説明

位相差フィルム、円偏光板、およびこれを用いた表示装置

【課題】光弾性係数が小さく、溶融粘度が低く、環境負荷が小さく、流動性、成形性、波長分散性に優れた位相差フィルム、位相差付偏光子保護フィルムおよびこれを用いた円偏光板、偏光板、表示装置を提供することにある。
【解決手段】重量平均分子量が1000〜10000であるスチレン系オリゴマーを1〜40重量%含有するポリエステル樹脂からなるフィルムであり、波長λ(nm)の光に対するフィルム面内の位相差をR(λ)(nm)としたとき、R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)が1.0以上、1.2以下であり、R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)が0.8以上、1.0以下である位相差フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学補償用途、反射防止用途に好適な位相差フィルム、位相差付偏光子保護フィルム、円偏光板、偏光板およびこれを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】

1/4波長板と偏光板とから構成される円偏光板は、偏光板側から入射した無偏光の光を円偏光へと変換する機能をもっている。現在、この機能を利用して、反射型および半透過型液晶表示装置の表示メカニズムや有機EL表示装置の反射防止に使用されている。この円偏光板に用いられる1/4波長板は、位相差フィルムの位相差が全可視光領域の波長λ(nm)に対し波長の4分の1であることが望まれている。また、位相差フィルムを液晶セルに組み込み製品化する場合には、貼り合わせたときの貼りムラ、偏光フィルムの収縮、バックライトや外部環境からの熱を受けることによる構成材料間の熱膨張差などにより応力が発生する。そのため、応力による位相差変化が小さいこと、すなわち光弾性係数が小さい樹脂からなる位相差フィルムであることもまた望まれている。
【0003】
光弾性係数が小さい1/4波長板として、環状ポリオレフィンを用いる方法(例えば、特許文献1参照)が提案されており、1/2波長板と1/4波長板を特定の角度で積層することで、可視光領域の広帯域において正面からの入射光に対する位相差を1/4波長に近づけている。しかし、この積層型の位相差フィルムは、光弾性係数は小さいが、構成部材コストおよび貼合コストが大きく、またディスプレイの薄膜化、軽量化には限界があるという問題があった。
【0004】
また、ポリカーボネートにビニル系低分子量ポリマーを添加することにより光弾性係数を低減する方法(例えば特許文献2参照)が提案されているが、ポリカーボネートの元々の光弾性係数が大きいため、ビニル系低分子量ポリマーを添加による光弾性係数の低減が不十分であるという問題や、可視光領域の広帯域で波長の4分の1の位相差を得られないため、円偏光板を表示装置に組み込み、正面及び斜めから見るとコントラストが低く、色調が変化するという問題があった。
【0005】
また、1枚で可視光領域の広帯域において、1/4波長に近い位相差が得られるフィルムとしてフルオレン構造を含むポリカーボネート(例えば、特許文献3、4参照)やセルロースアセテート(例えば、特許文献5、6参照)からなる熱可塑性フィルムを用いた円偏光板が知られているが、これらの樹脂は溶融粘度が高いため溶液流延法により製膜する必要があり、生産性が悪く、また用いる溶媒が環境に悪影響を与える問題があった。
【0006】
また、ポリエステルを位相差フィルムとして用いる方法(例えば、特許文献7、8参照)が提案されているが、光弾性係数は小さいが、波長の4分の1の位相差を満足する波長領域が不十分であるという問題や、可視光領域の広帯域で波長の4分の1の位相差を満足するが、近年の液晶ディスプレイの大画面化に伴い求められるようになった小さい光弾性係数の要求を満足するものではないため、円偏光板を表示装置に組み込むとコントラストが低く、色調が変化するという問題および貼り合わせたときの貼りムラ、偏光フィルムの収縮、バックライトや外部環境からの熱を受けることによる構成材料間の熱膨張差などの応力により、フィルムの寸法変化や位相差変化が生じるという問題があった。
【特許文献1】特開2003−270435号公報
【特許文献2】特開2000−302988号公報
【特許文献3】特開2005−156685号公報
【特許文献4】特許第3325560号明細書
【特許文献5】特開2000−137116号公報
【特許文献6】特開2002−98837号公報
【特許文献7】特開2007−4143号公報
【特許文献8】特開2007−112980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。したがって、本発明の目的は、光弾性係数が小さく、溶融粘度が低く、環境負荷が小さく、流動性、成形性、波長分散性に優れた位相差フィルム、位相差付偏光子保護フィルムおよびこれを用いた円偏光板、偏光板、表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明によれば、重量平均分子量が1000〜10000であるスチレン系オリゴマーを1〜40重量%含有するポリエステル樹脂からなるフィルムであり、波長λ(nm)の光に対するフィルム面内の位相差をR(λ)(nm)としたとき、R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)が1.0以上、1.2以下であり、R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)が0.8以上、1.0以下である位相差フィルムが提供される。
【0009】
さらには、本発明の位相差フィルムは、光弾性係数が−24×10−12 Pa−1以上、24×10−12 Pa−1以下であること、溶融粘度が、温度が270℃、せん断速度100s−1において10Pa・s以上、1000Pa・s以下であること、ヘイズが3.0%以下であること、波長548.3nmにおける複屈折をΔNとしたとき、ΔNが1.0×10−3以上、20×10−3以下であること、ポリエステル樹脂が、下記化学式(1)および(2)で表される構造単位を含むこと、下記化学式(3)および(4)で表される構造単位を含むこと、下記化学式(4)および下記化学式(5)で表される構造単位を含むこと、下記化学式(1)、(3)、(5)、(6)で表される構造単位を含み、化学式(1)、(3)、(5)、(6)のモル分率(%)をそれぞれa〜dとしたとき、下式(A)、(B)を満たしていることが望ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
ただし、式中のRは同一または異なる炭素数1〜4のアルキレン基であり、pは0〜3の整数を示す。R、Rは同一または異なる炭素数1〜30のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示し、q、rは0〜4の整数を示す。
【0012】
【化2】

【0013】
また、式中のXは、炭素数1〜50のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基を示す。
【0014】
【化3】

【0015】
ただし、式中のRは同一または異なる炭素数1〜30のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示し、mは0〜4の整数を示す。
【0016】
【化4】

【0017】
また、式中のYは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、エーテル基の単一、またはこれらの複数の組み合わせからなり、炭素数1〜50、酸素数0〜10を示す。
【0018】
【化5】

【0019】
ただし、式中のRは同一、または異なる炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示し、nは0〜6の整数を示す。
【0020】
【化6】

