可能にするようこぶ状突起44が上側サイド40及び下側サイド42のいずれか一方又は両方に設けられるのが良い。或る形式のこぶ状突起受け入れ溝又は凹部(図示せず)がこれらこぶ状突起44を受け入れて大腿骨32、アタッチメント30及び大腿骨コンポーネント12との一体連結を確実にするよう大腿骨32及び/又は大腿骨コンポーネント12に設けられるのが良く、モジュラーアタッチメント30は、大腿骨32と大腿骨コンポーネント12との間に配置される。
【0038】
細長いステム38にこぶ状突起44が設けられていない実施形態では、アタッチメント30は、大腿骨コンポーネント12の内側受け入れ領域16及び外側受け入れ領域18のうちのいずれか一方又は両方に設けられた凹部内に嵌まり込むのが良い。モジュラーアタッチメント30の細長いステム38は、かかる凹部内に嵌まり込んでこれと一体に連結される。モジュラーアタッチメント30は、それと同時に、細長いステム38の上側サイド40(全体として)上の大腿骨に結合可能である。細長いステムにこぶ状突起が設けられていない実施形態では、モジュラー部分のステムは、大腿骨の切除後顆に設けられた溝内に更に嵌まり込むことができる。
【0039】
モジュラーアタッチメント30は、大腿骨コンポーネント12の全体的表面領域を拡大すると共に大腿骨コンポーネント12と脛骨コンポーネント14との間に存在するインターフェイス及び接触部を長くする。これにより、人工膝患者における大きな膝屈曲が可能になる。これは、大腿骨コンポーネント12は、全屈曲範囲にわたり脛骨コンポーネント14とインターフェイスされた状態のままであり、その結果、痛みのない膝屈曲が得られるからである。
【0040】
この拡大した表面領域がなければ、人工膝の大腿後顆の内側及び外側近位縁部は、脛骨コンポーネント14の近位表面中に押し入る場合があり、それにより脛骨コンポーネント14の摩耗が生じる場合がある。加うるに、脛骨コンポーネント14は、人工膝の後顆の近位縁部の前方及び/又は近位側に位置した遠位大腿骨32の骨に接触する場合があり、それにより、痛みが生じると共に人工膝患者の屈曲が制限され、脛骨コンポーネントの摩耗が生じる場合がある。さらに、この追加された表面領域がなければ、屈曲が140°を超える場合、脛骨コンポーネント14は、遠位側の方向で大腿骨コンポーネント12に力を及ぼす場合があり、その結果、大腿骨コンポーネント12が弛む場合がある。したがって、モジュラーアタッチメント30は、人工膝の寿命を延ばし、患者の痛みを和らげ、最終的には、人工膝患者が深膝屈曲又は全機能的屈曲を達成することができるようにする。
【0041】
図5A〜図5Dは、モジュラーアタッチメント30が大腿骨コンポーネント12及び大腿骨32に取り付けられているときのモジュラーアタッチメント30の種々の斜視図である。図5Aは、モジュラーアタッチメント30が大腿骨コンポーネント12の取り付けに先立って大腿骨32に取り付けられているときのモジュラーアタッチメント30の図である。図5B〜図5Dは、モジュラーアタッチメント30が大腿骨32への取り付けに先立って大腿骨コンポーネント12内に引っ込められており、具体的に言えば、モジュラーアタッチメント30が内側大腿受け入れ領域16及び外側大腿受け入れ領域18のうちのいずれか一方又は両方に一体連結されているときのモジュラーアタッチメント30の図である。
【0042】
図9及び図10A〜図10Hは、モジュラーアタッチメント30を大腿骨32に取り付け、次に、大腿骨コンポーネント12を大腿骨32及びモジュラーアタッチメント30に取り付ける方法を示している。図9は、モジュラーアタッチメント30の取り付けを可能にするよう大腿骨に凹部を形成する前に、大腿骨32に必要な切除の仕方を示している。図9及び図10A〜図10Hは、モジュラーアタッチメント30に必要な特定の切除法を示していないが、必要な切除法は、当業者であれば理解されよう。切除を図10Aに示されているように完了した後、モジュラーアタッチメント30を図10Bに示されているように大腿骨に取り付けるのが良い。次に、大腿骨コンポーネント12を図10C〜図10Hに示されているように位置決めすると共に動かすことにより大腿骨コンポーネント12を大腿骨32(及び所望ならばモジュラーアタッチメント30)に取り付けるのが良い。図10C〜図10Hに示された手順から理解できるように、大腿骨コンポーネント12を定位置に回転させ又は転動させる必要があり、最初の接触は、図10Eに示されているように後方領域で始まり、図10Gに示された完全着座位置に進む。これは、現行の技術と比較して幾分かの追加のやり方及び訓練を必要とする新たな植え込み技術である。
【0043】
図4Aを参照して上述したように、延長された関節面を備える第3の形式の実施形態は、モジュラーではなく別個のモジュラーアタッチメント30を利用していない。かかる実施形態では、モジュラーアタッチメント30のフランジ付き領域36に相当する延長された関節面は、大腿骨コンポーネント12の一方又は両方の顆の一部として一体に形成されるのが良い。かかる1つの実施形態をどのように配置するかは、図11A〜図11Kに示されている。これらの図を参照して理解できるように、かかる実施形態の配置は又、図10C〜図10Hに示されている技術と同様な回転配置技術を利用する。図10H及び図11Kを参照すると理解できるように、モジュラー又は非モジュラー実施形態のうちの任意のものは、オプションとして、大腿骨コンポーネント12の前フランジに配置された1本又は2本以上のねじによって更に固定されるのが良い。
【0044】
図11A〜図11Kに示された実施形態の一利点は、植え込みを行っている外科医が遠位且つ前方斜め切断部を作った後に、図示の実施形態を利用すべきか伝統的な大腿骨コンポーネント12を利用すべきかを決定できるということにある。これは、図12A及び図12Bに示されている。図12Aは、伝統的な大腿骨コンポーネント12を示している。図12Bは、図11A〜図11Kに示された大腿骨コンポーネント12の実施形態を示している。図を参照して理解できるように、遠位切れ目62及び前方斜め切断部64は、本質的に互いに同一である。これは、図13を参照すると更に理解でき、図13は、図12A及び図12Bを互いに重ね合わせた図であり、遠位大腿切断部62と前方斜め切断部64が互いに同一であることを示しているだけでなく、図示の実施形態のために切除された骨の全量が現在の技術及び大腿骨コンポーネント12を用いて切除された量とほぼ同じであり又はこれよりも少ないことを示している。
【0045】
図11A〜図11Kに示されている大腿骨コンポーネント12の非モジュラー実施形態及び図4A〜図5Dに示されている大腿骨コンポーネントのモジュラー実施形態では、人工膝の内側平坦面(植え込まれると、骨と接触関係をなす)が互いに出会う接合部がある。これら平坦面は、互いに鋭角をなして近づくのではなく、2つの平坦面を結ぶ丸みを有しても良く又は有さなくても良い。平坦面の接合部の全てが丸みを必要としているわけではなく、幾つかの実施形態では、平坦面の接合部がいずれも丸みを有していない。平坦面は、正確に従来型膝上と同一の平面内に位置しても良く、又は位置しなくても良く、かかる平坦面は、非モジュラー表面の配置を可能にし、かかる非モジュラー表面は、遠位大腿シャフトの後皮質の連続部である平面まで又はほぼこれまで延びる大腿後顆の近位前方部分に関節運動を提供する。1つ又は2つ以上の丸みが大腿骨コンポーネント12の内側平坦面の接合部に提供される実施形態では、対応の丸み31又は湾曲が図5Aに示されているように大腿骨の切除骨面に提供されるのが良い。当業者であれば理解できるように、対応の丸み31の存在は、図10A〜図10H及び図11A〜図11Kに示されているように大腿骨コンポーネント12の回転配置を助けることができる。
【0046】
この内部構成により、大腿骨コンポーネント12を当初、屈曲位置で大腿骨に取り付けることができ、次に、図10A〜図10H及び図11A〜図11Kに示されていると共にこれらを参照して説明するように大腿骨コンポーネント12を完全に植え込んでいるときに大腿骨コンポーネント12を回転させて完全伸展位置にするのが良い。コンポーネントをしっかりと安定化させるためにねじをオプションとして大腿骨コンポーネント12の前フランジに配置するのが良い。これにより、モジュラーアタッチメント30が既に大腿骨32の後顆に植え込まれた状態で、非モジュラー大腿骨コンポーネント12又はモジュラー大腿骨コンポーネント12を植え込むのが容易になる。
【0047】
大腿骨コンポーネント12の第4の形式の実施形態が図14に示されている。この種の実施形態は、大腿骨の遠位側の1/4〜1/3の後方皮質の連続部と同一平面内に位置した領域まで近位側且つ前方に延びる後顆の関節面のうちの何割か又は全てに加えて、体重支持遠位大腿顆に取って代わった大腿骨コンポーネント12を有する。かかる実施形態は、別々の内側及び外側コンポーネントを有するのが良く又は内側及び外側顆に取って代わる又は再表面仕上げする1つのコンポーネントを形成するよう互いに取り付けられるのが良い。
【0048】
歴史的に、多くの初期の全膝大腿骨コンポーネント12は、膝蓋大腿関節に関するものではなかった。患者のうちの或る特定の割合は、前方膝疼痛を有しているので、前方フランジが滑車(膝蓋骨溝)を再表面仕上げするために大腿骨コンポーネント12に追加されていた。これにより、膝蓋骨が弱体化し、その結果、患者の中には骨折を起こした者もいた。近年、コンポーネントの植え込みを必要としない膝蓋骨疼痛を最小限に抑えるための技術が開発された。図14に示された実施形態は、人工膝の顆部分の一体部分である前方フランジを備えていない。予想されることとして、かかる器械12は、単独で、何割かの患者に関しては、大腿顆に取って代わるのに適している場合があり、それにより、外科医は、適応であれば膝蓋大腿関節を治療することができる。変形例として1つ又は別々の膝蓋大腿骨関節面を植え込んでも良い。膝蓋大腿インプラントは、完全に別個であっても良く、或るいは、モジュラーであって図4に示された器具に取り付けられても良い。図14に示されている実施形態は、モジュラー前方フランジ(滑車溝)を図示の器械に取り付ける能力を備えている。
【0049】
本発明の具体化例は、大腿骨コンポーネント12、脛骨コンポーネント14及び/又はモジュラーアタッチメント30を含み、これらは各々、金属、金属合金、セラミック、炭素繊維、ガラス、ポリマー(骨セメントを含む)、有機材料、取り出した人又は動物の組織及び別個に又は上述の材料の2つ又は2つ以上の任意の組み合わせで用いられる天然に産出する又は合成材料から成る。
