説明

位置検出センサ

【課題】検出素子数を増やさずに出力の高分解能化を図る。
【解決手段】位置検出センサ1は、実装ヘッドH1〜H15と、仮想出力算出部11と、最端検出素子決定部12と、検出信号生成部13とを備える。実装ヘッドH1〜H15は、ガイドテープGTの幅方向に所定の間隔をあけて配置され、ガイドテープGTの磁束を検出する。仮想出力算出部11は、実装ヘッドH1〜H15の出力結果に基づいて、隣り合う実装ヘッド間に配置される仮想ヘッドの出力を補間により算出する。最端検出素子決定部12は、各実装ヘッドH1〜H15及び各仮想ヘッドのうち、出力が所定の閾値以上であって最端に位置する最端検出素子を決定する。検出信号生成部13は、最端検出素子の位置に基づいてガイドテープGTの位置情報を示す位置検出信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行路を走行する自立走行式無人車等に使用して好適な位置検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、床面に貼られた発磁体からなるガイドテープ(走行路)に沿って走行する自立走行式無人車が知られている。このような自立走行式無人車は、ガイドテープの幅方向における磁束密度分布に応じて、無人車の左右方向の位置を検出する位置検出センサを備えている。この位置検出センサとしては、例えば、特許文献1及び2に記載されているようなものがある。
【0003】
特許文献1及び2に記載された位置検出センサは、ガイドテープの幅方向に所定の間隔をあけて配置される複数の磁気スイッチ(磁気検出素子)を備えている。そして、所定の閾値以上の出力を得る磁気スイッチを導通させ、そのうちの最左端及び最右端に位置する磁気スイッチを、それぞれガイドテープに対向する最左端及び最右端に位置する磁気スイッチとする。
【0004】
具体的に説明すると、特許文献1に記載された位置検出センサは、右分岐出力抵抗群と、左分岐出力抵抗群を有している。右分岐出力抵抗群は、複数の磁気スイッチの出力端を右端から左端に亘って抵抗を介して互いに直列接続し、左分岐出力抵抗群は、複数の磁気スイッチの出力端を左端から右端に亘って抵抗を介して互いに直列接続する。そして、右分岐出力抵抗群または左分岐出力抵抗群からガイドテープに対する無人車の左右方向の位置を示す電圧信号がそれぞれ出力されるようになっている。
【0005】
また、特許文献2に記載された位置検出センサは、最左端の磁気スイッチを示す左端情報と、最右端の磁気スイッチを示す右端情報と、両者間の中心位置を示す第1のオフセット情報を生成する。そして、左端情報、右端情報、第1のオフセット情報及び固定値である第2のオフセット情報を用いて、ガイドテープに対する無人車の左右方向の位置を示す電圧信号を生成して出力するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−41384号公報
【特許文献2】特開平10−170248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2記載された位置検出センサでは、磁気スイッチ数に応じた分解能の出力しか得られなかった。そのため、磁気スイッチ数を少なくして隣り合う磁気スイッチ間の間隔を広くすると、得られる出力で許容される無人車の左右方向への変位量が大きくなってしまう。その結果、無人車の蛇行が多くなり、その蛇行により無人車が軌道から外れる可能性があった。
【0008】
無人車の左右方向の位置を高精度に制御して蛇行を少なくするには、磁気スイッチ数を増やして隣り合う磁気スイッチ間の間隔を狭めればよい。しかしながら、磁気スイッチ数を増やすと、消費電力が増加すると共に、駆動回路等も増加することになりコストアップとなる。また、磁気スイッチ数を増やして隣り合う磁気スイッチ間の間隔を狭めることは、磁気スイッチの物理的な大きさによって制限されるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実状に鑑みてなされたものであり、検出素子数を増やさずに出力の高分解能化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するため、本発明の位置検出センサは、少なくとも3つ以上の実装検出素子と、仮想出力算出部と、最端検出素子決定部と、検出信号生成部とを備える。少なくとも3つ以上の実装検出素子は、走行路の幅方向に所定の間隔をあけて配置され、走行路を検出する。仮想出力算出部は、実装検出素子の出力結果に基づいて、隣り合う実装検出素子間に配置される仮想検出素子の出力を補間により算出する。最端検出素子決定部は、各実装検出素子及び各仮想検出素子のうち、出力が所定の閾値以上であって最端に位置する最端検出素子を決定する。検出信号生成部は、最端検出素子の位置に基づいて走行路の位置情報を示す位置検出信号を生成する。
