説明

人工膝関節置換前の骨切り前処理治具

【課題】本発明は、人工膝関節置換手術中、大腿骨遠位に前側面および後側面を形成する骨切り前に、それぞれの骨切り量を手早く正確にかつ容易に確認できるとともに、その後の骨切りを容易に行える骨切り前処理治具を提供する。
【解決手段】骨切り前処理治具1は、膝関節Kを人工膝関節Tに置換するために大腿骨遠位A2の前方骨切り面Abおよび後方骨切り面Acを形成する骨切りを行う前に使用される。この骨切り前処理治具1は、ギャップブロック10を少なくとも備える。ギャップブロック10は、脛骨Bの機能軸Wbに対して垂直に切断された脛骨近位面Baに載置され、屈曲位の大腿骨Aの内側顆後方A33および外側顆後方A43に当接する。そして、ギャップブロック10は、屈曲位の大腿骨Aの内側顆後方A33および外側顆後方A43を通る後顆軸Lxを、脛骨近位面Baに対して内旋させた状態に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝関節を人工膝関節に置換するために大腿骨遠位の骨切りを行う前に使用される骨切り前処理治具に関する。
【背景技術】
【0002】
膝関節を人工膝関節に置換する場合、X線透過撮像装置やCT断層撮像装置などによって得られる透視画像を基に、複数段階にサイズが異なる人工膝関節の中から当該膝関節に適合する最適な寸法のものが選択される。また、大腿骨遠位の一部および脛骨近位の一部は、選択した人工膝関節に適合するようにそれぞれ切除される。その際、骨切りの方法や、内側側副靭帯および外側側副靭帯の張力の調整方法にも様々な手技が存在している。
【0003】
脛骨近位は、脛骨にセットされた切除ガイドのスロットに挿入される振動切断術具(ボーンソウ)によって骨切りされる。この骨切りによって、脛骨の機能軸に対して垂直な骨切り面(脛骨近位面)が脛骨近位に形成される。大腿骨遠位は、大腿骨にセットされた専用の切除ガイドのスロットに挿入されるボーンソウによって骨切りされる。このとき、まず、大腿骨の機能軸に対して垂直な骨切り面(大腿骨遠位面)が形成される。そして、形成された大腿骨遠位面にさらに別の切除ガイドを装着し、前方面、および後方面、並びに遠位面と前方面および後方面との間にそれぞれ設けられる前方傾斜面、後方傾斜面の4つの面が骨切りによって形成される。
【0004】
大腿骨遠位の骨切りは、人工膝関節を取り付けた後の膝関節の伸展位と屈曲位とにおける内側側副靭帯および外側側副靭帯の張力のバランスがほぼ均等になるように行われることが好ましい。
【0005】
例えば、伸展位において大腿骨と脛骨の機能軸が直線になるように内側側副靭帯および外側側副靭帯の張力を整えたのち、屈曲位における骨切り量を調整することで、伸展位と屈曲位の張力のバランスを整える手技がある。この手技の骨切りにおいて使用される人工膝関節設置用治具が特許文献1に記載されている。
【0006】
この治具は、脛骨近位の骨切り面に載置されるスペーサと、大腿骨に取り付けられた大腿骨取付部材の円筒形部と連結されるとともにスペーサに取り外し可能に固定された可動ブロックとを有している。可動ブロックは、駆動ネジを内蔵しており、この駆動ネジを操作することによって、大腿骨取付部材をスペーサに対して相対的に移動させる。つまり、脛骨の骨切り面に対して垂直方向に大腿骨遠位を変位させる。これにより、屈曲位の外側側副靭帯および内側側副靭帯の張力を伸展位の張力と一致させる。そして、可動ブロックに設けられた支持部のガイド面に沿って骨切り用の刃を挿しいれて、大腿骨遠位の前設置面(前方面)を形成する。
【0007】
また、手術前の検査などによって予め決定される角度のとおりに骨切りを行い、内側側副靭帯および外側側副靭帯も含めた軟部組織を緩めるあるいは削るなどして、伸展位と屈曲位における内側側副靭帯および外側側副靭帯の張力のバランスを整える手技がある。この手技において大腿骨遠位の骨切りに使用される大腿骨寸法測定器およびカッティングブロックが特許文献2に記載されている。
【0008】
大腿骨寸法測定器は、大腿骨遠位から骨髄内管に挿入されたリーマロッドに装着される。大腿骨遠位に適合する人工膝関節(補綴具)のサイズは、骨切り前の大腿骨遠位に装着される大腿骨寸法測定器に表示されている目盛から読み取ることで決定される。カッティングブロックは、大腿骨遠位に一旦装着することで、大腿骨遠位面、前方面、後方面、前方傾斜面、後方傾斜面の5つの面を形成することができる各スロットを有している。特許文献2によれば、カッティングブロックは、人工膝関節のサイズによらず共通して使用され、大腿骨に対して前側基準または後側基準のいずれか一方のみを選択的に使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−75517号公報
【特許文献2】特公平11−504532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、個人個人で寸法や形状が異なる膝関節に対して、この膝関節を置換するために用意される人工膝関節は、数種類のサイズが用意されるだけである。したがって、理想的な寸法から少し外れた最適な寸法の人工膝関節に置換することになるであろう。また、人工膝関節の大腿骨コンポーネントは、大腿骨遠位を前方から後方まで覆うように装着される。そのため、選択された人工膝関節に対して大腿骨遠位の前方骨切り面が最適な状態に形成される場合でも後方骨切り面が適合許容範囲外であれば、そのサイズの人工膝関節を採用することができない場合もある。
【0011】
したがって、特許文献1のように内側側副靭帯および外側側副靭帯の張力が伸展位と屈曲位とで一致するように調整して大腿骨遠位の前方骨切り面に沿って骨切りを行っても、大腿骨の内側顆および外側顆の後方骨切り面の骨切り量が、選択したサイズの人工膝関節の大腿骨コンポーネントに適合するか分からない。また、特許文献2のように前方骨切り面と後方骨切り面とを挟むように大腿骨遠位を測定して適合するサイズの人工膝関節を選択しても、カッティングブロックを前方基準か後方基準かに偏らせて取り付けるのであれば、寸法差がどちらかに偏って現れることになる。
【0012】
解剖学上、膝関節の関節面は、大腿骨および脛骨の機能軸に対して直角に設けられておらず、個人差はあるが、脛骨の機能軸に対して約3°外側に傾いている。これに対して、人工膝関節置換手術では、人工膝関節と脛骨および大腿骨との間の負荷の伝達や長期の安定性を考慮して、脛骨近位および大腿骨遠位をそれぞれ機能軸に対して垂直な面に沿って骨切りを行う。したがって、脛骨近位を機能軸に対して垂直に骨切りしたことによって屈曲位において生じる関節面の傾き分を相殺するために、大腿骨遠位に対して大腿骨コンポーネントを、関節面の傾き分に相当する約3°外旋させて取り付ける手技がある。
【0013】
また、大腿骨の内側上顆(エピコンディラスメディアリス)に内側側副靭帯が付着する付着部と外側上顆(エピコンディラスラテラリス)に外側側副靭帯が付着する付着部とを通る通顆軸(トランスエピコンディラアクシス)は、大腿骨の機能軸に対して、個人差はあるが、約4〜7°外旋した角度になっている。そのため、関節面の傾き分を相殺するために内側顆後方および外側顆後方を通る後顆軸から約3°外旋させて大腿骨コンポーネントを取り付けただけでは、外旋させた大腿骨コンポーネントの屈伸軸は、通顆軸と一致しない。その結果、伸展位と屈曲位との間で内側側副靭帯および外側側副靭帯の張力が一定にならず、膝関節の動きが滑らかにならない。
