説明

伸縮装置

【課題】 対を成す伸縮脚を備えて構成される脚部の長さを容易かつ同時に粗調節及び微調節を行うとともに強固な固定が可能な伸縮装置を提供する。
【解決手段】 中空筒の一部に窓部23を備える脚部2と、この脚部2の一の端部を内挿しスライド可能な第1の伸縮脚部3と、脚部2の他の端部を内挿しスライド可能な第2の伸縮脚部4と、脚部2の一の端部と第1の伸縮脚部3に介設される第1の伸縮部材5と、脚部の他の端部と第2の伸縮脚部4に介設される第2の伸縮部材8と、脚部2の一の端部に内設される第1のスライド部材12に固設される第1の長さ調整部材13と、脚部2の他の端部に内設される第2のスライド部材17に固設される第2の長さ調整部材18と、窓部23において第1の長さ調整部材13及び第2の長さ調整部材18を係止する係止部19と有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対を成す伸縮脚を備えて構成され容易にその長さを調節することができる伸縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、家具や脚立等の脚に設置される伸縮装置は、主体となる脚に対して内挿又は外挿される往復自在な伸縮脚が装着され、この伸縮脚を適当な位置に移動してピン等で固定することにより脚を所望の長さに調節することができるようになっている。さらには、主体となる脚にばね等の伸縮部材を設置して伸縮脚に当接させ、伸縮部材の弾性を利用して伸縮脚の移動を容易に行うことも考えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「脚高さ調節具」という名称で、椅子やベッド等の脚の高さを簡単かつ確実に調節することができる脚高さ調節具に関する発明が開示されている。
この特許文献1に開示された発明は、椅子やベッド等の脚を内挿可能な保持空間と側壁の所定位置に複数のボルト穴とを有し床面上に載置可能に形成された筒状脚保持具と、この筒状脚保持具に伸縮自在に内設されるコイルばねと、このコイルばねの上部に設けられ上面は筒状脚保持具に内挿される椅子やベッド等の脚を載置可能に形成され下面にボルト穴から挿通されるボルトと嵌合する嵌合凹部を備えた脚受け具とから構成されている。
そして、椅子やベッド等の脚を高くする場合には、まず、椅子やベッド等の脚を筒状脚保持具に挿入して脚の底面を脚受け具の上面に当接させ、この脚の力によってコイルばねを圧縮させた状態で脚受け具の下面の嵌合凹部を所望の位置のボルト穴と符号させる。そして、このボルト穴にボルトを挿入しナットで固定するとコイルばねの伸縮が抑止されて脚受け具の位置が固定され、その結果、椅子やベッド等の脚の高さを容易に調節することができるようになっている。
【0004】
また、特許文献2には、「自転車のサドル昇降装置」という名称でばねの弾性力を利用して自転車に乗車した状態で容易にサドルの高さを調節することができる自転車のサドル昇降装置に関する発明が開示されている。
この特許文献2に開示された発明は、フレームのシートポストの内部に昇降自在に挿嵌され上下係合周溝を有する中筒と、この中筒を上方へ付勢させるばねを備えた緩衝装置と、シートポストの内部に設けられ上下係合周溝のいずれかに係嵌させて中筒を所定位置に係止させるための係止爪を備えた係止装置と、中筒上端に装着された高さ調節自在のサドルと、係止装置の係止爪を操作する操作レバーとから構成されている。
そして、サドルの高さを高くしたい場合には、乗者はサドルに跨った状態で、ハンドル付近に取り付けられた操作レバーを操作して中筒の上部係合周溝に係止されている係止爪を脱外する。そして、サドルから少し腰を浮かせると、圧縮されていた緩衝装置のばねの弾性作用によって中筒が上方へ押し上げられて、係止爪による係止位置に下部係合周溝が配置されるので、即座に操作レバーから手を放して操作レバーを解除し、係止爪を下部係合周溝に係嵌させると、サドルの上昇をロックすることができる。
逆に、サドルの高さを低くしたい場合は、サドルの高さを高くする場合と同様に操作レバーを操作して中筒の下部係合周溝に係止されている係止爪を脱外する。そうすると、乗者の体重によって緩衝装置のばねが圧縮され中筒が降下して係止爪による係止位置に上部係合周溝が配置されるので、即座に操作レバーから手を放して操作レバーを解除し、係止爪を上部係合周溝に係嵌させると、サドルの降下をロックすることができる。
このように特許文献2では、操作レバーによる係止爪の解除あるいはロック操作と、乗者の体重による緩衝装置のばねの圧縮膨張操作を行うだけで自転車に乗車した状態で容易にサドルの高さを調節することができる。
【0005】
そして、伸縮部材を長さ調整部材としても使用する例として、特許文献3には、「伸縮軸」という名称で、任意の位置に安定よく設置できる伸縮軸に関する発明が開示されている。
この特許文献3に開示された発明は、外端部に吸盤を備える大型パイプと、この大型パイプにスライド自在に内挿され外端部に吸盤を備える小型パイプと、大型パイプと小型パイプを伸縮調整位置で保持する保持手段から構成されており、また、保持手段は、大型パイプの内部に一の端部が固設され他の端部が小型パイプに挿入されるコイルスプリングと、大型パイプの内部に位置する小型パイプの内端部に設けられコイルスプリングの螺旋部分に係合する突起とを有するものである。
そして、伸縮軸を対向する壁面に架設する場合には、まず、大型パイプと小型パイプを軸方向に対して相対的に回転させると、突起がコイルスプリングの螺旋部分に沿って移動し、その結果、大型パイプと小型パイプが相対的に軸方向へ移動して伸縮軸の長さが調節される。続いて、両端に設けられる吸盤を壁面に押し付けて変形させると、吸盤の吸着力と吸着部に作用する摩擦力によって伸縮軸は壁面間に水平に架設される。しかも、コイルスプリングは大型パイプに固設される端部から突起までの間において伸縮可能であるので、大型パイプと小型パイプをコイルスプリングが圧縮されるまで移動させておいて伸縮軸を架設すると、吸盤には吸着力と摩擦力に加えてコイルスプリングの弾力が作用するので、さらに安定した状態で保持することができる。
【特許文献1】実開昭64−41348号公報
【特許文献2】実開平6−39687号公報
【特許文献3】実開平5−27317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された従来の技術では、ばねの弾性力を利用して脚を伸縮させて予め設定された位置で固定する構造を有しているので、厳密には所望の脚の長さにすることができないとともに脚の長さや高さの微調節を行うことができないという課題があった。さらに、複数の脚に対しては個別に設置されるので、対象の脚毎に高さあるいは長さの調節を行わなければならず、操作が煩雑で所要時間が長くなるという課題もあった。
【0007】
また、特許文献3に記載された従来の技術では、コイルスプリングの螺旋部分に小型パイプの突起を係合させることにより伸縮軸の大まかな長さを調節するという発想はあるものの、大型パイプと小型パイプは固定されておらず、伸縮軸はコイルスプリングの弾性によって軸方向に対して伸縮可能になっているので、実際には、コイルスプリングは小型パイプの突起との係合により伸縮軸の長さを決定するのではなく、コイルスプリングにおける伸縮可能な長さを決定しているものである。また、常に荷重を加えると伸縮可能な構造であるので、上部に荷重のかかる脚には適用できないという課題があった。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、対を成す伸縮脚を備えて構成される脚部の長さを容易かつ同時に粗調節及び微調節を行うとともに強固な固定が可能な伸縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である伸縮装置は、中空筒の一部に窓部を備える脚部と、この脚部の一の端部を内挿しスライド可能な第1の伸縮脚部と、脚部の他の端部を内挿しスライド可能な第2の伸縮脚部と、脚部の一の端部と第1の伸縮脚部に介設される第1の伸縮部材と、脚部の他の端部と第2の伸縮脚部に介設される第2の伸縮部材と、脚部の一の端部に内設され脚部の内部をスライド可能な第1のスライド部材に一の端部が固設され螺旋状に形成された引きばねによって構成される第1の長さ調整部材と、脚部の他の端部に内設され脚部の内部をスライド可能な第2のスライド部材に一の端部が固設され螺旋状に形成された引きばねによって構成される第2の長さ調整部材と、脚部に設けられる窓部において第1の長さ調整部材及び第2の長さ調整部材を係止する係止部とを有し、この係止部は、窓部からスライド挿入させて第1の長さ調整部材及び第2の長さ調整部材を刺衝して第1の長さ調整部材及び第2の長さ調整部材の移動を抑止する係止部材と、この係止部材を脚部に設けられる窓部に固定する固定部材とを備えるものである。