【0021】
ただし、式中のR6はアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、エーテル基の単一、またはこれらの複数の組み合わせからなり、炭素数1〜50、酸素数0〜10を示す。
80 ≦ a + b + c + d ≦ 100・・・(A)
−0.4c + 40 < a<0.5c + 20・・・(B)
さらに、本発明の円偏光板および表示装置は、上記の位相差フィルムを用いてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、以下に説明するとおり、光弾性係数が小さく、溶融粘度が低く、環境負荷が小さく、流動性、成形性、耐熱性、長期の位相差安定性、波長分散性に優れた位相差フィルムであり、コントラストが高く、青みを帯びることのない良好な表示を実現できる円偏光板および表示装置を提供することができる。そのため、溶媒を用いて樹脂の粘度を低くする必要がなく、位相差フィルムの製造の際に、溶媒が環境に与える影響をなくすことができ、生産性が高い溶融製膜法を用いることができる。
【0023】
また、本発明によれば、光弾性係数が小さい位相差フィルムを提供することができる。そのため、液晶セルに円偏光板に貼り合わせたときの貼りムラや、バックライトや外部環境からの熱を受けることによる構成材料間の熱膨張差、偏光フィルムの収縮などにより発生する応力によるフィルムの寸法変化や位相差変化を小さくすることができ、光の額縁漏れや色ムラをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を具体的に説明する。本発明の位相差フィルムは、重量平均分子量が1000〜10000であるスチレン系オリゴマーを1〜40重量%含有するポリエステル樹脂からなるフィルムであることが必要である。スチレン系オリゴマーを含有することにより、ポリエステル樹脂の光弾性係数を低減できるため好ましい。また、延伸性の向上や、低い延伸倍率または/および高い延伸温度でより大きなΔNを得やすくなるため好ましく、さらにスチレン系オリゴマーの含有による波長分散性の変化がほとんどないため好ましい。
【0025】
好ましくは、スチレン系オリゴマーの重量平均分子量が1000〜8000であり、より好ましくは1000〜5000である。また、好ましくはスチレン系のオリゴマーの含有量が3〜35重量%であり、より好ましくは5〜30重量%である。
【0026】
スチレン系オリゴマーの重量平均分子量が1000未満である場合および/または含有量が1%未満である場合は、光弾性係数低減の効果を得られないことがあり好ましくなく、10000より大きい場合および/または含有量が40重量%を超える場合は、相溶性が低下し、位相差フィルムのヘイズが高くなることや耐熱性が不十分となることや、温度が270℃、せん断速度100s−1における溶融粘度が低くなり製膜が困難となることがあり好ましくない。スチレン系オリゴマーの重量平均分子量および含有量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法などを用いて測定することができる。また、スチレン系オリゴマーの含有量は、ポリエステル樹脂とスチレン系オリゴマーからなる本発明の位相差フィルムにおいて、スチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を100重量部としたときのスチレン系オリゴマーの重量%で表される。また、ポリエステル樹脂であることにより、溶融粘度が低く、環境負荷が小さく、流動性、成形性に優れた位相差フィルムとすることができ好ましい。
【0027】
ここで、スチレン系オリゴマーとは、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、p−フルオロスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのようなビニル芳香族化合物のなかから選ばれる1種または2種以上からなる共重合体であることが好ましい。また、スチレン系オリゴマーは、1種または同時に2種以上用いることができる。脂肪族系モノマーからなる共重合体(オリゴマー)の場合は、ポリエステル樹脂とオリゴマーとの混錬の際にオリゴマーが熱分解することがあり好ましくない。光弾性低減の観点から好ましくは、スチレンまたは/およびα−メチルスチレンを含む共重合体であることであり、より好ましくはα−メチルスチレンを含む共重合体である。
【0028】
重量平均分子量が1000〜10000のスチレン系オリゴマーとしては、三井化学株式会社製のFTRシリーズおよびFMRシリーズ、三洋化成工業株式会社製ハイマーシリーズ、イーストマンケミカル社製KRISTALEXシリーズなどが挙げられる。
【0029】
円偏光板に用いる位相差フィルムは、各波長における位相差が1/4となることが好ましい。波長628.2nmにおける位相差R(628.2)(nm)と波長548.3nmにおける位相差R(548.3)(nm)と波長480.4nmにおける位相差R(480.4)(nm)が次式を満たすことが理想であり、この理想値に近い場合を波長分散性が良いという。
R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) = 1.146
R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) = 0.8762
本発明の位相差フィルムは、位相差フィルムのR(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)が1.0以上、1.2以下であり、R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)が0.8以上、1.0以下であることが必要である。
【0030】
より好ましくは、R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)が1.05以上、1.2以下であり、R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)が0.82以上、0.92以下であり、さらに好ましくはR(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)が1.08以上、1.17以下であり、R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)が0.84以上、0.90以下を満たすことである。
【0031】
位相差フィルムを円偏光板に用いて、反射型および半透過型液晶表示装置や有機EL表示装置に組み込んだ際に、位相差フィルムが、一枚でR(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)が1.0以上、1.2以下を満たしていると長波長の光漏れがほとんどないため、黒表示がわずかに赤みを帯びることもなく好ましく、R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)が0.8以上、1.0以下を満たしていると、短波長の光漏れがほとんどないため、黒表示がわずかに青みを帯びることや、コントラスト低下もほとんどなく好ましい。また、広範囲の可視光波長域で、正面および斜めからの入射光を円偏光に変換することができるため、反射型および半透過型液晶表示装置や有機EL表示装置に組み込んだ際に、正面だけでなく斜めから見ても、コントラスト低下や色相変化を少なくすることができるため好ましい。
【0032】
また、本発明の位相差フィルムを位相差付偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を、VA(Vertically Aligned)モードの液晶表示装置に組み込んだ際に、位相差フィルムが、一枚でR(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)が1.0以上、1.2以下かつR(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)が0.8以上、1.0以下を満たしていると、クロスニコルとなるよう配置された偏光板の偏光軸直交性の視野角依存性が抑制され、光漏れによるコントラスト低下を少なくすることができるため好ましい
R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)が1.0以上、1.2以下、かつR(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)が0.8以上、1.0以下を満たす方法としては、波長分散性の観点から、カルド構造、単環または多環の不飽和脂肪族環構造、および単環または多環の飽和脂肪族環構造の全てを有する位相差フィルムであることが好ましい。好ましくは、カルド構造および単環または多環の飽和脂肪族環構造のモル分率(%)をそれぞれa、cとしたとき、−0.4c + 40 < a<0.5c + 20を満たすことである。
【0033】
a ≦ −0.4c + 40の場合は、R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)が1.0未満となることや、R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)が1.0より大きくなることがあり表示品質の観点から好ましくなく、また、耐熱性、位相差安定性が不十分であることがあり好ましくない。a ≧ 0.5c + 20の場合は、R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)が1.2より大きくなることや、R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)が0.8未満となることがあり表示品質の観点から好ましくなく、また、フィルムの複屈折(以下、ΔNとする)が小さくなることがあり、位相差フィルムの薄膜化の観点から好ましくない。
