説明

仮想生命体の育成装置およびプログラム

【課題】 従来ではユーザが入力、運動しなければ操作ができない、例えばユーザが睡眠中などの無意識化状態の場合には操作することができないという問題点がある。また、恣意的に仮想生命体の成長を操作することもできる不都合もあった。そこで、遊び感覚を具えつつ、運動などの人為的操作を必要とせず、特に人間等の生物の生体情報を使用する機能を有した仮想生命体の育成装置およびプログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】 生体情報を検出するセンサ部と、該センサ部からの情報を前記入力情報として使用し、前記仮想生命体の育成をシミュレーションし、該育成された仮想生命体を視覚化する情報を出力する育成シミュレーション部と、該仮想生命体を視覚化する情報を用い、仮想生命体を視覚化して出力する出力部とを有することを特徴とする仮想生命体の育成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想生命体の育成装置およびプログラムに関するものであり、特に人間等の生体情報を計測して使用する手段を含むものである。
【背景技術】
【0002】
近年、健康ブームという言葉もよく耳にするようになり、また数々の健康関連の刊行物や健康食品、体脂肪率測定機能付ヘルスメータ等の健康グッズが発売されるようになり、人々の健康への関心、さらには健康グッズへの関心の高まりが反映されていると考えられる。健康グッズの中では、気軽に容易に脈拍等の生体情報を計測できるような計測機器が望まれており、実際にそうした製品が店頭で販売されてきている。一方、運動不足解消のためのウォーキングやジョギングなどのトレーニング中の人々の飽き心を埋め合わせるべく、ゲーム感覚を盛り込んだ歩数計などの計測機器も販売されている。
【0003】
一方、ゲーム機の中に仮想生命体(以下、キャラクタ)を存在させ、ユーザが表示されるキャラクタの行動パターンに対応したキー操作を行うことで表示されるキャラクタの育成を行う携帯型育成シミュレーション(ゲーム)装置が知られている。この携帯型育成シミュレーション装置は、シミュレーション装置内のキャラクタの呼びかけや要求に応じて、ユーザが仮想生命体をあたかも現実世界の生命体に対するかのように世話やケアなどを通じてコミュニケーションを行うことにより、ユーザが育成し仮想生命体を成長させる事を目的としている(特許文献1)。しかし、従来の育成シミュレーション装置はキー操作によってキャラクタを育成するため、ユーザが行える操作の選択肢が限られていた。そこで、ユーザがウォーキングやジョギングなどの運動を行うことによって、キャラクタを成長させるような仮想生命体の育成装置が開発されている(特許文献2、3)。これは、運動における振動、例えば、ユーザの歩数などのトレーニング結果を入力として使用するものである。
【特許文献1】特許 第3389489号
【特許文献2】特開2002−360923号公報
【特許文献3】WO98/41299
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、かかる従来技術(特許文献2)は、ユーザが運動しなければ操作ができないものであり、例えば、ユーザが睡眠中などの無意識化状態の場合には操作することができないという問題点がある。また、恣意的に仮想生命体の成長を操作することもできる不都合もあった。例えば、歩数によってキャラクタの成長を促進するような場合には、装置を故意に振動させることにより、人為的にキャラクタを成長させることができてしまうという点である。
【0005】
さらに、キャラクタを常時成長させる形態の仮想生命体の育成装置では、ユーザが運動を行わなかった場合には、キャラクタを成長させることができないので、キャラクタの成長を待ち望みつつも、何等かの事情により運動を行えないユーザにとっては利用価値のないものとなる。
【0006】
そこで、本発明は、遊び感覚を具えつつ、運動などの人為的操作を必要とせず、特に人間等の生物の生体情報を使用する機能を有した仮想生命体の育成装置およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る仮想生命体の育成装置は、外部からの入力情報に従い仮想生命体の育成のシミュレーションを行う仮想生命体の育成装置であって、生物の生体情報を検出するセンサ部と、該センサ部からの情報を前記入力情報として使用し、前記仮想生命体の育成をシミュレーションし、該育成された仮想生命体を視覚化する情報を出力する育成シミュレーション部と、該仮想生命体を視覚化する情報を用い、仮想生命体を視覚化して出力する出力部とを有する、ことを特徴とする。
