説明

任意のパターンをもつカムおよびクランクシャフト信号に適用可能なエンジン・クランクシャフト位置の認識および追跡方法

クランクシャフト位置を表すデータを提供するための方法およびシステム。クランクシャフト信号の各立上りごとに、位置値および因子値が参照テーブルに記憶される。カム信号およびクランクシャフト信号を使用して、初期クランクシャフト位置を突き止める。この初期位置値を、参照テーブルへのポインタとして使用し、クランクシャフト信号の各立上りパルスとともに増加させる。参照テーブルからのデータを使用して、クランクシャフト位置をクランクシャフト信号値から、度の角度単位での所望の分解能まで外挿する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御システムに関し、より詳細には、エンジン・クランクシャフト位置の認識および追跡に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン・クランクシャフト位置の認識および追跡は、エンジン動作状態の測定の重要部分である。現在のエンジン制御ユニット(ECU)は、点火、噴射、シリンダ・カット、エンジン速度測定、噴射および点火タイミング測定など、様々なエンジン・クランクシャフト依存の機能のために、クランクシャフト位置のリアルタイム測定を利用する。
【0003】
精密なエンジン制御を行うには、クランクシャフト位置依存の指令が、角度領域でのクランクシャフト位置と同期される必要がある。したがって、ECUは、リアルタイムで、角度領域でのクランクシャフト位置を認識し、追跡する必要がある。
【0004】
カム信号とクランクシャフト信号の組合せを使用して、エンジン・クランクシャフト位置を認識し、追跡する。エンジンおよび車両の製造業者は、様々なカムおよびクランクシャフト信号パターンを発明してきた。こうしたパターンは、ECUが、スタータがクランクシャフトを回転させた後、クランクシャフト位置を迅速に認識し、またエンジンが動いている間、クランクシャフト位置を正確に追跡することが可能なように、設計されている。
【0005】
次に、エンジン・クランクシャフト位置の認識および追跡のための方法およびシステムについて説明する。このシステムおよび方法では、1エンジン・サイクル未満で、クランクシャフト位置を認識することができる。その結果、ECUは、1エンジン・サイクル内の、噴射や点火などのタスクの制御を開始することができる。
【0006】
この方法(およびそのハードウェア実装形態)では、入力カムおよびクランクシャフト信号の位置信号パターンは任意でよいという意味で、クランクシャフト位置の「一般的」測定が行われる。どんなカムおよびクランクシャフト位置の信号パターンに対しても、この方法を容易に改変することができるので、エンジン制御システムの試作が容易である。この方法の用途としては、エンジンおよび車両の制御、ならびにエンジンおよび車両のベンチマーキング(benchmarking)がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明によるエンジン・クランクシャフト位置の認識および追跡システム100を示している。エンジン101は、従来型のエンジンセンサ装置でよい、カムおよびクランクシャフト位置センサ102および103を有するものとする。以下で説明するように、センサ102および103は、エンジンごとに異なり得る信号パターンを提供する。
【0008】
エンジン・カムおよびクランクシャフト位置センサ信号は、標準のトランジスタ・トランジスタ論理回路(TTL)信号として調整することができる。それらの立上りおよび立下りは、処理モジュール104a、104b、および/または104cを実装するのに使用できる、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などの集積回路チップによって捕捉されることができる。
【0009】
位置認識および追跡処理モジュール104は、市販の処理装置およびメモリ装置を用いて実装されてよい。モジュール104は、本明細書に記載の方法を実施するために、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組合せを用いて実装されてよい。記憶装置は、読取り専用メモリ(ROM)装置などの装置を用いて実装されてよい。この説明では、「プロセッサ」には、少なくとも記憶されたデータにアクセスしそれを操作することのできる単純な装置から、より複雑なソフトウェア・プログラマブル装置まで含まれ得る。本明細書の記述から明らかなように、モジュール104aおよび104bによって行われるタスクはあまり複雑ではないが、モジュール104cでは算術計算を行う。