【0050】
上述の説明及び対応の図を参照すると理解できるように、現在存在する大腿骨コンポーネント12は、後顆の近位前方方向に短い距離延びるに過ぎない関節面を提供する。例えば、図2A及び図8Aを参照すると理解できるように、後顆の前方端部のところの関節面は、代表的には、患者の元の後顆の最も後方の部分(又は大腿骨コンポーネント12の最も後方の部分)から大腿シャフトの後方皮質の遠位側の1/4〜1/3の連続部である平面まで測定して、後顆のせいぜい前方側の1/3まで延びてこれに取って代わる。
【0051】
これとは対照的に、図示すると共に上述した大腿骨コンポーネント12の種々の実施形態は、内側顆及び後顆の最も後方の部分と大腿シャフトの後顆の遠位側の1/4〜1/3の連続部である平面との間の前後距離の半分以上にわたって延びるよう近位前方方向に延びる外側顆のうちのいずれか一方又は両方のための延長された関節面を提供する。幾つかの実施形態では、延長された関節面は、後顆の最も後方の部分と大腿シャフトの後方皮質の遠位側の1/4〜1/3の連続部である平面との間の前後距離の少なくとも2/3にわたって延びる。他の実施形態では、延長された関節面は、後顆の最も後方の部分と大腿シャフトの後方皮質の遠位側の1/4〜1/3の連続部である平面との間の前後距離のほぼ全体にわたって延びる。さらに別の実施形態では、延長された関節面は、図16A〜図16Dに示されているように、大腿シャフトの後顆の遠位側部分を含むよう更に延びるのが良い。
【0052】
骨に接触する場合があり又は接触しない場合があり、大腿骨関節面の連続部である延長部の表面を全屈曲関節部という場合がある。脛骨が全伸展状態にあるときに脛骨の関節面の一部をなしていない内側及び/又は外側の後方縁部に対応の表面が設けられるのが良い。例えば、本発明の幾つかの具体化例では、内側脛骨運動部の後方縁部には対応の表面が設けられ、内側関節面の中心は、コンポーネントの後縁から前縁までの距離の20%を越えたところに位置する。
【0053】
図19Aに示された実施形態は、主関節面43に対して後方に位置する非関節面41を示している。図19Bは、全屈曲関節面45及び関節面47を示している。図19Bの脛骨完全屈曲関節部は、主体重支持関節部の後方に位置し、大腿骨コンポーネントの特定の関節領域、即ち、図16A〜図16Qに示されると共に図16Eの僅かに短くされた実施形態で示されている大腿完全屈曲関節部(近位側延長部50)と共に関節運動する。
【0054】
引き続き図16Eを参照すると、本発明の幾つかの実施形態では、大腿骨コンポーネント53の完全屈曲関節面402は、種々の関節丸み404,406,408の区分を有する。各区分は、膝に関する屈曲範囲全体を通じて大腿骨コンポーネント53と脛骨コンポーネント(図示せず)との関係を制御する手段として提供される。
【0055】
丸み404は、凹み410が関節面402上に形成されるよう漸減半径を有するものとして特徴付けられる。幾つかの実施形態では、凹み410は、膝関節が図16Fに示されているように約−10°まで過剰に伸展された場合に脛骨コンポーネント14の前隆起部420を受け入れるよう構成されている。さらに過剰伸展時、図16Gに示されているように、凹み410は、前隆起部420に当たり、その結果、凹み410と前隆起部420との間のインターフェイスは、大腿骨コンポーネント53と脛骨コンポーネント14との間の支点として働くようになる。したがって、膝関節を約−10°を越えて過伸展させると、関節面402の丸み404は、図示のように脛骨コンポーネント14から伸延される。この伸延量が増大すると、膝関節の密な結合組織は、応力を受け、それにより膝関節のそれ以上の過伸展が制限される。
【0056】
次に図16Hを参照すると、膝関節が約0°屈曲において中立の伸展位置で示されている。約0°の屈曲時、丸み404,406は、脛骨関節面403に部分的に接触するが、膝関節は、完全に拘束されることはない。したがって、大腿骨コンポーネント53は、脛骨コンポーネント14に対して前後に動くことができるようになる。幾つかの実施形態では、約0°の屈曲と20°の屈曲との間で膝関節内に弛緩をもたらす。他の実施形態では、丸み404,406は、約0°の屈曲と40°の屈曲との間で膝関節内に弛緩をもたらす。
【0057】
次に図16Iを参照すると、膝関節が約10°の屈曲状態で示されており、大腿骨コンポーネント53は、脛骨コンポーネント14に対して前方にずらされている。図16Jは、膝関節を約10°の屈曲で示しており、大腿骨コンポーネント53は、脛骨コンポーネント14に対して後方にずらされている。丸み404,406によって提供される膝関節内の前後の弛緩は、膝関節の高密度結合組織内の張力と対向した大腿及び脛骨関節面402,403の湾曲の両方によって制限される。約0°と約20°との間の弛緩をもたらすことにより、ユーザにより見知され又は経験されるように、膝屈曲の生まれつきの機序が保たれる。幾つかの実施形態では、弛緩は、約0°と約20°との間ではなくなり、それにより、膝屈曲の生まれつきの機序が所望通りに改変される。
【0058】
約20°への膝関節のそれ以上の屈曲時、丸み406は、主として、図16Kに示されているように脛骨関節面403に接触する。しかしながら、幾つかの実施形態では、膝関節内の弛緩は、約20°の屈曲時に維持され、従って、大腿骨コンポーネント53は、脛骨コンポーネント14に対して前(図16K)後(図16L)にずれることができるようになる。膝関節をそれ以上屈曲させると、丸み406は、開口した脛骨関節面403と完全接触関係をなし、それにより、図16Mに示されているように膝関節内の前後の運動が完全に拘束される。その後、膝関節内における完全接触及び拘束は、図16N及び図16Oに示されているように膝関節の残りの中間屈曲運動全体を通じて維持される。約110°の屈曲を超えると、丸み408は、脛骨関節面403との接触を再開し始め、それにより、図16Pに示されているように大腿骨コンポーネント53及び脛骨コンポーネント14が伸延される。膝関節をそれ以上伸延させると、近位延長部50は、脛骨コンポーネント14の後関節特徴部412との接触状態を維持する。
【0059】
図16Qを参照すると、膝単顆大腿骨コンポーネント120の代表的な実施形態が示されている。本発明の種々のコンポーネントに代えて、以下に説明するように膝単顆コンポーネントを用いることができる。幾つかの実施形態では、膝単顆大腿骨コンポーネント120は、図16Rに示されているように凹み410を提供する漸減丸み404を更に有する。他の実施形態では、膝単顆大腿骨コンポーネント120は、切頭され、それにより図16Sに示されているように、コンポーネント120と大腿骨120の非切除前顆面との間の交差部とのところに凹み410が得られる。
【0060】
膝単顆コンポーネントは、一般に、膝関節の体重支持部分に内側に又は外側に取って代わるよう植え込まれる。膝単顆コンポーネントは、膝関節のちょうど体重支持部分に設けられる2つの別々の大腿骨コンポーネント及び2つの別々の脛骨コンポーネントとして内側且つ/或いは外側に使用可能である。幾つかの実施形態では、膝単顆コンポーネントは、2つの大腿又は2つの脛骨コンポーネントが互いに接合された状態で用いられるが、膝蓋大腿関節は無視される。他の実施形態では、膝単顆コンポーネントは、遠位大腿骨の内側及び外側体重支持部分に取って代わった1つの大腿骨コンポーネントとして用いられ、更に一体形脛骨コンポーネント又は別々の内側及び外側脛骨コンポーネントと共に膝蓋大腿関節の一部分又は全てとして用いられる。そして、幾つかの実施形態では、膝単顆コンポーネントは、膝蓋大腿関節及び大腿骨の内側又は外側体重支持部分に取って代わった一体形大腿骨コンポーネントである。
【0061】
幾つかの実施形態では、膝単顆コンポーネント120は、全屈曲大腿骨関節面50を有する。上述したように、関節運動面又は延長部50は、膝の深屈曲の際、膝単顆大腿骨コンポーネント120と脛骨コンポーネントの前屈曲脛骨関節運動面55との接触を延長させるよう構成されている。幾つかの実施形態では、大腿骨の膝窩面202の一部分は、関節運動面50の配置を可能にするよう除去される。他の実施形態では、膝単顆コンポーネント(図示せず)は、モジュラー全屈曲大腿関節運動面(図示せず)と関連して用いられるよう提供される。かくして、幾つかの実施形態では、大腿骨の第1の部分は、膝単顆コンポーネント120を受け入れるよう前処置され、大腿骨の第2の部分は、モジュラー全屈曲大腿関節運動面(図示せず)を受け入れるよう前処置される。したがって、膝単顆コンポーネントとモジュラー全屈曲大腿関節運動面の組み合わせは、機能上、膝単顆大腿骨コンポーネント120に等しい膝単顆大腿骨コンポーネントを提供する。
【0062】
幾つかの実施形態では、膝単顆大腿骨コンポーネント120は、膝単顆脛骨コンポーネントと関連して用いられる。他の実施形態では、膝単顆大腿骨コンポーネント120は、全脛骨コンポーネントと関連して用いられる。最終的に、幾つかの実施形態では、膝単顆大腿骨コンポーネント120は、対向した脛骨の生まれつき備わった表面と直接関連して用いられる。
【0063】
許容される場合には、膝単顆大腿骨コンポーネント120の具体化により、全膝置換術と比較して幾つかの利点が提供される。例えば、8インチ(20.32cm)切開創が代表的には、全膝置換術に必要とされるが、膝単顆大腿骨コンポーネント120を利用する部分膝交換術で必要とされる切開創は、約3インチ(7.62cm)である。かくして、膝単顆大腿骨コンポーネント120の一利点は、部分膝交換術後に、瘢痕化が減少することである。
【0064】
部分膝交換術の他の利点としては、回復時間が短くなること、運動範囲が広がること及び膝の全体的損傷が減少することが挙げられる。全膝置換術では、患者が、最大4日間の入院が必要な場合がある。また、術後回復期間が、3か月以上になる場合がある。しかしながら、部分膝置換術では、患者は、代表的には、必要な入院は2日以下であり、続く回復期間は1か月である。加うるに、患者は、代表的には、部分膝置換術後、1週間又は2週間で補助なしに歩くことができる。
【0065】
