説明

伝送システム及び伝送装置

【課題】伝送システム及び伝送装置に関し、親局と子局とにおける伝送路の現用予備の切替え過程における切替え動作の絶対時刻の時間差を短縮する。
【解決手段】親局の伝送装置10は、伝送路の現用予備の切替えを制御する切替制御信号を、切替制御信号挿入回路18により実信号に埋め込み、分岐回路19で分岐して現用及び予備の伝送路を通して子局の伝送装置20に送信する。子局の伝送装置20は、現用及び予備の伝送路を介し、該切替制御信号を埋め込んだ実信号を受信し、異常を検出すると、切替制御回路26により受信側切替スイッチ27を制御して伝送路の現用予備を切替える。また、伝送装置10に対して、伝送路の現用予備を切替える切替制御信号を実信号に埋め込み、現用及び予備の伝送路を通し、伝送装置10は、該切替制御信号を埋め込んだ実信号を受信し、該切替制御信号に従って、伝送路の現用と予備とを切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伝送システム及び伝送装置に関し、より詳しくは、現用及び予備の双方向の伝送路によって接続された2つの伝送装置を含む伝送システムにおいて、該伝送路の現用と予備との切替え制御のための切替制御信号を該伝送装置間で遣り取りし、各伝送装置で選択する現用と予備の伝送路を該伝送装置間で一致させる伝送システム及び伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線保護システム等において、落雷による地絡事故等が起こった場合に、事故による影響が他の系統に波及しないよう、事故が発生した送電線の系統をシステム全体から切り離すために、切り離しを行う系統の対向局(親局と子局)の伝送装置の間で制御信号を送受し、瞬時に該送電線の両端を遮断する。
【0003】
対向局(親局と子局)間で瞬時に送電線の両端を遮断するために、親局と子局とで時刻を合わせ、親局から子局への伝送方向(下り方向)と子局から親局への伝送方向(上り方向)との伝送遅延時間が等しくなるようにし、親局と子局とにおける遮断動作の絶対時刻に差が無いように行う方式が要求される。
【0004】
また、送電線事故が起こった際に確実に遮断動作が実行されるよう、通常は、対向局(親局と子局)間の伝送システムは冗長構成が採られ、親局と子局の伝送装置は一重化構成、親局と子局の間の伝送路は二重化構成が採られる。冗長系の電源系統を備え、常用系が短絡等の事故が発生したとき、予備系の電源系統に切替えるシステムは、例えば下記の特許文献等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−59276号公報
【特許文献2】特開平2001−197680号公報
【特許文献3】特許第3329734号公報
【0006】
従来の対向局(親局と子局)間の伝送システムの構成例を図2に示す。図2において、親局の伝送装置10には、分岐回路11、送信側切替スイッチ12、切替制御信号送出回路13、異常検出回路14,15、切替制御回路16、及び受信側切替スイッチ17を備える。また、子局の伝送装置20には、分岐回路21、送信側切替スイッチ22、切替制御信号送出回路23、異常検出回路24,25、切替制御回路26及び受信側切替スイッチ27を備える。
【0007】
親局及び子局の伝送装置10,20には、それぞれ、分岐回路11,21に送電線の系統の監視制御信号の実信号が入力される。該実信号は、対向する伝送装置に伝達する信号で、所定のフレームフォーマットの信号である。該実信号の伝送フレームとして、フレーム同期ビットに続いて、送電線電流情報(三相交流の黒相、赤相及び白相の各電流情報等)及び制御ビットを格納したフレームが用いられる。
【0008】
伝送装置10,20に入力された実信号は、分岐回路11で分岐され、該分岐された実信号は送信側切替スイッチ12、22に入力される。また、送信側切替スイッチ12,22には、切替制御信号送出回路13,23からの切替制御信号が入力される。切替制御信号は、対向する伝送装置に、伝送路の現用と予備との切替を通知する信号で、所定のフレームフォーマットの信号である。該切替制御信号の伝送フレームとして、フレーム同期ビットに続いて、切替え制御ビットを格納したフレームが用いられる。
【0009】
