伝送システムおよびそれに用いる送信装置
【課題】 より僅かな受信電界においても受信アンテナの方向調整を可能とする伝送システムおよびそれに用いる送信装置を提供する。
【解決手段】 ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置12で送信し、受信アンテナ21でOFDM信号を受信し、復調装置22でOFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、相関演算の結果得られる相関信号に基づき受信アンテナの方向調整用信号を生成し受信アンテナの方向調整を行う伝送システムであって、送信装置12に、OFDM信号のガードインターバル期間の信号を有効シンボル期間の信号より振幅を大きく設定する手段(61,62)を装備したことを特徴とする。
【解決手段】 ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置12で送信し、受信アンテナ21でOFDM信号を受信し、復調装置22でOFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、相関演算の結果得られる相関信号に基づき受信アンテナの方向調整用信号を生成し受信アンテナの方向調整を行う伝送システムであって、送信装置12に、OFDM信号のガードインターバル期間の信号を有効シンボル期間の信号より振幅を大きく設定する手段(61,62)を装備したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直交周波数分割多重変調方式(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:以下、OFDM方式と記す)を用いた伝送システムに関し、特に受信アンテナの方向調整に適した伝送システムおよびそれに用いる送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アナログFPU(Field Pickup Unit)の受信アンテナの方向を受信レベルが最大になる最良な方向に調整する際は、受信アンテナから出力される受信信号をスペクトラムアナライザに入力し、受信アンテナの方向を、上下左右に微妙に動かしながら、スペクトラムアナライザに鋭いピークとして表示される搬送波のレベルを測定し、ピークレベルが最大になる方向を探索して調整する方法が取られてきた。
【0003】
ところで近年、無線装置の分野では、マルチパスフェージングに強い変調方式としてOFDM方式が脚光を集め、欧州や日本を初めとする各国の次世代テレビ放送、FPU、無線LAN等の分野で多くの応用研究が進められている。
この内、UHF帯の地上デジタル放送の開発動向と方式については、映像情報メディア学会誌 1998年Vol.52,No.11(非特許文献1)に詳しく記されている。
【0004】
このOFDM方式は、ほぼ、伝送帯域一杯に、一定の周波数間隔で配置された数百本の搬送波を、一定のシンボル周期Ts’でデジタル変調して伝送する方式である。そのため、OFDM信号の波形はランダム雑音に類似した波形になる。その周波数分布も、図12に模式的に示す様に、伝送帯域幅全体に平坦に広がる形状になり、伝送帯域の利用効率が極めて高い方式である。しかしそのために、逆に受信アンテナの方向調整が非常に困難になる欠点がある。
【0005】
OFDM方式では、図12のように、ほぼ平均電力レベルに等しい平坦な分布になる。しかもOFDM方式の伝送システムでは、例えば各搬送波を変調する変調方式としてBPSKを採用し、符号化率1/2の畳み込み符号を用いて伝送すると、C/Nが約0dBでも受信可能である。この状態では、受信信号のレベルと雑音のレベルがほぼ等しくなるが、受信信号の電力と雑音の電力の和からなる伝送帯域内の信号の電力密度は、図13のように、その外側の雑音のみの電力レベルに対して3dB程度高くなる。従って、スペクトラムアナライザを用いる方法でも、最適な方向に受信アンテナを向ければ、何とか伝送信号の存在を確認することができる。
【0006】
しかし、受信アンテナの方向が大きくずれると、OFDM信号のレベルは、図14のように雑音の下に完全に埋もれ、目で見てもその存在すら確認できなくなる。送信場所が見える近距離の伝送であれば、感に頼って方向調整を実施することも可能である。しかし伝送距離が数キロを越えると、GPS等を利用して、送信場所と受信場所の正確な位置関係を測定しなければ、受信アンテナの方向調整は事実上不可能になる。
【0007】
これらの欠点を除去し、OFDM方式の受信装置において、C/Nが約0dB以下になる受信アンテナの方向調整の初期段階でも、受信信号のレベルを検出することができ、受信アンテナの方向調整可能とするため、ガード期間を含んだOFDM信号を伝送する伝送装システムにおいて、受信アンテナで受信したOFDM信号を、復調装置でOFDM信号のガード期間における相関演算を行い、相関演算の結果得られるガード相関信号に基づき受信アンテナの方向調整用信号を生成し、受信アンテナの方向調整を行うようにした伝送システムの技術が、特開2003−115787号公報(特許文献1参照)で提案されている。
【0008】
図7は従来の伝送システムの構成を示す図である。送信装置12の送信前処理回路13aに入力された情報符号は、誤り訂正符号への変換、64QAMへの変調等の前処理により、各搬送波の信号を表す周波数分布イメージの信号列に変換され、OFDM変調器のIFFT(逆フーリエ変換)回路13bで時間波形を表す信号列に変換される。
【0009】
OFDM方式は、一定の周波数間隔で配置された数百本の搬送波(キャリア)を、それぞれ一定のシンボル期間Ts'でデジタル変調して伝送する方式である。OFDM信号への変調には、通常、ポイント数M(例えば、M=2048)のIFFT(逆フーリエ変換)が用いられる。
【0010】
そしてOFDM変調器のガードインターバル挿入回路13cで、伝送路での遅延波に起因する受信側での符号間干渉の影響を少なくするため、送信されるOFDM信号にガードインターバルが付加される。 このガードインターバルを挿入された信号は、送信後処理回路13dにおいてさらに直交変調、D/A変換、アップコンバート等の後処理を施された後、送信アンテナ11から送信される。
【0011】
送信側から送出されるOFDM信号の1シンボルは、図8に模式的に示すように、IFFT回路13bで変調されたところの,MポイントのOFDM信号からなる有効シンボル期間Tsの信号(B+b)と、ガードインターバル挿入回路13cで挿入されたところの,1シンボルの最後のMg(例えばMg=128)ポイント期間Tg'の信号bを有効シンボル期間Ts前のガードインターバル期間Tgに複写したMgポイントのガードインターバル信号b'で構成される。なお、aとa'の部分、cとc'の部分についても同様である。
【0012】
送信されたOFDM伝送信号は、受信アンテナ21で受信され、ケーブルを通して復調装置22に送られる。復調装置22に入力された受信信号は、ダウンコンバータ23a、A/D変換回路23bでデジタルの複素ベクトル信号に変換された後、伝送された情報符号を復調する信号処理を実施するFFT(フーリエ変換)回路23c、伝送路応答等化回路23d、復調&復号化回路23e等からなる本線系の経路に入力されるとともに、別経路にあるガード相関算出回路24に入力される。
【0013】
図9は図7のガード相関算出回路24の回路構成の例を示す図である。ガード相関算出回路24に入力された複素ベクトル信号Zin(m)は2つに分岐され、その一方は遅延回路31に入力され、図10(a)の下段の信号の様に、有効シンボル期間Tsに相当するサンプリング数M(例えばM=2048)だけ遅延される。ここで、mはサンプル点の番号である。図7のA/D変換回路23bでは、送信装置12のIFFT13bで用いられるクロック周波数と同じ周波数のクロックを用いてサンプリングするので、有効シンボル期間Tsのサンプル点数は、IFFT13bのポイント数Mに等しくなる。
【0014】
この有効シンボル期間Tsだけ遅延された信号Zin(m−M)と、遅延前の信号Zin(m)は、複素乗算回路32でサンプル点毎に複素乗算され、
