説明

仕切体

【課題】材料に左右されることなく縦横の仕切板相互の係合状態を確実に維持することができる仕切体を提供する。
【解決手段】
縦方向の仕切板2と横方向の仕切板3とを起立状態で互いに交差させて、縦方向の仕切板2の第1切溝6と、横方向の仕切板3の第2切溝9とを互いに係合させる。少なくとも一方の切溝9は、仕切板2の厚みに対応する幅寸法を維持して、下端から一方に傾斜して延びる第1傾斜溝部11と、第1傾斜溝部11の上端から連続して他方に傾斜して延びる第2傾斜溝部12とにより、く字形に屈曲して設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦方向の仕切板と横方向の仕切板とを互いに係合させることにより組立てられ、箱内に収容して箱内を格子状に区画する仕切体に関する。
【背景技術】
【0002】
箱の内部を複数に区画する仕切体としては、縦方向に配列させた複数の仕切板と横方向に配列させた複数の仕切板とが共に起立した状態で互いに交差するように組み立てられるものが一般的である。
【0003】
具体的には、例えば、縦方向の仕切板には、上端縁から下方に延びる複数の第1切溝が形成されており、また、横方向の仕切板には、前記縦方向の仕切板の各第1切溝に対応する位置に、その下端縁から上方に延びる複数の第2切溝が形成されている。前記縦方向の仕切板の第1切溝は、前記横方向の仕切板の数に対応して形成されており、前記横方向の仕切板の第2切溝は、前記縦方向の仕切板の数に対応して形成されている。そして、前記縦方向の仕切板と前記横方向の仕切板とは、前記第1切溝と前記第2切溝とを互いに係合させることにより組み立てられる。
【0004】
しかし、この種の仕切体は、組み立て後には、前記縦方向の仕切板の第1切溝が前記横方向の仕切板の第2切溝の上方に板面を受け止めるように係合されているため、前記縦方向の仕切板に対して前記横方向の仕切板を上方に持ち上げたとき等に、縦方向の仕切板と横方向の仕切板との係合状態が互いに外れ易く、組み立て状態を維持することが困難となる不都合があった。
【0005】
そこで、従来、組み立て状態を維持するために、第1切溝と第2切溝との両方又は一方に、各仕切板の厚み寸法よりも溝幅を狭くした挟み部を形成し、切溝内の板面を挟み部により圧接するようにした仕切体が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−35061号公報(図1、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、段ボール板紙のように面方向に潰れ易い材料で各仕切板が形成されている場合には、前記挟み部を切溝に設けると、縦横に仕切板を互いに組み付ける際に、前記挟み部を通過した仕切板の板面が厚み方向に凹入変形されて直線状に潰れが生じ、挟み部による圧接力が低下する不都合がある。
【0008】
また、面方向に潰れが殆ど生じない合成樹脂製板材や厚手の板紙を材料として各仕切板が形成されている場合には、前記挟み部を切溝に設けても、挟み部による圧接面積が極めて小さいために、十分な圧接力が得られない不都合がある。
【0009】
以上の点に鑑み、本発明は、材料に左右されることなく縦方向の仕切板と横方向の仕切板との係合状態を確実に維持することができる仕切体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、縦方向の仕切板と横方向の仕切板とを起立状態で互いに交差させ、一方の仕切板の上縁で開放されて下方に延びる第1切溝と、他方の仕切板の下縁で開放されて上方に延びる第2切溝とを互いに係合させることにより組立てられる仕切体において、前記第1切溝と前記第2切溝とは、何れも仕切板の厚みに対応する幅寸法を維持して延設され、前記第1切溝と前記第2切溝とのうち、少なくとも何れか一方の切溝は、前記仕切板の厚みに対応する幅寸法を維持して、下端から一方に傾斜して延びる第1傾斜溝部と、該第1傾斜溝部の上端から連続して他方に傾斜して延びる第2傾斜溝部とにより、く字形に屈曲して設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の仕切体は、前記仕切板を縦横に交差させ、前記第1切溝と前記第2切溝とを互いに係合させることで組立てられる。このとき、前記第1切溝と前記第2切溝とのうち少なくとも何れか一方の切溝を第1傾斜溝部と第2傾斜溝部とでく字形に屈曲する形状に設けておくことで、仕切板がく字形に屈曲する切溝の第1傾斜溝部と第2傾斜溝部とに沿って湾曲してく字形に屈曲する切溝の内側縁に弾発的に圧接し、強固な係合状態とすることができる。しかも、前記く字形に屈曲する切溝は、仕切板の厚みに対応する幅寸法を維持して形成されているので、従来のように溝幅を狭くした挟み部により係合するものに比べて、仕切板の板面の厚み方向への凹入変形が少なく、仕切板の損傷を抑制して確実な係合状態を維持することができる。