【0010】
より具体的には、モジュール104は、クランクシャフト位置の認識および追跡のための様々なアルゴリズムおよび計算を実施する。モジュール104は、ECU 105を実装する処理システムに統合してもよく、あるいは、ECU 105とデータ通信を行う別個のユニットでもよい。いずれにしても、モジュール104は、角度領域でのクランクシャフトのシャフト位置を表すデータを、ECU 105に提供する。
【0011】
システム100によって実装される方法は、3つの主な部分、すなわち、クランクシャフト位置認識、クランクシャフト位置追跡、および位置外挿に分けることができる。
【0012】
クランクシャフト位置認識
エンジン101のスタータがクランクシャフトを回転させた後、ECU 105が、エンジン・クランクシャフト位置をできるだけ早く認識する必要がある。この目的のために、モジュール104は、センサ102および103から、カム信号およびクランクシャフト信号を受け取る。この説明では、カム・センサ102およびクランクシャフト・センサ103からの位置信号を、それぞれ「カム信号」および「クランクシャフト信号」と呼ぶ。
【0013】
次のステップは、モジュール104aによって実施される、エンジン・クランクシャフト位置の認識プロセスを説明するものである。後述の様々なカウンタおよびレジスタは、モジュール104aの一部分である。
1)カム信号の最初の検出された立上りで、クランクシャフト・カウンタをクリアし、有効化する。
2)クランクシャフト信号の立上りが捕捉された後、クランクシャフト・カウンタを1だけ増加させる。
3)カム信号の立下りが検出されるまで、クランクシャフト・カウンタを増加させ続け、次いで、クランクシャフト・カウンタの計数を停止する。
4)カム信号の立下りで、クランクシャフト・カウンタの値に基づいて、「位置ポインタ」レジスタを対応する値に初期化する。
5)クランクシャフト信号の次の立上りで、参照テーブルから得られた位置値を、クランクシャフト位置レジスタ106に記憶する。
【0014】
このようにしてクランクシャフト位置値を得る一例が、図4A、4B、4C、および5に関連して、以下に記述されている。図2Aおよび2Bに関連して以下で説明するように、位置ポインタを使用して、参照テーブルにアクセスし、それによって、クランクシャフト信号の各立上りにおける位置値を見つける。各位置値は、角度領域でのクランクシャフト位置に関連している。クランクシャフト信号のパルス幅によって得られるものよりも大きい分解能が所望される場合、外挿ユニット104cを使用して、クランクシャフト信号の立上りの間の位置値を計算する。
【0015】
万一、カム信号の立上りおよび立下りがクランクシャフト信号の立上りとちょうど同じ時間に発生する一部のパターンの場合、カム信号を、数クロックサイクルだけ遅延させ、あるいはクランクシャフト信号の立下りと同期させて、それらを異なる時間に発生させてよい。このことは、クランクシャフト位置追跡に影響を与えない。なぜなら、カム信号は、クランクシャフト位置に対する相対参照であるからである。
【0016】
カム信号が1エンジン・サイクル内に2つ以上のパルスを有する場合、1エンジン・サイクル未満でカム信号の立上りおよび立下りが検出されることになり、したがって、1エンジン・サイクル未満でクランクシャフト位置を認識することができる。
【0017】
上記のステップはクランクシャフト信号の立上りについて述べているが、その代わりに立下りを使用してもよいことを理解されたい。「立上り」および「立下り」という語は、位置の認識および追跡の代替方法の説明において、本明細書では等価であると見なされる。
【0018】
また、2つ以上のカム信号パルスの下での、クランクシャフト信号の立上りの数が同じである一部のパターンの場合、カム信号とクランクシャフト信号の組合せが非対象であるものとして、カム信号の2つの隣接する立上りの間のクランクシャフト信号の立上りの数を使用して、カム信号を区別することができる。
【0019】
クランクシャフト位置追跡
モジュール104aによって提供されるエンジン・クランクシャフト位置データに加えて、ECU 105は、クランクシャフト位置と同期した様々なエンジン動作を指令するために、リアルタイムでクランクシャフト位置を表す追跡データを有する必要がある。
【0020】
