説明

人工透析液又は人工透析用水の清浄化方法

【課題】人工透析液又は人工透析用水中の細菌由来のDNA断片(ODN)を、簡単な設備、操作で効率よく除去できる方法、及び細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置を提供する。
【解決手段】人工透析液又は人工透析用水中の細菌由来のDNA断片を、合成吸着材、逆相シリカゲル系吸着材、多孔質シリカ、ゼオライト、活性炭及び陰イオン交換樹脂から選択された多孔質吸着材により除去する。細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置は、合成吸着材、逆相シリカゲル系吸着材、多孔質シリカ、ゼオライト、活性炭及び陰イオン交換樹脂から選択された多孔質吸着材を充填した吸着層を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液透析治療に用いられる人工透析液又は人工透析用水の清浄化方法、より詳しくは人工透析液又は人工透析用水中の細菌由来のDNA断片を特定の多孔質吸着材により除去する人工透析液又は人工透析用水の清浄化方法、細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置、及び前記細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置を用いた清浄化された人工透析液又は人工透析用水の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析治療においては、近年、合併症改善のために有効であることから血液透析濾過治療(HDF)法が用いられるようになっている。その理由は、透析合併症として最もポピュラーな透析アミロイド症のアミロイド構成蛋白質が分子量11800のβ2ミクログロブリンであることが分かり、このような低分子量蛋白質を血液中から積極的に除去するために高性能膜透析器(HPM)を用いたHDF法が有効であることが臨床成績から明らかになってきたからである(非特許文献1参照)。
【0003】
また、高性能膜透析器(HPM)は、HDFだけでなく、通常の透析(HD)治療においても、中分子量物質、低分子量蛋白の血中蓄積を防ぐために使用されることが多くなっている。
【0004】
しかし、一方で、HPMを使用した場合には、人工透析液中の生物学的汚染物質(細菌、エンドトキシン)が膜を通過して血液中に流入する懸念も生じたため、菌やエンドトキシンの汚染のない人工透析液清浄化が人工透析の現場では強く求められてきている。
【0005】
特に、オンライン(on-line)HDF(体内に注入する補液に人工透析液をそのまま用いる)と称されるHDF治療においては、患者体内に人工透析液が大量に注入されるため、非常に高レベルの非汚染性人工透析液が必要であるとされ、その品質規格をISOで規定しようとする動きも活発化している。
【0006】
現在、これらの問題に対処するため、透析治療の現場では、人工透析用水の清浄化、人工透析システムの殺菌洗浄などと共に、人工透析液末端にエンドトキシンカットフィルター(ETRF)を付設して、透析器直前で菌やエンドトキシンを濾過除去する方法が採られている。しかし、ETRFにより菌やエンドトキシンは除去されるが、このETRFによっても除去しきれない物質の存在が指摘されるようになり、その一つとして、細菌由来のDNA断片が有力視されるようになってきた。DNA断片が人工透析液中に存在し、透析膜を通過しうるほどの低分子量成分を含むことも明らかにされた。同時に、細菌由来のCpG部位(motifs)を有するDNA断片はサイトカイン産生を誘導することが確認され(非特許文献2、3参照)、種々の合併症やアミロイド症構成蛋白のβ2ミクログロブリン生成に関与することが濃厚と考えられている。ETRFによっても、人工透析用水或いは人工透析液中のDNA断片は除去されず、DNA断片の有効な除去技術の開発が課題であった。
【0007】
特表2008−534274号公報(特許文献1)には、液体及び/又は液体媒質からエンドトキシン及びバクテリアのDNA及び/又はDNA断片を含むサイトカイン誘起物質(CIS)を除去する膜として、a)骨格内に硫黄を含有する少なくとも1つの疎水性ポリマーと、b)少なくとも1つの親水性かつ非荷電のポリビニルピロリドンのホモポリマーと、c)カチオン電荷を含んだ少なくとも1つのポリマーとを含むポリマーブレンドからなる限外濾過膜であって、100,000g/molを下回る名目カットオフ値を持つ限外濾過膜が開示されている。しかし、この技術は、3種類ものポリマーを組み合わせて限外濾過膜を製造する必要があり、コストが高く付くだけでなく、膜の再生が煩雑となる等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2008−534274号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】久野勉、透析液清浄化と臨床効果、Clinical Engineering, Vol19, No.8, 892-897, 2008
