説明

位相差フィルムの製造方法

【課題】本発明の目的は、液晶層の配向ムラの小さい位相差フィルムの製造方法を提供することにある。
【解決手段】透明フィルム上に、棒状の液晶を垂直に配向させて配向を固定した光学異方性層を有してなる位相差フィルムの製造方法において、該液晶を含む塗布液を透明フィルム上に塗布乾燥し液晶層を塗設する工程、該液晶層を、液晶層を形成する液晶の固体−液晶相転移温度以上液晶相−等方性液体相転移温度以下に加熱する工程、該加熱する工程において、形成した液晶層の液晶の複屈折Δnが最大値を示す前に10〜150℃/秒の割合で液晶温度を固体−液晶相転移温度以下に冷却する工程、とを有することを特徴とする位相差フィルムの製造方法によって達成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶からなる光学異方性層を有する位相差フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、視野角等の光学特性を改善するために光学補償フィルムが使用されており、その光学補償フィルムとしては、延伸処理して所望の複屈折性を調整可能な樹脂フィルムが主に使用されてきた。
【0003】
しかしながら、液晶表示装置の使用分野が拡大するにつれ、高温高湿、急激な温湿度変化等の環境変化への対応も重要となり、その点で有利な重合性液晶層を支持体フィルム上に有する光学補償フィルムの検討がされてきた(特許文献1)。
【0004】
重合性液晶層の作製については、その配向度を高めその状態を維持したままで固定することが課題であり、そのため、液晶の配向工程、固定工程について多くの検討がされているが、その中でもディスコティック液晶分子を水平またはハイブリッド配向させる技術については多くが開示されている(特許文献2、3、4)。
【0005】
しかしながら、液晶分子を水平またはハイブリッド配向させるには、ポリイミド等の配向膜を利用するという有力な方法があったが、垂直配向させるには液晶分子の構造による寄与が大きかったため(非特許文献1)、長い配向時間を必要とする、配向度の均一度が低い(配向ムラを発生する)等の課題があった。
【特許文献1】特開平8−50206号公報
【特許文献2】特開平10−293210号公報
【特許文献3】特開2000−9936号公報
【特許文献4】特開2005−55486号公報
【非特許文献1】機能材料 2007年4月号 VOL.27 No.4 第28〜33頁「重合性液晶による光学フィルムと応用」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、生産性の高い棒状の液晶を垂直に配向させて配向を固定した光学異方性層を有してなる位相差フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、下記によって達成された。
1.透明フィルム上に、棒状の液晶を垂直に配向させて配向を固定した光学異方性層を有してなる位相差フィルムの製造方法において、該液晶を含む塗布液を透明フィルム上に塗布乾燥し液晶層を塗設する工程、該液晶層を、液晶層を形成する液晶の固体−液晶相転移温度以上液晶相−等方性液体相転移温度以下に加熱する工程、該加熱する工程において、形成した液晶層の液晶の複屈折Δnが最大値を示す前に10〜150℃/秒の割合で液晶温度を固体−液晶相転移温度以下に冷却する工程、とを有することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、生産性が高く、位相差の均一な位相差フィルムを製造するこごができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<本発明の位相差フィルム>
本発明の製造方法に係る位相差フィルムは、透明フィルムの上に棒状の液晶を垂直に配向させて配向を固定した光学異方性層を設けた位相差フィルムである。
【0010】
液晶の分子構造によっては、透明フィルムと液晶層の間に一層以上の中間層を設けることも可能である。この中間層は、液晶分子の垂直配向を助ける作用を有している。
【0011】
なお、本明細書中、直交、平行とは、それぞれ厳密な角度±15度の範囲内にあることをいう。
<本発明の位相差フィルムの製造方法>
本発明に係る位相差フィルムの製造方法は、
第一工程:液晶を含む塗布液を透明フィルム上に塗布乾燥し液晶層を塗設する工程、
第二工程:該液晶層を、液晶層を形成する液晶の固体−液晶相転移温度以上液晶相−等方性液体相転移温度以下に加熱する工程、
第三工程:該加熱する工程において、形成した液晶層の液晶の複屈折Δnが最大値を示す前に10〜150℃/秒の割合で液晶温度を固体−液晶相転移温度以下に冷却する工程、
とを少なくとも有している。
【0012】
通常、固体−液晶相転移温度では、異方性結晶状態であった液晶分子が異方性液体となり、液晶相−等方性液体相転移温度では、異方性液体であった液晶が等方性液体へと相転移する。
【0013】
通常の液晶層を有する位相差フィルムの製造方法においては、下記の工程を有する。
第一工程:液晶を含む塗布液を透明フィルム上に塗布乾燥し液晶層を塗設する工程、
第二工程:該液晶層を、液晶層を形成する液晶の固体−液晶相転移温度以上液晶相−等方性液体相転移温度以下に加熱し、その温度を維持することによってΔnが最大値の液晶層を作製する工程、
第三工程:第二工程で形成されたΔnが最大値の液晶層を固定化するために、液晶層の温度を固体−液晶相転移温度以下に冷却する工程、
そして、その後、本発明と共通する冷却された状態のまま紫外線等により液晶の配向状態を固定化する工程を有している。
【0014】
本発明の特徴は、第二工程と第三工程が通常の製造方法と異なるところにある。
【0015】
本発明において第二工程では、液晶層を形成する液晶の固体−液晶相転移温度以上液晶相−等方性液体相転移温度以下に加熱はするが、その温度を維持して液晶の配向をΔnが最大値まで成長させることはしない。
【0016】
本発明は第二工程で、所定の温度に加熱した後は、液晶層がΔnが最大値に達する前に第三工程に移動し、そこで10〜150℃/秒の割合で液晶温度を固体−液晶相転移温度以下に冷却させることにより、この冷却工程で液晶の配向を成長させ、Δnが最大値の液晶層を作製する。
【0017】
ここでΔnが最大値を示す前とは、Δnの最大値の99%以下であることをいう。
【0018】
本発明において、固体−液晶相転移温度および液晶相−等方性液体相転移温度は下記の通り測定した、昇温過程での温度である。
【0019】
測定機器:示差走査熱量計セイコーインスツルメンツ(株)製DSC6200
試料 :10mg
昇温速度:10℃/min 150℃にて冷却
測定雰囲気:不活性ガス中
本発明では、第二工程において一定の温度を維持しなくても、急速な冷却よって液晶の配向が成長することを見出したことを特徴とする。
【0020】
