説明

什器システム

【課題】固定什器および移動什器を使用する空間としての使い勝手および体裁を向上させることができる。
【解決手段】テーブル1の所定位置にカート2を組合せた給電位置で、テーブル1に具備した給電装置30からカート2に具備した受電装置40へ非接触給電を行う電源装置10を備えている。給電装置30には固定側天板11の上面11aに給電側コイル31を配置し、受電装置40には移動側天板20が固定側天板11の所定位置に重なった状態で、移動側天板20の下面20bに給電側コイル31に対して間隔をもって受電側コイルを対向配置させ、給電側コイル31と受電側コイルとを近接させ、給電側コイル31の電流により生じる電磁誘導によって受電側コイルに電流を発生させることで非接触給電が行われる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定什器から移動什器へ給電を行う什器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品等を載置したり収納したりすることができ、かつ移動自在な多目的カートが、病院や介護施設等においてナースカート等として広く利用されており、近年、カルテ等の電子化に伴う情報端末等の電子機器の利用の増加から、バッテリー及び電源コードを配設して、カート上で利用される電子機器への給電を可能とした多目的カートが一般的となってきている。
【0003】
そして、上記のような電源コードを用いるカートなどの移動什器では、移動什器に後方部およびこれに連通する左右側方部を連続して切り欠いた凹部を設けておき、この凹部内にテーブルなどの固定什器の天板の少なくとも前縁部を収容するように固定什器に対して組み合わせて設置可能としたものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
これら特許文献1、2の構造では、固定什器に電源取出し口を設けておけば、移動什器を固定什器に組合せて配設しながら、移動什器上にバソコン等の電子機器を載置して使用することができるという利点を有しており、また、その際の使用形態における什器の占有範囲を最小限とすることも可能とされている。
さらに、こうした什器においては、什器に設けられた天板上に載置した電子機器を用いて執務を行う場合が多くみられており、電子機器に対して電源供給が可能な給電装置が設けられているのが望ましい。この場合、什器の給電装置としては、建物の内壁等に設けられた電源コンセントと什器に載置された電子機器とを電源ケーブルで接続して電源を供給する方法が一般的となっている。
【0004】
ところで、上記のような電源コードを用いるカートとして、建物の床面に設けた給電側のコイルと、移動什器に搭載した受電側のコイルとの間に生じる電磁誘導を利用した非接触給電装置によって、移動什器のバッテリーに対して給電する給電方法が、例えば特許文献3に提案されている。
この方法によれば、床面に給電部を設ける一方、カートに受電部を設け、カートを床面上の給電部に配置することにより、電源ケーブルを介在させずに給電するため、給電作業を簡易に行うことができ、また、床面上を電源コードにより煩雑にすることなく、室内の体裁を良好にすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−017929号公報
【特許文献2】特開2009−279414号公報
【特許文献3】特許第4469290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の給電方法では、以下のような問題があった。
すなわち、上記特許文献1、2の給電方法によれば、電源ケーブルが建物内壁と什器との間に配線されることになるため、複数の什器を並べて使用すると多数の電源ケーブルが床面上に配線されることになり、空間の使い勝手および什器周りの体裁が悪くなってしまう。什器が設置位置を固定して使用されるものであれば、電源ケーブルをケーブルカバー内に収容して被覆する等の対策を行う場合もあるが、移動什器である場合には、その使い勝手の問題から電源ケーブルをケーブルカバー内に収容することができなかった。
【0007】
