説明

会議システム

会議システム(1)は、中央ユニット(2)及び、前記中央ユニットに接続可能なスピーカユニット(3)を備える。スピーカユニット(3)からのスピーチ信号を合成し、当該合成されたスピーチ信号を前記ユニットに供給するように動作する中央ユニット(2)は、フィードバックを抑制する適合型フィルタ(36)を備える。各スピーカユニット(3)は、マイク(33)、スピーカ(34)、有効化スイッチ(35)、及びマイク(33)とスピーカ(34)との間に接続される適合型フィルタ(36)を備える。該スピーカユニットが有効化されていない場合、適合型フィルタ(36)は、エコーキャンセラとして動作する一方で、該スピーカユニットが有効化されている場合フィードバック抑制器として動作する。スピーカ(34)を恒久的にオンに維持することによって、フィルタ(36)の誤適合によるいかなる過渡信号も回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会議システムに関する。更に特には、本発明は、中央ユニット及び前記中央ユニットに接続され得る少なくとも1つのスピーカユニットを備える会議システムに関する。前記スピーカユニットはそれぞれ、代表者(delegate)が会議に参加することを可能にするスピーカ及びマイクを備える。前記中央ユニットは、全てのスピーカユニットからのマイク信号を合成し、該合成されたマイク信号を、必ずしもそうではないが通常は、この合成信号の増幅の後に、全てのスピーカユニットへ供給する。前記スピーカユニットのスピーカ又は等価なトランデューサは、この合成信号を再生する。
【背景技術】
【0002】
会議システムは、従来、会議及び議会で用いられてきたが、同じ技術は、現在、数人が背景の雑音の存在の中で会話をしようと思う車、飛行機及び他の乗り物においても用いられている。
【0003】
会議システムは、会議システムが、1つ又は2つのみが選択的に再生される個別の信号を再生する多数の個別の位置にある(すなわち、各代表者の前にある)多数のマイクを用いる点で、拡声装置とは、異なることを特記される。拡声装置が多数のスピーカも用いる一方で、拡声装置ではマイク信号の何の選択的再生もない。
【0004】
米国特許第5,404,397号は、中央ユニットに接続されるスピーカユニットを備える会議システムを開示する。この既知の会議システムは、自動スピーカ検出を具備される。この目的のために、該中央ユニットは、該スピーカユニットのスピーチ信号を比較し、最高信号レベルを有するユニットを有効化する。他のスピーカによって生成される音声によるいかなる誤スピーカ検出もさけるために、各スピーカユニットは、適応型フィルタを具備されるエコーキャンセラを備える。スピーカユニットを有効化すると、ユニットのスピーカはスイッチオフにされ、エコーキャンセラはバイパスされる。
【0005】
スピーカをスイッチオフにすることは、スピーカからスピーカユニットのマイクへの不所望な音響フィードバックを抑制するのに非常に効果的であるものの、信号歪みを生じることが分かっている。スピーカがスイッチオン及びオフにされる度に、マイクによって検出されエコーキャンセラによって処理される音声パターンは変化し、スピーカ及びマイクの間の音響経路は、追加及び除去されることが交互に繰り返される。このことは、スピーカユニットが有効化(無効化)されるたびに、エコーキャンセラ、特に適合型フィルタは該音響経路の変化に適合する必要があることを示唆する。このことは、過渡信号、すなわちエコーキャンセラによって補償されずしたがって(エコー補償された)マイク信号を歪ませる一時的信号を導く。過渡信号は、特に、既知のスピーカユニットのスピーカが再有効化される場合に発生する。過渡信号は、マイクが該再有効化されたスピーカによって生成された音声を直接記録する近傍のスピーカユニットでも生じ得る。
【0006】