【0008】
なお、前記センサ部は、前記生体情報を生体情報信号として出力し、前記育成シミュレーション部は、該生体情報信号の時間軸方向に対する波形を分析し、該波形の、振幅、周波数、波形の各頂点間の期間のうちの少なくとも一つについて、平均値、分散値の一方または両方を求める統計的手法を用いて数値化して、該数値を処理パラメータとして出力する機能を有するものであってもよい。
【0009】
また、前記育成シミュレーション部は、前記生物の状態を前記処理パラメータの値に応じて段階的に決定し、前記生物の状態に前記仮想生命体の育成過程の段階を対応させ、該仮想生命体の成長過程の段階に応じた前記仮想生命体の姿に関する視覚的な情報を出力するものであってもよい。
【0010】
前記仮想生命体の成長過程の段階とは、前記仮想生命体の進化および退化ならびに前記仮想生命体の健康状態の変化のうちの少なくとも一つを含む仮想的な成長過程の段階であってもよい。
【0011】
前記センサ部は、少なくとも、シート状静電容量センサ、圧電素子を用いた圧力センサのうちの一つからなる無拘束センサを有していてもよい。
【0012】
前記生体情報は、少なくとも、心拍に関する情報、脈拍に関する情報、脳波に関する情報、呼吸に関する情報のうちの一つを含んでいてもよい。
【0013】
本発明に係るプログラムは、上に記した仮想生命体の育成装置の機能を実現させるプログラムである。
【0014】
なお、本発明における前記仮想生命体の進化とは、生物学的な定義「生物が世代を経るにつれて次第に変化し、元の種との差異を増大して多様な種を生じてゆくこと」によるもの、例えば、プランクトンから人間への生物の進化の過程に限らず、動物や植物の固体の成長過程における変化を含むものであり、特に、生物として人間やペットなどの動物を対象とする場合には、肉体的変化の他、精神的変化や習慣の変化などの変化をも含むものとする。また、本発明における前記仮想生命体の退化とは、生物学的な定義「進歩していたものが、その進化以前の状態に立ちかえること」によるものに限らず、動物や植物の固体の成長過程における変化の逆行を含むものであり、特に、生物として人間やペットなどの動物を対象とする場合には、肉体的変化の他、精神的変化や習慣の変換などの変化の逆行をも含むものとする。
【0015】
例えば、前記仮想生命体の進化とは、キャラクタを人間とした場合に、人間が子供から大人に成長してゆくこと、人間が容姿が端麗になってゆくこと、人間が善人に育ってゆくこと等である。一方、前記仮想生命体の退化とは、例えば生物が人間の場合に、人間が子供に戻ってゆくこと、人間が病気や怪我をしたり、容姿が不良な状態になってゆくこと、人間が悪人に育ってゆくこと等である。さらに、キャラクタとして、例えば、蝶を採用する場合には、その進化として、卵から幼虫、幼虫から蛹、蛹から成虫への変化の各段階が該当し、その退化とは、逆の変化の段階が該当することなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、特に人間等の生物の生体情報を使用することで、運動などの人為的操作を必要とせずに仮想生命体の育成を楽しむことができる。また、該仮想生命体の育成を身近に楽しむ課程において、ユーザの健康への意識付けを高めることが期待できる。
【0017】
また、生体情報はユーザの状態を反映するため、恣意的に成長パラメータを操作することができない、睡眠中などコントロールできない場合にも対応することができる、生体情報の自動的な情報入力により能動的に意識することなく仮想生命体を育成できる、等の点から、仮想生命体の育成をより一層楽しむことができる。
【0018】
本発明の意義ないし効果は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。
【0019】
ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0021】
