説明

人形の関節

【課題】関節部の美観を損なわず、かつ、関節部を深い屈曲角度に屈曲させることが可能な関節部を提供する。
【解決手段】人形の胴体に連結される第一部材7と、該第一部材7の端部に関節部1を介して屈曲可能に連結される第二部材8とで構成される棒状部材における関節部であって、関節部は、一端側関節部と、他端側関節部と、一端側関節部と前記他端側関節部を回転可能に連結する一対の連結部とからなり、連結部は、一端側軸機構と、一端側角度規制機構と、一端側軸機構と平行に所定距離離間した他端側軸機構と、他端側関節部の回転角度を規制する他端側角度規制機構と、各機構を被覆し、関節部の伸長状態から屈曲状態において、前記第一部材の端部及び第二部材の端部と一体となった外観をなす一対の曲面部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形の関節に関し、より詳細には、胴体から延出される棒状部材の中間に配される関節部に関する。
なお、本明細書において、人形とは、胴体と脚部と腕部と頭部を備え、人間や動物など生き物の身体形状を模写した人形、怪獣やロボットなどの外観形状を模写した人形全般に限らず、頭部を備えていない、いわゆる人形用素体といわれるものをも含む概念とする。また、手足、腰などの所要箇所が可動自在に構成されている、いわゆる可動人形の全てが対象とされる。また、可動人形には、所要可動箇所に別途関節部を設けているものや、関節部を設けず一体に成形されているが膝・肘などの所要箇所にて屈曲可能に構成されているものなど公知のもの全てが対象とされる。
また、「胴体」は人形の腕部と脚部と頭部を除いた部分とされるが、本明細書では、胴体は頭部を備える概念とし、「棒状部材」は該胴体に突出して取り付けられている腕部や脚部であるが、尾やその他触角等胴体から棒状に突出して取り付けられている部材の全てを含む概念とする。
また、「上脚」とは、脚の付け根(腰部股間位置との連結部)から膝上までの範囲をいい、「下脚」とは、膝下から足首までの範囲をいうものとする。
【背景技術】
【0002】
昨今の人形業界において、特にフィギュアと称される人間の身体(裸体)形態を忠実に模写した構成を有する人形が需要者に人気を得ている。
このフィギュアなる人形は、一般に女児等が手に持って遊んだり、単に着せ替えをして遊んだりすることもあるが、昨今のフィギュア需要者層も変化し、特に男性女性を問わず成人の需要者も多くなってきている。また、前記人形用素体に思い思いの頭部を装着し、様々な衣装を着せたカスタムドールと呼ばれるオリジナルの人形を作成して、その人形にポーズをとらせて写真撮影した画像を公開するような遊び方が認知されつつある。
そのような愛好者はポージングを重要視し、腕や脚の関節が人間のようにリアルに可動することを望む傾向があり、特にポージングを重要視するような需要者は、より深みのある表現をするために、腕や肘の可動範囲の自由度を重要視し、特に、腕や膝の関節を鋭角に屈曲させることが可能であるかどうかは重大な関心事となっている。
【0003】
従来から人形の腕部の肘関節や脚部の膝関節として球状関節が周知であり、例えば、膝関節の関節構造は、一対の半球状の関節部からなり、該関節部は上脚と下脚の一端部にそれぞれ接続され、一方の半球状の関節部は円形平面の円心に回転軸を有し、他方の半球状の関節部の円形平面の円心には該回転軸が摺動可能に嵌合する凹部を有し、前記円形平面の円心同士が回転軸によって回転自由に連結され、上脚と下脚は前記回転軸を回転中心として屈曲回転が可能となっている。
そして、上脚と下脚はどのような屈曲位であっても前記回転軸を回転中心として回動するので、前記球状関節部は常に球状の外観を保つことができ、人形の上脚と下脚が球状体で接続されていることから、脚部の外観が美しく見えるという利点がある。
ところが、前記球状関節部を屈曲させた場合には、上脚と下脚がおおよそ90度程度屈曲した位置で上脚の下端部後面と下脚の上端部後面が当接してそれ以上の屈曲を阻害する。従って、前記上脚の下端部後面と下脚の上端部後面が当接したときの屈曲角度が最大屈曲角度となるという欠点があり、その結果、人形の脚部には該最大屈曲角度以上の屈曲位を与えることができず、人形のポージングに制約が生じるという問題があった。
【0004】
上記の欠点を解消して肘や膝の関節の屈曲角度を大きくする技術的解決手段として、本発明者は特許文献1に開示されるような脚部の膝関節部に備えられる2重関節部を提供している。
特許文献1の2重関節部は、両端に円盤状の連結片を有する膝本体の、該両端の連結片がそれぞれ上脚下端の二股状の挟持部と下脚上端の二股上の挟持部とに可動自在に軸結合する構成であって、膝本体は両端の軸結合部が夫々回動して膝関節を屈曲することができる。このような構成による2重関節は、下脚側の軸結合部の回転中心は、上脚側の軸結合部の回転中心から膝本体の上脚側の軸結合部と下脚側の軸結合部との距離だけ離間した位置を回転中心として回動する。従って、膝本体の上脚側の軸結合部を略90度屈曲させると下脚側の軸結合部は膝の後方で屈曲するようになるので、上述した球状関節と比べて上脚後面下端と下脚後面上端は当接し難くなり、大きな最大屈曲角度を得ることが可能となる。
【特許文献1】特開2004−121494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されているような2重関節部は脚部の最大屈曲角度を大きくするという課題は解決したが、前屈方向にも曲がってしまい、人形のポージングにおいてリアリティーに欠けてしまうという課題が残った。
さらに、2重関節部が脚部の外部に露出しているので、美観の点においても課題が残った。
本発明は、このような課題を解消するためになされ、深い屈曲角度に屈曲させることが可能であり、かつ、関節の美観を保った関節部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために第1の発明がなした技術的手段は、人形の胴体に連結される第一部材と、該第一部材の端部に関節部を介して屈曲可能に連結される第二部材とで構成される棒状部材における前記関節部であって、該関節部は、前記第一部材と第二部材のいずれか一方に備えられる一端側関節部と、他方に備えられる他端側関節部と、前記一端側関節部と前記他端側関節部を回転可能に連結する一対の連結部とからなり、前記連結部は、一端側関節部と組み合わされて、一端側関節部を回転可能に軸支する一端側軸機構を構成するとともに、一端側関節部の回転角度を規制する一端側角度規制機構と、他端側関節部と組み合わされて、前記一端側軸機構と平行に所定距離離間して他端側関節部を回転可能に軸支する他端側軸機構を構成するとともに、他端側関節部の回転角度を規制する他端側角度規制機構と、少なくとも前記一端側軸機構と他端側軸機構及び一端側角度規制機構と他端側角度規制機構を被覆し、関節部の伸長状態から屈曲状態において、前記第一部材の端部及び第二部材の端部と一体となった外観をなす一対の曲面部を含むことを特徴とする人形の関節部としたことである。その一端側角度規制機構及び他端側角度規制機構は、第一部材に対して第二部材を前屈させないように回転角度を規制する場合もある。
さらに、前記一対の曲面部のうち、少なくとも一方の曲面部が一方の連結部と一体に形成されていても良い。その一対の曲面部と一対の連結部は、一方の曲面部が一方の連結部と一体に形成され、他方の曲面部が他方の連結部と一体に形成されていても良い。
【0007】
また、上記構造を備えた関節部において、一端側関節部は、円板状の一端側連結板を備え、一端側軸機構は、該一端側連結板の回転中心と一対の連結部とのいずれか一方に備えられる一端側回転軸と、他方に備えられ、該一端側回転軸と摺嵌して組み合わされる一端側軸孔とで構成され、一端側角度規制機構は、一端側連結板の円板面と一対の連結部とのいずれか一方に備えられ、一端側回転軸を中心に所定角度の範囲で形成された周溝と、他方に備えられ、該周溝と摺動可能に嵌合して組み合わされる一端側角度規制ピンとで構成され、他端側関節部は、少なくとも前記一端側連結板の板厚の間隔で平行に配された一対の他端側連結板を備え、他端側軸機構は、該一対の他端側連結板間の間隔によって分割されて同軸上に配され、分割された両端側において、それぞれ、他端側連結板の回転中心と連結部とのいずれか一方に備えられる他端側回転軸と、他方に備えられ、該他端側回転軸と摺嵌する他端側軸孔とで構成され、他端側角度規制機構は、他端側連結板の所定角度前屈状態で、前記一端側軸機構と、該一端側軸機構と当接する他端側連結板の前屈当接部で構成されていても良い。
なお、関節部は人形の脚部を形成する棒状部材に備えられていても良いし、人形の腕部を形成する棒状部材に備えられていても良い。