【0034】
本発明の位相差フィルムは、光弾性係数(以下Cσとする)が−24×10−12Pa−1以上、24×10−12 Pa−1以下であることが好ましい。より好ましくは−22×10−12Pa−1以上、22×10−12 Pa−1以下であり、もっとも好ましくは−19×10−12Pa−1以上、19×10−12 Pa−1である。Cσが−24×10−12Pa−1未満、または24×10−12 Pa−1より大きい場合は、円偏光板を液晶セルに貼り合わせたときの貼りムラや、バックライトや外部環境からの熱を受けることによる構成材料間の熱膨張差、偏光フィルムの収縮などにより発生する応力により、位相差ムラが発生し、コントラストの低下や色相変化を起こすことがあり好ましくない。
【0035】
Cσを−24×10−12 Pa−1以上、24×10−12 Pa−1以下にする方法としては、脂環構造およびカルド構造のいずれも有しているポリエステル樹脂であって、重量平均分子量が1000〜10000であるスチレン系オリゴマーを1〜40重量%含有することが好ましい。スチレン系オリゴマーを含有していないポリエステル樹脂の光弾性係数は−30×10−12 Pa−1以上、30×10−12Pa−1以下であることが好ましい。より好ましくは−28×10−12 Pa−1以上、28×10−12Pa−1以下であり、もっとも好ましくは−27×10−12 Pa−1以上、27×10−12Pa−1である。Cσが−30×10−12 Pa−1未満、または30×10−12Pa−1より大きい場合は、目的とする小さい光弾性係数を達成するために必要なスチレン系オリゴマーの含有量が多くなるため、位相差フィルムのヘイズが高くなることや耐熱性が不十分となることや、温度が270℃、せん断速度100s−1における溶融粘度が低くなり製膜が困難となることがあり好ましくない。
【0036】
ポリエステル樹脂の脂環構造としては、例えばシクロヘキサン構造、シクロペンタン構造、デカリン構造、トリシクロデセン構造、ノルボルナン構造、シクロヘキセン構造、シクロペンテン構造、ノルボルネン構造、スピロ環構造などが挙げられる。また、カルド構造としては、フルオレン環、9,9−ビスフェニルフルオレン構造などが挙げられる。Tgの向上を目的として芳香族構造を多く導入するとCσが大きくなる傾向にあり好ましくないが、9,9−ビスフェニルフルオレン構造からなる芳香族は、主鎖方向の芳香環と主鎖と直交する方向のフルオレン環(芳香環)が分極を打ち消しあうため、高いTgと小さいCσの両立が可能になるため好ましい。
【0037】
溶融粘度、波長分散性、Cσ、耐熱性、位相差発現性の観点から、本発明の位相差フィルムが、カルド構造および、単環または多環の不飽和脂肪族環構造および、単環または多環の飽和脂肪族環構造の全てを有する樹脂からなることが好ましい。より好ましくは、単環または多環の不飽和脂肪族環構造が、1つの不飽和構造を有することである。
【0038】
本発明の位相差フィルムの溶融粘度が、温度が270℃、せん断速度100s−1において10Pa・s以上、1000Pa・s以下であることが好ましい。溶融粘度は好ましくは50Pa・s以上、800Pa・s以下であり、より好ましくは、100Pa・s以上、500Pa・s以下である。1000Pa・s以下の場合は、流動性、成形性に優れ、溶融粘度を下げるために溶融温度を高くする必要がなく、スチレン系オリゴマーの熱分解を抑制することができ、またフィルターにより異物が取り除けるため好ましい。1000Pa・sより大きい場合は、流動性、成形性に劣るため好ましくない。例えば、光学用フィルムとしては、ポリカーボネート、セルロースなどの樹脂からなるフィルムが挙げられるが、これらの樹脂は溶融粘度が高く、製膜可能な溶融粘度になるよう温度を上げるとオリゴマーおよび樹脂が分解または劣化する問題があるため、樹脂を溶媒に溶かして粘度を下げ、溶液流延法を用いる必要がある。溶液流延法を用いる場合は、生産性が低くなるため好ましくなく、また用いる溶媒が環境に影響を与えることがあるためからも好ましくない。10Pa・sより小さい場合は、製膜が困難となるため好ましくない。
【0039】
溶融粘度を10Pa・s以上にする方法として、組成により異なるが分子量を充分に上げることが好ましい。溶融粘度を1000Pa・s以下にする方法として、例えば分子鎖の絡み合いを少なくする方法が挙げられる。ポリカーボネートのように剛直な構造からなる樹脂は、芳香環の立体障害のため分子の回転性が悪く、1000Pa・s以下とするためには、低分子量とすることで分子鎖の絡み合いを減らす必要があるが、製膜が困難となるため好ましくない。主鎖に回転性が良いメチレン基、エーテル基のような分子構造、例えばエチレングリコールを含む樹脂は、分子鎖が曲がりやすく、分子鎖の絡み合いを少なくできるため、溶融粘度を1000Pa・s以下とすることができ好ましい。
【0040】
また、重合反応が進行し、樹脂の分子量が大きくなるに従い、溶融粘度が高くなるため、重合装置の攪拌トルクも上昇する。重合終了時の攪拌トルクと樹脂の溶融粘度との関係を求め、目的の溶融粘度を満足する攪拌トルクで重合反応を停止することが好ましい。また、樹脂の分子量は、溶融粘度と相関関係があり、樹脂の分子量と溶融粘度との関係を求めておくことで、溶融粘度から樹脂の分子量を推定することができる。
【0041】
本発明の位相差フィルムのヘイズが3.0%以下であることが好ましい。好ましくは2.5%以下であり、より好ましくは2.0%以下である。ヘイズが3.0%より高い場合は、透明性が低下し位相差フィルム用途として適さなくなることがあり好ましくない。また、スチレン系オリゴマーとして、α−メチルスチレンを含む共重合体からなるオリゴマー(例えば三井化学株式会社製のFTRシリーズ、FMRシリーズ、イーストマンケミカル社製KRISTALEXシリーズなど)を用いることがヘイズ低減の観点から好ましい。
【0042】
本発明の位相差フィルムは、波長548.3nmにおける複屈折をΔNとしたとき、ΔNが1.0×10−3以上、20×10−3以下であることが好ましい。より好ましくは、波長分散性および円偏光板の薄膜化の観点から1.5××10−3以上であり、さらに好ましくは1.6×10−3以上であり、もっとも好ましくは1.7×10−3以上である。また、ハンドリング性、位相差の制御の観点から好ましくは15×10−3以下であり、さらに好ましくは10×10−3以下である。芳香族構造のモル分率が50%である場合はΔNが20×10−3以上となることがあり好ましくなく、カルド構造のモル分率が45%以上である場合はΔNが1.0×10−3未満となることがあり好ましくない。ΔNを1.0×10−3以上、20×10−3以下とする方法として、例えば(Tg−40)℃〜(Tg+40)℃の範囲のいずれかの温度で、1.1〜10倍のいずれかの延伸倍率で、一軸延伸、ニ軸延伸などの方法で作製できる。好ましくは(Tg−10)℃〜(Tg+30)℃であり、より好ましくは(Tg−5)℃〜(Tg+20)℃の範囲のいずれかの温度で延伸することであり、延伸倍率に特に限定はないが、好ましくは1.1〜5倍であり、より好ましくは1.5〜4倍のいずれかの延伸倍率で延伸することである。延伸温度が(Tg+40)℃の場合や、延伸倍率が1.1倍未満の場合はΔNが1.0×10−3未満となることがあり好ましくなく、延伸温度が(Tg−40)℃未満の場合はフィルム破れが生じることがあり好ましくなく、延伸倍率が10倍より大きい場合はクラックによる白化が生じることがあり好ましくない。
【0043】
延伸速度は好ましくは、50%/分以上、4000%/分以下とすることであり、より好ましくは100%/分以上、3000%/分以下であり、もっとも好ましくは200%/分以上、2000%/分以下である。延伸速度が50%/分未満の場合は、延伸による分子鎖の配向と同時に配向緩和が生じるため、ΔNが1.0×10−3未満となることがあり好ましくなく、4000%/分より大きい場合は応力集中によるフィルム破れやクラックによる白化が生じるため好ましくない。
【0044】
ΔNが1.0×10−3未満の場合は、R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)が1.0以上、1.2以下、かつR(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)が0.8以上、1.0以下を満たさないことがあり、反射型および半透過型液晶表示装置や有機EL表示装置に組み込んだ際に、正面および斜めから見たとき、光漏れや、黒表示が青みを帯びることによるコントラスト低下や色相変化が生じることがあり好ましくない。また、必要な厚みが大きくなり、本発明の円偏光板を用いた表示装置の薄型化、軽量化の観点で好ましくなく、また、ΔNが20×10−3を超える場合は、位相差の制御が困難になり好ましくない。
【0045】
本発明の位相差フィルムは、上記化学式(1)および(2)で表される構造単位を含む樹脂からなることが好ましい。上記化学式(1)で表される構造単位は、好ましくはq=0、r=0である。R、Rがアルキル基、アリール基、シクロアルキル基の場合は原料コストが高くなることや、Tgの低下があり好ましくない。p=1であることが好ましく、Rは同一でエチレン基であることが好ましい。アルキレン基の炭素数が大きい場合はTgが下がり好ましくなく、p=0の場合は重合の反応性が悪くなり好ましくない。より好ましくは、下記化学式(7)で表される構造単位である。また、上記化学式(2)で表される構造単位の式中のXは、炭素数1〜50のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基であることが好ましい。
【0046】
【化7】

