説明

会議システムおよび会議用端末

【課題】会議拠点のユーザが遠隔地のユーザを確実に目視可能な会議システムおよび会議用端末を提供する。
【解決手段】テレビ会議システム1では、遠隔地に設置された遠隔側端末3と、会議拠点に設置された会議用端末5との双方向通信によってテレビ会議が実行される。遠隔側端末3では、遠隔地のユーザを前側、右側、左側から撮影した映像データが、ネットワーク2を介して会議用端末5に送信される。会議用端末5では、遠隔地のユーザを前側、右側、左側から撮影した映像データが、それぞれ正面ディスプレイ61、右面ディスプレイ62、左面ディスプレイに三面表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数拠点に設けられた端末間で遠隔会議を実行する会議システム、および遠隔会議に使用される会議用端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数拠点に設けられた端末間でテレビ会議を実行するテレビ会議システムが知られている。このようなテレビ会議システムに使用される端末として、通話相手が注視している方向と、通話相手の表示方向とを一致させることで、会議の臨場感を高めることができるテレビ会議装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−65490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のテレビ会議装置では、遠隔地のユーザを表示するディスプレイの方向が、そのユーザの操作に応じて変化する。しかしながら、テレビ会議装置が設置されている会議の開催場所(以下、「会議拠点」という。)では、ディスプレイの周囲を取り囲むようにユーザが着座することがある。この場合、ディスプレイと正対しているユーザは、ディスプレイの表示内容を確実に目視できるため、遠隔地のユーザの表情などを把握できる。一方、ディスプレイと正対していないユーザは、ディスプレイの表示内容を目視困難であるか、その位置関係によっては表示内容を全く目視できないことがある。そうすると、遠隔地のユーザの表情などを把握できないため、テレビ会議の臨場感を失うおそれがあった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、会議拠点のユーザが遠隔地のユーザを確実に目視可能な会議システムおよび会議用端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る会議システムは、遠隔地のユーザが使用する遠隔側端末と、会議の開催場所に設置される会議用端末とがネットワークを介して接続され、前記遠隔側端末と前記会議用端末との双方向通信によって遠隔会議を実行する会議システムであって、前記遠隔側端末は、前記ユーザの正面顔を含む領域を撮影する第一カメラと、前記ユーザの横顔を含む領域を撮影する第二カメラと、前記第一カメラで撮影された正面画像と、前記第二カメラで撮影された側面画像とを、前記ネットワークを介して前記会議用端末に送信する画像送信手段とを備え、前記会議用端末は、前記会議用端末における第一の側面方向に画像を表示する第一ディスプレイと、前記会議用端末における前記第一の側面方向と交差する第二の側面方向に画像を表示する第二ディスプレイと、前記ネットワークを介して前記正面画像および前記側面画像を受信する画像受信手段と、前記画像受信手段によって受信された前記正面画像を前記第一ディスプレイに表示し、且つ、前記画像受信手段によって受信された前記側面画像を前記第二ディスプレイに表示する表示制御手段と、前記第一ディスプレイの可視角度と前記第二ディスプレイの可視角度との重複角度が所定値以下となるように、前記第一ディスプレイおよび前記第二ディスプレイを支持するディスプレイ支持部と、前記第一ディスプレイの向きと同じ方向を撮影する会議撮影カメラと、前記会議撮影カメラで撮影された前記会議画像を、前記ネットワークを介して前記遠隔側端末に送信する会議画像送信手段とを備え、前記遠隔側端末は、さらに、画像を表示する遠隔側ディスプレイと、前記ネットワークを介して前記会議画像を受信する会議画像受信手段と、前記会議画像受信手段によって受信された前記会議画像を前記遠隔側ディスプレイに表示する遠隔側表示制御手段とを備えている。
【0007】
上記会議システムによれば、遠隔側端末と会議用端末との双方向通信によって遠隔会議が実行される。遠隔側端末では、ユーザの正面画像および側面画像が、ネットワークを介して会議用端末に送信される。会議用端末では、正面画像が第一ディスプレイに表示され、側面画像が第二ディスプレイに表示される。これにより、会議拠点では、第一ディスプレイと正対していないユーザも、第二ディスプレイに表示される側面画像を目視して、遠隔地のユーザの表情などを把握することができるので、遠隔会議の臨場感を向上させることができる。
【0008】
また、会議用端末では、第一ディスプレイの向きと同じ方向を撮影した会議画像が、ネットワークを介して遠隔側端末に送信される。遠隔側端末では、会議画像が遠隔側ディスプレイに表示される。遠隔地のユーザが注視している方向と、会議拠点でそのユーザの正面顔が表示される方向とは略一致する。そのため、会議拠点のユーザは、遠隔地のユーザの正面顔が表示されている方向を、遠隔地のユーザが注視している方向として把握できる。ひいては、ユーザ間の意思疎通が円滑となり、遠隔会議の臨場感を高めることができる。
【0009】
さらに、第一ディスプレイの可視角度と第二ディスプレイの可視角度との重複角度が所定値以下であるため、ユーザは正面画像および側面画像の両方を同時に目視することが困難となる。言い換えると、会議拠点のユーザが明確に目視できるのは、正面画像および側面画像のいずれか一方である。そのため、正面画像を目視している会議拠点のユーザは、遠隔地のユーザに目視されていることを認識できる。一方、側面画像を目視している会議拠点のユーザは、遠隔地のユーザに目視されていないことを認識できる。これにより、ユーザ間の意思疎通がさらに円滑となり、遠隔会議の臨場感をより一層高めることができる。
【0010】
本発明の第2態様に係る会議用端末は、ネットワークを介して遠隔地のユーザが使用する遠隔側端末に接続され、会議の開催場所に設置される会議用端末であって、前記会議用端末における第一の側面方向に画像を表示する第一ディスプレイと、前記会議用端末における前記第一の側面方向と交差する第二の側面方向に画像を表示する第二ディスプレイと、前記ネットワークを介して、前記ユーザの正面顔を含む領域を撮影した正面画像と、前記ユーザの横顔を含む領域を撮影した側面画像とを受信する画像受信手段と、前記画像受信手段によって受信された前記正面画像を前記第一ディスプレイに表示し、且つ、前記画像受信手段によって受信された前記側面画像を前記第二ディスプレイに表示する表示制御手段と、前記第一ディスプレイの可視角度と前記第二ディスプレイの可視角度との重複角度が所定値以下となるように、前記第一ディスプレイおよび前記第二ディスプレイを支持するディスプレイ支持部と、前記第一ディスプレイの向きと同じ方向を撮影する会議撮影カメラと、前記会議撮影カメラで撮影された前記会議画像を、前記ネットワークを介して前記遠隔側端末に送信する会議画像送信手段とを備えている。
【0011】
上記会議用端末によれば、遠隔側端末と会議用端末との双方向通信によって遠隔会議が実行される。遠隔側端末では、ユーザの正面画像および側面画像が、ネットワークを介して会議用端末に送信される。会議用端末では、正面画像が第一ディスプレイに表示され、側面画像が第二ディスプレイに表示される。これにより、会議拠点では、第一ディスプレイと正対していないユーザも、第二ディスプレイに表示される側面画像を目視して、遠隔地のユーザの表情などを把握することができるので、遠隔会議の臨場感を向上させることができる。
【0012】
また、会議用端末では、第一ディスプレイの向きと同じ方向を撮影した会議画像が、ネットワークを介して遠隔側端末に送信される。遠隔側端末では、会議画像が遠隔側ディスプレイに表示される。遠隔地のユーザが注視している方向と、会議拠点でそのユーザの正面顔が表示される方向とは略一致する。そのため、会議拠点のユーザは、遠隔地のユーザの正面顔が表示されている方向を、遠隔地のユーザが注視している方向として把握できる。ひいては、ユーザ間の意思疎通が円滑となり、遠隔会議の臨場感を高めることができる。
【0013】
さらに、第一ディスプレイの可視角度と第二ディスプレイの可視角度との重複角度が所定値以下であるため、ユーザは正面画像および側面画像の両方を同時に目視することが困難となる。言い換えると、会議拠点のユーザが明確に目視できるのは、正面画像および側面画像のいずれか一方である。そのため、正面画像を目視している会議拠点のユーザは、遠隔地のユーザに目視されていることを認識できる。一方、側面画像を目視している会議拠点のユーザは、遠隔地のユーザに目視されていないことを認識できる。これにより、ユーザ間の意思疎通がさらに円滑となり、遠隔会議の臨場感をより一層高めることができる。