あるいは、上記いずれかに記載の関節部が少なくとも脚部を形成する棒状部材に備えられていることを特徴とする人形としても良いし、少なくとも腕部を形成する棒状部材に備えられていることを特徴とする人形としても良い。また、上記いずれかに記載の関節部は、第二部材の中心軸と、第一部材の中心軸とが、横方向にずれている場合もある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大きな最大屈曲角度と関節部の美観とを兼ね備えた関節部を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の一実施形態について説明する。なお、本実施形態は、本発明の一実施形態にすぎず、本発明は人形に備えられている棒状部材の関節構造部分に特徴的な構成を有しているものであるため、関節部以外の人形の構成要件についてはなんら限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で設計変更可能である。
なお、図示する本実施形態では、フィギュアと称される人形で、特に頭部(顔部)を有していない、いわゆる可動人形用素体を一実施形態としているが、何等これに限定して解釈されるものではなく、頭部を有している人形も本発明の範囲内である。すなわち、本発明は、胴体に取り付けられる棒状部材を有し、該棒状部材に関節構造を備えている一般に人形と称される範疇のものの全てを対象とし、例えば人間の男性・女性を模写した人形に限らず、動物や空想上の生物若しくはロボットなどを模写した人形であってもよい。
【実施例1】
【0010】
本実施例では、図1及び図16に示すように、人形の胴体に取り付けられている脚部を棒状部材の一例として挙げ、該脚部は、図示しない胴体の股間部に可動自在に取り付けられる第一部材7と、該第一部材7に取り付けられる第二部材8と、前記第一部材7と第二部材8の間で、該第一部材7と第二部材8を回転可能に連結する関節部1とで構成されている。
なお、以下の説明において、前記第一部材7を上脚7と称し、第二部材8を下脚8と称する。
【0011】
上脚7は、例えば、人間の上脚部分を忠実に模写した外観を有する中空棒状に形成するとともに、上端側を胴体の股間部に可動自在に連結する図示しない連結構造を備え、下端側は、後述する関節部1を構成する他端側関節部3が着脱可能に嵌め込まれる上脚側嵌合孔部71を設けて構成されている。
【0012】
下脚8は、例えば、人間の下脚部部分を忠実に模写した外観を有する中空棒状に形成するとともに、下端側を足部と可動自在に連結する図示しない連結構造を備え、上端側は、後述する関節部1を構成する一端側関節部2が着脱可能に嵌め込まれる下脚側嵌合孔部81を設けて構成されている。
なお、人形の脚部の関節部は、右脚と左脚で左右対称の同一構造をもっているので、以下には、人形の左脚の関節部を説明し、右脚の関節部の説明は省略する。
【0013】
関節部1は、例えば本実施例では、上脚7の下端側に備えられる一端側関節部2と、下脚8の上端側に備えられる他端側関節部3と、前記一端側関節部2と前記他端側関節部3を回転可能に連結する一対の連結部で構成され、この連結部が、一端側関節部2と他端側関節部3とを連結することにより、前記上脚7と下脚8が回転可能に連結されて棒状の脚部が構成される。
なお、以下、一端側関節部2を上脚側関節部2と称し、他端側関節部3を下脚側関節部3と称して説明する。
【0014】
上脚側関節部2は、本実施例では、図2及び図6〜図14に示すように、前記上脚7の上脚側嵌合孔部71に着脱自在に嵌合可能な上脚側支持軸部21と、該上脚側支持軸部21の反嵌合側の端面に一体的に接続されて形成されている円形状の一端側連結板(以下、上脚側連結板という)22とで構成されている。なお、本実施例において、上脚側支持軸部21と上脚側連結板22とは、同一材料をもって一体に形成されている。
【0015】
上脚側支持軸部21は、例えば本実施例では、前記上脚の上脚側嵌合孔部71(図2中破線部分参照)に嵌合可能な外径を有する円柱状に形成されている。
また、その全長は特に限定されず、前記上脚側嵌合孔部71に嵌合されて容易に脱落しない程度の嵌合長さを有していればよい。また、本実施例では円柱状に形成された実施の一例を示すが、上脚側支持軸部21は、上脚側嵌合孔部71に着脱自在に嵌合可能な外観形状、例えば角柱状などの所定形状を有するものであっても本実施例の範囲内である。さらに、上脚側支持軸部21を二股状などに形成し、その弾性に抗して上脚側嵌合孔部71に嵌め込む構成とすることにより、その弾性で強固に嵌合される構成とすることも可能である。なお、本実施例では、中空でない柱状構成を採用しているが、中空の筒状構成を採用することも勿論可能である。
【0016】
上脚側連結板22は、所定の厚み(寸法D1参照)をもった円形板に形成され、その外周面22aの一部が、前記上脚側支持軸部21の反嵌合側の端面24に、該端面24と垂直かつ円形板の円心26が上脚側支持軸部21の軸心線28上に重なるように一体的に接続されて形成されている(図2(a)参照)。
そして、上脚側連結板22には、その円形板の円心であって表面裏面に対して垂直に貫通する軸孔29が設けられている。さらに、上脚側連結板22には、その円形板の外周22aに近い領域であって、その軸孔29を中心に所定角度θ1の範囲で周溝25が設けられている。
【0017】
なお、本実施例では周溝25は、その円形板の表裏の円形面に対して垂直に貫通した周方向長孔25として形成されている。また、所定角度θ1の範囲として、本実施例では、上脚側支持軸部21の軸心線28上に位置する一端25aから上脚の後ろ方向(図2(a)中の左方向)の他端25bまで略55度の範囲で形成されている。なお、本実施例では、角度θ1は、周方向長孔25を上脚側支持軸部21の軸心線28に対して後ろ方向に略55度の範囲をもって形成したが、周方向長孔25が形成される向きや角度はこれに限定されるものではなく、本発明の特徴を逸脱しない限りにおいて自由に設計変更可能である。
【0018】
下脚側関節部3は、本実施例では、図3及び図6〜図14に示すように、前記下脚8の下脚側嵌合孔部81に着脱自在に嵌合可能な下脚側支持軸部31と、該下脚側支持軸部31の反嵌合側に一体的に接続されて形成されている一対の他端側連結板(以下、下脚側連結板という)32,33で構成されている。
なお、本実施例において、下脚側支持軸部31と、一対の下脚側連結板32,33は、同一材料をもって一体に形成されている。
下脚側支持軸部31は、例えば本実施例では、前記下脚8の下脚側嵌合孔部81に嵌合可能な外径を有する円柱状に形成されている。そして、下脚側支持軸部31の反嵌合側の端部(以下、上端部という)34には、延設部36が前記上端部34から前方側の斜め上方(図3(a)中の矢印方向)に向けて一体に形成されている。
【0019】
延設部36の前方側(同図中の右側)は、所定の中心37からなる円弧による凸曲面36bに形成されている。
延設部36の後方側(同図中の左側)は、下脚側支持軸部31に向け、斜め後方の下向きになだらかに下降した凹曲面36cが形成されている。さらに、該凹曲面36cの後端36dでは、該下脚側支持軸部31から後方側に向けて斜め上方に上り傾斜で張り出した上り傾斜面36fと前記凹曲面36cが接合している。なお、その接合位置は、下脚側支持軸部31よりも後方側に突出している。
なお、延設部36の凹曲面36cは、下脚側関節部3が取り付けられる第二部材8の後ろ側の曲面形状、すなわち、脹脛の膨らみの延長となるような曲面に形成されている。
【0020】
延設部36の上端面36aは、図3(d)に示すように、前記上脚側連結板22の外周22aと同じ円心26を有するとともに、外周22aよりも僅かに大径の曲面を形成している。これにより、上脚側連結板22(図3(d)中の破線参照)を前方側の斜め上方に所定距離離間させて組み合わせて該上脚側連結板22を回転させた場合であっても、延設部36の上端面36aの曲面と上脚側連結板22が衝突しない。
【0021】
さらに、延設部36の中心線38aと下脚側支持軸部31の中心線38bは、横方向(本実施例では、図中右側)にずれを有している(図3(b)中の寸法D2参照)。
従って、延設部36は、片側の横方向(垂直方向と直交する方向)に張り出して形成されるとともに、延設部36の突出した側面36gは、前記下脚側支持軸部31から図中D6の寸法で突出して、凸曲面36bの下端が段差部36eを形成している。
【0022】
下脚側連結板32,33は、前記延設部36の上端面36aから上方に向けて延出するとともに、前記上脚側連結板22の板厚(図2(c)及び図3(b)中の寸法D1参照)の間隔で平行に配置された板状部材である。なお下脚側連結板32,33は互いに相似形状に形成されている。また、下脚側連結板32,33の厚さは同厚(寸法D3参照)に形成されている。
下脚側連結板32,33の前方側は、前記延設部36の凸曲面36bと連続して、該凹曲面36cと同じ中心37からなる円弧による曲面32a,33aが形成されるとともに、上脚側連結板22(図3(d)中破線参照)と組み合わせたときに、その軸孔29よりも上方となる位置まで伸びている。
下脚側連結板32,33の下端側の形状は、前記上脚側連結板22の中心26と同心の円弧形状に形成され、前記延設部36の上端面36aと一体に接続されている。
【0023】
