位置分解測定機器に入射する量子ビームの空間座標を取得する位置分解測定機器とその方法
従来技術の位置感知検出器システムの前記位置計算は、個別の電極の既知の幾何学的パターンと前記電荷部分の前記分布に基づいている。ヒューリステック評価は照射の初期座標を計算するために作られた。対照的に、前記本発明は、位置座標検出器表面への測定された検出器の応答の直接マッピングに関して入射粒子の前記位置を計算できるようにする。検出器への照射位置の前記空間座標を推定する前記装置は、位置感知検出器と、照射源と、照射源による照射によって発生した前記検出器の応答を測定する手段と、人工ニューラルネットワーク構造とを備えており、測定された前記検出器の前記応答が前記人工ニューラルネットワーク構造への入力となり、かつ照射の初期空間座標が前記人工ニューラルネットワーク構造の出力となるように設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置分解測定機器に入射する量子ビームの照射位置の位置情報を取得する位置分解測定機器とその方法に関連し、詳細には、電子増倍原理に基づいた空間感応読取り能力を有する位置分解測定機器に入射する量子ビームの照射位置の位置情報を取得する位置分解測定機器とその方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
位置感知検出器は位置感知検出器への入射粒子の空間座標の測定に使われる。このような粒子は、例えば、光子、電子、中性子、イオン、X線などがある。この検出器は粒子を検出したり、検出器の感応部分での粒子の位置を検出したりするために用いられる。しかしながら、個別の粒子を検出するためには、検出器から出される信号を増幅する必要があり、増幅は、例えば、検出器内に配置された電子増倍器によって行われる。増幅により検出器内に電子のなだれが形成され、その結果、検出器内に電子の雲が形成される。この測定された雲から、検出器に入射した粒子の初期位置を計算する必要がある。
【0003】
電子増倍器は、104〜107個の微少なチャネルからなるアレイであるマイクロチャネルプレート(MCP)により形成可能である。それぞれ個別のチャネルがミニチュア電子増倍器のように作用する。MCP生産の技術は過去40年間にわたり開発されてきている。最初は、この検出器は原子核物理学実験で必要とされるX線検出器やイオンセンサとして開発された。チャネルの直径は1960年代の100μmから始まり、現代のプレートは3.2μmの直径の細孔を有するまでとなった。細孔やチャネルのサイズや細孔間の距離が、検出器の最大空間分解能を決めている。
【0004】
1つのMCPチャネルの最大利得係数は、103〜104に到達しうる。このような少数の電子は、現状の電子部品を用いても簡単には検出されないし、精密に測定もされない。通常、MCPのアセンブリ又は積層体が使われ、例えば、2段(シェブロン型)、3段(Z−スタック型)、多段MCPアセンブリがある。このような検出器の例が図1に示されており、この検出器の2つのMCPが互いに積層され、1つの積層体を形成している。粒子が検出器1の光電カソード3に入射する。光電カソード3は、光電効果により初期粒子を光電子に変換する。そして、光電子は、MCP4を通過する間に2次電子の形成及び増倍により増幅される。
【0005】
本実施形態において、MCPが感応する量子(例えば、光電子)、が1つのチャネルの内壁に入射する場合、少なくとも1つの電子が内壁から放出される。チャネルの内壁から放出された電子は、MCPの両端に印加された電圧により形成された電界により加速され、移動して再度チャネルの壁にぶつかり2次電子を生成する。このプロセスは、それぞれのチャネルに沿って何度も繰り返され、電子が増倍・加速されて、多数の電子がMCPの出力面から放出される。電子の2次元位置はこれらのチャネルによって保持される。生じた電子なだれは、最終的に検出器1の位置感応アノード2によって検出される。アノード2のそれぞれの電極の電荷は、読取り回路によって読み取られる。各電極は、初期粒子の検出位置に対応した信号を生成する。
【0006】
暗視検出器の開発成果によって、さらなるMCPの開発に大きく弾みがかかった。典型的な 暗視装置は、MCPアセンブリの前側に光電カソードを組み合わせ、蛍光スクリーンを出力に組み合わせている。入射光子は、光電カソードの表面から光電子をたたき出して、MCP積層体内部で増幅される。目視できる程度の強度、又は電荷結合素子(CCD)による検出器によって計測されうる程度の強度の閃光を発する蛍光体層の表面の小さな点に、最後のMCPとスクリーンとの間の電界を印加することで、生成した電子雲を集中させる。スクリーンの材質により、閃光 減衰時間は、1〜50μsの範囲で変わりうる。結果として、1つの入射光子であっても、システムは長続きのする閃光を発生させることができる。この種類の光検出は積分測定クラスに属する。この検出方法は、光の個別の量子を登録できるほどに感度が高いのであるが、生成された閃光の減衰時間が長いために1つ1つの光子を区別できない。
【0007】
対照的に、単一粒子計数検出器は、1つの入射粒子の空間座標に加えて別のパラメータを取得するために、個別イベントの登録可能である。典型的な計数装置は、MCP積層体やアノードシステムを備えている。カソードはエネルギーの低い光子を電子に変換する部分であり、必須ではない。MCPの前面と相互に作用する入射粒子は、電子のなだれを生じさせる。生じた電子雲は、印加電界に従って移動してアノードに至り、検出される。
【0008】
多くのよく知られたアノードシステムは、通常、(単一光子計数、原子核物理学実験など)の様々な用途で使われている。
【0009】
一般的に、空間感応アノードは、空間座標測定原理における2つの区分に分けることができる。時間ベースのアノード及び電荷(電流)ベースのアノードである。時間ベースのアノードの最も簡単な例として1次元遅延線配列があり、ここでは、遅延線の両端への信号の到達時間差を用いて座標が測定される。また、既知の電荷分割ベースのアノードシステム構成が多数ある。例としては、ウェッジ・ストリップ、4分割体(quadrant)、バーニア(Vernier)、抵抗層がある。
【0010】
より多くのMCPを互いに積層させれば、より大きな増幅率が容易に達成されることは明白である。より高い増幅は、よりよい信号対ノイズ比(SNR)を生じさせて、最終的にはより高い空間分解能をもたらす。しかしながら、3つ以上のMCPの積層体を使うと、MCPが限られている(増幅低下)のために、検出器の寿命が短くなってしまう。ほとんどの遅延線検出器(時間領域(time domain)のアノード)は、正確な運転のために3つ以上のMCPを必要としている。
【0011】
すべての時間ベースの測定方法は同じ手法に基づいている。それらの手法では、様々な構造の遅延線の両端から取得したパルスの時間差を測定する。遅延線ベースのシステムは原子核物理学実験において広く用いられる。遅延線検出器では、MCP積層体からのなだれが曲がりくねった遅延線を横切る。電荷パルスは、遅延線の導線に電気パルスを誘発し、電気パルスは導線の両端にまで伝わる。電子時間/デジタル変換器や電子時間/振幅変換器は両端への信号の到達時間の差を測定する。測定された到達時間差は、遅延線の配置方向(つまり、横方向のx座標に対する遅延線や横方向のy座標に対する遅延線)における電荷雲のそれぞれの位置に比例する。遅延線は単一粒子計数測定で用いられてもよい。
【0012】
電荷分割ベースのアノードはアノードシステムの大きなファミリーに属しており、電子雲の電荷を小さな部分に分割する原理を用いている。アノードは、平らな表面や、平面部、円柱面部、円錐面部、球面部の組み合わせでできた複雑な表面を備えている。互いに電気的に絶縁された電極素子の集合体又は位置感応パターンを形成するために結合された電極素子の集合体によって、表面が覆われている。入射粒子により誘発された電子雲の電荷の量は電極素子間で分けられる。
【0013】
Lamptonらによる("Quadrant Anode Image Sensor", RSI, Vol. 47, No. 11, November 1976, p. 1360)は、図2に示すように4分割アノード(QA)ベースの画像センサを開示している。アノードは4つの電気的に絶縁された4分割体に分けられた金属プレートである。4分割体は互いに同じ大きさである。電子雲の全電荷は4つ(左上qlt、右上qrt、左下qlb、右下qrb)に分けられる。各電荷値が測定される。検出器への入射粒子の初期位置を推定するために、電極を分割する水平線の上側と下側とに到達する電荷の合計の差異(全電荷の値に対して正規化されている)が入射粒子のy座標を決める。水平座標xは右側の電荷部分と左側の電荷部分を用いて、同じように計算される。
x=(qrt+qrb−qlt−qlb)/qΣ、
y=(qrt+qlt−qlb−qrb)/qΣ、
ここで、qΣ=qrt+qrb+qlt+qlb(つまり全体で測定された電荷)
【0014】
Lamptonにより発表されたこの方法は、単一MCPチャネルの直径にまでの高空間分解能を達成する。電荷感応増幅器のノイズが入力容量に対して強い依存性を有するため、電極間の境界の距離が短ければ、非常に正確な電荷測定を可能とする低電極間容量となる。面積に対する外周の長さの比率は低い。つまり、静電容量に誘発されるノイズ成分は低い。上記式は、電荷分割の原理に基づいた位置感応アノードの簡易計算アルゴリズムとなる。空間分解能は高いが、Lamptonが提案する手法の作業エリアは、4分割体の中心点に対する直径の数ミリメートルに限定される。このようになるのは、上記のような計算方法では、構造の中心の外で高い非線形をもたらすからである。さらに、この方法では、MCPチャネルの角度によって誘発されるなだれが、角度的に対称ではないことの要因を考慮していないことも注目する必要がある。
【0015】
米国特許第4,395,636A号公報においては、ウェッジ・ストリップアノード(wedge-strip anode)(WSA)ベースの画像センサが開示されている。このような構造は図3に示される。WSAは、電荷増倍器から到着した電荷雲の中心の位置を検出するために、周期的に配置され相互に連結したアノード領域(ウェッジ領域及びストリップ領域を含む)の形の位置感応アノード2を備えている。それぞれのウェッジは同じ形状であり、アノードの底部から先端にむけて線形に変化する電荷収集エリアを備える。WSAは、Lamptonが説明するQAの非線形性の問題を克服するために設計された平面の電極パターンを用いている。電極の複雑な形状のため、境界が長くなる。よって、4分割体電極間容量と比較すると20〜30倍も容量が増加し、その結果、より簡易な構造のためには、同じ信号対ノイズ比を達成するためにより高いMCP増幅が必要とされる。全電荷に関連した個別の電荷の線形結合をすることで、位置計算がなされる。計算方法はなだれの幾何学的パターンや所定電荷のフットプリントの仮説により決まる。
【0016】
M.Purschkeaらの後の研究では("An improved quadrant anode image sensor with microchannel plates",1987, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research)、電子なだれの中心位置を計算するための進化した方法が説明されている。Purschkeaは、Lamptonが用いた電荷比の多項式補間を用いている。これは、4分割アノードの線形性のエリアを増加させるために行っている。このため、雲のフットプリントの有効サイズを大きくする必要がある。MCPの縁部にある電荷の損失を補正し、雲が持つすべての電荷を収集するために、アノードエリアを増大させる必要がある。より大きなアノードエリアと多項式補間との組み合わせによって、MCPエリアのうち80%までを測定に使うことが可能になった。
【0017】
J.S.Lapingtonら("Imaging achievements with the Vernier readout", 2002, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research)は、それぞれのサイン波形のストリップのバーニアアノードパターンベースの平面構造を開示している。位置計算アルゴリズムは測定された電荷の線形結合である。
【0018】
A.S.Tremsinら("Centroiding algorithms and spatial resolution of photon counting detectors with cross-strip anodes", Nuclear Science Symposium Conference Record, Volume 2, Issue, 2003)では、なだれのフットプリントモデリングと幾何学的推定との組み合わせが説明されている。座標を計算するために、Tremsinは、電子なだれの最大の位置を探すために、推定量の公式を用いている。適切な空間分解能を達成するため、図4に示されるように、交差ストリップアノードの全ての軸に多数の電極が用いられている。ストリップ信号の単純平均を計算して初期座標を得る。
【0019】
さらに、米国特許5,686,721A号公報は、電荷画像化装置及び真空の外側に配置された電極から電子増倍器の高真空部を分離する方法を開示している。この方法の最大のメリットは、アノードパターンを選ぶ自由度と、要望に応じてアノードパターンを容易に変更できる点である。例えばWSAや遅延線アノードシステムに関して説明して手法が説明されている。
【0020】
すべての方法と装置は、入射粒子の空間座標の計算にヒューリスティック近似を必要とする。測定された検出器の応答の多項式関数は、反応の関数として空間座標を近似するために使われることもある。係数は、最小二乗方程式から求められることもある。例えば、電荷分割ベースのアノードでは、多項式関数は、電荷の積和でもよく、それぞれの電荷の乗数の総和は既定の整数N(多項式の次数)を超えない。例えば、5つの電極を持つアノードを備える位置感知検出器の多項式関数は、項(例えば、cn*q1i*q2j*q3k*q4l*q5m)の合計として表記され、i+j+k+l+mはN以下でありcnは多項式のn番目の項の係数である。非負の数字i、j、k、l、mの使用可能かつ許容されうるそれぞれの全ての組み合わせの数により被加数(summands)の数が決まる。
【0021】
検出器の応答の未知の関数を近似するためには、反応関数の挙動を正確に近似できるだけの十分に大きな次数の多項式を作らなければならない。しかしながら、多項式の次数が高ければ、計算上の不安定性の問題に見舞われる。このような不安定性は、従来技術から知られており、最小二乗近似法や多項式そのものにの計算に影響を与える。これらの要因のために、検出器の応答の関数として空間座標を近似するために多項式を用いることは問題となり、また実質的に不可能となる。一般に、電荷分割ベースのアノードの場合には電極が多数あれば空間分解能が高くなるはずであるが、アノード出力の数を増加させることは、多項式近似における計算エラーのために最終的な分解能を低下させることにつながる。
【0022】
結論として、従来技術における種々のアノードシステムの位置計算は、個別の電極の既知の幾何学的パターンや電荷部分の分布によって決まる。よって、検出器への入射の初期座標の計算のためにヒューリステック評価がつくられた。
【0023】
しかし、入射粒子への単一MCPの反応は、エネルギー、種類、最初の衝突での空間位置、細孔やチャネルに対する落下角度により決まり、0〜104個の電子の範囲で変わる。図5はMCPでの増幅処理を示す。2次電子の放出の効率は、初期粒子のエネルギーと種類の組み合わせに大きく依存している。アルファ粒子とイオンは質量が大きく電荷が高いため、MCPはアルファ粒子とイオンに対して非常に効率がよいことが知られている。アルファ粒子がたたき出された反応として多くの2次電子を放出する可能性は、ほぼ100%である。エネルギーがMCPの電子への感受性スペクトルと一致した場合でありその場合にのみ、ガンマ量子及び電子はなだれを引き起こす可能性がある。
【0024】
初期粒子の軌道により、2次電子の数が変化する。MCPの前面から測定された最初の三分の一にあるチャネルの高感度表面に粒子がぶつからない場合、イベントはおそらく失われるであろう。この効果には、2つの主要因がある。まず第1に、入射粒子が、最初の相互作用において十分な数の電子をたたき出す必要がある場合、チャネルの長さがなだれの形成を制限する。第2の理由は、2次電子の増幅に依存する。増倍すべき電子は、電子と壁の相互作用あたり1つ以上の電子をたたき出すほどの十分なエネルギーを有するべきである。MCPチャネルの出力付近で最初の衝突が起きた場合、電子はおそらく2次放出に必要なエネルギーにまでは加速されない。
【0025】
細孔又はチャネルの縁部に対する空間位置や入射粒子のエネルギーは、2つの連鎖するイベントを引き起こす。最初の簡易なイベントでは、粒子は2次増幅に至らず、失われてしまう。
【0026】
ガンマ量子は局部的な温度上昇を引き起こすかもしれず、潜在的になだれに至りうる電子を拡散したりたたき出したりする。荷電粒子の場合、拡散や電子のたたきだしが可能である。1つ以上の2次電子が生じない場合、初期粒子はなだれに至らず、結果として、検出器に登録されない。
【0027】
電子放出反応から派生したものはいくつかの効果もたらす。電子が生成される表面からの深さは入射粒子の透過特性により異なる。初期粒子が深く透過した場合、もっともありうるシナリオは電子が飛び出したイオンや原子と再統合することである。表面付近又は表面で生成された電子はチャネルに捕捉されるかもしれず、おそらく、なだれをもたらすことになる。
【0028】
上記の点をまとめると、マイクロチャネルやマイクロスフェアプレート細孔の内部でおこる電子増倍は確率過程であるとの結論に至る。なだれ内の電子の最終的な数は(図6を参照)、以下の要因によって決まる。粒子の種類、エネルギー範囲、MCPのタイプである。電子増倍の複雑さと複数分岐の性質のため、MCPの増幅特性に関する情報を取得するためには、直接の測定をしなくてはならない。
【0029】
なだれの電子の数は不規則であるため、信号の増幅は同じ励起位置であっても異なる。すなわち、図7に示されるように、入射粒子が、積層されたMCPのうち前側のMCPにある同じチャネルと初期に相互に作用した場合であっても、測定される電荷の量は異なる。プロット上のすべての点が、前側MCPの小さな空間エリアに対して照射することで誘発される単一のイベントを表す。水平座標と垂直座標は、4分割アノードのうち第1と第2の電極から得られた電荷の測定された値を示す(図2参照)。
【0030】
第2の効果は、利用可能な様々な位置感知検出器のうちの一例として電荷分割の原理に基づく位置感応アノードに関するものである。電子雲の大きさに基づき、プラズマ雲内の電界の差異により内部での相互作用の力は異なる。すなわち、なだれの形状は雲の電子の数によって異なる。
【0031】
一般的に、電子雲の挙動は動的であり、多数のパラメータによって決まる複雑な処理である。
【0032】
第1パラメータは、MCPの増幅特性である。MCPが作られている材質によって、増幅は幅広く変化し得る。個別のチャネルの直径は生成される雲の形状に影響し、また単一の増幅作用により生成されうる電子の最大個数にも影響する。
【0033】
第2パラメータはなだれの有効形状である。「有効」の語句は、ほとんどの電子が位置するアノードプレート上のなだれのフットプリント(footprint)を意味する。電荷雲の直径は積層体の最後のMCPの出力とアノードとの間の印加電圧により変化しうる。より高い電圧は雲を加速し、よってMCPからアノードへの移動時間を最小化する。これにより、雲の内部力が電荷を帯びた個別の電子に印加されて結果として雲を拡大する時間幅が短くなるために、なだれのフットプリントの直径をより小さくする。
【0034】
第3パラメータは、個別のチャネルの中心軸とアノードのプレートとの角度により誘発された雲全体の非対称性に関わる。この要因は、MCPとアノードとの隙間の電圧にしっかりと関連もしている。電圧が低ければ低いほど、雲はさらにアノードにそって広がり、また、全体の分布がよりスムーズになる。すなわち、初期の対称ではない状態はアノードエリアに沿って不鮮明になり、結果より均一な分布に至る。印加電圧がゼロの極端な場合、初期の電界によって雲が破裂し、電荷における外側の小さな部分のみがアノードに到達してアノードを均一に覆う。
【0035】
上記の点をまとめると、アノードの静的又はヒューリスティックモデルや従来技術で説明される電子なだれを見つけるのは難しい。
【0036】
さらに、位置情報に加えて、検出の時間分解が通常望まれている。従来技術では、時間及び位置分解測定機器は、光の放出の位置及び時間を取得するために放出の時間分解測定を行うことが知られている。このような機器はマイクロチャネルプレート(MCP)を持ち、超高速の応答時間によって入射粒子の増幅をする。マイクロチャネルプレートは、互いに平行に配置した多数のミニチュア管からなる平面的な構造体である。すべてのチャネルがミニチュア電子増倍器のように作用する。一般的には、プレートの厚さは、約1ミリメートル以下であり、チャネルの直径は、最新のプレートでは3〜10ミクロンの範囲にわたる。MCPは、電子、荷電粒子及びX線照射に対して感度がよいことが知られている。照射の1つの入射量子に対して、チャネルは、103〜104の電子のなだれを起こす。生じる電子の有効数を増加させるために、すなわち、より高い増幅が得られるように、2つ、3つ又はそれ以上のプレートを重ねたものが用いられている。一般的には、電子なだれは、ピコ秒からナノ秒の間の入射量子ビームに反応して形成されてそしてMCPから放出される。電子なだれで引き起こされたパルスの前縁の時間変動がピコ秒の時間スケールで起こることが知られている。なだれ現象がMCPで見られなくなっても、電子の不足はある。よって、なだれで減少した電荷を補うために、電源が備えられている。このパルスは測定・分析される。
【0037】
米国特許公開公報第2007/0263223A1は、MCP増倍装置と位置感応アノードとを備えた時間と位置分解測定機器を開示する。タイミング信号パルスはMCP積層体の出力面から読み取られる。しかしながら、測定された信号の極性は時間で変化する。この極性変化の正確な時間測定を得るためには、ゼロ交差検出技術を用いる必要がある。米国特許公開公報第2007/0263223A1により達成可能な時間分解能は約60psである。
【発明の概要】
【0038】
よって、本発明の目的は、位置分解測定機器に入射する量子ビームの照射位置の位置情報を取得する位置分解測定機器とその方法を提供し、初期座標の計算にヒューリスティック近似を必要とせずに位置情報の取得・推定ができるようにすることである。
【0039】
さらに別の目的は、位置分解測定機器の位置計算を統合することである。本発明の1つの観点では、人工ニューラルネットワーク近似が電子雲の重心座標を計算し、入射粒子の位置を計算するために使われる。
【0040】
発明のさらに別の目的は、入射量子ビームの時間測定における改良型時間分解能を備えた位置及び時間分解測定機器を提供することである。発明のさらに別の目的は、より簡素でより信頼性の高い時間測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0041】
以下、動詞「推定する」や「測定する」は、動詞「取得する」に対して置き換えて使用可能である。よって、語句「位置情報を取得する」は「位置情報を推定する」又は「位置情報を測定する」にもあてはまりうる。「位置情報」は「空間座標」を含み、そのため、語句「位置情報」が言及される場合、語句「空間座標」も置き換えて使用可能である。
【0042】
よって、位置分解測定機器に入射する量子ビーム照射の位置情報を取得する方法が提供され、この方法では、位置感知検出器を提供し、照射源を提供し、位置感知検出器と照射源と接続される人工ニューラルネットワーク構造を提供し、既知の初期照射位置からの検出器の応答を入力として人工ニューラルネットワーク構造に入力して、人工ニューラルネットワーク構造が照射の初期位置を人工ニューラルネットワーク構造の出力として所定の精度で推定できるようになるまで、人工ニューラルネットワークパラメータを最適化することで、検出器上の照射位置の空間座標を推定できるように人工ニューラルネットワーク構造をトレーニングし、照射源によって、未知の位置から検出器に対して照射し、照射源による未知の位置からの照射による検出器の応答を測定し、測定された検出器の応答を入力としてトレーニングした人工ニューラルネットワーク構造に入力し、初期照射の空間座標の推定値に対応した人工ニューラルネットワーク構造の出力を計算する。
【0043】
推定にヒューリスティックモデルを用いる必要がないことが本発明の利点である。この問題は人工ニューラルネットワークを用いることで解決される。利点として、互いに異なる位置感知検出器のタイプの幾何学的パターンの視野への分解能及び/又は線形性が改善されうる。アノードの幾何学的パターンをモデリングすることを省き、測定された反応が直接的に位置計算に用いられる。さらに、アノードを製造するための精度の要求に制限が少ない。さらに、ニューラルネットワーク出力関数を容易に評価できる。
【0044】
本発明の人工ニューラルネットワーク手法では、人工ニューラルネットワークを用いて連続関数を近似する。通常は、人工ニューラルネットワークがパターン認識作業(例えば、顔の認識や粒子崩壊過程の認識)のために採用される。パターン認識では、ニューラルネットワークは例えば、画素が黒か白、つまりゼロ又は1であるかを識別するように意図されている。対照的に、関数近似では、連続関数を近似する必要があるため、さらに要求が厳しい作業になる。ここにおいて、近似すべき関数とは照射の初期座標を与える検出器の応答の関数の関数である。
【0045】
検出器の初期照射の空間座標を取得又は推定するための人工ニューラルネットワーク構造のトレーニング工程は、
i) 既知の空間座標から検出器に対して照射し、
ii) 生じた検出器の応答を測定し、
iii) 検出器の応答と照射の既知の空間座標とを保存し、
iv) 上記の工程i)〜iii)を別々の空間座標に対して繰り返し、照射空間をサンプリングし、
v) 測定された検出器の応答を入力として人工ニューラルネットワーク構造に送り、
vi) 初期照射の空間座標に対応した人工ニューラルネットワーク構造の生じた出力を計算し、
vii) 既知の照射用初期空間座標と、空間座標を示す人工ニューラルネットワーク構造の現在の出力との差異の関数を計算し、
viii)差異の関数を最小化するために人工ニューラルネットワーク構造のパラメータを変更し、
ix) 計算した差異の関数が特定の閾値よりも低い場合にはトレーニング処理を停止し、そうでなければ工程v)に戻る
工程を備える。
【0046】
別の実施形態では、工程i)に戻ってもよいし、より多くの位置を採取してもよいし、いわゆるオンラインモード(つまり、検出器の応答が提示された後)においてニューラルネットワークを改良してもよい。
【0047】
位置感知検出器が電荷ベースの検出器である場合、検出器の応答は測定された電荷に関連してもよいし、位置感知検出器が時間ベースの検出器である場合、検出器の応答は測定された時間に関連してもよいし、位置感知検出器が抵抗性アノード検出器である場合、検出器の応答は測定された電流に関連してもよい。
【0048】
トレーニング工程における検出器の照射は、座標の実際の推定又は測定プロセスで用いられた第1照射源よりは別の第2照射源を使うことを含んでもよい。このような第2照射源は既知の空間座標の特定の集合からの照射をするように設計されており、例えば、LEDマトリックスでもよい。
【0049】
トレーニングプロセスを停止するための特定の閾値は、検出器の物理的分解能のサイズに設定されてもよい。
【0050】
位置感知検出器は、増幅装置と照射の方向に対して増幅装置の後方に配置される位置感応アノードとを備えてもよい。
【0051】
増幅装置は、電子増倍装置(例えば少なくとも1つの マイクロチャネルプレート、又は少なくとも1つのマイクロスフェアプレート、又は少なくとも1つの マイクロガス(microgas)増幅装置)を備えていてもよい。
【0052】
位置感応電荷分割原理ベースのアノードは、少なくとも2つの空間分割電極を備えてもよい。位置感応時間ベースの遅延線に関連したアノードは、空間座標当たり1つの遅延線を備えてもよい。
【0053】
検出器の応答は、測定されたアノード出力値(つまり、電荷分割アノードにとっては電荷であり、時間領域測定にとっては時間)に対する反応をベクトル要素として有するベクトルであり、アノード電極の測定された反応を示すそれぞれのベクトル要素は、人工ニューラルネットワーク構造の別々の入力ノードへの入力 である。
【0054】
よって、位置分解測定機器に入射する量子ビームの照射位置の位置情報を取得するための位置分解測定機器が提供されて、この機器は、位置感知検出器と、照射源と、照射源による照射によって発生した検出器の応答を測定する手段と、人工ニューラルネットワーク構造を備え、人工ニューラルネットワーク構造は、測定された検出器の応答が人工ニューラルネットワーク構造への入力であり、かつ照射の初期空間座標が人工ニューラルネットワーク構造の出力であるように設けられてもよい。
【0055】
照射源は、電磁放射源又は粒子源であってもよい。
【0056】
位置感知検出器は、増幅装置と照射の方向に対して増幅装置の後方に配置される位置感応アノードとを備えてもよい。
【0057】
増幅装置は、電子増倍装置(少なくとも1つのマイクロチャネルプレート(MCP)又は少なくとも1つのマイクロスフェアプレート又は少なくとも1つのマイクロガス増幅装置)を備えてもよい。
【0058】
位置感応アノードは、少なくとも2つの空間分割電極を備えてよい。
【0059】
人工ニューラルネットワーク構造の入力ノード数は、別々の空間分割陽電極の数に等しくてもよく、出力ノード数は、初期照射点の別々の空間座標の数に等しくてもよい。
【0060】
いくつかのニューラルネットワークは、初期照射点の種々の空間座標成分を計算するのに使われてもよい。例えば、あるニューラルネットワークは、照射点の地平座標の計算に使われてもよく、他のニューラルネットワークは、照射点の垂直座標を計算してもよい。さらに、初期照射点の空間座標は、別の座標システム(デカルト座標(直交座標)、極座標、放物線座標など)によって表現されうる。人工ニューラルネットワークの出力は、他の計算機器に送られて、例えば、三角形メッシュアプローチや、スプラインアプローチや、多項式ゆがみ補償アプローチ(polynomial distortion compensating approaches)を用いて空間のゆがみを最小化するために処理されうる。
【0061】
位置感応アノードは、時間ベース又は電荷ベース検出器である。時間ベース位置感応アノードは、遅延線検出器又は遅延線関連検出器であってよく、電荷ベースのアノードは、密度勾配アノード検出器又は抵抗性アノード検出器又はマルチ電極アノード検出器である。
【0062】
少なくとも2つの空間分割電極が平面に備えられる。又は、少なくとも2つの空間分割電極のうちの少なくとも1つは、非平面電極であるように少なくとも2つの空間分割電極が備えられてもよい。少なくとも2つの空間分割電極は、4つの平坦電極を有する4分割アノードとして実現されてもよい。又は4つの平坦電極と4つの平坦電極の周りに配置される追加された5つ目のリング電極とを有する4分割アノードとして実現されてもよい。又は、少なくとも2つの空間分割電極は少なくとも1つのピラミッド形状電極、円錐形状電極、円柱形状の一部の電極、又は球状電極を含んでもよい。又は、ダイアモンド形状の電極の2次元配列を含んでもよい。
【0063】
人工ニューラルネットワーク構造は、フィードフォワードニューラルネットワークで実現されてもよく、人工ニューラルネットワーク構造の伝達関数F(pi,q)は、非線形ベクトル関数fの入れ子関数であり、piは、前記ニューラルネットワークパラメータベクトルであり、qは、k番目の検出器出力の測定された値に対する前記検出器の前記応答を要素として有するベクトルであり、F(pi,qk)=f1(p1、f2(...(fn−1(pn−1,(fn(pn,qk)))である。しかし、他の形式のニューラルネットワークを用いてもよいし、特にフィードバックがついたニューラルネットワークなど用いてもよい。
【0064】
さらに、照射のポイントを設定するために検出器の応答を計測するキャリブレーション装置を備える。キャリブレーション装置は、既知の空間座標から検出器に対して照射する手段と、照射の初期空間座標を測定された検出器の応答とともに保存する手段(つまり、メモリ)とを有する。
【0065】
本手法は電子なだれを直接測定することに限定されないが、米国特許第5,686,721号公報において開示されるような減結合位置伝達検出器とともに使用可能である。
【0066】
ニューラルネットワーク数学的機器は、システム全体で必要とされる処理量を達成するために、最新のベクトル処理コンピュータを用いて加速される基礎マトリックス/ベクトル演算を用いている。ニューラルネットワークはハードウェアでも実行可能である。
【0067】
ニューラルネットワーク評価は複数の繰り返し工程を含まず、計算時間は正確に計算されうるし予測できる。
【0068】
ネットワークの神経の数は、近似精度の特定の必要なレベルで性能を最適化させるために変更可能である。例えば、リアルタイムオンライン表示計算は、準備用の結果をできるだけ速く取得するためにネットワークの簡易版を用いて行ってもよい。その後、データの分析中に、より高精度な複雑な計算を実施可能である。
【0069】
ニューラルネットワークは、初期座標の所望の推定を達成しつつアノードの構造を簡易化するための廉価で簡単な方法である。2つの大きなメリットがある。1)100のアノードチャネルから全ての信号を取得するためにカスタムマイクロチップを作る必要がない。このようなチャネルのマイクロスキーム製造は非常に高価である。2)MCPを増幅器として用いる高真空実験の場合、MCPが必要とするバッキング処理(backing process)のせいで、非常に複雑なアノード構造を高真空部に入れることは技術的に不可能である。
【0070】
さらに、1つの検出器のためにトレーニングされたニューラルネットワークを同様の他の検出器に当てはめるために、わずかな別のトレーニングのポイントを必要とするだけである。よって、ニューラルネットワーク手法は柔軟性が高い。
【0071】
また、ニューラルネットワークは、検出器のいかなる構造に対してもトレーニング可能である。パラメータ関数による近似の場合、特定の検出器設計に対してそのような関数を選ぶことが難しいことが多い。ここで、ニューラルネットワーク手法はやはり柔軟性が高い。ここで説明される方法を用いることで、異なるアノードシステム構造を容易に試験することができ、特定のアノード構造の位置分解能能力に関する迅速なフィードバックを取得することができる。
【0072】
さらに、ニューラルネットワーク出力関数は、基本関数として用いられる伝達関数のうち高非線形の入れ子関数であるため、ネットワークのたった1つのノードを隠れ層に加えると、実質的に非常に低い計算コストでニューラルネットワークの適応の柔軟性が増加する。
【0073】
他の利点は追加の入力を推定で用いることができることである。検出器の応答は、いくつかのパラメータ(例えば、増幅器とアノードとの間の位置感知検出器に印加された電界)により決まる。ニューラルネットワーク手法は、さらに推定を改善するか多様化するために、このような検出器パラメータをニューラルネットワークへの明示的な入力として使うことを可能にする。ヒューリスティック(パラメータ関数ベースの近似)によってこのようなことをすることは非常に困難である。よって、検出器のより精密な数学的モデルを作るために、検出器の応答をニューラルネットワーク入力ノードに送るだけではなく、検出器パラメータも追加のニューラルネットワーク入力ノードに送ることもできる。さらに、入力値をネットワークに送られる前に、入力値の事前処理をすることができる。
【0074】
空間分解能とともにタイミングも改善するために、用いられる位置感知検出器は、検出器に入射する量子ビームを伝達する入力面と、少なくとも1つの積層して配置された電子増倍装置を有する第1電子増倍カスケードとを備える。第1電子増倍カスケードと少なくとも1つの電子増倍装置は、それぞれ入力面と出力面とを有している。第1電子増倍カスケードは、自身の入力面に入射する量子ビームを増倍させるように構成されている。入力面は、入口面に面するように配置されている。用いられる位置感知検出器は、電子増倍カスケードの出力面に面して配置されたアノードと、第1電子増倍カスケードの入力面と出力面との間の電位が負側(more negative)から正側(more positive)になるような電位勾配を与える高電圧供給器と、検出器に入射する量子ビームの検出のタイミングを測定するために検出タイミングパルスを測定する手段とを備える。検出タイミングパルスを測定する手段は、第1電子増倍カスケードの少なくとも1つの電子増倍装置のうちの1つの入力面に接続されており、第1電子増倍カスケードの少なくとも1つの電子増倍装置のうちの1つの出力面は、接地電位に接続されており、出力面は入力面とアノードとの間に配置される。
【0075】
すなわち、増幅装置は、上記の第1電子増倍カスケードとして実現される。
【0076】
時間分解測定検出器は、飛行時間ベースの測定で用いられる。例えば、ライダー(光検出と測距)は、遠くの物体の属性を計測するための光学的なリモートセンシング技術である。遠隔の物体の距離を決めるために、光パルスの送信と反射光の検出時間との間の時間差が測定された。時間にのみ感応する検出器を用いて画像を形成するために走査技術を用いてもよい。
【0077】
時間と空間感応技術は、当該連続物体のそれぞれのポイントのタイミング情報とともに画像の形成を可能とする。よって、時間と空間の分解能の改善により、走査の必要性がなくなり、また物体全体の3次元の画像の形成を可能にする。さらに、位置感度により、反射光の追加の物性(例えば、偏光度や波長)を測定できるようになる。これは、偏光度や波長で分離されるサブ画像用のいくつかの検出器を用いたり、複数パラメータ検出用の交流同期レーザーパルス(alternating synchronized laserpulses)を用いたりして、物体のスペクトル分光画像を単一の位置感知検出器の空間的に分離されたエリアに投射することで行われる。個別の画像は、既定の特性により光子を選択する偏光器や波長フィルターにより投射される。
【0078】
時間分解検出器の適用の別の例は、蛍光寿命画像顕微法であり、生物学的なサンプル内の蛍光粒子を観察する方法である。光パルスの伝達と蛍光光子の検出時間との時間差を測定することで、蛍光分子の励起状態の減衰時間を計測可能である。減衰時間は分子の内部の量子状態と微環境で決まることが知られている。それに加え、光切り替え可能な染料(photoswitchable dyes)を活性化させるか切り替えるかして、位置及び寿命特性を測定し、その後暗状態に戻すことが可能である。時間と位置分解能の進歩を組み合わせて、生きたサンプルを長期間継続的に観察して、細胞内部で起こる動的過程を登録することことが可能である。さらに、サンプルから発せられるそれぞれ個別の光子のパラメータ(空間位置、到達時間、減衰時間、偏光度、波長)の完全な集合を同時に取得することも可能である。パラメータの組み合わせは、当該物体についての追加の情報もたらし、結果としてより信頼のおける測定をもたらす。
