説明

位置ずれ検出具、位置ずれ検出装置、位置ずれ検出システム、弛み検出具、弛み検出装置、弛み検出システム

【課題】部材間の相対的な位置ずれを容易かつ安定して検出可能な位置ずれ検出具、位置ずれ検出装置、位置ずれ検出システム、より詳しくは、被締結体に対する締結体の弛みを容易かつ安定して検出可能な弛み検出具、弛み検出装置、弛み検出システムを提供することである。
【解決手段】被締結部材510,520に固定されるリング部材20と、ボルト100と一体となって被締結部材510,520に対して回転移動するキャップ部材30とを有し、一方が、リーダライタ50と非接触通信可能なICタグ35を備え、他方が、ICタグ35の通信を遮断する導体片23を備える弛み検出具10とした。この弛み検出具10は、リング部材20に対してキャップ部材30が、規定量以上回転移動すると、ICタグ35とリーダライタ50との通信の可否が変化する。これを検出することにより、ボルト100の弛みを検出する弛み検出装置、弛み検出システムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを用いた固定部材と可動部材との相対的な位置ずれを検出するための位置ずれ検出具、位置ずれ検出装置、位置ずれ検出システム、より詳しくは、被締結体に対する締結体の弛みを検出するための弛み検出具、弛み検出装置、弛み検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトやナット、リベット等の締結体は、各種車両や航空機、産業及び工作機機器、各種建造物等において部材等の締結に広く使用されている。これらの締結体を用いることにより、対象物を締め付けた状態で保持することができる。例えば、ボルトとナットとで、部品をネジ締めすると、金属板等の被締結体は、ボルトとナットによる締め付け圧縮力を受けるとともに、ボルトには、引張方向の軸力が発生した状態で保持される。
【0003】
このような締結体によって被締結体をしっかり締結したとしても、例えば、被締結体に伝わる振動や温度や湿度の変化等により、経時的に締結体が弛んでその軸力が低下することが知られている。締結体の弛みは、締結機能の低下に繋がり、疲れ破壊や部品脱落等の原因となる。
そこで、締結体の経時的な弛み(軸力の低下)を検出する方法として、例えば、被締結体と締結体とにペンキ等により印を付けておき、目視検査によって両者間の印のズレから回転弛みを検出する方法や、ハンマで締結体又は締結体付近の被締結体を叩き、その打音によって作業者が弛みを判断する方法(ハンマリング)等がある。
また、特許文献1に示すような、歪ゲージを測定対象の締結体に貼付して軸力を測定し、弛みを検出する方法や、特許文献2に示すように、超音波を用いてボルトの軸力を測定する方法等も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−140653号公報
【特許文献2】特開2006−308342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、印付けによる検出方法では、ボルトが目視困難な位置に設けられている場合には、検出が非常に困難であり、また、ボルトが用いられる環境等によっては、風雨や気温の変化等により塗料が剥がれてしまい、検出が不可能となるという問題がある。
ハンマリングによる検出方法は、弛みが生じているか否かの判断が、作業者の経験と勘に左右されるため、熟練した作業者でないと判断が難しく、また、熟練した作業者であっても周囲の環境や本人の体調等によっては判断を誤るおそれがあるという問題がある。
【0006】
一方、歪ゲージや超音波を用いる方法は、締結体の経時的な弛みを安定して検出することが可能である。しかし、例えば、歪ゲージを用いる方法では、各締結体に歪ゲージを貼り付けた後に、引張試験機によって引張荷重(軸力)−歪出力との校正作業を行う必要があるため、設置作業に手間と時間がかかるという問題がある。
また、超音波を用いる方法では、検査精度を確保するために、ボルトの頭部端面と反対側の端面(ネジ側端面)とを精密な平面とする必要があるという問題や、超音波探触子を測定する締結体ごとに一定時間接触させる必要があり、検査に時間がかかるという問題に加えて、検出装置が高額でありコストがかかるという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、部材間の相対的な位置ずれを容易かつ安定して検出可能な位置ずれ検出具、位置ずれ検出装置、位置ずれ検出システム、より詳しくは、被締結体に対する締結体の弛みを容易かつ安定して検出可能な弛み検出具、弛み検出装置、弛み検出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、固定部材(510,520)と、前記固定部材に対して相対移動可能な可動部材(100)との相対的な位置ずれの検出に用いられる位置ずれ検出具であって、前記固定部材に固定され、不導体により形成される第1部材(20)と、前記可動部材と一体となって前記固定部材に対して相対移動し、前記相対移動の移動方向に対して垂直な方向であって前記第1部材に対応する領域に配置され、不導体により形成される第2部材(30)と、を有し、前記第1部材と前記第2部材とのいずれか一方が、外部機器と非接触通信可能な検出用ICタグ(35)を備え、他方が、導体であって前記検出用ICタグの通信を遮断する遮断材(23,26,28)を備え、前記第1部材と前記第2部材との相対的な位置が合わせられた初期状態から、前記第2部材が前記第1部材に対して規定量以上相対移動すると、前記相対移動の移動方向に対して垂直な方向から見て、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域内に位置する状態から前記遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域外に位置する状態から前記遮断材の領域内に位置する状態へ変化すること、を特徴とする位置ずれ検出具(10〜17)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の前記位置ずれ検出具において、前記可動部材は、締結部材(100)であり、前記固定部材は、前記締結部材によって締結される被締結部材(510,520)であり、前記可動部材は、前記固定部材に対して相対的に回転移動すること、を特徴とする位置ずれ検出具(10〜17)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の前記位置ずれ検出具と、前記検出用ICタグ(35)と非接触通信可能であり、前記検出用ICタグとの非接触通信が可能か否かを検出可能な検出部(50)と、を備える位置ずれ検出装置(10〜17)である。
【0009】
請求項4の発明は、被締結部材(510,520)に対して相対的に回転移動して、前記被締結部材又は他方の締結部材のネジ穴部(520a)、又は、他方の締結部材の雄ネジ部に螺合し、前記被締結部材を締結する締結部材(100)の弛みの検出に用いられる弛み検出具であって、不導体により形成された略リング状の部材であり、前記締結部材の回転中心軸(L)とその中心が同一となるように前記被締結部材に固定される第1部材(20)と、前記回転中心軸方向において前記被締結部材とは反対側であって前記第1部材と対向する位置に設けられた略円環状の鍔部(31)と、前記鍔部の内周側であって前記締結部材を嵌合して保持する保持部(32)とを備え、前記締結部材と一体となって前記被締結部材に対して相対的に回転移動する不導体により形成された第2部材(30)と、を有し、前記第1部材と前記第2部材とのいずれか一方が、外部機器と非接触通信可能な検出用ICタグ(35)を備え、他方が、前記検出用ICタグの通信を遮断する遮断材(23,26,28)を備え、前記第1部材と前記第2部材との相対的な位置が合わせられた初期状態から、前記第1部材に対して前記第2部材が、前記回転中心軸を中心として前記締結部材の締結を開放する開放方向に規定量以上回転移動すると、前記回転中心軸方向から見て、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域内に位置する状態から前記遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域外に位置する状態から前記遮断材の領域内に位置する状態へ変化すること、を特徴とする弛み検出具(10〜17)である。
請求項5の発明は、請求項4に記載の弛み検出具において、前記第1部材(20)及び/又は前記第2部材(30)は、前記第2部材の回転移動量に関わらず、前記回転中心軸(L)方向から見て前記遮断材(23,26,28)の領域外に位置する第2のICタグ(27,37)を備えていること、を特徴とする弛み検出具(12〜15)である。
請求項6の発明は、請求項4又は請求項5に記載の弛み検出具において、前記第1部材(20)及び前記第2部材(30)は、互いに係合し、前記回転中心軸方向の移動を規制する係合部(24,34)を有すること、を特徴とする弛み検出具(10〜17)である。
【0010】
請求項7の発明は、請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載の弛み検出具において、前記第1部材(20)に対して前記第2部材(30)が前記初期状態から前記開放方向に18°以上回転した場合に、前記回転中心軸方向から見て、前記検出用ICタグ(35)が前記遮断材(23,26,28)の領域内に位置する状態から前記遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域外に位置する状態から前記遮断材の領域内に位置する状態へ変化すること、を特徴とする弛み検出具(10〜16)である。
【0011】
請求項8の発明は、請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載の弛み検出具において、前記第1部材(20)に対して前記第2部材(30)が前記初期状態から前記開放方向に9°以上回転した場合に、前記回転中心軸(L)方向から見て、前記検出用ICタグ(35)が前記遮断材(23)の領域内に位置する状態から前記遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域外に位置する状態から前記遮断材の領域内に位置する状態へ変化すること、を特徴とする弛み検出具(17)である。
請求項9の発明は、請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載の弛み検出具において、前記第1部材(20)又は前記第2部材(30)は、複数の前記検出用ICタグ(35)を備え、前記第2部材の前記第1部材に対する前記開放方向への回転移動量に応じて、前記回転中心軸(L)方向から見て、前記検出用ICタグが前記遮断材(23)の領域内に位置する状態から前記遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域外に位置する状態から前記遮断材の領域内に位置する状態へ、段階的に変化すること、を特徴とする弛み検出具(17)である。
【0012】
請求項10の発明は、請求項4から請求項9までのいずれか1項に記載の弛み検出具において、前記第2部材(30)は、前記締結部材(100)の前記回転中心軸(L)方向に沿って前記被締結部材(510,520)とは反対側の頂部を被覆する被覆部(33)を有すること、を特徴とする弛み検出具(10〜17)である。
