説明

代替燃料の製造方法及び前処理装置、菌類増殖方法及び菌類増殖装置

【課題】本発明は、薬品を使用せず、かつ、簡略な工程で高品質のバイオディーゼルフェルを得ることに寄与し得る代替燃料の製造方法を提供するものである。
【解決手段】本発明の代替燃料の製造方法は、廃油、植物油等のバイオディーゼルフェル原料1を反応装置3で処理してバイオディーゼルフェル4を得る代替燃料の製造方法であって、反応装置3による処理の前処理工程2として前記バイオディーゼルフェル原料に対して電界を作用させるとともに撹拌する工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代替燃料の製造方法及び前処理装置、菌類増殖方法及び菌類増殖装置に関し、
詳しくは廃油、植物油等を原材料としてバイオディーゼルフェル(BDF)からなる代替燃料を得る代替燃料の製造方法及び前処理装置、並びにこれを応用した菌類増殖方法及び菌類増殖装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物油等の廃油からバイオディーゼルフェルを製造するには、メチルエステル法が採用されているが、薬品やエネルギーを大量に消費し、しかも、副産物の残渣処理にも高額の費用を要することから経済的理由等により普及していないのが実情である。
近年では、特定のバイオリアクターを使用し、メチルエステル法を用いることなく効率的にバイオディーゼルフェルを採取する技術が開発されており、短時間で反応させて細菌等の増殖を図る電界付与法として知られている。
【0003】
特許文献1には、この種の技術の一例として電子及びキャビィテーションを利用し迅速な反応の基に高純度・低コストのバイオディーゼル燃料を得る製造方法が提案されている。
【特許文献1】特開2006−104428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電界付与法に着目し、薬品を使用せず、かつ、簡略な工程、簡略な構成で高品質のバイオディーゼルフェルを得ることに寄与し得る代替燃料の製造方法及び前処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の代替燃料の製造方法は、バイオディーゼルフェル原料を反応装置で処理してバイオディーゼルフェルを得る代替燃料の製造方法であって、前記反応装置による処理の前処理工程として前記バイオディーゼルフェル原料に対して電界を作用させる工程を含むことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、バイオディーゼルフェル原料を反応装置で処理するに先立ち、前処理工程によってバイオディーゼルフェル原料に対して高電圧による電界を作用させ、菌の増殖を図るものであるから、前処理工程を経たバイオディーゼルフェル原料を反応装置で処理することによって、高燃焼特性を持った高品質のバイオディーゼルフェルを得ることができる。
【0007】
請求項2記載の発明によれば、バイオディーゼルフェル原料を反応装置で処理するに先立ち、前処理工程によってバイオディーゼルフェル原料に対して高電圧による電界を作用させ、かつ、撹拌して、電界、撹拌の複合作用でバイオディーゼルフェル原料に含まれる菌の増殖を図るものであるから、前処理工程を経たバイオディーゼルフェル原料を反応装置で処理することによって、高燃焼特性を持った高品質のバイオディーゼルフェルを得ることができる。
【0008】
請求項3記載の発明によれば、金属容器内に収容したバイオディーゼルフェル原料に対して、高電圧発生手段から電極に印加される高電圧に基づき電界を作用させ、バイオディーゼルフェル原料に含まれる菌の増殖を図るものであるから、上述した前処理工程を実現し、高燃焼特性を持った高品質のバイオディーゼルフェルの製造に寄与し得る前処理装置を提供できる。
【0009】
請求項4記載の発明によれば、金属容器内に収容したバイオディーゼルフェル原料に対して、高電圧発生手段から電極に印加される高電圧に基づき電界を作用させ、かつ、撹拌手段により撹拌して、これら電界、撹拌の複合作用でバイオディーゼルフェル原料に含まれる菌の増殖を図るものであるから、上述した前処理工程を実現し、高燃焼特性を持った高品質のバイオディーゼルフェルの製造に寄与し得る前処理装置を提供できる。
【0010】
請求項5記載の発明によれば、バクテリア等の菌類を含む原料に高電圧による電界を作用させ、かつ、撹拌して、電界、撹拌の複合作用で前記原料に含まれる菌の増殖を図ることができる菌類増殖方法を提供できる。
【0011】
