説明

伸縮装置及び伸縮装置の取り付け構造

【課題】橋桁と橋台又は橋桁と橋桁との間に設けられる伸縮装置の補修又は交換を容易に行うともに、交通を遮断する範囲及び時間を低減する。
【解決手段】伸縮装置4は1対のブロック列41,42からなり、それぞれのブロック列が伸縮遊間31の両側に相対して配置される。各ブロック列は複数の単位ブロック43,44が橋桁の幅方向に密接して配列されたものである。各単位ブロックは橋桁1又は橋台2のパラペット21のコンクリートに固着される基部と、この基部から突き出した突出部とを有する。各単位ブロックには緊張材45,46が埋め込まれ、これらの緊張材の後方部が橋桁又はパラペットのコンクリート内に伸長され、定着される。緊張力の導入により各単位ブロックはコンクリートに固着されとともに、緊張力の解放により当該単位ブロックをコンクリートから取り外すことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路又は一般道路等における橋梁の橋台と橋桁又は橋桁と橋桁との間に設けられる伸縮装置及び伸縮装置の取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁端部の橋桁と橋台との間又は橋桁と橋桁との間には、橋桁の伸縮を許容するように伸縮装置が設けられることが多い。この伸縮装置は一般に橋桁と橋台又は橋桁と橋桁との間の伸縮遊間を挟んで両側に支持され、橋桁が温度変化、コンクリートのクリープ又は乾燥収縮等によって伸縮しても、橋面すなわち車輌等の走行面の連続性を維持し、安全に走行できる状態とするものである。
【0003】
このような伸縮装置の一形式として、フィンガー式伸縮装置がよく知られており、例えば特許文献1又は特許文献2に記載されている
フィンガー式伸縮装置は、橋台と橋桁又は橋桁と橋桁との間に形成された伸縮遊間上に、対向する橋桁又は橋台の双方から多数の突出部が突き出したものである。これらの突出部は、橋桁の伸縮方向に突き出しており、櫛歯状に並列された突出部間に対向する側から突き出した突出部が突き入れられている。したがって、走行する車両は、伸縮遊間の両側から張り出した突出部の上を渡るように走行することができる。そして、伸縮遊間が変動したときには、突出部の互いに突き入れられる量が変動することによって車両の走行面の連続性が維持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−288707号公報
【特許文献2】特開2007−32057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記フィンガー式伸縮装置には次のような問題点がある。
フィンガー式伸縮装置には、路面を通行する車両によって繰り返し衝撃が作用するため破損が生じ易く、メインテナンスが必要となる。伸縮装置の破損は、車両走行時の衝撃を増大し、騒音、振動を発生させて近隣へ多大な影響を与えるとともに、車両に乗っている者へ不快感を与え、迅速な補修又は交換が望まれる。
【0006】
従来のフィンガー式伸縮装置では、櫛歯状となった多数の突出部が基部に一体となるように結合され、この基部が橋桁又は橋台のコンクリートに固着されている。このため、伸縮装置の交換は、伸縮装置を固定している部分のコンクリート等を破砕して撤去した後、新たな伸縮装置を設置する。そして、この伸縮装置を固定する部分にコンクリートを打設して硬化させる。これらの作業を行うには、伸縮装置が設けられた全幅にわたって交通を遮断する必要があり、工事費も多大となる。
したがって、補修の簡略化および補修費用の低減が可能となる伸縮装置及び伸縮装置の取り付け構造に関する技術が要請されている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、補修又は取替え工事における交通の遮断を低減するとともに、補修費用の低減が可能となる伸縮装置及び伸縮装置の取り付け構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 橋台と橋桁又は橋桁と橋桁との間に形成された伸縮遊間上に配置される伸縮装置であって、 橋桁のコンクリートに支持される基部と、前記伸縮遊間上へ前記基部から橋桁の軸線方向に張り出した突出部とを備えた単位ブロックを該橋桁の幅方向に複数を密接して配列した第1のブロック列と、 前記単位ブロックと同様の単位ブロックを橋桁の幅方向に配列し、前記伸縮遊間を挟んで前記橋桁の端面と対向する橋桁又は橋台のコンクリートに支持させた第2のブロック列とを有し、 前記第1のブロック列と前記第2のブロック列とは、それぞれのブロック列が備える単位ブロックの突出部を対向する方向に向けて配置され、該突出部の先端付近は互いに他方のブロック列が備える単位ブロックの突出部間の空隙に突き入れられた状態で支持されており、 先端が前記単位ブロックの突出部内に埋め込まれた緊張材の後方部は、前記基部の後面又は底面から前記橋桁又は前記橋台のコンクリート内に伸長され、緊張力が導入されて該橋桁又は前記橋台のコンクリートに定着されており、 該緊張材の緊張力で前記単位ブロックのそれぞれが前記橋桁又は前記橋台のコンクリートに固定されている伸縮装置を提供する。