上記構成の伸縮装置では、まず、脚部の一の端部を第1の伸縮脚に押入すると第1の伸縮部材が縮みながら、脚部が第1の伸縮脚の内部に収納されていく。この動作に対して第1のスライド部材は脚部内部を他の端部の方向へ移動し、第1の長さ調整部材も第1のスライド部材と共に移動するという作用を有する。同様に、脚部の他の端部を第2の伸縮脚に押入すると第2の伸縮部材が縮みながら、脚部が第2の伸縮脚の内部に収納されていき、同時に、第2のスライド部材が脚部内部を一の端部の方向へ移動し、第2の長さ調整部材もこの第2のスライド部材の移動に伴って脚部内部をその一の端部方向へ移動するという作用を有する。
また、脚部に設けられる窓部において係止部材をスライド挿入すると、係止部材は窓部に配置される第1の長さ調整部材及び第2の長さ調整部材の間隙を刺衝して第1の長さ調整部材及び第2の長さ調整部材の移動を抑止するという作用を有する。そして、刺衝されている係止部材を抜脱すると、第1の伸縮脚及び第2の伸縮脚は、第1の伸縮部材及び第2の伸縮部材の弾性により自動的に脚部から抜出し、同時に、第1のスライド部材とこの第1のスライド部材に固設される第1の長さ調整部材は脚部の一の端部方向へ移動し、第2のスライド部材とこの第2のスライド部材に固設される第2の長さ調整部材は脚部の他の端部方向へ移動するという作用を有する。
【0010】
また、請求項2記載の発明である伸縮装置は、中空筒の一部に窓部を備える脚部と、この脚部の一の端部を内挿しスライド可能な第1の伸縮脚部と、脚部の他の端部を内挿しスライド可能な第2の伸縮脚部と、脚部の一の端部と第1の伸縮脚部に介設される第1の伸縮部材と、脚部の他の端部と第2の伸縮脚部に介設される第2の伸縮部材と、脚部の一の端部に内設され脚部の内部をスライド可能な第1のスライド部材に一の端部が固設され螺旋状に形成された引きばねによって構成される第1の長さ調整部材と、この第1の長さ調整部材の他の端部に接続され脚部の他の端部まで延設されるガイド部材と、脚部の他の端部に内設されガイド部材の内部をスライド可能な第2のスライド部材に一の端部が固設され螺旋状に形成された引きばねによって構成される第2の長さ調整部材と、脚部に設けられる窓部において第1の長さ調整部材及び第2の長さ調整部材を係止する係止部とを有し、この係止部は、窓部からスライド挿入させて第1の長さ調整部材及び第2の長さ調整部材を刺衝して第1の長さ調整部材及び第2の長さ調整部材の移動を抑止する係止部材と、この係止部材を脚部に設けられる窓部に固定する固定部材とを備えるものである。
上記構成の伸縮装置では、ほぼ請求項1に記載の伸縮装置と同様であるが、ガイド部材を、第1の長さ調整部材の他の端部から脚部の他の端部まで延設したことが特徴となる。
そこで、脚部の他の端部を第2の伸縮脚に押入すると第2の伸縮部材が縮みながら、脚部が第2の伸縮脚の内部に収納されていき、同時に、第2のスライド部材が脚部内部を一の端部の方向へ移動し、第2の長さ調整部材がガイド部材の内部を脚部の一の端部方向へ移動し、この第2のスライド部材の移動に伴って第2の長さ調整部材も脚部の一の端部方向へ移動するという作用を有する。ガイド部材は、第1の長さ調整部材の他の端部に接続され脚部の他の端部まで延設されるので、第2の長さ調整部材は、ガイド部材内から引き続き第1の長さ調整部材内を移動することになる。ガイド部材は、第2の長さ調整部材を挿通させることによって脚部内で蛇行などの不具合を起こさないように作用する部材である。
また、脚部に設けられる窓部において係止部材をスライド挿入、あるいは抜脱する際の作用は、請求項1に記載の発明と同様である。
【0011】
また、請求項3に記載の発明である伸縮装置は、請求項2に記載の伸縮装置において、ガイド部材は螺旋状に形成された押しばねで構成されるものである。
上記構成の伸縮装置では、請求項2に記載の発明の作用に加えて、脚部の一の端部の第1の伸縮脚部への押入に伴う第1のスライド部材及び第1の長さ調整部材の脚部の他の端部方向への移動により、押しばねで構成されるガイド部材は移動するとともに圧縮されるという作用を有する。また、圧縮された状態から係止部材による係止が解除されると、押しばねで構成されるガイド部材はばねの弾性により第1のスライド部材及び第1の長さ調整部材を脚部の一の端部方向へ押動するという作用を有する。
【0012】
そして、請求項4に記載の発明である伸縮装置は、請求項3に記載の伸縮装置において、第1の長さ調整部材を構成する螺旋状に形成された引きばね及び/又は押しばねと、第2の長さ調整部材を構成する螺旋状に形成された引きばねの螺旋方向が異方向であるものである。
上記構成の伸縮装置では、請求項2記載の発明の作用に加えて、接し合う第1の長さ調整部材を構成する螺旋状に形成された引きばね及び/又は押しばねと、第2の長さ調整部材を構成する螺旋状に形成された引きばねの螺旋方向が互いに異なる方向であるため、螺旋同士の噛み込みあるいは絡みを防止する作用を有する。
【0013】
さらに、請求項5に記載の発明である伸縮装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の伸縮装置において、係止部材は、切欠部を有する平板状であるものである。
上記構成の伸縮装置では、請求項1乃至請求項4記載の発明の作用に加えて、係止部材に形成される切欠部は、外周を形成する第1の長さ調整部材のみを刺衝する際に刺衝面積を増加させるという作用を有する。
【0014】
そして、請求項6に記載の発明である伸縮装置は、中空筒の一部に窓部と中空筒の長手方向に沿って形成される溝部を備える脚部と、この脚部の内部に配置され一部が溝部から突出して溝部と滑合し脚部の内部をスライド可能な突起部と、この突起部に固設され螺旋状に形成された引きばねによって構成される長さ調整部材と、この長さ調整部材にスライド部材を介して接続される伸縮部材と、脚部に設けられる窓部において長さ調整部材を係止する係止部とを有し、この係止部は、窓部からスライド挿入させて長さ調整部材を刺衝して長さ調整部材の移動を抑止する係止部材と、この係止部材を脚部に設けられる窓部に固定する固定部材とを備えるものである。
上記構成の伸縮装置では、突起部を脚部の溝部に滑合してスライドすると突起部に固設された長さ調整部材と長さ調整部材に固設されたスライド部材は突起部に連動して移動すると同時に、伸縮部材は収縮するという作用を有する。
また、脚部の窓部において係止部材をスライド挿入すると、係止部材は窓部に配置される長さ調整部材の間隙を刺衝して長さ調整部材の移動を抑止するという作用を有する。そして、刺衝されている係止部材を抜脱すると、伸縮部材の弾性により突起部と長さ調整部材は付勢されて元の位置に向けてスライド移動するという作用を有する。
【0015】
また、請求項7に記載の発明である伸縮装置は、請求項6に記載の伸縮装置において、突起部に固設され、脚部を内挿してスライド可能な伸縮脚部を具備するものである。
上記構成の伸縮装置では、請求項6の発明の作用に加えて、伸縮脚部は、突起部に連動し、脚部を内挿してスライド移動するという作用を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1及び請求項2に記載の伸縮装置では、対を成す伸縮脚を備えて構成される脚部の長さの調節を係止部の操作のみで容易かつ同時に行うことができ、しかも、脚部の長さは、長さ調整部材を構成する螺旋状の引きばねの間隙毎に設定することができるので微調節が可能であるとともに、引きばねに刺衝される係止部材を摩擦力で挟み込むので係止部材が抜け難い。
【0017】
また、本発明の請求項3に記載の伸縮装置では、第1の伸縮部材の弾性作用に加えて、ガイド部材を構成する押しばねが弾性作用を備えているので、脚部の一の端部を第1の伸縮脚部に押入して係止した状態を解除すると、第1の伸縮脚部の脚部からの抜出が押しばねの付勢を受けて容易となる。
【0018】
そして、本発明の請求項4に記載の伸縮装置では、第1の長さ調整部材を構成する螺旋状に形成された引きばねと、第2の長さ調整部材を構成する螺旋状に形成された引きばねが噛み込んだり絡むことがない。従って、第1の長さ調整部材の脚部の他の端部方向への移動と、第2の長さ調整部材の脚部の一の端部方向への移動が容易となり、連結される第1の伸縮脚部及び第2の伸縮脚部のスライド移動も容易となる。
さらに、押しばねと、第2の長さ調整部材を構成する引きばねも噛み込んだり絡むこともない。従って、このことによっても第2の長さ調整部材の脚部の一の端部方向への移動が容易となる。
【0019】