また、上記特許文献3の給電方法によれば、執務空間・居住空間の床面上に給電側コイルを設置する必要があると共に、その床面上の給電側コイルに対応する受電側コイルがカートの下方に配置されることになる。そして、カートの天板上で電子機器を載せて使用する場合には、その受電側コイルから天板上へ電源ケーブルを配線する必要があり、カートにおける配線が煩雑になるうえ、見栄えが悪くなるといった問題があり、その点で改良の余地があった。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、固定什器および移動什器を使用する空間としての使い勝手および体裁を向上させることができる什器システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る什器システムでは、略水平方向に張り出した固定側天板を有する固定什器と、床面上に移動可能に設けられるとともに固定側天板の上面の所定位置で重なる移動側天板を有する移動什器とからなる什器システムであって、固定什器には、固定側天板に給電部を配置させた給電装置が設けられ、移動什器には、移動側天板が固定側天板の所定位置に重なった状態で、移動側天板の下面側に給電部より給電可能な受電部を配置させた受電装置が設けられていることを特徴としている。
【0010】
本発明では、移動什器を移動させて固定什器の所定の給電位置に配置し、移動側天板が略水平方向に張り出した固定側天板の所定位置に重なり、固定側天板の給電部の上方に近接した状態で受電部が配置されることによって、給電部より受電部に給電を行うことができる。
そして、受電部が移動側天板の下面に設けられ、受電部と移動側天板上で使用する電子機器との距離が近接しているので、受電部に接続される電源ケーブルの配線を移動側天板のみに収めて処理することができ、且つ配線距離を短くすることができることから、移動什器の体裁を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る什器システムでは、移動什器には、固定側天板が進入可能な凹部を有し、凹部の上面部が移動側天板であることが好ましい。
本発明では、移動什器に固定側天板が進入可能な凹部を有する場合であっても、凹部の上面部の下面に受電部を配置することで、この上面部のみで電源ケーブルの配線を処理することができる。
【0012】
また、本発明に係る什器システムでは、移動側天板が固定側天板の所定位置に重なることで、受電部が移動側天板の下面に給電部に対して間隔をもって対向配置された状態となって非接触給電が行われる構成であることが好ましい。
本発明では、給電部に受電部が近接して位置するように移動什器を固定什器に対して配置することによって、給電部から移動什器の受電装置に電源を供給する非接触給電を行うことができる。
そして、受電部が移動側天板の下面に設けられ、受電部と移動側天板上で使用する電子機器との距離が近接しているので、受電部に接続される電源ケーブルの配線を移動側天板のみに収めて処理することができ、且つ配線距離を短くすることができることから、移動什器の体裁を向上させることができる。
また、非接触給電とすることで、移動什器の受電部を固定什器の電源取出し口(給電部)に接続する作業を省略することができ、利便性を高めることができる。
【0013】
また、本発明に係る什器システムでは、給電部は、固定側天板の縁端部に設けられた給電側コネクタであり、受電部は、移動側天板が固定側天板の所定位置に重なった状態で、移動側天板の下面に配置されるとともに、給電側コネクタに接続する受電側コネクタであり、給電側コネクタと受電側コネクタとを接触させることで接触給電が行われる構成であってもよい。
本発明では、固定什器に対する所定の給電位置に移動什器を配置させたとき、固定側天板の給電側コネクタと移動側天板の受電側コネクタとが電気的に接続され、固定什器と移動什器との間で接触給電を行うことができる。
そして、受電側コネクタが移動側天板の下面に設けられ、受電側コネクタと移動側天板上で使用する電子機器との距離が近接しているので、受電側コネクタに接続される電源ケーブルの配線を移動側天板のみに収めて処理することができ、且つ配線距離を短くすることができることから、移動什器の体裁を良好に収めることができる。
【0014】
また、本発明に係る什器システムでは、移動側天板に受電部が内蔵されていることが好ましい。
本発明では、移動側天板の下面より受電部が突出するのをなくすことができるので、移動什器の体裁を良好に収めることができる。
【0015】
また、本発明に係る什器システムでは、受電装置には、バッテリーを備えていることが好ましい。
本発明では、固定什器から離れた場所でも移動什器上で電子機器を受電装置のバッテリーに接続して長時間にわたって使用することが可能となり、什器としての使い勝手を良好とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の什器システムによれば、移動側天板が固定側天板の所定位置に重なった状態で、移動側天板の下面側に設けた受電部が固定側天板の給電部より給電される構成であり、このとき移動側天板上で使用する電子機器と受電部とが近接しているので、両者を繋ぐ配線が短く、且つ移動側天板のみで処理することができる。そのため、固定什器および移動什器を使用する空間としての使い勝手および体裁を向上させることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態による什器システムの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す什器システムの側断面図である。