これまでの急速冷却工程は、配向した液晶を固定化するために急速な冷却を行い、紫外線等による重合固定化まで液晶を動かさないようにすることを目的としていた。
【0021】
しかしながら、本発明の急速冷却工程は、液晶の配向を最大なものとすることを目的としている。
【0022】
この製造方法は、棒状の液晶分子に特に適用することができる方法であり、棒状の液晶による重合性液晶層を短時間に作製する場合に有効な製造方法である。
【0023】
このような製造方法が可能である理由として、下記のように推定している。
【0024】
液晶の配向については、経験的に液晶の表面張力>塗布面の臨界表面張力の場合に垂直配向が促進されるとされている(「液晶の化学 3配向制御の化学」 季刊化学総説No22、1994 学会出版センター参照)。
【0025】
本発明の場合では、温度が下がるにつれて一般に表面張力は上昇するが、液晶の表面張力が急速冷却によっていきなり上昇し、そのため液晶の垂直配向を促す力が急激に作用し、配向が成長することとなったと考えている。
【0026】
本発明において、第二工程でΔnが0.01〜0.1になったところで、第三工程に移動するのが好ましい。この配向度は、Δnが最大値の0.1〜60%に該当する。
【0027】
なお、Δnは、複屈折装置複屈折測定装置(王子計測 KOBRA−31ADR)にて測定したRtと、光干渉式膜厚測定装置によって測定した膜厚によって算出した。
【0028】
第三工程においては、10〜150℃/秒の割合で液晶層の温度を昇温過程での固体ー液体相転移温度以下に冷却させる。好ましくは、10〜50℃/秒である。
【0029】
本来、冷却速度は早ければ早いほどよいが、冷却ドラムの均一性の観点から上記範囲が好ましい。
【0030】
この冷却のためには、内部から冷媒により冷却された金属ローラーに接触させる方法が均一に冷却するという点で最も好ましいが、上述に定義する所望の冷却条件を満たす手段であればこの方法に限定されるものではない。
【0031】
このようにして作製された液晶層は、冷却された状態のまま紫外線等により液晶の配向状態を固定化する工程に移動し、最終的な異方性層とされる。
【0032】
《透明フィルム》
本発明の液晶層を塗設するための透明フィルムとしては、光学用途として使用することができる全ての透明フィルムを使用することができるが、セルロースエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルムおよびポリアクリレートフィルム、ポリシクロオレフィンフィルムから選ばれるものが好ましい。
【0033】
市販のセルロースエステルフィルムとしては、例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC(以上コニカミノルタオプト(株)製)を挙げることができる。
【0034】
市販のポリシクロオレフィンフィルムとしては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0035】
市販のポリカーボネートフィルムとしては、
透明フィルムとして光学的に二軸性のフィルムを使用する場合は、下記の特性を有することが好ましい。
【0036】
〔光学的に二軸性の透明フィルム〕
ここで、光学的に二軸性の透明フィルムとは、フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸に直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、nx>ny>nzであるような性質を有する透明フィルムをいう。
【0037】
透過率:80%以上
膜厚 :20〜70μm
40nm≦Ro≦330nm
50nm≦Rt≦340nm
1.1≦Rt/Ro≦10
なお、Ro、Rtの測定波長は590nm、Ro=(nx−ny)×d、Rt={(nx+ny)/2−nz}×dであり、dは透明フィルムの膜厚(nm)を表す。
【0038】
例えば、セルロースエステルフィルムの二軸性を調整するためには、下記数式(1)で表される棒状分極率異方性が300×10-25cm3以上2000×10-25cm3以下であり分子の末端間距離が2nm以上10nm以下の化合物、数式(2)で表される平面分極率異方性が300×10-25cm3以上1500×10-25cm3以下であり分子の末端間距離が2nm以上10nm以下の化合物、アクリル系重合体、およびピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物、を少なくとも一種含有するセルロースエステルフィルムであることが好ましい。
【0039】
数式(1):Δα=αx−(αy+αz)/2
数式(2):Δα=(αx+αy)/2−αz
(式中、αxは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最大の成分であり;αyは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、二番目に大きい成分であり;αzは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最小の成分である。)
〈数式(1)または(2)で表される化合物〉
本発明の数式(1)または(2)で表される化合物は、いわゆるセルロースエステルのレターデーションを上昇させるレターデーション上昇剤として作用する。
【0040】
本発明のレターデーション上昇剤の末端間距離は、その機能発現のためには2nm以上10nm以下であることが必要である。
【0041】
末端間距離は、分子軌道法又は密度汎関数法を用いた計算によって、最適化された分子構造より求めることができる。
【0042】
本発明で使用するレターデーション上昇剤は2種類に大別される。第1は、分子の棒状分極率異方性が大きい数式(1)で表されるタイプのものであり、第2は分子の平面分極率異方性が大きい数式(2)で表されるものである。
【0043】
これらの化合物については、特開2006−193724号公報に記載の化合物を参考にすることができる。
【0044】
分子の平面分極率異方性の大きいレターデーション上昇剤は、少なくともその1種を、セルロースに対して0.1〜30質量%添加することが必要であり、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%である。2種類以上を用いる場合には、その合計量が、上記の範囲を満たしていることが好ましい。
【0045】
また、本発明の分子の棒状分極率異方性の大きいレターデーション上昇剤と、分子の平面分極率異方性の大きいレターデーション上昇剤は、併用して使用するとブリードアウトがより効果的に抑制され、特に好ましい。
【0046】
併用する場合には、その合計量が、上記の1種類の場合と同じ数値範囲を満たしていることが好ましい。これらレターデーション上昇剤の混合比は、分子の棒状分極率異方性の大きいレターデーション上昇剤1質量部に対して、平面分極率異方性の大きいレターデーション上昇剤0.01〜100質量部が好ましく、0.1〜10質量部がさらに好ましい。