請求項11の発明は、請求項10に記載の弛み検出具において、前記被覆部は、金属により形成されていること、を特徴とする弛み検出具である。
請求項12の発明は、請求項4から請求項11までのいずれか1項に記載の弛み検出具において、前記第1部材(20)及び前記第2部材(30)の鍔部(31)の外縁部を仮止め部材によって、仮止めされ、前記初期状態で供給されること、を特徴とする弛み検出具(10〜17)である。
【0013】
請求項13の発明は、請求項4から請求項12までのいずれか1項に記載の弛み検出具(10〜17)と、前記検出用ICタグ(35)と非接触通信可能であり、前記検出用ICタグとの通信状態を検出可能な検出部(50)と、を備える弛み検出装置である。
請求項14の発明は、請求項13に記載の弛み検出装置において、前記検出部の動作を制御する制御部(51)を備えること、を特徴とする弛み検出装置である。
請求項15の発明は、請求項13又は請求項14に記載の弛み検出装置において、前記検出用ICタグ(35)と前記検出部(50)とが通信した情報を記録する記録部(52)を備えること、を特徴とする弛み検出装置である。
【0014】
請求項16の発明は、固定部材(510,520)と、固定部材に対して相対移動可能な可動部材(100)との相対的な位置ずれを検出する位置ずれ検出システムであって、前記固定部材に固定される固定部(20)と、前記固定部に対向する位置に配置され、前記可動部材と一体となって前記固定部材に対して相対移動する可動部(30)と、前記固定部と前記可動部とのいずれか一方に設けられた検出用ICタグ(35)と、他方に設けられた前記検出用ICタグの通信を遮断する遮断部(23,26,28)と、前記検出用ICタグと非接触通信可能であり、前記検出用ICタグとの通信の可否を検出する検出部(50)と、を備え、前記固定部と前記可動部との相対的な位置が合わせられた初期状態から、前記可動部が規定量以上相対移動することによって、前記検出用ICタグと前記検出部との間の通信が、通信可能な状態から通信不可能な状態へ変化したこと、又は、通信不可能な状態から通信可能な状態へ変化したことを前記検出部が検出することにより、前記固定部材と前記可動部材との相対的な位置ずれを検出すること、を特徴とする位置ずれ検出システムである。
【0015】
請求項17の発明は、被締結部材(510,520)を、前記被締結部材又は他方の締結部材のネジ穴(520a)、又は、他方の締結部材の雄ネジとの螺合によって締結する締結部材(100)の弛みを検出する弛み検出システムであって、前記被締結部材に固定される固定部(20)と、前記固定部に対向する位置に配置され、前記締結部材と一体となって前記被締結部材に対して相対的に回転移動する可動部(30)と、前記固定部と前記可動部とのいずれか一方に設けられた検出用ICタグ(35)と、他方に設けられた前記検出用ICタグの通信を遮断する遮蔽部(23,26,28)と、前記検出用ICタグと非接触通信可能であり、前記検出用ICタグとの通信の可否を検出する検出部(50)と、を備え、前記固定部と前記可動部との相対的な位置が合わせられた初期状態から、前記可動部が前記固定部に対して、前記締結部材の締結を開放する方向に規定量以上回転移動することによって、前記検出用ICタグと前記検出部との間の通信が、通信可能な状態から通信不可能な状態へ変化したこと、又は、通信不可能な状態から通信可能な状態へ変化したことを前記検出部が検出することにより、前記締結部材の弛みを検出すること、を特徴とする弛み検出システムである。
請求項18の発明は、請求項17に記載の弛み検出システムにおいて、前記可動部(30)の回転移動に関わらず、前記検出部(50)と非接触通信可能な第2のICタグ(27,37)を備えること、を特徴とする弛み検出システムである。
請求項19の発明は、請求項17又は請求項18に記載の弛み検出システムにおいて、複数の前記検出用ICタグ(35)を備え、前記初期状態からの前記可動部(30)の回転移動量によって各前記検出用ICタグの前記検出部(50)との通信の可否が個々に変化し、前記締結部材の回転量を段階的に検出可能であること、を特徴とする弛み検出システムである。
【0016】
請求項20の発明は、請求項17から請求項19までのいずれか1項に記載の弛み検出システムにおいて、前記検出部(50)の動作を制御する制御部(51)を備えること、を特徴とする弛み検出システムである。
請求項21の発明は、請求項13から請求項15までのいずれか1項に記載の前記弛み検出装置と、前記弛み検出装置の動作を制御する制御部(51)と、を備える弛み検出システムである。
請求項22の発明は、請求項15から請求項19までのいずれか1項に記載の弛み検出システムにおいて、前記検出用ICタグ(35)との通信結果に関する情報を記録する記録部(52)を備えること、を特徴とする弛み検出システムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明による位置ずれ検出具は、第1部材と第2部材との相対的な位置が合わせられた初期状態から、第2部材が第1部材に対して規定量以上相対移動すると、相対移動の移動方向に対して垂直な方向から見て、検出用ICタグが遮断材の領域内に位置する状態から遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、検出用ICタグが遮断材の領域外に位置する状態から前記遮断材の領域内に位置する状態へ変化するので、検出用ICタグが外部機器と非接触通信可能か否かを検出することにより、可動部材の固定部材に対する位置ずれを非接触で容易に検出することができる。
【0018】
(2)可動部材は、締結部材であり、固定部材は、締結部材によって締結される被締結部材であり、可動部材は、固定部材に対して相対的に回転移動するので、ボルトやナット等のような締結部材の弛みを検出できる。
【0019】
(3)本発明による位置ずれ検出具と、検出用ICタグと非接触通信可能であり、検出用ICタグとの非接触通信が可能か否かを検出可能な検出部とを備える位置ずれ検出装置であるので、固定部材に対する可動部材の位置ずれを非接触により検出することができる。
【0020】
(4)本発明による弛み検出具は、第1部材と第2部材との相対的な位置が合わせられた初期状態から、第1部材に対して第2部材が、回転中心軸を中心として締結部材の締結を開放する開放方向に規定量以上回転移動すると、回転中心軸方向から見て、検出用ICタグが遮断材の領域内に位置する状態から遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、検出用ICタグが遮断材の領域外に位置する状態から遮断材の領域内に位置する状態へ変化するので、検出用ICタグが外部機器と非接触通信可能か否かを検出することにより、締結部材の弛みを非接触で容易に検出することができる。
【0021】
(5)第1部材及び/又は第2部材は、第2部材の回転移動量に関わらず、回転中心軸方向から見て遮断材の領域外に位置する第2のICタグを備えているので、検出用ICタグが外部機器と非接触通信不可能な状態であっても、第2のICタグとの非接触通信を行うことができる。従って、第2のICタグに、締結部材の弛み検査に関する情報を記録すれば、検出用ICタグの通信可否に関わらず、それらの情報を得ることができる。
【0022】
(6)第1部材及び第2部材は、互いに係合し、前記回転中心軸方向の移動を規制する係合部を有するので、第2部材が第1部材から脱落することを防止できる。
【0023】
(7)第1部材に対して第2部材が初期状態から開放方向に18°以上回転した場合に、回転中心軸方向から見て、検出用ICタグが遮断材の領域内に位置する状態から遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、検出用ICタグが遮断材の領域外に位置する状態から遮断材の領域内に位置する状態へ変化するので、僅かな弛みであっても検出することができる。
【0024】
(8)第1部材に対して第2部材が初期状態から開放方向に9°以上回転した場合に、回転中心軸方向から見て、検出用ICタグが遮断材の領域内に位置する状態から遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、検出用ICタグが遮断材の領域外に位置する状態から遮断材の領域内に位置する状態へ変化するので、僅かな弛みであっても検出することができる。
【0025】
(9)第1部材又は第2部材は、複数の前記検出用ICタグを備え、第2部材の第1部材に対する開放方向への回転移動量に応じて、回転中心軸方向から見て、検出用ICタグが遮断材の領域内に位置する状態から遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、検出用ICタグが遮断材の領域外に位置する状態から前記遮断材の領域内に位置する状態へ、段階的に変化するので、締結部材の弛み量を段階的に検出することができる。
【0026】
(10)第2部材は、締結部材の回転中心軸方向に沿って被締結部材とは反対側の頂部を被覆する被覆部を有するので、締結部材が外部に露出せず、締結部材の劣化を防止できる。
【0027】
(11)被覆部は、金属により形成されているので、第2の部材を外すことなく工具で第2の部材ごと締結部材を締結方向へ増し締めすることができる。
【0028】
(12)第1部材及び第2部材の鍔部の外縁部を仮止め部材によって、仮止めされ、初期状態で供給されるので、締結部材に弛み検出具を取り付ける際に、第1部材と第2部材との位置を合わせる作業が不要となり、取り付け作業が容易になる。
【0029】
(13)本発明による弛み検出具と、検出用ICタグと非接触通信可能であり、検出用ICタグとの通信状態を検出可能な検出部とを備える弛み検出装置であるので、締結部材の弛みを非接触により容易に検出することができる。
【0030】
(14)検出部の動作を制御する制御部を備えるので、検出部の動作を容易に制御できる。
【0031】
(15)検出用ICタグと検出部とが通信した情報を記録する記録部を備えるので、弛み検出装置によって弛み検出を行った日時やその検出結果、増し締めの有無や増し締め量、作業者の識別番号等、様々な情報を管理することができる。
【0032】
(16)本発明による位置ずれ検出システムは、固定部と可動部との相対的な位置が合わせられた初期状態から、可動部が規定量以上相対移動することによって、検出用ICタグと検出部との間の通信が、通信可能な状態から通信不可能な状態へ変化したこと、又は、通信不可能な状態から通信可能な状態へ変化したことを検出部が検出することにより、固定部材と可動部材との相対的な位置ずれを検出するので、非接触によって位置ずれを検出することができる。
【0033】
(17)本発明による弛み検出システムは、固定部と可動部との相対的な位置が合わせられた初期状態から、可動部が固定部に対して、締結部材の締結を開放する方向に規定量以上回転移動することによって、検出用ICタグと検出部との間の通信が、通信可能な状態から通信不可能な状態へ変化したこと、又は、通信不可能な状態から通信可能な状態へ変化したことを検出部が検出することにより、前記締結部材の弛みを検出するので、非接触によって締結部材の弛みを検出することができる。
【0034】
(18)可動部の回転移動に関わらず、検出部と非接触通信可能な第2のICタグを備えるので、検出用ICタグが外部機器と非接触通信不可能な状態であっても、検出部が第2のICタグとの非接触通信を行うことができる。従って、第2のICタグに、締結部材の弛み検査に関する情報を記録すれば、検出用ICタグの通信可否に関わらず、それらの情報を得ることができる。