幾つかの全膝置換術とは異なり、膝単顆大腿骨コンポーネント120の挿入では、一般に、多くの靱帯が保存され、それにより十分な運動範囲が得られる。例えば、部分膝置換術の中には、前及び/又は後十字靱帯が所望通りに保存される。また、一般に、部分膝置換術の結果として、膝の損傷が少ない。これは、手術が最小限の侵襲にとどまり、それにより膝に関する組織、筋肉及び腱の損傷が最小限に抑えられるためである。
【0066】
幾つかの部分膝置換術に関し、膝蓋大腿関節炎に生じる疼痛及び不快感に取り組むための種々の方法を実施できる。例えば、部分膝置換術の中には、膝蓋骨の神経切除が行われるものがある。部分膝交換術の中には、対向した大腿溝の神経切除が行われるものがある。本発明の幾つかの実施形態では、膝単顆大腿骨コンポーネント120は、運動範囲全体を通じて生まれつき備わった膝蓋大腿関節を再建し、大腿溝内における膝蓋骨の追跡を容易にするよう設計されている。他の実施形態では、神経切除と膝単顆大腿骨コンポーネント120の自然なデザインの組み合わせが膝蓋大腿関節炎に適切に取り組むために実行される。
【0067】
大腿全屈曲関節部50と脛骨全屈曲関節部55の相互作用が図20A〜図20Iに示されており、図20A〜図20Eは0°の状態であり、図20Fは90°の状態であり、図20Gは、130°の状態であり、図20Hは、150°の状態であり、図20Iは、160°を超えた状態である。図20Bは、非切除脛骨プラトー51の代表的な位置を示している。図20Cは、大腿骨コンポーネント53の後方部分に設けられた代表的な閉鎖丸みを示している。図20Dは、代表的な全屈曲大腿関節部50を示している。図20Eは、代表的な全屈曲脛骨関節部55を示している。図20Hは、屈曲の際、全屈曲脛骨関節部55への全屈曲大腿関節部50の代表的な接近の仕方を示している。図20Iは、深屈曲の際における全屈曲大腿関節部50と全屈曲脛骨関節部55の代表的な接触の仕方を示している。
【0068】
図15A〜図15Dは、大腿骨コンポーネント12の4つの上述の実施形態が延長された関節面48を提供する種々の仕方を示している。関節面を大腿骨コンポーネントの後顆の近位部分に追加するという技術的思想は、一般に、遠位大腿骨のシャフトの後面の平面が遠位側に延長されるべき場合、関節面が遠位大腿骨のシャフトの後面の平面に近づき又はこれを越えて延びるまで近位部分を前方に延長させることにより達成できる。例えば、図15A〜図15Dで理解できるように、各実施形態の延長された関節面48は、内側後顆又は外側後顆のうちの一方又は両方の前方端部のところでの関節面の延長部をなす。図16A〜図16Dに示されているように、関節面を延長された関節面48の端部から近位側の方向に更に延長させることができる。この一段の延長は、近位延長部50によって提供できる。近位延長部50は、大腿骨コンポーネント12の一体部分であっても良く、モジュラーアタッチメント30の一部であっても良く、或いは、別個の追加のコンポーネントとして提供されても良い。近位延長部50が提供される一実施形態では、近位延長部50は、深膝屈曲を向上させるよう全機能的屈曲の際に大腿骨32と脛骨との間の離隔距離を増大させるよう脛骨又は脛骨コンポーネント14と相互作用する支点として働く。別の実施形態では、近位延長部50により、全機能的屈曲の際の脛骨と大腿骨との間の通常の関係が2つの表面相互間の接触を維持しながら存在することができる。
【0069】
かくして、本発明の幾つかの実施形態では、大腿骨の後顆の近位前方表面(又は部分)に関節面を提供することにより増深膝屈曲が容易になる。少なくとも幾つかのかかる実施形態は、大腿骨コンポーネント12の内側又は外側後顆のうちのいずれか一方又は両方の近位前方部分に設けられた追加の又は拡大した関節面を含む。大腿骨コンポーネント12の実施形態は、増大した関節面領域を、患者が深膝屈曲中、自分の膝を曲げたとき、大腿骨コンポーネント12と脛骨コンポーネント14との接触が維持され、増深膝屈曲を達成することができるよう前方方向において大腿骨コンポーネントの後顆の近位端部に追加する。
【0070】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態では、脛骨関節運動を改変することにより増深膝屈曲を提供することができ又は向上させることができ、この場合、人工膝の脛骨コンポーネント14の同形内側脛骨関節面の中心は、現在利用可能な中心に対して後方に動かされる。加うるに、かかる幾つかの実施形態では、外側脛骨関節面の全体的形状を変更することができる。これは、図6A〜図6Dに示されている。
【0071】
脛骨コンポーネント14のかかる実施形態では、顆又は関節プラトー表面は、非対称であるのが良い。すなわち、脛骨コンポーネント14の外側下面サイドは、前後寸法が内側サイドよりも小さく、脛骨コンポーネント14の頂部も又、非対称であるのが良い。
【0072】
解剖学的に、脛骨プラトーは、これが外側に有する前後寸法よりも内側に大きな前後寸法を有する。切断された近位脛骨のできるだけ大部分を覆うと共に外側プラトーの前方又は後方張出しを回避するためには、外側の前後寸法よりも内側の前後寸法が大きいコンポーネントを提供することが必要である。一実施形態では、これは、内側関節面の中心を後方に動かして寸法差を補償することによって達成される。全屈曲を達成するためには、脛骨上の内側回転中心(球の凹状セグメントである)を他の設計で現在利用できる後方よりも一層後方に位置させることが重要である。これにより、膝を約120〜130°を越えて屈曲させたときに近位脛骨を内側脛骨関節面の後方縁部又は部分が大腿骨の内側後顆の近位部分に衝突することがないよう十分前方に位置決めすることができる。脛骨が屈曲の際に前方に動くことができるようにする脛骨コンポーネント14の現在の設計例は、非球形内側脛骨関節面を有し、或いは、球形関節面の回転中心が以下に説明する実施形態により提供されるほど後方ではないかのいずれかである。しかしながら、本発明の実施形態は、120°以上の膝屈曲を可能にする任意の膝置換設計例と組み合わせて利用できる。
【0073】
内側に固定された回転中心を有する現在入手可能な全膝脛骨コンポーネント14は、脛骨コンポーネント14の後面から前後寸法全体の約35〜45%のところの位置に配置された回転中心を有する。脛骨コンポーネント14の幾つかの実施形態では、回転中心は、これが脛骨コンポーネント14の後壁から前後寸法の18〜30%のところに位置するよう後方に動かされている。
【0074】
通常の膝では、膝の内側サイドは、任意の屈曲度に関し、脛骨関節面に対する内側大腿顆の位置がほぼ固定されていて、約20〜140°の屈曲範囲において相当な量前方又は後方には動かないという点で拘束されている。これとは対照的に、外側サイドでは、全伸展及び場合によっては全屈曲を除き、約20〜40°の屈曲後、外側大腿顆は、外側脛骨プラトー上で前後に動くことができる。160°を超える全機能的屈曲の際、外側大腿顆は、対向した脛骨プラトーの最も外方の部分にのみ当たっているように見える場合があり、或いは、プラトーに外側と脛骨プラトーの平べったくされた部分上で明らかに前方に接触する場合がある。
【0075】
したがって、脛骨コンポーネント14の実施形態では、外側脛骨関節面は、脛骨コンポーネントがあまりにも外側に回転するのを阻止すると共に外側大腿顆が脛骨コンポーネントの前方縁部から滑り落ちることができるようにするのを阻止する前方リップが存在する前方を除き、前後方向に基本的に平べったい。幾つかの実施形態では、外側脛骨関節面の基本的に平らな部分は、脛骨コンポーネント14の全前後寸法の2/3〜7/8から成る場合がある。幾つかの実施形態では、僅かなリップが外側サイド上に後方に存在する場合があるが、固定回転中心が上述したように位置決めされている限り、外側サイド上の後方にはリップが不用である。外側脛骨関節面は、前頭面で見て、平らであるか凹状であるかのいずれかであり、もし凹状であれば、対向した大腿顆と同一の曲率半径である場合があり又はそうでない場合があり、或いは、前頭面で見てより大きな半径を有する場合がある。この平らな又は凹状の溝は、上述した前方端部及び後方端部を除き、矢状面で見て底部が平らであり、内側顆の回転中心に相当する箇所周りに生じる。幾つかの実施形態では、後方外側脛骨関節部は、内側後方全屈曲関節について説明したのと同じであるのが良い。他の実施形態では、内側脛骨関節面は、外側脛骨プラトーについて説明した平らな関節面と同じであり又はこれに類似しているのが良い。しかしながら、内側関節接触位置は、主として、必須であり、他方、外側関節接触位置は、必須ではない。かくして、外側関節接触位置は、行われる仕事、快適さ又は文化によって決定されるであろう。
【0076】
当業者であれば理解されるように、膝は、外側枢軸及び内側枢軸のうちの少なくとも一方を有する場合がある。したがって、本発明の実施形態は、外側及び内側膝枢軸形態のうちのいずれか一方又は両方と適合性があることが理解されよう。
【0077】
図6A〜図6Dは、先行技術の脛骨コンポーネント14の内側脛骨顆表面26及び外側脛骨顆表面24と上述した脛骨コンポーネント14の実施形態との比較図である。具体的に説明すると、図6A及び図6Bは、それぞれ、現在入手できる或る脛骨コンポーネント14の内側及び外側サイドの側面図、図6C及び図6Dは、上述した脛骨コンポーネント14の実施形態の内側サイド及び外側サイドの側面図である。理解されるように、内側と外側の両方においてほぼ平らな状態から図6A及び図6Bに示すようにより同形までの内側及び外側関節面に関する多種多様な形態が従来用いられていたが、後方に変移した内側関節面及び比較的平坦な外側関節面の組み合わせか内側大腿全屈曲脛骨関節部かのいずれかを有するものは存在しない。これら形態により、外側大腿顆は、膝が屈曲したり伸展したりすると、前後に動くことができる。外側脛骨関節面がこの前後運動を可能にする限り、外側脛骨形態が特に図6Dに示されているようなものである必要はないような他の形態を提供することができる。
【0078】
外側脛骨関節部は、幾つかの実施形態では、後リップを備えていない場合があり、他の実施形態では、後面は、135°を超える屈曲を可能にする内側脛骨関節部が設けられると、下方に傾斜することができる。
【0079】
先行技術の脛骨コンポーネント14では、顆面は、曲率中心が固定点52上に位置した湾曲を有する。固定点52から(又は、曲率中心が固定点52上に位置した湾曲の低点から)脛骨コンポーネントの後縁54までの距離は、脛骨コンポーネント14の前後寸法の約35〜45%である。これら測定値は、脛骨コンポーネント14の内側(図6A)サイド及び外側(図6B)サイドに関してほぼ同じである。現在入手できる脛骨コンポーネント14は、リップ56を有している。