さらに、本発明の請求項5に記載の伸縮装置では、係止部材は、第1の長さ調整部材のみを刺衝することができるので、第1の長さ調整部材を係止した状態で、第2の長さ調整部材による脚部の他の端部の長さ調節を可能にしている。また、切欠部がない直線状の係止部材よりも刺衝面積を大きくすることができるので、より強固に第1の長さ調整部材のみを刺衝することができる。
【0020】
そして、本発明の請求項6に記載の伸縮装置では、脚部の形状に沿って形成される溝部を滑合する突起部に固設される長さ調整部材を係止して脚部の長さを決定するので、脚部が直線形状以外の曲線形状であっても対応することができる。しかも、構造が簡単であるので、製造やメンテナンス等において有利となる。
【0021】
また、本発明の請求項7に記載の伸縮装置では、突起部に固設される伸縮脚部が設置されているので、脚部の長さの調整により伸縮脚部の長さを容易に決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明に係る伸縮装置の最良の実施の形態を図1乃至図6に基づき説明する。(特に、請求項1乃至請求項5に対応)
図1は、本発明の本実施の形態に係る伸縮装置の縦断面図である。
図1において、本実施の形態に係る伸縮装置1は、中空筒で門形状を成しその両端が各々第1の脚2a及び第2の脚2bを形成する脚部2と、上部が開口した中空筒で脚部2の外径よりも大きい内径を有し、第1の脚2aの端部を内挿しスライド可能な第1の伸縮脚3及び第2の脚2bの端部を内挿しスライド可能な第2の伸縮脚4を備えている。
そして、第1の脚2aと第1の伸縮脚3の間には螺旋状の第1の押しばね5が介設されており、この第1の押しばね5は、第1の伸縮脚3の凸状の下端具6と第1の脚2aの側面に設置される押しばね固定具7において固定されている。また、同様に、第2の脚2bと第2の伸縮脚4の間には螺旋状の第2の押しばね8が介設されており、その固定は、第2の伸縮脚4の凸状の下端具9と第2の脚2bの側面に設置される押しばね固定具10において行われている。これらの第1の押しばね5及び第2の押しばね8は、第1の伸縮脚3及び第2の伸縮脚4のスライド移動に追従し伸縮するようになっている。
【0023】
また、第1の伸縮脚3の内部には、第1の伸縮脚3の底部となる下端具6と一体に形成される第1の円筒11とこの第1の円筒11の上部に接続され第1のスライド部材に相当する凸状の第1のピストン12が設置されている。なお、第1の円筒11及び第1のピストン12は第1の脚2aの内径よりも小さく形成されて第1の脚2aの内部に挿入可能となっており、図1では、第1の円筒11の上部と第1のピストン12は第1の脚2aの内部に配置されている。
そして、脚部2の内部には、第1の脚2aから第2の脚2bに渡って、第1の長さ調整部材に相当する螺旋状の第1の引きばね13とガイド部材に相当する螺旋状の第3の押しばね15が連結具14を介して充填されており、第1の引きばね13は第1のピストン12に、第3の押しばね15は第2の脚2bの端部に各々固設されている。第1のピストン12は脚部2の内部をスライド可能であり、第1のピストン12が脚部2内をスライド移動すると、連結する第1の引きばね13及び連結具14はこのスライド移動に追従して移動し、一方、第3の押しばね15は伸縮するようになっている。
また、本願明細書内において、「押しばね」は通常時に間隙を備えた螺旋状のばねであって、その螺旋の間隙の間隔を狭めて縮んだ際に反力を発揮するばねであり、「引きばね」は通常時に間隙が小さいかあるいはほとんどない状態の螺旋状のばねであるが、「引きばね」については、ばねを引っ張った際に復元力を発揮する必要は必ずしもなく、単に、螺旋状という形状に基づくものである。
【0024】
同様に、第2の伸縮脚4の内部には、第2の伸縮脚4の底部となる下端具9と一体に形成される第2の円筒16とこの第2の円筒16の上部に接続され第2のスライド部材に相当する凸状の第2のピストン17が設置されている。そして、第2の円筒16及び第2のピストン17は第2の脚2bに内接する第3の押しばね15の内径よりも小さく形成されて第3の押しばね15の内部に挿入可能となっており、図1では、第2の円筒16の上部は第2の脚2bの内部に、第2のピストン17は第2の脚2bに内接する第3の押しばね15の内部に配置されている。
また、第2のピストン17には第2の長さ調整部材に相当する螺旋状の第2の引きばね18が固設されており、この第2の引きばね18は脚部2の全長の略半長の長さを有し、係止部19を越えて第2の脚2a側まで配置されている。第2のピストン17は脚部2及び第2の脚2bに内接する第3の押しばね15の内部をスライド可能であり、第2のピストン17に連結される第2の引きばね18は、第2のピストン17のスライド移動に追従して第3の押しばね15とこの第3の押しばね15に連結具14を介して連結される第1の引きばね13の内部を移動するようになっている。ここで、第3の押しばね15は連結具14を介して第1の引きばね13と第2の脚2bの端部とを接続し、第2のピストン17及び第2の引きばね18を第1の脚2a方向へガイドする役割を果たしている。
なお、第2の引きばね18は、第1の引きばね13及び第3の押しばね15と異方向の螺旋形状を有しているので、第3の押しばね15及び第1の引きばね13の内部を互いのばねが噛み込んだり絡むこともなく、容易に移動することができる。また、第1の円筒11及び第2の円筒16は、特に円筒状でなくとも中実の円柱であってもよいことは言うまでもない。
さらに、第1の引きばね13及び第3の押しばね15はそれぞれ第2の脚2a、第2の脚2bに内接するため、摩擦が生じることになる。特に、門形に曲げられている箇所においては、その影響が大きいため、曲率半径を大きく取ることが望ましい。
【0025】
また、符号19は、係止部であり、ハンドル20を備えるストッパ21とこのストッパ21を固定し、脚部2に固設される固定部材22から構成されている。ストッパ21は、脚部2に設けられるストッパ挿入窓23にスライド挿入が可能であり、ハンドル20を押すと、ストッパ21はストッパ挿入窓23を通過して、脚部2の内接しストッパ挿入窓23に位置する螺旋状の第1の引きばね13とこの第1の引きばね13に内接する第2の引きばね18の間隙を刺衝してこれらの引きばねの移動を抑止するとともに、第1の引きばね13に接続される第1のピストン12、第1の円筒11及び第1の伸縮脚3と、第2の引きばね18に接続される第2のピストン17、第2の円筒16及び第2の伸縮脚4の移動を抑止し、第1の脚2a及び第2の脚2bを固定してこれらの長さを決定する。
なお、本実施の形態においては、伸縮装置は門形状としたが、脚部が対で形成されるものであれば、脚部2の形状は図1に示されるような門形状以外に、例えば、半円の両端から脚部が延設されるような略U字形状であってもよく、すなわち、一対の脚部を接続する部分の形状が直線状であっても曲線状であってもよい。さらに、特に門形状やU字形状に曲がるものに限定するものではなく、全体が直線状に伸びる一対の脚部であってもよい。
【0026】
次に、図2及び図3を参照しながら、脚部の伸縮機構について詳細に説明する。なお、図2及び図3において、図1に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
まず、第1の脚の伸縮機構について図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態に係る伸縮装置の第1の脚の伸縮機構を説明するための縦断面図である。
図2において、伸縮装置1は第1の脚2aが収縮し、第2の脚2bが伸張して固定された状態である。図2のように第1の脚2aを収縮する場合は、まず、第1の伸縮脚3を上方へスライドすると、第1の伸縮脚3の内部に第1の脚2aが挿入され収納されると同時に、第1の伸縮脚3に第1の円筒11及び下端具6を介して連結される第1のピストン12も第1の伸縮脚3と連動し、第1の脚2aの内部に挿入されていく。このとき、第1の伸縮脚3と第1の脚2aの間に介設されている第1の押しばね5は押縮される。そして、第1のピストン12に一端が固設される第1の引きばね13は連結具14とともに、第1のピストン12に押圧されて第2の脚2b方向へ移動する。一方、第3の押しばね15は、その端部が第2の脚2bの端部に固設されているので、第1のピストン12からの力によって押縮される。
【0027】
ここで、係止部19において、ストッパ挿入窓23からストッパ21を挿入すると、ストッパ21は、ストッパ挿入窓23に配置される第1の引きばね13の螺旋の間隙を刺衝し、第1の引きばね13の移動を抑止するとともに、連結具14、第3の押しばね15、第1のピストン12、第1の円筒11及び下端具6並びに第1の伸縮脚3の移動を抑止して、第1の脚2aの長さを決定するのである。なお、ストッパ21によって係止が行われると、第1の押しばね5及び第3の押しばね15は圧縮した状態で保持される。