【非特許文献2】J. Am. Soc. Nephrol, 15(2), 3207-3214, 2004
【非特許文献3】Nephrol Dial Transplant, 24, No2, 548-554, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、人工透析液又は人工透析用水中の細菌由来のDNA断片を簡単な設備、操作で効率よく除去できる方法及び浄化装置、並びに該浄化装置を用いた清浄化された人工透析液又は人工透析用水の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、人工透析液又は人工透析用水を特定の吸着材を通過させると、膜を透過させなくても、簡単な設備及び操作で、人工透析液又は人工透析用水中の細菌由来のDNA断片を効率よく除去できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、人工透析液又は人工透析用水中の細菌由来のDNA断片を、合成吸着材、逆相シリカゲル系吸着材、多孔質シリカ、ゼオライト、活性炭及び陰イオン交換樹脂から選択された少なくとも1種の多孔質吸着材により除去することを特徴とする人工透析液又は人工透析用水の清浄化方法を提供する。
【0013】
本発明は、また、合成吸着材、逆相シリカゲル系吸着材、多孔質シリカ、ゼオライト、活性炭及び陰イオン交換樹脂から選択された少なくとも1種の多孔質吸着材を充填した吸着層を備えた、細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置を提供する。
【0014】
本発明は、また、人工透析液又は人工透析用水を前記の細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置を通過させる工程を含む清浄化された人工透析液又は人工透析用水の製造法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、人工透析液又は人工透析用水中に含まれる細菌由来のDNA断片を、膜濾過によることなく、簡単な設備、操作で効率よく除去できる。このため、人工透析患者の合併症の発症の低減に大きく寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置の、人工透析液又は人工透析用水製造工程における設置場所の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の人工透析液又は人工透析用水の清浄化方法では、人工透析液又は人工透析用水中の細菌由来のDNA断片を、合成吸着材、逆相シリカゲル系吸着材、多孔質シリカ、ゼオライト、活性炭及び陰イオン交換樹脂かから選択された少なくとも1種の多孔質吸着材により除去する。また、本発明の細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置は、合成吸着材、逆相シリカゲル系吸着材、シリカ、ゼオライト、活性炭及び陰イオン交換樹脂から選択された少なくとも1種の多孔質吸着材を充填した吸着層を備えている。さらに、本発明の清浄化された人工透析液又は人工透析用水の製造法では、人工透析液又は人工透析用水を前記の細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置を通過させる工程を含む。
【0018】
人工透析液又は人工透析用水中の細菌由来DNA断片としては、CpG部位(motifs)を有するDNA断片、例えば、ATC GAC TCT CGA GCG TTC TC の配列を有するDNA断片が挙げられる。この細菌由来DNA断片(ヌクレオチド)の分子量は、例えば500〜10000、特に800〜7000程度である。
【0019】
本発明において、多孔質吸着材とは、細孔構造を有する比表面積が20m2/g以上、好ましくは50m2/g以上の吸着材をいい、膜を含まない。多孔質吸着材の細孔の大きさ(平均細孔径)は、例えば、20〜2000Å、好ましくは30〜1000Å程度である。多孔質吸着材の細孔容積は、例えば、0.3〜1.5mL/g、好ましくは0.5〜1.3mL/gである。多孔質吸着材の形状としては、粒状、粉末状、繊維状、板状、ハニカム状等が挙げられる。多孔質吸着材が粉粒状の場合、その平均粒径は、例えば、10〜1000μm、好ましくは30〜500μm程度である。
