説明

位相調整回路および位相調整方法

【課題】センサ信号の伝達用搬送波の周波数が変動する場合においても、位相シフト量が変動することを防止することが可能である位相調整回路および位相調整方法を提供すること。
【解決手段】三角波変換回路2Gは、パルス列信号VPSINを三角波VCに変換する。三角波振幅制御回路3Gは、三角波VCの振幅値と振幅基準値VPAJとの比較を行い、両者の差分に応じた調整信号ASを三角波変換回路2Gに対して出力する。三角波変換回路2Gは、調整信号ASに応じて三角波VCの傾きを変化させることにより、三角波VCの振幅値を調整する。これによりフィードバックループが構成され、三角波VCの振幅値が振幅基準値VPAJに応じた一定値に維持される。位相シフト回路4は、元のパルス列信号VPSINに対して位相がシフトされたパルス列信号である移相パルス列信号VPSOUTを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相調整回路および位相調整方法に関し、特に微小信号増幅に用いる参照信号の正確な位相調整に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センサ111から得られる微小信号を増幅する手段として、同期検波を用いる方法がある。図13に、従来技術に係る同期検波回路100を示す。発振器112からは、センサ信号の伝達用搬送波として、搬送波RSが出力される。センサ111では、搬送波RSの振幅変調が行われる。振幅変調後の信号は、アンプ116で増幅され、同期検波回路115へ入力される。また位相調整回路101において、搬送波RSの位相がシフトされる。ここで一般的には、搬送波RSの位相は90°シフトされる。また位相調整回路101としては、容量および抵抗素子による微分回路や、ディレイ回路が用いられる。同期検波回路115において同期検波が行われる。同期検波回路115から出力される検波信号DSは、ローパスフィルタ113へ入力される。ローパスフィルタ113からは、復調信号DTSが出力され、アンプ117へ入力される。アンプ117からは、出力信号VOUTが出力される。これにより、センサ111本来の信号成分のみが検出される。
【0003】
尚、上記の関連技術として特許文献1ないし4が開示されている。
【特許文献1】特開平04−267620号公報
【特許文献2】特開平10−31032号公報
【特許文献3】特開昭60−194820号公報
【特許文献4】特開平04−168803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし発振器112から出力される搬送波RSの周波数frは、温度変化や経年変化により変動する場合がある。すると従来の位相調整回路101では、周波数frの変動に応じて、搬送波RSの位相の調整量が目的値からずれる場合があるため問題である。
【0005】
また位相の調整量は、センサ111の感度に合わせて微調整が必要とされる。しかし、周波数frの変動に応じて位相の調整量が変化すると、微調整が困難となるため問題である。また微分回路やディレイ回路では、構造上、位相のずれ量の微調整が困難であるため問題である。
【0006】
本発明は前記背景技術の課題の少なくとも1つを解消するためになされたものであり、センサ信号の伝達用搬送波の周波数が変動する場合においても、位相シフト量が変動することを防止することができ、かつ、確実な位相の微調整が可能である位相調整回路および位相調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明における位相調整回路では、参照信号と該参照信号に対して所定の位相差を有する移相参照信号とを用いる微小信号増幅において、参照信号を三角波に変換する三角波変換回路と、三角波が入力され、該三角波の振幅値の振幅基準値に対する差分に応じた調整信号を三角波変換回路に対して出力する三角波振幅制御回路と、入力される三角波と所定のしきい値とを比較して、移相参照信号を出力する位相シフト回路とを備え、三角波変換回路は、調整信号に応じて振幅値を調整することを特徴とする。
【0008】
三角波変換回路は、参照信号を三角波に変換する。参照信号は例えば、所定周波数パルス列からなる搬送波が挙げられる。三角波振幅制御回路には、変換後の三角波が入力され、三角波の振幅値と振幅基準値との比較が行われる。ここで振幅基準値は、三角波の振幅値を定めるにあたっての基準となる予め定められた値であり、例えば三角波の振幅値の平均値、振幅のピーク値、ボトム値などが用いられる。そして三角波振幅制御回路は、振幅基準値と三角波の振幅値との差分に応じて、調整信号を三角波変換回路に対して出力する。三角波変換回路は、調整信号に応じて、振幅基準値と振幅値との差分を減ずるように、三角波の振幅値を調整する。これによりフィードバック制御が行われ、三角波の振幅値が振幅基準値に応じた一定値に維持される。よって例えば、参照信号の周波数がシフトするような外乱が生じた場合においても、三角波の振幅値を一定値に維持することができる。
【0009】
位相シフト回路は、入力される三角波と所定のしきい値とを比較する。ここでしきい値は、参照信号に対する移相参照信号の位相シフト量を定める値であり、予め定められる値である。しきい値を用いて三角波を2値化すると、元の参照信号に対して位相がシフトされたパルス列信号である移相参照信号が得られる。このとき位相シフト量は、振幅値の電圧範囲におけるしきい値の相対的な電位関係により定められる。そして三角波の傾きは一定であるため、しきい値の変化量と位相シフト量との関係は比例関係となる。移相参照信号は位相シフト回路から出力され、参照信号と共に、同期検波や遅延検波などの微小信号増幅に用いられる。
【0010】
以上により本発明に係る位相調整回路は、フィードバック制御により、三角波の振幅を振幅基準値で決まる一定値に維持する。よって参照信号の周波数が変動する場合においても、移相参照信号の参照信号に対する位相シフト量を一定値に維持することができるため、安定した微小信号増幅動作を行うことができる。
【0011】
