説明

人形の頭部連結構造

【課題】頭部が、首部を介して胴体側に着脱可能で、所定の中心をもって任意の方向に揺動可能に連結する人形の頭部連結構造を提供する。
【解決手段】頭部1が、首部2を介して胴体側に着脱可能に連結される連結構造であって、頭部は、首部連結孔11を備えた中空状に形成され、首部は、頭部側に連結される頭部軸部3と、該頭部軸部と一体に連結され、胴体側に固定される首部本体4とからなり、頭部軸部は、前記首部連結孔を介して頭部内に挿入し、その首部連結孔の開口(丸孔)12の内縁に当接して頭部と連結するとともに、弾性力によって首部本体方向に前記首部連結孔の開口外縁領域を押し付ける弾性連結機構(当接部材5、弾性部材7)を備え、前記頭部軸部と首部本体は、所定の中心をもって任意の方向に揺動可能な摺動構造(摺動頭部36、摺動受け部45)を介して一体に連結されていることを特徴とする人形の頭部連結構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形の頭部連結構造に関する。
なお、本明細書において、人形とは、胴体と脚部と腕部と頭部を備えた人形全般に限らず、脚部や腕部を備えていない、例えば人魚のような人形も含む概念とする。また、いわゆる人形用素体といわれるものであって頭部が接続可能なものをも含む。また、手足、腰などの所要箇所が可動可能に構成されている、いわゆる可動人形や、手足、腰等が動かない人形の全ても対象とされる。前記可動人形には、所要可動箇所に別途関節部を設けているものや、関節部を設けず一体に成形されているものなど公知のもの全てが対象とされる。
また、人形を構成する材質にあっては、硬質であっても軟質であっても良く、本発明の範囲内で設計変更可能である。
【背景技術】
【0002】
昨今の人形業界において、特にフィギュアと称される人間の身体(裸体)形態を忠実に模写した構成を有する人形が需要者に人気を得ている。
このフィギュアなる人形は、一般に女児等が手に持って遊んだり、単に着せ替えをして遊んだりすることもあるが、昨今フィギュア需要者層も変化し、特に男性女性を問わず成人の需要者も多くなってきている。このような成人の需要者層では、夫々の需要者の趣味に応じて人形のパーツを交換する場合が多い。特に、人形の頭部は、その顔表情や髪型が多種多様であり、好みの顔表情や髪型の頭部を選んで、自分の人形に組み合わせたいと欲する需要者も多い。
【0003】
そこで本発明者は、このような需要者ニーズに応えるべく、特許文献1に開示の如く、頭部と首部の連結構造を先に提供している。
特許文献1に開示の頭部と首部の連結構造は、人形の胴体を構成する胴部外皮に一体に形成されている首部外皮に嵌め込んで装着される円筒状の首部外皮装着部(首部本体)と、該首部本体の上端にて、弾性部材を介して上下方向に揺動(伸縮)自在に備えられ、人形の頭部外皮に設けられている円形状の連結孔と比して大径の下端円形面を有する略円すい状の頭部外皮嵌着部(係止部)とで構成されている。そして、前記弾性部材は、係止部を常時首部本体の上端方向に引張り作用するコイルスプリングを一例として挙げている。
すなわち、前記頭部外皮の連結孔を押し広げて前記係止部を嵌め入れると、下端円形面が連結孔の内周縁に当接するとともに、弾性部材によって係止部が首部本体の上端方向に頭部を引き寄せ、前記下端円形面と首部本体の上端面とで前記連結孔内外周縁を挟持して首部を頭部(頭部外皮)に連結している。また、この連結孔への係止部の係止状態を解除して頭部と首部の連結を解くものとしている。
これにより、需要者は、顔表情の異なる頭部を好みに応じてその都度付け替えることで、需要者の好みに応じた人形にすることができる。
【0004】
また、近年、人形に思い思いの頭部を装着し、様々な衣装を着せたカスタムドールと呼ばれるオリジナルの人形を作成して、その人形にポーズをとらせて写真撮影した画像を公開するような遊び方が認知されつつある。
そのような遊び方をする愛好者にとっては、ポージングを施した人形の醸し出す雰囲気が特に重要な要素とされ、より現実の人間に近づいたポージングで深みのある感情を表現して、看者が感情移入をすることができるポージングを望む傾向がある。
【0005】
この場合、特許文献1に開示されている頭部と首部の連結構造では、頭部は首部に対して水平方向の回転動作しかできず、例えば、顔をうつむかせて憂いを表現したり、顔を見上げさせて甘えを表現したりといった感情を表したポージングをさせることができなかった。