有効なスピーカユニットのマイクによって記録される音響フィードバックの相当の部分は、近傍のスピーカユニットのスピーカに由来することが更に分かっている。このことは、このフィードバックがハウリングを表示させるので、会議システムの最大許容ゲインを低減させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術のこれら及び他の問題を解決すること、及びスピーカユニットの有効化及び無効化による過渡信号が回避される会議システムを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、斯様な会議システムで用いるスピーカユニット及び中央ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、少なくとも1つのスピーカユニット及び中央ユニットを備える会議システムであって、前記少なくとも1つのスピーカユニットが、スピーカ信号を受信する入力部、マイク信号を供給する出力部、前記入力部に接続されるスピーカ、前記スピーカ及び合成ユニットの間に接続される適合型フィルタ、前記合成ユニットに接続されるマイク、及び前記合成ユニット及び前記出力部の間に接続される有効化装置、を有し、前記中央ユニットが、マイク信号を受信する入力部及びスピーカ信号を供給する出力部を有し、前記少なくとも1つのスピーカユニットの前記スピーカが、その入力部に恒久的に接続され、前記中央ユニットが、その入力部及びその出力部の間に接続される更なる適合型フィルタを具備される、会議システムを提供する。
【0010】
恒久的に該スピーカユニットの入力部に接続されしたがって恒久的に有効であるスピーカを設けることによって、該スピーカのスイッチをオン及びオフすることによって生じられるいかなる過渡信号も回避される。該スピーカは通常全ての有効なスピーカユニットの合成されたマイク信号を再生するので、このスピーカは、該マイクによって記録される音声をほとんど連続的に生成し得る。結果として、関係するスピーカユニットの適合型フィルタは、そのフィルタパラメータを連続的に同一の音響経路に適合することが可能であり、過渡信号無しに安定したフィルタ処理に導き得る。
【0011】
更なる適合型フィルタを該中央ユニットに設けることによって、有効状態を維持するスピーカのいかなる逆効果も補償される。該中央ユニットにおける更なるフィルタは、該中央ユニットの出力信号から該入力信号へのいかなるフィードバックも除去する音響フィードバック抑制器として動作する。
【0012】
好ましい実施例において、当該中央ユニットは、更に、非相関化器を備える。当該適合型フィルタとほぼ並列に配置され得る斯様な非相関化器は、該適合型フィルタの出力信号と入力信号との間のいかなる相関性も除去するように動作する。非相関化器がない場合、該適合型フィルタは、合成されたマイク信号の振幅を低減する傾向を有し得、信号ひずみを導き得る。好ましくは、該非相関化器は、周波数シフタによって構成される。しかし、位相シフタ及び/又は時間可変遅延も非相関化器として用いられ得る。
【0013】
前記中央ユニットは、更に、適合型フィルタの残留信号内の残存エコーを抑制するように動作する動的エコー抑制器を備える。
【0014】
適合型フィルタの時間スパンは、フィルタ長(遅延ユニットの数)と標本周波数との積として規定され得る。様々な時間スパンが用いられ得るが、前記スピーカユニットの前記適合型フィルタが、20および45msの間の、好ましくは、30及び35msの間の時間スパンを有することが好ましい。特に、約32msの時間スパンが適している。斯様な比較的短い時間は、該スピーカが有効でない場合、該マイク信号が他のスピーカユニットからのみを含むので、素早くことが可能である適合型フィルタになる。
【0015】
様々な種類の適合型フィルタは用いられるが、前記適合型フィルタが、該マイク信号におけるエコー対非エコー比率の推定値にほぼ比例する適合速度を、前記エコー対比エコー比率が特定のしきい値よりも低く、好ましいしきい値が1に等しい場合に、有することが好ましい。斯様な実施例において、該フィルタは、該マイク信号がエコーのみを含む場合に素早く、及び、該マイク信号が例えば所望なスピーチなどのかなりの非エコー信号成分を含む場合に遅く反応する。
【0016】