下脚側連結板32,33の上端側の形状は、後述する前記扇状部材4の円筒部43の外径寸法(図4(c)(d)中の寸法R1参照)よりも僅かに大径に形成された凹曲部32c,33cを形成するとともに、該凹曲部32c,33cの後ろ側(図3(a)中の左側)には、下脚側関節部3の回転中心37を中心とした凸曲部32d,33dを備えている。これにより、上端側の形状は、略S字形状に湾曲して形成されている。
また、前記延設部36の凸曲面36b及び下脚側連結板32,33の曲面32a,33aの中心37には、下脚側関節部3の回転を支える軸と嵌合する軸孔39a,39bが形成されている。この軸孔39a,39bは、同一の中心軸37を有し、下脚側関節部3の回転中心となる。
【0024】
一対の連結部は、上脚側関節部2と組み合わされて、上脚側関節部2を回転可能に軸支する一端側軸機構を構成するとともに、上脚側関節部2の回転角度を規制する一端側角度規制機構を備え、下脚側関節部3と組み合わされて、前記下脚側関節部3と平行に所定距離離間して他端側関節部を回転可能に軸支する他端側軸機構を構成するとともに、下脚側関節部3の回転角度を規制する他端側角度規制機構と、少なくとも前記一端側軸機構と他端側軸機構、及び一端側角度規制機構と他端側角度規制機構を被覆し、関節部1の伸長状態から屈曲状態において、前記上脚7の端部7a及び下脚8の端部8aと一体となった外観をなす一対の曲面部を含む。
【0025】
一端側軸機構は、上脚側関節部2の上脚側連結板22に備わる軸孔29を貫通する軸と、該軸を受ける孔とで構成される。本実施例では、図4〜図8に示すように、一方のカバー部5の内面側から突出した下脚軸51と、上脚側連結板22の軸孔29を貫通した下脚軸51が嵌合する、扇状部材4の円筒部43の内孔43aとで構成されている。
一端側角度規制機構は、上脚側関節部2の上脚側連結板22に備わる周溝25を貫通するピンと、該ピンを受ける孔とで構成される。本実施例では、一方のカバー部5の内面側から突出したピン52と、上脚側連結板22の周溝25を貫通したピン52が嵌合する他方のカバー部6のピン孔62とで構成されている。
【0026】
他端側軸機構は、下脚側連結板32,33の軸孔39a,39bと、該軸孔39a,39bとそれぞれ嵌合する一対の下脚軸とで構成される。本実施例では、軸孔39aに嵌合する、一方のカバー部5の内面側から突出した下脚軸53と、軸孔39bに嵌合する、扇状部材4の下脚軸45とで構成されている。これにより、下脚側連結板32と下脚側連結板33間の間隔によって分割されて同軸上に配された他端側軸機構が構成される。
他端側角度規制機構は、下脚側連結板33の上端側の凹曲面33cと、該凹曲面33cに当接して下脚側連結板33の回転を規制する部材とで構成される。本実施例では、前記凹曲面33cと、扇状部材4の円筒部43とで構成されている。
曲面部は、前記一端側軸機構と他端側軸機構、及び一端側角度規制機構と他端側角度規制機構を被覆する。本実施例では、カバー部5の外面55とカバー部6の外面65とで構成される。
以下に、上記各機構を構成する各部材が配される、扇状部材4、カバー部5及びカバー部6について説明する。
【0027】
扇状部材4は、図6〜図8に示すように、上脚側関節部2の上脚側連結板22及び下脚側関節部3の一対の下脚側連結板32,33の他方側(図6及び図8中の右側)に配されて、他方側の連結部を構成する各材を備えている。
扇状部材4の外形形状は、図4に示すように、円板を周方向に略1/4(略90度)に切り出した所謂扇形状の板状部材である。
扇状部材4の一面側41aには、その扇形状の要(かなめ)部分に、該一面側41aの面と直交して円筒部43が、所定の外径寸法R1で、かつ、前記下脚側連結板33の板厚(図3(b)及び図4(a)、(c)中の寸法D3参照)と同じ寸法長で延出している。
【0028】
さらに、円筒部43の内孔43aは、内径寸法R2に形成されている。
また、扇状部材4の他面側41bには、前記円筒部43と連続して、前記円筒部43と同径(径寸法R1)に形成された円筒部42が延出するとともに、該他面側41bの円筒部42の中心を通る垂線41d上(図4(b)参照)の下方向の縁側には、ピン44が該他面側41bの面と直交して延出している。
なお、前記円筒部42及び円筒部43(内孔43a)の軸心には、孔41cが、一面側41aから他面側41bまで、両面間を垂直に貫通して設けられている。
【0029】
一面側41aの縁側であって、円筒部43の中心を通る垂線41dから左回りに所定角度θ2となる位置(図4(d)参照)からは、下脚軸45が、一面側41aの面と垂直に延出している。所定角度θ2として、本実施例では、75度が設定されている。また、下脚軸45の径は、下脚側連結板33の軸孔39bの孔径よりも僅かに小径に形成されている。
上述のように、前記扇状部材4では、その要(かなめ)部分に配される円筒部43に対して、前記下脚軸45は75度の角度を持った縁側に配されているので、円筒部43と下脚軸45が構成する上脚側軸機構と下脚側軸機構は、平行に所定距離(図4(b)中の寸法DS参照)離間している。
なお、上脚側軸機構と下脚側軸機構が離間する寸法DSは、上脚側関節部2と下脚側関節部3の屈曲動作の設計上の都合によって設定すれば良い。例えば、離間する寸法が短かければ、上脚側関節部2と下脚側関節部3は一重関節構造(単一の関節構造)で連結されている場合に近い屈曲動作をし、反対に、離間する寸法が長ければ、上脚側関節部2と下脚側関節部3は従来の二重関節構造で連結されている場合に近い屈曲動作をする。
なお、円筒部43及び下脚軸45の長さは、前記下脚側連結板33の板厚(図3(b)及び図4(a)、(c)中の寸法D3参照)と同じ寸法に形成されている。
また、円筒部42及び円筒部43の外径寸法は前記下脚側連結板32,33の上端側の凹曲部33cより僅かに小径に設定されている。
【0030】
一方のカバー部5は、図6〜図8に示すように、上脚側関節部2の上脚側連結板22及び下脚側関節部3の一対の下脚側連結板32,33の一方側(図6及び図8中の左側)に配されて、一方側の連結部を構成する各材を備えている。
一方のカバー部5の外径形状は、図5(a)、(b)、(c)に示すように、上脚連結板22と同一の外周による上部形状を備えた半円形部54aと、該半円形部54aの前方側(図中右側)から連続して斜め下方に向けて前記下脚側連結板32の前方側の曲面32aよりも大径の曲面を備えた円弧部54bと、該半円形部54aの後方側(図中の左側)端部及び円弧部54bの下端から連続して先細りに引き伸ばされた後端部54cからなる所謂勾玉状の縁部54を形状している。なお、縁部54は、前記外形形状に沿って所定の厚みを備えている。
一方のカバー部5の内面側には、関節部1の組み立て時に上脚側連結板22を回転可能に該上脚連結板22の軸孔29と嵌合して、上記一端側軸機構の軸を構成する上脚軸51と、上脚側連結板22の周溝25に差し込まれるピン52と、下脚側連結板32の軸孔39aに差し込まれる下脚軸53とが備えられている。
【0031】
具体的には、上脚軸51は、半円形部54aの中心から関節部1の組み立て時に扇状部材4の円筒部43の内孔43aと嵌合可能な長さD4に形成されている。本実施例では、長さ寸法D4として、縁部54(半円形部54a)から、下脚側連結板33の厚み寸法D3と上脚側連結板22の厚み寸法D1を合計した長さよりも僅かに長く設定されている。
上脚軸51の外径は、前記扇状部材4の円筒部43に備わる内孔43aの内径(図4(b)(d)中の寸法R2参照)よりも僅かに小径に形成されている。なお、上脚軸51の先端側には、上脚軸51の長さ方向にネジ孔51aが形成されている。
【0032】
ピン52は、半円形部54aの外周54に近い領域であって、前記上脚軸51の中心を通る垂線58から左回りに所定の角度θ1の後ろ方向(図5(a)中の左方向)の位置から、上脚側連結板22の周溝25に差込可能な長さD5に形成されている。本実施例では、長さ寸法D5として、縁部54(半円形部54a)から、下脚側連結板33の厚み寸法D3と上脚側連結板22の厚み寸法D1と下脚側連結板33の厚み寸法D3を合計した長さが設定されている。
なお、所定角度θ1として、本実施例では、略55度に設定されている。この角度θ1は、前記上脚側連結板22の周溝25が形成される角度範囲θ1と同一角度に設定されるものである。従って、周溝25が形成される角度範囲θ1が設計変更された場合には、ピン52が形成される角度θ1もまた、その変更された角度範囲に合わせて設計変更される。
また、ピン52の径は、周溝25の連結板22径方向溝幅よりも小さな寸法に設定されている。
【0033】
下脚軸53は、前記円弧部54bの円弧中心に備えられ、その円弧中心は、半円形部54aの外周54に近い領域であって、前記上脚軸51の中心を通る垂線58から右回りに所定の角度θ2の後ろ方向(図5(a)中の左方向)に位置している。なお、所定角度θ2として、本実施例では、略75度が設定されている。この角度θ2は、前記扇状部材4の下脚軸45が形成される所定角度θ2と同一角度に設定されるものである。従って、扇状部材4の下脚軸45が形成される角度θ2が設計変更された場合には、下脚軸53が形成される角度θ2もまた、その変更された角度に合わせて設計変更される。