【0020】
前記合成吸着材としては、細孔構造を有する多孔合成吸着材(合成高分子吸着材)、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリロニトリル−ジビニルベンゼン共重合体などが挙げられる。なお、いわゆるイオン交換樹脂は合成吸着材には含まれない。合成吸着材の比表面積は、例えば、100〜2000m2/g、好ましくは300〜1000m2/g程度である。合成吸着材の細孔径は、最頻度直径として、例えば100〜2000Å、好ましくは200〜1000Å程度である。
【0021】
前記逆相シリカゲル系吸着材としては、例えば、シリカゲル表面のケイ素原子に、オクタデシル基、オクチル基、フェニルエチル基、ナフチルエチル基、ピレニルエチル基、ニトロフェニルエチル基、ペンタブロモベンジルオキシエチル基などのアルキル基やアラルキル基が結合したシリカゲル系吸着材が挙げられる。
【0022】
多孔質シリカとしては、例えば、比表面積が50m2/g以上(例えば、50〜3000m2/g)、好ましくは100m2/g以上(例えば、100〜3000m2/g)程度の多孔質シリカが挙げられる。
【0023】
ゼオライトとしては、天然ゼオライト、合成ゼオライトのいずれであってもよい。ゼオライトとしては、例えば、A型ゼオライト、フェリエライト、ZSM−5、ZSM−11、モルデナイト、ベータ、X型ゼオライト、Y型ゼオライトなどを使用できる。
【0024】
活性炭としては、従来の多孔性炭素質吸着剤として知られているものを使用することができる。これらの活性炭は、主に、石炭、コークス、ピッチ等の鉱物由来の天然炭素質(石炭系、石油系)、木炭、ヤシ殻・木材、ノコギリくず、リグニン等の植物由来の天然炭素質、牛の骨等の動物由来の天然炭素質、フェノール樹脂やポリアクリロニトリルなどの合成樹脂等の有機高分子、煤等の炭素質物質を熱処理により炭化させ、それを賦活させて得ることができる。賦活法には、水蒸気賦活法、ガス賦活法、薬品賦活法等がある。活性炭の比表面積は、例えば100m2/g以上、好ましくは500m2/g以上、さらに好ましくは900m2/g以上のものであり、通常上限は4000m2/g程度である。活性炭の細孔径は、平均細孔径として、例えば50〜1000Å、好ましくは150〜600Å程度である。
【0025】
陰イオン交換樹脂としては、架橋ポリスチレン構造にトリメチルアンモニウム基等の4級アンモニウム塩基を有する強塩基性陰イオン交換樹脂、架橋ポリスチレン構造にジメチルアミノ基等の1〜3級のアミン又はポリアミンを有する弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いることができる。陰イオン交換樹脂としては、粒子内に多孔構造を有するポーラス型、ハイポーラス型のものを使用できる。これらの中でも、ハイポーラス型が好ましい。また、陰イオン交換樹脂に陽イオン交換樹脂を混合したイオン交換樹脂混合体を使用してもよい。陰イオン交換樹脂は人工透析液から細菌由来のDNA断片を除去するのに用いることもできるが、人工透析液中には無機イオンが多く存在するので、DNA断片の吸着除去効率が低下しやすい。そのため、陰イオン交換樹脂は、無機イオンを含まない人工透析用水から細菌由来のDNA断片を除去するのに特に適している。
【0026】
本発明の人工透析液又は人工透析用水の清浄化方法では、合成吸着材、逆相シリカゲル系吸着材、多孔質シリカ、ゼオライト、活性炭及び陰イオン交換樹脂から選択された1種の多孔質吸着材を、単独で使用してもよいし、複数の吸着材を組合せ混合して使用してもよい。
【0027】
これらの多孔質吸着材の中でも、吸着性能、取扱性、コスト等の観点から、合成吸着材、活性炭が好ましく、合成吸着材の中でもスチレン−ジビニルベンゼン共重合体が特に好ましい。人工透析液又は人工透析用水をこれらの多孔質吸着材で処理すると、人工透析液又は人工透析用水中の細菌由来のDNA断片が多孔質吸着材の表面に疎水吸着することで効率よく除去することができる。
【0028】
細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置において、多孔質吸着材は、通常、ガラス製、金属製、プラスチック製のカラム等の容器に充填され吸着層を形成した形態で使用される。交換が容易なカートリッジ型(吸着カートリッジ)としてもよい。また、イオン交換樹脂を用いる場合は、前記のカートリッジ型としてもよいし、電気再生式のイオン交換装置等のイオン交換室内に充填して使用してもよい。吸着層には、菌の増殖を防止するため、吸着材とともに抗菌材を添加してもよい。抗菌材としては、例えば、抗菌作用のある金属イオン(銀、銅など)を焼結したセラミック、合成ゼオライト、キチン・キトサンなどを用いることができる。