【0080】
図6C及び図6Dに示されている脛骨コンポーネント14の実施形態では、脛骨コンポーネントリップ56は、設けられていない。これとは異なり、内側脛骨顆表面26は、滑らかな弧に沿って延びている。弧が作られているとき、下側リップが幾つかの実施形態では存在する場合があり、大腿全屈曲後関節部まで延びてこれを有するのが良い。リップの量は、回転中心と脛骨コンポーネント14の後縁54との関係によって定まるであろう。図6A及び図6Cの固定点52から関節面までの半径が同一であるが、図6Cで理解できるように、固定点52から(又は、中心が固定点52上に位置した曲率の低点から)脛骨コンポーネント56の後縁54までの距離はより短くなり、脛骨コンポーネント14の後端からの前後寸法の約18〜30%である。脛骨コンポーネント14の外側サイドに関し、図6Dに示されている実施形態では、前リップ58と小さな後リップ60の両方が設けられている。変形実施形態では、上述したように後リップ60を省くことができる。
【0081】
かくして、図6A〜図6Dを参照して説明したように、本発明の少なくとも幾つかの実施形態では、増深膝屈曲が脛骨関節部を改造することにより提供され又は向上し、この場合、脛骨コンポーネント14の同形内側脛骨関節面の中心は、現在入手できるものよりも後方に動かされる。幾つかの現在入手できる大腿骨コンポーネントでは、この変化だけで、標準型脛骨コンポーネントと比較して達成できる屈曲量が増大する。加うるに、幾つかのかかる実施形態では、外側脛骨関節面の全体的形状を変えるのが良い。これにより、近位脛骨は、膝を約120〜130°超えて屈曲させると、十分前方に位置決めすることができ、その結果、内側脛骨関節面の後縁又は部分が大腿骨の内側顆の近位部分に当たることがないようになる。したがって、増深膝屈曲を達成することができる。かくして、理解されるように、上述の脛骨コンポーネントの実施形態を従来型大腿骨コンポーネントと共に用いることにより、従来型脛骨コンポーネントを使用する場合よりも多大な屈曲が容易になる。同様に、上述の大腿骨コンポーネントの実施形態のうちのどれかを従来型脛骨コンポーネントと共に用いることにより、従来型脛骨コンポーネントを標準型大腿骨コンポーネントと共に使用する場合よりも多大な屈曲が容易になる。
【0082】
本発明の幾つかの実施形態では、脛骨関節部を改造することにより増深膝屈曲が提供され、又は改善されることができ、この場合、脛骨コンポーネントの関節面は、脛骨コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの関節運動を促進し又は制限するよう変えられる。かかる変更の例が図6E〜図6Hに示されている。
【0083】
次に図6E及び図6Fを参照すると、脛骨コンポーネント14が本発明の代表的な実施形態に従って示されている。幾つかの実施形態では、脛骨コンポーネント14の内側脛骨顆表面26は、関節運動特徴部を有するよう改造されている。関節運動特徴部は、一般に、大腿骨コンポーネントの対向した関節運動面と適合可能に相互作用するよう設けられている。膝の屈曲中、大腿骨コンポーネントの関節運動面は、内側脛骨顆表面の関節運動特徴部と相互作用して脛骨コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの関節運動を案内し又は方向付ける。かくして、幾つかの実施形態では、関節運動特徴部は、深膝屈曲中、膝の関節運動を制御するために設けられる。
【0084】
種々の形式の関節運動特徴部を本発明の教示に従って用いることができる。例えば、幾つかの実施形態では、関節運動特徴部は、斜めの関節隆起部400を有する。関節隆起部400は、大腿骨コンポーネントの対向した関節面と適合可能に相互作用するよう設けられている。関節隆起部400と大腿骨コンポーネントの関節面との間の相互作用は、膝の深屈曲中、大腿骨コンポーネントの関節運動の変化を生じさせる。例えば、幾つかの実施形態では、大腿骨コンポーネントと関節隆起部400の相互作用により、大腿骨コンポーネントの後関節運動部が深屈曲の達成時にずれる。
【0085】
関節隆起部400は、一般に、全体として内側‐外側方向450において脛骨コンポーネント14の後面に設けられている。幾つかの実施形態では、関節隆起部400は、顆間表面28の前後方向460に対して鋭角である角度θをなして後面上に設けられ又は位置決めされている。一般に、関節隆起部400の角度θは、深屈曲中、大腿骨コンポーネントの所望の関節ずれを達成するよう選択される。幾つかの実施形態では、約0°〜約90°の角度θが選択される。他の実施形態では、約10°〜約45°の角度θが選択される。最後に、幾つかの実施形態では、約20°〜約35°の角度θが好ましい。
【0086】
関節隆起部400は、膝の深屈曲中、大腿骨コンポーネントの所望の関節ずれを達成するよう脛骨コンポーネントの関節面上のどこかに位置決めされるのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、外側脛骨顆表面24は、関節隆起部(図示せず)を有するよう改造される。他の実施形態では、内側脛骨顆表面26と外側脛骨顆表面24の両方は、斜めの関節隆起部400を有する。幾つかの実施形態では、関節運動特徴部は、ポリエチレン被膜又は層を有する。他の実施形態では、ポリエチレン被膜は、関節隆起部400にしっかりと被着され、かかるポリエチレン被膜は、関節隆起部400を越えて延びないようにされ、屈曲の際に大腿骨に衝突しないようになっている。
【0087】
次に図6G及び図6Hを参照すると、脛骨コンポーネント14は、本発明の代表的な実施形態に従って示されている。幾つかの実施形態では、脛骨コンポーネント14の内側脛骨顆表面26は、球形関節面420を備えた関節運動特徴部を有するよう更に改造されている。球形関節面420は、大腿骨コンポーネントの対向した関節面と適合可能に相互作用するよう設けられている。球形関節面420と大腿骨コンポーネントの関節面との相互作用により、膝の深屈曲中、大腿骨コンポーネントの制限されない自然な関節運動が可能になる。例えば、幾つかの実施形態では、大腿骨コンポーネントと球形関節面420との相互作用により、深屈曲が達成されるときに、大腿骨コンポーネントの自然な後方関節運動が可能である。当業者であれば理解されるように、脛骨コンポーネント14は又、脛骨コンポーネントの外側脛骨顆表面上における大腿関節運動を可能にするよう改造可能である。更に、当業者であれば理解されるように、脛骨コンポーネント14は、所望の用途に関し、脛骨コンポーネントの内側脛骨顆表面と外側脛骨顆表面の両方上における付随する大腿関節運動を可能にするよう改造されるのが良い。
【0088】
球形関節面420は、真の球形から成っていても良く又は放物線形状から成っていても良い。当業者であれば理解されるように、関節面420の表面構造の変化が特定の用途又は使用に最適に構成される関節面を提供するために必要な場合がある。
【0089】
球形関節面420は、膝の深屈曲中、大腿骨コンポーネントの所望の自然な運動を可能にするよう脛骨コンポーネントの関節面上のどこかに位置決めされるのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、外側脛骨顆表面24は、球形関節面(図示せず)を有するよう改造される。他の実施形態では、内側脛骨顆表面26と外側脛骨顆表面24の両方は、球形関節面420を有する。幾つかの実施形態では、関節運動特徴部は、ポリエチレン被膜又は層を有する。他の実施形態では、ポリエチレン被膜は、球形関節面420にしっかりと被着され、かかるポリエチレン被膜は、球形関節面420を越えて延びないようにされ、屈曲の際に大腿骨に衝突しないようになっている。
【0090】
幾つかの実施形態では、大腿骨及び/又は大腿骨コンポーネントの対向した表面は、脛骨コンポーネントの凸状球形関節面420と適合可能にインターフェイスするよう構成された凹面(図示せず)を有するよう改造される。他の実施形態では、大腿骨及び/又は大腿骨コンポーネントの対向面は、脛骨コンポーネントの凸状関節隆起部400と適合可能にインターフェイスするよう構成された凹状溝(図示せず)を有するよう改造される。さらに、幾つかの実施形態では、脛骨コンポーネントは、凹面(図示せず)を有し、大腿骨コンポーネントは、脛骨凹面と適合可能に相互作用する凸面(図示せず)を有する。さらに、幾つかの実施形態では、脛骨コンポーネントのポリエチレン被膜(図示せず)又は関節面は、対向した大腿面の所望の構造、形状又は特徴部と適合可能にインターフェイスするよう構成され、それにより、膝の運動範囲全体にわたって通常の膝機能及び運動が達成される。例えば、幾つかの実施形態では、脛骨コンポーネントは、隆起した後部分又は関節運動特徴部を備えないで提供される。これとは異なり、外科医は、通常の膝機能を達成するよう大腿骨コンポーネントと同様にインターフェイスする患者の脛骨の後部分を残すよう選択することができる。かくして、幾つかの実施形態では、膝単顆脛骨コンポーネントが設けられる。
【0091】
図7A及び図7Bは、より深い膝屈曲を可能にするための大腿骨コンポーネント12及び脛骨コンポーネント14の改造を示している。具体的に言えば、図7Aは、改造された大腿骨コンポーネント12及び脛骨コンポーネント14を備えた人工膝10の矢状断面図である。図7Aでは、大腿骨コンポーネント12の領域102が破線で示されているように除去されている。この領域102は、後方末端部104上に位置すると共にこの後方末端部104と後方末端部104の前方サイド106との間に位置している。領域102を除去することにより、人工膝患者の深い屈曲が部分的に達成可能である。
【0092】
同様に、図7Bの脛骨コンポーネント14では、内側サイド25は、関節面24を後方に動かし、それにより脛骨コンポーネントの多くを後方にずらされた内側関節部の前方に設けることにより前後寸法が前方に比較的長くされているように見える。これは、脛骨コンポーネント14の後方部分を除去し、これを前方に動かした外観を与える場合がある。脛骨コンポーネントの外側サイド27は、内側サイド25(即ち、領域100)に対して前後寸法が短くされるのが良い。図7Bは、上述のことを平面図で示している。換言すると、脛骨コンポーネント14の外側サイド27を後方に短くする(即ち、領域100を除去する)と共に内側関節面24をより後方にずらすことによって、深い膝屈曲が可能である。さらに、これら改造により、人工膝患者が現在入手できる人工膝で可能な膝屈曲よりも深い膝屈曲を達成することができる機会が得られる。