【0034】
また、前記縁部54の前記半円形部54aの下脚軸53の近傍領域と後端部54cは、下脚側連結板32の厚み(図3(b)中の寸法D3参照)に相当する寸法で外面方向(図5(b)中の左側)に向けて切り欠かれ、縁部54の該切り欠きの無い部分との境界には、それぞれ段差54d及び段差54eが形成されている。
下脚軸53は、前記切り欠き部から延出するとともに、下脚側連結板32の厚み(図3(b)中の寸法D3参照)と同一の長さ(図5中の寸法D3参照)に突出する。
なお、下脚軸53の径は、下脚側連結板32の軸孔39aよりも僅かに小径に形成されている。
カバー部5の外面55の形状は、前記縁部54(半円形部54aと円弧部54bと後端部54c)から外向きになめらかな凸状の曲面部を有して突出して形成されるとともに、カバー部5の内面形状は、前記縁部54から外向きに凹面を形成している。
【0035】
上述のように、一方のカバー部5では、前記扇状部材4の円筒部43の内孔43aと嵌合する上脚軸51に対して、下脚軸53は、扇状部材4の下脚軸45が嵌合する下脚側連結板33の軸孔39bと同一の中心軸37を有する軸孔39aと嵌合するように配されているので、上脚軸51と下脚軸53が構成する上脚側軸機構と下脚側軸機構は、平行に所定距離(図5(a)中の寸法DS参照)離間している。なお、寸法DSは、扇状部材4の円筒部43と下脚軸45の関係で説明したように、上脚側関節部2と下脚側関節部3の屈曲動作の設計上の都合によって設定すれば良い。この場合、寸法DSは、下脚軸53,45が半円形部54aの範囲内に収まるように設定されることが好ましい。これにより、下脚8が半円形部54aの範囲内を中心に回転するので、下脚8が、実際の人間の下脚に近い回転動作をするようになる。また、下脚8の屈曲角度を優先して設定したい場合には、上記に限られず、寸法DSを下脚軸54,45が半円形部54aの範囲を超えて設けられるように設定しても良い。
【0036】
他方のカバー部6は、図6〜図8に示すように、上脚側関節部2の上脚側連結板22及び下脚側関節部3の一対の下脚側連結板32,33の他方側(図6及び図8中の右側)に配されている。
なお、他方のカバー部6の外径形状は、前記カバー部5と相似形状に形成されている。
すなわち、外形形状は、図5(d),(e),(f)に示すように、上脚連結板22と同一の外周による上部形状を備えた半円形部64aと、該半円形部64aの前方側(図中の右側)から連続して斜め下方に向けて前記下脚側連結板33の前方側の曲面33aよりも大径の曲面を備えた円弧部64bと、該半円形部64aの後方側(図中の右側)端部及び円弧部64bの下端から連続して先細りに引き伸ばされた後端部64cからなる所謂勾玉状の縁部64を形状している。なお、縁部64は、前記外形形状に沿って所定の厚みを備えている。
【0037】
縁部64の前記半円形部64aの後端と後端部64cは、前記一方のカバー部5と同様に、下脚側連結板32の厚み(図3(b)中の寸法D3参照)に相当する寸法で外面方向(図6(b)中の左側)に向けて切り欠かれ、縁部64の切り欠きの無い部分との境界には、それぞれ段差64d及び段差64eが形成されている。
また、円弧部64bは、半円形部64aと同心同径の仮想円(図5(d)中の破線C参照)の内側領域を残し、下脚側連結板32の厚み(図3(b)中の寸法D1参照)と同一の長さ(図5(e)中の寸法D1参照)で内方向(図6(b)中の右側)に向けて突出している。
なお、縁部64の段差部64eの後端側の領域67は、内側方向(図5(e)中の右方向)に突出して形成されている。
【0038】
また、カバー部6の外面65の形状は、前記縁部64(半円形部64aと円弧部64bと後端部64c)から外向きになめらかな凸状の曲面部を有して突出して形成するとともに、カバー部6の内面形状は、前記縁部64から外向きの凹面を形成している。
さらに、カバー部6の内面側には、扇状部材4の円筒部43と嵌合する大径孔61と、扇状部材4のピン44が嵌合するピン孔63と、カバー部5のピン52と嵌合するピン孔62とが備えられている。
【0039】
具体的には、大径孔61は、半円形部64aの中心に、扇状部材4の円筒部43の外径寸法R1よりも僅かに大径の孔として形成されている。なお、大径孔61の深さは、該円筒部43の長さと同じ深さに形成されている。
ピン孔63は、半円形部64aの中心を通る垂線68上(図5(d)参照)で、扇状部材4の円筒部43とピン44との間の寸法と同じ寸法に離間した位置に配され、ピン44よりも僅かに大径かつピン44の長さと同じ深さに形成されている。
【0040】
ピン孔62は、半円形部64aの外周64に近い領域であって、前記大径孔61の中心を通る垂線68から右回りに所定の角度θ1の後ろ方向(図5(d)中の右方向)に配される。すなわち、ピン孔62は、カバー部5のピン52の位置に相当する位置に配されている。従って、本実施例では、ピン孔62が配される角度θ1も略55度に設定されている。なお、角度θ1は、前記上脚側連結板22の周溝25が形成される角度範囲θ1と同一角度に設定されるものであるので、上脚側連結板22の周溝25が形成される角度範囲θ1の設計変更にともなって、ピン孔62が配される角度θ1も設計変更される。また、ピン孔63の深さは、ピン52の先端が嵌合可能な深さに形成されている。
【0041】
このように、連結部の各機構は、一方のカバー部5と一体に形成される、一方の連結部を構成する各部材と、扇状部材4と他方のカバー部6とに一体に形成される、他方の連結部を構成する各部材が、それぞれ上脚側関節部2及び下脚側関節部3と組み合わされることによって構成されており、さらに、各機構は、一方側のカバー部5の外面55及び、他方側に配されるカバー部6の外面65によって被覆されている。
【0042】
関節部1を組み立てる場合について図8を参照しながら説明する。
関節部1を組み立てる場合には、まず、上脚側関節部2の上脚側連結板22を、下脚側関節部3の下脚側連結板32と下脚側連結板33の間に、上脚側連結板22の外周面22が延設部36の上面36aに沿うまで差し込まれる。
次に、前記上脚側連結板22と下脚側連結板32の一方側(図中、左側)から、一方のカバー部5を組み合わせる。このとき、上脚側連結板22の周溝25に、一方のカバー部5のピン52が差し込まれるとともに、上脚側連結板22の軸孔29に、一方のカバー部5の上脚軸51が差し込まれ、さらに、下脚側連結板32の軸孔39aに、一方のカバー部5の下脚軸53が嵌合する。
【0043】
なお、上脚軸51の長さ寸法D4は、下脚側連結板33の厚み寸法D3と上脚側連結板22の厚み寸法D1を合計した長さよりも僅かに長く設定されているので、上脚軸51の先端が、上脚側連結板22よりも僅かに突出している。
また、一方のカバー部5の下脚軸53の長さ寸法と、下脚側連結板32の厚み寸法は、ともに、寸法D3に設定されているので、下脚軸53の先端は、下脚側連結板32の反対向側の板面まで差し込まれ、上脚側連結板22に当接することがない。
さらに、ピン52の長さ寸法D5は、下脚側連結板33の厚み寸法D3と上脚側連結板22の厚み寸法D1と下脚側連結板33の厚み寸法D3を合計した長さ寸法に設定されているので、上脚側連結板22から、厚み寸法D3分だけ突出している。
他方のカバー部5の半円形部54aの後端と後端部54cは、下脚側連結板33の厚み寸法D3で切り欠かれているので、該切り欠き部分が下脚側連結板33及び延設部36の側面に摺接する。
【0044】
さらに、前記上脚側連結板22と下脚側連結板33の他方側(図中の右側)から、扇状部材4を組み合わせる。このとき、上脚側連結板22の軸孔29を貫通したカバー部5の下脚軸53に、扇状部材4の円筒部43の内孔43aが嵌合し、下脚側連結板33の軸穴39bに扇状部材4の下脚軸45が嵌合する。
なお、扇状部材4の下脚軸45の長さ寸法と、下脚側連結板33の厚み寸法は、ともに、寸法D3に設定されているので、下脚軸45の先端は、下脚側連結板33の反対向側の板面まで差し込まれ、上脚側連結板22に当接することがない。
また、扇状部材4の円筒部43の長さ寸法と下脚側連結板33の厚み寸法は、ともに、寸法D3に設定されているので、円筒部43の先端が上脚側連結板22に摺接するとともに、扇状部材4の一面側41aが、下脚側連結板33の側面に摺接する。
【0045】
上脚軸51のネジ孔51aには、扇状部材4の円筒部42及び円筒部43の孔41cに差し込まれたネジSが締め込まれる。これにより、上脚軸51に上脚側関節部2が回転可能に軸支(摺嵌)されるとともに、下脚軸35,53に下脚側関節部3が回転可能に軸支される。また、各部材は隙間無く摺接しているので、がたつくことがなく、しっかりと保持される。
最後に、他方側(図中、右側)から、他方のカバー部6を組み合わせる。このとき、扇状部材4の円筒部42に、他方のカバー部6の大径孔61と嵌合するとともに、扇状部材4のピン44に、他方のカバー部のピン孔62が嵌合する。