【0009】
この伸縮装置は、上記構成を備えることにより、単位ブロック毎に埋め込まれた緊張材の緊張力により、単位ブロックがそれぞれ橋桁又は橋台のコンクリートに固着される。そして、緊張力を解放することによって単位ブロックを橋桁又は橋台のコンクリートから取り外すことができる。したがって、伸縮装置の補修にあたっては、予め交換用の単位ブロックを形成しておき、既存の単位ブロックを取り外して新たな単位ブロックと容易に交換して固定することが可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の伸縮装置において、 前記単位ブロックは、繊維補強コンクリート又は繊維補強モルタルで形成されているものとする。
【0011】
この伸縮装置では、単位ブロックを安価で容易に製造することができるとともに、単位ブロックの引張強度を増大することができ、単位ブロックの耐久性を向上させることができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の伸縮装置において、 前記単位ブロックのそれぞれは、前記橋桁の幅方向に隣接する単位ブロックと分離可能に配設されており、前記緊張材の緊張力を解放することによって、それぞれの単位ブロックは他の単位ブロックと分離して前記橋台又は前記橋桁のコンクリートから離脱可能となっているものとする。
【0013】
この伸縮装置では、一つの単位ブロックだけを他の単位ブロックから独立して橋桁又は橋台のコンクリートから取り外すことができる。また、この単位ブロックが取り外された空間に新しい単位ブロックを配列し、橋桁又は橋台のコンクリートに固定することができる。したがって、一つの単位ブロックだけの交換が可能となり、伸縮装置の補修のために行う交通の遮断を道路幅の一部とすることが可能となる。
【0014】
請求項4に係る発明は、 橋台と橋桁又は橋桁と橋桁との間に形成された伸縮遊間上に配置される伸縮装置の取り付け構造であって、 前記伸縮装置は、 前記橋桁のコンクリートに支持される基部と、前記伸縮遊間上へ前記基部から橋桁の軸線方向に張り出した突出部とを備えた単位ブロックを橋桁の幅方向に複数を密接して配列した第1のブロック列と、 前記単位ブロックと同様の単位ブロックを橋桁の幅方向に配列し、前記伸縮遊間を挟んで前記橋桁の端面と対向する橋桁又は橋台のコンクリートに支持させた第2のブロック列とを有し、 前記第1のブロック列と前記第2のブロック列とは、それぞれのブロック列が備える単位ブロックの突出部を対向する方向に向けて配置され、該突出部の先端付近は互いに他方のブロック列が備える単位ブロックの突出部間の空隙に突き入れられた状態で支持されており、 先端が前記単位ブロックの突出部内に埋め込まれた緊張材の後方部は、前記基部の後面又は底面から前記橋桁又は前記橋台のコンクリート内に伸長され、緊張力が導入されて該橋桁又は該橋台のコンクリートに定着されており、 該緊張材の緊張力で前記単位ブロックのそれぞれが前記橋桁又は前記橋台のコンクリートに固定されている伸縮装置の取り付け構造を提供する。
【0015】
この伸縮装置の取り付け構造では、単位ブロック毎に埋め込まれた緊張材の緊張力により、各単位ブロックを橋桁又は橋台のコンクリートに固定することができるとともに、緊張材の緊張力を解放することにより、単位ブロックのみを橋桁又は橋台のコンクリートから取り外すことが可能となる。したがって、伸縮装置の補修又は交換を容易に短時間で行うことができる。また、配列された単位ブロックの一部のみを交換することもできる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の伸縮装置の取り付け構造において、 前記第1のブロック列は前記橋桁の端部に支持され、前記第2のブロック列は、前記橋桁の端面と対向するように立ち上げられたパラペットの上部に支持されており、 前記パラペットの、前記第2のブロック列を支持する位置の下方に前記伸縮遊間と連続する凹状空間が設けられ、 前記第2のブロック列を構成する各単位ブロックに先端部が埋め込まれた緊張材の後端部は、前記凹状空間内で該緊張材の緊張力の導入及び解放が可能となるように定着されているものとする。