【0014】
内側側副靭帯と外側側副靭帯の張力のバランスを取るためには、伸展位および屈曲位のどちらにおいても大腿骨の骨切り面と脛骨の骨切り面とが、平行になっている必要がある。骨切りを済ませたのち、靭帯の軟部組織の一部を開放することで、内側側副靭帯および外側側副靭帯の張力のバランスをとる手技がある。しかし、切開し過ぎると膝関節がゆるむかもしれない。したがって、人工膝関節置換手術において軟部組織をなるべく開放しなくてもすむように、伸展位および屈曲位のいずれの場合でも脛骨近位面に対して大腿骨の各骨切り面が平行になることを大腿骨遠位の骨切りをする前に確認したのち、骨切りできるようにしたい。
【0015】
理想的な膝関節においても、大腿骨と脛骨との屈伸軸は、一定しておらず、通顆軸に一致するものでもない。したがって、これらの軸のずれは、膝関節を取り巻く靭帯や大腿骨と脛骨との間の関節半月などの軟部組織によって吸収されている。膝関節を人工膝関節に置換すると、軟部組織が金属や硬質樹脂などに置換されるため、屈伸軸と通顆軸とのずれを十分に吸収できなくなる。
【0016】
そのため、人工膝関節置換手術において、人工膝関節の屈伸軸が通顆軸に少しでも近づくよう、正確な骨切り量を手術中に確認できるようにしたい。また、手術を行ったことによる患者の負担を軽減するために、既存の膝関節の骨の部分をできる限り多く温存し、骨切りによって切除する量が極力少なくなるように、適正なサイズの人工膝関節を選択できるようにしたい。
【0017】
そこで、本発明は、人工膝関節置換手術において、大腿骨遠位に前方骨切り面および後方骨切り面を形成する骨切り前に、それぞれの骨切り量を手早く正確にかつ容易に確認できるとともに、その後の骨切りを容易に行えるようにする骨切り前処理治具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る骨切り前処理治具は、膝関節を人工膝関節に置換するために大腿骨遠位の前方骨切り面および後方骨切り面を形成する骨切りを行う前に使用される。この骨切り前処理治具は、ギャップブロックを少なくとも備える。このギャップブロックは、脛骨の機能軸に対して垂直に切断された脛骨近位面に載置され、屈曲位の大腿骨の内側顆後方および外側顆後方に当接する。そして、このギャップブロックは、屈曲位の大腿骨の内側顆後方および外側顆後方を通る後顆軸を、脛骨近位面に対して内旋させた状態に保持する。この場合、ギャップブロックは、大腿骨に対する内側側副靭帯および外側側副靭帯の付着部を通る通顆軸を脛骨近位面に平行にする程度に、後顆軸を脛骨近位面に対して内旋させた状態に保持するように構成する。
【0019】
または、この骨切り前処理治具は、ギャップブロックと、可動本体と、マークと、ギャップスケールと、骨切りスケールとを備える。可動本体は、大腿骨遠位の前方骨切り面の近位端を基準に位置決めされる。前方骨切り面の近位端は、複数段階に異なるサイズで用意される人工膝関節のサイズに応じて決まる。この可動本体は、ペグホールを穿つ位置を示すガイド孔を有している。ペグホールは、大腿骨遠位に人工膝関節の大腿骨コンポーネントを設置するために利用される穴である。マークは、可動本体に設けられるマーク取付部に装着され大腿骨遠位の後方骨切り面を表示する。マーク取付部は、可動本体を位置決めする際に選択した人工膝関節のサイズに対応して設けられている。ギャップスケールは、脛骨近位面から大腿骨遠位の後方骨切り面までの距離を表示する目盛りを有している。骨切りスケールは、マークによって示された後方骨切り面に対して垂直方向に大腿骨の内側顆後方および外側顆後方までの距離をそれぞれ表示する目盛りを有する。
【0020】
また、他の形態の骨切り前処理治具は、ベースプレートと、キャリパーとをさらに備える。ベースプレートは、ギャップブロックに載置される屈曲位の大腿骨の機能軸に垂直に大腿骨の内側顆および外側顆に形成された大腿骨遠位面に取り付けられる。キャリパーは、可動本体に固定されて大腿骨遠位の前方を骨切りした場合に形成される前方骨切り面の近位端を指し示す。このとき、可動本体は、このベースプレートに対して大腿骨遠位面に平行にスライド嵌合する。骨切りスケールは、後方骨切り面から内側顆後方までの距離を表示する目盛りを有する内側顆用の骨切りスケールと、後方骨切り面から外側顆後方までの距離を表示する目盛りを有する外側顆用の骨切りスケールとを含む。マークは、脛骨近位面から大腿骨遠位の後方骨切り面までの距離をギャップスケール上に表示し、内側顆の後方側骨切り量を内側顆用の骨切りスケール上に表示し、外側顆の後方骨切り量を外側顆用の骨切りスケール上に表示する。
【0021】
また、ギャップブロックは、通顆軸(トランスエピコンディラアクシス)が大腿骨および脛骨の機能軸に対して回旋している角度に相当する角度分だけ、脛骨近位面に対して傾斜している上面を有する。または、ギャップブロックは、通顆軸と後顆軸との成す角度に相当する角度分だけ、脛骨近位面に対して傾斜している上面を有する。
【0022】
ここで、「通顆軸(トランスエピコンディラアクシス)」とは、大腿骨の内側上顆に内側側副靭帯が付着する部分および外側上顆に外側側副靭帯が付着する部分を通る軸を意味する。「機能軸」とは、伸展位において大体骨頭の中心から膝関節の真ん中をとおり踵骨の中心に貫ける軸を意味する。また、「後顆軸」とは、大腿骨の内側顆後方および外側顆後方を通る軸を意味する。
【0023】
また、可動本体は、人工膝関節のサイズに一対一に対応させてマークを装着するためのマーク取付部を有する。キャリパーは、人工膝関節のサイズに一対一に対応させて可動本体に位置決めするための目印を有する。
【0024】
キャリパーは、外側用のキャリパーと内側用のキャリパーとセンター用のキャリパーとの中から1つを選択して取り付ける。外側用のキャリパーは、大腿骨の外側顆側の可動本体の上端に固定され、外側顆を回り込んで前方骨切り面の近位端に当接する。内側用のキャリパーは、大腿骨の内側顆側の可動本体の上端に固定され、内側顆を回り込んで前方骨切り面の近位端に当接する。センター用のキャリパーは、大腿骨の外側顆および内側顆の間の部分に対向する可動本体の中央上端に固定され、大腿骨の膝蓋面を前側から越えて前方骨切り面の近位端に当接する。
【0025】
さらに、内側顆用の骨切りスケールおよび外側顆用の骨切りスケールは、ステムと目盛りブロックと固定具とを備える。ステムは、ギャップブロックの下面に対して平行に移動する。目盛りブロックは、目盛りが設けられ、ギャップブロックの下面に対して垂直に移動可能にステムに装着される。固定具は、目盛りブロックをステムに固定する。操作性を向上させるために、ステムは、ギャップブロックの下面に対して平行にギャップブロックに設けたスロットに装着する。そして、内側顆用の骨切りスケールおよび外側顆用の骨切りスケールは、ステムをスロットに沿って移動させる移動ネジをさらに備える。
【0026】