【0079】
本発明では、タイミング信号を電子増倍装置の入力面から読み出す。利点として、電子増倍装置の入力面から取得した信号は正の値であり、パルスの後の高周波振動にはならない。これにより、タイミングパルスの処理が簡易になり、精密な測定がもたらされる。利点として、正のみの信号が検出されるので、ゼロ交差検出スキームの必要性がなくなる。
【0080】
さらに、生じた信号振幅は、電子増倍装置が発生する電子なだれの振幅に比例するため、信号識別で誘発される変動補償での時間・振幅の補正に対して、精密なソフトウェア手順を採用することが可能になる。
【0081】
第1電子増倍カスケードの少なくとも1つの電子増倍装置は、マイクロチャネルプレート、又はマイクロスフェアプレートとして実現される。
【0082】
さらに、湾曲したチャネルMCPや直線的なチャネルMCPを使ってもよい。湾曲したチャネルMCPは、直線形状の又は直線的なチャネル構造を有するプレートに比べて高増幅を提供することが従来技術から知られている。利点として、時間間隔測定機器に直接入力するために十分に大きな増幅を提供するかたわら、このようなMCPは単一の電子増倍装置のみを備える電子増倍カスケードで使われてもよい。
【0083】
利点として、そのような構成によって、入射量子ビームの時間・位置は装置によって測定される。位置感応アノードと組み合わせて使われる電子増倍カスケードは、結果的に時間及び位置分解測定検出器となる。このような検出器は広い応用範囲を有しており、例えば、最小進入長期観察広視野顕微鏡法(minimal-invasive long period observation widefield microscopy)、光活性化局在性顕微鏡法(PALM)(photoactivated localization microscopy)、確率的光学再構築顕微鏡法(STORM)(stochastic optical reconstruction microscopy)、蛍光寿命画像顕微法(FLIM)、蛍光寿命画像ナノ顕微法(FLIN)、ライダー装置、時間分解トモグラフィ、又は様々な飛行時間ベースの測定方法がある。
【0084】
利点として、本発明の大きなメリットは、電子増倍カスケードにおける最後の電子増倍装置の出力面とアノードとの間の電圧からタイミング信号形状が独立していることから得られる。これは、従来技術で知られた出力面からの信号の取得に基づく方法とは対照的である。
【0085】
検出器は、位置感応アノードからの位置信号を用いて検出位置を計算する位置計算機をさらに備える。
【0086】
検出タイミングパルスを測定する手段が接続された入力面と接地電位に接続された出力面とは第1電子増倍カスケードの単一の電子増倍装置の入力面と出力面として実現されてもよい。
【0087】
第1電子増倍カスケードは、積層されて配置された少なくとも2つの電子増倍装置を備えてもよく、検出タイミングパルスを測定する手段が接続された入力面と接地電位に接続された出力面は、前記第1電子増倍カスケードの別々の電子増倍装置の入力面と出力面として実現されてもよい。
【0088】
少なくとも1つの第2電子増倍カスケードは、入力面と第1電子増倍カスケードの間に配置され、及び/又は少なくとも1つの第3電子増倍カスケードは第1電子増倍カスケードとアノードとの間に配置されてもよい。
【0089】
第1電子増倍カスケードの少なくとも1つの電子増倍装置のうちの1つの出力面は、高周波コンデンサを介して接地電位に接続されてもよい。
【0090】
第1電子増倍カスケードの少なくとも1つの電子増倍装置のうちの1つの出力面が接続される接地電位は、電子増倍カスケードの全ての電子増倍装置を囲む導電性リングとして実現されてもよい。
【0091】
高電圧供給器は、少なくとも1つの電子増倍装置の入力面と出力面との間に異なる電位勾配を形成するそれぞれの入力面と出力面に別々の電圧を供給する。
【0092】
高電圧供給器は、電子増倍装置のそれぞれの入力面と出力面に異なる電圧を供給するために、互いに直列に接続された抵抗器を備える分圧器に接続されてもよい。2つの抵抗器間の分圧器の点は第2高周波コンデンサを介して接地される。
【0093】
限流抵抗器は、高電圧源とタイミングパルスを検出する手段に接続された入力面との間に配置されてもよい。
【0094】
減結合コンデンサは、タイミングパルスを検出する手段と入力面との間や、限流抵抗器と高電圧供給器との間に設置されて、検出器の出力ラインからタイミングパルスを検出する手段にある検出器の高電圧部分を減結合するようにしてもよい。
【0095】
インピーダンス均等化抵抗器は、タイミングパルスを検出する手段への検出器の出力ラインに対して並行に接続されてもよい。インピーダンス均等化抵抗器の抵抗はタイミングパルスを検出する手段の増幅器の入力インピーダンス及び/又は出力ラインそのものの入力インピーダンスを均等化するように構成される。
【0096】
タイミングパルスを検出する手段は、結合コンデンサを介して検出器から検出タイミングパルスを受け取る第1電気入力と、検出器に入射する量子ビームを照射するパルス照射源の基準信号発信器によって生成される基準信号を受け取る第2電気入力と、第1電気入力に接続された弁別器と、第2電気入力に接続された遅延線と、スタート信号を送信する弁別器と接続される時間間隔測定装置であり、かつストップ信号を時間間隔測定装置に送信する遅延線と接続される時間間隔測定装置とを有してもよい。タイミングパルスを検出する手段は、入力側の第1電気入力と出力側の弁別器との間に配置される高周波信号増幅器をさらに備えてもよい。
【0097】
アノードは電荷測定アノードであってもよく、時間補正はTR=T0−F(A)の形式において適用される。ここで、TRは時間の補正された値、T0はタイミングパルスを検出する手段によって測定された時間、Aは測定された電荷全ての合計値、F(A)は補正関数である。アノードは位置感応電荷分割アノードであってもよく、時間補正関数はF(A,X,Y)でもよい。ここで、XとYは検出の空間座標を示す。補正関数Fは前述のとおり追加の人工ニューラルネットワークに適用できる。
【0098】
時間測定に使われる生じた信号振幅は、電子増倍装置により発生した電子なだれの振幅に比例するため、信号識別により誘発される変動補償のための時間・振幅補正に時間補正を用いることができる。
【0099】
さらに追加して、量子ビームのタイミング情報を取得するための時間分解測定機器が備えられ、この機器は、量子ビームを発生するパルス照射源と、照射源の励起と同期する基準タイミングパルスを発生する基準信号発信器と、以上説明した検出器と、基準タイミングパルスと検出器が発生した検出タイミングパルスとの時間差を保存するデータプロセッサとを備える。
【0100】
検出器は、位置感応アノードを有する位置感知検出器であってもよく、データプロセッサは検出位置と時間差とを保存してもよい。位置感応アノードは、電気的に絶縁された電極のセットとして実現されてもよい。このようなアノードは、例を挙げるのであれば、4分割アノード、ウェッジ・ストリップアノード、マルチ電極アノード、マルチストリップアノードである。直接位置測定のためのパターンを形成するために、個別の電極が接続されてもよい。例はいわゆるバーニアアノードで実行される。パターンにより位置の直接の測定ができて、パターンが座標を計算する計算モジュールを採用するかもしれない。
【0101】
検出器の電子増倍カスケードは真空の中に配置され、アノードは、真空の外に配置される位置感応外部アノードである。また、高抵抗性の減結合層が電子増倍カスケードとアノードとの間の真空に配置されてもよく、アノードに接続されてもよい。
【0102】
高抵抗減結合層は半導体材料で作られてもよく、好ましくは ゲルマニウムで作られるのがよい。
【0103】
外部アノードは、同一平面に備えられ、非オーバーラップ構造を持ち、絶縁層上に配置されたx感知素子とy感知素子とを備えてもよい。ここで、一つの方向のそれぞれの感知素子はx感知構造とy感知構造の平面において互いに接続されており、他方の方向の感知素子は絶縁層の下で互いに接続される。
【0104】
x感知素子とy感知素子はダイアモンド形状の構造を有してもよい。
【0105】
本発明の側面の1つは、1つ以上のプレートを有する空間分離MCP増倍カスケードをいくつも用いることを必要としないことである。検出器内に2つ以上のMCPからなる単一の積層体を作ることが技術的には好ましい。このようなアセンブリは標準的な商業的に入手可能な製品であり、時間分解又は時間及び空間分解粒子検出のために真空で収容された装置一式で変形することなく採用可能である。さらに、真空密閉の装置内で標準的なMCPアセンブリを使うことも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
本発明は添付図面に照らしてより詳細に説明される。しかし、図面は説明のためにのみ示されており、図面は本発明の技術的な範囲を限定しないことは注目すべきである。
【0107】
【図1】図1は最新式のマイクロチャネルプレート式の位置分解測定機器を示す。
【図2】図2は、は、最新式の位置分解測定機器の4分割アノードを示す。
【図3】図3は、最新式の位置分解測定機器のウェッジ・ストリップアノードを示す。
【図4】図4は、最新式の位置分解測定機器の交差ストリップアノードを示す。
【図5】図5は、最新式のマイクロチャネルプレートの運転原理を説明する。
【図6】図6は、2つのMCPを備えるMCPアセンブリの増幅分布を示す。
【図7】図7は、単一の励起点において、図2の4分割体1及び2での2つの測定された電荷のプロットを示す。
【図8】図8は、本発明の位置分解測定機器の位置キャリブレーション装置の例を示す。
【図9】図9は、図8の位置分解測定機器のキャリブレーション信号タイミング図を示す。
【図10】図10は、本発明における位置分解測定機器のフィードフォワードニューラルネットワークの構造を示す。
【0108】
【図11】図11は、本発明における位置分解測定機器において、付属のリング電極を備える改良版の4分割アノードを示す。
【図12】図12は、本発明における位置分解測定機器のマルチ電極アノードを示す。
【図13】図13は、本発明における位置分解測定機器のキャリブレーション設定スキームを示す。
【図14】図14は、位置感応アノードとして2次元配列に配置されたダイアモンド状の電極を備えるマルチ電極アノードを示す。
【図15】(a)は、図14の垂直又はy方向の電極の配線を示し、(b)は、図14の水平又はx方向の電極の水平方向の配線を示す。
【図16】図16は、本発明の第1実施形態における追加の時間分解(つまり位置及び時間感応検出器)の概略図である。
【図17】図17は、本発明の第2実施形態における位置及び時間感応検出器の概略図である。
【図18】図18は、第1実施形態において用いられているパルス照射源を示す。
【図19】図19は、第2実施形態において用いられているパルス照射源を示す。
【図20】図20は、本発明の時間測定手段の概略図である。
【0109】
【図21】図21は、第1実施形態における位置及び時間分解測定機器の概略図である。
【図22】図22は、位置測定に用いられる電荷測定装置の概略図である。
【図23】図23は、シールドリングの概略図である。
【図24】図24は、第1実施形態で用いられる拡張4分割アノードを示す。
【図25】図25は、本発明の第2実施形態における時間分解測定機器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
本発明を好ましい実施形態に照らして説明する。理解を容易にするため、図面に共通の同一又は同等の構成部材は同様の符号によって示される。
【0111】
機器装置に入射する量子ビームの照射位置の位置情報を取得又は推定する発明の機器装置は、位置感知検出器と、照射源と、照射源による照射によって生じた検出器の応答を測定する手段と、人工ニューラルネットワーク構造とを備え、人工ニューラルネットワーク構造は測定された検出器の応答が人工ニューラルネットワーク構造に入力され、照射の初期空間座標が人工ニューラルネットワーク構造の出力となるように設けられる。例えば、増幅装置として、MCPプレートが使われることが言及される。位置感知検出器として、電荷ベースのマルチアノード式システムが説明される。しかし、発明はこれらに限定されるものではない。発明は時間ベースの遅延線関連検出器にも応用されるかもしれない。検出器の応答関数と、検出器の励起又は照射の初期座標を推定する目的とだけが必要とされている。励起は、電磁放射源又は粒子源から引き出される。検出器の応答を測定する手段は、好ましくは、技術分野では既知の原理に基づいた検出器読取りシステムである。
【0112】
本発明は生成された粒子なだれの動的な性質に依存しており、ヒューリスティック近似によるアノード電極パターンのモデル化の必要性を省いた。初期粒子の位置を計算するために、複数工程の手順が実施される。
【0113】
第1の工程では、照射への反応を受け取るために位置感知検出器に接続されたニューラルネットワーク構造はもちろん、位置感知検出器と照射源とを備える。
【0114】
第2の工程では、所定の精度をもって初期空間位置を予測するために、既知の空間位置からの検出器の応答を用いてニューラルネットワークのトレーニングをする。この工程は、検出器の照射の既知の空間位置の反応のデータサンプリングのサブ工程を含む。
【0115】
第3の工程では、検出器の応答をニューラルネットワーク入力へと送るために、未知の位置からの初期照射による検出器の応答を直接測定する。また、照射の初期点の推定値としてニューラルネットワーク出力を計算する。
【0116】
詳細には、検出器へ入射する照射位置の空間座標を取得又は推定する方法は、好ましくは、以下の工程を含んでいる。人工ニューラルネットワーク構造が所定の精度によって照射の初期位置を予測できるようになるまで、既知の初期照射位置からの検出器の応答を用いて人工ニューラルネットワーク構造をトレーニングする工程と、照射源によって検出器に対して照射する工程と、照射源による照射の時の検出器の応答を計測する工程と、測定された検出器の応答を入力として人工ニューラルネットワーク構造に入力する工程と、初期照射の空間座標に対応した人工ニューラルネットワーク構造の出力を計算する工程である。よって、ニューラルネットワークは検出器の応答関数をモデル化している。反応関数はニューラルネットワークへの入力であり、励起の初期座標は出力である。
【0117】
最初に、ニューラルネットワークのトレーニングが実施され、検出器の応答関数を受け取る時に照射の初期位置をモデル化することを「学習」する。これは、以下の工程により実施される。
i) 既知の空間座標から検出器に対して照射し、
ii) 生じた検出器の応答を測定し、
iii) 検出器の応答と照射の既知の空間座標とを保存し、
iv) 上記の工程i)〜iii)を別々の空間座標に対して繰り返し、照射空間をサンプリングし、
v) 測定された検出器の応答を入力として人工ニューラルネットワーク構造(7)に送り、
vi) 初期照射の空間座標に対応した人工ニューラルネットワーク構造の生じた出力を計算し、
vii) 既知の照射用初期空間座標と、空間座標を示す人工ニューラルネットワーク構造の現在の出力との差異の関数を計算し、
viii)差異の関数を最小化するために人工ニューラルネットワーク構造のパラメータを変更し、
ix) 計算した差異の関数が特定の閾値よりも低い場合にはトレーニング処理を停止し、そうでなければ工程v)に戻る。
【0118】
このように、初期の照射空間が励起源の既知のある所定の空間座標から(好ましくは広範囲にわたって)モデル化される。トレーニングの間、照射の既知の初期空間座標と空間座標を示す人工ニューラルネットワーク構造の現在の出力との間の差異の関数が最小化される。このような関数は費用関数とよばれ、例えば、平均平方誤差(RMSE)として実行される。異なる検出器の応答をニューラルネットワークに特定の数だけ提供した後、この誤差関数は最小化され、平均化される。測定された誤差が特定の閾値を下回る場合、トレーニングが止められ、ニューラルネットワークは位置感知検出器の応答関数をモデル化可能となり、初期座標の実測定と推定がなされる。
【0119】
トレーニングプロセスを停止するための特定の閾値は、検出器における物理的に実現可能な分解能の大きさに設定することができる。分解能は通常、単一の増幅成分のチャネル寸法に関連している。MCPの場合、これはMCPの細孔やチャネルの直径であり、一般的には3〜12ミクロンの範囲である。現実的には、ノイズがある状態では、この閾値は細孔直径の3〜5倍でよい。例えば、12ミクロンのMCPの場合、閾値は40〜50ミクロンに設定されうる。
【0120】
しかし、閾値は最小化工程の数の関数でもある。
【0121】
データの集合全部は、好ましくは、パラメータが最適化される前にニューラルネットワークに送られるのではあるが、それぞれの検出器の応答をニューラルネットワークに提供した後でもよい。前者はいわゆる「オフライン」学習であり、後者はいわゆる「オンライン」学習である。よって、データサンプリングやトレーニングは、データサンプリングの最中に単一の工程で実施することもできる。つまり、検出器は既知の位置から照射されて、反応が測定されニューラルネットワークに供給され、ニューラルネットワーク出力が計算されて、単一の反応がそれぞれ提供された後で(反応の集合全部が提供された直後ではなく)パラメータが最適化される。
【0122】
第1の工程は検出器のキャリブレーションである。「キャリブレーション」は以前に既知の多数位置において起こりうる点励起の集合への検出器反応の測定を意味する。キャリブレーションは、ニューラルネットワークのトレーニング(つまり、ニューラルネットワークパラメータ、いわゆる重み付け、の最適化)の一部をなす。すなわち、検出器は特定の既知の位置のポイント露光の反応関数を計測するために用いられる。
【0123】
電荷分割(charge-splitting)アノード読取りの場合の反応又はトレーニング集合は、異なる陽電極上の電荷の測定値の組み合わせからなる。増幅の確率的な性質のため、電荷組み合わせは、n次元の電荷空間に線を形成する電荷のベクトルであり、ここでnとはアノードの個別出力値の数である。
【0124】
座標をはっきりと測定するための遅延線アノードの場合、初期照射の実座標を予測するために、測定された予備座標そのものがニューラルネットワークに供給される。位置情報が直接測定されるが、追加でニューラルネットワークに基づく後処理をすれば、技術的な誤差又は許容誤差による遅延線の非均一性に起因するゆがみを修正することができる。
【0125】
ニューラルネットワークのトレーニングのための励起の初期空間のキャリブレーション又はデータサンプリングについて、光学LEDマトリックスを照射源として用いた例を参照しながら、詳細に説明をする。しかし、励起源はLEDマトリックスに限られるわけではない。
【0126】
励起の初期空間をサンプリングするためには、電子なだれを誘発するため光子又は粒子を、前側MCPの表面における既知の空間位置に送らなければならない。すなわち、照射の初期位置は、検出器上の初期位置に対応するのである。このような光源は、検出器の応答と初期の励起の位置とを相互に関連させるために、コマンドを受け取る。図8と9は、感光性の検出器を校正するための光源の構成方法を説明している。
【0127】
位置感応光電子増倍管(PMT)は位置感応MCPベースの検出器の大きなファミリーである。この管は、光電カソード3、積層体として配置されたMCP4、アノードシステム2を図1に示されるように備えている。この種類の装置は扱いやすいパルス光源を用いて校正することができる。そのような光源では、光強度と照射位置を調整することができる。
【0128】
位置感応PMTシステムは、光電カソード3と積層して配置されたMCP4と位置感応アノード2とからなる真空密閉のアセンブリを備えている。光電カソード3は入射光子を光電子に変換する。光電子は印加電界に従って移動し、MCP積層体で増幅又は増倍される。生じたなだれは電界に従って移動して、位置感応アノード2に到着する。アノード2は電極5の集合体であり(4分割アノードについては、図2を参照)、この電極5は真空部内部に配置可能であり、米国特許第5,686,721号公報に記載されたとおり真空利用真空減結合技術(vacuum utilizing vacuum decoupling techniques)の外側にも配置可能である。
【0129】
発光ダイオードアレイ(LED)は光学的な励起源として用いられる。このようなアレイは広く多くの分野(街灯、車両照明、及び様々な表示適用例)で用いられている。LEDマトリックスをPMTキャリブレーションに用いるため、キャリブレーションアセンブリが図8に示されるように作られた。アセンブリは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)チップ14と、調整可能なパルス電流源12と、照射源6として緑色LEDマトリックスとを備える。アセンブリの核はFPGA14上に組み込まれた論理スキームである。このスキームはコンピュータからのコマンドをパラレルTTL8ビットプロトコルを経由して受け取る。このプロトコル(図9に示す)は、5ビットDATAバスや、行又は列レジスタ15、16へのDATAバス値の保存をRAWCOLラインの状態により始動させるWRITE信号を有する。
【0130】
コンピュータへの8ビットインターフェースの説明をする。DATAはコンピュータに送られる4ビットの単語であり、FPGA14にどの行/列が設定されているかを伝える。ROWCOL信号は、行又は列レジスタ15、16が設定されているかを調べる。もしRAWCOL=1であれば、行レジスタ15は保存され、そうでなければ列16が設定される。FIRE信号は、電流源12に単一の電流パルス11の放出をさせてマトリックス6の選択されたダイオードを作動する。電流パルス11の継続時間と振幅は、LEDの種類、マスク孔の直径、検出器の光電カソードなどにより最適化される。振幅は異なる電圧をパルス電流源に印加することで変更することができる。継続時間はRCチェーン(RC chain)の時定数によって調整される。しかしながら、キャリブレーションアセンブリに対しては、放射線源のアレイは放射線源の既知の位置だけを必要としており、それぞれ個別の放射線源は別々に駆動又は始動されうる。
【0131】
孔のあいた非透過性のマスクで覆われたLEDマトリックス6の画像が、商業的に入手可能な対物レンズを使って光電カソードの表面に送信される。
【0132】
よって、キャリブレーションは、以下の工程を必要とする。
・放射線源のアレイの単一の放射線源を始動して放射線を放出させる。
・検出器の応答を計測する。
・照射の位置と対応する検出器の応答を保存する。
【0133】
これらの工程は、アレイの少なくとも全ての異なる放射線源が使われるまで実施されるべきである。例えば、放射線源アレイの大きさや放射線源間の距離のために照射の起こりうる初期空間が十分に含まれていない場合には、放射線源アレイを別の位置に移動させて、上記工程を繰り返す。
【0134】
完全な光学的なキャリブレーション又は、位置感応アノード付きのPMTと、検出器の電子モジュールと、コンピュータと発明のLEDキャリブレーションアセンブリとを備えるデータサンプリング構成のより詳細な例では、以下の工程が実施される。
1.変数Mx、Myをゼロにする。
2.LEDマトリックス6の行と列を無作為に選び、ダイオードの座標を行と列の番号を示す変数txとtyとに保存をする。
3.点(tx,ty)と点(Mx,My)との間の距離をチェックする。もし距離が全面積直径の1/4より小さければ、工程2に戻る(この工程は、前回のなだれが放出された後の回復時間中にMCPチャネル内部の電子が不足する影響を取り除く)。
4.txをMxへ保存し、tyをMyへ保存する。
5.電流パルスを送信して、それぞれのダイオードに光を放出させる。
【0135】
6.イベントを待つ時間間隔を設定して、データをコンピュータへ書き込ませる。
7.時間間隔が終わった後、検出器の電子モジュールからのデータをコンピュータが受け取ることを禁止する。
8.待機時間中に登録された光子の数をチェックして、イベントがなければ、工程2に進み、記録されたイベントが1回より多くあったならば、それらを消して工程2に戻る。
9.マトリックスにおけるLEDの行と列番号とともに、測定された検出器の応答を保存する。
10.収集されたイベントの数がさらなる処理と分析に対して十分であるか確認する。十分でない場合、工程2に戻る。そうでなければプログラムを終了する。
【0136】
個別のMCPチャネルの飽和効果を避けるために、励起の座標は好ましくは無作為に選択することもできる。
【0137】
アルゴリズムは、データレコードの合計数と比較して、少ない数のマルチ光子イベントを保証する。このアルゴリズムは個別の電極の数やアノードシステムの種類に依らず、あらゆるタイプの位置感応アノード読取りシステムにおいて利用することができる。
【0138】
上記の簡素なアルゴリズム、又はより細かなアルゴリズムからの出力は、検出器の応答や励起点の空間座標を含むレコードの集合体である。アノードが多数の電極を備える場合や、必要な詳しさで反応関数を説明するにはポイントの数が不足する場合には、マトリックスを固定で既知の距離によって移動させ、キャリブレーション手順を繰り返す。このような移動は、十分な精度を持つマイクロステージやナノステージの上にLEDマトリックスを設置して行うことができる。
【0139】
上記装置はパルス装置を用いる。しかし、そのようなことはする必要もない。検出器を既知の位置から励起する低強度連続照射点源が用いられる。十分な数のイベントを取得した後、点源を座標が正確にわかる別の場所に移動させる。
【0140】
このキャリブレーション手順は、遅延線アノードや交差遅延線アノードのように、座標が直接測定されたパラメータであるアノードシステムを備える検出器に応用可能である。検出器の応答の直接の測定や本発明のサンプリングアルゴリズムを応用することで、遅延線の非線形ひずみ効果を補正することができる。このような効果は、例えば、遅延線の両端のパルスの時間差を測定するのに使われる時間測定装置の積分非線形性の結果である。
【0141】
以下、真空装置一式キャリブレーションの別の例を説明する。実験の原子核物理学での必要とされる従来技術で知られる位置感応電子増倍器を用いた多数の検出システムがある。このようなシステムは通常、大型の真空部(例えば、加速器のチャンバー、X線源、さらに大型の真空装置一式の一部)内に位置するMCP積層体と位置感応アノードとのアセンブリを備えている。
【0142】
光学系のための上述の手法と同様のデータサンプリング手法は、キャリブレーションでも用いることができる。電子銃は位置を変更可能な電子源として使われてもよい。今回の工程2で異なる初期位置において電子銃が用いられること以外は、キャリブレーション手順アルゴリズムは上記の手法と同様である。電子銃の場合、Mxとtxとの変数は、電子銃の種類によってはx位置を調整するために用いられる電圧や電流を保持する。また、My、tyは出力ビームのy位置を担う値を保持する。x値とy値との集合数はLED素子の固定数や大きさに限定されることはなく、十分なサンプリングをするための校正点の数に対する必要性に応じて選択可能である。
【0143】
キャリブレーションのさらなる例として、マスクのようなキャリブレーション方法もある。この技術では、静的計算モデルに基づく電荷分割原理を用いる多くのアノードシステムタイプが知られている。これは検出器例の個々の特性はほとんど誤差を生み出さない、ということを暗示している。すなわち、装置インスタンスは異なるけれども、これらは位置計算の観点から見たら同じようなものである、と暗示している。同じ仮説をANNベースの計算アルゴリズムに対しても持つことができる。いったんニューラルネットワークが構築されてトレーニングされると、そのニューラルネットワークは、直接同じアノードタイプに、最初からそのために作られたかのように応用することができる。
【0144】
この事実により、同一又は同様のアノード構造ベースの検出器に対して、次のインスタンスのトレーニング時間を最小化できる。もし重み及びバイアスの初期の集合を既知の検出器から再利用されるのであれば、重み空間での無作為の起点に対しての反復回数と比較して反復回数を劇的に減らすことが可能ある。通常、パラメータは無作為に初期化される。別の観点はキャリブレーションの処理の簡素化能力である。多くの場合、電子銃や、LEDマトリックスや、他の調整可能で動的な照射源を用いることが問題になる。よって、トレーニングでは、同様の検出器で採取されたデータポイントを用いてもよい。
【0145】
コンピュータ駆動の照射源を用いる目的は、検出器の応答に伴う露光の位置をトレーニング事例を形成するために保存することができることである。異なる励起点を推定してそれぞれを区別するためのアノードの安定した信頼性の高い数学的なモデルを構築することは、正確な位置情報を知らない状態ではいくつかの場合に難しい。過去に構築された特定のアノードタイプ用のANNモデルにより、露光点を相互に区別することができて露光点を識別することができる。真空ベースの装置一式の場合、MCPの前面に設置された照射用の孔付き非透過マスクを用いることが便利で簡単である。PMTの光学的なキャリブレーションは、非透過マスクや低レベルの強度の照射源を使うことで簡易化できる。これにより、特別な装置が必要なくなる。
【0146】
キャリブレーションの第1の工程は、既知の形状のマスクを貫通する粒子や光子の連続した計数を含む。第2の工程は、露光点を相互に区別するために従来の既知のANNを適用する。計算ゆがみが大きすぎる場合や隣り合う校正点をはっきりと区別するのが不可能な場合、正確な座標補間のための十分な数のポイントに達するためには、サンプリングポイントの数を減らして測定を繰り返す必要がある。
【0147】
第3の工程は、アノード/検出器インスタンスの差異から生じたゆがみを補正するためにネットワークをトレーニングすることである。
【0148】
ニューラルネットワークのトレーニング 工程2:ネットワークそのもののトレーニング
キャリブレーション工程で得られたデータセットは、入射粒子空間の(x,y)位置の検出器アノードシステムの複数次元読取り空間へのマッピング(mapping)の点の集合である。すなわち、検出器は点励起への反応を計算する計算装置として扱われる。
【0149】
数学的に、これは以下のように表される。
q=Q(x)、
そして関数Fにより位置が計算される。
x=F(q)
ここで、qはベクトルxの位置における点励起の検出器の応答読取りシステムのベクトルである。関数Qは、検出器で計算される関数であり、Fは既知の検出器の応答からの入射粒子の初期位置を再び取得するために計算される関数である。すなわち、手順全体の目的はQの逆関数を作ることである。
【0150】
従来技術でも述べられるとおり、アノードシステムは、初期座標へのアノード反応のマッピングのヒューリスティック推定手法に基づいて作られている。電子雲フットプリントや座標を直接測定するために作られたアノードシステムをモデリングすることで、このマッピングの逆関数はアノードの幾何学的性質に基づいて作られ、計算されうる。WSAでは(米国特許第4、395、636号公報参照)、公式により位置計算が求められ、この公式は、座標を正規化するために信号の増幅の合計で割られた電荷の測定値の線形結合である。1976年にLapingtonにより最初に発表された4分割アノードの計算方法は、座標に対して比例するだけで位置を正確には計算しない比率方程式(ratio equation)に基づくものである。
【0151】
座標計算の固定モデルベースの手法のうちどれもが、アノード部分の製造の精密限度を乗り越えられないし、完全な検出器アセンブリの個別の幾何学的性質を考慮できていない。技術的幾何学的誤差はある所定レベルにおける要求分解能では無視しうるが、完全には取り除くことができない。すなわち、正確に互いに同様の反応をするような2つの完全に同一の検出器を作ることは、技術的に不可能である。結果として、同一の技術で同一の材料を用いて作ったとしても、固定された空間座標xへのベクトルqの全ての組み合わせの反応の集合は1つの検出器インスタンスから別の検出器インスタンスとで異なることになる。すなわち、異なる検出器インスタンスは固有の関数Qを計算し、結果として逆関数F(q)がそれぞれの検出器例にとって固有のものとなる。
【0152】
個別の検出器インスタンスや検出器が作られる部品の特性を考慮するために、個別の検出器のそれぞれの関数Fを以下のように補正する必要がある。
x=F(p,q)
ここで、pは、完全なシステムとしての具体的な検出器インスタンスの個別の属性を含むパラメータベクトルであり、MCP増幅率、増幅器とアノードとの間の電界の差異による異なる電子雲フットプリント、読取り処理やADC変換、直接読取り回路・アノードの組み合わせの特性を含む。
【0153】
人工ニューラルネットワーク(ANN)は最初は生物学的な神経のモデルとして考えられていた。人工ニューラルネットワークはパターン認知アプリケーションとして広く使われたが、これよりも難しい作業である関数近似としてはあまり使われなかった。今日では、ANNは、幅広い応用範囲で使われる強力な数学的計算ツールである。フィードフォワード(FF)ANNは、フィードバック情報伝搬のない神経信号のモデルを示す特別なクラスのネットワークである。信号はネットワークを介して一方向のみに入力から出力へ送信される。図10に示されるように、FF−ANNは入力層と多数の隠れ層と出力層とを備える。しかし、隠れ層はなくてもよい。モデルの複雑性に応じて、入力層、隠れ層及び出力層は1つ以上の神経からなる。ネットワーク内のそれぞれの神経は、1つの出力といくつかの重み付きの入力を備えており、入力に関しては、図10の神経間の相互接続線は重み付きの接続に対応している。
【0154】
y=f(Σwixi+b)
ここで、合計はI=1、nで行われる。nは前の層における神経の数、「x」は神経入力のn次元のベクトル、「w」はいわゆる重みベクトル又は神経のパラメータベクトル、bはバイアス又は神経へのオフセットを意味する。関数「f()」は伝達関数と呼ばれる。伝達関数として一般的に使われる多数の関数が存在する。
双曲線正接 f(x)=(ex−e−x)/(ex+e−x)
シグモイド関数 f(x)=1/(1+e−x)
線形関数 f(x)= x
飽和線形関数
【0155】
しかし、他の関数も神経の伝達関数として用いられることが知られている。
【0156】
FF−ANN層における神経への入力数は前の層における神経の数で定義される。ANNのそれぞれの個別の神経出力は入力の加重和の関数として計算される。通常、FF−ANN内の神経により計算される関数は層によって決まる。「n」個の神経の単一層及び前の層における「m」の計算は、マトリックス形式で書くことができる。
y=f(WX+b)、
ここで、Wはnxm要素のサイズの重みマトリックスであり、n行からなる。Xは前の層からの出力値のm次元のベクトルであり、bは層バイアスのn次元のベクトル、yは層のn次元の出力ベクトルである。関数Fはベクトルの個別の要素それぞれに対して計算されることを意図している。
【0157】
上記をまとめると、n個の層全体のFF−ANN関数の出力は以下のように記載することができる。
y=fn(Wn...f3(W3f2(f1(W1X+b1)+b2)+b3))
ここで、Xはネットワーク入力ベクトルであり、Wiはi番目の層の入力重みマトリックスであり、fiは層「i」の伝達関数である。よって、ニューラルネットワーク出力関数は層伝達関数の入れ子関数であり、連続関数を適用するのに大きな自由度をもたらしている。
【0158】
本適用においては、入力ベクトルXは検出器の応答である。マルチ電極アノードタイプの位置感知検出器では、反応はアノードの電極の数と同数の要素を持つベクトルである。入力ベクトル要素は、電極から測定された生検出値又はヒューリスティックベースの計算の結果である。例えば、4分割アノード検出器を用いて従来技術から知られる比率近似法(ratio approximation)の結果を使うことは便利であり、神経の数を最小化することができて、ANN評価とトレーニング計算のコストを下げることができる。多くの数の要素を持つアノードシステムの場合、位置計算での結果におけるノイズ成分の影響を最小化するために、特定の閾値を超える値の一部だけを選択する必要がある。
【0159】
遅延線検出器では、反応は遅延線の数に等しい多数の要素を有するベクトルである。2次元遅延線測定では、2つの交差する遅延線が使われてもよく、x方向に延びる遅延線はx座標を計測し、y方向に延びる遅延線はy座標を計測する。ANNに送られる実パラメータの数は、前処理計算段階の結果も含んでいる。
【0160】
ニューラルネットワークの重みとバイアス(一般的な用語ではパラメータ)は、具体的な検出器インスタンスのすべての個別の属性を完全なシステムとして全て保持する検出器パラメータベクトルに対応し、MCP増幅特性、電界の差異のための異なる電子雲フットプリント、読取り処理とADC変換、直接読取り回路/アノード組み合わせの特性を含む。
【0161】
ANNによる関数の補間のことをトレーニングと呼ぶ。トレーニングは費用関数を最小化する処理であり、例えば、ANN出力と目的関数のベクトル差のノルムの関数(ここでは検出器の照射の初期座標)である。ノルムはベクトル成分の二乗の差の合計として定義される。
E=Σ(yi−ti)2
ここで、yiはネットワークの出力値であり、つまり1つのネットワーク出力ノードの出力値である。tiは目標ベクトルの成分である。ネットワークの構造により、異なった最小化アルゴリズムを使うことができる。また、最小化される異なる費用関数も使ってもより。
【0162】
トレーニング集合はキャリブレーション工程で得られる値を有している。ANNの入力値は、点励起への検出器の応答値であり、目標値は入射露光の座標である。
【0163】
アノードパターンの複雑さにより、必要とされる精密レベルを達成するために適用された神経の数が決まる。計算コストの視点からは、性能を最大化させるために、できるかぎり最も簡易な構造が好ましい。所望の値により近づけるため、ネットワークは、隠れ層や隠れ層内のノードの数を増加することで、いつでも増加することができる。
【0164】
多くのエンターテイメントアプリケーション(同時ビデオ処理、実世界のゲーミングシミュレーションなど)の要求に見合うようにベクトルベースの問題計算を強化するために計算モジュールが複数の算術論理演算装置を備えている場合、ネットワークは、さらに多くのベクトル計算機能を有した最新の計算ハードウェアやソフトウェアで計算されてもよい。ANNの計算作業は主にベクトルに基づくため、商業的に入手可能なエンターテイメントハードウェアに適している。
【0165】