【0093】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態では、非対称大腿骨コンポーネント12を提供することにより増深膝屈曲を達成することができる。非対称大腿骨コンポーネント12は、通常の膝で生じているように関節前後で伝えられる力の1/2以上の伝達を内側サイドに対して行うことができる。幾つかのかかる実施形態は、図17及び図18Aに示されている。図17は、160°屈曲の際の膝のX線像を示している。このX線像では、大腿骨32は、前後方向に見え、大腿骨32の内側顆66、大腿骨32の外側顆68及び膝蓋骨70が見える。図を参照して理解できるように、内側顆66の関節運動部分の内側‐外側幅は、外側顆68の内側‐外側幅よりも大きい。具体的に言えば、図中、内側顆66の関節部分の内側‐外側幅は、Xで示されている。図で理解できるように、外側顆68の内側‐外側幅は、内側顆66の内側外側幅Xの約75%以下である。
【0094】
また、図17を参照して正しく理解できるように、膝蓋骨70の中心は、膝の中心線の横に位置している。具体的には、その図において、大腿骨32の遠位端の最内側部と、膝蓋骨70の中心との間の内側‐外側距離は、Yで示されている。図を見て分かるように、大腿骨32の遠位端の最内側部と、膝蓋骨70の中心との間の対応する内側‐外側距離は、Yの約75%以下(図中では73%)である。本発明の幾つかの実施形態において、大腿骨コンポーネント12は、図17に図示されている膝の実際の物理的構造を模倣することができる。
【0095】
図18Aに示すような大腿骨コンポーネントの実施形態において、その外側顆の関節部は、その内側‐外側幅において、内側顆の幅の75%以下である。これにより、その関節全域に伝わる力の半分以上を、内側に伝えることが可能となり、これは正常な膝で生じることである。また、滑車溝は、その内側顆と外側顆との間の位置によって遠心側に画成されるため、その膝蓋骨又は滑車溝を偏在化することが可能になる。正常な膝では、膝蓋骨は大腿骨上でわずかに偏在化する傾向があり、この横方向の溝の位置ずれは、従来の多くの全膝置換が、その全膝置換における大腿骨コンポーネント12を外部から回転することによって実現することを可能にする。一実施形態において、その前頭面における顆は、一定の半径を有する円形に見える。その内側顆及び外側顆は、同じ半径である必要はないが、その前頭面で見た場合に、両方共、円形であるのがよい。矢状面で見た場合には、それらの顆は、後方及び前方に閉鎖丸みを有しているように見え、前フランジを用いた実施形態においては、その前フランジに一体化することができる。
【0096】
図18Aは、前記実施形態による大腿骨コンポーネント12の一実施形態の前面図を示す。その図において、例示的測定値は、前記実施形態の特徴を示すように図示されており、前記実施形態の特徴を限定するものではない。図18Aに示すように、大腿骨コンポーネント12全体の内側‐外側幅は、約72ミリメートル(mm)になる。この実施形態において、内側後方顆の後方部における内側大腿骨顆面20の内側‐外側幅は、約32mmであり、外側大腿骨顆面22の内側‐外側幅は、約22mmである。従って、図示されている実施形態においては、外側大腿骨顆面22の内側‐外側幅は、内側大腿骨顆面20の内側‐外側幅の約69%である。
【0097】
図示されている実施形態において、膝蓋骨溝72は、内側大腿骨顆面20と、外側大腿骨顆面22との間の空間によって画成されている。内側大腿骨顆面20の内側‐外側幅は、外側大腿骨顆面22の内側‐外側幅よりも大きいため、膝蓋骨溝72は、外側にずれており、これは正常な膝で生じることである。図18A〜図18Cを参照して正しく理解できるように、膝蓋骨溝72は、最近位前方部から遠位前方部、遠位後方部及び近位後方部へ移動する場合に、傾斜して設けることができる。例えば、図18における膝蓋骨溝72の角度は、矢状面から測定した場合、約86度である。
【0098】
従って、図示されている実施形態は、非対称大腿骨コンポーネント12を設けることにより、本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント12が、どのようにして深膝屈曲の実現及び幾つかの実施形態においては全機能屈曲の実現を補助できるかを示している。非対称大腿骨コンポーネント12は、生理学的負荷及び膝蓋骨トラッキングを良好にシミュレーションすることにより、深膝屈曲の実現を補助することができる。非対称大腿骨コンポーネント12は、内側サイドに、外側サイドよりも大きな負荷がかかる状態で、その関節のより正常な負荷を可能にする。また、非対称大腿骨コンポーネント12は、膝蓋骨の痛み、亜脱臼及び脱臼という問題を減らせる、膝蓋骨のより解剖学的に正しい外側トラッキングを可能にする。当業者であれば、幾つかの実施形態においては、脛骨コンポーネント14を、非対称大腿骨コンポーネント12を収容するように変更できることを容易に認識するであろう。
【0099】
本願明細書において議論したように、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、内側大腿骨サイドが相対的に固定されたままであり、外側サイドが前後に滑動するという深膝屈曲能力を備えることを含む。さらに幾つかの実施形態では、その大腿骨コンポーネントをその内側サイドに相対的に固定された状態に保持し、かつその外側サイドで滑動することができる脛骨コンポーネントを有する膝を包含し、一方、他の実施形態では、その外側サイドで相対的に固定され、かつその内側サイドで滑動することができる膝を包含する。このことは、例えば、脛骨コンポーネントに適用できるであろう。
【0100】
また、その大腿骨コンポーネントの追加的な関節面は、内側、外側又は両方とすることができるが、本発明の少なくとも幾つかの実施形態では、脛骨及び大腿骨全屈曲関節部を内側、外側又は両方に用いて適用することを包含する。
【0101】
次に、図18B及び図18Cを参照すると、幾つかの実施形態で、滑車面又は溝72に取って代わるように、短縮前フランジ610が設けられている。幾つかの実施形態において、前フランジ610は、個々の患者の解剖学的構造を補正するように設けられ、この場合、人工器官の前方顆の外側部は、膝200の骨顆よりも盛り上がって延びるか又は位置している。それらの解剖学的構造の場合、その人工器官の盛り上がった位置は、外側の柔らかい組織を栓で広げ、又は別の方法で分離し、このことは、屈曲の減少及び不快感又は痛みをもたらす可能性がある。幾つかの実施形態において、前フランジ610は、図12A、図12B、図14及び図16Q〜図16Sに示す人工器官を用いても適切に処置されないであろう重度の膝蓋大腿骨関節炎の患者に対して使用する場合に、大腿遠位210の前方顆20及び22に取って代わることなく設けられている。前フランジ610のみを設けることにより、コスト削減及び/又は少ない回避性で寛解をもたらすことも可能である。他の実施形態においては、前フランジ610は、前方顆20,22に取って代わって設けられる。
【0102】
幾つかの実施形態において、短縮前フランジ610の長さは、単に滑車面72の一部に取って代わるように非常に短くなっている。他の実施形態においては、前フランジ610の長さは、滑車面72全体に取って代わるように延びている。さらに、幾つかの実施形態においては、前フランジ610は、現在入手可能な非簡易人工器官のフランジにほぼ等しい長さまで、遠位顆20,22間の遠位側に延長されている。
【0103】
次に、図21を参照すると、膝200の斜視側面図が示されている。本発明の少なくとも幾つかの実施形態においては、増深膝屈曲は、大腿骨210の膝窩面202の一部を除去することによって、さらに実現、改善又は強化することができる。膝窩面202は、その内側顆、外側顆、又は内側顆及び外側顆の両方の後方関節面の近位に骨を含んでもよい。膝窩面202の切除は、公知の適切な方法によって実施することができる。例えば、一実施形態において、まず脛骨の一部が切除され、それにより、膝窩面の必要な部分230を切除するための十分な隙間が形成される。
【0104】
その脛骨、大腿骨又は両方から切除される骨の量は、脛骨及び大腿骨の具体的な解剖学的構造により、個人差があるだろう。切除された膝窩面230は、脛骨220及び大腿骨210の対向面の間に追加的な隙間を形成する。具体的には、切除された膝窩面230は、膝200の深屈曲中に、脛骨220の内側顆240の後方関節面250が大腿骨210にぶつかることを防ぐ。従って、膝200は、脛骨220が大腿骨210のいずれかの部位に不適切な状態で固着又は接触することなく、自由に屈曲することができる。また、切除された膝窩面230は、140°を超える屈曲を実現できる。一実施形態において、切除された膝窩面230は、160°を超える屈曲をもたらす。
【0105】
次に、図22を参照すると、切除面230を形成するための膝窩面202の切除後の膝200の斜視側面図が示されている。前述したように、膝窩面230の切除は、公知の何らかの適切な方法によって実施することができる。しかし、一実施形態においては、切除部230を形成する際に、切断装置310をガイドするために、切除ブロック300が用いられる。切除ブロック300は、前述した金属材料と同様の金属材料で構成されており、及び外面312、内面314及びスロット316を含む。外面312は、大腿骨210の外側顆及び内側顆に合うように形成されており、かつそれらの顆を実質的に覆うようになっている。内面314は、大腿骨210の外側顆及び内側顆の切除面及び成形面に合う複数の角度の付いた面を含む。その結果、切除ブロック300の内面314は、大腿骨210の切除面62、64及び366に係合するようになっている。係合した切除ブロック300と大腿骨210は、ねじ等の複数の締結具320を介してさらに固着される。このことは、全ての場合に必要なわけではない。締結具320は、そのガイドを大腿骨に確実に取付けることのみ要求される。幾つかの実施形態において、そのガイドと大腿骨の相互作用は、そのガイドが、締結具なしで適切な位置に確実に保持されるようになっている。別の実施形態においては、そのガイドは、大腿骨の前記領域の正確な切除を容易にする何らかの手段によって適切な位置に保持される。