【0014】
上記会議用端末において、前記第一ディスプレイの可視角度は、前記第二ディスプレイの可視角度よりも小さくてもよい。この場合、正面画像の目視可能範囲が側面画像の目視可能範囲よりも狭いため、遠隔地のユーザによって注視されている会議拠点のユーザのみが正面画像を目視可能にして、遠隔地のユーザによって注視されていると誤認してしまうおそれを抑制できる。
【0015】
上記会議用端末において、前記第一ディスプレイの表示面に装着され、前記第一ディスプレイの可視角度を変更する第一可視角度変更部材と、前記第二ディスプレイの表示面に装着され、前記第二ディスプレイの可視角度を変更する第二可視角度変更部材とを備えてもよい。この場合、第一ディスプレイおよび第二ディスプレイにそれぞれ可視角度変更部材を装着するだけで、各ディスプレイの可視角度を容易に最適化することができる。ひいては、正面画像および側面画像の各目視可能範囲を容易に最適化することができる。
【0016】
上記会議用端末において、前記ディスプレイ支持部は、前記第一ディスプレイおよび前記第二ディスプレイを、一方のディスプレイの表示面が他方のディスプレイの表示面の反対側に隠れるように支持してもよい。この場合、第一ディスプレイおよび第二ディスプレイの配置を調整するだけで、正面画像および側面画像の各目視可能範囲を容易に最適化することができる。
【0017】
上記会議用端末において、前記第一ディスプレイおよび前記第二ディスプレイとの間に設けられ、前記第一ディスプレイの目視可能範囲と、前記第二ディスプレイの目視可能範囲とを区画とする区画部材を備えてもよい。この場合、第一ディスプレイおよび第二ディスプレイとの間に区画部材を設けるだけで、正面画像および側面画像の各目視可能範囲を容易に最適化することができる。
【0018】
上記会議用端末において、前記第一ディスプレイおよび前記第二ディスプレイは、縦長形状であってもよい。この場合、一般に縦長をなす人間の顔に最適な輪郭形状を有する画面上に、正面画像および側面画像を表示することができる。
【0019】
上記会議用端末において、前記第二ディスプレイは、前記第一ディスプレイの右側に向けて画像を表示する右面ディスプレイと、前記第一ディスプレイの左側に向けて画像を表示する左面ディスプレイとを含み、前記表示制御手段は、前記画像受信手段によって受信された前記側面画像のうち、前記ユーザの右横顔を含む領域を撮影した右側面画像を前記右面ディスプレイに表示し、且つ、前記ユーザの左横顔を含む領域を撮影した左側面画像を前記左面ディスプレイに表示してもよい。
【0020】
この場合、遠隔側端末では、ユーザの右側面画像および左側面画像が、ネットワークを介して会議用端末に送信される。会議用端末では、右側面画像が右面ディスプレイに表示され、左側面画像が左面ディスプレイに表示される。つまり、会議用端末では、遠隔地のユーザを三方から撮影した画像が、その撮影方向に対応して三面表示される。このような三面表示によって、会議用端末を遠隔地のユーザとして擬人化することができる。その結果、遠隔地のユーザが会議拠点にあたかも存在しているかのような印象を与えて、遠隔会議での存在感を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】テレビ会議システム1の全体構成を示す図である。
【図2】遠隔側端末3の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る会議用端末5の斜め上方からの斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る会議用端末5の正面図である。
【図5】図4のA−A線矢視方向断面図である。
【図6】図4のB−B線矢視方向断面図である。
【図7】会議用端末5の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】遠隔側端末3の遠隔会議処理を示すフローチャートである。
【図9】遠隔側端末3の映像送信割込み処理を示すフローチャートである。
【図10】遠隔側端末3の音声送信割込み処理を示すフローチャートである。
【図11】遠隔側端末3の映像受信割込み処理を示すフローチャートである。
【図12】遠隔側端末3の音声受信割込み処理を示すフローチャートである。
【図13】会議用端末5の遠隔会議処理を示すフローチャートである。
【図14】会議用端末5の映像送信割込み処理を示すフローチャートである。
【図15】会議用端末5の音声送信割込み処理を示すフローチャートである。
【図16】会議用端末5の映像受信割込み処理を示すフローチャートである。
【図17】会議用端末5の音声受信割込み処理を示すフローチャートである。
【図18】第1実施形態に係る会議用端末5の平面図である。
【図19】第1実施形態に係る会議用端末5の他の平面図である。
【図20】第2実施形態に係る会議用端末501の斜め上方からの斜視図である。
【図21】第2実施形態に係る会議用端末501の平面図である。
【図22】第3実施形態に係る会議用端末502の斜め上方からの斜視図である。
【図23】第3実施形態に係る会議用端末502の平面図である。
【図24】第3実施形態に係る会議用端末503の斜め上方からの斜視図である。
【図25】第3実施形態に係る会議用端末503の平面図である。
【図26】第4実施形態に係る会議用端末504の斜め上方からの斜視図である。
【図27】第4実施形態に係る会議用端末504の平面図である。
【図28】第4実施形態に係る会議用端末505の斜め上方からの斜視図である。
【図29】第4実施形態に係る会議用端末505の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されている装置の構成、各種処理のフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0023】
図1〜図19を参照して、第1実施形態に係るテレビ会議システム1および会議用端末5について説明する。本実施形態では、会議用端末5の筐体上部71(図3参照)の向きを、遠隔側端末3を用いた遠隔操作で調整するテレビ会議システム1を例示する。
【0024】
図1を参照して、テレビ会議システム1の全体構成について説明する。テレビ会議システム1では、ユーザが存在する複数の拠点にそれぞれ設けられた端末装置が、ネットワーク2を介して接続されている。会議が開催されている拠点(以下、会議拠点という。)に設置されている遠隔側端末3と、会議拠点とは異なる拠点(以下、遠隔拠点という。)に設置されている会議用端末5との間で、テレビ会議が実行される場合を例示する。以下では、会議拠点に存在するユーザを、会議側ユーザという。遠隔拠点に存在するユーザを、遠隔側ユーザという。
【0025】
テレビ会議システム1では、遠隔側端末3と会議用端末5との間でテレビ会議が開始されると、遠隔側端末3および会議用端末5でそれぞれ取得された映像データおよび音声データは、ネットワーク2を介して互いに送受信される。遠隔側端末3では、会議用端末5で取得された映像データおよび音声データ(つまり、会議側ユーザの映像データおよび音声データ)が出力される。会議用端末5では、遠隔側端末3で取得された映像データおよび音声データ(つまり、遠隔側ユーザの映像データおよび音声データ)が出力される。このように、遠隔側端末3および会議用端末5では、それぞれ相手方の拠点に存在するユーザの映像データおよび音声データがリアルタイムに出力されてテレビ会議が進行する。本実施形態では、遠隔側ユーザは、遠隔側端末3を使用して会議用端末5を遠隔操作できるが、詳細は後述する。
【0026】
図2を参照して、遠隔側端末3の電気的構成について説明する。遠隔側端末3は、汎用のノート型PCであり、CPU30、ROM31、RAM32、HDD33、ビデオコントローラ34、オーディオコントローラ35、通信装置36、I/Oインタフェイス40、キーボード41、マウス42、ディスプレイ43、マイク44、スピーカ45を備える。さらに、遠隔側端末3は、複数のカメラ(前側カメラ46、右側カメラ47、左側カメラ48)を備える。
【0027】
ROM31、RAM32、およびI/Oインタフェイス40は、CPU30に接続されている。ビデオコントローラ34、オーディオコントローラ35、キーボード41、マウス42、および複数のカメラは、I/Oインタフェイス40にそれぞれ接続されている。ディスプレイ43は、ビデオコントローラ34に接続されている。マイク44およびスピーカ45は、オーディオコントローラ35に接続されている。
【0028】
通信装置36は、ネットワーク2を介してデータ送受信を行うコントローラである。本実施形態では、通信装置36が、テレビ会議の実行時に、会議用端末5との間で音声データおよび映像データの送受信を行う。後述する遠隔操作コマンドも、通信装置36によって会議用端末5へ送信される。なお、RAM32は、遠隔側端末3で取得される映像データ・音声データのフレームバッファとして機能する。
【0029】