【0012】
ここで、本発明者は、前記第1傾斜溝部の下端の直上に前記第2傾斜溝部の上端が位置するように前記第2切溝を形成した場合について、前記く字形に屈曲する切溝の良好な屈曲度合いを設定すべく各種試験を行った。その結果、前記第1傾斜溝部の下端と前記第2傾斜溝部の上端とを結ぶ直線に対する前記第1傾斜溝部と前記第2傾斜溝部との境界からの垂線の長さ寸法をPとし、前記仕切板の厚み寸法をTとしたとき、PがT/2より小さいと第2切溝に沿った仕切板の湾曲度合いが小さくなり、く字形に屈曲する切溝内での仕切板の保持力が十分に得られず、Pが3T/2を超えると、く字形に屈曲する切溝に沿った仕切板の湾曲度合いが大となり、両仕切板による区画形状の歪みが大きくなるだけでなく、場合によってはく字形に屈曲する切溝の屈曲部分やその切溝内の仕切板に折れや潰れが生じるおそれがあることを知見した。この知見に基づき、本発明においては、T/2≦P≦3T/2となるようにく字形に屈曲する切溝の形状を設定することが好ましい。これによれば、仕切板を損傷させることなく強固な係合状態を維持することができる。
【0013】
また、本発明においては、前記仕切板が、一対のライナ間に段付き中芯を貼り合わせてなる段ボール板により形成されている場合に、前記切溝の閉塞端に隣接する少なくとも一方のライナに、前記仕切板の厚みに対応する寸法を存して互いに平行に延びる一対の切れ目が形成されていることが好ましい。
【0014】
一対のライナ間に段付き中芯を貼り合わせてなる段ボール板は比較的厚み寸法が大である。そして、前記仕切板が段ボール板により形成されている場合には、第1切溝と第2切溝とを係合させる途中で、一方の切溝の閉塞端が他方の切溝たるく字形に屈曲する切溝の屈曲部分(前記第1傾斜溝部と前記第2傾斜溝部との境界部分)を通過するとき、一方の切溝の閉塞端に隣接する仕切板の板面に比較的大きな摩擦力が生じる。このため、円滑な係合作業が阻害されるだけでなく、切溝の閉塞端に連続して仕切板の板面に亀裂が生じるおそれがある。そこで、本発明においては、切溝の閉塞端に隣接する少なくとも一方のライナに前記一対の切れ目を設け、切溝の閉塞端に隣接する仕切板の板面を潰れ易くしたことにより、前記摩擦力の発生を軽減する。これにより、仕切板の板面に不用意に亀裂が発生することを防止できると共に、第1切溝と第2切溝とを円滑に係合させることができる。
【0015】
また、本発明において、前記縦方向の仕切板は、上下方向に延びる複数の第1脚片と、各第1脚片間に対応する位置に前記第1切溝が設けられて各第1脚片をその上部で一体に連結する第1連結片とで構成され、前記横方向の仕切板は、上下方向に延びる複数の第2脚片と、各第2脚片間に対応する位置に前記第2切溝が設けられて各第2脚片をその上部で一体に連結する第2連結片とで構成されていることを特徴とする。
【0016】
前記縦方向の仕切板と前記横方向の仕切板との夫々が前記第1脚片と前記第2脚片とを備えることにより、縦横の仕切板同士を組み付けて形成される仕切体の高さ寸法を比較的高くして、しかも、材料を削減することができる。このとき、第1連結片に第1切溝を設け、第2連結片に第2切溝を設けることにより、第1切溝と第2切溝との夫々の高さ方向の全長を、仕切体の高さ寸法に比べて極めて短くすることができる。これによれば、仕切体の高さ寸法が大であっても、第1切溝と第2切溝との係合度合いが浅く、その係合作業を容易に行うことができ、しかも、少なくとも一方の切溝がく字形に屈曲するように形成されていることで第1切溝と第2切溝との係合度合いが浅くても前記第1切溝との係合を強固に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の仕切体を示す斜視図。
【図2】縦仕切板の形状を示す説明図。
【図3】横仕切板の形状を示す説明図。
【図4】第1切溝の拡大説明図。
【図5】第2切溝の拡大説明図。