【0017】
上記構成を備えることにより、橋梁の完成後においても、凹状空間を利用して各単位ブロックに埋設される緊張材の緊張力の導入及び解放が可能となり、伸縮装置の補修を容易に行うことができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項4に記載の伸縮装置の取り付け構造において、 前記橋桁の桁端面の上部から該橋桁の軸線方向に桁端張り出し部が設けられ、 前記第1のブロック列は、前記桁端張り出し部上に支持され、 前記第2のブロック列は、前記橋桁の端面と対向するように立ち上げられたパラペットの上部に支持されており、 前記パラペットは、前記第1のブロック列及び第2のブロック列の突出部の下方に、前記橋台の側方へ排水する排水溝を有し、 前記突出部間から流下する雨水を前記排水溝内に流入させるものとする。
【0019】
この伸縮装置の取り付け構造は、上記構成を備えることにより、突出部間から雨水等が流下した場合には、雨水がパラペットに設けられた排水溝に流入し、橋台の側方に排水されて橋桁端面又はパラペットの表面に沿って流下するのが防止される。したがって、橋桁及びパラペットのコンクリートが雨水等に曝されるのを低減し、腐食や劣化が生じるのを有効に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
上記のように、本発明に係る伸縮装置及び伸縮装置の取り付け構造では、伸縮装置の単位ブロックを橋桁又は橋台のコンクリートに容易に固定することができるとともに取り外すことが可能となる。そして、この取り外した空間に新しい単位ブロックを配置して橋桁又は橋台のコンクリートに固定することができる。したがって、伸縮装置の補修を短時間で終了させることが可能となる。また、パラペットに排水溝が設けられた構造では、橋桁及びパラペットのコンクリートが雨水等に曝されるのを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態である伸縮装置及びこの伸縮装置が取り付けられた構造を示す概略断面図である。
【図2】図1に示す橋桁の端面図である。
【図3】図1に示す橋桁の端部の側面図である。
【図4】図1に示す伸縮装置で用いられる単位ブロックの側面図、正面図及び平面図である。
【図5】図1に示す伸縮装置の概略平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態である「伸縮装置の取り付け構造」を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態である「伸縮装置の取り付け構造」を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である伸縮装置が、橋桁と橋台との伸縮遊間に取り付けられた構造を示す概略断面図である。
この伸縮装置4は、橋台2のパラペット21とコンクリートからなる橋桁1の桁端張り出し部11とに支持され、伸縮遊間上を通過する車両の輪荷重を支持するように配置されている。そして、この伸縮装置4はコンクリート又はモルタルのブロックを配列した一対のブロック列から構成されている。
【0023】
上記橋桁1は、橋台2の橋桁支持部22の上にゴム支承3を介して支持されている。これにより、温度変化で橋桁1が伸縮したとき、又は地震時の水平力が作用したとき等には、ゴム支承3が変形して橋桁端部の位置が変動し、橋台2との間で相対的な変位が生じるものである。
【0024】
この橋桁1は、図2及び図3に示すように断面形状が箱形となっており、桁端部には端横桁13が設けられて大きな剛性を有し、伸縮装置が設けられる桁端張り出し部11を支持するものとなっている。また、断面が箱形となった部分から両側方へ張り出した床版張り出し部14は、図3に示すように桁端で増厚されており、この増厚部15から橋桁1の軸線方向に連続して桁端張り出し部11が形成されている。これにより、橋桁1の床版が張り出している部分でも桁端張り出し部11が路面の荷重を支持することができる充分な強度を有するものとなっている。
【0025】