【0035】
(19)複数の検出用ICタグを備え、初期状態からの可動部の回転移動量によって各検出用ICタグの検出部との通信の可否が個々に変化し、締結部材の回転量を段階的に検出可能であるので、締結部材の弛み量をより詳細に検出できる。
【0036】
(20)検出部の動作を制御する制御部を備えているので、検出部の動作を容易に制御でき、弛みを検出する作業が容易である。
【0037】
(21)弛み検出装置の動作を制御する制御部を備えるので、弛みを検出する作業が容易である。
【0038】
(22)検出用ICタグとの通信結果に関する情報を記録する記録部を備えるので、弛み検出を行った日時やその検出結果、増し締めの有無や増し締め量、作業者の識別番号等、様々な情報を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1実施形態の弛み検出具を説明する図である。
【図2】第1実施形態の弛み検出装置及び弛み検出システム、及び、弛み検出方法を説明する図である。
【図3】第2実施形態の弛み検出具、弛み検出装置及び弛み検出システムを説明する図である。
【図4】第3実施形態の弛み検出具を説明する図である。
【図5】第4実施形態の弛み検出具を説明する図である。
【図6】第5実施形態の弛み検出具を説明する図である。
【図7】第6実施形態の弛み検出具を説明する図である。
【図8】第7実施形態の弛み検出具を説明する図である。
【図9】第8実施形態の弛み検出具を説明する図である。
【図10】変形形態のキャップ部材を備える弛み検出装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
【0041】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の弛み検出具を説明する図である。
図1(a)は、弛み検出具10の側面図であり、図1(b)は、弛み検出具10の平面図である。図1(c)は、図1(b)に示す矢印A−Aでの断面図であり、図1(d)は、図1(b)に示す矢印B−Bでの断面図である。なお、図1(c),(d)では、ボルト100に装着した状態での弛み検出具10の断面を示している。
【0042】
弛み検出具10は、金属板等の被締結部材510に固定されるリング部材20と、リング部材20に対向する鍔状部31と、ボルト100の頭部120を被覆する被覆部33と、ボルト100の頭部120の側面を保持する保持部32とを有するキャップ部材30とを有する。リング部材20とキャップ部材30とは別体である。
そして、弛み検出具10は、キャップ部材30の鍔状部31に配置された検出用ICタグ35と、リング部材20に配置された検出用ICタグ35の非接触通信を遮断する遮断部である導体片23とを備え、検出用ICタグ35の通信状態の変化を検出することにより、ボルト100の弛みを検出する機能を有している。
【0043】
本実施形態のボルト100は、雄ねじが形成された軸部110と、軸部110の一方の端部に形成された略六角柱状の頭部120とを有する六角ボルトである。このボルト100は、図1(c)に示すように、各種車両、航空機、産業・工作機器等の金属製の被締結部材510に設けられた孔に挿入され、金属製の被締結部材520に設けられたネジ穴520aと螺合し、この被締結部材510と被締結部材520とを締結する。本実施形態では、M24の六角ボルト(JIS B 1180)を用いており、頭部120の二面幅は36mm、対角距離は39.55mm、頭高(回転中心軸L方向の寸法)は15mmである。このボルト100は、ネジ穴520aに螺合し、図1(b)に示す矢印C方向(開放方向)へ回転することにより締結を開放し、矢印D方向(締結方向)へ回転することにより、被締結部材510,520を締結する。
本実施形態の弛み検出具10は、このボルト100の頭部120に装着され、ボルト100の弛みを検出するものである。
【0044】
弛み検出具10は、リング部材20及びキャップ部材30ともに、樹脂等の不導体材料により形成されている。本実施形態のリング部材20及びキャップ部材30は、耐候性や耐久性、強度、精密成形性等の観点から、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)により形成されているが、使用する環境や所望する強度等に応じて、汎用樹脂やエンジニアリング樹脂、スーパーエンジニアリング樹脂、ゴム等から適宜選択して使用してよい。
【0045】
リング部材20は、リング状の部材であり、接合面21、対向面22、導体片23、リング側係合部24、リング側位置決め部25等を備えており、被締結部材510に固定される第1部材である。図1に示すように、弛み検出具10がボルト100の頭部120に装着された状態では、ボルト100の回転中心軸Lとリング形状の内周円の中心とが略一致している。
このリング部材20の内周の径は、ボルト100の頭部120の径よりも大きく形成されている。本実施形態のリング部材20は、ボルト100がM24であるため、その内径が44.5mm、外径が60mmであり、厚さは3mmとしたが、ボルトのサイズによって適宜その寸法を設定可能である。
接合面21は、リング部材20の一端面であり、不図示の接着剤層や両面テープ等により、被締結部材510の表面にリング部材20(弛み検出具10)を接合する面である。対向面22は、接合面21とは反対側の端面であり、キャップ部材30の鍔状部31と対向する面である。
【0046】
導体片23は、金属等の導体によって形成された薄板状の遮断材であり、ICタグ35の不図示のアンテナが発生させる磁界を遮断する位置に配置されることにより、ICタグ35の外部機器との非接触通信を遮断する機能を有している。本実施形態の導体片23は、ステンレスにより形成されているが、これに限らず、銅やアルミニウム等により形成されてもよい。
また、本実施形態の導体片23は、略円環状であるが、一部に開口部23aを有している。開口部23aは、その両端が円環形状の中心(回転中心軸L)に対して角度θ1(約18°)をなしており、この角度θ1は本実施形態におけるボルト100の弛みの許容範囲の大きさに等しい。
また、本実施形態の導体片23は、リング部材20に埋設され、リング部材20の対向面22及び接合面21には露出しない形態となっており、対向面22及び接合面21は、略平坦となっている。なお、導体片23は、対向面22及び接合面21に露出する形態としてもよく、製造条件や設置環境等に応じて選択できる。
【0047】
リング側係合部24は、キャップ部材30に設けられた後述のキャップ側係合部34と係合する部分であり、本実施形態では、リング部材20の内周側端部のキャップ部材30側に、周方向に連続して形成され、径方向内側へ突出した形態となっている。
リング側位置決め部25は、キャップ部材30に設けられたキャップ側位置決め部36とその周方向の位置を一致させることにより、弛み検出具10の初期状態を決める機能を有する印である。ここで、弛み検出具10の初期状態とは、弛み検出具10のキャップ部材30とリング部材20との間に、相対的な位置ずれが生じていない状態であり、弛み検出具10の使用に際して予め設定される状態である。
本実施形態のリング側位置決め部25は、リング部材20の外周端部であって導体片23の開口部23a近傍となる位置に、回転中心軸L方向から見て、外周側へ凸となる略矩形状に形成されているが、リング側位置決め部25は、目視等により確認できる形状であれば、略三角形状等でもよく、特にその形状を限定しない。
このリング側位置決め部25は、上述の初期状態の位置合わせに用いることに加え、リーダライタ50としてハンディタイプのものを用いる場合等に、そのリーダライタによってICタグ35との非接触通信を行うポイント(リーダライタを近付けるもしくは当てる場所)としても活用できる。
【0048】
キャップ部材30は、略円筒形状であり、リング部材20に対向する鍔状部31、ボルト100の頭部120の側面を保持する保持部32、ボルト100の頭部120を被覆する被覆部33、リング部材20と係合するキャップ側係合部34、ICタグ35、キャップ側位置決め部36等を備える第2部材である。キャップ部材30は、ボルト100の回転に追従し、リング部材20に対して相対的に回転可能である。
鍔状部31は、リング部材20に対向し、リング部材20を被覆するように略円環形状に形成された部分である。本実施形態の鍔状部31は、径方向の幅が11.8mm、厚みが約1.5mmであり、図1(c)に示すように、ボルト100に弛み検出具10を装着した状態において、被締結部材510表面から鍔状部31のリング部材とは反対側の面までの高さhは、4.5mmである。これらの寸法は、ボルトのサイズによって適宜設定可能である。
【0049】
被覆部33は、ボルト100の頭部120を被覆する部分である。本実施形態の被覆部33は、ボルト100の頭部120の側面及び頂面120aを被覆している。
保持部32は、鍔状部31及び被覆部33の内周側に形成され、ボルト100の頭部120の形状に合せて略六角柱状に形成された中空状の部分である。この保持部32は、ボルト100の頭部120と嵌合可能である。この保持部32により、キャップ部材30は、頭部120と一体となって回転可能である。
【0050】
キャップ側係合部34は、リング部材20のリング側係合部24と着脱可能に係合する部分であり、本実施形態では、保持部32の外周側であって鍔状部31よりもリング部材20側に周方向に連続して形成された、外周側へ凸となる部分である。
このキャップ側係合部34とリング側係合部24とが係合することにより、キャップ部材30は、リング部材20に対して、厚さ方向(ボルト100の回転中心軸L方向)への移動が規制され、キャップ部材30の脱落を防止できる。一方、ボルト100の回転方向への位置は規制されず、ボルト100の回転にともなって、キャップ部材30は、リング部材20に対して、図1(b)に示す矢印C方向及びD方向に回転可能である。
【0051】
ICタグ35は、鍔状部31に配置され、外部機器と非接触通信可能な情報記録装置である。本実施形態のICタグ35は、表面に不図示のアンテナ部が形成された不図示の絶縁基板を複数積層し、その絶縁基板表面又は絶縁基板間に不図示のICチップを配置した多層基板型のICタグを用いている(例えば、特開2007−213514号公報)。このようなICタグは、一般的な樹脂製の基板にコイル状のアンテナを形成するICタグに比べて非常に小型である。本実施形態のICタグ35は、その外形が略直方体形状であり、平面形状が約5.5mm×5.5mm、厚みが約1.0mmである。
ICタグ35は、アンテナ面に平行な面がリング部材20の対向面22と略平行となるようにして鍔状部31に埋設されており、その表面は表出しておらず、鍔状部31の表面は、略平坦となっている。なお、これに限らず、ICタグ35は、例えば、その表面が鍔状部31表面に表出していてもよいし、鍔状部31の表面に接着剤等により接合されていてもよい。
また、ICタグ35は、金属製である被締結部材510に対して、ボルト100の回転中心軸L方向に約2.0mm離れて配置されており、被締結部材510によってその通信が妨げられることはない。
【0052】
なお、本実施形態のように、導体片23及びICタグ35を、それぞれ、リング部材20及び鍔状部31に埋設する形態とすれば、リング部材20の対向面22及び鍔状部31の対向面22側の面がともに平坦となり、キャップ部材30のリング部材20に対する回転を妨げるおそれがない。