【図6】要部の断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態の仕切体1は、図1に示すように、縦方向を長手方向とした段ボール板紙からなる2枚の縦仕切板2(縦方向の仕切板)と、横方向を長手方向とした段ボール板紙からなる2枚の横仕切板3(横方向の仕切板)とが起立した状態で互いに交差して組み立てられている。
【0019】
縦仕切板2は、図2に示すように、上下方向に延びる3つの第1脚片4と、各第1脚片4をその上部で一体に連結する第1連結片5とを備えて形成されている。第1連結片5の各第1脚片4間に対応する位置には、上端縁で開放されて下方に延びる2つの第1切溝6が形成されている。また、縦仕切板2は、一枚の段ボール板紙から打ち抜くことにより、仮想線示するものと同一形状に2枚形成することができ、製造容易として且つ材料を削減することができる。
【0020】
横仕切板3は、図3に示すように、上下方向に延びる3つの第2脚片7と、各第2脚片7をその上部で一体に連結する第2連結片8とを備えて形成されている。第2連結片8の各第2脚片7間に対応する位置には、下端縁で開放されて上方にく字形に屈曲して延びる2つの第2切溝9が形成されている。なお、縦仕切板2と横仕切板3の厚み寸法は等しく、縦仕切板2と横仕切板3の厚み寸法は本実施形態において3mmとされている。また、横仕切板3も、縦仕切板2と同様に、一枚の段ボール板紙から打ち抜くことにより、仮想線示するものと同一形状に2枚形成することができ、製造容易として且つ材料を削減することができる。
【0021】
第1切溝6は、図4に示すように、横仕切板3の厚み寸法に対応する溝幅寸法を維持して直線状に延設されている。第1切溝6の開放端から閉塞端までの長さ寸法は、第1連結片5の高さ方向の幅寸法の1/2とされている。また、第1切溝6の下端に隣接する少なくとも一方のライナに、横仕切板3の厚み寸法(本実施形態では溝幅寸法)を存して互いに平行に延びる一対の切れ目10が形成されている。
【0022】
第2切溝9は、図5に示すように、縦仕切板2の厚み寸法に対応する溝幅寸法を維持して、下端から一方に傾斜して延びる第1傾斜溝部11と、該第1傾斜溝部11の上端から連続して他方に傾斜して延びる第2傾斜溝部12とを有し、第1傾斜溝部11の下端の直上に第2傾斜溝部12の上端が位置するように形成されている。第2切溝9の開放端から閉塞端までの直線長さ寸法は、第2連結片8の高さ方向の幅寸法の1/2とされている。
【0023】
そして、横仕切板3の厚み寸法をTとしたとき、第1傾斜溝部11の下端と第2傾斜溝部12の上端とを結ぶ直線aに対して、第1傾斜溝部11と第2傾斜溝部12との境界の点bからの垂線cの長さ寸法PはT/2≦P≦3T/2となるように設定されている。即ち、具体的には、縦仕切板2の厚み寸法Tが3mmであるとき、寸法Pは1.5〜4.5mmから選択され、本実施形態においては1.5mmに設定されている。
【0024】
そして、図1に示すように、各縦仕切板2と各横仕切板3とは、各第1切溝6と各第2切溝9とにより互いに係合されて格子状に組み付けられ、仕切体1が形成される。このとき、第1切溝6と第2切溝9とを互いに位置合わせして係合作業を行うが、第2切溝9が屈曲していることにより、第1切溝6の閉塞端が第2切溝9の屈曲部分を通過するときに比較的抵抗が大となる。そこで、前記切れ目10を設けたことにより、第1切溝6の閉塞端に隣接する第1連結片5の板面が潰れ、第2切溝9に円滑に案内されるので、両者は容易に係合される。
【0025】
そして、各縦仕切板2の第1切溝6は、各横仕切板3の第2切溝9を下方から受け止めるように係合されると同時に、第2切溝9によって縦仕切板2の第1連結片5の板面が強固に挟み込まれた状態とされ、これによって、第1切溝6と第2切溝9とによる係合状態が強固に維持される。
【0026】
即ち、図6に示すように、第2切溝9が屈曲していることにより、第2切溝9に挟まれた縦仕切板2の第1連結片5が弾発的に僅かに湾曲する。これによって、第2切溝9を介して横仕切板3と縦仕切板2との組み付け状態が強固に維持され、例えば、縦仕切板2に対して横仕切板3を上方に持ち上げても、縦仕切板2から横仕切板3が外れ難く、仕切体1の組み立て状態が確実に維持される。
【0027】
第2切溝9に挟まれた縦仕切板2の第1連結片5の湾曲形状は、第2切溝9の形状に沿ったものとなるが、前記寸法PがT/2≦P≦3T/2となるように設定されていることにより、縦仕切板2の第1連結片5の過剰な湾曲を抑えて且つ確実な係合状態を形成することができる。
【0028】