【0011】
このように構成した本発明の位置検出センサでは、隣り合う実装検出素子間に配置される仮想検出素子の出力を仮想出力算出部によって算出する。つまり、隣り合う実装検出素子間に仮想の検出素子を設ける。そして、実装検出素子と仮想検出素子の中から最端検出素子を決定し、その最端検出素子の位置に基づいて位置検出信号を生成する。そのため、実装検出素子数を増やさなくても、走行路の位置情報を示す出力(位置検出信号)の分解能を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の位置検出センサによれば、実装する検出素子数を増やさずに出力を高分解能化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の位置検出センサの一実施の形態を示す構成図である。
【図2】走行路の磁束密度分布の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の位置検出センサの一実施の形態に係る各実装検出素子の出力の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の位置検出センサの一実施の形態に係る各実装検出素子の出力に基づいて生成されるオンオフのビットパターンの一例を示す説明図である。
【図5】本発明の位置検出センサの一実施の形態に係る補間の一例を説明するグラフである。
【図6】本発明の位置検出センサの一実施の形態に係る各実装検出素子及び仮想検出素子の出力に基づいて生成されるオンオフのビットパターンの第1の例を示す説明図である。
【図7】本発明の位置検出センサの一実施の形態を備える無人車と、走行路の一例を示す平面図である。
【図8】図8A,図8Bは、本発明の位置検出センサの一実施の形態に係る各実装検出素子及び仮想検出素子の出力に基づいて生成されるオンオフのビットパターンの第2及び第3の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の位置検出センサを実施するための形態について、図1〜図9を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0015】
[位置検出センサの構成]
まず、本発明の位置検出センサの一実施の形態の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本発明の位置検出センサの一実施の形態を示す構成図である。図2は、走行路(ガイドテープ)の磁束密度分布の一例を示す説明図である。
【0016】
位置検出センサ1は、磁性体からなるガイドテープGT(走行路)に沿って進行する自立走行式無人車等に備えられ、ガイドテープGTの位置を検出するものである。この位置検出センサ1は、複数の実装ヘッドH1〜H15と、複数のアナログ−デジタル変換器2と、制御回路3と、モード切替入力端子4A,4Bと、デジタル−アナログ変換器5と、出力端子6を備えている。
以下、アナログ−デジタル変換器2を「A/D変換器2」と略し、デジタル−アナログ変換器5を「D/A変換器5」と略す。
【0017】
複数の実装ヘッドH1〜H15は、実装検出素子の一具体例を示す磁気検出素子である。これら実装ヘッドH1〜H15は、ガイドテープGTの幅方向に所定の間隔をあけて配置されている。本実施の形態では、進行方向の左端に実装ヘッドH1を配置し、右端に実装ヘッドH15を配置している。そして、実装ヘッドH1から実装ヘッドH15までの距離は、ガイドテープGTの幅よりも長くなっている。
【0018】
実装ヘッドH1〜H15は、ガイドテープGTと対向し、ガイドテープGTの磁束密度に比例したアナログ電圧を出力する。つまり、各実装ヘッドH1〜H15は、それぞれが配置された場所でガイドテープGTの幅方向の磁束密度分布(図2参照)に応じたアナログ電圧を出力する。なお、本実施の形態では、ガイドテープGTのN極が実装ヘッドH1〜H15に対向する。これら実装ヘッドH1〜H15としては、例えば、可飽和コイル、ホール素子、MR素子等を挙げることができる。