また三角波を用いて位相シフト量を決定することにより、しきい値の変化量と位相シフト量との関係を比例関係とすることができる。これにより、位相シフト量の微調整を容易とすることが可能となる。また電流を用いて位相シフト量を決定することにより、容量や抵抗値を可変とする場合に比して、位相シフト量の調整を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の位相調整回路および位相調整方法によれば、センサ信号の伝達用搬送波の周波数が変動する場合においても、位相シフト量が変動することを防止することが可能となる。また、より正確な位相の微調整をすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の原理図を図1に示す。位相調整回路1Gは、三角波変換回路2G、三角波振幅制御回路3G、位相シフト回路4Gを備える。三角波変換回路2Gにはパルス列信号VPSINが入力され、三角波変換回路2Gからは三角波VCが出力される。パルス列信号VPSINは、所定の周波数frを有する信号である。位相シフト回路4Gには三角波VCおよびしきい値VCRFが入力され、位相シフト回路4Gからは移相パルス列信号VPSOUTが出力される。また三角波振幅制御回路3Gには、三角波VCおよび振幅基準値VPAJが入力される。そして三角波振幅制御回路3Gから出力される調整信号ASが三角波変換回路2Gへ入力されることで、帰還経路が構成される。
【0014】
三角波変換回路2Gは、パルス列信号VPSINを三角波VCに変換する。三角波振幅制御回路3Gには、三角波VCと振幅基準値VPAJとが入力される。ここで振幅基準値VPAJは、三角波VCの振幅値を定めるにあたっての基準となる予め定められた値であり、例えば三角波の振幅値の平均値、振幅のピーク値、ボトム値などが挙げられる。三角波振幅制御回路3Gは、三角波VCの振幅値と振幅基準値VPAJとの比較を行い、両者の差分に応じた調整信号ASを三角波変換回路2Gに対して出力する。三角波変換回路2Gは、調整信号ASに応じて三角波VCの傾きを変化させることにより、三角波VCの振幅値を調整する。これによりフィードバックループが構成され、三角波VCの振幅値が振幅基準値VPAJに応じた一定値に維持される。
【0015】
位相シフト回路4Gは、しきい値VCRFを用いて三角波VCを2値化することにより、元のパルス列信号VPSINに対して位相がシフトされたパルス列信号である移相パルス列信号VPSOUTを出力する。パルス列信号VPSINの位相に対する移相パルス列信号VPSOUTの位相シフト量は、三角波VCの振幅の電圧範囲に対するしきい値VCRFの電位関係により定められる。よってしきい値VCRFを適宜定めることにより、位相シフト量を、例えば90°遅れなどの所定の値に定めることができる。そして位相シフト回路4Gから出力される移相パルス列信号VPSOUTは、後段の不図示の回路において、パルス列信号VPSINと共に、同期検波や遅延検波などの微小信号増幅に用いられる。
【0016】
以上により本発明に係る位相調整回路1Gは、フィードバック制御により、三角波VCの振幅値を振幅基準値VPAJで決まる一定値に維持する。よってパルス列信号VPSINの周波数frがシフトする場合においても、移相パルス列信号VPSOUTの位相シフト量を一定値に維持することが可能となる。よって温度変化などの影響を受けずに、安定した微小信号増幅動作を行うことができる。
【0017】
また傾きが一定値である三角波VCを用いて位相シフト量を決定することにより、しきい値VCRFの変化量と位相シフト量との関係を比例関係とすることができる。これにより、位相シフト量の微調整を容易とすることが可能となる。
【0018】
本発明の第1実施形態を、図2ないし図5を用いて説明する。図2に、第1実施形態に係る同期検波回路10を示す。同期検波回路10は、位相調整回路1、センサ11、発振器12、ローパスフィルタ13、コンパレータ14、同期検波回路15、アンプ16および17を備える。発振器12から出力される搬送波RSは、センサ11に入力されると共に、コンパレータ14の非反転入力に入力される。コンパレータ14の反転入力端子には、基準しきい値VREFが入力される。センサ11からは出力信号SSが出力され、アンプ16を介して同期検波回路15に入力される。また同期検波回路15には、位相調整回路1から出力される移相パルス列信号VPSOUTが入力される。同期検波回路15から出力される検波信号DSは、ローパスフィルタ13へ入力される。ローパスフィルタ13からは、復調信号DTSが出力され、アンプ17へ入力される。アンプ17からは、出力信号VOUTが出力される。
【0019】
位相調整回路1は、三角波変換回路2、三角波振幅制御回路3、位相シフト回路4を備える。三角波変換回路2は、エッジパルス生成回路5、スイッチSW1、容量C1、定電流源回路CG1およびCG2を備える。エッジパルス生成回路5にはパルス列信号VPSINが入力され、エッジパルス生成回路5からはエッジパルス列信号VPEDGが出力される。電源電圧VCCとノードN1との間には、定電流源回路CG1およびCG2が並列接続され、ノードN1とグランドとの間にはスイッチSW1と容量C1とが並列接続される。スイッチSW1の制御端子には、エッジパルス列信号VPEDGが入力される。定電流源回路CG1およびCG2からそれぞれ出力される電流I1およびI2は合成され、電流ICとして容量C1に充放電される。ここで電流I1が一定とされ、電流I2が調整信号AS1に応じて可変とされる形態とされることで、電流ICの微調整をより正確に行うことが可能となるメリットがある。またノードN1からは三角波VCが出力される。
【0020】
三角波振幅制御回路3は、ピークホールド回路PH、演算増幅器AMP1を備える。ピークホールド回路PHには三角波VCが入力され、ピークホールド回路PHからはピーク電圧値VFLTが出力される。演算増幅器AMP1の反転入力にはピーク電圧値VFLTが入力され、非反転入力には振幅基準値VPAJが入力される。演算増幅器AMP1から出力される調整信号AS1は、定電流源回路CG2に入力される。定電流源回路CG2は、調整信号AS1に応じて電流I2を可変に制御する。
【0021】
位相シフト回路4は、コンパレータ41およびフリップフロップFFを備える。コンパレータ41の非反転入力には三角波VCが入力され、反転入力にはしきい値VCRFが入力される。コンパレータ41から出力されるパルス列VDは、フリップフロップFFに入力される。フリップフロップFFからは移相パルス列信号VPSOUTが出力される。