本発明による会議システムの更なる好ましい実施例において、当該中央ユニットの適合型フィルタは、125および500msの間の、好ましくは、200及び300msの間の時間スパンを有する。およそ250msの時間スパンは、特に好ましい。一般的に、当該中央ユニットの(更なる)適合型フィルタの時間スパンは、スピーカユニットの適合型フィルタの時間スパンより大きく、好ましくは相当に大きい。斯様にして、該スピーカユニットの適合型フィルタは、直接的なエコーを除去するように構成される一方で、該中央ユニットの適合型フィルタは、間接的又は散乱エコーを除去するように構成される。
【0017】
本発明の会議システムは、有利には、車、バス、又はトラックなどの乗り物に搭載され得る。当該スピーカユニットは、携帯可能であり、及び話者の衣服に留めるためのクリップを具備され得る。しかし、該スピーカユニットは、シート、天井、壁、床及び乗り物の他の部分にも組み込まれ得る。
【0018】
本発明は、上述の会議システムで用いるスピーカユニットも提供し、当該スピーカユニットは、スピーカ信号を受信する入力部、マイク信号を供給する出力部、前記入力部に接続されるスピーカ、前記スピーカ及び合成ユニットの間に接続される適合型フィルタ、前記合成ユニットに接続されるマイク、及び前記合成ユニット及び前記出力部の間に接続される有効化装置を備え、前記スピーカが、前記入力部に恒久的に接続される。
【0019】
本発明は、加えて、上述の会議システムにおいて用いる中央ユニットを提供し、当該中央ユニットが、マイク信号を受信する入力部、スピーカ信号を供給する出力部、及びその入力部及びその出力部の間に接続される更なる適合型フィルタを有する。本発明の中央ユニットは、非相関化器、動的エコー抑制器、及び/又は増幅器を更に具備され得る。
【0020】
本発明は、添付の図面に例示される例証的な実施例を参照にして以下に説明され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1において非制限的な例としてのみ示される会議システム1は、中央ユニット2及びスピーカユニット3を備える。中央ユニット2は、スピーカユニット3からのスピーチ信号を合成すること、及び該合成されたスピーチ信号を前記ユニットに供給するように動作する。各スピーカユニット3は、スピーチ信号を生成するマイク33と、該合成されるスピーチ信号を再生するスピーカ34を備える。各スピーカユニット3は、該ユニットのマイク33を有効化にする有効化ボタン(図示せず)を具備され得る。通常の会議システムにおいて、マイク33は、通常オフにされ、そのユーザ(従来的には「代表者」)と呼ばれる)によって有効にされるスピーカユニットが、スピーチ信号を生成する。
【0022】
本発明の会議システムは、会議室又は会議ホールにおいて用いられ得るが、車、バス、トラック、飛行機又はボートなどの乗り物においても搭載され得る。該スピーカユニットは、携帯可能であり、及び話者(乗客及び/又は運転者/パイロット)の衣服に留めるためのクリップを具備され得る。しかし、該スピーカユニットは、シート、天井、壁、床及び乗り物の他の部分にも組み込まれ得る。
【0023】
図2の回路図において、本発明による会議システム1は、概略的に示される。図2の会議システム1は、中央ユニット2及び2つのスピーカユニット3をも備える。2つのスピーカユニット3のみが示されるものの、例えば、4、8、10又は21個のスピーカユニットなどのより多数のスピーカユニット3が中央ユニット2に接続され得ることを理解され得る。
【0024】
中央ユニット2は、スピーカユニット3からマイク信号を受信する入力部21と、スピーカ信号(すなわち、合成され、フィルタ処理され、及び/又は増幅されたマイク信号)をスピーカユニット3に供給する出力部22と、該マイク信号をフィルタ処理する適合型フィルタ23と、該マイク信号及び該フィルタ処理された信号、すなわちフィルタ23によって出力された信号を合成する合成ユニット29と、を備える。
【0025】
スピーカユニット3は、それぞれ、スピーカ信号を受信する入力部31と、マイク信号を出力する出力部32と、入力部31に接続されるスピーカ34と、該スピーカ信号を受信する入力部31に接続される適合型フィルタ36と、マイク信号を生成するマイク33と、該マイク信号及び該フィルタ出力信号を合成する合成ユニット(信号加算器)39と、合成ユニット39(及び従ってマイク33)を出力部32に選択的に接続するスイッチ35と、を備える。