そこで、本発明者は、特許文献2に開示の如く、頭部の一部に矩形状の長孔からなる首部連結孔の開口を設けた頭部構造を提供している。このような構造の頭部を前記連結構造と組み合わせれば、頭部を前後方向に傾けるとともに水平方向にも回転可能であるので、前記感情を表したポージングをさせることができるようになり、需要者の要望に応えることができた。
【特許文献1】特開2004−222935号公報(特に図9参照)
【特許文献2】特開2007−230号公報(特に図1及び図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、現実の人間の首は所定の中心をもって任意の方向に揺動することが可能であり、これにより、例えば、頭部を横方向に傾けたり、顔を斜め下にうつむかせて近くに視線を落としたりすることができる。
しかし、従来の特許文献2に開示した頭部を組み合わせた場合であっても、頭部を横方向に傾けることができず、顔を斜め下にうつむかせたポージングでは、視線を近くに寄せることができなかった。
例えば、頭部を横方向に傾けたり、顔を斜め下にうつむかせて近くに視線を落としたりするポージングを人形に取らせることができれば、より豊かな感情の表現が可能となる。従って、需要者には、このような現実の人間に近づいた深い感情移入を味わうことが可能なポージングができることに対する、さらに強い要望が生じていた。
本発明は、このような課題を解消するためになされ、その目的とするところは、頭部が、首部を介して胴体側に着脱可能で、所定の中心をもって任意の方向に揺動可能に連結する人形の頭部連結構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明がなした技術的手段は、頭部が、首部を介して胴体側に着脱可能に連結される連結構造であって、頭部は、首部連結孔を備えた中空状に形成され、首部は、頭部側に連結される頭部軸部と、該頭部軸部と一体に連結され、胴体側に固定される首部本体とからなり、頭部軸部は、前記首部連結孔を介して頭部内に挿入し、その首部連結孔の開口内縁に当接して頭部と連結するとともに、弾性力によって首部本体方向に前記首部連結孔の開口外縁領域を押し付ける弾性連結機構を備え、前記頭部軸部と首部本体は、所定の中心をもって任意の方向に揺動可能な摺動構造を介して一体に連結されていることを特徴とする人形の頭部連結構造としたことである。
【0008】
その摺動構造は、少なくとも摺動範囲の外周面が球面状に形成された摺動頭部と、該摺動頭部と内周面で摺接し、少なくとも摺動範囲の内周面が球面状に形成された摺動受部とを備えている場合もある。その場合、頭部軸部は、頭部内に挿入される上端側に座面部を一体に備え、首部連結孔を介して頭部外方に突出する下端側に摺動頭部を一体に備えてなる軸本体と、軸本体の頭部内に挿入される領域に配設される弾性連結機構とからなり、弾性連結機構は、軸本体を軸方向に移動可能に挿通するとともに、首部連結孔の内周縁に当接可能な当接部材と、前記軸本体の外周に巻回されるとともに、前記座面部と当接部材の間に組み込まれ、常に前記当接部材を首部連結孔方向へと付勢するコイル状の弾性部材とを含み、首部本体は、胴体側に嵌合固定可能な筒部と、筒部の上端側の内面領域に備えられる摺動受部とを含み、その摺動受部には、軸本体の摺動頭部の球径よりも小径の開口を備えていても良い。
また、首部連結孔の内周縁と当接する当接部材の端面には、当接部材を位置決めする位置決め構造を備えていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、頭部が、首部を介して胴体側に着脱可能で、所定の中心をもって任意の方向に揺動可能に連結する人形の頭部連結構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の一実施形態について説明する。なお、本実施形態は、本発明の一実施形態にすぎず、本発明の範囲内で設計変更可能である。
なお、図示する本実施形態では、フィギュアと称される人間を模写した人形用の頭部を一実施形態として挙げるが、本発明は何等これに限定解釈されるものではなく、熊や鳥などの動物を模写した人形の頭部、漫画キャラクタなどを立体化した人形の頭部など、一般に人形と称されるものの頭部の全てを対象とする。また、いわゆるソフトビニル樹脂製の人形の首部骨格を本実施形態では首部として説明するが、人形全体が硬質材からなるものにあっては、該人形の首部そのものが首部として称される。
