位置検出センサおよび位置検出装置
【課題】互いに直交する第1の方向と第2の方向に複数の画素を備えた表示装置の表示面の画素配列との間でのモアレ効果を軽減または防止すると共に、センサとして均一な光学特性を確保し、指示位置に対する位置補正処理を不要とした位置検出センサを提供する。
【解決手段】第1の方向および第2の方向のそれぞれに配置された光透過性を有する複数本の電極24および電極25によるグリッド構成を備える。隣り合う2本ずつの電極24および電極25が互いに交差する4つのクロスポイントで形成される矩形の領域のうちの電極24、25が形成されていない領域には、均一な光学特性を得るように、ダミーパターン23が配置される。第1の方向に配置された電極24およびダミーパターン23のそれぞれは、第1の方向に対して所定の傾きを有する形状を有すると共に、第1の方向に配置された電極24は、第1の方向の直線を対称軸とした線対称となる形状を有している。
【解決手段】第1の方向および第2の方向のそれぞれに配置された光透過性を有する複数本の電極24および電極25によるグリッド構成を備える。隣り合う2本ずつの電極24および電極25が互いに交差する4つのクロスポイントで形成される矩形の領域のうちの電極24、25が形成されていない領域には、均一な光学特性を得るように、ダミーパターン23が配置される。第1の方向に配置された電極24およびダミーパターン23のそれぞれは、第1の方向に対して所定の傾きを有する形状を有すると共に、第1の方向に配置された電極24は、第1の方向の直線を対称軸とした線対称となる形状を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置の表示面上に重ねて配置されて、指示体による入力操作位置を検出する位置検出センサおよびこの位置検出センサを用いる位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指やペンなどの指示体によって指示された位置を検出する位置検出装置が良く知られている。この位置検出装置で用いられる位置検出方式としては、抵抗膜方式、電磁誘導方式、静電容量方式など種々のものが提供されている。そのうちの静電容量方式には、表面型(Surface Capacitive Type)と投影型(Projected Capacitive Type)の2種類の方式があり、両方式ともセンサ電極と指示体との間の静電結合状態の変化を検出して、指示体によって指示された位置を検出する。
【0003】
例えば特許文献1(特開2009−9249号公報)には、この静電容量式の位置検出装置として、2次元容量センサ、すなわち、X軸センサトレース(センサ導体)およびY軸センサトレース(センサ導体)を備える構成が開示されている。この特許文献1の位置検出装置のセンサは、表示装置の表示面上に重ねて配置されることを想定して、光透過性の基材、例えばガラス板などの透明基板の上に、光透過性の透明の導体によりX軸センサトレースおよびY軸センサトレースを形成して構成されている。
【0004】
X軸センサトレースは、X軸方向(横方向)の位置を検出するために、透明基板上において、X軸方向に所定の間隔で配置されると共に、ダイヤモンド形状の透明な導体が、Y軸方向(縦方向)に複数本、連続して繋げられたような形状とされる。また、Y軸センサトレースは、Y軸方向の位置を検出するために、透明基板上において、Y軸方向に所定の間隔で配置されると共に、ダイヤモンド形状の透明な導体が、X軸方向に複数本、連続して繋げられたような形状とされる。
【0005】
そして、X軸センサトレースと、Y軸センサトレースとが、互いのダイヤモンド形状の導体が重ならず、かつ、電気的に互いに独立した状態で組み合わされることで、透明基板上に、2次元容量センサが構成される。したがって、この2次元容量センサは、透明基板に、透明なダイヤモンド形状の導体を均一に配列したパターン形状となり、透明基板の全体に渡って略均一な光透過性を得ることができる。
【0006】
この特許文献1の2次元容量センサは、複数本のX軸センサトレースのいずれかにおける静電容量の変化を検出することにより、指や位置指示器のX軸方向の位置を検出し、複数本のY軸センサトレースのいずれかにおける静電容量の変化を検出することにより、指や位置指示器のY軸方向の位置を検出する、いわゆるライン検出方式のセンサである。
【0007】
これに対して、投影型の静電容量方式を発展させたクロスポイント静電容量方式と呼ばれる方式の位置検出装置も提案されている。図9に、クロスポイント静電容量方式の位置検出装置におけるセンサ部の近傍の概略構成を示す。
【0008】
図9に示すように、クロスポイント静電容量方式の位置検出装置のセンサ部は、指示入力面の例えばY軸方向(縦方向)の上部電極Exと、X軸方向(横方向)の下部電極Eyとを、X軸方向およびY軸方向に、それぞれ所定間隔で複数本並べ、互いが直交するとともに僅かな隙間を空けて配列させることにより構成されている。この場合、上部電極Exと下部電極Eyとの間の重なり部分(クロスポイント)には所定の静電容量Co(固定容量)が形成される。
【0009】
そして、使用者が把持した位置指示器や使用者の指などの指示体100が、指示入力面に近づくあるいは接触した位置においては、その位置の電極Ex、Eyと指示体との間に静電容量Cfが形成される。そして、指示体100は人体を通じてグラウンドに所定の静電容量Cgを介して接続されている。この結果、その静電容量CfおよびCgのために、その指示体100が指示する位置において、上部電極Exと下部電極Eyとの間の電荷の移動量が変化する。クロスポイント静電容量方式の位置検出装置では、この電荷の移動量の変化を検出することで、指示入力面内において指示体100により指示された位置が特定される。
【0010】
この電荷の移動量の変化は、例えば、下部電極Eyを送信電極として、これに所定の信号を供給すると共に、上部電極Exを受信電極として、この受信電極からの受信信号の電流変化を検出することにより検出する。
【0011】
このクロスポイント静電容量方式の位置検出装置を、LCDや有機ELディスプレイなどの表示面上に重ねて配置して使用する場合には、上部電極Exおよび下部電極Eyのそれぞれは、例えばITO(Indium Tin Oxide)膜などの光透過性を有する一定幅の導電パターンが光透過性の基材、例えば透明ガラス基板などの表面に、Y軸方向およびX軸方向に配置されて形成される。
【0012】
この場合に、前述した特許文献1のライン検出方式のセンサとは異なり、クロスポイント静電容量方式の位置検出センサでは、隣り合う上部電極Exと隣り合う下部電極Eyとで囲まれる矩形領域には光透過性電極が形成されない領域が存在する。このため、この光透過性電極が形成されない領域では、光透過性の導電パターンが形成された部分とは、光透過性が異なるために、センサ領域の全体に渡った均一な光透過性を得ることが困難となる。
【0013】
この問題点を解決するために、特許文献2(特開2011−3034号公報)の段落[0115]〜[0120]および図18〜図19には、隣り合う上部電極110と隣り合う下部電極112とで囲まれる矩形領域に、光透過性材料、例えば上部電極110および下部電極112と同じITO膜からなるダミーパターン114を配するようにしたクロスポイント静電容量方式のセンサが開示されている。この場合、ダミーパターン114は、上部電極110および下部電極112とは電気的に互いに独立しており、かつ、電気的に遊離している状態(フローティングの状態)とされている。この特許文献2の位置検出センサによれば、上部電極110および下部電極112に近接して配置されたダミーパターン114の存在により、透過率のむらを抑制して、均一な光学特性を保持することができる。
【0014】
ところで、クロスポイント静電容量方式の位置検出センサでは、上述したように、互いに直交するX軸方向(横方向)およびY軸方向(縦方向)に、複数の上部電極および複数の下部電極が光透過性基板上にそれぞれ直線状に配置されて、いわゆるグリッド形状のセンサパターンが形成されている。そして、センサ領域の全体に渡って均一な光透過性を得るために、複数の上部電極および複数の下部電極によって形成されるそれぞれの領域に、上部電極および下部電極とは所定の隙間を介してダミーパターンが設けられる。
【0015】
このため、この位置検出センサを、LCDなどの表示装置の画面上に重畳して配置したときには、その表示装置のX軸方向(横方向)およびY軸方向(縦方向)に配列された表示画素と、上部電極、下部電極、およびダミーパターンとの間で、いわゆるモアレ効果が発生し、表示画像に明暗の干渉縞(モアレ)を生じさせるおそれがある。
【0016】
特許文献3(米国公開公報No.2009/02273577A1)には、この位置検出装置のセンサの電極と表示装置の画素配列との間でのモアレ効果を軽減あるいは防止することができる発明が開示されている。
【0017】
すなわち、図10に示すように、表示装置602の表示面においては、X軸方向(横方向)に赤、緑、青の3原色の副画素R、G、Bが順次繰り返し配置されるとともに、Y軸方向(縦方向)に展開されることで、表示画素が二次元配置されている。この場合に、Y軸方向には、同一色の副画素が一列に並べられており、このY軸方向の画素の配列と、位置検出センサのY軸方向の電極との間でのモアレ効果が生じ易いことが知られている。
【0018】
特許文献3では、表示装置602の表示面上に重畳される、送信電極604と受信電極618を備える位置検出センサ600が開示されている。位置検出センサ600のY軸方向の電極616は、図10に示すように、一定の幅を有する透明導体がY軸方向に所定の傾きを持って屈曲形状(ジグザク形状)に形成される。これにより、特許文献3では、Y軸方向の画素の配列と、位置検出センサのY軸方向の電極との間でのモアレ効果を軽減または防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2009−9249号公報
【特許文献2】特開2011−3034号公報
【特許文献3】米国公開公報No.2009/02273577A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、特許文献3の位置検出センサでは、モアレ効果の対策のために、一定の幅の電極が、屈曲形状に形成され、あるいは曲線の波状に形成されている。ところで、クロスポイント静電容量方式の位置検出センサでは、本来は、X軸方向の電極とY軸方向の電極とが交差して形成されるクロスポイントは、位置検出演算の容易性から、X軸方向においてもY軸方向においても、それぞれ一直線上に位置していることが望ましい。しかしながら、特許文献3の位置検出センサでは、受信電極618上に位置するクロスポイントは、受信電極618の屈曲形状や曲線形状に応じた位置となっており、一直線上には位置していない。
【0021】
すなわち、X軸方向に隣り合う2本の送信電極604と、Y軸方向に隣り合う2本の受信電極618によって特定される4個のクロスポイントで形成される形状は、位置検出演算の容易性から矩形であることが好ましい。特許文献3の位置検出センサでは、矩形ではない。したがって、特許文献3の位置検出センサでは、位置検出の際には、検出位置を補正するための信号補正処理を施す必要があり、位置検出装置の構成が複雑になってしまう。
【0022】
この発明は、以上の問題点を解決することができる位置検出センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、
第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向に配列された複数の画素を備えた表示装置の表示面に重畳して使用され、指示体が指示する位置を検出するための位置検出センサであって、
前記第1の方向に配置された光透過性を有する複数本の電極と、前記第2の方向に配置された光透過性を有する複数本の電極によるグリッド構成を備え、
前記第1の方向に互いが近傍に配置された2本の前記電極と前記第2の方向に互いが近傍に配置された2本の前記電極が互いに交差する4つのクロスポイントで形成される領域は矩形を形成し、
前記矩形の領域のうちの前記電極が形成されていない領域には、前記位置検出センサとしての均一な光学特性を得るように、所定の光透過性を有するダミーパターンが前記矩形の領域に形成された前記電極に近接して配置されると共に、前記ダミーパターンは電気的に遊離して配置され、
前記第1の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極のそれぞれは、互いが近傍に位置する2つのクロスポイントの間において、前記第1の方向に配置された複数の前記画素との間でのモアレ効果を防止するように、前記第1の方向に対して所定の傾きを有する形状を有すると共に、前記指示体が指示する位置の検出精度のために、前記第1の方向の直線を対称軸とした線対称となるような形状を有している
ことを特徴とする位置検出センサを提供する。
【0024】
この請求項1の発明においては、第1の方向に配置された光透過性を有する複数本の電極のそれぞれは、第1の方向に対して所定の傾きを有する形状とされることで、第1の方向に配置された複数の画素との間でのモアレの発生を軽減または防止することができる。
【0025】
また、第1の方向に互いが近傍に配置された2本の電極と第2の方向に互いが近傍に配置された2本の電極が互いに交差する4つのクロスポイントで形成される領域は矩形を形成するように構成しているので、モアレ対策処理をした構成であっても、位置検出センサのクロスポイントの位置は第1の方向および第2の方向のそれぞれに対して、一直線上に配列されているために、指示位置に対応して検出位置を補正するような信号処理は必要とされない。
【0026】
しかも、第1の方向に配置された光透過性を有する複数本の電極のそれぞれは、第1の方向の直線を対称軸とした線対称となるような形状を有している。すなわち、第1の方向に配置された光透過性を有するそれぞれの電極の幅、すなわち第2の方向における長さ、の中点を結んだ中心線(線対称の対称軸)は、位置検出のための基準線となるが、この発明では、この基準線が第1の方向に平行な直線となるようにされる。したがって、この発明では、この点においても、検出位置を補正するための信号補正処理は必要なく、指示体が指示する位置を精度良く検出できる。
【発明の効果】
【0027】
この発明による位置検出センサによれば、グリッド構成のセンサパターンにダミーパターンを配置することでセンサ領域の全体に渡って均一な光透過性を確保することができる。また、表示装置の表示面に重畳して配置した際に、ダミーパターンの配置に起因する、表示面の画素配列と位置検出センサとの間でのモアレの発生を軽減または防止することができる。更には、信号処理回路における補正処理を設けなくても、指示体が指示する位置を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明による位置検出センサの第1の実施形態を備える位置検出装置の一例を説明するための図である。
【図2】この発明による位置検出センサの第1の実施形態を備える位置検出装置のセンサ回路の構成例を説明するための図である。
【図3】この発明による位置検出センサの第1の実施形態の構成例を説明するための図である。
【図4】図3の位置検出センサを、表示面に重ねた状態の一例を示す図である。
【図5】この発明による位置検出センサの第2の実施形態の構成例を説明するための図である。
【図6】この発明による位置検出センサの第2の実施形態の他の構成例を説明するための図である。
【図7】この発明による位置検出装置の他の実施形態を説明するための図である。
【図8】この発明による位置検出装置の他の実施形態を説明するための図である。
【図9】従来の位置検出センサの一例を説明するための図である。
【図10】従来の位置検出センサのモアレ防止対策の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明による位置検出装置およびその位置検出センサの実施形態について図を参照しながら説明する。
【0030】
[第1の実施形態]
図1は、この発明による位置検出センサの第1の実施形態を備える位置検出装置の一例の分解構成図を示す。この図1の例においては、表示装置の表示面への例えばペン(スタイラス)によって指示された位置を検出する位置検出センサを備えるタブレット装置の構成を説明する。
【0031】
この例のタブレット装置10は、図1に示すように、位置検出センサ20と、表示装置の例としてのLCD(Liquid Crystal Display)30と、プリント配線基板40と、タブレット装置10の筐体を構成する上ケース51と、下ケース52とで構成されている。
【0032】
図1に示すように、LCD30は、LCD基板31上に、表示画素32が、X軸方向(横方向)に多数個配列されている共に、X軸方向に直交するY軸方向(縦方向)に多数個配列された表示面33を備えている。位置検出センサ20は、このLCD30の表示面33上に重ねられるようにして配置される。
【0033】