【図3】図1に示す什器システムの一部省略した上面図である。
【図4】図1に示す什器システムを前方から見た図である。
【図5】図2に示す給電状態の拡大図である。
【図6】給電装置の構成を示す斜視図である。
【図7】図6に示す給電装置のリミット部の平面図である。
【図8】電源装置の接続構成を模式的に示した図である。
【図9】第2の実施の形態による什器システムを示す側断面図であって、図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態による什器システムについて、図面に基づいて説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1乃至図5に示すように、本第1の実施の形態による什器システムは、例えば病院や介護施設等のナースステーションに設けられるテーブル1(固定什器)と、テーブル1と組み合せて使用可能であり、そのテーブル1から離れて床面F上を走行させて使用することが可能なカート2(移動什器)とを備えるとともに、テーブル1の所定位置にカート2を組合せた状態(以下、この位置を「給電位置R」という)で、テーブル1に具備した給電装置30からカート2に具備した受電装置40へ非接触給電を行う電源装置10を備えている。
ここで、以下の説明では、図2でテーブル1に対してカート2が近接離反する方向となる紙面左右方向を「前後方向X」とし、また紙面左側(テーブル1に対するカート2側)を「前方」とし、同じく紙面右側を「後方」とする。
【0020】
テーブル1は、床面Fに載置された状態で固定位置に配置され、一対の逆T字形の脚部12、12により下方より支持された前記固定側天板11を具備し、その固定側天板11の下方にカート2の一部を収容可能な収容部13を有している。つまり、図2に示す側面視で、固定側天板11が脚部12、12の上端支持部12aから略水平方向に張り出した構成となっている。
【0021】
固定側天板11は、平面視で略長方形状をなし、その中央部には電源用開口11cを有し、そこに上面が開いた電源収容ボックス14が嵌合されている。電源収容ボックス14は、外部に接続可能なコンセント(図示省略)が収容され、このコンセントから給電装置30の電源が取れるようになっている。なお、一対の脚部12、12は、それぞれ固定側天板11の対向する短辺側に寄った位置に設けられている。
【0022】
固定側天板11の所定位置には、後述する給電側コイル31を下面側から嵌合させるための円孔15が厚さ方向に貫通した状態で設けられている。なお、この円孔15の固定側天板11における所定位置とは、詳しくは後述するが、カート2がテーブル1に対する所定の給電位置Rに位置する状態で、カート2の後述する移動側天板20(後述する凹部29の上面部に相当)の下面20b側の範囲となる。
また、固定側天板11の下面11bには、給電装置30取付けられている。この給電装置30に関しては、カート2に設けられる後述する受電装置40とともに後述する。
【0023】
カート2は、床面F上を走行可能な走行手段であるキャスター24を備えた架台21と、架台21の上に設置されて物品を収容可能な収納部22と、収納部22の上方に設けられて上面に情報端末などの電子機器を載置可能な移動側天板20とを備えて概略構成されている。
【0024】
収納部22は、架台21上の左右側縁に立設した側面視倒立U字形をなす左右1対の側面枠23、23により構成されている。各側面枠23は、前側に設けられた前部支柱231と、後側に設けられた後部支柱232と、前部支柱231の上端から後側に向けて水平に延び、かつ後部支柱232に連結された横桟233とにより枠組みされている。
上下方向を向く前部支柱231、後部支柱232は、カート2の操作時に、障害物等との衝突による収容物の破損を防止する保護部材となる。前後両支柱231、232間には、複数のワイヤー部材234が上下に所望の間隔をもって前後方向に沿って架設されている。
【0025】
左右の側面枠23、23は、その前側上部間で横桟233と略同じ高さに、左右方向に延びる連結板25により連結されている。
【0026】
収納部22内における左右の側面枠23、23間には、収容物を収容可能な上下2段のトレイ26、26が配設されており、各トレイ26は、各側面枠23における前後両支柱231、232間に架設されたワイヤー部材234によって着脱自在に支持されている。
【0027】