上記桁端張り出し部11は、この上に作用する輪荷重等に耐えられるように鉄筋で充分に補強されており、必要に応じてプレストレスを導入することもできる。そして、この桁端張り出し部11の上部に第1の切り欠き部11aが設けられ、この第1の切り欠き部11a内に伸縮装置4の橋桁側が支持される。
【0026】
上記橋台2は、直接基礎又は杭基礎等によって地盤上に支持された鉄筋コンクリート構造となっており、橋桁1の端部を支持するとともに背面側の盛土5の土圧に抵抗するものとなっている。橋桁1が支持される橋桁支持部22の盛土側には橋桁1の端面12と対向する壁状のパラペット21が立ち上げられ、橋桁支持部22より上方の背面土を支持するとともに、上部の盛土側は踏掛版6の一端を支持するものとなっている。踏掛版6は、他端が盛土5上に支持され、橋台付近の盛土5が締め固められてパラペット上と盛土部上との間で路面に段差が生じるのを防止するものである。
【0027】
上記パラペット21は、桁端面12と対向する側が、桁端面12から張り出した桁端張り出し部11の形状に対応して上部が盛土側に後退した形状となっている。そして、桁端張り出し部11と所定の間隔で対向し、これらの間が伸縮遊間31となっている。パラペット21の最上部には第2の切り欠き部21aが設けられ、この第2の切り欠き部21a内に伸縮装置4の橋台側が支持されている。
【0028】
上記第2の切り欠き部21aの下方には、伸縮遊間31と連続して盛土側に凹状となった空間が形成されている。そして、この凹状空間23の底部は橋桁側に延長され、伸縮装置4が設けられた位置より橋桁側には凹状空間の底部からコンクリートの壁体24が立ち上げられている。これにより、上記伸縮装置4が設けられた位置から雨水等が流下すると、前記壁体24の盛土側であって凹状空間23と連続した領域25に収容され、この領域が排水溝として機能するものとなっている。つまり、この領域25の底面26には、橋桁2の軸線を横断する方向に排水勾配が設けられており、雨水等が橋台2の側部に排出される。
【0029】
また、図1に示すように、この凹状空間23は、内部に作業者が入り込んで排水溝として機能する領域25の清掃や伸縮装置4の点検又は補修ができるような大きさに形成されている。また、後述する緊張材に緊張力を導入する作業、及び緊張力を解放する作業を行うことができるものとなっている。
なお、図1中の符号11b、21bは、桁端張り出し部11及びパラペット上部の伸縮装置を支持する部分を補強するリブ材である。
【0030】
上記橋台2の排水溝として機能する領域25は、橋桁1が橋台2から最も離れた位置まで移動したときにも、桁端張り出し部の先端面11cとパラペットの対向する壁面21cとの間に流下する雨水を集水することができるものとなっている。そして、桁端張り出し部11の先端の下部には、下方に突き出した水切り11dが設けられており、桁端張り出し部11の先端面11cを流下した雨水等が桁端張り出し部11の下側に回り込むのを防止している。これにより、路面を流れた雨水等は伸縮装置4の下側に流下するが、パラペット21に設けられた排水溝として機能する領域25を経て橋台2の側方に排水される。そして、橋桁1の端面12とこの端面12と対向するパラペット21の壁面27を雨水等が流下するのを防止することができ、これらの面の汚染及び劣化を回避することができるようになっている。
【0031】
上記伸縮装置4は、超高度繊維補強コンクリート又は超高度繊維補強モルタルからなる単位ブロック43を桁端張り出し部11上で該橋桁1の幅方向に配列した第1のブロック列41と、同様の単位ブロック44を橋台のパラペット21上で橋桁の幅方向に配列した第2のブロック列42とを備えるものである。
【0032】
上記単位ブロック43,44は、図4に示すように、基部43aとこの基部43aから橋桁1の軸線方向に突き出すように形成された突出部43bとで構成されている。
上記基部43aは、片持ち状に突き出した上記突出部を支持するとともに、桁端張り出し部11又はパラペット21のコンクリート上に固着して支持されるものである。また、上記突出部43bは、基部43aと一体に形成されて橋桁1の軸線方向に突き出しており、先端に近づくにしたがって細くなっている。
【0033】
上記第1のブロック列41及び上記第2のブロック列42は、図5に示すように、それぞれ複数の単位ブロック43,44が橋桁1の幅方向に密接して配列されたものであり、互いに対向する方向へ突出部43b,44bが突き出すように配置されている。
また、これらの第1のブロック列41及び第2のブロック列42の上面は、橋桁上及び盛土の上に敷設される舗装7の上面とほぼ同じ高さになっており、車両等は舗装面から双方のブロック列41,42上を渡るように走行することができるものとなっている。