【0047】
〈アクリル系重合体〉
本発明では、アクリル系重合体をセルロースエステルフィルムに添加する。なお、ここでアクリル系重合体にはメタクリル系重合体も含まれる。
【0048】
本発明に用いられるアクリル系重合体としては、セルロースエステルフィルムに含有させた場合、機能として延伸方向に対して負の複屈折性を示すことが好ましく、特に構造が限定されるものではないが、エチレン性不飽和モノマーを重合して得られた重量平均分子量が500以上30000以下である重合体であることが好ましい。
【0049】
重合体のセルロースエステルフィルム中での含有量は、セルロースエステル全質量に対し、総量として5質量%以上であれば、レターデーション値Rtの調整に十分な作用をする。
【0050】
重合体は、後述するドープ液を構成する素材として直接添加、溶解するか、もしくはセルロースエステルを溶解する有機溶媒に予め溶解した後ドープ液に添加することができる。
【0051】
〈ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物〉
本発明のセルロースエステルフィルムは、ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物を含むことを特徴とする。
【0052】
エステル化の割合としては、ピラノース構造またはフラノース構造内に存在するOH基の70%以上であることが好ましい。
【0053】
本発明においては、エステル化合物を総称して、糖エステル化合物とも称す。
【0054】
本発明のエステル化合物の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、或いはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース或いはケストース挙げられる。
【0056】
このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
【0057】
これらの化合物の中で、特にピラノース構造とフラノース構造を両方有する化合物が好ましい。
【0058】
例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。
【0059】
本発明のセルロースエステルフィルムは、位相差値の変動を抑制して、表示品位を安定化する為に、本発明のエステル化合物を、セルロースエステルフィルムの1〜30質量%含むことが好ましく、特には、5〜30質量%含むことが好ましい。
【0060】
〈セルロースエステル〉
本発明のセルロースエステルとしては特に限定はないが、セルロースエステルとして炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、芳香族カルボン酸のエステルでもよく、特に炭素数が6以下の低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0061】
水酸基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐してもよく、また環を形成してもよい。更に別の置換基が置換してもよい。同じ置換度である場合、前記炭素数が多いと複屈折性が低下するため、炭素数としては炭素数2〜6のアシル基の中で選択することが好ましい。前記セルロースエステルとしての炭素数が2〜4であることが好ましく、炭素数が2〜3であることがより好ましい。
【0062】
具体的には、セルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基またはブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルを用いることができる。
【0063】
尚、ブチレートを形成するブチリル基としては、直鎖状でも分岐していてもよい。本発明において好ましく用いられるセルロースエステルとしては、特にセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレートが好ましく用いられる。
【0064】
本発明に好ましいセルロースアセテートフタレート以外のセルロースエステルとしては、下記式(1)及び(2)を同時に満足するものが好ましい。
【0065】
式(1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(2) 0≦Y≦1.5
式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基またはブチリル基、もしくはその混合物の置換度である。
【0066】
また、目的に叶う光学特性を得るために置換度の異なる樹脂を混合して用いても良い。混合比としては100:0〜50:50(質量比)が好ましい。
【0067】
この中で特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。セルロースアセテートプロピオネートでは、1.0≦X≦2.5であり、0.1≦Y≦1.5、2.0≦X+Y≦3.0であることが好ましい。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
【0068】
本発明に用いられるセルロースエステルの数平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。更に70000〜200000のものが好ましく用いられる。
【0069】
セルロースエステルの重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
【0070】
またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。
【0071】
本発明のセルロースエステルは、公知の方法により製造することができる。具体的には特開平10−45804号に記載の方法を参考にして合成することができる。
【0072】
〈その他の添加剤〉
(可塑剤)
本発明のセルロースエステルフィルムは、本発明の効果を得る上で必要に応じて可塑剤を含有することができる。
【0073】
可塑剤は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤及び多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。
【0074】
そのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
【0075】
(紫外線吸収剤)
本発明に係るセルロースエステルフィルムBは、紫外線吸収剤を含有することもできる。
【0076】
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