左右の前部支柱231、231における各々の上部には、収納部22の上面より上方に離間する位置において、円弧状をなして前側に折曲させることにより、円弧状の折曲部と、前向部とが形成され、この折曲部により、カート操作用のハンドル部27、27が、また前向部により、天板支持部28、28がそれぞれ形成されている。左右の両天板支持部28、28上には、移動側天板20が載置され、かつ固定されている。
これにより、収納部22の上部を構成する横桟233と、左右の天板支持部28、28および移動側天板20の下面20bとの間には、前側および前後方向に直交する左右方向両側に開口するとともに、後側がハンドル部27によって閉鎖された凹部29が形成されている。
【0028】
凹部29は、カート2とテーブル1とが近接または当接して前記給電位置Rに位置したときに、テーブル1の固定側天板11が進入するように構成されている。すなわち、高さ方向の位置がテーブル1の固定側天板11と略等しくなるように形成されているとともに、固定側天板11が挿入可能な幅となるように天板支持部28、28と横桟233、233との離間寸法が設定されている。また、凹部29にテーブル1の固定側天板11が挿入された状態で、カート2の収納部22がテーブル1の固定側天板11の下方に潜入し、カート2の移動側天板20および天板支持部28、28がテーブル1の固定側天板11の上方に位置している。これにより、カート2の移動側天板20上に、パソコン等を載置したままの状態で、カート2の収納部22を、テーブル1の固定側天板11の下方に潜入させて使用することができる。
【0029】
この連結板25の上面の所定位置には、上方に向けて突出する凸部51(図1参照)が設けられている。この凸部51は、図6に示すように、給電装置30の後述するスイッチ部32をオンオフするためのものであり、詳しくは後述する。
また、図2および図5に示すように、連結板25の上面には、凸部51よりも前方側で、給電位置Rで固定側天板11の縁端部11dに当接するストッパー52が連結板25の上面よりも上方に突出した状態で固定されている。
このストッパー52は、凹部29にテーブル1の固定側天板11が進入したときに、テーブル1の固定側天板11の縁端部11dと当接してテーブル1の固定側天板11が進入する奥行きを規制している。
【0030】
図1乃至図5に示すように、移動側天板20は、テーブル1に対する給電位置Rにおいて、固定側天板11の上面11aに高さ方向の間隔をもった所定位置で重なるようになっている。この移動側天板20は、上面20aにパソコン等の電子機器(図1の符号P)を載せてカート2の前方側から作業を行うことが可能であり、移動側天板20に載置した電子機器が後方側に落下しないように後方側外周部20c(図1)が上方に向けて突出している。
【0031】
さらに、図2および図5に示すように、移動側天板20の下面20bには、ボックス形状の受電装置40(詳しくは後述する)が固定されている。そして、移動側天板20の所定位置には挿通孔20dが厚さ方向に貫通して設けられており、これにより受電装置40の出力側のコンセント(図示省略)に接続する電源ケーブル47が下面20b側から天板の上方へ向けて挿通されている。
【0032】
さらに、固定側天板11の下面11bには、この下面11bから突出しカート2を移動させて凹部29に固定側天板11を進入させるときにカート2を案内する一対のカートガイド部材16、16(ガイド手段)が設けられている。
カートガイド部材16、16は、凹部29に固定側天板11が進入したときにカート2の両側方に配設された一対の棒状の部材で、それぞれ延在方向の途中で屈曲している。一対のカートガイド部材16、16は、図3に示すように、互いの離間寸法が、前側となる基端16aにおいてカート2の左右方向の外幅寸法、すなわち側面枠23、23同士の外幅寸法よりも大きいとともに、後側となる先端16cに向かうに従って次第に小さくなり、屈曲点16bにおいてカート2の左右方向の外幅寸法と略等しくなり、基端16aから先端16cまで延設されている。
【0033】
このため、カート2を移動させて凹部29にテーブル1の固定側天板11を進入させるときにカート2の位置がずれたとしても、カート2の後部支柱232がカートガイド部材16と当接することによって、カート2が左右方向に正しい位置に案内される。また、カート2をテーブル1側へ向けて所定位置まで移動すると、テーブル1の固定側天板11の縁端部11dがストッパー52に当接して移動が規制される。
【0034】
次に、テーブル1に設けられる給電装置30と、カート2に設けられる受電装置40とからなる電源装置10について、図面に基づいて詳細に説明する。
図2に示すように、電源装置10は、テーブル1に設けられた給電側コイル31とカート2に設けられた受電側コイル41とを近接させ、給電側コイル31の電流により生じる電磁誘導によって受電側コイル41に電流を発生させることで非接触給電を行うものである。