【0047】
上記化学式(1)で表される構造単位の誘導体としては、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−エチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジエチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−プロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジ−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ビス(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジフェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−ベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン9,9−ビス[4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられ、これらの中でも、Cσ、耐熱性、重合性の観点から9,9−ビス(4−(2―ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが好ましい。
【0048】
本発明の位相差フィルムは、上記化学式(3)および(4)で表される構造単位を含む樹脂からなることが好ましい。上記化学式(3)で表される構造単位は、好ましくはm=0であり、Rがアルキル基、シクロアルキル基、アリール基の場合は、原料コストが高くなることや、Tgの低下、樹脂の着色などがあり好ましくない。より好ましくは、下記化学式(8)で表される構造単位である。また、上記化学式(4)で表される構造単位の式中のYは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、エーテル基の単一、またはこれらの複数の組み合わせからなり、炭素数1〜50、酸素数0〜10であることが好ましい。
【0049】
【化8】

【0050】
上記化学式(3)で表される構造単位の誘導体としては、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸およびこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。エステル形成性誘導体としては、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物などの酸無水物、ジカルボン酸に対応する酸クロライドのような酸ハライド、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸ジメチルなどの低級アルキルエステルなどなどが挙げられる。1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸を用いると、このフィルムからなる1/4波長位相差フィルムを用いた円偏光板は、広範囲の可視光波長域で光を円偏光に変換することができ、反射型または半透過型液晶表示装置および有機EL表示装置に組み込んだ際の光漏れによるコントラスト低下や色相変化を少なくすることができ好ましい。
【0051】
本発明の位相差フィルムは、上記化学式(4)および(5)で表される構造単位を含む樹脂からなることが好ましい。上記化学式(4)で表される構造単位の式中のYは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、エーテル基の単一、またはこれらの複数の組み合わせからなり、炭素数1〜50、酸素数0〜10であることが好ましい。上記化学式(5)で表される構造単位は、好ましくはn=0であり、Rがアルキル基、シクロアルキル基、アリール基の場合は、原料コストが高くなることや、Tgの低下などがあり好ましくない。より好ましくは、下記化学式(9)で表される構造単位である。
【0052】
【化9】