位置検出センサ20は、この例では、クロスポイント静電容量方式のセンサの構成とされている。この例では、位置検出センサ20は、透明基板21の一面(LCD30の表示面33に対向する面とは反対側の面)に、光透過性を有する複数の電極からなる透明電極群22が形成されると共に、所定の光透過性を有するダミーパターン23が配設されて構成されている。透明基板21は、例えばガラス基板からなる。
【0034】
透明電極群22は、Y軸方向に配置された複数本の第1の透明電極24と、Y軸方向に直交するX軸方向に配置された複数本の第2の透明電極25からなる。第1の透明電極24は、X軸方向に、所定間隔ずつ隔てて配置されている。また、第2の透明電極25は、Y軸方向に、所定間隔ずつ隔てて配置されている。これら第1の透明電極24および第2の透明電極25は、光透過性の導電材料例えばITO膜からなる導体で構成されている。
【0035】
そして、第1の透明電極24と第2の透明電極25とは、この例においては、透明基板21の同じ一面側に形成されている。このため、互いに直交する第1の透明電極24と第2の透明電極25との交差点であるクロスポイントの領域においては、第1の透明電極24と第2の透明電極25との間に絶縁材が配置されることで互いが電気的に絶縁されている。このクロスポイントの領域における第1の透明電極24と第2の透明電極25との間の絶縁についての詳細構造については後述する。
【0036】
ダミーパターン23は、隣り合う第1の透明電極24と、隣り合う第2の透明電極25とにより囲まれる領域に設けられる。このダミーパターン23は、第1の透明電極24および第2の透明電極25が形成されていない部分の光透過率を、第1の透明電極24および第2の透明電極25が形成されている部分の光透過率と等しくするようにすることで、センサ基板として均一な光学特性を得るようにするためのものである。
【0037】
したがって、ダミーパターン23は、透明電極24,25と同じあるいは近似した光透過率を有する材料で構成されればよく、導電体である必要はない。しかし、この実施形態では、光透過率の均一性や位置検出センサ20の製造のし易さを考慮して、ダミーパターン23も、透明電極24、25として使用されるITO膜により形成される。
【0038】
このため、この実施形態では、位置検出センサ20としての好ましい光学性能を維持するために、ダミーパターン23は、第1の透明電極24および第2の透明電極25とは所定の隙間を空けて配置されるとともに、第1の透明電極24および第2の透明電極25とは電気的に独立している。そして、第1の透明電極24と第2の透明電極25とにより囲まれる領域に設けられるダミーパターン23のそれぞれは、電気的に遊離されている状態(フローティングの状態)とされている。
【0039】
以上のように、第1の透明電極24、第2の透明電極25およびダミーパターン23が配置されている透明基板21には、信号処理回路部としてのセンサ回路部(図示は省略)が設けられている。このセンサ回路部は、図2に示すように、送信信号発生回路201、送信電極選択回路202、受信電極選択回路203、受信信号処理回路204、出力回路205および制御回路206を備えている。
【0040】
送信信号発生回路201および送信電極選択回路202は、送信信号供給回路を構成し、受信電極選択回路203および受信信号処理回路204は、信号受信回路を構成する。そして、この例では、第1の透明電極24は、受信電極とされると共に、第2の透明電極25は、送信電極とされている。
【0041】
送信信号発生回路201は、制御回路206の制御に従ったタイミングで、所定の送信信号を送信電極選択回路202に供給する。送信電極選択回路202は、制御回路206の選択制御にしたがって、所定の第2の透明電極25を選択する。送信電極選択回路202によって選択された第2の透明電極25には送信信号発生回路201から送信信号が供給される。
【0042】
受信電極選択回路203は、制御回路206の制御にしたがって、順次第1の透明電極24を選択し、選択した第1の透明電極24からの受信信号を受信信号処理回路204に供給する。
【0043】
受信信号処理回路204は、制御回路206による制御に基づいて、受信信号を処理し、指や位置指示器などの指示体が位置検出センサ上で位置を指示することで生じる信号変化を第1の透明電極24で検出し、その検出出力を出力回路205に供給する。
【0044】
出力回路205は、制御回路206による制御に基づいて、受信信号処理回路204の検出出力から、前記信号変化が生じた第1の透明電極24と、そのときに送信信号が供給されている第2の透明電極25とから、指または位置指示器などの指示体によって指示された位置に対応した検出信号を生成して出力する。
【0045】
プリント配線基板40には、タブレット装置10を制御するためのIC(Integrated Circuit;集積回路)、その他の電子部品と、銅箔配線パターンが搭載されている。また、このプリント配線基板40には、上述のセンサ20のセンサ回路およびLCD30の表示ドライブ回路と接続するためのコネクタ(図示は省略)も設けられている。
【0046】
タブレット装置10の筐体を構成する上ケース51と下ケース52は、それぞれ例えば合成樹脂により構成されている。この筐体の下ケース52には、位置検出センサ20が配設された透明基板21、LCD基板31およびプリント配線基板40を収納するための凹部53が形成されている。この凹部53内に、位置検出センサ20が配設された透明基板21、LCD基板31およびプリント配線基板40が収納された後、上ケース51が下ケース52に接着材によって接着されるなどされることにより、凹部53が閉塞されて、タブレット装置10が組み立てられる。
【0047】
[位置検出センサ20のパターン形状]
次に、位置検出センサ20における第1の透明電極24、第2の透明電極25およびダミーパターン23の詳細なパターン形状について、図3を参照しながら説明する。
【0048】
先ず、透明基板21の一面上の所定の領域に、ITO膜が均一に形成される。次に、ITO膜に対して、マスクパターンが用いられて、例えばフォトリソグラフィー工程が実行され、ITO膜による第1の透明電極24および第2の透明電極25からなるグリッド構成の電極パターンと、第1の透明電極24および第2の透明電極25とは電気的に独立すると共に、電気的に遊離しているそれぞれのダミーパターン23が同時に形成される。
【0049】
なお、図3は、紙面の都合上、透明電極群22のうち、3本の第1の透明電極24と、3本の第2の透明電極25とからなる部分を部分的に示したものであり、透明電極24および第2の透明電極25の構成およびダミーパターン23の構成を詳細に示している。
【0050】
図3に示すように、第1の透明電極24は、後述するような所定の輪郭を有するY軸方向の導体として、X軸方向に所定間隔ずつ隔てて透明基板21上に形成される。一方、第2の透明電極25は、X軸方向の一定幅Wyの導体として、Y軸方向に所定間隔ずつ隔てて透明基板21上に形成される。この段階では、透明基板21上において、第1の透明電極24が存在する電極部分において電気的に分離された複数の導体片25PがX軸方向に配列されている。
【0051】
そして、次に、例えばフォトリソグラフィー工程により、第1の透明電極24と第2の透明電極25との交差部に絶縁層(図示は省略)を形成する。次に、その絶縁層の上に、第1の透明電極24とは絶縁層により絶縁を保った状態で、X軸方向に隣り合う2個の導体片25Pを橋絡して電気的に接続するための導電層26を、例えばフォトリソグラフィー工程により形成する。この導電層26により、X軸方向に配列されている複数個の導体片25Pが電気的に接続されることでX軸方向に配置される第2の透明電極25が形成される。
【0052】
なお、この実施形態では、第1の透明電極24と第2の透明電極25とが交差するクロスポイント部分においては、第1の透明電極24は、幅を狭くしていると共に、第2の透明電極25を構成する導体片25Pも幅を狭くし、かつ、絶縁層および導体層26をできるだけ小さく形成するようにしている。これにより、第1の透明電極24と第2の透明電極25とが交差するクロスポイント部分が、光透過率がセンサ基板21における他の部分と、できるだけ変化なく、かつ、目立たないように工夫されている。
【0053】
[位置検出センサ20における電極パターン形状;モアレ対策]
次に、図3を参照して、LCD30の画素配列パターンとの間に生じるおそれのあるモアレ効果を軽減するためのセンサ基板21上の導体パターン形状について説明する。
【0054】
なお、この図3に示した例は、第1の透明電極24の電極パターンの輪郭とダミーパターン23のY軸方向の輪郭のそれぞれが、LCD30のY軸方向の画素配列との間で生じるモアレ効果を軽減する場合である。この実施形態では、LCD30の画素32は、同一色の副画素がY軸方向に一列に並べられている。したがって、このY軸方向の画素配列と、位置検出センサ20のY軸方向に配置された第1の透明電極24との間でのモアレ効果が生じ易く、目立つ。
【0055】
なお、この発明は、第2の透明電極25の電極パターンの輪郭とダミーパターン23のX軸方向の輪郭のそれぞれが、LCD30のX軸方向の画素配列との間で生じるモアレ効果に対しても適用できることは言うまでもない。
【0056】
図3に示すように、隣接する2本の第1の透明電極24と隣接する2本の第2の透明電極25とが互いに交差する4つのクロスポイントで形成される領域は矩形となっている。これにより、位置検出センサ20のクロスポイントの位置が、X軸方向においてもY軸方向においても、それぞれ一直線上にあり、これにより、位置検出演算の際の位置補正処理を不要として、位置検出を容易に行うことができる。
【0057】
この実施形態では、第1の透明電極24を、2つのクロスポイントの間において、以下に示すような所定の電極パターン形状に形成する。
【0058】
第1の透明電極24は、Y軸方向に対して所定の傾きを有する形状であって、かつ、Y軸方向の直線を対称軸とした線対称となるような形状を有する。すなわち、図3に示すように、第1の透明電極24は、Y軸方向の2本の輪郭線241、242により規定される形状を有するが、第1の透明電極24のY軸方向の2本の輪郭線241、242のそれぞれは、Y軸方向とは非平行とされる。
【0059】
この実施形態では、輪郭線241および輪郭線242は、Y軸方向に対して+θ(θ>0)だけ傾いている線分241aおよび242aと、Y軸方向に対して−θだけ傾いている線分241bおよび242bとが、それぞれ連なった構成を備える。輪郭線241と輪郭線242とは、Y軸方向に対して+θだけ傾いている線分241aとY軸方向に対して−θだけ傾いている線分242bとがX軸方向に互いに対向すると共に、Y軸方向に対して−θだけ傾いている線分241bとY軸方向に対して+θだけ傾いている線分242aとがX軸方向に互いに対向するように形成されている。
【0060】
この場合、第1の透明電極24の輪郭線241,242を構成する線分241a、241b、242a、242bのY軸方向に対する傾き角θは、LCD30において同じ副画素が並ぶ縦方向を基準として考えることができ、モアレの発生を防止するためにその傾き角θが選定される。この傾き角θは、5度以上45度以下の範囲で、視認によりモアレ発生の防止効果が得られることが確かめられた。この例ではθ=15度に選定されている。
【0061】
第1の透明電極24の幅Wxは一定ではないが、当該幅WxのX軸方向における中点を結んだ中心線243(図3では一点鎖線で示す)は、Y軸方向に平行な直線となる。つまり、第1の透明電極24は、Y軸方向に平行な直線である中心線243を対称軸として線対称の形状となるように構成されている。
【0062】
このように、第1の透明電極24は、Y軸方向に平行な直線を対称軸として線対称の形状となるので、この第1の透明電極24を受信電極としたときの受信信号処理回路204は、第1の透明電極24が一定幅の直線状パターンであるときと同じ回路を使用することができ、指示位置に対応した位置補正処理等は不要となる。
【0063】
また、第1の透明電極24は、Y軸方向に互いが近傍に配置された、2つのクロスポイントを構成する一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に、Y軸方向に対して+θだけ傾いている線分241aおよび242aとY軸方向に対して−θだけ傾いている線分241bおよび242bとが複数回、この例では、2回繰り返される形状を有している。
【0064】
第1の透明電極24は、モアレの発生を軽減あるいは防止のためであれば、Y軸方向に対して+θおよび−θの傾きを持つ形状を、Y軸方向に互いが近傍に配置された、2つのクロスポイントを構成する一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に1つ以上有していれば良い。
【0065】
しかし、第1の透明電極24を、Y軸方向に互いが近傍に配置された、2つのクロスポイントを構成する一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に、Y軸方向に対して+θおよび−θの傾きを持つ形状を一つだけ設ける形状にすると、第1の透明電極の幅Wxの最大値が広くなって、ノイズを拾い易くなる。
【0066】
また、第1の透明電極24を、Y軸方向に互いが近傍に配置された、2つのクロスポイントを構成する一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に、Y軸方向に対して+θおよび−θの傾きを持つ形状が多数回繰り返された形状にした場合には、第1の透明電極のY軸方向の輪郭線241、242は、全体として、Y軸方向に平行な直線に近似することとなり、モアレ防止効果が低減されてしまう。
【0067】
そこで、第1の透明電極24の形状は、Y軸方向に互いが近傍に配置された、2つのクロスポイントの一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に、Y軸方向に対して+θおよび−θの傾き角を持つ形状が、2回以上で、且つ、モアレ防止効果が低減されない回数分だけ繰り返された形状とすることが、ノイズ対策およびモアレ対策上、好ましいものとなる。
【0068】
次に、X軸方向に配置された第2の透明電極25(導体片25P)は、X軸方向の2本の輪郭線251、252により規定される形状を有する。前述したように、この実施形態では、同一色の副画素がY軸方向に一列に並べられている。そのために、X軸方向に配置されたLCD30の画素32と、第2の透明電極25との間では、モアレ効果は、第1の透明電極24との間と比較して、生じにくいことが知られている。そこで、第2の透明電極25のX軸方向の輪郭線251および252は直線とされ、第2の透明電極25は、従来と同様の一定幅WyのITO膜からなる導体で構成されている。
【0069】
次に、ダミーパターン23は、図3に示すように、第1の透明電極24の輪郭線242、241にそれぞれ近接する2本の輪郭線231、232によりY軸方向の輪郭が規定される。また、第2の透明電極25の輪郭線252、251にそれぞれ近接する2本の輪郭線233、234によりX軸方向の輪郭が規定される。
【0070】
ダミーパターン23のY軸方向の2本の輪郭線231および232は、位置検出センサ20としての均一な光学特性を得るように、第1の透明電極24の2本の輪郭線241および242とは、それぞれ所定幅の隙間27を隔てて形成されている。したがって、ダミーパターン23のY軸方向に沿う2本の輪郭線231、232は、Y軸方向に対して前記+θだけ傾いている線分231a、232aおよびY軸方向に対して前記−θだけ傾いている線分231b、232bがそれぞれ連続的に連なった形状を備える。なお、隙間27は、一定の幅で形成されている。
【0071】
また、ダミーパターン23のX軸方向の2本の輪郭線233および234と、当該ダミーパターン23をY軸方向に挟む2本の第2の透明電極25の輪郭線252および251は、それぞれ所定幅の隙間28を隔てて形成されている。この隙間28は、一定の幅で形成されている。
【0072】
図4に、LCD30の表示面33上に、位置検出センサ20が重畳配置されたときの、画素配列パターンと、第1の透明電極24、第2の透明電極25の電極パターン、およびダミーパターン23との位置関係の一例を示す。
【0073】
図4に示すように、画素32を構成する赤、緑、青の3原色の副画素34R、34G、34Bは、X軸方向(横方向)の同一行に、それら3原色の副画素34R、34G、34Bが順次繰り返すように並べられている。また、その3個の副画素34R,34BG,34Bのそれぞれは、Y軸方向の同一列には、同じ副画素が複数配置されて、LCD30の表示面33を構成している。
【0074】
この例では、Y軸方向に同一色の副画素34R,34BG,34Bのそれぞれが一列に並べられており、このY軸方向の画素配列と、センサ30のY軸方向の第1の透明電極24との間でモアレ効果が生じ易くなる。
【0075】