【0035】
図1、図6および図8に示すように、給電装置30は、周波数変換器35を備えた給電側コイル31(給電部)とスイッチ部32とが薄型箱形状のカバー体33に収納され、給電側コイル31には電源ケーブル34(図1参照)を介してテーブル1の固定側天板11に設けられているコンセント(図示省略)に接続されている。なお、図1において、周波数変換器35は前記カバー体33とは別のカバーに収納されている。
【0036】
カバー体33は、上面が開口になっており、固定側天板11の下面11bの所定位置に固定されている。このカバー体33には、上述したカート2の凸部51が進入可能な開口33aが設けられている。
【0037】
給電側コイル31は、そのコイル給電面31aを上向きにした状態で固定側天板11の上面11aに露出するようにして固定側天板11に設けられている円孔15に嵌合されている。このとき、コイル給電面31aは、固定側天板11の上面11aに対して面一となっている。
【0038】
図6および図7に示すように、スイッチ部32は、バネ部材321を備えた回転作動板322がそのバネ部材321の付勢に抗して回転したときに、その回転作動板322の作用端322aでスイッチ323をオンにする構成となっている。
回転作動板322は、カバー体33の底面33bに直交する方向の回転軸322cを中心に回転する平面視で略扇形状の回転板322Aを有し、この回転板322Aの周方向の一端(基端322b)には回転板322Aの半径方向外側に突出する張出し片322Bが設けられている。さらに、回転作動板322の円弧を形成する外周部には、張出し片322Bをカバー体33の開口33aの位置、すなわち凸部51の進入路を塞ぐ位置に配置させた状態で、付勢されたバネ部材321が取り付けられている、つまり、回転作動板322は、開口33aからカバー体33内に進入する凸部51によって張出し片322Bが押圧され、これによりバネ部材321の付勢に抗して回転軸322cを中心にして一方向(図で時計回りと反対方向)に回転し、図6で二点鎖線の位置へ移動する構成となっている。
【0039】
スイッチ323は、レバー式のスイッチであり、レバー部323aが回転作動板322の作用端322aの位置によってオンオフの位置を選択的に取り得るものである。つまり、スイッチ323は、回転作動板322が回転していないときにはオフ状態であり、回転作動板322の回転により作用端322aによってレバー部323aが押圧されてオン状態となって給電側コイル31に電流が流れるようになっている。
【0040】
次に、受電装置40は、図5および図8に示すように、整流器41bを備えた受電側コイル41(受電部)と、受電側コイル41に電圧変換器43を介して接続されたバッテリー42とが移動側天板20の下面20bに設けられた薄型箱形状のカバー体44に収納され、バッテリー42の出力側には移動側天板20上で使用される電子機器用の電源ケーブル47が接続されている。
【0041】
受電側コイル41は、そのコイル受電面41aを下向きにしてカバー体44の下面44aに露出した状態で、カート2がテーブル1に対して給電位置Rに位置する状態で、給電側コイル31のコイル給電面31aに間隔をもって対向する位置に配置されている。
【0042】
図8に示すように、バッテリー42は、バッテリー本体421と、受電側コイル41より入力される電気を充電制御する充電制御部422と、バッテリー本体421から出力される電圧を制御する出力制御部423とを備えている。
【0043】
また、カバー体44の前方側面44bには、非接触給電状態を表示する給電表示部(図示省略)と、バッテリー42に対する充電状態を表示する充電表示部(図示省略)とを備えた表示板46が設けられている。前記給電表示部および充電表示部は、発光ダイオード(LED)が使用され、それぞれ電圧変換器43と充電制御部422に接続されて受信した信号に応じて点灯するようになっている。
【0044】
このように構成される電源装置10では、給電側コイル31と受電側コイル41とを近接させると、給電装置30においてスイッチ部32のスイッチ323がオンになり、例えば交流100Vの電気が直流電源により直流24Vに変換されて給電側コイル31に流れる。そして、給電側コイル31の電流により生じる電磁誘導によって受電側コイル41に電流が発生して非接触給電が行われる。さらに、受電装置40において、受電側コイル41で給電された電圧が電圧変換器43で直流17Vに変換されてバッテリー本体421に充電され、出力時には出力制御部423より直流15Vに変換されて電源ケーブル47を介して出力されることになる。
【0045】