前側カメラ46は、遠隔側ユーザの前側に配置されて、遠隔側ユーザの正面顔を含む範囲を撮影するカメラである。右側カメラ47は、遠隔側ユーザの右側に配置されて、遠隔側ユーザの右横顔を含む範囲を撮影するカメラである。左側カメラ48は、遠隔側ユーザの左側に配置されて、遠隔側ユーザの左横顔を含む範囲を撮影するカメラである。本実施形態の前側カメラ46、右側カメラ47、および左側カメラ48は、撮影した映像データをネットワーク2へリアルタイムに出力可能な小型・軽量の汎用カメラ(いわゆる、WEBカメラ)である。
【0030】
HDD33は、大容量のハードディスクドライブであり、テレビ会議を実行するための各種データ(例えば、遠隔側端末3で取得された映像データ・音声データ、会議用端末5から受信した映像データ・音声データ)や割込みプログラムなどが記憶されている。後述の遠隔会議処理(図8参照)を実行するための会議処理プログラムも、HDD33に記憶されている。
【0031】
図3〜図6を参照して、会議用端末5の物理的構造について説明する。以下の説明では、図3の右下方向、左上方向、左下方向、右上方向を、会議用端末5(詳細には、後述する筐体下部73)の前側、後側、左側、右側とする。会議用端末5は、テレビ会議を実行するのに必要なデバイスが設けられた筐体70を有する。筐体70は、筐体上部71、連結部72、筐体下部73からなる。
【0032】
筐体上部71は、平面視で正方形状をなし、且つ上下方向を長手方向とする箱状体(つまり、縦長直方体状)である。筐体上部71の前面、右面、および左面には、ディスプレイが嵌め込まれるフレーム体である前面枠74、右面枠75、および左面枠76がそれぞれ設けられている。本実施形態では、前面枠74と右面枠75とのなす筐体角度θ1、および前面枠74と左面枠76とのなす筐体角度θ2は、いずれも90°である。
【0033】
前面枠74には、縦長長方形状の正面ディスプレイ61が固定されている。右面枠75には、正面ディスプレイ61と略同形の右面ディスプレイ62が固定されている。左面枠76には、正面ディスプレイ61と略同形の左面ディスプレイ63が固定されている。つまり、筐体上部71は、その前面および左右両面の三面にディスプレイを備えている。なお、前面枠74には、正面ディスプレイ61と重畳して、タッチパネル57が固定されている。したがって、正面ディスプレイ61に表示されるメニューやアイコンなどを指で触れることで、会議用端末5の操作を行うことができる。
【0034】
各ディスプレイ61、62、63の表面には、公知の視野角調整フィルタ21、22、23がそれぞれ貼り付けられている。よって、各ディスプレイ61、62、63の視野角は、それぞれ視野角調整フィルタ21、22、23によって所定角度に調整されているが、詳細は後述する。なお、以下の説明では、各ディスプレイ61、62、63の視野角のうちで、各々の表示画像が物理的に阻害されることなく視覚的に正確に認識される範囲を示す角度を、それぞれ可視角度θ11、θ12、θ13という。
【0035】
筐体上部71の後面、上面、下面には、縦長板状の後面パネル77、上面パネル78、下面パネル79が設けられている。これらのパネルは、先述の各種ディスプレイが固定された枠体とともに、筐体上部71の内部空間を形成する。ただし、下面パネル79の平面視中央のやや後ろ側から前方に向けて、半円状の開口部79Aが形成されている。そのため、筐体上部71の内部空間は、開口部79Aを介して下方に連通している。
【0036】
前面枠74の上枠部分における略中央位置には、カメラ67が設けられている。カメラ67を正面ディスプレイ61と同一面に設けたことで、正面ディスプレイ61が画像表示する方向と同一方向(つまり、筐体上部71の前方)が、カメラ67によって撮影される。右面枠75の上枠部分における略中央位置には、右側マイク64が設けられている。左面枠76の上枠部分における略中央位置には、左側マイク65が設けられている。右側マイク64および左側マイク65は、筐体上部71の両側面に設けられた一対のバイノーラルマイクである。これにより、会議用端末5の周辺で発生した音声は、筐体上部71の両側面からバイノーラル方式で集音される。
【0037】
筐体下部73は、平面視で筐体上部71よりも大きな正方形状をなし、且つ上下方向を短手方向とする箱状体である。筐体下部73の内部には、筐体下部73の前面側から音声を出力可能なスピーカ66が設けられている。筐体下部73の上面における中央位置には、平面視で正方形状の凹部73Aが形成されている。
【0038】
連結部72は、平面視で正方形状をなし、且つ上下方向を長手方向とする棒状体である。連結部72の下端部には、平面視で連結部72よりも大きい正方形状の板部である鍔部72Aが設けられている。鍔部72Aは、平面視で同形をなす凹部73Aに嵌め込まれた状態で固定されている。一方、連結部72の上側部分は、開口部79Aを介して筐体上部71の内部空間に進入している。
【0039】
筐体上部71の内部には、駆動機構100および一対の連結金具68が設けられている。駆動機構100は、筐体上部71と連結部72とを連結して、筐体上部71の傾きを水平方向および垂直方向に変化させるための機構である。一対の連結金具68は、正面ディスプレイ61およびタッチパネル57の背面側に設けられ、且つ前面枠74の上枠部分から下枠部分に亘って左右に並んで延びる板状金具である。各連結金具68の上端部および下端部は、それぞれ前面枠74の上枠部分および下枠部分に固定されている。
【0040】
駆動機構100は、筐体上部71の水平方向の傾きを調整するパンモータ80と、筐体上部71の垂直方向の傾きを調整するチルトモータ90と、筐体上部71に連結される一対の腕部92を備える。パンモータ80は、連結部72の上端部に固定されており、上方に延出する垂直な軸81を有する。チルトモータ90は、パンモータ80の上側に固定されており、左右両側に延出する水平な軸91を有する。水平な軸91は、一対の腕部92の後端側にそれぞれ接続されている。一対の腕部92は、軸91と直交する方向に延びる板状金具であり、各々の先端部はそれぞれ対応する連結金具68に固定されている。なお、駆動機構100は、筐体上部71に複数のディスプレイ等の各種部材が取り付けられた状態で、筐体上部71の重心位置を支持するように連結金具68に固定されている。
【0041】
上記の構造により、パンモータ80が軸81を回動させるのに伴って、チルトモータ90も垂直軸周りに回動する。チルトモータ90から延びる一対の腕部92に連結された筐体上部71も、垂直軸周りに回動する。つまり、パンモータ80の駆動によって、筐体上部71が垂直方向に傾斜する。また、チルトモータ90が軸91を回動させるのに伴って、一対の腕部92も水平軸周りに回動する。チルトモータ90から延びる一対の腕部92に連結された筐体上部71も、水平軸周りに回動する。つまり、チルトモータ90の駆動によって、筐体上部71が水平方向に傾斜する。
【0042】
図7を参照して、会議用端末5の電気的構成について説明する。会議用端末5は、CPU50、ROM51、RAM52、HDD53、ビデオコントローラ54、オーディオコントローラ55、通信装置56、I/Oインタフェイス60を備える。さらに、会議用端末5は、先述のタッチパネル57、正面ディスプレイ61、右面ディスプレイ62、左面ディスプレイ63、右側マイク64、左側マイク65、スピーカ66、カメラ67、パンモータ80、チルトモータ90を備えている。
【0043】
ROM51、RAM52、およびI/Oインタフェイス60は、CPU50に接続されている。ビデオコントローラ54、オーディオコントローラ55、カメラ67、タッチパネル57、パンモータ80、およびチルトモータ90は、I/Oインタフェイス60にそれぞれ接続されている。正面ディスプレイ61、右面ディスプレイ62、左面ディスプレイ63(以下、各ディスプレイ61〜63と総称する。)は、ビデオコントローラ54に接続されている。右側マイク64、左側マイク65、スピーカ66は、オーディオコントローラ55に接続されている。
【0044】
通信装置56は、ネットワーク2を介してデータ送受信を行うコントローラである。本実施形態では、通信装置56が、テレビ会議の実行時に、遠隔側端末3との間で音声データおよび映像データの送受信を行う。後述する遠隔操作コマンドも、通信装置56によって遠隔側端末3から受信される。なお、RAM52は、会議用端末5で取得される映像データ・音声データのフレームバッファとして機能する。
【0045】
HDD53は、大容量のハードディスクドライブであり、テレビ会議を実行するための各種データ(例えば、会議用端末5で取得された映像データ・音声データ、遠隔側端末3から受信した映像データ・音声データ)や割込みプログラムなどが記憶されている。後述の遠隔会議処理(図13参照)を実行するための会議処理プログラムも、HDD53に記憶されている。
【0046】
図8〜図17を参照して、テレビ会議システム1で実行されるテレビ会議に関する処理について説明する。テレビ会議の実行時には、遠隔側端末3および会議用端末5において、以下に説明する処理がそれぞれ実行される。