まず、図1に実施の形態に係る生物の生体情報を入力情報として用いた仮想生命体育成装置のハード構成の概略図を示す。なお、本実施形態では生物とは、特に断らない限り、人間であるとして説明する。
【0022】
図1において、100は脳波波形や心電位波形、呼吸波形などを検出する生体情報入力センサ、200は仮想生命体の育成シミュレーション演算等を行うシミュレーション部、300は仮想生命体等を表示する出力部(以下、LCD[液晶ディスプレイ])、400はシミュレーション部200などに電源を供給する商用電源、電池などの電源、500はシミュレーション部200などへユーザがコマンドなどを入力するスイッチである。なお、本実施形態では、生体情報入力センサ100から取り込まれる生体情報は、ユーザの就寝中におけるものである。
【0023】
シミュレーション部200において、1は生体情報入力センサ100から出力された生体情報であってA/D変換されたデータが入力される入力インタフェース部、2は入力されたデジタル化された生体情報データから入力センサ100の誤作動や何らかの電気的なノイズの発生などによって生じる正常の範囲を逸脱するような不要なイレギュラデータを排除する生体情報フィルタ部、3は生体情報データが格納される生体情報格納RAMである。生体情報格納RAM3は、ライト動作、リード動作が同時に行える構成となっており(以下、Wリードライトメモリ)、生体情報格納RAM3ではある周期を以って最古のデータから順番にオーバライトされる。4は全ての処理、判断、演算、制御等(例えば、生体情報データの処理、判断、演算、制御等や、仮想生命体の進化などの処理、判断、演算、制御等)を司るCPU、5はCPU4が演算等を行う際に使用される作業RAM、6は仮想生命体のキャラクタデータ(画像データ)が保存されているピクチャデータROM、7は仮想生命体が進化、退化等する際の判断に使用される条件が格納された条件格納ROM、8はCPU4が演算等を行う際に使用される掛算回路等のロジック回路、9はLCD300に表示データ等を出力する出力インタフェース部である。10は電源400から供給される電圧の降圧、電流の制御などを行う電源回路である。
【0024】
図2は、生体情報として脳波、心電位、呼吸情報の3つを使用した場合の生体情報入力センサ100から入力インタフェース部1にかけての部分を注視した図である。同図左方の3つの波形図は上から各々脳波、心電位、呼吸動作における波形を表しており、縦軸は信号レベル、横軸は時間方向を表している。これらの波形は、生体情報入力センサ100によって、生体情報が電気的信号として検出され、シミュレーション部200において時間軸方向の波形として把握されることで得られる。
【0025】
このような生体情報入力センサとしては、人体に直接検出電極を密着させる拘束型のセンサ(生体用皿電極やディスポ電極など)と人体に直接電極を密着させることのない無拘束型のセンサがあり、例えば、特に就寝中の人体の生体情報を検出する場合には、拘束型のセンサに比べて、人間に負担が少なく、就寝を阻害しない無拘束型のセンサ(以下、無拘束センサ)が好ましい。このような無拘束センサとしては、脳波については脳が発する電波を検出するセンサなどがあり、心電位については弁の開閉音や脈拍から間接的に心臓の動作が得られるので弁の開閉音を検出する音センサや脈動動作を光信号で検出するフォトカプラ等のセンサがあり、呼吸動作については寝床に設置できるシート状静電容量センサ、圧電素子を用いた圧力センサなどがある。
【0026】
生体情報入力センサ100からの生体情報(アナログ信号)は、シミュレーション部200内のA/D変換部11によってデジタル信号化され、入力インタフェース部1へ出力される。入力インタフェース部1には脳波、心電位、または/および呼吸情報の各デジタル値が入力される。この過程中には図示しない増幅アンプが存在している。
【0027】
なお、生体情報としては脳波、心電位、呼吸情報の少なくとも一つを使用すればよい(以下では、特に断らない限り、呼吸情報を用いた場合で説明する)。
【0028】
仮想生命体は入力される生体情報によって育成を行う。すなわち、生体情報によって進化したり、退化したりする。なお、仮想生命体は進化、退化以外にも、生体情報によって病気の状態になったりしてもよい。しかし、本実施形態では仮想生命体の進化、退化のみで説明しても容易に類推する事ができると考えられることから、仮想生命体の病気の状態についての説明は省略する。