なお、他方のカバー部6の半円形部64aの後端と後端部64cは、下脚側連結板32の厚み寸法D3で切り欠かれているので、該切り欠き部分が下脚側連結板32及び延設部36の側面に摺接する。
さらに、他方のカバー部6の円弧部64bは、下脚側連結板32の厚み寸法D1と同一の長さで突出しているので、一方のカバー部5の円弧部54bにぴったりと当接する。
【0046】
このように組み立てられた関節部1は、図9に示すように、各機構がカバー部5及びカバー部6の滑らかな曲面状の外面55,56によって被覆される。このとき、カバー部5とカバー部6の縁部54,64は、カバー部5の半円形部54aとカバー部6の半円形部64aが、それぞれ、上脚側連結板22の外周面22aの両側面に沿って摺接し、カバー部5の円弧部54bとカバー部6の円弧部64bが互いに隙間無く当接し、カバー部5の後端部54cとカバー部6の後端部64cが、それぞれ、下脚側支持軸部31の延設部36の後方側に備わる凹曲面36cの両側面にそって摺接する。これにより、関節部1はひとつの繭状の外観形状にまとまる。
さらに、関節部1を前記上脚7の端部及び下脚8の端部に組み合わせた場合には、図1(a)及び図2(b)、図16に示すように、関節部1は上脚7の端部及び下脚8の端部に一体に組み込まれた外観をなすので、より現実の人間の関節部に近い形状となる。
【0047】
以下に、関節部1の動作を説明する。
まず、上脚側関節部2の動作を図10(a)(b)を参照しながら説明する。なお、図10(a)(b)では、説明を判り易くするため、扇状部材4及びカバー部6を取り外した状態を示したうえで、カバー部5を固定した状態で、上脚側関節部2の動作を示している。
上脚側関節部2は、上脚側連結板22の軸孔29と嵌合した上脚軸51によって、回転可能に軸支され、上脚側連結板22の円心26を中心に回転する。また、上脚側連結板22の周溝25には、ピン52が差し込まれている。
【0048】
上脚側関節部2が前屈方向に回転(図中の右方向の回転、図10(a)中の右向き矢印参照)した場合には、ピン52が周溝25の他端25bと当接することにより、上脚側関節部2の前屈方向の回転を規制する。
上脚側関節部2が後屈方向に回転(図中の左方向の回転、図10(b)中の左向き矢印参照)した場合には、ピン52が周溝25の一端25aと当接することにより、上脚側関節部2の後屈方向の回転を規制する。
本実施例では、周溝25は、一端25aから他端25bまで略55度の角度範囲で形成されているので、上脚側関節部2が該角度分だけ後屈した状態で、それ以上の後屈回転が規制されることとなる。従って、上脚側関節部2は該角度範囲内において自由に回転可能である。
【0049】
次に、下脚側関節部3の動作を図11(a)(b)を参照しながら説明する。なお、図11(a)(b)では、説明を判り易くするため、カバー部6を取り外し、扇状部材4を破線で示したうえで、カバー部5を固定した状態で、下脚側関節部3の動作を示している。
上脚側関節部3は、カバー部5の下脚軸53と軸孔39aが嵌合し、扇状部材4の下脚軸45はと軸孔39bが嵌合することによって回転可能に軸支され、該下脚軸53及び下脚軸45の軸心を回転中心37として回転する。
【0050】
下脚側関節部3が前屈方向に回転(図中の右方向の回転、図11(a)中の右向き矢印参照)した場合には、扇状部材4の円筒部43が下脚側連結板33の凹曲部33cと当接することにより、下脚側関節部3の前屈方向の回転を規制する。
下脚側関節部3が後屈方向に回転(図中の左方向の回転、図11(b)中の左向き矢印参照)した場合には、特に回転は規制されず、上脚側関節部2が取り付けられた上脚7と下脚側関節部3が取り付けられた下脚8が当接するまで、自由に回転可能となる。
【0051】
次に、関節部1の上脚側関節部2と下脚側関節部3を組み立てた状態による、具体的な動作について、図12〜図15を参照しながら説明する。なお、図12〜図14では、説明を判り易くするため、カバー部6を取り外し、扇状部材4を破線で示し、上脚7及び下脚8を一点鎖線で示している。また、カバー部5を固定した状態で、上脚側関節部2と下脚側関節部3の動作を示している。
【0052】
上脚7及び下脚8の前屈状態(伸長状態)、すわなち、関節部1が最大に前屈している状態では、図12に示すように、上脚側連結板22の周溝25の他端25bとピン52が当接して上脚側関節部2の前屈方向の回転が規制されるとともに、下脚側連結板33の凹曲部33cと扇状部材4の円筒部43が当接して下脚側関節部3の前屈方向の回転が規制されている。これにより、上脚7と下脚8の前屈が規制される。このとき、上脚7の前方側の下端72と下脚8の前方側の上端82が近接することにより、関節部1が上脚7と下脚8によって隠されている。
【0053】
次に、図13に示すように、上脚7だけが後屈(図中の左向き矢印参照)した状態では、上脚側連結板22が、上脚側連結板22の円心26を回転中心として後屈回転する。最大に後屈した状態では、上脚側連結板22の周溝25の一端25aとピン52が当接して上脚側関節部2の後屈方向の回転が規制されるとともに、下脚側連結板33の凹曲部33cと扇状部材4の円筒部43が当接して下脚側関節部3の前屈方向の回転が規制されている。このとき、上脚7の前方側の下端72と下脚8の前方側の上端82が、上脚7の後屈分だけ離間するが、関節部1は、カバー部5及びカバー部6によって被覆されているので、関節部1の各機構が露出せず、美観が保たれている。
【0054】
次に、図14に示すように、前記上脚7が後屈した状態に加えて、下脚8も後屈(図中の左向き矢印参照参照)した状態では、下脚側連結板22が、該下脚軸53及び下脚軸45の軸心を回転中心37として後屈回転する。このとき、カバー部5の円弧部54b及びカバー部6の円弧部64bは、下脚軸53及び下脚軸45と同軸に形成されているので、下脚8の後屈回転中において円弧部54b及び円弧部64bの露出部分は、下脚軸53及び下脚軸45との距離が変化することがない。従って、カバー部5の円弧部54b及びカバー部6の円弧部64b、及び、該円弧部54bから延びている外面55及び円弧部64bから延びている外面65は、常に下脚8の上端82と一体となっている。
【0055】
さらに、最大に後屈した状態では、上脚側関節部2が取り付けられた上脚7の後側73と下脚側関節部3が取り付けられた下脚8の後側83が当接することにより、それ以上の後屈ができなくなる。このとき、上脚7の前方側の下端72と下脚8の前方側の上端82が、大きく離間するが、図15に示すように、関節部1は、カバー部5の外面55及びカバー部6の外面65によって被覆されているので関節部1の各機構が露出しない。また、関節部1の後ろ側の形状(延設部36の凹曲面36c)は、下脚8の脹脛の膨らみの延長となるような曲面に形成されているので、下脚8と一体に見える。これにより、関節部1は、伸長状態から屈曲状態まで、上脚7及び下脚8と一体となり、人形の美観を保つことができる。
【0056】
また、上脚側関節部2の上脚側連結板22の中心線38aと下脚関節部3の延設部36の中心線28bとがD2の寸法でずれて組み合わされている(図3(b)参照)。
脚部の後ろ側から見た全体図を図16に示す。関節部1を上脚7及び下脚8と組み合せた場合には、上脚7と下脚8は、前記上脚側連結板22の中心線38aと下脚関節部3の延出部26の中心線28bのずれの寸法D2でずれて組み合わされることとなる。これにより、下脚が上脚よりも外側に出ている、現実の人間の脚部形状を再現した、より現実味のある人形の脚部とすることができる。
【0057】
なお、本実施例では、前記円筒部43が凹曲部33cとの当接することで他端側角度規制機構を構成しているが、それに加えて、上脚軸51の基端部を前記下脚側連結板32の上端側の凹曲部32cより僅かに小径の円柱状に形成して、上脚軸51の基端部が下脚側連結板32の凹曲部32cと当接するよう構成し、下脚側連結板32の回転角度を凹曲部32c及び凹曲部33cの両方で規制する他端側角度規制機構としてもよい。
【0058】
また、上述した各軸及び軸孔との嵌合関係、及び、ピン52と周溝25との関係は、これに限定されるものではなく、上述した一端側軸機構及び一端側角度規制機構、さらに、他端側軸機構及び他端側角度規制機構が構成されれば、軸及び軸孔やピン52及び周溝25は、組み合わされるどちらの部材に備えられていても良い。
例えば、扇状部材4に上脚軸51を設け、一方のカバー部5に円筒部43を設けてもよく、下脚側連結板32,33に、それぞれ、下脚軸53,45を設け、一方のカバー部5と扇状部材4に軸孔39a,39bを設けても良く、一方のカバー部5に周溝25を設け、上脚側連結板22には該集溝25に差し込まれるピン52を設けても良い。
【0059】
さらに、本実施例では、一方のカバー部5と一方の連結部を一体に形成したが、これに限定されず、一方のカバー部5と一方の連結部を別体に形成してもよく、或いは、他方のカバー部6と他方の連結部(扇状部材4)を一体に形成することも本発明の範囲内である。