【0053】
上記化学式(5)で表される構造単位の誘導体としては、例えば2,6−デカリンジカルボン酸、1,5−デカリンジカルボン酸、1,6−デカリンジカルボン酸、2,7−デカリンジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。エステル形成性誘導体としては、ジカルボン酸に対応する酸クロライドのような酸ハライド、2,6−デカリンジカルボン酸ジメチルなどの低級アルキルエステルなどが挙げられる。波長分散性、光弾性係数、耐熱性の観点から2,6−デカリンジカルボン酸ジメチルが好ましい。
【0054】
本発明の位相差フィルムは、ジオール単位として上記化学式(6)で表される構造単位のRはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、エーテル基の単一、またはこれらの複数の組み合わせからなり、炭素数1〜50、酸素数0〜10であることが好ましい。上記化学式(6)で表される構造単位の誘導体としては、例えばジオール成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、スピログリコールなどの脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、3−メチル−1,2−シクロペンタンジオール、4−シクロペンテン−1,3−ジオール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノールなどの環構造を有するジオールが挙げられる。位相差フィルムの延伸性、柔軟性の観点から好ましくはエチレングリコールであり、Cσの低減、耐熱性の観点から、好ましくは2.3−ブタンジオール、スピログリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−プロピレングリコール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、1,2−デカリンジメタノール、1,3−デカリンジメタノール、1,4−デカリンジメタノール、1,6−デカリンジメタノール、2,7−デカリンジメタノールである。より好ましくはエチレングリコール、スピログリコール、2,6−デカリンジメタノールである。本発明の目的を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて用いることができ、例えばエチレングリコール、スピログリコール、2,6−デカリンジメタノールを併用することで耐熱性、光学特性、柔軟性、機械特性を調節することができる。
【0055】
本発明の位相差フィルムは、上記化学式(1)、(3)、(5)、(6)で表される構造単位を含み、化学式(1)、(3)、(5)、(6)のモル分率(%)をそれぞれa〜dとしたとき、下式(A)、(B)を満たしていることがより好ましい。より好ましくは、次式(I)、(J)を満たすことである。
80 ≦ a + b + c + d ≦ 100・・・(A)
−0.4c + 40 < a<0.5c + 20・・・(B)
90 ≦ a + b + c + d ≦ 100・・・(I)
−0.5c + 50≦ a<0.5c + 20・・・(J)
(a + b + c + d )が80未満の場合は、本発明の目的を損なうことがあり好ましくない。a ≦ −0.4c + 40、a ≧ −0.5c + 20の場合は、R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)が1.0以上、1.2以下、かつR(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)が0.8以上、1.0以下を満たさないことがあり、反射型および半透過型液晶表示装置や有機EL表示装置に組み込んだ際に、正面および斜めから見たとき、光漏れや、黒表示が青みを帯びることによるコントラスト低下や色相変化が生じることがあり好ましくない。
【0056】
また、a ≦ −0.4c + 40の場合は、円偏光板の使用環境の条件にもよるが配向緩和等の問題が発生し、長期の位相差安定性を保てないことがあり好ましくない。また、Cσが−24×10−12 Pa−1未満、または24×10−12 Pa−1より大きくなることがあり、円偏光板を液晶セルに貼り合わせたときの貼りムラや、バックライトや外部環境からの熱を受けることによる構成材料間の熱膨張差、偏光フィルムの収縮などにより発生する応力により、位相差ムラが発生し、コントラストの低下や色相変化を起こすことがあり好ましくない。
【0057】
また、a≧ −0.5c + 20の場合は、延伸条件にもよるがΔNが1.0×10−3以上とすることが容易ではないことがあり、位相差発現性が悪く、円偏光板の厚みが厚くなり、液晶ディスプレイの薄型化、軽量化の観点で好ましくない。
【0058】
本発明の位相差フィルムを構成するポリエステル樹脂の重合方法に限定はなく、公知の重合法、例えば、ジカルボン酸とグリコールを誘導体とするエステル化法、ジカルボン酸ジエステルとグリコールを用いるエステル交換法などを用いることができる。
【0059】
エステル交換法の場合、例えば2,6−デカリンジカルボン酸ジメチル、9,9−ビス(4−(2―ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、エチレングリコールを用いる場合、テレフタル酸ジメチル、9,9−ビス(4−(2―ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、エチレングリコールを所定のポリマー組成となるように反応容器へ仕込む。この際、エチレングリコールを全ジカルボン酸成分に対して1.7〜2.3モル倍添加することにより反応性が良好になる。これらを150℃程度で溶融後、触媒として酢酸マンガンを添加し撹拌する。150℃で、これらのモノマー成分は均一な溶融液体となる。ついで235℃まで徐々に昇温しながらメタノールを留出させる。その後200℃まで反応容器内の温度を下げ、cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸を加える。2,6−デカリンジカルボン酸ジメチルのようにジカルボン酸のエステル形成性誘導体ではなく、ジカルボン酸やジカルボン酸無水物を用いる場合は、このように途中で加えることにより反応性を良好にすることができる。その後、再び235℃まで昇温することでエステル交換反応を実施する。
【0060】
エステル反応終了後、トリメチルリン酸を加え、撹拌後に水を蒸発させる。さらに、二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液を添加後、反応物を重合装置へ仕込み、装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、装置内圧力を常圧から133Pa以下まで減圧し、エチレングリコールを留出させる。重合反応の進行に従って反応物の粘度が上昇するので、撹拌トルクが0.2Nmとなった時点で反応を終了し、重合装置から樹脂を水槽へ吐出する。攪拌トルクが0.2Nm未満で反応を終了すると、溶融粘度が低く、成形が困難になることがあるので好ましくなく、0.2Nmを大きく超えた場合は、溶融粘度が高くなりすぎるので、製膜可能な溶融粘度になるよう押出温度を上げる必要があるが、その際に樹脂の熱分解や着色が生じることがあるので好ましくない。吐出された樹脂は水槽で急冷し、カッターでチップとする。得られた樹脂は95℃の温水が満たされた水槽に投入して5時間水処理を行う。水処理後、脱水機を用いて樹脂から水分を除去する。
【0061】
このようにして得たポリエステル樹脂に、公知の溶液混錬法、溶融混錬法などの方法を用いてスチレン系オリゴマーを添加することで、本発明の位相差フィルムを構成するスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を得て製膜する方法、またはスチレン系オリゴマーとポリエステル樹脂とのドライブレンドを直接溶融押出によって製膜する方法などが挙げられるが、溶液混錬法は生産性が低くなることや、用いる溶媒が環境に影響を与えることがあり好ましくなく、また上記の方法に限定されるわけではない。樹脂の各構造単位のモル分率(%)は、例えば熱分解ガスクロマトグラフ−質量分析(GC−MS)法や、樹脂を加水分解し、生成物をシリル化など誘導体化した後に、GC−MS法、及びNMR法などの方法を用いて測定することができる。また、スチレン系オリゴマーの分子量と含有量はゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法や、GPC法で分取後、スチレン系オリゴマーおよびポリエステル樹脂の重量分析する方法などを用いて測定することができる。また、スチレン系オリゴマーの同定には、NMR法やGC−MS法などの方法を用いることができる。
【0062】
本発明の位相差フィルムを製膜する方法としては、公知の製膜方法を用いて製膜することができる。すなわち、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルション法、ホットプレス法などの製造方法が使用できるが、厚みムラ減少、異物削減の観点からT−ダイ法、流延法、ホットプレス法が好ましく使用できる。ヘイズ低減のためには、T−ダイ法、流延法が好ましい。インフレーション法やT−ダイ法による製造法の場合、単軸あるいはニ軸押出しスクリューのついたエクストルーダ溶融押出し装置が使用できる。好ましくはL/D=25以上120以下のニ軸混練押出機が着色を防ぐことができる点で好ましい。また、溶融押出装置を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し減圧下での溶融混練あるいは窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。特に本発明の位相差フィルムを構成する樹脂は非晶性であるため乾燥が難しいため、ベント式押出機は乾燥せずに溶融押出しできる点で好ましく用いられる。押出温度としては(Tg + 100)〜(Tg + 200)℃の範囲のいずれかの温度で行うことができる。キャスト方法は溶融した樹脂をギアーポンプで計量した後にTダイ口金から吐出させ、冷却されたドラム上に、密着手段である静電印加法、エアーチャンバー法、エアーナイフ法、プレスロール法などでドラムなどの冷却媒体に密着冷却固化させて室温まで急冷し、未延伸フィルムを得ることが好ましい。特に本発明の位相差フィルムは良好な平面性や均一な厚み、光学特性が要求されるため、静電印加法が特に好ましく用いられる。
【0063】
上記に記載の製膜方法により製造した未延伸フィルムを、(Tg−40)℃〜(Tg+40)℃の範囲のいずれかの温度で、1.1〜10倍のいずれかの延伸倍率で、一軸延伸、ニ軸延伸などの方法で作製できる。二軸延伸の延伸方式は、特に限定はなく、逐次二軸延伸、同時二軸延伸などの方法を用いることができる。好ましくは(Tg−10)℃〜(Tg+30)℃であり、より好ましくは(Tg−5)℃〜(Tg+20)℃の範囲のいずれかの温度で延伸することであり、延伸倍率に特に限定はなく、目的とした位相差に応じて決めることができるが、一軸延伸の延伸方式を用いる場合は、好ましくは1.1〜5倍であり、より好ましくは1.5〜4倍のいずれかの延伸倍率で延伸することが、波長分散性の観点から好ましい。延伸温度が(Tg+40)℃の場合や、延伸倍率が1.1未満の場合はΔNが1.0×10−3未満となることがあり好ましくなく、延伸温度が(Tg−40)℃未満の場合はフィルム破れが生じることがあり好ましくなく、延伸倍率が10倍より大きい場合はクラックによる白化が生じることがあり好ましくない。
【0064】
延伸速度は好ましくは、50%/分以上、4000%/分以下とすることであり、より好ましくは100%/分以上、3000%/分以下であり、もっとも好ましくは200%/分以上、2000%/分以下である。延伸速度が50%/分未満の場合は、延伸による分子鎖の配向と同時に配向緩和が生じるため、ΔNが1.0×10−3未満となることがあり好ましくなく、4000%/分より大きい場合は応力集中によるフィルム破れやクラックによる白化が生じるため好ましくない。
【0065】
延伸した位相差フィルムは、(Tg−20)℃〜(Tg+10)℃の範囲のいずれかの温度で、収縮率0.5〜10%の収縮を延伸方向に対して行うことが好ましい。より好ましくは、(Tg−15)℃〜(Tg+5)℃であり、さらに好ましくは(Tg−10)℃〜(Tg)℃の範囲のいずれかの温度である。(Tg−20)℃未満の場合は、収縮の際にフィルムが弛み平滑性が損なわれることがあり好ましくなく、(Tg+10)℃より高い温度の場合は、分子鎖の配向緩和によりΔNが1.0×10−3未満となることがあり好ましくない。収縮率は、好ましくは1〜8%であり、さらに好ましくは2〜7%である。ここで、収縮率を
【0066】
【数1】