または、ギャップブロックは、傾斜した上面に対して平行に設けられたスロットを有する。そして、内側顆用の骨切りスケールおよび外側顆用の骨切りスケールは、ステムと目盛りブロックと固定具と移動ネジとを備える。ステムは、スロットに装着されてこのスロットに沿って移動する。目盛りブロックは、目盛りが設けられ、ギャップブロックの上面および下面に垂直な面に沿って回動可能にステムに装着する。固定具は、目盛りブロックをステムに固定する。移動ネジは、ステムをスロットに沿って移動させる。
【0027】
または、内側顆用の骨切りスケールおよび外側顆用の骨切りスケールは、マークに印された大腿骨の後側骨切り線に沿って移動可能に、マークに装着する。
【0028】
また、表示部分を見やすくするために、マークは、中央窓と内側窓と外側窓とを備える。中央窓は、ギャップスケールの目盛りを正面から見せるように開口させる。内側窓は、内側顆用の骨切りスケールの目盛りを正面から見せるように開口させる。外側窓は、外側顆用の骨切りスケールの目盛りを正面から見せるように開口させる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の骨切り前処理治具は、ギャップブロックを備え、人工膝関節置換手術において大腿骨遠位に前方骨切り面および後方骨切り面を形成する骨切り前に用いることによって、大腿骨の機能軸に対して通顆軸が外旋している角度に相当する角度で、屈曲位の大腿骨を脛骨近位面に対し内旋させることができる。したがって、伸展位および屈曲位における内側側副靭帯および外側側副靭帯の張力を調整しやすい。
【0030】
また、可動本体とマークとギャップスケールと骨切りスケールとをさらに備える骨切り前処理治具によれば、それぞれの骨切り量を手早く正確にかつ容易に確認することができる。その結果、内側側副靭帯および外側側副靭帯の付着部を通る通顆軸に人工膝関節の屈伸軸を近づけるように、大腿骨遠位に対して大腿骨コンポーネントを回旋させる角度を調整したり、手術前に選択した人工膝関節を適したサイズのものに変更したりする機会を得ることができる。そして、その後の骨切りを行うための骨切りガイド治具などを装着するための基準となるペグホールを穿つためのガイド孔を備えているので、大腿骨の骨切り量が最適になる状態を確認した上でペグホールを設けることができる。
【0031】
このように人工膝関節置換手術中に、大腿骨遠位の骨切り量を骨切り前に正確に確認でき、その後の骨切りの作業を円滑に行うことができる。その結果、手術時間を短縮することができ、患者への負担および施術者への負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態の骨切り前処理治具を示す分解斜視図。
【図2】左脚の大腿骨および脛骨に設定される機能軸を示す正面図。
【図3】左脚の膝関節と通顆軸の関係を示す斜視図。
【図4】人工膝関節が装着された屈曲位の左脚の膝関節を示す斜視図。
【図5】図1に示した骨切り前処理治具のギャップブロックを屈曲位の脛骨と大腿骨の間に装着した状態の正面図。
【図6】図5に示したギャップブロックにベースプレート固定孔用のドリルガイドを装着した状態の斜視図。
【図7】図6に示したドリルガイドを外してベースプレートを大腿骨遠位に装着する直前の斜視図。
【図8】図7に示したベースプレートに可動本体を装着する直前の斜視図。
【図9】図8に示した可動本体に固定されたキャリパーの固定部を拡大した斜視図。
【図10】図8に示したベースプレートに可動本体が装着された状態の側面図。
【図11】図10に示したギャップブロックにギャップスケールが装着され可動本体にマークが装着された状態の正面図。
【図12】図1に示した骨切り前処理治具のギャップブロックに外側顆用の骨切りスケールが装着された状態の斜視図。
【図13】図11に示したギャップブロックに内側顆用および外側顆用の骨切りスケールが装着された状態の正面図。
【図14】図13に示した可動本体にマークを装着した状態の正面図。
【図15】外側用のキャリパーの代わりにセンター用のキャリパーを装着した骨切り前処理治具の一部を示す斜視図。
【図16】本発明の第2の実施形態の骨切り前処理治具の可動本体とキャリパーの固定部を一部断面にして示す分解斜視図。
【図17】本発明の第3の実施形態の骨切り前処理治具のマークおよびその周辺を示す正面図。
【図18】本発明の第4の実施形態の骨切り前処理治具のギャップブロックとこれに装着される内側顆用および外側顆用の骨切りスケールを示す分解斜視図。
【図19】図18に示した外側顆用の骨切りスケールおよびその周辺の断面図。
【図20】図19に示した外側顆用の骨切りスケールの移動ネジが逆ネジである場合の断面図。
【図21】本発明の第5の実施形態の骨切り前処理治具の内側顆用および外側顆用の骨切りスケールをマークとともに示す分解斜視図。
【図22】本発明の第6の実施形態の骨切り前処理治具のギャップブロックとこれに装着される内側顆用および外側顆用の骨切りスケールを示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に係る第1の実施形態の骨切り前処理治具1は、図1〜図15を参照して説明する。また、本実施形態では、左脚の膝関節用の骨切り前処理治具1を例に説明するものとする。右脚の膝関節用の骨切り前処理治具は、本実施形態のものを左右反対にしたものと同じであるので、ここでの説明を省略する。
【0034】
本明細書において、「遠位」とは人体の体幹から離れる方向を示し、「近位」とは体肢の体幹付着部側へ向かう方向を示す。また、「前方」、「後方」とは直立した姿勢における前側および後側を示す。「外側」とは人体の正中面に対して離れる方向、「内側」とは正中面に対して近づく方向をそれぞれ示す。
【0035】
図2および図3に示す膝関節Kを図4に示す人工膝関節Tに置換する場合、大腿骨遠位A2および脛骨近位B1は、それぞれ骨切りされる。このとき、図2に示すように大腿骨頭A1の中心から膝関節Kの真ん中を通り踵骨Dに貫ける機能軸Wが本来の位置に来る、すなわち一直線になる、ように調整される。膝関節Kには起立している状態で体重に応じた負荷が掛かる。伸展位Peの膝関節Kに作用する負荷が偏らないようにするために、脛骨近位B1は、脛骨Bの機能軸Wbに対して垂直に骨切りされて脛骨近位面Baが形成され、大腿骨遠位A2は、大腿骨Aの機能軸Waに対して垂直に骨切りされて大腿骨遠位面Aaが形成される。そして、大腿骨Aと脛骨Bのそれぞれ機能軸Wa,Wbが一致するように、つまり、大腿骨遠位面Aaと脛骨近位面Baとが平行になるように、大腿骨Aと脛骨Bとが配置される。
【0036】
図4に示すように人工膝関節Tの大腿骨コンポーネントT1は、大腿骨遠位A2に対して膝関節Kの屈曲方向に沿って前方から後方までの範囲にわたって被せるように取り付けられる。したがって、大腿骨遠位A2は、大腿骨遠位面Aaのほかに前方骨切り面Ab、後方骨切り面Ac、およびこれらの間の角部を骨切りしてチャンファーが形成される。
【0037】
大腿骨コンポーネントT1は、大腿骨遠位A2を覆う部材の厚みがほぼ均一になるように作られる。したがって、伸展位Peにおける大腿骨遠位面Aaと脛骨近位面Baとの間の伸展ギャップに対して、屈曲位Pfにおける後方骨切り面Acと脛骨近位面Baとの間の屈曲ギャップがほぼ同じ寸法になるように骨切りされるべきである。
【0038】