なお、本実施例では、上脚側連結板22を一枚設けるとともに、下脚側連結板32,33を一対設けているが、これに限定されるものでなく、上脚側連結板22が複数枚設けられていたり、下脚側連結板を1枚若しくは3枚以上設けられていたりしても良い。その場合であっても、上記各機構を備えていれば、本発明の範囲内である。
【実施例2】
【0060】
前記実施例1では、一例として、人形の脚部に関節部1を適用した場合を説明したが、これに限定されず、人形の他の部分、例えば、腕部に関節部1を適用することも可能である。
以下に、人形の腕部に関節部1を適用した一例を説明する。
なお、本実施例の関節部1は、脚部の膝部分よりも内部空間が狭い腕部の肘部分に組み込まれる。
そのため、上述した実施例1の関節部1を簡略化した構成が採用されているが、一端側関節部が円板状の一端側連結板を備え、他端側関節部が該円板を挟み込む2枚の他端側連結板を備え、一端側関節部を回転可能に軸支する一端側軸機構と、他端側関節部を回転可能に軸支する他端側軸機構が一端側軸機構と平行に所定距離離間するとともに、一端側角度規制機構と他端側角度規制機構を備え、該各機構を被覆して第一部材の端部及び第二部材の端部と一体となった外観をなす一対の曲面部を備えた基本構成は同一である。
従って、本実施例では、上記実施例1とほぼ同一の形状を持った構成部材については同一の符号を用いることで説明を省略し、前記簡略化した構成によって、上記実施例と異なる構成となった部分を中心に説明する。
【0061】
本実施例では、図17及び図28に示すように、人形の胴体に取り付けられている腕部を棒状部材の一例として挙げ、該腕部は、図示しない胴体の肩部に可動自在に取り付けられる第一部材70と、該第一部材70に取り付けられる第二部材80と、前記第一部材70と第二部材80の間で、該第一部材70と第二部材80を可動自在に連結する関節部1とで構成されている。
なお、以下の説明において、前記第一部材70を上腕70と称し、第二部材80を下腕80と称する。
【0062】
上腕70は、例えば、人間の上腕部分を忠実に模写した外観を有する中空棒状に形成するとともに、上端側を胴体の肩部に可動自在に連結する図示しない連結構造を備え、下端側は、後述する関節部1を構成する他端側関節部3が着脱可能に嵌め込まれる上腕側嵌合孔部701を設けて構成されている。
下腕80は、例えば、人間の下腕部部分を忠実に模写した外観を有する中空棒状に形成するとともに、下端側を手部と可動自在に連結する図示しない連結構造を備え、上端側は、後述する関節部1を構成する一端側関節部2が着脱可能に嵌め込まれる下腕側嵌合孔部801を設けて構成されている。
なお、人形の腕部の関節部は、右腕と左腕で左右対称の同一構造をもっているので、以下には、人形の左腕の関節部を説明し、右腕の関節部の説明は省略する。
【0063】
関節部1は、例えば本実施例では、上腕70の下端側に備えられる一端側関節部2と、下腕80の上端側に備えられる他端側関節部3と、前記一端側関節部と前記他端側関節部を回転可能に連結する一対の連結部で構成され、この連結部が、一端側関節部2と他端側関節部3とを連結することにより、前記上腕70と下腕80が可動自在に連結されて棒状の腕部が構成される。
なお、以下、一端側関節部2を上腕側関節部2と称し、他端側関節部3を下腕側関節部3と称して説明する。
【0064】
上腕側関節部2は、実施例1の上脚側関節部2とほぼ同一の構成であり、本実施例では、図18及び図23〜図27に示すように、前記上腕70の上腕側嵌合孔部701に着脱自在に嵌合可能な上腕側支持軸部21と、該上腕側支持軸部21の反嵌合側の端面に一体的に接続されて形成され、周溝25を備えた円形状の一端側連結板(以下、上腕側連結板という)22とで構成されている。なお、本実施例において、上腕側支持軸部21と上腕側連結板22とは、同一材料をもって一体に形成されている。
【0065】
上腕側支持軸部21は、その中心軸70aが、上腕側連結板22の中心軸70bから横方向(本実施例では図中右方向)にθ3の角度を有して備えられている(図18(b)参照)。
なお、上腕側連結板22の一面側(図18(b)中の左側)22bには、円筒部27が、該一面22bと直交して所定の外径寸法で、後述する他端側連結板(下腕側連結板)33の板厚寸法と同寸法で延出している。
【0066】
下腕側関節部3は、本実施例では、図19及び図23〜図27に示すように、前記下腕80の下腕側嵌合孔部801に着脱自在に嵌合可能な下腕側支持軸部31と、該下腕側支持軸部31の反嵌合側に一体的に接続されて形成されている一対の他端側連結板(以下、下腕側連結板という)32,33で構成されている。
なお、本実施例において、下腕側支持軸部31と、一対の下腕側連結板32,33は、同一材料をもって一体に形成されている。
下腕側支持軸部31は、例えば本実施例では、前記下腕80の下腕側嵌合孔部801に嵌合可能な外径を有する円柱状に形成されている。そして、下腕側支持軸部31の反嵌合側の端部(以下、上端部という)34には、延設部36が前記上端部34から上方に向けて一体に形成されている。
【0067】
延設部36の後方側(同図中の左側)は、所定の中心37からなる円弧による凸曲面36bに形成されている。
延設部36の前方側(同図中の右側)は、なだらかな凹曲面36cが形成されている。さらに、該凹曲面36cの前端36dでは、該下脚側支持軸部31から前方側に向けて斜め上方に上り傾斜で張り出した上り傾斜面36fと前記凹曲面36cが、下脚側支持軸部31よりも前方側に突出して収束している。
なお、延設部36の凹曲面36cは、下腕側関節部3が取り付けられる第二部材80の上端部の曲面形状、すなわち、下腕の膨らみの延長となるような曲面に形成されている。
【0068】
延設部36の上端面36aは、図19(c)に示すように、前記上腕側連結板22の外周22aと同じ円心26を有するとともに、外周22aよりも僅かに大径の曲面を形成している。これにより、上腕側連結板22(図19(c)中破線参照)を後方側の斜め上方に所定距離離間させて組み合わせて該上腕側連結板22を回転させた場合であっても、延設部36の上端面36aの曲面と上腕側連結板22が衝突しない。
なお、下腕側支持軸部31は、その中心軸80aが、延設部36の中心軸80bから横方向(本実施例では図中左方向)にθ3の角度を有して備えられている(図19(b)参照)。
【0069】
下腕側連結板32,33は、前記延設部36の上端面36aから上方に向けて延設するとともに、前記上腕側連結板22の板厚の間隔で平行に配置された板状部材である。なお下腕側連結板32,33は互いに相似形状に形成されている。また、下腕側連結板32,33の厚さは同厚に形成されている。
下腕側連結板32,33の後方側は、前記延設部36の凸曲面36bと連続して、該凹曲面36cと同じ中心37からなる円弧による曲面32a,33aが形成される。
下脚側連結板32,33の下端側の形状は、前記上脚側連結板22の中心26と同心の円弧形状に形成され、前記延設部36の上端面36aと一体に接続されている。
【0070】
下腕側連結板32,33の上端側の形状は、前記上腕側連結板22の円筒部27、及び、後述するカバー部5の円筒部501が当接可能な凹曲部32c,33cを形成するとともに、該凹曲部32c,33cの前側(図19(a)中の左側)には、下腕側関節部3の回転中心37を中心とした凸曲部32d,33dを備えている。これにより、上端側の形状は、略S字形状に湾曲して形成されている。
また、前記延設部36の凸曲面36b及び下腕側連結板32,33の曲面32a,33aの中心37には、下腕側関節部3の回転を支える下腕軸301,302が形成されている。この下腕軸301,302は、同一の中心軸37を有し、下腕側関節部3の回転中心となる。
なお、延設部36と下腕側連結板32,33との位置関係は、前記実施例1と前後方向が逆になっているが、これは、脚部の関節が後屈方向に回転するのに対して、腕部の関節は前屈方向に回転するので、下腕側連結板32,33の回転中心を前方側に配したためである。
従って、本実施例では、関節部1は、関節部1の後屈が防止されるとともに、上腕の前屈方向の回転が規制される。
【0071】
本実施例では、一対の連結部の各機構は、次のように構成されている(図23及び図24参照)。
一端側軸機構は、一方のカバー部5の内面側から突出した円筒部501のネジ孔501aと、上腕側連結板22の軸孔29を貫通して該ネジ孔501aにネジ結合するネジSとで構成されている。
一端側角度規制機構は、一方のカバー部5の内面側から突出したピン503と、上腕側連結板22の周溝25を貫通したピン52が嵌合する他方のカバー部6のピン孔603とで構成されている。
他端側軸機構は、下腕側連結板32から突出した下腕軸301と、該下腕軸301と嵌合する一方のカバー部5の軸孔502と、下腕側連結板33から突出した下腕軸302と、該下腕軸302と嵌合する一方のカバー部5の軸孔602とで構成されている。これにより、下腕側連結板32と下腕側連結板33間の間隔によって分割されて同軸上に配された他端側軸機構が構成される。