【0047】
図8〜図12を参照して、遠隔側端末3の遠隔会議処理について説明する。本処理は、遠隔側端末3でテレビ会議の開始を指示する入力操作が受け付けられると、HDD33に記憶されている会議処理プログラムに基づいて、CPU30によって実行される。
【0048】
図8に示すように、遠隔側端末3の遠隔会議処理では、まず会議参加要求が会議サーバ(図示外)に送信される(S1)。会議参加要求は、テレビ会議システム1で実行されるテレビ会議への参加を要求するコマンドである。会議サーバは、ネットワーク2を介して会議参加要求を受信した場合、会議参加要求に含まれる認証情報に基づいてユーザ認証を行う。ユーザ認証が成功した場合、参加許可を要求元の端末装置に返信する。ユーザ認証が失敗した場合、参加拒否を要求元の端末装置に返信する。
【0049】
ステップS1の実行後、参加許可を取得したか否かが判断される(S3)。会議サーバから参加拒否を受信した場合、参加許可を取得していないと判断される(S3:NO)。この場合、テレビ会議が開始されることなく、遠隔会議処理(図8)が終了される。会議サーバから参加許可を受信した場合、参加許可を取得したと判断される(S3:YES)。この場合、HDD33から割込みプログラムが起動される(S5)。
【0050】
ステップS5で起動された割込みプログラムに基づいて、テレビ会議中の各種データ処理(具体的には、映像データおよび音声データの送受信)が行われる。詳細には、CPU30は割込みプログラムに基づいて、映像送信割込み処理(図9)と、音声送信割込み処理(図10)と、映像受信割込み処理(図11)と、音声受信割込み処理(図12)とを実行するが、詳細は後述する。
【0051】
ステップS5の実行後、キー入力ありか否かが判断される(S7)。例えば、キーボード41またはマウス42の入力操作を受け付けた場合は、キー入力ありと判断される(S7:YES)。この場合、ステップS7で検出されたキー入力が、会議用端末5の遠隔操作であるか否かが判断される(S9)。ステップS9では、ステップS7で検出されたキー入力があらかじめ定められている操作内容と一致する場合、会議用端末5の遠隔操作であると判断される(S9:YES)。
【0052】
この場合、ステップS7で検出されたキー入力に対応して、会議用端末5に所定の動作内容を実行させる遠隔操作コマンドが生成される(S11)。例えば、会議用端末5が備えるカメラ67の撮影方向を下方に傾けたい場合に、遠隔側ユーザはキーボード41の「↑」キーを押すことで、「上向き」を指示するチルト調整コマンドが生成される。カメラ67の撮影方向を右方向に傾けたい場合に、遠隔側ユーザはキーボード41の「→」キーを押すことで、「右向き」を指示するパン調整コマンドが生成される。カメラ67のズーム倍率を大きくしたい場合に、遠隔側ユーザはキーボード41の「+」キーを押すことで、「拡大」を指示するズーム調整コマンドが生成される。
【0053】
ステップS11で生成された遠隔操作コマンド(パン調整コマンド、チルト調整コマンド、ズーム調整コマンドのいずれか)は、パケット化されて会議用端末5へ送信される(S13)。以下では、ステップS13で送信されたパケットを、遠隔操作パケットという。ステップS13の実行後、テレビ会議が終了したか否かが判断される(S15)。例えば、遠隔側端末3でテレビ会議の終了を指示する入力操作が受け付けられたり、会議サーバからテレビ会議の終了を指示するコマンドを受信したりした場合、テレビ会議が終了したと判断される(S15:YES)。この場合、ステップS5で起動された割込みプログラムが終了され(S17)、遠隔会議処理(図8)が終了される。つまり、会議用端末5に対する音声データおよび映像データの送受信が中断されて、テレビ会議が終了する。
【0054】
一方、キー入力がない場合(S7:NO)、会議用端末5の遠隔操作でない場合(S9:NO)、およびテレビ会議が終了していない場合(S15:NO)、処理はステップS7に戻る。このように、本実施形態では、割込みプログラムの起動から終了までの間(つまり、テレビ会議の実行中)、ステップS7〜S15が所定間隔(例えば、数ミリ秒周期)で繰り返し実行される。よって、例えばキーボード41の「↑」キーが押し続けられている間は、「上向き」を指示するチルト調整コマンドの遠隔操作パケットが連続して出力される。
【0055】
図9に示すように、遠隔側端末3の映像送信割込み処理では、前側カメラ46から1フレームの映像データが取り込まれる(S21)。右側カメラ47から1フレームの映像データが取り込まれる(S23)。左側カメラ48から1フレームの映像データが取り込まれる(S25)。ステップS21〜S25で取りこまれた各映像データに、撮影元カメラを示す識別タグが付与される(S27)。識別タグが付与された映像データは、公知のデータ圧縮が実行されたのち、データ転送用にパケット化される(S29)。パケット化された映像データ(つまり、映像パケット)は、会議用端末5へ送信される(S31)。ステップS31の実行後、処理はステップS21に戻る。
【0056】
これにより、ステップS5で起動された割込みプログラムが終了されるまで、各カメラから1フレームの映像データが取り込まれるごとに、映像パケットが会議用端末5へ送信される。具体的には、テレビ会議の実行中は、遠隔拠点を映し出した映像データを含む映像パケットが会議用端末5へ送信される。この映像データには、前側カメラ46で撮影された遠隔側ユーザの正面顔画像と、右側カメラ47で撮影された遠隔側ユーザの右顔画像と、左側カメラ48で撮影された遠隔側ユーザの左顔画像とが含まれる。
【0057】
図10に示すように、遠隔側端末3の音声送信割込み処理では、マイク44から1サンプリング時間(例えば、0.1秒)の音声データが取り込まれる(S41)。取り込まれた音声データは、公知のデータ圧縮が実行されたのち、データ転送用にパケット化される(S43)。パケット化された音声データ(つまり、音声パケット)は、会議用端末5へ送信される(S45)。ステップS45の実行後、処理はステップS41に戻る。
【0058】
これにより、ステップS5で起動された割込みプログラムが終了されるまで、マイク44から1サンプリング時間の音声データが取り込まれるごとに、音声パケットが会議用端末5へ送信される。具体的には、テレビ会議の実行中は、遠隔拠点で集音された音声データを含む音声パケットが会議用端末5へ送信される。この音声データには、マイク44で集音された遠隔側ユーザの声等が含まれる。
【0059】
図11に示すように、遠隔側端末3の映像受信割込み処理では、会議用端末5から映像パケットが受信される(S61)。受信されたパケットから圧縮済みの映像データが取り出され、この映像データについて公知の伸張処理が実行される(S63)。伸張された映像データが、ビデオコントローラ34に転送される(S65)。ステップS65の実行後、処理はステップS61に戻る。
【0060】
これにより、ステップS5で起動された割込みプログラムが終了されるまで、会議用端末5から映像パケットが受信されるごとに、ビデオコントローラ34に映像データが転送される。ビデオコントローラ34は、転送された映像データをディスプレイ43に表示する。この映像データは、後述するようにカメラ67が会議拠点を映し出したものである。よって、遠隔側ユーザは、ディスプレイ43に映し出される映像によって、会議側ユーザの顔等を見ることができる。
【0061】
図12に示すように、遠隔側端末3の音声受信割込み処理では、会議用端末5から音声パケットが受信される(S81)。受信されたパケットから圧縮済みの音声データが取り出され、この音声データについて公知の伸張処理が実行される(S83)。伸張された音声データに付与されている識別タグが特定されたのち(S85)、この音声データがオーディオコントローラ35に転送される(S87)。ただし、オーディオコントローラ35は、音声データに付与されている識別タグに基づいて、音声データの出力デバイスを調整する。例えば、識別タグ「左側マイク」が付与されている音声データは、スピーカ45の左側出力部から出力させる。識別タグ「右側マイク」が付与されている音声データは、スピーカ45の右側出力部から出力させる。ステップS87の実行後、処理はステップS81に戻る。
【0062】
これにより、ステップS5で起動された割込みプログラムが終了されるまで、会議用端末5から音声パケットが受信されるごとに、オーディオコントローラ35に音声データが転送される。オーディオコントローラ35は、転送された音声データをスピーカ45から出力する。この音声データは、後述するように右側マイク64および左側マイク65が会議拠点で集音したものである。よって、遠隔側ユーザは、スピーカ45から出力される音声によって、会議側ユーザの声等を聞くことができる。さらに、本実施形態では、右側マイク64および左側マイク65はバイノーラル方式で会議拠点を集音する。したがって、遠隔側ユーザは、バイノーラル対応のヘッドフォンを利用することで、会議側ユーザの声等をより高い臨場感で聞くことができる。
