説明

他物体との接触摩擦により表面が摩耗することを考慮した物品

【課題】基材表面の凹凸及び膜が、外部物質に対する優れた防付着性、防汚性、撥油性等を発揮する物品を提供する。
【解決手段】ステンレス等の金属あるいはテフロン(登録商標)含有ニッケルめっき等のメッキを表面に施すことが可能な同等の物質からなる基材1の表面に、テフロン(登録商標)含有ニッケルめっきによってセラミック粒子3をできるだけ均一にあるいは所望の分布密度で固着させ、同時にテフロン(登録商標)含有ニッケル被膜3中のテフロン(登録商標)の粒子も固着させる。適度な密度でセラミック粒子2の頂部がテフロン(登録商標)含有ニッケル被膜3の表面上に突出し、適当な凹凸を形成することによって、耐磨耗性、離塑性(潤滑性)、通電性を同時に得られる。その結果、優れた防付着性、防汚性、撥油性等を発揮し得るものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材表面に凹凸と膜を形成した物品に関する。詳細には基材表面に微細な凹凸を形成して外部物質の防付着性、防汚性、耐摩耗性を呈し得る物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材表面に微細な凹凸を形成して外部物質の防付着性、防汚性を発現し得る物品に関しては種々提案がなされている。
【0003】
そのような物品のなかには、少なくともその表面に耐磨耗性、離型性(潤滑既)、通電性という三つの特性を兼ね備える等の非常に厳しい要求がなされるものもある。
【特許文献1】特開平8−12151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耐磨耗性を得るための材料には、例えばセラミック、硬質クロム等を挙げ得るが、これらは離型性についての条件を十分には満たさない。
【0005】
離型性(潤滑度)については、例えばテフロン(登録商標)が挙げ得るが、耐磨耗性がないため、耐磨耗性と離型性を兼備するには、現状ではセラミックと離型材を組み合わせた物品が使われているが、セラミックや上述のような離型剤には一般に通電性がない。なお以下においてテフロン(登録商標)を指すときは必要に応じてフッ素樹脂という。
【0006】
通電性がないと、表面の他物品への接触により静電気が発生し、塵埃、粉塵等を集めて付着させてしまう。表面を簡単に清掃できない場合には、このような物品は結果的に寿命が短くなり、交換頻度が多くなってしまう。
【0007】
本技術はこのような従来の問題点を一挙に解決できる表面性状を有する物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る物品は、他物体との接触摩擦により表面が摩耗することを考慮した物品であって、基材の表面に硬質あるは超硬質粒子を散布し、該散布した粒子の少なくとも一部を覆うように前記基材の表面にメッキ層を形成してなる被膜を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る物品は、前記基材表面に散布する粒子の径は一定のものでないこととし得る。
【0010】
また本発明に係る物品は、前記基材表面における前記粒子の散布密度、散布密度分布、粒子径、粒子径の分布の少なくともいずれかが一定でないこととし得る。
【0011】
また本発明に係る物品は、前記基材表面における前記粒子の散布密度、散布密度分布、粒子径、粒子径の分布の少なくともいずれかが一定でないものとしかつ該一定でない密度及び/または分布を前記基材表面において局所的に変えることもできる。
【0012】
そして本発明に係る物品は、全構成物質または前記粒子以外の構成物質を通電性のあるものとすることもできる。
【0013】
さらに本発明に係る物品は、前記メッキ層を無電解ニッケルメッキまたは電気ニッケルメッキで形成することもできる。
【0014】
また本発明に係る物品は、前記メッキ層を無電解ニッケル複合メッキまたは電気ニッケル複合メッキで形成することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る物品は、基材表面の凹凸及び膜が、外部物質に対する優れた防付着性、防汚性、耐摩耗性、撥油性、撥水性等を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図に示す実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明に係る物品の一実施例の拡大断面図であり、図中1は基材、2は硬質粒子あるいは超硬質粒子の一例であるセラミック粒子、3はフッ素樹脂含有ニッケル被膜である。本発明の物品は、基材1の表面にフッ素樹脂含有ニッケルめっきによってセラミック粒子3をできるだけ均一にあるいは所望の分布密度で固着させ、同時にフッ素樹脂含有ニッケル被膜3中のフッ素樹脂粒子も固着させることによって耐磨耗性、離塑性(潤滑性)、通電性を同時に得るものである。
【0018】
基材1は、ステンレス等の金属あるいはフッ素樹脂含有ニッケルめっき等のメッキを表面に施すことが可能な同等の物質からなる。図では平板状に示してあるが、もちろんその他の形状、特に表面形状であって良い。図示の例には限定されない。
【0019】
このような基材1上に、均一にあるいは適当なあるいは所望の平面密度でセラミック粒子2を散布する。散布方法は種々公知の手法を採用すれば良く、いずれかの散布方法に限定されることはない。
【0020】
散布するセラミック粒子2の径は、できるだけ一定のものを選定しても良いし、あるいは逆に一定でないものであるように無選定で使用しても良い。セラミック等の硬質粒子あるいは超硬質粒子は、一般的にはある直径値を中心に一定の分布(多くは正規分布)を持った形態で市販されている。そこで、例えば中心値が10μmのものを使用する、あるいは20μmのものを使用する等々、用途に応じて適宜のものを採用することができる。