【0034】
上記ブロック列41,42の一方から突き出した突出部43b,44bの先端部は、他方のブロック列の突出部間に突き入れられている。これにより、橋桁1がその軸線方向に移動して伸縮遊間が変動したときに、突出部の互いの突き入れ量が変動して相対的な変位が許容され、車両走行面の連続性を維持できるものとなっている。
【0035】
上記ブロック列41,42と桁端張り出し部11又はパラペット21のコンクリートとの間には、第1の切り欠き部11a及び第2の切り欠き部21aを埋めるようにコンクリートが現場打設されている。この現場打ちコンクリートにより桁端張り出し部11のコンクリートと第1のブロック列41及びパラペット21のコンクリートと第2のブロック列42とが連続してそれぞれ一体となっている。
なお、上記現場打ちコンクリートは通常のコンクリートや樹脂コンクリートを用いることもできるが、超高強度繊維補強コンクリートを用いるのが望ましい。
【0036】
各々の単位ブロック43,44にはアラミド繊維からなる緊張材45,46が埋め込まれており、その先端部は突出部43b,44b内で単位ブロックを形成するコンクリート又はモルタルに定着されている。そして、この緊張材45,46の後方部は基部43a,44aの後面から伸長されて、橋桁1の桁端張り出し部11又はパラペット21のコンクリートに埋め込まれたシース47,48に挿通されている。
第1のブロック列41を構成する各単位ブロック43の後面から伸長された緊張材45は、桁張り出し部11の下面で緊張力が導入され定着されるように配置されている。つまり、桁端面とパラペット21との間に形成された空間を利用して緊張材45の緊張及び定着ができるようになっている。
また、第2のブロック列42を構成する各単位ブロック44の後面から伸長された緊張材46は、パラペット21のコンクリート内を下方に曲げ回され、凹状空間23内で緊張力が導入され定着される。
【0037】
このように配置された緊張材45,46に緊張力が導入されることにより、各単位ブロック43,44の基部は現場打設されたコンクリートを介して桁端張り出し部11及びパラペット21のコンクリートに強く押し付けられ、固着されている。そして、各単位ブロック45,46は隣接する他の単位ブロックと結合されておらず、各単位ブロックが独立して橋桁1及びパラペット21に固定支持される。
また、桁端張り出し部11の下側及び凹状空間23には、作業者が入り込んで緊張材45,46の緊張及び解放のための作業ができる空間が形成されているので、橋梁の完成後であっても各単位ブロック43,44に埋め込まれた緊張材45,46の緊張力の導入及び解放ができるようになっている。
【0038】
これにより、各単位ブロック43,44は、埋設された緊張材45,46の緊張力を解放し、当該単位ブロックだけを桁端張り出し部11及びパラペット21のコンクリートから取り外すことができる。そして、当該単位ブロックが取り外された後の空間に交換する新しい単位ブロックを配列し、緊張材の緊張及び定着をすることにより、破損等が生じた単位ブロックだけを容易に交換することができる。これにより、伸縮装置4の補修のための時間を低減することが可能になるとともに、道路幅の一部を遮断するだけで伸縮装置4の補修が可能となる。
【0039】
次に、上記伸縮装置の各単位ブロックを設置する工程及び単位ブロックを交換する工程を説明する。
桁端張り出し部11の橋台側の上部には、第1の切り欠き部11aを形成しておき、この切り欠き部11a内に仮支持部材(図示せず)を設置する。仮支持部材は、例えば鋼によって形成し、単位ブロック43を所定の位置に正確に支持することができるものとする。この仮支持部材に第1のブロック列41を構成する複数の単位ブロック43を支持させ、突出部43bを橋台側に突出させた位置に設置する。このとき、橋桁1の幅方向には各単位ブロック43を隣接する単位ブロックと密接するように配列する。また、単位ブロック43に先端部が埋め込まれた緊張材45は桁端張り出し部11に埋設されたシース47内にそれぞれ挿通する。そして、緊張材45の後端部は桁端張り出し部11の下面から突き出しておく。
【0040】
一方、パラペット21の橋桁側の上部には第2の切り欠き部21aを形成しておき、この第2の切り欠き部21a内に仮支持部材(図示せず)を設置する。そして、第2のブロック列42を構成する複数の単位ブロック44を、橋桁1の幅方向に密接して配列する。これら単位ブロック44は突出部44bが橋桁側に突出するように配置し、所定の間隔で突き出した第1のブロック列41の突出部43bの間の空隙に所定長を突き入れる。また、各単位ブロック44の後面から伸長された緊張材46はパラペット21のコンクリートに埋め込まれたシース48内に挿通し、後端部を凹状空間23内に突き出しておく。