【0106】
切除ブロック300、内面314、大腿骨210の切除面62,64及び366間の相互作用は、スロット316を、大腿骨210の膝窩面202に正確に位置合わせする。スロット316は一般に、外側開口部330及び内側開口部332を有する。外側開口部330は、切断装置310の幅338よりもわずかに広い第1の幅を有する。従って、外側開口部330は、切断装置310を適合可能に受け入れられるようになっている。内側開口部332は、膝窩面202に正確に隣接して配置されており、第1の幅よりも広く、かつ膝窩切除部230の所望の幅とほぼ等しい第2の幅を有する。その結果、そのスロットの壁334は、第2の開口部から第1の開口部に向かって内側に先細りになっており、それによって、くさび状のスロット316を形成している。
【0107】
切断装置310は、スロット316に適合する何らかの装置を含むことができる。一実施形態においては、振動ブレード340が設けられている。振動ブレード340は、シャンク342、切削ヘッド344及び停止部346を含む。シャンク342は一般に、切除ブロック300及び大腿骨210に対してブレード340を移動させることが可能なツール(図示せず)に適合して、かつ確実に係合するようになっている面を有する。切削ヘッド344は一般に、膝窩面202の所望の部位を除去して切除部230を形成するのに適した複数の歯を有する。停止部346は一般に、フェルール、クリンプ、あるいは、スロット316の第1の開口部330よりも幅広の、ブレード340上の箇所を形成する、他の何らかの形状構成を有する。従って、停止部346は、スロット316に入ることができず、それにより、ブレード340がスロット316に入れるようになっている深さを制限している。この結果、停止部346は、膝窩切除部230の最終的な深さを制御又は制限するための深さゲージとして機能する。一実施形態において、停止部346は、止めねじをさらに有し、それにより、停止部346は、ブレード340がスロット316に入れるようになっている深さを変更するために緩められて、ブレード340上に再配置される。別の実施形態においては、切断装置310は、バーの切削深さを制限するための停止部346を有するバービットである。
【0108】
次に、図22Aを参照すると、大腿骨210及び切除ブロック300の裏面の斜視図が示されている。一実施形態において、切除ブロック300は、切除ブロック300の接続部326によって分離されている第1のスロット316及び第2のスロット318を含む。第1のスロット316は、大腿骨210の内側顆66に隣接して配置されており、第2のスロット318は、外側顆68に隣接して配置されている。各スロットは、内側顆66及び外側顆68の非対称な、自然な位置に対して異なる高さで配置される。従って、切除ブロック300の第1のスロット316及び第2のスロット318は、顆66,68の非対称な位置に対して、大腿骨210の膝窩面202を最適に切除するようになっている。別の実施形態においては、第1のスロット316及び第2のスロット318は、非対称の顆66,68を考慮せずに、対称的な切除膝窩面230を形成するように、同じ高さに配置される。また別の実施形態においては、第1のスロット316の内側開口部332に対する外側開口部330の位置決めは、第2のスロット318の内側開口部332に対する外側開口部330の位置決めとは異なっている。従って、各くさび状の開口部316,318の半径は異なっており、第1のスロット316及び第2のスロット318の場合の切除膝窩面230の結果として生じる輪郭又は形状は、非対称になるであろう。別の実施形態において、接続部326は省かれており、それによって、単一のガイドスロットを設けている。この実施形態において、そのガイドの上方及び下方の部分は、外側及び内側ブリッジを介して互いに適切な位置に保持されている。その外側及び内側ブリッジは、そのガイドの上方及び下方の部分の位置を維持し、及びそのスロットの外縁部を画成する。別の実施形態において、外側及び内側ブリッジは、そのガイド内に複数のスロットを設けるのに用いられる。
【0109】
次に、図22及び図22Aを参照すると、膝窩切除部230は、切断装置310をスロット316に挿入し、停止部機能346及びくさび状スロット316の半径方向の制限によって制限される所望の深さまで膝窩面202を取り除くことによって形成されている。スロット316のくさび状の形状は、切断装置310がそのくさびの半径方向に沿って枢動できるようにし、この場合、停止部346と外側開口部330の接触部は、そのくさびの半径方向に対する支点として作用する。そのため、結果として生じる切除部230は、人工膝の大腿骨コンポーネント12を収容するように構成及び成形される半径面を有する。膝窩切除部230の形成後、ねじ320、又は他の安定化方法、及び切除ブロック300が大腿骨210から取除かれる。
【0110】
次に、図23を参照すると、膝窩面230の切除後の膝200の側断面図が示されている。人工膝の大腿骨コンポーネント12は、膝窩面202の切除部230に対応するように変更することができる。例えば、一実施形態において、その人工膝の大腿骨コンポーネント12の部位212は延長されて、膝窩面202の切除部230内に位置するように形成されている。従って、脛骨220の内側顆240の後方関節面250は、適合してかつ滑らかに、延長された部位212と相互作用し、それによって、膝200がさらに深い屈曲を行えるようになっている。さらに、後方関節面250と、延長された部位212との相互作用は、深い屈曲中に、後方関節面250が、その大腿骨コンポーネントの終端面214に固着すること、及び大腿骨コンポーネント12を前方方向300にずらすことを防ぐ。本発明の幾つかの実施形態において、延長された部位212は、球面内側サイドを有する脛骨インプラントと共に用いられる。別の実施形態においては、延長された部位212は、120°以上の膝屈曲を可能にする何らかの膝関節置換術と共に用いられる。例えば、一実施形態において、人工膝システムの大腿骨コンポーネントは、その人工膝システムの脛骨コンポーネントに適合する延長部位212を設けるために、そのコンポーネントの後方に金属片を含むように変更されている。
【0111】
延長部位212を含む本発明の幾つかの実施形態において、大腿骨コンポーネント12は、図15B及び図16Bに示すように、内部フランジ、又は、膝蓋骨‐大腿骨関節のための何らかの対策を含んでいない。従って、コンポーネント12が、従来の人工器官に対して後方に回転された後に埋め込まれることを除いて、前フランジがないことは、コンポーネント12が従来と同様な方法で、その大腿骨に影響を及ぼすことを可能にする。また、大腿骨コンポーネント12は、独立した膝蓋骨‐大腿骨関節インプラントなしで用いることができる。幾つかの実施形態において、コンポーネント12は、その膝蓋骨の大腿骨関節を設けるために顆インプラントに取付けられたモジュラーフランジと共に用いられる。別の実施形態においては、大腿骨コンポーネント12は、独立した連結されていない膝蓋骨‐大腿骨インプラントと共に用いられる。そして、別の実施形態においては、埋め込み式コンポーネントを有していない膝蓋骨のために、独立した大腿骨フランジが用いられる。
【0112】
次に、図23Aを参照すると、膝窩面230の切除後の膝200の側断面図が示されており、この場合、大腿骨コンポーネント12は、脛骨コンポーネント14と共に用いられている。本発明の幾つかの実施形態において、前記大腿骨コンポーネント12は、脛骨全屈曲関節部を有していない従来の脛骨コンポーネント14と共に用いられる。例えば、一実施形態において、前記大腿骨コンポーネント12は、その内側脛骨関節の中心が後方にずれている脛骨コンポーネント14と共に用いられる。別の実施形態においては、大腿骨コンポーネント12は、現在、入手可能なデザインに対応する位置に、その内側脛骨関節の中心を有する脛骨コンポーネント14と共に用いられる。切除された膝窩面230を塞ぐこと、又はその面を覆うことに加えて、延長部位212は、全屈曲中に脛骨及び大腿骨の位置を変更するための追加的な形状構成を含んでもよい。
【0113】
例えば、一実施形態において、延長部位212は、膝が全屈曲の状態で、脛骨を大腿骨に対して回転させるように変更される。別の実施形態においては、延長部位212は、膝が全屈曲の状態で、大腿骨に対する脛骨の回転を防ぐように変更される。さらに別の実施形態においては、延長部位212は、その上方又は最近位部に球面を含むように変更される。従って、この球面は、その脛骨を、全屈曲の状態で大腿骨に対して回転させることを可能にする。本発明の幾つかの実施形態においては、大腿全屈曲関節部内に対応する凹面を有する球面関節を有することが望ましい。このような凹面は、内側‐外側安定性を呈し、大腿骨コンポーネントと脛骨コンポーネントとの間に面接触をもたらし、及び人工器官のポリエチレン磨耗を減少させるであろう。再び図23を参照して、本発明の幾つかの実施形態において、大腿骨コンポーネント12は、延長部位212と関節を成すように、患者自身の脛骨プラトーの切除されていない後方部位と共に用いられる。
【0114】
次に、図24〜図28を参照すると、脛骨コンポーネント14の幾つかの実施形態はさらに、一般に脛骨コンポーネント14の前方下面に取り付けられたステム500を含むように変更されている。図24に示すように、ステム500の前方配置は、膝関節の屈曲中に後脛骨に加わる圧縮荷重を補正及び減少させるように計算されている。圧縮荷重が後脛骨に加わると、ステム500は前脛骨皮質518の内面520とのインターフェイスを形成し、それにより、脛骨220に対する脛骨コンポーネント14の回転、沈下及び/又は沈降のうちの少なくとも1つを防ぐ。従って、ステム500の形状、サイズ、角度及び配置は、ステム500と内面520との間に所望のインターフェイス接触面を実現するように選択される。
【0115】