他端側角度規制機構は、下腕側連結板33の上端側の凹曲面32cと、該凹曲面32cに当接して下脚側連結板32の回転を規制する、一方のカバー部5の円筒部501と、下腕側連結板33の上端側の凹曲面33cと、該凹曲面33cに当接して下脚側連結板33の回転を規制する、上腕側連結板22の円筒部27とで構成されている。
曲面部は、一方のカバー部5の外面55と他方のカバー部6の外面65とで構成されている。
【0072】
以下に、上記各機構を構成する各部材が配される、カバー部5及びカバー部6について説明する。
なお、一方のカバー部5及び他方のカバー部6の外径形状は、実施例1の一方のカバー部5及び他方のカバー部6の外径形状と、ほぼ同一であって、その相違点は、前後方向が逆になっている点と、実施例1の他方のカバー部6の円弧部64bの突出寸法D1が、本実施例では、該円弧部64bと、本実施例の一方のカバー部の円弧部54bの両方に、D1の半分の寸法を分け合って形成している点である。従って、実施例1の一方のカバー部5及び他方のカバー部6の外径形状の説明は省略する。
【0073】
一方のカバー部5の内面側には、関節部1の組み立て時に、上腕側連結板22を回転可能に該上腕連結板22の軸孔29に差し込まれて上記一端側軸機構の軸を構成する、ネジSがネジ結合するネジ孔501aを備えた円筒部501と、上腕側連結板22の周溝25に差し込まれるピン503と、下腕側連結板32の下腕軸301が嵌合する軸孔502とが備えられている。
具体的には、円筒部501は、半円形部54aの中心に配され、上腕側連結板22の円筒部27と同径に形成されるとともに、その長さ寸法は、円筒部501の先端が、一方のカバー部5の縁部54と同一となる長さに設定されている。
ピン503の配される位置は、実施例1と同様である。その長さ寸法は、上腕側連結板22の板厚寸法よりも長く設定されている。
軸孔502が配される位置は、実施例1と同様である。その軸孔502は、カバー部5の切り欠き部から延出するとともに、下腕側連結板32の厚みと同一の深さに形成されている。
【0074】
なお、本実施例では、カバー部5のネジ孔501aと、下腕軸301が嵌合する軸孔502との配置距離によって、上腕側軸機構と下腕側軸機構が平行に所定距離離間する。この場合、下腕側軸機構は、半円形部54aの範囲内に収まるように設定されることが好ましい。これにより、下腕80が半円形部54aの範囲内を中心に回転するので、下腕80が、実際の人間の下腕に近い回転動作をするようになる。また、下脚80の屈曲角度を優先して設定したい場合には、上記に限られず、下腕側軸機構が半円形部54aの範囲を超えて設けられるように設定しても良い。
【0075】
他方のカバー部6の内面側には、関節部1の組み立て時に、前記ピン503が嵌合するピン孔603と、下腕側連結板33の下腕軸302が嵌合する軸孔602と、後述する押え部材9のピン92が嵌合するピン孔601とが備えられている。
具体的には、ピン孔603の配される位置は、実施例1と同様であり、ピン503の先端が嵌合可能な深さに形成されている。
軸孔602が配される位置は、実施例1と同様である。その軸孔502は、一方のカバー部5の切り欠き部から延出するとともに、下腕側連結板32の厚みと同一の深さに形成されている。
ピン孔601は、ピン92と嵌合することで、他方のカバー部6を位置決め可能に配されている。
押え部材9は、滑りの良い樹脂からなる薄板であって、ネジSを差し込み可能な孔91と、前記他方のカバー部6のピン孔601に嵌合するピン92を備えている。
なお、押え部材9は、関節部1の組み立て時に、下腕側連結板33の側面に沿って配され、ネジSに共締めされる。
【0076】
関節部1を組み立てる場合には、まず、上腕側関節部2の上腕側連結板22を、下腕側関節部3の下腕側連結板32と下腕側連結板33の間に、上腕側連結板22の外周面22が延設部36の上面36aに沿うまで差し込み、一方のカバー部5を組み合わせる。このとき、下腕側連結板32の下腕軸301が、一方のカバー部5の軸孔502に嵌合するとともに、ピン503の先端が、上腕側連結板22の周溝25から突出している。
次に、上腕側連結板22の軸孔27と押え部材9の孔91を合わせるともに、該孔91及び軸孔27にネジSを差し込み、該ネジを一方のカバー部5のネジ孔501aにネジ結合させる。
【0077】
最後に、他方のカバー部6を組み合わせる。このとき、ピン503の先端が、他方のカバー部6のピン孔603と嵌合するともに、下腕側連結板33の下腕軸302が、他方のカバー部6の軸孔602に嵌合する。また、押え部材9のピン92が、他方のカバー部6のピン孔601と嵌合する
このように組み立てられた関節部1は、各機構がカバー部5及びカバー部6の滑らかな曲面状の外面55,56によって被覆される。これにより、関節部1はひとつの繭状の外観形状にまとまる。
さらに、関節部1を前記上腕70の端部及び下腕80の端部に組み合わせた場合には、図1(a)及び図2(b)、図16に示すように、関節部1は上腕70の端部及び下腕80の端部に一体に組み込まれた外観をなすので、より現実の人間の関節部に近い形状となる。
【0078】
次に、関節部1の上腕側関節部2と下腕側関節部3を組み立てた状態による、具体的な動作について、図25〜図27を参照しながら説明する。なお、図では、説明を判り易くするため、押え部材9とカバー部6を取り外し、上脚70及び下脚80を一点鎖線で示している。また、カバー部5を固定した状態で、上腕側関節部2と下腕側関節部3の動作を示している。
【0079】
上腕7及び下腕8の後屈状態(伸長状態)、すわなち、関節部1が最大に後屈している状態では、図25に示すように、上腕側連結板22の周溝25の他端25aとピン503が当接して上腕側関節部2の後屈方向の回転が規制されるとともに、下腕側連結板32の凹曲部32cと、一方のカバー部5の円筒部501が当接し、さらに、下腕側連結板32の凹曲部32cと、上腕側連結板22の円筒部27が当接して、下腕側関節部3の後屈方向の回転が規制されている。これにより、上腕70と下腕80の前屈が規制される。このとき、上腕70の後方側の下端702と下腕80の後方側の上端802が近接することにより、関節部1が上腕70と下腕80によって隠されている。
【0080】
次に、図26に示すように、上腕70だけが前屈(図中の右向き矢印参照)した状態では、上腕側連結板22が、上腕側連結板22の円心26を回転中心として前屈回転する。最大に前屈した状態では、上腕側連結板22の周溝25の一端25bとピン503が当接して上腕側関節部2の前屈方向の回転が規制される。さらに、下腕側連結板32の凹曲部32cと、一方のカバー部5の円筒部501が当接するとともに、下腕側連結板32の凹曲部32cと、上腕側連結板22の円筒部27が当接して、下腕側関節部3の後屈方向の回転が規制されている。
このとき、上腕70の後方側の下端702と下脚80の後方側の上端802が、上腕70の前屈分だけ離間するが、関節部1は、カバー部5及びカバー部6によって被覆されているので、関節部1の各機構が露出せず、美観が保たれている。
【0081】
次に、図27に示すように、前記上腕70が前屈した状態に加えて、下腕80も前屈(図中の右向き矢印参照参照)した状態では、下腕側連結板22が、該下腕軸301及び下脚軸302の軸心を回転中心37として前屈回転する。このとき、カバー部5の円弧部54b及びカバー部6の円弧部64bは、下腕軸301及び下腕軸302と同軸に形成されているので、下腕80の前屈回転中において円弧部54b及び円弧部64bの露出部分は、下腕軸301及び下腕軸302との距離が変化することがない。従って、カバー部5の円弧部54b及びカバー部6の円弧部64b、及び、該円弧部54bから延びている外面55及び円弧部64bから延びている外面65は、常に下腕80の上端802と一体となっている。
【0082】
さらに最大に前屈した状態では、上腕側関節部2が取り付けられた上腕70の前側703と下腕側関節部3が取り付けられた下腕80の前側803が当接することにより、それ以上の前屈ができなくなる。
このとき、上腕70の後方側の下端702と下腕80の後方側の上端802が、大きく離間するが、関節部1は、カバー部5の外面55及びカバー部6の外面65によって被覆されているので関節部1の各機構が露出しない。これにより、関節部1は、伸長状態から屈曲状態まで、上腕70及び下腕80と一体となり、人形の美観を保つことができる。
【0083】
また、上腕側関節部2の上腕側支持軸部21の中心軸70aが、上腕側連結板22の中心軸70bから横方向(図28中の右方向)にθ3の角度を有するとともに、下腕側支持軸部31の中心軸80aが、延設部36の中心軸80bから横方向(図28中の左方向)にθ3の角度を有して設けられているので、関節部1を上腕70及び下腕80に組み込んだ場合には、下腕80が上腕70に対して、ずれ(図中の寸法D6参照)を有することとなる。これにより、下腕が上腕よりも外側に出ている、現実の人間の腕部形状を再現した、より現実味のある人形の脚部とすることができる。
【0084】