【0041】
その後、第1の切り欠き部11a内及び第2の切り欠き21a内にコンクリートを現場打設し、桁端張り出し部11と単位ブロック43との間及びパラペット21の上部と単位ブロック44との間にコンクリートを充填する。現場打設したコンクリートが硬化した後、桁張り出し部11の下面及びパラペット21に設けられた凹状空間23内で、緊張材45,46にそれぞれにジャッキを装着し、緊張力を導入して定着する。
なお、単位ブロック43,44の基部43a,44aの現場打設される上記コンクリートと接触する表面には離型剤を塗布しておくのが望ましい。
【0042】
一方、道路が供用された後、上記伸縮装置を補修する必要が生じ、単位ブロックの全部又は一部を交換するときには、交換する単位ブロックに先端が埋め込まれた緊張材のみについて、桁端張り出し部11の下面又は凹状空間23内でジャッキを装着し、緊張力を解放する。そして、緊張力が解放されると、離型剤が塗布されている単位ブロックと現場打設したコンクリートとの間で分離可能となり、拘束が解除された単位ブロック43,44を取りはずす。このとき、単位ブロックは隣接する単位ブロックとは分離して一つだけを抜きとることもできるし、複数をまとめて取り外すこともできる。
【0043】
単位ブロック43,44を取り外した後には、交換するために制作した新たな単位ブロックを嵌め入れるとともに、この単位ブロックの後面から伸長された緊張材45,46をシース47,48に挿通し、端部を桁端張り出し部11の下面又は凹状空間23内に突き出す。そして、緊張力を導入して単位ブロック43,44を固定する。
なお、新たな単位ブロックを嵌め入れるときには、この単位ブロックと切り欠き部11a,21a内に現場打設したコンクリートとの間にモルタル層等を介挿し、双方を密着させる。
【0044】
以上に説明した実施の形態では、単位ブロック43,44に埋め込まれた緊張材45,46を単位ブロック43,44の後面から伸長させているが、底面から伸長させることもできる。
また、伸縮装置4には超高強度繊維補強コンクリートあるいは超高強度繊維補強モルタルを用いたが、これらの材料に限定されるものではなく、強度が優れた他の材料を使用することができる。さらに、本実施の形態では、アラミド繊維からなる緊張材45,46を使用したが、鋼線又は鋼より線等を緊張材として用いることも可能である。
【0045】
また、上記実施の形態では、橋桁1はコンクリートからなるものとしているが、これに限定されるものではなく、上床版と下床版とをコンクリートからなるものとし、ウェブ部分を鋼材とした橋桁であっても良いし、鋼桁上にコンクリート床版を設けた構造であっても良い。ただし、伸縮装置を支持する桁端張り出し部はコンクリートで形成するのが望ましく、橋桁の端部は横桁等で補強して充分な剛性を有するものとするのが良い。
【0046】
図6は、本発明の第2の実施形態である「伸縮装置の取り付け構造」を示す概略断面図である。
この伸縮装置の取り付け構造は、図1に示す伸縮装置4と同じものを使用しており、図1の取り付け構造と同様に橋桁50の端面から張り出すように設けられた桁端張り出し部51とパラペット52の上部とに伸縮装置53が支持されている。この伸縮装置53は図1に示す伸縮装置と同様に単位ブロックを配列した第1のブロック列55及び第2のブロック列56を対向するように設置したものである。そして、桁端張り出し部51とパラペット52の上部との双方から各単位ブロックの突出部が突き出しており、パラペットにはその下側を受けるように排水溝54が設けられている。
【0047】
本実施の形態では、上記排水溝54の幅は、桁端張り出し部51の先端面とパラペット52の対向面との間に流下する雨水等を受けることができるものとなっており、深さは第1の実施の形態における排水溝よりも小さく形成され、雨水等の排水に必要な深さに設定されている。
【0048】
パラペット52に支持された第1のブロック列56の各単位ブロックに先端部が埋め込まれ、これらの単位ブロックの後面から伸長された緊張材58の後方部は、パラペット52のコンクリート内に埋め込まれ、上記排水溝54の下側に曲げ回されている。そして、排水溝54より下方で桁端面と対向するパラペットの壁面52aに緊張材定着用の切り欠き52bが設けられ、この切り欠き52bから緊張材58が突き出すように配置されている。したがって第2のブロック列56を構成する各単位ブロックは、上記切り欠き52bにジャッキを装着し、桁端面50aとパラペットの壁面52aとの間の伸縮遊間内で緊張材58に緊張力を導入して固定できるものとなっている。