図2Aおよび2Bは、参照テーブルの使用に基づく、クランクシャフト位置追跡モジュール104bを示している。図2Aは、モジュール104bの入力および出力を示しており、図2Bは、図2Aの参照テーブル202の内容を示している。
【0021】
参照テーブル202は、読取り専用メモリ(ROM)装置を用いて実装されてよい。参照テーブル202への索引は、モジュール104aによって決定された、レジスタ201中に記憶されている位置ポインタである。より具体的には、モジュール104aは、そのポインタを表すデータを、レジスタ201を介してモジュール104bに伝達する。位置ポインタは、それによって初期化された後、クランクシャフト信号の各立上りで1だけ増加される。
【0022】
参照テーブル202からの出力レジスタは、クランクシャフト信号の各立上りでの対応する位置と、クランクシャフト信号のパターンに基づくクランクシャフト信号の前の周期と次の周期(period)の間の因子と、位置追跡分解能による次の周期中(クランクシャフト信号の次の立上りの直前)の最大外挿位置とを表すデータを記憶する。
【0023】
テーブル索引(位置ポインタ)は、0〜mの値を有する。mの値は、1エンジン・サイクル当たりのクランクシャフト信号立上り数−1のカウントを表す。エンジン・クランクシャフトが回転するにつれて、位置ポインタの値は、0〜mを循環する。
【0024】
位置値Pos(i=0、1、...、m)は、クランクシャフト信号の各立上りでのクランクシャフト位置値である。因子値Facは、(i−1)番目、i番目の立上りの度周期(degree period)と、i番目、(i+1)番目の立上りの度周期の比である。この比は、クランクシャフト信号トリガ歯車の機械的パターン(mechanical pattern)によって決定される。
【0025】
位置ポインタ・レジスタ201が更新された後、位置、因子、および最大外挿位置レジスタ203、204、205の値が、即時かつ同時に更新される。
【0026】
図3は、エンジン・クランクシャフト位置機械的歯車31の一部分の一例を示している。機械的歯幅は、すべての歯について等しく、クランクシャフト信号の立上りおよび立下りは、それぞれ機械的歯の立上りおよび立下りで発生するものと仮定する。
【0027】
各2つの隣接する立上りの間のクランクシャフト角度距離は、次の関係を有する。
Θi−4=Θi−2=Θ=Θi+1
Θi−3=2Θi−4
Θi−1=3Θi−4 (1)
この機械的パターンから、各立上りでの因子値を、以下のように決定することができる。
【0028】
【数1】

【0029】
これらの因子値は、機械的クランクシャフト歯車パターンのみによって決定される。同じタイプのエンジンでは、機械的歯車パターンは、同じであり、したがって、因子値も同じである。Faci−5およびFaci+1の値は、それぞれΘi−5およびΘi+2に依存するが、それらは図3に図示されていない。
【0030】
参照テーブル(look−up table)202は、因子値の分子および分母を別々に記憶する。セルの上半分のビットを使用して分子を記憶し、セルの下半分のビットを使用して分母を記憶する。
【0031】
クランクシャフト位置外挿
生産されるエンジンでは、1エンジン・サイクル当たりのクランクシャフト・トリガ信号数は通常、非常に限られている。一般に、1エンジン・サイクル(720クランクシャフト角度)当たり、約2×(60−2)=116個または2×(60−3)=114個の信号しかない。その結果、分解能は、約6クランクシャフト角度である。
【0032】
しかし、最適なエンジン性能を実現するために、エンジン動作によっては、より小さい分解能が所望されることがある。たとえば、噴射および点火のタイミングおよび持続時間は、クランクシャフト位置角度領域での、より精密な制御を必要する。そのようなタスクでは、所望の分解能は、1クランクシャフト角度以下と同じ小ささとなり得る。
【0033】
この小さな分解能要件では、モジュール104bによって提供されるクランクシャフト位置の外挿が必要になる。図1の例では、外挿は、モジュール104cによって行われる。外挿は、2つの連続するトリガ信号の間の、測定済みの前の周期に基づく。前述の因子値は、数値的外挿アルゴリズムに基づく、クランクシャフト位置の外挿のために使用される。
【0034】
定常状態(一定のエンジン速度)では、クランクシャフト信号の2つの隣接する立上りの間の周期は、機械的歯車のパターンによって定義される因子値に基づき、次の関係を有する。
Periodi+1
=Fac×Period=Fac×Faci−1×Periodi−1