【0026】
図2から明らかであるように、スピーカユニット3は、並列に配置され、各ユニット3は、中央ユニット2の入力部21及び出力部22に接続される。各スピーカユニット3の出力部32は、独立したワイヤ又は他の適切な接続により該中央ユニットの独立した入力部21に接続され得る。したがって、中央ユニット2は、該合成ユニット29の全てに接続され得る複数の入力部21を有し得る。
【0027】
中央ユニット2の適合型フィルタ23は、音響フィードバック抑制器として動作する。適合型フィルタ23は、いずれの有効なスピーカユニットのマイク33とスピーカ34との間に存在する音響経路をモデル化し、これらの音響経路によって生成されるマイク信号を近似する信号を出力する。合成ユニット29において、このフィルタ信号は、マイク信号から減算される。生じる信号rは、「純粋な」マイク信号、すなわちスピーカによってではなく話者(「代表者」)によって生成された信号を表す。
【0028】
該音響経路が、例えば人々の移動又は会議室内の物品により時間とともに変化し得るので、該フィルタは適合型であり、そのフィルタ係数は、特定の時間点において該音響経路に最も適するように繰り返し又は連続的に適合される。適合型フィルタは周知であり得るが、会議システムに関する従来技術は、適合型フィルタを具備される中央ユニットを開示すること又は提示することを怠っている。
【0029】
本発明の会議システムにおいて、スピーカユニット3は、適合型フィルタをも具備される。これらの適合型フィルタ36は、それぞれのスピーカユニットが有効である場合に音響フィードバック抑制器(AFS)として、及びそれぞれのスピーカユニットが有効でない場合に音響エコーキャンセラ(AEC)として動作する(当業者は、AFSの場合、該スピーカ信号が該スピーカユニットの該マイク信号から導出される一方で、AECの場合、該スピーカ信号が外部信号から導出されることを理解し得る)。
【0030】
図2において確認され得るように、適合型フィルタ36は、スピーカ34からマイク33へ延在する音響経路を用いて並列に配置される。該スピーカユニットが有効でない場合(スイッチ35がオープン)、マイク33は、スピーカユニット自体のスピーカ34によって及び他のスピーカユニットのスピーカによって発生される音声を記録する。該スピーカユニットの適合型フィルタ36は、同一のスピーカユニットのスピーカ34からの該音声をほぼキャンセルするフィルタ信号を、合成ユニット39においてマイク信号から減算される場合に生成する(音響エコーキャンセレーション、AEC)。加えて、該フィルタ信号は、通常、直接的に又は近傍の物体を介して間接的に該マイクに達するいかなる近傍のスピーカユニットのスピーカからの音声をもキャンセルする。図5を参照して後に説明されるように、適合型フィルタ36は、該スピーカ信号と該マイク信号との間のいかなる相関性をも除去するように試みる。該スピーカユニットが有効でない場合のこれらの信号の間の相関性のいずれもは、スピーカ34の音声を拾い上げるマイク33に起因する。該スピーカユニットが有効でない場合、適合型36は、素早く反応すること、及び該音響経路を性格にモデル化することが可能である。
【0031】
スピーカユニット3が有効である場合(スイッチ35が閉じる)、該マイク信号は、スピーカユニット3の出力部32を介して、該マイク信号が中央ユニット適合型フィルタ23によってフィルタ処理される中央ユニットの入力部21に供給される。本発明に従うと、スピーカ34は、スピーカユニットが有効である場合、有効に維持する。結果として、スピーカ34によって生成される音声は、この場合、該スピーカ信号及び該マイク信号の相関性を大幅に増加させるマイク信号をも含み得る。スピーカユニット適合型フィルタ36及び中央ユニット適合型フィルタの両方は、この場合、音響フィードバック抑制器(AFS)として動作する。
【0032】
AFSの適合速度は、AECの適合速度と比較して低い。AECに関して、マイク信号は、エコーのみを含み、AFSに関しては、マイク信号は、エコー及び所望なスピーチ信号の両方を含む。早い適合は、AFSの場合、所望なスピーチの低下を導く。