また、本実施形態のICタグ35は、ボルト100の回転中心軸L方向から見て、導体片23と重なる平面(リング部材20側の面)の面積が、その平面の約7割以上となると、非接触通信が遮断され、リーダライタ50との通信が不可能となる。導体片とどの程度重なることによりICタグの通信が遮断されるかは、リーダライタの種類やICタグの種類、導体片となる金属部材とICタグとの高さ方向(回転中心軸L方向)の距離にも依る。なお、本実施形態では、理解を容易にするために、図1を含め以下に示す各図においては、ICタグの通信が遮断された状態とは、ボルト100の回転中心軸L方向から見て、ICタグが完全に導体片上に位置する状態として示している。
【0053】
キャップ側位置決め部36は、図1(b)に示すように、リング部材20に設けられたリング側位置決め部25とその周方向の位置を一致させることにより、弛み検出具10の初期状態を決める機能を有する。
本実施形態のキャップ側位置決め部36は、鍔状部31のICタグ35に対応する位置にリング部材20側とは反対側の面に形成され、略円盤状に突出した形状を有しているが、目視等により確認できる形状であれば、凹形状や半球状の突起等でもよく、特にその形状を限定しない。
このキャップ側位置決め部36は、リング側位置決め部25と同様に、弛み検出具10の初期状態の位置合わせに用いることに加え、リーダライタ50としてハンディタイプのものを用いる場合等に、そのリーダライタによってICタグ35との非接触通信を行うポイント(リーダライタを近付けるもしくは当てる場所)としても活用できる。
【0054】
キャップ側位置決め部36とリング側位置決め部25との周方向の位置を合せ、弛み検出具10を初期状態とすると、図1(b)に示すように、回転中心軸L方向から見て、ICタグ35は、導体片23の開口部23a内に位置する状態となり、導体片23によって通信が妨げられない。
本実施形態の弛み検出具10は、リング部材20とキャップ部材30とが係合し、予め初期状に設定された状態で、リング部材20とキャップ部材30の鍔状部の外縁部分を仮止め部材等によって仮止めした状態で供給されるものとする。
これにより、ボルト100に弛み検出具10を装着する際に、初期状態を設定し直す必要がなく、作業を容易に行える。この仮止め部材は、片面に不用意な力でキャップ部材30が回転しない程度の接合力を有する接着剤層等が設けられた紙製等の仮止め用テープ等を用いることができる。なお、この仮止め部材には、ボルト100の回転によってキャップ部材30が回転可能となるように、例えば、鍔状部31とリング部材20との境目に、周方向にミシン目や切れ込み等を設けてもよい。
【0055】
図2は、本実施形態の弛み検出装置及び弛み検出システム、及び、弛み検出方法を説明する図である。この図を参照しながら、弛み検出具10の使用方法等を説明する。
図2(a)では、ボルト100に弛みがなく、弛み検出具10が初期状態である様子を示し、図2(b)では、ボルト100が弛んだときの弛み検出具10の状態を示している。なお、図2(a),(b)の紙面左側の図において、上側は、弛み検出具10を回転中心軸Lに沿って見た平面図であり、導体片23とICタグ35との位置関係を破線によって示している。下側は、弛み検出具10の側面図であり、理解を容易にするために、ICタグと導体片とはリング部材20及びキャップ部材30の表面に露出した形態で示している。なお、理解を容易にするために、図2では、ボルトを省略して示している。
本実施形態の弛み検出装置及び弛み検出システムは、ICタグ35及び導体片23を備える弛み検出具10と、ICタグ35と非接触通信可能なリーダライタ50と、CPU(Central Processing Unit)51と、管理サーバ52、入力部53とを備えている。
【0056】
リーダライタ50は、ICタグ35と非接触通信可能であり、通信可能な状況下では、ICタグ35とデータやコマンドの送受信が可能である。また、このリーダライタ50によってICタグ35と通信可能か否かを調べることにより、ICタグ35の通信状態を検出する検出部としての機能を有する。なお、このリーダライタ50は、不図示のメモリを内部に備え、ICタグ35との通信で得られた各種情報をそのメモリに記録可能及び読み出し可能としてもよい。
CPU51は、リーダライタ50と有線又は無線で接続された中央演算処理装置である。このCPU51は、入力部53からの入力やCPU内の不図示のメモリに記録されたプログラムに基づいて、リーダライタ50への指示を出してICタグ35との通信を行わせる等、その動作を制御したり、リーダライタ50が受信したICタグ35の情報の処理を行ったりする制御部である。不図示のメモリには、各種処理を実行するためのプログラム等が予め記録されている。
管理サーバ52は、CPU51の指示によって各種データを記録及び管理する記録装置である。
【0057】
以下、本実施形態の弛み検出具及び弛み検出装置の使用方法を説明する。
まず、ボルト100を用意し、被締結部材510の孔及び被締結部材520のねじ穴に挿入し、レンチ等の不図示の工具で締結方向(図1(b)に示す矢印D方向)に回転させて締結する。本実施形態では、ボルト100に弛みが生じていない締結状態とは、ボルト100の頭部120が被締結部材510に着座してから、さらに約36°(約1/10回転)増し締めした状態である。また、許容できるボルト100の弛みは、その締結状態から約18°(約1/20回転)開放方向(図1(b)に示す矢印C方向)へ回転した状態までとし、それ以上回転した場合は、増し締めが必要である。
【0058】
次に、リング部材20とキャップ部材30とが予め係合し、仮止め部材によって初期状態を維持した状態で供給された弛み検出具10を用意し、接合面21に接着剤等を塗布した後に、保持部32に頭部120を嵌合させ、被締結部材510の表面に接合する。
なお、接合面21に不図示のシート状やフィルム状等の接着剤層を設け、その表面を剥離紙等により保護した形態として弛み検出具10を提供すれば、貼付作業を容易に行うことができる。また、仮止め部材は、弛み検出具10から外さなくてもよい。
仮止め部材によって弛み検出具10の初期状態が予め設定されていない場合や、仮止め部材が剥離している場合等は、キャップ部材30を回転させ、キャップ側位置決め部36とリング側位置決め部25との周方向における位置を合わせ、弛み検出具10を初期状態とする。
【0059】
弛み検出具10の初期状態では、図2(a)に示すように、ICタグ35は、ボルト100の回転中心軸Lに沿った方向から見て、導体片23に設けられた開口部23aに位置しており、導体片23によってその通信を阻害されない。
次に、作業者は、リーダライタ50よってICタグ35と非接触通信を行い、ICタグ35のユニークIDを読み出す。CPU51は、読み出されたICタグ35のユニークIDを、ボルト100を締結した日時、被締結部材510,520の識別番号、作業者の識別番号等の締結に関する各種情報等とともに、管理サーバ52の所定の領域に記録させる。また、CPU51からの指示により、リーダライタ50を介して、ボルト100を締結した日時等の各種情報をICタグ35の不図示のメモリに記録することができる。
【0060】
メンテナンス時には、作業者は、リーダライタ50によって弛み検出具10のICタグ35と非接触通信可能か否か検出する。
このとき、仮に、ボルトが弛んでいない場合、弛み検出具10は、キャップ部材30とリング部材20との位置関係は初期状態のままである。また、ボルト100の弛みが許容範囲内であれば、ボルト100の回転(弛み)と一体となってキャップ部材30が回転し、ICタグ35も開放方向(矢印C方向)に移動するが、ICタグ35は、回転中心軸L方向から見て、開口部23a内に位置している。
【0061】
従って、ICタグ35は、導体片23にその通信を遮断されることがなく、リーダライタ50とは非接触通信可能である。このとき、リーダライタ50によってICタグ35との非接触通信を試みると、リーダライタ50は、ICタグ35が非接触通信可能であることを検出する。そして、CPU51からの指示により、リーダライタ50がICタグ35のユニークIDや、前回の検査の日時やそのときのボルト100の状態等の締結に関する情報等、ICタグ35に記録されている情報を必要に応じて読み出すことができる。
CPU51は、リーダライタ50によってそのICタグ35が非接触通信可能であり、初期状態での通信の可否と変化がないと判断すると、検査を行った日時や、作業者のID、検査結果等の情報を、管理サーバ52に記録する。また、CPUは、リーダライタ50を介してICタグ35のメモリの所定の領域に、検査を行った日時等の情報を書き込む。この際、書き込まれた情報は、前回記録された情報に上書きしてもよいし、別の領域に書き込んでもよい。
【0062】
しかし、仮に、ボルト100が許容範囲(約18°)以上を弛んでいる場合には、ボルト100の回転と一体となって開放方向にキャップ部材30が規定量である角度θ1以上(例えば、図2(b)に示す角度α)回転し、ICタグ35は、回転中心軸L方向から見て、導体片23上となる位置へ移動する。これにより、ICタグ35は、導体片23によって通信が遮断され、リーダライタ50と通信不可能な状態となる。
このとき、リーダライタ50によってICタグ35との非接触通信を試みても、ICタグ35は、導体片23によってその通信が遮断されており、リーダライタ50は、ICタグ35が非接触通信不可能であることを検出する。すなわち、そのICタグ35が対応するボルト100が許容範囲を超えて弛んでいることを検出する。
【0063】
そして、CPU51の指示によって不図示の表示部に、弛みを検出した(すなわち、ICタグ35との非接触通信が不可能であった)旨を表示する。
弛みが検出されたボルト100は、作業者によってキャップ部材30が外され、ボルト100の頭部120を工具等で保持し、締結状態まで増し締めされる。
増し締めした後、作業者は、キャップ部材30をボルト100の頭部120に被せ、キャップ側係合部34とリング側係合部24とを係合させ、キャップ側位置決め部36の周方向の位置をリング側位置決め部25の位置と合わせ、弛み検出具10を再び初期状態とする。
【0064】
そして、作業者は、リーダライタ50によって再度ICタグ35の通信状態を検出し、通信可能であることを確認し、ICタグ35のメモリに、検査日時及び増し締めした日時や増し締めの量、作業者の識別番号等の検査に関する各種情報を記録させる。また、CPU51は、ICタグ35のIDを、リーダライタ50を介して読み出し、増し締めした日時や増し締め量等の情報を管理サーバ52に記録する。
従って、本実施形態では、管理サーバ52の所定の領域に、各ICタグ35のユニークIDごとに、検査日時や検査時のICタグの通信状態、増し締めの日時、増し締め量、作業者の識別番号等の情報が記録されている。
【0065】
上述のように、本実施形態によれば、個々のボルトごとに行う目視によるマーキングの確認やハンマリング、超音波や歪ゲージを用いた検出方法等による検査を行う必要がなく、リーダライタ50によるICタグ35の通信状態の検出によって、短時間で簡単にボルト100の弛みを検出することができる。
しかも、ICタグ35によって、そのICタグ35に対応するボルト100の検査日時やそのときの増し締め量等の情報を管理したり、管理サーバ52によって複数のICタグ35、ひいては複数のボルト100の検査に関する情報を管理したりすることができ、作業が容易であり、かつ、より大きく詳細な情報を管理することができる。
また、ICタグ35とリーダライタ50との非接触通信によって、ボルト100の弛みを非接触で検出できるので、目視や接触しての弛みの検出が容易でない場所に設けられたボルト100の弛みも容易に検出することができる。
【0066】
さらに、ハンマリング等のように作業者の経験や勘に依存することなく、弛みを検出できるので、信頼性を向上させることができる。
加えて、容易に弛みを検出できるので、ボルト100の弛み検出作業を頻繁にかつ日常的な検査として行うことができ、安全性等の向上につなげることができる。
その上、ICタグ35とリーダライタ50との非接触通信によってボルト100の弛みを検出できるので、一度に複数のICタグとの通信を試みることによって同時に複数のボルト100の弛みの検査を行うことができ、作業効率を向上できる。
【0067】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態の弛み検出具、弛み検出装置及び弛み検出システムを説明する図である。図3(a)は、初期状態を示し、図3(b)は、ボルトが規定量(約18°)以上回転した状態を示している。図3(a),(b)の紙面左上側は、弛み検出具11の平面図であり、紙面左下側は、弛み検出具11の側面図であり、図2(a),(b)と同様に、理解を容易にするために、ボルト100等は省略し、ICタグ35及び導体片26がリング部材20及びキャップ部材30の表面に露出した形態で示している。
第2実施形態の弛み検出具11、弛み検出装置、弛み検出システムは、ICタグ35とリーダライタ50との非接触通信が、初期状態では不可能であるが、キャップ部材30の回転量が許容範囲を超えると可能となる。この通信状態の変化をリーダライタ50によって検出することにより、ボルト100の弛みを検出している点が、前述の第1実施形態とは異なる。従って、前述の第1実施形態と共通の機能を果たす部分には、同一の符合又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0068】
第2実施形態の導体片26は、略円弧状であり、その両端部は、回転中心軸Lに対して周方向に角度θ1(約18°)をなしている。この角度θ1は、ボルト100弛みの許容範囲に等しい。この弛み検出具11は、初期状態において、回転中心軸L方向から見て、導体片26の領域内にICタグ35が存在している。従って、ICタグ35は、初期状態では、リーダライタ50と非接触通信が不可能である。
しかし、振動等により、ボルト100が弛み、規定量(約18°)以上回転すると、キャップ部材30の回転によってICタグが開放方向(矢印C方向)に移動し、図3(b)に示すように、回転中心軸L方向から見て、ICタグ35は導体片26の領域外に位置している。従って、ICタグ35は、リーダライタ50と非接触通信可能となる。
これにより、リーダライタ50によって、ICタグ35の通信状態の変化を検出することができ、ボルト100の弛みを検出することができる。
【0069】
よって、本実施形態によれば、非接触で容易にボルト100の弛みを検出することができる。
また、本実施形態によれば、弛み検出具11の初期状態(ボルト100に弛みが生じていない締結状態)では、ICタグ35は、リーダライタ50と通信不可能であるが、キャップ部材30が規定量θ1以上回転するとICタグ35が通信可能となるので、複数の弛み検出具11の検査を行った場合にも、弛んだボルト100の見落としを防止できる。
さらに、本実施形態によれば、導体片26の大きさを小さくすることができ、コスト低減を図ることができる。
【0070】
(第3実施形態)
図4は、第3実施形態の弛み検出具を説明する図である。図4(a)は、初期状態での弛み検出具の平面図と側面図を示し、図4(b)は、許容範囲を超えてキャップ部材30が開放方向に回転した状態での平面図と側面図を示している。図4及び以下に示す図5〜9においては、図2(a),(b)と同様に、理解を容易にするために、ボルト100等は省略して示し、平面図においては導体片23とICタグ35とを破線によって示し、側面図においてはICタグと導体片とはリング部材20及びキャップ部材30の表面に露出した形態で示している。
第3実施形態は、弛み検出具12が、キャップ部材30の被覆部33に、キャップ部材30の回転量によって通信の可否が変化しないICタグ37を備えている点以外は、第1実施形態と略同様の形態である。従って、第1実施形態と共通の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0071】
第3実施形態の弛み検出具12は、被覆部33の頂部33a(ボルト100の頭部120の軸部110とは反対側の頂面120aに対応する部分)に、ICタグ37が埋設されている。ICタグ37は、リーダライタ50との非接触通信を妨げないように、ボルト100の頂面120aとは所定の距離を有している。
このICタグ37は、ボルト100の回転中心軸L上に位置しており、キャップ部材30がボルト100とともに回転しても、導体片23との位置関係に変化は無く、リーダライタ50と非接触通信可能な第2のICタグである。また、このICタグ37は、多層基板型のICタグであり、ICタグ35と同仕様のものを用いているが、異なる仕様や形状のものであってもよい。
【0072】
図4(a)に示すように、初期状態では、ICタグ35,37は、回転中心軸L方向から見て、ともに導体片23上には位置しておらず、ともにリーダライタ50と通信可能である。
しかし、ボルト100が締結状態から弛むと、ボルト100の回転に伴ってキャップ部材30が開放方向に回転する。そして、キャップ部材の回転量(角度α)が規定量(約18°)を超えると、ICタグ35は、回転中心軸L方向から見て、導体片23の領域上となる位置まで移動する。
これにより、検出用のICタグ35は、リーダライタ50との非接触通信が不可能になる。一方、ICタグ37は、回転中心軸L上に配置されており、キャップ部材30の回転量によらず、リーダライタ50と非接触通信可能である。
【0073】
本実施形態では、作業者は、検査時に、リーダライタ50により、ICタグ35,37の双方の通信の可否を検出する。このとき、CPU51は、リーダライタ50を介して、例えば、ICタグ35,37の双方へそのユニークIDを返信するようなコマンドを送信する。
ICタグ35,37の双方と通信可能であれば、リーダライタ50は、ICタグ35,37からユニークIDを読み出すことができ、これにより、その弛み検出具12の取り付けられたボルト100には、許容範囲を超える弛みが生じていないことを検出できる。
しかし、ICタグ37と通信可能であるが、検出用のICタグ35とは通信不可能であり、リーダライタ50が、ICタグ37のみのユニークIDしか読み出せなかった場合には、その弛み検出具12の取り付けられたボルト100には、許容範囲を超える弛みが生じていることを検出できる。
【0074】
このような実施形態とすれば、例えば、ICタグ35は、検出用としてのみ使用し、ICタグ37のメモリに検査日時、検査結果、増し締め日時、増し締め量等の情報を記録させる記録用として使用したり、ICタグ35の識別番号(ICタグ35のユニークID)を記録させてICタグ35の個体識別用として使用したりするというように、2つ設けられたICタグ35,37を使い分けることができる。
また、ボルト100が弛んでいる場合、前述の第1実施形態では、前回の検査日時や検査結果等の情報を読み出すことができなかったが、上述のようにICタグ35,37を使い分けることにより、前回の検査日時や検査結果等の情報を、ボルト100が弛んでいる場合にもICタグ37から得ることができ、増し締め作業を行う際の参考とすることができる。
【0075】
さらに、前述の第1実施形態では、規定量以上弛んだボルト100に設けられたICタグ35は、非接触通信が不可能となるため、複数のボルト100を略同時に検査した場合に、弛んだボルト100を見落とすおそれがあるが、本実施形態では、2つのICタグ35,37を1つの弛み検出具12に設けており、ICタグ37はキャップ部材30の回転量に関わりなく通信可能である。従って、リーダライタ50によって、弛んでいるボルト100に設けられた弛み検出具12のICタグ37との通信を検出でき、弛んだボルト100の見落としを防止できる。
【0076】
(第4実施形態)
図5は、第4実施形態の弛み検出具を説明する図である。図5(a)は、第4実施形態の弛み検出具13の初期状態を示し、図5(b)は、ボルト100が規定量θ1以上弛んだときの弛み検出具10を示している。
第4実施形態は、第3実施形態と同様にキャップ部材30の回転量によって通信の可否が変化しないICタグ37を備えている点と、第2実施形態と同様に初期状態において検出用のICタグ35がリーダライタ50とは非接触通信不可能であり、ボルト100が規定量以上弛んだ場合に非接触通信可能となる点以外は、第1実施形態と略同様の形態である。従って、第1〜第3実施形態と共通の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第4実施形態の弛み検出具13は、第3実施形態と同様に、被覆部33の頂面にICタグ37を備える。このICタグ37は、キャップ部材30の回転量によらず、常にリーダライタと非接触通信可能である。
【0077】
図5(a)に示すように、初期状態においてICタグ35は、回転中心軸L方向から見て導体片26の領域上に位置しており、リーダライタ50との非接触通信は行えない。一方、ICタグ37は、キャップ部材30の頂部33aの回転中心軸L上に位置しており、導体片23の影響を受けることなく、リーダライタ50と非接触通信可能である。
しかし、ボルト100が開放方向へ規定量θ1(約18°)以上回転(例えば、角度α)すると、キャップ部材30も一体となって回転し、ICタグ35は、図5(b)に示すように、導体片26の領域外の位置へ移動する。そのため、ICタグ35,37の双方が、リーダライタ50と通信可能となる。従って、リーダライタ50によって、このICタグ35の通信状態の変化(通信不可能であった状態から通信可能な状態への変化)を検出することにより、ボルト100の弛みを検出することができる。
【0078】
よって、本実施形態によれば、ボルト100の弛みを容易に検出でき、さらに、ICタグ35は、検出用としてのみ使用し、ICタグ37は、ボルト100の識別番号を記録させてボルト100の個体識別用として使用(ボルト100のID管理)したり、検査日時、検査結果、増し締め日時、増し締め量等の情報を記録させる記録用として使用したりするというように、2つ設けられたICタグ35,37を使い分けることができる。
また、ボルト100が弛んでいる場合、前述の第1実施形態では、前回の検査日時や検査結果等の情報を読み出すことができなかったが、上述のようにICタグ35,37を使い分けることにより、ボルト100が弛んでいる場合にも、前回の検査日時や検査結果等の情報を得ることができ、増し締め作業を行う際の参考とすることができる。
さらに、本実施形態によれば、ICタグ35は、弛み検出具13の初期状態(ボルトに弛みが生じていない締結状態)では通信不可能であるが、ボルト100が弛み、キャップ部材30が規定量以上回転すると通信可能となるので、複数の弛み検出具11の検査を行った場合にも、弛んだボルト100の見落としを防止できる。
【0079】
(第5実施形態)
図6は、第5実施形態の弛み検出具を説明する図である。図6(a)は、弛み検出具14の初期状態での平面図と側面図を示し、図6(b)は、ボルト100が規定量以上弛んだ状態での弛み検出具14の平面図と側面図を示している。
第5実施形態は、キャップ部材30の回転量によらず常にリーダライタ50と通信可能なICタグ27が、リング部材20側に設けられている点が異なる以外は、前述の第1実施形態と略同様の形態である。従って、第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
第5実施形態の弛み検出具14は、図6(a)に示すように、ICタグ27を、リング部材20の導体片23の開口部23aに備えている。このICタグ27は、多層基板型のICタグであり、検出用のICタグ35と同様の仕様のものを用いているが、異なる形状や規格のものを用いてもよい。
【0080】
ICタグ27は、リング部材20の開口部23aに位置しており、キャップ部材30がボルト100とともに規定量以上回転した場合にも、導体片23にその通信を遮断されることがなく、常に通信可能である。
なお、本実施形態のICタグ27は、回転中心軸L方向から見て、ICタグ35と周方向に隣接するように配置されている。そのため、開口部23aの角度θ2は、第1実施形態の角度θ1よりも広くなっており、図6(a)に示すように、導体片23のICタグ35側の端部と、ICタグ35の締結方向側の端部とが角度θ1(約18°)をなしている。
【0081】
図6(a)に示すように、ボルト100が締結状態である(弛み検出具14が初期状態である)、又は、ボルト100に規定量θ1(約18°)を超えない弛みが生じている状態では、回転中心軸L方向から見て、ICタグ35,27は、ともに導体片23の開口部23aに位置しており、リーダライタ50と通信可能である。
しかし、ボルト100が弛み、キャップ部材30がボルト100の回転に追従して回転し、その回転量(角度α)が規定量θ1以上となると、図6(b)に示すように、ICタグ35は、回転中心軸L方向から見て導体片23の領域上となる位置まで移動する。そのため、ICタグ35のリーダライタ50との通信は遮断され、通信不可能となる。
一方、ICタグ27は、リング部材20に設けられているので、移動せず、キャップ部材30の回転量によらず通信可能である。
【0082】
従って、本実施形態によれば、通信可能であったICタグ35が通信不可能となったことをリーダライタ50によって検出することができ、容易にボルト100の弛みを検出することができる。
また、ICタグ27は、ボルト100の弛みに関係なく、常に通信可能であるので、ボルト100の識別番号(ボルト100のユニークID)や、検査日時や検査結果、増し締めの有無や増し締め量等の情報を、メモリに書き込んで記録させることができる。これにより、ボルトが規定量以上緩み、ICタグ35と通信が不可能になった場合にも、ボルト100の個体識別や、ボルト100の前回の弛み検査の検査結果等の情報をリーダライタ50を介して得ることができ、増し締め作業時の参考にすることができる。
さらに、ICタグ27は、リング部材20に設けられているので、前述の第3実施形態のように、被覆部33の頂部33aに配置する場合に比べて、外部からの衝撃等を受け難く、破損し難い。
【0083】
(第6実施形態)
図7は、第6実施形態の弛み検出具を説明する図である。図7(a)は、弛み検出具15の初期状態での平面図と側面図を示し、図7(b)は、ボルト100が規定量以上弛んだ状態での弛み検出具15の平面図と側面図とを示している。
第6実施形態は、前述の第2実施形態と同様に、初期状態では検出用のICタグ35とリーダライタ50との非接触通信が不可能であるが、キャップ部材30が規定量θ1以上回転することにより、非接触通信可能となる点や、第5実施形態と同様に、リング部材20にキャップ部材の回転量に依らずリーダライタ50と非接触通信可能なICタグ27を備える点以外は、第1実施形態と同様の形態である。従って、前述の第1,2,5実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第6実施形態の弛み検出具15は、リング部材20の導体片26が設けられた領域以外の領域に、ICタグ27が配置されている。
【0084】
この弛み検出具15は、初期状態(ボルト100に弛みがない締結状態)では、図7(a)に示すように、ICタグ35は、回転中心軸L方向から見て導体片23の領域上に位置しており、導体片23によってリーダライタ50との非接触通信は遮断されている。一方、ICタグ27は、導体片23の領域上には位置しておらず、リーダライタ50と非接触通信可能である。
ここで、ボルト100が弛み、キャップ部材30がボルト100とともに開放方向に規定量θ1(約18°)以上(例えば、図7(b)に示す角度α)回転すると、ICタグ35はボルト100の開放方向へ移動し、回転中心軸L方向から見て、導体片23の領域外に位置し、リーダライタ50と非接触通信可能となる。一方、ICタグ27は、ボルト100の弛みに関係なく、リーダライタ50と常に通信可能である。
【0085】
従って、本実施形態によれば、ICタグ35とリーダライタ50との非接触通信が可能となっていることを検出することにより、容易にボルト100の弛みを検出できる。
また、ボルト100の弛みによって通信が遮断されないICタグ27のメモリに、前回の検査時の情報等を記録させることにより、ICタグ35と通信できない状態であっても、前回の検査日時等の情報をリーダライタ50により得ることができる。また、ボルト100の弛みによって通信が遮断されないICタグ27のメモリにボルト100の識別番号(ユニークID)を記録させ、ボルト100の個体識別(ボルト100のID管理)用として使用すれば、ICタグ35と通信できない状態であっても、ボルト100の個体識別が可能である。
【0086】
(第7実施形態)
図8は、第7実施形態の弛み検出具を説明する図である。図8(a)は、弛み検出具16の初期状態での平面図と側面図を示し、図8(b)は、ボルト100が規定量以上弛んだ状態での弛み検出具16の平面図と側面図とを示している。
第7実施形態は、キャップ部材30の回転により通信状態が変化する複数の検出用のICタグを備えている点が第1実施形態とは異なる以外は、第1実施形態と略同様の形態である。従って、第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第7実施形態の弛み検出具16は、鍔状部31に、キャップ部材30が規定量θ1(約18°)以上回転することによって、リーダライタ50との非接触通信の可否が変化する検出用ICタグを2つ配置している。
【0087】
本実施形態では、2つのICタグ35a,35bは、キャップ部材30の鍔状部31に、回転中心軸Lを中心として、180°をなす位置に配置されている。このICタグ35a,35bは、第1実施形態に示すICタグ35と同様の形態である。
本実施形態の導体片28は、回転中心軸Lを中心として、180°の円弧を描く略円弧状の薄板状の部材であり、第1実施形態に示す導体片23と同様に、ステンレス等により形成され、リング部材20に埋設されている。この導体片28の端部と、それに近接するICタグ35a,35bとは、図8(a)に示すように、回転中心軸L方向から見て、回転中心軸Lを中心として角度θ1(約18°)をなすように配置されている。
【0088】
図8(a)に示すように、初期状態では、回転中心軸L方向から見て、2つのICタグ35a,35bのうち、ICタグ35bは、導体片28の領域上に位置し、導体片28によってリーダライタ50との通信が遮断されているが、ICタグ35aは、導体片28の設けられていない領域に位置し、リーダライタ50との非接触通信は可能である。
この状態で作業者がリーダライタによってICタグの通信状態を検出すると、ICタグ35bとは通信不可能であり、ICタグ35aとは通信可能であると検出される。
【0089】
ボルト100が弛むと、ボルト100の回転に伴ってキャップ部材30も開放方向に回転し、ICタグ35a,35bが、回転中心軸Lを中心として導体片28に対して開放方向へ移動する。しかし、ボルト100の回転が規定量(約18°)以上となるまでは、ICタグ35a,35bのリーダライタ50との非接触通信の可否は、初期状態と同様である。
そして、ボルト100が規定量θ1以上(角度α)回転すると、図8(b)に示すように、回転中心軸L方向からみて、ICタグ35bは、導体片28の存在しない領域に位置し、ICタグ35aは、導体片28の領域上に位置する。これにより、ICタグ35aは、導体片28によってリーダライタ50との通信が遮断されるが、一方のICタグ35bは、リーダライタ50との通信可能となる。従って、リーダライタ50によってICタグ35a,35bの通信の可否が、初期状態とは変化したことを検出できる。
【0090】
よって、本実施形態によれば、ボルト100が規定量以上弛むと、ICタグ35a,35bの通信状態がともに変化するので、ボルト100の規定量以上の弛みを容易に検出することができる。
なお、本実施形態では、導体片28を1つとしたが、ICタグ35a,35bの数に合せて2つとしてもよいし、ICタグ35a,35bが回転中心軸Lに対してなす角度も180°に限らず、自由に選択してよい。
【0091】
(第8実施形態)
図9は、第8実施形態の弛み検出具を説明する図である。なお、図9(a)は、弛み検出具17の初期状態での平面図の一部を拡大した図と側面図とを示し、図9(b)は、ボルト100が規定量以上弛んだ状態での弛み検出具17の平面図の一部を拡大した図と側面図とを示している。
第8実施形態は、検出用ICタグが複数設けられている点以外は、前述の第1実施形態と略同様の形態である。従って、第1実施形態と共通する機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0092】
第8実施形態の弛み検出具17は、キャップ部材30の鍔状部31に、4つの検出用のICタグ35(35c、35d,35e,35f)を有している。ICタグ35c〜35fは、第1実施形態に示すICタグ35と同様の形態であり、多層基板型のICタグである。
導体片23の開口部23aは、回転中心軸Lに対して角度θ3(約36°)をなしている。そして、ICタグ35c〜35fは、図9(a)に示すように、初期状態において、回転中心軸L方向から見て導体片23の開口部23a内に周方向に等間隔(回転中心軸Lに対して約9°毎)に配置されている。
【0093】
図9(a)に示すように、弛み検出具17の初期状態においては、いずれのICタグ35c〜35fも、回転中心軸L方向から見て、導体片23の開口部23aに位置しており、いずれもリーダライタ50と非接触通信可能である。従って、作業者は、リーダライタ50によって4つ全てのICタグ35c〜35fとの通信が可能であることを検出し、ボルト100に規定量以上の弛みが生じていないことを確認できる。
ここで、振動等により、ボルト100が弛んだとする。例えば、ボルト100が弛み、締結状態から開放方向へ約9°回転した場合、キャップ部材30は、ボルト100の回転に伴って同様に回転する。これにより、ICタグ35c〜35fが開放方向に回転移動し、回転中心軸L方向から見て、ICタグ35cのみが導体片23上に位置し、その通信が遮断される。一方、ICタグ35d〜35fは、リーダライタ50と非接触通信可能である。
次に、締結状態からボルト100が約18°回転した場合には、キャップ部材30がボルト100の回転に伴って初期状態から約18°(図9(b)に示す角度β)回転する。このとき、図9(b)に示すように、回転中心軸L方向から見て、ICタグ35c,35dが導体片23の領域上に位置することとなり、ICタグ35c,35dは、リーダライタ50との非接触通信が不可能となる。
【0094】
さらに、締結状態からボルト100が約27°回転した場合には、キャップ部材30がボルト100の回転に伴って初期状態から約27°回転する。このとき、ICタグ35c〜35eが、回転中心軸L方向から見て、導体片23の領域上に位置することとなり、ICタグ35c〜35eは、リーダライタ50との非接触通信が不可能となる。
そして、締結状態からボルト100が約36°回転した場合には、キャップ部材30がボルト100の回転に伴って初期状態から約36°回転する。このとき、ICタグ35c〜35f全てが導体片23上に位置することとなり、ICタグ35c〜35fは、リーダライタ50との非接触通信が不可能となる。
【0095】
このように、本実施形態によれば、ボルトの回転量(弛み量)によって、検出用の4つのICタグ35c〜35fの通信の可否が変化するので、ICタグ35c〜35fのリーダライタ50との通信の可否の変化を検出することにより、ボルトの回転量を段階的に検出することができる。
よって、より高い精度でボルト100の弛みを検出できる。また、弛みが生じたボルト100の増し締めを行う際に、増し締め量等の目安を得ることができ、増し締め作業を容易に行える。
【0096】
なお、本実施形態では、ICタグ35c〜35fを9°毎に4つ配列する例を示したが、これに限らず、配列する間隔(角度)や個数は、検出用ICタグやボルトの大きさ、検出したい回転量(弛み量)の精度等に応じて、適宜自由に選択してよい。
また、いずれか1つのICタグ、例えば、ICタグ35fを、前述の第5実施形態のICタグ27のように、導体片23と同じくリング部材20に配置し、このICタグ35fをボルト100の個体識別(ID管理)用や弛み検出の検出結果の記録用として使用し、その他のICタグ35c〜35eを本実施形態で示したように、ボルト100の回転量の検出に用いる形態としてもよい。ボルト100のID管理用や記録用として用いるICタグは、前述のICタグ35fに限らず、適宜選択して用いてよい。
【0097】
(変形形態)
以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)各実施形態において、締結される被締結部材510を固定部材とし、被締結部材に対して相対的に回転移動して被締結部材を締結するボルト100を可動部材とし、ボルト100の弛み(回転)を検出する例を示したが、これに限らず、可動部材は、固定部材に対して直線方向に相対移動する部材とし、直線方向の位置ずれ検出具、位置ずれ検出装置及び位置ずれ検出システムとしてもよい。直線方向の位置ずれを検出するものとすれば、例えば、電車等の各種乗り物や、室内外の仕切り扉として用いられるスライドドアの開閉を検出する検出具、検出装置及び検出システムとして用いることができる。
【0098】
(2)各実施形態において、キャップ部材30は、ボルト100の頭部120を被覆する被覆部33と、リング部材20に対向する鍔状部31とを備え、被覆部33と鍔状部31とは同一の材料によって形成される例を示したが、これに限らず、例えば以下に示すような形態のキャップ部材としてもよい。
図10は、変形形態のキャップ部材を備える弛み検出装置を示す図である。なお、図10では、変形形態のキャップ部材30−2〜30−4を備える弛み検出具10−2〜10−4において、図1(b)の矢印A−Aでの断面に相当する断面を示している。また、図10に示す弛み検出具10−2〜10−4のリング部材20は、いずれも第1実施形態と同様の形態である。
図10(a)は、被覆部39が金属製であるキャップ部材30−2を備える緩み検出具10−2を示している。この変形形態のキャップ部材30−2のように、被覆部39をステンレスや鉄等の金属製とすれば、スパナ等の工具によって、キャップ部材30−2を取り付けたまま、増し締めを行うことができる。従って、弛んだボルト100からキャップ部材30−2を外してボルトを増し締めし、再びキャップ部材30−2をボルト100の頭部120に嵌めるといった作業が不要となり、作業時間を短縮でき、増し締め作業も容易となる。
【0099】
なお、このとき、被覆部39の外形は、ボルト100のサイズよりも1サイズ大きいボルトの頭部の外形に等しい形状とすれば(すなわち、ボルト100がM24サイズであった場合、被覆部39の外形をM27やM30のボルトの頭部の形状と等しいものとする)、規格された汎用のスパナ等の工具によって増し締めを行うことができる。
なお、図10(a)では、ボルト100を保持する保持部32は、被覆部39の金属面と鍔状部31の樹脂面とが存在している形態として示したが、これに限らず、保持部32の全面が金属面となるように、被覆部39の回転中心軸L方向の寸法を、被締結部材まで延ばした形態としてもよい。
【0100】
図10(b)は、被覆部を設けないキャップ部材30−3を備える弛み検出具10−3を示している。この変形形態のキャップ部材30−3のように、被覆部を設けず、弛み検出具10−3を取り付けたボルト100の頭部120の頂面120a側の一部が、弛み検出具10−3から突出して露出した形態とすることにより、キャップ部材30−3を外すことなく、レンチやスパナ等の工具によるボルト100の増し締めが可能となる。
従って、増し締め作業が容易になり、作業時間の短縮も図ることができる。
なお、図10(b)に示す変形形態のキャップ部材30−3では、ボルト100は、M24サイズであり、被締結部材510表面から鍔状部31の上側面31aまでの高さは、4.5mmであり、ボルト100の頭部120の高さはM24サイズで15mmであるので、弛み検出具10−3から、ボルト100の頭部120は、10.5mm、すなわち、頭部120は、全体の2/3以上は表出する。従って、レンチ等の工具によってボルト100の頭部120を保持して増し締めは可能である。
【0101】
図10(c)は、鍔状部を設けず、外形を略円柱形状としたキャップ部材30−4を示している。
このような形態とすれば、キャップ部材30−4の金型等の製造が容易となる。なお、キャップ部材30−4のように、鍔状部を設けない場合、キャップ部の外形を略半球状や略円錐状等としてもよい。このような形状とすることにより、ボルトの存在を隠すことができ、悪意ある第三者によるいたずらや盗難を防止でき、意匠性も向上できる。
【0102】
さらに、図示しないが、各実施形態において、キャップ部材30の被覆部33は、ボルト100の頭部120の側面及び頂面120a(図1(c)参照)を被覆する例を示したが、これに限らず、例えば、頭部120や頂面120aの形状に応じて、ボルト100の頂面120aを被覆する頂部33a(図4参照)を備えておらず、ボルト100の頭部120の側面のみを被覆して頂面120aが露出する形態としてもよい。なお、この形態は、前述の変形形態のキャップ部材30−2,30−4においても適用可能である。このような形態とすることにより、例えば、頂面120aに十字穴や六角穴等が形成されているボルト等にも適用できる。
【0103】
(3)第1実施形態から第8実施形態において、ボルト100の弛みの許容範囲を、ボルトの締結状態から開放方向へ約18°までの回転とし、規定量18°以上の回転を検出する例を示したが、これに限らず、例えば、より小さな弛みを検出するために規定量を9°とし、9°以上の回転を検出する形態としてもよく、ボルト100のサイズや所望する軸力等に応じて、適宜その許容範囲及び規定量を設定してよい。
【0104】
(4)各実施形態において、弛み検出具10〜17の初期状態を維持した状態で供給するために、鍔状部31及びリング部材20の外縁部分に、紙製であって片面に接着剤等が塗布された仮留め用テープ等を貼付した例を示したが、これに限らず、例えば、弛み検出具10〜17初期状態を維持するためにキャップ部又はリング部のどちらか一方に、凸状の不図示の爪部を儲け、他方にその爪部に係合する不図示の凹部を設けて、それらの係合によってリング部材20とキャップ部材30との初期状態を維持する形態としてもよい。なお、その係合の力は、ボルト100の回転によって容易に解除される程度のものとする。
【0105】
(5)各実施形態において、弛み検出具10〜17の初期状態を設定するために、キャップ側位置決め部36とリング側位置決め部25として、凸形状の位置決め部を設ける例を示したが、これに限らず、適宜目視等で確認可能な形状や印としてもよい。
【0106】
(6)各実施形態において、弛み検出用のICタグ35をキャップ部材30(可動部材)に配置し、導体片23,26,28をリング部材20(固定部材)に配置する例を挙げたが、これに限らず、弛み検出用のICタグ35をリング部材20(固定部材)に配置し、導体片23,26,28をキャップ部材30(可動部材)に配置してもよい。弛み検出具10〜17を用いる環境や、設計や製造のし易さ等に合せて適宜選択して配置を決めてよい。
【0107】
(7)各実施形態において、弛み検出具10〜17は、ボルト100の頭部120に取り付けられる例を示したが、これに限らず、例えば、ボルト100の軸部110側に螺合する不図示のナットに取り付けてもよい。また、ボルト100は、被締結部材520のネジ穴520aと螺合する例を示したが、複数の被締結部材に設けられた孔に挿入され、軸部110の雄ネジに不図示のナットが螺合することにより、被締結部材を締結するものとしてもよい。
【0108】
(8)各実施形態において、締結部材として、頭部120の形状が略六角柱形状である六角ボルト100を例に挙げて説明したが、ボルト100の頭部120の形状はこれに限らず他の形態のものに適用してもよい。例えば、キャップ部材30の保持部32の形状を頭部120に合わせた形状とすることにより、頭部120が略直方体形状である四角ボルトや、略円柱形状であって頂部に略六角柱形状の凹部を有する六角穴付ボルト等に適用することも可能である。また、ボルト100のサイズも、M24に限らず、例えば、M20,M22、M27、M30等、適宜自由に設定してよい。
【0109】
(9)各実施形態において、リング部材20は略円環形状である例を示したが、これに限らず、例えば、被締結部材510のネジ穴520aの周囲の一部分に、リング部材20を固定不可能な領域を有する等、ボルト100の全周にわたってリング部材20を固定可能な領域を有していない場合には、リング部材20は、閉じた円環形状ではなく、一部開口部を有する円弧状としてもよい。なお、この場合には、キャップ部材30及び鍔状部31も同様に、一部開口した円弧状としてもよい。このような形態とすることにより、被締結部材のボルト100の設置部分の形状に合わせて弛み検出具を配置でき、利便性を向上させることができる。
【0110】
(10)各実施形態において、リーダライタ50は、CPU51に接続される形態として示したが、これに限らず、例えば、リーダライタがCPUを内蔵し、持ち運び可能な形態としてもよい。
【0111】
(11)各実施形態において、ICタグ35,37,27は、アンテナを絶縁基板の表面に形成し、その絶縁基板を複数積層し、基板表面にICチップを配置した多層基板型のICタグを例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、樹脂基材にコイル状のアンテナを形成したICタグ等、他の形状や仕様のICタグを用いてもよい。
【0112】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0113】
10,11,12,13,14,15,16,17 弛み検出具
10−2,10−3,10−4 弛み検出具
20 リング部材
23,26,28 導体片
24 リング側係合部
30 キャップ部材
30−2,30−3,30−4 キャップ部材
31 鍔状部
32 保持部
34 キャップ側係合部
35,35a〜35f ICタグ(検出用ICタグ)
37,27 ICタグ(第2のICタグ)
100 ボルト
50 リーダライタ
51 CPU
52 管理サーバ
510,520 被締結部材
520a ネジ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、前記固定部材に対して相対移動可能な可動部材との相対的な位置ずれの検出に用いられる位置ずれ検出具であって、
前記固定部材に固定され、不導体により形成される第1部材と、
前記可動部材と一体となって前記固定部材に対して相対移動し、前記相対移動の移動方向に対して垂直な方向であって前記第1部材に対応する領域に配置され、不導体により形成される第2部材と、
を有し、
前記第1部材と前記第2部材とのいずれか一方が、外部機器と非接触通信可能な検出用ICタグを備え、他方が、導体であって前記検出用ICタグの通信を遮断する遮断材を備え、
前記第1部材と前記第2部材との相対的な位置が合わせられた初期状態から、前記第2部材が前記第1部材に対して規定量以上相対移動すると、前記相対移動の移動方向に対して垂直な方向から見て、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域内に位置する状態から前記遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域外に位置する状態から前記遮断材の領域内に位置する状態へ変化すること、
を特徴とする位置ずれ検出具。
【請求項2】
請求項1に記載の前記位置ずれ検出具において、
前記可動部材は、締結部材であり、
前記固定部材は、前記締結部材によって締結される被締結部材であり、
前記可動部材は、前記固定部材に対して相対的に回転移動すること、
を特徴とする位置ずれ検出具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の前記位置ずれ検出具と、
前記検出用ICタグと非接触通信可能であり、前記検出用ICタグとの非接触通信が可能か否かを検出可能な検出部と、
を備える位置ずれ検出装置。
【請求項4】
被締結部材に対して相対的に回転移動して、前記被締結部材又は他方の締結部材のネジ穴部、又は、他方の締結部材の雄ネジ部に螺合し、前記被締結部材を締結する締結部材の弛みの検出に用いられる弛み検出具であって、
不導体により形成された略リング状の部材であり、前記締結部材の回転中心軸とその中心が同一となるように前記被締結部材に固定される第1部材と、
前記回転中心軸方向において前記被締結部材とは反対側であって前記第1部材と対向する位置に設けられた略円環状の鍔部と、前記鍔部の内周側であって前記締結部材を嵌合して保持する保持部とを備え、前記締結部材と一体となって前記被締結部材に対して相対的に回転移動する不導体により形成された第2部材と、
を有し、
前記第1部材と前記第2部材とのいずれか一方が、外部機器と非接触通信可能な検出用ICタグを備え、他方が、前記検出用ICタグの通信を遮断する遮断材を備え、
前記第1部材と前記第2部材との相対的な位置が合わせられた初期状態から、前記第1部材に対して前記第2部材が、前記回転中心軸を中心として前記締結部材の締結を開放する開放方向に規定量以上回転移動すると、前記回転中心軸方向から見て、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域内に位置する状態から前記遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域外に位置する状態から前記遮断材の領域内に位置する状態へ変化すること、
を特徴とする弛み検出具。
【請求項5】
請求項4に記載の弛み検出具において、
前記第1部材及び/又は前記第2部材は、前記第2部材の回転移動量に関わらず、前記回転中心軸方向から見て前記遮断材の領域外に位置する第2のICタグを備えていること、
を特徴とする弛み検出具。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の弛み検出具において、
前記第1部材及び前記第2部材は、互いに係合し、前記回転中心軸方向の移動を規制する係合部を有すること、
を特徴とする弛み検出具。
【請求項7】
請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載の弛み検出具において、
前記第1部材に対して前記第2部材が前記初期状態から前記開放方向に18°以上回転した場合に、前記回転中心軸方向から見て、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域内に位置する状態から前記遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域外に位置する状態から前記遮断材の領域内に位置する状態へ変化すること、
を特徴とする弛み検出具。
【請求項8】
請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載の弛み検出具において、
前記第1部材に対して前記第2部材が前記初期状態から前記開放方向に9°以上回転した場合に、前記回転中心軸方向から見て、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域内に位置する状態から前記遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域外に位置する状態から前記遮断材の領域内に位置する状態へ変化すること、
を特徴とする弛み検出具。
【請求項9】
請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載の弛み検出具において、
前記第1部材又は前記第2部材は、複数の前記検出用ICタグを備え、前記第2部材の前記第1部材に対する前記開放方向への回転移動量に応じて、前記回転中心軸方向から見て、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域内に位置する状態から前記遮断材の領域外に位置する状態へ、又は、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域外に位置する状態から前記遮断材の領域内に位置する状態へ、段階的に変化すること、
を特徴とする弛み検出具。
【請求項10】
請求項4から請求項9までのいずれか1項に記載の弛み検出具において、
前記第2部材は、前記締結部材の前記回転中心軸方向に沿って前記被締結部材とは反対側の頂部を被覆する被覆部を有すること、
を特徴とする弛み検出具。
【請求項11】
請求項10に記載の弛み検出具において、
前記被覆部は、金属により形成されていること、
を特徴とする弛み検出具。
【請求項12】
請求項4から請求項11までのいずれか1項に記載の弛み検出具において、
前記第1部材及び前記第2部材の鍔部の外縁部を仮止め部材によって、仮止めされ、前記初期状態で供給されること、
を特徴とする弛み検出具。
【請求項13】
請求項4から請求項12までのいずれか1項に記載の弛み検出具と、
前記検出用ICタグと非接触通信可能であり、前記検出用ICタグとの通信状態を検出可能な検出部と、
を備える弛み検出装置。
【請求項14】
請求項13に記載の弛み検出装置において、
前記検出部の動作を制御する制御部を備えること、
を特徴とする弛み検出装置。
【請求項15】
請求項13又は請求項14に記載の弛み検出装置において、
前記検出用ICタグと前記検出部とが通信した情報を記録する記録部を備えること、
を特徴とする弛み検出装置。
【請求項16】
固定部材と、固定部材に対して相対移動可能な可動部材との相対的な位置ずれを検出する位置ずれ検出システムであって、
前記固定部材に固定される固定部と、
前記固定部に対向する位置に配置され、前記可動部材と一体となって前記固定部材に対して相対移動する可動部と、
前記固定部と前記可動部とのいずれか一方に設けられた検出用ICタグと、
他方に設けられた前記検出用ICタグの通信を遮断する遮断部と、
前記検出用ICタグと非接触通信可能であり、前記検出用ICタグとの通信の可否を検出する検出部と、
を備え、
前記固定部と前記可動部との相対的な位置が合わせられた初期状態から、前記可動部が規定量以上相対移動することによって、前記検出用ICタグと前記検出部との間の通信が、通信可能な状態から通信不可能な状態へ変化したこと、又は、通信不可能な状態から通信可能な状態へ変化したことを前記検出部が検出することにより、前記固定部材と前記可動部材との相対的な位置ずれを検出すること、
を特徴とする位置ずれ検出システム。
【請求項17】
被締結部材を、前記被締結部材又は他方の締結部材のネジ穴、又は、他方の締結部材の雄ネジとの螺合によって締結する締結部材の弛みを検出する弛み検出システムであって、
前記被締結部材に固定される固定部と、
前記固定部に対向する位置に配置され、前記締結部材と一体となって前記被締結部材に対して相対的に回転移動する可動部と、
前記固定部と前記可動部とのいずれか一方に設けられた検出用ICタグと、
他方に設けられた前記検出用ICタグの通信を遮断する遮蔽部と、
前記検出用ICタグと非接触通信可能であり、前記検出用ICタグとの通信の可否を検出する検出部と、
を備え、
前記固定部と前記可動部との相対的な位置が合わせられた初期状態から、前記可動部が前記固定部に対して、前記締結部材の締結を開放する方向に規定量以上回転移動することによって、前記検出用ICタグと前記検出部との間の通信が、通信可能な状態から通信不可能な状態へ変化したこと、又は、通信不可能な状態から通信可能な状態へ変化したことを前記検出部が検出することにより、前記締結部材の弛みを検出すること、
を特徴とする弛み検出システム。
【請求項18】
請求項17に記載の弛み検出システムにおいて、
前記可動部の回転移動に関わらず、前記検出部と非接触通信可能な第2のICタグを備えること、
を特徴とする弛み検出システム。
【請求項19】
請求項17又は請求項18に記載の弛み検出システムにおいて、
複数の前記検出用ICタグを備え、前記初期状態からの前記可動部の回転移動量によって各前記検出用ICタグの前記検出部との通信の可否が個々に変化し、前記締結部材の回転量を段階的に検出可能であること、
を特徴とする弛み検出システム。
【請求項20】
請求項17から請求項19までのいずれか1項に記載の弛み検出システムにおいて、
前記検出部の動作を制御する制御部を備えること、
を特徴とする弛み検出システム。
【請求項21】
請求項13から請求項15までのいずれか1項に記載の前記弛み検出装置と、
前記弛み検出装置の動作を制御する制御部と、
を備える弛み検出システム。
【請求項22】
請求項15から請求項19までのいずれか1項に記載の弛み検出システムにおいて、
前記検出用ICタグとの通信結果に関する情報を記録する記録部を備えること、
を特徴とする弛み検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−281697(P2010−281697A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135472(P2009−135472)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(506069594)株式会社内村 (5)
【Fターム(参考)】