Zmul(m)=Zin(m)×Zin(m−M)* ・・・・・・・・・・・(1)
が算出される。
【0015】
この複素乗算信号の波形を、図10(b)に模式的に示す。ここで、同じ信号であるbとb'を乗算する範囲の値は|b(m)|2+j・0となり、図10の期間41のように、正の実数値になる。なお、OFDM信号は、ランダム雑音に近い波形であり、その振幅値である|b(m)|2の値もランダムに振動する。そのため、正確には、図10の期間41のI成分(実数成分)のレベルもランダムに振動する。しかし雑音の影響との混同を避けるため、ここでは直線を用いて模式的に示した。
【0016】
一方、図10の期間42の様に、C×B等、互いに異なる複素ベクトル信号を乗算する期間の複素乗算信号は、ランダムなままの波形(但し振幅が二乗された波形)になる。図9の複素乗算回路32から出力された複素ベクトル信号Zmul(m)は、相関演算回路33内のシフトレジスタに順次入力され、下記(2)式に示すように、各サンプル点毎に、シフトレジスタ内のMgサンプルの信号の加算演算、
Cg(m)=ΣZmul(m−k) (但し、k=0〜Mg−1) ・・・・(2)
を実施し、ガード相関信号Cgとして出力する。
【0017】
図10(c)は、このガード相関信号Cgの波形を模式的に示したものである。サンプル点43では、加算する信号がランダムに変化するMgサンプルの信号であるため、互いに打ち消し合いレベルが比較的小さくランダムな信号になる。これに対し、サンプル点44では加算する信号が全て同じ信号bとb'同士の乗算値|b(m)|2+j・0になる。そのためI成分では、Mg個の正の実数値が、互いに打ち消し合うことなく全て加算されるようになり、図10(c)の太い矢印で示す様に、大きな正の実数値の信号になる。また、Q成分では、加算すべき値が全て0に成るため、加算結果も0に成る。
【0018】
サンプル点45の様にサンプル点44から少しずれると、加算する正の実数値の数が減り、代わりに互いに打ち消し合うランダムな信号の数が増加する。そのため、I成分のレベルは徐々に小さくなる。また、Q成分の値は逆に徐々に増大し、ランダムに振動する信号になる。
【0019】
そのため、図7,図9のガード相関算出回路24から出力されるガード相関信号Cgは、図10(c)の様に、I成分はシンボル期間の境界点でピークを持つほぼ三角形の波形になり、Q成分は逆に境界点でほぼ0に成る波形になる。なお、以上の説明は、受信装置のLo周波数(局部発振周波数)の同期が引き込まれた場合にのみ成り立つ。受信アンテナの方向調整の初期段階のように同期が確立されていない時は、図10(c)のI成分とQ成分で構成される複素ベクトル信号は、任意の方向に回転された信号になる。
【0020】
図7のガード相関算出回路24から出力されたガード相関信号Cgは、受信信号のレベルを算出するために、受信レベル算出回路25に入力される。
【0021】
図11は、図7の受信レベル算出回路25の内部回路の例を示した図である。受信レベル算出回路25に入力されたガード相関信号Cgは、ピーク点検出回路51に入力され、ここで1シンボル期間Ts'毎に、ガード相関信号Cgの複素ベクトル信号としての絶対値の、そのシンボル期間内におけるピーク点が検出される。検出されたピーク位置を表すピーク位置信号とガード相関信号Cgは、I成分絶対値のピーク点値算出回路52とQ成分絶対値のピーク点値算出回路53に入力される。
【0022】
それぞれのピーク点値算出回路52,53で、検出したピーク点における,ガード相関信号CgのI成分の絶対値|maxIc|とQ成分の絶対値|maxQc|を算出した後、ピーク点値加算回路54でそれらの加算値|maxIc|+|maxQc|を算出する。これはガード相関信号Cgの複素ベクトル信号としての絶対値の近似値を算出する演算で、正確な絶対値max|Cg|=√(maxCg×maxCg*)を算出するのが好ましい。ここで、maxCgはガード相関信号Cgのピーク点における値(複素ベクトル信号)である。
【0023】
ところで、受信アンテナの方向が最適な方向に向けられているときは、受信信号のレベルが大きく、雑音を無視することができるので、OFDM信号のみからなる信号が得られると近似できる。そのため、ピーク値max|Cg|は、
max|Cg|=Σ|b(k)|2=Mg×{1/Mg×Σ|b(k)|2}
(但し、k=1〜Mg) ・・・・・・(3)
と近似できるが、Mgが充分大きな値になると、括弧内の式は、ガード相関算出回路24に入力されるOFDM信号の平均電力の算出式に近づく。通常、Mgの値は約128サンプルあるいはそれ以上の大きな正数であるため、ガード相関算出回路24に入力されるOFDM信号の平均電力をσ2とすると、ピーク値max|Cg|は、値Mg×σ2に近い値、すなわち平均電力σ2にほぼ比例した値になる。
【0024】
一方、受信アンテナの方向が誤った方向に向けられているときは、OFDM信号を殆ど受信できず、極端な場合、ガード相関算出回路24に入力される信号は、殆ど雑音のみになる。この場合、複素乗算するZin(m)とZin(m−M)の間には相関が無くなるため、Zmul(m)は、ガード相関算出回路24に入力される雑音の電力σn2にほぼ等しい実効値を持つ、ランダムな信号になる。そのため、Mgサンプル分のZmul(m)を加算すると、極性が逆の値同士が打ち消し合い、ガード相関信号Cg(m)は、ほぼσn2×√Mg程度の実効値を持つランダムな信号になる。
【0025】
また、受信アンテナの方向調整の途中では、無視できないレベルの雑音が混入したOFDM信号がガード相関算出回路24に入力されるが、この場合に算出されるピーク値max|Cg|は、入力されるOFDM信号成分の電力σ2に比例する値Mg×σ2を有する信号に、混入している雑音成分の電力σn2に比例した実効値σn2×√Mgを持つランダムな信号が加算された信号になる。従って、受信信号のCN比がσ/σnの場合、
SN比 (Mg×σ2)/(σn2×√Mg)=(σ/σn)2×√Mg
のOFDM信号のピーク値が得られる。
【0026】
例えばガードインターバルの長さMgが128サンプルの場合、受信信号のCN比が0dB=20・log(σ/σn)であっても、
20・log[(σ/σn)2×√Mg]
=2×20・log(σ/σn)+20・log(√Mg)=21dB
の良好なSN比の、OFDM信号のピーク値が得られる。
【0027】
図11の平均化回路55は、得られるピーク値のSN比をさらに上げるために、ピーク点値加算回路54からシンボル毎に出力されるピーク値max|Cg|の平均値を算出する回路である。具体的には、一定数のピーク値max|Cg|の加算平均を算出する回路またはシンボル毎に入力されるピーク値max|Cg|の帯域を制限するLPF(ローパスフィルタ)を用いれば良い。例えば、64シンボルのピーク値max|Cg|の加算平均を算出するだけで、SN比をさらに、10・log(64)=18dB改善することができる。この平均化の演算には、この他、上記した値|b(m)|2のランダムな振動の影響で発生する、ピーク値のランダムな変動を低減する効果も得られる。
【0028】
ところで、以上の演算で算出されるピーク値max|Cg|は、ガード相関算出回路24に入力される信号Zinに含まれるOFDM信号成分の電力σ2に比例する値であり、必ずしも受信した信号の電力レベルPsに比例しない。通常、受信装置では、受信条件で大きく変化する受信信号のレベルをAGC回路でほぼ一定レベルの信号に変換してから、各種の信号処理を実施する。ガード相関算出回路24に入力される信号Zinの電力も、常にほぼ一定に保たれる。
【0029】
従って、受信されるOFDM信号のレベルが大きい時は、ガード相関算出回路24に入力されるOFDM信号の電力レベルσ2がほぼ一定になるように制御されてしまい、受信レベル算出回路25で算出されるピーク値max|Cg|の大きさも、ほぼ一定になる。そのため通常は、算出したピーク値max|Cg|から、受信されたOFDM信号の正確な電力レベルPsを検出することはできない。しかし、実際にAGC回路で制御される信号は、受信された電力レベルPsのOFDM信号と混入された電力レベルPnの雑音からなる信号全体の電力レベルPtot=Ps+Pnである。そのため、ガード相関算出回路24に入力される信号Zinに含まれるOFDM信号の電力レベルは、正確には、