しかし、この実施形態の位置検出センサ20によれば、Y軸方向に配置されている第1の透明電極24の輪郭線は、Y軸方向に対して所定の傾き角+θ、−θを有する形状とされており、また、位置検出センサ20としての均一な光学特性を得るように、この第1の透明電極24と隙間27を介して近接配置されたダミーパターン23も、Y軸方向とは所定の傾き角+θ、−θを持ったものとなっている。したがって、LCD30の表示画素32のY軸方向の配列パターンとの間で、モアレの発生が軽減あるいは防止される。
【0076】
そして、この実施形態においては、互いに隣り合う2本の第1の透明電極24と、互いに隣り合う2本の第2の透明電極25とによる4点のクロスポイントで形成される領域の形状は、モアレ対策を施しても矩形形状を維持しており、矩形形状を備えていないことに起因する、指示体による位置指示に対応した位置補正処理を行う必要はない。
【0077】
さらに、この実施形態においては、Y軸方向に配置された第1の透明電極24は、そのX軸方向における幅Wxの中心点を結んで形成された、Y軸方向に直線状の中心線243を対称軸として線対称の形状を備えるので、第1の透明電極24を受信電極として信号を受信する受信信号処理回路204は、第1の透明電極24がX軸方向に一定幅の直線状パターンであるときと同じ回路を使用することができ、X軸方向に一定幅を有しない受信電極を使用した場合に必要とされる位置補正処理は不要となる。
【0078】
[第1の実施形態の変形例]
上述の第1の実施形態では、複数本の第1の透明電極24のそれぞれにおいて、前記傾き角θを同一として説明したが、複数本の第1の透明電極24の全てにおいて前記傾き角θを同一としなくてもよいことは明らかである。
【0079】
例えば、X軸方向に一つおきに配置された第1の透明電極24は、上述の第1の実施形態の場合と同様に、その輪郭線241および242は、前記正および負の傾き角θ=15度である線分からなるものとし、残りの一つおきに配置された第1の透明電極24の輪郭線241および242は、正および負の傾き角θ´が、θ´≠15度(ただし、5度≦θ´≦45度)、例えばθ´=20度である線分からなるものとしても良い。
【0080】
なお、傾き角を異ならせた透明電極24は、X軸方向の一つおきにする場合に限られるものではなく、複数本おきに配置しても良い。
【0081】
また、この実施態様では、Y軸方向に互いが近傍に配置された2つのクロスポイントの間に位置する第1の透明電極24は、Y軸方向に対して+θおよび−θ傾いた線分で構成された輪郭線が2回繰り返した形状を備えているが、Y軸方向に必ずしも同一の形状を繰り返す必要はない。例えば、Y軸方向に対して+θおよび−θ傾いた線分で構成された輪郭線に引き続いて、+θおよび−θではない角度を備えた線分で次の輪郭線を形成することもできる。
【0082】
なお、上述の実施形態では、第1の透明電極24のY軸方向の輪郭線241、242と、これらと対向するダミーパターン23のそれぞれの輪郭線232、231との間には、所定の隙間が形成されているが、この隙間の幅は、位置検出センサ20として所定の均一な光学特性が確保できる範囲で所望の値が選択できる。また、この隙間の幅は必ずしも一定である必要はない。すなわち、上述したように、ダミーパターン23は、LCD30の画素32のY軸方向の配列に対して所定の角度を有する輪郭を有していれば良い。
【0083】
また、上記の実施形態は、Y軸方向に配置された第1の透明電極24の輪郭線241、242、およびY軸方向に配置された第1の透明電極24の輪郭線241、242に近接して形成された、ダミーパターン23のY軸方向の輪郭線231,232のそれぞれが、LCD30の画素32のY軸方向の配列との間でモアレ効果を生じさせないようにするための構成である。しかし、X軸方向に配置される第2の透明電極25の形状(輪郭線)と、ダミーパターン23のX軸方向の輪郭線233,234で規定される、X軸方向のそれぞれの輪郭に対してこの発明を適用できることは明らかである。これによって、LCD30の画素32のX軸方向の配列との間でのモアレ効果を防止することができる。
【0084】
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態のように、静電容量方式の位置検出センサ20において、隣り合う2本の第1の透明電極24と、隣り合う2本の第2の透明電極25とにより囲まれる領域に、第1の透明電極24および第2の透明電極25と同じ光透過率を有するITO膜からなるダミーパターン23が形成されると、導体であるダミーパターン23によって、第1の透明電極24と第2の透明電極25との間の距離dが短くなる。このため、第1の透明電極24および第2の透明電極25間の結合容量C(=k・S/d(kは比例定数、Sは電極の対向面積))が大きくなる。
【0085】
クロスポイント静電容量方式では、第1の透明電極24と第2の透明電極25との間の結合容量に対し、指や位置指示器等の指示体がセンサ20に近接または接触したときの容量変化を検出するものであるので、第1の透明電極24と第2の透明電極25との間の結合容量が大きくなると、指示体がセンサ20に近接または接触したときの容量変化の検出が困難になる。
【0086】
そこで、この第2の実施形態の位置検出センサでは、隣り合う2本の第1の透明電極24と、隣り合う2本の第2の透明電極25とにより囲まれる領域に、1領域からなるダミーパターン23の代わりに、このダミーパターン23を複数個に分割した複数個の小ダミーパターンからなる分割ダミーパターンDPを設ける。
【0087】
これにより、第1の透明電極24と第2の透明電極25との間の結合容量を、複数個のコンデンサが直列接続されたときの静電容量とみなすことができて、1領域からなるダミーパターン23の場合の結合容量を低減させることができる。したがって、指や位置指示器などの指示体が、位置検出センサに近接または接触したときの容量変化が検出し易くなり、位置検出感度を向上させることができる。
【0088】
しかし、この第2の実施形態においては、ダミーパターン23に代えて、複数個の小ダミーパターンからなる分割ダミーパターンDPが設けられるため、小ダミーパターンの輪郭線と、LCD30の画素32の配列パターンとの間でモアレ効果が生じる恐れがある。そこで、この第2の実施形態では、複数個の小ダミーパターンからなる分割ダミーパターンDPについて、LCD30の画素32の配列パターンとの間で生じるおそれのあるモアレ効果に対して対策を施している。
【0089】
図5に、この第2の実施形態の位置検出センサ60における、第1の透明電極24および第2の透明電極25からなるグリッド構成の電極パターンと、分割ダミーパターンDPのパターン形状の一例を示す。この図5の第2の実施形態の位置検出センサ60において、前述した第1の実施形態に示した位置検出センサ20の構成と同一部分には同一符号を付与してその説明は省略する。
【0090】
なお、以下に説明する第2の実施形態においても、上述の第1の実施形態と同様に、位置検出センサ60において、LCD30の画素32のY軸方向の配列との間で生じるおそれのあるモアレ効果を対象にその対策を説明する。
【0091】
図5に示すように、第2の実施形態においても、第1の透明電極24と、第2の透明電極25は、前述した第1の実施形態の場合と同様の形状の電極パターンを有する。一方、分割ダミーパターンDPは、2種類の平行四辺形の小ダミーパターン61,62と、2種類の三角形の小ダミーパターン63,64とを組み合わせたものとなる。
【0092】
ここで、小ダミーパターン61は、X軸方向に平行な輪郭線611、612と、Y軸方向に対して前記−θの傾斜を持つ輪郭線613、614で囲まれる平行四辺形の形状とされている。また、小ダミーパターン62は、X軸方向に平行な輪郭線621、622と、Y軸方向に対して前記+θの傾斜を持つ輪郭線623、624で囲まれる平行四辺形の形状とされている。
【0093】
また、小ダミーパターン63は、X軸方向に平行な輪郭線631と、Y軸方向に対して+θの傾斜を持つ輪郭線632と、Y軸方向に対して前記−θの傾斜を持つ輪郭線633とで囲まれた三角形の形状とされている。また、小ダミーパターン64は、X軸方向に平行な輪郭線641と、Y軸方向に対して前記+θの傾斜を持つ輪郭線642と、Y軸方向に対して前記−θの傾斜を持つ輪郭線643とで囲まれた三角形の形状とされている。そして、三角形の小ダミーパターン63は頂点が下方にある形状として配置され、三角形の小ダミーパターン64は頂点が上方にある形状として配置される。
【0094】
傾斜角θは、上述した第1の実施形態と全く同様であり、例えば5度≦θ≦45度の範囲の値とされ、この例では、θ=15度とされている。
【0095】
したがって、平行四辺形の小ダミーパターン61のY軸方向の輪郭線613,614は、第1の透明電極24の輪郭線241,242を構成する、Y軸方向に対して−θの傾斜を持つ線分241b,242bに対して平行となる。また、平行四辺形の小ダミーパターン62のY軸方向の輪郭線623,624は、第1の透明電極24の輪郭線241,242を構成する、Y軸方向に対して+θの傾斜を持つ線分241a,242aに対して平行となる。そして、三角形の小ダミーパターン63、64の輪郭線632,642は、第1の透明電極24の輪郭線241,242のうちのY軸方向に対して+θの傾斜を持つ線分241a,242aに対して平行となる。また、三角形の小ダミーパターン63、64の輪郭線633,643は、第1の透明電極24の輪郭線241,242のうちのY軸方向に対して−θの傾斜を持つ線分241b,242bに対して平行となる。
【0096】
そして、図5に示すように、隣り合う2本の第1の透明電極24と、隣り合う2本の第2の透明電極25とにより囲まれる領域に配置されたそれぞれの分割ダミーパターンDPは、平行四辺形の小ダミーパターン61および62がそれぞれ2個と、1個の三角形の小ダミーパターン63または64とがX軸方向に配列されている。また、Y軸方向には、この配列パターンが4行分繰り返されて構成される。この場合に、三角形の小ダミーパターン63または64は、分割ダミーパターンDPの配列におけるX軸方向の中央において、Y軸方向に設けられる。
【0097】
そして、これら小ダミーパターン61、62、63、64のそれぞれは、電気的に遊離されて形成されている。すなわち、小ダミーパターン61、62、63、64は、第1の透明電極24および第2の透明電極25とは、所定の隙間を有するように形成されると共に、小ダミーパターン同士の間も、所定の隙間を有するように形成される。
【0098】
この分割ダミーパターンDPは、前述した第1の実施形態と同様に、透明基板21の全面に形成されたITO膜に対して、マスクパターンが用いられて、フォトリソグラフィー工程が実行されることにより、第1および第2の透明電極24、25と共に、形成されるものである。
【0099】
この第2の実施形態の分割ダミーパターンDPは、当該分割ダミーパターンDPが占める領域のX軸方向およびY軸方向の中心点を中心として点対称に構成されている。したがって、分割ダミーパターンDPは、第1の透明電極24と第2の透明電極25との全ての交点(クロスポイント)のそれぞれを中心として、点対称な構成となる。更には、この分割ダミーパターンDPは、当該分割ダミーパターンDPが占める領域のX軸方向の中心線を対称軸として線対称の形状に構成されると共に、前記領域のY軸方向の中心線を対称軸として線対称の形状にも構成されてもいる。
【0100】
分割ダミーパターンDPを、このように第1の透明電極24と第2の透明電極25とで構成される全ての交点(クロスポイント)を中心として、点対称のパターン形状としたことにより、この第2の実施形態によれば、クロスポイントの全てにおいて、位置検出特性が均一となり、センサ20の全検出領域において均一なセンサ特性を有する。
【0101】
なお、全てのクロスポイントにおいて、Y軸方向とX方向の双方において均一な位置検出特性を得ることが必ずしも必要でない場合には次のような構成も採用することができる。すなわち、Y軸方向に対して位置検出特性を均一とするには、分割ダミーパターンDPのパターン形状を、第2の透明電極25を対称軸として、上下対称となるように形成すれば良い。また、X軸方向に対して位置検出特性を均一とするには、分割ダミーパターンDPのパターン形状を、第1の透明電極24を対称軸として左右対称となるように形成すれば良い。
【0102】
分割ダミーパターンDPを以上のようなパターン形状に構成することにより、この第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、第1の透明電極24の輪郭線241、242、小ダミーパターン61、62、63、64のY軸方向の輪郭線613、614、623、624、632、633、642、643により形成される線分がY軸方向に対して所定の傾きを有するので、この線分と、LCD30の画素32のY軸方向の配列パターンとの間でのモアレの発生が軽減あるいは防止される。
【0103】
[第2の実施形態の変形例]
上述の第2の実施形態の説明では、分割ダミーパターンDPのそれぞれにおいて、複数個の小ダミーパターン61,62,63,64のY軸方向に対する輪郭線は前記±θの傾きを有するものとして説明した。しかし、例えばX軸方向に並ぶ2つの小ダミーパターン61、62を、同じ形状の平行四辺形とすることは必ずしも必要とされない。上述したように、位置検出センサ60全体として均一な透過率が確保できるように、第1の透明電極24および第2の透明電極25のそれぞれの形状に対応した形状を備え、およびLCD30の画素32の配列方向と小ダミーパターン61,62,63,64のそれぞれの輪郭線の方向との間でのモアレの発生が軽減あるいは防止できるように、LCD30の画素32の配列方向に対し小ダミーパターン61,62,63,64のそれぞれの輪郭線の傾き角が所定の値に設定されれば良い。
【0104】
この場合にも、ダミーパターンDPは、当該ダミーパターンDPが占める領域のX軸方向の中心線を対称軸として線対称の形状に構成されると共に、そのY軸方向の中心線を対称軸として線対称の形状に構成し、更に、そのX軸方向およびY軸方向の中心点を対称の中心として点対称に構成するようにすると、センサ基板の全体に渡って均一なセンサ特性を有するようにすることができる。
【0105】
[その他の実施形態または変形例]
上述の第1の実施形態および第2の実施形態では、第1の透明電極24のY軸方向の輪郭線241、242を、Y軸方向に対して所定の傾き+θを有する直線の線分241a、242a、およびY軸方向に対して所定の傾き−θを有する直線の線分241b、242bで構成することにより、複数の第1の透明電極24のそれぞれの輪郭線はY軸方向に対して所定の傾きを有する形状とした。しかし、複数の第1の透明電極の形状を、このような傾きθを有する直線の線分で構成する場合に限られるものではない。
【0106】
例えば図6の例の位置検出センサ70は、第1の透明電極の形状を、Y軸方向に対して所定の傾きを有する形状とする方法として、Y軸方向に円弧状の曲線形状、いわゆる丸み形状を用いる場合である。また、図6の例の位置検出センサ70は、ダミーパターンを分割ダミーパターンとする第2の実施形態に適用した場合である。なお、この図6の例の位置検出センサ70において、前述した第1の実施形態に示した構成と同一部分には同一符号を付与してその説明は省略する。
【0107】
すなわち、この図6の例の複数の第1の透明電極24Rは、そのY軸方向の2本の輪郭線を、当該第1の透明電極24Rの幅の中心線243Rを対称軸として線対称な形状の円弧状の曲線241R,242Rで構成する。そして、この図6の例においては、第1の透明電極24Rは、Y軸方向に互いが近傍に配置された2個のクロスポイントの一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に、線対称な形状の円弧状の曲線241R、242Rを2回繰り返した形状としている。この繰り返し回数は、前述もしたように、モアレ対策のみならずノイズ対策を考慮した場合には、2回以上で、且つ、モアレ防止効果が低減されない回数とされる。
【0108】
そして、この図6の例の分割ダミーパターンDPRは、第1の透明電極24Rの輪郭に対応した形状の6種の小ダミーパターン71,72,73,74,75,76で構成される。すなわち、この図6の例においては、小ダミーパターン71〜74のいずれも、X軸方向に平行な直線からなる2本の輪郭線を有する。そして、小ダミーパターン71は、さらに、Y軸方向に互いが近傍に配置された2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線241Rの前半の曲線に平行な2本の曲線の輪郭線を有し、これらとX軸方向に平行な2本の直線の輪郭線により囲まれる4辺形の形状を備える。
【0109】
また、小ダミーパターン72は、Y軸方向に互いが近傍に配置された2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線241Rの後半の曲線に平行な2本の曲線の輪郭線を有し、これらとX軸方向に平行な2本の直線の輪郭線により囲まれる4辺形の形状を備える。
【0110】