【0033】
本発明の会議システムにおいて、適合型フィルタ23及び36の組み合わされた動作は、スピーカからの直接の音声、近傍の物体からの第1反響、及び他の物体からのいかなる散乱をも除去する。加えて、スピーカユニット適合型フィルタ36は、該スピーカユニットが有効化される場合、直接の音声及びいかなる第1反響をも完全にキャンセルし、したがって、いかなる過渡信号の導入も回避させる。
【0034】
中央ユニット2の代替実施例が図3に示される。この実施例も、マイク信号zを受信する入力部21と、スピーカ信号xを供給する出力部22と、フィルタ信号yを生成する適合型フィルタ23と、残留信号rを生成するように信号z及びyを合成する合成ユニット29と、を備える。加えて、図3の中央ユニット2は、更新ユニット24及び非相関化器26を備える。更新ユニット24は、合成ユニット29によって出力される残留信号rと非相関化された信号xとの両方を受信し、これら2つの信号の相関性を決定する。フィルタ23の係数は、その場合、前記相関性が最小化されるようにして適合される。非相関化器26がない場合、該適合型フィルタは、該残留信号rを、信号z及びxがほぼ同一であるように抑制しようと試み得る(明瞭性のために図3に示されない他の信号処理要素が中央ユニット2に存在し得ることを特記される)。非相関化器26は、好ましくは、残留信号rの周波数を、数ヘルツだけシフトする周波数シフタによって構成される。周波数シフタの代わりに又は加えて、非相関化器26は、移送シフタ及び/又は時間可変遅延を有し得る。非相関化器26は、信号歪みを避けるだけでなく、適合型フィルタ23の適合速度を増加させる。
【0035】
図4に示される中央ユニット2の実施例は、図3を参照して上述されるコンポーネントに加えて、動的エコー抑制器(DES)27及び増幅器28を備える。動的エコー抑制器27は、マイク信号z、フィルタ信号y、及び残留信号rを受信し、補償された残留信号r'を生成する。斯様な動的エコー抑制器は、該音響経路の変化が該適合型フィルタによって生成された音響フィードバック補償信号に位相エラーを含みさせる場合、残留信号の振幅を一時的に低下させるように作用する。斯様な音響経路の変化は、通常、スピーカユニットが有効化される場合又は無効化される場合に生じられる。したがって、動的エコー抑制器は、スピーカユニットの有効化(無効化)のいかなる不所望な効果もより一層低減させる。
【0036】
動的エコー抑制器27は、入力信号zの周波数成分の振幅を、(純粋な遅延を除いて)その位相を変化させることなく修正する。このことは、フィルタ信号y、当該入力信号、及び残留信号rのいずれの周波数スペクトル(フーリエ変換)をも、変換される信号Y、Z及びRを得るように決定し、当該変換される信号Y、Z及びRの強度、並びにRの位相を決定し、合成された変換信号R'を得るためにY、Z及びRの強度を用い、当該合成された変換信号R'の強度及びRの位相を用いて時間信号r'を再構築することによって達成される。この種の動的エコー抑制器は、米国特許出願第2003/0026437号において記載され、該文書の内容の全体は、本文書において組み込まれる。
【0037】
上述のように、該中央ユニットの適合型フィルタは、全てのスピーカユニットのスピーカユニットによって引き起こされ、主に壁からの反射による該有効なスピーカユニットのマイクに達するエコーを補償する。図4の特定の有利な実施例において、動的エコー抑制器27は、いかなる残存エコーをも除去する。
【0038】
図5のスピーカユニット3も、入力部31、出力部32、マイク33、スピーカ34、スイッチ35、及び適合型フィルタ36を備える。図5のスピーカユニットは、加えて、適合型フィルタ36のフィルタ係数を更新する更新ユニット37を備えるように示される。更新ユニット37の機能は、中央ユニット2の更新ユニット24の機能と本質的に同一であり、ここにおいて説明される必要はない。
【0039】
使用において、いかなる有効なスピーカユニット3の適合型フィルタ37も、中央ユニット2の非相関化器26及び適合型フィルタ24の両方とほぼ並列に配置されることを特記される。