なお、膝関節Kに骨変形が生じているような場合、伸展位Peにおける脛骨近位面Baおよび大腿骨遠位面Aaを機能軸Wに対して垂直に設けたことによって、膝関節Kの関節面の角度、回動軸、内側側副靭帯L1および外側側副靭帯L2の張力などが術前と術後とで変わってしまうこともある。そのような場合は、内側側副靭帯L1および外側側副靭帯L2の張力を調整する。この実施形態では、内側側副靭帯L1および外側側副靭帯L2の張力がバランスしていることを前提として、説明を続ける。
【0039】
この実施形態では、骨切り前処理治具1を利用して、人工膝関節Tの大腿骨コンポーネントT1の取付角度を調整することによって、屈曲位Pfの膝関節Kの内側側副靭帯L1および外側側副靭帯L2の張力が伸展位Peの張力と同じになるようにする。具体的には、図3に示すように、大腿骨遠位A2の内側上顆(エピコンディラスメディアリス)A31に内側側副靭帯L1が付着する内側付着部A32と外側上顆(エピコンディラスラテラリス)A41に外側側副靭帯L2が付着する外側付着部A42とを通る通顆軸Lxが大腿骨Aの機能軸Waに対して外旋R1している角度に相当する角度だけ、図4に示すように人工膝関節Tの大腿骨コンポーネントT1を外旋R2させて取り付ける。なお、図2および図4から図15において、内側側副靭帯L1および外側側副靭帯L2は、省略されている。
【0040】
この骨切り前処理治具1は、大腿骨コンポーネントT1を大腿骨Aの機能軸Waを中心に任意の角度だけ外旋R2させて取り付ける場合に、大腿骨Aの前方骨切り面Abおよび後方骨切り面Acの骨切り量を確認するために使用される。骨切り前処理治具1は、大腿骨遠位面Aaおよび脛骨近位面Baが形成されたあと、大腿骨遠位A2の前方骨切り面Abおよび後方骨切り面Acの骨切りを行う前に使用される。
【0041】
図1に示すように、骨切り前処理治具1は、ギャップブロック10と、ベースプレート20と、可動本体30と、キャリパー40と、ギャップスケール50と、内側顆A3用の骨切りスケール601と、外側顆A4用の骨切りスケール602と、マーク70とを備える。
【0042】
ギャップブロック10は、図1および図5に示すように屈曲位Pfの脛骨近位面Baに設置される。ギャップブロック10は、施術中に移動しないように、ペグやアンカーピンで固定される。図4に示すように大腿骨コンポーネントT1を屈曲位Pfの大腿骨Aに外旋させて取り付けるために、ギャップブロック10は、図5に示すように脛骨近位面Baに対して大腿骨Aを内旋させる方向に傾斜する上面11を有している。つまりこの上面11は、内側に向かって傾斜している。
【0043】
これにより、大腿骨Aの内側顆A3の内側顆後方A33および外側顆A4の外側顆後方A43をギャップブロック10の上面11に当接させた場合、大腿骨Aは、脛骨近位面Baに対して内旋した状態となる。ギャップブロック10の上面11の傾斜角度11aは、通顆軸Lxが大腿骨Aに対して外旋している角度とほぼ同じになるように設定される。なお、ギャップブロック10の後方の中央部分は、脛骨近位面Baにギャップブロック10を設置した場合に前十字靭帯および後十字靭帯に干渉しないように切り欠かれている。
【0044】
図1に示すように、ギャップブロック10は、通顆軸Lxが設定される角度に合わせて角度の異なる数種類が用意される。X線診断装置によって事前に確認されている情報などに基づいて、適切な傾斜角度11aを有したギャップブロック10が選択される。また、図2に示すような伸展位Peと図5に示す屈曲位Pfとで内側側副靭帯L1および外側側副靭帯L2の張力がほぼ同じになるように、図1に示すスペーサ101を脛骨近位面Baとギャップブロック10の間に入れることもある。また、内側側副靭帯L1や外側側副靭帯L2など軟部組織を調整することで、張力を整える必要がある場合もある。
【0045】
ベースプレート20は、図7に示すように大腿骨Aの内側顆A3および外側顆A4に設けられた大腿骨遠位面Aaに設置される。大腿骨Aと脛骨Bの屈曲位の角度は、脛骨近位面Baと大腿骨遠位A2の内側顆後方A33および外側顆後方A43との間に挟まれたギャップブロック10の下面12を基準とするベースプレート20の角度によって確認できる。
【0046】
ベースプレート20は、ガイドピン21と、固定孔22と、スライドガイド23とを備える。ガイドピン21は、大腿骨遠位面Aaに図7に示すように設けられた取付穴Adに嵌合する。取付孔Adは、図6に示すドリルガイド102によって形成される。ドリルガイド102は、ギャップブロック10に設けられた中央スロット13に嵌合される。内側顆A3および外側顆A4に形成される取付穴Adは、脛骨近位面Baから同じ距離に設けられる。固定孔22は、大腿骨遠位面Aaに対して斜めに設けられており、アンカーピンが装着されることによって、ベースプレート20を大腿骨遠位面Aaから容易に浮き上がらないように固定する。スライドガイド23は、ガイドピン21と反対側の面に突出しており、脛骨近位面Ba、すなわち、ギャップブロック10の下面12に対して垂直に延びている。
【0047】
可動本体30は、図1および図8に示すように、溝31と、キャリパー固定部32と、ガイド孔33と、マーク取付部34とを有している。溝31は、図8に示すように、大腿骨遠位面Aaに面した側に設けられ、ベースプレート20のスライドガイド23と嵌合する。キャリパー固定部32は、大腿骨Aの前方寄りの外側と内側と中央部との3箇所に対向する位置にそれぞれ設けられている。ガイド孔33は、溝31の両外側にそれぞれ1つずつ設けられており、内側顆A3の大腿骨遠位面Aaおよび外側顆A4の大腿骨遠位面Aaに穿つペグホールTaの位置を示している。ペグホールTaは、人工膝関節Tの大腿骨コンポーネントT1を固定するための取付穴である。骨切り量が確認されたあと、このガイド孔33にドリルが挿入され、ペグホールTaが大腿骨遠位面Aaに加工される。マーク取付部34は、図11および図14に示すようにマーク70を装着するために設けられており、複数段階に異なるサイズのものが用意される人工膝関節Tの各サイズに対応して図1および図13に示すように番号35と隣り合って配置されている。
【0048】
キャリパー40は、本実施形態では図1および図8〜図11に示すように、可動本体30の外側のキャリパー固定部32にネジ401で固定されている。キャリパー40は、基部41とアーム部42とを備えている。基部41は、大腿骨遠位面Aaに対して垂直方向に移動できる構造を有しており、ネジ401で締めつけられて任意の位置に固定される。基部41は、複数段階に異なるサイズの人工膝関節Tに対応する番号43およびその位置決め用の目印44が刻まれている。基部41は、マーク70を装着するのと同様に、選択された人工膝関節Tのサイズの番号43の目印44を、ベースプレート20側に面した可動本体30の面に合わせて固定される。目印44は、番号43の上側に刻まれている。
【0049】
本実施形態では、予め選択された人工膝関節Tのサイズが「2」である場合を例に説明する。図9および図10に示されたキャリパー40は、番号「2」の目印44に合わされている。アーム部42は、基部41に一体に設けられており、大腿骨Aの外側顆A4の外側を回って、大腿骨遠位A2の前方A21に可動本体30寄りの縁421が当接する。アーム部42の縁421が大腿骨Aの前方A21に当接する位置は、大腿骨遠位A2の前側の骨切りを行った場合に形成される前方骨切り面Abの近位端Ab1を指し示している。また、このアーム部42は、前方骨切り面Abに沿う角度に設けられている。したがって、図10に示すように大腿骨Aの外側から見れば、前方骨切り面Abがアーム部42によって示される。キャリパー40は、図10に示すようにアーム部42の先端を大腿骨遠位A2の前方A21に当接させている状態で、可動本体30のガイド孔33を大腿骨遠位面Aaに対して位置決めする。