σ2=Ps/Ptot=(Ps/Pn)×1/(Ps/Pn+1) となる。
【0030】
一方、受信アンテナの方向調整において、受信信号のレベルの検出が最も重要になるのは、受信アンテナの方向がずれ、受信されるOFDM信号の電力レベルPsが減少し、受信装置のヘッドAMPで発生する雑音の電力レベルPnの方が大きくなった時である。このように、OFDM信号の電力レベルPsより雑音の電力レベルPnの方が充分大きくなると、Ps/Pn+1≒1の近似が成り立つ様になり、ガード相関算出回路24に入力されるOFDM信号の電力レベルは、σ2≒Ps/Pnと近似できるようになる。ここで、ヘッドAMPで発生する雑音の電力レベルPnは、受信装置の回路の性能で決まる一定値なので、結局、ガード相関算出回路24に入力されるOFDM信号の電力レベルσ2は、受信されたOFDM信号の電力レベルPsにほぼ比例した値になる。
【0031】
従って、受信レベル算出回路25で算出したピーク値max|Cg|も、受信されたOFDM信号の電力レベルPsにほぼ比例した値になり、そのレベルを検出することができる。しかも、上記した様に、ピーク値max|Cg|は、約21dB+18dB=39dBもの高SN比の値である。そのため、受信アンテナの方向が誤った方向に向けられ、受信されるOFDM信号の電力レベルが、図14の様に雑音レベルよりさらに低下しても、その信号の存在だけでなく、そのレベル変化をも検出することができる。
【0032】
そこで、受信レベル算出回路25からは、このようにして算出され平均化されたピーク値max|Cg|を、受信レベル信号として出力する。受信レベル算出回路25から出力された受信レベル信号は方向調整信号発生回路26に入力され、受信アンテナ21の調整に適した信号に変換され、受信レベルを表示するメータを用い受信レベルを測定しながら受信アンテナの方向を調整する場合は、受信レベルに応じた明るさ、色または表示バーの長さ等のメータ表示値を制御する信号を、方向調整信号として出力するようにする。
【0033】
このように、図7のOFDM方式の復調装置を用いると、受信されるOFDM信号のCN比が0dB以下になり、スペクトラムアナライザを用いる方法では、OFDM信号の存在すら検出できないような受信アンテナの方向調整の初期段階においても、OFDM信号の存在を検出できるようになるだけでなく、受信されたOFDM信号の電力レベルとその変化量を、高SN比で測定することができるようになる。そのため、受信アンテナの方向を変えながら、受信されるOFDM信号レベルが最大になる方向を探すことができるようになり、算出した受信レベル信号を用いて、容易に受信アンテナの方向調整ができる。
【0034】
【特許文献1】特開2003−115787号公報
【非特許文献1】映像情報メディア学会誌 1998年Vol.52,No.11
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
受信アンテナの方向調整をする初期段階においては、受信アンテナの方向が最適な方向からずれているため、受信信号のレベルが低くなり、受信アンテナの方向が最適な方向から大きくずれていると、受信信号のレベルが非常に低くなる。そのため、受信アンテナはより僅かな受信電界においても、反応があることが望まれる。
【0036】
本発明の目的は、より僅かな受信電界においても受信アンテナの方向調整を可能とする伝送システムおよびそれに用いる送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明は上記目的を達成するため、ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムであって、前記送信装置に、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号を有効シンボル期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする伝送システムである。
【0038】
また、本発明は、ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムであって、前記送信装置に、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号と有効シンボル期間中の前記ガードインターバル期間の作成に用いた期間の信号とをこれら以外の期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする伝送システムである。
【0039】
また、本発明は、ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムにおける前記送信装置であって、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号を有効シンボル期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする送信装置である。
【0040】
また、本発明は、ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムにおける前記送信装置であって、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号と有効シンボル期間中の前記ガードインターバル期間の作成に用いた期間の信号とをこれら以外の期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする送信装置である。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、より僅かな受信電界においても受信アンテナの方向調整を可能とする伝送システムおよびそれに用いる送信装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明に係る実施の形態について、以下、図を用いて説明する。
【0043】
図1は本発明による伝送システムにおける実施の形態の構成を示す図である。図2は図1の主要部であるOFDM変調器と振幅変換部の構成を示す図である。図3は図2における振幅変調部の内部回路を示す図である。図4は本発明によるOFDM信号の一例を説明する図である。図5は本発明によるOFDM信号の他の例を説明する図である。
【0044】
図1において、図7の従来の構成と同一個所に同一符号を付けた。送信装置12の送信前処理回路13aに入力された情報符号は、誤り訂正符号への変換、64QAMへの変調等の前処理により、各搬送波の信号を表す周波数分布イメージの信号列に変換され、OFDM変調器61に入力される。
【0045】
OFDM変調器61に入力された周波数分布イメージの信号列は内蔵するIFFT回路により時間波形を示す信号列に変換され、且つ内蔵するガードインターバル挿入回路により、1シンボルが、図4(a),図5(a)に示すような、OFDM信号からなる有効シンボル期間Tsの信号(B+b)と、有効シンボル期間Ts中の最後の期間Tg'の信号bを有効シンボル期間Ts前のガードインターバル期間Tgに複写したガードインターバル信号b'とからなる振幅一定の信号列として出力される。またOFDM変調器61から、図4(b),図5(b)に示すように、シンボル周期のタイミングを示す時刻tn0(n=0,1,…)毎にレベルHとなるシンボルタイミング信号が出力される。
【0046】
OFDM変調器61から出力された振幅一定のOFDM信号は、図1,図2に示す振幅変換部62に入力されるとともに、OFDM変調器61から出力されたシンボルタイミング信号も図1,図2に示す振幅変換部62に入力される。
【0047】
図1,図2に示す振幅変換部62は、図3に示すように、乗算器62−1と制御部62−2からなり、OFDM変調器61から出力された振幅一定のOFDM信号は乗算器62−1に入力され、OFDM変調器61から出力されたシンボルタイミング信号は制御部62−2に入力される。
【0048】
