伸縮管漏水防止装置
【課題】伸縮管漏水防止装置をコンパクトに且つ軽量にする。
【解決手段】管体p,p間の伸縮管1の外周を可撓性を有する伸縮カバー2で覆って両管体p,pを水密に固定し、伸縮管1が前記管体pから離脱した際に前記伸縮カバー2を介して両管体p,pの接続が維持されるようにし、前記伸縮カバー2の外周を筒状を成す防護カバー40で覆い、その防護カバー40は、繊維製のフラットなシート部41と、前記シート部41に格子状に固定された周方向の繊維製の補強ベルト42と軸方向の繊維製の補強ベルト44とを有し、前記軸方向の補強ベルト44の両端部44a,44aが両管体p,pに固定される構成とした。水圧により伸縮カバー2が外径方向に膨らむのを防護カバー40が拘束して補強し、その防護カバー40に作用する力は、その多くが縦横に伸びる補強ベルト12,14が負担する。このため、防護シート40の厚さの増大、重量の増大を抑えることができる。
【解決手段】管体p,p間の伸縮管1の外周を可撓性を有する伸縮カバー2で覆って両管体p,pを水密に固定し、伸縮管1が前記管体pから離脱した際に前記伸縮カバー2を介して両管体p,pの接続が維持されるようにし、前記伸縮カバー2の外周を筒状を成す防護カバー40で覆い、その防護カバー40は、繊維製のフラットなシート部41と、前記シート部41に格子状に固定された周方向の繊維製の補強ベルト42と軸方向の繊維製の補強ベルト44とを有し、前記軸方向の補強ベルト44の両端部44a,44aが両管体p,pに固定される構成とした。水圧により伸縮カバー2が外径方向に膨らむのを防護カバー40が拘束して補強し、その防護カバー40に作用する力は、その多くが縦横に伸びる補強ベルト12,14が負担する。このため、防護シート40の厚さの増大、重量の増大を抑えることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道管、各種送水管、送油管等が、河川、道路、鉄道等と橋梁形式で交差する際に設けられる管橋において、その管橋の端部に設けられる「伸縮管(管軸方向、管径方向への変位を許容する伸縮管継手を含む)」に取り付けられる伸縮管漏水防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水道管等が、河川、道路、鉄道などを横断する際に設けられる管橋(いわゆる水管橋、添架管等、以下総称して「水管橋」という)Bは、例えば、図15に示す橋台Aが、通常の橋梁と同様に相対して設けられて、その相対する橋台A,A間を管体pで結んで水管橋Bを構成している。
この構造において、温度変化に伴う管体pの伸縮や、地震等による下部工変位に伴い管体pに作用する引張力や押込み力、曲げを吸収できるように、管体pの途中に伸縮管1を設けているものが多い。
【0003】
さらに、近年は、著大な地震動にも対応するべく、水管橋に対しより大きな変形に対する追従性が求められつつある。すなわち、管軸方向へのより大きな伸縮や、管径方向(管軸直角方向)へのより大きな変位に対しても、管体pの破損や脱管が生じないようにすることが求められている。
【0004】
しかし、水管橋にこのような機能を備えることは、伸縮管の大型化とともに橋りょうの橋台面間寸法の増加、及びコストアップにつながる。また、既設の水管橋の改築には相当な費用と時間を要するという問題がある。
【0005】
そこで、従来の嵩張らない安価な伸縮管を用いながらも、万が一、著大な地震動により伸縮管の脱管や破損が生じた際に、少なくとも漏水を阻止して通水機能を維持することを可能にした伸縮管漏水防止装置の技術が開示されている。
【0006】
例えば、特許文献1に記載の技術は、水管橋の両端部に設けられた伸縮管の外周部に伸縮管漏水防止装置を取り付けたものである。
【0007】
その構成は、図15に示すように、伸縮管(伸縮管継手)1の外周をその全周、全長に亘ってゴム製の伸縮カバー2で覆っている。前記伸縮カバー2は、その軸方向両端部が、それぞれ前記伸縮管1を挟んで両側の管体p,pの各固定具3,3に対し締付部材6で水密に固定されている。
締付部材6は、樹脂を含浸させた高強度繊維等の帯体で作られた止水バンドであり、その締付部材6を前記伸縮カバー2の外周に巻き付けることにより、その伸縮カバー2が固定具3の外周に締付けるように固定される。
【0008】
また、その伸縮カバー2のさらに外周を、高強度繊維からなる筒状の防護カバー10で覆っている。防護カバー10は、その軸方向両端部が、前記両管体p,pの外周に嵌るストップリング5で各管体p,pに固定されている。
【0009】
地震動により、伸縮管1が管体pから離脱すると、例えば、図16(a)から図16(b)に示すように、伸縮カバー2が変形し、その伸縮カバー2を介して前記両管体p,pの接続が維持される。このため、水管橋の漏水が防止され、通水機能が阻害されない。
【0010】
また、伸縮カバー2の外周を覆う防護カバー10を両管体p,pに固定しているので、その防護カバー10は、伸縮管1から脱管した管体p,p同士を支える。
さらに、防護カバー10が、ゴム製の伸縮カバー2が水圧により外径側に膨らむのを拘束することによりその伸縮カバー2を補強し、伸縮カバー2に過度な力が作用して破損することを防止している。
なお、防護カバー10には、両管体p,pの離反を所定位置で拘束することによる落橋防止効果も期待できる(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
【特許文献1】特開2003−96833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記図15及び図16に示す伸縮管漏水防止装置によれば、伸縮カバー2はゴム等の可撓性を有する素材で構成されるので比較的強度が低い。このため、その伸縮カバー2を補強する前記防護カバー10には、比較的高い強度が求められる。
【0013】
しかし、防護カバー10に強い強度を求めると、その防護カバー10は相当な厚さ、重量を有するものとなってしまう。
防護カバー10の嵩が増え、あるいは重量が増えることは、伸縮管漏水防止装置の大型化及びコストアップにつながるので、好ましくない。
【0014】
そこで、この発明は、所定の強度を発揮しつつ、コンパクト且つ軽量な伸縮管漏水防止装置とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、この発明は、伸縮カバーの外側に配置する防護カバーとして繊維製のものを採用し、その構成を、前記伸縮カバーを覆う繊維製のフラットなシート部の表面に、周方向、軸方向とに伸びる格子状の繊維製ベルトを固定したものとしたのである。
【0016】
伸縮カバーを補強する素材には厳密な水密性(止水性)は求められないので、防護カバーの素材として繊維を用いることは差し支えない。繊維は軽いので軽量化に寄与し得る。
また、防護カバーに求められる強度としては、上記のように、繊維製のフラットなシート部に加え、繊維製の補強ベルトを格子状に配置したので、伸縮カバーが水圧により外径側へ膨らんだ際に、各補強ベルトがそれぞれの長さ方向への力に対抗することができる。すなわち、カバー全体に生じる張力が、補強ベルトに伝達されるので、シート部の部材は厚いものにする必要がない。
このため、防護カバー全体の厚さの増大、重量の増大を抑えつつ、所定の強度を発揮させることができる。なお、所定の強度を発揮させるために、例えば、アラミド繊維等の高強度繊維と呼ばれる素材を採用すれば、嵩の増加を抑える上でさらに有効である。
【0017】
具体的な構成として、上記防護カバーを伸縮カバーの軸方向両端部外周で管体に固定する態様を採用し得る。
すなわち、その構成は、管体同士を接続する伸縮管の外周を軸方向全長に亘って可撓性を有する筒状の伸縮カバーで覆い、前記伸縮カバーの軸方向両端部全周をそれぞれ前記両管体に水密に固定して、前記伸縮管が前記管体から離脱した際に前記伸縮カバーが変形することにより前記伸縮カバーを介して前記両管体の接続が維持されるようにした伸縮管用漏水防止装置において、前記伸縮カバーの外周を筒状を成す防護カバーで覆い、その防護カバーは、筒状を成す繊維製のフラットなシート部と、前記シート部に格子状に固定された周方向全周に連続する環状の繊維製の補強ベルトと軸方向全長に延びる繊維製の補強ベルトとを有し、前記軸方向の補強ベルトの両端部が、それぞれ前記伸縮カバーの軸方向両端部外周で前記両管体に固定され、その防護カバーは前記伸縮管が前記管体から離脱した際にも前記両管体への接続が維持される構成を採用した。
【0018】
この構成によれば、防護カバーは伸縮カバーとの重複部分において、その伸縮カバーと一体に管体に固定される。なお、防護カバーには「弛み」を設けることができる。
【0019】