一方、第1のブロック列55を構成する各単位ブロックに先端部が埋め込まれた緊張材57は、図1に示す伸縮装置と同様に桁端張り出し部51の下面で緊張力が導入される。
【0049】
この実施の形態では、パラペット52を小さく形成することが可能になるとともに、図1に示す伸縮装置の取り付け構造と同様に、緊張力の導入によってブロック列55,56を構成する各単位ブロックを橋桁50及びパラペット52に固着することができる。また、緊張力の解放により、個々の単位ブロックを交換することができる。
【0050】
図7は、本発明の第3の実施形態である「伸縮装置の取り付け構造」を示す概略断面図である。
この伸縮装置80の取り付け構造では、橋桁60に設けられた桁端張り出し部61の張り出し長が短くなっている。そして、桁端張り出し部61から横桁60a上にわたって第1の切り欠き部が設けられ、この第1の切り欠き部62内に第1のブロック列64が配置されている。一方、パラペット66の上部には第2の切り欠き部63が設けられ、第2のブロック列65が配置されている。また、パラペット66は、桁端と対向する壁面66aがほぼ鉛直に形成され、図1及び図6示すパラペットのように桁端張り出し部と対向する部分を後退させることによる排水溝は設けられていない。ただし、これに代わる排水溝として、図7に示すように傾斜板67と溝型部材68とを桁端張り出し部61の先端面及びパラペットの対向面66aに取り付けることによって雨水等を橋台の側方に排出することができるものとなっている。
【0051】
上記第1のブロック列64及び第2のブロック列65を構成する単位ブロックは、図1に示す伸縮装置と同じ単位ブロックが用いられており、第1のブロック列64の単位ブロックから伸長された緊張材69は、桁端の横桁60aを貫通して箱形断面となった内側で定着されている。また、第2のブロック列65の単位ブロックに先端部が埋め込まれた緊張材70は、パラペット66のコンクリート内で下側に曲げ下げられ、桁端面60bと対向する壁面66aに設けられた緊張材定着用の切り欠き66b内で定着されるものとなっている。
【0052】
このような伸縮装置80の取り付け構造では、桁端部の形状及び橋台のパラペットの形状を単純にすることができ、桁端部及びパラペット66を構築する作業を効率よく行うことができる。また、図1及び図6に示す取り付け構造と同様に、伸縮装置80の各単位ブロックを緊張材69,70に導入される緊張力で橋桁60又はパラペット66に固着することができ、緊張力を解放して、各単位ブロックを交換することも容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
1:橋桁、 2:橋台、 3:ゴム支承、 4:伸縮装置、 5:盛土、 6:踏掛版、 7:舗装、
11:桁端張り出し部、 11a:第1の切り欠き部、 11b:リブ材、 11c:桁端張り出し部の先端面、 11d:水切り、 12:橋桁の端面、 13:端横桁、 14:床版張り出し部、 15:張り出し床版の増厚部、
21:パラペット、 21a:第2の切り欠き部、 21b:リブ材、 21c:パラペットの桁端張り出し部と対向する壁面、 22:橋桁支持部、 23:凹状空間、 24:コンクリートの壁体、 25:排水溝として機能する領域、 26:排水溝の底面、 27:パラペットの桁端張り出し部と対向する壁面、 31:伸縮遊間、
41:第1のブロック列、 42:第2のブロック列、 43,44:単位ブロック、 43a、44a:単位ブロックの基部、 43b,44b:単位ブロックの突出部、 45,46:緊張材、 47,48:シース、
50:橋桁、 51:桁端張り出し部、 52:パラペット、 52a:パラペットの桁端張り出し部と対向する壁面、 52b:緊張材定着用の切り欠き、 53:伸縮装置、 54:排水溝、 55:第1のブロック列、 56:第2のブロック列、 57,58:緊張材、
60:橋桁、 60a:橋桁の端横桁、 61:桁端張り出し部、 62:第1の切り欠き部、 63:第2の切り欠き部、 64:第1のブロック列、 65:第2のブロック列、 66:パラペット、 66a:パラペットの橋桁端面と対向する壁面、 66b:緊張材定着用の切り欠き、 67:傾斜板、 68:溝型部材、 69,70:緊張材、 80:伸縮装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋台と橋桁又は橋桁と橋桁との間に形成された伸縮遊間上に配置される伸縮装置であって、