制御部62−2は、図4(c−1)で示す振幅制御信号、または図5(c−2)で示す振幅制御信号を生成して出力する。図4(c−1)で示す振幅制御信号は、ガードインターバル期間Tgであるtn0〜tn1(n=0,1,…)の期間をレベルH、有効シンボル期間Tsであるtn1〜t(n+1)0の期間をレベルLとする信号である。図5(c−2)で示す振幅制御信号は、ガードインターバル期間Tgであるtn0〜tn1の期間をレベルH、有効シンボル期間Ts中でガードインターバル期間Tgと関係ない期間Ts'をレベルL、有効シンボル期間Ts中でガードインターバル期間Tgの信号の作成に用いた期間Tg'をレベルHとする信号である。
【0049】
乗算器62−1は、振幅一定のOFDM信号を、図4(c−1)で示す振幅制御信号または図5(c−2)で示す振幅制御信号により振幅を可変する。
【0050】
振幅制御信号が図4(c−1)の場合、乗算器62−1は、振幅一定のOFDM信号を、図4(d−1)に示すように、相関処理の対象であるガードインターバル期間Tgの信号b'の振幅を増大し、この代わりに、有効シンボル期間Tsの信号(B+b)の振幅を減衰することで、トータルの送信パワーを同じにする。
【0051】
具体的には、乗算器62−1は、振幅制御信号のレベルHの時にOFDM信号の振幅をA倍とし、振幅制御信号のレベルLの時にOFDM信号の振幅をB倍とし、且つ
A(tn0〜tn1)+B(tn1〜t(n+1)0)=1
とする。
【0052】
一方、振幅制御信号が図5(c−2の場合、乗算器62−1は、振幅一定のOFDM信号を、図5(d−2)に示すように、相関処理の対象であるガードインターバル期間Tgの信号b'の振幅と、有効シンボル期間Ts中でガードインターバル期間Tgの信号の作成に用いた期間Tg'の信号bの振幅とを増大し、この代わりに、有効シンボル期間Ts中のガードインターバル期間とTgと関係のない期間Ts'の信号Bの振幅を減衰することで、トータルの送信パワーを同じにする。
【0053】
具体的には、乗算器62−1は、振幅制御信号のレベルHの時にOFDM信号の振幅をA倍とし、振幅制御信号のレベルLの時にOFDM信号の振幅をC倍とし、且つ
A(tn0〜tn1)+C(tn1〜tn2)+A(tn2〜t(n+1)0)=1
とする。
【0054】
振幅変換部62で振幅制限された図4(d−1)または図5(d−2)のOFDM信号は、図1の送信後処理回路13dにおいてさらに直交変調、D/A変換、アップコンバート等の後処理を施された後、送信アンテナ11から送信される。
【0055】
乗算器62−1における,全体が1となる比率配分は、本実施の形態では、振幅変換部62で実施しているが、その後の送信後処理回路13dで行っても良い。
【0056】
また、振幅制御の無い状態を、1以下としておき、上記振幅制御をおこなっている際の、総和をジャスト1とする設定としても良い。またさらには、振幅制御の無い状態を、1としておき、上記振幅制御をおこなっている際の、総和を1+αとする設定としても良い。
【0057】
今までのOFDM信号は、ガードインターバルの信号が1つのシンボル期間の一部分(有効シンボル期間の時間軸上の片側)に配置された例を示したが、ガードインターバルの信号が、有効シンボルの時間軸上の両側に配置されたOFDM信号であっても良い。
【0058】
図6は図4のOFDM信号の場合のシミュレーション結果を示す図である。このシミュレーションは、図4において、OFDM信号の有効シンボル期間Tsの信号(B+b)の振幅を固定として1とし、相関処理の対象であるガードインターバル期間Tgの信号b'の振幅Gを、G=1からG=6.0までG=0.5づつ増大させ、その各々の振幅Gにおいて、C/N(信号/雑音)を可変した場合の電界強度を示す特性図である。振幅Gが大きくなるにつれて、C/N(信号/雑音)を可変した場合の電界強度特性の変化が大きくなっている。したがって本実施の形態によれば、より僅かな受信電界においても受信アンテナの方向調整を可能とする伝送システムおよびそれに用いる送信装置を得ることができる。
【0059】
このOFDM信号を、図4(d−1)ではなく図5(d−2)に示すように、相関処理の対象であるガードインターバル期間Tgの信号b'の振幅と、有効シンボル期間Ts中でガードインターバル期間Tgの信号の作成に用いた期間Tg'の信号bの振幅とを増大させれば、振幅Gが大きくなるにつれて、C/N(信号/雑音)を可変した場合の電界強度特性の変化がさらに大きくなる。したがって本実施の形態によれば、さらにより僅かな受信電界においても受信アンテナの方向調整を可能とする伝送システムおよびそれに用いる送信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明による伝送システムにおける実施の形態の構成を示す図である。
【図2】図1の主要部であるOFDM変調器と振幅変換部の構成を示す図である。
【図3】図2における振幅変調部の内部回路を示す図である。
【図4】本発明によるOFDM信号の一例を説明する図である。
【図5】本発明によるOFDM信号の他の例を説明する図である。
【図6】図4のOFDM信号の場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図7】従来の伝送システムの構成を示す図である。
【図8】送信されるOFDM信号の構成の説明を示す図である。
【図9】図7のガード相関算出回路の回路構成の例を示す図である。
【図10】図7のガード相関算出回路で実施する演算を説明する図である。
【図11】図7の受信レベル算出回路の内部回路の例を示した図である。
【図12】OFDM信号の周波数分布を説明する図である。
【図13】OFDM信号を受信している時の周波数分布を説明する図である。
【図14】受信アンテナの方向調整時の周波数分布を説明する図である。
【符号の説明】
【0061】
11:送信アンテナ、12:送信装置、13a:送信前処理回路、13b:IFFT回路、13c:ガードインターバル挿入回路、13d:送信後処理回路、21:受信アンテナ、22:復調装置、23a:ダウンコンバータ、23b:A/D変換回路、23c:FFT回路、23d:伝送路応答等化回路、23e:復調&復号化回路、24:ガード相関算出回路、25:受信レベル算出回路、26:方向調整信号発生回路、31:遅延回路、32:複素乗算回路、33:相関演算回路、51:ピーク点検出回路、52:I成分絶対値のピーク点値算出回路、53:Q成分絶対値のピーク点値算出回路、54:ピーク点値加算回路、55:平均化回路、61:OFDM変調器、62:振幅変換部、62−1:乗算器、62−2:制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は直交周波数分割多重変調方式(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:以下、OFDM方式と記す)を用いた伝送システムに関し、特に受信アンテナの方向調整に適した伝送システムおよびそれに用いる送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アナログFPU(Field Pickup Unit)の受信アンテナの方向を受信レベルが最大になる最良な方向に調整する際は、受信アンテナから出力される受信信号をスペクトラムアナライザに入力し、受信アンテナの方向を、上下左右に微妙に動かしながら、スペクトラムアナライザに鋭いピークとして表示される搬送波のレベルを測定し、ピークレベルが最大になる方向を探索して調整する方法が取られてきた。
【0003】
ところで近年、無線装置の分野では、マルチパスフェージングに強い変調方式としてOFDM方式が脚光を集め、欧州や日本を初めとする各国の次世代テレビ放送、FPU、無線LAN等の分野で多くの応用研究が進められている。
この内、UHF帯の地上デジタル放送の開発動向と方式については、映像情報メディア学会誌 1998年Vol.52,No.11(非特許文献1)に詳しく記されている。
【0004】
このOFDM方式は、ほぼ、伝送帯域一杯に、一定の周波数間隔で配置された数百本の搬送波を、一定のシンボル周期Ts’でデジタル変調して伝送する方式である。そのため、OFDM信号の波形はランダム雑音に類似した波形になる。その周波数分布も、図12に模式的に示す様に、伝送帯域幅全体に平坦に広がる形状になり、伝送帯域の利用効率が極めて高い方式である。しかしそのために、逆に受信アンテナの方向調整が非常に困難になる欠点がある。