【0029】
次に、図3を参照して、仮想生命体の進化、退化について説明する。なお、本実施形態では、進化には2パターン存在し、退化の場合にはその段階へ進化する直前段階におけるキャラクタへ退化させる。初期状態では、キャラクタは段階1にある。
【0030】
シミュレーション部200の電源を投入して起動し始めた当初は、仮想生命体は仮想生命体(1,1)〜仮想生命体(1,k)のk通りのキャラクタの中から選択される。仮想生命体は、例えば動物や人間、天使などのキャラクターである。仮想生命体(m,n)において、mはその仮想生命体の育成の段階を表し、nはその段階におけるキャラクタの種類を表している。本実施形態では、mは仮想生命体の進化、退化によって各々1だけインクリメント、1だけデクリメントされ、nは1〜2m−1kまでの範囲である。なお、これらm、nの変化のさせ方は本実施形態における方式に限定されない。
【0031】
ここで、仮想生命体(1,1)が選択されたとすると、生体情報が条件を満たすことで仮想生命体は進化を遂げる。なお、生体情報が条件を満たさない時は進化をせず現状維持となる。上記条件は条件格納ROM7に格納されている。同図では、一例として、仮想生命体(1,1)が仮想生命体(2,1)または仮想生命体(2,2)の2パターンに進化する例となっている(現状維持は図示せず)。ここで、仮想生命体(2,1)に進化したとすると、生体情報が条件を満たすことで仮想生命体は進化するか、または退化するか、現状維持となるか、が決まる。同図では、一例として、仮想生命体(2,1)が仮想生命体(3,1)または仮想生命体(3,2)の2パターンに進化する、又は仮想生命体(1,1)へ退化する例となっている(現状維持は図示せず)。
【0032】
このようにして、仮想生命体は進化、退化を繰り返す。仮想生命体が仮想生命体(N,x)まで進化すると(x=1〜2N−1k)、次の進化の処理の時は寿命が来たということで、仮想生命体は進化することなく死亡する。このことにより、ユーザを飽きさせないような急激な変化を生じさせることができる。また、仮想生命体は仮想生命体(1,y)(y=1〜k)から退化をすることはない。なお、進化はキャラクタ全体が進化、退化してもよいし、キャラクタのパーツ毎の変化して行くものであってもよい。キャラクタ全体が進化する場合では、一目で進化していることが把握できる様に、例えば段階mに対してキャラクタのジャンルを変えるようにしてもよい(悪玉キャラクタから善玉キャラクタへと段階的に変化させる、など)。また種類nにおいては、例えば、仮想生命体の姿形や性別、持ち物、装飾品などを変化させ、またnの数値が大きくなるにつれて、それらが貧相になっていくようにしてもよい。
【0033】
次に、図4、図5を参照して、本実施形態に係る仮想生命体育成装置における動作フローについて説明する。フローの説明においては仮想生命体の育成にかかる内容以外の説明は省いている。なお、図4と図5のフローは並列で動作する。図4のフローは主に入力インタフェース部1、生体情報フィルタ部2、生体情報格納RAM3に関するフローであり、図5のフローは主に生体情報格納RAM3、CPU4、作業RAM5、ピクチャデータROM6、条件格納ROM7、ロジック回路8、出力インタフェース部9、LCD300に関するフローである。
【0034】
図4において、ステップS100では、生体情報データが入力インタフェース部1に入力される。
【0035】
ステップS101では、入力インタフェース部1に入力された生体情報データを生体情報フィルタ部2が収集を行う。その際、得られたデジタル値をシミュレーション部200が扱う上で最適であるようなレンジに変換する。自動収集の工程で生体情報データは、後述のようにデータの選別がなされて、生体情報格納RAM3へ格納される。
【0036】
ステップS102では、生体情報フィルタ部2において、生体情報データが正常であるか、すなわちイレギュラデータではないか、サチレーションしたデータではないか判断される。正常データである場合はステップS103へ移行し、正常データで無い場合はステップS100へ戻る。
【0037】
ステップS103では、生体情報データを生体情報格納RAM3へ格納する。その後はステップS100へ戻る。
【0038】
次に図5におけるフローについて説明する。
【0039】