【0029】
また、細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置において、人工透析液又は人工透析用水を前記の多孔質吸着材からなる吸着層を通過させる際の人工透析液又は人工透析用水の供給量(流量)は、細菌由来DNA断片の含有量や浄化装置の設置場所等により異なるが、空間速度(SV)として、例えば1〜300h-1、好ましくは10〜100h-1程度である。
【0030】
図1は本発明の細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置の、人工透析液又は人工透析用水製造工程での設置箇所の一例を示す説明図である。1は原水、2は軟水化装置/活性炭処理装置、3は逆浸透膜処理装置(RO装置)、4はRO水タンク、5は限外濾過膜装置(UF膜)、6はAパウダー溶解装置(A溶解装置)、7はBパウダー溶解装置(B溶解装置)、8は多人数用人工透析液供給装置(多人数用供給装置)、9〜14は個々の人工透析装置(コンソール)である。Xで示す箇所(細線矢印)は、本発明の細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置の設置箇所である。本発明の細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置は、例えば、図1のXで示す1又は2以上の適宜な箇所に設置できる。
【0031】
より具体的には、本発明の細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置は、RO装置前処理用、RO装置用(RO装置の出口側)、多人数用人工透析液供給装置用(多人数用人工透析液供給装置出口側)、A・Bパウダー溶解装置用(A・Bパウダー溶解装置入口側)、コンソール用(コンソールの人工透析液入口側)として好ましく使用できる。
【0032】
本発明の細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置は、ETRFと共に用いることができる。その場合、ETRFの上流側、下流側のいずれの側に設けてもよい。また、ETRF容器内に本発明の吸着材を充填してもよい。ETRFとしては、例えば、限外濾過膜等を使用できる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例では、細菌由来DNA断片として、ATC GAC TCT CGA GCG TTC TC の配列を有するDNA断片(分子量6044)を用いた。また、用いた人工透析液の組成は、塩化ナトリウム1.07×10-1mol/L、塩化カリウム2.00×10-3mol/L、塩化カルシウム2水塩1.50×10-3mol/L、塩化マグネシウム6水塩5.00×10-4mol/L、酢酸ナトリウム8.00×10-3mol/L、酢酸2.22×10-3mol/L、ブドウ糖5.55×10-3mol/L、炭酸水素ナトリウム2.50×10-2mol/Lである。また、超純水は、商品名「MiliQ」(ミリポア社製)で調製したものを用いた。DNA断片の分析は、分光光度計により定量した(UV260nmの吸光度測定;装置:HITACHI U−3300 分光光度計、UVセル光路長:45mm、測定波長:260nm)。前記DNA断片の10重量ppm人工透析液溶液の吸光度(260nm)は1.516であった。
【0034】
実施例1(バッチ実験)
吸着材として、スチレンジビニルベンゼン架橋物(合成吸着材;商品名「ダイヤイオンHP20」、三菱化学社製、粒径:有効径250μm以上、比表面積590m2/g、細孔径:最頻度半径260Å)をメタノール、超純水、人工透析液の順で洗浄し、No.1濾紙で濾過して使用した。
DNA断片の10重量ppm人工透析液溶液18.4mLをビーカーに採取し、この溶液に前記吸着材(人工透析液湿潤状態5g;乾燥重量2.5g)を添加し、スターラーで撹拌し、所定時間毎にサンプリングして、UV260nmの吸光度測定を行った。その結果、約7分後に、ほぼ全量のDNA断片が吸着材に吸着した。
【0035】
実施例2(バッチ実験)
吸着材として、活性炭(商品名「太閤S」、二村化学社製、平均粒径:35μm、比表面積1700m2/g、平均細孔直径:45Å)をメタノール、超純水、人工透析液の順で洗浄し、0.45μm液クロフィルターで濾過して使用した。