【実施例1】
【0011】
図1及び図2において、符号1は、本実施例における人形用の頭部の概略断面を示し、例えば首部2よりも下方の図示しない胴体部,腕部,脚部に骨格を備えたソフトビニル製人形の軟質製の頭部として用いられる。
【0012】
頭部1は、本実施例では、例えば軟質合成樹脂材(ソフトビニル樹脂)をもって、例えば回転成形,スラッシュ成形などで人間の頭部を模写した外観形態を有するとともに内部中空に形成されている。また、頭部1の少なくとも頭部所定領域に植毛を施すこともある。
なお、図中符号11は、当該頭部1と首部2を連結する際の首部連結孔である。
【0013】
首部連結孔11は、頭部1の首部連結部位の所定領域に、頭部1の内外面を貫通して設けられている丸孔12と、その丸孔12の周辺の構造からなる。この丸孔12は、後述する当接部材5よりも小径に形成されているものであればよく、特に図示形状に限定解釈されない。
また、丸孔12の周辺の構造は、丸孔12の外周縁は頭部内方(図中上方)に向けて傾斜して形成された擂鉢状の傾斜面13と、丸孔12の上縁12aから頭部内方(図中上方)に向けて延出した、後述する当接部材5より僅かに大径の内径空間を有する縁部14と、丸孔12の上縁12aと縁部14とで円環状に形成された段部15とで構成されている。なお、前記縁部14は、当接部材5の位置決め構造となっている。
また、頭部1に形成される顔表情や図示しない耳形状、眼球部分等にあっては任意であって限定はされない。
【0014】
首部2は、図1〜図9に示すように、頭部1に連結される頭部軸部3と、胴体(図示せず)に固定される首部本体4とで構成されている。また、頭部軸部3と首部本体4とは、所定の中心をもって任意の方向に揺動可能な摺動構造で連結されている。
【0015】
頭部軸部3は、軸本体31と弾性連結構造で構成されている。
軸本体31は、図3に示すように、所定長さの棒状に形成された棒状部材32と、該棒状部材32の上端32a側に備えられる座面部34と、棒状部材32の下端32b側に備えられる摺動頭部36と、座面部34と摺動頭部36との間に配設される弾性連結機構とからなる。
座面部34は、例えば本実施例では合成樹脂材からなり、前記頭部1の首部連結孔11の丸孔12に挿入可能な径を有する円板形状に形成され、その一端面(上面)側には先細りのテーパ状部34aを一体に有している。
棒状部材32は、その長さ方向略中間部分から下端32bにかけて、横断面形状で小判型に形成されている。具体的には、平行する平面32cおよび平面32dの一対の対向する長辺間を、それぞれ、円弧面で連続して接続した形状に形成されている。
棒状部材32の下端32bには、座面部34に向けて、ネジ孔35が設けられている。なお、軸本体31の長さは、前記座面部34を備える上端32a側が首部連結孔11から頭部1の内部に挿入されて連結可能な長さに形成されれば良い。従って、ここでは特に軸本体31の長さは限定しない。
【0016】
また、棒状部材32の軸本体31の下端32bには、摺動頭部36が備えられている。
摺動頭部36は、上端38a及び下端38bに、それぞれ平行する平面が形成されるとともに、その上端38aと下端38bを結ぶ外周面38が球面状に形成され、所謂ビーズ形状をしている。
上端38aには、下端38b方向に接合孔37aが設けられ、下端38bにネジ収容孔37bが設けられている。
前記接合孔37aは、前記棒状部材32の小判型の横断面形状よりも僅かに大きな相似形状に形成されている。これにより、該接合孔37aに棒状部材32の下端32b側が接合された場合に、接合孔37aの一対の平面と棒状部材32の一対の平面が嵌合して、棒状部材32に対して摺動頭部36が周方向に回転することを防止する。
【0017】
さらに、接合孔37aとネジ収容孔37bの底面同士が、連通孔37cで結ばれるとともに、前記接合孔37aと連通孔37cとネジ収容孔37bの各軸心は摺動頭部37の軸心を共有するように形成されている。
前記接合孔37aには軸本体31の下端32bが差し込まれるとともに、ネジ収容孔37bにはネジSが差し込まれ、ネジSは、連通孔37cを介して、軸本体31のネジ孔35にネジ結合される。これにより、頭部軸部3と摺動頭部36が一体となって固定される。
【0018】