【0019】
複数のA/D変換器2は、複数の実装ヘッドH1〜H15に対応して設けられている。これらA/D変換器2には、実装ヘッドH1〜H15から出力されたアナログ電圧がそれぞれ入力される。各A/D変換器2は、供給されたアナログ電圧をデジタル信号に変換して制御回路3へ出力する。
【0020】
制御回路3は、例えば、マイクロコンピュータである。この制御回路3は、仮想出力算出部11と、最端検出素子決定部12と、検出信号生成部13とを有している。仮想出力算出部11は、複数のA/D変換器2から出力された各デジタル信号に基づいて、隣り合う実装ヘッドH1〜H15間に配置される仮想ヘッドVHa1〜VHa3(図5参照)の出力を補間により算出する。
【0021】
最端検出素子決定部12は、各実装ヘッドH1〜H15及び各仮想ヘッドVHa1〜VHa3のうち、出力が所定の閾値t(図4参照)以上であって最端に位置する最端検出素子を決定する。検出信号生成部13は、最端検出素子の位置に基づいてガイドテープGTの位置情報を示す位置検出信号を生成する。仮想出力算出部11、最端検出素子決定部12及び検出信号生成部13の詳しい処理内容については、後で説明する。
【0022】
モード切替入力端子4A,4Bは、それぞれ制御回路3の検出信号生成部13に接続されている。これらモード切替入力端子4A,4Bを介して、左分岐モード、右分岐モード及び直進モードのいずれかのモードを選択するための指令信号が制御回路3に入力される。具体的には、モード切替入力端子4Aにハイ信号が送信され、モード切替入力端子4Bにロー信号が送信されると、左分岐モードが選択される。左分岐モードでは、無人車21(図7参照)をガイドテープGTの分岐路上で位置制御して左方向の分岐路に進入させるための位置検出信号が演算される。
【0023】
また、モード切替入力端子4Aにロー信号が送信され、モード切替入力端子4Bにハイ信号が送信されると、右分岐モードが選択される。右分岐モードでは、無人車21をガイドテープGTの分岐路上で位置制御して右方向の分岐路に進入させるための位置検出信号が演算される。そして、モード切替入力端子4A,4Bにロー信号が送信されると、直進モードが選択される。直進モードでは、無人車21を直進路上で制御して走行させるための位置検出信号が演算される。
【0024】
D/A変換器5は、制御回路3から供給された位置検出信号をステップ状のアナログ電圧に変換し、出力端子6を介して出力する。このステップ状のアナログ電圧は、ガイドテープGTに対する変位量に応じて段階的に値が変化するものであり、無人車21の駆動制御部(不図示)に入力される。
【0025】
[制御回路の処理内容]
次に、制御回路3の処理内容について説明する。
図3は、実装ヘッドH1〜H15の出力の一例を示す説明図である。図4は、各実装ヘッドH1〜H15の出力に基づいて生成される実装ビットパターンの一例を示す説明図である。
【0026】
まず、制御回路3の仮想出力算出部11によって行われる処理について説明する。
仮想出力算出部11は、複数のA/D変換器2から出力された各デジタル信号により、各実装ヘッドH1〜H15の出力情報を得る(図3参照)。そして、仮想出力算出部11は、各実装ヘッドH1〜H15の出力に基づいて、実装ビットパターン情報を生成する(図4参照)。
【0027】
具体的には、各実装ヘッドH1〜H15の出力と予め設定された閾値tとを比較し、閾値t以上の値を出力した実装ヘッドをオンのビット(例えば「1」)に置き換え、閾値tよりも小さい値を出力した実装ヘッドをオフのビット(例えば「0」)に置き換える。なお、閾値tは、ガイドテープGTと実装ヘッドH1〜H15との間の距離と、ガイドテープGTの幅及び磁界の大きさに基づいて設定される。
【0028】
次に、仮想出力算出部11は、ビット列を左端から右端へ走査して、オフからオンに変化する2つの実装ヘッドを抽出する。図4に示す例では、実装ヘッドH4,H5がオフからオンに変化する2つの実装ヘッドとなる。続いて、仮想出力算出部11は、隣り合う実装ヘッドH4,H5間に、仮想ヘッド(仮想検出素子)を等間隔に配置し、その仮想ヘッドの出力を補間により算出する。
【0029】
仮想ヘッドとは、隣り合う実装ヘッド間に仮想的に配置されるヘッドであり、その出力は、実装ヘッドの出力値を用いた補間により算出される。なお、隣り合う実装ヘッド間に配置する仮想ヘッドは少なくとも1つあればよい。