請求項6記載の発明によれば、金属容器内に収容したバクテリア等の菌類を含む原料に対して、高電圧発生手段から電極に印加される高電圧に基づき電界を作用させ、かつ、撹拌手段により撹拌して、これら電界、撹拌の複合作用で前記原料に含まれる菌の増殖を図ることができる菌類増殖装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、薬品を使用せず、かつ、簡略な工程で高品質のバイオディーゼルフェルを得ることに寄与し得る代替燃料の製造方法を提供するという目的を、廃油、植物油等のバイオディーゼルフェル原料を反応装置で処理してバイオディーゼルフェルを得る代替燃料の製造方法であって、前記反応装置による処理の前処理工程として前記バイオディーゼルフェル原料に対して電界を作用させるとともに撹拌する工程を含む構成により実現した。
【実施例】
【0013】
以下に、本発明の実施例に係る代替燃料の製造方法及び代替燃料の前処理装置について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
本実施例に係る代替燃料の製造方法は、図1に示すように、廃油、植物油等のバイオディーゼルフェル原料1に対して前処理工程2を施し、この後反応装置(バイオリアクター)3により副産物の分離処理等を行いバイオディーゼルフェル4を得るものである。
【0015】
前処理工程2は、前記バイオディーゼルフェル原料1に対して高電圧による電界(静電界)を作用させるとともに、バイオディーゼルフェル原料1を撹拌し、電界、撹拌の複合作用でバイオディーゼルフェル原料に含まれる菌の増殖(例えば100倍)を図るものである。
【0016】
本実施例に係る代替燃料の製造方法によれば、廃油、植物油等のバイオディーゼルフェル原料1を反応装置3で処理するに先立ち、前処理工程2によってバイオディーゼルフェル原料1に対して高電圧による電界(静電界)を作用させ、かつ、バイオディーゼルフェル原料1を撹拌し、電界、撹拌の複合作用でバイオディーゼルフェル原料1に含まれる菌の増殖を図るものであるから、前処理工程2を経たバイオディーゼルフェル原料1を反応装置3で処理することによって、高燃焼特性を持った高品質のバイオディーゼルフェル4を得ることができる。
【0017】
次に、図2を参照して上述した前処理工程2を実現する代替燃料の前処理装置11について説明する。
【0018】
この前処理装置11は、廃油、植物油等のバイオディーゼルフェル原料1を収容するとともに接地された金属容器12と、商用電源13に接続され、例えば1000V〜10000Vの高電圧を発生する電圧調整部15付きのネオントランス等からなる高電圧発生手段14と、前記金属容器12内のバイオディーゼルフェル原料1の原料面(油面)近傍の放電しない距離t(例えば10mm〜20mm)に配置され、前記高電圧発生手段14により発生した高電圧に基づく電界を前記バイオディーゼルフェル原料1に作用する電極16と、前記金属容器12内のバイオディーゼルフェル原料1を撹拌する撹拌モータ17及びこの撹拌モータ17により駆動される撹拌羽根18からなる撹拌手段19と、を有している。前記電極16は、例えば一辺の寸法w=300mmの平面正方形状としている。
【0019】
前記高電圧発生手段14は、高電圧で小電流(例えば1A未満)の電力を電極16を介してバイオディーゼルフェル原料1に供給するように構成され、これにより、電力消費の少ない省電力型に構成している。
【0020】
また、前記電圧調整部15は、電極16に印加する高電圧の電圧値をバイオディーゼルフェル原料1の種類に応じて変更し、最適電圧による電界を当該バイオディーゼルフェル原料1に作用させ、菌の増殖を図るために使用する。
【0021】
前記電極16は、バイオディーゼルフェル原料1の原料面(油面)に対して放電を発生させない距離に非接触の状態で配置するものである。
【0022】
上述した前処理装置11によれば、金属容器12内に収容したバイオディーゼルフェル原料1に対して、高電圧発生手段14から電極16に印加される高電圧に基づき電界を作用させるとともに、撹拌モータ17及び撹拌羽根18によりバイオディーゼルフェル原料1を撹拌し、これら電界、撹拌の複合作用でバイオディーゼルフェル原料1に含まれる菌の増殖を図るものであるから、上述した前処理工程2を実現し、高燃焼特性を持った高品質のバイオディーゼルフェル4の製造に寄与し得る。
【0023】
また、前記電圧調整部15により、電極16に印加する高電圧の電圧値をバイオディーゼルフェル原料1の種類に応じて変更することで、バイオディーゼルフェル原料1の種類に応じた最適の前処理工程2を実行できる。
【0024】
次に、本実施例の応用例として、上述した代替燃料の前処理装置11を応用した菌類増殖装置及び菌類増殖方法について、図3、図4を参照して説明する。
【0025】
この応用例に係る菌類増殖方法は、図3に示すように、バクテリア等の菌類を含む原料20に高電圧による電界を作用させる工程21、及び、バクテリア等の菌類を含む原料20を撹拌する工程22からなり、これらの工程による電界、撹拌の複合作用で前記原料20に含まれる菌類の増殖を図るものである。
【0026】
