説明

伸縮構造を有するハンドセット

【課題】送話器と受話器間の距離を可変可能なハンドセットにおいて、使用開始時には自動的に通話に適した長さに伸長し、使用終了時にはコンパクトな電話機本体に釣り合う長さに自動的に収縮して載置するハンドセットを提供する。
【解決手段】ハンドセット10のフックスイッチ検出部13が、ハンドセット10の非載置状態を検出すると、制御部CPU2はハンドセット制御部3に対して伸長要求コマンドの送信を指示し、伸縮駆動部11はハンドセット10を収縮状態から通話に適した長さにまで自動的に伸長する。またハンドセット10の載置状態を検出すると、制御部CPU2はハンドセット制御部3に対して収縮要求コマンドの送信を指示し、伸縮駆動部11はハンドセット10を伸長状態から収納に適する長さにまで自動的に収縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話機の伸縮構造を有するハンドセットに関する。
【背景技術】
【0002】
固定電話機の電話機本体は卓上等で使用する際、面積を広く取らないようにコンパクトなサイズにしたいという要求がある一方、使用するハンドセットは使い勝手を優先して、従来型のハンドセットの構造やサイズを維持したいという、相反する要求がある。
【0003】
その為、電話機本体を小型化してもハンドセットの形状は変えられず、電話機本体からハンドセットだけ突出した形でクレードルに載置する場合があり、電話機本体をコンパクトにしたメリットが十分に活かされず、また突き出た部分は邪魔にもなりやすい。
【0004】
固定電話機のハンドセットの長さ調整を可能とした技術としては従来、使用者の身体、骨格の相違により、ハンドセットの送話器と受話器の距離が長すぎたり、短すぎたりして使いにくいという問題を解決するために、送話器と受話器の距離や相対角度を可変にして調整する技術(例えば特許文献1参照)、あるいは送話器、受話器を手で持ち、両者を引っ張ったり押し縮めたり曲げたりして伸縮させる構造を持つハンドセットの技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしこれらの技術はいずれもハンドセットの長さ調整を手操作で行うものであり、使用者が一度長さ調整をしたら、同一使用者が使う限り、その後はハンドセットの長さを滅多に変えずに使用することを想定している。即ち、前記の従来技術ではハンドセットを伸縮させることは出来ても、発信したり着信に応答したりしようとした時に毎回、ハンドセットの送話器と受話器間の距離を手操作で伸ばし、終話した時点で元の長さに手操作で縮めて戻すのは手間が掛かるため、実用的な使い方とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】公開実用新案公報 昭61−182140号
【特許文献2】公開実用新案公報 平2−77950号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、送話器と受話器間の距離が可変なハンドセットにおいて、コンパクトな電話機本体に釣り合う長さに収縮した状態で電話機本体に載置し、使用開始時には自動的に通話に適した長さに伸長し、使用終了時にはコンパクトな電話機本体に釣り合う長さに自動的に収縮するハンドセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、ハンドセットを構成する送話器と受話器間の距離が伸縮する機構を有する電話機のハンドセットであって、前記送話器と受話器間の距離を調整する距離調整手段と、前記電話機本体に自ハンドセットが載置された状態であるか否かを検知する載置検知手段と、を有し、前記載置検知手段が載置状態から非載置状態になったことを検知した場合、または前記載置検知手段が載置状態を検知している状態で前記電話機本体から自ハンドセットが前記送話器と受話器間の距離を伸長する要求コマンドを受信した場合に、前記距離調整手段は前記送話器と受話器間の距離を予め定められた通話に適する距離にまで自動的に伸長し、前記載置検知手段が非載置状態から載置状態になったことを検知した場合、または前記載置検知手段が載置状態を検知している状態で前記電話機本体から前記送話器と受話器間の距離を収縮する要求コマンドを受信した場合に、前記距離調整手段は前記送話器と受話器間の距離を前記電話機本体上での収納に適する予め定められた距離にまで自動的に収縮することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電話機を使用していない時に、ハンドセットは収納に適するコンパクトな長さに収縮するので、コンパクトな電話機本体に対して突き出た部分の無い、電話機外観の美観を高めたデザインが可能となる。