弾性連結機構は、図4及び図5に示すように、軸本体を軸方向に移動可能に挿通するとともに、首部連結孔の内周縁に当接可能な当接部材5と、前記座面部34と当接部材5の間に組み込まれ、常に前記当接部材5を首部連結孔11の方向へと付勢する弾性部材7とで構成されている。
【0019】
当接部材5は、上端51aの開口52aと下端51bの開口52bを連通する貫通孔を備えるとともに、外径を頭部1の首部連結孔11の丸孔12の孔径よりも大径に形成された略円筒形状となっている。
上端51aの開口52aは、所定の深さに掘り込まれて弾性部材収容孔55aを形成している。
【0020】
下端51bの開口52bは、前記軸本体31の棒状部材32の小判型に形成された横断面形状よりもよりも僅かに大きな相似形状に形成されるとともに、前記弾性部材収容孔55aの底面53cまで貫通して掘り込まれて中心孔55bを形成している。この場合、開口52aは開口52bよりも大きく形成されている。
当接部材5の外周面56の上端51a側は、小径に絞り込まれたテーパ形状56aを構成している。
また、当接部材5は、前記開口52a(弾性部材収容孔55a)及び開口52b(中心孔55b)に軸本体31の棒状部材32を挿通することにより、軸本体31の座面部34と摺動頭部36との間に、当接部材5の上端51a側が座面部34方向に向くように組み込まれる。
このとき、前記開口52b(中心孔55b)に棒状部材32が相通されると、開口52b(中心孔55b)の一対の平面と棒状部材32の一対の平面が嵌合して、棒状部材32に対して当接部材5が周方向に回転することを防止する。
【0021】
さらに、下端51bの面には、所定の間隔で平行して形成された溝53a,53bを備えている。従って、下端51bの縁部は、溝53a,53bの外側に形成される縁54a,54bと、溝53a,53b間に形成される縁54c,54dとに分けて形成されている。
当接部材の外径は、頭部1の首部連結孔11の丸孔12の孔径よりも大径に形成されているので、前記縁54a,54b,54c,54dは、首部2の首部連結孔11の内周縁に当接することができる。
【0022】
弾性部材7は、本実施例では、一例としてコイルスプリング7が採用されている。具体的には、コイルスプリング7は、棒状部材32の外周に巻回されるとともに、前記当接部材5の上端51aの開口52aの径よりも小径に形成されている。
コイルスプリング7の上端7aは座面部34に当接するとともに、コイルスプリング7の下端7b側が前記当接部材5の開口52aに収容されることにより、前記座面部34と当接部材5の間に組み込まれている。これにより、コイルスプリング7の上端7aが座面部34に支えられることにより、下端7bが当接部材5を首部連結孔11の方向へと常に付勢する構造となっている。
【0023】
なお、本実施例では、コイルスプリング7を前記座面部34と当接部材5の間に組み込むことによって、当接部材5を首部連結孔11の方向へと常に付勢する構造としたが、これに限定されず、例えば、弾性部材7の上端7aを棒状部材32の上端32aに直接固定しても良い。このような構成では、軸本体31は座面部34を備えなくても良い。
また、弾性部材7は、当接部材5を首部連結孔11の方向へと常に付勢する可能であれば、コイルスプリングでなくともよい。一例としてゴム状体などが挙げられる。
【0024】
首部本体4は、例えば本実施例では硬質合成樹脂材で、図6に示すように、図示しない胴体側に嵌合固定可能で、かつ、摺動頭部36よりも球径よりも大径の内径を有する筒部43と、該筒部43の上端4a側に配された摺動受け部42を備えている。
摺動受け部42は、筒部43の内周面が、開口41に向けて開口の中心方向に徐々に小径となるように絞り込んで湾曲して備えられ、その湾曲した内周面が摺動受け部42を構成している。これにより、首部本体4の上端4aは、摺動頭部36の球径よりも小径の開口41が形成される。
さらに、筒部43の外周面の上端4a側には、鍔46が備えられている。
鍔46は、水平方向に突出するとともに円周方向に連続する鍔面46aと、鍔面46aから上端4aの開口41に向けて、開口41の中心方向に徐々に小径となるように湾曲する、昇り傾斜状のテーパ形状46bで構成されている。
前記鍔面46aは、図示しないソフトビニル樹脂製の胴体部から一体に延設される円筒状の首部外皮内に当該首部本体4を嵌め込んだ際、その鍔面46aに首部外皮の端縁が当接する。
【0025】