即ち、前記寸法Pを設定するときには、縦仕切板2の材料となる段ボール板紙の曲げこわさを考慮することが好ましく、曲げこわさが大のものでは前記寸法Pを小さく設定し、曲げこわさが小であるものでは前記寸法Pを大きく設定する。また、本実施形態においては、縦仕切板2の厚み寸法Tが3mmとされているので、寸法Pは1.5〜4.5mmの寸法から選択して設定されている。ここで、寸法Pが1.5mm以上であれば、第2切溝9の屈曲度合いが十分に得られるために、第2切溝9による縦仕切板2の保持力を十分に得ることができる。また、寸法Pが4.5mm以下であれば、第2切溝に沿った縦仕切板の湾曲度合いが大となるが、両仕切板2,3による区画形状の歪みを抑えて第2切溝9の形状による縦仕切板2の折れや潰れが防止できる。
【0029】
なお、本発明の仕切体は、上記の実施形態に限定されるものでなく、縦仕切板と横仕切板とを夫々3枚以上で組み付けるように構成してもよい。また、縦仕切板と横仕切板との長さ寸法は所望の区画形状に応じて設定することができる。更に、縦仕切板及び横仕切板を段ボール板紙ではなく、合成樹脂板材や厚手の板紙等で形成してもよい。
【0030】
また、本実施形態においては、前記第2切溝9のみをく字形に屈曲して形成した例を示しているが、前記第1切溝6のみをく字形に屈曲して形成してもよく、更に、第1切溝6と第2切溝9との両方をく字形に屈曲して形成してもよい。
【0031】
また、本実施形態においては、縦仕切板と横仕切板とが夫々複数の脚片(第1脚片4及び第2脚片7)を備えるものを示したが、脚片を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…仕切体、2…縦仕切板、3…横仕切板、4…第1脚片、5…第1連結片、6…第1切溝、7…第2脚片、8…第2連結片、9…第2切溝、10…切れ目、11…第1傾斜溝部、12…第2傾斜溝部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向の仕切板と横方向の仕切板とを起立状態で互いに交差させ、一方の仕切板の上縁で開放されて下方に延びる第1切溝と、他方の仕切板の下縁で開放されて上方に延びる第2切溝とを互いに係合させることにより組立てられる仕切体において、
前記第1切溝と前記第2切溝とは、何れも仕切板の厚みに対応する幅寸法を維持して延設され、
前記第1切溝と前記第2切溝とのうち、少なくとも何れか一方の切溝は、前記仕切板の厚みに対応する幅寸法を維持して、下端から一方に傾斜して延びる第1傾斜溝部と、該第1傾斜溝部の上端から連続して他方に傾斜して延びる第2傾斜溝部とにより、く字形に屈曲して設けられていることを特徴とする仕切体。
【請求項2】
前記第1傾斜溝部の下端の直上に前記第2傾斜溝部の上端が位置し、
前記第1傾斜溝部の下端と前記第2傾斜溝部の上端とを結ぶ直線に対する前記第1傾斜溝部と前記第2傾斜溝部との境界からの垂線の長さ寸法Pは、前記仕切板の厚み寸法をTとしたとき、T/2≦P≦3T/2となるように設定されていることを特徴とする請求項1記載の仕切体。
【請求項3】
前記仕切板は一対のライナ間に段付き中芯を貼り合わせてなる段ボール板により形成され、
前記切溝の閉塞端に隣接する少なくとも一方のライナに、前記仕切板の厚みに対応する寸法を存して互いに平行に延びる一対の切れ目が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の仕切体。
【請求項4】
前記縦方向の仕切板は、上下方向に延びる複数の第1脚片と、各第1脚片間に対応する位置に前記第1切溝が設けられて各第1脚片をその上部で一体に連結する第1連結片とで構成され、
前記横方向の仕切板は、上下方向に延びる複数の第2脚片と、各第2脚片間に対応する位置に前記第2切溝が設けられて各第2脚片をその上部で一体に連結する第2連結片とで構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の仕切体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−57244(P2011−57244A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207163(P2009−207163)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(502045655)株式会社ケイマス (10)
【Fターム(参考)】