また、ハンドセットで通話する時に、通話に適した長さに伸長するので、ハンドセットとしての使い勝手は損なわれない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】収縮状態におけるハンドセット及びハンドセット下部破断図
【図2】伸長状態におけるハンドセット及びハンドセット下部破断図
【図3】伸縮構造を有するハンドセットと電話機本体のブロック図
【図4】載置中に伸長状態となったハンドセットと電話機本体の図
【図5】載置中に収縮状態となったハンドセットと電話機本体の図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係るハンドセットの構造を図1に示す。図1においてハンドセット10は内部に受話器を装着したハンドセット上部20と、内部に送話器を装着したハンドセット下部30とから成る。
【0012】
ハンドセット上部20のハンドル部21は筒状で、その外寸はハンドセット下部30の筒状のハンドル部31の内寸より僅かに小さく、ハンドセット上部20のハンドル部21をハンドセット下部30のハンドル部31内に差し込み、ハンドセット10として一体化する。ハンドセット上部20のハンドル部21とハンドセット下部30のハンドル部31は摺動可能である。
【0013】
ハンドセット10はハンドセット上部20の受話器部23とハンドセット下部30の送話器部35の距離を調整する手段を有する。距離調整手段としてモータを用いた例を示す。
【0014】
ハンドセット下部30にはモータ32を取り付け、モータ32の回転軸33がハンドセット10の長さ方向と直角となるようにモータ32を固定する。ハンドセット上部20にはラック22を取り付け、ピニオン34と噛合した状態でハンドセット10の長さ方向に平行となるようにラック22を固定する。
【0015】
モータ32の正回転により、回転軸33に固着したピニオン34が同方向に回転し、ハンドセット上部20のハンドル部21とハンドセット下部30のハンドル部31は、受話器部23と送話器部35が互いに離れる方向に摺動して、ハンドセット10が伸長状態に遷移する。この状態を図2に示す。
【0016】
モータ32の回転軸33が逆回転することにより、ハンドセット上部20のハンドル部21とハンドセット下部30のハンドル部31は、受話器部23と送話器部35が互いに近付く方向に摺動し、ハンドセット10が収縮した図1の状態に遷移する。
【0017】
図3にハンドセット10のブロック図、及び電話機本体1のブロック図の1例を示す。
【0018】
ハンドセット10の伸縮駆動部11は電話機本体1から伸長要求コマンドを受信することにより、前記モータ32に対し正回転動作となる駆動信号を出力し、収縮要求コマンドを受信することにより、モータ32に対し逆回転動作となる駆動信号を出力する。
【0019】
ハンドセット10の伸縮リミット検出部12は、ハンドセット10が伸長動作中に、送話器と受話器間の距離が、予め定められた通話に適する距離にまで伸長したことを検知すると、伸縮駆動部11にモータ停止信号を出力する。この状態を図4に示す。また、ハンドセット10が収縮動作中に、送話器と受話器との距離が、電話機本体上での収納に適する予め定められた距離に達したことを検知すると、伸縮駆動部11にモータ停止信号を出力する。この状態を図5に示す。
【0020】
伸縮駆動部11はモータ停止信号を受信すると、モータ32に対する正回転方向、又は逆回転方向の駆動信号出力を停止する。
【0021】
ハンドセット10は、電話機本体1に載置された状態であるか、電話機本体1から取り外された状態であるかを検知する載置検知手段として、フックスイッチ検出部13を有する。フックスイッチ状態信号は電話機本体の制御部CPU2に伝えられる。
【0022】