図4は、菌類増殖方法を実現する菌類増殖装置31を示すものであり、図2に示す前処理装置11の場合と同様に、原料20を収容するとともに接地された金属容器12と、商用電源13に接続され、例えば1000V〜10000Vの高電圧を発生する電圧調整部15付きのネオントランス等からなる高電圧発生手段14と、前記金属容器12内の原料20の原料面(油面)近傍の放電しない距離t(例えば10mm〜20mm)に配置され、前記高電圧発生手段14により発生した高電圧に基づく電界を前記20に作用する電極16と、前記金属容器12内の原料20を撹拌する撹拌モータ17及びこの撹拌モータ17により駆動される撹拌羽根18からなる撹拌手段19と、を有している。
【0027】
この菌類増殖装置31によれば、金属容器12内に収容したバクテリア等の菌類を含む原料20に対して、高電圧発生手段14から電極16に印加される高電圧に基づき電界を作用させ、かつ、撹拌手段19により撹拌して、これら電界、撹拌の複合作用で前記原料20に含まれる菌の増殖を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、上述したバイオディーゼルフェルの製造に適用する場合の他、例えば、電界付与により酵素やバクテリア等の増減を図る生体反応コントロール法等としても応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例に係る代替燃料の製造方法の製造工程を示す説明図である。
【図2】本発明の実施例に係る代替燃料の前処理装置の概略構成図である。
【図3】本実施例の応用例である菌類増殖装置の製造工程を示す説明図である。
【図4】本実施例の応用例である菌類増殖装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0030】
1 バイオディーゼルフェル原料
2 前処理工程
3 反応装置
4 バイオディーゼルフェル
11 前処理装置
12 金属容器
13 商用電源
14 高電圧発生手段
15 電圧調整部
16 電極
17 撹拌モータ
18 撹拌羽根
19 撹拌手段
20 菌類を含む原料
21 電界作用工程
22 撹拌工程
31 菌類増殖装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオディーゼルフェル原料を反応装置で処理してバイオディーゼルフェルを得る代替燃料の製造方法であって、
前記反応装置による処理の前処理工程として前記バイオディーゼルフェル原料に対して電界を作用させる工程を含むことを特徴とする代替燃料の製造方法。
【請求項2】
廃油、植物油等のバイオディーゼルフェル原料を反応装置で処理してバイオディーゼルフェルを得る代替燃料の製造方法であって、
前記反応装置による処理の前処理工程として前記バイオディーゼルフェル原料に対して電界を作用させるとともに撹拌する工程を含むことを特徴とする代替燃料の製造方法。
【請求項3】
バイオディーゼルフェル原料を収容するとともに接地された金属容器と、
高電圧を発生する高電圧発生手段と、
前記金属容器内のバイオディーゼルフェル原料の原料面近傍に配置され、前記高電圧発生手段により発生した高電圧に基づく電界を前記バイオディーゼルフェル原料に作用する電極と、
を有することを特徴とする代替燃料の前処理装置。
【請求項4】
廃油、植物油等のバイオディーゼルフェル原料を収容するとともに接地された金属容器と、
高電圧を発生する電圧調整機能付き高電圧発生手段と、
前記金属容器内のバイオディーゼルフェル原料の原料面近傍の放電しない距離に配置され、前記高電圧発生手段により発生した高電圧に基づく電界を前記バイオディーゼルフェル原料に作用する電極と、
前記金属容器内のバイオディーゼルフェル原料を撹拌する撹拌手段と、
を有することを特徴とする代替燃料の前処理装置。
【請求項5】
バクテリア等の菌類を含む原料に高電圧による電界を作用させる工程及び撹拌する工程を含むことを特徴とする菌類増殖方法。
【請求項6】
菌類を含む原料を収容するととともに接地された金属容器と、
高電圧を発生する電圧調整機能付き高電圧発生手段と、
前記金属容器内の菌類を含む原料の原料面近傍の放電しない距離に配置され、前記高電圧発生手段により発生した高電圧に基づく電界を前記原料に作用する電極と、
前記金属容器内の原料を撹拌する撹拌手段と、
を有することを特徴とする菌類増殖装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−163134(P2008−163134A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352790(P2006−352790)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(507000693)特定非営利活動法人地球環境融合センター (5)
【出願人】(507001623)株式会社ヒューマンサポート (6)
【Fターム(参考)】