【0021】
また基材1の表面におけるセラミック粒子2の散布密度は、できるだけ一定としてもよいし、あるいは一定でないようにしても良い。例えば基材1の表面において局所的に散布密度を変えても良い。またその部位の範囲内で散布密度を一定でないようにすることも可能である。
【0022】
次に、表面にセラミック粒子2を散布した基材1の表面にフッ素樹脂含有ニッケルめっきを施す。めっきについては、無電解ニッケルメッキ、電気ニッケルメッキ、無電解ニッケル複合メッキ、電気ニッケル複合メッキのいずれでも採用でき、またこれらの併用についても可能である。そのほかの種々公知のメッキ方法も採用できる。
【0023】
すると、図1に示すように、適度な密度でセラミック粒子2の頂部がフッ素樹脂含有ニッケル被膜3の表面上に突出し、優れた防付着性、防汚性、撥油性等を発揮し得る適当な凹凸を形成する。すなわち、基材1にセラミック粒子2で耐摩耗性を付与するとともに、セラミック粒子2の隙間に存在することになるフッ素樹脂含有ニッケル被膜3、すなわち潤滑性被膜を保護する。なお、全構成物質またはセラミック粒子2以外の構成物を通電性のあるものとして、表面へ他物品が接触した際に生じる静電気を簡単に逃がすことができるように構成することもでき、塵埃や粉塵等を集めて付着させてしまうことをなくし、あるいは度合いを小さくすることができ、結果的に交換頻度を小さくして寿命を伸ばせる。
【0024】
また、既述のようにセラミック粒子2に中心値が10μmや20μm等と一定とされるものを使用するだけでなく、例えば基材1の端部から100mmまではセラミック粒子2の粒径を10μmが中心値のものとし、同じく100mmから200mmまでは中心値15μmのものとし、等々の可変分布を採用することも可能である。さらには、セラミック粒子2の散布密度は、例えば1平方cm当たりの粒子の概数を適宜の個数に決めてもよいし、上述の粒径の場合と同様に基材1の端部から100mmまでは1平方cm当たりのセラミック粒子2の概数を5000個とし、同じく100mmから200mmまでは3000個とし等々、これも可変分布を採用することが可能である。そしてこのように、分布を種々変えることによって、部位による密度の違いに、性状の違い等々の機能変化を持たせることが可能になる。
【0025】
図2は、本願発明者等が行った実験結果の一例を示す断面SEM観察写真を模して示す図である。観察には、日立製作所製の日立S−400走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いた。加速電圧は20kVとした。そして、上述の物品の試料調整は、供試材を常温硬化樹脂に埋め込み、鏡面研磨した後、Pt−Pd蒸着を施し、SEM用アルミ試料台上(カーボンテープ上)に貼り付けて行った。
【0026】
その結果、比較的良好なラミック粒子2の突出の散布度を得られた。したがって所望の防付着性、防汚性、撥油性等を発揮し得られると考えられる。なお、図2に示すセラミック粒子は鋭利なカドがあるが、本発明で使用する粒子の形状はこのようなものに限定されず、球状その他の丸い形状のもの、平板状のもの等々種々の粒子形状のものを採用できる。
【0027】
なお、本願発明で採用可能な硬質粒子あるいは超硬質粒子としては、セラミック、ダイヤモンド、人工ダイヤモンド、種々の鉱物を粉砕したもの(セラミックが主体)等々を挙げ得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る物品の一実施例の拡大断面図
【図2】実験結果の一例を示す断面SEM観察写真を模して示す図
【符号の説明】
【0029】
1:基材
2:セラミック粒子
3:フッ素樹脂含有ニッケル被膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
他物体との接触摩擦により表面が摩耗することを考慮した物品であって、基材の表面に硬質あるは超硬質粒子を散布し、該散布した粒子の少なくとも一部を覆うように前記基材の表面にメッキ層を形成してなる被膜を有することを特徴とする物品。
【請求項2】
前記基材表面に散布する粒子の径が一定のものでないことを特徴とする請求項1の物品。
【請求項3】
前記基材表面における前記粒子の散布密度、散布密度分布、粒子径、粒子径の分布の少なくともいずれかが一定でないことを特徴とする請求項1または2の物品。
【請求項4】
前記基材表面における前記粒子の散布密度、散布密度分布、粒子径、粒子径の分布の少なくともいずれかが一定でないものとしかつ該一定でない密度及び/または分布を前記基材表面において局所的に変えたことを特徴とする請求項1の物品。
【請求項5】
全構成物質または前記粒子以外の構成物質を通電性のあるものとしてなることを特徴とする請求項1から4のいずれかの物品。
【請求項6】
前記メッキ層を無電解ニッケルメッキまたは電気ニッケルメッキで形成することを特徴とする請求項1から5のいずれかの物品。
【請求項7】
前記メッキ層を無電解ニッケル複合メッキまたは電気ニッケル複合メッキで形成することを特徴とする請求項1から5のいずれかの物品。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−98955(P2007−98955A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321463(P2006−321463)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【分割の表示】特願2005−155341(P2005−155341)の分割
【原出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(505197274)株式会社東電工舎 (4)
【Fターム(参考)】