この構成において、前記伸縮カバーが、前記両管体の外周に設けた環状の固定具の外周に固定されている場合において、前記軸方向の補強ベルトの両端部が、それぞれ前記伸縮カバーの軸方向両端部外周を囲む固定用部材に係止されて、その固定用部材を前記固定具の外周に対し内径側へ締め付けることにより前記軸方向の補強ベルトの両端部が前記両管体に固定される構成を採用し得る。
締付けによる固定方法を採用すれば、防護カバーの着脱が容易である。
【0020】
なお、前記両管体同士が相互に遠ざかる方向に移動することを阻止する離反防止手段を備えれば、伸縮カバーが大きく変形することにより防護カバーが管体からはずれてしまうことを防止し得る。
【0021】
また、上記防護カバーを管体の外周に直接固定することもできる。
すなわち、その構成は、管体同士を接続する伸縮管の外周を軸方向全長に亘って可撓性を有する筒状の伸縮カバーで覆い、前記伸縮カバーの軸方向両端部全周をそれぞれ前記両管体に水密に固定して、前記伸縮管が前記管体から離脱した際に前記伸縮カバーが変形することにより前記伸縮カバーを介して前記両管体の接続が維持されるようにした伸縮管用漏水防止装置において、前記伸縮カバーの外周を筒状を成す防護カバーで覆い、その防護カバーは、筒状を成す繊維製のフラットなシート部と、前記シート部に格子状に固定された周方向全周に連続する環状の繊維製の補強ベルトと軸方向全長に延びる繊維製の補強ベルトとを有し、前記軸方向の補強ベルトの両端部が、それぞれ前記各管体の外周に固定され、その防護カバーは前記伸縮管が前記管体から離脱した際にも前記両管体への接続が維持される構成を採用した。
【0022】
この構成によれば、防護カバーが管体に直接固定されるので、その防護カバーが両管体の離反を所定位置で拘束し、それ以上両管体が離れないようにする効果を期待できる。
【0023】
なお、前記防護カバーを管体に直接固定する構成において、軸方向の補強ベルトの両端部は、それぞれ前記各管体の外周に取り付けた固定用部材を介して前記各管体の外周に固定される構成とすることができる。
【0024】
上記各固定用部材を設けた構成において、その固定用部材として、前記管体の外周面に沿う弧状のサドル部材を周方向に沿って複数連結して環状にしたものとし、前記軸方向の補強ベルトの端部は軸方向に折り返されてリング状の係止部として、その係止部に前記サドル部材が挿通されることにより前記端部が前記固定用部材に係止される構成を採用し得る。
このようにすれば、前記軸方向の補強ベルトの両端部を管体に固定しやすくなる。
【0025】
また、前記防護カバーのシート部は、フラットなシートを筒状に巻いて形成され、前記周方向の補強ベルトは前記シートに複数本並列して固定されており、前記シートに固定した前記周方向の補強ベルトの両端部にそれぞれ係止部を設け、前記係止部同士が係止されることにより前記周方向の補強ベルトは環状に連結される構成を採用し得る。
このようにすれば、防護カバーは管の外周に巻き付けて取り付けることができるので、例えば、供用中の管路において、管体の抜き差しを行うことなく防護カバーを容易に付加することができる。
【0026】
なお、前記各構成の伸縮管漏水防止装置は、様々な場所に敷設された種々の用途の管路における伸縮管に採用できる。例えば、相対する橋台間を管体で結んで設けられた管橋の前記橋台上に設けられた伸縮管に、採用することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明は、伸縮管漏水防止装置の防護カバーを、筒状を成す樹脂製のシート部と、前記シート部に格子状に固定された周方向及び軸方向の補強ベルトとで構成したので、防護カバーに作用する張力が、確実に補強ベルトに伝達される。このため、防護カバー全体の厚さの増大、重量の増大を抑えつつ、その防護カバーに所定の強度を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第一の実施形態)
第一の実施形態を図1乃至図7に基づいて説明する。この実施形態の漏水防止装置は、水管橋Bの橋台A上において、水道管の管体p,pの接合部に伸縮管(伸縮管継手)1が設けられている。伸縮管1は、接続された管体p,p間の所定の量の軸方向伸縮を許容する。
【0029】
伸縮管1としては、公知の種々の構造を採用し得るが、この実施形態では図1及び図2に示すように、管体p,pの接合部の外周に、その管体pよりもやや大径の管体1aを設け、シール材1bをリング状の固定部材1cで固定したものである(他の構造の伸縮管でもよい)。
その伸縮管1は、図1に示すように、常時は、突き合わされた管体p,p同士を、距離tだけ離した状態に固定している。温度変化に伴う管の伸縮時や震災等による大きな外力が作用した場合は、シール材1b及び固定部材1cと管体pの外周面との間にスリップが生じて、水道管がその管軸方向に沿って伸縮できるようになっている。
【0030】
その伸縮管1の外周を覆うように、筒状を成す伸縮カバー2が取り付けられている。この第一の実施形態では、伸縮カバー2は、ゴムシートを筒状として構成されている。
その伸縮カバー2の両端部を管体pに固定するための固定具3は、この実施形態では、H型断面を有する環状部材を採用しており、溶接により管体pの外周に不動に固定されている。なお、固定具3は、管体pの外周面に締付け等により不動に固定してもよい。また、前記ゴムシートは予め筒状に形成されたチューブを用いてもよいし、1枚のフラットなシート状のものを1周巻き(図4(c)参照)、又は2周巻き以上に巻回(図4(d)参照)して筒状にしてもよい。さらに、2枚又はそれ以上の枚数のゴムシートを併用して、必要に応じて1周巻き、又は2周巻き以上(図4(e)参照)にして固定してもよい。
【0031】
前記伸縮カバー2は、可撓性、伸縮性を有する柔軟な水密ゴムで作られており、その軸方向両端部が前記固定具3に対して締付部材6を介して固定されている。その締付部材6として、この実施形態は、図3及び図4に示すように、金属製の固定バンド30を採用している。
【0032】
固定バンド30の構成は、図3に示すように、前記伸縮カバー2を巻き付ける前記固定具3の外周面の周方向円周長L1よりも、やや短い長さL2を有するフラットな金属製シートからなる平面視矩形のシート部31と、そのシート部31に固定された係止部32a,32b,33a,33bとを備えている。
【0033】
また、係止部32a,32b,33a,33bは、前記シート部31と同一の素材からなる金属製シートの先端部を二つ折りにして、その重ね合わされた金属製シートを溶接等により接合して環状部を形成したものである。
【0034】
各係止部32a,32b,33a,33bのうち、係止部32a,33aは、前記シート部31に前記長さL2方向外側に突出するように固定され、その長さL2方向に直交する方向にそれぞれ3箇所、及び4箇所、等間隔に切り込まれた櫛状として設けられている。また、係止部32b,33bは、その係止部32a,33aよりも前記長さL2方向内側に固定されて、前記長さL2方向に直交する方向にそれぞれ3箇所、及び4箇所、等間隔に切り込まれた櫛状として設けられている。
矩形のシート部31を筒状に巻いた状態において、係止部32a,32b及び係止部33a,33b同士が、それぞれ周方向に所定の間隔L3を隔てて対向するようになっている(図4(b)参照)。
【0035】
この対向する係止部32a,32b;33a,33b同士を、それぞれシート部31の前記長さL2方向に直交する方向に何組設けるかは自由に設定でき、例えば、それぞれ2組、3組とすることもできる。
【0036】
その係止部32a,32b及び係止部33a,33b同士が、それぞれ連結ピン34a,34b;35a,35bとボルト軸34c,35cとからなる接合金具34,35によって周方向に連結される。図中の符号aは雌ねじ溝を有するボルト挿通孔を示し、符号bはねじ溝を有さないボルト挿通孔、符号cはボルト軸34c,35cの各頭部が嵌る座ぐりを示す。なお、連結ピン34b,35bは、ボルト挿通孔bのみで座ぐりcを設けない半円形状のものとしてもよい。
【0037】
各接合金具34,35の連結ピン34a,34b及び連結ピン35a,35b間の距離L3,L3は、それぞれボルト軸34c,35cのねじ込み度合いの調整により、所定の範囲内で任意の長さに設定することができる。このため、各ボルト軸34c,35cを軸周りに回転させることにより、前記伸縮カバー2の固定具3外周面に対する締付け度合いを調整できる。また、シート部31の一部が重なることによりゴムシート全周の水密性を確保できる。
なお、固定バンド30を周方向に複数に分割して、その分割した各固定バンド30,30にそれぞれ前記係止部32a,32b;33a,33bを設けて、対向する前記係止部32a,32b;33a,33b間をそれぞれ前記接合金具34,35によって周方向に連結してもよい。
【0038】