【0030】
図5は、仮想出力算出部11によって行われる補間の一例を説明するグラフである。
本実施の形態では、仮想出力算出部11が直線補間によって3つの仮想ヘッドVHa1〜VHa3の出力を算出する。つまり、隣り合う実装ヘッドH4,H5の出力の差を等分割し、その値を用いて3つの仮想ヘッドVHa1〜VHa3の出力を算出する。
【0031】
例えば、実装ヘッド間に配置される仮想ヘッド数をnとし、算出する仮想ヘッドの位置番号をVHNとすると共に、オンの実装ヘッドの出力をHon、オフの実装ヘッドの出力をHoffとする。その場合、各仮想ヘッドVHa1〜VHa3の出力VHdは、次式により算出される。
VHd=(Hon−Hoff)/(n+1)×VHN+Hoff
【0032】
図5に示す例において、例えば、実装ヘッドH5の出力(Hon)が6V、実装ヘッドH4の出力(Hoff)が4Vのとき、仮想ヘッドVHa1の出力(VHd)は、4.5Vになる。
VHd=(Hon−Hoff)/(n+1)×VHN+Hoff
=(6−4)/(3+1)×1+4
=4.5
なお、図5に示す例では、仮想ヘッドVHa2,VHa3と実装ヘッドH5の出力が閾値t以上になる。
【0033】
また、仮想出力算出部11は、ビット列を右端から左端へ走査して、オフからオンに変化する2つの実装ヘッドを抽出する。図4に示す例では、実装ヘッドH11,H12がオフからオンに変化する2つの実装ヘッドとなる。なお、ビット列を左端から右端へ走査して、オンからオフに変化する2つの実装ヘッドを抽出してもよい。
【0034】
続いて、仮想出力算出部11は、隣り合う実装ヘッドH11,H12間に仮想ヘッドVHb1〜VHb3を配置し、これら仮想ヘッドVHb1〜VHb3の出力を補間により算出する。このとき、各仮想ヘッドVHb1〜VHb3の出力VHdは、次式により算出される。
VHd=(Hoff−Hon)/(n+1)×VHN+Hon
【0035】
その後、仮想出力算出部11は、各実装ヘッドH1〜H15の出力情報と各仮想ヘッドの出力情報を最端検出素子決定部12(図1参照)へ送る。なお、仮想出力算出部11は、実装ヘッド間に配置される全ての仮想ヘッドの出力を算出し、その情報を最端検出素子決定部12へ送るようにしてもよい。
【0036】
次に、最端検出素子決定部12によって行われる処理について説明する。
最端検出素子決定部12は、各実装ヘッドH1〜H15の出力と各仮想ヘッドの出力に基づいて、位置検出用ビットパターン情報を生成する(図6参照)。具体的には、各実装ヘッドH1〜H15及び各仮想ヘッドの出力と予め設定された閾値tとを比較し、閾値t以上の出力であるヘッドをオンのビットに置き換え、閾値tよりも小さい出力であるヘッドをオフのビットに置き換える。
【0037】
図6は、実装ヘッドH1〜H15と仮想ヘッドの出力に基づいて生成される検出用ビットパターンの第1の例を示す説明図である。
位置検出用ビットパターン情報は、実装ヘッドH1〜H15と、隣り合う実装ヘッド間にそれぞれ配置された仮想ヘッドに対応したビット数になる。
【0038】
なお、仮想出力算出部11から仮想ヘッドVHa1〜VHa3,VHb1〜VHb3の出力情報のみが送られる場合は、閾値t以上の出力である実装ヘッド間に配置される仮想ヘッドを自動的にオンに置き換える。そして、閾値tより小さい実装ヘッド間に配置される仮想ヘッドを自動的にオフに置き換える。本例では、実装ヘッド間に3つの仮想ヘッドを配置するようにしたため、位置検出用ビットパターン情報は、57ビットのビット列となる。
【0039】
次に、最端検出素子決定部12は、位置検出用ビットパターン情報のビット列を左端から右端へ走査して、最初にオンに変化する最左端検出ヘッド(最左端検出素子)を抽出する。そして、位置検出用ビットパターン情報のビット列を右端から左端へ走査して、最初にオンに変化する最右端検出ヘッド(最右端検出素子)を抽出する。図6に示す例では、最左端検出ヘッドとして仮想ヘッドVHa2が抽出され、最右端検出ヘッドとして仮想ヘッドVHb2が抽出される。
【0040】
次に、最端検出素子決定部12は、最左端検出ヘッドを示す情報と最右端検出ヘッドを示す情報を検出信号生成部13へ送る。これら最左端検出ヘッド及び最右端検出ヘッドを示す情報は、実装ヘッドH1〜H15と仮想検出ヘッドに対してH1から順番に付されたビット番号になっている。つまり、実装ヘッドH1のビット番号は、「1」になり、実装ヘッドH15のビット番号は「57」になる。本例では、最左端検出ヘッドである仮想ヘッドVHa2のビット番号が「15」になり、最右端検出ヘッドである仮想ヘッドVHb2のビット番号が「43」になる。