【0022】
同期検波回路10の動作を、図3のタイミングチャートを用いて説明する。発振器12から出力される搬送波RSが、コンパレータ14において、基準しきい値VREFに応じて、パルス列信号VPSINへ変換される。そして、搬送波RSの周波数および位相と、パルス列信号VPSINの周波数および位相とは等しくされる。このときの搬送波RSおよびパルス列信号VPSINの周波数frの値を、周波数値f0とする。パルス列信号VPSINは、三角波変換回路2に入力される。
【0023】
三角波変換回路2において、パルス列信号VPSINを三角波VCに変換する動作が行われる。まずエッジパルス生成回路5において、パルス列信号VPSINの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジに対応して、エッジパルス列信号VPEDGが生成される(図3)。エッジパルス列信号VPEDGがローレベルの間は、スイッチSW1は非導通状態とされるため、容量C1への電流ICの充電状態とされる。またエッジパルス列信号VPEDGがハイレベルの間は、スイッチSW1は導通状態とされるため、容量C1からの電荷の放電状態とされる。よって三角波VCのピーク値VPEAKは、搬送波RSの周波数fr、容量C1の容量値Ca、電流ICを用いて下式(1)で表される。
VPEAK=IC/(2×Ca×fr)・・・式(1)
式(1)より、電流ICおよび周波数frの増減に比例して、ピーク値VPEAKも増減することが分かる。
【0024】
位相シフト回路4では、パルス列信号VPSINに対して位相がシフトされた移相パルス列信号VPSOUTを生成する動作が行われる。ここで、周波数値f0のときの三角波VCの振幅値を振幅値VAM0、振幅値のピーク値をピーク値VPEAK0とする(図3)。そして、しきい値VCRFの値を振幅値VAM0の範囲内の任意値に設定することで、パルス列VDの立ち上がりエッジの、エッジパルス列信号VPEDGに対する位相シフト量PD0の値を0°より大きく180°より小さい位相遅れの範囲内で調整することができる。例えば、しきい値VCRFを0(V)に設定したときは、位相シフト量PD0の値は0°となる。またしきい値VCRFをピーク値VPEAK0の値に設定したときは、位相シフト量PD0の値は180°の遅れとなる。本実施形態では、しきい値VCRFを、振幅値VAM0の1/2の電圧値であるしきい値VCRF0に設定することで、90°の位相遅れとしている。なお、実際の回路設計においては、振幅値VAM0の上限・下限に不感帯を作ることが行われる。例えば振幅値の1/6の範囲の不感帯を作る場合には、位相遅れ量の調整範囲は30°から150°までとされる。
【0025】
そしてフリップフロップFFによって、パルス列VDが1/2分周されることで、パルス列信号VPSINと等しい周波数値f0のパルス列からなる移相パルス列信号VPSOUTが得られる。このときの移相パルス列信号VPSOUTの立ち上がりエッジの、エッジパルス列信号VPEDGに対する位相シフト量OPD0も、90°の位相遅れとされる。
【0026】
パルス列信号VPSINの位相をシフトさせて得られた移相パルス列信号VPSOUTは、同期検波回路15に入力される。同期検波回路15では、移相パルス列信号VPSOUTを用いて、センサ11の出力信号SSを同期検波する。ローパスフィルタ13によってセンサ11本来の信号成分のみが検出された復調信号DTSが得られ、アンプ17によって復調信号DTSの信号成分が増幅される。
【0027】
ここで三角波変換回路2および三角波振幅制御回路3の動作を説明する。三角波変換回路2および三角波振幅制御回路3は、三角波VCの振幅値VAMを、振幅基準値VPAJに応じた一定値に制御するフィードバック制御を行う回路である。
【0028】
温度変化の影響等により、搬送波RSの周波数値f0が高い方へシフトして周波数値f1とされた場合の動作を図4を用いて説明する。まず、フィードバック制御が行われていない期間である期間P1における動作を説明する。周波数が高くなることにより、式(1)より、三角波VCのピーク値は低下し、ピーク値VPEAK0からVPEAK1へと変化する(図4)。また三角波VCの振幅値は、振幅値VAM0からVAM1へと小さくなる。またしきい値VCRF0は、周波数値f0からf1へのシフトの前後で一定値とされる。このとき、三角波VCは右肩上がりの傾きを有するため、振幅値の減少量に応じて、パルス列VDの位相の遅れ量が大きくなる。よって、パルス列VDの立ち上がりエッジの、エッジパルス列信号VPEDGに対する位相シフト量PD1は、90°よりも大きい位相遅れとなる。また、フリップフロップFFから出力される移相パルス列信号VPSOUTの立ち上がりエッジの、エッジパルス列信号VPEDGに対する位相シフト量OPD1も、90°よりも大きい位相遅れとなる。すなわち搬送波RSの周波数frの変動に応じて、移相パルス列信号VPSOUTの位相シフト量OPDは、狙い値(90°の位相遅れ)の位相シフト量から変動してしまう。
【0029】
次に、フィードバック制御の動作を説明する。期間P1では、ピークホールド回路PHから出力されるピーク電圧値VFLTの値は電圧値VFLT1(図4)となり、振幅基準値VPAJに対して低い値となる。よって演算増幅器AMP1は、電圧値VFLT1と振幅基準値VPAJとの差分に応じた調整信号AS1を出力する。定電流源回路CG2は、調整信号AS1に応じて電流I2を増加させることで、電流ICを増加させる。すると式(1)より、電流ICの増加に伴い、三角波VCの傾きが増加する。そして、ピーク電圧値VFLTが振幅基準値VPAJと等しくなるように、フィードバック制御が行われる。
【0030】
図4の期間P2に示すように、ピーク電圧値がピーク電圧値VFLT2とされ、振幅基準値VPAJと等しくされると、フィードバック制御が完了する。これにより三角波VCの振幅値は、周波数frの変動前の状態である振幅値VAM0へ戻される。また、パルス列VDの立ち上がりエッジの位相シフト量PD2は90°の位相遅れとされ、移相パルス列信号VPSOUTの立ち上がりエッジの位相シフト量OPD2も90°の位相遅れとされる。