しかし、ニューラルネットワークはハードウェアにより全てを実施されることも可能である。このような実施はFPGAチップを用いてすることができる(Coricら、"A neural network FPGA implementation", Neural Network Applications in Electrical Engineering, 2000. NEUREL 2000. Proceedings of the 5th Seminar)。
【0166】
ニューラルネットワークのトレーニング 例1
ニューラルネットワークトレーニングの例を、4分割アノードの画質を向上させることができる拡張4分割アノード検出器システムを参照して説明する。
【0167】
まず最初に、位置感知検出器を説明する。
【0168】
Lamptonが説明する伝統的なQAは個別のMCPチャネルの直径にまで高分解能を実現する。このアノードに関する2つの主要な制限は、強い非線形性と狭い視野である。
【0169】
本発明は、キャリブレーション手順と組み合わせてANN機器を適用することでこの非線形性の問題を克服する簡単な方法を提供する。
【0170】
Lampton が発表した公式は、完全に電荷を取得できる場合には有効となる比率方程式に依存している。Purschkeらにより実証されたように、なだれを拡大するのと組み合わせて4分割体を大きくすることで、視野が広くなる。真空密閉の装置を作るため、MCPのサイズと同じ又は同様の直径の構成を使うことが技術的には好ましい。視界の制限を超えるために、第5の周囲アノードQ5が図11に示されるように導入された。第5の電極5はリングとして配置され4分割アノードQ1〜Q4を囲んでいる。この電極は雲電荷のテール(tails of cloud charge)を集めることを担っている。電子雲のフットプリントはMCP積層体4の出力とアノード2の間の電圧により変更されて、個別の4分割体のサイズと同等にされる。これが、なだれの中心からかなり離れて分布する電子の大部分となる。一方で、このことで、なだれが十分な大きさになるので、位置計算のために全体の視野にそってすべての4分割体からの電荷を使うことができるようになる。
【0171】
第5のアノードはQAを拡張したものである。このような構造は、大きな電子雲の複雑な形状をもたらすため、アノードの幾何学的性質のみに依存する安定した数学的モデルの構築を困難なものにする。
【0172】
簡易な偏平マルチアノード(FMA)構造(図12(破線が電子雲に対応)で示されるような4分割アノードや他の簡易な偏平構造)が単一光子計数で用いられるときの利点は、アノードとグランドとの間に非常に小さな静電容量が存在することである。電荷感応増幅器(CSA)ノイズは入力容量に強く依存している。そのため、画質を守りつつ、アナログ/デジタル変換の前のアナログ増幅器でのシェイピングに短い時間を使うことが可能になる。複雑なアノード構造(例えば、ウェッジ・ストリップ(WS)アノード)での典型的な値として、例えば、1500nsではなく、150nsのシェイピング が用いられてもよい。つまり位置判定の同一の精度であれば、本FMA−MCP−PMTはWS−アノードMCP−PMTよりも10倍の性能を発揮するかもしれない。第2の利点は、MCP積層体の小さな倍率を有するアナログチャネルの信号対ノイズ比が守られるという事実である。
【0173】
よって、MCP−PMTの寿命(又は、感度が2分の1に低下する前の、MCPによる電荷の量)は、WSや抵抗(R)アノードの場合よりも10倍よい。4分割アノードの場合の増幅率は、約106であり、それに対して、WSやRの場合には107以上である。
【0174】
WSやRアノードの場合では3つ以上のMCPが含まれるが、2つのMCPのみを含むことが可能である。
【0175】
偏平QA構造の製造技術は非常に簡素で精密である。よって、電荷位置への依存はなめらか(sleek)(明らか)であり、位置判定の線形性は非常に高い。他のアノードシステム(WS、R、遅延線、マイクロ・ストリップなど)の製造はもっと複雑である。アノードの局所欠陥がありえるので、画像の高い線形性を達成することはできないであろう。本発明では、離れた校正点を用いて局所的な欠陥のない座標復元アルゴリズムを作ることができて、校正点間の補間を円滑にできる。
【0176】
ゆがみのないアルゴリズムを自動的に生成することは可能である。MCP−PMTのどのサイズでも、位置感度(最大視野におけるピークセルの量)を低下させることなくモデル化することができる。他のタイプのアノードシステム(WS、R、DLなど)の場合、アノードのサイズを下げることは非常に困難である。分解能はアノード構造工程(WSやDL)又は抵抗(R)で決められて、どのMCPのサイズに対しても一定値(マイクロメーターの単位で)となる。マイクロメーターの単位における分解能(例えば、100マイクロメーター)は、10mm、25mm、80mm視野に対して同じであり、よって検出器の空間分解能を限定する。
【0177】
あらゆるFMA構造(QAを含む)の主な欠点は、視野の縁部における分解能が低下することである。この分解能の低下は、全体のMCPエリアに対する空間感度を得るために、そのようなアノードにおける電子なだれのサイズがそれぞれの部分的な電極のサイズよりも大きくなくてはならないためにおこる。もしなだれがアノード構造の縁部に落下したならば、なだれ電荷のその部分が失われてしまう。この電荷を得るために、アノード構造周囲の導電性電極Q5が使われる。明らかに、簡易な偏平周囲電極の幅は広くなくてはならない。つまり、なだれサイズの半分以上とすべきである。なだれは非常に広いテールを有しているため、なだれの一部が周囲電極Q5から外れて落ちたり、電極から外れた場所にある絶縁体を荷電したりする。この電荷は絶縁体によって収集されて次のなだれを押しやったり次のながれの形状をゆがめたりする。結果として、よりちいさななだれ部分だけが周囲電極Q5に到達することになる。
【0178】
これを避けてなだれの意味のある部分を収集するために、「管状の」又はリング状のアノードハングオーバー(hang over)がアノード構造として使われる。偏平構造の4分割アノードがx方向及びy方向に延設される場合、リング状のアノードはz方向に延びる。
【0179】
リング状のアノードの高さは、わずかな誤差を含む分割アノードの典型的なサイズと同等としなくてはならず、リング状のアノードは、最後のMCP4とアノード構造2との間のエリアを覆うだけでなく偏平アノード構造の周囲の絶縁体を覆うようにして配置されなければならない。リング状のアノードの形状は、偏平アノード2構造の外形をまねしなくてはならない。よって、偏平アノード2が円形を有すのであれば、リング状のアノードの形状は円柱形となるし、偏平アノードが六面体形状を有すのであれば、リング状のアノードは断面が六面体をベースにした形状となる。この結果、そのような構造での最大のなだれ電荷を収集することが可能であり、平面構造と比較してより良好な位置感度を縁部で実現することができる。
【0180】
リング状の又は円柱状のアノード形状の利点は、フルアノードシステムと比較してよりちいさなサイズであることだ。よって、偏平構造サイズとフルアノードシステムのサイズとでは差異がない。
【0181】
4つの陽電極を備えた通常のQAには、位置感度が悪くなるエリアがある。これらの部分はそれぞれの4分割体の中心に位置している。この欠点を回避するために、図12に示されるように、さらに5個、6個、7個、n個のリング状のアノードを備えた、より複雑な偏平構造を採用することができる。
【0182】
電子なだれのサイズは、簡易な4分割体の場合のサイズよりもより小さくなるため(25mmの視野に対する20mmの4分割アノードなだれは400*400分解能に対応)、位置感度はさらによくなり(25mmの視野に対する12mmのなだれは650*650の分解能に対応し、25mmの視野に対する7mmのなだれは1000*1000の分解能に対応する)、分解能が悪化しているエリアが取り除かれる。
【0183】
もちろん、全ての視野に必要とされる分解能をも達成しうるために、10以上の同一面積の分割アノードを有するより複雑な偏平構造も構成されうる。しかし、適切な周囲電極なしでは、視野の縁部での分解能は悪化してしまう。
【0184】
よって、そのような偏平構造の最大分解能は分割アノードの品質により決まり、追加で周囲電極(例えばリング状のアノード)が用いられると、最大分解能は視野のそれぞれの点において高く均一になる。
【0185】
上述の検出器システムの照射の初期座標を推定するために使われるニューラルネットワークを使うために、第1の工程では、よく知られた空間座標の点励起への検出器の応答を測定する。
【0186】
ニューラルネットワークトレーニングに必要とされる入力情報を取得するために、キャリブレーション装置一式が作られる(図13(a)と13(b))。この検出器1は、必要に応じて垂直位置の調整も可能なホルダー22を用いて光保護チャンバー21内に設置される。光対物レンズ23マウントはチャンバーの前フランジ内に配置される。対物レンズは、LEDマトリックス6の画像を光電カソードの表面に投影する。マトリックスモジュールは電動式ステージ24の上に設置される。光電カソードの表面上に最適規模での画像を形成するために検出器を垂直軸に沿って精密に移動させる光投射装置に検出器ホルダーが設置される。電動式ステージ24は2つの水平方向の制御に用いられる。
【0187】
電動式ステージ24の他の役割は、マトリックス6を変更せずに制御露光点の数を増加することである。標準的な顕微鏡のステージ24がマトリックス6の位置を制御するのに用いられる。
【0188】
z方向に延びる第5の周囲電極を有してx・y平面に延びる拡張4分割アノードが光電子増倍管用に使われてきた。電子モジュールは照射源6による照射で生成された電荷を測定するための5つの独立した分光測定チャネルを備えている。単一のチャネルは、電荷感応増幅器と、シェイピングフィルター(shaping filter)のセットと、12ビットアナログ/デジタル変換器(ADC)と、デジタル出力インターフェースとを備える。弁別器のひきがねとなる信号は、すべてのチャネルを同期させる。デジタルインターフェース装置はADCからの情報を取得し、パッケージを形成してそれをコンピュータに送ることを担っている。
【0189】
検出器は単一光子計数モードによって運転されている。全電荷の増幅分布(つまり、離れた電極から測定されたすべての電荷部分の合計)を測定することで、単一の光子運転モードの正確さを制御することができる。MCPチャネルの飽和はより低い増幅率となり、結果、分布での最高点の位置を、原点の方向に対して、左側(よりちいさな電子なだれ振幅のエリア)へ移動させることになる。マルチ光子イベントは、メインのピークの右側(より大きな振幅となる側)で2次ピークとなる。
【0190】
光強度は2つの方法により制御される。対物レンズの絞りを回すことと、ダイオードのポンプ電流を変化させることである。対物レンズの分解能が絞りのサイズによって決まるため、電流を用いた方法が好まれる。絞りは、最大可能な分解能を達成するように設定される。
【0191】
コンピュータ駆動のLEDマトリックスは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)装置に組み込まれた論理スキームで制御される。装置はコンピュータからコマンドを受け取ることができ、要求されるとLEDマトリックスに短い光を放出させることができる。マトリックスは、2.54mm(1/10インチ)の空間に32行と32列有している。表面はフォトプロッティング(photo-plotting)技術により作られて254ミクロン(1/100インチ)の孔直径を有する非透過性膜で覆われている。
【0192】
LEDマトリックス6を用いたキャリブレーションはこれまで説明されてきた周期的複数工程アルゴリズムである。
【0193】
すべてのLED位置に対する十分な数の光子が取得できたら、アルゴリズムが停止する。実験では、照射源の1つの点当たり(又は励起の初期空間座標当たり)8000〜12000、好ましくは9000〜11000、さらに好ましくは10000の個別イベントを測定できれば、視野全体への拡張QAの検出器の応答関数を精密に再構築するために十分であるとわかっている。
【0194】
より複雑なアノードシステムの場合、マトリックスは、電動式ステージ24を用いて点と点との間に特定のオフセットをもうけて数回測定される。
【0195】
キャリブレーションアルゴリズムの出力は、アレイ構造である。(x,y,q1,q2,q3,q4,q5)。ここで、(x,y)はマトリックス内のダイオードの行と列の数であり、(q1,q2,q3,q4,q5)は5つの陽電極に対して検出器の応答の電荷の測定値である。構造の合計数はLEDの数とそれぞれの校正点で取得される光子の数で決まる。MCPベースの検出器の視野は通常、検出器で認識できるダイオードの数程度である(ここでは、1024個のダイオード(32x32)のうち、780〜830個の範囲内である。
【0196】
よって、トレーニング集合は理論的には、初期のy座標とそれぞれの反応を含む(8000〜12000)x1024データの構造から成り立っていてもよい。又は、現実的には、(8000〜12000)x780データ構造、つまり、620万(8000x780)から1230万(12000x1024)のデータ集合、さらに好ましくは700万(9000x780)から1130万(11000x1024)、さらにより好ましくは780万(10000x780)から1024万(10000x1024)のデータ構造である。
【0197】
それぞれのダイオードに対して登録されたイベントの数のヒストグラムを評価することで最適な突起形状(optimal projection)を管理する。ヒストグラムにより、軸対称、照度の均質さ、傾きや傾斜管理などが即座に視認で管理できる。
【0198】
位置感知検出器の例としての光電子増倍管は、ローレベルのバックグラウンドノイズを有すると知られている。典型的なバックグラウンド計数率は、視野全体で1秒につき10〜100個の光子の範囲である。キャリブレーション試験の典型的な反復率は、1秒につき8000〜11000回の範囲におさまる。結果として、光検出器バックグラウンドノイズは、最終のデータセットの1パーセント未満に影響する。これにより画像センサの巨大なダイナミックレンジとなる。登録のこのような高い力学的深度はデータ前処理によって解決が必要となる多くの作業をもたらすかもしれない。
【0199】
・LEDマトリックス基板の材料はプラスチックで作られており、光が近接位置に入り込むのを完全に保護するわけではない。つまり、システムは、近接位置/チャネルから放出された光子の一部を用いて1つの光源の(x,y)座標を記録する。
・すべての材料は単一光子レベルで反射する。後に検出器で登録される入射光子を反射する可能性はゼロではない。このため、視野において均一なバックグラウンドノイズがもたらされる。
・対物レンズ内での反射。
【0200】
実験データを簡易に迅速に呼び出せるように、取得したデータの全てのアレイをダイオードの座標に基づいて並べ替える。
【0201】
マトリックスの全ての点を並び替えた後、複数次元ヒストグラムが電荷空間に作られる。閾値未満の値はノイズと見なされ、その後の処理からは取り除かれる。拡張QAアノードシステムとともに使われる12ビットADC(4096チャネル)用として、32チャネルのヒストグラムビンのサイズが妥協点として選ばれる。詳しくは、後の処理用にビンの数と有益な情報を保つ確率との間の妥協点として、32チャネルのヒストグラムビンのサイズが選ばれる。すなわち、もしそのセルサイズを小さいものにするのであれば(1チャネルを限界として)、有益なイベントの一部は統計不足のためにバックグラウンドノイズとして扱われる。一方、大きなビンサイズにすると、データ集合にノイズイベントが残ることになる。
【0202】
高次元の値のヒストグラムを作るには、大きな量のメモリが必要となる。例えば、32ビンを有する4096個の全チャネルは、自由度の次元あたり128ビンチャネルとなる。5つの電極を備えた拡張QAにとって、これは1285=34359738368ビンキューブ(bin cubes)となる。メモリの問題を克服するため、以下の手法が用いられている。全てのイベントに対して、全ての電荷軸にそったビンの組み合わせが計算されて、辞書に保存される。その組み合わせが辞書に記録として存在する場合には、その組み合わせに関連した値は1増加される。結果として、辞書はそれぞれのイベントの多くの近隣値を保持する。2回目の処理の間、ビンがもう一度計算されて、閾値フィルタリングが適用される。
【0203】
ノイズを除去した後、ニューラルネットワーク学習アルゴリズムが用いられる。しかしながら、もしノイズが低ければ、前のフィルタリングの工程は除外できる。また、上記閾値フィルタリングの後、メジアンフィルタ処理(median filtration)を多項式近似に基づいて使ってもよい。それぞれ個別の電荷が信号振幅の二乗多項式として補間される。これによりニューラルネットワークの学習セットのサイズを最小化し、イベント分布の中央部分のみを考慮して学習処理を高速化させる。
【0204】
拡張QAには、フィードフォワードニューラルネットワークの以下の構造が用いられた。5つの陽電極を表す5つの入力が双曲線正接関数を計算する第1隠れ層内の23個の隠れ神経に接続されている。第2隠れ層はシグモイド関数を伝達関数として計算する23個の神経を保持し、初期光子の(x,y)空間座標を表す2つの出力神経が使われる。
【0205】
ネットワークの構造が実験的に見つけられている。それぞれの座標に対して1つの出力とするネットワークを利用して、神経の数を減らすことができる。一方で、実際のマトリックス計算では、最新のコンピュータシステムのベクトル計算の拡張機能を用いてより高性能用の独立した2つの集合を処理するよりも、係数(重みマトリックス)の1つの集合を処理する方が速い。
【0206】
非線形最小化のLevenberg−Marquadtアルゴリズムが、ネットワークの重み係数を探すために(すなわち、ニューラルネットワークパラメータの最適化のために)用いられる。
【0207】
トレーニング手順の停止基準が採用された最適化アルゴリズム(ここでは、Levenberg−Marquardtアルゴリズム)に関連している。停止基準を定義する2つの方法がある。
1)それぞれの校正点の誤差が、アナログ電子回路処理パイプラインノイズやADCビット幅などで制限される検出器の物理的分解能より低くなる時。さらにトレーニングをしても測定ノイズが変化するよりも大きく出力を変化させられないのであれば、トレーニングが止められる。
2)勾配が特定の値未満である時。通常は、この値は処理装置の計算誤差の倍数に関連している。
【0208】
校正点の数が1000〜1200を超えた状態で、2次導関数の正確な計算を必要としない勾配ベースの最小化や最適化方法に移るのが実用的である。
【0209】
ニューラルネットワークのトレーニング 例2
さらに、減結合された複数分割アノードも採用してもよい。米国特許第5,686,721号公報は高真空内部検出器部から読取りアノードシステムを隔離する方法を示している。なだれの電荷は検出器の外の抵抗層の外側面上で直接測定される。これにより簡単にFSA構造を接合することができる。
【0210】
この方法を電荷画像装置に適用するために、アノード読取りパターンが標準技術を用いてプリント基板上に形成される。電荷感応増幅器は基板の開口部に接続される。同じキャリブレーション手順が以上説明したように適用される。
【0211】
5つの電極構造については、真空密閉の拡張QAアノード装置の場合と全く同一のニューラルネットワーク構造が適用されて座標を計算する。
【0212】
マルチ電極パターンの場合、ネットワーク構造を変更しなければならない。さもなければ、増加した入力数はトレーニングの速度と安定性を悪化させることになる。水平軸と垂直軸に沿って別々に座標を計算するために、2つのネットワークを採用することができる。例えば、9つの電極パターンのために、それぞれのネットワークは9つの入力と40の隠れ神経と1つの出力を備えている。ネットワークの係数を適用して、測定した電荷を所望の座標にマッピングすることで、トレーニング手順がそれぞれの別々のネットワークに対して行われる。
【0213】
結論として、QAは、以下のメリットをもたらすことができる最も簡単なパターンのうちの1つである。安く簡単な生産、高精度の電荷測定と高い処理量をもたらす低内部電極容量。
【0214】
キャリブレーション装置一式は、コンピュータインターフェースを備える簡単なLEDマトリックス以外には、特別な装置を必要としない。コンピュータ駆動のシステムはキャリブレーション試験において連続制御をする。
【0215】
図14は、可能な他のマルチ電極アノードアセンブリを示しており、他のマルチ電極アノードアセンブリは位置感応アノードとして2次元配列に配置したダイアモンド状の電極を備えている。図15(a)は、図14の垂直電極又はy電極の配線を示す。図15(b)は、図14の水平電極又はx電極の水平配線を示す。以上説明したように、特に交差ストリップシステムにおいては外部電荷分割アノードはx感知素子とy感知素子を同一平面上に有する必要がある。交差ストリップシステムでは、現在の設計では、絶縁層で分離された異なる2つの平面位置となり、わずか75%までの充填率である。図15に示したとおり、垂直方向又はy方向に配置されたダイアモンド状の電極が、図14に実線で示されたように平面上に接続されている。水平電極又はx電極は絶縁層の下で接続されている。
【0216】
このような設計の利点は、最新技術の交差ストリップアノードとは対照的に、同一の大きさで構成されたxとy収集素子を採用するにもかかわらず、ダイアモンドのサイズを増加させて、99%のエリアを覆い、ほとんど互いに接触する程度にすることができる。
【0217】
発明で説明される方法は、あらゆる陽電極の構造にとって共通であり、アノードの数や形状や幾何学的特徴に依存しない。
【0218】
本発明における位置及び時間分解機器は、照射パルス放出に反応した照射粒子の到達時間をさらに測定する。このような時間分解を、図16〜25を用いて説明する。しかし、上記の実施形態の特徴は、以下の全ての実施形態でも使えることは注目すべき点である。よって、以下、あるアノードシステムについて説明するが、このアノードシステムは上記の実施形態の1つにもなりうる。特に、以下の図に示されていないが、以下の実施形態の全てにおいて、人工ニューラルネットワークは以上説明したように異なる上記アノードシステムに接続されて位置分解能を提供可能である。
【0219】
位置及び時間感応検出器は、単一の電子増倍装置と1つのアノードとを備える単一の電子増倍カスケードだけで構成される。時間信号を用いて、以下のように時間を測定することができる。
【0220】
図16は、発明の第1実施形態による時間感応検出器の概略図を示す。図17は、発明の第2実施形態における検出器を示す。図3と図4は、第1実施形態及び第2実施形態において採用されたパルス照射源を示す。図20は、実施形態で用いられる発明の時間測定手段140の概略図を示す。第1実施形態による時間分解測定機器は図21に示される。図22は、実施形態における位置測定で任意に用いられる電荷測定装置の概略図である。図23は、検出器素子の周りにあるシールドリング を示す。図24は、入射する電子ビームの位置測定に用いられる拡張4分割アノードを示す。図25は、発明の第2実施形態における時間分解測定機器のブロック図を示す。
【0221】
量子ビームのタイミング情報を取得するための好ましい時間分解測定機器は、測定される量子ビーム101を生成するためのパルス照射源114と、照射源114の励起と同期する基準タイミングパルスを生成するための基準信号発信器115とを備える。そのため、パルス照射源は機器への照射の放出に同期して基準電気パルス信号を生成する。機器はさらに光源から放出される照射や、サンプル(ここでは、サンプル124は、初期照射133を101に変換して機器に送る照射源)により再度放出される照射を、図1、図2に示されるように初期照射への反応として検出する時間感応検出器を備えている。検出器は検出と同期してタイミングパルスを生成し、アノード信号を生成するが、好ましくは入射照射の位置に依存することに限定されない。データプロセッサがさらに備えられており、基準タイミングパルスと検出器により生成された検出タイミングパルスとの時間差を保存する。データプロセッサは、好ましくは、測定された時間差の値とともに入射粒子の位置を保存する。
【0222】
検出器の第1実施形態は図16に示され、第2実施形態は図17に示される。図において、時間感応検出器は検出器に入射する量子ビーム101を伝達する検出器入力面137(つまり、ビーム101が進入する検出器の側面。図16では上側。)と、アノード102とを備える。図16における検出器入力面137とアノード102との間には、3つの離間して配置された電子増倍カスケード131が備えられており、それぞれの電子増倍カスケード131は単一の電子増倍装置104を備える。電子増倍カスケードの1つ(増倍カスケード131a)はタイミング測定のために用いられ、図16では中間にある電子増倍カスケード131aである。
【0223】
この電子増倍カスケードは、以下「第1電子増倍カスケード131a」と呼ばれる。また、「タイミング信号提供電子増倍カスケード」とも同義として呼ばれることもある。「第1」という番号は、他の電子増倍カスケード131や図16に矢印によって示される入射量子ビームの方向に対する電子増倍カスケード131aの位置を示すわけではない。実際に、図16において、第2電子増倍カスケード131bは第1電子増倍カスケード131aの上(つまり、第1電子増倍カスケード131aと検出器入力面137との間)に配置されている。また、第3電子増倍カスケード131cは第1電子増倍カスケード131aの下(つまり、第1電子増倍カスケード131aとアノード102との間)に配置されている。
【0224】
それぞれの電子増倍カスケード131は、2つ以上の電子増倍装置104を備えてもよく、この電子増倍装置104は積層体の中でお互いの上に直接配置される。発明における積層体は互いの上に直接積層される2つ以上の電子増倍装置を備えてもよいし、単一の電子増倍装置だけを備えてもよい。それぞれのカスケードは、隣接するカスケードに対して隙間で分離されている。すなわち、カスケードはお互いの上に直接配置された電子増倍装置を備えているものの、複数のカスケードは互いに離間されている。例えば、図17は、2つの電子増倍装置104を有する単一の電子増倍カスケード131aを備える検出器を示す。
【0225】
それぞれの電子増倍カスケード131とそれぞれの電子増倍装置104が入力面と出力面を有する。それぞれの電子増倍カスケード131は入力面に入射する量子ビームを増倍させるよう備えられている。この量子ビームは検出器に入射する量子ビーム101であってもよいし、前の電子増倍カスケード131からの出力であってもよい。図16では、検出器に入射する量子ビーム101が第2電子増倍カスケード131b(図16で一番上のカスケード)の入力面に入射する。第2電子増倍カスケード131bの出力ビームは第1電子増倍カスケード131aの入力面に入射する。第1電子増倍カスケード131aの出力面から放出されたビームは第3電子増倍カスケード131cの入力面に入射する。第3電子増倍カスケード131cの出力はアノード102に向けられる。図16のそれぞれの電子増倍カスケード131が単一の電子増倍装置104だけを備えているので、電子増倍カスケード131のそれぞれの入力面がそれに対応する電子増倍装置104の入力面となり、電子増倍カスケード131のそれぞれの出力面がそれに対応する電子増倍装置104の出力面となる。
【0226】
タイミングパルスを提供するために、検出タイミングパルスの測定手段140が備えられており、これは第1電子増倍カスケード131aの少なくとも1つの電子増倍装置104のうちの1つの入力面107に接続されている。第1電子増倍カスケード131aの少なくとも1つの電子増倍装置104のうちの1つの出力面108は接地電位に接続されており、前記出力面108が検出タイミングパルスの測定手段140に接続された前記入力面107とアノード102との間に配置される。すなわち、接地した出力面108は、タイミング測定のために用いられる入力面107とアノード102との入射ビームの方向に対して後方に配置される。図16では、それぞれの電子増倍カスケード131が単一の電子増倍装置104のみからなるため、第1電子増倍カスケード131a(図16では、中間に位置するもの)のその単一の電子増倍装置104の入力面107は、タイミング信号を出力するために使われて、その電子増倍装置104の出力面108は接地されている。
【0227】
すなわち、図16に示される入射粒子101の方向に、検出器は入力面137と第2増倍カスケード131bを備え、さらに、離間して第1電子増倍カスケード131aと第3電子増倍カスケード131cがその後に続く。アノード102は第3電子増倍カスケード131cの出力面に面するように最後に備えられる。
【0228】
タイミング測定に用いられる入力面107は限流抵抗器132を介して高電圧源に接続されている。減結合コンデンサ103は検出器の高電圧部分を関連する低電圧時間測定電子回路から減結合するために用いられる。コンデンサ103の1つの電極は、タイミング測定に用いられる増倍カスケード131aの前記入力面107と限流抵抗器132との間のある点に接続されている。減結合コンデンサ103の第2の電極は、図18に示されるようにライン109に接続されており、ライン109は自身につなげられた時間間隔測定装置にタイミング信号を送る。タイミング測定に用いられる増倍装置104の出力面108は1つ以上の高周波コンデンサ106を介して接地されている。
【0229】
高電圧供給器は、量子ビームが自身の軌道に沿って加速されるように、量子ビームの軌道に沿って電位勾配を形成するように備えられている。つまり電位勾配が検出器入力面137とアノード102との間に形成される。図16では、高電圧供給器がそれぞれの電子増倍カスケード131の入力面と出力面とに、異なる電圧を与える。高電圧UIがタイミング測定に用いられる増倍装置104の入力面107に限流抵抗器132を介して印加される。電圧UOがタイミング測定に用いられるカスケード131aの出力面108に印加されて電圧差(例えばUI<UO)が形成される。カスケードを形成するMCPの数や種類で決まる電圧差は積層体増倍操作を可能にするために十分に高くする。電圧は、増倍カスケード131の全ての入力と全ての出力に印加され、最もマイナスである第1の点から始まり最もプラスであるアノードシステム102までの検出器全体を通じて電界の勾配を形成し、電子なだれを照射の方向に沿って伝搬させる。
【0230】
照射の方向に対する第1MCP104と相互に作用する入射粒子101は電子のなだれをもたらす。印加電界に従い、なだれは備えられた増倍カスケード131を通過して、より多くの電子を獲得する。生じた電気インパルスはそれぞれのMCP104に伝搬して、電源が電子の不足を補う。限流抵抗器132により形成された電流パルスはコンデンサ103を充電する。生じた信号109は図20に示されるように、検出タイミングパルスを計測する計時手段に送られる。電子なだれはアノード102に到達するまでさらに伝搬する。
【0231】
MCP104は広い範囲の照射の種類(高エネルギーのガンマ量子、電子、中性子、アルファ粒子、イオンなど)に対して感応することが従来技術から知られている。MCP104は低エネルギーの光子の直接の登録には使うことができない。よって、可視域の光を登録するために光電カソード125を追加して、可視光の量子を光電子に変換するために用いられてもよい。スペクトル感度は光電カソードの種類によって決まる。バイアルカリ光電カソードは400〜500nmの範囲で量子効率が高いいう特徴を持つ。マルチアルカリはスペクトルの赤色範囲(850nmまで)で感応性がある。AsGa光電カソードの大きなファミリーは、処理のタイプによるが、紫外線から赤外線までの波長の広い範囲を取り扱う。MCP104は直接この光電子を増幅してなだれを生じさせる。
【0232】
接地コンデンサ106の役割は、増倍カスケードの出力面108を等電位にして、生じたタイミングパルスの形状や振幅が、増増が起きたMCP上の位置に依存することを排除することである。分散した一連の抵抗器とコンデンサは、MCP104をモデル化する。入射粒子によって誘発される電子なだれは、コンデンサのうちの1つの突破口となる。MCPの表面に沿った電子なだれが生じた点の点から電磁波が広がる。電磁波はプレートの縁部と相互に作用しつつ、反射して、MCP表面の導電性層の周縁の部分から離れるようにして引き返す。出力面での電磁波の振幅は、なだれが形成される方向のために入力面での振幅よりも高い。
【0233】
よって、繰り返し反射を避けるために電磁波がMCPの出力面を離れることができる自由度を与える必要がある。本発明ではそのために1以上のコンデンサ106のセットを用いている。コンデンサ106が保持する電荷は電磁波を補償するための電荷の源となる。よって、電磁波は反射されないが、さらなる反射の形成は縁部で終わる。すなわちコンデンサ106はパルス信号に対してゼロ抵抗であり、コンデンサ106が電源設計においてノイズをフィルタリングするフィルター用コンデンサとして作用するのと同様の方法で信号を補償してなめらかにする。
【0234】
しかし、増倍カスケードの出力面108は直接接地させることもでき、接地コンデンサ106を必要としないこともできる。この場合、電圧UIは接地レベルに対して負の値となり、この点の後に印加される全ての電圧は正の値となる。
【0235】
接地は、MCP104から提供される信号の極めて速い性質のため、高い導電性の特徴をもつ。従来技術から知られているように、電流は表皮効果のために主に導体の表面を流れる。よって、銀や金のような高導電金属で接地電極を覆うこともある。電気的にみれば、接地電極を、入ってくる電気パルスの影響を受けずに電位をいつまでも一定に保つことができる無限の容量として扱うこともできる。大きなメリットとして、そのような構造は、電子なだれを放出することで誘発される高周波の電磁波の反射を減衰させることができる。さらに、米国特許公開公報第2007/0263223A1に記載のとおり、MCPの出力面から取得したタイミングパルスは正と負の極性の成分を有する。この手法とは対照的に、本発明は正の信号のみをもたらすため、超短パルス用のゼロ交差法を使わなくてもよい。よって、積算された信号は、なだれの振幅に関する完全な情報、つまりチャネルから放出された電子の数、を有している。
【0236】
対照的に、2極性の信号を積算しても、なだれの振幅に比例した信号をもたらさない。単一粒子計数モードでは、粒子は順番に登録される。よって、積算計測法とは対照的に、タイミングに加えて、検出器によって登録されたすべての単一の粒子の場所も測定することが可能である。これにより、入射粒子ビームの強度は十分に低くなり、主に単一の粒子イベントを生じさせる程度である。表面を等電位にすることの別の観点は、タイミング信号を取得する表面107をなだれが増幅カスケードをさらに伝搬する間に起こる処理の影響から保護することである。よって、取得された時間信号が、増幅カスケード131内でのなだれの形成の間、又はなだれとアノードとが相互に作用する間にあらわれる電気ノイズで汚されることはない。増幅カスケード131は照射の方向に対してさらに下流側に位置している。
【0237】
図17は発明の検出器の第2実施形態を示す。単一の電子増倍カスケード131aだけが備えられ、単一の電子増倍カスケード131aは積層されて配置される2つの電子増倍装置104からなる。つまり2つの電子増倍装置104は、直接お互いの上に積層される。図17において一番上の電子増倍装置104(つまり、量子ビーム101が入射する電子増倍装置104)の入力面107は、タイミング測定のために使われる。入力面107は図16のとおり、コンデンサ103とライン109を介して時間測定手段に接続される。第1電子増倍カスケード131aの第2電子増倍装置131の出力面108は、第1実施形態に記載のとおり、コンデンサ106を介して接地される。−Uから+Uの電圧の電位勾配は前記入力面107と前記出力面108との間で形成される。アノード102は電子増倍カスケード131aの出力面108に面して備えられる。さらに、必須ではないが、周囲シールドリング119が電子増倍カスケードを囲むように備えられてもよい。周囲シールドリング119は後ほど説明する。リング119は、図17に示されるように接地される。
【0238】
図18に示されるように、第1実施形態のパルス照射装置は、短パルスの照射133を発する照射源114と、照射源114の照射と同期して電気パルス129を発信する基準信号発信器115と、初期照射を別の形態の照射101に変換して再度発信するサンプル124とを備える。照射源114は短パルスの照射を発する。基準信号発信器115の電気パルスは照射をドライブできる。又は、図19の第2実施形態に示されたとおり、照射ビーム133の一部が基準信号を生成するのに用いられる。ここで、照射133はサンプル124と相互に作用する。サンプルは初期照射粒子133を検出器に送られる粒子101へと変換する変換器として作動する。サンプル124は初期照射133を検出器へ送られるビーム101とする移送体として作動する。もちろん、サンプル124は必須ではなく、量子ビームは直接検出器に送られてもよい。
【0239】
例えば、ドナー及び/又はアクセプタの蛍光寿命を分析することでフェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)を決めるために、時間相関単一光子計数(TCSPC)手法や、時間と空間相関単一光子計数(TSCSPC)手法がある。このTCSPC手法やTSCSPC手法では、パルス照射源114は粒子や光子のビームを発し、この粒子や光子はビーム101を再度発信するサンプル124に送られるか、パルスの状態で直接検出器に送られる。粒子加速器はこのような発信源の実行可能な実現手段の1つである。粒子のビームを発することで、トリガー基準信号129が基準信号発信器115により生成されて、加速器からの粒子ビームの放出が始動される。パルスダイオードレーザは照射源114の別の例であり、外部の基準信号源により始動されうるか、それを内部で生成する。従来技術から知られるように、モード同期パルスレーザを採用するために、合計のビーム強度のわずかな部分を使い、光ダイオード115(基準信号発信器として作動)に基準信号129(図19)を生成させる必要がある。
【0240】
図20に示されるように、検出タイミングパルスの測定手段140は2つの電気入力109、129を備え、高周波信号増幅器126と、弁別器110、遅延線113と、間隔測定装置とを備えている。間隔測定装置は時間/振幅変換器(TAC)111と、アナログ/デジタル変換器112とを備えてもよく、又は、時間間隔を直接デジタルコードに変換する特徴をもつ直接コーディング装置(direct coding device)を有する時間間隔測定装置によって実現されてもよい。
【0241】
検出器(すなわち、図1と2におけるタイミング測定に用いられる入力面107)からのタイミング信号は、ライン109上の高周波増幅器126に送られる。増幅された信号は弁別器110を通過し、信号の増幅が十分に高い場合には、基準となる振幅と継続時間とのパルスが生成される。弁別器は簡易な一定閾値弁別器(simple constant threshold discriminator)又は定フラクション弁別器(constant franction discriminator: CFD)であってもよく、MCPベースの増倍カスケードの振幅分解により誘発される時間変動を補償する。弁別器の出力では、2つの信号が生成される。第1の信号は、位置感応アノード読取りシステムの始動に使われる信号116(図22に示されるように)や適用分野によっては他の装置の始動のために使われる信号116である。図1〜15を用いてすでに説明したとおり、位置感応型アノード読取りシステムが人工ニューラルネットワークに接続される。
【0242】
第2の信号はTAC111の「スタート」入力に送られる。基準信号発信器115により生成された基準信号129は遅延線113に送られる。遅延の長さは、間隔測定装置の時間間隔の長さを含むように設定される。もしなだれの振幅が所定閾値よりも高い場合には、信号は弁別器110を通過する。対照的に、基準信号発信器115により生成された基準信号129が通常は周期的であり、それぞれの生成された照射パルスへの「ストップ」入力に送られる。TAC111の出力はアナログ/デジタル変換器(ADC)112に送られて、アナログ/デジタル変換器(ADC)112は信号をデジタル化し、生成したデジタル信号を分析と保存のために取得機器に送る。TAC111は検出器時間パルスに同期しつつ、通常、時間ADC112を始動する。間隔測定装置は時間/コード直接変換の特徴を有しており、取得機器によって分析され保存されるデジタル情報を提供するアナログ/デジタル変換器112の必要性をなくす。
【0243】
高周波パルス増幅器126は必須ではない構成であり、タイミング信号を取得する増倍カスケード131aにより生成された信号の振幅により必要性が決まる。なだれ1つあたり109個の電子よりも大きな増幅率の場合、増幅器126は必要がなくなり、直接弁別器110に送ることもできる。一方で、MCP積層体131が低増幅の場合、増幅器126の増幅係数を高くする必要がある。実際には、ノイズ/信号比率は時間測定パイプラインの設計時に考慮しなければならない。よって、MCP104と電気増幅との最適な組み合わせを見つけることで、信号振幅へのノイズを最小化させることができる。
【0244】
実際に、1つのMCP104の単一の増倍カスケード131を時間測定に使うことができる。しかし、弁別器110の閾値は、MCP104自身から突然発っせられる電子に関連するMCPノイズ信号を避けるため、十分に大きく設定される。例えば、直線状のチャネルMCP104に比べて、湾曲したマイクロチャネルプレート104は非常に高い増幅を持つと知られている。よって、プレート104の積層体を組立てずにそのような湾曲した増倍装置104を採用することも可能である。
【0245】
MCP104は理想的な電流源ではなく、増幅器126は入力周波数の範囲全体においては一定の入力抵抗にならない。よって、ライン上でMCP入力面107から増幅器129の入力に送られた信号109はゆがみを持つことになる。ゆがみは、MCP上の信号源の点と増幅器の入力との間でおこる信号の数多くの反射の結果である。この問題を解くためのいくつかの解決策がある。タイミング信号の最大振幅を達成して反射を取り除くために、増幅器129の入力を、タイミング測定に用いられるMCPの入力面107からの出力と直接接続してもよく、このことでライン109をできるだけ短くできる。
【0246】
ここで説明される他の解決策は、図17に示されるようにライン109に接続された補償抵抗器123を制御することである。MCPの無限抵抗のモデルケースの場合、抵抗器123の値は増幅器129の入力抵抗に等しく、ライン109のケーブル内での反射を取り除くことができる。非理想状態では、生成される信号が反射成分により汚されないように抵抗器123の値を選ぶことで、MCPの無限ではない抵抗と増幅器129の入力抵抗の非線形性とを補償する必要がある。
【0247】
入射量子ビームに一番近い前側電子増倍カスケード131bの場合、図21に示されるように単一MCPプレートのみが備えらており、よって検出タイミングパルスの測定手段140に必要な振幅を提供できないかもしれない。よって、好ましくは、タイミング信号は1つ以上のMCP104を有する電子増倍カスケード131aからわざわざ取得する。単一の直線状のチャネルMCP104の入力面107上のたった1つの入射粒子による信号は、単一のチャネル内で103〜104個の電子のなだれとなるかもしれず、よってタイミングの測定には弱すぎるかもしれない。この場合、106〜107個の電子の範囲内でなだれ振幅が変化するタイミング信号源として、追加増倍カスケード131aを用いることが好ましい。この追加された電子増倍カスケード131aは、入ってくる量子ビーム101の入射の方向に対して前側電子増倍カスケード131bの後方に設置された電子増倍カスケード131である。
【0248】
従来技術に記載されるように、MCPの出力面から取得したタイミング信号は、アノードシステム102の電位の影響を被る。確かに、出力MCP表面108と1以上の電極105を有するアノードシステム102との間の電位変化は、なだれの別の形状をもたらし、結果として、MCPの出力面108から取得するタイミング信号の形状に影響をもたらす。よって、出力面108を接地することは、入力面107をMCPの外でおこる処理から減結合することになる。
【0249】
さらに、増倍カスケード131aの出力面108を接地することで、アノードシステム102とMCP出力面108間の電圧の影響を取り除くことができる。その結果、時間分解測定はより確実で安定する。
【0250】
それに加えて、タイミング信号の積分結果がなだれの振幅に比例する。この事実により、定フラクション弁別器とは対照的に、ソフトウェアによる振幅変動を補償することができる。
【0251】
従来技術で知られるようなMCPの出力面108からタイミング信号を取得する方法とは対照的に、すべての測定は正のみの信号となる。信号は符号を変えることなく、パルス後振動(post-pulse oscilations)もないため、より正確で精密な時間信号測定となる。
【0252】
発明の時間分解測定機器の第1実施形態を、関連する図21を参照して説明する。この機器はパルスレーザ光源と、電荷分割位置感応アノード102を検出器として有する真空密閉の光電子増倍管と、アノードシステムの電極の電荷振幅を測定する手段とを備えている。しかし、一般的に、量子ビームのタイミング情報を取得するための時間分解測定機器は、量子ビームを生成するためのパルス照射源114と、前記照射源114の励起に同期して基準タイミングパルスを生成するための基準信号発信器115と、上述の検出器と、基準タイミングパルスと前記検出器で生成された検出タイミングパルスとの時間差を保存するためのデータプロセッサを備える。第1実施形態の機器は、2つの増幅カスケード131(それぞれが単一のマイクロチャネルプレート104で実現されている)を備える。
【0253】
図21の光電子増倍管は真空密閉の装置であり、真空密閉の装置は照射の方向に対して装置の前方に配置された光電カソード層125を有する入光窓を備えている。ガラス製の円柱状の真空部が、それぞれが1つのMCP104を有する2つの増倍カスケード131を収容している。一番上のMCP104と電子増倍カスケード131bはその入力面を介して光電カソード125に面しており、その出力面を介して第1電子増倍カスケード131aの次のMCP104の入力面に面している。離間した電子増倍カスケード131の間の空間は数ミリメートルの範囲であり、ここではその空間は4ミリメートルに等しい。タイミング測定に用いられる別のMCP104(つまり、第1電子増倍カスケード131a)はその入力面107を介して一番上のMCP104の出力面に面しており、出力面は位置感応アノード102又はアノードシステムに面している。
【0254】
高電圧電力が1つの負出力を有する外部電源により供給される。分圧器は検出器の以下の5つの点において個別の電圧値を提供するために用いられる。その5点とは、光電カソード125と、一番上の電子増倍カスケード131b(又は、一番上のMCP104)の入力面と、前記一番上のMCP104の出力面と、電子タイミング測定に用いられる第1増倍カスケード131aの別のMCP104の入力面と、前記別のMCP104の出力面とである。アノード電位は接地される。よって、一連の5つの分割抵抗器134を有する分圧器が用いられる。電流は一連の全ての抵抗器134の合計で決定される。電子増倍カスケード131の最後の表面以外の表面それぞれが検出器ハウジングの壁を通り抜ける1つの出力を有している。これらの出力は、検出器素子間の電圧勾配を形成する高電圧分割器の点と接続されておいる。最も低い電位である−3000ボルトは直接、光電カソード125の真空出力に接続される。
【0255】
パルスモードでの検出器の安定した操作を提供し、電源のノイズをフィルタリングするために、分割器の全ての点は支持用フィルター用コンデンサ(supporting filtering capacitor)128を備える。コンデンサ128は電圧のフィルタリングの目的で使われるための電荷を保持しており、安定した電圧を提供して高電圧HV電源のノイズを平準化させる。タイミング信号の取得点は第1電子増幅カスケード131a(図21で入射量子ビーム101の方向に対して2番目のカスケード131として配置される)の入力面107である。そして、限流抵抗器132は、分圧器からMCP104の入力面107へと接続される。減結合コンデンサ103は、限流抵抗器132とMCP104の入力面107との間に接続される。ケーブル109における検出タイミングパルスの測定手段140への反射を補償するため、チューニング用の抵抗器123が使われる。抵抗器123はタイミング信号取得点と増幅器126との間の点に接続されて接地されている。
【0256】
アノードシステム102は電気的に絶縁された5つの電極105を図24に示されるように備えた位置感応アノード102である。より具体的には、アノード102は、平面の同一の大きさの4つの4分割電極105と第5の円柱状のアノード105を備える。円柱状の電極105の高さはおおよそ検出器の半径に等しい。すべての電極105はそれぞれに個別の真空出力117を有しており、真空出力117は検出器ハウジングの壁を貫通している。
【0257】
照射の方向に最後のMCPを離れる電子なだれは106〜107個の電子を有している。最初、検出器の最後のMCP(量子ビーム101の初期入射の方向に対して最後)の出力面の近くの電子雲は、100〜1000ミクロンの直径を有しており、この直径は第1MCPで光電子により誘発されたなだれで覆われたアクティブなチャネルの数により決まる。印加電界に従って移動して、なだれはアノード102の4分割体にまで移動する。同時に、電子により誘発される内部の電気力がなだれを内部からあらゆる方向に爆発させる。そのため、平面の4分割体上のなだれフットプリントが、最後のMCPの出力面108と接地電位を有するアノード102との間に印加された電圧の変化により規制される。フットプリントの有効直径は、視野全体への位置感度を達成するために4分割電極のサイズと同等に調整される。周囲の第5の電極はなだれの核から離れて移動する電荷を集めて、4分割体の外縁部のなだれ電荷の損失を補償し、位置計算に追加の情報を提供する。
【0258】
図22に示されるように、アノードシステムの出力117は5つの独立した電荷測定チャネルに送られる。全てのチャネルが電荷感応増幅器(CSA)118と、シェイピング及びフィルタリング電子回路(shaping and filtering electronics)122と、異なる論理入力を介して同期する特徴を有したADC120とを備える。陽電極105からの信号117はCSA118の入力に送られて、電荷(電流)信号から電圧パルスへと変換される。CSA118のループバック静電容量は積分時間と増幅器の増幅率とを決定する。静電容量が高いと、精密な電荷判定をよりもたらすことができ、その結果として、位置の定義がより高い精度になる。信号のフィルタリングとシェイピングはADC120に受け取られ、また正しくデジタル化される必要がある。出力デジタル信号130は取得電子回路に送られて、前述のとおり人工ニューラルネットワークに送られる。
【0259】
なだれの電子は電極105同士で分けられて、CSA118に電流パルスを誘発する。増幅器118は電流パルスを統合して電圧信号に変換する。電極105から取得した生信号117は指数関数の形を有している。指数の減衰時間や増幅率は、CSA118内のループバックコンデンサの値によって決まる。典型的なアノードからの放出の減衰時間は100〜1000nsの範囲で変化する。増幅の後、信号はフィルタリグ装置122に送られ、デジタル化に使えるような階段状の信号が形成される。同期信号116がADC120を始動するために使われる。この信号は電荷測定チャネルの間で分配され、電荷振幅を表すコードの同時生成を保証する。出力デジタル信号103が座標計算手段に送られる。
【0260】
(入力面107からの)タイミング信号の取得に使われる前記第1電子増倍装置の出力面108は、約90°の角度で縁の部分に配置される真空部からの4つの電気出力を有している(図23)。タイミング測定に用いられる電子増倍装置の出力面108は、それぞれの出力上の4つの高周波コンデンサ106を介して、接地される周囲リング119に接続されている。周囲リングは接地電極として用いられ、多くのメリットをもらすことができる。(i)検出器が円柱状の構造のため、電気素子をできる限り検出器の近くに組み付けるのに便利な方法を提供することができ、検出器の寸法を最小にしている。(ii)このリングが検出器アセンブリを外部電磁波から保護しており、その結果、タイミング信号のノイズ成分を最小にしている。
【0261】
光電カソード125への電圧が内部出力フィルタリングを持たないHV電源からフィルタリングなしで直接供給される状態で、フィルター用コンデンサ128を有する分圧器の第1の点が第1MCP104の前面に接続されていることは注目に値する。同期パルス116を計数する原理に基づいた保護デバイスが作られる。特定の既定の時間間隔でのカウント数がユーザーに設定された限界値を超えた場合、HV供給装置の停止が起こる。測定されたサンプル上での光の分布に応じて、光電カソード125の局所的な露出過多とMCP104の局所的な過熱点とを避けるために限界値を変更することができる。実際には、プレートの種類と品質とによって決まるMCP104の均一な照度の推奨最大値は1秒当たり100000〜10000000回のイベントの範囲で変化する。よって、検出器感応部分の一律の照度となるような均一なサンプルのために、1ミリ秒当たり100〜10000の範囲で多数の最大カウント数を設定することができる。
【0262】
高い強度で小さな空間エリアに位置するサンプルには、局所的な過熱や露出過多の危険性を避けるために後の値は低減させることもでき、また積分間隔を延ばすこともできる。すべてのコンデンサ128を分圧器によって低圧放電するような電圧が指数関数的に減衰する状態では、光電カソード125が分圧器に接続される地点にフィルター用コンデンサを置くと、HV電源を停止することが無駄になってしまう。HV分圧器は電流を決定づける一連の高抵抗素子である。単一の抵抗器の典型的な値は数十メガオームである。ファラドのコンデンサを組み合わせると、高輝度の露光において光電カソードに決定的となる10ミリ秒の放電時間となる。以上説明したように、図21に示されるHV供給スキームの構造においては、保護カウンターが過負荷の信号を出してから数マイクロ秒以内でHV供給装置が完全に切断される。よって、内部フィルタリングを備えない高電圧電源が用いられる。
【0263】
この実施形態(図19に示されるように)では、モード同期レーザが照射源114として用いられる。発せられた光のわずかな部分がビーム分割器127で取得されて基準信号129を生成する光ダイオード115に送られる。光ビームは蛍光サンプル124へと送られるか、又は光を検出器へ誘導する光学系へと送られる。蛍光サンプルがある場合、再度発せられた光101は励起光をフィルタリングする手段によって検出器へと送られる。モード同期レーザは数メガヘルツの周波数で運転し、光のわずかな部分をパルス形式で発信する。レーザの周波数又は反復率はモード同期方法によって決まり、1ヘルツ未満から数百メガヘルツまでの広い範囲で変わりうる。現在商業的に入手可能なレーザシステムのパルス幅はフェムト秒からナノ秒の範囲で変化する。
【0264】
本実施形態では、7psのパルス幅で8MHzで運転するレーザが使われている。レーザの装置一式は、装置一式の幾何学的な設定を精密に制御できる光学的なテーブルに設置される。150ミクロンの厚さのガラスのプレートが、光ダイオードへのレーザ照射のわずかな部分(おおよそ4%)を反射するために用いられている。ダイオードの出力は増幅器や定フラクション弁別器へ送られて、信頼性が高く安定した基準信号113を形成している。光学的な構成要素(例えば、鏡、ニュートロデンシティフィルター(neutrodensity filter)、偏光フィルター、レンズ、ダイクロイックミラー、ノッチフィルター、対物レンズ)を用いてレーザ出力光の残りは、サンプルに送られる。サンプル124は再度光を発して、生成された照射が検出器に送られる。検出器の応答関数を計測するために(つまり、最も速い検出器の応答を達成するために)、ミラーが使われて光を光電カソードに誘導したり、又はサンプルが超高速の蛍光再発信時間を特徴とする蛍光体により交換される。
【0265】
光源から発せられた入射光子101又はサンプルから再発信された入射光子101が初期光電子を光電カソード125の表面からたたき出す。光電子はHV分圧器で駆動された印加電界に従って移動し、加速されてMCPにより増幅される。この結果生じた103〜104個の電子を有する初期なだれは次のMCPの入力面107に送られる。前側MCPの出力面と次のMCPの入力面107との間の隙間の電圧は、次のMCPの入力面上の約100のチャネルをおおよそ覆うように制御される。高い電圧をこの隙間に印加すると小さななだれフットプリントがもたらされて、小さな増倍率となる。一方で、低い電圧の場合、タイミング測定に用いられる次のMCPの入力面107上で初期なだれが広がり、増幅が高くなる。最適な検出器操作として、タイミング測定に用いられる次のMCPの約100チャネルが覆われる程度に電圧を設定することが現実的であろう。結果として、積層体全体の合計での増幅率は106〜107の電子の範囲となる。
【0266】
タイミング取得に用いられる次のMCP104のチャネルで段階的に増加されたなだれは、本発明の方法で取得される電流のタイミングインパルスとなる。電磁波は初期なだれフットプリントのエリア付近に広がり、MCPの縁部にまで伝搬する。MCPの中心からタイミング信号の読取りポイントまでの典型的な電磁波の移動時間は、100〜200psの範囲である。なだれによる乱れが信号の取得ポイントに届いた時に、2つの並行した処理が始まる。第1の処理は、タイミング信号で生成された減結合コンデンサ103の放電である。第2の処理は、なだれがなくなったエリアでの電子の損失を補償するための周囲コンデンサ106の放電である。数ピコ秒の誤差で同時に始まるこれら2つの処理により、タイミングパルスの負の成分が補償される。
【0267】
生成されたなだれが4つの平たい電極105と1つの円柱状の電極105とを有する位置感応アノード102に到着する(図9)。各電極105は同期信号116(図20参照)により駆動される独立処理パイプライン(図22)に接続される。電荷測定の結果は取得装置に送られて処理される。測定された電荷は、入射粒子の位置の計算に使われる。時間間隔を示すデジタル化された値は全てのイベントについて保存される。結果として、入射光子に関する以下のような完全な情報(アノードによって提供される位置、TACの手段により測定された時間、取得装置によりタイマーを用いて取得した全ての光子の絶対到達時間)を取得できる。
【0268】
初期の量子ビームに一番近いMCP104によって提供されるなだれの限定された振幅により、本実施形態では、第2MCP104はタイミング信号の発信源として使われる。光電カソード125の表面からたたき出された光電子は印加電界に従って移動し増倍カスケードの入力面に移動する。光電子の飛行時間は多くの要因(光電カソード125内の初期電子の電子レベル、放出の角度、光電カソード125と一番上のMCP104の入力面との間の電圧)によって決まる。また、MCP104内でのなだれ形成に要する時間も、測定されたタイミング信号の時間変動をもたらす要因となる。よって、電子なだれの移動時間をよりちいさな時間変動(time jitter)とするためには、照射の方向に対して一番上の増倍カスケード131から信号を取得するのが好ましい。本実施形態では、一番上の増倍カスケードが単一の直線状のMCP104しか備えていないため、十分なタイミング信号を提供するために、信号を第2カスケード131aから取得する。
【0269】
本発明の側面の1つは、なだれの振幅からもたらされる時間信号の振幅になめらかに依存することである。空間感応アノード102は、なだれ電荷の取得原理に依存する。よって、時間変動補正を処理装置に任せて電子モジュールを簡素化することで、CFDの代わりに速くて簡易な弁別器110を時間処理パイプライン(図20)において採用することが可能になる。
【0270】
レイトソフトウェア補正(late software correction)の別の観点は、ハードウェアCFD方法と比べ、より平準化されるこである。実際に、コンピュータを用いた補正は、時間の値を特定の距離(TR=T0-F(A)として表される)への変換に依存している。ここでTRは時間の補正された値、T0は閾値の変動でゆがめられ、かつTACにより測定された生値、Aは電荷の全ての測定値の合計、F(A)は補正関数である。実験では、関数F(A)は、振幅の負の指数の合計良好に用いられ、又は人工ニューラルネットワークによってより良好に用いられる。
【0271】
他の適用できる補正は、MCP表面におけるなだれが生じるエリアから信号の取得ポイントへの信号の移動時間でもたらされる時間変動を補正することを目的とすることもできる。
【0272】
図25に示される第2実施形態は本発明の別の観点を示している。図17の第1実施形態との一番の違いは、信号が照射の方向に対して前側の増倍カスケード131aから取得されることである。ここで、前側の増倍カスケード131aは、図21の実施形態と対照的に、2つの電子増倍装置104を有する。よって、ここで、タイミング測定に用いられる増倍カスケードは前側の増倍カスケード131aである。さらに、位置感応読取りは減結合層を用いて真空部の外部で実施される。誘発された電荷は検出器の外側面で測定される。しかしながら、この減結合層や外部への接続は任意で採択ができ、これに限るものではない。
【0273】
第2実施形態は、真空密閉のMCPベースの光検出器を採用し、この光検出器は、光電カソード125と、第1MCP104のチャネルの角度が第2MCP104のチャネルの角度とは逆であるような2つのMCP104が積層されて構成されたMCPシェブロン131と、好ましくはゲルマニウムもしくはサファイアでできた高抵抗性の減結合層136と、外部マルチ電極105アノード102とを備える。ゲルマニウム層136は、抵抗層を有する金属製のフランジ121の上に設置されている。増倍カスケード131の出力面108は高周波コンデンサ106によって周囲の高導電性リング119に接続される。この実施形態では、第1実施形態における4つの点とは対照的に、用いられている出力面108を接地するために出力のみを用いることができる。
【0274】
タイミング信号を取得する点は、検出器にある増倍カスケード131aの入力面107だけである。マルチ電極アノードシステム102は真空部の外のゲルマニウム層136の外側面に設置される。電荷は真空状態にある電極105では直接測定されず、絶縁体136の誘発された電荷が登録される。誘発された電荷は、高抵抗層に到着したなだれの電荷と層136の物質との相互作用でもたらされる。層136の設計は以下の2つの要求事項に従う。(i)層136は、なだれフットプリントの局所的なエリア内のなだれの電荷を保つために高抵抗を有する必要がある。(ii)一方で、抵抗は有限であり、電荷を縁部まで伝搬させるフランジ121から放出させることができる。
【0275】
光源から発せられる入射光子101、又はサンプルから再度発せられる入射光子101は初期光電子を光電カソード125の表面からたたき出す。HV分圧器で駆動される印加電界に従い、光電子は加速されてMCP104の積層体アセンブリによって増幅される。106〜107個の電子を有するなだれが生じて、抵抗層136に到着する。なだれにもたらされる電荷の電界は、抵抗層136の外側面に電荷を誘発し、電極105の集合によって測定される。生成される電荷信号107は電荷測定手段(図22)に送られる。電流パルスは減結合コンデンサ103を介して入力面107から取り出される。生成されたタイミング信号109は、上記のとおり時間測定手段(図18)に送られる。
【0276】
本発明は実施形態と例に基づいて上記のように詳述された。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されることは全く意図していないことは注目すべき点である。本発明は発明の主旨を逸脱せずに様々な形態に変形することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置分解測定機器に入射する量子ビームの照射位置の位置情報を取得する位置分解測定機器とその方法に関連し、詳細には、電子増倍原理に基づいた空間感応読取り能力を有する位置分解測定機器に入射する量子ビームの照射位置の位置情報を取得する位置分解測定機器とその方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
位置感知検出器は位置感知検出器への入射粒子の空間座標の測定に使われる。このような粒子は、例えば、光子、電子、中性子、イオン、X線などがある。この検出器は粒子を検出したり、検出器の感応部分での粒子の位置を検出したりするために用いられる。しかしながら、個別の粒子を検出するためには、検出器から出される信号を増幅する必要があり、増幅は、例えば、検出器内に配置された電子増倍器によって行われる。増幅により検出器内に電子のなだれが形成され、その結果、検出器内に電子の雲が形成される。この測定された雲から、検出器に入射した粒子の初期位置を計算する必要がある。
【0003】
電子増倍器は、104〜107個の微少なチャネルからなるアレイであるマイクロチャネルプレート(MCP)により形成可能である。それぞれ個別のチャネルがミニチュア電子増倍器のように作用する。MCP生産の技術は過去40年間にわたり開発されてきている。最初は、この検出器は原子核物理学実験で必要とされるX線検出器やイオンセンサとして開発された。チャネルの直径は1960年代の100μmから始まり、現代のプレートは3.2μmの直径の細孔を有するまでとなった。細孔やチャネルのサイズや細孔間の距離が、検出器の最大空間分解能を決めている。
【0004】
1つのMCPチャネルの最大利得係数は、103〜104に到達しうる。このような少数の電子は、現状の電子部品を用いても簡単には検出されないし、精密に測定もされない。通常、MCPのアセンブリ又は積層体が使われ、例えば、2段(シェブロン型)、3段(Z−スタック型)、多段MCPアセンブリがある。このような検出器の例が図1に示されており、この検出器の2つのMCPが互いに積層され、1つの積層体を形成している。粒子が検出器1の光電カソード3に入射する。光電カソード3は、光電効果により初期粒子を光電子に変換する。そして、光電子は、MCP4を通過する間に2次電子の形成及び増倍により増幅される。
【0005】
本実施形態において、MCPが感応する量子(例えば、光電子)、が1つのチャネルの内壁に入射する場合、少なくとも1つの電子が内壁から放出される。チャネルの内壁から放出された電子は、MCPの両端に印加された電圧により形成された電界により加速され、移動して再度チャネルの壁にぶつかり2次電子を生成する。このプロセスは、それぞれのチャネルに沿って何度も繰り返され、電子が増倍・加速されて、多数の電子がMCPの出力面から放出される。電子の2次元位置はこれらのチャネルによって保持される。生じた電子なだれは、最終的に検出器1の位置感応アノード2によって検出される。アノード2のそれぞれの電極の電荷は、読取り回路によって読み取られる。各電極は、初期粒子の検出位置に対応した信号を生成する。
【0006】
暗視検出器の開発成果によって、さらなるMCPの開発に大きく弾みがかかった。典型的な 暗視装置は、MCPアセンブリの前側に光電カソードを組み合わせ、蛍光スクリーンを出力に組み合わせている。入射光子は、光電カソードの表面から光電子をたたき出して、MCP積層体内部で増幅される。目視できる程度の強度、又は電荷結合素子(CCD)による検出器によって計測されうる程度の強度の閃光を発する蛍光体層の表面の小さな点に、最後のMCPとスクリーンとの間の電界を印加することで、生成した電子雲を集中させる。スクリーンの材質により、閃光 減衰時間は、1〜50μsの範囲で変わりうる。結果として、1つの入射光子であっても、システムは長続きのする閃光を発生させることができる。この種類の光検出は積分測定クラスに属する。この検出方法は、光の個別の量子を登録できるほどに感度が高いのであるが、生成された閃光の減衰時間が長いために1つ1つの光子を区別できない。
【0007】
対照的に、単一粒子計数検出器は、1つの入射粒子の空間座標に加えて別のパラメータを取得するために、個別イベントの登録可能である。典型的な計数装置は、MCP積層体やアノードシステムを備えている。カソードはエネルギーの低い光子を電子に変換する部分であり、必須ではない。MCPの前面と相互に作用する入射粒子は、電子のなだれを生じさせる。生じた電子雲は、印加電界に従って移動してアノードに至り、検出される。
【0008】
多くのよく知られたアノードシステムは、通常、(単一光子計数、原子核物理学実験など)の様々な用途で使われている。
【0009】
一般的に、空間感応アノードは、空間座標測定原理における2つの区分に分けることができる。時間ベースのアノード及び電荷(電流)ベースのアノードである。時間ベースのアノードの最も簡単な例として1次元遅延線配列があり、ここでは、遅延線の両端への信号の到達時間差を用いて座標が測定される。また、既知の電荷分割ベースのアノードシステム構成が多数ある。例としては、ウェッジ・ストリップ、4分割体(quadrant)、バーニア(Vernier)、抵抗層がある。
【0010】
より多くのMCPを互いに積層させれば、より大きな増幅率が容易に達成されることは明白である。より高い増幅は、よりよい信号対ノイズ比(SNR)を生じさせて、最終的にはより高い空間分解能をもたらす。しかしながら、3つ以上のMCPの積層体を使うと、MCPが限られている(増幅低下)のために、検出器の寿命が短くなってしまう。ほとんどの遅延線検出器(時間領域(time domain)のアノード)は、正確な運転のために3つ以上のMCPを必要としている。
【0011】
すべての時間ベースの測定方法は同じ手法に基づいている。それらの手法では、様々な構造の遅延線の両端から取得したパルスの時間差を測定する。遅延線ベースのシステムは原子核物理学実験において広く用いられる。遅延線検出器では、MCP積層体からのなだれが曲がりくねった遅延線を横切る。電荷パルスは、遅延線の導線に電気パルスを誘発し、電気パルスは導線の両端にまで伝わる。電子時間/デジタル変換器や電子時間/振幅変換器は両端への信号の到達時間の差を測定する。測定された到達時間差は、遅延線の配置方向(つまり、横方向のx座標に対する遅延線や横方向のy座標に対する遅延線)における電荷雲のそれぞれの位置に比例する。遅延線は単一粒子計数測定で用いられてもよい。
【0012】
電荷分割ベースのアノードはアノードシステムの大きなファミリーに属しており、電子雲の電荷を小さな部分に分割する原理を用いている。アノードは、平らな表面や、平面部、円柱面部、円錐面部、球面部の組み合わせでできた複雑な表面を備えている。互いに電気的に絶縁された電極素子の集合体又は位置感応パターンを形成するために結合された電極素子の集合体によって、表面が覆われている。入射粒子により誘発された電子雲の電荷の量は電極素子間で分けられる。
【0013】
Lamptonらによる("Quadrant Anode Image Sensor", RSI, Vol. 47, No. 11, November 1976, p. 1360)は、図2に示すように4分割アノード(QA)ベースの画像センサを開示している。アノードは4つの電気的に絶縁された4分割体に分けられた金属プレートである。4分割体は互いに同じ大きさである。電子雲の全電荷は4つ(左上qlt、右上qrt、左下qlb、右下qrb)に分けられる。各電荷値が測定される。検出器への入射粒子の初期位置を推定するために、電極を分割する水平線の上側と下側とに到達する電荷の合計の差異(全電荷の値に対して正規化されている)が入射粒子のy座標を決める。水平座標xは右側の電荷部分と左側の電荷部分を用いて、同じように計算される。
x=(qrt+qrb−qlt−qlb)/qΣ、
y=(qrt+qlt−qlb−qrb)/qΣ、
ここで、qΣ=qrt+qrb+qlt+qlb(つまり全体で測定された電荷)
【0014】
Lamptonにより発表されたこの方法は、単一MCPチャネルの直径にまでの高空間分解能を達成する。電荷感応増幅器のノイズが入力容量に対して強い依存性を有するため、電極間の境界の距離が短ければ、非常に正確な電荷測定を可能とする低電極間容量となる。面積に対する外周の長さの比率は低い。つまり、静電容量に誘発されるノイズ成分は低い。上記式は、電荷分割の原理に基づいた位置感応アノードの簡易計算アルゴリズムとなる。空間分解能は高いが、Lamptonが提案する手法の作業エリアは、4分割体の中心点に対する直径の数ミリメートルに限定される。このようになるのは、上記のような計算方法では、構造の中心の外で高い非線形をもたらすからである。さらに、この方法では、MCPチャネルの角度によって誘発されるなだれが、角度的に対称ではないことの要因を考慮していないことも注目する必要がある。
【0015】
米国特許第4,395,636A号公報においては、ウェッジ・ストリップアノード(wedge-strip anode)(WSA)ベースの画像センサが開示されている。このような構造は図3に示される。WSAは、電荷増倍器から到着した電荷雲の中心の位置を検出するために、周期的に配置され相互に連結したアノード領域(ウェッジ領域及びストリップ領域を含む)の形の位置感応アノード2を備えている。それぞれのウェッジは同じ形状であり、アノードの底部から先端にむけて線形に変化する電荷収集エリアを備える。WSAは、Lamptonが説明するQAの非線形性の問題を克服するために設計された平面の電極パターンを用いている。電極の複雑な形状のため、境界が長くなる。よって、4分割体電極間容量と比較すると20〜30倍も容量が増加し、その結果、より簡易な構造のためには、同じ信号対ノイズ比を達成するためにより高いMCP増幅が必要とされる。全電荷に関連した個別の電荷の線形結合をすることで、位置計算がなされる。計算方法はなだれの幾何学的パターンや所定電荷のフットプリントの仮説により決まる。
【0016】
M.Purschkeaらの後の研究では("An improved quadrant anode image sensor with microchannel plates",1987, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research)、電子なだれの中心位置を計算するための進化した方法が説明されている。Purschkeaは、Lamptonが用いた電荷比の多項式補間を用いている。これは、4分割アノードの線形性のエリアを増加させるために行っている。このため、雲のフットプリントの有効サイズを大きくする必要がある。MCPの縁部にある電荷の損失を補正し、雲が持つすべての電荷を収集するために、アノードエリアを増大させる必要がある。より大きなアノードエリアと多項式補間との組み合わせによって、MCPエリアのうち80%までを測定に使うことが可能になった。
【0017】
J.S.Lapingtonら("Imaging achievements with the Vernier readout", 2002, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research)は、それぞれのサイン波形のストリップのバーニアアノードパターンベースの平面構造を開示している。位置計算アルゴリズムは測定された電荷の線形結合である。
【0018】
A.S.Tremsinら("Centroiding algorithms and spatial resolution of photon counting detectors with cross-strip anodes", Nuclear Science Symposium Conference Record, Volume 2, Issue, 2003)では、なだれのフットプリントモデリングと幾何学的推定との組み合わせが説明されている。座標を計算するために、Tremsinは、電子なだれの最大の位置を探すために、推定量の公式を用いている。適切な空間分解能を達成するため、図4に示されるように、交差ストリップアノードの全ての軸に多数の電極が用いられている。ストリップ信号の単純平均を計算して初期座標を得る。
【0019】
さらに、米国特許5,686,721A号公報は、電荷画像化装置及び真空の外側に配置された電極から電子増倍器の高真空部を分離する方法を開示している。この方法の最大のメリットは、アノードパターンを選ぶ自由度と、要望に応じてアノードパターンを容易に変更できる点である。例えばWSAや遅延線アノードシステムに関して説明して手法が説明されている。
【0020】
すべての方法と装置は、入射粒子の空間座標の計算にヒューリスティック近似を必要とする。測定された検出器の応答の多項式関数は、反応の関数として空間座標を近似するために使われることもある。係数は、最小二乗方程式から求められることもある。例えば、電荷分割ベースのアノードでは、多項式関数は、電荷の積和でもよく、それぞれの電荷の乗数の総和は既定の整数N(多項式の次数)を超えない。例えば、5つの電極を持つアノードを備える位置感知検出器の多項式関数は、項(例えば、cn*q1i*q2j*q3k*q4l*q5m)の合計として表記され、i+j+k+l+mはN以下でありcnは多項式のn番目の項の係数である。非負の数字i、j、k、l、mの使用可能かつ許容されうるそれぞれの全ての組み合わせの数により被加数(summands)の数が決まる。
【0021】
検出器の応答の未知の関数を近似するためには、反応関数の挙動を正確に近似できるだけの十分に大きな次数の多項式を作らなければならない。しかしながら、多項式の次数が高ければ、計算上の不安定性の問題に見舞われる。このような不安定性は、従来技術から知られており、最小二乗近似法や多項式そのものにの計算に影響を与える。これらの要因のために、検出器の応答の関数として空間座標を近似するために多項式を用いることは問題となり、また実質的に不可能となる。一般に、電荷分割ベースのアノードの場合には電極が多数あれば空間分解能が高くなるはずであるが、アノード出力の数を増加させることは、多項式近似における計算エラーのために最終的な分解能を低下させることにつながる。
【0022】
結論として、従来技術における種々のアノードシステムの位置計算は、個別の電極の既知の幾何学的パターンや電荷部分の分布によって決まる。よって、検出器への入射の初期座標の計算のためにヒューリステック評価がつくられた。
【0023】
しかし、入射粒子への単一MCPの反応は、エネルギー、種類、最初の衝突での空間位置、細孔やチャネルに対する落下角度により決まり、0〜104個の電子の範囲で変わる。図5はMCPでの増幅処理を示す。2次電子の放出の効率は、初期粒子のエネルギーと種類の組み合わせに大きく依存している。アルファ粒子とイオンは質量が大きく電荷が高いため、MCPはアルファ粒子とイオンに対して非常に効率がよいことが知られている。アルファ粒子がたたき出された反応として多くの2次電子を放出する可能性は、ほぼ100%である。エネルギーがMCPの電子への感受性スペクトルと一致した場合でありその場合にのみ、ガンマ量子及び電子はなだれを引き起こす可能性がある。
【0024】
初期粒子の軌道により、2次電子の数が変化する。MCPの前面から測定された最初の三分の一にあるチャネルの高感度表面に粒子がぶつからない場合、イベントはおそらく失われるであろう。この効果には、2つの主要因がある。まず第1に、入射粒子が、最初の相互作用において十分な数の電子をたたき出す必要がある場合、チャネルの長さがなだれの形成を制限する。第2の理由は、2次電子の増幅に依存する。増倍すべき電子は、電子と壁の相互作用あたり1つ以上の電子をたたき出すほどの十分なエネルギーを有するべきである。MCPチャネルの出力付近で最初の衝突が起きた場合、電子はおそらく2次放出に必要なエネルギーにまでは加速されない。
【0025】
細孔又はチャネルの縁部に対する空間位置や入射粒子のエネルギーは、2つの連鎖するイベントを引き起こす。最初の簡易なイベントでは、粒子は2次増幅に至らず、失われてしまう。
【0026】
ガンマ量子は局部的な温度上昇を引き起こすかもしれず、潜在的になだれに至りうる電子を拡散したりたたき出したりする。荷電粒子の場合、拡散や電子のたたきだしが可能である。1つ以上の2次電子が生じない場合、初期粒子はなだれに至らず、結果として、検出器に登録されない。
【0027】
電子放出反応から派生したものはいくつかの効果もたらす。電子が生成される表面からの深さは入射粒子の透過特性により異なる。初期粒子が深く透過した場合、もっともありうるシナリオは電子が飛び出したイオンや原子と再統合することである。表面付近又は表面で生成された電子はチャネルに捕捉されるかもしれず、おそらく、なだれをもたらすことになる。
【0028】
上記の点をまとめると、マイクロチャネルやマイクロスフェアプレート細孔の内部でおこる電子増倍は確率過程であるとの結論に至る。なだれ内の電子の最終的な数は(図6を参照)、以下の要因によって決まる。粒子の種類、エネルギー範囲、MCPのタイプである。電子増倍の複雑さと複数分岐の性質のため、MCPの増幅特性に関する情報を取得するためには、直接の測定をしなくてはならない。
【0029】
なだれの電子の数は不規則であるため、信号の増幅は同じ励起位置であっても異なる。すなわち、図7に示されるように、入射粒子が、積層されたMCPのうち前側のMCPにある同じチャネルと初期に相互に作用した場合であっても、測定される電荷の量は異なる。プロット上のすべての点が、前側MCPの小さな空間エリアに対して照射することで誘発される単一のイベントを表す。水平座標と垂直座標は、4分割アノードのうち第1と第2の電極から得られた電荷の測定された値を示す(図2参照)。
【0030】
第2の効果は、利用可能な様々な位置感知検出器のうちの一例として電荷分割の原理に基づく位置感応アノードに関するものである。電子雲の大きさに基づき、プラズマ雲内の電界の差異により内部での相互作用の力は異なる。すなわち、なだれの形状は雲の電子の数によって異なる。
【0031】
一般的に、電子雲の挙動は動的であり、多数のパラメータによって決まる複雑な処理である。
【0032】
第1パラメータは、MCPの増幅特性である。MCPが作られている材質によって、増幅は幅広く変化し得る。個別のチャネルの直径は生成される雲の形状に影響し、また単一の増幅作用により生成されうる電子の最大個数にも影響する。
【0033】
第2パラメータはなだれの有効形状である。「有効」の語句は、ほとんどの電子が位置するアノードプレート上のなだれのフットプリント(footprint)を意味する。電荷雲の直径は積層体の最後のMCPの出力とアノードとの間の印加電圧により変化しうる。より高い電圧は雲を加速し、よってMCPからアノードへの移動時間を最小化する。これにより、雲の内部力が電荷を帯びた個別の電子に印加されて結果として雲を拡大する時間幅が短くなるために、なだれのフットプリントの直径をより小さくする。
【0034】
第3パラメータは、個別のチャネルの中心軸とアノードのプレートとの角度により誘発された雲全体の非対称性に関わる。この要因は、MCPとアノードとの隙間の電圧にしっかりと関連もしている。電圧が低ければ低いほど、雲はさらにアノードにそって広がり、また、全体の分布がよりスムーズになる。すなわち、初期の対称ではない状態はアノードエリアに沿って不鮮明になり、結果より均一な分布に至る。印加電圧がゼロの極端な場合、初期の電界によって雲が破裂し、電荷における外側の小さな部分のみがアノードに到達してアノードを均一に覆う。
【0035】
上記の点をまとめると、アノードの静的又はヒューリスティックモデルや従来技術で説明される電子なだれを見つけるのは難しい。
【0036】
さらに、位置情報に加えて、検出の時間分解が通常望まれている。従来技術では、時間及び位置分解測定機器は、光の放出の位置及び時間を取得するために放出の時間分解測定を行うことが知られている。このような機器はマイクロチャネルプレート(MCP)を持ち、超高速の応答時間によって入射粒子の増幅をする。マイクロチャネルプレートは、互いに平行に配置した多数のミニチュア管からなる平面的な構造体である。すべてのチャネルがミニチュア電子増倍器のように作用する。一般的には、プレートの厚さは、約1ミリメートル以下であり、チャネルの直径は、最新のプレートでは3〜10ミクロンの範囲にわたる。MCPは、電子、荷電粒子及びX線照射に対して感度がよいことが知られている。照射の1つの入射量子に対して、チャネルは、103〜104の電子のなだれを起こす。生じる電子の有効数を増加させるために、すなわち、より高い増幅が得られるように、2つ、3つ又はそれ以上のプレートを重ねたものが用いられている。一般的には、電子なだれは、ピコ秒からナノ秒の間の入射量子ビームに反応して形成されてそしてMCPから放出される。電子なだれで引き起こされたパルスの前縁の時間変動がピコ秒の時間スケールで起こることが知られている。なだれ現象がMCPで見られなくなっても、電子の不足はある。よって、なだれで減少した電荷を補うために、電源が備えられている。このパルスは測定・分析される。
【0037】
米国特許公開公報第2007/0263223A1は、MCP増倍装置と位置感応アノードとを備えた時間と位置分解測定機器を開示する。タイミング信号パルスはMCP積層体の出力面から読み取られる。しかしながら、測定された信号の極性は時間で変化する。この極性変化の正確な時間測定を得るためには、ゼロ交差検出技術を用いる必要がある。米国特許公開公報第2007/0263223A1により達成可能な時間分解能は約60psである。
【発明の概要】
【0038】
よって、本発明の目的は、位置分解測定機器に入射する量子ビームの照射位置の位置情報を取得する位置分解測定機器とその方法を提供し、初期座標の計算にヒューリスティック近似を必要とせずに位置情報の取得・推定ができるようにすることである。
【0039】
さらに別の目的は、位置分解測定機器の位置計算を統合することである。本発明の1つの観点では、人工ニューラルネットワーク近似が電子雲の重心座標を計算し、入射粒子の位置を計算するために使われる。
【0040】
発明のさらに別の目的は、入射量子ビームの時間測定における改良型時間分解能を備えた位置及び時間分解測定機器を提供することである。発明のさらに別の目的は、より簡素でより信頼性の高い時間測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0041】
以下、動詞「推定する」や「測定する」は、動詞「取得する」に対して置き換えて使用可能である。よって、語句「位置情報を取得する」は「位置情報を推定する」又は「位置情報を測定する」にもあてはまりうる。「位置情報」は「空間座標」を含み、そのため、語句「位置情報」が言及される場合、語句「空間座標」も置き換えて使用可能である。
【0042】
よって、位置分解測定機器に入射する量子ビーム照射の位置情報を取得する方法が提供され、この方法では、位置感知検出器を提供し、照射源を提供し、位置感知検出器と照射源と接続される人工ニューラルネットワーク構造を提供し、既知の初期照射位置からの検出器の応答を入力として人工ニューラルネットワーク構造に入力して、人工ニューラルネットワーク構造が照射の初期位置を人工ニューラルネットワーク構造の出力として所定の精度で推定できるようになるまで、人工ニューラルネットワークパラメータを最適化することで、検出器上の照射位置の空間座標を推定できるように人工ニューラルネットワーク構造をトレーニングし、照射源によって、未知の位置から検出器に対して照射し、照射源による未知の位置からの照射による検出器の応答を測定し、測定された検出器の応答を入力としてトレーニングした人工ニューラルネットワーク構造に入力し、初期照射の空間座標の推定値に対応した人工ニューラルネットワーク構造の出力を計算する。
【0043】
推定にヒューリスティックモデルを用いる必要がないことが本発明の利点である。この問題は人工ニューラルネットワークを用いることで解決される。利点として、互いに異なる位置感知検出器のタイプの幾何学的パターンの視野への分解能及び/又は線形性が改善されうる。アノードの幾何学的パターンをモデリングすることを省き、測定された反応が直接的に位置計算に用いられる。さらに、アノードを製造するための精度の要求に制限が少ない。さらに、ニューラルネットワーク出力関数を容易に評価できる。
【0044】
本発明の人工ニューラルネットワーク手法では、人工ニューラルネットワークを用いて連続関数を近似する。通常は、人工ニューラルネットワークがパターン認識作業(例えば、顔の認識や粒子崩壊過程の認識)のために採用される。パターン認識では、ニューラルネットワークは例えば、画素が黒か白、つまりゼロ又は1であるかを識別するように意図されている。対照的に、関数近似では、連続関数を近似する必要があるため、さらに要求が厳しい作業になる。ここにおいて、近似すべき関数とは照射の初期座標を与える検出器の応答の関数の関数である。
【0045】
検出器の初期照射の空間座標を取得又は推定するための人工ニューラルネットワーク構造のトレーニング工程は、
i) 既知の空間座標から検出器に対して照射し、
ii) 生じた検出器の応答を測定し、
iii) 検出器の応答と照射の既知の空間座標とを保存し、
iv) 上記の工程i)〜iii)を別々の空間座標に対して繰り返し、照射空間をサンプリングし、
v) 測定された検出器の応答を入力として人工ニューラルネットワーク構造に送り、
vi) 初期照射の空間座標に対応した人工ニューラルネットワーク構造の生じた出力を計算し、
vii) 既知の照射用初期空間座標と、空間座標を示す人工ニューラルネットワーク構造の現在の出力との差異の関数を計算し、
viii)差異の関数を最小化するために人工ニューラルネットワーク構造のパラメータを変更し、
ix) 計算した差異の関数が特定の閾値よりも低い場合にはトレーニング処理を停止し、そうでなければ工程v)に戻る
工程を備える。
【0046】
別の実施形態では、工程i)に戻ってもよいし、より多くの位置を採取してもよいし、いわゆるオンラインモード(つまり、検出器の応答が提示された後)においてニューラルネットワークを改良してもよい。
【0047】
位置感知検出器が電荷ベースの検出器である場合、検出器の応答は測定された電荷に関連してもよいし、位置感知検出器が時間ベースの検出器である場合、検出器の応答は測定された時間に関連してもよいし、位置感知検出器が抵抗性アノード検出器である場合、検出器の応答は測定された電流に関連してもよい。
【0048】
トレーニング工程における検出器の照射は、座標の実際の推定又は測定プロセスで用いられた第1照射源よりは別の第2照射源を使うことを含んでもよい。このような第2照射源は既知の空間座標の特定の集合からの照射をするように設計されており、例えば、LEDマトリックスでもよい。
【0049】
トレーニングプロセスを停止するための特定の閾値は、検出器の物理的分解能のサイズに設定されてもよい。
【0050】
位置感知検出器は、増幅装置と照射の方向に対して増幅装置の後方に配置される位置感応アノードとを備えてもよい。
【0051】
増幅装置は、電子増倍装置(例えば少なくとも1つの マイクロチャネルプレート、又は少なくとも1つのマイクロスフェアプレート、又は少なくとも1つの マイクロガス(microgas)増幅装置)を備えていてもよい。
【0052】
位置感応電荷分割原理ベースのアノードは、少なくとも2つの空間分割電極を備えてもよい。位置感応時間ベースの遅延線に関連したアノードは、空間座標当たり1つの遅延線を備えてもよい。
【0053】
検出器の応答は、測定されたアノード出力値(つまり、電荷分割アノードにとっては電荷であり、時間領域測定にとっては時間)に対する反応をベクトル要素として有するベクトルであり、アノード電極の測定された反応を示すそれぞれのベクトル要素は、人工ニューラルネットワーク構造の別々の入力ノードへの入力 である。
【0054】
よって、位置分解測定機器に入射する量子ビームの照射位置の位置情報を取得するための位置分解測定機器が提供されて、この機器は、位置感知検出器と、照射源と、照射源による照射によって発生した検出器の応答を測定する手段と、人工ニューラルネットワーク構造を備え、人工ニューラルネットワーク構造は、測定された検出器の応答が人工ニューラルネットワーク構造への入力であり、かつ照射の初期空間座標が人工ニューラルネットワーク構造の出力であるように設けられてもよい。
【0055】
照射源は、電磁放射源又は粒子源であってもよい。
【0056】
位置感知検出器は、増幅装置と照射の方向に対して増幅装置の後方に配置される位置感応アノードとを備えてもよい。
【0057】
増幅装置は、電子増倍装置(少なくとも1つのマイクロチャネルプレート(MCP)又は少なくとも1つのマイクロスフェアプレート又は少なくとも1つのマイクロガス増幅装置)を備えてもよい。
【0058】
位置感応アノードは、少なくとも2つの空間分割電極を備えてよい。
【0059】
人工ニューラルネットワーク構造の入力ノード数は、別々の空間分割陽電極の数に等しくてもよく、出力ノード数は、初期照射点の別々の空間座標の数に等しくてもよい。
【0060】
いくつかのニューラルネットワークは、初期照射点の種々の空間座標成分を計算するのに使われてもよい。例えば、あるニューラルネットワークは、照射点の地平座標の計算に使われてもよく、他のニューラルネットワークは、照射点の垂直座標を計算してもよい。さらに、初期照射点の空間座標は、別の座標システム(デカルト座標(直交座標)、極座標、放物線座標など)によって表現されうる。人工ニューラルネットワークの出力は、他の計算機器に送られて、例えば、三角形メッシュアプローチや、スプラインアプローチや、多項式ゆがみ補償アプローチ(polynomial distortion compensating approaches)を用いて空間のゆがみを最小化するために処理されうる。
【0061】
位置感応アノードは、時間ベース又は電荷ベース検出器である。時間ベース位置感応アノードは、遅延線検出器又は遅延線関連検出器であってよく、電荷ベースのアノードは、密度勾配アノード検出器又は抵抗性アノード検出器又はマルチ電極アノード検出器である。
【0062】
少なくとも2つの空間分割電極が平面に備えられる。又は、少なくとも2つの空間分割電極のうちの少なくとも1つは、非平面電極であるように少なくとも2つの空間分割電極が備えられてもよい。少なくとも2つの空間分割電極は、4つの平坦電極を有する4分割アノードとして実現されてもよい。又は4つの平坦電極と4つの平坦電極の周りに配置される追加された5つ目のリング電極とを有する4分割アノードとして実現されてもよい。又は、少なくとも2つの空間分割電極は少なくとも1つのピラミッド形状電極、円錐形状電極、円柱形状の一部の電極、又は球状電極を含んでもよい。又は、ダイアモンド形状の電極の2次元配列を含んでもよい。
【0063】
人工ニューラルネットワーク構造は、フィードフォワードニューラルネットワークで実現されてもよく、人工ニューラルネットワーク構造の伝達関数F(pi,q)は、非線形ベクトル関数fの入れ子関数であり、piは、前記ニューラルネットワークパラメータベクトルであり、qは、k番目の検出器出力の測定された値に対する前記検出器の前記応答を要素として有するベクトルであり、F(pi,qk)=f1(p1、f2(...(fn−1(pn−1,(fn(pn,qk)))である。しかし、他の形式のニューラルネットワークを用いてもよいし、特にフィードバックがついたニューラルネットワークなど用いてもよい。
【0064】
さらに、照射のポイントを設定するために検出器の応答を計測するキャリブレーション装置を備える。キャリブレーション装置は、既知の空間座標から検出器に対して照射する手段と、照射の初期空間座標を測定された検出器の応答とともに保存する手段(つまり、メモリ)とを有する。
【0065】
本手法は電子なだれを直接測定することに限定されないが、米国特許第5,686,721号公報において開示されるような減結合位置伝達検出器とともに使用可能である。
【0066】
ニューラルネットワーク数学的機器は、システム全体で必要とされる処理量を達成するために、最新のベクトル処理コンピュータを用いて加速される基礎マトリックス/ベクトル演算を用いている。ニューラルネットワークはハードウェアでも実行可能である。
【0067】
ニューラルネットワーク評価は複数の繰り返し工程を含まず、計算時間は正確に計算されうるし予測できる。
【0068】
ネットワークの神経の数は、近似精度の特定の必要なレベルで性能を最適化させるために変更可能である。例えば、リアルタイムオンライン表示計算は、準備用の結果をできるだけ速く取得するためにネットワークの簡易版を用いて行ってもよい。その後、データの分析中に、より高精度な複雑な計算を実施可能である。
【0069】
ニューラルネットワークは、初期座標の所望の推定を達成しつつアノードの構造を簡易化するための廉価で簡単な方法である。2つの大きなメリットがある。1)100のアノードチャネルから全ての信号を取得するためにカスタムマイクロチップを作る必要がない。このようなチャネルのマイクロスキーム製造は非常に高価である。2)MCPを増幅器として用いる高真空実験の場合、MCPが必要とするバッキング処理(backing process)のせいで、非常に複雑なアノード構造を高真空部に入れることは技術的に不可能である。
【0070】
さらに、1つの検出器のためにトレーニングされたニューラルネットワークを同様の他の検出器に当てはめるために、わずかな別のトレーニングのポイントを必要とするだけである。よって、ニューラルネットワーク手法は柔軟性が高い。
【0071】
また、ニューラルネットワークは、検出器のいかなる構造に対してもトレーニング可能である。パラメータ関数による近似の場合、特定の検出器設計に対してそのような関数を選ぶことが難しいことが多い。ここで、ニューラルネットワーク手法はやはり柔軟性が高い。ここで説明される方法を用いることで、異なるアノードシステム構造を容易に試験することができ、特定のアノード構造の位置分解能能力に関する迅速なフィードバックを取得することができる。
【0072】
さらに、ニューラルネットワーク出力関数は、基本関数として用いられる伝達関数のうち高非線形の入れ子関数であるため、ネットワークのたった1つのノードを隠れ層に加えると、実質的に非常に低い計算コストでニューラルネットワークの適応の柔軟性が増加する。
【0073】
他の利点は追加の入力を推定で用いることができることである。検出器の応答は、いくつかのパラメータ(例えば、増幅器とアノードとの間の位置感知検出器に印加された電界)により決まる。ニューラルネットワーク手法は、さらに推定を改善するか多様化するために、このような検出器パラメータをニューラルネットワークへの明示的な入力として使うことを可能にする。ヒューリスティック(パラメータ関数ベースの近似)によってこのようなことをすることは非常に困難である。よって、検出器のより精密な数学的モデルを作るために、検出器の応答をニューラルネットワーク入力ノードに送るだけではなく、検出器パラメータも追加のニューラルネットワーク入力ノードに送ることもできる。さらに、入力値をネットワークに送られる前に、入力値の事前処理をすることができる。
【0074】
空間分解能とともにタイミングも改善するために、用いられる位置感知検出器は、検出器に入射する量子ビームを伝達する入力面と、少なくとも1つの積層して配置された電子増倍装置を有する第1電子増倍カスケードとを備える。第1電子増倍カスケードと少なくとも1つの電子増倍装置は、それぞれ入力面と出力面とを有している。第1電子増倍カスケードは、自身の入力面に入射する量子ビームを増倍させるように構成されている。入力面は、入口面に面するように配置されている。用いられる位置感知検出器は、電子増倍カスケードの出力面に面して配置されたアノードと、第1電子増倍カスケードの入力面と出力面との間の電位が負側(more negative)から正側(more positive)になるような電位勾配を与える高電圧供給器と、検出器に入射する量子ビームの検出のタイミングを測定するために検出タイミングパルスを測定する手段とを備える。検出タイミングパルスを測定する手段は、第1電子増倍カスケードの少なくとも1つの電子増倍装置のうちの1つの入力面に接続されており、第1電子増倍カスケードの少なくとも1つの電子増倍装置のうちの1つの出力面は、接地電位に接続されており、出力面は入力面とアノードとの間に配置される。
【0075】
すなわち、増幅装置は、上記の第1電子増倍カスケードとして実現される。
【0076】
時間分解測定検出器は、飛行時間ベースの測定で用いられる。例えば、ライダー(光検出と測距)は、遠くの物体の属性を計測するための光学的なリモートセンシング技術である。遠隔の物体の距離を決めるために、光パルスの送信と反射光の検出時間との間の時間差が測定された。時間にのみ感応する検出器を用いて画像を形成するために走査技術を用いてもよい。
【0077】
時間と空間感応技術は、当該連続物体のそれぞれのポイントのタイミング情報とともに画像の形成を可能とする。よって、時間と空間の分解能の改善により、走査の必要性がなくなり、また物体全体の3次元の画像の形成を可能にする。さらに、位置感度により、反射光の追加の物性(例えば、偏光度や波長)を測定できるようになる。これは、偏光度や波長で分離されるサブ画像用のいくつかの検出器を用いたり、複数パラメータ検出用の交流同期レーザーパルス(alternating synchronized laserpulses)を用いたりして、物体のスペクトル分光画像を単一の位置感知検出器の空間的に分離されたエリアに投射することで行われる。個別の画像は、既定の特性により光子を選択する偏光器や波長フィルターにより投射される。
【0078】
時間分解検出器の適用の別の例は、蛍光寿命画像顕微法であり、生物学的なサンプル内の蛍光粒子を観察する方法である。光パルスの伝達と蛍光光子の検出時間との時間差を測定することで、蛍光分子の励起状態の減衰時間を計測可能である。減衰時間は分子の内部の量子状態と微環境で決まることが知られている。それに加え、光切り替え可能な染料(photoswitchable dyes)を活性化させるか切り替えるかして、位置及び寿命特性を測定し、その後暗状態に戻すことが可能である。時間と位置分解能の進歩を組み合わせて、生きたサンプルを長期間継続的に観察して、細胞内部で起こる動的過程を登録することことが可能である。さらに、サンプルから発せられるそれぞれ個別の光子のパラメータ(空間位置、到達時間、減衰時間、偏光度、波長)の完全な集合を同時に取得することも可能である。パラメータの組み合わせは、当該物体についての追加の情報もたらし、結果としてより信頼のおける測定をもたらす。
【0079】
本発明では、タイミング信号を電子増倍装置の入力面から読み出す。利点として、電子増倍装置の入力面から取得した信号は正の値であり、パルスの後の高周波振動にはならない。これにより、タイミングパルスの処理が簡易になり、精密な測定がもたらされる。利点として、正のみの信号が検出されるので、ゼロ交差検出スキームの必要性がなくなる。
【0080】
さらに、生じた信号振幅は、電子増倍装置が発生する電子なだれの振幅に比例するため、信号識別で誘発される変動補償での時間・振幅の補正に対して、精密なソフトウェア手順を採用することが可能になる。
【0081】
第1電子増倍カスケードの少なくとも1つの電子増倍装置は、マイクロチャネルプレート、又はマイクロスフェアプレートとして実現される。
【0082】
さらに、湾曲したチャネルMCPや直線的なチャネルMCPを使ってもよい。湾曲したチャネルMCPは、直線形状の又は直線的なチャネル構造を有するプレートに比べて高増幅を提供することが従来技術から知られている。利点として、時間間隔測定機器に直接入力するために十分に大きな増幅を提供するかたわら、このようなMCPは単一の電子増倍装置のみを備える電子増倍カスケードで使われてもよい。
【0083】
利点として、そのような構成によって、入射量子ビームの時間・位置は装置によって測定される。位置感応アノードと組み合わせて使われる電子増倍カスケードは、結果的に時間及び位置分解測定検出器となる。このような検出器は広い応用範囲を有しており、例えば、最小進入長期観察広視野顕微鏡法(minimal-invasive long period observation widefield microscopy)、光活性化局在性顕微鏡法(PALM)(photoactivated localization microscopy)、確率的光学再構築顕微鏡法(STORM)(stochastic optical reconstruction microscopy)、蛍光寿命画像顕微法(FLIM)、蛍光寿命画像ナノ顕微法(FLIN)、ライダー装置、時間分解トモグラフィ、又は様々な飛行時間ベースの測定方法がある。
【0084】
利点として、本発明の大きなメリットは、電子増倍カスケードにおける最後の電子増倍装置の出力面とアノードとの間の電圧からタイミング信号形状が独立していることから得られる。これは、従来技術で知られた出力面からの信号の取得に基づく方法とは対照的である。
【0085】
検出器は、位置感応アノードからの位置信号を用いて検出位置を計算する位置計算機をさらに備える。
【0086】
検出タイミングパルスを測定する手段が接続された入力面と接地電位に接続された出力面とは第1電子増倍カスケードの単一の電子増倍装置の入力面と出力面として実現されてもよい。
【0087】
第1電子増倍カスケードは、積層されて配置された少なくとも2つの電子増倍装置を備えてもよく、検出タイミングパルスを測定する手段が接続された入力面と接地電位に接続された出力面は、前記第1電子増倍カスケードの別々の電子増倍装置の入力面と出力面として実現されてもよい。
【0088】
少なくとも1つの第2電子増倍カスケードは、入力面と第1電子増倍カスケードの間に配置され、及び/又は少なくとも1つの第3電子増倍カスケードは第1電子増倍カスケードとアノードとの間に配置されてもよい。
【0089】
第1電子増倍カスケードの少なくとも1つの電子増倍装置のうちの1つの出力面は、高周波コンデンサを介して接地電位に接続されてもよい。
【0090】
第1電子増倍カスケードの少なくとも1つの電子増倍装置のうちの1つの出力面が接続される接地電位は、電子増倍カスケードの全ての電子増倍装置を囲む導電性リングとして実現されてもよい。
【0091】
高電圧供給器は、少なくとも1つの電子増倍装置の入力面と出力面との間に異なる電位勾配を形成するそれぞれの入力面と出力面に別々の電圧を供給する。
【0092】
高電圧供給器は、電子増倍装置のそれぞれの入力面と出力面に異なる電圧を供給するために、互いに直列に接続された抵抗器を備える分圧器に接続されてもよい。2つの抵抗器間の分圧器の点は第2高周波コンデンサを介して接地される。
【0093】
限流抵抗器は、高電圧源とタイミングパルスを検出する手段に接続された入力面との間に配置されてもよい。
【0094】
減結合コンデンサは、タイミングパルスを検出する手段と入力面との間や、限流抵抗器と高電圧供給器との間に設置されて、検出器の出力ラインからタイミングパルスを検出する手段にある検出器の高電圧部分を減結合するようにしてもよい。
【0095】
インピーダンス均等化抵抗器は、タイミングパルスを検出する手段への検出器の出力ラインに対して並行に接続されてもよい。インピーダンス均等化抵抗器の抵抗はタイミングパルスを検出する手段の増幅器の入力インピーダンス及び/又は出力ラインそのものの入力インピーダンスを均等化するように構成される。
【0096】
タイミングパルスを検出する手段は、結合コンデンサを介して検出器から検出タイミングパルスを受け取る第1電気入力と、検出器に入射する量子ビームを照射するパルス照射源の基準信号発信器によって生成される基準信号を受け取る第2電気入力と、第1電気入力に接続された弁別器と、第2電気入力に接続された遅延線と、スタート信号を送信する弁別器と接続される時間間隔測定装置であり、かつストップ信号を時間間隔測定装置に送信する遅延線と接続される時間間隔測定装置とを有してもよい。タイミングパルスを検出する手段は、入力側の第1電気入力と出力側の弁別器との間に配置される高周波信号増幅器をさらに備えてもよい。
【0097】
アノードは電荷測定アノードであってもよく、時間補正はTR=T0−F(A)の形式において適用される。ここで、TRは時間の補正された値、T0はタイミングパルスを検出する手段によって測定された時間、Aは測定された電荷全ての合計値、F(A)は補正関数である。アノードは位置感応電荷分割アノードであってもよく、時間補正関数はF(A,X,Y)でもよい。ここで、XとYは検出の空間座標を示す。補正関数Fは前述のとおり追加の人工ニューラルネットワークに適用できる。
【0098】
時間測定に使われる生じた信号振幅は、電子増倍装置により発生した電子なだれの振幅に比例するため、信号識別により誘発される変動補償のための時間・振幅補正に時間補正を用いることができる。
【0099】
さらに追加して、量子ビームのタイミング情報を取得するための時間分解測定機器が備えられ、この機器は、量子ビームを発生するパルス照射源と、照射源の励起と同期する基準タイミングパルスを発生する基準信号発信器と、以上説明した検出器と、基準タイミングパルスと検出器が発生した検出タイミングパルスとの時間差を保存するデータプロセッサとを備える。
【0100】
検出器は、位置感応アノードを有する位置感知検出器であってもよく、データプロセッサは検出位置と時間差とを保存してもよい。位置感応アノードは、電気的に絶縁された電極のセットとして実現されてもよい。このようなアノードは、例を挙げるのであれば、4分割アノード、ウェッジ・ストリップアノード、マルチ電極アノード、マルチストリップアノードである。直接位置測定のためのパターンを形成するために、個別の電極が接続されてもよい。例はいわゆるバーニアアノードで実行される。パターンにより位置の直接の測定ができて、パターンが座標を計算する計算モジュールを採用するかもしれない。
【0101】
検出器の電子増倍カスケードは真空の中に配置され、アノードは、真空の外に配置される位置感応外部アノードである。また、高抵抗性の減結合層が電子増倍カスケードとアノードとの間の真空に配置されてもよく、アノードに接続されてもよい。
【0102】
高抵抗減結合層は半導体材料で作られてもよく、好ましくは ゲルマニウムで作られるのがよい。
【0103】
外部アノードは、同一平面に備えられ、非オーバーラップ構造を持ち、絶縁層上に配置されたx感知素子とy感知素子とを備えてもよい。ここで、一つの方向のそれぞれの感知素子はx感知構造とy感知構造の平面において互いに接続されており、他方の方向の感知素子は絶縁層の下で互いに接続される。
【0104】
x感知素子とy感知素子はダイアモンド形状の構造を有してもよい。
【0105】
本発明の側面の1つは、1つ以上のプレートを有する空間分離MCP増倍カスケードをいくつも用いることを必要としないことである。検出器内に2つ以上のMCPからなる単一の積層体を作ることが技術的には好ましい。このようなアセンブリは標準的な商業的に入手可能な製品であり、時間分解又は時間及び空間分解粒子検出のために真空で収容された装置一式で変形することなく採用可能である。さらに、真空密閉の装置内で標準的なMCPアセンブリを使うことも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
本発明は添付図面に照らしてより詳細に説明される。しかし、図面は説明のためにのみ示されており、図面は本発明の技術的な範囲を限定しないことは注目すべきである。
【0107】
【図1】図1は最新式のマイクロチャネルプレート式の位置分解測定機器を示す。
【図2】図2は、は、最新式の位置分解測定機器の4分割アノードを示す。
【図3】図3は、最新式の位置分解測定機器のウェッジ・ストリップアノードを示す。
【図4】図4は、最新式の位置分解測定機器の交差ストリップアノードを示す。
【図5】図5は、最新式のマイクロチャネルプレートの運転原理を説明する。
【図6】図6は、2つのMCPを備えるMCPアセンブリの増幅分布を示す。
【図7】図7は、単一の励起点において、図2の4分割体1及び2での2つの測定された電荷のプロットを示す。
【図8】図8は、本発明の位置分解測定機器の位置キャリブレーション装置の例を示す。
【図9】図9は、図8の位置分解測定機器のキャリブレーション信号タイミング図を示す。
【図10】図10は、本発明における位置分解測定機器のフィードフォワードニューラルネットワークの構造を示す。
【0108】
【図11】図11は、本発明における位置分解測定機器において、付属のリング電極を備える改良版の4分割アノードを示す。
【図12】図12は、本発明における位置分解測定機器のマルチ電極アノードを示す。
【図13】図13は、本発明における位置分解測定機器のキャリブレーション設定スキームを示す。
【図14】図14は、位置感応アノードとして2次元配列に配置されたダイアモンド状の電極を備えるマルチ電極アノードを示す。
【図15】(a)は、図14の垂直又はy方向の電極の配線を示し、(b)は、図14の水平又はx方向の電極の水平方向の配線を示す。
【図16】図16は、本発明の第1実施形態における追加の時間分解(つまり位置及び時間感応検出器)の概略図である。
【図17】図17は、本発明の第2実施形態における位置及び時間感応検出器の概略図である。
【図18】図18は、第1実施形態において用いられているパルス照射源を示す。
【図19】図19は、第2実施形態において用いられているパルス照射源を示す。
【図20】図20は、本発明の時間測定手段の概略図である。
【0109】
【図21】図21は、第1実施形態における位置及び時間分解測定機器の概略図である。
【図22】図22は、位置測定に用いられる電荷測定装置の概略図である。
【図23】図23は、シールドリングの概略図である。
【図24】図24は、第1実施形態で用いられる拡張4分割アノードを示す。
【図25】図25は、本発明の第2実施形態における時間分解測定機器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
本発明を好ましい実施形態に照らして説明する。理解を容易にするため、図面に共通の同一又は同等の構成部材は同様の符号によって示される。
【0111】
機器装置に入射する量子ビームの照射位置の位置情報を取得又は推定する発明の機器装置は、位置感知検出器と、照射源と、照射源による照射によって生じた検出器の応答を測定する手段と、人工ニューラルネットワーク構造とを備え、人工ニューラルネットワーク構造は測定された検出器の応答が人工ニューラルネットワーク構造に入力され、照射の初期空間座標が人工ニューラルネットワーク構造の出力となるように設けられる。例えば、増幅装置として、MCPプレートが使われることが言及される。位置感知検出器として、電荷ベースのマルチアノード式システムが説明される。しかし、発明はこれらに限定されるものではない。発明は時間ベースの遅延線関連検出器にも応用されるかもしれない。検出器の応答関数と、検出器の励起又は照射の初期座標を推定する目的とだけが必要とされている。励起は、電磁放射源又は粒子源から引き出される。検出器の応答を測定する手段は、好ましくは、技術分野では既知の原理に基づいた検出器読取りシステムである。
【0112】
本発明は生成された粒子なだれの動的な性質に依存しており、ヒューリスティック近似によるアノード電極パターンのモデル化の必要性を省いた。初期粒子の位置を計算するために、複数工程の手順が実施される。
【0113】
第1の工程では、照射への反応を受け取るために位置感知検出器に接続されたニューラルネットワーク構造はもちろん、位置感知検出器と照射源とを備える。
【0114】
第2の工程では、所定の精度をもって初期空間位置を予測するために、既知の空間位置からの検出器の応答を用いてニューラルネットワークのトレーニングをする。この工程は、検出器の照射の既知の空間位置の反応のデータサンプリングのサブ工程を含む。
【0115】
第3の工程では、検出器の応答をニューラルネットワーク入力へと送るために、未知の位置からの初期照射による検出器の応答を直接測定する。また、照射の初期点の推定値としてニューラルネットワーク出力を計算する。
【0116】
詳細には、検出器へ入射する照射位置の空間座標を取得又は推定する方法は、好ましくは、以下の工程を含んでいる。人工ニューラルネットワーク構造が所定の精度によって照射の初期位置を予測できるようになるまで、既知の初期照射位置からの検出器の応答を用いて人工ニューラルネットワーク構造をトレーニングする工程と、照射源によって検出器に対して照射する工程と、照射源による照射の時の検出器の応答を計測する工程と、測定された検出器の応答を入力として人工ニューラルネットワーク構造に入力する工程と、初期照射の空間座標に対応した人工ニューラルネットワーク構造の出力を計算する工程である。よって、ニューラルネットワークは検出器の応答関数をモデル化している。反応関数はニューラルネットワークへの入力であり、励起の初期座標は出力である。
【0117】
最初に、ニューラルネットワークのトレーニングが実施され、検出器の応答関数を受け取る時に照射の初期位置をモデル化することを「学習」する。これは、以下の工程により実施される。
i) 既知の空間座標から検出器に対して照射し、
ii) 生じた検出器の応答を測定し、
iii) 検出器の応答と照射の既知の空間座標とを保存し、
iv) 上記の工程i)〜iii)を別々の空間座標に対して繰り返し、照射空間をサンプリングし、
v) 測定された検出器の応答を入力として人工ニューラルネットワーク構造(7)に送り、
vi) 初期照射の空間座標に対応した人工ニューラルネットワーク構造の生じた出力を計算し、
vii) 既知の照射用初期空間座標と、空間座標を示す人工ニューラルネットワーク構造の現在の出力との差異の関数を計算し、
viii)差異の関数を最小化するために人工ニューラルネットワーク構造のパラメータを変更し、
ix) 計算した差異の関数が特定の閾値よりも低い場合にはトレーニング処理を停止し、そうでなければ工程v)に戻る。
【0118】
このように、初期の照射空間が励起源の既知のある所定の空間座標から(好ましくは広範囲にわたって)モデル化される。トレーニングの間、照射の既知の初期空間座標と空間座標を示す人工ニューラルネットワーク構造の現在の出力との間の差異の関数が最小化される。このような関数は費用関数とよばれ、例えば、平均平方誤差(RMSE)として実行される。異なる検出器の応答をニューラルネットワークに特定の数だけ提供した後、この誤差関数は最小化され、平均化される。測定された誤差が特定の閾値を下回る場合、トレーニングが止められ、ニューラルネットワークは位置感知検出器の応答関数をモデル化可能となり、初期座標の実測定と推定がなされる。
【0119】
トレーニングプロセスを停止するための特定の閾値は、検出器における物理的に実現可能な分解能の大きさに設定することができる。分解能は通常、単一の増幅成分のチャネル寸法に関連している。MCPの場合、これはMCPの細孔やチャネルの直径であり、一般的には3〜12ミクロンの範囲である。現実的には、ノイズがある状態では、この閾値は細孔直径の3〜5倍でよい。例えば、12ミクロンのMCPの場合、閾値は40〜50ミクロンに設定されうる。
【0120】
しかし、閾値は最小化工程の数の関数でもある。
【0121】
データの集合全部は、好ましくは、パラメータが最適化される前にニューラルネットワークに送られるのではあるが、それぞれの検出器の応答をニューラルネットワークに提供した後でもよい。前者はいわゆる「オフライン」学習であり、後者はいわゆる「オンライン」学習である。よって、データサンプリングやトレーニングは、データサンプリングの最中に単一の工程で実施することもできる。つまり、検出器は既知の位置から照射されて、反応が測定されニューラルネットワークに供給され、ニューラルネットワーク出力が計算されて、単一の反応がそれぞれ提供された後で(反応の集合全部が提供された直後ではなく)パラメータが最適化される。
【0122】
第1の工程は検出器のキャリブレーションである。「キャリブレーション」は以前に既知の多数位置において起こりうる点励起の集合への検出器反応の測定を意味する。キャリブレーションは、ニューラルネットワークのトレーニング(つまり、ニューラルネットワークパラメータ、いわゆる重み付け、の最適化)の一部をなす。すなわち、検出器は特定の既知の位置のポイント露光の反応関数を計測するために用いられる。
【0123】
電荷分割(charge-splitting)アノード読取りの場合の反応又はトレーニング集合は、異なる陽電極上の電荷の測定値の組み合わせからなる。増幅の確率的な性質のため、電荷組み合わせは、n次元の電荷空間に線を形成する電荷のベクトルであり、ここでnとはアノードの個別出力値の数である。
【0124】
座標をはっきりと測定するための遅延線アノードの場合、初期照射の実座標を予測するために、測定された予備座標そのものがニューラルネットワークに供給される。位置情報が直接測定されるが、追加でニューラルネットワークに基づく後処理をすれば、技術的な誤差又は許容誤差による遅延線の非均一性に起因するゆがみを修正することができる。
【0125】
ニューラルネットワークのトレーニングのための励起の初期空間のキャリブレーション又はデータサンプリングについて、光学LEDマトリックスを照射源として用いた例を参照しながら、詳細に説明をする。しかし、励起源はLEDマトリックスに限られるわけではない。
【0126】
励起の初期空間をサンプリングするためには、電子なだれを誘発するため光子又は粒子を、前側MCPの表面における既知の空間位置に送らなければならない。すなわち、照射の初期位置は、検出器上の初期位置に対応するのである。このような光源は、検出器の応答と初期の励起の位置とを相互に関連させるために、コマンドを受け取る。図8と9は、感光性の検出器を校正するための光源の構成方法を説明している。
【0127】
位置感応光電子増倍管(PMT)は位置感応MCPベースの検出器の大きなファミリーである。この管は、光電カソード3、積層体として配置されたMCP4、アノードシステム2を図1に示されるように備えている。この種類の装置は扱いやすいパルス光源を用いて校正することができる。そのような光源では、光強度と照射位置を調整することができる。
【0128】
位置感応PMTシステムは、光電カソード3と積層して配置されたMCP4と位置感応アノード2とからなる真空密閉のアセンブリを備えている。光電カソード3は入射光子を光電子に変換する。光電子は印加電界に従って移動し、MCP積層体で増幅又は増倍される。生じたなだれは電界に従って移動して、位置感応アノード2に到着する。アノード2は電極5の集合体であり(4分割アノードについては、図2を参照)、この電極5は真空部内部に配置可能であり、米国特許第5,686,721号公報に記載されたとおり真空利用真空減結合技術(vacuum utilizing vacuum decoupling techniques)の外側にも配置可能である。
【0129】
発光ダイオードアレイ(LED)は光学的な励起源として用いられる。このようなアレイは広く多くの分野(街灯、車両照明、及び様々な表示適用例)で用いられている。LEDマトリックスをPMTキャリブレーションに用いるため、キャリブレーションアセンブリが図8に示されるように作られた。アセンブリは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)チップ14と、調整可能なパルス電流源12と、照射源6として緑色LEDマトリックスとを備える。アセンブリの核はFPGA14上に組み込まれた論理スキームである。このスキームはコンピュータからのコマンドをパラレルTTL8ビットプロトコルを経由して受け取る。このプロトコル(図9に示す)は、5ビットDATAバスや、行又は列レジスタ15、16へのDATAバス値の保存をRAWCOLラインの状態により始動させるWRITE信号を有する。
【0130】
コンピュータへの8ビットインターフェースの説明をする。DATAはコンピュータに送られる4ビットの単語であり、FPGA14にどの行/列が設定されているかを伝える。ROWCOL信号は、行又は列レジスタ15、16が設定されているかを調べる。もしRAWCOL=1であれば、行レジスタ15は保存され、そうでなければ列16が設定される。FIRE信号は、電流源12に単一の電流パルス11の放出をさせてマトリックス6の選択されたダイオードを作動する。電流パルス11の継続時間と振幅は、LEDの種類、マスク孔の直径、検出器の光電カソードなどにより最適化される。振幅は異なる電圧をパルス電流源に印加することで変更することができる。継続時間はRCチェーン(RC chain)の時定数によって調整される。しかしながら、キャリブレーションアセンブリに対しては、放射線源のアレイは放射線源の既知の位置だけを必要としており、それぞれ個別の放射線源は別々に駆動又は始動されうる。
【0131】
孔のあいた非透過性のマスクで覆われたLEDマトリックス6の画像が、商業的に入手可能な対物レンズを使って光電カソードの表面に送信される。
【0132】
よって、キャリブレーションは、以下の工程を必要とする。
・放射線源のアレイの単一の放射線源を始動して放射線を放出させる。
・検出器の応答を計測する。
・照射の位置と対応する検出器の応答を保存する。
【0133】
これらの工程は、アレイの少なくとも全ての異なる放射線源が使われるまで実施されるべきである。例えば、放射線源アレイの大きさや放射線源間の距離のために照射の起こりうる初期空間が十分に含まれていない場合には、放射線源アレイを別の位置に移動させて、上記工程を繰り返す。
【0134】
完全な光学的なキャリブレーション又は、位置感応アノード付きのPMTと、検出器の電子モジュールと、コンピュータと発明のLEDキャリブレーションアセンブリとを備えるデータサンプリング構成のより詳細な例では、以下の工程が実施される。
1.変数Mx、Myをゼロにする。
2.LEDマトリックス6の行と列を無作為に選び、ダイオードの座標を行と列の番号を示す変数txとtyとに保存をする。
3.点(tx,ty)と点(Mx,My)との間の距離をチェックする。もし距離が全面積直径の1/4より小さければ、工程2に戻る(この工程は、前回のなだれが放出された後の回復時間中にMCPチャネル内部の電子が不足する影響を取り除く)。
4.txをMxへ保存し、tyをMyへ保存する。
5.電流パルスを送信して、それぞれのダイオードに光を放出させる。
【0135】
6.イベントを待つ時間間隔を設定して、データをコンピュータへ書き込ませる。
7.時間間隔が終わった後、検出器の電子モジュールからのデータをコンピュータが受け取ることを禁止する。
8.待機時間中に登録された光子の数をチェックして、イベントがなければ、工程2に進み、記録されたイベントが1回より多くあったならば、それらを消して工程2に戻る。
9.マトリックスにおけるLEDの行と列番号とともに、測定された検出器の応答を保存する。
10.収集されたイベントの数がさらなる処理と分析に対して十分であるか確認する。十分でない場合、工程2に戻る。そうでなければプログラムを終了する。
【0136】
個別のMCPチャネルの飽和効果を避けるために、励起の座標は好ましくは無作為に選択することもできる。
【0137】
アルゴリズムは、データレコードの合計数と比較して、少ない数のマルチ光子イベントを保証する。このアルゴリズムは個別の電極の数やアノードシステムの種類に依らず、あらゆるタイプの位置感応アノード読取りシステムにおいて利用することができる。
【0138】
上記の簡素なアルゴリズム、又はより細かなアルゴリズムからの出力は、検出器の応答や励起点の空間座標を含むレコードの集合体である。アノードが多数の電極を備える場合や、必要な詳しさで反応関数を説明するにはポイントの数が不足する場合には、マトリックスを固定で既知の距離によって移動させ、キャリブレーション手順を繰り返す。このような移動は、十分な精度を持つマイクロステージやナノステージの上にLEDマトリックスを設置して行うことができる。
【0139】
上記装置はパルス装置を用いる。しかし、そのようなことはする必要もない。検出器を既知の位置から励起する低強度連続照射点源が用いられる。十分な数のイベントを取得した後、点源を座標が正確にわかる別の場所に移動させる。
【0140】
このキャリブレーション手順は、遅延線アノードや交差遅延線アノードのように、座標が直接測定されたパラメータであるアノードシステムを備える検出器に応用可能である。検出器の応答の直接の測定や本発明のサンプリングアルゴリズムを応用することで、遅延線の非線形ひずみ効果を補正することができる。このような効果は、例えば、遅延線の両端のパルスの時間差を測定するのに使われる時間測定装置の積分非線形性の結果である。
【0141】
以下、真空装置一式キャリブレーションの別の例を説明する。実験の原子核物理学での必要とされる従来技術で知られる位置感応電子増倍器を用いた多数の検出システムがある。このようなシステムは通常、大型の真空部(例えば、加速器のチャンバー、X線源、さらに大型の真空装置一式の一部)内に位置するMCP積層体と位置感応アノードとのアセンブリを備えている。
【0142】
光学系のための上述の手法と同様のデータサンプリング手法は、キャリブレーションでも用いることができる。電子銃は位置を変更可能な電子源として使われてもよい。今回の工程2で異なる初期位置において電子銃が用いられること以外は、キャリブレーション手順アルゴリズムは上記の手法と同様である。電子銃の場合、Mxとtxとの変数は、電子銃の種類によってはx位置を調整するために用いられる電圧や電流を保持する。また、My、tyは出力ビームのy位置を担う値を保持する。x値とy値との集合数はLED素子の固定数や大きさに限定されることはなく、十分なサンプリングをするための校正点の数に対する必要性に応じて選択可能である。
【0143】
キャリブレーションのさらなる例として、マスクのようなキャリブレーション方法もある。この技術では、静的計算モデルに基づく電荷分割原理を用いる多くのアノードシステムタイプが知られている。これは検出器例の個々の特性はほとんど誤差を生み出さない、ということを暗示している。すなわち、装置インスタンスは異なるけれども、これらは位置計算の観点から見たら同じようなものである、と暗示している。同じ仮説をANNベースの計算アルゴリズムに対しても持つことができる。いったんニューラルネットワークが構築されてトレーニングされると、そのニューラルネットワークは、直接同じアノードタイプに、最初からそのために作られたかのように応用することができる。
【0144】
この事実により、同一又は同様のアノード構造ベースの検出器に対して、次のインスタンスのトレーニング時間を最小化できる。もし重み及びバイアスの初期の集合を既知の検出器から再利用されるのであれば、重み空間での無作為の起点に対しての反復回数と比較して反復回数を劇的に減らすことが可能ある。通常、パラメータは無作為に初期化される。別の観点はキャリブレーションの処理の簡素化能力である。多くの場合、電子銃や、LEDマトリックスや、他の調整可能で動的な照射源を用いることが問題になる。よって、トレーニングでは、同様の検出器で採取されたデータポイントを用いてもよい。
【0145】
コンピュータ駆動の照射源を用いる目的は、検出器の応答に伴う露光の位置をトレーニング事例を形成するために保存することができることである。異なる励起点を推定してそれぞれを区別するためのアノードの安定した信頼性の高い数学的なモデルを構築することは、正確な位置情報を知らない状態ではいくつかの場合に難しい。過去に構築された特定のアノードタイプ用のANNモデルにより、露光点を相互に区別することができて露光点を識別することができる。真空ベースの装置一式の場合、MCPの前面に設置された照射用の孔付き非透過マスクを用いることが便利で簡単である。PMTの光学的なキャリブレーションは、非透過マスクや低レベルの強度の照射源を使うことで簡易化できる。これにより、特別な装置が必要なくなる。
【0146】
キャリブレーションの第1の工程は、既知の形状のマスクを貫通する粒子や光子の連続した計数を含む。第2の工程は、露光点を相互に区別するために従来の既知のANNを適用する。計算ゆがみが大きすぎる場合や隣り合う校正点をはっきりと区別するのが不可能な場合、正確な座標補間のための十分な数のポイントに達するためには、サンプリングポイントの数を減らして測定を繰り返す必要がある。
【0147】
第3の工程は、アノード/検出器インスタンスの差異から生じたゆがみを補正するためにネットワークをトレーニングすることである。
【0148】
ニューラルネットワークのトレーニング 工程2:ネットワークそのもののトレーニング
キャリブレーション工程で得られたデータセットは、入射粒子空間の(x,y)位置の検出器アノードシステムの複数次元読取り空間へのマッピング(mapping)の点の集合である。すなわち、検出器は点励起への反応を計算する計算装置として扱われる。
【0149】
数学的に、これは以下のように表される。
q=Q(x)、
そして関数Fにより位置が計算される。
x=F(q)
ここで、qはベクトルxの位置における点励起の検出器の応答読取りシステムのベクトルである。関数Qは、検出器で計算される関数であり、Fは既知の検出器の応答からの入射粒子の初期位置を再び取得するために計算される関数である。すなわち、手順全体の目的はQの逆関数を作ることである。
【0150】
従来技術でも述べられるとおり、アノードシステムは、初期座標へのアノード反応のマッピングのヒューリスティック推定手法に基づいて作られている。電子雲フットプリントや座標を直接測定するために作られたアノードシステムをモデリングすることで、このマッピングの逆関数はアノードの幾何学的性質に基づいて作られ、計算されうる。WSAでは(米国特許第4、395、636号公報参照)、公式により位置計算が求められ、この公式は、座標を正規化するために信号の増幅の合計で割られた電荷の測定値の線形結合である。1976年にLapingtonにより最初に発表された4分割アノードの計算方法は、座標に対して比例するだけで位置を正確には計算しない比率方程式(ratio equation)に基づくものである。
【0151】
座標計算の固定モデルベースの手法のうちどれもが、アノード部分の製造の精密限度を乗り越えられないし、完全な検出器アセンブリの個別の幾何学的性質を考慮できていない。技術的幾何学的誤差はある所定レベルにおける要求分解能では無視しうるが、完全には取り除くことができない。すなわち、正確に互いに同様の反応をするような2つの完全に同一の検出器を作ることは、技術的に不可能である。結果として、同一の技術で同一の材料を用いて作ったとしても、固定された空間座標xへのベクトルqの全ての組み合わせの反応の集合は1つの検出器インスタンスから別の検出器インスタンスとで異なることになる。すなわち、異なる検出器インスタンスは固有の関数Qを計算し、結果として逆関数F(q)がそれぞれの検出器例にとって固有のものとなる。
【0152】
個別の検出器インスタンスや検出器が作られる部品の特性を考慮するために、個別の検出器のそれぞれの関数Fを以下のように補正する必要がある。
x=F(p,q)
ここで、pは、完全なシステムとしての具体的な検出器インスタンスの個別の属性を含むパラメータベクトルであり、MCP増幅率、増幅器とアノードとの間の電界の差異による異なる電子雲フットプリント、読取り処理やADC変換、直接読取り回路・アノードの組み合わせの特性を含む。
【0153】
人工ニューラルネットワーク(ANN)は最初は生物学的な神経のモデルとして考えられていた。人工ニューラルネットワークはパターン認知アプリケーションとして広く使われたが、これよりも難しい作業である関数近似としてはあまり使われなかった。今日では、ANNは、幅広い応用範囲で使われる強力な数学的計算ツールである。フィードフォワード(FF)ANNは、フィードバック情報伝搬のない神経信号のモデルを示す特別なクラスのネットワークである。信号はネットワークを介して一方向のみに入力から出力へ送信される。図10に示されるように、FF−ANNは入力層と多数の隠れ層と出力層とを備える。しかし、隠れ層はなくてもよい。モデルの複雑性に応じて、入力層、隠れ層及び出力層は1つ以上の神経からなる。ネットワーク内のそれぞれの神経は、1つの出力といくつかの重み付きの入力を備えており、入力に関しては、図10の神経間の相互接続線は重み付きの接続に対応している。
【0154】
y=f(Σwixi+b)
ここで、合計はI=1、nで行われる。nは前の層における神経の数、「x」は神経入力のn次元のベクトル、「w」はいわゆる重みベクトル又は神経のパラメータベクトル、bはバイアス又は神経へのオフセットを意味する。関数「f()」は伝達関数と呼ばれる。伝達関数として一般的に使われる多数の関数が存在する。
双曲線正接 f(x)=(ex−e−x)/(ex+e−x)
シグモイド関数 f(x)=1/(1+e−x)
線形関数 f(x)= x
飽和線形関数
【0155】
しかし、他の関数も神経の伝達関数として用いられることが知られている。
【0156】
FF−ANN層における神経への入力数は前の層における神経の数で定義される。ANNのそれぞれの個別の神経出力は入力の加重和の関数として計算される。通常、FF−ANN内の神経により計算される関数は層によって決まる。「n」個の神経の単一層及び前の層における「m」の計算は、マトリックス形式で書くことができる。
y=f(WX+b)、
ここで、Wはnxm要素のサイズの重みマトリックスであり、n行からなる。Xは前の層からの出力値のm次元のベクトルであり、bは層バイアスのn次元のベクトル、yは層のn次元の出力ベクトルである。関数Fはベクトルの個別の要素それぞれに対して計算されることを意図している。
【0157】
上記をまとめると、n個の層全体のFF−ANN関数の出力は以下のように記載することができる。
y=fn(Wn...f3(W3f2(f1(W1X+b1)+b2)+b3))
ここで、Xはネットワーク入力ベクトルであり、Wiはi番目の層の入力重みマトリックスであり、fiは層「i」の伝達関数である。よって、ニューラルネットワーク出力関数は層伝達関数の入れ子関数であり、連続関数を適用するのに大きな自由度をもたらしている。
【0158】
本適用においては、入力ベクトルXは検出器の応答である。マルチ電極アノードタイプの位置感知検出器では、反応はアノードの電極の数と同数の要素を持つベクトルである。入力ベクトル要素は、電極から測定された生検出値又はヒューリスティックベースの計算の結果である。例えば、4分割アノード検出器を用いて従来技術から知られる比率近似法(ratio approximation)の結果を使うことは便利であり、神経の数を最小化することができて、ANN評価とトレーニング計算のコストを下げることができる。多くの数の要素を持つアノードシステムの場合、位置計算での結果におけるノイズ成分の影響を最小化するために、特定の閾値を超える値の一部だけを選択する必要がある。
【0159】
遅延線検出器では、反応は遅延線の数に等しい多数の要素を有するベクトルである。2次元遅延線測定では、2つの交差する遅延線が使われてもよく、x方向に延びる遅延線はx座標を計測し、y方向に延びる遅延線はy座標を計測する。ANNに送られる実パラメータの数は、前処理計算段階の結果も含んでいる。
【0160】
ニューラルネットワークの重みとバイアス(一般的な用語ではパラメータ)は、具体的な検出器インスタンスのすべての個別の属性を完全なシステムとして全て保持する検出器パラメータベクトルに対応し、MCP増幅特性、電界の差異のための異なる電子雲フットプリント、読取り処理とADC変換、直接読取り回路/アノード組み合わせの特性を含む。
【0161】
ANNによる関数の補間のことをトレーニングと呼ぶ。トレーニングは費用関数を最小化する処理であり、例えば、ANN出力と目的関数のベクトル差のノルムの関数(ここでは検出器の照射の初期座標)である。ノルムはベクトル成分の二乗の差の合計として定義される。
E=Σ(yi−ti)2
ここで、yiはネットワークの出力値であり、つまり1つのネットワーク出力ノードの出力値である。tiは目標ベクトルの成分である。ネットワークの構造により、異なった最小化アルゴリズムを使うことができる。また、最小化される異なる費用関数も使ってもより。
【0162】
トレーニング集合はキャリブレーション工程で得られる値を有している。ANNの入力値は、点励起への検出器の応答値であり、目標値は入射露光の座標である。
【0163】
アノードパターンの複雑さにより、必要とされる精密レベルを達成するために適用された神経の数が決まる。計算コストの視点からは、性能を最大化させるために、できるかぎり最も簡易な構造が好ましい。所望の値により近づけるため、ネットワークは、隠れ層や隠れ層内のノードの数を増加することで、いつでも増加することができる。
【0164】
多くのエンターテイメントアプリケーション(同時ビデオ処理、実世界のゲーミングシミュレーションなど)の要求に見合うようにベクトルベースの問題計算を強化するために計算モジュールが複数の算術論理演算装置を備えている場合、ネットワークは、さらに多くのベクトル計算機能を有した最新の計算ハードウェアやソフトウェアで計算されてもよい。ANNの計算作業は主にベクトルに基づくため、商業的に入手可能なエンターテイメントハードウェアに適している。
【0165】
しかし、ニューラルネットワークはハードウェアにより全てを実施されることも可能である。このような実施はFPGAチップを用いてすることができる(Coricら、"A neural network FPGA implementation", Neural Network Applications in Electrical Engineering, 2000. NEUREL 2000. Proceedings of the 5th Seminar)。
【0166】
ニューラルネットワークのトレーニング 例1
ニューラルネットワークトレーニングの例を、4分割アノードの画質を向上させることができる拡張4分割アノード検出器システムを参照して説明する。
【0167】
まず最初に、位置感知検出器を説明する。
【0168】
Lamptonが説明する伝統的なQAは個別のMCPチャネルの直径にまで高分解能を実現する。このアノードに関する2つの主要な制限は、強い非線形性と狭い視野である。
【0169】
本発明は、キャリブレーション手順と組み合わせてANN機器を適用することでこの非線形性の問題を克服する簡単な方法を提供する。
【0170】
Lampton が発表した公式は、完全に電荷を取得できる場合には有効となる比率方程式に依存している。Purschkeらにより実証されたように、なだれを拡大するのと組み合わせて4分割体を大きくすることで、視野が広くなる。真空密閉の装置を作るため、MCPのサイズと同じ又は同様の直径の構成を使うことが技術的には好ましい。視界の制限を超えるために、第5の周囲アノードQ5が図11に示されるように導入された。第5の電極5はリングとして配置され4分割アノードQ1〜Q4を囲んでいる。この電極は雲電荷のテール(tails of cloud charge)を集めることを担っている。電子雲のフットプリントはMCP積層体4の出力とアノード2の間の電圧により変更されて、個別の4分割体のサイズと同等にされる。これが、なだれの中心からかなり離れて分布する電子の大部分となる。一方で、このことで、なだれが十分な大きさになるので、位置計算のために全体の視野にそってすべての4分割体からの電荷を使うことができるようになる。
【0171】
第5のアノードはQAを拡張したものである。このような構造は、大きな電子雲の複雑な形状をもたらすため、アノードの幾何学的性質のみに依存する安定した数学的モデルの構築を困難なものにする。
【0172】
簡易な偏平マルチアノード(FMA)構造(図12(破線が電子雲に対応)で示されるような4分割アノードや他の簡易な偏平構造)が単一光子計数で用いられるときの利点は、アノードとグランドとの間に非常に小さな静電容量が存在することである。電荷感応増幅器(CSA)ノイズは入力容量に強く依存している。そのため、画質を守りつつ、アナログ/デジタル変換の前のアナログ増幅器でのシェイピングに短い時間を使うことが可能になる。複雑なアノード構造(例えば、ウェッジ・ストリップ(WS)アノード)での典型的な値として、例えば、1500nsではなく、150nsのシェイピング が用いられてもよい。つまり位置判定の同一の精度であれば、本FMA−MCP−PMTはWS−アノードMCP−PMTよりも10倍の性能を発揮するかもしれない。第2の利点は、MCP積層体の小さな倍率を有するアナログチャネルの信号対ノイズ比が守られるという事実である。
【0173】
よって、MCP−PMTの寿命(又は、感度が2分の1に低下する前の、MCPによる電荷の量)は、WSや抵抗(R)アノードの場合よりも10倍よい。4分割アノードの場合の増幅率は、約106であり、それに対して、WSやRの場合には107以上である。
【0174】
WSやRアノードの場合では3つ以上のMCPが含まれるが、2つのMCPのみを含むことが可能である。
【0175】
偏平QA構造の製造技術は非常に簡素で精密である。よって、電荷位置への依存はなめらか(sleek)(明らか)であり、位置判定の線形性は非常に高い。他のアノードシステム(WS、R、遅延線、マイクロ・ストリップなど)の製造はもっと複雑である。アノードの局所欠陥がありえるので、画像の高い線形性を達成することはできないであろう。本発明では、離れた校正点を用いて局所的な欠陥のない座標復元アルゴリズムを作ることができて、校正点間の補間を円滑にできる。
【0176】
ゆがみのないアルゴリズムを自動的に生成することは可能である。MCP−PMTのどのサイズでも、位置感度(最大視野におけるピークセルの量)を低下させることなくモデル化することができる。他のタイプのアノードシステム(WS、R、DLなど)の場合、アノードのサイズを下げることは非常に困難である。分解能はアノード構造工程(WSやDL)又は抵抗(R)で決められて、どのMCPのサイズに対しても一定値(マイクロメーターの単位で)となる。マイクロメーターの単位における分解能(例えば、100マイクロメーター)は、10mm、25mm、80mm視野に対して同じであり、よって検出器の空間分解能を限定する。
【0177】
あらゆるFMA構造(QAを含む)の主な欠点は、視野の縁部における分解能が低下することである。この分解能の低下は、全体のMCPエリアに対する空間感度を得るために、そのようなアノードにおける電子なだれのサイズがそれぞれの部分的な電極のサイズよりも大きくなくてはならないためにおこる。もしなだれがアノード構造の縁部に落下したならば、なだれ電荷のその部分が失われてしまう。この電荷を得るために、アノード構造周囲の導電性電極Q5が使われる。明らかに、簡易な偏平周囲電極の幅は広くなくてはならない。つまり、なだれサイズの半分以上とすべきである。なだれは非常に広いテールを有しているため、なだれの一部が周囲電極Q5から外れて落ちたり、電極から外れた場所にある絶縁体を荷電したりする。この電荷は絶縁体によって収集されて次のなだれを押しやったり次のながれの形状をゆがめたりする。結果として、よりちいさななだれ部分だけが周囲電極Q5に到達することになる。
【0178】
これを避けてなだれの意味のある部分を収集するために、「管状の」又はリング状のアノードハングオーバー(hang over)がアノード構造として使われる。偏平構造の4分割アノードがx方向及びy方向に延設される場合、リング状のアノードはz方向に延びる。
【0179】
リング状のアノードの高さは、わずかな誤差を含む分割アノードの典型的なサイズと同等としなくてはならず、リング状のアノードは、最後のMCP4とアノード構造2との間のエリアを覆うだけでなく偏平アノード構造の周囲の絶縁体を覆うようにして配置されなければならない。リング状のアノードの形状は、偏平アノード2構造の外形をまねしなくてはならない。よって、偏平アノード2が円形を有すのであれば、リング状のアノードの形状は円柱形となるし、偏平アノードが六面体形状を有すのであれば、リング状のアノードは断面が六面体をベースにした形状となる。この結果、そのような構造での最大のなだれ電荷を収集することが可能であり、平面構造と比較してより良好な位置感度を縁部で実現することができる。
【0180】
リング状の又は円柱状のアノード形状の利点は、フルアノードシステムと比較してよりちいさなサイズであることだ。よって、偏平構造サイズとフルアノードシステムのサイズとでは差異がない。
【0181】
4つの陽電極を備えた通常のQAには、位置感度が悪くなるエリアがある。これらの部分はそれぞれの4分割体の中心に位置している。この欠点を回避するために、図12に示されるように、さらに5個、6個、7個、n個のリング状のアノードを備えた、より複雑な偏平構造を採用することができる。
【0182】
電子なだれのサイズは、簡易な4分割体の場合のサイズよりもより小さくなるため(25mmの視野に対する20mmの4分割アノードなだれは400*400分解能に対応)、位置感度はさらによくなり(25mmの視野に対する12mmのなだれは650*650の分解能に対応し、25mmの視野に対する7mmのなだれは1000*1000の分解能に対応する)、分解能が悪化しているエリアが取り除かれる。
【0183】
もちろん、全ての視野に必要とされる分解能をも達成しうるために、10以上の同一面積の分割アノードを有するより複雑な偏平構造も構成されうる。しかし、適切な周囲電極なしでは、視野の縁部での分解能は悪化してしまう。
【0184】
よって、そのような偏平構造の最大分解能は分割アノードの品質により決まり、追加で周囲電極(例えばリング状のアノード)が用いられると、最大分解能は視野のそれぞれの点において高く均一になる。
【0185】
上述の検出器システムの照射の初期座標を推定するために使われるニューラルネットワークを使うために、第1の工程では、よく知られた空間座標の点励起への検出器の応答を測定する。
【0186】
ニューラルネットワークトレーニングに必要とされる入力情報を取得するために、キャリブレーション装置一式が作られる(図13(a)と13(b))。この検出器1は、必要に応じて垂直位置の調整も可能なホルダー22を用いて光保護チャンバー21内に設置される。光対物レンズ23マウントはチャンバーの前フランジ内に配置される。対物レンズは、LEDマトリックス6の画像を光電カソードの表面に投影する。マトリックスモジュールは電動式ステージ24の上に設置される。光電カソードの表面上に最適規模での画像を形成するために検出器を垂直軸に沿って精密に移動させる光投射装置に検出器ホルダーが設置される。電動式ステージ24は2つの水平方向の制御に用いられる。
【0187】
電動式ステージ24の他の役割は、マトリックス6を変更せずに制御露光点の数を増加することである。標準的な顕微鏡のステージ24がマトリックス6の位置を制御するのに用いられる。
【0188】
z方向に延びる第5の周囲電極を有してx・y平面に延びる拡張4分割アノードが光電子増倍管用に使われてきた。電子モジュールは照射源6による照射で生成された電荷を測定するための5つの独立した分光測定チャネルを備えている。単一のチャネルは、電荷感応増幅器と、シェイピングフィルター(shaping filter)のセットと、12ビットアナログ/デジタル変換器(ADC)と、デジタル出力インターフェースとを備える。弁別器のひきがねとなる信号は、すべてのチャネルを同期させる。デジタルインターフェース装置はADCからの情報を取得し、パッケージを形成してそれをコンピュータに送ることを担っている。
【0189】
検出器は単一光子計数モードによって運転されている。全電荷の増幅分布(つまり、離れた電極から測定されたすべての電荷部分の合計)を測定することで、単一の光子運転モードの正確さを制御することができる。MCPチャネルの飽和はより低い増幅率となり、結果、分布での最高点の位置を、原点の方向に対して、左側(よりちいさな電子なだれ振幅のエリア)へ移動させることになる。マルチ光子イベントは、メインのピークの右側(より大きな振幅となる側)で2次ピークとなる。
【0190】
光強度は2つの方法により制御される。対物レンズの絞りを回すことと、ダイオードのポンプ電流を変化させることである。対物レンズの分解能が絞りのサイズによって決まるため、電流を用いた方法が好まれる。絞りは、最大可能な分解能を達成するように設定される。
【0191】
コンピュータ駆動のLEDマトリックスは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)装置に組み込まれた論理スキームで制御される。装置はコンピュータからコマンドを受け取ることができ、要求されるとLEDマトリックスに短い光を放出させることができる。マトリックスは、2.54mm(1/10インチ)の空間に32行と32列有している。表面はフォトプロッティング(photo-plotting)技術により作られて254ミクロン(1/100インチ)の孔直径を有する非透過性膜で覆われている。
【0192】
LEDマトリックス6を用いたキャリブレーションはこれまで説明されてきた周期的複数工程アルゴリズムである。
【0193】
すべてのLED位置に対する十分な数の光子が取得できたら、アルゴリズムが停止する。実験では、照射源の1つの点当たり(又は励起の初期空間座標当たり)8000〜12000、好ましくは9000〜11000、さらに好ましくは10000の個別イベントを測定できれば、視野全体への拡張QAの検出器の応答関数を精密に再構築するために十分であるとわかっている。
【0194】
より複雑なアノードシステムの場合、マトリックスは、電動式ステージ24を用いて点と点との間に特定のオフセットをもうけて数回測定される。
【0195】
キャリブレーションアルゴリズムの出力は、アレイ構造である。(x,y,q1,q2,q3,q4,q5)。ここで、(x,y)はマトリックス内のダイオードの行と列の数であり、(q1,q2,q3,q4,q5)は5つの陽電極に対して検出器の応答の電荷の測定値である。構造の合計数はLEDの数とそれぞれの校正点で取得される光子の数で決まる。MCPベースの検出器の視野は通常、検出器で認識できるダイオードの数程度である(ここでは、1024個のダイオード(32x32)のうち、780〜830個の範囲内である。
【0196】
よって、トレーニング集合は理論的には、初期のy座標とそれぞれの反応を含む(8000〜12000)x1024データの構造から成り立っていてもよい。又は、現実的には、(8000〜12000)x780データ構造、つまり、620万(8000x780)から1230万(12000x1024)のデータ集合、さらに好ましくは700万(9000x780)から1130万(11000x1024)、さらにより好ましくは780万(10000x780)から1024万(10000x1024)のデータ構造である。
【0197】
それぞれのダイオードに対して登録されたイベントの数のヒストグラムを評価することで最適な突起形状(optimal projection)を管理する。ヒストグラムにより、軸対称、照度の均質さ、傾きや傾斜管理などが即座に視認で管理できる。
【0198】
位置感知検出器の例としての光電子増倍管は、ローレベルのバックグラウンドノイズを有すると知られている。典型的なバックグラウンド計数率は、視野全体で1秒につき10〜100個の光子の範囲である。キャリブレーション試験の典型的な反復率は、1秒につき8000〜11000回の範囲におさまる。結果として、光検出器バックグラウンドノイズは、最終のデータセットの1パーセント未満に影響する。これにより画像センサの巨大なダイナミックレンジとなる。登録のこのような高い力学的深度はデータ前処理によって解決が必要となる多くの作業をもたらすかもしれない。
【0199】
・LEDマトリックス基板の材料はプラスチックで作られており、光が近接位置に入り込むのを完全に保護するわけではない。つまり、システムは、近接位置/チャネルから放出された光子の一部を用いて1つの光源の(x,y)座標を記録する。
・すべての材料は単一光子レベルで反射する。後に検出器で登録される入射光子を反射する可能性はゼロではない。このため、視野において均一なバックグラウンドノイズがもたらされる。
・対物レンズ内での反射。
【0200】
実験データを簡易に迅速に呼び出せるように、取得したデータの全てのアレイをダイオードの座標に基づいて並べ替える。
【0201】
マトリックスの全ての点を並び替えた後、複数次元ヒストグラムが電荷空間に作られる。閾値未満の値はノイズと見なされ、その後の処理からは取り除かれる。拡張QAアノードシステムとともに使われる12ビットADC(4096チャネル)用として、32チャネルのヒストグラムビンのサイズが妥協点として選ばれる。詳しくは、後の処理用にビンの数と有益な情報を保つ確率との間の妥協点として、32チャネルのヒストグラムビンのサイズが選ばれる。すなわち、もしそのセルサイズを小さいものにするのであれば(1チャネルを限界として)、有益なイベントの一部は統計不足のためにバックグラウンドノイズとして扱われる。一方、大きなビンサイズにすると、データ集合にノイズイベントが残ることになる。
【0202】
高次元の値のヒストグラムを作るには、大きな量のメモリが必要となる。例えば、32ビンを有する4096個の全チャネルは、自由度の次元あたり128ビンチャネルとなる。5つの電極を備えた拡張QAにとって、これは1285=34359738368ビンキューブ(bin cubes)となる。メモリの問題を克服するため、以下の手法が用いられている。全てのイベントに対して、全ての電荷軸にそったビンの組み合わせが計算されて、辞書に保存される。その組み合わせが辞書に記録として存在する場合には、その組み合わせに関連した値は1増加される。結果として、辞書はそれぞれのイベントの多くの近隣値を保持する。2回目の処理の間、ビンがもう一度計算されて、閾値フィルタリングが適用される。
【0203】
ノイズを除去した後、ニューラルネットワーク学習アルゴリズムが用いられる。しかしながら、もしノイズが低ければ、前のフィルタリングの工程は除外できる。また、上記閾値フィルタリングの後、メジアンフィルタ処理(median filtration)を多項式近似に基づいて使ってもよい。それぞれ個別の電荷が信号振幅の二乗多項式として補間される。これによりニューラルネットワークの学習セットのサイズを最小化し、イベント分布の中央部分のみを考慮して学習処理を高速化させる。
【0204】
拡張QAには、フィードフォワードニューラルネットワークの以下の構造が用いられた。5つの陽電極を表す5つの入力が双曲線正接関数を計算する第1隠れ層内の23個の隠れ神経に接続されている。第2隠れ層はシグモイド関数を伝達関数として計算する23個の神経を保持し、初期光子の(x,y)空間座標を表す2つの出力神経が使われる。
【0205】
ネットワークの構造が実験的に見つけられている。それぞれの座標に対して1つの出力とするネットワークを利用して、神経の数を減らすことができる。一方で、実際のマトリックス計算では、最新のコンピュータシステムのベクトル計算の拡張機能を用いてより高性能用の独立した2つの集合を処理するよりも、係数(重みマトリックス)の1つの集合を処理する方が速い。
【0206】
非線形最小化のLevenberg−Marquadtアルゴリズムが、ネットワークの重み係数を探すために(すなわち、ニューラルネットワークパラメータの最適化のために)用いられる。
【0207】
トレーニング手順の停止基準が採用された最適化アルゴリズム(ここでは、Levenberg−Marquardtアルゴリズム)に関連している。停止基準を定義する2つの方法がある。
1)それぞれの校正点の誤差が、アナログ電子回路処理パイプラインノイズやADCビット幅などで制限される検出器の物理的分解能より低くなる時。さらにトレーニングをしても測定ノイズが変化するよりも大きく出力を変化させられないのであれば、トレーニングが止められる。
2)勾配が特定の値未満である時。通常は、この値は処理装置の計算誤差の倍数に関連している。
【0208】
校正点の数が1000〜1200を超えた状態で、2次導関数の正確な計算を必要としない勾配ベースの最小化や最適化方法に移るのが実用的である。
【0209】
ニューラルネットワークのトレーニング 例2
さらに、減結合された複数分割アノードも採用してもよい。米国特許第5,686,721号公報は高真空内部検出器部から読取りアノードシステムを隔離する方法を示している。なだれの電荷は検出器の外の抵抗層の外側面上で直接測定される。これにより簡単にFSA構造を接合することができる。
【0210】
この方法を電荷画像装置に適用するために、アノード読取りパターンが標準技術を用いてプリント基板上に形成される。電荷感応増幅器は基板の開口部に接続される。同じキャリブレーション手順が以上説明したように適用される。
【0211】
5つの電極構造については、真空密閉の拡張QAアノード装置の場合と全く同一のニューラルネットワーク構造が適用されて座標を計算する。
【0212】
マルチ電極パターンの場合、ネットワーク構造を変更しなければならない。さもなければ、増加した入力数はトレーニングの速度と安定性を悪化させることになる。水平軸と垂直軸に沿って別々に座標を計算するために、2つのネットワークを採用することができる。例えば、9つの電極パターンのために、それぞれのネットワークは9つの入力と40の隠れ神経と1つの出力を備えている。ネットワークの係数を適用して、測定した電荷を所望の座標にマッピングすることで、トレーニング手順がそれぞれの別々のネットワークに対して行われる。
【0213】
結論として、QAは、以下のメリットをもたらすことができる最も簡単なパターンのうちの1つである。安く簡単な生産、高精度の電荷測定と高い処理量をもたらす低内部電極容量。
【0214】
キャリブレーション装置一式は、コンピュータインターフェースを備える簡単なLEDマトリックス以外には、特別な装置を必要としない。コンピュータ駆動のシステムはキャリブレーション試験において連続制御をする。
【0215】
図14は、可能な他のマルチ電極アノードアセンブリを示しており、他のマルチ電極アノードアセンブリは位置感応アノードとして2次元配列に配置したダイアモンド状の電極を備えている。図15(a)は、図14の垂直電極又はy電極の配線を示す。図15(b)は、図14の水平電極又はx電極の水平配線を示す。以上説明したように、特に交差ストリップシステムにおいては外部電荷分割アノードはx感知素子とy感知素子を同一平面上に有する必要がある。交差ストリップシステムでは、現在の設計では、絶縁層で分離された異なる2つの平面位置となり、わずか75%までの充填率である。図15に示したとおり、垂直方向又はy方向に配置されたダイアモンド状の電極が、図14に実線で示されたように平面上に接続されている。水平電極又はx電極は絶縁層の下で接続されている。
【0216】
このような設計の利点は、最新技術の交差ストリップアノードとは対照的に、同一の大きさで構成されたxとy収集素子を採用するにもかかわらず、ダイアモンドのサイズを増加させて、99%のエリアを覆い、ほとんど互いに接触する程度にすることができる。
【0217】
発明で説明される方法は、あらゆる陽電極の構造にとって共通であり、アノードの数や形状や幾何学的特徴に依存しない。
【0218】
本発明における位置及び時間分解機器は、照射パルス放出に反応した照射粒子の到達時間をさらに測定する。このような時間分解を、図16〜25を用いて説明する。しかし、上記の実施形態の特徴は、以下の全ての実施形態でも使えることは注目すべき点である。よって、以下、あるアノードシステムについて説明するが、このアノードシステムは上記の実施形態の1つにもなりうる。特に、以下の図に示されていないが、以下の実施形態の全てにおいて、人工ニューラルネットワークは以上説明したように異なる上記アノードシステムに接続されて位置分解能を提供可能である。
【0219】
位置及び時間感応検出器は、単一の電子増倍装置と1つのアノードとを備える単一の電子増倍カスケードだけで構成される。時間信号を用いて、以下のように時間を測定することができる。
【0220】
図16は、発明の第1実施形態による時間感応検出器の概略図を示す。図17は、発明の第2実施形態における検出器を示す。図3と図4は、第1実施形態及び第2実施形態において採用されたパルス照射源を示す。図20は、実施形態で用いられる発明の時間測定手段140の概略図を示す。第1実施形態による時間分解測定機器は図21に示される。図22は、実施形態における位置測定で任意に用いられる電荷測定装置の概略図である。図23は、検出器素子の周りにあるシールドリング を示す。図24は、入射する電子ビームの位置測定に用いられる拡張4分割アノードを示す。図25は、発明の第2実施形態における時間分解測定機器のブロック図を示す。
【0221】
量子ビームのタイミング情報を取得するための好ましい時間分解測定機器は、測定される量子ビーム101を生成するためのパルス照射源114と、照射源114の励起と同期する基準タイミングパルスを生成するための基準信号発信器115とを備える。そのため、パルス照射源は機器への照射の放出に同期して基準電気パルス信号を生成する。機器はさらに光源から放出される照射や、サンプル(ここでは、サンプル124は、初期照射133を101に変換して機器に送る照射源)により再度放出される照射を、図1、図2に示されるように初期照射への反応として検出する時間感応検出器を備えている。検出器は検出と同期してタイミングパルスを生成し、アノード信号を生成するが、好ましくは入射照射の位置に依存することに限定されない。データプロセッサがさらに備えられており、基準タイミングパルスと検出器により生成された検出タイミングパルスとの時間差を保存する。データプロセッサは、好ましくは、測定された時間差の値とともに入射粒子の位置を保存する。
【0222】
検出器の第1実施形態は図16に示され、第2実施形態は図17に示される。図において、時間感応検出器は検出器に入射する量子ビーム101を伝達する検出器入力面137(つまり、ビーム101が進入する検出器の側面。図16では上側。)と、アノード102とを備える。図16における検出器入力面137とアノード102との間には、3つの離間して配置された電子増倍カスケード131が備えられており、それぞれの電子増倍カスケード131は単一の電子増倍装置104を備える。電子増倍カスケードの1つ(増倍カスケード131a)はタイミング測定のために用いられ、図16では中間にある電子増倍カスケード131aである。
【0223】
この電子増倍カスケードは、以下「第1電子増倍カスケード131a」と呼ばれる。また、「タイミング信号提供電子増倍カスケード」とも同義として呼ばれることもある。「第1」という番号は、他の電子増倍カスケード131や図16に矢印によって示される入射量子ビームの方向に対する電子増倍カスケード131aの位置を示すわけではない。実際に、図16において、第2電子増倍カスケード131bは第1電子増倍カスケード131aの上(つまり、第1電子増倍カスケード131aと検出器入力面137との間)に配置されている。また、第3電子増倍カスケード131cは第1電子増倍カスケード131aの下(つまり、第1電子増倍カスケード131aとアノード102との間)に配置されている。
【0224】
それぞれの電子増倍カスケード131は、2つ以上の電子増倍装置104を備えてもよく、この電子増倍装置104は積層体の中でお互いの上に直接配置される。発明における積層体は互いの上に直接積層される2つ以上の電子増倍装置を備えてもよいし、単一の電子増倍装置だけを備えてもよい。それぞれのカスケードは、隣接するカスケードに対して隙間で分離されている。すなわち、カスケードはお互いの上に直接配置された電子増倍装置を備えているものの、複数のカスケードは互いに離間されている。例えば、図17は、2つの電子増倍装置104を有する単一の電子増倍カスケード131aを備える検出器を示す。
【0225】
それぞれの電子増倍カスケード131とそれぞれの電子増倍装置104が入力面と出力面を有する。それぞれの電子増倍カスケード131は入力面に入射する量子ビームを増倍させるよう備えられている。この量子ビームは検出器に入射する量子ビーム101であってもよいし、前の電子増倍カスケード131からの出力であってもよい。図16では、検出器に入射する量子ビーム101が第2電子増倍カスケード131b(図16で一番上のカスケード)の入力面に入射する。第2電子増倍カスケード131bの出力ビームは第1電子増倍カスケード131aの入力面に入射する。第1電子増倍カスケード131aの出力面から放出されたビームは第3電子増倍カスケード131cの入力面に入射する。第3電子増倍カスケード131cの出力はアノード102に向けられる。図16のそれぞれの電子増倍カスケード131が単一の電子増倍装置104だけを備えているので、電子増倍カスケード131のそれぞれの入力面がそれに対応する電子増倍装置104の入力面となり、電子増倍カスケード131のそれぞれの出力面がそれに対応する電子増倍装置104の出力面となる。
【0226】
タイミングパルスを提供するために、検出タイミングパルスの測定手段140が備えられており、これは第1電子増倍カスケード131aの少なくとも1つの電子増倍装置104のうちの1つの入力面107に接続されている。第1電子増倍カスケード131aの少なくとも1つの電子増倍装置104のうちの1つの出力面108は接地電位に接続されており、前記出力面108が検出タイミングパルスの測定手段140に接続された前記入力面107とアノード102との間に配置される。すなわち、接地した出力面108は、タイミング測定のために用いられる入力面107とアノード102との入射ビームの方向に対して後方に配置される。図16では、それぞれの電子増倍カスケード131が単一の電子増倍装置104のみからなるため、第1電子増倍カスケード131a(図16では、中間に位置するもの)のその単一の電子増倍装置104の入力面107は、タイミング信号を出力するために使われて、その電子増倍装置104の出力面108は接地されている。
【0227】
すなわち、図16に示される入射粒子101の方向に、検出器は入力面137と第2増倍カスケード131bを備え、さらに、離間して第1電子増倍カスケード131aと第3電子増倍カスケード131cがその後に続く。アノード102は第3電子増倍カスケード131cの出力面に面するように最後に備えられる。
【0228】
タイミング測定に用いられる入力面107は限流抵抗器132を介して高電圧源に接続されている。減結合コンデンサ103は検出器の高電圧部分を関連する低電圧時間測定電子回路から減結合するために用いられる。コンデンサ103の1つの電極は、タイミング測定に用いられる増倍カスケード131aの前記入力面107と限流抵抗器132との間のある点に接続されている。減結合コンデンサ103の第2の電極は、図18に示されるようにライン109に接続されており、ライン109は自身につなげられた時間間隔測定装置にタイミング信号を送る。タイミング測定に用いられる増倍装置104の出力面108は1つ以上の高周波コンデンサ106を介して接地されている。
【0229】
高電圧供給器は、量子ビームが自身の軌道に沿って加速されるように、量子ビームの軌道に沿って電位勾配を形成するように備えられている。つまり電位勾配が検出器入力面137とアノード102との間に形成される。図16では、高電圧供給器がそれぞれの電子増倍カスケード131の入力面と出力面とに、異なる電圧を与える。高電圧UIがタイミング測定に用いられる増倍装置104の入力面107に限流抵抗器132を介して印加される。電圧UOがタイミング測定に用いられるカスケード131aの出力面108に印加されて電圧差(例えばUI<UO)が形成される。カスケードを形成するMCPの数や種類で決まる電圧差は積層体増倍操作を可能にするために十分に高くする。電圧は、増倍カスケード131の全ての入力と全ての出力に印加され、最もマイナスである第1の点から始まり最もプラスであるアノードシステム102までの検出器全体を通じて電界の勾配を形成し、電子なだれを照射の方向に沿って伝搬させる。
【0230】
照射の方向に対する第1MCP104と相互に作用する入射粒子101は電子のなだれをもたらす。印加電界に従い、なだれは備えられた増倍カスケード131を通過して、より多くの電子を獲得する。生じた電気インパルスはそれぞれのMCP104に伝搬して、電源が電子の不足を補う。限流抵抗器132により形成された電流パルスはコンデンサ103を充電する。生じた信号109は図20に示されるように、検出タイミングパルスを計測する計時手段に送られる。電子なだれはアノード102に到達するまでさらに伝搬する。
【0231】
MCP104は広い範囲の照射の種類(高エネルギーのガンマ量子、電子、中性子、アルファ粒子、イオンなど)に対して感応することが従来技術から知られている。MCP104は低エネルギーの光子の直接の登録には使うことができない。よって、可視域の光を登録するために光電カソード125を追加して、可視光の量子を光電子に変換するために用いられてもよい。スペクトル感度は光電カソードの種類によって決まる。バイアルカリ光電カソードは400〜500nmの範囲で量子効率が高いいう特徴を持つ。マルチアルカリはスペクトルの赤色範囲(850nmまで)で感応性がある。AsGa光電カソードの大きなファミリーは、処理のタイプによるが、紫外線から赤外線までの波長の広い範囲を取り扱う。MCP104は直接この光電子を増幅してなだれを生じさせる。
【0232】
接地コンデンサ106の役割は、増倍カスケードの出力面108を等電位にして、生じたタイミングパルスの形状や振幅が、増増が起きたMCP上の位置に依存することを排除することである。分散した一連の抵抗器とコンデンサは、MCP104をモデル化する。入射粒子によって誘発される電子なだれは、コンデンサのうちの1つの突破口となる。MCPの表面に沿った電子なだれが生じた点の点から電磁波が広がる。電磁波はプレートの縁部と相互に作用しつつ、反射して、MCP表面の導電性層の周縁の部分から離れるようにして引き返す。出力面での電磁波の振幅は、なだれが形成される方向のために入力面での振幅よりも高い。
【0233】
よって、繰り返し反射を避けるために電磁波がMCPの出力面を離れることができる自由度を与える必要がある。本発明ではそのために1以上のコンデンサ106のセットを用いている。コンデンサ106が保持する電荷は電磁波を補償するための電荷の源となる。よって、電磁波は反射されないが、さらなる反射の形成は縁部で終わる。すなわちコンデンサ106はパルス信号に対してゼロ抵抗であり、コンデンサ106が電源設計においてノイズをフィルタリングするフィルター用コンデンサとして作用するのと同様の方法で信号を補償してなめらかにする。
【0234】
しかし、増倍カスケードの出力面108は直接接地させることもでき、接地コンデンサ106を必要としないこともできる。この場合、電圧UIは接地レベルに対して負の値となり、この点の後に印加される全ての電圧は正の値となる。
【0235】
接地は、MCP104から提供される信号の極めて速い性質のため、高い導電性の特徴をもつ。従来技術から知られているように、電流は表皮効果のために主に導体の表面を流れる。よって、銀や金のような高導電金属で接地電極を覆うこともある。電気的にみれば、接地電極を、入ってくる電気パルスの影響を受けずに電位をいつまでも一定に保つことができる無限の容量として扱うこともできる。大きなメリットとして、そのような構造は、電子なだれを放出することで誘発される高周波の電磁波の反射を減衰させることができる。さらに、米国特許公開公報第2007/0263223A1に記載のとおり、MCPの出力面から取得したタイミングパルスは正と負の極性の成分を有する。この手法とは対照的に、本発明は正の信号のみをもたらすため、超短パルス用のゼロ交差法を使わなくてもよい。よって、積算された信号は、なだれの振幅に関する完全な情報、つまりチャネルから放出された電子の数、を有している。
【0236】
対照的に、2極性の信号を積算しても、なだれの振幅に比例した信号をもたらさない。単一粒子計数モードでは、粒子は順番に登録される。よって、積算計測法とは対照的に、タイミングに加えて、検出器によって登録されたすべての単一の粒子の場所も測定することが可能である。これにより、入射粒子ビームの強度は十分に低くなり、主に単一の粒子イベントを生じさせる程度である。表面を等電位にすることの別の観点は、タイミング信号を取得する表面107をなだれが増幅カスケードをさらに伝搬する間に起こる処理の影響から保護することである。よって、取得された時間信号が、増幅カスケード131内でのなだれの形成の間、又はなだれとアノードとが相互に作用する間にあらわれる電気ノイズで汚されることはない。増幅カスケード131は照射の方向に対してさらに下流側に位置している。
【0237】
図17は発明の検出器の第2実施形態を示す。単一の電子増倍カスケード131aだけが備えられ、単一の電子増倍カスケード131aは積層されて配置される2つの電子増倍装置104からなる。つまり2つの電子増倍装置104は、直接お互いの上に積層される。図17において一番上の電子増倍装置104(つまり、量子ビーム101が入射する電子増倍装置104)の入力面107は、タイミング測定のために使われる。入力面107は図16のとおり、コンデンサ103とライン109を介して時間測定手段に接続される。第1電子増倍カスケード131aの第2電子増倍装置131の出力面108は、第1実施形態に記載のとおり、コンデンサ106を介して接地される。−Uから+Uの電圧の電位勾配は前記入力面107と前記出力面108との間で形成される。アノード102は電子増倍カスケード131aの出力面108に面して備えられる。さらに、必須ではないが、周囲シールドリング119が電子増倍カスケードを囲むように備えられてもよい。周囲シールドリング119は後ほど説明する。リング119は、図17に示されるように接地される。
【0238】
図18に示されるように、第1実施形態のパルス照射装置は、短パルスの照射133を発する照射源114と、照射源114の照射と同期して電気パルス129を発信する基準信号発信器115と、初期照射を別の形態の照射101に変換して再度発信するサンプル124とを備える。照射源114は短パルスの照射を発する。基準信号発信器115の電気パルスは照射をドライブできる。又は、図19の第2実施形態に示されたとおり、照射ビーム133の一部が基準信号を生成するのに用いられる。ここで、照射133はサンプル124と相互に作用する。サンプルは初期照射粒子133を検出器に送られる粒子101へと変換する変換器として作動する。サンプル124は初期照射133を検出器へ送られるビーム101とする移送体として作動する。もちろん、サンプル124は必須ではなく、量子ビームは直接検出器に送られてもよい。
【0239】
例えば、ドナー及び/又はアクセプタの蛍光寿命を分析することでフェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)を決めるために、時間相関単一光子計数(TCSPC)手法や、時間と空間相関単一光子計数(TSCSPC)手法がある。このTCSPC手法やTSCSPC手法では、パルス照射源114は粒子や光子のビームを発し、この粒子や光子はビーム101を再度発信するサンプル124に送られるか、パルスの状態で直接検出器に送られる。粒子加速器はこのような発信源の実行可能な実現手段の1つである。粒子のビームを発することで、トリガー基準信号129が基準信号発信器115により生成されて、加速器からの粒子ビームの放出が始動される。パルスダイオードレーザは照射源114の別の例であり、外部の基準信号源により始動されうるか、それを内部で生成する。従来技術から知られるように、モード同期パルスレーザを採用するために、合計のビーム強度のわずかな部分を使い、光ダイオード115(基準信号発信器として作動)に基準信号129(図19)を生成させる必要がある。
【0240】
図20に示されるように、検出タイミングパルスの測定手段140は2つの電気入力109、129を備え、高周波信号増幅器126と、弁別器110、遅延線113と、間隔測定装置とを備えている。間隔測定装置は時間/振幅変換器(TAC)111と、アナログ/デジタル変換器112とを備えてもよく、又は、時間間隔を直接デジタルコードに変換する特徴をもつ直接コーディング装置(direct coding device)を有する時間間隔測定装置によって実現されてもよい。
【0241】
検出器(すなわち、図1と2におけるタイミング測定に用いられる入力面107)からのタイミング信号は、ライン109上の高周波増幅器126に送られる。増幅された信号は弁別器110を通過し、信号の増幅が十分に高い場合には、基準となる振幅と継続時間とのパルスが生成される。弁別器は簡易な一定閾値弁別器(simple constant threshold discriminator)又は定フラクション弁別器(constant franction discriminator: CFD)であってもよく、MCPベースの増倍カスケードの振幅分解により誘発される時間変動を補償する。弁別器の出力では、2つの信号が生成される。第1の信号は、位置感応アノード読取りシステムの始動に使われる信号116(図22に示されるように)や適用分野によっては他の装置の始動のために使われる信号116である。図1〜15を用いてすでに説明したとおり、位置感応型アノード読取りシステムが人工ニューラルネットワークに接続される。
【0242】
第2の信号はTAC111の「スタート」入力に送られる。基準信号発信器115により生成された基準信号129は遅延線113に送られる。遅延の長さは、間隔測定装置の時間間隔の長さを含むように設定される。もしなだれの振幅が所定閾値よりも高い場合には、信号は弁別器110を通過する。対照的に、基準信号発信器115により生成された基準信号129が通常は周期的であり、それぞれの生成された照射パルスへの「ストップ」入力に送られる。TAC111の出力はアナログ/デジタル変換器(ADC)112に送られて、アナログ/デジタル変換器(ADC)112は信号をデジタル化し、生成したデジタル信号を分析と保存のために取得機器に送る。TAC111は検出器時間パルスに同期しつつ、通常、時間ADC112を始動する。間隔測定装置は時間/コード直接変換の特徴を有しており、取得機器によって分析され保存されるデジタル情報を提供するアナログ/デジタル変換器112の必要性をなくす。
【0243】
高周波パルス増幅器126は必須ではない構成であり、タイミング信号を取得する増倍カスケード131aにより生成された信号の振幅により必要性が決まる。なだれ1つあたり109個の電子よりも大きな増幅率の場合、増幅器126は必要がなくなり、直接弁別器110に送ることもできる。一方で、MCP積層体131が低増幅の場合、増幅器126の増幅係数を高くする必要がある。実際には、ノイズ/信号比率は時間測定パイプラインの設計時に考慮しなければならない。よって、MCP104と電気増幅との最適な組み合わせを見つけることで、信号振幅へのノイズを最小化させることができる。
【0244】
実際に、1つのMCP104の単一の増倍カスケード131を時間測定に使うことができる。しかし、弁別器110の閾値は、MCP104自身から突然発っせられる電子に関連するMCPノイズ信号を避けるため、十分に大きく設定される。例えば、直線状のチャネルMCP104に比べて、湾曲したマイクロチャネルプレート104は非常に高い増幅を持つと知られている。よって、プレート104の積層体を組立てずにそのような湾曲した増倍装置104を採用することも可能である。
【0245】
MCP104は理想的な電流源ではなく、増幅器126は入力周波数の範囲全体においては一定の入力抵抗にならない。よって、ライン上でMCP入力面107から増幅器129の入力に送られた信号109はゆがみを持つことになる。ゆがみは、MCP上の信号源の点と増幅器の入力との間でおこる信号の数多くの反射の結果である。この問題を解くためのいくつかの解決策がある。タイミング信号の最大振幅を達成して反射を取り除くために、増幅器129の入力を、タイミング測定に用いられるMCPの入力面107からの出力と直接接続してもよく、このことでライン109をできるだけ短くできる。
【0246】
ここで説明される他の解決策は、図17に示されるようにライン109に接続された補償抵抗器123を制御することである。MCPの無限抵抗のモデルケースの場合、抵抗器123の値は増幅器129の入力抵抗に等しく、ライン109のケーブル内での反射を取り除くことができる。非理想状態では、生成される信号が反射成分により汚されないように抵抗器123の値を選ぶことで、MCPの無限ではない抵抗と増幅器129の入力抵抗の非線形性とを補償する必要がある。
【0247】
入射量子ビームに一番近い前側電子増倍カスケード131bの場合、図21に示されるように単一MCPプレートのみが備えらており、よって検出タイミングパルスの測定手段140に必要な振幅を提供できないかもしれない。よって、好ましくは、タイミング信号は1つ以上のMCP104を有する電子増倍カスケード131aからわざわざ取得する。単一の直線状のチャネルMCP104の入力面107上のたった1つの入射粒子による信号は、単一のチャネル内で103〜104個の電子のなだれとなるかもしれず、よってタイミングの測定には弱すぎるかもしれない。この場合、106〜107個の電子の範囲内でなだれ振幅が変化するタイミング信号源として、追加増倍カスケード131aを用いることが好ましい。この追加された電子増倍カスケード131aは、入ってくる量子ビーム101の入射の方向に対して前側電子増倍カスケード131bの後方に設置された電子増倍カスケード131である。
【0248】
従来技術に記載されるように、MCPの出力面から取得したタイミング信号は、アノードシステム102の電位の影響を被る。確かに、出力MCP表面108と1以上の電極105を有するアノードシステム102との間の電位変化は、なだれの別の形状をもたらし、結果として、MCPの出力面108から取得するタイミング信号の形状に影響をもたらす。よって、出力面108を接地することは、入力面107をMCPの外でおこる処理から減結合することになる。
【0249】
さらに、増倍カスケード131aの出力面108を接地することで、アノードシステム102とMCP出力面108間の電圧の影響を取り除くことができる。その結果、時間分解測定はより確実で安定する。
【0250】
それに加えて、タイミング信号の積分結果がなだれの振幅に比例する。この事実により、定フラクション弁別器とは対照的に、ソフトウェアによる振幅変動を補償することができる。
【0251】
従来技術で知られるようなMCPの出力面108からタイミング信号を取得する方法とは対照的に、すべての測定は正のみの信号となる。信号は符号を変えることなく、パルス後振動(post-pulse oscilations)もないため、より正確で精密な時間信号測定となる。
【0252】
発明の時間分解測定機器の第1実施形態を、関連する図21を参照して説明する。この機器はパルスレーザ光源と、電荷分割位置感応アノード102を検出器として有する真空密閉の光電子増倍管と、アノードシステムの電極の電荷振幅を測定する手段とを備えている。しかし、一般的に、量子ビームのタイミング情報を取得するための時間分解測定機器は、量子ビームを生成するためのパルス照射源114と、前記照射源114の励起に同期して基準タイミングパルスを生成するための基準信号発信器115と、上述の検出器と、基準タイミングパルスと前記検出器で生成された検出タイミングパルスとの時間差を保存するためのデータプロセッサを備える。第1実施形態の機器は、2つの増幅カスケード131(それぞれが単一のマイクロチャネルプレート104で実現されている)を備える。
【0253】
図21の光電子増倍管は真空密閉の装置であり、真空密閉の装置は照射の方向に対して装置の前方に配置された光電カソード層125を有する入光窓を備えている。ガラス製の円柱状の真空部が、それぞれが1つのMCP104を有する2つの増倍カスケード131を収容している。一番上のMCP104と電子増倍カスケード131bはその入力面を介して光電カソード125に面しており、その出力面を介して第1電子増倍カスケード131aの次のMCP104の入力面に面している。離間した電子増倍カスケード131の間の空間は数ミリメートルの範囲であり、ここではその空間は4ミリメートルに等しい。タイミング測定に用いられる別のMCP104(つまり、第1電子増倍カスケード131a)はその入力面107を介して一番上のMCP104の出力面に面しており、出力面は位置感応アノード102又はアノードシステムに面している。
【0254】
高電圧電力が1つの負出力を有する外部電源により供給される。分圧器は検出器の以下の5つの点において個別の電圧値を提供するために用いられる。その5点とは、光電カソード125と、一番上の電子増倍カスケード131b(又は、一番上のMCP104)の入力面と、前記一番上のMCP104の出力面と、電子タイミング測定に用いられる第1増倍カスケード131aの別のMCP104の入力面と、前記別のMCP104の出力面とである。アノード電位は接地される。よって、一連の5つの分割抵抗器134を有する分圧器が用いられる。電流は一連の全ての抵抗器134の合計で決定される。電子増倍カスケード131の最後の表面以外の表面それぞれが検出器ハウジングの壁を通り抜ける1つの出力を有している。これらの出力は、検出器素子間の電圧勾配を形成する高電圧分割器の点と接続されておいる。最も低い電位である−3000ボルトは直接、光電カソード125の真空出力に接続される。
【0255】
パルスモードでの検出器の安定した操作を提供し、電源のノイズをフィルタリングするために、分割器の全ての点は支持用フィルター用コンデンサ(supporting filtering capacitor)128を備える。コンデンサ128は電圧のフィルタリングの目的で使われるための電荷を保持しており、安定した電圧を提供して高電圧HV電源のノイズを平準化させる。タイミング信号の取得点は第1電子増幅カスケード131a(図21で入射量子ビーム101の方向に対して2番目のカスケード131として配置される)の入力面107である。そして、限流抵抗器132は、分圧器からMCP104の入力面107へと接続される。減結合コンデンサ103は、限流抵抗器132とMCP104の入力面107との間に接続される。ケーブル109における検出タイミングパルスの測定手段140への反射を補償するため、チューニング用の抵抗器123が使われる。抵抗器123はタイミング信号取得点と増幅器126との間の点に接続されて接地されている。
【0256】
アノードシステム102は電気的に絶縁された5つの電極105を図24に示されるように備えた位置感応アノード102である。より具体的には、アノード102は、平面の同一の大きさの4つの4分割電極105と第5の円柱状のアノード105を備える。円柱状の電極105の高さはおおよそ検出器の半径に等しい。すべての電極105はそれぞれに個別の真空出力117を有しており、真空出力117は検出器ハウジングの壁を貫通している。
【0257】
照射の方向に最後のMCPを離れる電子なだれは106〜107個の電子を有している。最初、検出器の最後のMCP(量子ビーム101の初期入射の方向に対して最後)の出力面の近くの電子雲は、100〜1000ミクロンの直径を有しており、この直径は第1MCPで光電子により誘発されたなだれで覆われたアクティブなチャネルの数により決まる。印加電界に従って移動して、なだれはアノード102の4分割体にまで移動する。同時に、電子により誘発される内部の電気力がなだれを内部からあらゆる方向に爆発させる。そのため、平面の4分割体上のなだれフットプリントが、最後のMCPの出力面108と接地電位を有するアノード102との間に印加された電圧の変化により規制される。フットプリントの有効直径は、視野全体への位置感度を達成するために4分割電極のサイズと同等に調整される。周囲の第5の電極はなだれの核から離れて移動する電荷を集めて、4分割体の外縁部のなだれ電荷の損失を補償し、位置計算に追加の情報を提供する。
【0258】
図22に示されるように、アノードシステムの出力117は5つの独立した電荷測定チャネルに送られる。全てのチャネルが電荷感応増幅器(CSA)118と、シェイピング及びフィルタリング電子回路(shaping and filtering electronics)122と、異なる論理入力を介して同期する特徴を有したADC120とを備える。陽電極105からの信号117はCSA118の入力に送られて、電荷(電流)信号から電圧パルスへと変換される。CSA118のループバック静電容量は積分時間と増幅器の増幅率とを決定する。静電容量が高いと、精密な電荷判定をよりもたらすことができ、その結果として、位置の定義がより高い精度になる。信号のフィルタリングとシェイピングはADC120に受け取られ、また正しくデジタル化される必要がある。出力デジタル信号130は取得電子回路に送られて、前述のとおり人工ニューラルネットワークに送られる。
【0259】
なだれの電子は電極105同士で分けられて、CSA118に電流パルスを誘発する。増幅器118は電流パルスを統合して電圧信号に変換する。電極105から取得した生信号117は指数関数の形を有している。指数の減衰時間や増幅率は、CSA118内のループバックコンデンサの値によって決まる。典型的なアノードからの放出の減衰時間は100〜1000nsの範囲で変化する。増幅の後、信号はフィルタリグ装置122に送られ、デジタル化に使えるような階段状の信号が形成される。同期信号116がADC120を始動するために使われる。この信号は電荷測定チャネルの間で分配され、電荷振幅を表すコードの同時生成を保証する。出力デジタル信号103が座標計算手段に送られる。
【0260】
(入力面107からの)タイミング信号の取得に使われる前記第1電子増倍装置の出力面108は、約90°の角度で縁の部分に配置される真空部からの4つの電気出力を有している(図23)。タイミング測定に用いられる電子増倍装置の出力面108は、それぞれの出力上の4つの高周波コンデンサ106を介して、接地される周囲リング119に接続されている。周囲リングは接地電極として用いられ、多くのメリットをもらすことができる。(i)検出器が円柱状の構造のため、電気素子をできる限り検出器の近くに組み付けるのに便利な方法を提供することができ、検出器の寸法を最小にしている。(ii)このリングが検出器アセンブリを外部電磁波から保護しており、その結果、タイミング信号のノイズ成分を最小にしている。
【0261】
光電カソード125への電圧が内部出力フィルタリングを持たないHV電源からフィルタリングなしで直接供給される状態で、フィルター用コンデンサ128を有する分圧器の第1の点が第1MCP104の前面に接続されていることは注目に値する。同期パルス116を計数する原理に基づいた保護デバイスが作られる。特定の既定の時間間隔でのカウント数がユーザーに設定された限界値を超えた場合、HV供給装置の停止が起こる。測定されたサンプル上での光の分布に応じて、光電カソード125の局所的な露出過多とMCP104の局所的な過熱点とを避けるために限界値を変更することができる。実際には、プレートの種類と品質とによって決まるMCP104の均一な照度の推奨最大値は1秒当たり100000〜10000000回のイベントの範囲で変化する。よって、検出器感応部分の一律の照度となるような均一なサンプルのために、1ミリ秒当たり100〜10000の範囲で多数の最大カウント数を設定することができる。
【0262】
高い強度で小さな空間エリアに位置するサンプルには、局所的な過熱や露出過多の危険性を避けるために後の値は低減させることもでき、また積分間隔を延ばすこともできる。すべてのコンデンサ128を分圧器によって低圧放電するような電圧が指数関数的に減衰する状態では、光電カソード125が分圧器に接続される地点にフィルター用コンデンサを置くと、HV電源を停止することが無駄になってしまう。HV分圧器は電流を決定づける一連の高抵抗素子である。単一の抵抗器の典型的な値は数十メガオームである。ファラドのコンデンサを組み合わせると、高輝度の露光において光電カソードに決定的となる10ミリ秒の放電時間となる。以上説明したように、図21に示されるHV供給スキームの構造においては、保護カウンターが過負荷の信号を出してから数マイクロ秒以内でHV供給装置が完全に切断される。よって、内部フィルタリングを備えない高電圧電源が用いられる。
【0263】
この実施形態(図19に示されるように)では、モード同期レーザが照射源114として用いられる。発せられた光のわずかな部分がビーム分割器127で取得されて基準信号129を生成する光ダイオード115に送られる。光ビームは蛍光サンプル124へと送られるか、又は光を検出器へ誘導する光学系へと送られる。蛍光サンプルがある場合、再度発せられた光101は励起光をフィルタリングする手段によって検出器へと送られる。モード同期レーザは数メガヘルツの周波数で運転し、光のわずかな部分をパルス形式で発信する。レーザの周波数又は反復率はモード同期方法によって決まり、1ヘルツ未満から数百メガヘルツまでの広い範囲で変わりうる。現在商業的に入手可能なレーザシステムのパルス幅はフェムト秒からナノ秒の範囲で変化する。
【0264】
本実施形態では、7psのパルス幅で8MHzで運転するレーザが使われている。レーザの装置一式は、装置一式の幾何学的な設定を精密に制御できる光学的なテーブルに設置される。150ミクロンの厚さのガラスのプレートが、光ダイオードへのレーザ照射のわずかな部分(おおよそ4%)を反射するために用いられている。ダイオードの出力は増幅器や定フラクション弁別器へ送られて、信頼性が高く安定した基準信号113を形成している。光学的な構成要素(例えば、鏡、ニュートロデンシティフィルター(neutrodensity filter)、偏光フィルター、レンズ、ダイクロイックミラー、ノッチフィルター、対物レンズ)を用いてレーザ出力光の残りは、サンプルに送られる。サンプル124は再度光を発して、生成された照射が検出器に送られる。検出器の応答関数を計測するために(つまり、最も速い検出器の応答を達成するために)、ミラーが使われて光を光電カソードに誘導したり、又はサンプルが超高速の蛍光再発信時間を特徴とする蛍光体により交換される。
【0265】
光源から発せられた入射光子101又はサンプルから再発信された入射光子101が初期光電子を光電カソード125の表面からたたき出す。光電子はHV分圧器で駆動された印加電界に従って移動し、加速されてMCPにより増幅される。この結果生じた103〜104個の電子を有する初期なだれは次のMCPの入力面107に送られる。前側MCPの出力面と次のMCPの入力面107との間の隙間の電圧は、次のMCPの入力面上の約100のチャネルをおおよそ覆うように制御される。高い電圧をこの隙間に印加すると小さななだれフットプリントがもたらされて、小さな増倍率となる。一方で、低い電圧の場合、タイミング測定に用いられる次のMCPの入力面107上で初期なだれが広がり、増幅が高くなる。最適な検出器操作として、タイミング測定に用いられる次のMCPの約100チャネルが覆われる程度に電圧を設定することが現実的であろう。結果として、積層体全体の合計での増幅率は106〜107の電子の範囲となる。
【0266】
タイミング取得に用いられる次のMCP104のチャネルで段階的に増加されたなだれは、本発明の方法で取得される電流のタイミングインパルスとなる。電磁波は初期なだれフットプリントのエリア付近に広がり、MCPの縁部にまで伝搬する。MCPの中心からタイミング信号の読取りポイントまでの典型的な電磁波の移動時間は、100〜200psの範囲である。なだれによる乱れが信号の取得ポイントに届いた時に、2つの並行した処理が始まる。第1の処理は、タイミング信号で生成された減結合コンデンサ103の放電である。第2の処理は、なだれがなくなったエリアでの電子の損失を補償するための周囲コンデンサ106の放電である。数ピコ秒の誤差で同時に始まるこれら2つの処理により、タイミングパルスの負の成分が補償される。
【0267】
生成されたなだれが4つの平たい電極105と1つの円柱状の電極105とを有する位置感応アノード102に到着する(図9)。各電極105は同期信号116(図20参照)により駆動される独立処理パイプライン(図22)に接続される。電荷測定の結果は取得装置に送られて処理される。測定された電荷は、入射粒子の位置の計算に使われる。時間間隔を示すデジタル化された値は全てのイベントについて保存される。結果として、入射光子に関する以下のような完全な情報(アノードによって提供される位置、TACの手段により測定された時間、取得装置によりタイマーを用いて取得した全ての光子の絶対到達時間)を取得できる。
【0268】
初期の量子ビームに一番近いMCP104によって提供されるなだれの限定された振幅により、本実施形態では、第2MCP104はタイミング信号の発信源として使われる。光電カソード125の表面からたたき出された光電子は印加電界に従って移動し増倍カスケードの入力面に移動する。光電子の飛行時間は多くの要因(光電カソード125内の初期電子の電子レベル、放出の角度、光電カソード125と一番上のMCP104の入力面との間の電圧)によって決まる。また、MCP104内でのなだれ形成に要する時間も、測定されたタイミング信号の時間変動をもたらす要因となる。よって、電子なだれの移動時間をよりちいさな時間変動(time jitter)とするためには、照射の方向に対して一番上の増倍カスケード131から信号を取得するのが好ましい。本実施形態では、一番上の増倍カスケードが単一の直線状のMCP104しか備えていないため、十分なタイミング信号を提供するために、信号を第2カスケード131aから取得する。
【0269】
本発明の側面の1つは、なだれの振幅からもたらされる時間信号の振幅になめらかに依存することである。空間感応アノード102は、なだれ電荷の取得原理に依存する。よって、時間変動補正を処理装置に任せて電子モジュールを簡素化することで、CFDの代わりに速くて簡易な弁別器110を時間処理パイプライン(図20)において採用することが可能になる。
【0270】
レイトソフトウェア補正(late software correction)の別の観点は、ハードウェアCFD方法と比べ、より平準化されるこである。実際に、コンピュータを用いた補正は、時間の値を特定の距離(TR=T0-F(A)として表される)への変換に依存している。ここでTRは時間の補正された値、T0は閾値の変動でゆがめられ、かつTACにより測定された生値、Aは電荷の全ての測定値の合計、F(A)は補正関数である。実験では、関数F(A)は、振幅の負の指数の合計良好に用いられ、又は人工ニューラルネットワークによってより良好に用いられる。
【0271】
他の適用できる補正は、MCP表面におけるなだれが生じるエリアから信号の取得ポイントへの信号の移動時間でもたらされる時間変動を補正することを目的とすることもできる。
【0272】
図25に示される第2実施形態は本発明の別の観点を示している。図17の第1実施形態との一番の違いは、信号が照射の方向に対して前側の増倍カスケード131aから取得されることである。ここで、前側の増倍カスケード131aは、図21の実施形態と対照的に、2つの電子増倍装置104を有する。よって、ここで、タイミング測定に用いられる増倍カスケードは前側の増倍カスケード131aである。さらに、位置感応読取りは減結合層を用いて真空部の外部で実施される。誘発された電荷は検出器の外側面で測定される。しかしながら、この減結合層や外部への接続は任意で採択ができ、これに限るものではない。
【0273】
第2実施形態は、真空密閉のMCPベースの光検出器を採用し、この光検出器は、光電カソード125と、第1MCP104のチャネルの角度が第2MCP104のチャネルの角度とは逆であるような2つのMCP104が積層されて構成されたMCPシェブロン131と、好ましくはゲルマニウムもしくはサファイアでできた高抵抗性の減結合層136と、外部マルチ電極105アノード102とを備える。ゲルマニウム層136は、抵抗層を有する金属製のフランジ121の上に設置されている。増倍カスケード131の出力面108は高周波コンデンサ106によって周囲の高導電性リング119に接続される。この実施形態では、第1実施形態における4つの点とは対照的に、用いられている出力面108を接地するために出力のみを用いることができる。
【0274】
タイミング信号を取得する点は、検出器にある増倍カスケード131aの入力面107だけである。マルチ電極アノードシステム102は真空部の外のゲルマニウム層136の外側面に設置される。電荷は真空状態にある電極105では直接測定されず、絶縁体136の誘発された電荷が登録される。誘発された電荷は、高抵抗層に到着したなだれの電荷と層136の物質との相互作用でもたらされる。層136の設計は以下の2つの要求事項に従う。(i)層136は、なだれフットプリントの局所的なエリア内のなだれの電荷を保つために高抵抗を有する必要がある。(ii)一方で、抵抗は有限であり、電荷を縁部まで伝搬させるフランジ121から放出させることができる。
【0275】
光源から発せられる入射光子101、又はサンプルから再度発せられる入射光子101は初期光電子を光電カソード125の表面からたたき出す。HV分圧器で駆動される印加電界に従い、光電子は加速されてMCP104の積層体アセンブリによって増幅される。106〜107個の電子を有するなだれが生じて、抵抗層136に到着する。なだれにもたらされる電荷の電界は、抵抗層136の外側面に電荷を誘発し、電極105の集合によって測定される。生成される電荷信号107は電荷測定手段(図22)に送られる。電流パルスは減結合コンデンサ103を介して入力面107から取り出される。生成されたタイミング信号109は、上記のとおり時間測定手段(図18)に送られる。
【0276】
本発明は実施形態と例に基づいて上記のように詳述された。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されることは全く意図していないことは注目すべき点である。本発明は発明の主旨を逸脱せずに様々な形態に変形することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置分解測定機器への量子ビームの照射位置を示す位置情報を取得するための位置分解測定機器であって、
位置感知検出器(1)と、
照射源(6)と、
前記照射源(6)による照射によって発生した前記検出器(1)の応答を測定する手段と、
人工ニューラルネットワーク構造(7)を備え、
前記人工ニューラルネットワーク構造(7)は、測定された前記検出器の前記応答が前記人工ニューラルネットワーク構造(7)への入力であり、かつ照射の初期空間座標が前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の出力であるように設けられることを特徴とする位置分解測定機器。
【請求項2】
請求項1に記載の位置分解測定機器であって、前記照射源(6)は、電磁放射源又は粒子源である位置分解測定機器。
【請求項3】
請求項1に記載の位置分解測定機器であって、前記位置感知検出器(1)は、
増幅装置(4)と、
照射の方向に対して前記増幅装置(4)の後方に設置された位置感応アノード(2、102)を備える位置分解測定機器。
【請求項4】
請求項3に記載の位置分解測定機器であって、前記増幅装置(4)は、電子増倍装置(例えば、少なくとも1つのマイクロチャネルプレートMCP、又は少なくとも1つのマイクロスフェアプレート、又は少なくとも1つのマイクロガス増幅装置)を備える位置分解測定機器。
【請求項5】
請求項3に記載の位置分解測定機器であって、前記位置感応アノード(2)は、少なくとも2つの空間分割電極(5)を備える位置分解測定機器。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1つに記載の位置分解測定機器であって、前記位置感知検出器(1)は、時間ベース又は電荷ベースの検出器(1)である位置分解測定機器。
【請求項7】
請求項7に記載の位置分解測定機器であって、時間ベース位置感知検出器(1)は、遅延線検出器、又は遅延線関連の検出器であり、電荷ベース検出器は、密度勾配アノード検出器、又は抵抗性アノード検出器、又はマルチ電極アノード検出器である位置分解測定機器。
【請求項8】
請求項3に記載の位置分解測定機器であって、前記増幅装置(4)は、
検出器入力面(137)と前記アノード(102)との間に備えられた第1電子増倍カスケード(131a)として実現され、前記第1電子増倍カスケード(131a)は、積層して配置された少なくとも1つの電子増倍装置(104)を備え、前記第1電子増倍カスケード(131a)と前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)は、それぞれ入力面と出力面とを有しており、前記第1電子増倍カスケード(131a)は、それ自身の入力面に入射する量子ビームを増倍するように構成され、
さらに、前記検出器は、
前記検出器に入射する量子ビーム(101)を伝達する前記検出器入力面(137)と、
前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記入力面と前記出力面との間に電位勾配を与える高電圧供給器と、
前記検出器に入射する前記量子ビームの検出のタイミングを測定するために、検出タイミングパルスを測定する手段(140)とを備えており、
前記検出タイミングパルスを測定する手段(140)は、前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)のうちの1つの入力面(107)に接続されており、
前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)のうちの1つの出力面(108)は、接地電位に接続されており、前記出力面(108)は、前記検出タイミングパルスを測定する手段(140)に接続された前記入力面(107)と前記アノード(102)との間に配置される位置分解測定機器。
【請求項9】
請求項8に記載の位置分解測定機器であって、前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)は、マイクロチャネルプレート、又はマイクロスフェアプレートとして実現される位置分解測定機器。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の位置分解測定機器であって、前記検出タイミングパルスを測定する手段(140)に接続された前記入力面(107)と接地電位に接続された前記出力面(108)とは、前記第1電子増倍カスケード(131a)の単一の電子増倍装置(104)の入力面及び出力面として実現される位置分解測定機器。
【請求項11】
請求項8〜10の何れか1つに記載の位置分解測定機器であって、前記第1電子増倍カスケード(131a)は、積層して配置された少なくとも2つの電子増倍装置(104)を備え、前記検出タイミングパルスを測定する手段(140)に接続された前記入力面(107)と接地電位に接続された前記出力面(108)とは、前記第1電子増倍カスケード(131a)の別々の電子増倍装置(104)の入力面及び出力面として実現される位置分解測定機器。
【請求項12】
請求項8〜11の何れか1つに記載の位置分解測定機器であって、少なくとも1つの第2電子増倍カスケード(131b)は、前記検出器入力面(137)と前記第1電子増倍カスケード(131a)との間に配置され、及び/又は、少なくとも1つの第3電子増倍カスケード(131c)は、前記第1電子増倍カスケード(131a)と前記アノード(102)との間に配置される位置分解測定機器。
【請求項13】
請求項8〜12の何れか1つに記載の位置分解測定機器であって、前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)のうちの1つの前記出力面(108)は、高周波コンデンサ(106)を介して接地電位に接続される位置分解測定機器。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか1つに記載の位置分解測定機器であって、前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の入力ノード数は別々の空間分割陽電極(5)の数と等しく、出力ノード数は初期照射点の別々の空間座標の数と等しい位置分解測定機器。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか1つに記載の位置分解測定機器であって、前記人工ニューラルネットワーク構造(7)は、フィードフォワードニューラルネットワークとして実現され、前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の伝達関数F(pi,q)は、非線形ベクトル関数fの入れ子関数であり、piは、ニューラルネットワークパラメータベクトルであり、qは、k番目の検出器出力の測定された値に対する前記検出器の応答を要素として有するベクトルであり、F(pi,qk)=f1(p1、f2(...(fn−1(pn−1,(fn(pn,qk)))である位置分解測定機器。
【請求項16】
請求項1に記載の位置分解測定機器に入射する量子ビームの位置情報を取得するための方法であって、
既知の初期照射位置に基づく検出器の応答を前記人工ニューラルネットワーク構造(7)に入力として送り、前記人工ニューラルネットワーク構造(7)が照射の初期位置を前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の出力として所定の精度で推定できるまで前記人工ニューラルネットワーク(7)のパラメータを最適化することで、前記検出器(1)上の照射位置の空間座標を推定するように前記人工ニューラルネットワーク構造(7)をトレーニングし、
前記照射源(6)によって前記検出器(1)に対して照射し、
照射源(6)に照射された時の前記検出器(1)の応答を測定し、
測定された前記検出器の前記応答を、入力として、トレーニングされた前記人工ニューラルネットワーク構造(7)に入力し、
初期照射の空間座標の推定値に対応した前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の出力を計算することを備える方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記検出器(1)の初期照射の前記空間座標を推定するための前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の前記トレーニング工程は、
i) 既知の空間座標から前記検出器(1)に対して照射し、
ii) 生じた前記検出器の応答を測定し、
iii) 前記検出器の前記応答と照射の前記既知の空間座標とを保存し、
iv) 前記上記の工程i)〜iii)を別々の空間座標に対して繰り返し、照射空間をサンプリングし、
v) 測定された前記検出器の前記応答を入力として前記人工ニューラルネットワーク構造(7)に送り、
vi) 初期照射の前記空間座標に対応した前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の生じた出力を計算し、
vii) 前記既知の照射用初期空間座標と、空間座標を示す前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の現在の出力との差異の関数を計算し、
viii)前記差異の関数を最小化するために前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の前記パラメータを変更し、
ix) 前記計算した差異の関数が特定の閾値よりも低い場合には前記トレーニング処理を停止し、そうでなければ工程v)に戻る
工程を備える方法。
【請求項18】
請求項11又は12に記載の方法であって、前記位置感知検出器(1)が電荷ベースの検出器である場合、前記検出器の応答は測定された電荷に関連し、前記位置感知検出器(1)が時間ベースの検出器である場合、前記検出器の応答は測定された時間に関連し、前記位置感知検出器(1)が抵抗性アノード検出器である場合、前記検出器の応答は測定された電流に関連する方法。
【請求項19】
請求項11〜13の何れか1つに記載の方法であって、前記位置感知検出器(1)は、
増幅装置(4)と、
照射の方向に対して前記増幅装置(4)の後方に配置された位置感応アノードと、
を備える方法。
【請求項20】
請求項14に記載の方法であって、前記増幅装置(4)は、電子増倍装置(例えば、少なくとも1つのマイクロチャネルプレートMCP、又は少なくとも1つのマイクロスフェアプレート、又は少なくとも1つのマイクロガス増幅装置)である方法。
【請求項21】
請求項14に記載の方法であって、前記位置感応アノードは、少なくとも2つの空間分割電極(5)である方法。
【請求項22】
請求項16に記載の方法であって、前記検出器(1)の前記応答は、それぞれのアノード電極(5)に対する前記応答を要素として有するベクトルであり、アノード電極(5)への測定された前記応答を示すそれぞれのベクトル要素は、前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の別々の入力ノードへの入力である方法。
【請求項23】
前記請求項16〜22の何れか1つに記載の方法であって、前記検出器は、
前記検出器へ入射する量子ビーム(101)を伝達する検出器入力面(137)と、
アノード(102)と、
前記検出器入力面(137)と前記アノード(102)との間に配置されて、積層して配置される少なくとも1つの電子増倍装置(104)を備える第1電子増倍カスケード(131a)であり、前記第1電子増倍カスケード(131a)と前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)はそれぞれが入力面と出力面を備え、それ自身の入力面に入射する量子ビームを増倍するよう構成された第1電子増倍カスケード(131a)と、
前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記入力面と前記出力面との間の電位勾配を与える高電圧供給器と、
前記検出器に入射する前記量子ビームの検出のタイミング計測のための検出タイミングパルスを測定する手段(140)とを備え、
前記方法は、
前記検出タイミングパルスを測定する手段(140)を、前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)のうちの1つの入力面(107)に接続し、
前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)のうちの1つの出力面(108)を接地電位に接続し、前記出力面(108)を前記前記検出タイミングパルスを測定する手段(140)に接続された前記入力面(107)と前記アノード(102)との間に配置してタイミング信号を取得する工程をさらに有する方法。
【請求項1】
位置分解測定機器への量子ビームの照射位置を示す位置情報を取得するための位置分解測定機器であって、
位置感知検出器(1)と、
照射源(6)と、
前記照射源(6)による照射によって発生した前記検出器(1)の応答を測定する手段と、
人工ニューラルネットワーク構造(7)を備え、
前記人工ニューラルネットワーク構造(7)は、測定された前記検出器の前記応答が前記人工ニューラルネットワーク構造(7)への入力であり、かつ照射の初期空間座標が前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の出力であるように設けられることを特徴とする位置分解測定機器。
【請求項2】
請求項1に記載の位置分解測定機器であって、前記照射源(6)は、電磁放射源又は粒子源である位置分解測定機器。
【請求項3】
請求項1に記載の位置分解測定機器であって、前記位置感知検出器(1)は、
増幅装置(4)と、
照射の方向に対して前記増幅装置(4)の後方に設置された位置感応アノード(2、102)を備える位置分解測定機器。
【請求項4】
請求項3に記載の位置分解測定機器であって、前記増幅装置(4)は、電子増倍装置(例えば、少なくとも1つのマイクロチャネルプレートMCP、又は少なくとも1つのマイクロスフェアプレート、又は少なくとも1つのマイクロガス増幅装置)を備える位置分解測定機器。
【請求項5】
請求項3に記載の位置分解測定機器であって、前記位置感応アノード(2)は、少なくとも2つの空間分割電極(5)を備える位置分解測定機器。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1つに記載の位置分解測定機器であって、前記位置感知検出器(1)は、時間ベース又は電荷ベースの検出器(1)である位置分解測定機器。
【請求項7】
請求項7に記載の位置分解測定機器であって、時間ベース位置感知検出器(1)は、遅延線検出器、又は遅延線関連の検出器であり、電荷ベース検出器は、密度勾配アノード検出器、又は抵抗性アノード検出器、又はマルチ電極アノード検出器である位置分解測定機器。
【請求項8】
請求項3に記載の位置分解測定機器であって、前記増幅装置(4)は、
検出器入力面(137)と前記アノード(102)との間に備えられた第1電子増倍カスケード(131a)として実現され、前記第1電子増倍カスケード(131a)は、積層して配置された少なくとも1つの電子増倍装置(104)を備え、前記第1電子増倍カスケード(131a)と前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)は、それぞれ入力面と出力面とを有しており、前記第1電子増倍カスケード(131a)は、それ自身の入力面に入射する量子ビームを増倍するように構成され、
さらに、前記検出器は、
前記検出器に入射する量子ビーム(101)を伝達する前記検出器入力面(137)と、
前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記入力面と前記出力面との間に電位勾配を与える高電圧供給器と、
前記検出器に入射する前記量子ビームの検出のタイミングを測定するために、検出タイミングパルスを測定する手段(140)とを備えており、
前記検出タイミングパルスを測定する手段(140)は、前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)のうちの1つの入力面(107)に接続されており、
前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)のうちの1つの出力面(108)は、接地電位に接続されており、前記出力面(108)は、前記検出タイミングパルスを測定する手段(140)に接続された前記入力面(107)と前記アノード(102)との間に配置される位置分解測定機器。
【請求項9】
請求項8に記載の位置分解測定機器であって、前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)は、マイクロチャネルプレート、又はマイクロスフェアプレートとして実現される位置分解測定機器。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の位置分解測定機器であって、前記検出タイミングパルスを測定する手段(140)に接続された前記入力面(107)と接地電位に接続された前記出力面(108)とは、前記第1電子増倍カスケード(131a)の単一の電子増倍装置(104)の入力面及び出力面として実現される位置分解測定機器。
【請求項11】
請求項8〜10の何れか1つに記載の位置分解測定機器であって、前記第1電子増倍カスケード(131a)は、積層して配置された少なくとも2つの電子増倍装置(104)を備え、前記検出タイミングパルスを測定する手段(140)に接続された前記入力面(107)と接地電位に接続された前記出力面(108)とは、前記第1電子増倍カスケード(131a)の別々の電子増倍装置(104)の入力面及び出力面として実現される位置分解測定機器。
【請求項12】
請求項8〜11の何れか1つに記載の位置分解測定機器であって、少なくとも1つの第2電子増倍カスケード(131b)は、前記検出器入力面(137)と前記第1電子増倍カスケード(131a)との間に配置され、及び/又は、少なくとも1つの第3電子増倍カスケード(131c)は、前記第1電子増倍カスケード(131a)と前記アノード(102)との間に配置される位置分解測定機器。
【請求項13】
請求項8〜12の何れか1つに記載の位置分解測定機器であって、前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)のうちの1つの前記出力面(108)は、高周波コンデンサ(106)を介して接地電位に接続される位置分解測定機器。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか1つに記載の位置分解測定機器であって、前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の入力ノード数は別々の空間分割陽電極(5)の数と等しく、出力ノード数は初期照射点の別々の空間座標の数と等しい位置分解測定機器。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか1つに記載の位置分解測定機器であって、前記人工ニューラルネットワーク構造(7)は、フィードフォワードニューラルネットワークとして実現され、前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の伝達関数F(pi,q)は、非線形ベクトル関数fの入れ子関数であり、piは、ニューラルネットワークパラメータベクトルであり、qは、k番目の検出器出力の測定された値に対する前記検出器の応答を要素として有するベクトルであり、F(pi,qk)=f1(p1、f2(...(fn−1(pn−1,(fn(pn,qk)))である位置分解測定機器。
【請求項16】
請求項1に記載の位置分解測定機器に入射する量子ビームの位置情報を取得するための方法であって、
既知の初期照射位置に基づく検出器の応答を前記人工ニューラルネットワーク構造(7)に入力として送り、前記人工ニューラルネットワーク構造(7)が照射の初期位置を前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の出力として所定の精度で推定できるまで前記人工ニューラルネットワーク(7)のパラメータを最適化することで、前記検出器(1)上の照射位置の空間座標を推定するように前記人工ニューラルネットワーク構造(7)をトレーニングし、
前記照射源(6)によって前記検出器(1)に対して照射し、
照射源(6)に照射された時の前記検出器(1)の応答を測定し、
測定された前記検出器の前記応答を、入力として、トレーニングされた前記人工ニューラルネットワーク構造(7)に入力し、
初期照射の空間座標の推定値に対応した前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の出力を計算することを備える方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記検出器(1)の初期照射の前記空間座標を推定するための前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の前記トレーニング工程は、
i) 既知の空間座標から前記検出器(1)に対して照射し、
ii) 生じた前記検出器の応答を測定し、
iii) 前記検出器の前記応答と照射の前記既知の空間座標とを保存し、
iv) 前記上記の工程i)〜iii)を別々の空間座標に対して繰り返し、照射空間をサンプリングし、
v) 測定された前記検出器の前記応答を入力として前記人工ニューラルネットワーク構造(7)に送り、
vi) 初期照射の前記空間座標に対応した前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の生じた出力を計算し、
vii) 前記既知の照射用初期空間座標と、空間座標を示す前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の現在の出力との差異の関数を計算し、
viii)前記差異の関数を最小化するために前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の前記パラメータを変更し、
ix) 前記計算した差異の関数が特定の閾値よりも低い場合には前記トレーニング処理を停止し、そうでなければ工程v)に戻る
工程を備える方法。
【請求項18】
請求項11又は12に記載の方法であって、前記位置感知検出器(1)が電荷ベースの検出器である場合、前記検出器の応答は測定された電荷に関連し、前記位置感知検出器(1)が時間ベースの検出器である場合、前記検出器の応答は測定された時間に関連し、前記位置感知検出器(1)が抵抗性アノード検出器である場合、前記検出器の応答は測定された電流に関連する方法。
【請求項19】
請求項11〜13の何れか1つに記載の方法であって、前記位置感知検出器(1)は、
増幅装置(4)と、
照射の方向に対して前記増幅装置(4)の後方に配置された位置感応アノードと、
を備える方法。
【請求項20】
請求項14に記載の方法であって、前記増幅装置(4)は、電子増倍装置(例えば、少なくとも1つのマイクロチャネルプレートMCP、又は少なくとも1つのマイクロスフェアプレート、又は少なくとも1つのマイクロガス増幅装置)である方法。
【請求項21】
請求項14に記載の方法であって、前記位置感応アノードは、少なくとも2つの空間分割電極(5)である方法。
【請求項22】
請求項16に記載の方法であって、前記検出器(1)の前記応答は、それぞれのアノード電極(5)に対する前記応答を要素として有するベクトルであり、アノード電極(5)への測定された前記応答を示すそれぞれのベクトル要素は、前記人工ニューラルネットワーク構造(7)の別々の入力ノードへの入力である方法。
【請求項23】
前記請求項16〜22の何れか1つに記載の方法であって、前記検出器は、
前記検出器へ入射する量子ビーム(101)を伝達する検出器入力面(137)と、
アノード(102)と、
前記検出器入力面(137)と前記アノード(102)との間に配置されて、積層して配置される少なくとも1つの電子増倍装置(104)を備える第1電子増倍カスケード(131a)であり、前記第1電子増倍カスケード(131a)と前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)はそれぞれが入力面と出力面を備え、それ自身の入力面に入射する量子ビームを増倍するよう構成された第1電子増倍カスケード(131a)と、
前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記入力面と前記出力面との間の電位勾配を与える高電圧供給器と、
前記検出器に入射する前記量子ビームの検出のタイミング計測のための検出タイミングパルスを測定する手段(140)とを備え、
前記方法は、
前記検出タイミングパルスを測定する手段(140)を、前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)のうちの1つの入力面(107)に接続し、
前記第1電子増倍カスケード(131a)の前記少なくとも1つの電子増倍装置(104)のうちの1つの出力面(108)を接地電位に接続し、前記出力面(108)を前記前記検出タイミングパルスを測定する手段(140)に接続された前記入力面(107)と前記アノード(102)との間に配置してタイミング信号を取得する工程をさらに有する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12AB】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12AB】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2012−513020(P2012−513020A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541486(P2011−541486)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067564
【国際公開番号】WO2010/070113
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(511144480)ライプニツ‐インスティテュート フューア ノイロビオロギー (1)
【氏名又は名称原語表記】LEIBNIZ−INSTITUT FUR NEUROBIOLOGIE
【住所又は居所原語表記】Brenneckestr. 6, 39118 Magdeburg (DE)
【出願人】(511144505)オイロフォトン ゲーエムベーハー,ゲゼルシャフツ フューア オプティシェ ゼンゾーリッキ (1)
【氏名又は名称原語表記】EUROPHOTON GMBH, GESELLSCHAFT FUR OPTISCHE SENSORIK
【住所又は居所原語表記】Mozartstr. 27, 12247 Berlin (DE)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067564
【国際公開番号】WO2010/070113
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(511144480)ライプニツ‐インスティテュート フューア ノイロビオロギー (1)
【氏名又は名称原語表記】LEIBNIZ−INSTITUT FUR NEUROBIOLOGIE
【住所又は居所原語表記】Brenneckestr. 6, 39118 Magdeburg (DE)
【出願人】(511144505)オイロフォトン ゲーエムベーハー,ゲゼルシャフツ フューア オプティシェ ゼンゾーリッキ (1)
【氏名又は名称原語表記】EUROPHOTON GMBH, GESELLSCHAFT FUR OPTISCHE SENSORIK
【住所又は居所原語表記】Mozartstr. 27, 12247 Berlin (DE)
【Fターム(参考)】
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