【0050】
ギャップスケール50は、図1、図11及び図13に示すように、ギャップブロック10の中央部に設けられた中央スロット13に装着される。ギャップスケール50のスケール部51は、ギャップブロック10の下面12に対して垂直に延びており、ギャップブロック10の下面12を基準に脛骨近位面Baから大腿骨遠位A2の後方骨切り面Acまでの距離を表示する目盛り52が1mm単位で刻まれている。なお、目盛り52の間隔は、0.5mm間隔でも良く、1mmに限定されない。また、目盛り52は、5mmごとにスケール部51の幅方向に長く設けている。
【0051】
内側顆A3用の骨切りスケール601および外側顆A4用の骨切りスケール602は、図1および図12に示すように、ステム61と、目盛りブロック62と、固定具63と、移動ネジ64とをそれぞれ備える。ステム61は、ギャップブロック10の下面12に対して平行に形成されたスロット141,142に基部611が挿入されており、幅方向に移動可能である。目盛りブロック62は、ギャップブロック10の下面12に対して垂直に延びるステム61のガイド612に被せられており、ギャップスケール50の目盛り52と同じ方向から見ることのできる目盛り621が1mm単位で刻まれている。固定具63は、ステム61のガイド612に向けて目盛りブロック62を貫通しているネジ孔622に装着されるネジであって、締め込むことで目盛りブロック62を任意の位置でステム61に固定することができる。内側顆A3用の骨切りスケール601は、ギャップブロック10の上面11から大腿骨Aの内側顆A3の後方骨切り面Acまでの距離を表示するために、目盛りブロック62の基準線623を内側顆A3側のギャップブロック10の上面11に合わせて固定する。外側顆A4用の骨切りスケール602は、ギャップブロック10の上面11から大腿骨Aの外側顆A4の後方骨切り面Acまでの距離を表示するために、目盛りブロック62の基準線623を外側顆A4側のギャップブロック10の上面11に合わせて固定する。移動ネジ64は、ステム61の基部611に形成されるラック613と係合しており、回転することによって、目盛りブロック62ごとステム61をスロット141,142に沿って移動させる。
【0052】
マーク70は、大腿骨Aの後方骨切り面Acを示す骨切り線71が幅方向の全長に渡って印されており、可動本体30のマーク取付部34のいずれかに装着される。この実施形態では、予め選択された人工膝関節Tのサイズが「2」である場合を例に説明しているので、マーク70は、図13の可動本体30に表示されている「2」の番号35の隣に設けられたマーク取付部34に装着される。つまりマーク70は、キャリパー40の基部41が合わされている目印44と同じ番号35のマーク取付部34に装着される。「2」のマーク取付部34に装着されたマーク70は、サイズ「2」の人工膝関節Tが選択された場合に大腿骨コンポーネントT1を装着するための大腿骨遠位A2の後方骨切り面Acの位置を表示する。また、このマーク70は、図14に示すように脛骨近位面Baから大腿骨遠位A2の後方骨切り面Acまでのギャップをギャップスケール50上に表示し、内側顆A3の後側骨切り量を内側顆A3用の骨切りスケール601上に表示し、外側顆A4の後側骨切り量を外側顆A4用の骨切りスケール602上に表示する。また、他のサイズの人工膝関節Tが選択されている場合は、そのサイズの番号35が隣に表示されているマーク取付部34にマーク70を装着する。例えば、サイズ「3」の人工膝関節Tが選択されている場合は、「3」の番号35が隣に表示されているマーク取付部34にマーク70を装着する。このとき、キャリパー40もまた、選択されたサイズの番号43の目印44に合わせて可動本体30に取り付けられる。
【0053】
以上のように構成された骨切り前処理治具1は、大腿骨遠位A2の前方骨切り面Abおよび後方骨切り面Acを実際に形成する前に使用することで、それぞれどの程度の骨切り量になるか、また、屈曲位Pfにおける脛骨近位面Baと大腿骨遠位A2の後方骨切り面Acとのギャップがどの程度になるか、を具体的に知ることができる。そして、大腿骨Aの前側と後側の両方の骨切り量、および、伸展位Peと屈曲位Pfとにおける骨切り後のギャップがそれぞれ分かるので、それらのバランスを確認することができる。また、キャリパー40とマーク70の装着位置を変更するだけで、予め選択していた人工膝関節Tのサイズよりも一つ隣のサイズのほうが適合する可能性があるか確認することもできる。そして、骨切り量が確認され、適用する人工膝関節Tのサイズが確定されると、可動本体30に設けられているガイド孔33を使って、ペグホールTaが形成される。
【0054】
ところで、キャリパー40は、切開した術野や周囲に取り付けられる器具と干渉する場合、図15に示すセンター用のキャリパー40を使用する。センター用のキャリパー40は、可動本体30の中央に設けられているキャリパー固定部32に装着される。このキャリパー40は、基部41とアーム部42と嵩上げ台45を備える。基部41は、外側用のキャリパー40と同様に、人工膝関節Tのサイズを示す番号43とそれに対応する目印44を刻まれている。基部41は、大腿骨遠位A2の内側顆A3および外側顆A4の膨らみを大腿骨Aの膝蓋面A5を前側から越えるために嵩上げ台45を挟んでキャリパー固定部32にネジ402で固定される。アーム部42は、基部41から真っ直ぐ延びており、先端が大腿骨A側に折れ曲がっている。アーム部42の先端は、大腿骨遠位面Aa寄りの縁421によって大腿骨Aの前方骨切り面Abの近位端Ab1を指し示す。
【0055】
外側用のキャリパー40およびセンター用のキャリパー40のいずれも器具などに干渉するため使用できない場合は、内側用のキャリパー40を使用する。内側用のキャリパー40は、大腿骨遠位A2の内側顆A3に対向する可動本体30の内側上端に設けられた内側のキャリパー固定部32に固定され、内側顆A3を回り込んで前方骨切り面Abの近位端Ab1に可動本体30に面した縁421が当接する。内側用のキャリパー40は、外側用のキャリパー40と左右対称に作られる。キャリパー40は、外側用のキャリパー40、内側用のキャリパー40、およびセンター用のキャリパー40の中から、手術野などの環境に応じて、最も作業性の良いものを選択して使用すればよい。
【0056】
なお、図1、図8、図9、図10に示されたキャリパー40は、左脚に適用されているので、外側用のキャリパー40である。骨切り前処理治具が右脚用である場合、内側用のキャリパーは、左脚用の骨切り前処理治具1の外側キャリパー40と同じ形状になる。同様に、左脚用の骨切り前処理治具1の内側用のキャリパー40は、右脚用の骨切り前処理治具の外側用のキャリパーとして利用できる。
【0057】