前記伸縮カバー2の外周を覆うように、筒状の防護カバー40が設けられている(図5参照)。その防護カバー40は、図5に示すように、フラットなシート状であり且つ平面視矩形を成すシート(シート部41)と、前記シート部41に格子状に固定されたの補強ベルト42,44とを有している。シート部41と各補強ベルト42,44は、それぞれアラミド繊維等で構成されている。
【0039】
シート部41と各補強ベルト42,44、及び両補強ベルト42,44同士は、その重なり合った部分で相互に縫製により固定されている。なお、前記縫製による固定方法を、樹脂含浸接着、溶着等とすることはさしつかえない。
【0040】
前記フラットなシートからなるシート部41は、図6(a)に示すように、伸縮カバー2の外径側に筒状に巻かれた後、前記補強ベルト42の両端部42a,42aにそれぞれ設けられた係止部(係止穴)42b,42b同士が、それぞれ連結ピン43a,43bと連結板43cとからなる接合金具43によって周方向に環状に連結される(図6(b)参照)。係止部42b,42bは、補強ベルト42の各両端部42a,42aにおいて、その先端を折り返して二つ折りにし、その重ね合わされた部分を縫製、溶着等により接合して環状部を形成したものである。
【0041】
なお、接合金具43に、前記接合金具34,35のような、連結ピン43a,43b間の距離を伸長させる機能を設けても良い。連結ピン43a,43b間の距離が伸長できれば、補強ベルト42を内径側に向かって締付ける構成とすることもできる。
【0042】
また、補強ベルト44は、前記シート部41を伸縮カバー2の外径側に筒状に巻いた状態において管軸方向に伸びており、その管軸方向に伸びる補強ベルト44の両端部44a,44aの係止部(係止穴)44b、44bが、それぞれ前記固定具3の外周に伸縮カバー2を挟んで取り付けた固定リング45に係止されている(図7(a)参照)。
【0043】
前記各係止穴44b、44bは、各両端部44a,44aにおいて、その先端を折り返して二つ折りにし、その重ね合わされた部分を縫製等により接合して環状部を形成したものである。
【0044】
前記固定リング45は、図7(b)(c)に示すように、前記管体pの外周面に沿う弧状のサドル部材45aを周方向に沿って3個連結して環状にしたものである。周方向に隣り合うサドル部材45a,45a同士は、対向するフランジ部45b,45bに挿通されたボルト45cとナットによって固定され、固定リング45が固定具3の外周に締付けられる。この締付けにより、防護カバー40が管体pに固定される。なお、サドル部材45aの数は自由に設定できる。
固定リング45が、複数のサドル部材45aに分割されているので、係止穴44bを固定リング45に係止する作業が容易である。なお、この実施例では、固定リング45は複数のサドル部材45aに分割されたものとしたが、ワイヤー、チェーン等のひも状のもので固定することもできる。
【0045】
また、図1及び図2に示すように、前記両固定具3,3同士が、離反防止手段20によって連結されている。
この離反防止手段20の構成は、前記両固定具3,3に、それぞれ軸方向内側に突出する対の金属板からなる接合金具21がボルト21aで固定されており、その接合金具21の軸方向内側寄りに別のボルト21bがねじ込まれている。その両ボルト21b,21b間を結ぶように、アラミド繊維からなるロープ22の両端が、幾分弛んだ状態でそれぞれ前記ボルト21b,21bに係止されている。
【0046】
この漏水防止装置の作用を説明すると、地震等により管体p,p同士が相反する方向に引張られ、伸縮管1と管体p,pとが脱管すると、伸縮カバー2が伸び縮み、あるいは径方向へ折れ曲がるように変形しながら、両管体p、pの接続状態を維持する。
【0047】
特に、管体p,p同士が相反する方向に引張られた際には、前記離反防止手段20がその引張り力に対向して、両管体p,pがそれ以上離れることを阻止し、防護カバーが管体からはずれてしまうことを防止し得る。
なお、管体p,p内の内圧が高くなると、伸縮カバー2が径方向外側に盛り上がって固定バンド30を管軸方向外側へ押し出そうとする。このため、その固定バンド30が前記固定具3から外れないようにするために、図4(a)及び図7(a)に示すように、固定バンド30の脱落を防止する脱落防止具37を固定具3又は管体pに設けても良い。
【0048】
このとき、防護カバー40は、伸縮管1から漏水が生じたり、その伸縮管1が管体pから離脱した際に、ゴム製の伸縮カバー2が水圧により外径側に膨らむのを拘束することによりその伸縮カバー2を保護する。このため、伸縮カバー2の破損を防止することができる。
【0049】
また、防護カバー40を構成する前記シート部41と前記各補強ベルト42,44、及びその両補強ベルト42,44同士は、その重なり合った部分で相互に固定されているので、その防護カバー40に作用する大きな力は、その多くが、縦横に伸びる補強ベルト42,44に負担される。
すなわち、防護カバー40全体に生じる張力が、補強ベルト42,44の結束部(固定リング45への係止部、補強ベルト42,44相互の格子点での両者の固定部分、各補強ベルト42,44とシート部41との固定部分)を通じて確実に伝達されるので、補強ベルト42,44が所定の強度を有していれば、シート部41にはそれほど大きな強度は求められない。このため、シート部41の厚さの増大、重量の増大を抑えつつ、防護カバー40全体としては所定の強度を発揮することができる。
【0050】
この実施形態では、補強ベルト42の前記各係止部42b、42bを、それぞれ各補強ベルトの先端を折り曲げてリング状に形成したが、この実施形態には限定されず、他の構成からなる係止部を採用してもよい。例えば、係止部42b,42bは相互に係合するフック状のものを採用してもよいし、両係止部42b,42b同士を紐で縛ることにより環状に連結した構成であってもよい。
【0051】
また、補強ベルト44の係止部44bとして、前記係止穴44bに代えて、補強ベルト44の端部44aを前記固定リング45に係止し得るフック状のものを採用してもよいし、上記と同様、補強ベルト44の端部44aと固定リング45とを紐で縛って係止する構成としてもよい。
なお、離反防止手段20(ロープ22等)は、必要に応じて適宜省略することもできる。
【0052】
(第二の実施形態)
第二の実施形態を図8乃至図14に基づいて説明する。この実施形態の漏水防止装置は、防護カバー10が両管体p,pの外周に固定リング15を介して直接固定されるものである。その他の構成は、前述の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0053】
伸縮カバー2は、図8及び図9に示すように、伸縮カバー2の軸方向両端部が、両管体p,pの外周に取り付けた固定具3,3の外周にそれぞれ水密性を維持して固定されている。
【0054】
前記伸縮カバー2は、可撓性、伸縮性を有する柔軟な水密ゴムで作られており、その軸方向両端部が前記固定具3に対してそれぞれ締付部材6,6を介して固定されている。その各締付部材6,6として、この実施形態では、前述の実施形態と同様、金属製の固定バンド30,30を採用している。
【0055】
また、防護カバー10の構成は、図11に示すように、前述の実施形態の防護カバー40とほぼ同様のものである。フラットなシートからなるシート部11は、図12(a)に示すように、伸縮カバー2の外径側に筒状に巻かれた後、前記補強ベルト12の両端部12a,12aにそれぞれ設けられた係止部(係止穴)12b,12b同士が、それぞれ連結ピン13a,13bと連結板13cとからなる接合金具13によって周方向に環状に連結される(図12(b)参照)。接合金具13の構成は、前記接合金具43と同様である。
【0056】
また、補強ベルト14は、前記シート部11を伸縮カバー2の外径側に筒状に巻いた状態において管軸方向に伸びており、その管軸方向に伸びる補強ベルト14の両端部14a,14aの係止部(係止穴)14b、14bが、それぞれ前記各管体p,pの外周に取り付けた固定リング15に係止されている点も同様である(図10参照)。
【0057】
前記固定リング15は、図13及び図14に示すように、前記管体pの外周面に沿う弧状のサドル部材15aを周方向に沿って3個連結して環状にしたものである。周方向に隣り合うサドル部材15a,15a同士は、対向するフランジ部15b、15bに挿通されたボルト15cとナットによって締付けられて、前記管体pの外周との間に隙間をもって固定されている。なお、サドル部材15aの数は自由に設定できる。また、前述のようにひも状のもので固定してもよい。
【0058】
前記伸縮カバー2を固定する固定具3は、前記管体pの外周面からその全周に亘って外径方向に一定の高さだけ突出して設けられており、前記固定リング15の内径は、前記伸縮カバー固定具3の外径よりも小径となるように設定されている。なお、固定リング15を管体pの外周面に押し付けた状態で固定することもできる。
【0059】