【0077】
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、偏光板保護フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、偏光板保護フィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
【0078】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に液晶画像表示装置などがおかれた場合には、セルロースエステルフィルムの劣化が起こる場合がある。
【0079】
酸化防止剤は、例えば、セルロースエステルフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースエステルフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、前記セルロースエステルフィルム中に含有させるのが好ましい。
【0080】
これらの化合物の添加量は、セルロース誘導体に対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0081】
(微粒子)
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、微粒子を含有することが好ましい。
【0082】
本発明に使用される微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
【0083】
各種添加剤は製膜前のセルロースエステル含有溶液であるドープにバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。特に微粒子は濾過材への負荷を減らすために、一部または全量をインライン添加することが好ましい。
【0084】
添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープとの混合性をよくするため、少量のセルロースエステルを溶解するのが好ましい。好ましいセルロースエステルの量は、溶剤100質量部に対して1〜10質量部で、より好ましくは、3〜5質量部である。
【0085】
本発明においてインライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
<中間層>
本発明においては、透明フィルムと液晶層の間に液晶の垂直配向を補助するような中間層を設けることができる。
【0086】
本発明の中間層は、透明樹脂で構成される。透明樹脂は、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることが更に好ましい。
【0087】
特に好ましくは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂、あるいは架橋剤と反応部位を有する樹脂との混合組成物である。
【0088】
硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等の紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましく用いられる。
【0089】
紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物をさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。
【0090】
例えば、特開昭59−151110号号公報に記載のものを用いることができる。例えば、紫光UV−7510B(日本合成化学(株)製)、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
【0091】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
【0092】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることができる。
【0093】
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
【0094】
これら硬化性樹脂の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。
【0095】
また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。
【0096】
硬化性樹脂組成物に用いられる光重合開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜25質量部であり、好ましくは1〜15質量部である。
【0097】
アクリレート系樹脂としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
【0098】
これらの市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)、NKハードB−420、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E(新中村化学工業(株)製)等を適宜選択して利用できる。
【0099】
また、その他として、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジオキサングリコールアクリレート、エトキシ化アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
【0100】
本発明の架橋剤と反応部位を有する樹脂の混合組成物としては、例えばポリビニルアルコールとグリオキザール、ゼラチンとグリオキザール等が挙げられる。
【0101】
また、中間層には、フッ素−アクリル共重合体樹脂を含有しても良い。フッ素−アクリル共重合体樹脂とは、フッ素単量体とアクリル単量体とからなる共重合体樹脂で、特にフッ素単量体セグメントとアクリル単量体セグメントとから成るブロック共重合体が好ましい。
【0102】
〈中間層の製造方法〉
中間層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法を用いて、本発明のレターデーション上昇剤を含有する中間層を形成する塗布組成物を塗布し、支持体上に塗布後、加熱乾燥し、UV硬化処理することが好ましい。
【0103】
塗布量はウェット膜厚として0.1〜40μmが適当で、好ましくは、0.5〜30μmである。
【0104】
また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.01〜1μm、好ましくは0.02〜0.7μmである。
【0105】
上記UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0106】