また、小ダミーパターン73は、Y軸方向に互いが近傍に配置された2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線242Rの前半の曲線に平行な2本の曲線の輪郭線を有し、これらとX軸方向に平行な2本の直線の輪郭線により囲まれる4辺形の形状を備える。
【0111】
また、小ダミーパターン74は、Y軸方向に互いが近傍に配置された2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線242Rの後半の曲線に平行な2本の曲線の輪郭線を有し、これらとX軸方向に平行な2本の直線の輪郭線により囲まれる4辺形の形状を備える。
【0112】
また、小ダミーパターン75は、Y軸方向に互いが近傍に配置された2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線241Rの前半の曲線に平行な輪郭線と、Y軸方向の2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線242Rの前半の曲線に平行な輪郭線と、X軸方向に平行な直線の輪郭線により囲まれる楔形形状を備える。
【0113】
また、小ダミーパターン76は、Y軸方向に互いが近傍に配置された2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線241Rの後半の曲線に平行な輪郭線と、Y軸方向の2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線242Rの後半の曲線に平行な輪郭線と、X軸方向に平行な直線の輪郭線により囲まれる楔形形状を備える。
【0114】
ここで、6種の小ダミーパターン71、72、73、74、75、76のそれぞれは、この例においても、第1透明電極24Rおよび第2の透明電極25と同じITO膜で構成されると共に、互いに電気的に独立しており、且つ、電気的に遊離している状態に形成されている。そして、上述した第2の実施形態と同様にして、フォトリソグラフィー工程により、第1の透明電極24Rおよび第2の透明電極25と同時に、この分割ダミーパターンDPRが形成されるものである。
【0115】
そして、分割ダミーパターンDPRにおいては、X軸方向に、小ダミーパターン71が2度繰り返し、次に楔形の小ダミーパターン75が続き、更に小ダミーパターン73が2度繰り返す配列パターンと、X軸方向に、小ダミーパターン72が2度繰り返し、次に楔形の小ダミーパターン76が続き、更に小ダミーパターン73が2個度繰り返す配列パターンとが、Y軸方向に、2回繰り返すパターンとなる。
【0116】
この図6の例の分割ダミーパターンDPRも、当該分割ダミーパターンDPRが占める領域のX軸方向およびY軸方向の中心点を中心として点対称に構成されている。したがって、分割ダミーパターンDPRは、第1の透明電極24Rと第2の透明電極25との全ての交点(クロスポイント)のそれぞれを中心として、点対称に構成されている。なお、この分割ダミーパターンDPRは、当該分割ダミーパターンDPRが占める領域のX軸方向の中心線を対称軸として線対称の形状に構成されると共に、前記領域のY軸方向の中心線を対称軸として線対称の形状に構成されてもいる。
【0117】
この図6の例の位置検出センサ70によれば、第2の実施形態と全く同様の作用効果が得られる。
【0118】
なお、上述の実施形態では、第1の透明電極と、第2の透明電極と、ダミーパターン(分割ダミーパターンを含む)とを、全て、透明基板の一面側に形成するようにしたが、例えば第1の透明電極と第2の透明電極とを透明基板の一方の面と他方の面にそれぞれ形成し、ダミーパターンは透明基板の一方の面あるいは他方の面に設けても良い。また、第1および第2の透明電極を透明基板の一方の面に設けると共に、ダミーパターンを、透明基板の他方の面に設けるようにしても良い。
【0119】
しかし、上述の実施形態では、第1の透明電極と、第2の透明電極と、ダミーパターンとを、全て透明基板の一面側に形成するようにしたので、センサ20の製造工数が少なくなり、安価に構成することができるという効果を奏する。また、第1の透明電極と第2の透明電極やダミーパターンを透明基板の一方の面と他方の面に分けて形成する場合には、透明基板の厚さによっては、第1の透明電極と第2の透明電極の輪郭線や、ダミーパターンの輪郭線の見え方が変化することがあるという問題があるが、この実施形態によれば、第1の透明電極と、第2の透明電極と、ダミーパターンとを、全て透明基板の一面側に形成するので、このような問題を考慮する必要はない。
【0120】
なお、分割ダミーパターンにおける小ダミーパターンの数は、上述の実施形態に限られるものではないことは言うまでもない。
【0121】
なお、上述の実施形態は、静電容量方式の位置検出センサに、この発明を適用した場合であるが、この発明は、LCD、有機EL素子など、画素が直線状に配置されて表示装置を構成しており、この表示装置の表示面に透明の位置検出センサが重畳して配置される構成であれば、この発明を適用しうる。
【0122】
例えば、図7および図8に示すような電磁誘導方式の位置検出センサ80にも適用することができる。図7に示すように、この例の電磁誘導方式の位置検出センサ80は、LCDなどの表示装置81の表示面81Dに重畳して配置される光透過性を有する検出コイル基板82と、表示装置81の表示面81Dとは反対側に配置される駆動コイル基板83を備える。そして、この例の位置検出センサ80と共に使用する位置指示器84は、共振回路841を備える。
【0123】
駆動コイル基板83においては、例えば樹脂等の基板上に駆動コイルが配置される。この駆動コイル基板83は、表示装置81の裏面側に設けられるので、透明基板および駆動コイルを透明導体で構成する必要はない。
【0124】
この駆動コイル基板83の駆動コイルに所定の周波数信号を供給することで、誘導磁界が発生し、位置指示器84の共振回路841に、その誘導磁界に応じたエネルギーが蓄えられる。そして、位置指示器84は、その共振回路841に蓄えた磁界エネルギーを検出用コイル基板82に供給する。
【0125】
検出コイル基板82においては、図8に示すように、例えばITO膜からなる検出用ループコイル822Xと822Yが、グリッド状に形成されると共に、その周部には信号処理回路部800が設けられる。検出用ループコイル822Xは、Y軸方向に配置された長尺部を備え、検出コイル基板82上に、X軸方向に所定の間隔で、複数本配置されている。検出用ループコイル822Yは、X軸方向に配置された長尺部を備え、検出基板82上に、Y軸方向に所定の間隔で、複数本配置されている。
【0126】
信号処理回路部800は、選択回路823Xおよび823Yと、位置算出回路824とを備える。選択回路823Xは、位置算出回路824の制御に基づいて、検出用ループコイル822Xのいずれかを選択する。また、選択回路823Yは、位置算出回路824の制御に基づいて、検出用ループコイル822Yのいずれかを選択する。
【0127】
位置算出回路824は、選択回路823X、823Yで選択された検出用ループコイル822X、822Yで受信された信号に基づいて位置指示器84が指示する位置を検出する。すなわち、位置指示器84の共振回路841による磁界に応じて検出用ループコイル822X、822Yには誘導電流が生じる。位置算出回路824は、選択回路823Xおよび823Yを切り替えながら、誘導電流が生じた検出用ループコイル822X、822Yの位置を判定し、その判定結果から位置指示器84が指示する位置を算出して出力する。
【0128】
検出コイル基板82には、X軸方向およびY軸方向にITO膜からなる検出用ループコイル822Xおよび822Yが配置される。従って、ITO膜からなる検出用ループコイル822Xおよび822Yは、それぞれ所定の輪郭線を備えた形状を有しており、位置検出センサ20における第1の透明電極24、第2の透明電極25と同様に、表示装置81を構成する画素との間でモアレ効果が生じる恐れがある。従って、静電容量方式のみならず、このような構成の電磁誘導方式の位置検出センサであってもこの発明は適用することができる。
【0129】
この例においては、検出コイル基板82における光透過率の均一性を満足するために、検出用ループコイル822Xおよび822Yの間に存在する領域に、例えばITO膜からなるダミーパターンが設けられる。そして、この検出コイル基板82の検出用ループコイル822Xおよび822Yの導体の輪郭形状に対応した形状のダミーパターンの形状が適用される。また、ダミーパターンは、第2の実施形態のように複数個の小ダミーパターンからなる分割ダミーパターンで構成しても良い。
【0130】
以上により、この図7および図8に示した電磁誘導方式の位置検出センサの場合においても、検出コイル基板82をLCDなどの表示装置の表示面に重畳して配置したときに、LCDの表示画素の配列と、検出用ループコイルの導体あるいはダミーパターンとの間でのモアレ効果を軽減または防止することができる。
【0131】
なお、図7および図8に示した電磁誘導方式の位置検出センサ80においては、駆動コイルは駆動コイル基板83に配置されて、表示装置81の表示面81Dとは反対側に設けるようにしたが、駆動コイルを、表示装置81の表示面81D側の周部に配置することもできる。
【0132】
すなわち、図7に示した表示装置81の裏面に配置された駆動コイルに代えて、グリッド形状の検出用ループコイル822Xおよび822Yを備えた検出コイル基板82の一方の面、あるいは他方の面の周部に、駆動コイルを、図8において点線で示すように、周辺励磁コイル830として配置するようにしても良い。この周辺励磁コイル830によって、駆動コイル基板83に設けられた駆動コイルと同様に、位置指示器84の共振回路841に、その誘導磁界に応じたエネルギーが蓄えられる。そして、位置指示器84は、その共振回路841に蓄えた磁界エネルギーを検出用コイル基板82に供給する。
【0133】
なお、上述の実施形態では、透明の導体としては、ITO膜を用いたが、その他の透明性の導電材料を用いることも勿論できる。例えばZnO(酸化亜鉛)からなる透明導体や、溶液に微小なAg(銀)ワイヤを混ぜた透明導電性インクを用いることができる。また、前述したように、ダミーパターンは、必ずしも第1の透明電極や第2の透明電極を構成する導体と同一の透明材料で構成する必要はなく、光透過率が等しいあるいは近似する透明材料で構成しても良い。また、ダミーパターンは、必ずしも導体である必要はないので不導体材料、例えば透明の樹脂などで構成することもできる。
【0134】
また、以上の説明は、この発明の位置検出センサをタブレット装置に用いた場合であったが、この発明の位置検出センサは、タブレット装置に限らず、例えば携帯電話端末や携帯型パソコンなどの携帯端末や、据え置き型タイプの電子装置、その他の種々の電子装置に適用可能である。
【0135】
また、上述の実施形態では、表示装置は、全てLCDの場合として説明したが、LCDに限られるものではなく、例えば有機EL(electroluminescence)ディスプレイなど、表示画素が規則正しく配置された表示装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0136】
20…位置検出センサ、21…透明基板、22……透明電極群、23…ダミーパターン、24…第1の透明電極、25…第2の透明電極、26…導体層、27、28…隙間、30…LCD、32…表示画素、33…表示面
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置の表示面上に重ねて配置されて、指示体による入力操作位置を検出する位置検出センサおよびこの位置検出センサを用いる位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指やペンなどの指示体によって指示された位置を検出する位置検出装置が良く知られている。この位置検出装置で用いられる位置検出方式としては、抵抗膜方式、電磁誘導方式、静電容量方式など種々のものが提供されている。そのうちの静電容量方式には、表面型(Surface Capacitive Type)と投影型(Projected Capacitive Type)の2種類の方式があり、両方式ともセンサ電極と指示体との間の静電結合状態の変化を検出して、指示体によって指示された位置を検出する。
【0003】
例えば特許文献1(特開2009−9249号公報)には、この静電容量式の位置検出装置として、2次元容量センサ、すなわち、X軸センサトレース(センサ導体)およびY軸センサトレース(センサ導体)を備える構成が開示されている。この特許文献1の位置検出装置のセンサは、表示装置の表示面上に重ねて配置されることを想定して、光透過性の基材、例えばガラス板などの透明基板の上に、光透過性の透明の導体によりX軸センサトレースおよびY軸センサトレースを形成して構成されている。
【0004】
X軸センサトレースは、X軸方向(横方向)の位置を検出するために、透明基板上において、X軸方向に所定の間隔で配置されると共に、ダイヤモンド形状の透明な導体が、Y軸方向(縦方向)に複数本、連続して繋げられたような形状とされる。また、Y軸センサトレースは、Y軸方向の位置を検出するために、透明基板上において、Y軸方向に所定の間隔で配置されると共に、ダイヤモンド形状の透明な導体が、X軸方向に複数本、連続して繋げられたような形状とされる。
【0005】
そして、X軸センサトレースと、Y軸センサトレースとが、互いのダイヤモンド形状の導体が重ならず、かつ、電気的に互いに独立した状態で組み合わされることで、透明基板上に、2次元容量センサが構成される。したがって、この2次元容量センサは、透明基板に、透明なダイヤモンド形状の導体を均一に配列したパターン形状となり、透明基板の全体に渡って略均一な光透過性を得ることができる。
【0006】
この特許文献1の2次元容量センサは、複数本のX軸センサトレースのいずれかにおける静電容量の変化を検出することにより、指や位置指示器のX軸方向の位置を検出し、複数本のY軸センサトレースのいずれかにおける静電容量の変化を検出することにより、指や位置指示器のY軸方向の位置を検出する、いわゆるライン検出方式のセンサである。
【0007】
これに対して、投影型の静電容量方式を発展させたクロスポイント静電容量方式と呼ばれる方式の位置検出装置も提案されている。図9に、クロスポイント静電容量方式の位置検出装置におけるセンサ部の近傍の概略構成を示す。
【0008】
図9に示すように、クロスポイント静電容量方式の位置検出装置のセンサ部は、指示入力面の例えばY軸方向(縦方向)の上部電極Exと、X軸方向(横方向)の下部電極Eyとを、X軸方向およびY軸方向に、それぞれ所定間隔で複数本並べ、互いが直交するとともに僅かな隙間を空けて配列させることにより構成されている。この場合、上部電極Exと下部電極Eyとの間の重なり部分(クロスポイント)には所定の静電容量Co(固定容量)が形成される。
【0009】
そして、使用者が把持した位置指示器や使用者の指などの指示体100が、指示入力面に近づくあるいは接触した位置においては、その位置の電極Ex、Eyと指示体との間に静電容量Cfが形成される。そして、指示体100は人体を通じてグラウンドに所定の静電容量Cgを介して接続されている。この結果、その静電容量CfおよびCgのために、その指示体100が指示する位置において、上部電極Exと下部電極Eyとの間の電荷の移動量が変化する。クロスポイント静電容量方式の位置検出装置では、この電荷の移動量の変化を検出することで、指示入力面内において指示体100により指示された位置が特定される。
【0010】
この電荷の移動量の変化は、例えば、下部電極Eyを送信電極として、これに所定の信号を供給すると共に、上部電極Exを受信電極として、この受信電極からの受信信号の電流変化を検出することにより検出する。
【0011】
このクロスポイント静電容量方式の位置検出装置を、LCDや有機ELディスプレイなどの表示面上に重ねて配置して使用する場合には、上部電極Exおよび下部電極Eyのそれぞれは、例えばITO(Indium Tin Oxide)膜などの光透過性を有する一定幅の導電パターンが光透過性の基材、例えば透明ガラス基板などの表面に、Y軸方向およびX軸方向に配置されて形成される。
【0012】
この場合に、前述した特許文献1のライン検出方式のセンサとは異なり、クロスポイント静電容量方式の位置検出センサでは、隣り合う上部電極Exと隣り合う下部電極Eyとで囲まれる矩形領域には光透過性電極が形成されない領域が存在する。このため、この光透過性電極が形成されない領域では、光透過性の導電パターンが形成された部分とは、光透過性が異なるために、センサ領域の全体に渡った均一な光透過性を得ることが困難となる。
【0013】
この問題点を解決するために、特許文献2(特開2011−3034号公報)の段落[0115]〜[0120]および図18〜図19には、隣り合う上部電極110と隣り合う下部電極112とで囲まれる矩形領域に、光透過性材料、例えば上部電極110および下部電極112と同じITO膜からなるダミーパターン114を配するようにしたクロスポイント静電容量方式のセンサが開示されている。この場合、ダミーパターン114は、上部電極110および下部電極112とは電気的に互いに独立しており、かつ、電気的に遊離している状態(フローティングの状態)とされている。この特許文献2の位置検出センサによれば、上部電極110および下部電極112に近接して配置されたダミーパターン114の存在により、透過率のむらを抑制して、均一な光学特性を保持することができる。