【0063】
図13〜図17を参照して、会議用端末5の遠隔会議処理について説明する。本処理は、会議用端末5でテレビ会議の開始を指示する入力操作が受け付けられると、HDD53に記憶されている会議処理プログラムに基づいて、CPU50によって実行される。
【0064】
図13に示すように、会議用端末5の遠隔会議処理では、まずパンモータ80およびチルトモータ90の原点検出処理が実行される(S101)。パンモータ80の原点検出処理は、筐体上部71が水平方向の傾きが初期状態となるまで回動される。具体的には、各ディスプレイ61〜63がそれぞれ会議用端末5(詳細には、筐体下部73)の前側、右側、左側を向くまで、筐体上部71が垂直軸周りに回動される。これにより、カメラ67の撮影方向は、会議用端末5(詳細には、筐体下部73)の前方と一致する。
【0065】
一方、チルトモータ90の原点検出処理は、筐体上部71が垂直方向の傾きが初期状態となるまで回動される。具体的には、各ディスプレイ61〜63が垂直となるまで(言い換えると、カメラ67の撮影方向が水平となるまで)、筐体上部71が水平軸周りに回転される。ステップS101で初期状態に設定された筐体上部71は、会議用端末5(詳細には、筐体下部73)と前後方向、左右方向、上下方向がいずれも一致している。これにより、テレビ会議の開始時に会議用端末5の向きを初期化する手間を省略できる。
【0066】
ステップS101の実行後、HDD53から割込みプログラムが起動される(S103)。ステップS103で起動された割込みプログラムに基づいて、テレビ会議中の各種データ処理(具体的には、映像データおよび音声データの送受信)が行われる。詳細には、CPU50は割込みプログラムに基づいて、映像送信割込み処理(図14)と、音声送信割込み処理(図15)と、映像受信割込み処理(図16)と、音声受信割込み処理(図17)とを実行するが、詳細は後述する。
【0067】
ステップS103の実行後、遠隔操作パケットを受信したか否かが判断される(S105)。遠隔操作パケットが受信されている場合(S105:YES)、遠隔操作パケットに含まれる遠隔操作コマンドがチルト調整コマンドであるか否かが判断される(S107)。遠隔操作コマンドがチルト調整コマンドである場合(S107:YES)、このチルト調整コマンドに基づいて生成されたチルト制御信号が、チルトモータ90へ出力される(S109)。チルト制御信号は、チルト調整コマンドが指示する回転角度に応じて、チルトモータ90を回転駆動する信号である。
【0068】
チルトモータ90は、チルト制御信号に応じて筐体上部71を水平軸周りに回転させることで、筐体上部71を下向きまたは上向きに調整する。例えば、先述の「下向き」を指示するチルト調整コマンドが会議用端末5に送信された場合、チルトモータ90が筐体上部71を右側面視で時計回り(図5では右回り)に回転させる。その結果、カメラ67の撮影方向もより下向きに傾斜するため、遠隔側端末3のディスプレイ43に映し出される撮影範囲も下側に移動する。したがって、会議側ユーザが筐体上部71の垂直方向の傾きを調整しなくても、遠隔側ユーザがカメラ67のチルト調整を遠隔操作で行うことができる。
【0069】
遠隔操作コマンドがチルト調整コマンドでない場合(S107:NO)、遠隔操作コマンドがパン調整コマンドであるか否かが判断される(S111)。遠隔操作コマンドがパン調整コマンドである場合(S111:YES)、このパン調整コマンドに基づいて生成されたパン制御信号が、パンモータ80へ出力される(S113)。パン制御信号は、パン調整コマンドが指示する回転角度に応じて、パンモータ80を回転駆動する信号である。
【0070】
パンモータ80は、パン制御信号に応じて筐体上部71を垂直軸周りに回転させることで、筐体上部71を右向きまたは左向きに調整する。例えば、先述の「右向き」を指示するパン調整コマンドが会議用端末5に送信された場合、パンモータ80が筐体上部71を平面視で時計回り(図6では右回り)に回転させる。その結果、カメラ67の撮影方向もより右向きに傾斜するため、遠隔側端末3のディスプレイ43に映し出される撮影範囲も右側に移動する。したがって、会議側ユーザが筐体上部71の水平方向の傾きを調整しなくても、遠隔側ユーザがカメラ67のパン調整を遠隔操作で行うことができる。
【0071】
遠隔操作コマンドがパン調整コマンドでない場合(S111:NO)、遠隔操作コマンドがズーム調整コマンドであるか否かが判断される(S115)。遠隔操作コマンドがズーム調整コマンドである場合(S115:YES)、このズーム調整コマンドに基づいて生成されたズーム制御信号が、カメラ67へ出力される(S117)。ズーム制御信号は、ズーム調整コマンドが指示するズーム倍率の拡大率または縮小率に応じて、カメラ67のズーム倍率を調整するモータ(図示外)を駆動する信号である。
【0072】
カメラ67は、会議用端末5から受信したズーム制御信号に応じてズーム倍率を変更する。例えば、先述の「拡大」を指示するズーム調整コマンドが会議用端末5に送信された場合、カメラ67がズーム倍率を大きくするため、遠隔側端末3のディスプレイ43に映し出される撮影範囲も狭くなる。これにより、ディスプレイ43に表示されている映像の拡大・縮小が行われる。したがって、会議側ユーザがカメラ67のズーム倍率を調整しなくても、遠隔側ユーザがカメラ67のズーム調整を遠隔操作で行うことができる。
【0073】
遠隔操作パケットが受信されていない場合(S105:NO)、または遠隔操作コマンドがズーム調整コマンドでない場合(S115:NO)、先述のステップS17と同様に、テレビ会議が終了したか否かが判断される(S119)。テレビ会議が終了した場合(S119:YES)。この場合、ステップS103で起動された割込みプログラムが終了され(S122)、遠隔会議処理(図13)が終了される。つまり、遠隔側端末3に対する音声データおよび映像データの送受信が中断されて、テレビ会議が終了する。
【0074】
一方、ステップS109、S113、S117のいずれかの実行後、またはテレビ会議が終了していない場合(S119:NO)、処理はステップS105に戻る。このように、本実施形態では、メイン処理(図13)の実行中は、ステップS105〜S119が所定間隔(例えば、数ミリ秒周期)で繰り返し実行される。よって、テレビ会議の実行中は、遠隔側端末3から受信した遠隔操作コマンドに基づいて、会議用端末5の遠隔操作が実行される。
【0075】
図14に示すように、会議用端末5の映像送信割込み処理では、カメラ67から1フレームの映像データが取り込まれる(S131)。取り込まれた映像データは、公知のデータ圧縮が実行されたのち、データ転送用にパケット化される(S133)。パケット化された映像データ(つまり、映像パケット)は、遠隔側端末3へ送信される(S135)。ステップS135の実行後、処理はステップS131に戻る。
【0076】
これにより、ステップS103で起動された割込みプログラムが終了されるまで、カメラ67から1フレームの映像データが取り込まれるごとに、映像パケットが遠隔側端末3へ送信される。具体的には、テレビ会議の実行中は、会議拠点の様子を映し出した映像データを含む映像パケットが遠隔側端末3へ送信される。この映像データには、カメラ67で撮影された会議側ユーザの顔等が含まれる。
【0077】
図15に示すように、会議用端末5の音声送信割込み処理では、右側マイク64から1サンプリング時間(例えば、0.1秒)の音声データが取り込まれる(S151)。左側マイク65から1サンプリング時間(例えば、0.1秒)の音声データが取り込まれる(S153)。ステップS151、S153で取りこまれた各音声データに、集音元カメラを示す識別タグが付与される(S155)。識別タグが付与された音声データは、公知のデータ圧縮が実行されたのち、データ転送用にパケット化される(S157)。パケット化された音声データ(つまり、音声パケット)は、遠隔側端末3へ送信される(S159)。ステップS159の実行後、処理はステップS151に戻る。
【0078】
これにより、ステップS103で起動された割込みプログラムが終了されるまで、各マイクから1サンプリング時間の音声データが取り込まれるごとに、音声パケットが遠隔側端末3へ送信される。具体的には、テレビ会議の実行中は、会議拠点で集音された音声データを含む音声パケットが遠隔側端末3へ送信される。この音声データには、右側マイク64で集音された会議側ユーザの声等と、左側マイク65で集音された会議側ユーザの声等とが含まれる。
【0079】
図16に示すように、会議用端末5の映像受信割込み処理では、遠隔側端末3から映像パケットが受信される(S171)。受信されたパケットから圧縮済みの映像データが取り出され、この映像データについて公知の伸張処理が実行される(S173)。伸張された映像データに付与されている識別タグが特定されたのち(S175)、この映像データがビデオコントローラ54に転送される(S177)。
【0080】