【0040】
スピーカユニット適合型フィルタ36の素早い適合を可能にするために、該フィルタが比較的短い時間スパンを有することが好ましい。フィルタの時間スパンは、フィルタ長(デジタルフィルタにおける時間単位の数)及び標本周波数の積として規定される。好ましい実施例において、当該フィルタは、20ms及び45msの間の、より特に30及び35msの間の時間スパンを有する。約32msの時間スパンが特に有利であるが、他の時間スパン値も用いられ得ることが分かっている。斯様な比較的短い時間スパンは、スピーカユニット適合型フィルタ36に同一のスピーカユニットのスピーカ及びいずれの隣接するスピーカユニットのスピーカによって生成されるエコーのみを補償させる。これらのエコーは、直接的に、又は近傍の物体からの反射により該マイクに達する。
【0041】
中央ユニット適合型フィルタ23がスピーカユニット適合型フィルタ36より大きい時間スパン、特に相当大きい時間スパンを有する場合に、更に有利である。中央ユニット2の適合型フィルタ23が125及び500msの間の、好ましくは200及び300msの間の時間スパンを有することが好ましい。約250msの時間スパンが特に好ましい。このようにして、中央ユニット適合型フィルタ23は、散乱エコーを、すなわち、壁からの及び他の非隣接物体からのエコーを補償するように構成される。
【0042】
スピーカユニット3が有効でない場合に適合型フィルタ36のAECモード及びスピーカユニットが有効である場合のAFSモードからの滑らかな移行を可能にするために、適合速度がマイク信号のエコー対非エコー(ENR)比率の推定値に比例するようにされることが、ENR比率が特定のしきい値を超えない場合に好ましい。該フィルタの適合速度は、当業者に周知であるステップサイズパラメータを交換することによって調整され得る。当該ENRは、更新ユニット37の入力信号と同一である、合成ユニット39によって出力される残留信号、及び適合型フィルタ36の入力信号に基づき推定され得る。
【0043】
更新ユニット37は、したがって、ENR推定信号を生成するENR(エコー対非エコー)推定器、該ENR推定信号を例えば1に等しい(記憶された)しきい値と比較する比較器、及び該適合型フィルタの適合速度を該ENR推定信号に、この信号が該しきい値超えない場合に調整する回路、を含み得る。斯様な実施例において、適合型フィルタは、該マイク信号がエコーのみを含む場合に比較的素早く反応すること、及び、該適合型フィルタは、該マイク信号が所望なスピーチを含む場合に比較的遅く反応することを達成される。
【0044】
スイッチ35は、手で操作するスイッチ、すなわちキー若しくはボタンによって、又はリレーのような遠隔制御電子的又は電子機械的スイッチによって構成され得ることが特記される。スイッチ35は、したがって、スピーカユニットと関連付けられた代表者によって、又は中央ユニットもしくは中央制御ユニットによってのいずれかにより直接的にまたは間接的に制御され得る。
【0045】
上述の議論において、全ての信号が特定の離散的時間点における特定の値を有するデジタル信号であると仮定されていることを更に特記される。しかし、本発明は、斯様には制限されず、アナログの実施例も想定され得る。同様に、本発明は、1つのマイク及び1つのスピーカを有するスピーカユニットを参照にして説明されてきたが、本発明は、複数のマイク及び/又はスピーカ、並びに/又は等価なトランデューサを有するスピーカユニットを用いて適用もされ得る。
【0046】
本発明は、会議システムスピーカユニットのスピーカをオン及びオフにスイッチすることが、信号歪みを引き起こす過渡信号に導き得るという洞察に基づく。本発明は、スピーカユニット及び中央ユニットの両方が適合型フィルタを具備される場合、スピーカが恒久的にオンであり得るという更なる洞察から利益を得る。
【0047】
加えて、この文書におけるいかなる用語も本発明の範囲を制限するように解釈されるべきでないことを特記される。特に、「有する」及び「備える」なる語句は、具体的に言及されないいかなる要素も除外するように意図されていない。単数形の(回路)要素は、複数の(回路)要素又はこれらの等価物によって置換され得る。