=Fac×Faci−1×Faci−2×Periodi−2=... (3)
【0035】
しかし、過渡状態(エンジンの加速または減速)中は、クランクシャフト信号の各立上りで次の周期を予測するために、測定済みの前の周期を以下のように考慮すべきである。
PredictedPeriodi+1
×Fac×Period+a×Fac×Faci−1×Periodi−1+a×Fac×Faci−1×Faci−2×Periodi−2+...+a×Fac×Faci−1×Faci−2×...×Faci−n×Periodi−n (4)
ただし、nは、推定の次数である。a、a、a、...、aの値は、数値的アルゴリズムによって決定される係数である。Fac、Faci−1、...、Faci−nの値は、前の立上りで参照テーブル202によって提供され、対応するレジスタに記憶される。Period、Periodi−1、...、Periodi−nの値は、前に測定された周期であり、対応するレジスタに記憶される。
【0036】
したがって、クランクシャフト信号のi番目の立上りでは、2つの隣接する外挿クランクシャフト位置の間の小周期は、計算された(i+1)番目の予測周期と、現立上り(i番目)での位置値と、クランクシャフト信号の次の立上り((i+1)番目)の前の(クランクシャフト位置追跡分解能によって決定される)最大外挿位置とに基づいて、次のような参照テーブル202から読み取られて、決定することができる。
【0037】
【数2】

【0038】
クランクシャフト信号の各立上りで、クロックタイマがクリアされ、時計刻みでの時間の計数を開始する。クロックタイマ値が、計算された多数の小周期値に等しくなるごとに、外挿クランクシャフト位置カウンタは1だけ増加される。したがって、位置カウンタは、外挿分解能に従って、クランクシャフト位置をリアルタイムで追跡することができる。
【0039】
一部のクランクシャフト歯車パターンでは、整数フォーマットでの正確な因子値の分子および分母は、非常に大きくなることもある。たとえば、
【0040】
【数3】

となる。分子91、および分母10010=1100100が、参照テーブル202に記憶されるべきであるが、それには、各値ごとに7ビットが必要とされる。
【0041】
メモリ・スペースを節約し、計算量を減らすために、参照テーブル中の分子および分母のビット幅は、所望の位置追跡分解能によって決まる。上記の例では、所望の追跡分解能が0.1°より大きい場合、因子値は、
【0042】
【数4】

と設定することができ、それには、分子および分母に4ビット(1010=1010)しか必要とされない。
【0043】
例 カムおよびクランクシャフト位置センサ信号
図4A〜4Cは、カムおよびクランクシャフト位置センサ信号パターンの例を示している。これらの例示的な信号を以下で使用して、システム100の動作を示す。
【0044】
図4Aに示されているように、全1エンジン・サイクル(720°クランクシャフト角度)中、センサ102からのカム信号には、3つのパルスがある。これら3つのパルスのうち、2つが同じパルス幅を有し、1つがより狭いパルス幅を有する。
【0045】
図4Bに示されているように、クランクシャフト位置歯車は、6クランクシャフト角度ごとに1つの歯を有するが、3つの欠落歯がある。したがって、センサ103からのクランクシャフト信号は、6クランクシャフト角度ごとに1パルスを有するが、3つの隣接する欠落パルスがある。言い換えれば、クランクシャフト位置センサ103は、1クランクシャフト回転(360°クランクシャフト角度)ごとに、60−3=57個のパルス信号をもたらす。それらの間、24クランクシャフト角度である、欠落歯の間の2つの隣接する立上りを除く、すべての隣接する立上りの間に、6クランクシャフト角度が存在する。
【0046】
図4Cは、図4Bと重ね合わせた図4Aのより詳細な図である。第1のカム信号の立上りと立下りの間に2個のクランクシャフト信号の立上りがあり、第2のカム信号の立上りと立下りの間に10個のクランクシャフト信号の立上りがあり、第3のカム信号の立上りと立下りの間に7個のクランクシャフト信号の立上りがある。
【0047】
例 クランクシャフト位置認識
モジュール104aのクランクシャフト位置認識方法によれば、スタータがエンジン101を回転させた後、カム信号の(最初の検出された立上りの後の)最初の検出された立下りで、「クランクシャフト・カウンタ」の値(2、10、または7)を使用して、クランクシャフト信号の次の立上りでの対応するクランクシャフト位置を突き止めることができる。
【0048】