以上のように構成された骨切り前処理治具1は、ギャップブロック10を備えている。このギャップブロック10は、脛骨近位面Baに載置されて屈曲位の大腿骨Aの内側顆後方A33および外側顆後方A43を支持することで、屈曲位の大腿骨Aを脛骨近位面Baに対して内旋させた状態に保持する。
【0058】
大腿骨の機能軸Waに対して通顆軸Lxが外旋している角度に相当する角度分だけ内旋させる角度に上面が形成されたギャップブロック10を用いれば、通顆軸Lxを脛骨近位面Baとほぼ平行に配置できる。その結果、伸展位と屈曲位野両方において、内側側副靭帯L1および外側側副靭帯L2の張力が同じになるように骨切り量を見積もったり、人工膝関節Tのサイズを選定したりすることを容易に行える。
【0059】
このように、骨切り前処理治具1を使用することで、骨切り前に具体的に骨切り量を確認できるため、後に続く骨切り作業および人工膝関節Tの装着作業を円滑に行うことができる。したがって、手術時間が短縮されるので、患者への負担が軽減されるとともに、手術を行う施術者の負担も軽減することができる。
【0060】
上述のように、大腿骨遠位A2の骨切りを行う場合に骨切り前処理治具1を用いることで、人工膝関節Tの屈伸軸(回動軸)を大腿骨Aの通顆軸Lxに近づくように設定できる。その結果、内側側副靭帯L1および外側側副靭帯L2の張力は、伸展位Peから屈曲位Pfにわたって安定することが期待される。つまり、人工膝関節Tは、しっかりと保持され、かつ、滑らかに屈曲および伸展させることができるため、長期にわたる安定性を期待できる。
【0061】
本発明に係る第2〜第7の実施形態の骨切り前処理治具1は、図16〜図21を参照して説明する。このとき第1の実施形態の骨切り前処理治具1と比較して異なる部分のみを図示し説明する。その他の構成は、第1の実施形態の骨切り前処理治具1と同じであるので、詳細については第1の実施形態の記述および図面を参酌するものとする。また、図中において第1の実施形態の骨切り前処理治具1と同じ機能を有する構成は、図中に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
本発明に係る第2の実施形態の骨切り前処理治具1の可動本体30およびキャリパー40は、図16に示す。本実施形態の可動本体30のキャリパー固定部32は、全体が底部321に向かって広がる台形溝、いわゆる「あり溝」に形成されている。キャリパー40の基部41は、この台形溝に形成されたキャリパー固定部32に嵌合する括れ部47を有している。キャリパー40は、台形溝に沿ってスライドさせて装着され、括れ部47に先端が当たるように斜めに配置されたネジ403によって固定される。このように構成されていることで、人工膝関節Tのサイズを示す番号43および目印44が、ネジ403の摘み404を操作する手に隠れない。したがって、キャリパー40の位置決め操作が行いやすくなる。また、ネジ403がキャリパー40の基部41を貫通しないので、その部分に人工膝関節Tのサイズを示す番号43を目印44の位置に合わせて表示できる。これにより、サイズを示す番号43に対して目印44を合わせやすくなる。
【0063】
本発明に係る第3の実施形態の骨切り前処理治具1のマーク70は、図17を参照して説明する。マーク70は、中央窓72と内側窓73と外側窓74とを有している。中央窓72は、ギャップスケール50の目盛り52を正面から見えるように開口しており、中央部に印された目印721がギャップスケール50の目盛り52のどの位置に合っているかを容易に確認できる。また、中央窓72は、このマーク70が装着されているマーク取付部34の番号35も見ることができる範囲まで開口している。したがって、マーク70を装着した位置を確認しやすい。
【0064】
内側窓73は、内側顆A3用の骨切りスケール601の目盛り621を正面から見えるように開口しており、外側窓74は、外側顆A4用の骨切りスケール602の目盛り621を正面から見えるように開口している。内側窓73および外側窓74は、それぞれ内側顆A3用の骨切りスケール601および外側顆A4用の骨切りスケール602の目盛り621の小目盛りの幅よりも大きく開口しているので、どの位置を指示しているか判定しやすい。
【0065】
本発明に係る第4の実施形態の骨切り前処理治具1のギャップブロック10と、内側顆A3用の骨切りスケール601と、外側顆A4用の骨切りスケール602とは、図18〜図20を参照して説明する。このギャップブロック10は、傾斜している上面11に対して平行にスロット151,152が設けられている。内側顆A3用の骨切りスケール601および外側顆A4用の骨切りスケール602の各ステム61は、このスロット151,152に沿って差し込まれる。ステム61の基部611は、一部分が膨らんだ係合部614を有しており、この係合部614に移動ネジ64が通されるネジ孔615が形成されている。したがって、図19に示すようにギャップブロック10は、スロット151,152に沿って係合部614が通過する挿通穴16を有している。
【0066】
また、ギャップブロック10のスロット151,152から脛骨Bの前方に向かって突出しているステム61のヘッド616は、脛骨Bの前方から見て、ギャップブロック10の下面12と垂直な円盤形状である。このヘッド616に目盛りブロック62を装着し、ちょうど目盛り621の基準線623がギャップブロック10の上面11に一致するように固定具63で固定する。また、ステム61のヘッド616が円盤形状であるため、目盛りブロック62は、ギャップブロック10の上面11の傾斜角度に関係なく、ギャップブロック10の下面12に対して垂直に合わせ、固定具63で固定することができる。
【0067】
移動ネジ64は、Oリング65が装着される外周溝641が摘み642とネジ部643の間に形成されている。また、ギャップブロック10の挿通穴16にもこの外周溝641の対向する位置に内周溝161が形成されている。外周溝641には、線径の約半分が溝から出っ張るようにOリング65が装着される。Oリング65が装着された移動ネジ64は、ステム61の係合部614に中ほどまでねじ込んだ状態に組み合わされる。このままの状態でステム61と移動ネジ64をギャップブロック10のスロット151,152および挿通穴16に差し込み、Oリング65を挿通穴16の内周溝161に嵌合させる。Oリング65は、移動ネジ64を図19中に示すU方向に回転させたときに、移動ネジ64が軸方向に移動することを規制する。
【0068】
以上のように構成された骨切り前処理治具1の内側顆A3用および外側顆A4用の骨切りスケール601,602は、移動ネジ64をU方向に回すことによって、ステム61と目盛りブロック62が矢印Soで示す幅方向に移動する。そして、骨切りスケール601,602をギャップブロック10から取り外したい場合は、移動ネジ64の摘み642を引っ張ることで、骨切りスケール601,602をギャップブロック10から引き抜くことができる。このように、本実施形態の内側顆A3用の骨切りスケール601および外側顆A4用の骨切りスケール602は、必要に応じて簡単に挿着したり取り外したりすることができる。
【0069】