【0014】
ところで、クロスポイント静電容量方式の位置検出センサでは、上述したように、互いに直交するX軸方向(横方向)およびY軸方向(縦方向)に、複数の上部電極および複数の下部電極が光透過性基板上にそれぞれ直線状に配置されて、いわゆるグリッド形状のセンサパターンが形成されている。そして、センサ領域の全体に渡って均一な光透過性を得るために、複数の上部電極および複数の下部電極によって形成されるそれぞれの領域に、上部電極および下部電極とは所定の隙間を介してダミーパターンが設けられる。
【0015】
このため、この位置検出センサを、LCDなどの表示装置の画面上に重畳して配置したときには、その表示装置のX軸方向(横方向)およびY軸方向(縦方向)に配列された表示画素と、上部電極、下部電極、およびダミーパターンとの間で、いわゆるモアレ効果が発生し、表示画像に明暗の干渉縞(モアレ)を生じさせるおそれがある。
【0016】
特許文献3(米国公開公報No.2009/02273577A1)には、この位置検出装置のセンサの電極と表示装置の画素配列との間でのモアレ効果を軽減あるいは防止することができる発明が開示されている。
【0017】
すなわち、図10に示すように、表示装置602の表示面においては、X軸方向(横方向)に赤、緑、青の3原色の副画素R、G、Bが順次繰り返し配置されるとともに、Y軸方向(縦方向)に展開されることで、表示画素が二次元配置されている。この場合に、Y軸方向には、同一色の副画素が一列に並べられており、このY軸方向の画素の配列と、位置検出センサのY軸方向の電極との間でのモアレ効果が生じ易いことが知られている。
【0018】
特許文献3では、表示装置602の表示面上に重畳される、送信電極604と受信電極618を備える位置検出センサ600が開示されている。位置検出センサ600のY軸方向の電極616は、図10に示すように、一定の幅を有する透明導体がY軸方向に所定の傾きを持って屈曲形状(ジグザク形状)に形成される。これにより、特許文献3では、Y軸方向の画素の配列と、位置検出センサのY軸方向の電極との間でのモアレ効果を軽減または防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2009−9249号公報
【特許文献2】特開2011−3034号公報
【特許文献3】米国公開公報No.2009/02273577A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、特許文献3の位置検出センサでは、モアレ効果の対策のために、一定の幅の電極が、屈曲形状に形成され、あるいは曲線の波状に形成されている。ところで、クロスポイント静電容量方式の位置検出センサでは、本来は、X軸方向の電極とY軸方向の電極とが交差して形成されるクロスポイントは、位置検出演算の容易性から、X軸方向においてもY軸方向においても、それぞれ一直線上に位置していることが望ましい。しかしながら、特許文献3の位置検出センサでは、受信電極618上に位置するクロスポイントは、受信電極618の屈曲形状や曲線形状に応じた位置となっており、一直線上には位置していない。
【0021】
すなわち、X軸方向に隣り合う2本の送信電極604と、Y軸方向に隣り合う2本の受信電極618によって特定される4個のクロスポイントで形成される形状は、位置検出演算の容易性から矩形であることが好ましい。特許文献3の位置検出センサでは、矩形ではない。したがって、特許文献3の位置検出センサでは、位置検出の際には、検出位置を補正するための信号補正処理を施す必要があり、位置検出装置の構成が複雑になってしまう。
【0022】
この発明は、以上の問題点を解決することができる位置検出センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、
第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向に配列された複数の画素を備えた表示装置の表示面に重畳して使用され、指示体が指示する位置を検出するための位置検出センサであって、
前記第1の方向に配置された光透過性を有する複数本の電極と、前記第2の方向に配置された光透過性を有する複数本の電極によるグリッド構成を備え、
前記第1の方向に互いが近傍に配置された2本の前記電極と前記第2の方向に互いが近傍に配置された2本の前記電極が互いに交差する4つのクロスポイントで形成される領域は矩形を形成し、
前記矩形の領域のうちの前記電極が形成されていない領域には、前記位置検出センサとしての均一な光学特性を得るように、所定の光透過性を有するダミーパターンが前記矩形の領域に形成された前記電極に近接して配置されると共に、前記ダミーパターンは電気的に遊離して配置され、
前記第1の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極のそれぞれは、互いが近傍に位置する2つのクロスポイントの間において、前記第1の方向に配置された複数の前記画素との間でのモアレ効果を防止するように、前記第1の方向に対して所定の傾きを有する形状を有すると共に、前記指示体が指示する位置の検出精度のために、前記第1の方向の直線を対称軸とした線対称となるような形状を有している
ことを特徴とする位置検出センサを提供する。
【0024】
この請求項1の発明においては、第1の方向に配置された光透過性を有する複数本の電極のそれぞれは、第1の方向に対して所定の傾きを有する形状とされることで、第1の方向に配置された複数の画素との間でのモアレの発生を軽減または防止することができる。
【0025】
また、第1の方向に互いが近傍に配置された2本の電極と第2の方向に互いが近傍に配置された2本の電極が互いに交差する4つのクロスポイントで形成される領域は矩形を形成するように構成しているので、モアレ対策処理をした構成であっても、位置検出センサのクロスポイントの位置は第1の方向および第2の方向のそれぞれに対して、一直線上に配列されているために、指示位置に対応して検出位置を補正するような信号処理は必要とされない。
【0026】
しかも、第1の方向に配置された光透過性を有する複数本の電極のそれぞれは、第1の方向の直線を対称軸とした線対称となるような形状を有している。すなわち、第1の方向に配置された光透過性を有するそれぞれの電極の幅、すなわち第2の方向における長さ、の中点を結んだ中心線(線対称の対称軸)は、位置検出のための基準線となるが、この発明では、この基準線が第1の方向に平行な直線となるようにされる。したがって、この発明では、この点においても、検出位置を補正するための信号補正処理は必要なく、指示体が指示する位置を精度良く検出できる。
【発明の効果】
【0027】
この発明による位置検出センサによれば、グリッド構成のセンサパターンにダミーパターンを配置することでセンサ領域の全体に渡って均一な光透過性を確保することができる。また、表示装置の表示面に重畳して配置した際に、ダミーパターンの配置に起因する、表示面の画素配列と位置検出センサとの間でのモアレの発生を軽減または防止することができる。更には、信号処理回路における補正処理を設けなくても、指示体が指示する位置を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明による位置検出センサの第1の実施形態を備える位置検出装置の一例を説明するための図である。
【図2】この発明による位置検出センサの第1の実施形態を備える位置検出装置のセンサ回路の構成例を説明するための図である。
【図3】この発明による位置検出センサの第1の実施形態の構成例を説明するための図である。
【図4】図3の位置検出センサを、表示面に重ねた状態の一例を示す図である。
【図5】この発明による位置検出センサの第2の実施形態の構成例を説明するための図である。
【図6】この発明による位置検出センサの第2の実施形態の他の構成例を説明するための図である。
【図7】この発明による位置検出装置の他の実施形態を説明するための図である。
【図8】この発明による位置検出装置の他の実施形態を説明するための図である。
【図9】従来の位置検出センサの一例を説明するための図である。
【図10】従来の位置検出センサのモアレ防止対策の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明による位置検出装置およびその位置検出センサの実施形態について図を参照しながら説明する。
【0030】
[第1の実施形態]
図1は、この発明による位置検出センサの第1の実施形態を備える位置検出装置の一例の分解構成図を示す。この図1の例においては、表示装置の表示面への例えばペン(スタイラス)によって指示された位置を検出する位置検出センサを備えるタブレット装置の構成を説明する。
【0031】
この例のタブレット装置10は、図1に示すように、位置検出センサ20と、表示装置の例としてのLCD(Liquid Crystal Display)30と、プリント配線基板40と、タブレット装置10の筐体を構成する上ケース51と、下ケース52とで構成されている。
【0032】
図1に示すように、LCD30は、LCD基板31上に、表示画素32が、X軸方向(横方向)に多数個配列されている共に、X軸方向に直交するY軸方向(縦方向)に多数個配列された表示面33を備えている。位置検出センサ20は、このLCD30の表示面33上に重ねられるようにして配置される。
【0033】
位置検出センサ20は、この例では、クロスポイント静電容量方式のセンサの構成とされている。この例では、位置検出センサ20は、透明基板21の一面(LCD30の表示面33に対向する面とは反対側の面)に、光透過性を有する複数の電極からなる透明電極群22が形成されると共に、所定の光透過性を有するダミーパターン23が配設されて構成されている。透明基板21は、例えばガラス基板からなる。
【0034】
透明電極群22は、Y軸方向に配置された複数本の第1の透明電極24と、Y軸方向に直交するX軸方向に配置された複数本の第2の透明電極25からなる。第1の透明電極24は、X軸方向に、所定間隔ずつ隔てて配置されている。また、第2の透明電極25は、Y軸方向に、所定間隔ずつ隔てて配置されている。これら第1の透明電極24および第2の透明電極25は、光透過性の導電材料例えばITO膜からなる導体で構成されている。
【0035】
そして、第1の透明電極24と第2の透明電極25とは、この例においては、透明基板21の同じ一面側に形成されている。このため、互いに直交する第1の透明電極24と第2の透明電極25との交差点であるクロスポイントの領域においては、第1の透明電極24と第2の透明電極25との間に絶縁材が配置されることで互いが電気的に絶縁されている。このクロスポイントの領域における第1の透明電極24と第2の透明電極25との間の絶縁についての詳細構造については後述する。
【0036】
ダミーパターン23は、隣り合う第1の透明電極24と、隣り合う第2の透明電極25とにより囲まれる領域に設けられる。このダミーパターン23は、第1の透明電極24および第2の透明電極25が形成されていない部分の光透過率を、第1の透明電極24および第2の透明電極25が形成されている部分の光透過率と等しくするようにすることで、センサ基板として均一な光学特性を得るようにするためのものである。
【0037】
したがって、ダミーパターン23は、透明電極24,25と同じあるいは近似した光透過率を有する材料で構成されればよく、導電体である必要はない。しかし、この実施形態では、光透過率の均一性や位置検出センサ20の製造のし易さを考慮して、ダミーパターン23も、透明電極24、25として使用されるITO膜により形成される。
【0038】
このため、この実施形態では、位置検出センサ20としての好ましい光学性能を維持するために、ダミーパターン23は、第1の透明電極24および第2の透明電極25とは所定の隙間を空けて配置されるとともに、第1の透明電極24および第2の透明電極25とは電気的に独立している。そして、第1の透明電極24と第2の透明電極25とにより囲まれる領域に設けられるダミーパターン23のそれぞれは、電気的に遊離されている状態(フローティングの状態)とされている。
【0039】
以上のように、第1の透明電極24、第2の透明電極25およびダミーパターン23が配置されている透明基板21には、信号処理回路部としてのセンサ回路部(図示は省略)が設けられている。このセンサ回路部は、図2に示すように、送信信号発生回路201、送信電極選択回路202、受信電極選択回路203、受信信号処理回路204、出力回路205および制御回路206を備えている。
【0040】
送信信号発生回路201および送信電極選択回路202は、送信信号供給回路を構成し、受信電極選択回路203および受信信号処理回路204は、信号受信回路を構成する。そして、この例では、第1の透明電極24は、受信電極とされると共に、第2の透明電極25は、送信電極とされている。
【0041】
送信信号発生回路201は、制御回路206の制御に従ったタイミングで、所定の送信信号を送信電極選択回路202に供給する。送信電極選択回路202は、制御回路206の選択制御にしたがって、所定の第2の透明電極25を選択する。送信電極選択回路202によって選択された第2の透明電極25には送信信号発生回路201から送信信号が供給される。
【0042】
受信電極選択回路203は、制御回路206の制御にしたがって、順次第1の透明電極24を選択し、選択した第1の透明電極24からの受信信号を受信信号処理回路204に供給する。
【0043】
受信信号処理回路204は、制御回路206による制御に基づいて、受信信号を処理し、指や位置指示器などの指示体が位置検出センサ上で位置を指示することで生じる信号変化を第1の透明電極24で検出し、その検出出力を出力回路205に供給する。
【0044】
出力回路205は、制御回路206による制御に基づいて、受信信号処理回路204の検出出力から、前記信号変化が生じた第1の透明電極24と、そのときに送信信号が供給されている第2の透明電極25とから、指または位置指示器などの指示体によって指示された位置に対応した検出信号を生成して出力する。
【0045】
プリント配線基板40には、タブレット装置10を制御するためのIC(Integrated Circuit;集積回路)、その他の電子部品と、銅箔配線パターンが搭載されている。また、このプリント配線基板40には、上述のセンサ20のセンサ回路およびLCD30の表示ドライブ回路と接続するためのコネクタ(図示は省略)も設けられている。
【0046】
タブレット装置10の筐体を構成する上ケース51と下ケース52は、それぞれ例えば合成樹脂により構成されている。この筐体の下ケース52には、位置検出センサ20が配設された透明基板21、LCD基板31およびプリント配線基板40を収納するための凹部53が形成されている。この凹部53内に、位置検出センサ20が配設された透明基板21、LCD基板31およびプリント配線基板40が収納された後、上ケース51が下ケース52に接着材によって接着されるなどされることにより、凹部53が閉塞されて、タブレット装置10が組み立てられる。
【0047】
[位置検出センサ20のパターン形状]
次に、位置検出センサ20における第1の透明電極24、第2の透明電極25およびダミーパターン23の詳細なパターン形状について、図3を参照しながら説明する。
【0048】
先ず、透明基板21の一面上の所定の領域に、ITO膜が均一に形成される。次に、ITO膜に対して、マスクパターンが用いられて、例えばフォトリソグラフィー工程が実行され、ITO膜による第1の透明電極24および第2の透明電極25からなるグリッド構成の電極パターンと、第1の透明電極24および第2の透明電極25とは電気的に独立すると共に、電気的に遊離しているそれぞれのダミーパターン23が同時に形成される。
【0049】
なお、図3は、紙面の都合上、透明電極群22のうち、3本の第1の透明電極24と、3本の第2の透明電極25とからなる部分を部分的に示したものであり、透明電極24および第2の透明電極25の構成およびダミーパターン23の構成を詳細に示している。
【0050】
図3に示すように、第1の透明電極24は、後述するような所定の輪郭を有するY軸方向の導体として、X軸方向に所定間隔ずつ隔てて透明基板21上に形成される。一方、第2の透明電極25は、X軸方向の一定幅Wyの導体として、Y軸方向に所定間隔ずつ隔てて透明基板21上に形成される。この段階では、透明基板21上において、第1の透明電極24が存在する電極部分において電気的に分離された複数の導体片25PがX軸方向に配列されている。
【0051】