カム信号の最初の立下りで、以下が成り立つ。
1)クランクシャフト・カウンタの値が2の場合、位置ポインタ・レジスタが23に設定され、この値は、クランクシャフト信号の次の立上りについて参照テーブルに記憶されている138°クランクシャフト角度のクランクシャフト位置に相当する。
2)クランクシャフト・カウンタの値が10の場合、位置ポインタ・レジスタが70と設定され、この値は、クランクシャフト信号の次の立上りについて参照テーブルに記憶されている420°クランクシャフト角度のクランクシャフト位置に相当する。
3)クランクシャフト・カウンタの値が7の場合、位置ポインタ・レジスタが103と設定され、この値は、クランクシャフト信号の次の立上りについて参照テーブルに記憶されている618°クランクシャフト角度のクランクシャフト位置に相当する。
【0049】
このようにして、カム信号の立上りおよび立下りの最初の対が検出された後、クランクシャフト位置を認識することができる。この例では、1エンジン・サイクル当たり3つのカム信号パルスが存在するので、スタータがクランクシャフトを回転させた後、1エンジン・サイクル未満(720クランクシャフト角度未満)でクランクシャフト位置を認識することができる。
【0050】
クランクシャフト位置追跡
モジュール104aがエンジン・クランクシャフト位置を認識した後、クランクシャフト位置ポインタが初期化される。その後、クランクシャフト位置ポインタは、クランクシャフト位置センサ信号の各立上りで1だけ増加される。クランクシャフト位置追跡アルゴリズムを使用して、クランクシャフト位置が追跡される。
【0051】
クランクシャフト位置追跡の外挿分解能が6/16=0.375°と設定された場合、追跡アルゴリズムは、クランクシャフト信号の2つの隣接する立上りの間(6°)に15個のクランクシャフト位置を外挿し、欠落歯の周りの立上りの間に23個のクランクシャフト位置を外挿する必要がある。
【0052】
図5は、位置追跡モジュール104bによって生成された、参照テーブル202の、欠落歯の周りの部分的内容を示している。クランクシャフト信号のその他の通常パルスにおける列の値は、単純明快であり、図示されていない。欠落歯を除く大部分の場所でクランクシャフト信号のパルスが等しく分散されるので、因子値は、欠落歯の周りのクランクシャフト信号の立上りを除き、大部分は1である。
【0053】
追跡分解能が0.375°であるので、表中の位置値は、0/0.375=0〜(720−0.375)/0.375=1919である。表からの位置値×分解能が、クランクシャフト角度領域での実際のクランクシャフト位置となる。
【0054】
説明のために、図5はまた、実際のクランクシャフト角度位置も示している。しかし、これらの値は、実際の参照テーブル202に記憶する必要はない。
【0055】
参照テーブル202が構築された後、位置追跡モジュール104bを使用してエンジン・クランクシャフト位置をリアルタイムで追跡し、(噴射および点火など)すべての位置同期化機能に対して、エンジン・クランクシャフト位置情報を提供することができる。構築後、参照テーブル202は、他の任意のカムまたはクランクシャフト信号パターンのために、容易に変更して、値を反映させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明によるエンジン・クランクシャフト位置および追跡用のコンピュータ実装システムの図である。
【図2A】図1のクランクシャフト位置追跡モジュール用のハードウェアの動作、およびその一実施形態の図である。
【図2B】図2Aの参照テーブルの内容を示す図である。
【図3】エンジン・クランクシャフト位置歯車の一部分を示す図である。
【図4A】エンジン・カムおよびクランクシャフト位置センサ信号の例を示す図である。
【図4B】エンジン・カムおよびクランクシャフト位置センサ信号の例を示す図である。
【図4C】エンジン・カムおよびクランクシャフト位置センサ信号の例を示す図である。
【図5】図4のカムおよびクランクシャフト信号パターン用の部分的な参照テーブルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス型カム信号およびパルス型クランクシャフト信号を提供するエンジンのクランクシャフト位置を認識する方法であって、
前記クランクシャフト信号の各立上りに対応する位置値を割り当てるステップであって、各位置値が、クランクシャフトの1サイクル中の角度での前記クランクシャフト位置を表すステップと、