【0048】
当業者は、本発明が上述の実施例に制限されず、添付の請求項に規定される本発明の範囲から逸脱することなく多くの修正及び付加が行われ得ることを理解する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、スピーカユニット及び中央ユニットを備える通常の会議システムを概略的に示す。
【図2】図2は、本発明による会議システムの概略回路図を示す。
【図3】図3は、本発明による中央ユニットの第1実施例の概略回路図を示す。
【図4】図4は、本発明による中央ユニットの第2実施例の概略回路図を示す。
【図5】図5は、本発明によるスピーカユニットの実施例の概略回路図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのスピーカユニット及び中央ユニットを備える会議システムであって、
前記少なくとも1つのスピーカユニットが、スピーカ信号を受信する入力部、マイク信号を供給する出力部、前記入力部に接続されるスピーカ、前記スピーカ及び合成ユニットの間に接続される適合型フィルタ、前記合成ユニットに接続されるマイク、及び前記合成ユニット及び前記出力部の間に接続される有効化装置、を有し、
前記中央ユニットが、マイク信号を受信する入力部及びスピーカ信号を供給する出力部を有し、
前記少なくとも1つのスピーカユニットの前記スピーカが、その入力部に恒久的に接続され、
前記中央ユニットが、その入力部及びその出力部の間に接続される更なる適合型フィルタを具備される、
会議システム。
【請求項2】
前記中央ユニットが、更に、非相関化器を有する、請求項1に記載の会議システム。
【請求項3】
前記非相関化器が、周波数シフタによって構成される、請求項2に記載の会議システム。
【請求項4】
前記中央ユニットが、更に、動的エコー抑制器を備える、請求項1に記載の会議システム。
【請求項5】
前記スピーカユニットの前記適合型フィルタが、20および45msの間の、好ましくは、30及び35msの間の時間スパンを有する、請求項1に記載の会議システム。
【請求項6】
前記適合型フィルタが、前記マイク信号におけるエコー対非エコー比率の推定値にほぼ比例する適合速度を、前記エコー対比エコー比率が特定のしきい値よりも低く、前記しきい値が好ましくは1に等しい場合に、有するように構成される、請求項1に記載の会議システム。
【請求項7】
前記中央ユニットの前記適合型フィルタが、125および500msの間の、好ましくは、200及び300msの間の時間スパンを有する、請求項1に記載の会議システム。
【請求項8】
車両に搭載される、請求項1に記載の会議システム。
【請求項9】
前記スピーカユニットが、スピーカ信号を受信する入力部、マイク信号を供給する出力部、前記入力部に接続されるスピーカ、前記スピーカ及び合成ユニットの間に接続される適合型フィルタ、前記合成ユニットに接続されるマイク、及び前記合成ユニット及び前記出力部の間に接続される有効化装置、を有し、
前記スピーカが、前記入力部に恒久的に接続される、
請求項1に記載の会議システムで用いるスピーカユニット。
【請求項10】
請求項1に記載の会議システムで用いる中央ユニットであって、マイク信号を受信する入力部及びスピーカ信号を供給する出力部、及びその入力部及びその出力部の間に接続される更なる適合型フィルタを有する、中央ユニット。
【請求項11】
非相関化器、動的エコー抑制器、及び/又は増幅器を更に具備される、請求項10に記載の中央ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−500759(P2008−500759A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514252(P2007−514252)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051647
【国際公開番号】WO2005/117409
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】