ただし、ビデオコントローラ54は、映像データに付与されている識別タグに基づいて、映像データの出力デバイスを調整する。例えば、識別タグ「前側カメラ」が付与されている映像データは、正面ディスプレイ61に表示させる。識別タグ「右側カメラ」が付与されている映像データは、右面ディスプレイ62に表示させる。識別タグ「左側カメラ」が付与されている映像データは、左面ディスプレイ63に表示させる。ステップS177の実行後、処理はステップS171に戻る。
【0081】
これにより、ステップS103で起動された割込みプログラムが終了されるまで、遠隔側端末3から映像パケットが受信されるごとに、ビデオコントローラ54に映像データが転送される。ビデオコントローラ54は、転送された映像データを識別タグに応じて、3つのディスプレイに選択的に表示する。よって、会議側ユーザは、各ディスプレイに映し出される映像によって、遠隔側ユーザの顔等を見ることができる。
【0082】
詳細には、正面ディスプレイ61に表示される映像データは、前側カメラ46で撮影されたものである。右面ディスプレイ62に表示される映像データは、右側カメラ47で撮影されたものである。左面ディスプレイ63に表示される映像データは、左側カメラ48で撮影されたものである。よって、会議側ユーザは、各ディスプレイ61〜63に映し出される画像によって、それぞれ遠隔側ユーザの正面顔、右横顔、左横顔を認識することができる。
【0083】
図17に示すように、会議用端末5の音声受信割込み処理では、遠隔側端末3から音声パケットが受信される(S191)。受信されたパケットから圧縮済みの音声データが取り出され、この音声データについて公知の伸張処理が実行される(S193)。伸張された音声データが、オーディオコントローラ55に転送される(S195)。ステップS195の実行後、処理はステップS191に戻る。
【0084】
これにより、ステップS103で起動された割込みプログラムが終了されるまで、遠隔側端末3から音声パケットが受信されるごとに、オーディオコントローラ55に音声データが転送される。オーディオコントローラ55は、転送された音声データをスピーカ66に出力する。この音声データは、マイク44が遠隔拠点で集音したものである。よって、会議側ユーザは、スピーカ66から出力される音声によって、遠隔側ユーザの声等を聞くことができる。
【0085】
図18および図19を参照して、可視角度θ11、θ12、θ13について説明する。なお、本実施形態の前面枠74、右面枠75、左面枠76の枠部分(いわゆるベゼル部)は、例えば2〜3センチ程度の幅狭である。よって、図18および図19では、理解を容易にするために、前面枠74、右面枠75、左面枠76の各全面を、各ディスプレイ61、62、63の表示範囲とみなして図示している(後述の図21、図23、図25、図27、図29も同様)。また、図18および図19に示す例では、各ディスプレイ61、62、63の視野角を妨げる部材が設けられていない。この場合、各ディスプレイ61、62、63の視野角が、可視角度θ11、θ12、θ13にそれぞれ対応する。
【0086】
人の正面顔の二次元画像は、どの角度から見ても閲覧者自身を向いているように見えることが知られている。このような認知的な現象を、モナリザ効果という。そのため、正面ディスプレイ61に表示される正面顔を目視する全ての会議側ユーザが、遠隔側ユーザに注視されていると感じる。そのため、正面ディスプレイ61を目視可能な会議側ユーザは、遠隔側ユーザによって注視されているか否かを誤認するおそれがある。よって、会議側ユーザが注視可能な範囲(つまり、カメラ67の撮影範囲)は、正面ディスプレイ61の目視可能範囲(つまり、可視角度θ11)と一致することが好適である。
【0087】
さらに、可視角度θ11と可視角度θ12との重複角度θ3が所定の上限値よりも大きい場合、重複角度θ3の範囲内に存在するユーザは、水平方向に並ぶ2つの表示画像(具体的には、正面ディスプレイ61に表示される正面顔画像、および右面ディスプレイ62に表示される右顔画像)を同時に目視できるおそれがある。一方、重複角度θ3が所定の下限値よりも小さい場合、重複角度θ3の範囲内に存在するユーザは、これらの画像をいずれも目視できないおそれがある。
【0088】
そこで、重複角度θ3が所定の上限値以下、且つ所定の下限値以上となるように、可視角度θ11、θ12の大きさをそれぞれ設定する。これにより、重複角度θ3の範囲内に存在する会議側ユーザに、正面顔画像および右顔画像のいずれか一方のみを目視させることができる。このとき、正面顔画像を目視している会議側ユーザは、遠隔側ユーザから目視されていることを認識できる。一方、右顔画像を目視している会議側ユーザは、遠隔側ユーザから目視されていないことを認識できる。
【0089】
同様に、可視角度θ11と可視角度θ13との重複角度θ4が所定の上限値よりも大きい場合、重複角度θ4の範囲内に存在するユーザは、左右方向に並ぶ2つの画像(具体的には、正面ディスプレイ61に表示される正面顔画像、および左面ディスプレイ63に表示される左顔画像)を同時に目視できるおそれがある。一方、重複角度θ4が所定の下限値よりも小さい場合、重複角度θ4の範囲内に存在するユーザは、これらの画像をいずれも目視できないおそれがある。
【0090】
そこで、重複角度θ4が所定の上限値以下、且つ所定の下限値以上となるように、可視角度θ11、θ13の大きさをそれぞれ設定する。これにより、重複角度θ4の範囲内に存在する会議側ユーザに、正面顔画像および左顔画像のいずれか一方のみを目視させることができる。このとき、正面顔画像を目視している会議側ユーザは、遠隔側ユーザから目視されていることを認識できる。一方、左顔画像を目視している会議側ユーザは、遠隔側ユーザから目視されていないことを認識できる。
【0091】
重複角度θ3、θ4の上限値および下限値には個人差があるものの、開発時のテストおよび発明者の経験などによって、重複角度θ3、θ4は左右30°〜50°の範囲にあることが好適であることが明らかとなった。よって、重複角度θ3、θ4が左右30°〜50°の範囲に収まるように、筐体角度θ1、θ2(本実施形態では、90°)を考慮したうえで、可視角度θ11、θ12、θ13が先述の視野角調整フィルタ21、22、23によって調整されている。
【0092】
具体的に、図18の例では、視野角調整フィルタ21、22、23によって、各ディスプレイ61、62、63の視野角(つまり、可視角度θ11、θ12、θ13)がいずれも上下左右120°に設定されている。本実施形態では、筐体角度θ1、θ2はいずれも90°であるから、重複角度θ3、θ4はいずれも左右30°である。このように、共通の視野角調整フィルタおよびディスプレイを用いることで、可視角度θ11、θ12、θ13および重複角度θ3、θ4を容易に最適化できる。
【0093】
図19の例では、視野角調整フィルタ21によって、正面ディスプレイ61の視野角(つまり、可視角度θ11)が上下左右90°に設定されている。一方、視野角調整フィルタ22、23によって、右面ディスプレイ62および左面ディスプレイ63の各視野角(つまり、可視角度θ12、θ13)が上下左右150°に設定されている。本実施形態では、筐体角度θ1、θ2はいずれも90°であるから、重複角度θ3、θ4はいずれも左右30°である。このように、可視角度θ11を可視角度θ12、θ13よりも小さくすることで、会議側ユーザが遠隔側ユーザの正面顔画像を目視可能な範囲を、正面ディスプレイ61の前方位置のみに限定することができる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態によれば、遠隔側端末3と会議用端末5との双方向通信によってテレビ会議が実行される。遠隔側端末3では、前側カメラ46、右側カメラ47、左側カメラ48によってそれぞれ撮影された映像データが、ネットワーク2を介して会議用端末5に送信される。会議用端末5では、前側カメラ46、右側カメラ47、左側カメラ48の映像データが、それぞれ各ディスプレイ61〜63に表示される。これにより、正面ディスプレイ61と正対していない会議側ユーザも、右面ディスプレイ62または左面ディスプレイ63に表示される映像データを目視して、遠隔側ユーザの表情などを把握することができるので、テレビ会議の臨場感を向上させることができる。
【0095】
また、正面ディスプレイ61に遠隔側ユーザの正面顔が表示され、右面ディスプレイ62および左面ディスプレイ63にそれぞれ遠隔側ユーザの右横顔および左横顔が表示される。つまり、会議用端末5では、遠隔側ユーザを三方から撮影した映像データが、その撮影方向に対応して三面表示される。このような三面表示によって筐体上部71を遠隔側ユーザの頭部に見せかけることで、会議用端末5を擬人化することができる。その結果、遠隔側ユーザが会議拠点にあたかも存在しているかのような印象を与えて、テレビ会議での存在感を高めることができる。
【0096】