カム・サイクル中の前記カム信号の各パルスごとに、そのカム・パルス内のクランクシャフト・パルス数を表す値、および関連した初期クランクシャフト位置値を記憶するステップと、
前記カム信号の検出された立上りで、クランクシャフト・カウンタをクリアし、初期化するステップと、
前記カム信号の立下りが検出されるまで、前記クランクシャフト信号の各立上りごとに前記クランクシャフト・カウンタを1だけ増加させるステップと、
前記カム信号の前記立下りで、前記記憶された値にアクセスするステップと、
前記クランクシャフト・カウンタの値に基づいて、前記関連した初期クランクシャフト位置値を選択するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記カム信号および前記クランクシャフト信号の前記立上りが同時に発生し、前記信号のうちの1つを遅延させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
パルス型カム信号およびパルス型クランクシャフト信号を提供するエンジンのクランクシャフト位置を認識するためのクランクシャフト位置認識ユニットであって、
前記クランクシャフト信号の各立上りに対応する位置値を記憶するためのメモリであって、各位置値が、前記クランクシャフトの1サイクル中の角度での前記クランクシャフト位置を表すメモリと、
カム・サイクル中の前記カム信号の各パルスごとに、そのカム・パルス内のクランクシャフト・パルス数を表す値、および関連した初期クランクシャフト位置値を記憶するためのメモリと、
前記カム信号の検出された立上りで、クリアされ、初期化され、
前記カム信号の立下りが検出されるまで、前記クランクシャフト信号の各立上りごとに1だけ増加させるようにさらに動作可能なクランクシャフト・カウンタと、
前記カム信号の前記立下りで前記記憶された値にアクセスし、前記記憶された値にアクセスし、前記クランクシャフト・カウンタの前記値に基づいて前記関連した初期クランクシャフト位置値を選択するためのプロセッサと
を含む認識ユニット。
【請求項4】
前記プロセッサが、ファームウェアとともに実装される、請求項3に記載の認識ユニット。
【請求項5】
前記プロセッサが、ソフトウェア・プログラマブル装置とともに実装される、請求項3に記載の認識ユニット。
【請求項6】
前記カム信号および前記クランクシャフト信号の前記立上りが同時に発生し、前記カウンタを遅延させて、それらを異なる時間に発生させる、請求項3に記載の認識ユニット。
【請求項7】
クランクシャフト位置計算ユニットに、関連したパルス型クランクシャフト信号を有する、エンジンのクランクシャフトの位置を決定するための追跡データを提供するための方法であって、
データメモリ内に、前記クランクシャフト信号の各立上りごとに、その立上りでの前記クランクシャフト位置を表す位置値および外挿因子値を記憶するステップであって、
前記位置値×度の角度分解能が、度の角度領域での前記クランクシャフト位置を提供するステップと、
前記クランクシャフトの現位置値を得るステップと、
前記現位置値を使用して、1エンジン・サイクル当たりの前記クランクシャフト信号立上りのカウントである位置ポインタを初期化するステップと、
前記クランクシャフト信号の各立上りごとに前記位置ポインタを増加させるステップと、
前記位置ポインタの値を使用して、前記メモリ内の前記対応する場所にアクセスするステップと、
前記クランクシャフト位置処理ユニットに、各少なくとも1つの立上りごとに、前記関連した位置値および外挿因子値を送達するステップと
を含む方法。
【請求項8】
前記データメモリが参照テーブルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各外挿因子値が、現立上りに対する前の立上りの度周期と現立上りに対する次の立上りの度周期の比である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
各度周期が、前記エンジンのクランクシャフト信号トリガ歯車の前記機械的パターンによって決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記データメモリが前記比の分子および分母を別々に記憶する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記データメモリが、最大外挿値をさらに記憶する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