DNA断片の10重量ppm人工透析液溶液18.4mLをビーカーに採取し、この溶液に前記吸着材(人工透析液湿潤状態5g;乾燥重量2.5g)を添加し、スターラーで撹拌し、所定時間毎にサンプリングして、UV260nmの吸光度測定を行った。その結果、約10分後に、ほぼ全量のDNA断片が吸着材に吸着した。
【0036】
実施例3(バッチ実験)
吸着材として、シリカゲルのC8疎水処理化物(SPW−B−C8、商品名「LC−SORB」、ケムコ社製、粒径:40〜63μm、比表面積100m2/g、孔径:300Å)をメタノール、超純水、人工透析液の順で洗浄し、No.1濾紙で濾過して使用した。
DNA断片の10重量ppm人工透析液溶液18.4mLをビーカーに採取し、この溶液に前記吸着材(人工透析液湿潤状態5g;乾燥重量2.5g)を添加し、スターラーで撹拌し、所定時間毎にサンプリングして、UV260nmの吸光度測定を行った。その結果、瞬時にほぼ全量のDNA断片が吸着材に吸着した。
【0037】
実施例4(カラム実験)
カラム(7.5mm内径×100mm長さ)に、吸着材として、シリカゲルのC8疎水処理化物(SPW−B−C8、商品名「LC−SORB」、ケムコ社製、粒径:40〜63μm、比表面積100m2/g、孔径:300Å)1.77gを充填した。吸着材をメタノール、超純水、人工透析液の順に洗浄した。ペリスタポンプを用いて、2mL/分(SV=30)の流速でDNA断片10重量ppm人工透析液溶液18.5mLを送液した。カラム流出液をサンプリングして、前記と同様にして、UV260nmの吸光度測定を行った。その結果、すべての流出液で、260nmの吸光度は0.02より小さかった。
【0038】
実施例5(カラム実験)
カラム(7.5mm内径×100mm長さ)に、吸着材として、スチレンジビニルベンゼン架橋物(合成吸着材;商品名「ダイヤイオンHP20」、三菱化学社製、粒径:有効径250μm以上、比表面積590m2/g、細孔径:最頻度半径260Å)2.5gを充填した。吸着材をメタノール、超純水、人工透析液の順に洗浄した。ペリスタポンプを用いて、2mL/分(SV=30)の流速でDNA断片10重量ppm人工透析液溶液18.5mLを送液した。カラム流出液をサンプリングして、前記と同様にして、UV260nmの吸光度測定を行った。その結果、DNA断片の除去率は75%であった。
【0039】
実施例6(カラム実験)
カラム(7.5mm内径×100mm長さ)に、吸着材として、陰イオン交換樹脂(強塩基性イオン交換樹脂、商品名「ダイヤイオンHPA25」、三菱化学社製、粒径:有効径250μm以上)2.00gを充填した。吸着材を0.1N NaOH500mLで5時間、超純水で1時間(500mL×3回)洗浄した。ペリスタポンプを用いて、2mL/分(SV=30)の流速でDNA断片10重量ppm人工透析液溶液18.5mLを送液した。カラム流出液をサンプリングして、前記と同様にして、UV260nmの吸光度測定を行った。その結果、すべての流出液で、260nmの吸光度は0.02より小さかった。
【符号の説明】
【0040】
1 原水
2 軟水化装置/活性炭処理装置
3 逆浸透膜処理装置(RO装置)
4 RO水タンク
5 限外濾過膜装置(UF膜)
6 Aパウダー溶解装置(A溶解装置)
7 Bパウダー溶解装置(B溶解装置)
8 多人数用人工透析液供給装置(多人数用供給装置)
9〜14 個々の人工透析装置(コンソール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工透析液又は人工透析用水中の細菌由来のDNA断片を、合成吸着材、逆相シリカゲル系吸着材、多孔質シリカ、ゼオライト、活性炭及び陰イオン交換樹脂から選択された少なくとも1種の多孔質吸着材により除去することを特徴とする人工透析液又は人工透析用水の清浄化方法。
【請求項2】
合成吸着材、逆相シリカゲル系吸着材、多孔質シリカ、ゼオライト、活性炭及び陰イオン交換樹脂から選択された少なくとも1種の多孔質吸着材を充填した吸着層を備えた、細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置。
【請求項3】
人工透析液又は人工透析用水を請求項2記載の細菌由来DNA断片除去用人工透析液又は人工透析用水浄化装置を通過させる工程を含む清浄化された人工透析液又は人工透析用水の製造法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−279461(P2010−279461A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133696(P2009−133696)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】