【0041】
次に、検出信号生成部13によって行われる処理について説明する。
検出信号生成部13は、最端検出素子決定部12から供給されたビット番号に基づいて、左分岐モード、右分岐モード及び直進モードに対応した位置データを演算する。演算した位置データは、その後、位置検出信号に変換される。
【0042】
まず、左分岐モードに対応した位置データの演算について説明する。
左分岐モードでは、ガイドテープGTの左端部分のみに注目する。つまり、検出信号生成部13は、最左端検出ヘッドの情報(ビット番号)に基づいて位置データを演算する。このとき、ガイドテープGTの中心位置を示す位置データにするために、最左端検出ヘッドのビット番号にオフセット値が加えられる。
【0043】
オフセット値は、ガイドテープGTの幅の1/2の値に設定される。つまり、ヘッド列の中心がガイドテープの幅方向の中心に一致しているときに、オンになるビット数の1/2の値に設定される(図6参照)。したがって、ヘッド列の中心とガイドテープGTの幅方向の中心が一致していると、位置データは、オンとなったビットのうちの中心のビットに付されたビット番号と等しい値になる。例えば、最左端検出ヘッドのビット番号をLnとして、オフセット値をLoとすると、左分岐モードの位置データLdは、次式から算出される。
Ld=Ln+Lo・・・(1)
【0044】
図6に示す例では、ヘッド列の中心(H8)とガイドテープGTの幅方向の中心が一致している。そして、最左端検出ヘッドのビット番号が「15」であり、最右端検出ヘッドのビット番号が「43」である。そのため、オンになっているビットは合計で28ビットになり、その1/2である14ビットがオフセット値となる。したがって、位置データLdは、「29」になり、ビット番号の中心の値となる。
Ld=15+14
=29
【0045】
次に、右分岐モードに対応した位置データの演算について説明する。
右分岐モードでは、ガイドテープGTの右端部分のみに注目する。つまり、検出信号生成部13は、最右端検出ヘッドの情報(ビット番号)に基づいて位置データを演算する。このとき、ガイドテープGTの中心位置を示す位置データにするために、最右端検出ヘッドのビット番号からオフセット値が減算される。
【0046】
オフセット値については、左分岐モードと同じであるため、説明を省略する。右分岐モードにおいても、ヘッド列の中心とガイドテープGTの幅方向の中心が一致していると、位置データは、オンとなったビットのうちの中心のビットに付されたビット番号と等しい値になる。例えば、最右端検出ヘッドのビット番号をRnとして、オフセット値をRo(Ro=Lo)とすると、右分岐モードの位置データRdは、次式から算出される。
Rd=Rn−Ro・・・(2)
【0047】
図6に示す例では、ヘッド列の中心(H8)とガイドテープGTの幅方向の中心が一致しており、最右端検出ヘッドのビット番号が「43」である。したがって、位置データRdは、「29」になり、ビット番号の中心の値となる。
Rd=43−14
=29
【0048】
図7は、位置検出センサ1を備える無人車21と、走行路であるガイドテープGTの一例を示す平面図である。
図7に示すように、ガイドテープGTは、直進路31と、この直進路31に連続する左分岐路32及び右分岐路33を有している。直進路31は、床面に設けられた鉄板I上を略垂直に横断している。このように、ガイドテープGTが鉄板Iを横断する場合には、鉄板Iに起因して、あたかもガイドテープGTの幅が広がったように磁束密度分布が広がる。
【0049】
鉄板Iから離れた場所では、図6に示すように、最左端検出ヘッドのビット番号が「15」になり、最右端検出ヘッドのビット番号が「43」になるとする。ところが、鉄板I上では、磁束密度分布が広がるため、例えば、最左端検出ヘッドのビット番号が「13」になり、最右端検出ヘッドのビット番号が「45」になる。
【0050】
このとき、左分岐モードにおける位置データLdは、(1)の式から「27」になる。
Ld=Ln+Lo
=13+14
=27
実際には、位置検出センサ1(無人車21)が左右方向に変位したわけではないので、正しい位置データLdは、「29」である。ところが、(1)の式で算出すると、位置データLdが「27」になるため、ガイドテープGTに対する位置が誤検出されてしまう。つまり、検出した位置は、実際の位置よりも右側にずれてしまう。そして、無人車21は、誤検出された位置に基づいて駆動制御を行うことになり、ガイドテープGTの幅方向の中心よりも左側に変位した走行軌跡Leを走行してしまう。