上述した実施例1では、人形の脚部に関節部1を適用した一例を説明し、実施例2では、人形の腕部に関節部1を適用した一例を説明したが、これに限定されるものではなく、実施例1の関節部1を人形の腕部に適用したり、実施例2の関節部1を人形の脚部に適用したりすることも可能である。さらに、関節部1は、人形の脚部や腕部のみならず、人形に備えられる棒状部材であれば、どのような棒状部材の関節構造部分に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】関節部を上脚及び下脚に組み込んだ状態を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)上脚及び下脚を破線で示した側面図である。
【図2】上脚側関節部の説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【図3】下脚側関節部の説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は正面図の断面形状を示す断面図である。
【図4】扇状部材の説明図であり、(a)は他面側から見た斜視図であり、(b)は一面側からみた斜視図であり、(c)は平面側であり、(d)は背面図である。
【図5】一方のカバー部及び他方のカバー部の説明図であり、(a)は一方のカバー部の内面側から見た正面図、(b)は一方のカバー部の内面側から見た斜視図、(c)は一方のカバー部の外面側から見た斜視図、(d)は他方のカバー部の内面側から見た正面図、(e)は他方のカバー部の内面側から見た斜視図、(f)は他方のカバー部の外面側から見た斜視図である。
【図6】関節部を構成する各部材の関係を示す説明斜視図である。
【図7】図6と反対側から見た、関節部を構成する各部材の関係を示す説明斜視図である。
【図8】関節部の組み立て状態を示す説明斜視図である。
【図9】組み立てた関節部の説明図であり、(a)は手前側から見た斜視図、(b)は(a)の反対側から見た斜視図である。
【図10】上脚側関節部の動作を示す説明図であり、(a)は前屈状態を示し、(b)は屈曲状態を示す。
【図11】下脚側関節部の動作を示す説明図であり、(a)は前屈状態を示し、(b)は屈曲状態を示す。
【図12】関節部の前屈状態を示す側面透視図である。
【図13】上脚側関節部の後屈状態を示す側面透視図である。
【図14】上脚側関節部と下脚側関節部がともに後屈した状態を示す側面透視図である。
【図15】上脚側関節部と下脚側関節部がともに後屈した状態を示す斜視図である。
【図16】関節部を上脚と下脚に組み込んだ脚部を後ろ側から見た全体図である。
【図17】実施例2による関節部を上脚及び下脚に組み込んだ状態を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)上脚及び下脚を破線で示した側面図である。
【図18】実施例2による関節部の上脚側関節部の説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図19】実施例2による関節部の下脚側関節部の説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は(a)の断面図である。
【図20】実施例2による一方のカバー部の説明図であり、(a)は内面側から見た正面図、(b)は外面側から見た説明図である。
【図21】実施例2による他方のカバー部の説明図であり、(a)は内面側から見た正面図、(b)は外面側から見た説明図である。
【図22】押え部材の説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図23】実施例2による関節部を構成する各部材の関係を示す説明斜視図である。
【図24】図23と反対側から見た、実施例2による関節部を構成する各部材の関係を示す説明斜視図である。
【図25】実施例2による関節部の後屈状態を示す側面透視図である。
【図26】実施例2による関節部の上腕側関節部の前屈状態を示す側面透視図である。
【図27】実施例2による関節部の上腕側関節部と下腕側関節部がともに前屈した状態を示す側面透視図である。
【図28】実施例2による関節部の上腕と下腕のずれを説明する透視図。
【符号の説明】
【0086】
1 関節部
7 第一部材
8 第二部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形の胴体に連結される第一部材と、該第一部材の端部に関節部を介して屈曲可能に連結される第二部材とで構成される棒状部材における前記関節部であって、
該関節部は、
前記第一部材と第二部材のいずれか一方に備えられる一端側関節部と、他方に備えられる他端側関節部と、
前記一端側関節部と前記他端側関節部を回転可能に連結する一対の連結部とからなり、
前記連結部は、
一端側関節部と組み合わされて、一端側関節部を回転可能に軸支する一端側軸機構を構成するとともに、一端側関節部の回転角度を規制する一端側角度規制機構と、
他端側関節部と組み合わされて、前記一端側軸機構と平行に所定距離離間して他端側関節部を回転可能に軸支する他端側軸機構を構成するとともに、他端側関節部の回転角度を規制する他端側角度規制機構と、
少なくとも前記一端側軸機構と他端側軸機構、及び一端側角度規制機構と他端側角度規制機構を被覆し、関節部の伸長状態から屈曲状態において、前記第一部材の端部及び第二部材の端部と一体となった外観をなす一対の曲面部を含む
ことを特徴とする人形の関節部。
【請求項2】
一端側角度規制機構及び他端側角度規制機構は、第一部材に対して第二部材を前屈させないように回転角度を規制することを特徴とする請求項1に記載の人形の関節部。
【請求項3】
一対の曲面部のうち、少なくとも一方の曲面部が一方の連結部と一体に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の人形の関節部。
【請求項4】
一対の曲面部と一対の連結部は、一方の曲面部が一方の連結部と一体に形成され、他方の曲面部が他方の連結部と一体に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の人形の関節部。
【請求項5】
一端側関節部は、円板状の一端側連結板を備え、
一端側軸機構は、該一端側連結板の回転中心と一対の連結部とのいずれか一方に備えられる一端側回転軸と、他方に備えられ、該一端側回転軸と摺嵌して組み合わされる一端側軸孔とで構成され、
一端側角度規制機構は、一端側連結板の円板面と一対の連結部とのいずれか一方に備えられ、一端側回転軸を中心に所定角度の範囲で形成された周溝と、他方に備えられ、該周溝と摺動可能に嵌合して組み合わされる一端側角度規制ピンとで構成され、
他端側関節部は、少なくとも前記一端側連結板の板厚の間隔で平行に配された一対の他端側連結板を備え、
他端側軸機構は、該一対の他端側連結板間の間隔によって分割されて同軸上に配され、分割された両端側において、それぞれ、他端側連結板の回転中心と連結部とのいずれか一方に備えられる他端側回転軸と、他方に備えられ、該他端側回転軸と摺嵌する他端側軸孔とで構成され、
他端側角度規制機構は、他端側連結板の所定角度前屈状態で、前記一端側軸機構と、該一端側軸機構と当接する他端側連結板の前屈当接部で構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の人形の関節部。
【請求項6】
関節部は人形の脚部を形成する棒状部材に備えられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の人形の関節部。
【請求項7】
関節部は人形の腕部を形成する棒状部材に備えられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の人形の関節部。
【請求項8】
前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の関節部が少なくとも脚部を形成する棒状部材に備えられていることを特徴とする人形。
【請求項9】
前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の関節部が少なくとも腕部を形成する棒状部材に備えられていることを特徴とする人形。
【請求項10】
前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の関節部は、第二部材の中心軸と、第一部材の中心軸とが、横方向にずれていることを特徴とする人形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2008−228897(P2008−228897A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70807(P2007−70807)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(391053917)株式会社オビツ製作所 (9)
【Fターム(参考)】