また、図中47は、首部本体4の外周所定領域に複数本設けられている脱落防止部で、本実施例では、円周方向に連続した突条を、首部本体4の軸方向に所定間隔をあけて複数突設されている。この脱落防止部47は、図示しないソフトビニル樹脂製の胴体部から一体に延設される円筒状の首部外皮内に、首部2を嵌め込んだ際の脱落防止を図るための構造である。よって、本実施例の構造になんら限定されるものではなく、首部2の脱落を防止し得る構造であれば本発明の範囲内である。なお、この脱落防止部47を備えない形態も本発明の範囲内である。なお、本実施例では、首部本体4を円筒状に形成しているが、特に限定されず、角筒状など本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0026】
摺動構造は、前記頭部軸部3の摺動頭部36と、前記首部本体4の摺動受け部45とで構成されている。この場合、摺動頭部36の球面状に形成された外周面38と、摺動受け部45とが摺接して連結される。これにより、頭部軸部3は、摺動頭部36の中心を揺動中心にして、首部本体4に対して任意の方向に揺動可能となる。
なお、摺動頭部36の球面状に形成された外周面38と、摺動受け部45は、少なくともそれぞれの摺動範囲が球面状に形成されれば良い。
また、摺動構造は、摺動頭部36と、胴体に固定される首部本体4とが、所定の中心をもって任意の方向に揺動可能に連結されれば、他の構成であっても良い。
例えば、首部本体4に摺動頭部36を備えるとともに、頭部軸部3に該摺動頭部36と摺接可能な摺動受け部45を備えても良い。
【0027】
なお、上記構成部品からなる首部2を組み立てる場合には、コイルスプリング(弾性部材7)の下端7b側を当接部材5の弾性部材収容孔55aに収容するともに、コイルスプリング7と当接部材5を頭部軸部3の棒状部材32の下端32bから嵌め込む。
次に、首部本体4の上端4aの開口41からは、頭部軸部3の棒状部材32の下端32bを挿入するとともに、首部本体4の筒部43の下端から摺動頭部36を挿入し、棒状部材32の下端32bを摺動頭部36の上端38aの接合孔37aに嵌合させる。
さらに、首部本体4の筒部43の下端からから棒状部材32のネジ収容孔37bにネジSを挿入し、連通孔37cを介して軸本体31のネジ孔35とネジ結合させることにより、首部2の組み立て品を完成させる(図7参照)。
【0028】
ここで、本実施例の頭部連結構造による頭部1と首部2の連結作動と連結解除作動について図8、図9及び図1に基づいて説明する。
【0029】
まず、頭部1と首部2とを連結する作動について説明する。
首部2を頭部軸部3側から頭部1の首部連結孔11の丸孔12に差し込む(図8)。このとき、頭部1の首部連結孔11を温風等で温めておくことにより、首部連結孔11周辺の材質が柔らかくなるので、差し込み易くなる。
このとき、丸孔12の孔径は、当接部材5の外径よりも小径に形成されているので、当接部材5のテーパ面54aが丸孔12を頭部内方(図中上方)に押し付けられつつ、頭部内方へと侵入し、その侵入に従って丸孔12を押し広げる。これにより、頭部軸部3と当接部材5が頭部内へ侵入することができる。
頭部軸部3と当接部材5を頭部内部へと侵入しつづけると、当接部材5の下端51bの縁部54a,54b,54c,54dに丸孔12の段部15が引っ掛かる(図9)。
【0030】
次に、首部2を頭部外方(図中下方)に僅かに引っ張ると、図1に示すように、段部15に引っ掛かった当接部材5の下端51bの縁部54a,54b,54c,54dが当接部材5を押し上げて、当接部材5の下端51bと首部本体4の上端4aとの間に隙間が生じるとともに、該隙間に押し広げられていた丸孔12が嵌まり込む。
このとき、当接部材5は、当接部材5は、縁部14によって収まりよく位置決めされるとともに、コイルスプリング7の付勢力によって首部連結孔11方向(図中下向き)に押し付けられているので、段部15と縁部54a,54b,54c,54dが密着する。
【0031】
また、頭部1の首部連結孔11の外面側では、外周縁に形成されている擂鉢状の傾斜面13が首部本体4の昇り傾斜状のテーパ46aに当接している。このとき、コイルスプリング7の付勢力によって首部連結孔11方向へと押し付けられている当接部材5を介して、前記擂鉢状の傾斜面13が首部本体4のテーパ形状46bに押し付けられて密着する。これにより、首部2と頭部1が一体に連結される。