送信側切替スイッチ12,22は、例えば図2に示すように、Aルートの伝送路を現用として使用し、Bルートの伝送路を予備として使用している場合、Aルートの現用の伝送路に実信号を送出し、Bルートの予備の伝送路に切替制御信号を送出するよう、接続路を選択する。
【0010】
親局及び子局の伝送装置10,20の受信側では、Aルートの現用の伝送路からの実信号を受信側切替スイッチ17,27で選択して後段の装置に出力する。また、現用の伝送路から受信される実信号を、異常検出回路14,24で常時監視し、異常が検出された場合には、切替制御回路16,26に異常検出を通知する。
【0011】
下り方向と上り方向との遅延時間を等しくするために、従来の親局と子局の伝送システムは、親局と子局との間において、一つのルート(例えばAルート)の上り方向及び下り方向の伝送路を現用伝送路として用い、現用伝送路に実信号を送信し、他のルート(例えばBルート)の上り方向及び下り方向の伝送路を予備伝送路として用い、予備伝送路に切替制御信号を送信する。親局及び子局は、同一ルートの現用伝送路から実信号を受信し、別ルートの予備伝送路から切替制御信号を受信し、該切替制御信号に基づいて、伝送路の現用と予備の選択を行い、親局と子局の受信側選択系を合わせている。
【0012】
ここで、子局の伝送装置20で異常が検出された場合の動作例について説明する。なお、このときAルートを現用伝送路、Bルートを予備伝送路として用いていたものとする。伝送装置20の切替制御回路26は、異常検出が通知されると、受信側切替スイッチ27に対して、Bルートの予備伝送路からの信号を選択して後段の装置に出力するよう、接続路の切替えを指示する。また、切替制御回路26は、送信側切替スイッチ22に対して、Bルートを現用伝送路として子局からの実信号を送出し、Aルートを予備伝送路として、切替制御信号送出回路23からの切替信号を出力するよう、接続路の切替えを指示する。
【0013】
また、切替制御回路26は、切替制御信号送出回路23に対して切替制御信号の変更を指示し、切替制御信号送出回路23は、Bルートを現用伝送路とし、Aルートを予備伝送路とする切替制御信号を生成する。該切替制御信号は、送信側切替スイッチ22を介し、Aルートの伝送路を通して親局の伝送装置10に伝送され、親局の伝送装置10では、該切替制御信号が受信側の異常検出回路14で受信される。
【0014】
異常検出回路14で受信された切替制御信号は、切替制御回路16に伝えられ、切替制御回路16は、該切替制御信号に従って、Bルートの伝送路を現用伝送路とし、Aルートの伝送路を予備伝送路とするよう、送信側切替スイッチ12及び受信側切替スイッチ17の接続路を切替える。また、切替制御信号送出回路13に対して、Bルートの伝送路を現用伝送路とし、Aルートの伝送路を予備伝送路とする切替制御信号を生成するよう指示する。この動作により、両局で同一の伝送路(Bルート)が現用伝送路として選択される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述した図2に示す従来の構成では以下のような欠点がある。伝送路の現用予備の切替過程において、一方の局において、実信号を送出していた伝送路で切替制御信号を送出する切替えを行った後、対向側の局では、実信号を受信していた伝送路で受信される切替制御信号の同期確立を行うため、対向側の局において切替制御信号を認識するまでに時間が掛かり、その間、実信号の選択ルートの不一致が起こり、親局と子局とにおける切替え動作の絶対時刻が異なる時間が長くなり、伝送路が使えない時間が延びる。
【0016】
また、対向局同士の通信が常時必要であるが、伝送路の現用予備の切替え過程の絶対時刻の時間差が延びることにより、切替え動作中における異常動作を引き起こしやすくなり、このときの回線エラーや外来ノイズの影響により、切替制御信号の送受信が誤動作し、誤切替えの発生や、現用予備の切替え動作が繰り返し発生する「バタツキ」が起こる場合がある。