そして、次に、例えばフォトリソグラフィー工程により、第1の透明電極24と第2の透明電極25との交差部に絶縁層(図示は省略)を形成する。次に、その絶縁層の上に、第1の透明電極24とは絶縁層により絶縁を保った状態で、X軸方向に隣り合う2個の導体片25Pを橋絡して電気的に接続するための導電層26を、例えばフォトリソグラフィー工程により形成する。この導電層26により、X軸方向に配列されている複数個の導体片25Pが電気的に接続されることでX軸方向に配置される第2の透明電極25が形成される。
【0052】
なお、この実施形態では、第1の透明電極24と第2の透明電極25とが交差するクロスポイント部分においては、第1の透明電極24は、幅を狭くしていると共に、第2の透明電極25を構成する導体片25Pも幅を狭くし、かつ、絶縁層および導体層26をできるだけ小さく形成するようにしている。これにより、第1の透明電極24と第2の透明電極25とが交差するクロスポイント部分が、光透過率がセンサ基板21における他の部分と、できるだけ変化なく、かつ、目立たないように工夫されている。
【0053】
[位置検出センサ20における電極パターン形状;モアレ対策]
次に、図3を参照して、LCD30の画素配列パターンとの間に生じるおそれのあるモアレ効果を軽減するためのセンサ基板21上の導体パターン形状について説明する。
【0054】
なお、この図3に示した例は、第1の透明電極24の電極パターンの輪郭とダミーパターン23のY軸方向の輪郭のそれぞれが、LCD30のY軸方向の画素配列との間で生じるモアレ効果を軽減する場合である。この実施形態では、LCD30の画素32は、同一色の副画素がY軸方向に一列に並べられている。したがって、このY軸方向の画素配列と、位置検出センサ20のY軸方向に配置された第1の透明電極24との間でのモアレ効果が生じ易く、目立つ。
【0055】
なお、この発明は、第2の透明電極25の電極パターンの輪郭とダミーパターン23のX軸方向の輪郭のそれぞれが、LCD30のX軸方向の画素配列との間で生じるモアレ効果に対しても適用できることは言うまでもない。
【0056】
図3に示すように、隣接する2本の第1の透明電極24と隣接する2本の第2の透明電極25とが互いに交差する4つのクロスポイントで形成される領域は矩形となっている。これにより、位置検出センサ20のクロスポイントの位置が、X軸方向においてもY軸方向においても、それぞれ一直線上にあり、これにより、位置検出演算の際の位置補正処理を不要として、位置検出を容易に行うことができる。
【0057】
この実施形態では、第1の透明電極24を、2つのクロスポイントの間において、以下に示すような所定の電極パターン形状に形成する。
【0058】
第1の透明電極24は、Y軸方向に対して所定の傾きを有する形状であって、かつ、Y軸方向の直線を対称軸とした線対称となるような形状を有する。すなわち、図3に示すように、第1の透明電極24は、Y軸方向の2本の輪郭線241、242により規定される形状を有するが、第1の透明電極24のY軸方向の2本の輪郭線241、242のそれぞれは、Y軸方向とは非平行とされる。
【0059】
この実施形態では、輪郭線241および輪郭線242は、Y軸方向に対して+θ(θ>0)だけ傾いている線分241aおよび242aと、Y軸方向に対して−θだけ傾いている線分241bおよび242bとが、それぞれ連なった構成を備える。輪郭線241と輪郭線242とは、Y軸方向に対して+θだけ傾いている線分241aとY軸方向に対して−θだけ傾いている線分242bとがX軸方向に互いに対向すると共に、Y軸方向に対して−θだけ傾いている線分241bとY軸方向に対して+θだけ傾いている線分242aとがX軸方向に互いに対向するように形成されている。
【0060】
この場合、第1の透明電極24の輪郭線241,242を構成する線分241a、241b、242a、242bのY軸方向に対する傾き角θは、LCD30において同じ副画素が並ぶ縦方向を基準として考えることができ、モアレの発生を防止するためにその傾き角θが選定される。この傾き角θは、5度以上45度以下の範囲で、視認によりモアレ発生の防止効果が得られることが確かめられた。この例ではθ=15度に選定されている。
【0061】
第1の透明電極24の幅Wxは一定ではないが、当該幅WxのX軸方向における中点を結んだ中心線243(図3では一点鎖線で示す)は、Y軸方向に平行な直線となる。つまり、第1の透明電極24は、Y軸方向に平行な直線である中心線243を対称軸として線対称の形状となるように構成されている。
【0062】
このように、第1の透明電極24は、Y軸方向に平行な直線を対称軸として線対称の形状となるので、この第1の透明電極24を受信電極としたときの受信信号処理回路204は、第1の透明電極24が一定幅の直線状パターンであるときと同じ回路を使用することができ、指示位置に対応した位置補正処理等は不要となる。
【0063】
また、第1の透明電極24は、Y軸方向に互いが近傍に配置された、2つのクロスポイントを構成する一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に、Y軸方向に対して+θだけ傾いている線分241aおよび242aとY軸方向に対して−θだけ傾いている線分241bおよび242bとが複数回、この例では、2回繰り返される形状を有している。
【0064】
第1の透明電極24は、モアレの発生を軽減あるいは防止のためであれば、Y軸方向に対して+θおよび−θの傾きを持つ形状を、Y軸方向に互いが近傍に配置された、2つのクロスポイントを構成する一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に1つ以上有していれば良い。
【0065】
しかし、第1の透明電極24を、Y軸方向に互いが近傍に配置された、2つのクロスポイントを構成する一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に、Y軸方向に対して+θおよび−θの傾きを持つ形状を一つだけ設ける形状にすると、第1の透明電極の幅Wxの最大値が広くなって、ノイズを拾い易くなる。
【0066】
また、第1の透明電極24を、Y軸方向に互いが近傍に配置された、2つのクロスポイントを構成する一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に、Y軸方向に対して+θおよび−θの傾きを持つ形状が多数回繰り返された形状にした場合には、第1の透明電極のY軸方向の輪郭線241、242は、全体として、Y軸方向に平行な直線に近似することとなり、モアレ防止効果が低減されてしまう。
【0067】
そこで、第1の透明電極24の形状は、Y軸方向に互いが近傍に配置された、2つのクロスポイントの一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に、Y軸方向に対して+θおよび−θの傾き角を持つ形状が、2回以上で、且つ、モアレ防止効果が低減されない回数分だけ繰り返された形状とすることが、ノイズ対策およびモアレ対策上、好ましいものとなる。
【0068】
次に、X軸方向に配置された第2の透明電極25(導体片25P)は、X軸方向の2本の輪郭線251、252により規定される形状を有する。前述したように、この実施形態では、同一色の副画素がY軸方向に一列に並べられている。そのために、X軸方向に配置されたLCD30の画素32と、第2の透明電極25との間では、モアレ効果は、第1の透明電極24との間と比較して、生じにくいことが知られている。そこで、第2の透明電極25のX軸方向の輪郭線251および252は直線とされ、第2の透明電極25は、従来と同様の一定幅WyのITO膜からなる導体で構成されている。
【0069】
次に、ダミーパターン23は、図3に示すように、第1の透明電極24の輪郭線242、241にそれぞれ近接する2本の輪郭線231、232によりY軸方向の輪郭が規定される。また、第2の透明電極25の輪郭線252、251にそれぞれ近接する2本の輪郭線233、234によりX軸方向の輪郭が規定される。
【0070】
ダミーパターン23のY軸方向の2本の輪郭線231および232は、位置検出センサ20としての均一な光学特性を得るように、第1の透明電極24の2本の輪郭線241および242とは、それぞれ所定幅の隙間27を隔てて形成されている。したがって、ダミーパターン23のY軸方向に沿う2本の輪郭線231、232は、Y軸方向に対して前記+θだけ傾いている線分231a、232aおよびY軸方向に対して前記−θだけ傾いている線分231b、232bがそれぞれ連続的に連なった形状を備える。なお、隙間27は、一定の幅で形成されている。
【0071】
また、ダミーパターン23のX軸方向の2本の輪郭線233および234と、当該ダミーパターン23をY軸方向に挟む2本の第2の透明電極25の輪郭線252および251は、それぞれ所定幅の隙間28を隔てて形成されている。この隙間28は、一定の幅で形成されている。
【0072】
図4に、LCD30の表示面33上に、位置検出センサ20が重畳配置されたときの、画素配列パターンと、第1の透明電極24、第2の透明電極25の電極パターン、およびダミーパターン23との位置関係の一例を示す。
【0073】
図4に示すように、画素32を構成する赤、緑、青の3原色の副画素34R、34G、34Bは、X軸方向(横方向)の同一行に、それら3原色の副画素34R、34G、34Bが順次繰り返すように並べられている。また、その3個の副画素34R,34BG,34Bのそれぞれは、Y軸方向の同一列には、同じ副画素が複数配置されて、LCD30の表示面33を構成している。
【0074】
この例では、Y軸方向に同一色の副画素34R,34BG,34Bのそれぞれが一列に並べられており、このY軸方向の画素配列と、センサ30のY軸方向の第1の透明電極24との間でモアレ効果が生じ易くなる。
【0075】
しかし、この実施形態の位置検出センサ20によれば、Y軸方向に配置されている第1の透明電極24の輪郭線は、Y軸方向に対して所定の傾き角+θ、−θを有する形状とされており、また、位置検出センサ20としての均一な光学特性を得るように、この第1の透明電極24と隙間27を介して近接配置されたダミーパターン23も、Y軸方向とは所定の傾き角+θ、−θを持ったものとなっている。したがって、LCD30の表示画素32のY軸方向の配列パターンとの間で、モアレの発生が軽減あるいは防止される。
【0076】
そして、この実施形態においては、互いに隣り合う2本の第1の透明電極24と、互いに隣り合う2本の第2の透明電極25とによる4点のクロスポイントで形成される領域の形状は、モアレ対策を施しても矩形形状を維持しており、矩形形状を備えていないことに起因する、指示体による位置指示に対応した位置補正処理を行う必要はない。
【0077】
さらに、この実施形態においては、Y軸方向に配置された第1の透明電極24は、そのX軸方向における幅Wxの中心点を結んで形成された、Y軸方向に直線状の中心線243を対称軸として線対称の形状を備えるので、第1の透明電極24を受信電極として信号を受信する受信信号処理回路204は、第1の透明電極24がX軸方向に一定幅の直線状パターンであるときと同じ回路を使用することができ、X軸方向に一定幅を有しない受信電極を使用した場合に必要とされる位置補正処理は不要となる。
【0078】
[第1の実施形態の変形例]
上述の第1の実施形態では、複数本の第1の透明電極24のそれぞれにおいて、前記傾き角θを同一として説明したが、複数本の第1の透明電極24の全てにおいて前記傾き角θを同一としなくてもよいことは明らかである。
【0079】
例えば、X軸方向に一つおきに配置された第1の透明電極24は、上述の第1の実施形態の場合と同様に、その輪郭線241および242は、前記正および負の傾き角θ=15度である線分からなるものとし、残りの一つおきに配置された第1の透明電極24の輪郭線241および242は、正および負の傾き角θ´が、θ´≠15度(ただし、5度≦θ´≦45度)、例えばθ´=20度である線分からなるものとしても良い。
【0080】
なお、傾き角を異ならせた透明電極24は、X軸方向の一つおきにする場合に限られるものではなく、複数本おきに配置しても良い。
【0081】
また、この実施態様では、Y軸方向に互いが近傍に配置された2つのクロスポイントの間に位置する第1の透明電極24は、Y軸方向に対して+θおよび−θ傾いた線分で構成された輪郭線が2回繰り返した形状を備えているが、Y軸方向に必ずしも同一の形状を繰り返す必要はない。例えば、Y軸方向に対して+θおよび−θ傾いた線分で構成された輪郭線に引き続いて、+θおよび−θではない角度を備えた線分で次の輪郭線を形成することもできる。
【0082】
なお、上述の実施形態では、第1の透明電極24のY軸方向の輪郭線241、242と、これらと対向するダミーパターン23のそれぞれの輪郭線232、231との間には、所定の隙間が形成されているが、この隙間の幅は、位置検出センサ20として所定の均一な光学特性が確保できる範囲で所望の値が選択できる。また、この隙間の幅は必ずしも一定である必要はない。すなわち、上述したように、ダミーパターン23は、LCD30の画素32のY軸方向の配列に対して所定の角度を有する輪郭を有していれば良い。
【0083】
また、上記の実施形態は、Y軸方向に配置された第1の透明電極24の輪郭線241、242、およびY軸方向に配置された第1の透明電極24の輪郭線241、242に近接して形成された、ダミーパターン23のY軸方向の輪郭線231,232のそれぞれが、LCD30の画素32のY軸方向の配列との間でモアレ効果を生じさせないようにするための構成である。しかし、X軸方向に配置される第2の透明電極25の形状(輪郭線)と、ダミーパターン23のX軸方向の輪郭線233,234で規定される、X軸方向のそれぞれの輪郭に対してこの発明を適用できることは明らかである。これによって、LCD30の画素32のX軸方向の配列との間でのモアレ効果を防止することができる。
【0084】
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態のように、静電容量方式の位置検出センサ20において、隣り合う2本の第1の透明電極24と、隣り合う2本の第2の透明電極25とにより囲まれる領域に、第1の透明電極24および第2の透明電極25と同じ光透過率を有するITO膜からなるダミーパターン23が形成されると、導体であるダミーパターン23によって、第1の透明電極24と第2の透明電極25との間の距離dが短くなる。このため、第1の透明電極24および第2の透明電極25間の結合容量C(=k・S/d(kは比例定数、Sは電極の対向面積))が大きくなる。
【0085】
クロスポイント静電容量方式では、第1の透明電極24と第2の透明電極25との間の結合容量に対し、指や位置指示器等の指示体がセンサ20に近接または接触したときの容量変化を検出するものであるので、第1の透明電極24と第2の透明電極25との間の結合容量が大きくなると、指示体がセンサ20に近接または接触したときの容量変化の検出が困難になる。
【0086】
そこで、この第2の実施形態の位置検出センサでは、隣り合う2本の第1の透明電極24と、隣り合う2本の第2の透明電極25とにより囲まれる領域に、1領域からなるダミーパターン23の代わりに、このダミーパターン23を複数個に分割した複数個の小ダミーパターンからなる分割ダミーパターンDPを設ける。
【0087】
これにより、第1の透明電極24と第2の透明電極25との間の結合容量を、複数個のコンデンサが直列接続されたときの静電容量とみなすことができて、1領域からなるダミーパターン23の場合の結合容量を低減させることができる。したがって、指や位置指示器などの指示体が、位置検出センサに近接または接触したときの容量変化が検出し易くなり、位置検出感度を向上させることができる。
【0088】
しかし、この第2の実施形態においては、ダミーパターン23に代えて、複数個の小ダミーパターンからなる分割ダミーパターンDPが設けられるため、小ダミーパターンの輪郭線と、LCD30の画素32の配列パターンとの間でモアレ効果が生じる恐れがある。そこで、この第2の実施形態では、複数個の小ダミーパターンからなる分割ダミーパターンDPについて、LCD30の画素32の配列パターンとの間で生じるおそれのあるモアレ効果に対して対策を施している。
【0089】
図5に、この第2の実施形態の位置検出センサ60における、第1の透明電極24および第2の透明電極25からなるグリッド構成の電極パターンと、分割ダミーパターンDPのパターン形状の一例を示す。この図5の第2の実施形態の位置検出センサ60において、前述した第1の実施形態に示した位置検出センサ20の構成と同一部分には同一符号を付与してその説明は省略する。
【0090】
なお、以下に説明する第2の実施形態においても、上述の第1の実施形態と同様に、位置検出センサ60において、LCD30の画素32のY軸方向の配列との間で生じるおそれのあるモアレ効果を対象にその対策を説明する。
【0091】
図5に示すように、第2の実施形態においても、第1の透明電極24と、第2の透明電極25は、前述した第1の実施形態の場合と同様の形状の電極パターンを有する。一方、分割ダミーパターンDPは、2種類の平行四辺形の小ダミーパターン61,62と、2種類の三角形の小ダミーパターン63,64とを組み合わせたものとなる。