回線を捕捉して発信したり、着信に対して応答するなど、ハンドセット10をオフフックして使用する際には、ハンドセット10のフックスイッチ検出部13がハンドセット載置状態からハンドセット非載置状態への変化を検出し、電話機本体1の制御部CPU2に載置状態変化が伝えられる。制御部CPU2はハンドセットとのインタフェース制御を行うハンドセット制御部3に対し、伸長要求コマンドの送信を指示する。ハンドセット制御部3は伸長要求コマンドをハンドセット10に対して送信する。ハンドセット10の伸縮駆動部11が伸長要求コマンドを受信し、ハンドセット10は伸長動作する結果、収縮状態から通話に適した長さにまで自動的に伸長する。
【0023】
使用後にハンドセット10を電話機本体1にオンフックすると、ハンドセット10のフックスイッチ検出部13がハンドセットの非載置状態から載置状態への変化を検出し、電話機本体1の制御部CPU2に載置状態変化が伝えられる。制御部CPU2がハンドセット制御部3に収縮要求コマンドの送信を指示し、ハンドセット制御部3がハンドセット10に対して収縮要求コマンドを送信する。ハンドセット10の伸縮駆動部11が当該コマンドを受信すると、ハンドセット10は収縮動作し、伸長状態から収納に適する長さにまで自動的に収縮する。
【0024】
なお、フックスイッチ検出部13は電話機本体1側に設けても良い。その場合、載置状態の変化は直接に電話機本体1の制御部CPU2に伝えられるが、伸縮の制御方法はフックスイッチ検出部13をハンドセット10側に設けた場合と同様である。
【0025】
電話機本体1が待機中にハンドセット10をオフフックする代わりに、回線捕捉あるいは着信応答動作を行うことができるスピーカキー4を有する場合、待機中にスピーカキー4の押下状態を電話機本体1の制御部CPU2が検出すると、ハンドセット制御部3に伸長要求コマンド送信を指示し、以下全く同様にしてハンドセット10は自動的に伸長する。ハンドセット10が電話機本体1に載置された状態のまま通話に適した長さにまで伸長後、ハンドセット10をオフフックして使用することも可能である。また、オフフックせずに載置状態のまま使用後スピーカキー4を再押下すると、電話機本体1の制御部CPU2が当該キーの再押下を検出し、待機状態に戻ると共に、ハンドセット10に対して収縮要求コマンド送信を指示する。ハンドセット10の伸縮駆動部11が当該コマンドを受信し、伸長状態から収納に適する長さにまで自動的に収縮する。
【0026】
電話機本体1の待機中状態から電話機を使用開始する際のハンドセット10の自動伸長動作、及び使用終了して待機状態に戻る際のハンドセット10の自動収縮動作は、着信を検出して呼出を開始する時点、及び呼出中に発呼者が呼出を放棄する場合にもそれぞれ起動することが可能である。
【0027】
即ち、待機中に電話機本体1の着信検出部5から着信検知の情報を制御部CPU2が受信すると、ハンドセット制御部3に伸長要求コマンド送信を指示し、ハンドセット10の伸縮駆動部11が受信し、ハンドセット10は通話に適した長さにまで自動的に伸長する。その結果、オフフックして応答する操作を容易に行うことが可能となる。
【0028】
応答前に発呼者が呼出を放棄した場合、着信検出部5から着信停止の情報を制御部CPU2が受信し、ハンドセット制御部3に収縮要求コマンド送信を指示する。ハンドセット10の伸縮駆動部11が当該コマンドを受信し、ハンドセット10は収納に適した長さにまで自動的に収縮する。
【0029】
発信時、ダイヤルを設定してから回線を捕捉して発信する場合も同様な動作が可能である。即ち、ハンドセット10が電話機本体1に載置された状態で、電話機本体1のダイヤルキー部6のダイヤル押下を制御部CPU2が検出すると、ハンドセット制御部3に伸長要求コマンド送信を指示する。ハンドセット10の伸縮駆動部11が受信し、ハンドセット10は通話に適した長さにまで自動的に伸長する。その後相手の応答により、オフフックして通話することも可能である。
【0030】
また、電話機本体1の制御部CPU2が最終ダイヤルを検出後、通話状態にならずに所定の時間が経過した場合、発信を放棄したものと見なして、収縮要求コマンドを送信し、ハンドセット10を収納に適した長さにまで自動的に収縮させる。
【0031】
さらに、ハンドセット10に掌接近検出部14を、たとえばハンドセット下部30のハンドル部31上面に設けることにより、載置状態のハンドセット10を電話機本体1から取り上げる動作に入る時点の、手の接近、接触の検出が可能となる。電話機本体1が待機中または着信中に、オフフックする為に掌をハンドセット10に近付けたことを掌接近検出部が検出し、電話機本体1側のハンドセット制御部3に掌接近情報を出力すると、ハンドセット制御部3から制御部CPU2に掌接近情報が伝達される。