また、第1の引きばね13は、前述のとおり、螺旋が密に形成された螺旋構造を有しており、螺旋の間隙の幅が狭い上に略無数に存在するので、第1の脚2aの長さを細かく、あるいは無段階に設定することができる。すなわち、図2では、第1の脚2aは、第1の伸縮脚3の上端が押しばね固定具7に嵌合する位置までスライド移動して固定されている例を示しているが、第1の伸縮脚3を上方へスライド移動して任意の位置で停止すると、第1のピストン12及び第1の引きばね13も追従して移動及び停止し、このとき、ストッパ挿入窓23には第1の引きばね13の螺旋のいずれかの間隙が配置されるので、配置される間隙にストッパ21を刺衝することにより、第1の脚2aの長さを自在に調節することができるのである。
なお、本実施の形態においては、第1の伸縮脚3の上方へのスライド移動は、第1の脚2aの下端部が下端具6に当接するまで可能であるが、第1の脚2aの外周上に円環状の衝止部材を設けて、第1の伸縮脚3のスライド移動を衝止するようにしてもよいし、押しばね固定具7を外側へ拡大して第1の伸縮脚3がそれ以上スライドできないような衝止部材として使用してもよい。
【0028】
逆に、図2に示す係止状態を解除する場合は、第1の引きばね13の間隙に刺衝されているストッパ21を抜脱すると、圧縮されていた第1の押しばね5が伸張して、自動的に第1の伸縮脚3を下方へスライド移動させる。このとき、第1の伸縮脚3の移動に伴って、第1のピストン12、第1の引きばね13及び連結具14は第1の脚2a方向へ移動する。また、第3の押しばね15についても係止状態では圧縮されているので、第3の押しばね15はストッパ21の抜脱により伸張し、連結具14及び第1の引きばね13には第1の脚2a方向への力が作用する。
また、後述の第2の脚2bの伸縮構造においては、第3の押しばね15に相当する押しばねは設置されていないので、係止状態を解除すると、第2の伸縮脚4は、第1の伸縮脚3よりも弱く付勢されて抜出する。このような不均衡を解消するために、脚部2の内部に装着される第1の引きばね13を長く、第3の押しばね15を短くなるように設計し、第1の伸縮脚3及び第2の伸縮脚4の抜出力を均等にするようにしてもよい。この場合、引きばねは押しばねよりも螺旋が密に形成された構造であるので重量が重く、装置全体の重量は増加するものの、第2の引きばね18の第1の脚2a方向への移動において、第2の引きばね18が第3の押しばね15に接する距離が短くなるので、第3の押しばね15の螺旋の間隙に第2の引きばね18が噛みにくくスムースに移動することができるという効果がある。
【0029】
続いて、第2の脚の伸縮機構について図3を用いて説明する。
図3は、本実施の形態に係る伸縮装置の第2の脚の伸縮機構を説明するための縦断面図である。
図3において、伸縮装置1は第2の脚2bが収縮し、第1の脚2aが伸張して固定された状態である。第2の脚2bの伸縮機構は、前述の第1の脚2aの伸縮機構とほぼ同様であり、図3のように、第2の脚2bを収縮する場合は、まず、第2の伸縮脚4を上方へスライドし、第2の伸縮脚4の内部に第2の脚2bを挿入し収納する。このとき、第2の伸縮脚4と第2の脚2bの間に介設されている第2の押しばね8は押縮され、また、第2の伸縮脚4に下端具9及び第2の円筒16を介して連結される第2のピストン17は、第2の伸縮脚4と連動して上方へ移動し、第2の脚2bに内接する第3の押しばね15の内部に挿入されていく。そして、第2のピストン17に一端が固設された第2の引きばね18は第2のピストン17に押圧されて第1の脚2a方向へ移動する。
ここで、係止部19において、ストッパ挿入窓23からストッパ21を挿入すると、ストッパ21は、ストッパ挿入窓23に配置される第2の引きばね18の螺旋の間隙を刺衝し、第2の引きばね18の移動を抑止するとともに、第2のピストン17、第2の円筒16及び下端具9並びに第2の伸縮脚4の移動も抑止して、第2の押しばね8を圧縮した状態で第2の脚2bの長さが決定される。
ストッパ21による第2の脚2bの長さの自在調節に関しては、前述の第1の脚2aの場合と同様である。
また、第2の伸縮脚4の上方へのスライド移動の衝止機構は、第1の伸縮脚3の場合と同様に備えることができる。
そして、逆に、図2に示す係止状態を解除する場合は、第2の引きばね18の間隙に刺衝されているストッパ21を抜脱すると、圧縮されていた第2の押しばね8が膨張して、自動的に第2の伸縮脚4を下方へスライド移動させる。このとき、第2の伸縮脚4の移動に伴って、第2のピストン17及び第2の引きばね18も第2の脚2b方向へ移動する。
なお、左右の第1の脚2a及び第2の脚2bの両方の長さを調節する際には、先に第1の脚2aの調節を行い、ストッパ21を第1の引きばね13のみに刺衝し、その後第2の脚2bの長さを調節してストッパ21を更に深く第2の引きばね18まで刺衝するようにしてもよい。
【0030】
以上、図2及び図3を用いて、第1の脚2aと第2の脚2bの伸縮機構について別個に説明したが、本実施の形態では、係止部19におけるストッパ21の刺衝は第1の引きばね13及び第2の引きばね18の両方について行われるので、ストッパ21の刺衝による係止の実行並びに解除により、第1の脚2a及び第2の脚2bは同時に伸縮する構造となり、したがって、第1の脚2a及び第2の脚2bの長さは同時に調節及び決定することができる。
すなわち、図2及び図3において、係止部19における係止は、まず、ストッパ21が、外輪となる第1の引きばね13を刺衝し、その後に内輪となる第2の引きばね18を刺衝することによって行われ、第1の引きばね13及び第2の引きばね18の移動を抑止することにより第1の脚2aの長さと第2の脚2bの長さが決定される。
また、逆に、第1の脚2a及び第2の脚2bが収縮した状態からストッパ21が抜脱されて係止が解除されると、圧縮状態から解放される第1の押しばね5及び第2の押しばね8の弾性により、第1の伸縮脚3及び第2の伸縮脚4は同時に抜出し、第1の伸縮脚3及び第2の伸縮脚4がスライド可能な状態となるので、再び、第1の伸縮脚3及び第2の伸縮脚4のスライド移動に追従する第1の引きばね13及び第2の引きばね18を移動させて第1の脚2a及び第2の脚2bの長さを調節することができる。
【0031】
次に、図4乃至図6を参照しながら、係止部の構造及び機構についてさらに詳細に説明する。なお、図4乃至図6において、図1に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図4は、本実施の形態に係る伸縮装置の係止部を示す概念図である。
図4において、係止部19は、固定部材22とストッパ21とハンドル20を備え、脚部2の略中央に配置されている。固定部材22はボルト24で連結された2個の角材が間隙25を隔てて並設され、いずれも脚部2が貫通している。そして、ストッパ21は間隙25に挟入されボルト24に枢設されて回動できるようになっている。なお、図示していないが、ストッパ21は脚部2に設けられるストッパ挿入窓を通過して脚部2内部の第1の引きばね及び第2の引きばねを刺衝している。そして、ストッパ21には2個のボルト孔26,26に嵌入されるボルト及びナットによってハンドル20が固設されており、このハンドル20を上下方向に操作することにより、ストッパ21を回動させて、脚部2内部の第1の引きばね及び第2の引きばねの刺衝による係止を実行したり、解除したりするようになっている。また、ハンドル20には、脚部2のカバー27に固設されるハンドル受台28が備わっており、このハンドル受台28はハンドル20を載置して、ストッパ21の回動を停止する役割を果たしている。なお、符号29はカバー27と脚部2を固定するための固定具である。
【0032】
続いて、ストッパについて図5を用いて説明する。
図5(a)は、本実施の形態に係る伸縮装置の係止部のストッパの上面図であり、(b)は図5(a)中にA−A線で示された部分の矢視断面図である。
図5(a)において、ストッパ21は長細い平板状で、一の端部側には、ハンドルを取り付けるための2個のボルト孔26,26が設けられ、他の端部側には、固定部材に挟入し回動するためのボルト孔33が設けられている。そして、図5(a)中で左側に示される第1の引きばね及び第2の引きばねを刺衝する刃の部分には切欠部30が設けられており、さらに、この切欠部30には階段状に第1の刃31と第2の刃32が形成されている。
また、図5(b)に示すように、第1の刃31及び第2の刃32の断面をみると、第1の刃31は第2の刃32よりも長くなっており、また、いずれの刃についても先端部が尖鋭に形成されている。
ストッパ21の形状がもたらす衝止における効果については後述するが、切欠部30の第1の刃31及び第2の刃32によって、ストッパ21は容易かつ確実に第1の引きばね及び第2の引きばねを刺衝することができる。
