説明

伝送システム

【課題】 UHF帯の共同受信システムを使用していながら、VHF帯のマルチメディア放送や自営通信を伝送可能とする。
【解決手段】 VHF帯のマルチメディア放送信号を、アップコンバータ6が、UHF帯のテレビジョン放送で不使用の帯域の変換信号に周波数変換して、出力する。UHF帯の高周波信号を伝送可能な共同受信システム2が、アップコンバータ6からの前記変換信号を、共同受信システム2の端末端子14まで伝送する。端末端子14に接続されたダウンコンバータ16が、端末端子14に供給された前記変換信号を、元のマルチメディア放送信号に周波数変換して、出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送システムに関し、特に、VHF帯を使用して行われるマルチメディア放送や自営通信を、共同受信システムを介して伝送するものに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、VHF帯の90乃至108MHz、170乃至222MHz及びUHF帯の470乃至770MHzを使用して地上テレビジョン放送が行われている。しかし、平成23年7月にUHF帯の470乃至710MHzを用いて地上テレビジョン放送の完全デジタル化が行われる。非特許文献1に開示されているように、完全デジタル化によって発生するVHF帯の空き周波数を、移動体向けのマルチメディア放送や、警察、消防、防災等で利用する自営通信に使用することが検討されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】総務省情報通信審議会答申「VHF/UHF帯の電波の有効利用のための技術的条件」 (平成19年6月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送信局から送信されているVHF帯のマルチメディア放送や自営通信を、受信できないサービスエリア外の地域や、サービスエリア内であるが、ビル影等の地理的条件の影響で受信できない地域にある家屋では、マルチメディア放送や自営通信をテレビジョン共同受信システムを介して伝送することが考えられる。しかし、平成23年7月以後に新たに設置されるテレビジョン共同受信システムでは、地上デジタル放送信号を伝送することが主目的となるので、UHF帯の信号のみを伝送するように構成することが基本構成となる。また、既存のテレビジョン共同受信システムでも、その設置地域によっては、UHF帯のテレビジョン放送信号のみを伝送するように構成されているものがある。これらのテレビジョン共同受信システムでは、上述したVHF帯のマルチメディア放送や自営通信を伝送することができない。地上テレビジョン放送の完全地上デジタル化に伴い、今まで地上テレビジョン放送に使用されていた710乃至770MHzの帯域が、地上テレビジョン放送に使用されなくなる。この帯域の信号であれば、UHF帯の共同受信システムにおいて伝送可能である。本発明は、この点に着目したものである。
【0005】
本発明は、UHF帯の共同受信システムを使用していながら、VHF帯のマルチメディア放送や自営通信を伝送可能とした伝送システムを提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の伝送システムは、第1の周波数変換手段を有している。第1の周波数変換手段は、VHF帯のマルチメディア放送信号及び自営通信信号の少なくとも一方を、UHF帯のテレビジョン放送で不使用の周波数帯域を有する変換信号に周波数変換して、出力する。VHF帯のマルチメディア放送信号及び自営通信信号の一方だけでなく、双方を使用することもできる。VHF帯のマルチメディア放送信号及び自営通信信号の少なくとも一方は、送信局から送信されたものをアンテナによって受信することもできるし、VHF帯の信号を伝送可能な共同受信システムによって伝送されてきたものを使用することもできる。UHF帯の高周波信号を伝送可能である共同受信システムが、第1の周波数変換手段から出力された前記変換信号を、共同受信システムの端末まで伝送する。共同受信システムとしては、大規模なもの、例えばヘッドエンドから複数の1戸建ての家屋にUHF帯の信号を伝送するものや、マンション等の各家庭にUHF帯の信号を伝送する棟内型のものを使用することもできる。或いは、小規模のもの、例えば各一戸建ての家屋において、その家屋の各部屋にUHF帯の信号を伝送するために使用されるようなものも使用することもできる。前記共同受信システムの前記端末まで伝送された前記変換信号を、第2の周波数変換手段が、元のマルチメディア放送信号及び自営通信信号の少なくとも一方に周波数変換して、出力する。出力されたVHF帯のマルチメディア放送信号及び自営通信信号の少なくとも一方は、そのままマルチメディア放送信号及び自営通信信号の少なくとも一方の受信手段に供給することもできるし、VHF帯の送信アンテナに供給されて、再送信され、マルチメディア放送信号及び自営通信信号の少なくとも一方の受信手段で受信されるようにすることもできる。
【0007】
このように構成された伝送システムでは、VHF帯の信号であるマルチメディア放送信号及び自営通信信号の少なくとも一方は、第1の周波数変換手段によってUHF帯の信号に周波数変換されて、共同受信システムによって端末に伝送され、端末において元のマルチメディア放送信号及び自営通信信号の少なくとも一方に第2の周波数変換手段によって周波数変換されて、出力される。従って、マルチメディア放送信号や自営通信信号を直接に受信できない地域や家屋において、UHF帯の信号しか伝送できない共同受信システムを使用している場合でも、これらマルチメディア放送信号や自営通信信号を受信可能となる。
【0008】
UHF帯のテレビジョン放送帯域に周波数帯域を持つテレビジョン放送信号と前記変換信号とを混合して、前記共同受信システムに供給する混合手段を、設けることもできる。このように構成すると、本来、UHF帯のテレビジョン放送信号を伝送する共同受信システムを、そのまま利用することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、マルチメディア放送信号や自営通信信号を直接に受信できない地域であって、しかもUHF帯の信号しか伝送できない共同受信システムを使用していても、マルチメディア放送信号や自営通信信号を受信することができる。また、マルチメディア放送信号や自営通信信号のサービスエリア内の地域内にある家屋等であって、その家屋内ではマルチメディア放送信号や自営通信信号を直接に受信できないが、UHF帯の信号が伝送できる共同受信システムが敷設されている場合にも、マルチメディア放送信号や自営通信信号を受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の伝送システムのブロック図である。
【図2】図1の伝送システムに使用しているアップコンバータ、ダウンコンバータ、ブースター及び混合器の詳細なブロック図である。
【図3】図1の伝送システムにおける周波数変換状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態の伝送システムでは、図3に示すように、VHF帯の90乃至108MHzの18MHzの周波数帯を使用して行われるマルチメディア放送信号と、207.5乃至222MHz中の周波数帯14.5MHzを使用して行われる予定のマルチメディア放送信号を、UHF帯の信号を伝送するように構成された共同受信システム2(図1参照)によって伝送するものである。
【0012】
図1に示すように、VHF帯受信用アンテナ4で受信されたマルチメディア放送信号は、第1の周波数変換手段、例えばアップコンバータ6によってUHF帯の変換信号に周波数変換される。この変換信号は、図3に示すように、UHF帯の地上デジタルテレビジョン放送信号に使用されている周波数帯470乃至710MHzと非重複の周波数帯で、共同受信システム2によって伝送可能な周波数帯のものである。例えば90乃至108MHzのマルチメディア放送信号は、722乃至740MHzに周波数変換され、207.5乃至222MHz帯のマルチメディア放送信号は、760.5MH乃至770MHzに周波数変換される。
【0013】
図1に示すように、アップコンバータ6からの変換信号は、混合手段、例えば混合器8に供給される。混合器8には、UHF帯受信用アンテナ10で受信されたUHF帯である470乃至710MHzの地上デジタルテレビジョン放送信号も供給される。
【0014】
混合器8は、いずれもUHF帯である変換信号と地上デジタルテレビジョン放送信号との混合信号を出力し、増幅手段、例えばブースター12に供給する。この混合信号は、このブースター12によって増幅され、共同受信システム2に供給される。
【0015】
共同受信システム2では、それの各端末に設けた端末端子14に、変換信号と地上デジタルテレビジョン放送信号との混合信号が伝送される。各端末端子14は、各家庭の所望の複数の部屋に設置されている。共同受信システム2としては、小規模の一戸建ての家屋に設置されるものや、マンションなどに設置される棟内型のもの、または各一戸建ての家屋に伝送する大規模なもののいずれかのものを使用できる。
【0016】
端末端子14のうち所望のものに、第2の周波数変換手段、例えばダウンコンバータ16が接続されている。ダウンコンバータ16は、端末端子14から供給された変換信号と地上デジタルテレビジョン放送信号との混合信号から、変換信号を抽出し、この抽出された変換信号を、図3に示すように、元のマルチメディア放送信号に周波数変換する。
【0017】
この元の周波数に変換されたマルチメディア放送信号は、受信手段、例えば携帯端末のような受信機18に供給される。受信機18への供給は、同軸ケーブルを使用して行うこともできるし、ダウンコンバータ16に再送信アンテナを設けておき、これによって再送信することもできる。
【0018】
このように、VHF帯であるマルチメディア放送信号を、UHF帯のテレビジョン放送信号で使用している周波数帯と異なるUHF帯の周波数帯に周波数変換して、UHF帯の信号のみを伝送する共同受信システム2を介して端末端子14に伝送し、端末端子14に設けたダウンコンバータ16によって元のマルチメディア放送信号に周波数変換して、出力しているので、共同受信システム2がVHF帯の信号を伝送できないものであっても、共同受信システム2を使用して、マルチメディア放送信号を受信機18によって受信することができる。
【0019】
図2(a)は、アップコンバータ6の一部のブロック図で、入力端子20にVHF帯受信用アンテナ4からマルチメディア放送信号が、供給される。マルチメディア放送信号は、抽出手段、例えばバンドパスフィルタ22を介してミキサー24に供給される。バンドパスフィルタ22は、マルチメディア放送信号を通過させるように通過帯域が選択されている。ミキサー24には、局部発振器26から局部発振信号が供給されている。局部発振信号の周波数は、マルチメディア放送信号を、変換信号に周波数変換できるように選択されている。なお、局部発振信号の周波数は、共同受信システム2において伝送可能なようにUHF帯の周波数にも選択されている。ミキサー24の出力信号である変換信号は、抽出手段、例えばバンドパスフィルタ28によって不要信号成分が除去されて、出力端子30に供給されている。バンドパスフィルタ28の通過帯域は、変換信号のみを伝送可能に選択されている。また、局部発振信号は、抽出手段、例えばバンドパスフィルタ32を介して出力端子30に供給されている。バンドパスフィルタ32の通過帯域は、局部発振信号のみを通過させるように選択され、不要信号成分が除去されている。このように構成されているので、出力端子30から変換信号と局部発振信号とが、出力され、混合器8、ブースター12、共同受信システム2を介して、各端末端子14に供給される。
【0020】
図2(a)に示したのは、90乃至108MHzのマルチメディア放送信号または207.5乃至222MHzのマルチメディア放送信号のうち一方を変換信号に変換するための構成であり、他方を変換するために、図示していないがバンドパスフィルタ22、ミキサー24、局部発振器26、バンドパスフィルタ28、32が別に設けられている。但し、90乃至108MHzのマルチメディア放送信号または207.5乃至222MHzのマルチメディア放送信号のうち他方を周波数変換するためのバンドパスフィルタ22、28、32や局部発振器26では、通過帯域、局部発振信号の発振周波数は、図2(a)に示したバンドパスフィルタ22、28、32の通過帯域、局部発振器26の局部発振信号の発振周波数とは、異なっている。
【0021】
図2(b)は、ダウンコンバータ16のブロック図で、入力端子34には、変換信号と局部発振信号とテレビジョン放送信号とが供給される。入力端子34には、抽出手段、例えばバンドパスフィルタ36が接続されている。バンドパスフィルタ36は、その通過帯域が変換信号のみを通過させるように選択されているので、変換信号のみが抽出される。この変換信号は、ミキサー38に供給される。入力端子34には、抽出手段、例えばバンドパスフィルタ40も接続されている。バンドパスフィルタ40は、その通過帯域が局部発振信号のみを通過させるように選択されているので、局部発振信号のみが抽出される。抽出された局部発振信号も、ミキサー38に供給される。その結果、ミキサー38は、変換信号を、元のマルチメディア放送信号の周波数帯に再周波数変換する。再周波数変換されたマルチメディア放送信号は、抽出手段、例えばバンドパスフィルタ42によって不要信号成分が除去され、出力端子44に供給される。バンドパスフィルタ42は、その通過帯域が、マルチメディア放送信号を通過させるように選択されている。このダウンコンバータ16からマルチメディア放送信号が出力され、受信機18に直接に出力端子44から供給されるか、出力端子44に接続された再送信アンテナ(図示せず)から再送信されて、受信機18によって受信される。
【0022】
図2(b)に示したのは、変換信号を90乃至108MHzのマルチメディア放送信号または207.5乃至222MHzのマルチメディア放送信号のうち一方に再周波数変換するための構成であり、他方を再変換するために、図示していないがバンドパスフィルタ36、ミキサー38、バンドパスフィルタ40、42が別に設けられている。但し、90乃至108MHzのマルチメディア放送信号または207.5乃至222MHzのマルチメディア放送信号のうち他方に周波数変換するためのバンドパスフィルタ36、40、42の通過帯域は、図2(b)に示したバンドパスフィルタ36、40、42の通過帯域とは、異なっている。
【0023】
図2(c)は、ブースター12のブロック図で、入力端子46に混合器8からマルチメディア放送信号と局部発振信号とテレビジョン放送信号とが供給され、これらは抽出手段、例えばバンドパスフィルタ48によって抽出され、増幅手段、例えば増幅器50によって増幅され、抽出手段、例えばバンドパスフィルタ52によって不要成分が除去され、出力端子54に供給される。出力端子54から、共同受信システム2に、増幅されたマルチメディア放送信号と局部発振信号とテレビジョン放送信号とが供給される。
【0024】
図2(d)は、混合器8のブロック図で、入力端子56にアップコンバータ6から変換信号と局部発振信号とが供給され、入力端子58にUHF帯受信用アンテナ10からUHF帯のテレビジョン放送信号が供給される。入力端子56には、抽出手段、例えばハイパスフィルタ60が接続され、変換信号及び局部発振信号よりも低い周波数の不要な信号成分を除去して、変換信号及び局部発振信号を出力端子62に供給する。入力端子58には、抽出手段、例えばローパスフィルタ64が接続され、テレビジョン放送信号よりも高い周波数の不要な信号成分を除去して、出力端子62に供給する。従って、出力端子62から、変換信号及び局部発振信号とテレビジョン放送信号との混合信号が出力され、ブースター12に供給される。なお、ハイパスフィルタ60、ローパスフィルタ64に代えて、通過帯域が変換信号及び局部発振信号を通過させるように選択されたバンドパスフィルタと、通過帯域がテレビジョン放送信号を通過させるように選択されたバンドパスフィルタとを、使用することもできる。
【0025】
上記の実施形態では、マルチメディア放送信号のみを周波数変換したが、これに代えて、或いはこれに加えて、170乃至222MHzを使用する自営通信信号をアップコンバータ6においてUHF帯のテレビジョン放送で不使用の周波数帯に周波数変換して、共同受信システム2で各端末端子14に伝送し、これら端末端子14のうち所望のものに設けたダウンコンバータ16で、元の自営通信信号の周波数帯に再周波数変換することもできる。上記の実施形態では、マルチメディア放送信号や自営通信信号は、VHF帯受信用アンテナ4で受信したが、これに限ったものではなく、例えば他の共同受信システムで受信されたものを、伝送線路、例えば同軸ケーブルを介してアップコンバータ6に供給することもできる。UHF帯のテレビジョン放送信号も同様に、他の共同受信システムで受信されたものを同軸ケーブルを介して混合器8に供給することもできる。また、上記の実施形態では、ブースター12を混合器8の出力側に設けたが、場合によっては、アップコンバータ6の入力側または出力側に設けることもできるし、場合によっては除去することもできる。また、受信機18として、携帯電話機を示したが、これに限ったものではなく、カーナビ用受信機、携帯ゲーム機、携帯オーディオ器、PDA、パーソナルコンピュータ、テレビ受信機、ラジオ受信機、電子ペーパー、デジタルサイネージ等を使用することもできる。
【符号の説明】
【0026】
2 共同受信システム
6 アップコンバータ(第1の周波数変換手段)
8 混合器(混合手段)
14 端末端子
16 ダウンコンバータ(第2の周波数変換手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VHF帯のマルチメディア放送信号及び自営通信信号の少なくとも一方を、UHF帯のテレビジョン放送で不使用の帯域を有する変換信号に周波数変換して、出力する第1の周波数変換手段と、
UHF帯の高周波信号を伝送可能であって、第1の周波数変換手段から出力された前記変換信号を、端末まで伝送する共同受信システムと、
前記共同受信システムの前記端末まで伝送された前記変換信号を、元のマルチメディア放送信号及び自営通信信号の少なくとも一方に周波数変換して、出力する第2の周波数変換手段とを、
具備する伝送システム。
【請求項2】
請求項1記載の伝送システムにおいて、UHF帯のテレビジョン放送帯域に周波数帯域を持つテレビジョン放送信号と前記変換信号とを混合して、前記共同受信システムに供給する混合手段を、有するマルチメディア放送伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−249971(P2011−249971A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119098(P2010−119098)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】