本発明は、伝送路の現用予備の切替え過程における絶対時刻の時間差を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の伝送システムは、双方向の現用及び予備の伝送路で接続され、伝達する実信号を相互に送受する第1及び第2の伝送装置を含む伝送システムにおいて、前記第1の伝送装置は、前記伝送路の現用予備の切替えを制御する切替制御信号を前記実信号に埋め込み、前記現用及び予備の伝送路を通して前記第2の伝送装置に送信する手段を備え、前記第2の伝送装置は、前記第1の伝送装置から前記現用及び予備の伝送路を介し、前記切替制御信号を埋め込んだ実信号を受信し、該受信した実信号の異常を検出したとき、前記伝送路の現用と予備とを切替えると共に、前記第1の伝送装置に対して、伝送路の現用と予備とを切替える切替制御信号を前記実信号に埋め込み、前記現用及び予備の伝送路を通して送信する手段を備え、前記第1の伝送装置は、前記第2の伝送装置から前記現用及び予備の伝送路を介し、前記切替制御信号を埋め込んだ実信号を受信し、該受信した切替制御信号に従って、前記伝送路の現用と予備とを切替える手段、を備えたものである。
【0018】
また、本発明の伝送装置は、現用及び予備の伝送路で接続され、伝達する実信号を対向伝送装置と相互に送受する伝送装置において、前記伝送路の現用と予備との切替えを制御する切替制御信号を前記実信号に埋め込み、該切替制御信号を埋め込んだ実信号を、前記現用及び予備の伝送路に送出する手段と、前記現用及び予備の伝送路から前記切替制御信号を埋め込んだ実信号を受信し、該受信した実信号の異常を検出したとき、前記伝送路の現用と予備とを切替えると共に、前記対向伝送装置に対して、伝送路の現用と予備とを切替える切替制御信号を前記実信号に埋め込み、前記現用及び予備の伝送路を通して送信する手段と、前記切替制御信号を埋め込んだ実信号を受信し、該受信した切替制御信号に従って、伝送路の現用と予備とを切替える手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0019】
切替制御信号を実信号に埋め込んで常時送信することにより、伝送路の現用予備の切替え過程において、従来のように切替制御信号の同期確立を行う必要がないため、切替え指示の切替制御信号が短時間で受信され、現用予備の切替えを短時間で実行することができる。また、伝送路の現用予備の切替え時間の短縮により、伝送路が使えない時間、不安定な時間が短縮され、信頼性の高い伝送システムを構築することができる。
【0020】
短時間で双方の局での受信経路の切替えを完了させることができるため、親局と子局とにおける切替え動作の絶対時刻の差が短く、伝送路が使えない時間が短くなる。また、切替過程の時間が短いことから、回線エラーや外来ノイズ等の影響による異常動作の誘引確率を低減することができ、誤切替えや切替え動作のバタツキを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の対向局(親局と子局)間の伝送システムの構成例を示す図である。
【図2】従来の対向局(親局と子局)間の伝送システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の対向局(親局と子局)間の伝送システムの構成例を図1に示す。図1において、親局の伝送装置10には、切替制御信号挿入回路18、分岐回路19、異常検出回路14,15、切替制御回路16、及び受信側切替スイッチ17を備える。また、子局の伝送装置20には、切替制御信号挿入回路28、分岐回路29、異常検出回路24,25、切替制御回路26及び受信側切替スイッチ27を備える。
【0023】
親局及び子局の伝送装置10,20には、それぞれ、切替制御信号挿入回路18、28により、切替制御信号を実信号に埋め込んだ伝送フレームを生成し出力する。実信号は、対向する伝送装置に伝達する信号で、所定のフレームフォーマットの信号である。該実信号の伝送フレームは、フレーム同期ビットに続いて、送電線電流情報及び制御ビットを格納したフレームである。切替制御信号は、該実信号中の制御ビットのうち、未使用の制御ビットを割り当て送信する。
【0024】
切替制御信号を実信号に埋め込んだ伝送フレームを、分岐回路19,29により分岐して同一の伝送フレームを2つ生成し、Aルート及びBルートの双方の伝送路で同一の伝送フレーム(実信号及び切替制御信号)を送出する。受信側は、現用伝送路及び予備伝送路の両者に対して、通常動作時において同期状態を維持し、両者の伝送路から切替制御信号を常時、異常検出回路14,15,24,25で受信する。
【0025】