【0032】
受け取った制御部CPU2は伸長要求コマンドの送信指示を行い、ハンドセット制御部3から伸長要求コマンドが出力され、ハンドセット10の伸縮駆動部11が当該コマンドを受けてハンドセット10を伸長駆動する。その結果、ハンドセット10が載置状態のまま、通話に適した長さにまで自動的に伸長する。したがってハンドセット10はオフフック検出以前に伸長するので、容易にハンドセット10をオフフックすることが可能となる。
【0033】
その後、掌接近情報が途絶え、かつハンドセット10が載置状態のまま所定時間経過した場合、即ちオフフック操作またはスピーカキー4押下操作が所定時間なされない場合には、使用開始を中断したものとみなして、電話機本体1はハンドセット制御部3に収縮要求コマンド送信を指示することが可能である。ハンドセット10の伸縮駆動部11が当該コマンドを受信すると、ハンドセット10は収納に適した長さにまで自動的に収縮する。
【符号の説明】
【0034】
1 ・・・電話機本体
2 ・・・電話機本体の制御部CPU
3 ・・・電話機本体のハンドセット制御部
4 ・・・電話機本体のスピーカキー
5 ・・・電話機本体の着信検出部
6 ・・・電話機本体のダイヤルキー部
10・・・ハンドセット
11・・・伸縮駆動部
12・・・伸縮リミット検出部
13・・・フックスイッチ検出部
14・・・掌接近検出部
20・・・ハンドセット上部
21・・・ハンドセット上部のハンドル部
22・・・ラック
23・・・ハンドセット上部の受話器部
30・・・ハンドセット下部
31・・・ハンドセット下部のハンドル部
32・・・モータ
33・・・モータの回転軸
34・・・ピニオン
35・・・ハンドセット下部の送話器部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドセットを構成する送話器と受話器間の距離が伸縮する機構を有する電話機のハンドセットであって、
前記送話器と受話器間の距離を調整する距離調整手段と、前記電話機本体に自ハンドセットが載置された状態であるか否かを検知する載置検知手段と、を有し、
前記載置検知手段が載置状態から非載置状態になったことを検知した場合、または前記載置検知手段が載置状態を検知している状態で前記電話機本体から前記送話器と受話器間の距離を伸長する要求コマンドを受信した場合に、前記距離調整手段は前記送話器と受話器間の距離を予め定められた通話に適する距離に伸長し、
前記載置検知手段が非載置状態から載置状態になったことを検知した場合、または前記載置検知手段が載置状態を検知している状態で前記電話機本体から前記送話器と受話器間の距離を収縮する要求コマンドを受信した場合に、前記距離調整手段は前記送話器と受話器間の距離を前記電話機本体での収納に適する予め定められた距離に収縮することを特徴とする伸縮構造を有するハンドセット。
【請求項2】
ハンドセットを構成する送話器と受話器間の距離が伸縮する機構を有する電話機のハンドセットであって、
前記送話器と受話器間の距離を調整する距離調整手段と、前記電話機本体に自ハンドセットが載置された状態であるか否かを検知する載置検知手段と、自ハンドセットに接近または接触する手の存在を検知する手検知手段と、を有し、
前記載置検知手段が載置状態を検知している状態で、前記手検知手段が手の接近または手の接触を検知した場合に、前記距離調整手段は前記送話器と受話器間の距離を予め定められた通話に適する長さに伸長し、前記送話器と受話器間の距離を伸長した後に、所定時間内に発着信操作が為されなかった場合に、前記距離調整手段は前記送話器と受話器間の距離を前記電話機本体での収納に適する予め定められた距離に収縮することを特徴とする伸縮構造を有するハンドセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−46076(P2013−46076A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180051(P2011−180051)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】