【0033】
次に、ストッパによる係止方法について図6を用いて説明する。
図6(a)は、本実施の形態に係る伸縮装置の係止部のストッパの係止が解除された状態を示す概念図であり、(b)は同じく伸縮装置の係止部のストッパが第1段階の係止を行った状態を示す概念図であり、(c)は同じく伸縮装置の係止部のストッパが第2段階の係止を行った状態を示す概念図である。
まず、図6(a)において、ストッパ21は、ハンドル20が上方へ持ち上げられ、ボルト孔33に嵌入されるボルトを支軸として上方へ回転している。そして、この状態では、ストッパ21の切欠部30の第1の刃31及び第2の刃32は第1の引きばね13及び第2の引きばね18に接触しておらず、ストッパ21の第1の引きばね13及び第2の引きばね18への刺衝による係止が解除されている。このとき、第1の引きばね13及び第2の引きばね18は脚部2内を自由に移動することができるので、前述したように、第1の伸縮脚及び第2の伸縮脚をスライド移動して第1の脚2a及び第2の脚2bの長さの調節を行うことができる。
【0034】
次に、図6(b)において、ハンドル20を下方に少しだけ下げると、ストッパ21の切欠部30の第1の刃31及び第2の刃32の各々の角部が第1の引きばね13に接触して直ちにその螺旋の間隙を刺衝し、第1の引きばね13の移動を抑止する。そして、第1の伸縮脚3が固定されて第1の脚2aの長さが決定される。但し、図6(b)に示す状態では、ストッパ21は第1の引きばね13のみを係止しているので、第2の引きばね18は脚部2内を自由に移動することが可能であり、すなわち、第1の脚2aを固定した状態で、第2の伸縮脚4をスライド移動させて第2の脚2bの長さを調節することができる。
また、ストッパ21の切欠部30に形成される階段状の第1の刃31及び第2の刃32は、同一周方向の2箇所において第1の引きばね13に接触することができるので、第1の引きばね13に1箇所のみで接触する直線的な形状の刃と比べると、螺旋状の第1の引きばね13の間隙に合致する確率が高く、その結果、ストッパ21による刺衝を容易かつ確実にしている。また、前述のとおり、第1の刃31及び第2の刃32の先端部は尖鋭に形成されているので、ストッパ21は第1の引きばね13の螺旋の間隙に挿入しやすい構造となっている。そして、ストッパ21が第1の引きばね13の間隙を刺衝すると、ストッパ21は刺衝する間隙に連続する引きばねによって挟まれるので抜け難くなり、確実に係止を実行することができる。
なお、ストッパ21に形成される切欠部30の形状は特に限定されるものでないが、同一周方向において同時に複数箇所が第1の引きばね13に接触する構造が好ましい。さらに、刃の形状としては、なるべく引きばねに接触する面積が大きいことが望ましい。
【0035】
続いて、図6(c)において、さらにストッパ21を下方に下げると、ストッパ21の切欠部30は第1の引きばね13を刺衝した状態、すなわち、第1の脚2aを固定した状態で、第2の刃32の角部が第2の引きばね18に接触してその螺旋の間隙を刺衝し、第2の引きばね17の移動を抑止するとともに第2の伸縮脚4を固定し、第2の脚2bの長さを決定するようになっている。
なお、切欠部30にさらに階段状に第3の刃を形成し、この第3の刃を第2の刃32とともに同一周方向において2箇所で第2の引きばね18に接触するようにしてもよく、この場合、第2の引きばね18の刺衝は第1の引きばね13の場合と同様に容易に行うことができる。
また、ストッパ21によって第1の引きばね13及び第2の引きばね18各々の一の間隙が刺衝されると、ストッパ21は、各々の一の間隙に連続する引きばねに挟まれており、常に間隙を狭くしようと力が働く引きばねの作用で、緩むことなく固定され、安定した係止状態を継続することができる。
【0036】
このように構成された本実施の形態においては、係止部においてストッパの挿脱操作を行うだけで対を成す伸縮脚を備えて構成される脚部を容易かつ同時に伸縮させてそれらの長さを調節することができる。
また、長さ調整部材に螺旋状の引きばねを使用し、係止部ではこの引きばねの間隙を刺衝して係止するので、強固で安定した係止状態を継続することができ、しかも、引きばねの間隙は略無段階で連続した構成であるので、脚部の長さの微調節が可能になっている。
そして、係止部のストッパの形状を工夫しているので、引きばねへの刺衝が容易かつ確実となり、さらに、対で構成される脚部の片脚を固定した状態でもう一方の脚の長さの調節を行うことができる。
次に、本実施の形態に係る伸縮装置の実施例を図7及び図8を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0037】
図7は、本実施例に係る伸縮装置を装着した脚立の概念図であり、また、図8は、本実施例に係る伸縮装置を装着した脚立の内部構造を示す概念図である。なお、図7及び図8において、図1に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図7において、脚立34には、第1の脚35と第2の脚36と3段目の踏み台37に沿って、門形状に形成された伸縮装置1が装着されている。そして、第2の脚36は伸長されて地面38に立ち、一方、第1の脚35は、最短に収縮された状態で固定されている。使用者は、脚立34を第1の脚35の下方にある段差39上に設置するために、第1の脚35の長さを段差39に合わせて調節を行うところである。この調節は、まず、3段目の踏み台37に設置される係止部19のストッパを抜脱し係止を解除すると、第2の脚36は地面38に当接しているので動かないものの、第1の脚35は、伸縮装置1に設置され圧縮された第1の押しばね5の伸張力によって、自動的に下方へ抜出し段差39に到達して停止する。
第1の脚35が段差39に到達しても、第1の押しばね5は完全に伸張していないので、第1の脚35の脚端具40には下方向にばねの弾性による力が作用しており、脚立34の第1の脚35側を少し持ち上げると第1の脚35はさらに抜出し、逆に、第1の脚35側を押すと第1の脚35は収縮する。したがって、図示していないが、脚立34に設置される水平器を参考にしながら、第1の脚35の長さを微調節し、係止部19においてストッパを挿入して係止を実行すると脚立34を安定した状態で設置することができる。
なお、係止が解除されると、第2の脚36についても伸縮自在の状態となるので、脚立34の第2の脚36側を押したり持ち上げたりして第2の脚36を伸縮させて、第1の脚35及び第2の脚36の両脚の長さを同時に調節して脚立34を安定した状態に設置することもできる。
また、図示していないが、脚立34の他方側に形成される対の脚についても、同様に伸縮装置1を設置することができ、この場合、脚立34の4本の脚は自在に長さを調節することが可能となる。
【0038】
ここで、図8において、脚立34に設置される伸縮装置1の内部構造をみると、伸縮装置1の脚部2の内部には、脚立34の第1の脚35の長さを調節する第1の引きばね13が内接し、さらに、この第1の引きばね13の内部には脚立34の第2の脚36の長さを調節する第2の引きばね18が内接している。脚立34の3段目の踏み台37に設置される係止部19のストッパ21は、ストッパ挿入窓23から挿入して第1の引きばね13及び第2の引きばね18の螺旋の間隙を刺衝することによって第1の引きばね13及び第2の引きばね18を係止し、脚立34の第1の脚35及び第2の脚36を固定している。
また、ストッパ21が抜脱されて係止が解除されると、脚立34の第1の脚35及び第2の脚36に接続される伸縮装置1の第1の伸縮脚及び第2の伸縮脚の伸縮に連動して、第1の引きばね13及び第2の引きばね18は脚部2内を移動し、ストッパ挿入窓23に配置される螺旋の間隙の位置を変える。図示するように、第1の引きばね13及び第2の引きばね18の螺旋の間隙は狭幅でしかも無数にあるので、脚立34の第1の脚35及び第2の脚36の長さは微調節が可能になっている。
なお、本実施例における第3の押しばね15aは、図1乃至3に示される第3の押しばね15のようにその断面が円形ではなく外側に凸の半円形状となっている。これは、第2の引きばね18が、第3の押しばね15aの内部に内接するため、第2の引きばねのためのスペースを広く取れるように工夫しているものである。本図においては、同様に第2の引きばね18を内接する第1の引きばね13の形状はその断面を円形のままとしているが、この断面も外側に凸の半円形状としてもよい。
【0039】
このように本実施例においては、脚立34の脚の長さを簡単な方法で自在に調節することが可能であり、段差のある作業場においても、段差に合わせて脚の長さを調節し安定した足場を形成することができる。また、固定が強固であるので、安全に作業を行うことができる。