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm2、好ましくは5〜150mJ/cm2である。
【0107】
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、さらに好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。
【0108】
張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによってさらに平面性優れたフィルムを得ることができる。
【0109】
中間層を形成する塗布組成物には溶媒が含まれていてもよい。塗布組成物に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒からも適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。
【0110】
有機溶媒としては、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等が好ましい。また、有機溶媒の含有量としては塗布組成物中、5〜80質量%が好ましい。
《棒状の液晶を垂直に配向させて配向を固定した光学異方性層》
本発明の光学異方性層は、下記特性を有することが好ましい。
【0111】
0≦Ro≦10
−500≦Rt≦−100
本発明の光学異方性層は、液晶材料もしくは液晶の溶液を透明フィルム上に直接、または中間層上に塗布し、乾燥と熱処理(配向処理ともいう)を行い紫外線硬化もしくは熱重合などで液晶配向の固定化を行い、垂直方向に配向した棒状液晶による位相差層を有することが特徴である。
【0112】
ここで垂直方向に配向するとは、棒状液晶が支持体となるフィルム面に対して70〜90°(垂直方向を90°とする)の範囲内にあることをいう。
【0113】
棒状液晶は、斜め配向しても、配向角を徐々に変化していてもよい。好ましくは80〜90°の範囲である。
【0114】
本発明の棒状液晶層はRoが0〜10nm、Rtが−500〜−100nmの範囲にある垂直方向に配向した棒状液晶による位相差層である。更にRoは0〜5nmの範囲がより好ましい。
【0115】
棒状液晶を配向させて棒状液晶層を形成する際には、いわゆる液晶材料が垂直方向に配列するような垂直配向剤を塗布した配向膜を用い、液晶材料を垂直配向したのち固定する方法をとることができる。
【0116】
液晶材料自身が空気界面で垂直方向に配向する場合には、その配向規制力が空気界面と反対の界面まで及び、該配向膜は特に必要ではなく、構成が簡素化できる観点からもその方が好ましい。
【0117】
液晶材料を垂直に配向する具体的な方法としては、特開2005−148473号公報などに記載されている(メタ)アクリル系ブロックポリマーを含有するブロックポリマー組成物の架橋体からなる配向膜等を用いる方法、同2005−265889号公報に記載されている垂直配向膜を使用する方法、空気界面垂直配向剤を使用する方法等公知の方法を使用することができる。
【0118】
棒状液晶層を上記範囲とするためには、棒状液晶層の配向、膜厚制御、紫外線硬化時の温度、チルト角制御、および支持体と空気界面でのプレチルト角の制御を行うことが好ましい。
【0119】
前記液晶層は、所定の温度で液晶相となり得る液晶材料が、所定の液晶規則性を有して硬化することにより形成されたものである。液晶相を示す温度の上限は、例えば基材のセルロースエステルフィルムがダメージを受けない温度であれば特に限定されるものはない。
【0120】
具体的には、プロセス温度のコントロールの容易性と寸法精度維持の観点から120℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以下の温度で液晶相となる液晶材料が好適に用いられる。一方、液晶相を示す温度の下限は、偏光板として用いる際に、液晶材料が配向状態を保持し得る温度であるといえる。
【0121】
本発明の棒状液晶層に用いられる液晶材料としては、重合性液晶材料を用いることが好ましい。重合性液晶材料は、所定の活性放射線を照射することにより重合させて用いることができ、重合させた状態では垂直の配向状態は固定化される。
【0122】
重合性液晶材料としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、もしくは重合性液晶ポリマーのいずれかを用いることができ、相互に混合して用いることもできる。
【0123】
重合性液晶材料としては、上記のうちでも、配向に際しての感度が高く垂直に配向させることが容易であることから重合性液晶モノマーが好適に用いられる。
【0124】
具体的な重合性液晶モノマーとしては、下記の一般式(1)で表される棒状液晶性化合物(I)、および下記の一般式(2)で表される棒状液晶性化合物(II)を挙げることができる。化合物(I)としては、一般式(1)に包含される化合物の2種以上を混合して使用することもでき、同様に、化合物(II)としては、一般式(2)に包含される化合物の2種以上を混合して使用することもできる。また、化合物(I)を1種以上と化合物(II)を1種以上を混合して使用することもできる。
【0125】
【化1】

【0126】
【化2】

【0127】
化合物(I)を表す一般式(1)において、R1およびR2はそれぞれ水素またはメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR1およびR2は共に水素であることが好ましい。
【0128】
Xは水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、もしくはニトロ基のいずれであっても差し支えないが、塩素またはメチル基であることが好ましい。
【0129】
また、化合物(I)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と、芳香環とのスペーサであるアルキレン基の鎖長を示すaおよびbは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数を取り得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。
【0130】
以上の他、本発明においては、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマーとして、従来提案されている公知の材料を適宜選択して用いることが可能である。
【0131】
例えば、重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、特開2001−328973号公報、特開2004−240188号公報、特開2005−99236号公報、特開2005−99237号公報、特開2005−121827号公報、特開2002−30042号公報などに記載の化合物を用いることができる。