幾つかの実施形態において、ステム500は、図24及び図25に示すように、内面520の輪郭に厳密に近似するように湾曲している。他の実施形態においては、ステム500は、図26に示すように、そのステム表面の部位が、内面520の様々な部位又は領域に接触するように先細りになっている。さらに、他の実施形態においては、ステム500は、ステム500の先端部530が内面520に接触するように延長されている。ステム500は、圧縮荷重がかかっているときのステム500の安定性を増すためのテーパ付きベース540をさらに含んでもよい。そして、幾つかの実施形態において、ステム500は、図28に示すように、調節可能なリンク機構550を有し、それにより、ステム500の角度は、患者の個々の解剖学的構造に対応するように調節される。幾つかの実施形態において、ステム500は調節可能な先端部560をさらに含み、それにより、ステム500の長さは、患者の個々の解剖学的構造に対応するように調節される。例えば、幾つかの実施形態において、先端部560は一組のねじ山580を介してシャフト570に調節可能に結合されている。他の実施形態においては、先端部560は、シャフト570に滑動可能に結合されており、この場合、シャフト570に対する先端部560の位置は、止めねじ、機械的インピンジメント又は接着剤(図示せず)を介して維持される。従って、ステム500は一般に、患者のニーズに対応するために必要などのような形状、長さ又は角度も有することが可能である。
【0116】
かくして、本明細書において説明したように、本発明の実施形態は、人工膝を含む。特に、本発明の実施形態は、人工膝患者に増深膝屈曲能力を提供するシステム及び方法に関し、特に、(i)人工膝の大腿骨コンポーネントに屈曲アタッチメントを提供し又は大腿骨コンポーネントの延長部を提供し、その結果として、大腿骨コンポーネントと患者の大腿骨の両方と一体化されたとき、大腿骨コンポーネントの広い関節面領域が得られるようにすること、(ii)植え込み法より大腿骨コンポーネント及び関連の大腿骨切断部の内部幾何学的形状に修正をほどこすこと、(iii)人工膝の脛骨コンポーネントに非対称顆面又は関節面を提供すること、(iv)人工膝の脛骨コンポーネント及び大腿骨コンポーネントに改造を施すこと(脛骨コンポーネント及び大腿骨コンポーネントの或る特定の領域の除去を含む)、(v)非対称大腿顆を設けること(大腿骨コンポーネントに閉鎖丸みを設けることを含む)、(vi)大腿骨及び/又は脛骨全屈曲関節運動を提供することに関し、上述の全ての結果として、人工膝患者にとって、従来達成できた膝屈曲能力よりも深い膝屈曲能力が得られる。
【0117】
本発明は、その精神又は本質的な特徴から逸脱しないで他の特定の形態で具体化できる。例えば、当業者であれば理解されるように、本発明の方法及びシステムを膝単顆膝形成術及び人工器具又は装具に使用できるよう改造可能である。かくして、上述の実施形態は、全ての点で例示であり、本発明を限定するものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、上述の説明ではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。特許請求の範囲の記載の文言及び均等範囲に含まれる全ての変更は、本発明の範囲に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工膝であって、
大腿骨の遠位端部の少なくとも一部分に取って代わる大腿骨コンポーネントを有し、前記大腿骨コンポーネントは、前後方向に延びる大腿骨関節面を有し、
脛骨の近位端部の少なくとも一部分に取って代わる脛骨コンポーネントを有し、前記脛骨コンポーネントは、前後方向に延びる脛骨関節面を有し、前記関節面の後方部分は、関節運動特徴部を更に含む、人工膝。
【請求項2】
前記関節運動特徴部は、前記脛骨関節面の前記前後方向に対して全体として鋭角をなして設けられた隆起部を含む、請求項1記載の人工膝。
【請求項3】
前記関節運動特徴部は、球形関節面を含む、請求項1記載の人工膝。
【請求項4】
人工膝全体を含む請求項1記載の人工膝。
【請求項5】
内側大腿骨関節面と、外側大腿骨関節面とを更に有し、前記内側大腿骨関節面及び前記外側大腿骨関節面のうちの少なくとも一方は、前記大腿骨の対応の後顆上で、前記対応の後顆の最も後方の位置と前記大腿骨の大腿シャフトの後方皮質の遠位側1/4〜1/3の連続部である平面との間の前後距離の少なくとも半分にわたって前後方向に延びている、請求項4記載の人工膝。
【請求項6】
前記内側大腿骨関節面及び外側大腿骨関節面のうちの少なくとも一方は、前記対応の後顆上で、前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前後距離の少なくとも2/3にわたって近位側前方方向に延びている、請求項5記載の人工膝。
【請求項7】
内側大腿骨関節面と外側大腿骨関節面の両方は、これらのそれぞれの後顆上で前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前後距離の少なくとも半分にわたって前後方向に延びている、請求項5記載の人工膝。
【請求項8】
前記大腿骨コンポーネントは、前記大腿骨コンポーネントと前記大腿骨との間に配置されたモジュラーアタッチメントを有し、前記モジュラーアタッチメントは、前記内側大腿骨関節面及び前記外側大腿骨関節面のうちの少なくとも一方の延長部を有し、前記延長部は、前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前記前後距離の実質的に1/3と前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前記前後距離の少なくとも半分との間にわたって前記対応の関節面を提供している、請求項5記載の人工膝。
【請求項9】
前記延長部は、前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前記前後距離の実質的に1/3と前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前記前後距離の少なくとも2/3との間にわたって前記対応の関節面を提供している、請求項8記載の人工膝。
【請求項10】
前記大腿骨コンポーネントは、前記大腿骨コンポーネントと前記大腿骨の接触を後方領域において開始させ、前記大腿骨コンポーネントを定位置に回転させ又は転動させることにより前記大腿骨に取り付けられるよう構成されている、請求項1記載の人工膝。
【請求項11】
前記脛骨コンポーネントは、後面から前後寸法の18%〜30%のところに位置した低点をもつ湾曲を有する内側脛骨関節面を更に有し、前記低点は、前記関節運動特徴部と前記内側脛骨関節面の前方部分との間に介在して位置している、請求項1記載の人工膝。
【請求項12】
前記脛骨コンポーネントは、実質的に平坦であり、外側大腿顆が前記脛骨コンポーネントの前縁から滑り落ちるのを阻止する前リップを有する外側脛骨関節面を更に有する、請求項1記載の人工膝。
【請求項13】
膝単顆人工膝を含む、請求項1記載の人工膝。
【請求項14】
大腿骨コンポーネントを患者の大腿骨に取り付ける方法であって、前記方法は、
大腿骨関節面を備えた大腿骨コンポーネントを用意するステップと、
骨を前記大腿骨の遠位端部から切除することにより前記大腿骨コンポーネントを受け入れるよう前記大腿骨を前処置するステップと、
骨の前記大腿骨の膝窩面から切除することにより前記大腿骨関節面を受け入れるよう前記大腿骨を前処置するステップと、
前記大腿骨コンポーネントを前記大腿骨の前記遠位端部に隣接して位置決めするステップを有し、前記大腿骨コンポーネントは、前記大腿骨コンポーネントの前方部分を前記前方部分の通常の使用位置から遠位側に且つ後方に回転させるよう回転位置にあり、
前記大腿骨コンポーネントの後方部分が前記大腿骨の前記遠位端部の後方部分に接触するよう前記大腿骨コンポーネントを位置決めするステップと、
前記大腿骨コンポーネントを回転させ、前記大腿骨コンポーネントの前記前方部分が前記大腿骨の前記遠位端部の前方部分に着座するようにするステップと、
前記大腿骨コンポーネントを前記前処置された大腿骨に固定するステップと、
脛骨関節面を備えた脛骨コンポーネントを用意するステップを有し、前記脛骨関節面は、前記脛骨関節面の後方部分の近くに配置された関節運動特徴部を含み、
骨を前記脛骨の近位端部から切除することにより前記脛骨コンポーネントを受け入れるよう前記脛骨を前処置するステップと、
前記脛骨コンポーネントを前記前処置された脛骨に固定するステップを有し、前記大腿骨コンポーネントの関節運動経路は、前記膝の深屈曲中、前記大腿骨関節面と前記関節運動特徴部との相互作用によって制御される、方法。
【請求項15】
前記関節運動特徴部は、前記脛骨関節面の前記前後方向に対して全体として鋭角をなして設けられた隆起部を含む、請求項14記載の人工膝。
【請求項16】
前記関節運動特徴部は、球形関節面を含む、請求項14記載の人工膝。
【請求項17】
前記大腿骨コンポーネントは、モジュラーアタッチメントを有し、前記モジュラーアタッチメントは、前記内側大腿骨関節面及び前記外側大腿骨関節面のうちの少なくとも一方の延長部を有し、前記延長部は、前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前記前後距離の実質的に1/3と前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前記前後距離の少なくとも半分との間にわたって前記対応の関節面を提供し、前記方法は、
前記大腿骨コンポーネントを前記大腿骨の前記遠位端部に隣接して位置決めする前に、前記モジュラーアタッチメントを前記大腿骨の前記遠位端部に取り付けるステップを更に有する、請求項14記載の方法。
【請求項18】
人工膝であって、
後面及び前後寸法を有すると共に前記後面から前記前後寸法の18%〜30%のところに位置した低点をもつ湾曲を備えた関節面を有する脛骨コンポーネントを有し、
前記関節面の後方部分は、関節運動特徴部を更に含む、人工膝。
【請求項19】
前記関節運動特徴部は、前記脛骨関節面の前記前後方向に対して全体として鋭角をなして設けられた隆起部を含む、請求項15記載の人工膝。
【請求項20】
前記関節運動特徴部は、球形関節面を含む、請求項15記載の人工膝。
【請求項21】
人工膝であって、
後面及び前後寸法を有すると共に前記後面から前記前後寸法の18%〜30%のところに位置した低点をもつ湾曲を備えた関節面を有する脛骨コンポーネントを有し、
前記関節面の後方部分は、関節運動特徴部を更に含む、人工膝。
【請求項22】
前記関節運動特徴部は、前記脛骨関節面の前記前後方向に対して全体として鋭角をなして設けられた隆起部を含む、請求項15記載の人工膝。
【請求項23】
前記関節運動特徴部は、球形関節面を含む、請求項15記載の人工膝。
【請求項1】