この漏水防止装置の作用を説明すると、地震等により管体p,p同士が相反する方向に引張られ、伸縮管1と管体p,pとが脱管すると、伸縮カバー2が伸び縮み、あるいは径方向へ折れ曲がるように変形しながら、両管体p、pの接続状態を維持する(従来例の図16(b)参照)。
【0060】
特に、管体p,p同士が相反する方向に引張られた際には、前記固定リング15が固定具3の軸方向外側端面に当接することにより、管体p,pがそれ以上軸方向へ離れることが阻止される。また、前記離反防止手段20(ロープ22)も同様の役割を果たす。
【0061】
このとき、防護カバー10は、伸縮管1から漏水が生じたり、その伸縮管1が管体pから離脱した際に、ゴム製の伸縮カバー2が水圧により外径側に膨らむのを拘束することによりその伸縮カバー2を保護する。このため、伸縮カバー2の破損を防止することができる。
【0062】
また、防護カバー10は、前記管体p,p同士が離れないように保持するので、内外伸縮カバー2に大きな力が作用しない。このため、伸縮カバー2の破損を防止することができる。
【0063】
また、防護カバー10を構成する前記シート部11と前記各補強ベルト12,14、及びその両補強ベルト12,14同士は、その重なり合った部分で相互に固定されているので、伸縮管1から管体p,pが脱管した際に、防護カバー10に作用する大きな力は、その多くが、縦横に伸びる補強ベルト12,14に負担される。
すなわち、防護カバー10全体に生じる張力が、その補強ベルト12,14の結束部(固定リング15への係止部、補強ベルト12,14相互の格子点での両者の固定部分、各補強ベルト12,14とシート部11との固定部分)を通じて確実に伝達されるので、補強ベルト12,14が所定の強度を有していれば、シート部11にはそれほど大きな強度は求められない。このため、シート部11の厚さの増大、重量の増大を抑えつつ、防護カバー10全体としては所定の強度を発揮することができる。
【0064】
この実施形態では、補強ベルト12の前記各係止部12b、12bを、それぞれ各補強ベルトの先端を折り曲げてリング状に形成したが、第一の実施形態の場合と同様、例えば、係止部12b,12bは相互に係合するフック状のものを採用してもよいし、両係止部12b,12b同士を紐で縛ることにより環状に連結した構成であってもよい。
【0065】
また、同じく、第一の実施形態の場合と同様、補強ベルト14の係止部14bとして、前記係止穴14bに代えて、補強ベルト14の端部14aを前記固定リング15に係止し得るフック状のものを採用してもよいし、上記と同様、補強ベルト14の端部14aと固定リング15とを紐で縛って係止する構成としてもよい。また、固定リング15を介さず、係止部14aを直接管体pに係止した構成(例えば、管体pの外周に固定用のフックを溶接固定した態様等)も考えられる。なお、ロープ22は、必要に応じて適宜省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第一の実施形態の断面図
【図2】図1の要部拡大図
【図3】(a)は伸縮カバーの締付部材の平面図、(b)は同正面図、(c)は締付部材用の接続金具の詳細図
【図4】(a)伸縮管の外周に伸縮カバー、締付部材を取り付けた状態を示す斜視図、(b)は(a)の断面図、(c)(d)(e)はそれぞれ伸縮カバーの構成を示す略図
【図5】防護カバーを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図
【図6】(a)は、伸縮カバーの外周に防護カバーを取り付ける際の状態を示す断面図、(b)は、取り付け後の状態を示す側面図、(c)は、周方向の補強ベルトを繋ぐ際に用いる接合金具の詳細図
【図7(a)】防護カバーを取り付けた形態を示す斜視図
【図7(b)】防護カバーを取り付けた形態を示す側面図
【図7(c)】固定リングの要部拡大図
【図8】第二の実施形態の断面図
【図9】図8の要部拡大図
【図10】第二の実施形態の斜視図
【図11】防護カバーを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図
【図12】(a)は、伸縮カバーの外周に防護カバーを取り付ける際の状態を示す断面図、(b)は、取り付け後の状態を示す側面図、(c)は、周方向の補強ベルトを繋ぐ際に用いる接合金具の詳細図
【図13】固定リングを取り付けた状態を示す側面図
【図14】固定リングを取り付けた状態を示す斜視図
【図15】従来例の断面図
【図16】(a)(b)は、従来例の水管橋の敷設状態を示す断面図
【符号の説明】
【0067】
1 伸縮管(伸縮管継手)
2 伸縮カバー
3 固定具
6 締付部材
10,40 防護カバー
11,41 シート部
12,14,42,44 補強ベルト
12a,14a,42a,44a 端部
12b,42b 係止部(係止穴)
13,34,35,43 接合金具
14b,44b 係止部(係止穴)
15,45 固定リング
15a,45a サドル部材
20 離反防止手段
30,30a,30b 固定バンド
A 橋台
B 水管橋(管橋)
p 管体
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道管、各種送水管、送油管等が、河川、道路、鉄道等と橋梁形式で交差する際に設けられる管橋において、その管橋の端部に設けられる「伸縮管(管軸方向、管径方向への変位を許容する伸縮管継手を含む)」に取り付けられる伸縮管漏水防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水道管等が、河川、道路、鉄道などを横断する際に設けられる管橋(いわゆる水管橋、添架管等、以下総称して「水管橋」という)Bは、例えば、図15に示す橋台Aが、通常の橋梁と同様に相対して設けられて、その相対する橋台A,A間を管体pで結んで水管橋Bを構成している。
この構造において、温度変化に伴う管体pの伸縮や、地震等による下部工変位に伴い管体pに作用する引張力や押込み力、曲げを吸収できるように、管体pの途中に伸縮管1を設けているものが多い。
【0003】
さらに、近年は、著大な地震動にも対応するべく、水管橋に対しより大きな変形に対する追従性が求められつつある。すなわち、管軸方向へのより大きな伸縮や、管径方向(管軸直角方向)へのより大きな変位に対しても、管体pの破損や脱管が生じないようにすることが求められている。
【0004】
しかし、水管橋にこのような機能を備えることは、伸縮管の大型化とともに橋りょうの橋台面間寸法の増加、及びコストアップにつながる。また、既設の水管橋の改築には相当な費用と時間を要するという問題がある。
【0005】
そこで、従来の嵩張らない安価な伸縮管を用いながらも、万が一、著大な地震動により伸縮管の脱管や破損が生じた際に、少なくとも漏水を阻止して通水機能を維持することを可能にした伸縮管漏水防止装置の技術が開示されている。
【0006】
例えば、特許文献1に記載の技術は、水管橋の両端部に設けられた伸縮管の外周部に伸縮管漏水防止装置を取り付けたものである。
【0007】
その構成は、図15に示すように、伸縮管(伸縮管継手)1の外周をその全周、全長に亘ってゴム製の伸縮カバー2で覆っている。前記伸縮カバー2は、その軸方向両端部が、それぞれ前記伸縮管1を挟んで両側の管体p,pの各固定具3,3に対し締付部材6で水密に固定されている。
締付部材6は、樹脂を含浸させた高強度繊維等の帯体で作られた止水バンドであり、その締付部材6を前記伸縮カバー2の外周に巻き付けることにより、その伸縮カバー2が固定具3の外周に締付けるように固定される。
【0008】
また、その伸縮カバー2のさらに外周を、高強度繊維からなる筒状の防護カバー10で覆っている。防護カバー10は、その軸方向両端部が、前記両管体p,pの外周に嵌るストップリング5で各管体p,pに固定されている。
【0009】
地震動により、伸縮管1が管体pから離脱すると、例えば、図16(a)から図16(b)に示すように、伸縮カバー2が変形し、その伸縮カバー2を介して前記両管体p,pの接続が維持される。このため、水管橋の漏水が防止され、通水機能が阻害されない。
【0010】
また、伸縮カバー2の外周を覆う防護カバー10を両管体p,pに固定しているので、その防護カバー10は、伸縮管1から脱管した管体p,p同士を支える。
さらに、防護カバー10が、ゴム製の伸縮カバー2が水圧により外径側に膨らむのを拘束することによりその伸縮カバー2を補強し、伸縮カバー2に過度な力が作用して破損することを防止している。
なお、防護カバー10には、両管体p,pの離反を所定位置で拘束することによる落橋防止効果も期待できる(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