【0051】
一方、右分岐モードにおける位置データRdは、(2)の式から「31」になる。
Rd=Rn−Ro
=45−14
=31
その結果、右分岐モードにした場合は、検出した位置が実際の位置よりも左側にずれてしまう。そして、無人車21は、誤検出された位置に基づいて駆動制御を行うことになり、ガイドテープGTの幅方向の中心よりも右側に変位した走行軌跡Reを走行してしまう。そこで、以下に述べる本実施の形態の直進モードでは、上述したような誤検出を回避するようになっている。
【0052】
次に、直進モードに対応した位置データの演算について説明する。
直進モードでは、ガイドテープGTの両端部分に着目する。つまり、検出信号生成部13は、最左端検出ヘッドのビット番号Lnに、最右端検出ヘッドのビット番号Rnを加えて1/2にすることにより位置データを生成する。したがって、直進モードの位置データSdは、次式から算出される。
Sd=(Ln+Rn)/2 ・・・(3)
【0053】
すなわち、直進モードの位置データは、左分岐モードの位置データLdと、右分岐モードの位置データRdを平均化したものになる。したがって、直進モードの位置データは、オンとなったビットのうちの中心の位置を示すようになっている。
【0054】
図8Aは、実装ヘッドH1〜H15と仮想ヘッドの出力に基づいて生成される検出用ビットパターンの第2の例を示す説明図である。
図8Aに示す例では、最左端検出ヘッドのビット番号Lnが「30」になり、最右端検出ヘッドのビット番号Rnが「36」になっている。したがって、オンとなるビット数は、7個になる。
【0055】
このとき、直進モードの位置データSdは、(2)の式から「33」になる。
Sd=(Ln+Rn)/2
=(30+36)/2
=33
【0056】
図8Bは、実装ヘッドH1〜H15と仮想ヘッドの出力に基づいて生成される検出用ビットパターンの第3の例を示す説明図である。
図8Bに示す例では、最左端検出ヘッドのビット番号Lnが「12」になり、最右端検出ヘッドのビット番号Rnが「19」になっている。したがって、オンとなるビット数は、8個になる。
【0057】
このとき、直進モードの位置データSdは、(2)の式から「15.5」になる。
Sd=(Ln+Rn)/2
=(12+19)/2
=15.5
【0058】
このように、磁束密度分布が広がったり狭まったりしても、直進モードの位置データSdは、オンとなったビットのうちの中心の位置、つまり、ガイドテープGTの幅方向の中心を示すようになっている。したがって、ガイドテープGTに対する位置が誤検出されることを防止することができ、常に正確な位置検出を行うことができる。
【0059】
検出信号生成部13は、テーブル変換やオフセットを加算することにより、演算した位置データを位置検出信号に変換し、D/A変換器5に送信する。D/A変換器5は、位置検出信号をステップ状のアナログ電圧に変換し、出力端子6を介して無人車21の駆動制御部へ出力する。
【0060】
本実施の形態の位置検出センサ1によれば、隣り合う実装ヘッド間に配置される仮想ヘッドの出力を仮想出力算出部11によって算出する。つまり、隣り合う実装ヘッド間に実際には存在しない仮想ヘッドを設ける。そして、最端検出素子決定部12によって全ての実装ヘッドと仮想ヘッドの中から最左端検出ヘッド及び最右端検出ヘッドを決定する。その後、最左端検出ヘッド及び最右端検出ヘッドのビット番号(位置)に基づいてガイドテープGTの位置情報を示す位置検出信号を生成する。
【0061】
その結果、実装ヘッドを増やさなくても、出力(位置検出信号)の分解能を高めることができ、無人車21を高精度に制御することができる。また、実装ヘッドを削減することもでき、低消費電力化、ローコスト化を図ることができる。
【0062】
本実施の形態の位置検出センサ1によれば、仮想ヘッドの出力を直線補間(線形補間)により算出する。そのため、簡単な演算で仮想ヘッドの出力を得ることができ、仮想ヘッドの出力を演算するためのプログラムを簡単なものにすることができる。
【0063】
以上、本発明の位置検出センサの実施の形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の位置検出センサは、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0064】