【0092】
ここで、小ダミーパターン61は、X軸方向に平行な輪郭線611、612と、Y軸方向に対して前記−θの傾斜を持つ輪郭線613、614で囲まれる平行四辺形の形状とされている。また、小ダミーパターン62は、X軸方向に平行な輪郭線621、622と、Y軸方向に対して前記+θの傾斜を持つ輪郭線623、624で囲まれる平行四辺形の形状とされている。
【0093】
また、小ダミーパターン63は、X軸方向に平行な輪郭線631と、Y軸方向に対して+θの傾斜を持つ輪郭線632と、Y軸方向に対して前記−θの傾斜を持つ輪郭線633とで囲まれた三角形の形状とされている。また、小ダミーパターン64は、X軸方向に平行な輪郭線641と、Y軸方向に対して前記+θの傾斜を持つ輪郭線642と、Y軸方向に対して前記−θの傾斜を持つ輪郭線643とで囲まれた三角形の形状とされている。そして、三角形の小ダミーパターン63は頂点が下方にある形状として配置され、三角形の小ダミーパターン64は頂点が上方にある形状として配置される。
【0094】
傾斜角θは、上述した第1の実施形態と全く同様であり、例えば5度≦θ≦45度の範囲の値とされ、この例では、θ=15度とされている。
【0095】
したがって、平行四辺形の小ダミーパターン61のY軸方向の輪郭線613,614は、第1の透明電極24の輪郭線241,242を構成する、Y軸方向に対して−θの傾斜を持つ線分241b,242bに対して平行となる。また、平行四辺形の小ダミーパターン62のY軸方向の輪郭線623,624は、第1の透明電極24の輪郭線241,242を構成する、Y軸方向に対して+θの傾斜を持つ線分241a,242aに対して平行となる。そして、三角形の小ダミーパターン63、64の輪郭線632,642は、第1の透明電極24の輪郭線241,242のうちのY軸方向に対して+θの傾斜を持つ線分241a,242aに対して平行となる。また、三角形の小ダミーパターン63、64の輪郭線633,643は、第1の透明電極24の輪郭線241,242のうちのY軸方向に対して−θの傾斜を持つ線分241b,242bに対して平行となる。
【0096】
そして、図5に示すように、隣り合う2本の第1の透明電極24と、隣り合う2本の第2の透明電極25とにより囲まれる領域に配置されたそれぞれの分割ダミーパターンDPは、平行四辺形の小ダミーパターン61および62がそれぞれ2個と、1個の三角形の小ダミーパターン63または64とがX軸方向に配列されている。また、Y軸方向には、この配列パターンが4行分繰り返されて構成される。この場合に、三角形の小ダミーパターン63または64は、分割ダミーパターンDPの配列におけるX軸方向の中央において、Y軸方向に設けられる。
【0097】
そして、これら小ダミーパターン61、62、63、64のそれぞれは、電気的に遊離されて形成されている。すなわち、小ダミーパターン61、62、63、64は、第1の透明電極24および第2の透明電極25とは、所定の隙間を有するように形成されると共に、小ダミーパターン同士の間も、所定の隙間を有するように形成される。
【0098】
この分割ダミーパターンDPは、前述した第1の実施形態と同様に、透明基板21の全面に形成されたITO膜に対して、マスクパターンが用いられて、フォトリソグラフィー工程が実行されることにより、第1および第2の透明電極24、25と共に、形成されるものである。
【0099】
この第2の実施形態の分割ダミーパターンDPは、当該分割ダミーパターンDPが占める領域のX軸方向およびY軸方向の中心点を中心として点対称に構成されている。したがって、分割ダミーパターンDPは、第1の透明電極24と第2の透明電極25との全ての交点(クロスポイント)のそれぞれを中心として、点対称な構成となる。更には、この分割ダミーパターンDPは、当該分割ダミーパターンDPが占める領域のX軸方向の中心線を対称軸として線対称の形状に構成されると共に、前記領域のY軸方向の中心線を対称軸として線対称の形状にも構成されてもいる。
【0100】
分割ダミーパターンDPを、このように第1の透明電極24と第2の透明電極25とで構成される全ての交点(クロスポイント)を中心として、点対称のパターン形状としたことにより、この第2の実施形態によれば、クロスポイントの全てにおいて、位置検出特性が均一となり、センサ20の全検出領域において均一なセンサ特性を有する。
【0101】
なお、全てのクロスポイントにおいて、Y軸方向とX方向の双方において均一な位置検出特性を得ることが必ずしも必要でない場合には次のような構成も採用することができる。すなわち、Y軸方向に対して位置検出特性を均一とするには、分割ダミーパターンDPのパターン形状を、第2の透明電極25を対称軸として、上下対称となるように形成すれば良い。また、X軸方向に対して位置検出特性を均一とするには、分割ダミーパターンDPのパターン形状を、第1の透明電極24を対称軸として左右対称となるように形成すれば良い。
【0102】
分割ダミーパターンDPを以上のようなパターン形状に構成することにより、この第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、第1の透明電極24の輪郭線241、242、小ダミーパターン61、62、63、64のY軸方向の輪郭線613、614、623、624、632、633、642、643により形成される線分がY軸方向に対して所定の傾きを有するので、この線分と、LCD30の画素32のY軸方向の配列パターンとの間でのモアレの発生が軽減あるいは防止される。
【0103】
[第2の実施形態の変形例]
上述の第2の実施形態の説明では、分割ダミーパターンDPのそれぞれにおいて、複数個の小ダミーパターン61,62,63,64のY軸方向に対する輪郭線は前記±θの傾きを有するものとして説明した。しかし、例えばX軸方向に並ぶ2つの小ダミーパターン61、62を、同じ形状の平行四辺形とすることは必ずしも必要とされない。上述したように、位置検出センサ60全体として均一な透過率が確保できるように、第1の透明電極24および第2の透明電極25のそれぞれの形状に対応した形状を備え、およびLCD30の画素32の配列方向と小ダミーパターン61,62,63,64のそれぞれの輪郭線の方向との間でのモアレの発生が軽減あるいは防止できるように、LCD30の画素32の配列方向に対し小ダミーパターン61,62,63,64のそれぞれの輪郭線の傾き角が所定の値に設定されれば良い。
【0104】
この場合にも、ダミーパターンDPは、当該ダミーパターンDPが占める領域のX軸方向の中心線を対称軸として線対称の形状に構成されると共に、そのY軸方向の中心線を対称軸として線対称の形状に構成し、更に、そのX軸方向およびY軸方向の中心点を対称の中心として点対称に構成するようにすると、センサ基板の全体に渡って均一なセンサ特性を有するようにすることができる。
【0105】
[その他の実施形態または変形例]
上述の第1の実施形態および第2の実施形態では、第1の透明電極24のY軸方向の輪郭線241、242を、Y軸方向に対して所定の傾き+θを有する直線の線分241a、242a、およびY軸方向に対して所定の傾き−θを有する直線の線分241b、242bで構成することにより、複数の第1の透明電極24のそれぞれの輪郭線はY軸方向に対して所定の傾きを有する形状とした。しかし、複数の第1の透明電極の形状を、このような傾きθを有する直線の線分で構成する場合に限られるものではない。
【0106】
例えば図6の例の位置検出センサ70は、第1の透明電極の形状を、Y軸方向に対して所定の傾きを有する形状とする方法として、Y軸方向に円弧状の曲線形状、いわゆる丸み形状を用いる場合である。また、図6の例の位置検出センサ70は、ダミーパターンを分割ダミーパターンとする第2の実施形態に適用した場合である。なお、この図6の例の位置検出センサ70において、前述した第1の実施形態に示した構成と同一部分には同一符号を付与してその説明は省略する。
【0107】
すなわち、この図6の例の複数の第1の透明電極24Rは、そのY軸方向の2本の輪郭線を、当該第1の透明電極24Rの幅の中心線243Rを対称軸として線対称な形状の円弧状の曲線241R,242Rで構成する。そして、この図6の例においては、第1の透明電極24Rは、Y軸方向に互いが近傍に配置された2個のクロスポイントの一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に、線対称な形状の円弧状の曲線241R、242Rを2回繰り返した形状としている。この繰り返し回数は、前述もしたように、モアレ対策のみならずノイズ対策を考慮した場合には、2回以上で、且つ、モアレ防止効果が低減されない回数とされる。
【0108】
そして、この図6の例の分割ダミーパターンDPRは、第1の透明電極24Rの輪郭に対応した形状の6種の小ダミーパターン71,72,73,74,75,76で構成される。すなわち、この図6の例においては、小ダミーパターン71〜74のいずれも、X軸方向に平行な直線からなる2本の輪郭線を有する。そして、小ダミーパターン71は、さらに、Y軸方向に互いが近傍に配置された2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線241Rの前半の曲線に平行な2本の曲線の輪郭線を有し、これらとX軸方向に平行な2本の直線の輪郭線により囲まれる4辺形の形状を備える。
【0109】
また、小ダミーパターン72は、Y軸方向に互いが近傍に配置された2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線241Rの後半の曲線に平行な2本の曲線の輪郭線を有し、これらとX軸方向に平行な2本の直線の輪郭線により囲まれる4辺形の形状を備える。
【0110】
また、小ダミーパターン73は、Y軸方向に互いが近傍に配置された2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線242Rの前半の曲線に平行な2本の曲線の輪郭線を有し、これらとX軸方向に平行な2本の直線の輪郭線により囲まれる4辺形の形状を備える。
【0111】
また、小ダミーパターン74は、Y軸方向に互いが近傍に配置された2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線242Rの後半の曲線に平行な2本の曲線の輪郭線を有し、これらとX軸方向に平行な2本の直線の輪郭線により囲まれる4辺形の形状を備える。
【0112】
また、小ダミーパターン75は、Y軸方向に互いが近傍に配置された2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線241Rの前半の曲線に平行な輪郭線と、Y軸方向の2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線242Rの前半の曲線に平行な輪郭線と、X軸方向に平行な直線の輪郭線により囲まれる楔形形状を備える。
【0113】
また、小ダミーパターン76は、Y軸方向に互いが近傍に配置された2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線241Rの後半の曲線に平行な輪郭線と、Y軸方向の2個のクロスポイントの一方から他方に向かう円弧状の曲線242Rの後半の曲線に平行な輪郭線と、X軸方向に平行な直線の輪郭線により囲まれる楔形形状を備える。
【0114】
ここで、6種の小ダミーパターン71、72、73、74、75、76のそれぞれは、この例においても、第1透明電極24Rおよび第2の透明電極25と同じITO膜で構成されると共に、互いに電気的に独立しており、且つ、電気的に遊離している状態に形成されている。そして、上述した第2の実施形態と同様にして、フォトリソグラフィー工程により、第1の透明電極24Rおよび第2の透明電極25と同時に、この分割ダミーパターンDPRが形成されるものである。
【0115】
そして、分割ダミーパターンDPRにおいては、X軸方向に、小ダミーパターン71が2度繰り返し、次に楔形の小ダミーパターン75が続き、更に小ダミーパターン73が2度繰り返す配列パターンと、X軸方向に、小ダミーパターン72が2度繰り返し、次に楔形の小ダミーパターン76が続き、更に小ダミーパターン73が2個度繰り返す配列パターンとが、Y軸方向に、2回繰り返すパターンとなる。
【0116】
この図6の例の分割ダミーパターンDPRも、当該分割ダミーパターンDPRが占める領域のX軸方向およびY軸方向の中心点を中心として点対称に構成されている。したがって、分割ダミーパターンDPRは、第1の透明電極24Rと第2の透明電極25との全ての交点(クロスポイント)のそれぞれを中心として、点対称に構成されている。なお、この分割ダミーパターンDPRは、当該分割ダミーパターンDPRが占める領域のX軸方向の中心線を対称軸として線対称の形状に構成されると共に、前記領域のY軸方向の中心線を対称軸として線対称の形状に構成されてもいる。
【0117】
この図6の例の位置検出センサ70によれば、第2の実施形態と全く同様の作用効果が得られる。
【0118】
なお、上述の実施形態では、第1の透明電極と、第2の透明電極と、ダミーパターン(分割ダミーパターンを含む)とを、全て、透明基板の一面側に形成するようにしたが、例えば第1の透明電極と第2の透明電極とを透明基板の一方の面と他方の面にそれぞれ形成し、ダミーパターンは透明基板の一方の面あるいは他方の面に設けても良い。また、第1および第2の透明電極を透明基板の一方の面に設けると共に、ダミーパターンを、透明基板の他方の面に設けるようにしても良い。
【0119】
しかし、上述の実施形態では、第1の透明電極と、第2の透明電極と、ダミーパターンとを、全て透明基板の一面側に形成するようにしたので、センサ20の製造工数が少なくなり、安価に構成することができるという効果を奏する。また、第1の透明電極と第2の透明電極やダミーパターンを透明基板の一方の面と他方の面に分けて形成する場合には、透明基板の厚さによっては、第1の透明電極と第2の透明電極の輪郭線や、ダミーパターンの輪郭線の見え方が変化することがあるという問題があるが、この実施形態によれば、第1の透明電極と、第2の透明電極と、ダミーパターンとを、全て透明基板の一面側に形成するので、このような問題を考慮する必要はない。
【0120】
なお、分割ダミーパターンにおける小ダミーパターンの数は、上述の実施形態に限られるものではないことは言うまでもない。
【0121】
なお、上述の実施形態は、静電容量方式の位置検出センサに、この発明を適用した場合であるが、この発明は、LCD、有機EL素子など、画素が直線状に配置されて表示装置を構成しており、この表示装置の表示面に透明の位置検出センサが重畳して配置される構成であれば、この発明を適用しうる。
【0122】
例えば、図7および図8に示すような電磁誘導方式の位置検出センサ80にも適用することができる。図7に示すように、この例の電磁誘導方式の位置検出センサ80は、LCDなどの表示装置81の表示面81Dに重畳して配置される光透過性を有する検出コイル基板82と、表示装置81の表示面81Dとは反対側に配置される駆動コイル基板83を備える。そして、この例の位置検出センサ80と共に使用する位置指示器84は、共振回路841を備える。
【0123】
駆動コイル基板83においては、例えば樹脂等の基板上に駆動コイルが配置される。この駆動コイル基板83は、表示装置81の裏面側に設けられるので、透明基板および駆動コイルを透明導体で構成する必要はない。
【0124】
この駆動コイル基板83の駆動コイルに所定の周波数信号を供給することで、誘導磁界が発生し、位置指示器84の共振回路841に、その誘導磁界に応じたエネルギーが蓄えられる。そして、位置指示器84は、その共振回路841に蓄えた磁界エネルギーを検出用コイル基板82に供給する。
【0125】
検出コイル基板82においては、図8に示すように、例えばITO膜からなる検出用ループコイル822Xと822Yが、グリッド状に形成されると共に、その周部には信号処理回路部800が設けられる。検出用ループコイル822Xは、Y軸方向に配置された長尺部を備え、検出コイル基板82上に、X軸方向に所定の間隔で、複数本配置されている。検出用ループコイル822Yは、X軸方向に配置された長尺部を備え、検出基板82上に、Y軸方向に所定の間隔で、複数本配置されている。
【0126】
信号処理回路部800は、選択回路823Xおよび823Yと、位置算出回路824とを備える。選択回路823Xは、位置算出回路824の制御に基づいて、検出用ループコイル822Xのいずれかを選択する。また、選択回路823Yは、位置算出回路824の制御に基づいて、検出用ループコイル822Yのいずれかを選択する。
【0127】
位置算出回路824は、選択回路823X、823Yで選択された検出用ループコイル822X、822Yで受信された信号に基づいて位置指示器84が指示する位置を検出する。すなわち、位置指示器84の共振回路841による磁界に応じて検出用ループコイル822X、822Yには誘導電流が生じる。位置算出回路824は、選択回路823Xおよび823Yを切り替えながら、誘導電流が生じた検出用ループコイル822X、822Yの位置を判定し、その判定結果から位置指示器84が指示する位置を算出して出力する。