【0031】
すなわち搬送波RSの周波数値f0が高い方へシフトして周波数値f1とされた場合においても、三角波振幅制御回路3によるフィードバック制御によって、移相パルス列信号VPSOUTの位相シフト量OPDは、狙い値である90°の位相遅れに維持される。
【0032】
また温度変化の影響等により、搬送波RSの周波数値f0が低い方へシフトして周波数値f2とされた場合を図5を用いて説明する。周波数が低くなることにより、期間P1aにおいて、式(1)より、三角波VCのピーク値は上昇し、ピーク値VPEAK0からVPEAK2へと変化する(図5)。また三角波VCの振幅値は、振幅値VAM0からVAM2へと大きくなる。よって、フリップフロップFFから出力される移相パルス列信号VPSOUTの立ち上がりエッジの、エッジパルス列信号VPEDGに対する位相シフト量OPD3も、90°よりも小さい位相遅れとなる。そして演算増幅器AMP1は、電圧値VFLT3と振幅基準値VPAJとの差分に応じた調整信号AS1を出力する。フィードバック制御の動作により定電流源回路CG2は、調整信号AS1に応じて電流I2を減少させることで、電流ICを減少させる。すると式(1)より、電流ICの減少に伴い、三角波VCの傾きが減少する。これにより期間P2aにおいて、ピーク電圧値がピーク電圧値VFLT4とされ、三角波VCの振幅値は振幅値VAM0へ戻される。すなわち搬送波RSの周波数値f0が低い方へシフトした場合においても、三角波振幅制御回路3によるフィードバック制御によって、移相パルス列信号VPSOUTの位相シフト量OPD4は、狙い値である90°の位相遅れに維持される。
【0033】
以上詳細に説明したとおり、第1実施形態に係る同期検波回路10は、三角波振幅制御回路3によるフィードバック制御により、三角波VCの振幅値VAMを、搬送波RSの周波数frの変動に影響されずに一定値に維持することができる。これにより、搬送波RSの周波数frが変動しても、移相パルス列信号VPSOUTの位相シフト量OPDが設定値から変動することを防止することができる。よって、安定した検波動作を行うことが可能となる。また、周波数frの変動の影響を受けずに位相シフト量OPDを一定値に維持する動作を実現することができる。
【0034】
また第1実施形態に係る同期検波回路10は、時定数を有する微分回路等を用いて位相シフト量を決定する場合と異なり、一定の傾きを有する三角波VCを用いて移相パルス列信号VPSOUTの位相シフト量OPDを調整している。これにより、しきい値VCRFの変化量と位相シフト量OPDとの関係を比例関係とすることができるため、位相シフト量OPDの微調整を容易とすることが可能となる。また電流ICを可変制御することで位相シフト量を決定することにより、容量C1の容量値Caや抵抗値を可変制御する場合に比して、位相シフト量OPDの調整をより簡単に行うことができる。
【0035】
本発明の第2実施形態を、図6および図7を用いて説明する。図6に、第2実施形態に係る位相調整回路1aを示す。位相調整回路1aは、三角波変換回路2a、三角波振幅制御回路3a、位相シフト回路4aを備える。三角波変換回路2aは、エッジパルス生成回路51および52、三角波生成部21および22を備える。エッジパルス生成回路51および52からは、エッジパルス列信号VPEDG1およびVPEDG2がそれぞれ出力される。三角波生成部21および22には、エッジパルス列信号VPEDG1およびVPEDG2、三角波振幅制御回路3aから出力される調整信号AS1が入力される。そして三角波生成部21および22からは、三角波VC1およびVC2がそれぞれ出力される。なお三角波生成部21および22の構成は、第1実施形態における三角波変換回路2と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0036】
位相シフト回路4aは、コンパレータCOMP11およびCOMP12、RSフリップフロップFF1を備える。コンパレータCOMP11およびCOMP12の非反転入力には、それぞれ三角波VC1およびVC2が入力され、反転入力にはしきい値VCRFが入力される。コンパレータCOMP11およびCOMP12から出力されるパルス列VD1およびVD2は、RSフリップフロップFF1のセット入力およびリセット入力へそれぞれ入力される。RSフリップフロップFF1からは、移相パルス列信号VPSOUTが出力される。
【0037】
位相調整回路1aの動作を図7を用いて説明する。三角波変換回路2aにおいて、パルス列信号VPSINを三角波VC1およびVC2に変換する動作が行われる。まずエッジパルス生成回路51によって、パルス列信号VPSINの立ち上がりエッジに応じてエッジパルス列信号VPEDG1が生成される。またエッジパルス生成回路52によって、パルス列信号VPSINの立ち下がりエッジに応じてエッジパルス列信号VPEDG2が生成される。よってエッジパルス列信号VPEDG1とVPEDG2とは、互いに位相が180°シフトした信号となる。また三角波変換回路2aでは、第1実施形態の場合とは異なり、パルス列信号VPSINの立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとを別々にエッジパルス列信号に変換する。これにより立ち上がりエッジの位相シフト量と立ち下がりエッジの位相シフト量とを別々に調整することが可能となる。またパルス列信号VPSINの周波数を1/2分周する効果が得られる。
【0038】
三角波生成部21はエッジパルス列信号VPEDG1に応じて三角波VC1を生成し、三角波生成部22はエッジパルス列信号VPEDG2に応じて三角波VC2を生成する。このとき三角波VC1とVC2とは、互いに位相が180°シフトした信号となる。
【0039】
位相シフト回路4aのコンパレータCOMP11において、しきい値VCRFの値を振幅値VAM10(図7)の範囲内の任意値に設定することで、パルス列VD1の立ち上がりエッジの、エッジパルス列信号VPEDG1に対する位相シフト量PD11の値を、0°より大きく360°より小さい位相遅れの範囲内で調整することができる。またコンパレータCOMP12においても同様に、しきい値VCRFの値を振幅値VAM10の範囲内の任意値に設定することで、位相シフト量PD12の値を0°より大きく360°より小さい位相遅れの範囲内で調整することができる。本実施形態では、しきい値VCRFを、振幅値VAM0の1/2の電圧値であるしきい値VCRF10に設定することで、位相シフト量PD11およびPD12の値を180°の位相遅れとしている。そしてRSフリップフロップFF1によって、パルス列信号VPSINと等しい周波数のパルス列からなる移相パルス列信号VPSOUTが得られる。このときの移相パルス列信号VPSOUTの、パルス列信号VPSINに対する位相シフト量OPD10も、180°の位相遅れとされる。
【0040】
そして三角波振幅制御回路3aにより、三角波VC1およびVC2の振幅値VAM10が、搬送波RSの周波数frの変動に関わらず一定に制御される。よってパルス列信号VPSINの周波数frがシフトする場合においても、移相パルス列信号VPSOUTの位相シフト量OPD10の値を180°の位相遅れ量に維持することが可能となる。
【0041】
以上詳細に説明したとおり、第2実施形態に係る位相調整回路1aは、搬送波RSの周波数frがシフトする場合においても、移相パルス列信号VPSOUTの位相シフト量OPD10が設定値から変動することを防止することができる。よって、安定した検波動作を行うことが可能となる。
【0042】
なお、三角波生成部21と22とは同一の回路構成を有している。よって温度変化や経時変化による三角波の振幅値の変化は、三角波VC1およびVC2との間で同等とみなすことができると考えられる。そのため図6に示すように、三角波VC1の振幅値のみを三角波振幅制御回路3aで監視し、フィードバック結果を三角波生成部21および22に反映させれば足りると考えられる。なお、より安定した検波動作を行う場合には、三角波VC2も三角波振幅制御回路3aへ入力させ監視してもよいことは言うまでもない。
【0043】
本発明の第3実施形態を、図8および図9を用いて説明する。図8に、第3実施形態に係る位相調整回路1bを示す。位相調整回路1bは、三角波変換回路2b、三角波振幅制御回路3b1および3b2、位相シフト回路4bを備える。三角波変換回路2bは、インバータINV1およびINV2、スイッチSW11ないしSW14、容量C11およびC12、定電流源回路CG11、CG12、CG21、CG22を備える。電源電圧VCCとノードN11との間には、定電流源回路CG11およびスイッチSW13が直列接続される。ノードN11とグランドとの間には容量C11が接続され、容量C11と並列にスイッチSW11および定電流源回路CG12が接続される。同様に電源電圧VCCとノードN12との間には定電流源回路CG21およびスイッチSW14が直列接続される。ノードN12とグランドとの間には容量C12が接続され、容量C12と並列にスイッチSW12および定電流源回路CG22が接続される。スイッチSW11およびSW14の制御端子には、パルス列信号VPSIN1が入力される。スイッチSW12およびSW13の制御端子には、パルス列信号VPSIN2が入力される。定電流源回路CG11の電流I11により容量C11は充電され、定電流源回路CG12の電流I12により容量C11は放電される。また定電流源回路CG21の電流I21により容量C12は充電され、定電流源回路CG22の電流I22により容量C12は放電される。電流I11とI12の値は等しくされ、電流I21とI22の値は等しくされる。ノードN11からは三角波VC11が出力され、ノードN12からは三角波VC12が出力される。
【0044】
三角波振幅制御回路3b1は、ピークホールド回路PH、演算増幅器AMP11を備える。ピークホールド回路PHには三角波VC11が入力され、ピークホールド回路PHからはピーク電圧値VPHが出力される。演算増幅器AMP11の反転入力にはピーク電圧値VPHが入力され、非反転入力には振幅基準値VPAJ1が入力される。演算増幅器AMP1から出力される調整信号AS11は、定電流源回路CG11およびCG21に入力される。同様にして、三角波振幅制御回路3b2は、ボトムホールド回路BH、演算増幅器AMP12を備える。ボトムホールド回路BHには三角波VC11が入力され、ボトムホールド回路BHからはボトム電圧値VBHが出力される。演算増幅器AMP12から出力される調整信号AS12は、定電流源回路CG12およびCG22に入力される。また位相シフト回路4bの構成は、第2実施形態に係る位相シフト回路4aと同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0045】
位相調整回路1bの動作を図9を用いて説明する。三角波変換回路2bにおいて、パルス列信号VPSINを三角波VC11およびVC12に変換する動作が行われる。パルス列信号VPSIN1がハイレベルの間は、スイッチSW11が導通状態とされ、スイッチSW13が非導通状態とされる。よって電流I12によって容量C11が放電されるため、三角波VC11は右肩下がりの一定の傾きを有する(矢印A11)。またパルス列信号VPSIN1がローレベルの間は、スイッチSW11が非導通状態とされ、スイッチSW13が導通状態とされる。よって電流I11によって容量C11が充電されるため、三角波VC11は右肩上がりの一定の傾きを有する(矢印A12)。このとき電流I11とI12の値が等しいため、上昇傾きと下降傾きは等しくなる。
【0046】
位相シフト回路4bにおいて、パルス列信号VPSINに対して位相がシフトされた移相パルス列信号VPSOUTを生成する動作が行われる。しきい値VCRFの値を振幅値VAM11およびVAM12の範囲内の任意値に設定することで、移相パルス列信号VPSOUTの立ち上がりエッジの、パルス列信号VPSINに対する位相シフト量の値を0°より大きく180°より小さい位相遅れの範囲内で調整することができる。
【0047】
三角波振幅制御回路3b1および3b2の動作を説明する。三角波振幅制御回路3b1のフィードバック制御により、三角波VC11のピーク値VPEAK11およびVC12のピーク値VPEAK12が、振幅基準値VPAJ1に応じた一定値に制御される。また三角波振幅制御回路3b2のフィードバック制御により、三角波VC11のボトム値VBTM11およびVC12のボトム値VBTM12が、振幅基準値VPAJ2に応じた一定値に制御される。よってパルス列信号VPSINの周波数frの変動に影響されずに、三角波VC11およびVC12のピーク値とボトム値とが一定とされるため、振幅値VAM11およびVAM12を一定値に維持することができる。
【0048】
また位相調整回路1bでは、三角波VC11で立ち上がりエッジの位相調整を行い、三角波VC12で立ち下がりエッジの位相調整を行っている。このように立ち上がりエッジの位相と立ち下がりエッジの位相とを別々に制御可能とすることにより、移相パルス列信号VPSOUTのハイレベル信号のデューティを自在に設定することが可能となる利点がある。よって本実施形態では、しきい値VCRFの値に関わらず、移相パルス列信号VPSOUTのデューティを50%に維持することが可能とされる。
【0049】
以上詳細に説明したとおり、第3実施形態に係る位相調整回路1bは、三角波振幅制御回路3b1および3b2によるフィードバック制御により、三角波VC11の振幅値VAM11および三角波VC12の振幅値VAM12を、パルス列信号VPSINの周波数frの変動に影響されずに一定値に維持することができる。これにより、パルス列信号VPSINの周波数frが変動しても、移相パルス列信号VPSOUTの位相シフト量が設定値から変動することを防止することができるため、安定した検波動作を行うことが可能となる。
【0050】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは言うまでもない。図8に示す本発明の第3実施形態では、定電流源回路CG11、CG12、CG21、CG22を備えるとしたが、この形態に限られない。図10に示す位相調整回路1cのように、定電流源回路CG31を備える形態でも可能である。位相調整回路1cは、三角波変換回路2c、三角波振幅制御回路3b1、位相シフト回路4bを備える。三角波変換回路2cは、インバータINV1およびINV2、スイッチSW30ないしSW32、容量C11およびC12、定電流源回路CG31を備える。スイッチSW30およびSW32の制御端子には、パルス列信号VPSIN1が入力される。スイッチSW31の制御端子には、パルス列信号VPSIN2が入力される。三角波振幅制御回路3b1から出力される調整信号AS11は、定電流源回路CG31に入力される。その他の構成は第3実施形態に係る位相調整回路1bと同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0051】
位相調整回路1cに備えられる三角波変換回路2cの動作を図11を用いて説明する。パルス列信号VPSIN1がハイレベルの間は、スイッチSW30は定電流源回路CG31と容量C11とを接続する。またスイッチSW31が非導通とされ、スイッチSW32が導通状態とされる。よって電流ICによって容量C11が充電されるため、三角波VC31は右肩上がりの一定の傾きを有する。また、三角波VC32は0(V)が維持される。(矢印A21)。一方、パルス列信号VPSIN1がローレベルの間は、スイッチSW30は定電流源回路CG31と容量C12とを接続する。よって電流ICによって容量C12が充電されるため、三角波VC32は右肩上がりの一定の傾きを有する。また、三角波VC31は0(V)が維持される。(矢印A22)。そして位相シフト回路4bにおいて、パルス列信号VPSINに対して位相がシフトされた移相パルス列信号VPSOUTを生成する動作が行われる。また三角波振幅制御回路3b1のフィードバック制御により、三角波VC31およびVC32の振幅値が一定値に維持される。これにより、パルス列信号VPSINの周波数frが変動しても、移相パルス列信号VPSOUTの位相シフト量が設定値から変動することを防止することができる。
【0052】
そして位相調整回路1cでは、スイッチSW30によって定電流源回路CG31を容量C11およびC12の間で共用することができる。またスイッチSW31およびSW32において、定電流源回路を介さずに電荷を放電する構成である。これにより、位相調整回路1b(図8)に比して、電流源回路の数の削減を図ることができる。
【0053】
また1実施形態における位相調整回路1では、ピークホールド回路PHの出力を演算増幅器AMP1にフィードバックするとしたが、この形態に限られない。ピークホールド回路PHに代えてローパスフィルタ等の平均化回路を備え、平均化回路の出力を演算増幅器AMP1にフィードバックし、振幅基準値VPAJを三角波の振幅値の平均値とする形態としても良い。これにより、三角波VCのジッタの影響を排除できるため、より搬送波RSの周波数frの変動に影響を受けない位相調整回路1を構成することが可能となる。
【0054】
またコンパレータ41の反転入力に入力される信号を、しきい値VCRFに代えて、平均化回路の出力とする形態としてもよい。これにより、平均化回路によるフィードバック制御により、しきい値VCRF0をより正確に振幅値の1/2の電圧値に設定することが可能となる。よって、さらに安定した検波動作を行うことが可能となる。
【0055】
また第1実施形態において同期検波回路10は、三角波振幅制御回路3を常に動作させるとしたがこの形態に限られない。図12に示すように、同期検波回路10の起動時のみ、または環境温度が許容値を超えて変化したときのみ動作する三角波振幅制御回路3cを備えるとしてもよい。三角波振幅制御回路3cは、ピークホールド回路PHおよび演算増幅器AMP1に加えて、スイッチSW41を備える。調整信号AS1は、スイッチSW41を介してレジスタREGに保持される。定電流源回路CG2は、レジスタREGの出力に応じて電流I2を可変に制御する。スイッチSW41には制御信号CSが入力される。
【0056】
同期検波回路10の起動時のみ、三角波振幅制御回路3cを動作させる場合を説明する。不図示のタイマ回路により、同期検波回路10の起動時から一定時間はハイレベルの制御信号CSがスイッチSW41に入力され、スイッチSW41は導通状態とされる。よって三角波振幅制御回路3cによるフィードバック制御により、三角波の振幅値VAMが所定値となるように調整信号AS1が調整される。フィードバック制御が収束するために十分な所定時間が経過すると、不図示のタイマ回路からローレベルの制御信号CSが出力され、スイッチSW41が非導通状態とされることで、三角波振幅制御回路3cの動作が停止される。
【0057】
また環境温度が許容値を超えて変化したときのみ、三角波振幅制御回路3cを動作させる場合を説明する。不図示の温度センサおよび制御回路により、同期検波回路10の環境温度が監視される。温度センサにより検出される環境温度の変化量が許容値内である場合には、ローレベルの制御信号CSによりスイッチSW41は非導通状態とされ、三角波振幅制御回路3cは停止状態とされる。そして環境温度の変化量が許容値を超えると、制御回路からハイレベルの制御信号CSが出力され、スイッチSW41は導通状態とされる。そして三角波振幅制御回路3cによるフィードバック制御により、三角波の振幅値VAMが所定値となるように調整信号AS1の値が調整される。そして所定時間の経過後に、再度制御信号CSがローレベルとされ、スイッチSW41は非導通状態とされ、三角波振幅制御回路3cは停止状態とされる。これにより温度変化の影響を排除すると共に、必要な場合のみ三角波振幅制御回路3cを動作させることができるため、消費電力の低減を図ることができる。
【0058】
また第1実施形態では、しきい値VCRFの値を三角波VCの振幅値VAMの範囲内の任意値に設定することにより、移相パルス列信号VPSOUTの位相シフト量OPDの調整が可能であるとしたが、この形態に限られない。振幅基準値VPAJの値を任意値に設定することにより、振幅値VAMを調整することによっても位相シフト量OPDの調整が可能であることは言うまでもない。
【0059】
また第1実施形態のエッジパルス生成回路5では、パルス列信号VPSINの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジに対応して、エッジパルス列信号VPEDGが生成されるとしたが、この形態に限られない。何れか一方のみのエッジに対応してエッジパルス列信号VPEDGを生成してもよい。また所定のエッジ数ごとにエッジパルス列信号VPEDGを生成してもよい。これにより、パルス列信号VPSINの周波数frを分周する効果を得ることができ、位相シフト量の値を任意に設定することが可能となる。
【0060】
また本実施形態では同期検波動作について説明したが、本発明が適用できる微小信号増幅方法は同期検波に限られない。パルス列信号VPSINと、パルス列信号VPSINの位相をシフトさせた移相パルス列信号VPSOUTとを用いる微小信号増幅方法の全般に用いることができることは言うまでもなく、例えば遅延検波にも適用可能である。
【0061】
なお、パルス列信号VPSINは参照信号の一例、移相パルス列信号VPSOUTは移相参照信号の一例、定電流源回路CG2は第1定電流源回路の一例、エッジパルス生成回路5はエッジ検出回路の一例、ピークホールド回路PHおよびボトムホールド回路BHは監視回路の一例、レジスタREGは保持回路のそれぞれ一例である。
【0062】
ここで、本発明の技術思想により、背景技術における課題を解決するための手段を以下に列記する。
(付記1)
参照信号と該参照信号に対して所定の位相差を有する移相参照信号とを用いる微小信号増幅において、
前記参照信号を三角波に変換する三角波変換回路と、
前記三角波が入力され、該三角波の振幅値の振幅基準値に対する差分に応じた調整信号を前記三角波変換回路に対して出力する三角波振幅制御回路と、
入力される前記三角波と所定のしきい値とを比較して、前記移相参照信号を出力する位相シフト回路とを備え、
前記三角波変換回路は、前記調整信号に応じて前記振幅値を調整することを特徴とする位相調整回路。
(付記2)
前記三角波変換回路は、
前記調整信号に応じて電流量が可変に制御される第1定電流源回路と、
前記第1定電流源回路により充放電される容量素子と、
前記参照信号に応じて前記容量素子への充放電を制御するスイッチ回路とを備え、
前記振幅値が前記振幅基準値を超える場合には、前記調整信号に応じて前記第1定電流源回路の電流量を減少させ、
前記振幅値が前記振幅基準値に到達しない場合には、前記調整信号に応じて前記第1定電流源回路の電流量を増加させることを特徴とする付記1に記載の位相調整回路。
(付記3)
前記スイッチ回路は、
前記第1定電流源回路と直列接続され、前記容量素子と並列接続され、前記容量素子の充電時に非導通状態とされ、前記容量素子の放電時に導通状態とされることを特徴とする付記2に記載の位相調整回路。
(付記4)
前記スイッチ回路と直列接続され、前記容量素子と並列接続される第2定電流源回路を備えることを特徴とする付記3に記載の位相調整回路。
(付記5)
前記三角波変換回路は、前記参照信号の立ち上がりエッジまたは/および前記参照信号の立ち下がりエッジを検出する少なくとも一つのエッジ検出回路を備え、
前記スイッチ回路は前記エッジ検出回路のエッジ検出動作に応じて導通制御が行われることを特徴とする付記2に記載の位相調整回路。
(付記6)
前記立ち上がりエッジを検出する第1エッジ検出回路を備える第1三角波変換回路と、
前記立ち下がりエッジを検出する第2エッジ検出回路を備える第2三角波変換回路とを備えることを特徴とする付記5に記載の位相調整回路。
(付記7)
前記三角波振幅制御回路は、
前記三角波の前記振幅値の電圧範囲を監視する少なくとも一つの監視回路と、
前記監視回路ごとに備えられ、第1入力端子に前記監視回路の出力が入力され、第2入力端子に前記振幅基準値が入力され、前記調整信号を出力する演算増幅器と
を備えることを特徴とする付記1に記載の位相調整回路。
(付記8)
前記監視回路はピークホールド回路であり、
前記振幅基準値は前記振幅値の上限値であることを特徴とする付記7に記載の位相調整回路。
(付記9)
前記監視回路はボトムホールド回路であり、
前記振幅基準値は前記振幅値の下限値であることを特徴とする付記7に記載の位相調整回路。
(付記10)
前記監視回路は平均化回路であり、
前記振幅基準値は前記振幅値の平均値であることを特徴とする付記7に記載の位相調整回路。
(付記11)
前記演算増幅器の出力信号を保持した上で前記三角波変換回路へ出力する保持回路を備え、
前記三角波振幅制御回路は、前記保持回路に保持される前記出力信号の更新時に動作状態とされ、前記出力信号の非更新時に停止状態とされることを特徴とする付記7に記載の位相調整回路。
(付記12)
前記位相シフト回路は、
第1入力端子に前記しきい値が入力され、第2入力端子に前記三角波が入力される電圧比較器
を備えることを特徴とする付記1に記載の位相調整回路。
(付記13)
前記三角波振幅制御回路は前記三角波の前記振幅値の平均値を取得する平均化回路を備え、
前記第1入力端子には前記平均値が入力されることを特徴とする付記12に記載の位相調整回路。
(付記14)
参照信号と該参照信号に対して所定の位相差を有する移相参照信号とを用いる微小信号増幅において、
前記参照信号を三角波に変換するステップと、
前記三角波が入力され、該三角波の振幅値の振幅基準値に対する差分に応じた調整信号を前記三角波変換回路に対して出力するステップと、
入力される前記三角波と所定のしきい値とを比較して、前記移相参照信号を出力するステップとを備え、
前記三角波変換回路は、前記調整信号に応じて前記振幅値を調整することを特徴とする位相調整方法。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の原理図
【図2】第1実施形態に係る同期検波回路10の回路図
【図3】同期検波回路10のタイミングチャート(その1)
【図4】同期検波回路10のタイミングチャート(その2)
【図5】同期検波回路10のタイミングチャート(その3)
【図6】第2実施形態に係る位相調整回路1aの回路図
【図7】位相調整回路1aのタイミングチャート
【図8】第3実施形態に係る位相調整回路1bの回路図
【図9】位相調整回路1bのタイミングチャート
【図10】位相調整回路1cの回路図
【図11】位相調整回路1cのタイミングチャート
【図12】三角波振幅制御回路3cの回路図
【図13】従来技術に係る同期検波回路100の回路図
【符号の説明】
【0064】
1 位相調整回路
2 三角波変換回路
3 三角波振幅制御回路
4 位相シフト回路
5 エッジパルス生成回路
10 同期検波回路
12 発振器
13 ローパスフィルタ
15 同期検波回路
AS 調整信号
C11、C12 容量
CG11、CG12、CG21、CG22 定電流源回路
OPD 位相シフト量
PH ピークホールド回路
RS 搬送波
VAM 振幅値
VC 三角波
VCRF しきい値
VPAJ 振幅基準値
VPSIN パルス列信号
VPSOUT 移相パルス列信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照信号と該参照信号に対して所定の位相差を有する移相参照信号とを用いる微小信号増幅において、
前記参照信号を三角波に変換する三角波変換回路と、
前記三角波が入力され、該三角波の振幅値の振幅基準値に対する差分に応じた調整信号を前記三角波変換回路に対して出力する三角波振幅制御回路と、
入力される前記三角波と所定のしきい値とを比較して、前記移相参照信号を出力する位相シフト回路とを備え、
前記三角波変換回路は、前記調整信号に応じて前記振幅値を調整することを特徴とする位相調整回路。
【請求項2】
前記三角波変換回路は、
前記調整信号に応じて電流量が可変に制御される第1定電流源回路と、
前記第1定電流源回路により充放電される容量素子と、
前記参照信号に応じて前記容量素子への充放電を制御するスイッチ回路とを備え、
前記振幅値が前記振幅基準値を超える場合には、前記調整信号に応じて前記第1定電流源回路の電流量を減少させ、
前記振幅値が前記振幅基準値に到達しない場合には、前記調整信号に応じて前記第1定電流源回路の電流量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の位相調整回路。
【請求項3】
前記スイッチ回路は、
前記第1定電流源回路と直列接続され、前記容量素子と並列接続され、前記容量素子の充電時に非導通状態とされ、前記容量素子の放電時に導通状態とされることを特徴とする請求項2に記載の位相調整回路。
【請求項4】
前記三角波変換回路は、前記参照信号の立ち上がりエッジまたは/および前記参照信号の立ち下がりエッジを検出する少なくとも一つのエッジ検出回路を備え、
前記スイッチ回路は前記エッジ検出回路のエッジ検出動作に応じて導通制御が行われることを特徴とする請求項2に記載の位相調整回路。
【請求項5】
前記三角波振幅制御回路は、
前記三角波の前記振幅値の電圧範囲を監視する少なくとも一つの監視回路と、
前記監視回路ごとに備えられ、第1入力端子に前記監視回路の出力が入力され、第2入力端子に前記振幅基準値が入力され、前記調整信号を出力する演算増幅器と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の位相調整回路。
【請求項6】
前記監視回路はピークホールド回路であり、
前記振幅基準値は前記振幅値の上限値であることを特徴とする請求項5に記載の位相調整回路。
【請求項7】
前記監視回路は平均化回路であり、
前記振幅基準値は前記振幅値の平均値であることを特徴とする請求項5に記載の位相調整回路。
【請求項8】
前記演算増幅器の出力信号を保持した上で前記三角波変換回路へ出力する保持回路を備え、
前記三角波振幅制御回路は、前記保持回路に保持される前記出力信号の更新時に動作状態とされ、前記出力信号の非更新時に停止状態とされることを特徴とする請求項5に記載の位相調整回路。
【請求項9】
前記位相シフト回路は、
第1入力端子に前記しきい値が入力され、第2入力端子に前記三角波が入力される電圧比較器
を備えることを特徴とする請求項1に記載の位相調整回路。
【請求項10】
参照信号と該参照信号に対して所定の位相差を有する移相参照信号とを用いる微小信号増幅において、
前記参照信号を三角波に変換するステップと、
前記三角波が入力され、該三角波の振幅値の振幅基準値に対する差分に応じた調整信号を前記三角波変換回路に対して出力するステップと、
入力される前記三角波と所定のしきい値とを比較して、前記移相参照信号を出力するステップとを備え、
前記三角波変換回路は、前記調整信号に応じて前記振幅値を調整することを特徴とする位相調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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