なお、頭部1と首部2の連結を解除させる場合には、首部2を頭部外方(図中下方)に向けて強く引き抜けば良い。このとき、頭部1の首部連結孔11を温風等で温めておくことにより、首部連結孔11周辺の材質が柔らかくなるので、引き抜き易くなる。
【0032】
本実施例による頭部連結構造は、上述の如く、首部2に対する頭部1の脱着が容易になっただけでなく、頭部軸部3と首部本体4とを連結している摺動構造によって、従来の頭部連結構造による動作に加えて、従来の頭部連結構造では不可能であった動作が可能となっている。以下に、本実施例によって可能となった動作について説明する。
摺接構造は、頭部軸部3の球面状に形成された外周面38が、弾性部材7の弾性力によって、常に首部本体4の摺動受け部45に押し付けられて摺接しているので、適度な摩擦を保持しつつ、頭部軸部3を、首部本体4に対して、棒状部材32が開口41に当接しない範囲で、全方向に任意に揺動させることが可能となる(図10参照)。
【0033】
この場合、その揺動中心は、頭部軸部3の中心となる。もちろん、従来のように、頭部軸部3は、首部本体4に対して、水平方向に回転させることも可能である。このような動作を組み合わせることによって、首部本体4に対して頭部1を横方向に傾ける動作(頭部の両耳間断面、図11参照)をさせたり、顔を斜め下にうつむかせて近くに視線を落とす動作(図12参照)をさせたりすることができる。これにより、豊かな感情を表現したポージングが可能となる。
また、頭部1と首部2を連結させた場合には、揺動中心となる頭部軸部3が頭部1の直下に配されるので、実際の人間ように、頭部の付け根で頭部が揺動する状態が再現され、より現実の人間に近づいた深い感情移入を味わうことが可能なポージングができるようになった。
【0034】
このとき、棒状部材32は、当接部材5に空回りしないように挿通されるとともに、棒状部材32の下端32bには、摺動頭部36が空回りしないように接続されているので、棒状部材32と当接部材5と摺動頭部36は、相互に周方向の回転が抑止されている。従って、頭部1は、摺動構造によってのみ回転する。
これにより、頭部1は、摺動頭部36と摺動受け部45の適度な摩擦によって意図しない回転が抑止されて、ポージング時の頭部1の向きがしっかりと保持される。また、上記構成により、摺動頭部36が棒状部材32に対して空回りしないので、摺動頭部36と棒状部材32を固定するネジSが緩むことも防止される。
【0035】
なお、上述した本実施例では、棒状部材32と、摺動頭部36の接合孔37aと、当接部材5の開口52b(中心孔55b)を小判型に形成して、その小判型の面同士が嵌合することによって、上記各部材が互いに空回りすることを防止しているが、空回りが防止可能であれば、それぞれ、小判型に限らず、他の形状に形成しても良い。たとえば、横断面形状で星型や、D型であっても良い。あるいは、頭部1の回転をあまり抑制する必要がない場合には、上記から空回りを防止する構成を備えなくても良い。
「変形例1」
【0036】
上述した本実施例では、頭部軸部3に当接部材5を配して、該当接部材5の下端51bの縁54a,54b,54c,54dが、丸孔12の段部15と当接する構成を説明したが、頭部軸部3に当接部材5を配さない場合であっても本実施例と同様の効果を得ることができる。
この場合には、図13に示すように、弾性部材7を丸孔12の段部15と当接することが可能に大径に形成するとともに、それとともに、座面部34の径も大径となった弾性部材7を固定可能な大径に形成すれば良い。
「変形例2」
【0037】
なお、本実施例では、頭部1の首部連結孔11に丸孔12を設け、その丸孔12に首部2を連結した場合を説明したが、首部2は他の構成による頭部1と連結しても良い。例えば、本発明者が特許文献2で提供しているような、前後方向に長い、矩形状の長孔62からなる首部連結孔71を設けた頭部6と連結しても良い(図13〜図15参照)。
頭部6の首部連結孔71は、該矩形状の長孔61の周縁64が頭部内部方向(図15中矢印方向)に盛り上がって形成されるとともに、首部連結孔71の外周縁は頭部内方に向けて傾斜した、擂鉢状の傾斜面73を形成している。
頭部6と首部2とを連結する場合には、当接部材5の下端51bに平行して形成された溝53a,53bを頭部6の長孔61の周縁64に嵌合させることにより、頭部6と首部2がしっかりと連結する。
【0038】