【0005】
OFDM方式では、図12のように、ほぼ平均電力レベルに等しい平坦な分布になる。しかもOFDM方式の伝送システムでは、例えば各搬送波を変調する変調方式としてBPSKを採用し、符号化率1/2の畳み込み符号を用いて伝送すると、C/Nが約0dBでも受信可能である。この状態では、受信信号のレベルと雑音のレベルがほぼ等しくなるが、受信信号の電力と雑音の電力の和からなる伝送帯域内の信号の電力密度は、図13のように、その外側の雑音のみの電力レベルに対して3dB程度高くなる。従って、スペクトラムアナライザを用いる方法でも、最適な方向に受信アンテナを向ければ、何とか伝送信号の存在を確認することができる。
【0006】
しかし、受信アンテナの方向が大きくずれると、OFDM信号のレベルは、図14のように雑音の下に完全に埋もれ、目で見てもその存在すら確認できなくなる。送信場所が見える近距離の伝送であれば、感に頼って方向調整を実施することも可能である。しかし伝送距離が数キロを越えると、GPS等を利用して、送信場所と受信場所の正確な位置関係を測定しなければ、受信アンテナの方向調整は事実上不可能になる。
【0007】
これらの欠点を除去し、OFDM方式の受信装置において、C/Nが約0dB以下になる受信アンテナの方向調整の初期段階でも、受信信号のレベルを検出することができ、受信アンテナの方向調整可能とするため、ガード期間を含んだOFDM信号を伝送する伝送装システムにおいて、受信アンテナで受信したOFDM信号を、復調装置でOFDM信号のガード期間における相関演算を行い、相関演算の結果得られるガード相関信号に基づき受信アンテナの方向調整用信号を生成し、受信アンテナの方向調整を行うようにした伝送システムの技術が、特開2003−115787号公報(特許文献1参照)で提案されている。
【0008】
図7は従来の伝送システムの構成を示す図である。送信装置12の送信前処理回路13aに入力された情報符号は、誤り訂正符号への変換、64QAMへの変調等の前処理により、各搬送波の信号を表す周波数分布イメージの信号列に変換され、OFDM変調器のIFFT(逆フーリエ変換)回路13bで時間波形を表す信号列に変換される。
【0009】
OFDM方式は、一定の周波数間隔で配置された数百本の搬送波(キャリア)を、それぞれ一定のシンボル期間Ts'でデジタル変調して伝送する方式である。OFDM信号への変調には、通常、ポイント数M(例えば、M=2048)のIFFT(逆フーリエ変換)が用いられる。
【0010】
そしてOFDM変調器のガードインターバル挿入回路13cで、伝送路での遅延波に起因する受信側での符号間干渉の影響を少なくするため、送信されるOFDM信号にガードインターバルが付加される。 このガードインターバルを挿入された信号は、送信後処理回路13dにおいてさらに直交変調、D/A変換、アップコンバート等の後処理を施された後、送信アンテナ11から送信される。
【0011】
送信側から送出されるOFDM信号の1シンボルは、図8に模式的に示すように、IFFT回路13bで変調されたところの,MポイントのOFDM信号からなる有効シンボル期間Tsの信号(B+b)と、ガードインターバル挿入回路13cで挿入されたところの,1シンボルの最後のMg(例えばMg=128)ポイント期間Tg'の信号bを有効シンボル期間Ts前のガードインターバル期間Tgに複写したMgポイントのガードインターバル信号b'で構成される。なお、aとa'の部分、cとc'の部分についても同様である。
【0012】
送信されたOFDM伝送信号は、受信アンテナ21で受信され、ケーブルを通して復調装置22に送られる。復調装置22に入力された受信信号は、ダウンコンバータ23a、A/D変換回路23bでデジタルの複素ベクトル信号に変換された後、伝送された情報符号を復調する信号処理を実施するFFT(フーリエ変換)回路23c、伝送路応答等化回路23d、復調&復号化回路23e等からなる本線系の経路に入力されるとともに、別経路にあるガード相関算出回路24に入力される。
【0013】
図9は図7のガード相関算出回路24の回路構成の例を示す図である。ガード相関算出回路24に入力された複素ベクトル信号Zin(m)は2つに分岐され、その一方は遅延回路31に入力され、図10(a)の下段の信号の様に、有効シンボル期間Tsに相当するサンプリング数M(例えばM=2048)だけ遅延される。ここで、mはサンプル点の番号である。図7のA/D変換回路23bでは、送信装置12のIFFT13bで用いられるクロック周波数と同じ周波数のクロックを用いてサンプリングするので、有効シンボル期間Tsのサンプル点数は、IFFT13bのポイント数Mに等しくなる。
【0014】
この有効シンボル期間Tsだけ遅延された信号Zin(m−M)と、遅延前の信号Zin(m)は、複素乗算回路32でサンプル点毎に複素乗算され、
Zmul(m)=Zin(m)×Zin(m−M)* ・・・・・・・・・・・(1)
が算出される。
【0015】
この複素乗算信号の波形を、図10(b)に模式的に示す。ここで、同じ信号であるbとb'を乗算する範囲の値は|b(m)|2+j・0となり、図10の期間41のように、正の実数値になる。なお、OFDM信号は、ランダム雑音に近い波形であり、その振幅値である|b(m)|2の値もランダムに振動する。そのため、正確には、図10の期間41のI成分(実数成分)のレベルもランダムに振動する。しかし雑音の影響との混同を避けるため、ここでは直線を用いて模式的に示した。
【0016】
一方、図10の期間42の様に、C×B等、互いに異なる複素ベクトル信号を乗算する期間の複素乗算信号は、ランダムなままの波形(但し振幅が二乗された波形)になる。図9の複素乗算回路32から出力された複素ベクトル信号Zmul(m)は、相関演算回路33内のシフトレジスタに順次入力され、下記(2)式に示すように、各サンプル点毎に、シフトレジスタ内のMgサンプルの信号の加算演算、
Cg(m)=ΣZmul(m−k) (但し、k=0〜Mg−1) ・・・・(2)
を実施し、ガード相関信号Cgとして出力する。
【0017】
図10(c)は、このガード相関信号Cgの波形を模式的に示したものである。サンプル点43では、加算する信号がランダムに変化するMgサンプルの信号であるため、互いに打ち消し合いレベルが比較的小さくランダムな信号になる。これに対し、サンプル点44では加算する信号が全て同じ信号bとb'同士の乗算値|b(m)|2+j・0になる。そのためI成分では、Mg個の正の実数値が、互いに打ち消し合うことなく全て加算されるようになり、図10(c)の太い矢印で示す様に、大きな正の実数値の信号になる。また、Q成分では、加算すべき値が全て0に成るため、加算結果も0に成る。
【0018】
サンプル点45の様にサンプル点44から少しずれると、加算する正の実数値の数が減り、代わりに互いに打ち消し合うランダムな信号の数が増加する。そのため、I成分のレベルは徐々に小さくなる。また、Q成分の値は逆に徐々に増大し、ランダムに振動する信号になる。
【0019】
そのため、図7,図9のガード相関算出回路24から出力されるガード相関信号Cgは、図10(c)の様に、I成分はシンボル期間の境界点でピークを持つほぼ三角形の波形になり、Q成分は逆に境界点でほぼ0に成る波形になる。なお、以上の説明は、受信装置のLo周波数(局部発振周波数)の同期が引き込まれた場合にのみ成り立つ。受信アンテナの方向調整の初期段階のように同期が確立されていない時は、図10(c)のI成分とQ成分で構成される複素ベクトル信号は、任意の方向に回転された信号になる。
【0020】
図7のガード相関算出回路24から出力されたガード相関信号Cgは、受信信号のレベルを算出するために、受信レベル算出回路25に入力される。
【0021】
図11は、図7の受信レベル算出回路25の内部回路の例を示した図である。受信レベル算出回路25に入力されたガード相関信号Cgは、ピーク点検出回路51に入力され、ここで1シンボル期間Ts'毎に、ガード相関信号Cgの複素ベクトル信号としての絶対値の、そのシンボル期間内におけるピーク点が検出される。検出されたピーク位置を表すピーク位置信号とガード相関信号Cgは、I成分絶対値のピーク点値算出回路52とQ成分絶対値のピーク点値算出回路53に入力される。