【特許文献1】特開2003−96833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記図15及び図16に示す伸縮管漏水防止装置によれば、伸縮カバー2はゴム等の可撓性を有する素材で構成されるので比較的強度が低い。このため、その伸縮カバー2を補強する前記防護カバー10には、比較的高い強度が求められる。
【0013】
しかし、防護カバー10に強い強度を求めると、その防護カバー10は相当な厚さ、重量を有するものとなってしまう。
防護カバー10の嵩が増え、あるいは重量が増えることは、伸縮管漏水防止装置の大型化及びコストアップにつながるので、好ましくない。
【0014】
そこで、この発明は、所定の強度を発揮しつつ、コンパクト且つ軽量な伸縮管漏水防止装置とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、この発明は、伸縮カバーの外側に配置する防護カバーとして繊維製のものを採用し、その構成を、前記伸縮カバーを覆う繊維製のフラットなシート部の表面に、周方向、軸方向とに伸びる格子状の繊維製ベルトを固定したものとしたのである。
【0016】
伸縮カバーを補強する素材には厳密な水密性(止水性)は求められないので、防護カバーの素材として繊維を用いることは差し支えない。繊維は軽いので軽量化に寄与し得る。
また、防護カバーに求められる強度としては、上記のように、繊維製のフラットなシート部に加え、繊維製の補強ベルトを格子状に配置したので、伸縮カバーが水圧により外径側へ膨らんだ際に、各補強ベルトがそれぞれの長さ方向への力に対抗することができる。すなわち、カバー全体に生じる張力が、補強ベルトに伝達されるので、シート部の部材は厚いものにする必要がない。
このため、防護カバー全体の厚さの増大、重量の増大を抑えつつ、所定の強度を発揮させることができる。なお、所定の強度を発揮させるために、例えば、アラミド繊維等の高強度繊維と呼ばれる素材を採用すれば、嵩の増加を抑える上でさらに有効である。
【0017】
具体的な構成として、上記防護カバーを伸縮カバーの軸方向両端部外周で管体に固定する態様を採用し得る。
すなわち、その構成は、管体同士を接続する伸縮管の外周を軸方向全長に亘って可撓性を有する筒状の伸縮カバーで覆い、前記伸縮カバーの軸方向両端部全周をそれぞれ前記両管体に水密に固定して、前記伸縮管が前記管体から離脱した際に前記伸縮カバーが変形することにより前記伸縮カバーを介して前記両管体の接続が維持されるようにした伸縮管用漏水防止装置において、前記伸縮カバーの外周を筒状を成す防護カバーで覆い、その防護カバーは、筒状を成す繊維製のフラットなシート部と、前記シート部に格子状に固定された周方向全周に連続する環状の繊維製の補強ベルトと軸方向全長に延びる繊維製の補強ベルトとを有し、前記軸方向の補強ベルトの両端部が、それぞれ前記伸縮カバーの軸方向両端部外周で前記両管体に固定され、その防護カバーは前記伸縮管が前記管体から離脱した際にも前記両管体への接続が維持される構成を採用した。
【0018】
この構成によれば、防護カバーは伸縮カバーとの重複部分において、その伸縮カバーと一体に管体に固定される。なお、防護カバーには「弛み」を設けることができる。
【0019】
この構成において、前記伸縮カバーが、前記両管体の外周に設けた環状の固定具の外周に固定されている場合において、前記軸方向の補強ベルトの両端部が、それぞれ前記伸縮カバーの軸方向両端部外周を囲む固定用部材に係止されて、その固定用部材を前記固定具の外周に対し内径側へ締め付けることにより前記軸方向の補強ベルトの両端部が前記両管体に固定される構成を採用し得る。
締付けによる固定方法を採用すれば、防護カバーの着脱が容易である。
【0020】
なお、前記両管体同士が相互に遠ざかる方向に移動することを阻止する離反防止手段を備えれば、伸縮カバーが大きく変形することにより防護カバーが管体からはずれてしまうことを防止し得る。
【0021】
また、上記防護カバーを管体の外周に直接固定することもできる。
すなわち、その構成は、管体同士を接続する伸縮管の外周を軸方向全長に亘って可撓性を有する筒状の伸縮カバーで覆い、前記伸縮カバーの軸方向両端部全周をそれぞれ前記両管体に水密に固定して、前記伸縮管が前記管体から離脱した際に前記伸縮カバーが変形することにより前記伸縮カバーを介して前記両管体の接続が維持されるようにした伸縮管用漏水防止装置において、前記伸縮カバーの外周を筒状を成す防護カバーで覆い、その防護カバーは、筒状を成す繊維製のフラットなシート部と、前記シート部に格子状に固定された周方向全周に連続する環状の繊維製の補強ベルトと軸方向全長に延びる繊維製の補強ベルトとを有し、前記軸方向の補強ベルトの両端部が、それぞれ前記各管体の外周に固定され、その防護カバーは前記伸縮管が前記管体から離脱した際にも前記両管体への接続が維持される構成を採用した。
【0022】
この構成によれば、防護カバーが管体に直接固定されるので、その防護カバーが両管体の離反を所定位置で拘束し、それ以上両管体が離れないようにする効果を期待できる。
【0023】
なお、前記防護カバーを管体に直接固定する構成において、軸方向の補強ベルトの両端部は、それぞれ前記各管体の外周に取り付けた固定用部材を介して前記各管体の外周に固定される構成とすることができる。
【0024】
上記各固定用部材を設けた構成において、その固定用部材として、前記管体の外周面に沿う弧状のサドル部材を周方向に沿って複数連結して環状にしたものとし、前記軸方向の補強ベルトの端部は軸方向に折り返されてリング状の係止部として、その係止部に前記サドル部材が挿通されることにより前記端部が前記固定用部材に係止される構成を採用し得る。
このようにすれば、前記軸方向の補強ベルトの両端部を管体に固定しやすくなる。
【0025】
また、前記防護カバーのシート部は、フラットなシートを筒状に巻いて形成され、前記周方向の補強ベルトは前記シートに複数本並列して固定されており、前記シートに固定した前記周方向の補強ベルトの両端部にそれぞれ係止部を設け、前記係止部同士が係止されることにより前記周方向の補強ベルトは環状に連結される構成を採用し得る。
このようにすれば、防護カバーは管の外周に巻き付けて取り付けることができるので、例えば、供用中の管路において、管体の抜き差しを行うことなく防護カバーを容易に付加することができる。
【0026】
なお、前記各構成の伸縮管漏水防止装置は、様々な場所に敷設された種々の用途の管路における伸縮管に採用できる。例えば、相対する橋台間を管体で結んで設けられた管橋の前記橋台上に設けられた伸縮管に、採用することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明は、伸縮管漏水防止装置の防護カバーを、筒状を成す樹脂製のシート部と、前記シート部に格子状に固定された周方向及び軸方向の補強ベルトとで構成したので、防護カバーに作用する張力が、確実に補強ベルトに伝達される。このため、防護カバー全体の厚さの増大、重量の増大を抑えつつ、その防護カバーに所定の強度を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第一の実施形態)
第一の実施形態を図1乃至図7に基づいて説明する。この実施形態の漏水防止装置は、水管橋Bの橋台A上において、水道管の管体p,pの接合部に伸縮管(伸縮管継手)1が設けられている。伸縮管1は、接続された管体p,p間の所定の量の軸方向伸縮を許容する。
【0029】
伸縮管1としては、公知の種々の構造を採用し得るが、この実施形態では図1及び図2に示すように、管体p,pの接合部の外周に、その管体pよりもやや大径の管体1aを設け、シール材1bをリング状の固定部材1cで固定したものである(他の構造の伸縮管でもよい)。
その伸縮管1は、図1に示すように、常時は、突き合わされた管体p,p同士を、距離tだけ離した状態に固定している。温度変化に伴う管の伸縮時や震災等による大きな外力が作用した場合は、シール材1b及び固定部材1cと管体pの外周面との間にスリップが生じて、水道管がその管軸方向に沿って伸縮できるようになっている。
【0030】
その伸縮管1の外周を覆うように、筒状を成す伸縮カバー2が取り付けられている。この第一の実施形態では、伸縮カバー2は、ゴムシートを筒状として構成されている。
その伸縮カバー2の両端部を管体pに固定するための固定具3は、この実施形態では、H型断面を有する環状部材を採用しており、溶接により管体pの外周に不動に固定されている。なお、固定具3は、管体pの外周面に締付け等により不動に固定してもよい。また、前記ゴムシートは予め筒状に形成されたチューブを用いてもよいし、1枚のフラットなシート状のものを1周巻き(図4(c)参照)、又は2周巻き以上に巻回(図4(d)参照)して筒状にしてもよい。さらに、2枚又はそれ以上の枚数のゴムシートを併用して、必要に応じて1周巻き、又は2周巻き以上(図4(e)参照)にして固定してもよい。
【0031】