人工膝であって、
大腿骨の遠位端部の少なくとも一部分に取って代わる大腿骨コンポーネントを有し、前記大腿骨コンポーネントは、前後方向に延びる大腿骨関節面を有し、
脛骨の近位端部の少なくとも一部分に取って代わる脛骨コンポーネントを有し、前記脛骨コンポーネントは、前後方向に延びる脛骨関節面を有し、前記関節面の後方部分は、関節運動特徴部を更に含む、人工膝。
【請求項2】
前記関節運動特徴部は、前記脛骨関節面の前記前後方向に対して全体として鋭角をなして設けられた隆起部を含む、請求項1記載の人工膝。
【請求項3】
前記関節運動特徴部は、球形関節面を含む、請求項1記載の人工膝。
【請求項4】
人工膝全体を含む請求項1記載の人工膝。
【請求項5】
内側大腿骨関節面と、外側大腿骨関節面とを更に有し、前記内側大腿骨関節面及び前記外側大腿骨関節面のうちの少なくとも一方は、前記大腿骨の対応の後顆上で、前記対応の後顆の最も後方の位置と前記大腿骨の大腿シャフトの後方皮質の遠位側1/4〜1/3の連続部である平面との間の前後距離の少なくとも半分にわたって前後方向に延びている、請求項4記載の人工膝。
【請求項6】
前記内側大腿骨関節面及び外側大腿骨関節面のうちの少なくとも一方は、前記対応の後顆上で、前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前後距離の少なくとも2/3にわたって近位側前方方向に延びている、請求項5記載の人工膝。
【請求項7】
内側大腿骨関節面と外側大腿骨関節面の両方は、これらのそれぞれの後顆上で前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前後距離の少なくとも半分にわたって前後方向に延びている、請求項5記載の人工膝。
【請求項8】
前記大腿骨コンポーネントは、前記大腿骨コンポーネントと前記大腿骨との間に配置されたモジュラーアタッチメントを有し、前記モジュラーアタッチメントは、前記内側大腿骨関節面及び前記外側大腿骨関節面のうちの少なくとも一方の延長部を有し、前記延長部は、前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前記前後距離の実質的に1/3と前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前記前後距離の少なくとも半分との間にわたって前記対応の関節面を提供している、請求項5記載の人工膝。
【請求項9】
前記延長部は、前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前記前後距離の実質的に1/3と前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前記前後距離の少なくとも2/3との間にわたって前記対応の関節面を提供している、請求項8記載の人工膝。
【請求項10】
前記大腿骨コンポーネントは、前記大腿骨コンポーネントと前記大腿骨の接触を後方領域において開始させ、前記大腿骨コンポーネントを定位置に回転させ又は転動させることにより前記大腿骨に取り付けられるよう構成されている、請求項1記載の人工膝。
【請求項11】
前記脛骨コンポーネントは、後面から前後寸法の18%〜30%のところに位置した低点をもつ湾曲を有する内側脛骨関節面を更に有し、前記低点は、前記関節運動特徴部と前記内側脛骨関節面の前方部分との間に介在して位置している、請求項1記載の人工膝。
【請求項12】
前記脛骨コンポーネントは、実質的に平坦であり、外側大腿顆が前記脛骨コンポーネントの前縁から滑り落ちるのを阻止する前リップを有する外側脛骨関節面を更に有する、請求項1記載の人工膝。
【請求項13】
膝単顆人工膝を含む、請求項1記載の人工膝。
【請求項14】
大腿骨コンポーネントを患者の大腿骨に取り付ける方法であって、前記方法は、
大腿骨関節面を備えた大腿骨コンポーネントを用意するステップと、
骨を前記大腿骨の遠位端部から切除することにより前記大腿骨コンポーネントを受け入れるよう前記大腿骨を前処置するステップと、
骨の前記大腿骨の膝窩面から切除することにより前記大腿骨関節面を受け入れるよう前記大腿骨を前処置するステップと、
前記大腿骨コンポーネントを前記大腿骨の前記遠位端部に隣接して位置決めするステップを有し、前記大腿骨コンポーネントは、前記大腿骨コンポーネントの前方部分を前記前方部分の通常の使用位置から遠位側に且つ後方に回転させるよう回転位置にあり、
前記大腿骨コンポーネントの後方部分が前記大腿骨の前記遠位端部の後方部分に接触するよう前記大腿骨コンポーネントを位置決めするステップと、
前記大腿骨コンポーネントを回転させ、前記大腿骨コンポーネントの前記前方部分が前記大腿骨の前記遠位端部の前方部分に着座するようにするステップと、
前記大腿骨コンポーネントを前記前処置された大腿骨に固定するステップと、
脛骨関節面を備えた脛骨コンポーネントを用意するステップを有し、前記脛骨関節面は、前記脛骨関節面の後方部分の近くに配置された関節運動特徴部を含み、
骨を前記脛骨の近位端部から切除することにより前記脛骨コンポーネントを受け入れるよう前記脛骨を前処置するステップと、
前記脛骨コンポーネントを前記前処置された脛骨に固定するステップを有し、前記大腿骨コンポーネントの関節運動経路は、前記膝の深屈曲中、前記大腿骨関節面と前記関節運動特徴部との相互作用によって制御される、方法。
【請求項15】
前記関節運動特徴部は、前記脛骨関節面の前記前後方向に対して全体として鋭角をなして設けられた隆起部を含む、請求項14記載の人工膝。
【請求項16】
前記関節運動特徴部は、球形関節面を含む、請求項14記載の人工膝。
【請求項17】
前記大腿骨コンポーネントは、モジュラーアタッチメントを有し、前記モジュラーアタッチメントは、前記内側大腿骨関節面及び前記外側大腿骨関節面のうちの少なくとも一方の延長部を有し、前記延長部は、前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前記前後距離の実質的に1/3と前記対応の後顆の前記最も後方の部分と前記平面との間の前記前後距離の少なくとも半分との間にわたって前記対応の関節面を提供し、前記方法は、
前記大腿骨コンポーネントを前記大腿骨の前記遠位端部に隣接して位置決めする前に、前記モジュラーアタッチメントを前記大腿骨の前記遠位端部に取り付けるステップを更に有する、請求項14記載の方法。
【請求項18】
人工膝であって、
後面及び前後寸法を有すると共に前記後面から前記前後寸法の18%〜30%のところに位置した低点をもつ湾曲を備えた関節面を有する脛骨コンポーネントを有し、
前記関節面の後方部分は、関節運動特徴部を更に含む、人工膝。
【請求項19】
前記関節運動特徴部は、前記脛骨関節面の前記前後方向に対して全体として鋭角をなして設けられた隆起部を含む、請求項15記載の人工膝。
【請求項20】
前記関節運動特徴部は、球形関節面を含む、請求項15記載の人工膝。
【請求項21】
人工膝であって、
後面及び前後寸法を有すると共に前記後面から前記前後寸法の18%〜30%のところに位置した低点をもつ湾曲を備えた関節面を有する脛骨コンポーネントを有し、
前記関節面の後方部分は、関節運動特徴部を更に含む、人工膝。
【請求項22】
前記関節運動特徴部は、前記脛骨関節面の前記前後方向に対して全体として鋭角をなして設けられた隆起部を含む、請求項15記載の人工膝。
【請求項23】
前記関節運動特徴部は、球形関節面を含む、請求項15記載の人工膝。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図10H】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図11H】
【図11I】
【図11J】
【図11K】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図16G】
【図16H】
【図16I】
【図16J】
【図16K】
【図16L】
【図16M】
【図16N】
【図16O】
【図16P】
【図16Q】
【図16R】
【図16S】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図20E】
【図20F】
【図20G】
【図20H】
【図20I】
【図21】
【図22】
【図22A】
【図23】
【図23A】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図10H】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図11H】
【図11I】
【図11J】
【図11K】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図16G】
【図16H】
【図16I】
【図16J】
【図16K】
【図16L】
【図16M】
【図16N】
【図16O】
【図16P】
【図16Q】
【図16R】
【図16S】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図20E】
【図20F】
【図20G】
【図20H】
【図20I】
【図21】
【図22】
【図22A】
【図23】
【図23A】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2012−529927(P2012−529927A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515157(P2012−515157)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/038219
【国際公開番号】WO2010/144736
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511300916)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/038219
【国際公開番号】WO2010/144736
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511300916)
【Fターム(参考)】
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