【実施例2】
【0040】
次に、図9を参照しながら本実施例に係る伸縮装置を組合せた場合について説明する。図9は、本実施例に係る伸縮装置を二対組合わせて用いた台を示す概念図である。
図9において、図1に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。台41は、四脚を供えた外枠材42aと補強のための内枠材42bに本実施例に係る伸縮装置を二対組合わせたものである。
二対の伸縮装置は、それぞれの端部の第1の伸縮脚3及び第2の伸縮脚4が外枠材42aの脚から延出されるように曲げられている。また、これらの伸縮脚には脚端具40aが装着されている。
さらに、二対の伸縮装置の略中央部に設けられているハンドル20a,20bは、それぞれをほぼ同時に動作させることができるように接近させるものであり、特にこのような配置に限定するものではない。
このような台41においては、四脚を例えば凹凸のある地面上に置き、片手で水平がでるように台41の外枠材42aなどを持って調整しながら、もう一方の手でハンドル20a,20bに手をかけてそれぞれのストッパ(図示せず)を第1の脚2a,第2の脚2bの内部の引きばねに刺衝させることができる。
本実施例に係る伸縮装置では、複数を組合わせることによって、より簡単に効率的に脚の伸縮を制御可能であり、特に複数の脚によって水平を出すなどする際には好都合である。本実施例では、伸縮装置の脚を並べるような構成としたが、伸縮装置を交差させるような構成としてもよいし、組合せる伸縮装置の数は二対に限定するものではなく、三対以上としても構わない。
【0041】
続いて、本発明に係る伸縮装置の第2の実施の形態を図10乃至図13に基づき説明する。(特に、請求項6及び請求項7に対応)
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る伸縮装置の概念図である。
図10において、伸縮装置51は、主に、中空筒の脚部52と、脚部52に連結される伸縮脚54と、伸縮装置51の長さを固定する係止部55から構成されている。
そして、脚部52は、脚部52の長手方向に沿って形成される溝部56と、図示していないが、係止部55のストッパが挿入されるストッパ挿入窓を備えており、その内部には、一部が溝部56から突出し溝部56を滑合可能な突起部57と、この突起部57に固設され、長さ調整部材に相当する引きばね58と、図示していないが、引きばね58にスライド部材を介して接続され、伸縮部材に相当する押しばねが設置されている。なお、符号53は脚部カバーであり、脚部52に固定部材63を介してボルト64で固定されている。
また、突起部57には、伸縮脚54が固設されている。その固定方法の詳細については後述するが、突起部57の突出した部分を第1の突起部固定部材65と第2の突起部固定部材66で挟持させた状態でボルト67を用いて固定している。
そして、係止部55は、ストッパ(図示せず)に連結するハンドル62と、ストッパ及びハンドル62を固定し、脚部52に固設される固定部材60から構成されている。ハンドル62を押すと、ストッパは固定部材60に設置されるストッパ挿入口61から、脚部52に設けられるストッパ挿入窓を通過して、ストッパ挿入窓に位置する引きばね58の間隙を刺衝して引きばね58の移動を抑止するようになっている。
【0042】
したがって、伸縮装置51では、突起部57を溝部56の上方へ滑合すると、突起部57に固設される伸縮脚54も連動して脚部52を内挿しながら上方へ移動するとともに、脚部52の内部では、突起部57に連動して引きばね58も上方へ移動し、押しばねが押縮される。ここで、係止部55においてストッパをストッパ挿入窓にスライド挿入して引きばね58の間隙を刺衝して引きばね58の移動を抑止すると、脚部52の上端部から突起部57までの長さを決定するとともに、伸縮脚54の長さを決定することができる。
逆に、係止部55において引きばね58を係止した状態を解除する場合は、引きばね58の間隙に刺衝されているストッパを抜脱すると、圧縮されていた押しばねが伸張して付勢するため、自動的に引きばね58と突起部57が下方へ移動し、同時に伸縮脚54も下方へスライド移動する。
なお、図1において、脚部カバー53及び伸縮脚54は断面が四角形状であるが、その形状は特に限定されるものではなく、脚部カバー53は伸縮装置51を包含し、伸縮脚54は伸縮装置51を内挿可能な形状であれば如何なる形状であってもよい。
また、脚部52には荷重が加わるが、溝部56が設けられている分だけ強度が弱くなっているので、高強度を有する材質を選定するか、または、厚みを厚くしたりして補強することが望ましい。
さらに、伸縮脚74は必ずしも設置する必要はなく、伸縮脚74以外にも位置固定を必要とするものを突起部57に固設することもできる。
【0043】
次に、図11及び図12を用いて伸縮装置の内部構造について説明する。
図11は、本実施の形態に係る伸縮装置において固定部材と係止部を備えた状態の内部構造を示す概念図であり、図12は本実施の形態に係る伸縮装置において、脚部の内部構造を示す概念図である。
図11及び図12において、伸縮装置51では、前述の通り、脚部52の内部にスライド部材68を介して引きばね58と押しばね59が設置されている。そして、引きばね58は、その下端部が突起部57と一体に形成される引きばね固定具57aに固定され、上端部はスライド部材68の下方側に固定されている。一方、押しばね59は、その下端部がスライド部材68の上方側に固定され、上端部は脚部52の上端部に設けられる押しばね固定具69に固定されている。
また、引きばね58は、脚部52に設けられるストッパ挿入窓70よりも上方の位置まで配置されており、ストッパ挿入窓70にスライド挿入される係止部55のストッパ61aによって常に間隙を刺衝できるようになっている。なお、係止部55は固定部材60によって脚部52に固定されている。
【0044】
前述の通りであるが、図12において、突起部57を溝部56に沿って上方へ滑合させると、突起部57に連動して引きばね58とスライド部材68は上方へ移動し、また、上端部が固定されている押しばね59は収縮する仕組みになっていることがよくわかる。そして、所望の位置で突起部57を停止し、ストッパ挿入窓70に配置される引きばね58の間隙にストッパをスライド挿入すると、突起部57、引きばね58及びスライド部材68の移動が抑止されて、脚部52上端部から突起部57までの長さが決定される。ここで、引きばね58は密に充填された構造であり、その間隙は多数存在するので、突起部57の停止位置に対応した間隙を刺衝することができ、脚部52の長さ調整においては所望の長さを選定できるとともに細かな微調整が可能となる。
なお、本実施の形態においては、溝部56は脚部52の対称位置の2箇所に設けられ、突起部57は、これらの溝部56の両側に突出した形状を有している。この場合、突起部57による溝部56の滑合がスムースとなり、突起部57の上下動がより正確なものとなるが、溝部56を1箇所とし、この一箇所の溝部56を滑合可能な形状を有する突起部を用いることもできる。あるいは脚部52の断面形状によっては溝部56を3箇所あるいは4箇所に設けてもよく、溝部56の数は限定されない。
【0045】
続いて、図13を用いて突起部と伸縮脚の固定方法について説明する。
図13(a)は、本実施の形態に係る伸縮装置の突起部と伸縮脚部の固定部分の概念図であり、(b)は、図13(a)中にB−B線で示された部分の矢視断面図である。
図13(a)において、脚部52の下方では、溝部56から突出する突起部57を第1の突起部固定部材65と第2の突起部固定部材66が囲繞して、突起部57を第1の突起部固定部材65と第2の突起部固定部材66で挟持した状態で、図示していないが、第1の突起部固定部材65及び第2の突起部固定部材66の外側に配置される伸縮脚とボルト67を用いて固定している。
また、図13(b)において、固定状態の断面をみると、突起部57の突出した部分に第1の突起部固定部材65及び第2の突起部固定部材66が密着し、強固に固定されていることがわかる。
なお、突起部57、第1の突起部固定部材65及び第2の突起部固定部材66には、伸縮装置の使用時に荷重がかかるので、強度のある材質を選定することが望ましい。
【0046】
このように構成された本実施の形態においては、簡単な構造であるので、製造やメンテナンスが容易であり、また、部品数も少ないのでコストダウンを実現できる。また、長さ調整部材に引きばねを選定しているので、脚部では、突起部を自由に移動して所望の長さを決定でき、しかも、細かな微調整を可能としている。
次に、本実施の形態に係る伸縮装置の実施例を図14乃至図18を参照しながら説明する。