また、図20に示すように、移動ネジ64のネジ部643および係合部614のネジ孔615のネジピッチを図19の場合と逆にした、いわゆる逆ネジにすることも好ましい。移動ネジ64をU方向に回転させたときにステム61および目盛りブロック62が進む方向が、通常のネジを回したときにそのネジが軸方向に進む方向と同じ矢印Siで示す方向になる。したがって、操作する者にとって感覚的に分かりやすく、操作性が向上する。そして、移動ネジ64を回すことによって幅方向の位置を調整するので、精度良く目盛り621をあわせることができる。なお、本実施形態の移動ネジ64に係る構成は、第1の実施形態の移動ネジ64にも適用することができる。
【0070】
本発明に係る第5の実施形態の骨切り前処理治具1の内側顆A3用および外側顆A4用の骨切りスケール601,602は、図21を参照して説明する。これらの骨切りスケール601,602は、図21に示すように、マーク70に装着される。骨切りスケール601,602は、大腿骨Aの後方骨切り面Acに沿って骨切りを行った場合に、内側顆A3および外側顆A4がどの程度、切り除されるかを確認するものである。そこで、この実施形態の骨切りスケール601,602は、後方骨切り面Acを基準に骨切り量を計測するように構成されている。
【0071】
この骨切りスケール601,602は、目盛りブロック62と、押さえピース66と、固定具63とを備える。目盛りブロック62は、マーク70に印された骨切り線71を基準にして1mm単位で目盛りが刻まれており、ギャップブロック10側に向かって垂直に延びている。目盛りブロック62の基部625は、楔形に切り込まれている。内側顆A3および外側顆A4側に向かって延びるマーク70の腕部75は、可動本体30に面した側を底辺とする台形の断面形状を有している。楔形に切り込まれた目盛りブロック62の基部625は、このマーク70の腕部75の底面751と一方の斜面752に合致する。押さえピース66は、マーク70の腕部75のもう一方の斜面753に合致するとともに、中央に空けられた貫通孔661を有している。固定具63は、ネジであって、押さえピース66と目盛りブロック62の基部625でマーク70の腕部75を挟みこむように、押さえピース66の貫通孔661を通して目盛りブロック62の基部625のネジ孔626にねじ込まれる。また、骨切りスケール601,602は、内側顆A3用および外側顆A4用で構造上の差は無く、同じ形状のものが使用できる。
【0072】
以上のように構成された骨切り前処理治具1の骨切りスケール601,602は、固定具63を緩めれば、骨切りスケール601,602をマーク70の腕部75に沿って自由にスライド移動させることができる。また、マーク70を基準にしているので、上面11の傾斜角度が異なるギャップブロック10に合わせて調整するために、目盛りブロック62の位置をステム61のガイド612に沿って移動させる必要がない。この実施形態の骨切り前処理治具1は、固定具63を緩めて幅方向に移動させるだけで、内側顆A3および外側顆A4の骨切り量を計測することができる。
【0073】
本発明に係る第6の実施形態の骨切り前処理治具1の内側顆A3用および外側顆A4用の骨切りスケール601,602は、図22を参照して説明する。これらの骨切りスケール601,602は、図22に示すように、ギャップブロック10の上面11と平行に前側に設けられたガイド溝171,172に装着される。ガイド溝171,172は、上面11に平行に設けられるスロットの一例であり、いわゆるTスロットの形状を有している。骨切りスケール601,602は、目盛りブロック62と、アンカーピース67と、固定具63とを備える。目盛りブロック62は、ギャップブロック10の上面11を基準とする目盛り621が1mm単位で印される。具体的には、目盛り621は、罫書き線と5mmごとを印すドットとによって構成される。第5の実施形態の目盛りブロック62と同様に、目盛り621は、目盛りブロック62の側面まで届くように設けられる。目盛りブロック62の基部625は、ガイド溝171,172の開口幅よりも大きく、固定具63が挿通される貫通孔627を有している。また、目盛りブロック62は、上面11の傾斜角度が異なるギャップブロック10であっても基準を合わせ直す必要がない程度に幅が細く作られている。アンカーピース67は、ガイド溝171,172の中に配置され、固定具63のネジと嵌合する。なお、アンカーピース67と固定具63は、どちらか一方が雄ネジで他方が雌ネジであればよい。したがって、アンカーピース67にスタッドボルトを取り付け、固定具63にネジ孔を設け、互いに締結させても良い。またこの骨切りスケール601,602は、第5の実施形態の骨切りスケール601,602と同様に、内側顆A3用および外側顆A4用で構造に差が無く、同じ形状のものを使用できる。
【0074】
以上のように構成された骨切り前処理治具1の骨切りスケール601,602は、目盛りブロック62をガイド溝171,172のどの位置にでも固定することができる。また、固定具63を緩めることで、目盛りブロック62をガイド溝171,172に沿って自由に移動させることができるとともに、固定具63のネジを中心に角度の調整も容易に行える。したがって、ギャップブロック10に対して骨切りスケール601,602を簡単に取り付けたり取り外したりすることができる。また、ギャップブロック10の上面11の傾斜角度が変わっても、その操作性は変わらない。
【0075】
上述の各実施形態に示した骨切り前処理治具1において、同じ機能を有する構成は、他の実施形態の該当する構成と入れ替えて使用することも可能である。また、各構成の形状は、同じ機能を果たす限り、各実施形態で図示した形状に限定されない。
【0076】
例えば、第1、第3、第4の実施形態における骨切りスケール601,602の固定具は、目盛りブロック62の正面側から取り付けるのではなく、側面から取り付けられていても良い。また、第5の実施形態では、マーク70の腕部75を丸棒または角棒にし、骨切りスケール601,602は、目盛りブロック62の基部625に腕部75の断面形状に合わせた貫通孔をもうけて固定具で任意の位置に固定できるようにしても良い。
【0077】
また、マーク70を可動本体30のマーク取付部34に装着する場合、しっかり保持されるようにネジで固定しても良いし、第4の実施形態の移動ネジ64のOリング溝の構造を採用しても良い。さらに、第1の実施形態の骨切りスケール601,602の目盛りブロック62は、ステム61のガイド612に対して移動ネジ64と同様の機構を採用して細かく調整できるようにしても良い。
【0078】