シミュレーション部200の電源を投入すると、フローはステップS200へ移行する。
【0040】
ステップS200では、電源投入後に得られた生体情報データに基づき、ステップS203、ステップS204での手法に則って、仮想生命体が仮想生命体(1,1)〜仮想生命体(1,k)の中から選択される。このことに関して、詳細は後述する。なお、仮想生命体のキャラクタは、ピクチャデータROM6に保存されている。
【0041】
ステップS201では、仮想生命体のキャラクタや、本実施例では説明しないキャラクタ情報や時刻情報などが出力部300に表示される。仮想生命体のキャラクタの表示は、仮想生命体(m,n)に対応するキャラクタをピクチャデータROM6から読み出すことで達成される。
【0042】
ステップS202では、タイマーなど利用して仮想生命体が寿命に達したか判断する。仮想生命体が寿命に達していない場合はステップS203へ移行し、仮想生命体が寿命に達した場合は仮想生命体が死亡したとみなし、一連の仮想生命体の育成が終了したとして終了処理に移行する。終了処理では、例えば終了画面を表示して、電源スイッチやリセットスイッチを押すよう促してもよいし、ユーザへの確認後にスタートへ移行してもよい。
【0043】
ステップS202では、寿命によって一連の仮想生命体の育成が終了したとみなしたが、他にも、退化の回数がある閾値を超えることで死亡とみなしたり、または仮想生命体(1,y)(y=1〜k)へ退化した後は死亡とみなすようにしてもよい。
【0044】
ステップS203では、生体情報データの特徴を抽出する。CPU4が生体情報格納RAM3に蓄積されている生体情報データを読出し、作業RAM5、ロジック回路8などを使用して、例えば生体情報データの波形上の特徴(ピーク値、ピーク間隔時間、周期、周期の変化量など)を抽出する。
【0045】
ステップS203におけるCPU4が生体情報格納RAM3から生体情報データを読込む動作は、テップS103の動作と同時に行われるが、先に述べたように生体情報格納RAM3はWリードライトメモリであるので、この生体情報格納RAM3への同時アクセスが可能となっている。よって、先述のように図4と図5のフローの並列動作が可能となっている。
【0046】
ステップS204では、ステップS203で抽出した各特徴をバッファに格納する。
【0047】
ステップS205では、バッファに格納された各特徴を用いて、仮想生命体の変化(進化、退化、現状維持)を判断する際に使用される状態変化パラメータの演算を行う(後述)。この際に、入力インタフェース部1に、生体情報として脳波、心電位、呼吸情報の3つが入力された場合には、この3つの間で重み付け等を行ってもよい。本実施形態では、本演算は時間オーダーを処理単位とし、すなわち演算を1時間毎に行い、過去1時間分のデータ、および電源投入から現在までの全データについて演算を行う。
【0048】
ステップS206では、ステップS205で算出した状態変化パラメータを参照して、仮想生命体が変化するのか、現状維持なのか判断を行う。仮想生命体が変化する場合はステップS207へ移行し、現状維持の場合はステップS201へ戻る。
【0049】
ステップS207では、状態変化パラメータを参照して、仮想生命体が退化するのか、進化するのか判断を行う。仮想生命体が進化する場合はステップS209へ移行し、退化する場合はステップS208へ移行する。
【0050】
ステップS208では、仮想生命体のキャラクタを、その段階へ進化する直前段階のキャラクタへ退化させるべく、段階を1だけデクリメントする。例えば、過去段階のキャラクタをバッファへ記憶したままにしておくことで、それを辿って退化させる。ステップS208からは、ステップS201へ戻る。
【0051】
本実施形態では、仮想生命体は2パターンのうちのどちらかに進化する。ステップS209では、状態変化パラメータを参照して、仮想生命体が2つ(図5において、仮想生命体1、仮想生命体2)のうちのどちらに進化するのか判断を行う。この判断についての説明は、後の図6の説明の所で併せて述べる。仮想生命体が仮想生命体1へ進化する場合はステップS210へ移行し、仮想生命体2へ進化する場合はS211へ移行する。
【0052】