また、遠隔側端末3では、会議用端末5に対する操作指示を受け付けた場合、操作指示に応じた操作信号が会議用端末5に送信される。会議用端末5では、遠隔側端末3から受信した操作信号に応じて、筐体上部71の垂直方向および水平方向の傾きが変更される。これに伴って、筐体上部71に設けられている各ディスプレイ61〜63の向きも変更される。したがって、遠隔側ユーザは、各ディスプレイ61〜63の向き(つまり、映像データの表示方向)を遠隔操作で変更できるため、従来よりも低コストで臨場感の高い遠隔会議を実現できる。
【0097】
また、筐体上部71の正面には、遠隔側ユーザの正面顔が表示される正面ディスプレイ61とともに、筐体上部71の前方を撮影するカメラ67が設けられている。そのため、遠隔側ユーザは、正面ディスプレイ61の向きを変更することで、カメラ67の撮影方向を遠隔操作することができる。ひいては、遠隔側ユーザは会議拠点の様子を正確に把握でき、実際に会議拠点に存在しているような臨場感が得られる。
【0098】
また、カメラ67の撮影方向は、遠隔側ユーザの正面顔が表示される方向(つまり、筐体上部71の前方)と略一致する。言い換えると、カメラ67がパン調整およびチルト調整された場合でも、遠隔側ユーザが注視している方向と、遠隔側ユーザの正面顔が表示される方向とが略一致する。そのため、会議側ユーザは、遠隔側ユーザの正面顔が表示されている方向(つまり、正面ディスプレイ61の向き)に基づいて、遠隔側ユーザが注視している方向を把握できる。例えば、会議側ユーザは、遠隔側ユーザの正面顔を目視している場合には、遠隔側ユーザによって注視されていないことを認識できる。また、遠隔側ユーザの右横顔または左横顔を目視している場合には、遠隔側ユーザによって注視されていないことを認識できる。ひいては、ユーザ間の意思疎通が円滑となり、テレビ会議の臨場感を高めることができる。
【0099】
さらに、重複角度θ3、θ4が所定値以下であるため、会議側ユーザは遠隔側ユーザの正面顔画像および横顔画像の両方を同時に目視することが困難となる。言い換えると、会議側ユーザが明確に目視できるのは、遠隔側ユーザの正面顔画像および横顔画像のいずれか一方である。そのため、遠隔側ユーザの正面顔画像を目視している会議側ユーザは、遠隔側ユーザに目視されていることを認識できる。一方、遠隔側ユーザの横顔画像を目視している会議側ユーザは、遠隔側ユーザに目視されていないことを認識できる。これにより、ユーザ間の意思疎通がさらに円滑となり、テレビ会議の臨場感をより一層高めることができる。
【0100】
図20および図21を参照して、第2実施形態に係る会議用端末501について説明する。会議用端末501は、第1実施形態と同様にテレビ会議システム1に用いられる。以下では、会議用端末501について、会議用端末5と同一構成には同一符号を付して説明を省略し、会議用端末5と異なる点のみを説明する。
【0101】
会議用端末501は、会議用端末5(図3等参照)と基本的に同じ構造を有する。ただし、会議用端末501の筐体上部171は、筐体上部71(図3等参照)とは物理的構造が異なる。筐体上部171は、筐体上部71(図3等参照)と同様の縦長直方体状であるが、2つの衝立111、112を備える。衝立111は、前面枠74と右面枠75との連設部分から延びる縦長長方形状の板状部材であり、本実施形態では前面枠74および右面枠75に対して135°をなす。衝立112は、前面枠74と左面枠76との連設部分から縦長長方形状の板状部材であり、本実施形態では前面枠74および左面枠76に対して135°をなす。
【0102】
会議用端末501には、視野角調整フィルタ21、22、23(図6等参照)が設けられていない。そのため、各ディスプレイ61、62、63の視野角は、各々に固有の視野角(本実施形態では、上下左右150°)に設定されている。ただし、正面ディスプレイ61および右面ディスプレイ62の各視野角の一部は、衝立111によって妨げられる。正面ディスプレイ61および左面ディスプレイ63の各視野角の一部は、衝立112によって妨げられる。その結果、可視角度θ11、θ12、θ13は、連続する左右角度をなすように90、105°、105°にそれぞれ調整される。
【0103】
したがって、会議側ユーザは、正面ディスプレイ61に表示される正面顔画像と、右面ディスプレイ62に表示される右顔画像とを同時に目視することはできない。また、会議側ユーザは、正面ディスプレイ61に表示される正面顔画像と、左面ディスプレイ63に表示される左顔画像とを同時に目視することはできない。言い換えると、会議側ユーザが明確に目視できるのは、遠隔側ユーザの正面顔画像および横顔画像のいずれか一方である。そのため、第1実施形態と同様に、ユーザ間の意思疎通を円滑して、テレビ会議の臨場感を高めることができる。
【0104】
図22〜図25を参照して、第3実施形態に係る会議用端末502、503について説明する。会議用端末502、503は、いずれも、第1実施形態と同様にテレビ会議システム1に用いられる。以下では、会議用端末502、503について、会議用端末5と同一構成には同一符号を付して説明を省略し、会議用端末5と異なる点のみを説明する。
【0105】
図22および図23に示すように、会議用端末502は、会議用端末5(図3等参照)と基本的に同じ構造を有する。ただし、会議用端末502の筐体上部271は、筐体上部71(図3等参照)とは物理的構造が異なる。筐体上部271は、上面パネル78および下面パネル79が台形をなす縦長箱状である。右面枠75および左面枠76は、前面枠74とほぼ同形であるが、前面枠74に対して鋭角をなすように傾斜している。後面パネル77は、前面枠74に対して平行をなし、且つ前面枠74よりも横幅が大きい。本実施形態では、筐体角度θ1、θ2は、いずれも100°である。
【0106】
会議用端末502には、視野角調整フィルタ21、22、23(図6等参照)が設けられていない。そのため、各ディスプレイ61、62、63の視野角は、各々に固有の視野角(本実施形態では、上下左右120°)に設定されている。各ディスプレイ61、62、63の視野角を妨げる部材は設けられていないため、各可視角度θ11、θ12、θ13も上下左右120°である。さらに、筐体角度θ1、θ2はいずれも100°であるから、重複角度θ3、θ4はいずれも左右50°である。
【0107】
図24および図25に示すように、会議用端末503は、会議用端末5(図3等参照)と基本的に同じ構造を有する。ただし、会議用端末50の筐体上部371は、筐体上部71(図3等参照)とは物理的構造が異なる。筐体上部371は、上面パネル78および下面パネル79が台形をなす縦長箱状である。右面枠75および左面枠76は前面枠74とほぼ同形であるが、後面パネル77は前面枠74よりも横幅が小さい。本実施形態では、筐体角度θ1、θ2は、いずれも80°である。
【0108】
会議用端末503には、視野角調整フィルタ21、22、23(図6等参照)が設けられていない。そのため、各ディスプレイ61、62、63の視野角は、各々に固有の視野角(本実施形態では、上下左右150°)に設定されている。各ディスプレイ61、62、63の視野角を妨げる部材は設けられていないため、各可視角度θ11、θ12、θ13も上下左右150°である。さらに、筐体角度θ1、θ2はいずれも80°であるから、重複角度θ3、θ4はいずれも左右50°である。
【0109】
このように、各ディスプレイ61、62、63の向き(言い換えると、筐体角度θ1、θ2)を変更することで、各可視角度θ11、θ12、θ13を最適化することができる。その結果、会議側ユーザが明確に目視できるのは、遠隔側ユーザの正面顔画像および横顔画像のいずれか一方となる。そのため、第1実施形態と同様に、ユーザ間の意思疎通を円滑して、テレビ会議の臨場感を高めることができる。
【0110】
図26〜図29を参照して、第4実施形態に係る会議用端末504、505について説明する。会議用端末504、505は、いずれも、第1実施形態と同様にテレビ会議システム1に用いられる。以下では、会議用端末504、505について、会議用端末5と同一構成には同一符号を付して説明を省略し、会議用端末5と異なる点のみを説明する。
【0111】
図26および図27に示すように、会議用端末504は、会議用端末5(図3等参照)と基本的に同じ構造を有する。ただし、会議用端末504の筐体上部471は、筐体上部71(図3等参照)とは物理的構造が異なる。筐体上部471は、上面パネル78および下面パネル79がT字形をなす縦長箱状である。右面枠75および左面枠76は、前面枠74とほぼ同形であるが、前面枠74の背面側に配置され、且つ前面枠74に対して直交に延びている。後面パネル77は、前面枠74に対して平行をなし、且つ前面枠74よりも横幅が小さい。
【0112】
会議用端末504には、視野角調整フィルタ21、22、23(図6等参照)が設けられていない。そのため、各ディスプレイ61、62、63の視野角は、各々に固有の視野角(本実施形態では、上下左右120°)に設定されている。ただし、右面ディスプレイ62の視野角の一部は、前面枠74の右枠部201によって妨げられる。左面ディスプレイ63の視野角の一部は、前面枠74の左枠部202によって妨げられる。その結果、可視角度θ11、θ12、θ13は、連続する左右角度をなすように90、120°、90°にそれぞれ調整される。