橋桁のコンクリートに支持される基部と、前記伸縮遊間上へ前記基部から橋桁の軸線方向に張り出した突出部とを備えた単位ブロックを該橋桁の幅方向に複数を密接して配列した第1のブロック列と、
前記単位ブロックと同様の単位ブロックを橋桁の幅方向に配列し、前記伸縮遊間を挟んで前記橋桁の端面と対向する橋桁又は橋台のコンクリートに支持させた第2のブロック列とを有し、
前記第1のブロック列と前記第2のブロック列とは、それぞれのブロック列が備える単位ブロックの突出部を対向する方向に向けて配置され、該突出部の先端付近は互いに他方のブロック列が備える単位ブロックの突出部間の空隙に突き入れられた状態で支持されており、
先端が前記単位ブロックの突出部内に埋め込まれた緊張材の後方部は、前記基部の後面又は底面から前記橋桁又は前記橋台のコンクリート内に伸長され、緊張力が導入されて該橋桁又は前記橋台のコンクリートに定着されており、
該緊張材の緊張力で前記単位ブロックのそれぞれが前記橋桁又は前記橋台のコンクリートに固定されていることを特徴とする伸縮装置。
【請求項2】
前記単位ブロックは、繊維補強コンクリート又は繊維補強モルタルで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮装置。
【請求項3】
前記単位ブロックのそれぞれは、前記橋桁の幅方向に隣接する単位ブロックと分離可能に配設されており、前記緊張材の緊張力を解放することによって、それぞれの単位ブロックは他の単位ブロックと分離して前記橋台又は前記橋桁のコンクリートから離脱可能となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伸縮装置
【請求項4】
橋台と橋桁又は橋桁と橋桁との間に形成された伸縮遊間上に配置される伸縮装置の取り付け構造であって、
前記伸縮装置は、 前記橋桁のコンクリートに支持される基部と、前記伸縮遊間上へ前記基部から橋桁の軸線方向に張り出した突出部とを備えた単位ブロックを橋桁の幅方向に複数を密接して配列した第1のブロック列と、 前記単位ブロックと同様の単位ブロックを橋桁の幅方向に配列し、前記伸縮遊間を挟んで前記橋桁の端面と対向する橋桁又は橋台のコンクリートに支持させた第2のブロック列とを有し、
前記第1のブロック列と前記第2のブロック列とは、それぞれのブロック列が備える単位ブロックの突出部を対向する方向に向けて配置され、該突出部の先端付近は互いに他方のブロック列が備える単位ブロックの突出部間の空隙に突き入れられた状態で支持されており、
先端が前記単位ブロックの突出部内に埋め込まれた緊張材の後方部は、前記基部の後面又は底面から前記橋桁又は前記橋台のコンクリート内に伸長され、緊張力が導入されて該橋桁又は該橋台のコンクリートに定着されており、
該緊張材の緊張力で前記単位ブロックのそれぞれが前記橋桁又は前記橋台のコンクリートに固定されていることを特徴とする伸縮装置の取り付け構造。
【請求項5】
前記第1のブロック列は前記橋桁の端部に支持され、前記第2のブロック列は、前記橋桁の端面と対向するように立ち上げられたパラペットの上部に支持されており、
前記パラペットの、前記第2のブロック列を支持する位置の下方に前記伸縮遊間と連続する凹状空間が設けられ、
前記第2のブロック列を構成する各単位ブロックに先端部が埋め込まれた緊張材の後端部は、前記凹状空間内で該緊張材の緊張力の導入及び解放が可能となるように定着されていることを特徴とする請求項4に記載の伸縮装置の取り付け構造。
【請求項6】
前記橋桁の桁端面の上部から該橋桁の軸線方向に桁端張り出し部が設けられ、
前記第1のブロック列は、前記桁端張り出し部上に支持され、
前記第2のブロック列は、前記橋桁の端面と対向するように立ち上げられたパラペットの上部に支持されており、
前記パラペットは、前記第1のブロック列及び第2のブロック列の突出部の下方に、前記橋台の側方へ排水する排水溝を有し、
前記突出部間から流下する雨水を前記排水溝内に流入させるものであることを特徴とする請求項4に記載の伸縮装置の取り付け構造。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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