【0132】
本発明においては、重合性液晶材料に加え、必要に応じて光重合開始剤を使用する。電子線照射により重合性液晶材料を重合させる際には、光重合開始剤が不要な場合があるが、一般的に用いられている例えば紫外線(UV)照射による硬化の場合においては、通常光重合開始剤が重合促進のために用いられる。
【0133】
光重合開始剤としては、ベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、もしくは1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。
【0134】
光重合開始剤の添加量としては、一般的には0.01%〜20%が好ましく、より好ましくは0.1%〜10%であり、もっと好ましくは0.5%〜5%の範囲で、本発明の重合性液晶材料に添加することができる。
【0135】
尚、光重合開始剤の他に、本発明の目的が損なわれない範囲で増感剤を添加することも可能である。
【0136】
本発明における液晶層の膜厚は0.1μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、0.2〜5μmの範囲内であることがより好ましい。
【0137】
重合性液晶材料は、必要に応じて光重合開始剤、増感剤等を配合して液晶層形成用組成物を調製して用い、基材上に塗工し、液晶層形成用層を形成する。
【0138】
液晶の配向を固定した層を形成する方法としては、例えばドライフィルム等を予め形成してこれを液晶の配向を固定した層としたものを基材上に積層する方法や、液晶組成物を溶解あるいは融解させて基材上に塗工する方法等をとることも可能であるが、本発明においては、液晶組成物としては溶媒を加えて、その他の成分を溶解した塗工用組成物を用いて基材上に塗工し、溶媒を除去することにより液晶の配向を固定した層を形成することが好ましい。これは、他の方法と比較して工程上簡便である。
【0139】
溶媒としては、上述した重合性液晶材料等を溶解することが可能な溶媒であり、かつ透明樹脂フィルムの性状を低下させない溶媒であれば特に限定されるものではなく、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類;メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、もしくは2,4−ペンタンジオン等のケトン類;酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、もしくはγ−ブチロラクトン等のエステル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、もしくはジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、もしくはオルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、もしくはブチルセルソルブ等のアルコール類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等の1種または2種以上が使用可能である。
【0140】
単一種の溶媒を使用しただけでは、重合性液晶材料等の溶解性が不充分であったり、上述したように基材が侵食される場合がある。しかし2種以上の溶媒を混合使用することにより、この不都合を回避することができる。
【0141】
上記した溶媒のなかにあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素系溶媒とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいのは、エーテル類またはケトン類と、グリコール類との混合系である。
【0142】
溶液の濃度は、重合性液晶材料等の溶解性や製造しようとする液晶層の膜厚に依存するため一概には規定できないが、通常は1%〜60%が好ましく、より好ましくは3%〜40%の範囲で調整される。
【0143】
本発明に用いられる液晶層形成用組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、上記以外の化合物を添加することができる。
【0144】
添加できる化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族もしくは脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物、またはアクリル基もしくはメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物、特開2007−45993号公報に記載のオニウム塩、フッ化アクリレートポリマー等が挙げられる。
【0145】
本発明の液晶層形成用組成物に対するこれら化合物の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で選択され、一般的には、本発明の液晶層形成用組成物の40%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。
【0146】
これらの化合物の添加により、本発明における液晶材料の硬化性が向上し、得られる液晶層の機械強度が増大し、またその安定性が改善される。
【0147】
また、溶剤を配合した液晶層形成用組成物には、塗工を容易にするために界面活性剤等を加えることができる。
【0148】
添加可能な界面活性剤を例示すると、イミダゾリン、第四級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体等の陽イオン系界面活性剤;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、第一級あるいは第二級アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族あるいは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン系界面活性剤;ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン等の両性系界面活性剤;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン系界面活性剤;パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル・親油基含有オリゴマーパーフルオロアルキル基含有ウレタン等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0149】