ステップS210では、仮想生命体を仮想生命体1へ進化せるべく、段階を1だけインクリメントし、育成対象として仮想生命体1を設定する。本実施形態では、仮想生命体1は、前段階における段階mと種類nと、仮想生命体1の段階m’(=m+1)で決まる。すなわち、仮想生命体1における種類n’、n’(前述のように2種類存在する。例えばn’<n’とすると、n’=n’+1)は段階m、種類n、段階m’から簡単な数列の演算により決定される。例えば、仮想生命体1の種類をn’とすることで、仮想生命体1は仮想生命体(m’,n’)に定まる。この場合、種類n’は仮想生命体2となる。
【0053】
ステップS210から、ステップS201へ戻る。
【0054】
ステップS211では、仮想生命体を仮想生命体2へ進化せるべく、段階を1だけインクリメントし、育成対象として仮想生命体2を設定する。仮想生命体2は、上で述べたように、仮想生命体(m’,n’)である。ステップS211から、ステップS201へ戻る。
【0055】
以上のフローが繰り返されることにより、仮想生命体は進化、退化を繰り返し、ユーザは自己の生体情報を使用して仮想生命体の育成を行うことができる。なお、上記は就寝中の生体情報を使用するフローであるので、生体情報からユーザが起床したことが確認できた場合には、例えば上記フローはステップS201でウエイト状態となる。この確認は、たとえばステップS205やステップS201などで行ってよい。
【0056】
この仮想生命体の進化、退化、現状維持の変化は視覚的に捉えることができるので、ユーザは楽しみながら自己の健康状態に注意することができる。進化する点は同じであっても、進化後の仮想生命体を仮想生命体1と仮想生命体2とで若干優劣を付けることで、自己の健康状態により関心をもたせることが可能となる。この様に、仮想生命体の進化、退化、現状維持の変化をユーザが把握することで生体情報を間接的にユーザにフィードバックすることができる。
【0057】
ステップS206、ステップS207、ステップS209における判断の仕方について図6を用いて説明する。なお、ステップS206、ステップS207、ステップS209における判断は一度に行ってもよく、その場合は各々対応して、ステップS201、ステップS208、ステップS210へ移行してよい。
【0058】
図6は、どのような場合にキャラクタが進化、退化、現状維持の状態に変化するかの判断について説明する図である。
【0059】
キャラクタの変化は、CPU4がロジック回路8などを用いて統計的手法により求めた、入力生体情報の平均値および分散値を使用し、各々閾値と比較することで決定される。具体的には下記式により求められた変数z’に基づいて変化する。この変数z’は先述の状態変化パラメータである。ここでのサンプル値は先に定めたように呼吸情報のサンプル値である。なお、先に述べたように入力インタフェース部1に、生体情報として脳波、心電位、呼吸情報の3つが入力された場合には、この3つの間で重み付け等を行ってサンプル値を作成してもよい。
【0060】
z =(x−U)/V [ x:各1時間毎のサンプル値の平均値
U:スタート時からのサンプル値の平均値
V:スタート時からのサンプル値の分散値]
z’=z−z [zはスタート時のz値]
本実施形態では、z’は1時間毎に算出されるものとする。即ち、キャラクタの変化タイミングは時間単位である。そうすると、上記zは生体情報の計測開始時(スタート時)から1時間後のzの値である。
【0061】
同図のテーブルによると、スタート直後にキャラクタは段階1にあるので、段階1での進化に関するテーブルを参照する。z’とthreshold2Hとで比較を行い、z’がthreshold2H以上の時は、キャラクタが進化する。それ以外は現状維持である。なお、テーブル中のv(小文字)は、各1時間毎のサンプル値の分散値を表す。このvと閾値vth1との比較結果に依存して、仮想生命体の進化後のキャラクタが2状態のうちの一方(テーブル中の段階2aまたは2b)に決定される。
【0062】
キャラクタが段階2にある場合について説明する。段階2での進化・退化に関するテーブルを参照する。z’とthreshold3H、threshold2Lとで各々比較を行い、z’がthreshold3H以上の時は、キャラクタが進化する。z’がthreshold2L未満の時は、キャラクタが退化する。それ以外は現状維持である。なお、vと閾値vth2との比較結果に依存して、仮想生命体の進化後のキャラクタが2状態のうちの一方(テーブル中の段階3aまたは3b)に決定される。