クランクシャフト位置計算ユニットに、関連したパルス型クランクシャフト信号を有する、エンジンのクランクシャフトの位置を決定するための追跡データを提供するためのクランクシャフト位置追跡ユニットであって、
前記クランクシャフト信号の各立上りで、その立上りでの前記クランクシャフト位置を表す位置値および外挿因子値を記憶するためのデータメモリであって、前記位置値×度の角度分解能が、度の角度領域での前記クランクシャフト位置を提供するデータメモリと、
前記クランクシャフトの現位置値を得、前記現位置値を使用して1エンジン・サイクル当たりの前記クランクシャフト信号立上りのカウントである位置ポインタを初期化し、前記クランクシャフト信号の各立上りごとに前記位置ポインタを増加させ、前記位置ポインタの値を使用して前記メモリ内の前記対応する場所にアクセスし、前記クランクシャフト位置処理ユニットに少なくとも1つの立上りに関連した位置値および外挿因子値を送達するためのプロセッサと
を含む、追跡ユニット。
【請求項14】
前記プロセッサが、ファームウェアを用いて実装される、請求項13に記載の追跡ユニット。
【請求項15】
前記プロセッサが、ソフトウェア・プログラマブル装置を用いて実装される、請求項13に記載の追跡ユニット。
【請求項16】
関連したパルス型クランクシャフト信号を有する、エンジンのクランクシャフトの度の角度位置を表すデータを提供する方法であって、
クランクシャフト位置計算ユニットで、前記クランクシャフト信号の立上りに関連した、前記立上りでの前記クランクシャフト位置を表す位置値、外挿因子値、および最大外挿値のデータを受け取るステップであって、前記位置値×度の角度分解能が、度の角度領域での前記クランクシャフト位置を提供するステップと、
前記クランクシャフト信号の立上りを検出するステップと、
前記クランクシャフト信号の現立上りで、次の立上りまでの計算された予測周期、前記最大外挿値、および位置値に基づいて、前記クランクシャフトの外挿位置を計算するステップと
を含み、前記計算された予測周期が、少なくとも(角度距離での)前記現立上りまでの前の周期およびその関連した因子値に基づく方法。
【請求項17】
前記度の角度分解能が、1に等しくなく、前記度の角度分解能×前記位置値の乗算を行うステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記エンジンが過渡状態であり、前記予測周期が、関連した因子値および数学的に決定された係数値をそれぞれ有するいくつかの前の周期値に基づく、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
クランクシャフトを有し、パルス型クランクシャフト信号を生成するエンジンの外挿クランクシャフト位置を計算するためのエンジン・クランクシャフト位置計算ユニットであって、
前記クランクシャフト信号の各立上りに関連した、前記立上りでの前記クランクシャフト位置を表す位置値、外挿因子値、および最大外挿値のデータを記憶するためのメモリであって、前記位置値×度の角度分解能が、度の角度領域での前記クランクシャフト位置を提供するメモリと、
前記クランクシャフト信号の立上りを表すデータを受け取るための、かつ前記クランクシャフト信号の現立上りで、次の立上りまでの計算された予測周期、前記最大外挿値、および位置値の値に基づいて、前記クランクシャフトの外挿位置を計算するためのプロセッサと
を含み、前記計算された予測周期が、少なくとも(角度距離での)前記現立上りまでの前の周期およびその関連した因子値に基づく計算ユニット。
【請求項20】
少なくとも前記プロセッサのタスクの一部分が、前記エンジンに関連したエンジン制御ユニットに統合される、請求項19に記載の計算ユニット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−530872(P2007−530872A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506425(P2007−506425)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/010296
【国際公開番号】WO2005/094294
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(500553730)サウスウエスト リサーチ インスティテュート (9)
【住所又は居所原語表記】6220 CULEBRA ROAD SAN ANT ONIO,TEXAS 78238 USA
【Fターム(参考)】