【0113】
図28および図29に示すように、会議用端末505は、会議用端末5(図3等参照)と基本的に同じ構造を有する。ただし、会議用端末505の筐体上部571は、筐体上部71(図3等参照)とは物理的構造が異なる。筐体上部571は、上面パネル78および下面パネル79が凹字形をなす縦長箱状である。右面枠75および左面枠76は、前面枠74とほぼ同形であるが、前面枠74の左右両側に配置され、且つ前面枠74に対して直交に延びている。後面パネル77は、前面枠74に対して平行をなし、且つ前面枠74よりも横幅が大きい。
【0114】
会議用端末505には、視野角調整フィルタ21、22、23(図6等参照)が設けられていない。そのため、各ディスプレイ61、62、63の視野角は、各々に固有の視野角(本実施形態では、上下左右120°)に設定されている。ただし、正面ディスプレイ61の視野角の一部は、右面枠75の右枠部203および左面枠76の左枠部204によって妨げられる。その結果、可視角度θ11、θ12、θ13は、連続する左右角度をなすように120°、60°、120°にそれぞれ調整される。
【0115】
このように、各ディスプレイ61、62、63の配置態様を変更することで、各可視角度θ11、θ12、θ13を最適化することができる。その結果、会議側ユーザが明確に目視できるのは、遠隔側ユーザの正面顔画像および横顔画像のいずれか一方となる。そのため、第1実施形態と同様に、ユーザ間の意思疎通を円滑して、テレビ会議の臨場感を高めることができる。
【0116】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更が可能である。例えば、筐体角度θ1、θ2、重複角度θ3、θ4、可視角度θ11、θ12、θ13などは、上記実施形態に限定されず、ユーザが自由に設定することができる。
【0117】
上記実施形態において、前側カメラ46が、本発明の「第一カメラ」に相当する。右側カメラ47および左側カメラ48が、本発明の「第二カメラ」に相当する。映像送信割込み処理(図9)を実行するCPU30が、本発明の「画像送信手段」に相当する。正面ディスプレイ61が、本発明の「第一ディスプレイ」に相当する。右面ディスプレイ62および左面ディスプレイ63が、本発明の「第二ディスプレイ」に相当する。映像受信割込み処理(図16)を実行するCPU50が、本発明の「画像受信手段」および「表示制御手段」に相当する。筐体上部71が、本発明の「ディスプレイ支持部」に相当する。カメラ67が、本発明の「会議撮影カメラ」に相当する。映像送信割込み処理(図14)を実行するCPU50が、本発明の「会議画像送信手段」に相当する。ディスプレイ43が、本発明の「遠隔側ディスプレイ」に相当する。映像受信割込み処理(図11)を実行するCPU30が、本発明の「会議画像受信手段」および「遠隔側表示制御手段」に相当する。視野角調整フィルタ21が、本発明の「第一視野角変更部材」に相当する。視野角調整フィルタ22、23が、本発明の「第二視野角変更部材」に相当する。衝立111、112が、本発明の「区画部材」に相当する。
【符号の説明】
【0118】
1 テレビ会議システム
2 ネットワーク
3 遠隔側端末
5 会議用端末
21 視野角調整フィルタ
22 視野角調整フィルタ
23 視野角調整フィルタ
30 CPU
43 ディスプレイ
44 マイク
45 スピーカ
46 前側カメラ
47 右側カメラ
48 左側カメラ
50 CPU
61 正面ディスプレイ
62 右面ディスプレイ
63 左面ディスプレイ
64 右側マイク
65 左側マイク
66 スピーカ
67 カメラ
80 パンモータ
90 チルトモータ
100 駆動機構
111 衝立
112 衝立
501 会議用端末
502 会議用端末
503 会議用端末
504 会議用端末
505 会議用端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔地のユーザが使用する遠隔側端末と、会議の開催場所に設置される会議用端末とがネットワークを介して接続され、前記遠隔側端末と前記会議用端末との双方向通信によって遠隔会議を実行する会議システムであって、
前記遠隔側端末は、
前記ユーザの正面顔を含む領域を撮影する第一カメラと、
前記ユーザの横顔を含む領域を撮影する第二カメラと、
前記第一カメラで撮影された正面画像と、前記第二カメラで撮影された側面画像とを、前記ネットワークを介して前記会議用端末に送信する画像送信手段とを備え、
前記会議用端末は、
前記会議用端末における第一の側面方向に画像を表示する第一ディスプレイと、
前記会議用端末における前記第一の側面方向と交差する第二の側面方向に画像を表示する第二ディスプレイと、
前記ネットワークを介して前記正面画像および前記側面画像を受信する画像受信手段と、
前記画像受信手段によって受信された前記正面画像を前記第一ディスプレイに表示し、且つ、前記画像受信手段によって受信された前記側面画像を前記第二ディスプレイに表示する表示制御手段と、
前記第一ディスプレイの可視角度と前記第二ディスプレイの可視角度との重複角度が所定値以下となるように、前記第一ディスプレイおよび前記第二ディスプレイを支持するディスプレイ支持部と、
前記第一ディスプレイの向きと同じ方向を撮影する会議撮影カメラと、
前記会議撮影カメラで撮影された前記会議画像を、前記ネットワークを介して前記遠隔側端末に送信する会議画像送信手段とを備え、
前記遠隔側端末は、さらに、
画像を表示する遠隔側ディスプレイと、
前記ネットワークを介して前記会議画像を受信する会議画像受信手段と、
前記会議画像受信手段によって受信された前記会議画像を前記遠隔側ディスプレイに表示する遠隔側表示制御手段と
を備えたことを特徴とする会議システム。
【請求項2】
ネットワークを介して遠隔地のユーザが使用する遠隔側端末に接続され、会議の開催場所に設置される会議用端末であって、
前記会議用端末における第一の側面方向に画像を表示する第一ディスプレイと、
前記会議用端末における前記第一の側面方向と交差する第二の側面方向に画像を表示する第二ディスプレイと、
前記ネットワークを介して、前記ユーザの正面顔を含む領域を撮影した正面画像と、前記ユーザの横顔を含む領域を撮影した側面画像とを受信する画像受信手段と、
前記画像受信手段によって受信された前記正面画像を前記第一ディスプレイに表示し、且つ、前記画像受信手段によって受信された前記側面画像を前記第二ディスプレイに表示する表示制御手段と、
前記第一ディスプレイの可視角度と前記第二ディスプレイの可視角度との重複角度が所定値以下となるように、前記第一ディスプレイおよび前記第二ディスプレイを支持するディスプレイ支持部と、
前記第一ディスプレイの向きと同じ方向を撮影する会議撮影カメラと、
前記会議撮影カメラで撮影された前記会議画像を、前記ネットワークを介して前記遠隔側端末に送信する会議画像送信手段と
を備えたことを特徴とする会議用端末。
【請求項3】
前記第一ディスプレイの可視角度は、前記第二ディスプレイの可視角度よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の会議用端末。
【請求項4】
前記第一ディスプレイの表示面に装着され、前記第一ディスプレイの可視角度を変更する第一可視角度変更部材と、
前記第二ディスプレイの表示面に装着され、前記第二ディスプレイの可視角度を変更する第二可視角度変更部材と
を備えたことを特徴とする請求項2または3に記載の会議用端末。
【請求項5】
前記ディスプレイ支持部は、前記第一ディスプレイおよび前記第二ディスプレイを、一方のディスプレイの表示面が他方のディスプレイの表示面の反対側に隠れるように支持することを特徴とする請求項2に記載の会議用端末。
【請求項6】
前記第一ディスプレイおよび前記第二ディスプレイとの間に設けられ、前記第一ディスプレイの目視可能範囲と、前記第二ディスプレイの目視可能範囲とを区画とする区画部材を備えたことを特徴とする請求項2に記載の会議用端末。
【請求項7】
前記第一ディスプレイおよび前記第二ディスプレイは、縦長形状であることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の会議用端末。
【請求項8】
前記第二ディスプレイは、前記第一ディスプレイの右側に向けて画像を表示する右面ディスプレイと、前記第一ディスプレイの左側に向けて画像を表示する左面ディスプレイとを含み、
前記表示制御手段は、前記画像受信手段によって受信された前記側面画像のうち、前記ユーザの右横顔を含む領域を撮影した右側面画像を前記右面ディスプレイに表示し、且つ、前記ユーザの左横顔を含む領域を撮影した左側面画像を前記左面ディスプレイに表示することを特徴とする請求項2から7のいずれかに記載の会議用端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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