【0063】
以上のことから、キャラクタが段階Nにある場合は、段階Nでの進化・退化に関するテーブルを参照する。z’とthreshold(N+1)H、thresholdNLとで各々比較を行い、z’がthreshold(N+1)H以上の時は、キャラクタが進化する。z’がthresholdNL未満の時は、キャラクタが退化する。それ以外は現状維持である。なお、vと閾値vthNとの比較結果に依存して、仮想生命体の進化後のキャラクタが2状態のうちの一方(テーブル中の段階NaまたはNb)に決定される。
【0064】
なお、上記threshold2H、threshold2Lなどのzの各閾値間の関係は同図右に示すとおりである。また、上記vth1などの分散に関する閾値vthαは、段階αにおけるvの閾値を表す。
【0065】
上述のzの算出式により、例えば、生体情報が安定であるかどうかが、仮想生命体の進化、退化、現状維持間の変化に影響を与えることが把握できる。
【0066】
図7を使用して、脳波、心電位、呼吸情報の各々における安定状態、不安定状態について説明する。これらの何れの生体情報においても、被測定生物、この場合、人間について、例えば、安定状態にあるべき波形の周期性(例えば、波形の繰り返し周期)の許容範囲が分かっている場合は、その安定状態にあるべき波形の周期性の範囲内に該当する生体情報が同図の上半分に記載したように安定状態であると判断される。また、安定状態にあるべき波形の周期性が分かっていない場合には、被測定生物が安静状態にあると判断された状態、即ち、所定時間中(例えば、1時間であるが、これに限られない)において、脳波、心電位、呼吸情報の各波形の自己相関値に急激な変化(例えば、±10%であるが、これに限らない)がない状態でのこれらの波形の周期性を予め検出しておき、これを中心として、例えば、±30%の範囲を安定状態の許容範囲とみなすことができる。
【0067】
従って、例えば、呼吸については、同図の下半分に記載されているように、同図の上半分の記載と比べて、安定状態の許容範囲を越えて、振幅が大きく周期が短い状態にあるときは、不安定状態である。心電位については、同図の下半分に記載されているように、同図の上半分の記載と比べて、安定状態の許容範囲を越えて、周期が短い状態にある場合が安定でない状態である。脳波については、同図の下半分に記載されているような安定状態の許容範囲を越えて異なる場合は、人が眠っていない状態、即ち覚醒している状態なので、不安定状態である。
【0068】
脳波、心電位、呼吸情報の各々における安定状態、不安定状態では、波形にその状態の特徴が表れるので、サンプル値の平均値、分散値に大きな影響を与える。よって、安定状態か不安定状態かということは、変数Z’の決定に大きな影響を及ぼすので、図6での進化、退化の決定に大きく関わる。
【0069】
このように、本発明により、人間の生体情報を使用して仮想生命体の育成を楽しむことができる。さらに、各種センサから取得した生体情報を計測して仮想生命体の育成を行い、その成長結果を通じてユーザに計測結果をフィードバックすることができる点、生体情報、ユーザの健康状態や睡眠状態を、前記生物の状態に対応した前記仮想生命体の姿を出力することで、前記生物の状態を視覚化でき、容易に把握できる形でユーザ自身にフィードバックすることができる点から、該仮想生命体の育成をより楽しむために、ユーザに対して健康への関心を深めることができ、健康への意識付けを高めることが期待できる。
【0070】
上で述べてきた実施形態では、生物として人間を例として説明してきたが、生物は犬などのペットや動物であってもよい。なお、上記人間の例からこの場合の実施形態は容易に把握できるので、詳しい説明は省略する。一方、生物は植物であってもよい。この場合、センサ部は、植物の背丈や茎径などの成長に関する情報や、植物が発する何等かのバイブレーションを検出する。なお、上記人間の例から植物の場合の実施形態は容易に把握できるので、詳しい説明は省略する。
【0071】