なお、この場合には、上述した本実施例の効果に加えて、首部2は、長孔61に沿って頭部6の前後方向に移動可能であるので、頭部軸部3を首部本体4に対して前後方向に揺動する動作と組み合わせることによって、頭部6をより深い角度で前後方向に揺動させることが可能となる。これにより、人形に空を見上げるポージングをさせたり、足元を見つめるポージングをさせたりする、従来では不可能であったポージングをさせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明首部の連結構造の一使用形態を示す概略断面図で、首部を頭部に連結した状態を示す。
【図2】頭部の下側構造を示す下面図である。
【図3】(a)は軸本体の側面図、(b)は摺動頭部の断面図、(c)は軸本体を示す断面図である。
【図4】(a)は当接部材を斜め上方から見た斜視図、(b)は当接部材を斜め加法から見た斜視図、(c)は当接部材の断面図である。
【図5】組み立てた頭部軸部の断面図である。
【図6】(a)は首部本体の側面図、(b)は首部本体の断面図である。
【図7】組み立てた首部の断面図である。
【図8】頭部に首部を差し込む状態を示す概略断面図である。
【図9】頭部に首部を差し込んでいる状態を示す概略断面図である。
【図10】首部本体に対する頭部軸部の揺動範囲を示す説明斜視図である。
【図11】頭部を横方向に傾けた状態を示す概略断面図である。
【図12】顔を斜め下にうつむかせて近くに視線を落とす状態を示す斜視図である。
【図13】当接部材を配さない第1変形例を示す頭部の概略断面図である。
【図14】本発明の第2変形例を示す概略断面図である。
【図15】第2変形例による頭部の下側構造を示す下面図である。
【図16】第2変形例による頭部の長孔の周縁と当接部材の溝部との嵌合構造を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 頭部
2 首部
3 頭部軸部
4 首部本体
5 当接部材
7 弾性部材
11 首部連結孔
12 丸孔
31 軸本体
32 棒状部材
36 摺動頭部
45 摺動受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部が、首部を介して胴体側に着脱可能に連結される連結構造であって、
頭部は、首部連結孔を備えた中空状に形成され、
首部は、
頭部側に連結される頭部軸部と、該頭部軸部と一体に連結され、胴体側に固定される首部本体とからなり、
頭部軸部は、前記首部連結孔を介して頭部内に挿入し、その首部連結孔の開口内縁に当接して頭部と連結するとともに、弾性力によって首部本体方向に前記首部連結孔の開口外縁領域を押し付ける弾性連結機構を備え、
前記頭部軸部と首部本体は、所定の中心をもって任意の方向に揺動可能な摺動構造を介して一体に連結されていることを特徴とする人形の頭部連結構造。
【請求項2】
摺動構造は、
少なくとも摺動範囲の外周面が球面状に形成された摺動頭部と、
該摺動頭部と内周面で摺接し、少なくとも摺動範囲の内周面が球面状に形成された摺動受部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の人形の頭部連結構造。
【請求項3】
頭部軸部は、
頭部内に挿入される上端側に座面部を一体に備え、首部連結孔を介して頭部外方に突出する下端側に摺動頭部を一体に備えてなる軸本体と、
軸本体の頭部内に挿入される領域に配設される弾性連結機構とからなり、
弾性連結機構は、
軸本体を軸方向に移動可能に挿通するとともに、首部連結孔の内周縁に当接可能な当接部材と、
前記軸本体の外周に巻回されるとともに、前記座面部と当接部材の間に組み込まれ、常に前記当接部材を首部連結孔方向へと付勢するコイル状の弾性部材とを含み、
首部本体は、
胴体側に嵌合固定可能な筒部と、
筒部の上端側の内面領域に備えられる摺動受部とを含み、
その摺動受部には、軸本体の摺動頭部の球径よりも小径の開口を備えていることを特徴とする請求項2に記載の人形の頭部連結構造。
【請求項4】
首部連結孔の内周縁と当接する当接部材の端面には、当接部材を位置決めする位置決め構造を備えたことを特徴とする請求項3に記載の人形の頭部連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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