【0022】
それぞれのピーク点値算出回路52,53で、検出したピーク点における,ガード相関信号CgのI成分の絶対値|maxIc|とQ成分の絶対値|maxQc|を算出した後、ピーク点値加算回路54でそれらの加算値|maxIc|+|maxQc|を算出する。これはガード相関信号Cgの複素ベクトル信号としての絶対値の近似値を算出する演算で、正確な絶対値max|Cg|=√(maxCg×maxCg*)を算出するのが好ましい。ここで、maxCgはガード相関信号Cgのピーク点における値(複素ベクトル信号)である。
【0023】
ところで、受信アンテナの方向が最適な方向に向けられているときは、受信信号のレベルが大きく、雑音を無視することができるので、OFDM信号のみからなる信号が得られると近似できる。そのため、ピーク値max|Cg|は、
max|Cg|=Σ|b(k)|2=Mg×{1/Mg×Σ|b(k)|2}
(但し、k=1〜Mg) ・・・・・・(3)
と近似できるが、Mgが充分大きな値になると、括弧内の式は、ガード相関算出回路24に入力されるOFDM信号の平均電力の算出式に近づく。通常、Mgの値は約128サンプルあるいはそれ以上の大きな正数であるため、ガード相関算出回路24に入力されるOFDM信号の平均電力をσ2とすると、ピーク値max|Cg|は、値Mg×σ2に近い値、すなわち平均電力σ2にほぼ比例した値になる。
【0024】
一方、受信アンテナの方向が誤った方向に向けられているときは、OFDM信号を殆ど受信できず、極端な場合、ガード相関算出回路24に入力される信号は、殆ど雑音のみになる。この場合、複素乗算するZin(m)とZin(m−M)の間には相関が無くなるため、Zmul(m)は、ガード相関算出回路24に入力される雑音の電力σn2にほぼ等しい実効値を持つ、ランダムな信号になる。そのため、Mgサンプル分のZmul(m)を加算すると、極性が逆の値同士が打ち消し合い、ガード相関信号Cg(m)は、ほぼσn2×√Mg程度の実効値を持つランダムな信号になる。
【0025】
また、受信アンテナの方向調整の途中では、無視できないレベルの雑音が混入したOFDM信号がガード相関算出回路24に入力されるが、この場合に算出されるピーク値max|Cg|は、入力されるOFDM信号成分の電力σ2に比例する値Mg×σ2を有する信号に、混入している雑音成分の電力σn2に比例した実効値σn2×√Mgを持つランダムな信号が加算された信号になる。従って、受信信号のCN比がσ/σnの場合、
SN比 (Mg×σ2)/(σn2×√Mg)=(σ/σn)2×√Mg
のOFDM信号のピーク値が得られる。
【0026】
例えばガードインターバルの長さMgが128サンプルの場合、受信信号のCN比が0dB=20・log(σ/σn)であっても、
20・log[(σ/σn)2×√Mg]
=2×20・log(σ/σn)+20・log(√Mg)=21dB
の良好なSN比の、OFDM信号のピーク値が得られる。
【0027】
図11の平均化回路55は、得られるピーク値のSN比をさらに上げるために、ピーク点値加算回路54からシンボル毎に出力されるピーク値max|Cg|の平均値を算出する回路である。具体的には、一定数のピーク値max|Cg|の加算平均を算出する回路またはシンボル毎に入力されるピーク値max|Cg|の帯域を制限するLPF(ローパスフィルタ)を用いれば良い。例えば、64シンボルのピーク値max|Cg|の加算平均を算出するだけで、SN比をさらに、10・log(64)=18dB改善することができる。この平均化の演算には、この他、上記した値|b(m)|2のランダムな振動の影響で発生する、ピーク値のランダムな変動を低減する効果も得られる。
【0028】
ところで、以上の演算で算出されるピーク値max|Cg|は、ガード相関算出回路24に入力される信号Zinに含まれるOFDM信号成分の電力σ2に比例する値であり、必ずしも受信した信号の電力レベルPsに比例しない。通常、受信装置では、受信条件で大きく変化する受信信号のレベルをAGC回路でほぼ一定レベルの信号に変換してから、各種の信号処理を実施する。ガード相関算出回路24に入力される信号Zinの電力も、常にほぼ一定に保たれる。
【0029】
従って、受信されるOFDM信号のレベルが大きい時は、ガード相関算出回路24に入力されるOFDM信号の電力レベルσ2がほぼ一定になるように制御されてしまい、受信レベル算出回路25で算出されるピーク値max|Cg|の大きさも、ほぼ一定になる。そのため通常は、算出したピーク値max|Cg|から、受信されたOFDM信号の正確な電力レベルPsを検出することはできない。しかし、実際にAGC回路で制御される信号は、受信された電力レベルPsのOFDM信号と混入された電力レベルPnの雑音からなる信号全体の電力レベルPtot=Ps+Pnである。そのため、ガード相関算出回路24に入力される信号Zinに含まれるOFDM信号の電力レベルは、正確には、
σ2=Ps/Ptot=(Ps/Pn)×1/(Ps/Pn+1) となる。
【0030】
一方、受信アンテナの方向調整において、受信信号のレベルの検出が最も重要になるのは、受信アンテナの方向がずれ、受信されるOFDM信号の電力レベルPsが減少し、受信装置のヘッドAMPで発生する雑音の電力レベルPnの方が大きくなった時である。このように、OFDM信号の電力レベルPsより雑音の電力レベルPnの方が充分大きくなると、Ps/Pn+1≒1の近似が成り立つ様になり、ガード相関算出回路24に入力されるOFDM信号の電力レベルは、σ2≒Ps/Pnと近似できるようになる。ここで、ヘッドAMPで発生する雑音の電力レベルPnは、受信装置の回路の性能で決まる一定値なので、結局、ガード相関算出回路24に入力されるOFDM信号の電力レベルσ2は、受信されたOFDM信号の電力レベルPsにほぼ比例した値になる。
【0031】
従って、受信レベル算出回路25で算出したピーク値max|Cg|も、受信されたOFDM信号の電力レベルPsにほぼ比例した値になり、そのレベルを検出することができる。しかも、上記した様に、ピーク値max|Cg|は、約21dB+18dB=39dBもの高SN比の値である。そのため、受信アンテナの方向が誤った方向に向けられ、受信されるOFDM信号の電力レベルが、図14の様に雑音レベルよりさらに低下しても、その信号の存在だけでなく、そのレベル変化をも検出することができる。
【0032】
そこで、受信レベル算出回路25からは、このようにして算出され平均化されたピーク値max|Cg|を、受信レベル信号として出力する。受信レベル算出回路25から出力された受信レベル信号は方向調整信号発生回路26に入力され、受信アンテナ21の調整に適した信号に変換され、受信レベルを表示するメータを用い受信レベルを測定しながら受信アンテナの方向を調整する場合は、受信レベルに応じた明るさ、色または表示バーの長さ等のメータ表示値を制御する信号を、方向調整信号として出力するようにする。
【0033】
このように、図7のOFDM方式の復調装置を用いると、受信されるOFDM信号のCN比が0dB以下になり、スペクトラムアナライザを用いる方法では、OFDM信号の存在すら検出できないような受信アンテナの方向調整の初期段階においても、OFDM信号の存在を検出できるようになるだけでなく、受信されたOFDM信号の電力レベルとその変化量を、高SN比で測定することができるようになる。そのため、受信アンテナの方向を変えながら、受信されるOFDM信号レベルが最大になる方向を探すことができるようになり、算出した受信レベル信号を用いて、容易に受信アンテナの方向調整ができる。
【0034】
【特許文献1】特開2003−115787号公報
【非特許文献1】映像情報メディア学会誌 1998年Vol.52,No.11
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
受信アンテナの方向調整をする初期段階においては、受信アンテナの方向が最適な方向からずれているため、受信信号のレベルが低くなり、受信アンテナの方向が最適な方向から大きくずれていると、受信信号のレベルが非常に低くなる。そのため、受信アンテナはより僅かな受信電界においても、反応があることが望まれる。