界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、液晶材料の種類、溶媒の種類、さらには溶液を塗工する配向膜の種類にもよるが、通常は溶液に含まれる重合性液晶材料の10ppm〜10%が好ましく、より好ましくは100ppm〜5%であり、もっと好ましくは0.1〜1%の範囲である。
【0150】
液晶層形成用組成物を塗工する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、もしくは押し出しコート法等が挙げられる。
【0151】
液晶層形成用組成物を塗工した後、溶媒を除去する方法としては、例えば、風乾、加熱除去、もしくは減圧除去、さらにはこれらを組み合わせる方法等により行われる。溶媒が除去されることにより、液晶の配向を固定した層が形成される。
【0152】
重合性液晶材料を硬化させる工程では、重合性液晶材料を硬化させるためのエネルギーが与えられ、熱エネルギーでもよいが、通常は、重合を起こさせる能力がある電離放射線の照射によって行う。
【0153】
必要であれば重合性液晶材料内に重合開始剤が含まれていてもよい。電離放射線としては、重合性液晶材料を重合せさることが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光線が使用され、波長が150〜500nmの光が好ましく、より好ましくは250〜450nmであり、より好ましくは300〜400nmの波長の紫外線である。
【0154】
本発明においては、紫外線(UV)を活性放射線として照射し、紫外線で重合開始剤からラジカルを発生させ、ラジカル重合を行わせる方法が好ましい。活性放射線としてUVを用いる方法は、既に確立された技術であることから、用いる重合開始剤を含めて、本発明への応用が容易である。
【0155】
この紫外線を照射するための光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、もしくはショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)等を挙げることができる。
【0156】
なかでもメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ灯等の使用が推奨される。照射強度は、液晶の配向を固定した層の形成に用いられる重合性液晶材料の組成や光重合開始剤の多寡によって適宜に調整すればよい。
【0157】
活性放射線の照射による配向固定化工程は、上述した液晶層形成用層を形成する工程における処理温度、すなわち重合性液晶材料が液晶相となる温度条件で行ってもよく、また液晶相となる温度より低い温度で行ってもよい。
<本発明の位相差フィルムを偏光板保護フィルムとして使用した偏光板>
本発明の位相差フィルムは、偏光膜と偏光膜を挟む2枚の偏光板保護フィルムとからなる偏光板において、該偏光板保護フィルムの少なくとも一枚とすることができる。
【実施例】
【0158】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0159】
実施例1
<位相差フィルム試料1の作製>
(アクリルポリマーXの合成)
特開2000−344823号公報に記載の重合方法により塊状重合を行った。すなわち、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、投入口及び環流冷却管を備えたフラスコに下記メチルアクリレートとルテノセンを導入しながら内容物を70℃に加熱した。
【0160】
次いで、充分に窒素ガス置換した下記β−メルカプトプロピオン酸の半分を攪拌下フラスコ内に添加した。β−メルカプトプロピオン酸添加後、攪拌中のフラスコ内の内容物を70℃に維持し2時間重合を行った。
【0161】
更に、窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸の残りの半分を追加添加後、更に攪拌中の内容物の温度が70℃に維持し重合を4時間行った。反応物の温度を室温に戻し、反応物に5質量%ベンゾキノンのテトラヒドロフラン溶液を20質量部添加して重合を停止させた。
【0162】
重合物をエバポレーターで減圧下80℃まで徐々に加熱しながらテトラヒドロフラン、残存モノマー及び残存チオール化合物を除去してポリマーYを得た。重量平均分子量は1000であった。
【0163】
メチルアクリレート 100質量部
ルテノセン(金属触媒) 0.05質量部
β−メルカプトプロピオン酸 12質量部
(添加液A)
アエロジル200V(日本アエロジル(株)製) 2質量部
(一次粒子の平均径12nm、見掛け比重100g/リットル)
エタノール 18質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は100ppmであった。二酸化珪素分散液に18質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液Aを作製した。
【0164】
(セルロースエステル用ドープ液)
セルロースエステル(総置換度2.48,プロピオニル置換度0.82)
100質量部
アクリルポリマーX 2.5質量部
スクロースオクタベンゾエート 10質量部
メチレンクロライド 400質量部
エタノール 62質量部
添加液A 2質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液Aを調製した。製膜ライン中で日本精線(株)製のファインメットNFでドープ液を濾過した。
【0165】
33℃に温度調整したドープ液を、ダイに送液して、ダイスリットからステンレスベルト上に均一に流延した。ステンレスベルトの流延部は裏面から37℃の温水で加熱した。流延後、金属支持体上のドープ膜(ステンレスベルトに流延以降はウェブという)に44℃の温風をあてて乾燥させ、剥離の残留溶媒量が120質量%で剥離した。
【0166】
剥離の際の張力をかけて流延方向に1.1倍の延伸倍率となるように延伸した。
尚、フィルムの膜厚はドープの流量を調整し、剥離残溶はステンレスベルト上での風量コントロールにて全て120質量%となるようにしてある。
【0167】
ドープ流量調整後上記と同様に作成し剥離したフィルムを、155℃2秒の予熱後163℃にて1.41倍の延伸処理を行い、延伸後その幅を維持したまま5秒間保持した後、幅方向の張力を緩和させて幅保持を解放し120℃で乾燥させた。
【0168】
以上のようにして作製した膜厚60μm、幅1.5mの位相差フィルムの支持体である、光学的に二軸性の透明フィルム1を巻き取った。
【0169】
(中間層塗布液)
ウレタンアクリレートオリゴマー 25質量部
(UV−7510B 日本合成化学(株))
プロピレングリコールモノメチルエーテル 290質量部
イソプロピルアルコール 685質量部
光重合開始剤 0.05質量部
(ルシリンTPO(バスフ(株)製))
この塗布液を、透明フィルム1にワイヤーバー#3で塗布し80℃で30秒乾燥後、紫外線を120mJ/mmを10秒照射して硬化した。乾燥後の中間層の膜厚は、0.5μmであった。