【0067】
とする。収縮率が1%未満の場合は、残留応力の解消が不十分なことがあり、長期の位相差安定性に劣る場合があるので好ましくなく、10%より大きい場合はフィルムの平滑性が悪化することがあるので好ましくない。また、収縮速度は好ましくは、0.1%/分以上、100%/分以下とすることであり、より好ましくは0.25%/分以上、80%/分以下であり、もっとも好ましくは0.5%/分以上、40%/分以下である。0.1%/分未満の場合は、目的の収縮率に達するまでに必要な時間が長くなるため、分子鎖の配向緩和によりΔNが1.0×10−3未満となることがあり好ましくなく、100%/分より大きい場合はフィルムの平滑性が悪化することがあるので好ましくない。
【0068】
本発明の位相差フィルムの厚みは1〜300μmであることが好ましい。より好ましくは7〜150μmであり、さらに好ましくは10〜80μmである。1μm未満の場合はフィルムのハンドリングが困難になることがあり、300μmを超える場合は光線透過率が低くなることがあり、また本発明の位相差フィルムを用いた液晶ディスプレイの薄型化、軽量化の観点で好ましくない。
【0069】
また、本発明の円偏光板は位相差フィルムの波長分散、および用いる偏光板と表示装置にもよるが、波長548.3nmの楕円率向上の観点からは、本発明の位相差フィルムのR(548.3)が135〜139nmであることが好ましく、波長480.4nmの楕円率向上の観点からは、R(548.3)が136〜142nmであることが好ましい。また、本発明の円偏光板は、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角は、好ましくは40°〜50°であり、より好ましくは、42°〜48°であり、もっとも好ましくは43°〜47°である。
【0070】
本発明の位相差フィルムは、位相差付偏光子保護フィルムとして用いることも好ましい。また、本発明の位相差フィルムの片面または両面に液晶性高分子を塗布し配向固定させたフィルムを、位相差付偏光子保護フィルムとして用いることも好ましい。本発明の偏光板に用いる位相差フィルムは表示装置にもよるが、偏光板の偏光軸直交性の視野角依存性を抑制する観点からは、位相差フィルムのR(548.3)が100〜200nmであることが好ましく、より好ましくは120〜180nmであり、さらに好ましくは140〜160nmである。また、本発明の偏光板は、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角が直交していることが好ましい。
【0071】
本発明の円偏光板に用いる偏光板に限定はなく、公知の偏光板、例えば、ヨウ素系偏光板、染料系偏光板、ワイヤーグリッド型偏光板などを用いることができる。偏光度の観点からヨウ素系偏光板が好ましく、耐熱性の観点から染料系偏光板が好ましい。ヨウ素系偏光板は、少なくとも偏光子の片面にトリアセチルセルロースなどからなる保護フィルムを有していることが好ましく、耐久性の観点から偏光子の両面に保護フィルムを有していることが好ましく、薄膜化の観点からどちらか一方のみ保護フィルムを有していることが好ましい。
【0072】
本発明の円偏光板の作成方法に限定はなく、公知の貼合方法、例えば市販の貼合機や貼合ロールを用いて偏光板と本発明の位相差フィルムとを積層することができ、接着層を介して積層することができる。偏光板が、偏光子の片面のみ保護フィルムを有する場合は、もう一方の面に本発明の位相差フィルムを積層することで円偏光板とすることができる。また、接着層に限定はなく、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系などの公知の接着剤および粘着剤を用いることができ、光学的に等方的であることが好ましい。薄膜化の観点から、UV硬化型樹脂を用いた接着剤が好ましく、透明性、光学的等方性、対熱性、耐湿熱性の観点からアクリル系粘着剤が好ましい。
【0073】
本発明の円偏光板は、表示装置に用いることができる。特に、反射型および半透過型液晶表示装置における表示メカニズムへの利用や、有機EL表示装置における表面反射の抑制のための反射防止フィルムなどの用途に用いると斜めから見てもコントラストが高く、青みを帯びることがなく好ましい。本発明の円偏光板の使用方法や配置は、従来の円偏光板に代えて、本発明の円偏光板を使用する以外は特に制限されず、従来公知の構成、配置が適用できる。本発明の液晶表示装置は、例えば、液晶セルの片面又は両面、特に、少なくとも表示画面側に、本発明の円偏光板が配置されていることが好ましい。本発明の有機EL表示装置には、円偏光板を表示画面側に配置することが好ましい。これによって、例えば、電極により反射された外光を除去し、明るい環境下であっても視認性を向上できる。
【0074】
本発明の偏光板に用いる偏光子フィルムに限定はなく、公知の偏光子フィルムを用いることができる。例えば、ヨウ素や二色性色素等をポリビニールアルコール等のポリマー中に分散し、延伸等によりヨウ素等を配向固定した偏光子フィルムを用いることが好ましい。本発明の偏光板の作製方法に限定はなく、公知の貼合方法、例えば市販の貼合機や貼合ロールを用いて前記偏光子フィルムと本発明の位相差付偏光子保護フィルムとを積層することができ、接着層を介して積層することができる。位相差付偏光子保護フィルムは、偏光子フィルムの片面または/および両面に積層することができる。接着層に限定はなく、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系などの公知の接着剤および粘着剤を用いることができ、光学的に等方的であることが好ましい。薄膜化の観点から、UV硬化型樹脂を用いた接着剤が好ましく、透明性、光学的等方性、対熱性、耐湿熱性の観点からアクリル系粘着剤が好ましい。
【0075】
本発明の偏光板は、表示装置に用いることができる。特に、VAモードの液晶表示装置に用いた場合、クロスニコルとなるよう配置された偏光板の偏光軸直交性の視野角依存性が抑制され、光漏れによるコントラスト低下が少なくすることができるため好ましい。本発明のVAモードの液晶表示装置は、本発明の偏光板を使用する以外は特に制限されず、従来公知の構成、配置が適用できる。
【実施例】
【0076】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、物性の測定は次の方法に従って行った。
【0077】
・ スチレン系オリゴマーの重量平均分子量・含有量
ゲル浸透クロマトグラフ(GPC:東ソー社製)に、示差屈折率計(RI:東ソー社製)を組み入れ、GPC装置でサイズ分別された溶液の屈折率差を、溶出時間を追って測定することにより、溶質の分子量を順次計算し、重量平均分子量を求めた。データ処理には、GPCデータ処理システム(東レリサーチセンター社製)を用いた。また、GPCで分取したスチレン系オリゴマーおよびポリエステル樹脂の重量を測定することにより、含有量を求めた。
【0078】
・ 波長分散・複屈折
下記測定器を用いて測定した。
【0079】
装置:自動複屈折計 KOBRA−21ADH/DSP (王子計測機器製)
サンプルホルダー:ADH−05−5(0.5mm以下)、φ5mm
吸収端波長:0nm
測定波長:480.4nm、548.3nm、628.2nm、752.7nm
測定モード:波長分散特性測定
入射角:0°
サンプル:1〜200μmのいずれかの厚みのフィルム。
【0080】
サンプルの厚み:フィルム厚みは5点測定し、その平均値を有効数字3桁で算出した。
【0081】
測定結果:波長λ(nm)の時の位相差をR(λ)(nm)と記載した。各サンプル5回測定を行い、その平均値を有効数字3桁で算出し、波長分散とΔNを導いた。
【0082】
波長分散:R(628.2)/R(548.3)、R(480.4)/R(548.3)より算出した。
【0083】
ΔN:R(548.3)(nm)/(フィルム厚み)(nm)より算出した。
【0084】
・ 溶融粘度
JIS−K7210−1976(参考試験)に準処して測定した。測定には、下記測定器、および条件にて行った。
【0085】
装置:フローテスター CFT−500(島津製作所製)
ダイの長さ:10mm
ダイの内径:1.0mm
予熱時間:5分
温度:270℃
荷重:10kgf、50kgfおよび100kgf
サンプル:5mm角に裁断したフィルム。
【0086】
サンプル調整:10−3Pa−1以下に減圧した真空乾燥機を用いて、100℃、24時間の乾燥を行った。
【0087】
測定結果:各荷重、3回測定を行った。せん断速度をx、溶融粘度をyとする。Y=lny、X=lnx、A=lnaとし、最小二乗法を用いて直線Y=AX+bを求めた。さらに、求めたAよりaを導き、累乗近似式y=axを用いて、せん断速度が100s−1の際の溶融粘度を算出した。
【0088】
・ 光弾性係数
下記測定器および測定方法にて測定した。
【0089】
装置:セルギャップ検査装置 RETS−1200(大塚電子株式会社製)
サンプル:または1〜200μmのいずれかの厚みのフィルム
サンプルサイズ:30mm×50mm
サンプル厚み:フィルム厚みは5点測定し、その平均値を有効数字3桁で算出しd(nm)とした。
【0090】
測定スポット径:φ5mm
光源:589nm
測定方法:サンプルの厚みをd(nm)とし、長手方向の両端を冶具で挟み、長手方向に9.8×10Paの応力σ(Pa−1)をかけた。この状態で、位相差R(nm)を測定した。
【0091】
測定結果:張力をかける前の位相差をR、かけた後の位相差をRとした。
【0092】
光弾性係数(Cσ):Cσ=(R―R)/(σ×d)より、光弾性係数(Cσ)(Pa−1)を計算した。5枚のフィルムを測定し、その平均値を有効数字2桁で算出した。
【0093】
・ ヘイズ
測定には、下記測定器および条件にて行った。
【0094】
装置:直読ヘーズメーターHGM−2DP(C光源用) (スガ試験機社製)
光源:ハロゲンランプ12V、50W
受光特性:395〜745nm
光学条件:JIS−K7105−1981に準拠
5枚のフィルムを測定し、その平均値を有効数字2桁で算出した。
【0095】
・ ガラス転移温度
測定には、下記測定器および条件にて行った。
【0096】
装置:示差走査熱量計 RDC220 ロボットDSC(セイコーインスツルメント社製)
測定条件:窒素雰囲気下
測定範囲:25〜300℃
昇温速度:20℃/分
サンプル:フィルム
サンプル量:5mg
測定結果:JIS−K7121−1987の9.3項の中間点ガラス転移温度の求め方に準処して、測定チャートの各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス単位の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度とした。測定は5回行い、その平均値を有効数字3桁で算出した。
【0097】
[ポリエステル樹脂の重合]
[参考例1]
(ポリエステル樹脂(1))
2,6−デカリンジカルボン酸ジメチル102質量部、エチレングリコール62質量部、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン153質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガンを0.15質量部添加し撹拌した。30分かけて200℃まで昇温し、さらに60分かけて235℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。その後、60分かけて200℃まで反応容器内の温度を下げ、cis-1,2,3,6‐テトラヒドロフタル酸を17質量部の割合で加えた。再び60分かけて235℃まで昇温し、触媒の失活剤としてトリメチルリン酸を0.04質量部加え、水を留去させた。
【0098】
二酸化ゲルマニウムを0.04質量部添加後、反応物を重合装置へ仕込み、装置内温度を90分かけて235℃から290℃まで昇温しながら、装置内圧力を常圧から真空へ減圧しエチレングリコールを留出させた。重合反応の進行にしたがって反応物の粘度が上昇し、撹拌トルクが0.2Nmとなった時点で反応を終了し、重合装置からポリエステルを水槽へ吐出した。吐出された樹脂は水槽で急冷後、カッターでチップとした。
【0099】
[参考例2]
(ポリエステル樹脂(2))
2,6−デカリンジカルボン酸ジメチル114質量部、エチレングリコール62質量部、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン153質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガンを0.15質量部添加し撹拌した。30分かけて200℃まで昇温し、さらに60分かけて235℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。その後、60分かけて200℃まで反応容器内の温度を下げ、cis-1,2,3,6‐テトラヒドロフタル酸を9質量部の割合で加えた。再び60分かけて235℃まで昇温し、触媒の失活剤としてトリメチルリン酸を0.04質量部加え、水を留去させた。その後は、参考例1と同様にしてポリステルのチップを得た。
【0100】
[参考例3]
(ポリエステル樹脂(3))
2,6−デカリンジカルボン酸ジメチル127質量部、エチレングリコール62質量部、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン175質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガンを0.15質量部添加し撹拌した。30分かけて200℃まで昇温し、さらに60分かけて235℃まで昇温し、触媒の失活剤としてトリメチルリン酸を0.04質量部加え、水を留去させた。その後は、参考例1と同様にしてポリステルのチップを得た。
【0101】
[参考例4]
(ポリエステル樹脂(4))
2,6−デカリンジカルボン酸ジメチル127質量部、スピログリコール61質量部、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン175質量部、エチレングリコール62質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガンを0.15質量部添加し撹拌した。30分かけて200℃まで昇温し、さらに60分かけて235℃まで昇温し、触媒の失活剤としてトリメチルリン酸を0.04質量部加え、水を留去させた。その後は、参考例1と同様にしてポリステルのチップを得た。
【0102】
[参考例5]
(ポリエステル樹脂(5))
1,4−シクロヘキサンカルボン酸ジメチル100質量部、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン175質量部、エチレングリコール62質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガンを0.15質量部添加し撹拌した。30分かけて200℃まで昇温し、さらに60分かけて235℃まで昇温し、触媒の失活剤としてトリメチルリン酸を0.04質量部加え、水を留去させた。その後は、参考例1と同様にしてポリステルのチップを得た。
【0103】
上記の参考例のポリエステル樹脂の組成を表1、表2にまとめた。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
[ポリエステル樹脂とスチレン系オリゴマーの混錬]
スチレン系オリゴマー(1):FTR−0100(重量平均分子量 1960:三井化学社製)
スチレン系オリゴマー(2):KRISTALEX−1120(重量平均分子量 2950:イーストマンケミカル社製)
スチレン系オリゴマー(3):KRISTALEX-5140(重量平均分子量 4800:イーストマンケミカル社製)
スチレン系オリゴマー(4):FMR−0150(重量平均分子量 2040:三井化学社製)
スチレン系オリゴマー(5):FTR−8120(重量平均分子量 1420:三井化学社製)
スチレン系オリゴマー(6):FTR−8080(重量平均分子量 790:三井化学社製)
[実施例1]
ポリエステル樹脂(1)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(1)を20wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(1)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0107】
得られた樹脂のチップを減圧乾燥した後、次のようなホットプレス法を用いて製膜した。金属板の上にポリイミドフィルムを重ね、そのポリイミドフィルム上に内側の枠が12cm四方である金属の枠を重ねた。金属の枠内の中央部にチップ2.5gを乗せた。さらにポリイミドフィルムと金属板を重ね、270℃で2分間予熱の後、10kgf/cmの圧力で10秒間プレスした。
【0108】
プレス終了後、フィルムを挟んだ金属板を水につけてフィルムを冷却固化し、金属枠からフィルムを切り出した。さらに切り出したフィルムを長方形に切り、長手方向の両端を保持して、110℃のオーブン中で、2.8倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0109】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0110】