前記伸縮カバー2は、可撓性、伸縮性を有する柔軟な水密ゴムで作られており、その軸方向両端部が前記固定具3に対して締付部材6を介して固定されている。その締付部材6として、この実施形態は、図3及び図4に示すように、金属製の固定バンド30を採用している。
【0032】
固定バンド30の構成は、図3に示すように、前記伸縮カバー2を巻き付ける前記固定具3の外周面の周方向円周長L1よりも、やや短い長さL2を有するフラットな金属製シートからなる平面視矩形のシート部31と、そのシート部31に固定された係止部32a,32b,33a,33bとを備えている。
【0033】
また、係止部32a,32b,33a,33bは、前記シート部31と同一の素材からなる金属製シートの先端部を二つ折りにして、その重ね合わされた金属製シートを溶接等により接合して環状部を形成したものである。
【0034】
各係止部32a,32b,33a,33bのうち、係止部32a,33aは、前記シート部31に前記長さL2方向外側に突出するように固定され、その長さL2方向に直交する方向にそれぞれ3箇所、及び4箇所、等間隔に切り込まれた櫛状として設けられている。また、係止部32b,33bは、その係止部32a,33aよりも前記長さL2方向内側に固定されて、前記長さL2方向に直交する方向にそれぞれ3箇所、及び4箇所、等間隔に切り込まれた櫛状として設けられている。
矩形のシート部31を筒状に巻いた状態において、係止部32a,32b及び係止部33a,33b同士が、それぞれ周方向に所定の間隔L3を隔てて対向するようになっている(図4(b)参照)。
【0035】
この対向する係止部32a,32b;33a,33b同士を、それぞれシート部31の前記長さL2方向に直交する方向に何組設けるかは自由に設定でき、例えば、それぞれ2組、3組とすることもできる。
【0036】
その係止部32a,32b及び係止部33a,33b同士が、それぞれ連結ピン34a,34b;35a,35bとボルト軸34c,35cとからなる接合金具34,35によって周方向に連結される。図中の符号aは雌ねじ溝を有するボルト挿通孔を示し、符号bはねじ溝を有さないボルト挿通孔、符号cはボルト軸34c,35cの各頭部が嵌る座ぐりを示す。なお、連結ピン34b,35bは、ボルト挿通孔bのみで座ぐりcを設けない半円形状のものとしてもよい。
【0037】
各接合金具34,35の連結ピン34a,34b及び連結ピン35a,35b間の距離L3,L3は、それぞれボルト軸34c,35cのねじ込み度合いの調整により、所定の範囲内で任意の長さに設定することができる。このため、各ボルト軸34c,35cを軸周りに回転させることにより、前記伸縮カバー2の固定具3外周面に対する締付け度合いを調整できる。また、シート部31の一部が重なることによりゴムシート全周の水密性を確保できる。
なお、固定バンド30を周方向に複数に分割して、その分割した各固定バンド30,30にそれぞれ前記係止部32a,32b;33a,33bを設けて、対向する前記係止部32a,32b;33a,33b間をそれぞれ前記接合金具34,35によって周方向に連結してもよい。
【0038】
前記伸縮カバー2の外周を覆うように、筒状の防護カバー40が設けられている(図5参照)。その防護カバー40は、図5に示すように、フラットなシート状であり且つ平面視矩形を成すシート(シート部41)と、前記シート部41に格子状に固定されたの補強ベルト42,44とを有している。シート部41と各補強ベルト42,44は、それぞれアラミド繊維等で構成されている。
【0039】
シート部41と各補強ベルト42,44、及び両補強ベルト42,44同士は、その重なり合った部分で相互に縫製により固定されている。なお、前記縫製による固定方法を、樹脂含浸接着、溶着等とすることはさしつかえない。
【0040】
前記フラットなシートからなるシート部41は、図6(a)に示すように、伸縮カバー2の外径側に筒状に巻かれた後、前記補強ベルト42の両端部42a,42aにそれぞれ設けられた係止部(係止穴)42b,42b同士が、それぞれ連結ピン43a,43bと連結板43cとからなる接合金具43によって周方向に環状に連結される(図6(b)参照)。係止部42b,42bは、補強ベルト42の各両端部42a,42aにおいて、その先端を折り返して二つ折りにし、その重ね合わされた部分を縫製、溶着等により接合して環状部を形成したものである。
【0041】
なお、接合金具43に、前記接合金具34,35のような、連結ピン43a,43b間の距離を伸長させる機能を設けても良い。連結ピン43a,43b間の距離が伸長できれば、補強ベルト42を内径側に向かって締付ける構成とすることもできる。
【0042】
また、補強ベルト44は、前記シート部41を伸縮カバー2の外径側に筒状に巻いた状態において管軸方向に伸びており、その管軸方向に伸びる補強ベルト44の両端部44a,44aの係止部(係止穴)44b、44bが、それぞれ前記固定具3の外周に伸縮カバー2を挟んで取り付けた固定リング45に係止されている(図7(a)参照)。
【0043】
前記各係止穴44b、44bは、各両端部44a,44aにおいて、その先端を折り返して二つ折りにし、その重ね合わされた部分を縫製等により接合して環状部を形成したものである。
【0044】
前記固定リング45は、図7(b)(c)に示すように、前記管体pの外周面に沿う弧状のサドル部材45aを周方向に沿って3個連結して環状にしたものである。周方向に隣り合うサドル部材45a,45a同士は、対向するフランジ部45b,45bに挿通されたボルト45cとナットによって固定され、固定リング45が固定具3の外周に締付けられる。この締付けにより、防護カバー40が管体pに固定される。なお、サドル部材45aの数は自由に設定できる。
固定リング45が、複数のサドル部材45aに分割されているので、係止穴44bを固定リング45に係止する作業が容易である。なお、この実施例では、固定リング45は複数のサドル部材45aに分割されたものとしたが、ワイヤー、チェーン等のひも状のもので固定することもできる。
【0045】
また、図1及び図2に示すように、前記両固定具3,3同士が、離反防止手段20によって連結されている。
この離反防止手段20の構成は、前記両固定具3,3に、それぞれ軸方向内側に突出する対の金属板からなる接合金具21がボルト21aで固定されており、その接合金具21の軸方向内側寄りに別のボルト21bがねじ込まれている。その両ボルト21b,21b間を結ぶように、アラミド繊維からなるロープ22の両端が、幾分弛んだ状態でそれぞれ前記ボルト21b,21bに係止されている。
【0046】
この漏水防止装置の作用を説明すると、地震等により管体p,p同士が相反する方向に引張られ、伸縮管1と管体p,pとが脱管すると、伸縮カバー2が伸び縮み、あるいは径方向へ折れ曲がるように変形しながら、両管体p、pの接続状態を維持する。
【0047】
特に、管体p,p同士が相反する方向に引張られた際には、前記離反防止手段20がその引張り力に対向して、両管体p,pがそれ以上離れることを阻止し、防護カバーが管体からはずれてしまうことを防止し得る。
なお、管体p,p内の内圧が高くなると、伸縮カバー2が径方向外側に盛り上がって固定バンド30を管軸方向外側へ押し出そうとする。このため、その固定バンド30が前記固定具3から外れないようにするために、図4(a)及び図7(a)に示すように、固定バンド30の脱落を防止する脱落防止具37を固定具3又は管体pに設けても良い。
【0048】
このとき、防護カバー40は、伸縮管1から漏水が生じたり、その伸縮管1が管体pから離脱した際に、ゴム製の伸縮カバー2が水圧により外径側に膨らむのを拘束することによりその伸縮カバー2を保護する。このため、伸縮カバー2の破損を防止することができる。
【0049】
また、防護カバー40を構成する前記シート部41と前記各補強ベルト42,44、及びその両補強ベルト42,44同士は、その重なり合った部分で相互に固定されているので、その防護カバー40に作用する大きな力は、その多くが、縦横に伸びる補強ベルト42,44に負担される。
すなわち、防護カバー40全体に生じる張力が、補強ベルト42,44の結束部(固定リング45への係止部、補強ベルト42,44相互の格子点での両者の固定部分、各補強ベルト42,44とシート部41との固定部分)を通じて確実に伝達されるので、補強ベルト42,44が所定の強度を有していれば、シート部41にはそれほど大きな強度は求められない。このため、シート部41の厚さの増大、重量の増大を抑えつつ、防護カバー40全体としては所定の強度を発揮することができる。
【0050】
この実施形態では、補強ベルト42の前記各係止部42b、42bを、それぞれ各補強ベルトの先端を折り曲げてリング状に形成したが、この実施形態には限定されず、他の構成からなる係止部を採用してもよい。例えば、係止部42b,42bは相互に係合するフック状のものを採用してもよいし、両係止部42b,42b同士を紐で縛ることにより環状に連結した構成であってもよい。