この状態で、親局から子局への下り方向の現用伝送路(ここで、Aルートを現用伝送路とする)で異常が起こり、子局の伝送装置20の異常検出回路24で、受信信号の異常が検出された場合、子局の伝送装置20の切替制御回路26は、Aルートの入力異常によりBルートへの受信切替えの指示を、受信側切替スイッチ27に対して行う。
【0026】
切替制御回路26は、それと同時に、Bルートの伝送路への受信切替え指示を示す切替制御信号を生成するよう、切替制御信号挿入回路28に指示する。切替制御信号挿入回路28は、該切替制御信号を生成し、実信号の伝送フレームに埋め込んで、分岐回路29により2つの伝送フレームに分岐し、親局の伝送装置10に向けてAルート及びBルートの両者の伝送路で送信する。
【0027】
親局の伝送装置10では、Aルート及びBルートの両者の伝送路により、Bルートへの受信切替えを指示する切替制御信号を、異常検出回路14,15で受信し、該切替制御信号の受信により、Bルートへの受信切替えを、切替制御回路16により行う。こうすることにより、親局及び子局の両局が同じルートの伝送路を、実信号及び切替制御信号の受信経路として選択する切替え動作を短時間で行うことができる。
【0028】
親局から子局への伝送方向(下り方向)と子局から親局への伝送方向(上り方向)とで、同一のルートの伝送路を、実信号及び切替制御信号の受信経路として選択するため、下り方向と上り方向とで、伝送遅延時間が等しくなり、親局と子局とにおける送電線の遮断動作等の絶対時刻の差が無いようにすることができる。
【0029】
切替制御信号は、受信信号の異常を最初に検出した局で受信経路の切替えを行った後、対向側の局への実信号に挿入されると、対向側の局にすぐに到達する。対向側の局では、受信信号の正常性確認保護時間の経過後、切替制御信号を認識することが可能なため、短時間で双方の局で受信経路の切替えを完了させることができる。
【符号の説明】
【0030】
10 親局の伝送装置
14,15 異常検出回路
16 切替制御回路
17 受信側切替スイッチ
18 切替制御信号挿入回路
19 分岐回路
20 子局の伝送装置
24,25 異常検出回路
26 切替制御回路
27 受信側切替スイッチ
28 切替制御信号挿入回路
29 分岐回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向の現用及び予備の伝送路で接続され、伝達する実信号を相互に送受する第1及び第2の伝送装置を含む伝送システムにおいて、
前記第1の伝送装置は、前記伝送路の現用予備の切替えを制御する切替制御信号を前記実信号に埋め込み、前記現用及び予備の伝送路を通して前記第2の伝送装置に送信する手段を備え、
前記第2の伝送装置は、前記第1の伝送装置から前記現用及び予備の伝送路を介し、前記切替制御信号を埋め込んだ実信号を受信し、該受信した実信号の異常を検出したとき、前記伝送路の現用と予備とを切替えると共に、前記第1の伝送装置に対して、伝送路の現用と予備とを切替える切替制御信号を前記実信号に埋め込み、前記現用及び予備の伝送路を通して送信する手段を備え、
前記第1の伝送装置は、前記第2の伝送装置から前記現用及び予備の伝送路を介し、前記切替制御信号を埋め込んだ実信号を受信し、該受信した切替制御信号に従って、前記伝送路の現用と予備とを切替える手段、
を備えたことを特徴とする伝送システム。
【請求項2】
現用及び予備の伝送路で接続され、伝達する実信号を対向伝送装置と相互に送受する伝送装置において、
前記伝送路の現用と予備との切替えを制御する切替制御信号を前記実信号に埋め込み、該切替制御信号を埋め込んだ実信号を、前記現用及び予備の伝送路に送出する手段と、
前記現用及び予備の伝送路から前記切替制御信号を埋め込んだ実信号を受信し、該受信した実信号の異常を検出したとき、前記伝送路の現用と予備とを切替えると共に、前記対向伝送装置に対して、伝送路の現用と予備とを切替える切替制御信号を前記実信号に埋め込み、前記現用及び予備の伝送路を通して送信する手段と、
前記切替制御信号を埋め込んだ実信号を受信し、該受信した切替制御信号に従って、伝送路の現用と予備とを切替える手段と、
を備えたことを特徴とする伝送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate