説明

伸縮式ベルトコンベア、及びこれを用いた掘削ズリ搬送方法

【課題】設備の固定化、他の関連作業への干渉を防止する。
【解決手段】この伸縮式ベルトコンベア1は、一対のレール2、2と、一対のレール2、2上に車輪を介して移動可能なベルトコンベア子機3と、子機3を重ねて設置可能に重置手段5を有するベルトコンベア親機4と、一対のレール2、2と親機4との間に設置されて、子機3を親機4に乗降可能に移動案内する乗降手段6とを備え、親機4上に子機3を重ねて設置し、子機3を任意の牽引手段により、親機4と一対のレール2、2との間で移動して、親機4及び子機3からなるベルトコンベアの全長を伸縮させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの掘削工事において排出される掘削ズリの搬送に使用する伸縮式ベルトコンベア、及びこれを用いた掘削ズリ搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの掘削工事では、掘削されたトンネルの掘削ズリの搬送に、ダンプトラック等を使用するのが一般的であった。しかしながら、ダンプトラック等を使用すると、その排ガスによりトンネル内の空気が汚染されて作業環境が悪化し、また、ダンプトラック等の通行によりトンネル内の作業の安全性が低下するため、ダンプトラック等に代えて、連続ベルトコンベアを使用することが近年多くなっている。
【0003】
この種の連続ベルトコンベアを用いた掘削ズリの搬送方法が特許文献1により提案されている。この文献1の方法では、掘削機により地盤を掘削して出たズリはシャベル車などを使ってクラッシャーに取り込まれ、適当な大きさに破砕されて、シュート装置のホッパーからベルトコンベアに落下される。このズリはベルトコンベアにより上方に搬送されて、ヘッドシュートで下方のテールピース部のベルトコンベアに投下される。このようにしてトンネル内に沿ってズリは坑外まで搬送され、坑外で坑外ベルトコンベアに移送されて、所定の箇所で落下され、ストックされる。一方、掘削機により地盤の掘削が進むと、まずベルトコンベアが停止されて、シャベル車とクラッシャーが前進され、続いて、無限軌道車が駆動されて、テールピース部及び台車上フレーム部がシュート装置とともにクラッシャーの近傍まで走行し、これと同時にストレージ部で、前進させた距離分のベルトコンベアが繰り出されて、ベルトコンベア全体が延長される。このとき、延長された箇所のベルトコンベアの下方に複数のコンベアローラフレームが順に設置されて連結される。このようにベルトコンベア全体が延設されると、ベルトコンベアが作動されて、掘削作業が再開される。かかる工程が繰り返し行われて、トンネルが施工されていくことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−176692公報(段落0010、図8−図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の連続ベルトコンベアによる掘削ズリの搬送方法では、次のような問題がある。
(1)ベルトコンベア全体が延伸可能な設備になっているものの、ベルトコンベアが延伸された後はそれが現位置に固定されるため、他の坑内設備や関連作業との取り合いに調整を要する。すなわち、掘削されたトンネルの天井面や壁面には、シート張り台車により防水シートが張設され、その後、セントルにより防水シートを覆って覆工コンクリートが打設される。このようなトンネル内面の覆工作業に際し、このトンネル内に連続ベルトコンベアが設置固定されていると、これらが障害になってシート張り台車およびセントルによる覆工作業に支障を来す。このため、シート張り台車およびセントルによりトンネル壁面等に覆工作業を施す際には、連続ベルトコンベアを後続作業が可能な位置、状態へ盛り替える必要があるが、これが混在作業であること、そして、この盛り替え作業の間、連続ベルトコンベアによる掘削ズリの搬送作業は中断しなければならないことから、当然のことながら、トンネル施工の作業効率は低下する。
(2)ベルトコンベア全体が長尺の1本物となるため、ベルトコンベアを稼動するためのモータは特殊な大きさ(数百kw出力)の大規模なものが必要で、コストは増大せざるを得ない。また、この種のモータの場合、故障の修理に際して、部品の希少性から多くの日数を必要とし、メンテナンスが容易でない。
(3)ベルトコンベアの他に、延伸用のベルトを蓄えるためのベルトストレージカセットの設置ヤードが必要で、坑口で設置ヤードを確保しなければならない。また、このベルトストレージカセットを設置するためのコンクリート基礎を必要とし、さらに、このベルトストレージカセットの設置により、運搬物の吐き出し部となるテール部を固定しなければならない。
(4)連続ベルトコンベアの現場搬入時の積載重量の限界から、ベルトは1本当たり300〜400mとなるため、長尺での使用では、ベルト接合部が多くなり、ベルトの負担が大きい。
(5)投入側においては、テールピース台車を確保する必要がある。
(6)この連続ベルトコンベアの設備の特殊性から、採算性の面で、2000m程度以上のトンネルでないと、この設備の適用は難しい。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、特に、ベルトコンベアの延伸後の、この設備の移動を簡易にして、設備の固定化、他の関連作業への干渉を防止し、また、ベルトストレージカセットやテールピース台車などを不要として、ヤード上の制約及び設備の固定化を排除し、さらに、汎用部品の組み合わせにより、トンネルの延長に対して汎用性の高い設備とし、メンテナンスを容易にすることのできる伸縮式ベルトコンベア、及びこれを用いた掘削ズリ搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の伸縮式ベルトコンベアは、運搬物の搬送元から搬送先に向けて敷設される一対のレールと、前記一対のレール上を移動可能に車輪を有するベルトコンベア子機と、前記子機を重ねて設置可能にベルトコンベア重置手段を有するベルトコンベア親機と、前記一対のレールと前記親機との間に設置されて、前記一対のレールと前記ベルトコンベア重置手段とを連絡し、前記子機を前記親機に乗降可能に移動案内するベルトコンベア乗降手段とを備え、前記親機上に前記子機を重ねて設置し、当該子機を任意の駆動手段又は牽引手段により、前記親機と前記一対のレールとの間で移動して、前記親機及び前記子機からなるベルトコンベアの全長を伸縮させる、ことを要旨とする。
【0008】
また、このベルトコンベアは各部に次のような構成が採用されることが好ましい。
(1)親機は一対のレール上を移動可能に車輪を有し、前記一対のレール上に設置される。
(2)(1)に代えて、親機は固定式とし、運搬物の搬送先に据え付けられてもよい。
(3)親機に複数の子機を重ねて設置可能に、前記複数の子機にベルトコンベア重置手段を備える。
(4)ベルトコンベア重置手段は一対のレールと同じ形式の一対のレールからなる。
(5)ベルトコンベア乗降手段はベルトコンベア重置手段から搬送路の一対のレールに向けて斜めに延びるレール構造を有する。
(6)ベルトコンベア乗降手段は親機の先端に固定して又は着脱可能に連接される。
(7)親機及び子機からなるベルトコンベアにさらに他のベルトコンベアが連続されて、運搬物の搬送距離を延伸する。
(8)親機及び子機からなるベルトコンベアを複数組備え、各組の親機及び子機からなるベルトコンベア相互の連係により、運搬物の搬送距離を延伸する。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の伸縮式ベルトコンベアを用いた掘削ズリ搬送方法は、トンネルの掘削工事において、掘削ズリの搬送路に沿って上記伸縮式ベルトコンベアを設置し、トンネルの掘削の進捗に合せて、親機から子機を移動して、前記親機及び前記子機からなるベルトコンベアの全長を伸ばし、掘削ズリの搬送距離を延伸する、ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の伸縮式ベルトコンベア、及びこれを用いた掘削ズリの搬送方法では、上記の構成により、次のような効果を有する。
(1)ベルトコンベア親機上にベルトコンベア子機を重ねて設置し、この子機を任意の駆動手段又は牽引手段により、親機と一対のレールとの間で移動して、親機及び子機からなるベルトコンベアの全長を伸縮させるので、掘削ズリの搬送距離を容易に延伸することができる。
(2)ベルトコンベア親機に一対のレール上を移動可能に車輪を備え、ベルトコンベア子機とともに一対のレール上に設置することで、ベルトコンベア全体の伸長後の、この設備の短縮、移動を簡易にして、設備の固定化を防止し、他の関連作業への干渉を防止することができる。
(3)設備全体をベルトコンベアの親機と子機により構成し、従来の連続ベルトコンベアのようにベルトストレージカセットやテールピース台車などを不要としたので、ヤード上の制約、及び設備の固定化を排除することができる。
(4)ベルトコンベア重置手段を搬送路上の一対のレールと同じ形式の一対のレールにより構成し、また、ベルトコンベア乗降手段をベルトコンベア重置手段から搬送路の一対のレールに向けて斜めに延びるレール構造により構成することで、設備全体を汎用部品の組み合わせにより、汎用性の高い設備として組み立てることができ、メンテナンスを容易に行うことができる。
(5)1組又は複数組の親機及び子機を備え、これに他の任意のベルトコンベアを組み合わせることにより、運搬物の搬送距離を延ばし、また、複数組の親機及び子機を組み合わせて、各組の親機及び子機相互の連係により、運搬物の搬送距離を延ばすので、掘削ズリの搬送距離を柔軟にかつ簡易に延伸することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態における伸縮式ベルトコンベアの全体構成を示す側面図
【図2】同伸縮式ベルトコンベアの特に親機(ベルトコンベア重置手段を含む)及び子機のヘッド側の構成を示す側面断面図
【図3】同伸縮式ベルトコンベアの特に親機(ベルトコンベア重置手段を含む)及び子機のテール側の構成を示す側面断面図
【図4】(a)同伸縮式ベルトコンベアの特に親機(ベルトコンベア重置手段を含む)のテール側の構成を示す正面断面図(b)同伸縮式ベルトコンベアの特に親機のヘッド側の構成を示す正面断面図
【図5】(a)同伸縮式ベルトコンベアの特に子機のテール側の構成を示す正面断面図(b)同伸縮式ベルトコンベアの特に子機のヘッド側の構成を示す正面断面図
【図6】(a)同伸縮式ベルトコンベアの各ベルトコンベア間の連結に使用されるヒンジの構成を示す平面図(b)同側面図
【図7】同伸縮式ベルトコンベアの特にベルトコンベア乗降手段の構成を示す側面図
【図8】同伸縮式ベルトコンベアを用いた掘削ズリの搬送方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。図1乃至図7に伸縮式ベルトコンベアを示している。図1に示すように、伸縮式ベルトコンベア1は、一対のレール2、2と、ベルトコンベア子機3(以下、単に子機3という。)と、ベルトコンベア重置手段5を有するベルトコンベア親機4(以下、単に親機4という。)と、ベルトコンベア乗降手段6とを備えて構成される。
【0013】
図1及び図4に示すように、一対のレール2、2はI形鋼や溝形鋼などを対にして構成され、全体として、運搬物の搬送元から搬送先までの長さに形成される。なお、この一対のレール2、2は運搬物の搬送元と運搬物の搬送先との間に溝形鋼(Cチャンネル材)などの支持部材21を介して敷設されることが好ましい。
【0014】
図2及び図3に示すように、子機3は複数のベルトコンベア30、30、…が連結されて構成される。複数のベルトコンベア30、30、…はそれぞれ共通で、各ベルトコンベア30、30、…は、図5に示すように、子機フレーム31と、子機フレーム31に支持されるベルトコンベア本体32と、子機フレーム31の両側の下部に軸支される車輪33とを備える。この子機3の場合、子機フレーム31は、所定の幅及び長さを有する両側フレーム311、311と、これら両側フレーム311、311間に連結される複数の繋ぎフレーム312とにより組み立てられる。ベルトコンベア本体32は、子機フレーム31よりも小さい所定の幅及び長さを有するローラ台321と、ローラ台321の両端に設置されるモータ駆動の駆動側のヘッドプーリ322(図2参照)及び従動側のテールプーリ(図示省略)と、ローラ台321の両側及びその中間に上方に向けて立ち上げ設置されるローラブラケット323、323と、これらのローラブラケット323、323間に軸支され、ベルト搬送面をトラフ断面に形成する3列構成のキャリアローラ324、324、324と、ローラ台321の両側に下方に向けて延び設置される複数のローラブラケット325B、325Bと、これらのローラブラケット325B、325B間に軸支されるリターンローラ325と、ヘッドプーリ322とテールプーリとの間に巻き掛けられ、各キャリアローラ324、324、324及び各リターンローラ325に支持される搬送ベルト326とにより構成される。車輪33は片側一方の側面にレール2(、さらに後述の重置レール51、乗降レール61)の片側一方の縁部に係合可能な鍔を有する車輪で、図2、図3及び図5に示すように、複数の車輪33、33、…が子機フレーム31の両側フレーム311、311の側面下部に車輪ブラケット331、331、…を介して軸支される。この場合、ヘッド側(ヘッドプーリ322を有する端部側)がテール側(テールプーリを有する端部側)よりも高くなるように、図2に示すように、ヘッド側のベルトコンベア30の両側フレーム311、311の側面に下方に延びる所定の長さを有する支持ブラケット332が固着されて、ヘッド側のベルトコンベア30の車輪33はそれぞれ、車輪ブラケット331が支持ブラケット332の下部に取り付けられ、図3に示すように、(ヘッド側とテール側の)中間のベルトコンベア30の車輪33、及びテール側のベルトコンベア30の車輪33はそれぞれ、車輪ブラケット331が両側フレーム311、311の側面下部に直接取り付けられる。なお、ヘッド側のベルトコンベア30の車輪ブラケット331は支持ブラケット332にヒンジ333を介して、両側フレーム311、311の延びる方向に揺動可能に取り付けられる。また、ヘッド側及びテール側の各ベルトコンベア30、30には車輪33に近接して、レールクランプ34が併設される。このレールクランプ34は、一対のレール2、2及び後述の一対の重置レール51、51を締め付けて、子機3を一対のレール2、2及び後述の一対の重置レール51、51の上で固定するストッパーで、この場合、ハンドル操作により、右ねじ及び左ねじの送り機構を駆動して、クランプ部材を開閉する形式が採用される。さらに、ヘッド側及びテール側の各ベルトコンベア30、30には、図2に示すように、子機3を任意の駆動手段又は牽引手段で牽引可能に、牽引金具35が取り付けられる。これらのベルトコンベア30、30、…はヒンジ36を介して相互に連結される。この場合、ヒンジ36は、図6に示すように、一対のヒンジブラケット36B、36Bにより構成され、これらのヒンジブラケット36B、36Bはそれぞれ、平板状の固定部361と、この固定部361の幅方向中央に直角方向に突出される連結部362とからなり、一方のヒンジブラケット36Bの連結部362にヒンジピン36Pが突設され、他方のヒンジブラケット36Bの連結部362に長穴363が穿設される。各ベルトコンベア30、30の連結端面に各ヒンジブラケット36B、36Bの固定部361、361が固着されて、各ヒンジブラケット36B、36Bの連結部362、362が当該連結端面間に突出され、一方のヒンジブラケット36Bの連結部362のヒンジピン36Pが他方のヒンジブラケット36Bの連結部の長穴363に通されて、各ベルトコンベア30、30、…がヒンジ結合される。このようにして子機3は、図2及び図3に示すように、複数のベルトコンベア30、30、…からなり、各ベルトコンベア30、30、…がヒンジ36、36、…を介して連結され、各ベルトコンベア30、30、…に取り付けられた車輪33、33、…により、一対のレール2、2上を(さらに後述の一対の重置レール51、51及び一対の乗降レール61、61上を)移動可能になっている。
【0015】
図2及び図3に示すように、親機4は複数のベルトコンベア40、40、…が連結され、これらのベルトコンベア40、40、…の上に子機3の各ベルトコンベア30、30、…を重ねて設置可能にベルトコンベア重置手段5が併設されて構成される。この親機4は、ベルトコンベア重置手段5を除くと、概ね子機3と同様に構成される。すなわち、複数のベルトコンベア40、40、…はそれぞれ共通で、各ベルトコンベア40、40、…は、図4に示すように、親機フレーム41と、親機フレーム41に支持されるベルトコンベア本体42と、親機フレーム41の両側の下部に軸支される車輪43とを備える。この場合、親機フレーム41は、所定の幅及び長さを有する両側フレーム411、411と、これら両側フレーム411、411間に連結される繋ぎフレーム412とにより組み立てられる。ベルトコンベア本体42は、親機フレーム41よりも小さい所定の幅及び長さを有するローラ台421と、ローラ台421の両端に設置されるモータ駆動の駆動側のヘッドプーリ422(図2参照)及び従動側のテールプーリ(図示省略)と、ローラ台421の両側及びその中間に上方に向けて立ち上げ設置されるローラブラケット423、423と、これらのブラケット423、423間に軸支され、ベルト搬送面をトラフ断面に形成する3列構成のキャリアローラ424、424、424と、ローラ台421の両側に下方に向けて延び設置される複数のローラブラケット425B、425Bと、これらのローラブラケット425B、425B間に軸支されるリターンローラ425と、ヘッドプーリ422とテールプーリとの間に巻き掛けられ、各キャリアローラ424及び各リターンローラ425に支持される搬送ベルト426とにより構成される。車輪43は片側一方の側面にレール2の片側一方の縁部に係合可能な鍔を有する車輪で、図2、図3及び図4に示すように、複数の車輪43、43、…が親機フレーム41の両側フレーム411、411の側面の下部に車輪ブラケット431を介して軸支される。この場合、ヘッド側(ヘッドプーリ423を有する端部側)がテール側(テールプーリを有する端部側)よりも高くなるように、図2に示すように、ヘッド側のベルトコンベア40の両側フレーム411、411の側面に下方に延びる所定の長さを有する支持ブラケット432が固着されて、ヘッド側のベルトコンベア40の車輪43はそれぞれ、車輪ブラケット431が支持ブラケット432の下部に取り付けられ、図3に示すように、(ヘッド側とテール側の)中間のベルトコンベア40の車輪43及びテール側のベルトコンベア40の車輪43はそれぞれ、車輪ブラケット431が両側フレーム411、411の側面下部に直接取り付けられる。なお、ヘッド側のベルトコンベア40の車輪ブラケット431は支持ブラケット432にヒンジ433を介して、両側フレーム411、411の延びる方向に揺動可能に取り付けられる。また、ヘッド側及びテール側のベルトコンベア40、40には車輪43に近接して、レールクランプ44が併設される。このレールクランプ44は、一対のレール2、2を締め付けて、親機4を一対のレール2、2の上に固定するストッパーで、この場合、ハンドル操作により、右ねじ及び左ねじの送り機構を駆動して、クランプ部材を開閉する形式が採用される。さらに、ヘッド側及びテール側のベルトコンベア40、40には、親機4を任意の駆動手段又は牽引手段で牽引可能に、牽引金具(図示省略)が取り付けられる。これらのベルトコンベア40、40、…はヒンジ46を介して連結される。この場合、ヒンジ46は、図6に示すように、一対のヒンジブラケット36B、36Bにより構成され、これらのヒンジブラケット36B、36Bはそれぞれ、平板状の固定部361と、この固定部361の幅方向中央に直角方向に突出される連結部362とからなり、一方のヒンジブラケット36Bの連結部362にヒンジピン36Pが突設され、他方のヒンジブラケット36Bの連結部362に長穴363が穿設される。各ベルトコンベア40、40の連結端面に各ヒンジブラケット36B、36Bの固定部361、361が固着されて、各ヒンジブラケット36B、36Bの連結部362、362が当該連結端面間に突出され、一方のヒンジブラケット36Bの連結部362のヒンジピン36Pが他方のヒンジブラケット36Bの連結部の長穴363に通されて、各ベルトコンベア40、40、…がヒンジ結合される。このようにして親機4は、図2及び図3に示すように、複数のベルトコンベア40、40、…からなり、各ベルトコンベア40、40、…がヒンジ46、46、…を介して連結され、各ベルトコンベア40、40、…に取り付けられた車輪43、43、…により、一対のレール2、2上を移動可能に設置される。
【0016】
この親機4のベルトコンベア重置手段5は、図2及び図3に示すように、一対のレール2、2と同じ形式の一対の重置レール51、51からなる。すなわち、一対の重置レール51、51はI形鋼や溝形鋼などを対にして構成され、親機フレーム4の両側フレーム411、411の上部に沿って支持ブラケットを介して一対のレール2、2と上下並列に固定される。
【0017】
ベルトコンベア乗降手段6は、図1及び図3に示すように、一対のレール2、2と親機4のベルトコンベア重置手段5とを連絡する手段で、この乗降手段6の場合、ベルトコンベア重置手段5から搬送路の一対のレール2、2に向けて斜めに延びるレール構造にして構成される。すなわち、この乗降手段6は、図7に示すように、一対の乗降レール61、61と、これら乗降レール61、61の基端部に固着される一対の支持部材62、62と、これら乗降レール61、61の下部に軸支される一対のコロ63、63とにより構成される。この場合、一対の乗降レール61、61は一対のレール2、2と同じ形式のI形鋼や溝形鋼からなり、これら乗降レール61、61が親機4のベルトコンベア重置手段5をなす一対の重置レール51、51と一対のレール2、2との間に所定の傾斜角で斜めに配置可能に、一端が一対の重置レール51、51の端部に連続的に対接可能に斜めに形成され、他端側の下面の所定の範囲が一対のレール2、2の上面と平行となるように斜めに形成される。なお、この一対の乗降レール61、61間に繋ぎ部材が取り付けられて、これら乗降レール61、61が連結される。支持部材62、62は一対の乗降レール61、61を所定の傾斜角で斜めに支持するための所定の高さを有する部材で、これら乗降レール61、61の基端下部に固着される。コロ63、63は一対のレール2、2上を転動可能に形成され、一対の乗降レール61、61の下部で長さ方向中間部にコロブラケット631を介して軸支される。このベルトコンベア乗降手段6は親機4のテール側のベルトコンベア40の先端面に固定される。この場合、一対の乗降レール61、61は各支持部材62、62がテール側のベルトコンベア40の先端面に固着されて、テール側のベルトコンベア40から突出され、各コロ63、63が一対のレール2、2上に乗せられて、一対のレール2、2上を親機4と一体的に移動可能に設置される。このようにしてベルトコンベア乗降手段6は一対の乗降レール61、61が親機4のベルトコンベア重置手段5をなす一対の重置レール51、51に連続し、一対のレール2、2に向けて斜めに延び、各レール2、2の上面に連続されて、親機4のベルトコンベア重置手段5と一対のレール2、2との間の段差をなくして連絡し、子機3を親機4に乗降可能に移動案内する。
【0018】
かかる構成により、伸縮式ベルトコンベア1は、図1に示すように、親機4の上に子機3が重ねて設置されるようになっている。この場合、親機4、子機3は共に一対のレール2、2上に乗せられた状態から、子機3がヘッド側からの駆動又は牽引により、親機4のテール側から一対の乗降レール61、61を介して親機4上の一対の重置レール51、51上に乗り上げられ、子機3のテール側のベルトコンベア30が一対の乗降レール61、61に隣接して一対のレール2、2上に置かれる形式を採る。そして、この状態から、子機3を任意の駆動手段又は牽引手段により、テール側から駆動又は牽引することにより、反対に、ヘッド側から駆動又は牽引することにより、子機3が親機4の一対の重置レール51、51と一対のレール2、2との間を一対の乗降レール61、61を経由して移動し、親機4及び子機3からなるベルトコンベア1の全長を伸長又は短縮する。
【0019】
また、この伸縮式ベルトコンベア1では、任意の駆動手段又は牽引手段に、例えばバックホーなどの重機や、電動式又は手動式のウィンチなど、建設現場に使用される建設機械を利用することができる。ここでは、親機4、子機3を一対のレール2、2上で(牽引)移動するのにバックホーが使用され、バックホーが運搬物の搬送元と搬送先となる、一対のレール2、2の両端部に近接する適宜の位置に待機される。親機4を一対のレール2、2上で単独で移動する場合は、親機4のテール側又はヘッド側のベルトコンベア40に設けられた牽引金具にワイヤーロープを連結し、このワイヤーロープを搬送元側又は搬送先側に待機するバックホーに連結して、親機4に設けられたレールクランプ44をすべて解除した後、バックホーを駆動する。子機3を一対のレール2、2上で単独で移動する場合は、親機4と同様に、子機のテール側又はヘッド側のベルトコンベア30に設けられた牽引金具35にワイヤーロープを連結し、このワイヤーロープを搬送元側又は搬送先側に待機するバックホーに連結して、子機3に設けられたレールクランプ34をすべて解除した後、バックホーを駆動する。そして、親機4の上に子機3を重ねて一対のレール2、2上を移動する場合は、子機3のテール側のベルトコンベア30に設けられた牽引金具35又は親機4のヘッド側のベルトコンベア40に設けられた牽引金具にワイヤーロープを連結し、このワイヤーロープを搬送元側又は搬送先側に待機するバックホーに連結して、子機3に設けられたテール側のレールクランプ34と親機4に設けられたすべてのレールクランプ44を解除した後、(後述する親機4側の子機引き上げ用ウィンチ7のワイヤーロープ71は子機3に連結したままで)バックホーを駆動する。また、親機4に対する子機3の乗降に電動式の子機引き上げ用ウィンチ7とバックホーが使用される。そこで、親機4のヘッド側のベルトコンベア40上には電動式の子機引き上げ用ウィンチ7が設置固定されて、このウィンチ7のワイヤーロープ71が子機3のヘッド側のベルトコンベア30に設けられた牽引金具に連結される。そして、バックホーが運搬物の搬送元側となる、一対のレール2、2の一端部に近接する適宜の位置に待機され、子機3のテール側のベルトコンベア30に設けられた牽引金具にワイヤーロープを連結し、このワイヤーロープを搬送元側に待機するバックホーに連結する。子機3を親機4から降ろす方向に移動する場合は、子機3に設けられたレールクランプ34をすべて解除した後、(子機引き上げ用ウィンチ7からワイヤーロープ71を繰り出しながら、)バックホーを駆動する。反対に、子機3を親機に乗り上げる方向に移動する場合は、子機3に設けられたレールクランプ34をすべて解除した後、親機4の子機引き上げ用ウィンチ7を駆動する。なお、親機4、子機3の移動、及び親機4に対する子機3の乗降に専用の駆動装置又は牽引装置を備えて、自走式の構造を採用しても勿論かまわない。
【0020】
このようにして伸縮式ベルトコンベア1が構成され、特に、トンネルの掘削工事において排出される掘削ズリの搬送に使用される。この場合、伸縮式ベルトコンベア1はトンネル内の、掘削ズリの搬送路に沿って設置され、トンネルの掘削の進捗に合せて、親機4から子機3を掘削ズリの搬送元(トンネル内の切羽側の所定の位置)へ移動しながら、この親機4及び子機3からなるベルトコンベア1の全長を徐々に伸ばしていく。また、この場合、伸縮式ベルトコンベア1に、さらに他のベルトコンベア(既述の子機でも、また親機でもよく、さらに、これら子機、親機とは別の一般に使用されるベルトコンベアでもかまわない。)が連続されて、運搬物の搬送距離を延伸するようにしてもよい。さらに、複数組の伸縮式ベルトコンベアを備え、各組のベルトコンベアの相互の連係により、運搬物の搬送距離を延伸することもできる。
【0021】
図8に、この伸縮式ベルトコンベア1を用いた掘削ズリの搬送方法の一例を示している。このトンネル工事の現場では、本坑8の隣に避難坑9があり、この避難坑9に施工時に使用された連続ベルトコンベア91が設置されている。この場合、掘削ズリの運搬先は避難坑9の連続ベルトコンベア91の先と一致するため、掘削ズリの搬送にこの連続ベルトコンベア9を利用することが効率的である。そして、この連続ベルトコンベア91を使用する場合に、本坑8の掘削進行に合わせて本坑8と避難坑9との間に連絡坑90を形成し、そこに横引きベルトコンベア901を設置する方が運搬距離、運搬時間、コスト、安全面などで有利となる。なお、この現場の場合、坑口部のヤードが狭い状態での引き渡しとなり、ベルトストレージカセットの設置は困難な状況にある。
【0022】
図8(1)に示すように、このトンネル工事では、本坑8が坑口発進ラインから所定距離掘進された時点で、本坑8と避難坑9とを連絡する連絡坑90が形成され、この連絡坑90に横引きベルトコンベア901が設置される。掘削ズリは、シャベル車(タイヤシャベル)11などを使って移動式クラッシャー12に取り込まれ、適当な大きさに破砕されて、シュート装置のホッパーから横引きコンベアベルト901に投下される。この掘削ズリは横引きベルトコンベア901により搬送され、この横引きベルトコンベア901から、避難坑9の連続ベルトコンベア91を経由して坑外の最終搬送先まで搬送される。
【0023】
図8(2)に示すように、本坑8が所定距離まで掘進されると、移動式クラッシャー12は切羽側の所定の位置まで移動され、伸縮式ベルトコンベア1が本坑8の地面上に避難坑9側の一方の側壁に沿って設定された掘削ズリの搬送路81に設置される。この場合、図1に示すように、一対のレール2、2がこの搬送路81上で掘削ズリの搬送元であるクラッシャー12に近接する所定の位置と掘削ズリの搬送先である連絡坑90の横引きベルトコンベア901のテール部に近接する所定の位置との間に敷設される。この一対のレール2、2上に親機4、子機3が乗せられて、この一対のレール2、2上で子機3は親機4に既述のとおりに重ねて設置される。そして、親機4、子機3の各ベルトコンベア本体42、32が駆動される。このようにして掘削ズリはシャベル車11などを使って移動式クラッシャー12に取り込まれ、適当な大きさに破砕されて、シュート装置のホッパーから子機3のテール側のベルトコンベア30に落下される。このズリは子機3により上方に搬送されて、下方の親機4のベルトコンベア40に投下される。さらに、このズリは親機4により上方に搬送されて、ヘッドシュートで下方の横引きコンベアベルト901に投下される。このようにして掘削ズリは搬送先の横引きベルトコンベア901に移送され、この横引きベルトコンベア901、避難坑90の連続ベルトコンベア91により坑外の最終搬送先まで搬送される。一方、本坑8の掘削は引き続き進められ、この掘削進行に合わせて移動式クラッシャー12が移動される。これに応じて、子機3が親機4から引き出されて、親機4及び子機3からなるベルトコンベア1の全長を徐々に伸ばしていく。なお、この場合の子機3の移動は、既述の、子機3を親機4から降ろす方向に移動する場合の動作方式により行われる。このとき、子機3が親機4上の一対の重置レール51、51から一対の乗降レール61、61を経て一対のレール2、2へ移動されるが、子機3の各ベルトコンベア30、30、…は相互にヒンジ36、36、…を介して連結されていることにより、これらのレール間、特に一対の重置レール51、51から傾斜状の一対の乗降レール61、61への移動、及びこの傾斜状の一対の乗降レール61、61から一対のレール2、2への移動が円滑に行われる。このようにして掘削ズリの搬送距離を延伸し、掘削ズリを同様にして搬送先の横引きベルトコンベア901へ搬送する。
【0024】
このように子機3が親機4から引き出されていき、このベルトコンベア1が最大限まで延ばされると、移動式クラッシャー12は切羽側の所定の位置へ移動され、伸縮式ベルトコンベア1は子機3が親機4上に戻されてベルトコンベアの全長が短縮され、この状態で親機4が子機3とともに一対のレール2、2上を掘削ズリの搬送元まで、すなわちクラッシャー12に近接する所定の位置まで移動される。なお、この場合の子機3の移動は、既述の、子機3を親機4に乗り上げる方向に移動する場合の動作方式により行われ、親機4及び子機3の移動は、既述の、親機4とともに子機3を移動する場合の動作方式により行われる。そして、図8(3)に示すように、この伸縮式ベルトコンベア1の移動により、このベルトコンベア1が横引きベルトコンベア901に対して離間され、この間には他のベルトコンベア15が設置される。この他のベルトコンベア15は、既述のとおり、予備の子機3でも親機4でもよく、さらに、これら子機3、親機4とは別の建設機械として一般に使用されるベルトコンベアでもよい。このようにして掘削ズリは伸縮式ベルトコンベア1から他のベルトコンベア15を経由して搬送先の横引きベルトコンベア901へ搬送される。そして、この場合、本坑8の掘削進行に合わせて、同様に、子機3が親機4から引き出され、親機4及び子機3からなるベルトコンベア1の全長が徐々に伸ばされていく。
【0025】
このようにして本坑8の掘削とともに、子機3が親機4から引き出されていき、再び、このベルトコンベア1が最大限まで延ばされると、本坑8の切羽に近接する地点に、本坑8と避難坑9とを連絡する新たな連絡坑90が形成され、図8(4)に示すように、この連絡坑90に横引きベルトコンベア901が移設される。そして、本坑8がさらに所定距離まで掘進されると、移動式クラッシャー12が切羽側の所定の位置まで移動され、伸縮式ベルトコンベア1が掘削ズリの搬送路81に同様にして設置され、掘削ズリがこのコンベアベルト1から同様にして横引きコンベアベルト901へ搬送される。以降、このベルトコンベア1による掘削ズリの搬送方法が繰り返される。なお、前の搬送工程で用いられた一対のレール2、2は掘削ズリの搬送路81にそのまま仮置きにしてもよいが、トンネルの掘削進行毎に取り外していくことで、他の設備の干渉になることがなく、他の関連作業が容易になる。
【0026】
以上説明したように、この伸縮式ベルトコンベア1は、掘削ズリの搬送先から搬送元に向けて敷設される一対のレール2、2と、複数のベルトコンベア30、30、…からなり、一対のレール2、2上を移動可能に車輪33を有する子機3と、複数のベルトコンベア40、40、…からなり、子機3を重ねて設置可能にベルトコンベア重置手段5を有する親機4と、一対のレール2、2と親機4との間に設置されて、一対のレール2、2とベルトコンベア重置手段5とを連絡し、子機3を親機4に乗降可能に移動案内するベルトコンベア乗降手段6とを備え、親機4上に子機3を重ねて設置し、当該子機3を任意の駆動手段又は牽引手段により、親機4上のベルトコンベア重置手段5と一対のレール2、2との間で移動して、親機4及び子機3からなるベルトコンベア1の全長を伸縮させるようにしたもので、次のような効果を奏する。
(1)親機4をなす複数のベルトコンベア40、40、…の上から子機3をなす複数のベルトコンベア30、30、…を一対のレール2、2に向けて又はその反対に移動させるだけの簡単な仕組みにより、掘削ズリの搬送距離を簡易に延伸することができる。この場合、1組の親機4及び子機3からなるベルトコンベア1にさらに他の任意のベルトコンベア(15)を連続することで、掘削ズリの搬送距離を柔軟にかつ簡易にさらに延伸することができ、この搬送距離を現場の状況に合わせて自由に変更することができる。また、かかる簡単な仕組みなので、専門の技術者を必要とせず、現場管理を容易とすることができる。
(2)親機4をなす複数のベルトコンベア40、40、…の上から子機3をなす複数のベルトコンベア30、30、…を一対のレール2、2に向けて又はその反対に向けて送る構造により、従来の連続ベルトコンベアのようなベルトストレージカセットやテールピース台車などを不要として、坑口のヤードに対する制約、及び設備の固定化を排除することができる。併せて、親機4は一対のレール2、2上を移動可能に車輪43を備え、子機3とともに一対のレール2、2上に設置したので、ベルトコンベア1全体の伸縮、及びこの設備全体の移動を簡易にして、設備の固定化を防止し、他の坑内設備や関連作業への干渉を防止することができる。
(3)子機3、親機4をいずれも汎用性の高い複数のベルトコンベア30、40により組み立てるので、子機3、親機4の1機当たりの長さは容易に調整可能で、例えば1機当たりの搬送距離を最大で200m程度とすれば、これに使用するモータ、搬送ベルト、フレームなどに汎用性の高いものを使用することができ、また、メンテナンスが容易となって、設備のコストを従来に比べて大幅に削減することができる。特に、モータについては、従来の方法が最終的な長さを想定してモータを選定する必要があり、余分な電力消費が発生していたのに対し、この設備の場合、常に現状に適合する設備動力でよく、過剰な電力消費を削減でき、環境に対する負荷の削減に資することもできる。また、搬送ベルトについては、ベルト負荷が小さくなるため、搬送ベルトの接続部が1、2箇所と従来に比べて大幅に少なくなり、ベルト強度が向上する。併せて、ベルトコンベア重置手段5を搬送路上の一対のレール2、2と同じ形式の一対の重置レール51、51により構成し、さらに、ベルトコンベア乗降手段6を同様に一対のレール2、2と同じ形式の一対の乗降レール61、61により構成したので、設備全体を汎用部品により組み立てることができ、従来に比べて製造コストを大幅に削減することができ、メンテナンスもまた容易かつ低廉に行うことができる。他面で、この設備の構造は負荷が小さく、傷みが少ないため、メンテナンスはさらに容易となる。
(4)子機3、親機4を共に複数のベルトコンベア30、40を連結して構成するが、このベルトコンベア30、40の数は掘削ズリの搬送距離に応じて適宜決定することになる。すなわち、トンネルの掘削工事が長く、掘削ズリの搬送距離が長い場合は、この距離に応じて、子機3、親機4を共に多くのベルトコンベア30、40により構成し、反対に、トンネルの掘削工事が短く、搬送ズリの搬送距離が短い場合には、これに合わせて子機3、親機4を共に又は子機3のみを少ないベルトコンベア30、40により構成すればよい。この設備では、例えば2000m又はそれ以上の長いトンネルでも、また2000mよりも短いトンネルでも適用可能であり、上記設備コストの点に注目すると、2000m又はそれ以上の長いトンネルの場合でも、また2000mよりも短いトンネルの場合でも、従来に比べて、大幅なコストダウンを図ることができる。
【0027】
また、この実施の形態では、1機の親機4の上に1機の子機3を重ねて設置する伸縮式ベルトコンベア1を例示したが、子機3に親機4と同様にベルトコンベア重置手段5を備える(言い換えれば、子機3と親機4とを同じ構成にする)ことで、親機4の上に子機3を乗せ、この子機3の上にさらに子機3を乗せるというように、親機4の上に複数の子機3、3を重ねて設置してもよく、このようにすることにより、掘削ズリの搬送距離を柔軟にかつ簡易にさらに延伸することができ、この搬送距離を現場の状況に合わせて自由に変更することができる。
【0028】
また、この実施の形態では、1組(1機の親機4及び子機3)の伸縮式ベルトコンベア1を例示したが、複数組の伸縮式ベルトコンベア1、…を備えて、各組のベルトコンベア1、…を相互に移動して連係させることにより、掘削ズリの搬送距離を柔軟にかつ簡易にさらに延伸することができ、この搬送距離を現場の状況に合わせて自由に変更することができる。
【0029】
さらに、この実施の形態では、親機4に一対のレール2、2上を移動可能に車輪43を備え、子機3とともに一対のレール2、2上を移動可能にしたが、この親機4を固定式として、運搬物の搬送先に据え付けて、親機4から子機3を一対のレール2、2に対して進退可能な形式にしてもよい。この場合、トンネルの長さが比較的短い場合に適合し、上記と同様の作用効果を奏することができる。親機4を移動式にするか又は固定式にするかはトンネルの掘削長さに応じて選定すればよい。
【0030】
またさらに、この実施の形態では、ベルトコンベア重置手段5を一対のレール2、2と同じ形式の一対の重置レール51、51により構成したが、この重置手段5は子機3の車輪33を移動案内できる構造であればよく、例えば溝形の部材に代えることもでき、このようにしても同様の作用効果を奏することができる。
【0031】
またさらに、この実施の形態では、ベルトコンベア乗降手段6をベルトコンベア重置手段5から搬送路の一対のレール2、2に向けて斜めに延びるレール構造に構成したが、この乗降手段6は子機3の車輪33を移動案内できる構造であればよく、例えば溝形の部材に代えることもでき、このようにしても同様の作用効果を奏することができる。また、ベルトコンベア乗降手段6を親機4の先端に固定したが、このベルトコンベア乗降手段6を親機4の先端に着脱可能に連結してもよく、このようにすることにより、親機4、子機3の一対のレール2、2への乗り上げに使用することもできる。
【0032】
またさらに、この実施の形態では、子機3を、テール側のベルトコンベア30を一対のレール2、2上に置いた状態で、親機4の上に重ねて設置しているが、子機3を親機4の上に(一対のレール2、2に置かないで)完全に重ねて設置しても勿論かまわない。
【0033】
これらの補足事項を、任意に組み合せ可能なことは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
1 伸縮式ベルトコンベア
11 シャベル車
12 移動式クラッシャー
13 シュート装置
14 ヘッドシュート
15 他のベルトコンベア
2 レール
21 支持部材
3 ベルトコンベア子機
30 ベルトコンベア
31 子機フレーム
311、311 両側フレーム
312 繋ぎフレーム
32 ベルトコンベア本体
321 ローラ台
322 ヘッドプーリ
323 ローラブラケット
324 キャリアローラ
325 リターンローラ
325B ローラブラケット
326 搬送ベルト
33 車輪
331 車輪ブラケット
332 支持ブラケット
333 ヒンジ
34 レールクランプ
35 牽引金具
36 ヒンジ
361 固定部
362 連結部
363 長穴
36B ヒンジブラケット
36P ヒンジピン
4 ベルトコンベア親機
40 ベルトコンベア
41 親機フレーム
411、411 両側フレーム
412 繋ぎフレーム
42 ベルトコンベア本体
421 ロータ台
422 ヘッドプーリ
423 ローラブラケット
424 キャリアローラ
425 リターンローラ
425B ローラブラケット
426 搬送ベルト
43 車輪
431 車輪ブラケット
432 支持ブラケット
433 ヒンジ
44 レールクランプ
46 ヒンジ
461 固定部
462 連結部
463 長穴
46B ヒンジブラケット
46P ヒンジピン
5 ベルトコンベア重置手段
51 重置レール
6 ベルトコンベア乗降手段
61 乗降レール
62 支持部材
63 コロ
631 コロブラケット
7 子機引き上げ用ウィンチ
71 ワイヤロープ
8 本坑
81 掘削ズリの搬送路
9 避難坑
90 連絡坑
901 横引きベルトコンベア
91 連続ベルトコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬物の搬送元から搬送先に向けて敷設される一対のレールと、
前記一対のレール上を移動可能に車輪を有するベルトコンベア子機と、
前記子機を重ねて設置可能にベルトコンベア重置手段を有するベルトコンベア親機と、
前記一対のレールと前記親機との間に設置されて、前記一対のレールと前記ベルトコンベア重置手段とを連絡し、前記子機を前記親機に乗降可能に移動案内するベルトコンベア乗降手段と、
を備え、
前記親機上に前記子機を重ねて設置し、当該子機を任意の駆動手段又は牽引手段により、前記親機と前記一対のレールとの間で移動して、前記親機及び前記子機からなるベルトコンベアの全長を伸縮させる、
ことを特徴とする伸縮式ベルトコンベア。
【請求項2】
親機は一対のレール上を移動可能に車輪を有し、前記一対のレール上に設置される請求項1に記載の伸縮式ベルコンベア。
【請求項3】
親機は固定式で運搬物の搬送先に据え付けられる請求項1に記載の伸縮式ベルトコンベア。
【請求項4】
親機に複数の子機を重ねて設置可能に、前記複数の子機にベルトコンベア重置手段を備える請求項1乃至3のいずれかに記載の伸縮式ベルトコンベア。
【請求項5】
ベルトコンベア重置手段は一対のレールと同じ形式の一対のレールからなる請求項1乃至4のいずれかに記載の伸縮式ベルトコンベア。
【請求項6】
ベルトコンベア乗降手段はベルトコンベア重置手段から搬送路の一対のレールに向けて斜めに延びるレール構造を有する請求項1乃至5のいずれかに記載の伸縮式ベルトコンベア。
【請求項7】
ベルトコンベア乗降手段は親機の先端に固定して又は着脱可能に連接される請求項1乃至6のいずれかに記載の伸縮式ベルトコンベア。
【請求項8】
親機及び子機からなるベルトコンベアにさらに他のベルトコンベアが連続されて、運搬物の搬送距離を延伸する請求項1乃至7のいずれかに記載の伸縮式ベルトコンベア。
【請求項9】
親機及び子機からなるベルトコンベアを複数組備え、各組の親機及び子機からなるベルトコンベア相互の連係により、運搬物の搬送距離を延伸する請求項1乃至8のいずれかに記載の伸縮式ベルトコンベア。
【請求項10】
トンネルの掘削工事において、掘削ズリの搬送路に沿って請求項1乃至9のいずれかに記載の伸縮式ベルトコンベアを設置し、トンネルの掘削の進捗に合せて、親機から子機を移動して、前記親機及び前記子機からなるベルトコンベアの全長を伸ばし、掘削ズリの搬送距離を延伸する、
ことを特徴とする伸縮式ベルトコンベアを用いた掘削ズリ搬送方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−242382(P2010−242382A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92542(P2009−92542)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【Fターム(参考)】