【0051】
また、補強ベルト44の係止部44bとして、前記係止穴44bに代えて、補強ベルト44の端部44aを前記固定リング45に係止し得るフック状のものを採用してもよいし、上記と同様、補強ベルト44の端部44aと固定リング45とを紐で縛って係止する構成としてもよい。
なお、離反防止手段20(ロープ22等)は、必要に応じて適宜省略することもできる。
【0052】
(第二の実施形態)
第二の実施形態を図8乃至図14に基づいて説明する。この実施形態の漏水防止装置は、防護カバー10が両管体p,pの外周に固定リング15を介して直接固定されるものである。その他の構成は、前述の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0053】
伸縮カバー2は、図8及び図9に示すように、伸縮カバー2の軸方向両端部が、両管体p,pの外周に取り付けた固定具3,3の外周にそれぞれ水密性を維持して固定されている。
【0054】
前記伸縮カバー2は、可撓性、伸縮性を有する柔軟な水密ゴムで作られており、その軸方向両端部が前記固定具3に対してそれぞれ締付部材6,6を介して固定されている。その各締付部材6,6として、この実施形態では、前述の実施形態と同様、金属製の固定バンド30,30を採用している。
【0055】
また、防護カバー10の構成は、図11に示すように、前述の実施形態の防護カバー40とほぼ同様のものである。フラットなシートからなるシート部11は、図12(a)に示すように、伸縮カバー2の外径側に筒状に巻かれた後、前記補強ベルト12の両端部12a,12aにそれぞれ設けられた係止部(係止穴)12b,12b同士が、それぞれ連結ピン13a,13bと連結板13cとからなる接合金具13によって周方向に環状に連結される(図12(b)参照)。接合金具13の構成は、前記接合金具43と同様である。
【0056】
また、補強ベルト14は、前記シート部11を伸縮カバー2の外径側に筒状に巻いた状態において管軸方向に伸びており、その管軸方向に伸びる補強ベルト14の両端部14a,14aの係止部(係止穴)14b、14bが、それぞれ前記各管体p,pの外周に取り付けた固定リング15に係止されている点も同様である(図10参照)。
【0057】
前記固定リング15は、図13及び図14に示すように、前記管体pの外周面に沿う弧状のサドル部材15aを周方向に沿って3個連結して環状にしたものである。周方向に隣り合うサドル部材15a,15a同士は、対向するフランジ部15b、15bに挿通されたボルト15cとナットによって締付けられて、前記管体pの外周との間に隙間をもって固定されている。なお、サドル部材15aの数は自由に設定できる。また、前述のようにひも状のもので固定してもよい。
【0058】
前記伸縮カバー2を固定する固定具3は、前記管体pの外周面からその全周に亘って外径方向に一定の高さだけ突出して設けられており、前記固定リング15の内径は、前記伸縮カバー固定具3の外径よりも小径となるように設定されている。なお、固定リング15を管体pの外周面に押し付けた状態で固定することもできる。
【0059】
この漏水防止装置の作用を説明すると、地震等により管体p,p同士が相反する方向に引張られ、伸縮管1と管体p,pとが脱管すると、伸縮カバー2が伸び縮み、あるいは径方向へ折れ曲がるように変形しながら、両管体p、pの接続状態を維持する(従来例の図16(b)参照)。
【0060】
特に、管体p,p同士が相反する方向に引張られた際には、前記固定リング15が固定具3の軸方向外側端面に当接することにより、管体p,pがそれ以上軸方向へ離れることが阻止される。また、前記離反防止手段20(ロープ22)も同様の役割を果たす。
【0061】
このとき、防護カバー10は、伸縮管1から漏水が生じたり、その伸縮管1が管体pから離脱した際に、ゴム製の伸縮カバー2が水圧により外径側に膨らむのを拘束することによりその伸縮カバー2を保護する。このため、伸縮カバー2の破損を防止することができる。
【0062】
また、防護カバー10は、前記管体p,p同士が離れないように保持するので、内外伸縮カバー2に大きな力が作用しない。このため、伸縮カバー2の破損を防止することができる。
【0063】
また、防護カバー10を構成する前記シート部11と前記各補強ベルト12,14、及びその両補強ベルト12,14同士は、その重なり合った部分で相互に固定されているので、伸縮管1から管体p,pが脱管した際に、防護カバー10に作用する大きな力は、その多くが、縦横に伸びる補強ベルト12,14に負担される。
すなわち、防護カバー10全体に生じる張力が、その補強ベルト12,14の結束部(固定リング15への係止部、補強ベルト12,14相互の格子点での両者の固定部分、各補強ベルト12,14とシート部11との固定部分)を通じて確実に伝達されるので、補強ベルト12,14が所定の強度を有していれば、シート部11にはそれほど大きな強度は求められない。このため、シート部11の厚さの増大、重量の増大を抑えつつ、防護カバー10全体としては所定の強度を発揮することができる。
【0064】
この実施形態では、補強ベルト12の前記各係止部12b、12bを、それぞれ各補強ベルトの先端を折り曲げてリング状に形成したが、第一の実施形態の場合と同様、例えば、係止部12b,12bは相互に係合するフック状のものを採用してもよいし、両係止部12b,12b同士を紐で縛ることにより環状に連結した構成であってもよい。
【0065】
また、同じく、第一の実施形態の場合と同様、補強ベルト14の係止部14bとして、前記係止穴14bに代えて、補強ベルト14の端部14aを前記固定リング15に係止し得るフック状のものを採用してもよいし、上記と同様、補強ベルト14の端部14aと固定リング15とを紐で縛って係止する構成としてもよい。また、固定リング15を介さず、係止部14aを直接管体pに係止した構成(例えば、管体pの外周に固定用のフックを溶接固定した態様等)も考えられる。なお、ロープ22は、必要に応じて適宜省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第一の実施形態の断面図
【図2】図1の要部拡大図
【図3】(a)は伸縮カバーの締付部材の平面図、(b)は同正面図、(c)は締付部材用の接続金具の詳細図
【図4】(a)伸縮管の外周に伸縮カバー、締付部材を取り付けた状態を示す斜視図、(b)は(a)の断面図、(c)(d)(e)はそれぞれ伸縮カバーの構成を示す略図
【図5】防護カバーを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図
【図6】(a)は、伸縮カバーの外周に防護カバーを取り付ける際の状態を示す断面図、(b)は、取り付け後の状態を示す側面図、(c)は、周方向の補強ベルトを繋ぐ際に用いる接合金具の詳細図
【図7(a)】防護カバーを取り付けた形態を示す斜視図
【図7(b)】防護カバーを取り付けた形態を示す側面図
【図7(c)】固定リングの要部拡大図
【図8】第二の実施形態の断面図
【図9】図8の要部拡大図
【図10】第二の実施形態の斜視図
【図11】防護カバーを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図
【図12】(a)は、伸縮カバーの外周に防護カバーを取り付ける際の状態を示す断面図、(b)は、取り付け後の状態を示す側面図、(c)は、周方向の補強ベルトを繋ぐ際に用いる接合金具の詳細図
【図13】固定リングを取り付けた状態を示す側面図
【図14】固定リングを取り付けた状態を示す斜視図
【図15】従来例の断面図
【図16】(a)(b)は、従来例の水管橋の敷設状態を示す断面図
【符号の説明】
【0067】
1 伸縮管(伸縮管継手)
2 伸縮カバー
3 固定具
6 締付部材
10,40 防護カバー
11,41 シート部
12,14,42,44 補強ベルト
12a,14a,42a,44a 端部
12b,42b 係止部(係止穴)
13,34,35,43 接合金具
14b,44b 係止部(係止穴)
15,45 固定リング
15a,45a サドル部材
20 離反防止手段
30,30a,30b 固定バンド
A 橋台
B 水管橋(管橋)
p 管体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体p,p同士を接続する伸縮管1の外周を軸方向全長に亘って可撓性を有する筒状の伸縮カバー2で覆い、前記伸縮カバー2の軸方向両端部全周をそれぞれ前記両管体p,pに水密に固定して、前記伸縮管1が前記管体pから離脱した際に前記伸縮カバー2が変形することにより前記伸縮カバー2を介して前記両管体p,pの接続が維持されるようにした伸縮管用漏水防止装置において、