本実施の形態における仮想生命体の育成装置は、ハードウェア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIなどで実現できる。また、ソフトウェア的には、メモリにロードされた計測された生体情報を処理する手段を有した仮想生命体の育成機能のあるプログラムなどによって実現される。図1には、ハードウェアおよびソフトウェアによって実現される仮想生命体の育成装置の機能ブロックが示されている。ただし、これらの機能ブロックが、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、あるいは、それらの組合せ等、いろいろな形態で実現できることは言うまでもない。
【0072】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施の形態に係る仮想生命体育成装置のハード構成の概略図である。
【図2】実施の形態に係る仮想生命体育成装置の機能ブロック図である。
【図3】実施の形態に係る仮想生命体の進化、退化について説明する図である。
【図4】実施の形態に係る仮想生命体育成装置における動作フロー図である。
【図5】実施の形態に係る仮想生命体育成装置における動作フロー図である。
【図6】実施の形態に係る仮想生命体育成装置におけるキャラクタの状態(進化、退化、現状維持)の判断について説明する図である。
【図7】実施の形態に係る仮想生命体育成装置における生体情報が安定である場合、安定でない場合を説明する図である。
【符号の説明】
【0074】
1 入力インタフェース部
2 生体情報フィルタ部
3 生体情報格納RAM
4 CPU
6 ピクチャデータROM
7 条件格納ROM
9 出力インタフェース部
100 生体情報入力センサ
200 シミュレーション部
300 出力部
500 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの入力情報に従い仮想生命体の育成のシミュレーションを行う仮想生命体の育成装置であって、
生物の生体情報を検出するセンサ部と、
該センサ部からの情報を前記入力情報として使用し、前記仮想生命体の育成をシミュレーションし、該育成された仮想生命体を視覚化する情報を出力する育成シミュレーション部と、
該仮想生命体を視覚化する情報を用い、仮想生命体を視覚化して出力する出力部とを有する、
ことを特徴とする仮想生命体の育成装置。
【請求項2】
前記センサ部は、前記生体情報を生体情報信号として出力し、
前記育成シミュレーション部は、該生体情報信号の時間軸方向に対する波形を分析し、該波形の、振幅、周波数、波形の各頂点間の期間のうちの少なくとも一つについて、平均値、分散値の一方または両方を求める統計的手法を用いて数値化して、該数値を処理パラメータとして出力する機能を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の仮想生命体の育成装置。
【請求項3】
前記育成シミュレーション部は、前記生物の状態を前記処理パラメータの値に応じて段階的に決定し、前記生物の状態に前記仮想生命体の育成過程の段階を対応させ、該仮想生命体の成長過程の段階に応じた前記仮想生命体の姿に関する視覚的な情報を出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載の仮想生命体の育成装置。
【請求項4】
前記仮想生命体の成長過程の段階とは、前記仮想生命体の進化および退化ならびに前記仮想生命体の健康状態の変化のうちの少なくとも一つを含む仮想的な成長過程の段階である、
ことを特徴とする請求項3に記載の仮想生命体の育成装置。
【請求項5】
前記センサ部は、少なくとも、シート状静電容量センサ、圧電素子を用いた圧力センサのうちの一つからなる無拘束センサを有することを特徴とする請求項1ないし4に記載の仮想生命体の育成装置。
【請求項6】
前記生体情報は、少なくとも、心拍に関する情報、脈拍に関する情報、脳波に関する情報、呼吸に関する情報のうちの一つを含むことを特徴とする請求項1ないし5に記載の仮想生命体の育成装置。
【請求項7】
請求項1ないし6に記載の仮想生命体の育成装置の機能を実現させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−117639(P2007−117639A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317197(P2005−317197)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】