【0128】
検出コイル基板82には、X軸方向およびY軸方向にITO膜からなる検出用ループコイル822Xおよび822Yが配置される。従って、ITO膜からなる検出用ループコイル822Xおよび822Yは、それぞれ所定の輪郭線を備えた形状を有しており、位置検出センサ20における第1の透明電極24、第2の透明電極25と同様に、表示装置81を構成する画素との間でモアレ効果が生じる恐れがある。従って、静電容量方式のみならず、このような構成の電磁誘導方式の位置検出センサであってもこの発明は適用することができる。
【0129】
この例においては、検出コイル基板82における光透過率の均一性を満足するために、検出用ループコイル822Xおよび822Yの間に存在する領域に、例えばITO膜からなるダミーパターンが設けられる。そして、この検出コイル基板82の検出用ループコイル822Xおよび822Yの導体の輪郭形状に対応した形状のダミーパターンの形状が適用される。また、ダミーパターンは、第2の実施形態のように複数個の小ダミーパターンからなる分割ダミーパターンで構成しても良い。
【0130】
以上により、この図7および図8に示した電磁誘導方式の位置検出センサの場合においても、検出コイル基板82をLCDなどの表示装置の表示面に重畳して配置したときに、LCDの表示画素の配列と、検出用ループコイルの導体あるいはダミーパターンとの間でのモアレ効果を軽減または防止することができる。
【0131】
なお、図7および図8に示した電磁誘導方式の位置検出センサ80においては、駆動コイルは駆動コイル基板83に配置されて、表示装置81の表示面81Dとは反対側に設けるようにしたが、駆動コイルを、表示装置81の表示面81D側の周部に配置することもできる。
【0132】
すなわち、図7に示した表示装置81の裏面に配置された駆動コイルに代えて、グリッド形状の検出用ループコイル822Xおよび822Yを備えた検出コイル基板82の一方の面、あるいは他方の面の周部に、駆動コイルを、図8において点線で示すように、周辺励磁コイル830として配置するようにしても良い。この周辺励磁コイル830によって、駆動コイル基板83に設けられた駆動コイルと同様に、位置指示器84の共振回路841に、その誘導磁界に応じたエネルギーが蓄えられる。そして、位置指示器84は、その共振回路841に蓄えた磁界エネルギーを検出用コイル基板82に供給する。
【0133】
なお、上述の実施形態では、透明の導体としては、ITO膜を用いたが、その他の透明性の導電材料を用いることも勿論できる。例えばZnO(酸化亜鉛)からなる透明導体や、溶液に微小なAg(銀)ワイヤを混ぜた透明導電性インクを用いることができる。また、前述したように、ダミーパターンは、必ずしも第1の透明電極や第2の透明電極を構成する導体と同一の透明材料で構成する必要はなく、光透過率が等しいあるいは近似する透明材料で構成しても良い。また、ダミーパターンは、必ずしも導体である必要はないので不導体材料、例えば透明の樹脂などで構成することもできる。
【0134】
また、以上の説明は、この発明の位置検出センサをタブレット装置に用いた場合であったが、この発明の位置検出センサは、タブレット装置に限らず、例えば携帯電話端末や携帯型パソコンなどの携帯端末や、据え置き型タイプの電子装置、その他の種々の電子装置に適用可能である。
【0135】
また、上述の実施形態では、表示装置は、全てLCDの場合として説明したが、LCDに限られるものではなく、例えば有機EL(electroluminescence)ディスプレイなど、表示画素が規則正しく配置された表示装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0136】
20…位置検出センサ、21…透明基板、22……透明電極群、23…ダミーパターン、24…第1の透明電極、25…第2の透明電極、26…導体層、27、28…隙間、30…LCD、32…表示画素、33…表示面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向に配列された複数の画素を備えた表示装置の表示面に重畳して使用され、指示体が指示する位置を検出するための位置検出センサであって、
前記第1の方向に配置された光透過性を有する複数本の電極と、前記第2の方向に配置された光透過性を有する複数本の電極によるグリッド構成を備え、
前記第1の方向に互いが近傍に配置された2本の前記電極と前記第2の方向に互いが近傍に配置された2本の前記電極が互いに交差する4つのクロスポイントで形成される領域は矩形を形成し、
前記矩形の領域のうちの前記電極が形成されていない領域には、前記位置検出センサとしての均一な光学特性を得るように、所定の光透過性を有するダミーパターンが前記矩形の領域に形成された前記電極に近接して配置されると共に、前記ダミーパターンは電気的に遊離して配置され、
前記第1の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極のそれぞれは、互いが近傍に位置する2つのクロスポイントの間において、前記第1の方向に配置された複数の前記画素との間でのモアレ効果を防止するように、前記第1の方向に対して所定の傾きを有する形状を有すると共に、前記指示体が指示する位置の検出精度のために、前記第1の方向の直線を対称軸とした線対称となるような形状を有している
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項2】
前記第1の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極のそれぞれは、互いが近傍に位置する前記2つのクロスポイントの間において、前記2つのクロスポイントを構成する一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に正の傾きと負の傾きを有する形状を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項3】
前記傾きは、前記2つのクロスポイントを構成する一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に従って順次変化させることで丸みを有する形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項4】
前記正の傾きと負の傾きを有する形状は、前記2つのクロスポイントを構成する一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に繰り返される形状を有している
ことを特徴とする請求項2に記載の位置検出センサ。
【請求項5】
指示体による位置指示に対応した静電容量の変化を検出するための静電容量方式の位置検出センサである
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項6】
前記位置検出センサと前記指示体との間は電磁誘導方式で結合されることで、前記指示体によって指示された位置を求めるようにした
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項7】
前記位置検出センサとは独立して、前記指示体に電磁誘導信号を供給するための励磁コイルを備えるとともに、前記励磁コイルは、前記表示装置の前記表示面に対応した面の側に配置され、あるいは前記表示装置の前記表示面の側であって前記位置検出センサの近傍に配置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の位置検出センサ。
【請求項8】
前記第1の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極、および前記第2の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極は、光透過性を有する基材の一方の面の側にそれぞれが配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項9】
前記第1の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極は、光透過性を有する基材の一方の面の側に位置すると共に、前記第2の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極は、前記光透過性を有する基材の他方の面の側に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項10】
前記ダミーパターンは、少なくとも前記第1の方向に配置された前記電極の形状に対応した形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項11】
前記ダミーパターンは、前記電極と同じ材質で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項12】
前記ダミーパターンは、複数のパターンから構成されており、前記複数のパターンの間には所定の隙間が形成されているとともに、前記隙間は少なくとも前記第1の方向とは異なる方向に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項13】
前記複数のパターンのそれぞれは、互いに電気的に遊離している
ことを特徴とする請求項12に記載の位置検出センサ。
【請求項14】
前記複数のパターンは、前記指示体が指示する位置の検出精度のために、所定の直線を軸とした線対称パターンあるいは所定の点を基準とした点対称パターンとなるように形成されている
ことを特徴とする請求項13に記載の位置検出センサ。
【請求項15】
請求項1に記載の位置検出センサを備えると共に、
前記位置検出センサを構成する、前記第2の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極に対して所定の送信信号を供給するための送信信号供給回路と、
前記第1の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極から信号を受信するための信号受信回路と
を備えていることを特徴とする位置検出装置。
【請求項1】
第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向に配列された複数の画素を備えた表示装置の表示面に重畳して使用され、指示体が指示する位置を検出するための位置検出センサであって、
前記第1の方向に配置された光透過性を有する複数本の電極と、前記第2の方向に配置された光透過性を有する複数本の電極によるグリッド構成を備え、
前記第1の方向に互いが近傍に配置された2本の前記電極と前記第2の方向に互いが近傍に配置された2本の前記電極が互いに交差する4つのクロスポイントで形成される領域は矩形を形成し、
前記矩形の領域のうちの前記電極が形成されていない領域には、前記位置検出センサとしての均一な光学特性を得るように、所定の光透過性を有するダミーパターンが前記矩形の領域に形成された前記電極に近接して配置されると共に、前記ダミーパターンは電気的に遊離して配置され、
前記第1の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極のそれぞれは、互いが近傍に位置する2つのクロスポイントの間において、前記第1の方向に配置された複数の前記画素との間でのモアレ効果を防止するように、前記第1の方向に対して所定の傾きを有する形状を有すると共に、前記指示体が指示する位置の検出精度のために、前記第1の方向の直線を対称軸とした線対称となるような形状を有している
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項2】
前記第1の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極のそれぞれは、互いが近傍に位置する前記2つのクロスポイントの間において、前記2つのクロスポイントを構成する一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に正の傾きと負の傾きを有する形状を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項3】
前記傾きは、前記2つのクロスポイントを構成する一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に従って順次変化させることで丸みを有する形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項4】
前記正の傾きと負の傾きを有する形状は、前記2つのクロスポイントを構成する一方のクロスポイントから他方のクロスポイントに向かう方向に繰り返される形状を有している
ことを特徴とする請求項2に記載の位置検出センサ。
【請求項5】
指示体による位置指示に対応した静電容量の変化を検出するための静電容量方式の位置検出センサである
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項6】
前記位置検出センサと前記指示体との間は電磁誘導方式で結合されることで、前記指示体によって指示された位置を求めるようにした
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項7】
前記位置検出センサとは独立して、前記指示体に電磁誘導信号を供給するための励磁コイルを備えるとともに、前記励磁コイルは、前記表示装置の前記表示面に対応した面の側に配置され、あるいは前記表示装置の前記表示面の側であって前記位置検出センサの近傍に配置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の位置検出センサ。
【請求項8】
前記第1の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極、および前記第2の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極は、光透過性を有する基材の一方の面の側にそれぞれが配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項9】
前記第1の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極は、光透過性を有する基材の一方の面の側に位置すると共に、前記第2の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極は、前記光透過性を有する基材の他方の面の側に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項10】
前記ダミーパターンは、少なくとも前記第1の方向に配置された前記電極の形状に対応した形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項11】
前記ダミーパターンは、前記電極と同じ材質で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項12】
前記ダミーパターンは、複数のパターンから構成されており、前記複数のパターンの間には所定の隙間が形成されているとともに、前記隙間は少なくとも前記第1の方向とは異なる方向に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【請求項13】
前記複数のパターンのそれぞれは、互いに電気的に遊離している
ことを特徴とする請求項12に記載の位置検出センサ。
【請求項14】
前記複数のパターンは、前記指示体が指示する位置の検出精度のために、所定の直線を軸とした線対称パターンあるいは所定の点を基準とした点対称パターンとなるように形成されている
ことを特徴とする請求項13に記載の位置検出センサ。
【請求項15】
請求項1に記載の位置検出センサを備えると共に、
前記位置検出センサを構成する、前記第2の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極に対して所定の送信信号を供給するための送信信号供給回路と、
前記第1の方向に配置された光透過性を有する前記複数本の電極から信号を受信するための信号受信回路と
を備えていることを特徴とする位置検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−20560(P2013−20560A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155285(P2011−155285)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】
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