[実施例2]
ポリエステル樹脂(1)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(1)を10wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(1)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0111】
その後は実施例1と同様にしてフィルムを得たのち、130℃のオーブン中で、2.7倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0112】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0113】
[実施例3]
ポリエステル樹脂(1)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(2)を10wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(1)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0114】
その後は実施例1と同様にしてフィルムを得たのち、125℃のオーブン中で、2.6倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0115】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0116】
[実施例4]
ポリエステル樹脂(2)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(1)を10wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(2)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0117】
その後は実施例1と同様にしてフィルムを得たのち、135℃のオーブン中で、2.6倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0118】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0119】
[実施例5]
ポリエステル樹脂(3)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(1)を10wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(2)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0120】
その後は実施例1と同様にしてフィルムを得たのち、140℃のオーブン中で、2.8倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0121】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0122】
[実施例6]
実施例1で得た1/4位相差フィルムとヨウ素系偏光板とを、粘着剤(綜研化学製SK−1478)を介して、貼合ロールを用いて貼合した。このとき偏光板の吸収軸と1/4位相差フィルムの遅相軸のなす角が45°になるよう円偏光板を作成した。円偏光板の貼り合わせ構成を、図1、図2に示す。
【0123】
作成した円偏光板を偏光板側が上側となるよう鏡の上に設置したところ、正面および斜めから見てもコントラストが高く、光漏れがないことを確認できた。
【0124】
[実施例7]
ポリエステル樹脂(1)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(3)を5wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(1)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0125】
その後は実施例1と同様にしてフィルムを得たのち、130℃のオーブン中で、2.0倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0126】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0127】
[実施例8]
ポリエステル樹脂(1)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(4)を20wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(1)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0128】
その後は実施例1と同様にしてフィルムを得たのち、115℃のオーブン中で、1.9倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0129】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0130】
[実施例9]
ポリエステル樹脂(1)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(5)を10wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(1)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0131】
その後は実施例1と同様にしてフィルムを得たのち、135℃のオーブン中で、2.5倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0132】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0133】
[実施例10]
ポリエステル樹脂(4)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(3)を20wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(1)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0134】
その後は実施例1と同様にしてフィルムを得たのち、125℃のオーブン中で、2.4倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0135】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0136】
[実施例11]
ポリエステル樹脂(4)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(5)を20wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(1)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0137】
その後は実施例1と同様にしてフィルムを得たのち、120℃のオーブン中で、2.5倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0138】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0139】
[実施例12]
ポリエステル樹脂(5)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(1)を10wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(1)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0140】
その後は実施例1と同様にしてフィルムを得たのち、120℃のオーブン中で、1.7倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0141】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0142】
[実施例13]
ポリエステル樹脂(5)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(2)を10wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(1)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0143】
その後は実施例1と同様にしてフィルムを得たのち、115℃のオーブン中で、2.3倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0144】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0145】
[実施例14]
ポリエステル樹脂(5)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(4)を10wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(1)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0146】
その後は実施例1と同様にしてフィルムを得たのち、110℃のオーブン中で、1.8倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0147】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0148】
[比較例1]
ポリエステル樹脂(1)を減圧乾燥した後、実施例1と同様にしてフィルムを得て、130℃のオーブン中で、2.9倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0149】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0150】
[比較例2]
ポリエステル樹脂(2)を減圧乾燥した後、実施例1と同様にしてフィルムを得て、130℃のオーブン中で、2.7倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0151】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0152】
[比較例3]
ポリエステル樹脂(3)を減圧乾燥した後、実施例1と同様にしてフィルムを得て、140℃のオーブン中で、2.5倍の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0153】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0154】
[比較例4]
ポリエステル樹脂(1)を減圧乾燥した後、スチレン系ゴム粒子(GS-0459S-6 ガンツバール ガンツ化成社製)を10wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(1)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0155】
その後は実施例1と同様にしてフィルムを得たが、フィルムが白濁しており、光学用フィルムとして適していないことがわかった。
【0156】
[比較例5]
ポリエステル樹脂(4)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(1)を添加しない他は実施例1と同様にしてフィルムを得て150℃のオーブン中で、2.2の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0157】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0158】
[比較例6]
ポリエステル樹脂(5)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(1)を添加しない他は実施例1と同様にしてフィルムを得て、125℃のオーブン中で、3.0の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0159】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0160】
[比較例7]
ポリエステル樹脂(1)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(3)を50wt%の含有量となるようポリエステル樹脂(1)とドライブレンドし、二軸押出機(KZW15TW-45HG テクノベル社製)を用い、押出温度260℃で、溶融混錬を行った。押出機からスチレン系オリゴマー含有ポリエステル樹脂を水槽へ吐出し急冷後、カッターでチップとした。
【0161】
得られたチップは白濁していたため、位相差フィルムとして適さないことがわかった。フィルムのTgの測定を行い、表3に示した。
【0162】
[比較例8]
ポリエステル樹脂(1)を減圧乾燥した後、スチレン系オリゴマー(6)を0.5wt%の含有量となるようにポリエステル樹脂(1)とドライブレンドした他は、実施例1と同様にしてフィルムを得て150℃のオーブン中で、2.2の延伸倍率で一軸延伸を行い、1/4波長位相差フィルムを得た。
【0163】
延伸したフィルムのTg、光弾性係数、溶融粘度、位相差、波長分散性の測定を行い、表3に示した。
【0164】
[円偏光板の光漏れの評価]
実施例6と同様の方法で得た円偏光板(円偏光板(1))、および比較例1で得た1/4位相差フィルムを実施例6と同様の方法で作成した円偏光板(円偏光板(2))を、偏光板側が上側となるよう、粘着剤(綜研化学製SK−1478)を介して、貼合ロールを用いてガラス板に貼合した。これを80℃のオーブンにいれ、24時間保管した。24時間保管前後の円偏光板を偏光板側が上側となるよう鏡の上に設置したところ、円偏光板(1)は正面から見て保管前後で光漏れ量に変化がなく位相差変化による光漏れが生じていないことを確認できた。一方、円偏光板(2)は保管前後の光漏れの量が異なっており、位相差変化による光漏れが生じたことを確認できた。
【0165】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の位相差フィルムは、光弾性係数が小さく、溶融粘度が低く、環境負荷が小さく、流動性、成形性、波長分散性に優れていることから、円偏光板および表示装置、特に反射型および半透過型液晶ディスプレイの直線偏光の円偏光への変換などの用途や有機ELディスプレイに対する表面反射の抑制のための反射防止用フィルムとして、有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】円偏光板の構成を示した図である。
【図2】円偏光板の構成を示した図である。
【符号の説明】
【0168】
1:偏光板
2:接着層
3:1/4位相差フィルム
4:偏光板の吸収軸
5:1/4位相差フィルムの遅相軸
6:偏光板の吸収軸と1/4位相差フィルムの遅相軸のなす角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が1000〜10000であるスチレン系オリゴマーを1〜40重量%含有するポリエステル樹脂からなるフィルムであり、波長λ(nm)の光に対するフィルム面内の位相差をR(λ)(nm)としたとき、R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)が1.0以上、1.2以下であり、R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)が0.8以上、1.0以下である位相差フィルム。
【請求項2】
光弾性係数が−24×10−12 Pa−1以上、24×10−12Pa−1以下である請求項1に記載の位相差フィルム。
【請求項3】
ポリエステル樹脂の溶融粘度が、温度が270℃、せん断速度100s−1において10Pa・s以上、1000Pa・s以下である請求項1または2記載の位相差フィルム。
【請求項4】
ヘイズが3.0%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項5】
波長548.3nmにおける複屈折をΔNとしたとき、ΔNが1.0×10−3以上、20×10−3以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項6】
下記化学式(1)および(2)で表される構造単位を含むポリエステル樹脂からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【化1】