【0036】
本発明の目的は、より僅かな受信電界においても受信アンテナの方向調整を可能とする伝送システムおよびそれに用いる送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明は上記目的を達成するため、ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムであって、前記送信装置に、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号を有効シンボル期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする伝送システムである。
【0038】
また、本発明は、ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムであって、前記送信装置に、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号と有効シンボル期間中の前記ガードインターバル期間の作成に用いた期間の信号とをこれら以外の期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする伝送システムである。
【0039】
また、本発明は、ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムにおける前記送信装置であって、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号を有効シンボル期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする送信装置である。
【0040】
また、本発明は、ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムにおける前記送信装置であって、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号と有効シンボル期間中の前記ガードインターバル期間の作成に用いた期間の信号とをこれら以外の期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする送信装置である。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、より僅かな受信電界においても受信アンテナの方向調整を可能とする伝送システムおよびそれに用いる送信装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明に係る実施の形態について、以下、図を用いて説明する。
【0043】
図1は本発明による伝送システムにおける実施の形態の構成を示す図である。図2は図1の主要部であるOFDM変調器と振幅変換部の構成を示す図である。図3は図2における振幅変調部の内部回路を示す図である。図4は本発明によるOFDM信号の一例を説明する図である。図5は本発明によるOFDM信号の他の例を説明する図である。
【0044】
図1において、図7の従来の構成と同一個所に同一符号を付けた。送信装置12の送信前処理回路13aに入力された情報符号は、誤り訂正符号への変換、64QAMへの変調等の前処理により、各搬送波の信号を表す周波数分布イメージの信号列に変換され、OFDM変調器61に入力される。
【0045】
OFDM変調器61に入力された周波数分布イメージの信号列は内蔵するIFFT回路により時間波形を示す信号列に変換され、且つ内蔵するガードインターバル挿入回路により、1シンボルが、図4(a),図5(a)に示すような、OFDM信号からなる有効シンボル期間Tsの信号(B+b)と、有効シンボル期間Ts中の最後の期間Tg'の信号bを有効シンボル期間Ts前のガードインターバル期間Tgに複写したガードインターバル信号b'とからなる振幅一定の信号列として出力される。またOFDM変調器61から、図4(b),図5(b)に示すように、シンボル周期のタイミングを示す時刻tn0(n=0,1,…)毎にレベルHとなるシンボルタイミング信号が出力される。
【0046】
OFDM変調器61から出力された振幅一定のOFDM信号は、図1,図2に示す振幅変換部62に入力されるとともに、OFDM変調器61から出力されたシンボルタイミング信号も図1,図2に示す振幅変換部62に入力される。
【0047】
図1,図2に示す振幅変換部62は、図3に示すように、乗算器62−1と制御部62−2からなり、OFDM変調器61から出力された振幅一定のOFDM信号は乗算器62−1に入力され、OFDM変調器61から出力されたシンボルタイミング信号は制御部62−2に入力される。
【0048】
制御部62−2は、図4(c−1)で示す振幅制御信号、または図5(c−2)で示す振幅制御信号を生成して出力する。図4(c−1)で示す振幅制御信号は、ガードインターバル期間Tgであるtn0〜tn1(n=0,1,…)の期間をレベルH、有効シンボル期間Tsであるtn1〜t(n+1)0の期間をレベルLとする信号である。図5(c−2)で示す振幅制御信号は、ガードインターバル期間Tgであるtn0〜tn1の期間をレベルH、有効シンボル期間Ts中でガードインターバル期間Tgと関係ない期間Ts'をレベルL、有効シンボル期間Ts中でガードインターバル期間Tgの信号の作成に用いた期間Tg'をレベルHとする信号である。
【0049】
乗算器62−1は、振幅一定のOFDM信号を、図4(c−1)で示す振幅制御信号または図5(c−2)で示す振幅制御信号により振幅を可変する。
【0050】
振幅制御信号が図4(c−1)の場合、乗算器62−1は、振幅一定のOFDM信号を、図4(d−1)に示すように、相関処理の対象であるガードインターバル期間Tgの信号b'の振幅を増大し、この代わりに、有効シンボル期間Tsの信号(B+b)の振幅を減衰することで、トータルの送信パワーを同じにする。
【0051】
具体的には、乗算器62−1は、振幅制御信号のレベルHの時にOFDM信号の振幅をA倍とし、振幅制御信号のレベルLの時にOFDM信号の振幅をB倍とし、且つ
A(tn0〜tn1)+B(tn1〜t(n+1)0)=1
とする。
【0052】
一方、振幅制御信号が図5(c−2の場合、乗算器62−1は、振幅一定のOFDM信号を、図5(d−2)に示すように、相関処理の対象であるガードインターバル期間Tgの信号b'の振幅と、有効シンボル期間Ts中でガードインターバル期間Tgの信号の作成に用いた期間Tg'の信号bの振幅とを増大し、この代わりに、有効シンボル期間Ts中のガードインターバル期間とTgと関係のない期間Ts'の信号Bの振幅を減衰することで、トータルの送信パワーを同じにする。
【0053】
具体的には、乗算器62−1は、振幅制御信号のレベルHの時にOFDM信号の振幅をA倍とし、振幅制御信号のレベルLの時にOFDM信号の振幅をC倍とし、且つ
A(tn0〜tn1)+C(tn1〜tn2)+A(tn2〜t(n+1)0)=1
とする。
【0054】
振幅変換部62で振幅制限された図4(d−1)または図5(d−2)のOFDM信号は、図1の送信後処理回路13dにおいてさらに直交変調、D/A変換、アップコンバート等の後処理を施された後、送信アンテナ11から送信される。
【0055】
乗算器62−1における,全体が1となる比率配分は、本実施の形態では、振幅変換部62で実施しているが、その後の送信後処理回路13dで行っても良い。
【0056】
また、振幅制御の無い状態を、1以下としておき、上記振幅制御をおこなっている際の、総和をジャスト1とする設定としても良い。またさらには、振幅制御の無い状態を、1としておき、上記振幅制御をおこなっている際の、総和を1+αとする設定としても良い。
【0057】
今までのOFDM信号は、ガードインターバルの信号が1つのシンボル期間の一部分(有効シンボル期間の時間軸上の片側)に配置された例を示したが、ガードインターバルの信号が、有効シンボルの時間軸上の両側に配置されたOFDM信号であっても良い。