次に、カート2の受電装置40に給電を行う動作と上述した什器システムの作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1乃至図5に示すように、カート2に搭載したバッテリーを充電する場合、すなわち受電装置40に電気を供給する場合、カート2をテーブル1における所定の給電位置Rへ配置する。具体的には、カート2をテーブル1に近接するようにして移動させ、テーブル1の収容部13に進入させる。このとき、カート2を一対のカートガイド部材16、16の間へ進入させることで、カートガイド部材16、16に沿ってカート2が所定の給電位置Rに案内されることになる。
【0046】
そして、カート2が給電位置Rに配置されたとき、テーブル1の給電装置30の給電側コイル31にカート2の受電装置40の受電側コイル41が近接するとともに、給電装置30に電気が流れる。つまり、図6および図7に示すように、カート2が給電位置Rに配置される際、カート2の収納部22上の連結板25に設けられている凸部51が給電装置30のカバー体33の開口33aに進入する。そして、その凸部51によってスイッチ部32の張出し片322Bが押圧され、これにより回転作動板322がバネ部材321の付勢に抗して回転軸322cを中心にして一方向(図で時計回りと反対方向)に回転し、回転作動板322の回転により作用端322aによってレバー部323aが押圧されてオン状態となって給電側コイル31に電流が流れる。
【0047】
次に、給電側コイル31と受電側コイル41とが近接しているので、給電側コイル31に電流が流れると、給電側コイル31の電流により生じる電磁誘導によって受電側コイル41に電流が発生して非接触給電が行われる。さらに、受電装置40において、受電側コイル41で給電された電圧が電圧変換器43を介して適宜な電圧に変換されてバッテリー本体421に充電され、出力時には出力制御部423より直流電圧に変換されてコンセント側に出力され、これによりカート2の受電装置40に電源を供給する非接触給電が行われる。
このように、非接触給電によりカート2の移動側天板20上へ配線された電源ケーブル47から使用する電子機器などの電源を確保することができるうえ、バッテリー42の充電後には、カート2をテーブル1から離れた場所へ移動させ、その移動側天板20上で電子機器をバッテリー42に接続して長時間にわたって使用することができる。
【0048】
なお、図5に示すように、受電側コイル41が移動側天板20の下面20bに設けられ、受電側コイル41と移動側天板20上で使用する電子機器(図1ではパソコンP)との距離が近接しているので、受電側コイル41に接続される電源ケーブル47の配線を移動側天板20のみに収めて処理することができ、且つ配線距離を短くすることができることから、カート2の体裁を向上させることができる。
また、非接触給電とすることで、カート2の受電側コイル41をテーブル1の電源取出し口(給電部)に接続する作業を省略することができ、利便性を高めることができる。
【0049】
上述のように本実施の形態による什器システムでは、移動側天板20が固定側天板11の所定位置に重なった状態で、移動側天板20の下面20b側に設けた受電側コイル41が固定側天板11の給電側コイル31より給電される構成であり、このとき移動側天板20上で使用する電子機器と受電側コイル41とが近接しているので、両者を繋ぐ配線が短く、且つ移動側天板20のみで処理することができる。そのため、テーブル1およびカート2を使用する空間としての使い勝手および体裁を向上させることができる。
【0050】
次に、本発明の什器システムによる他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0051】
(第2の実施の形態)
図9に示すように、第2の実施の形態による什器システムは、カート2の移動側天板20がテーブル1の固定側天板11の所定位置に重なる給電位置Rにおいて、テーブル1に備えた給電装置60の給電側コネクタ61(給電部)とカート2に備えた受電装置70の受電側コネクタ71(受電部)との間で電気的に接続させて、受電装置70に電力を供給する接触給電が行われる電源装置10Aを有するものである。
受電側コネクタ71は、給電側コネクタ61が嵌合される図示しない凹部が形成されていて、この凹部内には前側に突出するピン端子が設けられており、前記凹部を前後方向Xで後側に向けた状態で移動側天板20の下面側に固定されている。
給電側コネクタ61は、図示しない孔部が形成され、その孔部を前後方向Xで前側に向けた状態で固定側天板11の縁端部11dに固定されており、給電側コネクタ61と受電側コネクタ71とが嵌合されると、この孔部に受電側コネクタ71のピン端子が挿入される。
【0052】