【実施例3】
【0047】
図14は、本実施例に係る伸縮装置の概念図である。
図14において、伸縮装置71は、第1の脚部72と第2の脚部73が連結した構造を有しており、座椅子に装着して、背部の角度調節及び座部の位置調節を行うことができる。
第1の脚部72は、背部の角度調節を行うものであり、その詳細については後述するが、図面下方に位置する一の端部が曲がった鉤形状で、その内部には、第1の突起部(図示せず)に固設された第1の引きばね75が第1の係止部78を超えて配置され、第1のスライド部材77の一の端部に固設されている。そして、第1のスライド部材77が配置される位置において、第1の脚部72と第2の脚部73が接合されており、第1のスライド部材77の他の端部には、第2の脚部73の内部に設置される押しばね76が固設されている。
したがって、第1の脚部72においては、第1の脚部72に形成される溝部(図示せず)に第1の突起部(図15、16に符号95として示す。)を滑合させると、第1の引きばね75及び第1のスライド部材77が移動して押しばね76を押縮するようになっている。ここで、第1の突起部が所望の位置になったときに、第1の係止部78において、第1のハンドル81を押して第1のストッパ挿入口80からストッパ(図示せず)を第1の脚部72に設けられるストッパ挿入窓(図示せず)にスライド挿入して第1の引きばね75の間隙を刺衝して第1の引きばね75の移動を抑止すると、第1の突起部の位置を固定することができる。
なお、符号79は、第1の固定部材であり、第1のハンドル81及びストッパを第1の脚部72に固定する部材である。
【0048】
一方、第2の脚部73は、座部の位置調節を行うものであり、第1の脚部72と同様に、その詳細については後述するが、一の端部には、第2の溝部(図示せず)に滑合可能な第2の突起部82を有し、この第2の突起部82と一体に形成され、第2の脚部73の内部に設置される引きばね固定具82aには第2の引きばね83が固定されている。そして、この第2の引きばね83は第2の係止部85を超えて配置されて第2のスライド部材84の一の端部に固定され、また、第2のスライド部材84の他の端部には押しばね76が固定されている。なお、符号89は固定部材であり、第2の突起部82を後述の座椅子の台座に固定するものであり、また、符号105も固定部材であり、第2の脚部73を後述の座椅子の座部に固定するものである。
そして、第1の脚部72と同様に、第2の突起部82を第2の脚部73に設けられる第2の溝部に滑合させて移動すると、第2の引きばね83及び第2のスライド部材84は第2の突起部82に連動して移動するとともに、押しばね76は収縮するので、第2の係止部85において、第2のハンドル88を押して第2のストッパ挿入口87からストッパをスライド挿入して第2の引きばね83の間隙を刺衝して第2の引きばね83の移動を抑止すると、第2の突起部82の位置が固定できる。符号86は、第2の固定部材であり、第2のハンドル88及びストッパを第2の脚部73に固定する部材である
このように本実施例においては、第1の脚部72と第2の脚部73が連結しており、伸縮部材となる押しばね76を共用する構造となっている。
【0049】
ここで、図15及び図16を用いて座椅子の角度調節について説明する。
図15は、本実施例に係る伸縮装置を装着した座椅子の概念図である。
図15において、座椅子90は、背部91の角度調節と座部92の前後の位置調節が可能なものであり、その側面には、一の端部が曲がった鉤形状の第1の脚部72が座椅子90の下台97に固定部材93によって三箇所で固設されている。
第1の脚部72の鉤形状の部分には、第1の溝部94が曲線に沿って形成されており、この第1の溝部94には第1の突起部95が滑合可能に設置されている。また、第1の突起部95は座椅子90の背部91の側面に固定されており、背部91を後方に倒して移動すると、第1の突起部95が矢印74の方向に移動するようになっている。
【0050】
前述したように、第1の脚部72と第2の脚部73は連結しており、第1の脚部72の内部には、第1の突起部95、第1の引きばね及び第1のスライド部材が順に設置され、続いて、連結する第2の脚部73の内部には押しばねが設置されているので、背部91を後方に倒して、第1の突起部95を移動させると、第1の引きばね及び第1のスライド部材も連動して移動し、押しばねは他端が固定されているので収縮する。
ここで、所望の角度で背部91を停止し、第1の係止部78において第1のハンドル81を押して第1のストッパ96を第1の脚部72に設けられるストッパ挿入窓にスライド挿入して、第1の引きばねの間隙を刺衝すると、背部91の角度が決定できるようになっている。
逆に、後方に倒した背部91を前方に戻す場合は、第1の引きばねの間隙を刺衝している第1のストッパ96を抜脱して第1の係止部78における係止状態を解除すると、収縮していた押しばねの弾性によって自動的に背部91は前方へ戻ってくる。
なお、符号98は下台97に設置される滑車であり、この滑車98は台座99に設けられる溝に滑合して座椅子90を前後に移動するものである。
【0051】
次に、図16は、本実施例に係る伸縮装置を装着した座椅子の固定部分を示す概念図である。
図16において、座椅子を正面からみると、座椅子の背部の骨組みとなる背部フレーム100と座部の骨組みとなる座部フレーム101が直行して接続されて下台97に設置されている。また、第1の脚部72はこれらのフレームに隣接した位置において固定部材93によって同じく下台97に固定されており、鉤形状の端部の円形が確認できる。そして、背部フレーム100には、突起部固定部材102が固設されており、この突起部固定部材102にボルト103を用いて第1の突起部95が固定されている。
したがって、座椅子の背部フレーム100、すなわち背部の角度を前後に変えると、第1の突起部95は背部に連動して第1の脚部72に設けられる溝部を滑合して移動する仕組みになっている。
【0052】
続いて、図17及び図18を用いて座部の位置調節について説明する。
図17は、本実施例に係る伸縮装置を装着した座椅子を前方へ移動した場合の上面図であり、図18は、本実施例に係る伸縮装置を装着した座椅子を後方へ移動した場合の上面図である。なお、図17及び図18において、図14に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。また、図17及び図18において背部の記載は省略している。
図17において、座椅子90は、座部92が台座99の前方位置に停止している状態であり、第2の脚部73では、第2の突起部82が第2の脚部73に設けられる第2の溝部(図示せず)の端部に位置し、また、第2の脚部73の内部では、第2の係止部85において第2のストッパ挿入窓(図示ぜず)に位置する第2の引きばねがストッパによって刺衝されて、その移動が抑止され、座部92の位置が固定されている。
【0053】
そして、座部92を後方へ移動する場合には、図17において、第2の係止部85のストッパを第2の引きばねから抜脱して係止状態を解除し、図18において、座部92を後方へ押すと、台座99に固定部材89によって固定された第2の突起部82は停止した状態で、座部92に固定部材105によって固定された第2の脚部73が後方へ移動して、第2の突起部82は第2の溝部を滑合し、第2の脚部73の内部では、第2の引きばね及び第2のスライド部材が移動するとともに、押しばねは収縮する。ここで、所望の位置で座部92を停止して、第2の係止部85において第2のストッパ挿入窓に位置する第2の引きばねをストッパによって刺衝して、係止を行うと座部92の位置が固定できる。
また、図18において、ストッパを抜脱して係止状態を解除すると、収縮していた押しばねの弾性によって、座部92は自動的に前方へ移動する。
【0054】
このように本実施例においては、第1の脚部のように曲がった形状であっても、この形状に沿った溝部と溝部に滑合する突起部を設置することにより、突起部の位置を自在に調節し、脚部の端部から突起部までの距離を決定できるので、座椅子のように角度調節を有するものに応用することが可能である。
また、脚部を組み合わせることにより、押しばねを共用すると、さらに構造が簡単になる上に、部品数の削減によりコストダウンを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、本発明の請求項1乃至請求項4に記載された発明は、対で構成される脚部を所望の長さに容易かつ同時に調節することができる伸縮装置を提供可能であり、脚立、梯子及び対の脚を備えるテーブル等の家具において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の本実施の形態に係る伸縮装置の縦断面図である。