【0170】
(異方性層塗布液)
紫外線重合性液晶材料 20質量部
(UCL018 大日本インキ化学工業(株)製)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 80質量部
光重合開始剤 0.04質量部
(ルシリンTPO(バスフ(株)製))
ヒンダードアミン 0.02質量部
LS−765(三共ライフテック株式会社製)
垂直配向剤 0.03質量部
(信越シリコーン(株)製X−22−161A)
この重合性液晶層塗布液をダイコータにより前記中間層上にウェット12μmの厚みで塗布した。液晶層の温度が65℃になるまで80℃雰囲気下で1分間加熱乾燥し、その後28℃まで急速に冷却した。冷却開始時のΔnは0.08(最大値の40%)であった。冷却は、表1に記載のような条件でおこなった。
【0171】
なお、紫外線重合性液晶化合物の固体−液晶相転移温度は、23℃であり液晶相−等方性液体相転移温度は、70℃であることを予め確認しておいた。
【0172】
冷却速度は、予め冷却ドラムだけで急冷の条件を定めておいて、その条件をそのまま使用した。温度計としては、株式会社エムケー・サイエンティフィック社製赤外線放射温度計DT−29を使用した。
【0173】
Δnの最大値は、垂直配向処理した液晶セルに10Vの電圧を印加したときのΔnの値とした。
【0174】
配向させたのち液晶層に酸素濃度0.2%、温度28℃にて250mJ/mmの紫外線を10秒照射して、重合性液晶組成物を硬化させた。異方性層の厚みは、全試料1.8μmであった。
【0175】
試料8では冷却せずに、液晶層温度が65℃になるまで80℃雰囲気下で1分間加熱し加熱乾燥し、その後配向が終了するまでその温度を維持した。液晶層が65℃になった時点からΔnが最大値となるまでの時間を測定した。
【0176】
これらの試料について下記の、配向時間、配向ムラを評価した。結果を表1に示す。
(Δn最大値までの時間)
冷却ドラムが設定した冷却温度到達後から、Δn最大値までの時間を偏光光を当てながら高速度カメラで撮影し、偏光光の透過率の変化を観察した。
(配向ムラの評価方法)
〈位相差ムラ〉
位相差フィルム試料を、ヱトー(株)製複屈折位相差測定装置 AD−175SIを用いて、測定スポット0.5mmで0.5mmピッチでのリタデーションRo測定を行った。測定は、フィルムの面内遅相軸を傾斜軸として40°傾斜させて行った。
【0177】
なお、液晶層の塗布を行う前に二軸性の透明フィルム支持体の位相差ムラは測定して、0.1mm間隔で0.1nm未満でムラがないことを確認しておいた。
【0178】
位相差ムラの基準としては、以下を用いた。
【0179】
間隔 リタデーション差 評価
0.1mm 0.100nm未満 ◎
0.1mm 0.100以上0.150nm未満 ○
0.1mm 0.150nm以上 ×
〈熱ムラ〉
熱ムラが判断しやすいように、本発明の位相差フィルムを偏光板として評価した。
【0180】
松下電器製26インチ液晶テレビ、ビエラ26LX60の液晶パネルの偏光板を剥がし、代わりに本発明の位相差フィルムを使用し反対面にKC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)を貼合した偏光板を液晶パネルの視認側に、液晶層が液晶セル側になるように貼り合わせた。
【0181】
バックライト側には位相差をRo=0.8nm,Rt=1.1nmに調整した等方性セルローストリアセテート(TAC)フィルムを使用した偏光板を貼合した。
【0182】
これらの構成を図1に示す。図中TACフィルムと記載されているものは、コニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)を使用した。
【0183】
なお、視認側の偏光板の作製は次のように行った。延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させた偏光子の一方の面には、ケン化処理したKC4UYをポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼合した。他方の面には、本発明の位相差フィルムを、ポリウレタン系接着剤を用いて貼合し、視認側偏光板を作製した。
【0184】
バックライト側偏光板は、通常のようにセルロースエステルフィルムをケン化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼合し、偏光板を作製した。
【0185】
上記のようにして作製した液晶パネルを60℃90%RHで24時間保存し、バックライトを点灯して黒表示にして2時間後に目視でムラの発生強度を観察した。
【0186】
状況 評価
四隅に強いムラと全面に雲状ムラが発生 ××
四隅に強いムラが発生 ×
弱い雲状ムラが発生 △
ムラの発生ナシ ○
【0187】
【表1】

【0188】
表1から分かるように、本発明の製造方法では、これまで以上に配向ムラを改善することができた。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】本発明の位相差フィルムを使用した液晶表示装置に係る実施態様の一つの概略図である。
【符号の説明】
【0190】
1、9 TACフィルム
2、8 偏光子 2と8で示される偏光子の吸収軸は直交している。
【0191】
3 光学的に二軸性の透明フィルム
4 中間層
5 本発明の方法により棒状の液晶を垂直に配向させて配向を固定した光学異方性層
6 駆動用液晶セル
6−1 視認側ガラス基板
6−2 バックライト側ガラス基板
6−3 液晶層
7 等方性セルローストリアセテートフィルム
10 第一の偏光板(視認側偏光板)
11 本発明の位相差フィルム
12 第二の偏光板(バックライト側偏光板)
13 バックライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム上に、棒状の液晶を垂直に配向させて配向を固定した光学異方性層を有してなる位相差フィルムの製造方法において、該液晶を含む塗布液を透明フィルム上に塗布乾燥し液晶層を塗設する工程、該液晶層を、液晶層を形成する液晶の固体−液晶相転移温度以上液晶相−等方性液体相転移温度以下に加熱する工程、該加熱する工程において、形成した液晶層の液晶の複屈折Δnが最大値を示す前に10〜150℃/秒の割合で液晶温度を固体−液晶相転移温度以下に冷却する工程、とを有することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−122421(P2009−122421A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296454(P2007−296454)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】