前記伸縮カバー2の外周を筒状を成す防護カバー40で覆い、その防護カバー40は、筒状を成す繊維製のフラットなシート部41と、前記シート部41に格子状に固定された周方向全周に連続する環状の繊維製の補強ベルト42と軸方向全長に延びる繊維製の補強ベルト44とを有し、前記軸方向の補強ベルト44の両端部44a,44aが、それぞれ前記伸縮カバー2の軸方向両端部外周で前記両管体p,pに固定され、その防護カバー40は前記伸縮管1が前記管体pから離脱した際にも前記両管体p,pへの接続が維持されることを特徴とする伸縮管漏水防止装置。
【請求項2】
前記伸縮カバー2は、前記両管体p,pの外周に設けた環状の固定具3の外周に固定されており、前記軸方向の補強ベルト44の両端部44a,44aは、それぞれ前記伸縮カバー2の軸方向両端部外周を囲む固定用部材45に係止され、その固定用部材45を前記固定具3の外周に対し内径側へ締め付けることにより前記軸方向の補強ベルト44の両端部44a,44aが前記両管体p,pに固定されることを特徴とする請求項1に記載の伸縮管漏水防止装置。
【請求項3】
前記両管体p,p同士が相互に遠ざかる方向に移動することを阻止する離反防止手段20を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮管漏水防止装置。
【請求項4】
管体p,p同士を接続する伸縮管1の外周を軸方向全長に亘って可撓性を有する筒状の伸縮カバー2で覆い、前記伸縮カバー2の軸方向両端部全周をそれぞれ前記両管体p,pに水密に固定して、前記伸縮管1が前記管体pから離脱した際に前記伸縮カバー2が変形することにより前記伸縮カバー2を介して前記両管体p,pの接続が維持されるようにした伸縮管用漏水防止装置において、
前記伸縮カバー2の外周を筒状を成す防護カバー10で覆い、その防護カバー10は、筒状を成す繊維製のフラットなシート部11と、前記シート部11に格子状に固定された周方向全周に連続する環状の繊維製の補強ベルト12と軸方向全長に延びる繊維製の補強ベルト14とを有し、前記軸方向の補強ベルト14の両端部14a,14aが、それぞれ前記各管体p,pの外周に固定され、その防護カバー10は前記伸縮管1が前記管体pから離脱した際にも前記両管体p,pへの接続が維持されることを特徴とする伸縮管漏水防止装置。
【請求項5】
前記軸方向の補強ベルト14の両端部14a,14aは、それぞれ前記各管体p,pの外周に取り付けた固定用部材15を介して前記各管体p,pの外周に固定されることを特徴とする請求項4に記載の伸縮管漏水防止装置。
【請求項6】
前記固定用部材45,15は、弧状のサドル部材45a,15aを周方向に沿って複数連結して環状にしたものであり、前記軸方向の補強ベルト44,14の端部44a,14aは軸方向に折り返されてリング状の係止部44b,14bとなっており、その係止部44b,14bに前記サドル部材45a,15aが挿通されることにより前記端部44a,14aが前記固定用部材45,15に係止されることを特徴とする請求項2又は5に記載の伸縮管漏水防止装置。
【請求項7】
前記シート部41,11は、フラットなシートを筒状に巻いて形成され、前記周方向の補強ベルト42,12は前記シートに複数本並列して固定されており、前記シートに固定した前記周方向の補強ベルト42,12の両端部42a,42a;12a,12aにそれぞれ係止部42b,42b;12b,12bを設け、前記係止部42b,42b;12b,12b同士が係止されることにより前記周方向の補強ベルト42,12は環状に連結されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の伸縮管漏水防止装置。
【請求項8】
前記伸縮管1は、相対する橋台A,A間を管体pで結んで設けられた管橋Bの前記橋台A上に設けられたものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の伸縮管漏水防止装置。
【請求項1】
管体p,p同士を接続する伸縮管1の外周を軸方向全長に亘って可撓性を有する筒状の伸縮カバー2で覆い、前記伸縮カバー2の軸方向両端部全周をそれぞれ前記両管体p,pに水密に固定して、前記伸縮管1が前記管体pから離脱した際に前記伸縮カバー2が変形することにより前記伸縮カバー2を介して前記両管体p,pの接続が維持されるようにした伸縮管用漏水防止装置において、
前記伸縮カバー2の外周を筒状を成す防護カバー40で覆い、その防護カバー40は、筒状を成す繊維製のフラットなシート部41と、前記シート部41に格子状に固定された周方向全周に連続する環状の繊維製の補強ベルト42と軸方向全長に延びる繊維製の補強ベルト44とを有し、前記軸方向の補強ベルト44の両端部44a,44aが、それぞれ前記伸縮カバー2の軸方向両端部外周で前記両管体p,pに固定され、その防護カバー40は前記伸縮管1が前記管体pから離脱した際にも前記両管体p,pへの接続が維持されることを特徴とする伸縮管漏水防止装置。
【請求項2】
前記伸縮カバー2は、前記両管体p,pの外周に設けた環状の固定具3の外周に固定されており、前記軸方向の補強ベルト44の両端部44a,44aは、それぞれ前記伸縮カバー2の軸方向両端部外周を囲む固定用部材45に係止され、その固定用部材45を前記固定具3の外周に対し内径側へ締め付けることにより前記軸方向の補強ベルト44の両端部44a,44aが前記両管体p,pに固定されることを特徴とする請求項1に記載の伸縮管漏水防止装置。
【請求項3】
前記両管体p,p同士が相互に遠ざかる方向に移動することを阻止する離反防止手段20を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮管漏水防止装置。
【請求項4】
管体p,p同士を接続する伸縮管1の外周を軸方向全長に亘って可撓性を有する筒状の伸縮カバー2で覆い、前記伸縮カバー2の軸方向両端部全周をそれぞれ前記両管体p,pに水密に固定して、前記伸縮管1が前記管体pから離脱した際に前記伸縮カバー2が変形することにより前記伸縮カバー2を介して前記両管体p,pの接続が維持されるようにした伸縮管用漏水防止装置において、
前記伸縮カバー2の外周を筒状を成す防護カバー10で覆い、その防護カバー10は、筒状を成す繊維製のフラットなシート部11と、前記シート部11に格子状に固定された周方向全周に連続する環状の繊維製の補強ベルト12と軸方向全長に延びる繊維製の補強ベルト14とを有し、前記軸方向の補強ベルト14の両端部14a,14aが、それぞれ前記各管体p,pの外周に固定され、その防護カバー10は前記伸縮管1が前記管体pから離脱した際にも前記両管体p,pへの接続が維持されることを特徴とする伸縮管漏水防止装置。
【請求項5】
前記軸方向の補強ベルト14の両端部14a,14aは、それぞれ前記各管体p,pの外周に取り付けた固定用部材15を介して前記各管体p,pの外周に固定されることを特徴とする請求項4に記載の伸縮管漏水防止装置。
【請求項6】
前記固定用部材45,15は、弧状のサドル部材45a,15aを周方向に沿って複数連結して環状にしたものであり、前記軸方向の補強ベルト44,14の端部44a,14aは軸方向に折り返されてリング状の係止部44b,14bとなっており、その係止部44b,14bに前記サドル部材45a,15aが挿通されることにより前記端部44a,14aが前記固定用部材45,15に係止されることを特徴とする請求項2又は5に記載の伸縮管漏水防止装置。
【請求項7】
前記シート部41,11は、フラットなシートを筒状に巻いて形成され、前記周方向の補強ベルト42,12は前記シートに複数本並列して固定されており、前記シートに固定した前記周方向の補強ベルト42,12の両端部42a,42a;12a,12aにそれぞれ係止部42b,42b;12b,12bを設け、前記係止部42b,42b;12b,12b同士が係止されることにより前記周方向の補強ベルト42,12は環状に連結されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の伸縮管漏水防止装置。
【請求項8】
前記伸縮管1は、相対する橋台A,A間を管体pで結んで設けられた管橋Bの前記橋台A上に設けられたものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の伸縮管漏水防止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−144940(P2008−144940A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336015(P2006−336015)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
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