ギャップブロック10は、脛骨近位面Baに対して屈曲位の大腿骨Aを内旋させるように大腿骨Aと脛骨Bとを相対的に位置決めできればよい。したがって、ギャップブロック10は、各実施形態に示したような上面11が傾斜した形に限らず、内側顆後方A33を支持する部分よりも外側顆後方A43を支持する部分が脛骨近位面Baに対して高くなっているものであれば良い。つまり、ギャップブロック10の上面11は、平坦な傾斜面に限らず段差を有していても良い。また、大腿骨Aを内旋させる角度を変化させるために、上面11の傾斜角度11aギャップブロックごと交換するのではなく、内側顆後方A33と外側顆後方A43とを別々に支持する2つのブロックを連結してギャップブロック10を構成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…骨切り前処理治具、10…ギャップブロック、11…上面、12…下面、141,142…スロット、151,152…スロット、171,172…ガイド溝(スロット)、20…ベースプレート、30…可動本体、33…ガイド孔、34…マーク取付部、40…キャリパー、44…目印、50…ギャップスケール、52…目盛り、601,602…骨切りスケール、61…ステム、62…目盛りブロック、621…目盛り、63…固定具、64…移動ネジ、70…マーク、71…骨切り線、72…中央窓、73…内側窓、74…外側窓、A…大腿骨、Aa…大腿骨遠位面、Ab…前方骨切り面、Ab1…近位端、Ac…後方骨切り面、A2…大腿骨遠位、A3…内側顆、A32…内側付着部、A33…内側顆後方、A4…外側顆、A42…外側付着部、A43…外側顆後方、A5…膝蓋面、Ba…脛骨近位面、L1…内側側副靭帯、L2…外側側副靭帯、Lx…通顆軸(トランスエピコンディラアクシス)、K…膝関節、T…人工膝関節、T1…大腿骨コンポーネント、Ta…ペグホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝関節を人工膝関節に置換するために大腿骨遠位の前方骨切り面および後方骨切り面を形成するための骨切りを行う前に使用される骨切り前処理治具であって、
脛骨の機能軸に対して垂直に切断された脛骨近位面に載置され、屈曲位の大腿骨の内側顆後方および外側顆後方に当接し、前記屈曲位の前記大腿骨の前記内側顆後方および前記外側顆後方を通る後顆軸を前記脛骨近位面に対して内旋させた状態に保持するギャップブロック
を備えることを特徴とする骨切り前処理治具。
【請求項2】
前記ギャップブロックは、前記大腿骨に対する内側側副靭帯および外側側副靭帯の付着部を通る通顆軸を前記脛骨近位面に平行にする程度に前記後顆軸を前記脛骨近位面に対して内旋させた状態に保持する
ことを特徴とする請求項1に記載された骨切り前処理治具。
【請求項3】
複数段階に異なるサイズで用意される前記人工膝関節のサイズに応じて決まる前記大腿骨遠位の前方骨切り面の近位端を基準に位置決めされて、前記大腿骨遠位に前記人工膝関節の大腿骨コンポーネントを設置するためのペグホールを穿つ位置を示すガイド孔が設けられた可動本体と、
前記可動本体を位置決めする際に選択した前記人工膝関節のサイズに対応して前記可動本体に設けられるマーク取付部に装着され前記大腿骨遠位の後方骨切り面を表示するマークと、
前記脛骨近位面から前記大腿骨遠位の前記後方骨切り面までの距離を表示する目盛りを有するギャップスケールと、
前記マークによって示された前記後方骨切り面に対して垂直方向に前記内側顆後方および前記外側顆後方までの距離をそれぞれ表示する目盛りを有する骨切りスケールと
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載された骨切り前処理治具。
【請求項4】
前記ギャップブロックに載置される屈曲位の前記大腿骨の機能軸に垂直に前記大腿骨の内側顆および外側顆に形成された大腿骨遠位面に取り付けられるベースプレートと、
前記可動本体に固定されて前記大腿骨遠位の前方を骨切りした場合に形成される前方骨切り面の近位端を指し示すキャリパーと
をさらに備え、
前記可動本体は、前記大腿骨遠位面に平行に前記ベースプレートへスライド嵌合し、
前記骨切りスケールは、前記後方骨切り面から前記内側顆後方までの距離を表示する目盛りを有する内側顆用の骨切りスケールと、前記後方骨切り面から前記外側顆後方までの距離を表示する目盛りを有する外側顆用の骨切りスケールと、を有し、
前記マークは、前記脛骨近位面から前記後方骨切り面までの距離を前記ギャップスケール上に表示し、前記内側顆の後方骨切り量を前記内側顆用の骨切りスケール上に表示し、前記外側顆の後方骨切り量を前記外側顆用の骨切りスケール上に表示する
ことを特徴とする請求項3に記載された骨切り前処理治具。
【請求項5】
前記ギャップブロックは、前記大腿骨遠位の内側上顆に内側側副靭帯が付着する部分および外側上顆に外側側副靭帯が付着する部分を通る通顆軸が前記大腿骨および前記脛骨の前記機能軸に対して回旋している角度に相当する角度分だけ前記脛骨近位面に対して傾斜している上面を有する
ことを特徴とする請求項4に記載された骨切り前処理治具。
【請求項6】
前記可動本体は、前記人工膝関節の前記サイズに一対一に対応させて前記マークを装着するためのマーク取付部を有している
ことを特徴とする請求項3に記載された骨切り前処理治具。
【請求項7】
前記キャリパーは、前記人工膝関節の前記サイズに一対一に対応させて前記可動本体に位置決めするための目印を有している
ことを特徴とする請求項4に記載された骨切り前処理治具。
【請求項8】
前記キャリパーは、
前記外側顆側の前記可動本体の上端に固定されて前記外側顆を回り込んで前記前方骨切り面の近位端に当接する外側用のキャリパーと、
前記内側顆側の前記可動本体の上端に固定されて前記内側顆を回り込んで前記前方骨切り面の近位端に当接する内側用のキャリパーと、
前記外側顆および前記内側顆の間の部分に対向する前記可動本体の中央上端に固定されて前記大腿骨の膝蓋面を前方から越えて前記前方骨切り面の近位端に当接するセンター用のキャリパーと
の中から1つが選択されて取り付けられる
ことを特徴とする請求項4に記載された骨切り前処理治具。
【請求項9】
前記内側顆用の骨切りスケールおよび前記外側顆用の骨切りスケールは、
前記ギャップブロックの下面に対して平行に移動するステムと、
前記目盛りが設けられ前記ギャップブロックの下面に対して垂直に移動可能に前記ステムに装着された目盛りブロックと、
前記目盛りブロックを前記ステムに固定する固定具と
を備えることを特徴とする請求項4に記載された骨切り前処理治具。
【請求項10】
前記ステムは、前記ギャップブロックの下面に対して平行に前記ギャップブロックに設けられたスロットに装着され、
前記内側顆用の骨切りスケールおよび前記外側顆用の骨切りスケールは、前記ステムを前記スロットに沿って移動させる移動ネジをさらに備える
ことを特徴とする請求項9に記載された骨切り前処理治具。
【請求項11】
前記ギャップブロックは、前記上面に対して平行に設けられたスロットを有し、
前記内側顆用の骨切りスケールおよび前記外側顆用の骨切りスケールは、前記スロットに装着されてこのスロットに沿って移動するステムと、前記目盛りが設けられ前記上面および前記下面に垂直な面に沿って回動可能に前記ステムに装着された目盛りブロックと、前記目盛りブロックを前記ステムに固定する固定具と、前記ステムを前記スロットに沿って移動させる移動ネジと、を備える
ことを特徴とする請求項5に記載された骨切り前処理治具。
【請求項12】
前記内側顆用の骨切りスケールおよび前記外側顆用の骨切りスケールは、
前記マークに印された前記後方骨切り面を示す骨切り線に沿って移動可能に前記マークに装着される
ことを特徴とする請求項4に記載された骨切り前処理治具。
【請求項13】
前記マークは、
前記ギャップスケールの目盛りを正面から見せる中央窓と、
前記内側顆用の骨切りスケールの目盛りを正面から見せる内側窓と、
前記外側顆用の骨切りスケールの目盛りを正面から見せる外側窓と
を備える
ことを特徴とする請求項4に記載された骨切り前処理治具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate