説明

位置情報伝達装置

【課題】ユーザにとって使用しやすい形態であり、位置情報の認識の精度も向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】ポインティングデバイス装置は、ユーザに装着される操作デバイス40と、PCに接続される装置側デバイス30とを備える。操作デバイス40は、装置側デバイス30の2つの無線通信部32−1,32−2に発信側時刻情報を含む信号を無線で発信する。装置側デバイス30は、発信側時刻情報と受信側時刻情報とに基づいて信号の到達時間を算出し、到達時間と無線の伝搬速度とに基づいてデバイス間距離(D1,D2)を算出し、デバイス間距離(D1,D2)と無線通信部間距離(D3)とに基づいて無線通信部32及び操作デバイス40を結ぶ三角形の内角の角度(θ1,θ2)を算出し、デバイス間距離(D1,D2)と内角の角度(θ1,θ2)とに基づいて操作デバイス40の位置情報を算出し、算出した位置情報をPCに送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置などに位置情報を伝達する位置情報伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の位置情報伝達装置として、ポインティングデバイス装置がある。ポインティングデバイス装置は、パーソナルコンピュータ(以下、PCと略称する。)のディスプレイ上で、三角形の矢印のポインタなどを動かすための入力装置であり、例えばマウスやタッチパッドなどがよく知られている。
【0003】
このようなポインティングデバイス装置の先行技術として、マウス筐体に画像データを捉えるカメラ部とユーザの指に装着できる中空穴を設ける構成としたポインティングデバイス装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この技術によれば、ポインティングデバイス装置が、マウスとデジタルカメラの双方の機能を備えることになるので、マウス筐体の中空穴に指を挿入した状態で操作することができ、マウス筐体を手で掴む操作を不要としてディスプレイ上のカーソル位置(ポインタ位置)の変更を可能とし、マウスの操作性を向上させることができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−145527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の技術では、以下のような問題がある。
(1)ユーザがPCを操作する際には、従来のポインティングデバイス装置(例えば、マウスやタッチパッド)のみならず、キーボードをも併用して作業を行うのが一般的である。そして、文字入力などの作業からカーソル移動などの作業に移行する際には、基本的には手をキーボードから離して、キーボードでの操作からポインティングデバイス装置での操作に行動を切り替える必要がある。したがって、キーボードを利用している際に、マウス、タッチパッドなどを使用する場合、どちらか一方の手をマウス、タッチパッドの操作に注力しなければならないという問題がある。
【0007】
(2)マウスは、接続先(接続対象となるPCなど)を変更することで操作対象を変更することが容易であるが、マウス自体の持ち運びも必要である。また、マウスは、操作の際には平坦な面が必要であり、操作のためのスペースも必要である。
【0008】
(3)タッチパッドは、操作対象の機器(例えばノート型PC)に実装されているのが通常であるため、他のPCに流用することが難しい。また、故障の際には、マウスであればマウスのみを修理又は交換すればよいが、タッチパッドはノートパソコンなどのキーボード付近に埋め込まれていることが多く、故障した場合のリスクなども高い。さらに、タッチパッドは、タッチパッドの機能を実現するために必要とされるデバイスを設置、もしくは内蔵するスペースが必要であるという問題がある。
【0009】
(4)特許文献1の技術では、インターフェースケーブルを必要とするために、使用範囲が限られてしまうという問題がある。また、カメラで撮影された画像の変位からポインティングデバイス装置のX・Y座標を算出しているが、単色のマウスパッドの上や単色の机の上など、周囲の画像から変位が読み取りづらい場所では画像認識の精度を欠くという問題がある。
【0010】
(5)上記のデバイスでは、手を使って操作する以外では使いづらいという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、ユーザにとって使用しやすい形態でありながら、位置情報の認識の精度も向上させることができる技術の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の位置情報伝達装置は、ユーザに装着される操作デバイスと、情報処理装置に接続される装置側デバイスとを備える位置情報伝達装置において、前記操作デバイスは、前記装置側デバイスに対して、発信側の時刻の情報である発信側時刻情報を含む信号を無線で発信する無線発信部を備え、前記装置側デバイスは、前記無線発信部が発信した信号を無線で受信する少なくとも2つの無線受信部と、前記無線受信部が受信した信号に含まれる発信側時刻情報と前記各無線受信部が前記信号を受信した際の受信側の時刻情報である受信側時刻情報とに基づいて、前記信号が前記無線発信部から前記各無線受信部に到達するまでに要した到達時間を算出する到達時間算出部と、前記到達時間算出部が算出した到達時間と予め記憶されている前記無線の伝搬速度とに基づいて、前記各無線受信部と前記操作デバイスとのデバイス間距離を算出する距離算出部と、前記距離算出部が算出した前記デバイス間距離と予め記憶されている前記各無線受信部同士の距離である無線受信部間距離とに基づいて、前記各無線受信部同士を結ぶ線と、前記各無線受信部と前記操作デバイスとを結ぶ線とによって構成される三角形の内角の角度を算出する角度算出部と、前記距離算出部が算出したデバイス間距離と前記角度算出部が算出した角度とに基づいて、前記操作デバイスの位置情報を算出する位置情報算出部と、前記位置情報算出部が算出した位置情報を前記情報処理装置に送信する位置情報送信部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザにとって使用しやすい形態でありながら、位置情報の認識の精度も向上させることができる技術の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態のポインティングデバイス装置を含む情報処理システムの構成を概略的に示す図である。
【図2】装置側デバイス30の構成を示す図である。
【図3】操作デバイス40の構成を示す図である。
【図4】ユーザが操作デバイス40を装着した状態を示す図である。
【図5】PC10,装置側デバイス30及び操作デバイス40の構成を概略的に示すブロック図である。
【図6】ポインティングデバイス装置20の装置側デバイス30の制御部36により実行される情報処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】実際の情報処理の内容を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のポインティングデバイス装置を含む情報処理システムの構成を概略的に示す図である。
〔情報処理システム〕
情報処理システム100は、PC10を備えるとともにポインティングデバイス装置20を備えており、PC10及びポインティングデバイス装置20が互いに接続された状態で、情報処理システムが構成される。
【0016】
〔PC(パーソナルコンピュータ)〕
PC10は、情報処理装置の一例として挙げるものであり、一般に普及しているデスクトップ型PCやノートブック型PCを適用することができる。PC10は、ユーザが操作対象とする装置である。
PC10の側面には、USB規格に準拠した矩形状のソケット(受け口)11が形成されており、ポインティングデバイス装置20のプラグ31を挿し込むことができる。ソケット11にプラグ31を挿し込むと、PC10とポインティングデバイス装置20とが電気的に接続され、各種データの送受信や電力の供給が可能となる。
【0017】
〔ポインティングデバイス装置〕
ポインティングデバイス装置20は、位置情報伝達装置の一例として挙げるものであり、PC10のディスプレイ上で、三角形の矢印のポインタなどを動かすための入力装置である。
【0018】
ポインティングデバイス装置20は、このポインティングデバイス装置20の本体部分となる装置側デバイス30と、ユーザ(操作者)に装着される操作デバイス40とを備えている。
【0019】
〔装置側デバイス〕
図2は、装置側デバイス30の構成を示す図である。図2(A)は、装置側デバイス30の斜視図であり、図2(B)は、装置側デバイス30の上面図(平面図)であり、図2(C)は、装置側デバイス30の正面図である。
装置側デバイス30は、矩形形状のデバイスであり、その側面に、USB規格に準拠したプラグ31を備えている。このプラグ31は、PC10のソケット11(図1参照)に挿し込むことができる。プラグ31をPC10のソケット11に挿し込むことにより、装置側デバイス30とPC10とは電気的に接続される。
【0020】
また、装置側デバイス30は、2つの無線通信部(無線受信部)32−1,32−2を備えている。図2(C)に示すように、一方の無線通信部32−1は、装置側デバイス30の正面からみて左側上方に取り付けられており、他方の無線通信部32−2は、装置側デバイス30の正面からみて右側上方に取り付けられている。2つの無線通信部32−1,32−2は、機能としては全く同じ機能を有する部分であるが、それぞれ設置されている位置が異なる。
【0021】
さらに、装置側デバイス30は、収納部33を備えている。
収納部33は、図2(C)に示すように、無線通信部32−1と無線通信部32−2との間に配置されており、操作デバイス40(図1参照)を収納する部分である。
収納部33の構成は、特に図示しておらずまた特に限定するものではないが、例えば、所望の凹みを開閉可能な扉部材で覆うものや、単純な突起で操作デバイス40を挟み込んで固定するもの、リング形状の操作デバイス40に対応したリング形状の収納スペースなどが挙げられる。ポインティングデバイス装置20の使用を開始する前には、操作デバイス40は、装置側デバイス30の収納部33に収納されている。
【0022】
〔操作デバイス〕
図3は、操作デバイス40の構成を示す図である。図3(A)は、操作デバイス40の正面図であり、図3(B)は、図3(A)中の領域Bを拡大して示す図である。
図3(A)に示すように、操作デバイス40は、ユーザが装着しやすくするために、円形のリング形状となっている。
【0023】
また、図3(B)に示すように、操作デバイス40は、リング形状の台座41を備え、その台座41に無線通信部(無線発信部)42が埋め込まれている。
そして、ユーザは、ポインティングデバイス装置20の使用を開始する際には、操作デバイス40を指先に装着する。この操作デバイス40を実際にユーザが装着すると、図4に示す状態となる。
【0024】
図4は、ユーザが操作デバイス40を装着した状態を示す図である。
操作デバイス40は、リング形状であるため、ユーザは、操作デバイス40を指輪のように指にはめることができる。図示の例では、ユーザの右手の中指の第1関節付近に操作デバイス40を装着している状態を示している。
【0025】
図5は、PC10,装置側デバイス30及び操作デバイス40の構成を概略的に示すブロック図である。
〔PC〕
PC10は、USBインターフェース12を備えている。
USBインターフェース12は、USB規格に準拠した通信アダプタであり、ソケット11(図1参照)に接続されている。USBインターフェース12は、装置側デバイス30のUSBインターフェース34に対してデータの送受信や電力の供給を行うことができる。USBインターフェース12,34は、後述する操作デバイス40の位置情報を送信する位置情報送信部として機能する。
【0026】
また、PC10は、制御部13を備えている。
制御部13は、コンピュータとして機能する要素であり、例えばプロセッサ(CPU)やメモリ(ROM、RAMなど)を実装した電子回路基板の形態でPC10に内蔵されている。この制御部13は、USBインターフェース12による通信を制御するだけでなく、PC10が行う各種の処理や動作を制御する機能を有している。
【0027】
PC10は、表示部14を備えている。
表示部14は、いわゆるディスプレイ、モニタに相当するハードウエアであり、所望のウインドウや文章入力画面、三角形の矢印のポインタなどが表示される。
【0028】
〔装置側デバイス〕
装置側デバイス30は、USBインターフェース34を備えている。
このUSBインターフェース34は、PC10のUSBインターフェース12と同様に、USB規格に準拠した通信アダプタであり、プラグ31(図1参照)に接続されている。このUSBインターフェース34は、PC10のUSBインターフェース12とデータの送受信を行ったり、PC10のUSBインターフェース12から電力の供給を受けたりすることができる。
【0029】
装置側デバイス30は、2つの無線通信部32−1,32−2を備えている。
2つの無線通信部32−1,32−2は、電波などの無線で信号の送受信を行う装置である。無線通信の方式としては、例えばブルートゥース(登録商標)などの通信規格を利用することができる。
【0030】
装置側デバイス30は、収納部スイッチ35を備えている。
収納部スイッチ35は、収納部33(図2参照)の内部に配置されたスイッチであり、操作デバイス40が収納部33の内部に収納されている場合には、収納部スイッチ35により検出信号(ON信号)が出力される。
【0031】
装置側デバイス30は、制御部36を備えている。
制御部36は、コンピュータとして機能する要素であり、例えばプロセッサ(CPU)やメモリ(ROM、RAMなど)を実装した電子回路基板の形態で装置側デバイス30に内蔵されている。この制御部36は、装置側デバイス30が行う各種の処理や動作を制御する機能を有している。
【0032】
ここで、制御部36には、各種処理部として主に、到達時間算出部50、距離算出部51、角度算出部52、位置情報算出部53、動作判断部54及び時刻情報管理部(時刻情報同期部)55が組み込まれている。
【0033】
このうち到達時間算出部50は、操作デバイス40から装置側デバイス30に送信される信号の到達時間を算出する処理を実行する。距離算出部51は、到達時間に基づいて、操作デバイス40から装置側デバイス30までの距離を算出する処理を実行する。角度算出部52は、内角の角度を算出する処理を実行する。位置情報算出部53は、操作デバイス40の位置情報を算出する処理を実行する。動作判断部54は、操作デバイス40がいかなる動作を行ったかを判断する処理を実行する。時刻情報管理部55は、操作デバイス40と装置側デバイス30との時刻を同期させる処理を実行する。
なお、上記各種処理部による処理の詳細については後述する。
【0034】
装置側デバイス30は、記憶部(動作情報記憶部)37を備えている。
記憶部37は、ROMやEEPROMなどのメモリであり、具体的には、無線の伝搬速度、無線通信部間距離(無線受信部間距離)及び複数の動作情報を記憶している。
【0035】
ここで、無線の伝搬速度とは、装置側デバイス30の無線通信部32−1,32−2と、操作デバイス40の無線通信部42との間で使用される無線の伝搬速度(m/s)のことである。
【0036】
また、無線通信部間距離とは、装置側デバイス30の2つの無線通信部32−1,32−2の実際の距離(m)のことである。具体的には、無線通信部32−1の中央の点と、無線通信部32−2の中央の点とを結んだ距離である。
【0037】
複数の動作情報とは、操作デバイス40に関する予め定められた動作情報のことであり、操作デバイス40の動作パターンを予め規定したものである。動作情報としては、例えば単なる移動、クリック、ダブルクリックなどといったように規定されている。
【0038】
〔操作デバイス〕
操作デバイス40は、無線通信部(無線発信部)42を備えている。
無線通信部42は、装置側デバイス30の2つの無線通信部32−1,32−2と同様のものであり、電波などの無線で信号の送受信を行う装置である。また、無線通信部42は、装置側デバイス30に対して、発信側の時刻の情報である発信側時刻情報(タイムスタンプ)を含む信号を無線で発信する。ユーザが装着した操作デバイス40から定期的に発信側時刻情報を含む信号を送信し、装置側デバイス30の無線通信部32−1,32−2は、それぞれで発信側時刻情報を含む信号(タイムスタンプ付の信号)を受信する。
【0039】
また、操作デバイス40は、制御部43を備えている。
制御部43は、コンピュータとして機能する要素であり、例えばプロセッサ(CPU)やメモリ(ROM、RAMなど)を実装した電子回路基板の形態で操作デバイス40に内蔵されている。この制御部43は、操作デバイス40が行う各種の処理や動作を制御する機能を有している。
【0040】
ここで、制御部43には、時刻情報管理部(時刻情報同期部)44が組み込まれている。
この時刻情報管理部44は、装置側デバイス30の時刻情報管理部55と同様に、操作デバイス40と装置側デバイス30との時刻を同期させる処理を実行する。
【0041】
なお、操作デバイス40は、装置側デバイス30から電力の供給を受けて動作してもよいし、充電部を備える構成として自ら主体的に動作するようにしてもよい。
以上が情報処理システム100の基本的な構成である。
【0042】
次に、本実施形態の情報処理システム100により実行される情報処理の内容について、図6及び図7を参照しながら説明する。また以下の説明により、情報処理システム100の情報処理を実行するための内容についても明らかとなる。
【0043】
図6は、ポインティングデバイス装置20の装置側デバイス30の制御部36により実行される情報処理の内容を示すフローチャートである。図7は、実際の情報処理の内容を概念的に示す図である。
この制御処理は、例えばPC10のソケット11に、装置側デバイス30のプラグ31を挿し込み、装置側デバイス30にPC10から電力の供給が開始された際に実行される。
【0044】
ステップS10:まず、制御部36は、収納部スイッチ35の状態を確認する。
収納部スイッチ35がON(操作デバイス40が収納部33に収納されている状態;Yes)であれば、制御部36は、ステップS20の処理を実行する。収納部スイッチ35がOFF(操作デバイス40が収納部33に収納されていない状態;No)であれば、制御部36は、ステップS30の処理を実行する。
【0045】
ステップS20:制御部36は、時刻情報管理部55を動作させて、時刻同期処理を実行する。
具体的には、制御部36は、時刻情報管理部55に時刻の同期を行わせる。時刻の同期は、装置側デバイス30の時刻情報管理部55と、操作デバイス40の時刻情報管理部44とが、無線通信部32−1,32−2を利用して互いに通信を行うことにより時刻の同期を行う。
【0046】
まず、時刻を同期させるための前処理として、装置側デバイス30と操作デバイス40とを、無線通信部32−1,32−2及び無線通信部42を用いて接続させる。そして、時刻の同期に関しては、例えば装置側デバイス30及び操作デバイス40が、時計の機能を有しているのであれば、実際の現在の時刻を同期させることにより実現可能である。また、装置側デバイス30及び操作デバイス40が、タイマーの機能を有しているのであれば、同時刻からカウントダウン又はカウントアップを開始することによっても実現可能である。
いずれにしても、装置側デバイス30と操作デバイス40とは、互いの時刻情報管理部55,44の時刻情報の同期(タイムスタンプ発行用の内部装置の同期)を行っている。
制御部36は、このステップの処理を終えると、ステップS10に戻る。
【0047】
ステップS30:制御部36は、操作デバイス40から信号を受信したか否かを確認する。
操作デバイス40から信号を受信していなければ、制御部36は、何も処理をせずに、ステップS10に戻る。操作デバイス40から信号を受信していれば、制御部36は、ステップS40の処理を実行する。
なお、信号を受信した際には、信号を受信した際の装置側デバイス30の時刻情報である受信側時刻情報(タイムスタンプ)をその信号に付加する。受信側時刻情報の付加は、無線通信部32−1と無線通信部32−2とがそれぞれ別々に行う。
【0048】
ステップS40:制御部36は、到達時間算出部50を動作させて、到達時間算出処理を実行する。
到達時間算出部50は、無線通信部32−1,32−2が受信した信号に含まれる発信側時刻情報と各無線通信部32−1,32−2が信号を受信した際の受信側の時刻情報である受信側時刻情報とに基づいて、信号が無線通信部42から各無線通信部32−1,32−2に到達するまでに要した到達時間を算出する。
【0049】
すなわち、操作デバイス40からは、送信側の時刻情報(タイムスタンプA)が付加された信号が送信される。
一方、装置側デバイス30では、送信された信号を2つの無線通信部32−1,32−2で受信している。また、装置側デバイス30では、無線通信部32−1が操作デバイス40からの信号を受信した際に、受信側の時刻情報(タイムスタンプB)を付加している。そして、送信側の時刻情報(タイムスタンプA)と受信側の時刻情報(タイムスタンプB)の差を算出し(タイムスタンプBの時刻からタイムスタンプAの時刻を減算し)、送信された信号の操作デバイス40から装置側デバイス30の無線通信部32−1までの到着に要した時間Taを決定する。
【0050】
また、無線通信部32−2においても同様に、無線通信部32−2が操作デバイス40からの信号を受信した際に、受信側の時刻情報(タイムスタンプC)を付加している。そして、送信側の時刻情報(タイムスタンプA)と受信側の時刻情報(タイムスタンプC)の差を算出(タイムスタンプCの時刻からタイムスタンプAの時刻を減算)することにより、送信された信号の操作デバイス40から装置側デバイス30の無線通信部32−2までの到着に要した時間Tbを決定する。
【0051】
このように、装置側デバイス30では、送信側の時刻情報と、受信側の時刻情報とに基づいて、その時間差から操作デバイス40が信号を発信した時から装置側デバイス30が信号を受信した時までの時間を算出することができる。
次に、制御部36は、ステップS50の処理を実行する。
【0052】
ステップS50:制御部36は、距離算出部51を動作させて、距離算出処理を実行する。
距離算出部51は、到達時間算出部50が算出した到達時間と、記憶部37に予め記憶されている無線の伝搬速度とに基づいて、各無線通信部32−1,32−2と操作デバイス40とのデバイス間距離を算出する。
【0053】
つまり、無線通信部32−1,32−2及び無線通信部42が無線送信の際に使用している無線規格から信号の伝搬速度Vが決定する。伝搬速度Vは、記憶部37に予め記憶されているので、距離算出部51は、その値を記憶部37から読み出す。
そして、距離は、速度に時間を乗算すれば算出することができるので、無線通信部32−1から操作デバイス40までの距離D1(図7参照)は、D1=Ta×Vにより決定する。これと同様に、無線通信部32−2から操作デバイス40までの距離D2(図7参照)は、D2=Tb×Vにより決定する。
次に、制御部36は、ステップS60の処理を実行する。
【0054】
ステップS60:制御部36は、角度算出部52を動作させて、角度算出処理を実行する。
角度算出部52は、距離算出部51が算出したデバイス間距離(D1,D2)と、記憶部37に予め記憶されている各無線通信部32−1,32−2同士の距離である無線通信部間距離(D3)とに基づいて、各無線通信部32−1,32−2同士を結ぶ線と、各無線通信部32−1,32−2と操作デバイス40とを結ぶ線とによって構成される三角形の内角の角度を算出する。
【0055】
すなわち、無線通信部32−1,無線通信部32−2は、装置側デバイス30に内蔵されているため、無線通信部32−1と無線通信部32−2との距離は固定されている(固定距離D3)。
そして、無線通信部32−1,無線通信部32−2、操作デバイス40の3点で構成される三角形の3辺の長さ(距離)は、上述した処理にてそれぞれ決定されている。
【0056】
ここで、一般に、三角形に関しては、(1)3つの辺の長さが定まった場合、(2)2つの角の大きさとその間の辺の長さが定まった場合、(3)2つの辺の長さとその間の角の大きさが定まった場合には、1つの三角形を一義的に導くことができる。
今回の場合は、上記(1)の場合にあたり、3つの辺の長さが定まっているため、その三角形の内角の角度も決定することができる。
【0057】
したがって、3辺の長さから三角形の各角度(内角)が算出できるので、無線通信部32−1と無線通信部32−2とを結んだ線と、無線通信部32−1と操作デバイス40とを結んだ線のなす角θ1、及び無線通信部32−1と無線通信部32−2とを結んだ線と、無線通信部32−2と操作デバイス40とを結んだ線のなす角θ2が決定する。
次に、制御部36は、ステップS70の処理を実行する。
【0058】
ステップS70:制御部36は、位置情報算出部53を動作させて、位置情報算出処理を実行する。
位置情報算出部53は、距離算出部51が算出したデバイス間距離(D1,D2)と角度算出部52が算出した角度とに基づいて、操作デバイス40の位置情報を算出する。
つまり、位置情報算出部53は、デバイス間距離(D1,D2)やなす角θ1,θ2に基づいて、操作デバイス40の位置を座標平面上にプロットする。
次に、制御部36は、ステップS80の処理を実行する。
【0059】
ステップS80:制御部36は、動作判断部54を動作させて、動作判断処理を実行する。
動作判断部54は、位置情報算出部53が算出した位置情報と記憶部37が記憶している動作情報とを比較することにより、操作デバイス40がいかなる動作を行ったかを判断する。
上述した処理により、なす角θ1、θ2及び距離D1、D2は、既に算出されている。
そして、図7に示すように、操作デバイス40を手に装着したユーザが手を動かすことでθ1、θ2及びD1、D2に変化が生じるため、この処理では、その変位からユーザの意図する動き(ユーザの振る舞い)を決定する。
なお、この動作判断処理(ステップS80)は、このメインループ(ステップS10〜ステップS90)を何度か実行することにより、実現することができる。
【0060】
つまり、ユーザが手を動かした状態で、再び、操作デバイス40から信号が発信され、上述したステップS40からステップS70を実行することにより、距離D1’,D2’、なす角θ1’,θ2’が算出される。
そして、それぞれの変位(D1’−Dl、D2’−D2、θ1’−θ1、θ2’−θ2)から、座標平面上の変位を制御部36が算出し、ユーザの意図する動きを決定する。今回の動作例では、右手が単純に右斜め上に上昇しただけの動作であるため、動作判断部54は単なる移動であると判断する。例えば、動作判断部54は、座標平面上の変位が1回往復すれば、クリックの動作であると判断し、小刻みに2回往復すればダブルクリックであると判断することができる。このような動作パターンは、記憶部37が記憶している動作情報と比較することにより、操作デバイス40がいかなる動作を行ったかを判断することができる。
【0061】
動作情報としては、様々な動作パターンを予め登録しておくことができる。登録されている特定の動作パターンに該当しなければ、単純な移動であると判断することができる。
ここで、キーボードのタイピングは、頻繁に行われる動作であるため、そのような動作パターンを予め登録しておき、キーボードのタイピングには反応しないようにして、誤動作を防止することもできる。
【0062】
また、動作情報は、予め登録したものだけでなく、ユーザが追加で登録できるようにしてもよい。このようにすれば、ユーザの癖やユーザの好みにあわせた動作に対応することがでるポインティングデバイス装置20を提供することができる。
次に、制御部36は、ステップS90の処理を実行する。
【0063】
ステップS90:制御部36は、USBインターフェース12,34を利用して、送信処理を実行する。
制御部36は、位置情報算出部53が算出した位置情報、及び動作判断部54の判断結果をPC10に送信(伝達)する。
【0064】
そして、PC10の表示部14では、三角形の矢印のポインタが移動されたり、そのポインタによってクリック動作が行われたりする。
制御部36は、このステップの処理を終えると、ステップS10に戻り、これまでの処理を繰り返し行う。そして、すべてのステップの処理はループ処理になっており、ポインティングデバイス装置20の使用中は、これらの処理が繰り返し行われる。
【0065】
このように、本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)装置側デバイス30は、2つの無線通信部32−1,32−2を備えており、各無線通信部それぞれと操作デバイス40の間の距離・角度変位から操作デバイス40の位置情報の算出を行って、その位置情報をPC10に送信(伝達)するので、画像認識による位置情報の算出方法とは異なり、位置情報の認識の精度を向上させることができる。これにより、単色のマウスパッドの上や単色の机の上などであっても、操作デバイス40の位置情報を正確に読み取ることができる。
【0066】
(2)動作判断部54は、複数の動作情報に基づいて操作デバイス40がいかなる動作を行ったかを判断するので、ユーザの意図する動き(単なる移動やクリック動作など)を正確に判断することができる。
(3)時刻情報管理部55,44は、操作デバイス40が収納部33に収納されている場合に、時刻情報の同期を行うので、操作デバイス40の使用前の適切な時期に効率よく時刻の同期を行うことができる。
【0067】
(4)操作デバイス40は、ユーザの指に装着して使用することができるので、ポインティングデバイス装置20を操作するためのスペースは不要となり、最小限指が動かすことができるスペースがあるだけでポインティングデバイス装置20としての動作が実現される。
(5)操作デバイス40は、ユーザの指に装着して使用することができるので、使用場所が固定されないことから(制約されないことから)、キーボードでの操作中であっても、キーボードから手を離さずに、ポインティングデバイス装置20の操作を行うことができる。
【0068】
(6)操作デバイス40は、リング形状であり、また、操作デバイス40は、収納部33に収納することができるので、ポインティングデバイス装置20の持ち運びは容易である。
(7)操作デバイス40は、空中でも操作することができるので、マウスなどに必要であった平面も必要としない。そして、このような操作デバイス40を装着することにより、例えPC10の真後ろであっても真下であっても無線の特性から操作可能である。
【0069】
(8)PC10に対しては、USBインターフェース12,34を用いて接続することができるので、装置側デバイス30が新規にソフトウェア対応する必要はない。また、指先に関わらず無線通信部32を搭載できるものであれば、PC10の操作はより直感的に行うことが可能となる。
(9)指先に限らず微細でも操作デバイス40の位置の変位を生み出すことができれば、ポインティングデバイス装置20として動作することができるので、操作デバイス40を指先以外の身体の一部に取り付けることにより、操作が可能である。
【0070】
本発明は、上述した一実施形態に制約されることなく、各種の変形や置換を伴って実施することができる。
例えば、操作デバイス40は、リング形状の例で説明したが、フック等の取り付け部材を有する形態や、ネジ部を有する形態などといったアタッチメント形式(取り付け可能な形態)にすることで、ペンなどに装着することもできる。
【0071】
また、操作デバイス40は、1つのみ用いる例で説明したが、複数の操作デバイス40を用いるようにしてもよい。このようにすれば、単に操作デバイス40を追加するだけで、マルチタッチ(右クリックや左クリックなど)に対応することができる。例えば、操作デバイス40を2つ用いる場合は、2つの操作デバイス40と装置側デバイス30との間で、それぞれにペアリング(組み合わせの対応付け)を行い、2つの操作デバイス40の認識を行うようにする。装置側デバイス30では、一方の操作デバイス40に対応する処理を行いつつ、他方の操作デバイス40にも対応する処理を行うようにする。
【0072】
さらに、使用する操作デバイス40の数を増やすことで、ポインティングデバイス装置20は、キーボードとして利用することも可能である。この場合は、ユーザの左右のすべての指に、10個の操作デバイス40を装着することで実現可能である。
【0073】
上述した実施形態では、位置情報伝達装置は、ポインティングデバイス装置20に用いる例で説明したが、例えばテレビジョン、エアコンディショナー、レコーダー、電子レンジなどの各種の電子機器のリモートコントロール装置にも用いることができる。この場合、装置側デバイス30は、各種の電子機器に予め内蔵しておく必要がある。
【0074】
また、位置情報伝達装置に関しては、操作デバイス40に対してペアリングを行い、記憶部37に特定動作を登録しておくことで、自家用車などのキーレスエントリーのキーの替りにも利用可能である。この場合、装置側デバイス30は、自動車本体に予め内蔵しておく必要がある。
【0075】
さらに、一実施形態で挙げたPC10やポインティングデバイス装置20、装置側デバイス30、操作デバイス40などの構成はいずれも好ましい例示であり、これらを適宜変形して実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0076】
10 PC
11 ソケット
12 USBインターフェース
13 制御部
14 表示部
20 ポインティングデバイス装置
30 装置側デバイス
31 プラグ
32−1,32−2 無線通信部
33 収納部
34 USBインターフェース
35 収納部スイッチ
36 制御部
37 記憶部
40 操作デバイス
41 台座
42 無線通信部
43 制御部
44 時刻情報管理部
50 到達時間算出部
51 距離算出部
52 角度算出部
53 位置情報算出部
54 動作判断部
55 時刻情報管理部
100 情報処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに装着される操作デバイスと、情報処理装置に接続される装置側デバイスとを備える位置情報伝達装置において、
前記操作デバイスは、
前記装置側デバイスに対して、発信側の時刻の情報である発信側時刻情報を含む信号を無線で発信する無線発信部を備え、
前記装置側デバイスは、
前記無線発信部が発信した信号を無線で受信する少なくとも2つの無線受信部と、
前記無線受信部が受信した信号に含まれる発信側時刻情報と前記各無線受信部が前記信号を受信した際の受信側の時刻情報である受信側時刻情報とに基づいて、前記信号が前記無線発信部から前記各無線受信部に到達するまでに要した到達時間を算出する到達時間算出部と、
前記到達時間算出部が算出した到達時間と予め記憶されている前記無線の伝搬速度とに基づいて、前記各無線受信部と前記操作デバイスとのデバイス間距離を算出する距離算出部と、
前記距離算出部が算出した前記デバイス間距離と予め記憶されている前記各無線受信部同士の距離である無線受信部間距離とに基づいて、前記各無線受信部同士を結ぶ線と、前記各無線受信部と前記操作デバイスとを結ぶ線とによって構成される三角形の内角の角度を算出する角度算出部と、
前記距離算出部が算出したデバイス間距離と前記角度算出部が算出した角度とに基づいて、前記操作デバイスの位置情報を算出する位置情報算出部と、
前記位置情報算出部が算出した位置情報を前記情報処理装置に送信する位置情報送信部と、
を備える位置情報伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置情報伝達装置において、
前記操作デバイスに関する予め定められた複数の動作情報を記憶している動作情報記憶部と、
前記位置情報算出部が算出した位置情報と前記動作情報記憶部が記憶している動作情報とを比較することにより、前記操作デバイスがいかなる動作を行ったかを判断する動作判断部と、
前記動作判断部の判断結果を前記情報処理装置に送信する判断結果送信部とをさらに備えることを特徴とする位置情報伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の位置情報伝達装置において、
前記装置側デバイスは、
前記操作デバイスを収納する収納部を備え、
前記操作デバイス及び前記装置側デバイスは、
時刻情報の同期を行う時刻情報同期部を備え、
前記時刻情報同期部は、
前記操作デバイスが前記収納部に収納されている場合に、前記時刻情報の同期を行うことを特徴とする位置情報伝達装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の位置情報伝達装置において、
ポインティングデバイス装置に用いられることを特徴とする位置情報伝達装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−68922(P2012−68922A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213553(P2010−213553)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】