【0058】
図6は図4のOFDM信号の場合のシミュレーション結果を示す図である。このシミュレーションは、図4において、OFDM信号の有効シンボル期間Tsの信号(B+b)の振幅を固定として1とし、相関処理の対象であるガードインターバル期間Tgの信号b'の振幅Gを、G=1からG=6.0までG=0.5づつ増大させ、その各々の振幅Gにおいて、C/N(信号/雑音)を可変した場合の電界強度を示す特性図である。振幅Gが大きくなるにつれて、C/N(信号/雑音)を可変した場合の電界強度特性の変化が大きくなっている。したがって本実施の形態によれば、より僅かな受信電界においても受信アンテナの方向調整を可能とする伝送システムおよびそれに用いる送信装置を得ることができる。
【0059】
このOFDM信号を、図4(d−1)ではなく図5(d−2)に示すように、相関処理の対象であるガードインターバル期間Tgの信号b'の振幅と、有効シンボル期間Ts中でガードインターバル期間Tgの信号の作成に用いた期間Tg'の信号bの振幅とを増大させれば、振幅Gが大きくなるにつれて、C/N(信号/雑音)を可変した場合の電界強度特性の変化がさらに大きくなる。したがって本実施の形態によれば、さらにより僅かな受信電界においても受信アンテナの方向調整を可能とする伝送システムおよびそれに用いる送信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明による伝送システムにおける実施の形態の構成を示す図である。
【図2】図1の主要部であるOFDM変調器と振幅変換部の構成を示す図である。
【図3】図2における振幅変調部の内部回路を示す図である。
【図4】本発明によるOFDM信号の一例を説明する図である。
【図5】本発明によるOFDM信号の他の例を説明する図である。
【図6】図4のOFDM信号の場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図7】従来の伝送システムの構成を示す図である。
【図8】送信されるOFDM信号の構成の説明を示す図である。
【図9】図7のガード相関算出回路の回路構成の例を示す図である。
【図10】図7のガード相関算出回路で実施する演算を説明する図である。
【図11】図7の受信レベル算出回路の内部回路の例を示した図である。
【図12】OFDM信号の周波数分布を説明する図である。
【図13】OFDM信号を受信している時の周波数分布を説明する図である。
【図14】受信アンテナの方向調整時の周波数分布を説明する図である。
【符号の説明】
【0061】
11:送信アンテナ、12:送信装置、13a:送信前処理回路、13b:IFFT回路、13c:ガードインターバル挿入回路、13d:送信後処理回路、21:受信アンテナ、22:復調装置、23a:ダウンコンバータ、23b:A/D変換回路、23c:FFT回路、23d:伝送路応答等化回路、23e:復調&復号化回路、24:ガード相関算出回路、25:受信レベル算出回路、26:方向調整信号発生回路、31:遅延回路、32:複素乗算回路、33:相関演算回路、51:ピーク点検出回路、52:I成分絶対値のピーク点値算出回路、53:Q成分絶対値のピーク点値算出回路、54:ピーク点値加算回路、55:平均化回路、61:OFDM変調器、62:振幅変換部、62−1:乗算器、62−2:制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムであって、前記送信装置に、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号を有効シンボル期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする伝送システム。
【請求項2】
ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムであって、前記送信装置に、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号と有効シンボル期間中の前記ガードインターバル期間の作成に用いた期間の信号とをこれら以外の期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする伝送システム。
【請求項3】
ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムにおける前記送信装置であって、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号を有効シンボル期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする送信装置。
【請求項4】
ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムにおける前記送信装置であって、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号と有効シンボル期間中の前記ガードインターバル期間の作成に用いた期間の信号とをこれら以外の期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする送信装置。
【請求項1】
ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムであって、前記送信装置に、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号を有効シンボル期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする伝送システム。
【請求項2】
ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムであって、前記送信装置に、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号と有効シンボル期間中の前記ガードインターバル期間の作成に用いた期間の信号とをこれら以外の期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする伝送システム。
【請求項3】
ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムにおける前記送信装置であって、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号を有効シンボル期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする送信装置。
【請求項4】
ガードインターバル期間を含んだOFDM信号を送信装置で送信し、受信アンテナで前記OFDM信号を受信し、復調装置で前記OFDM信号のガードインターバル期間における相関演算を行い、当該相関演算の結果得られる相関信号に基づき前記受信アンテナの方向調整用信号を生成し前記受信アンテナの方向調整を行う伝送システムにおける前記送信装置であって、前記OFDM信号のガードインターバル期間の信号と有効シンボル期間中の前記ガードインターバル期間の作成に用いた期間の信号とをこれら以外の期間の信号より振幅を大きく設定する手段を装備したことを特徴とする送信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−60537(P2006−60537A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240522(P2004−240522)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【出願人】(591084850)株式会社東京放送 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【出願人】(591084850)株式会社東京放送 (8)
【Fターム(参考)】
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