ただし、式中のRは同一または異なる炭素数1〜4のアルキレン基であり、pは0〜3の整数を示す。R、Rは同一または異なる炭素数1〜30のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示し、q、rは0〜4の整数を示す。
【化2】

また、式中のXは、炭素数1〜50のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基を示す。
【請求項7】
下記化学式(3)および(4)で表される構造単位を含むポリエステル樹脂からなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【化3】

ただし、式中のRは同一または異なる炭素数1〜30のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示し、mは0〜4の整数を示す。
【化4】

また、式中のYは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、エーテル基の単一、またはこれらの複数の組み合わせからなり、炭素数1〜50、酸素数0〜10を示す。
【請求項8】
上記化学式(4)および下記化学式(5)で表される構造単位を含むポリエステル樹脂からなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【化5】

ただし、式中のRは同一、または異なる炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示し、nは0〜6の整数を示す。
【請求項9】
上記化学式(1)、(3)、(5)、下記化学式(6)で表される構造単位を含み、化学式(1)、(3)、(5)、(6)のモル分率(%)をそれぞれa〜dとしたとき、次式(A)、(B)を満たしているポリエステル樹脂からなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【化6】

ただし、式中のR6はアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、エーテル基の単一、またはこれらの複数の組み合わせからなり、炭素数1〜50、酸素数0〜10を示す。
80 ≦ a + b + c + d ≦ 100・・・(A)
−0.4c + 40 < a<0.5c + 20・・・(B)
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の位相差フィルムを用いた円偏光板。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の位相差フィルムを用いた位相差付偏光子保護フィルム。
【請求項12】
請求項11に記載の位相差付偏光子保護フィルムを用いた偏光板。
【請求項13】
請求項10に記載の円偏光板を用いた表示装置。
【請求項14】
反射型または半透過型液晶表示装置請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
有機EL表示装置である請求項13に記載の表示装置。
【請求項16】
請求項12に記載の偏光板を用いた表示装置。
【請求項17】
請求項16に記載のVAモードの液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−98648(P2009−98648A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231005(P2008−231005)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】