例えば、上述した実施の形態では、仮想出力算出部11、最端検出素子決定部12及び検出信号生成部13をソフトウエアによって実現したが、本発明に係る仮想出力算出部、最端検出素子決定部及び検出信号生成部は、ハードウエアによって実現することもできる。
【0065】
また、上述した実施の形態では、15個の実装ヘッド(実装検出素子)を設ける構成としたが、本発明の位置検出装置としては、少なくとも3つ以上の実装ヘッドを設ければよい。また、上述した実施の形態では、仮想ヘッドの出力を直線補間により算出したが、仮想ヘッドの出力としては、多項式補間、スプライン補間、ラグランジュ補間などその他の補間方法により算出することができる。
【0066】
また、上述した実施の形態では、実装ヘッド(実装検出素子)として磁気検出素子を用いる構成とした。しかしながら、本発明に係る実装検出素子としては、光検出素子、温度検出素子など走行路の構成に対応し、走行路を検出することができるその他の検出素子を採用することができる。
【0067】
また、上述した実施の形態では、検出信号生成部13は、最左端検出ヘッド及び最右端検出ヘッドのビット番号に基づいて位置検出信号を生成した。しかしながら、本発明に係る検出信号生成部としては、最端検出素子決定部12によって生成した位置検出用ビットパターン情報をパラレル信号に変換することにより位置検出信号を生成するものであってもよい。その場合には、無人車21の駆動制御部が、位置検出用ビットパターン情報に基づいて無人車21の左右方向の位置を制御する。
【符号の説明】
【0068】
1…位置検出センサ、 2…アナログ−デジタル変換器(アナログ−デジタル変換手段)、 3…制御回路、 4A,4B…モード切替入力端子、 5…デジタル−アナログ変換器(デジタル−アナログ変換手段)、 6…出力端子、 11…仮想出力算出部、 12…最端検出素子決定部、 13…検出信号生成部、 21…無人車、 31…直進路、 32…左分岐路、 33…右分岐路、 GT…ガイドテープ、 H1〜H15…実装ヘッド(実装検出素子)、 VHa1〜VHa3, VHb1〜VHb3…仮想ヘッド、 t…閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路の幅方向に所定の間隔をあけて配置され、前記走行路を検出するための少なくとも3つ以上の実装検出素子と、
前記少なくとも3つ以上の実装検出素子の出力結果に基づいて、隣り合う実装検出素子間に配置される仮想検出素子の出力を補間により算出する仮想出力算出部と、
各実装検出素子及び各仮想検出素子のうち、出力が所定の閾値以上であって最端に位置する最端検出素子を決定する最端検出素子決定部と、
前記最端検出素子の位置に基づいて前記走行路の位置情報を示す位置検出信号を生成する検出信号生成部と、
を備える位置検出センサ。
【請求項2】
前記最端検出素子決定部は、出力が前記閾値以上であって最左端に位置する最左端検出素子と、出力が前記閾値以上であって最右端に位置する最右端検出素子とを決定し、
前記検出信号生成部は、前記走行路上の左の分岐路に沿って進む場合に、前記最左端検出素子の位置に基づいて前記位置検出信号を生成し、前記走行路上の右の分岐路に沿って進む場合に前記最右端検出素子の位置に基づいて前記位置検出信号を生成する
請求項1記載の位置検出センサ。
【請求項3】
前記仮想出力算出部は、隣り合う実装検出素子の出力の差を等分割して前記仮想検出素子の出力を算出する
請求項1または2記載の位置検出センサ。
【請求項4】
前記少なくとも3つ以上の実装検出素子から出力されるアナログ電圧をデジタル信号に変換するA/D変換手段を備える
請求項1〜3のいずれかに記載の位置検出センサ。
【請求項5】
前記位置検出信号をアナログ電圧に変換するD/A変換手段を備える
請求項1〜4のいずれかに記載の位置検出センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−13014(P2011−13014A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155577(P2009−155577)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000137340)株式会社マコメ研究所 (20)
【Fターム(参考)】