本第2の実施の形態では、テーブル1に対する給電位置Rにカート2を配置させたとき、固定側天板11の給電側コネクタ61と移動側天板20の受電側コネクタ71とが電気的に接続され、テーブル1とカート2との間で接触給電を行うことができる。
そして、受電側コネクタ71が移動側天板20の下面20bに設けられ、受電側コネクタ71と移動側天板20上で使用する電子機器との距離が近接しているので、受電側コネクタ71に接続される電源ケーブル47の配線を移動側天板20のみに収めて処理することができ、且つ配線距離を短くすることができることから、カート2の体裁を向上させることができる。
【0053】
以上、本発明による什器システムの実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本第1の実施の形態では非接触給電として給電側コイル31と受電側コイル41を備えた電磁誘導による電源装置10としているが、このような非放射型の電磁誘導による送電方式であることに限定されることはなく、例えば非放射型の磁界共鳴方式や、放射型の電磁波(マイクロ波送電)方式を採用することも可能である。
【0054】
また、テーブル1、カート2の形状、大きさ等の構成、カート2の使用用途、カートガイド部材16等とくに限定されるものではない。
さらに、電源装置10、10A、給電装置30、60、受電装置40、70の位置についてもテーブル1、カート2の形状等の条件に応じて適宜設定することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 テーブル(固定什器)
2 カート(移動什器)
10、10A 電源装置
11 固定側天板
16 カートガイド部材(ガイド手段)
20 移動側天板
22 収納部
23 側面枠
25 連結板
28 天板支持部
29 凹部
30、60 給電装置
31 給電側コイル(給電部)
32 スイッチ部(スイッチ機構)
33 カバー体
40、70 受電装置
41 受電側コイル(受電部)
42 バッテリー
44 カバー体
46 表示板
51 凸部
52 ストッパー
61 給電側コネクタ(給電部)
71 受電側コネクタ(受電部)
R 給電位置
X 前後方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平方向に張り出した固定側天板を有する固定什器と、床面上に移動可能に設けられるとともに前記固定側天板の上面の所定位置で重なる移動側天板を有する移動什器とからなる什器システムであって、
前記固定什器には、前記固定側天板に給電部を配置させた給電装置が設けられ、
前記移動什器には、前記移動側天板が前記固定側天板の前記所定位置に重なった状態で、前記移動側天板の下面側に前記給電部より給電可能な受電部を配置させた受電装置が設けられていることを特徴とする什器システム。
【請求項2】
前記移動什器には、前記固定側天板が進入可能な凹部を有し、
該凹部の上面部が前記移動側天板であることを特徴とする請求項1に記載の什器システム。
【請求項3】
前記移動側天板が前記固定側天板の前記所定位置に重なることで、前記受電部が前記移動側天板の下面に前記給電部に対して間隔をもって対向配置された状態となって非接触給電が行われる構成としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の什器システム。
【請求項4】
前記給電部は、前記固定側天板の縁端部に設けられた給電側コネクタであり、
前記受電部は、前記移動側天板が前記固定側天板の前記所定位置に重なった状態で、前記移動側天板の下面に配置されるとともに、前記給電側コネクタに接続する受電側コネクタであり、
前記給電側コネクタと前記受電側コネクタとを接触させることで接触給電が行われる構成としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の什器システム。
【請求項5】
前記移動側天板に前記受電部が内蔵されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の什器システム。
【請求項6】
前記受電装置には、バッテリーを備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の什器システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−19889(P2012−19889A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159020(P2010−159020)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】