【図2】実施の形態に係る伸縮装置の第1の脚の伸縮機構を説明するための縦断面図である。
【図3】実施の形態に係る伸縮装置の第2の脚の伸縮機構を説明するための縦断面図である。
【図4】実施の形態に係る伸縮装置の係止部を示す概念図である。
【図5】(a)は実施の形態に係る伸縮装置の係止部のストッパの上面図であり、(b)は図5(a)中にA−A線で示された部分の矢視断面図である。
【図6】(a)は実施の形態に係る伸縮装置の係止部のストッパの係止が解除された状態を示す概念図であり、(b)は同じく伸縮装置の係止部のストッパが第1段階の係止を行った状態を示す概念図であり、(c)は同じく伸縮装置の係止部のストッパが第2段階の係止を行った状態を示す概念図である。
【図7】実施例1に係る伸縮装置を装着した脚立の概念図である。
【図8】実施例1に係る伸縮装置を装着した脚立の内部構造を示す概念図である。
【図9】実施例2に係る伸縮装置を組合せた場合を示す概念図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る伸縮装置の概念図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る伸縮装置において固定部材と係止部を備えた状態の内部構造を示す概念図である。
【図12】第2の実施の形態に係る伸縮装置において脚部の内部構造を示す概念図である。。
【図13】(a)は第2の実施の形態に係る伸縮装置の突起部と伸縮脚の固定部分の概念図であり、(b)は図13(a)中にB−B線で示された部分の矢視断面図である。
【図14】実施例3に係る伸縮装置の概念図である。
【図15】実施例3に係る伸縮装置を装着した座椅子の概念図である。
【図16】実施例3に係る伸縮装置を装着した座椅子の固定部分を示す概念図である。
【図17】実施例3に係る伸縮装置を装着した座椅子を前方へ移動した場合の上面図である。
【図18】実施例3に係る伸縮装置を装着した座椅子を後方へ移動した場合の上面図である。
【符号の説明】
【0057】
1…伸縮装置 2…脚部 2a…第1の脚 2b…第2の脚 3…第1の伸縮脚 4…第2の伸縮脚 5…第1の押しばね 6…下端具 7…押しばね固定具 8…第2の押しばね 9…下端具 10…押しばね固定具 11…第1の円筒 12…第1のピストン 13…第1の引きばね 14…連結具 15,15a…第3の押しばね 16…第2の円筒 17…第2のピストン 18…第2の引きばね 19…係止部 20,20a,20b…ハンドル 21…ストッパ 22…固定部材 23…ストッパ挿入窓 24…ボルト 25…間隙 26…ボルト孔 27…カバー 28…ハンドル受台 29…固定具 30…切欠部 31…第1の刃 32…第2の刃 33…ボルト孔 34…脚立 35…第1の脚 36…第2の脚 37…踏み台 38…地面 39…段差 40,40a…脚端具 41…台 42a…外枠材 42b…内枠材 43…固定環 51…伸縮装置 52…脚部 53…脚部カバー 54…伸縮脚 55…係止部 56…溝部 57…突起部 57a…引きばね固定具 58…引きばね 59…押しばね 60…固定部材 61…ストッパ挿入口 61a…ストッパ 62…ハンドル 63…固定部材 64…ボルト 65…第1の突起部固定部材 66…第2の突起部固定部材 67…ボルト 68…スライド部材 69…押しばね固定具 70…ストッパ挿入窓 71…伸縮装置 72…第1の脚部 73…第2の脚部 74…矢印 75…第1の引きばね 76…押しばね 77…第1のスライド部材 78…第1の係止部 79…第1の固定部材 80…第1のストッパ挿入口 81…第1のハンドル 82…第2の突起部 82a…引きばね固定具 83…第2の引きばね 84…第2のスライド部材 85…第2の係止部 86…第2の固定部材 87…第2のストッパ挿入口 88…第2のハンドル 89…固定部材 90…座椅子 91…背部 92…座部 93…固定部材 94…第1の溝部 95…第1の突起部 96…第1のストッパ 97…下台 98…滑車 99…台座 100…背部フレーム0 101…座部フレーム 102…突起部固定部材 103…ボルト 104…溝 105…固定部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒の一部に窓部を備える脚部と、この脚部の一の端部を内挿しスライド可能な第1の伸縮脚部と、前記脚部の他の端部を内挿しスライド可能な第2の伸縮脚部と、前記脚部の一の端部と前記第1の伸縮脚部に介設される第1の伸縮部材と、前記脚部の他の端部と前記第2の伸縮脚部に介設される第2の伸縮部材と、前記脚部の一の端部に内設され前記脚部の内部をスライド可能な第1のスライド部材に一の端部が固設され螺旋状に形成された引きばねによって構成される第1の長さ調整部材と、前記脚部の他の端部に内設され前記脚部の内部をスライド可能な第2のスライド部材に一の端部が固設され螺旋状に形成された引きばねによって構成される第2の長さ調整部材と、前記脚部に設けられる前記窓部において前記第1の長さ調整部材及び前記第2の長さ調整部材を係止する係止部とを有し、この係止部は、前記窓部からスライド挿入させて前記第1の長さ調整部材及び前記第2の長さ調整部材を刺衝して前記第1の長さ調整部材及び前記第2の長さ調整部材の移動を抑止する係止部材と、この係止部材を前記脚部に設けられる前記窓部に固定する固定部材とを備えることを特徴とする伸縮装置。
【請求項2】
中空筒の一部に窓部を備える脚部と、この脚部の一の端部を内挿しスライド可能な第1の伸縮脚部と、前記脚部の他の端部を内挿しスライド可能な第2の伸縮脚部と、前記脚部の一の端部と前記第1の伸縮脚部に介設される第1の伸縮部材と、前記脚部の他の端部と前記第2の伸縮脚部に介設される第2の伸縮部材と、前記脚部の一の端部に内設され前記脚部の内部をスライド可能な第1のスライド部材に一の端部が固設され螺旋状に形成された引きばねによって構成される第1の長さ調整部材と、この第1の長さ調整部材の他の端部に接続され前記脚部の他の端部まで延設されるガイド部材と、前記脚部の他の端部に内設され前記ガイド部材の内部をスライド可能な第2のスライド部材に一の端部が固設され螺旋状に形成された引きばねによって構成される第2の長さ調整部材と、前記脚部に設けられる前記窓部において前記第1の長さ調整部材及び前記第2の長さ調整部材を係止する係止部とを有し、この係止部は、前記窓部からスライド挿入させて前記第1の長さ調整部材及び前記第2の長さ調整部材を刺衝して前記第1の長さ調整部材及び前記第2の長さ調整部材の移動を抑止する係止部材と、この係止部材を前記脚部に設けられる前記窓部に固定する固定部材とを備えることを特徴とする伸縮装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は螺旋状に形成された押しばねで構成されることを特徴とする請求項2に記載の伸縮装置。
【請求項4】
前記第1の長さ調整部材を構成する螺旋状に形成された引きばね及び/又は前記押しばねと、前記第2の長さ調整部材を構成する螺旋状に形成された引きばねの螺旋方向が異方向であることを特徴とする請求項3に記載の伸縮装置。
【請求項5】
前記係止部材は、切欠部を有する平板状であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の伸縮装置。
【請求項6】
中空筒の一部に窓部と前記中空筒の長手方向に沿って形成される溝部を備える脚部と、この脚部の内部に配置され一部が前記溝部から突出して前記溝部と滑合し前記脚部の内部をスライド可能な突起部と、この突起部に固設され螺旋状に形成された引きばねによって構成される長さ調整部材と、この長さ調整部材にスライド部材を介して接続される伸縮部材と、前記脚部に設けられる前記窓部において前記長さ調整部材を係止する係止部とを有し、この係止部は、前記窓部からスライド挿入させて前記長さ調整部材を刺衝して前記長さ調整部材の移動を抑止する係止部材と、この係止部材を前記脚部に設けられる前記窓部に固定する固定部材とを備えることを特徴とする伸縮装置。
【請求項7】
前記突起部に固設され、前記脚部を内挿してスライド可能な伸縮脚部を具備することを特徴とする請求項6に記載の伸縮装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−207798(P2006−207798A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291606(P2005−291606)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(503216317)有限会社長州電気 (4)
【Fターム(参考)】